高浜発電所1、2号機および美浜発電所3号機の60年運転について

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 新井 史朗

5月12日、関西電力(株)高浜発電所1、2号機および美浜発電所3号機の再稼働に向けた工程が公表された。運転開始から60年までの運転が認められたプラントとして初の再稼働となるもので、運転期間延長プラントの再稼働に理解を示して頂いた地元の皆さまへ感謝の意を表するとともに、再稼働に向けた関係者の努力に敬意を表したい。

原子力発電プラントは、約1年ごとの定期検査に加え、10年ごとに定期安全レビューが行われ、発電所の安全性・信頼性の評価がなされている。また、運転開始から30年時点とそれ以降10年ごとには、安全上重要な機器・構造物の高経年化に関する技術評価の実施が義務づけられており、この評価を基に長期保守管理方針が策定され、高経年化への対応が図られている。さらに新規制基準では、40年を超える運転期間の延長に際して、通常の点検・検査に加え、取り替えが困難な「原子炉容器」、「原子炉格納容器」、「コンクリート構造物」の健全性を確認する特別点検が求められており、これらも踏まえた高経年化技術評価により、延長期間における運転に問題がないことが確認される。

1970年代に運転を開始したこれら3基は、運転開始後40年を迎える前にそれぞれ特別点検および高経年化技術評価が実施され、今後もプラントを健全に維持することが可能であることが確認されている。

世界では、既設炉の健全性を確認したうえでの運転期間の延長が進められている。特に米国では、94基※1の91%にあたる86基がすでに運転開始から60年までの運転延長を認可され(うち4基は80年までの運転認可を取得済み)、46基が40年を超えた運転期間に入っている。

その背景には、原子力発電の安全を担保する技術と知見が確立されていることに加え、原子力発電が有する安価で低炭素な電力を長年にわたり提供してきた確かな実績、天候等に左右されない供給信頼性に対する強い期待が挙げられる。国際エネルギー機関(IEA)などの国際機関も喫緊の課題である二酸化炭素(CO2)の削減には、原子力発電の活用は不可欠であり、既存の原子力発電プラントを40年を超えて運転することは、低炭素電源の中では経済性が最も高いと指摘している。

高浜1、2号機、美浜3号機の稼働により年間約675万トン※2ものCO2排出削減効果を期待できる。これは、関西電力の2019年度CO2排出量3,844万トンの17.6%に相当する量である。関西電力には、安全を最優先に再稼働に向けた取り組みを着実に進めて頂くとともに、再稼働後の運転実績の積み重ね、電力の安定供給、CO2排出量削減への貢献を期待したい。また、地元自治体や地域の皆さまとの丁寧な対話に引き続き努めて頂きたい。

※1 2021年1月1日時点の運転中プラント数。このうちインディアンポイント3号機は2021年4月に閉鎖。また、サリー1、2号機は5月4日に運転開始から80年までの運転期間延長が承認されている。
※2 設備利用率70%(経済産業省 2015年5月の発電コスト検証WG報告書における原子力発電コストの算定方法と諸元)、CO2排出原単位0.444 kg-CO2/kWh(環境省 2019年度の温室効果ガス排出量確報値について)で換算。

以 上

<参考>
◆あくなき安全性の追求 高経年化対策(関西電力)
https://www.kepco.co.jp/energy_supply/energy/nuclear_power/anzenkakuho/koukeinenka.html
◆世界の運転中原子力発電所の運転期間別基数(2021年1月1日現在)(原産協会)
https://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/2021/01/operational_reactors_by_age.pdf
◆国際エネルギー機関(IEA)「クリーンエネルギーシステムにおける原子力発電」エグゼクティブ・サマリー(仮訳)(原産協会)
https://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/2019/07/executive_summary2019.pdf
◆解説:IEA『クリーンエネルギーシステムにおける原子力』2019年(原産協会)
https://www.jaif.or.jp/special-iea
◆IEAとOECD/NEAが発電コスト予測の分析:既存炉の運転期間延長に大きな経済性(原子力産業新聞)
https://www.jaif.or.jp/journal/oversea/5723.html

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