2023 年度長期脱炭素電源オークションにおける原子力発電の落札について
一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 新井 史朗
電力広域的運営推進機関が実施した2023 年度長期脱炭素電源オークション(以下、当該オークション)※ の結果が2024年4月26日に公表され、蓄電池案件が多数を占める中、原子力では、中国電力株式会社の島根原子力発電所3号機(原子力、137.3 万kW)が落札した。
自由化市場の中、電源投資の課題である長期的な予見可能性を高めることを目的とした当該オークションで、新設の原子力発電ユニットが落札したことは大きな一歩であり、その意義は大きい。
一方で、当該オークション制度に関しては改善の必要も指摘されている。2024年2月20日に行われた第38回原子力小委員会において、新増設のファイナンス、日本の原子力特有のリスク評価、収益性、事業者のみがリスクを負う構造等の課題について有識者から指摘がなされた。また、こうした課題については、当協会からも電力・ガス基本政策小委員会の意見募集に対して、以下を骨子とする意見を提出している。
① 事業者の投資回収の予見性確保の観点からの見直し
② ファイナンスする金融機関の視点からの検証
当協会としては、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、安全確保を大前提として、エネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源である原子力の最大限の活用に向けて、引き続き、情報や意見の発信に努めて参りたい。
※ 長期脱炭素電源オークションは、容量市場の一部と位置付け2024年1月に初回の応札が行われた。制度の適用は原則20年間、適用開始は2027年度以降になり、異種混合電源の競争入札で脱炭素電源400万kWが募集された。落札した事業者には、実需給年度に供給力を提供する電源に対して容量確保契約金額が交付されるが、当該オークション以外からの他市場収益を還付する仕組みが設けられている。当該オークションは、化石燃料を用いた電源から、原子力を含む脱炭素電源に切り替えていくために必要となる投資を対象とした入札制度であり、電源投資の課題である長期的な予見可能性を高めることを目的とし、脱炭素電源の新規投資を促し2050年までにカーボンニュートラルと電力の安定供給の両立を目指す制度である。
<参考>
➢電力広域的運営推進機関『容量市場 長期脱炭素電源オークション約定結果(応札年度:2023年度)の公表について』
https://www.occto.or.jp/market-board/market/oshirase/2024/files/240426_longauction_youryouyakujokekka_kouhyou_ousatsu2023.pdf
➢中国電力株式会社『2023 年度長期脱炭素電源オークションの落札結果について』
https://www.energia.co.jp/assets/press/2024/p20240426-2.pdf
➢経済産業省『第38回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会』資料
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/038.html
➢日本原子力産業協会『第38回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会における新井理事長発言内容』
https://www.jaif.or.jp/mes/message/president_column144_240220
➢日本原子力産業協会『電力システム改革の検証に係る意見提出について』
https://www.jaif.or.jp/pressrelease/president_column145_240221
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