(米)MIT報告、「今世紀中、米国は再処理必要ない」
マサチューセッツ工科大学(MIT)は、「ウラン資源の入手可能性及び科学的に堅実な使用済み燃料管理方法の利用の観点から、少なくとも今世紀中米国において再処理は必要ない」とする報告書を取りまとめた。
MITは2003年に、「世界の気候変動の緩和に大きく貢献するためには、2050年までに原子力発電所の総出力を少なくとも10億kW必要」とする報告書『原子力の将来』を取りまとめている。さらに2009年には同報告書の改訂版を発行し、「世界の新規原子力発電所の開発スピードは、気候変動の緩和に必要な割合に比べて大幅に後退している」と指摘している。
今回『核燃料サイクルの将来』と題する報告書を取りまとめた理由について、「原子力発電が低炭素オプションとして引き続き重要である」からとしている。原子力発電は、気候変動リスクを緩和するため重要な役割を果たすことができる規模、即ち今世紀中頃までに世界でテラワット(10億kW)規模での開発が可能であるとしている。
また「展望が大きく変わったので、米国における原子力計画拡大のための重要な技術選択肢とそれらの選択の短期的な政策的意味に焦点を絞って、調査した」と付け加えている。
MITはまた「米国では、燃料サイクル政策は混乱状況に置かれてきた。原子力の拡大のためには現在のすばらしい安全性、信頼性の記録を維持しつつ、大きな課題であるコスト問題、廃棄物処分、核拡散問題を克服していかなければならない」としている。さらに「比較的早い時期に燃料サイクルの展開について広範かつ長期的な視点からの重要な決定を行う必要がある。その内容は、どのタイプの燃料を使うか、炉型は、使用済み燃料はどうするか、長期にわたる放射性廃棄物の処分方法についてである。今回の調査の目的は、これらの決定のための情報である」としている。
また、「本報告書の主なメッセージは、オープンサイクルの継続、つまり?軽水炉の使用済み燃料貯蔵管理、?地層処分の開発、?様々な原子力エネルギーの将来のための技術研究、の実施によって、燃料サイクルオプションを維持できるし維持すべきである」と述べている。
さらに、「今後数十年間、米国では軽水炉のワンス・スルー方式が経済的に望ましいオプションであり、ほぼ今世紀中、米国やその他の国でもワンス・スルーが支配的になる」ともしている。
報告書は、「使用済み燃料の長期管理貯蔵(ほぼ1世紀にわたる)は、燃料サイクル計画の要である」として推奨するとともに、「安全貯蔵と輸送期間の確認・延長」のための研究開発に力を入れるべきだともしている。
その他の提言等は次の通り。
1.米国の廃棄物管理計画を実行するために新しく準政府機関「放射性廃棄物管理機構」を設置する。
2.米国が、賢明な戦略的燃料サイクルを選択できるように、時宜にかなった燃料サイクルオプションが十分に開発されている必要があり、このために、相当規模の原子力拡大開発と一体となり、強固な研究、開発、実証(RD&D)計画の実施が必要である。同計画遂行には年間約10億ドルの予算が必要となる。
3.今回の燃料サイクルの再評価からは、さらに多くの可能なオプションがあるとともに、それらの最適な選択にも多くの不確実性がある。それらは、経済性(例:先進炉のコスト)、技術問題(例:廃棄物管理の実施)、社会問題(例:開発規模と核拡散リスク管理)等である。
MITエネルギー・イニシャティブのディレクターであり本報告書作成の共同議長であるE.モニッツ氏は、報告書の結論として、「過去数十年間広く行き渡っていた考えとは逆で、ウラン供給は原子力産業の成長を制限しないだろう。従来の考えは、どの技術が可能かについての決定に影響を与えてきた。ウラン資源の限界に関する誤解は、燃料サイクルの開発と開発スケジュールの判断のための重大事項となっていた」と述べている。
(2010年9月20日付WNN)
(原産協会・国際部まとめ)