(EU)ECF、低炭素社会への「ロードマップ2050」まとまる
欧州気候財団(ECF)は、「現行のすべての低炭素技術を最大限取り入れることにより、欧州は二酸化炭素の排出量を2050年までに80%削減可能」とする報告書を取りまとめた。
「ロードマップ2050:繁栄する低炭素欧州への実践的ガイド」と題する報告書は、ECFが中心となり、マッキンゼー社、インペリアル・カレッジ・ロンドンのエネルギー・ヒューチュアーズ・ラボ、オックスフォード・エコノミクス、E3G、KEMA、オランダのエネルギー研究センター、建築設計事務所OMAの専門家が取りまとめたもの。
原子力、炭素回収貯留(CCS)による化石燃料及び再生可能エネルギーを組み合わせた低炭素電源による発電量の増強が最も重要な措置であり、次いで、ビルや輸送での化石燃料使用を低炭素電力に転換することが重要であるとしている。
同ロードマップは、現在のレベルの電力供給の信頼性、エネルギー・セキュリティ、経済成長と繁栄を維持あるいは改善しつつ、温暖化ガスを80%削減するための技術的・経済的可能性を調査している。その目的は、今後5年〜10年にかけての「欧州エネルギー・システムのあり方」についての提言である。
報告書は、2050年における年間電力需要は、現在よりも40%増の4兆9000億kWhとしている。この見通しは、現状の対策による成長予測に積極的なエネルギー効率措置を講じることを前提にしている。原子力、炭素回収貯留(CCS)による化石燃料の2つの低炭素電源について、いずれも不可欠ではなく、しかも単独では全電力重要を満たすことはできない。さらに、セキュリティ、供給安定性の観点からエネルギー・ミックスに焦点を当てている。電力輸入、技術上の躍進は考慮していない。ただし、特別な「100%再生可能エネルギー・シナリオ」においては、集中的な太陽発電の輸入(アフリカ)と地熱発電技術の飛躍的進歩を考慮に入れている。
80%削減目標の達成に関して、報告書は、再生可能エネルギーが全電力の40%、60%、あるいは80%を供給する3種類のシナリオについて検討した。いずれのシナリオにおいて、原子力とCCS化石燃料は、残りの電力を等分に供給するとしている。
ECFによると、それらの供給比率は、炭素放出削減のためのすべての可能性を政策決定者に示すために選択された。欧州全体の平均値といっても、個別には幅広いエネルギー・ミックスから構成されることになる。
原子力発電量が比較的多くなる場合、各10年間に平均65基の原子力発電所の新規建設が必要である。ちなみに、1980年代には10年間に94基が建設されたが、最近の過去10年間では3基しか建設されていない。
ECFは、報告書のシナリオは達成可能とした上で、「欧州のリーダーが2050年迄に80%の温暖化ガス排出削減達成に本気であれば、市場の強化や効果的な規制の適応によるエネルギーの再構築が必要であり、その重大な責任はブラッセル及びEU加盟各国政治家の双肩にかかっている」と強調している。
発電に関する劇的な改革のための必要条件は、今後40年間、平均炭素価格がCO2換算で1トン当たり€20〜30($28〜41)で、電力料金は10〜15%増加する。
ECFは80%削減における課題として次の点を指摘している。
a. すべての技術のスケールアップが必要。
b. 恐らくもっとも厳しい課題は、変革について、国境、セクター、政党を超えた、広範かつ積極的な公衆の支持の獲得。
c. 規制、資金、研究開発、及びインフラへの投資・運用のため多国間協力。
d. 電力供給と消費における大規模変革を導入し計画し実践するために優れた人材とエネルギーを引き付けるには、過去数十年間ハイテク部門で行われたと同様に、大変革を求める社会的熱意が必要。
e. 大規模送電網の建設に対する公衆の意識改革など予測される反対運動への対応
下図:「2050年における電力供給(再生可能エネルギー投入のハイケース)」
(2010年10月5日付WNN)
(原産協会・国際部まとめ)