ブリュッセル原子力サミット2024における産業界声明について

一般社団法人日本原子力産業協会

日本原子力産業協会は、現地時間2024年3月21日、ベルギー・ブリュッセルにて開催された原子力サミット(Nuclear Energy Summit 2024)に出席し、カナダ原子力協会、韓国原子力産業協会、米原子力エネルギー協会、欧州原子力産業協会、英国原子力産業協会、世界原子力協会とともに、共同声明を発表しました。

ブリュッセル原子力サミット2024は、史上初の原子力に特化した首脳会議であり、ベルギーのアレクサンダー・ドゥ=クロー首相と国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長が共同議長を務め、これまでにない高いレベルで議論が行われました。

本声明は、脱炭素と持続可能な経済成長を両立するための原子力の活用に対する首脳のコミットメントを歓迎し、これに協力することを表明するとともに、気候変動対策とエネルギー安全保障の目標達成に向けて、産業界がその役割を果たすのに必要な政策の枠組みについて、とりまとめたものです。

当協会は、世界の原子力産業界団体とともに、2023年4月のG7エネルギー・環境大臣会合(於札幌)サイドイベント「国際原子力フォーラム」及び、同年9月の第1回「新しい原子力へのロードマップ」(経済協力開発機構 原子力機関(OECD/NEA)・フランス政府主催(於パリ))の場で、原子力サプライチェーン維持やワークフォース確保のための国際協力について共同声明を発表しました。さらに、昨年12月に開催された国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28、於UAEドバイ)においては、25か国が賛同した「原子力3倍宣言」に呼応する形で、「原子力産業界の誓い」を発出、COP史上初めて原子力に対するポジティブな評価が公式文書に記載されました。

今回の共同声明は、世界の原子力産業団体と連携し、札幌、パリ、ドバイと一貫して、気候変動対策とエネルギー安全保障への原子力の貢献を主張してきた流れをくむもので、ここに提言する政策が実現されれば、原子力産業界は、目標を達成するための人材、能力、設備に投資することが可能となり、原子力技術の可能性を最大限に引き出すことができます。

【共同声明本文】
Nuclear Energy Summit 2024 Industry Statement March 21, 2024 | Brussels, Belgium


【共同声明仮訳】

ブリュッセル原子力サミット2024における産業界声明

我々は、ベルギー首相及びIAEA事務局長による原子力に関する史上初の首脳会議の開催を称賛するとともに、気候変動と闘い、エネルギー安全保障を提供し、持続可能な経済開発を推進するための原子力の開発及び展開に対する各国首脳のコミットメントを歓迎する。我々は、目の前の課題に対処するのに必要な原子力の能力を提供するために、各国政府と協力する用意ができている。

原子力は、次のような特徴を有し、世界のエネルギー需要にかけがえのない貢献をしている。

  • パリ協定の目標を達成するために、電力生産と排出削減が困難な部門の脱炭素化のための、常時稼働する、クリーンで信頼性の高い、手頃な価格のエネルギーである。
  • コンパクトな設置面積でエネルギー密度の高い低炭素電力を実現し、生物の生息地と多様性の損失を低減する。
  • 今後何十年にもわたってクリーンなエネルギー生産を確保する長い資産寿命を有し、重要鉱物の利用を削減する。
  • 経済成長を牽引する質の高い長期雇用を創出する。
  • 地政学的、経済的、社会的課題に対するエネルギー安全保障を提供する。

我々は、2050年までに世界中で原子力エネルギーを3倍にするという政府と産業界の宣言や、グローバル・ストックテイクに初めて原子力エネルギーを含めることを通じて、COP28で原子力エネルギーに対する前例のない支援が示されたことに留意する。この拡大は気候およびエネルギー安全保障の目標を達成するために必要であり、新たなプロジェクト、新たな技術、新たな熟練した労働力への産業全体にわたる多額の投資を必要とする。

世界の原子力産業界は、既存の原子力施設の継続的な運用及び、新たな施設の建設、並びにインフラや関連技術の開発を通じて、これらの目標を支援することに尽力している。

ただし、産業界がこれらの目標を達成するための役割を果たすには、政府は次のことを行う必要がある。

  • 原子力技術の展開を促進する一貫した長期的政策を通じて、適切な条件を確立する。
  • 原子力プロジェクトに利用可能な資金調達と投資回収のメカニズムを、投資家に対して明確に提供する。
  • 原子力開発のための国内および国際的な気候資金メカニズムへの容易なアクセスを確保する。
  • 多国間金融機関が投資ポートフォリオに原子力を含めるようにする。
  • 原子力エネルギーとそれに関連する燃料サイクルが持続可能な投資であると、明確に示す。
  • 拡大目標に見合ったサプライチェーンの発展を促進し、原子力研究への投資を継続する。

強固で持続可能な政策枠組みは、原子力への投資のリスクを軽減し、コストを削減し、展開を加速するための最善の青写真を提供する。

この確実性があれば、原子力産業界は、政府によって示された野心的な目標を実行するために必要な人材、能力、インフラに投資することができる。

産業界は、原子力の安全とセキュリティを確保しつつ、商業的な拡大を通じて原子力エネルギーとイノベーションの可能性を引き出すために政府と緊密に協力し、我々の経済、社会、そして地球のために原子力技術の可能性を最大限に実現する用意がある。

今こそ計画を行動に移し、目の前にある歴史的なチャンスを掴む時である。

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