(米国)DOE、原子炉の運転期間60年超へ研究開始
米国には現在、合計104基の原子力発電所が運転中であり、いずれも沸騰水型炉(BWR)か加圧水型炉(PWR)である。これらの設計は水を減速材として利用する軽水炉である。
米国では、原子炉は当初40年間の運転が認可されるが、一回限り20年間の運転更新が可能である。 運転中の米国の原子炉の大部分は20年の更新をすでに受けており、残りも同様の更新を申請する模様である。 更新プロセスの一環として、事業者はプラントの経年化について技術的な考察とそれらの管理についての情報を提出しなければならない。事業者と規制当局は、これらの原子炉について60年を超えて運転することのリスクと利益を認識しているものの、安全性と経済性については、まだ明確に論証されていない。
米エネルギー省(DOE)の軽水炉サステイナビリティ(LWRS)計画は、第2の寿命延長期間における原子炉運転の安全性と経済性を確保するための技術的基盤研究を行うことにより、これらのリスクを明確にしていくというものである。 2月1日に公表された『統合プログラム計画』では、材料の高経年化・劣化、先進軽水炉核燃料、先進計装機器、情報・制御システムを含む、4つの研究開発経路が概説されている。
寿命延長研究に基づく解答を早急に得る必要がある。 米国で最も古い運転中の原子炉は、2009年に40年を経過したあと運転更新しており、2029年には期限切れになる。『統合プログラム計画』によると、60超の寿命延長が行われず、原子力発電所の新規建設がなければ、米国の原子力発電は2030年以降、急激に落ち込み、最大の低カーボン電源を早急に失うことになる。
同研究は、エネルギーと環境セキュリティという米国の長期目標の達成に重点を置いている。現在のところ、安価なガス価格のため、新規原子力発電所への投資にはリスクが伴うが、既存の原子力発電所は十分競争力がありエネルギー・ミックスとして重要な位置づけとなっている。
同研究計画の著者は「現行プラントの運転期間を60年以上に延長し、その生産性の一層の向上を図ることは、2050年までに温室効果ガス排出を1990年レベルの80%に下げるという目標達成のために不可欠である。」と指摘している。
(2012年2月3日付WNN)
(原産協会・国際部まとめ)