第7次エネルギー基本計画の策定に向けて

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 新井 史朗

経済産業省 資源エネルギー庁は2024年5月15日、総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会を開催し、第7次エネルギー基本計画策定に向けた検討に着手した。エネルギー政策は我が国経済と国民の暮らしの根幹であり、明るい将来に向け丁寧な検討を期待したい。

第6次計画が策定された2021年以降、世界の地政学的情勢は大きく変化し、エネルギーの脱炭素化はもとより、エネルギー安全保障における原子力発電への期待は大きく高まった。英国は2050年までに最大2,400万kWの新規原子力発電所を稼働させるとしており、フランスも6基の新規建設を決め、さらに8基を建設する見通しである。COP28では我が国を含む25か国が、世界の原子力発電設備容量を3倍に増加させる宣言文を支持した。また、我が国でも「GX実現に向けた基本方針」において原子力を最大限活用する方針が示され、「今後の原子力政策の方向性と行動指針」による具体的な取組が進められている。

一方、電力自由化が進展する中、安全確保を大前提として原子力を最大限活用していくに当たって様々な課題が指摘されているところである。

当協会は、次期計画が、電力市場のプレーヤーに対し、原子力の最大限活用の方針を踏まえた明確なメッセージを届けるものとなることを期待し、以下の点が前向きに検討されることを要望する。

1. 既設炉の最大限の活用

  • 既設炉の早期再稼働、長期サイクル運転の導入、運転中保全の導入拡大、既設炉の出力向上等、官民をあげた最大限の活用の推進。

2. 原子力サプライチェーン維持・強化

  • 原子力サプライチェーン企業が設備や人材確保・育成への適切な投資を実施するためには長期的見通しが必要。電力のみならず工業利用なども含めエネルギー全般の脱炭素化に対し貢献できるという原子力の特性や、IT需要等により今後増加すると見込まれる電力需要を支えるベースロード電源としての原子力への期待を踏まえた長期的な原子力発電の必要容量と時間軸の明記。

3. 適切な時期に投資判断を可能とするための事業環境整備

  • 投資・回収面、および資金調達における課題への対処
     電力システム改革の進展に伴い、著しく低下した原子力発電の事業予見性を向上させ、
     事業者・投資家が投資意欲を持てるような事業環境整備。
  • 国際的に調和した効率的な規制
     安全性の確保を大前提とした、既設炉の最大限活用や新設・リプレースを
     早期に可能とする効率的な安全審査に向けた検討。
  • 原子力損害賠償制度の在り方の検討

4. 国民理解(原子力の価値の共有)

  • 環境適合性はもとより、我が国のエネルギー安全保障や、エネルギー供給における自己決定力の確保、経済成長及び産業競争力に貢献する原子力の価値の国民との共有。

<参考>

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