[JAIF] 躍進するアジアの原子力

インド共和国

2010年1月27日現在

目次

Y.インドの原子力開発年表

図表29:インドの原子力開発年表 (Y-1)
年 月 事 項
1945年 ボンベイに原子力研究を行うタタ基礎研究所設立。H.J.バーバ博士が所長に就任
1947年8月 英国領インドがインドとパキスタンに分離独立
1948年4月 原子力法制定
1948年8月 資源学術研究省の下に原子力委員会設置。委員長はバーバ博士
1950年1月 インド憲法発布
1951年 金属ベリリウム、酸化ベリリウムの使用技術協力でフランスと協定調印
1954年 ネルー政権下で、首相直属の原子力省(DAE)設立。長官はバーバ博士
1954年1月 タタ基礎研究所の原子力部門をボンベイ郊外トロンベイに移転、トロンベイ原 子力エネルギー研究施設(AEET)として独立させた
1955年12月 英印原子力協定締結(インドの研究炉APSARAに濃縮ウラン提供)
1956年 米国Vitro International社と重水製造の調査契約締結
1956年 4月 カナダ、インド研究用重水炉設置に関する協定締結
1956年8月4日 アジア最初の研究炉APSARA(1MWスイミングプール型軽水炉)臨界
1957年7月16日 IAEAに加盟
1958年 原子力委員会(AEC)、諮問的機関から、政策立案・行政執行機関に改組(爾来AEC委員長とDAE長官が兼務)。初代委員長にバーバ博士就任
1959年 3月 西ドイツのリンデ社、ナンガル水力発電計画の一環として重水工場建設を受注
1959年 7月 原子炉用重水リースに関する協定を米国と締結
1960年 7月10日 研究炉CIRUS(カナダ供給天然ウラン重水炉、40MW)臨界
1961年4月 プルトニウム抽出を目的とする「プルトニウム・プラント」をBARCで建設開始。完成は1964年で、研究炉CIRUSの使用済燃料を30d/年で再処理
1961年 カナダ原子力公社(AECL)とインドDAE、インドにCANDU炉を建設するためのコスト算定実施
1961年1月1日 インド国産炉ZERLINA(1kW天然ウラン重水炉)臨界
1961年10月 タラプール発電炉建設に対し米国、英国、フランス、カナダから7社入札
1961年11月 インド・ソ連原子力協力協定(天然ウラン炉、プルトニウム増殖炉、トリウムーウラン233サイクル)締結
1962年 スウェーデンと原子力協力協定締結
インド新原子力法制定
1963年6月22日 タラプール原子力発電所1・2号機をGEに発注
1963年 8月 デンマークと原子力協力協定締結
1963年11月 米印原子力協力協定締結(タラプール原子力発電所建設のため)
1963年12月 カナダとラジャスタン原子力発電所(RAPS)建設に関する協定締結
1964年 バーバ原子力研究センターで。インド最初の再処理プラント完成
1964年4月 米印資金援助協定調印(タラプール原発(TAPS)への3.81億ルピーの資金援助)
1965年 ベルギーと原子力協定締結
米国とタラプールの濃縮ウラン供給契約に調印
1965年1月 カナダ、RAPS-1号機(CANDU-PHWR。22万kW)に対する3,700万ドルの資金援助協定に調印(1964年という説もある)
1966年1月 バーバ原子力委員長航空機事故で死亡
1966年12月 RAPS-2号建設契約をカナダと締結
1967年 カナダ、RAPS-2号機(CANDU-PHWR。22万kW)に対する3,850万ドルの資金援助協定調印
1967年1月 トロンベィのAEETがバーバ原子力研究センター(BARC)に改称
1967年2月 米印プルトニウム供与協定調印
1969年 フランスと高速炉計画協力協定調印
1969年4月 ソ連と専門家交流に関する協定調印(1968年という説もある))
1969年11月 フランスとバローダ重水プラント(100トン/年)輸入契約締結
*フランスは、5,000万フランの資金援助も約束
GE製TAPS-1・2号機、定格出力に到達
1971年 放射線防護規則制定
マドラス(MAPS。カルパッカムとも)2号機(22万kW,CANDU炉)建設決定。2,000万ドルのカナダ製部品の輸入を予定
1971年1月 米国・インド・IAEA保障措置協定締結
1971年10月 西ドイツと原子力協定締結(有効期間5年間)
1971年11月 フランスに重水プラント2基発注
1972年 インド、アジア原子力地域協力協定(RCA)に加盟
ナロ-ラに22万kWのCANDU型原発(NAPS)建設決定
1972年5月1日 PURNIMA炉(酸化プルトニウムを燃料とするゼロ出力国産研究炉)臨界
1973年 インドNPT加盟拒否のためカナダはインドと協力停止
1973年12月16日 RAPP-1号機運開
1974年5月 インド、ラジャスタン州のポカラン実験場で、「平和目的の核爆発」実施。
カナダ、原子力協定停止を声明
1976年 5月 カナダ、インドとの原子力協力協定を恒久的に停止すると発表
1977年12月 ソ連と重水供給協定調印(RAPPー2号機用)
1978年4月 米国、インドへの濃縮ウラン輸出を許可
1978年6月 米国、インドに対し保障措置の受入要求
1979年1月 印ソ改訂原子力協定締結
1980年 5月 米国、インドに濃縮ウラン輸出を許可
1980年11月 RAPP-2号機運開
1981年 レーガン政権, インドへの濃縮ウラン出荷で憂慮を表明
1981年4月 インドが使用済燃料再処理の意向を表明したことから、米国が協力
協定破棄を表明
1981年7月 インドに対する核燃料供給をめぐり米印交渉再開
1982年11月 TAPS原発2基分の濃縮ウラン燃料供給について仏印協定締結
1983年3月 フランスCOGEMAとTAPS用濃縮ウラン供給について商業契約締結
1983年5月 COGEMA、TAPS向濃縮ウラン10トン供給
1983年7月2日 MAPP-1(CANDU-PHWR 22万kW)臨界。運転開始は1984年1月27日
1983年11月 原子力規制委員会(AERB)設置
1984年3月 FBTR用のプルトニウム-ウラン混合炭化燃料トロンベイで完成
1984年5月 U-233燃料を装荷したプルニマU臨界
1985年 4月 TAPSの廃棄物固化プラント完成
1985年 8月 重水減速重水冷却ドルーバ研究炉臨界
1985年10月 混合炭化燃料を装荷した高速増殖実験炉(FBTR)臨界。運転開始は1997年7月
1986年 3月 MAPS-2号機(CANDU。22万kW)運転開始
1988年1月28日 「原子力事故早期通報条約」と「原子力事故または放射線緊急事態における援助条約」を批准
1989年7月 NAPS-1号機(PHWR。23.5万kW)運転開始
1990年11月 U-233-Al板状燃料を装荷したプルニマV臨界
1991年 NAPS-2(PHWR。22万kW)運転開始
1993年5月 カクラパール-1号機(PHWR。22万kW)運転開始
1995年 9月 カクラパールー2号機(PHWR。22万kW)運転開始
1996年10月 インド原子力産業会議(IAIF)設立
1996年10月29日 U-233(濃縮度20%)を燃料とする研究炉KAMINI初臨界
1998年5月11〜13日 国家の安全保障のため、第2回目の核実験をポカラン実験場で実施(爆発回数は計5回)
1998年5月28日、30日 パキスタンが、チャガイで初の原爆実験
2002年4月11日 インドの核物質防護条約加盟が発効
2004年1月12日 米国が、「戦略的パートナーシップにおける次のステップ」構想で、インドに対話拡大を提案(この中に原子力民生利用協力を含んだ)
2004年10月24日 高速増殖炉原型炉(PFBR。50万kW)着工
2005年3月16日 米国ライス国務長官の訪印時に、インドのシン外相と原子力協力について協議
2005年3月31日 原子力安全条約を批准
2005年4月19日 米国ブッシュ大統領、CNBCテレビのインタービューでインドに原発開発を要望
2005年5月 米印両国で「エネルギー対話」枠組み設立で合意
2005年7月18日 訪米中のシン首相とブッシュ大統領が共同声明で、原子力協力を約束
2007年9月19日 インドが核物質防護条約改定条約を批准
2007年11月 IAEAとインド政府が新しい保障措置協定の交渉を開始
2008年8月1日 IAEA理事会で対印保障措置協定案を承認
2008年9月4〜6日 原子力供給国グループ(NSG)の臨時総会で、インドに対する「例外規定扱い」を承認
2008年10月8日 米国議会が、米印原子力協力協定を承認
2008年10月10日 米印原子力協力協定が発効
2008年12月17日 仏AREVAと印原子力省(DAE)が核燃料供給契約に調印
2009年5月15日 IAEAの追加議定書に署名
009年11月 シン内閣で原子力損害賠償を承認。近く国会に上程の予定
<注記>

(I-6) 出典:2009年4月14日第42回原産年次大会でのインド原子力発電公社(NPCIL)のシブ・アビラシュ・バルドワジ理事の発表「成長を続けるインドのエネルギー政策と原子力発電」

(U-1) 出典:NPCILのHP
(Y-1) (社)日本原子力産業会議(現(社)日本原子力産業協会)の1983年4月刊行の「原子力調査時報No.47」と、同会議の2002年3月刊行の「アジア諸国原子力情報ハンドブック」等をまとめ直した。

(参考ー1)インドの原子力発電所の稼動状況

  1. インドの代表的な原子力発電プラントの連続運転日数(I-6)
    ・カクラパール原子力発電所-1号機:372日間
    ・ラジャスタン原子力発電所-4号機:373日間
    ・カイガー原子力発電所-1号機 :487日間
    ・カイガー原子力発電所-2号機 :529日間
  2. インド原子力発電公社(NPCIL)の原子力発電所の時間稼働率(I-6)
  3. 図表30:NPCILの全原子力発電プラントの時間稼働率の推移
    (単位:%)
    1999年度 2000年度 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度

    84

    84

    86

    89

    91

    88

    89

    85

    85

  4. 個別原子力発電プラントの発電状況
  5. 図表31:インドの原子力発電所の稼動状況表(U-1)(2009年12月22日現在)
    (注:エネルギー単位のMU=MWh)
    発電所名/
    炉型/容量
    (万kW)
    営業運転
    (年/月/日)
    2009年11月までの
    累積発電量
    (単位:MU)
    2009年度の
    期間別の発電量と
    設備利用率
    発電量(E)、
    設備利用率(C)と
    時間稼働率(A)の推移
    (1)2004年度
    (2)2005年度
    (3)2006年度
    (4)2007年度
    カイガ-1/
    PHWR/
    22.0

    2000/11/16

    12,160
    2009年4-10月:
    687 MUで53%
    E:(1)1,515MU,(2)1,281 MU,(3)1,328 MU,(4)1,050 MU
    C:(1)79%,(2)66%,(3) 69%,(4)54%
    A:(1) 95%,(2)89%,(3)97%,(4)83%
    2009年11月:
    0 MUで0%
    カイガ-2/
    PHWR/
    22.0

    2000/03/16

    13,225
    2009年4-10月:
    764 MUで59%
    E:(1)1,411 MU,(2)1,578 MU,(3)1,212 MU,(4)1,036 MU
    C:(1)73%,(2)82%,(3)63%,(4)54%
    A:(1)87%,(2)97%,(3)89%,(4)87%
    2009年11月:
    95 MUで60%
    カイガ-3/
    PHWR/
    22.0

    2007/05/06

    1,577
    2009年4-10月:
    740 MUで57%
    2009年11月:
    111 MUで70%
    カクラパール-1/PHWR/
    22.0

    1993/05/06

    19,358

    2009年4-10月:
    0 MUで0%
    E:(1)1,250 MU,(2)1,054 MU,(3)1,296 MU,(4)904 MU C:(1)65%,(2)55%,(3)67%,(4)47% A:(1)86%,(2)78%,(3)95%,(4)78%
    2009年11月:
    0MUで0%
    カクラパール-2/PHWR/
    22.0

    1995/09/01

    20,341
    2009年4-10月:
    721 MUで56%

    E:(1)1,263MU,(2)1,313 MU,(3)1,150 MU,(4)1,126 MU C:(1)66%,(2)68%,(3)60%,(4)58% A:(1)82%,(2)87%,(3)84%,(4)97%

    2009年11月:
    74 MUで47%
    マドラス-1/
    PHWR/
    22.0

    1984/01/27

    23,441
    2009年4-10月:
    621 MUで48%
    E:(1)0 MU、(2)299 MU,(3)1,382 MU,(4)7300 MU C:(1)0%,(2)79%,(3)72%,(4)38% A:(1)0%,(2)88%,(3)95%,(4)68%
    2009年11月:
    0 MUで0%
    マドラス-2/
    PHWR/
    22.0

    1986/03/21

    24,026
    2009年4-10月:
    764 MUで59%
    E:(1)1,482 MU,(2)1,553 MU,(3)1,340 MU,(4)1,019 MU C:(1)77%,(2)81%,(3)64%,(4)53% A:(1)90%,(2)95%,(3)91%,(4)97%
    2009年11月:
    94 MUで60%
    ナローラ-1/
    PHWR/
    22.0

    1991/01/01

    19,493
    2009年4-10月:
    553 MUで43%
    E:(1)1,237 MU,(2)807 MU,(3)0 MU,(4)830 MU C:(1)64%,(2)71%,(3)0%,(4)45% A:(1)77%,(2)94%,(3)0%,(4)93%
    2009年11月:
    8 MUで5%
    ナローラ-2/
    PHWR/
    22.0

    1992/07/01

    20,140
    2009年4-10月:
    0 MUで0%
    E:(1)1,523 MU,(2)1,332 MU,(3)10248 MU,(4)591 MU C:(1)79%,(2)69%,(3)53%,(4)43% A:(1)96%,(2)90%,(3)70%,(4)76%
    2009年11月:
    0 MUで0%
    ラジャスタン-1/PHWR/
    22.0

    1973/12/16

    11,826
    2009年4-10月:
    0 MUで0%
    E:(1)303 MU、(2)0 MU,(3)0 MU,(4)0 MU C:(1)23%,(2)0%,(3)0%,(4)0% A:(1)35%,(2)0%,(3)0%,(4)0%
    2009年11月:
    0 MUで0%
    ラジャスタン-2/PHWR/
    22.0

    1981/04/01

    28,102
    2009年4-10月:
    370 MUで85%
    E:(1)1,321MU,(2)1,401 MU,(3)1,202 MU,(4)3,270 MU C:(1)75%,(2)80%,(3)69%,(4)73% A:(1)79%,(2)89%,(3)81%,(4)89%
    2009年11月:
    108 MUで75%
    ラジャスタン-3 /PHWR/
    22.0

    2000/06/01

    13,372
    2009年4-10月:
    841 MUで65%
    2009年11月:
    113 MUで71%
    ラジャスタン-4 /PHWR/
    22.0
    2000/12/23
    12,694
    2009年4-10月:
    704 MUで55%
    2009年11月:
    113 MUで71%
    ラジャスタン-5/PHWR/
    22.0

    2009/12/22

    タラプール-1/BWR/
    16.9

    1969/10/28

    39,284
    2009年4-10月:
    927 MUで99%
    E:(1)1,276 MU,(2)821 MU,(3)1,232 MU,(4)1,312 MU C:(1)91%,(2)94%,(3)88%,(4)93% A:(1)93%,(2)97%,(3)89%,(4)96%
    2009年11月:
    117 MUで102%
    タラプール-2/ BWR/
    16.9
    39,559
    2009年4-10月:
    776MUで83%
    E:(1)1,311MU、(2)836MU,(3)1,372MU,(4)1,239MU C:(1)94%,(2)96%,(3)98%,(4)88% A:(1)95%,(2)100%,(3)97%, (4)89%
    2009年11月:
    116MUで101%
    タラプール-3/PHWR/
    54.0

    2006/08/18

    8,147
    2009年4-10月:
    1,833 MUで58%
    2009年11月:
    261 MUで67%
    タラプール-4/ PHWR/
    54.0

    2005/09/12

    9,749
    2009年4-10月:
    1,769MUで56%
    2009年11月:
    194MUで50%
    運転中合計(18基) 434.0万kW

(参考ー2)インドの原子力発電所の建設期間(I-6)

図表32:各国の原子力発電プラントの建設期間*の比較
*コンクリート打設から営業運転での電力網併入まで

(参考-3)インドの原子力発電所の保守作業スケジュール予定

インドでは、原子力発電に関する情報公開が進んでいる。図表31は、原子力発電所の2009年〜2010年の保守作業計画だが、予定日が早くから公表されている。

図表33:インドの原子力発電プラントの保守作業計画(参考-1)
原子力発電
プラント名
保守作業予定日 備考
開始予定日 終了予定日 作業日数
カイガ-1 2009年8月1日 2009年9月15日 46日 半年ごとの停止
カイガ-2



カイガ-3



カクラパール-1 2009年8月1日 2009年9月15日 46日 同時に冷却系も交換
カクラパール-2



マドラス-1



マドラス-2 2009年10月1日 2009年10月31日 31日 半年ごとの停止
ナローラ-1 2010年2月1日 2010年3月15日 43日 半年ごとの停止
ナローラ-2 2009年4月1日 2009年9月30日 183日 同時に冷却系も交換
ラジャスタン-1



ラジャスタン-2



ラジャスタン-3



ラジャスタン-4 2009年4月1日 2009年5月15日 45日 半年ごとの停止
タラプール-1



タラプール-2 2009年6月1日 2009年6月30日 30日 RSD(燃料交換停止)
タラプール-3



タラプール-4 2009年7日1日 2009年8月15日 46日 半年ごとの停止
カイガ-4



クダンクラム-1



クダンクラム-2



ラジャスタン-5



ラジャスタン-6



出典:インド中央電力庁(CEA)

注:NPCILのホームページでは、建設中の原子力発電プラントの掘削工事、コンクリート打設、主格納容器壁の建設、タービン棟の建設、非常時電源・管理棟建設、メイン・コントロール・ルームの建設、ポーラー・クレーンの起動、外部格納ドームの建設、NSSSの装置・配管の起動、等詳細な工程管理予定や実績が掲載されており、インドの原子力産業界の自信と活動の透明性がわかる。

以上

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