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加NBパワー社 SMRのサイト準備許可を申請
カナダ・ニューブランズウィック(NB)州の州営電力であるNBパワー社は6月30日、州内のポイントルプロー原子力発電所内で米ARCクリーン・テクノロジー(ARC)社製の小型モジュール炉(SMR)「ARC-100」を建設するため、ARC社のカナダ法人と協同で「サイト準備許可(LTPS)」の申請書をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に提出した。2030年頃に送電開始し、60年にわたって運転していく計画だ。LTPSの申請は、原子炉の建設と運転に向けたプロジェクトが正式に始動したことを意味している。CNSCはすでに2019年3月、SMR開発プロジェクトとしては初のLTPS申請書をグローバル・ファースト・パワー(GFP)社から受領しており、今回が2例目。GFP社はオンタリオ州のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社と米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)が設立した合弁事業体で、同州内のAECLチョークリバー研究所でUSNC社製SMR「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」を建設する。ARC社が開発中の「ARC-100」(電気出力10万~15万kW)は第4世代の先進的SMRで、ナトリウム冷却・プール型の高速中性子炉。同炉の技術は、米エネルギー省(DOE)傘下のアルゴンヌ国立研究所で30年以上運転された「実験増殖炉Ⅱ(EBR-Ⅱ)」で実証済みだ。NBパワー社は最近公表した戦略計画の中で、州内のエネルギー供給を保証しつつ2030年までに石炭火力発電所を全廃する必要があると指摘しており、2035年までに同州のCO2排出量を実質ゼロにすることを目指している。SMRの導入はこれらの目標達成に向けた重要な解決策の一つと考えられている。NB州政府とNBパワー社は2018年7月に、第4世代のSMR実証炉をポイントルプロー発電所内で2種類建設するプロジェクトを開始した。世界水準のSMRの開発と製造で同州がリーダー的立場を確立するため、約90件のSMR申請の中からARC社の「ARC-100」と英モルテックス・エナジー社が開発中の「燃料ピン型溶融塩炉(SSR-W)」を選定。NB社が技術面の作業をサポートしながら、これらの実証炉を2030年頃までに建設すると発表しており、この2件の第4世代SMRの建設計画は、NB州などカナダの4州が2022年3月に公表した「SMR開発・建設の共同戦略計画」の中では、3つの開発方向性(ストリーム)における「ストリーム2」に分類されている。「ARC-100」についてはこのほか、NB州北部のベルドゥーン港湾管理局(BPA)がグリーン・エネルギー・ハブとなることを目指して導入を計画中。アルバータ州でも、外国投資誘致機関のインベスト・アルバータ社(IAC)が今年3月に、州内での建設と商業化に向けてARC社のカナダ法人と覚書を締結している。(参照資料:ARCクリーン・テクノロジー社、CSNCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 05 Jul 2023
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米国とカナダ SMR等の使用済燃料管理で協力強化
米エネルギー省(DOE)とカナダの核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は5月16日、小型モジュール炉(SMR)から出る使用済燃料も含め、その安全な管理で両者間の協力を強化するため、協力の主旨を記した文書(SOI)に調印した。両国はともに、原子力発電所の使用済燃料を再処理せず直接処分する方針であり、同SOIを通じて、地元の合意に基づく処分場の立地プロセスや科学技術プログラムに関する情報を交換、技術調査も共同で実施する。また、人材の交流や相互訪問プログラムの基盤作りを行って、双方の実地体験で得られたノウハウを共有していく方針だ。カナダでは2010年からNWMOが最終処分場のサイト選定プロセスを開始しており、受け入れに関心を表明した22地点を2019年末までに2地点まで絞り込んだ。2024年の後半に、最終処分場サイトを選定する計画だ。両国による今回のSOI調印は、米ワシントンDCにあるカナダ大使館で、DOEのK.ハフ原子力担当次官補とNWMOのL.スワミ理事長兼CEOが行った。米国のJ.バイデン大統領が今年3月にカナダを公式訪問した際、両国がともに安全・確実なエネルギー供給システムの構築というビジョンを共有していることから、DOEとカナダ連邦政府の天然資源省(NRCan)は原子力関係の協力を強化していくことを確認した。その際発表した共同声明で、両国は原子力協力を通じてCO2排出量を実質ゼロ化し、クリーン・エネルギー社会に移行していくと宣言。また、ロシアのウクライナへの軍事侵攻や気候変動の影響により、エネルギーを巡る世界情勢は根本的に変化しており、同じ考えを持つ同盟国同士が今以上に連携を強める必要があるとした。原子力は信頼性の高い低炭素エネルギーとして安価に供給が可能。米加両国はSMRも含めた先進的原子力技術こそ、CO2を排出せずに世界中の経済成長に貢献し、エネルギー供給を保証する機会になると考えている。このような技術を牽引する主導国として、両国はこれらの技術が核不拡散を順守しつつ、世界中で安全・確実に採用されていくよう保証する責任を負っている。また、地元の合意に基づいた放射性廃棄物の長期的な管理も両国に共通するビジョンの一部であり、原子力への支持や信頼を勝ち取るための基盤でもある。このため、米加両国は原子力発電所の安全確保や核不拡散等で最も厳しい基準を順守しつつ、世界中で先進的原子力技術の利用を促していくため、緊密に連携しながら新興市場に進出したいとしている。NWMOのL.スワミ理事長兼CEOは、「20年以上にわたりNWMOは受け入れ候補の自治体らと協議を重ね、使用済燃料を安全かつ長期的に管理するための革新的技術を研究開発してきた」と指摘。このような技術を、米国のような国際パートナーと共有することを切望すると述べた。DOEのK.ハフ原子力担当次官補は、「米国は現在、合意ベースの立地プロセスを策定中なので、一層確実なアプローチの構築に向けて、カナダのノウハウも含め様々な観点から情報を得たい」と表明している。(参照資料:NWMOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 22 May 2023
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米EPRIとNEI 先進的原子炉の建設ロードマップを公表
米国の非営利エネルギー研究組織である電力研究所(EPRI)と原子力エネルギー協会(NEI)は5月16日、世界がクリーン・エネルギー社会に向けて移行するなか、市場の需要に合わせて先進的原子炉の建設を円滑に進めるための重要戦略と支援アクション、実行可能な道筋を示した「Advanced Reactor Roadmap」を共同発表した。第一段階として、今回は北米地域(米国とカナダ)を対象にしており、先進的原子炉の潜在的価値をフルに発揮する上で、産業界が取るべきアプローチを3つ勧告しているほか、先進的原子炉の大規模建設に必要な7つの条件と45の具体的アクションを提示。今後は世界のその他の地域を対象に、同様のロードマップを作成していく方針だ。今回のロードマップは、NEIが会員企業やその他の原子力関係者らを招いて毎年開催している「Nuclear Energy Assembly」で明らかにされた。EPRIとNEIによると、米国とカナダの両国で発電や輸送、工業加熱といった部門を脱炭素化するには、既存の原子炉と先進的原子炉が重要な役割を果たすとの認識が広がっている。EPRIや米エネルギー省(DOE)が最近実施した調査では、原子力も含めコスト面の競争力を持つクリーン・エネルギー源が市場で大きな強みを発揮するとの結論が出ており、原子力産業界は市場の需要に合わせて原子力の活用に向けたアクションを取り始めている。具体的には既存炉の運転継続と先進的原子炉の商業化であり、無炭素な発電オプションとして2050年までに6,000万kW~4億kWの先進的原子炉が必要ともいわれている。今回のロードマップは、先進的原子炉の潜在的な顧客や関係する政策の立案者、規制当局、金融機関、産業界を含むその他の幅広い関係者を対象としたもの。これらの原子炉が持つ価値を発揮するには、以下のアプローチが重要になると指摘している。すなわち、①建設上の課題が少ない等、市場のニーズに即した炉型を商業化する、②同じく市場や顧客の様々なニーズに合わせて、複数の先進的原子炉の製品リストを確立する、③脱炭素化に向けた節目の目標に合せて、これらの確実な商業化やコスト面の有効性を保証する、である。同ロードマップはまた、先進的原子炉を大規模に建設していく上で、産業界が政策面や規制面、社会的受容性の面で必要とする条件を説明。まず、これらの初号機の建設プロジェクトを成功裏に進めるには、連邦政府や関係する州政府などが講じた財政支援や優遇税制等の措置が重要だとしたほか、後続計画が速やかに続くよう産業界がリスク軽減のために開発中の枠組みについても触れている。また、規制当局は革新的な技術を用いた複数の先進的原子炉の規制審査を、円滑に進めねばならないとしている。先進的原子炉を市場に出すために、産業界で必要とされる具体的アクションとしては、同ロードマップは「許認可手続き」や「環境影響と立地」、「サプライチェーン」、「建設と運転」、「プロジェクト管理」、「労働力開発」などの項目別に、細かな戦略的優先事項を提示。濃縮ウランの安定供給を確保するため政府と協議することや、これらの炉型がタイムリーかつ効率的に審査・承認されるよう規制当局に働きかけること、初号機建設プロジェクトの実施準備を確実に進めることなどを挙げている。今回のロードマップについて、EPRIのN.ウィルムシャースト上席副理事長は、「先進的原子炉は社会にとって不可欠なエネルギーを生産しつつ、CO2排出量の削減を可能にするオプションの一つ。今回のロードマップを通じて、当研究所は脱炭素化という世界的な目標の達成に有効な、原子力の重要な役割を促進するためのアクションを提案している」と述べた。NEIのD.トゥルー上席副理事長は、「エネルギーの生産システムに原子力を大々的に組み込まねばならないとのコンセンサスが米加両国で高まっている」と指摘。「先進的原子炉の大規模建設を成功に導く条件の中で、産業界のみならず連邦政府などその他の関係者にも、それぞれの役割があることが明確になった」としている。(参照資料:EPRIの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 May 2023
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GFP社 MMR立地点としてチョークリバー研究所の駐車場を選定
カナダ原子力公社(AECL)とカナダ原子力研究所(CNL)、およびエネルギー・プロジェクト企業のグローバル・ファースト・パワー(GFP)社は5月12日、ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)が開発した「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」実証炉の立地点として、AECLチョークリバー研究所のスタッフ用駐車場を選定したと発表した。同駐車場はMMR立地用に再整備される予定で、GFP社は研究所構内で提供されている電力や水などのインフラを引き続き活用できると強調。今後、規制上の要件確認などの手続きを経る必要があるが、CNLのJ.マクブリアティ理事長兼CEOは、「原子力関係の様々な最新技術に活力を吹き込んできたチョークリバーで、この地点を選択したことは歴史に刻まれる」と指摘している。USNC社のMMRは、熱出力1.5万kWで電気出力は約0.5万kW。第4世代の小型モジュール式高温ガス炉(HTGR)で、シリコン・カーバイドで層状に被覆されたウラン燃料粒子を燃料に用いる。20年の運転期間中に燃料交換する必要がなく、いかなる事故シナリオにおいても物理的な対応なしですべての熱が受動的に環境中に放出されるという。チョークリバー研究所はオンタリオ州に位置しており、AECLの委託を受けCNLが管理・運営している。CNLは2017年4月に公表した今後10年間の「長期戦略」のなかで、2026年までにチョークリバーでSMR実証炉を建設するという意欲的な目標を設定。2018年4月には「CNL管理サイトにおけるSMR実証炉の建設・運転提案」を募集し、GFP社を含む4社の提案を選定した。CNLはまた、SMR開発を支援するコスト分担方式の「カナダ原子力研究開発イニシアチブ(CNRI)」を2019年に組織し、同年11月にUSNC社を初回の支援対象の一つに選定している。GFP社は、オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社とUSNC社が設立した合弁事業体。同社は2019年4月、チョークリバーでのMMR建設に向けて、SMR開発プロジェクトとしては初めて、カナダ原子力安全委員会(CNSC)に「サイト準備許可(LTPS)」を申請した。チョークリバーでのMMR建設は、基幹送電網に接続できない遠隔地域や、鉱山など産業サイトへの電力供給で将来的な適用モデルとなる予定。CO2を排出せずにクリーン・エネルギーを生産できるというMMRの特長は、化石燃料発電所の代替を含む地球温暖化の防止でも有効と考えられている。今回の発表にともない、AECLとCNL、およびGFP社は、カナダのクリーン・エネルギー実証プロジェクトが新たな段階に進んだことを記念する式典を5月11日に開催。AECLのA. ゴットシュリング副総裁やCNLのJ.マクブリアティ理事長兼CEO、GFP社のJ.ディニング社長兼CEOが地元の議員や産業界幹部らとともに参加した。GFP社のJ.ディニング社長兼CEOは、「チョークリバー研究所の主要構内全体から今回の地点を選定したので、先進的MMRの優れた適性を実証できる」と表明。遠隔地や産業サイトの脱炭素化でMMRが果たす重要な資質を明確に表していると指摘した。(参照資料:CNL、AECLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 16 May 2023
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加アルバータ州 SMR建設に向けKAERIと協力覚書
カナダのアルバータ州政府と韓国原子力研究院(KAERI)はこのほど、KAERIが設計した小型モジュール炉(SMR)「SMART」など韓国製SMRの同州内での建設に向けて、包括的な協力の枠組となる了解覚書を締結した。同州は天然資源が豊富なカナダの中でも特に、石油や天然ガスなどの資源に恵まれており、今後はSMRが生み出す無炭素な電力や熱を活用して、オイルサンドからの燃料抽出や化学製品の製造、鉱業、海水脱塩など、州内の様々な産業を脱炭素化していく。「SMART」炉以外のSMRについても、アルバータ州はすでに導入に向けた覚書を内外の複数企業と締結済み。それらは主に第4世代の先進的SMRで、テレストリアル・エナジー社が開発した小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)や、米X-エナジー社の小型ペブルベッド型高温ガス炉「Xe-100」、米ARCクリーン・テクノロジー社のナトリウム冷却・プール型高速中性子炉「ARC-100」などである。今回の覚書に関しては、アルバータ州のB.ジーン雇用・経済・北部開発相とR.ソーニー貿易・移民・多文化主義相が4月18日(カナダ時間)、KAERIのジュ・ハンギュ院長とオンラインで署名した。今後は、同州内でSMR建設の可能性を見極めるため、連邦政府と州政府が適用する規制要件や産業界の関係プログラムなどに集中し、共同で取り組む。アルバータ州は2021年4月、カナダのオンタリオ州とニューブランズウィック州、およびサスカチュワン州が2019年12月に締結した「多目的SMR開発・建設のための協力覚書」に参加。2022年3月には、これら4州でSMRの開発と建設に向けた「共同戦略計画」を策定しており、アルバータ州の当時の首相は、同年8月からこの戦略計画に基づく活動を開始している。アルバータ州政府の発表によると、KAERIとの今回の覚書締結は、その後両者がSMRなどクリーンエネルギー関係の協力について重ねた協議に基づいている。今年3月には、ジーン雇用・経済・北部開発相とソーニー貿易・移民・多文化主義相を含む州政府の貿易使節団が韓国を訪問し、韓国政府と傘下のエネルギー機関、エンジニアリング関係のトップ企業の代表者らと会談。KAERIの研究施設も視察している。「SMART」炉は海水脱塩と熱電併給が可能なシステム一体型モジュラーPWRで、熱出力と電気出力はそれぞれ、33万kWと10万kW。同炉の建設についてはサウジアラビアが検討中で、同国と韓国の両政府は2015年に同炉の建設前設計協力契約を締結した。2023年1月に両国はこの協定を改定し、同設計でサウジアラビアの標準設計認可を取得するため、新たに共同推進協約を締結している。KAERIのジュ院長は、「CO2排出量の実質ゼロ化という目標を今こそ実行すべきであり、SMRはそのための重要技術だ」とコメント。アルバータ州で「SMART」炉を建設すれば、地球温暖化との闘いで先駆者的役割を果たすと強調している。(参照資料:アルバータ州政府、KAERIの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 01 May 2023
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カナダの2州がSMR建設で協力
カナダのニューブランズウィック(NB)州とサスカチュワン(SK)州の両政府は4月17日、両州で第4世代小型モジュール炉(SMR)の建設を念頭に置いた協力の強化で合意し、了解覚書を締結した。この覚書は、両州およびオンタリオ州がカナダ国内におけるSMRの開発と建設に向けて、2019年12月に交わした「協力覚書」に基づくもの。同覚書には2021年4月にアルバータ州も参加し、2022年3月には4州で「SMR開発・建設の共同戦略計画」を策定している。今回の覚書により、双方の州営電力であるNBパワー社とサスクパワー社は、SMRの建設計画や関係するサプライチェーンと雇用環境の構築、規制等に関する知見や経験を共有する。具体的には、NB州が州内の複数地点で建設を計画している米ARCクリーン・テクノロジー社製の第4世代SMR「ARC-100」(電気出力10万kW)を、SK州にも建設する方向での協力になる。SK州はすでに2022年6月、2030年代半ばまでに州内で建設する最初のSMRとして、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の「BWRX-300」(電気出力30万kW)を選定した。同炉については、オンタリオ州営電力のオンタリオ・パワー・ジェネレーション社がそれよりも先に2021年12月、州内のダーリントン原子力発電所内で、早ければ2028年初頭までに完成させるSMRとして選定。SK州は、オンタリオ州の方針に追随すれば初号機建設にともなうリスクが回避されるなど、カナダ全体で多数のSMRを建設していく上で多くの利点があると説明していた。一方のNB州では、2018年にNBパワー社が同社のポイントルプロー発電所内で、第4世代のSMR実証炉を2種類建設するというプロジェクトを開始。第4世代のSMR開発は同州の「気候変動アクション計画」に盛り込まれており、同州が2035年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指す上で重要な部分を担う。第4世代のナトリウム冷却高速炉技術に基づく「ARC-100」はこの2種類の1つであり、2029年の運転開始が見込まれている。同州ではまた、北部ベルドゥーンの港湾管理局が2022年11月、北部地域の経済成長に向けて開発中の「グリーン・エネルギー・ハブ特別区」における活動の一環として、「ARC-100」の導入を目指すと発表していた。NB州は今回、SMR開発は両州のみならず世界中で、安全かつ信頼性の高い無炭素エネルギーを提供できると指摘。その中でも、第4世代の先進的なSMRは電力のみならず高温熱を生産できるため、様々な産業プロセスの脱炭素化やクリーンな水素の製造には理想的だと述べた。NB州のM.ホランド天然資源・エネルギー開発相も、「原子力発電所の運転では40年の経験があるので、クリーンエネルギーや再生可能エネルギーの開発でNB州はカナダのみならず世界中で主導的役割を担っていく」と明言。原子力は今後、低炭素な社会に移行する際の重要電源になると指摘している。SK州のD.モーガン・サスクパワー社担当相は、「SMR関連で両州はここ数年間に強力な協力関係を築いており、今後は国内外のSMR事業で互いに利益を得ていきたい」と表明。SMR技術の活用で脱炭素化が加速されると述べた。なお、「ARC-100」については、アルバータ州政府も今年3月、州内での建設と商業化に向けてARCクリーン・テクノロジー社と協力する考えを発表している。(参照資料:NB州政府、SK州政府、ARCクリーン・テクノロジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 21 Apr 2023
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カナダ連邦予算 原子力への強力支援鮮明に
カナダ連邦政府は3月28日に2023年度(2023年4月~2024年3月)の政府予算を公表、同国がエネルギー供給を確保しつつクリーンなエネルギー技術に移行する上で原子力は欠かせないとの認識から、これを強力に支援していく姿勢を明確に打ち出している。カナダ原子力協会(CNA)の分析によると、原子力はクリーン・エネルギーに対する投資税額控除(ITC)の対象に加えられただけでなく、その他の優遇税制にも幅広く組み込まれており、クリーン・エネルギー技術の分野で一層公平な事業機会を与えられるとともに、CO2を排出しないその他の電源とも対等に競合できるようになる。同予算はまた、それ以前に公表された一連の共同声明で、世界的なエネルギーの移行に原子力が重要な役割を果たすと認められたことを反映している。カナダのJ.トルドー首相と米国のJ.バイデン大統領は3月24日の共同声明で、従来の大型原子炉や先進的原子炉も含めたクリーン・エネルギー、および北米の関係サプライチェーンについて協力を加速する必要性があると指摘。これにともない、カナダの天然資源省と米エネルギー省(DOE)は同月27日、協力の範囲や調整が必要な分野の詳細を明らかにしていた。カナダの2023年度予算はこれらの声明内容を実行に移す具体策を示したもので、両国間の協力を強化することで競争のパラダイムから離れ、互恵的な北米の統合原子力エコシステムを構築することを目指している。CNAのJ.ゴーマン理事長兼CEOは、「今回の予算で原子力に対する連邦政府のアプローチが大幅に変化した」と指摘。「原子力はもはや検討事項ではなくなり、カナダが低炭素なエネルギー・システムに移行するのに必要かつ基本的なエネルギーと認識されている」と述べた。同予算では具体的に、クリーン電力への投資に対し税額が15%控除されるというITCが新たに導入され、小型モジュール炉(SMR)や大型原子炉の建設、既存炉の改修プロジェクトなど、あらゆる規模の原子力発電計画に適用が可能。官民を問わずすべての事業者が利用できるとしており、州を跨いだ送電網の機器にも適用される。このITCは、2022年度予算でC.フリーランド副首相兼蔵相が導入した「クリーン・エネルギー技術に対するITC」とは別枠になる。クリーン・エネルギー技術のITCは昨年秋の経済声明で詳細が公表されており、SMRなど無炭素な発電技術への投資に対し最大30%の税額が控除される仕組みである。今回の予算ではまた、クリーン・エネルギー技術の機器製造に対し設備投資の税額30%を控除するというITCも盛り込まれた。同ITCでは、原子力機器や原子燃料の処理・リサイクル機器の製造が対象となる予定である。CNAによるとこれらのほかに、原子力発電の支援で導入された措置としては以下のものが含まれる。無炭素なエネルギー技術の機器製造業者に対する軽減税率を、原子力発電部門にも拡大適用する。機器製造のITCと同様に、原子力機器や原子燃料の処理機器等が対象に加えられた。カナダ・インフラ銀行に追加で200億カナダドル(約1兆9,600億円)を供与し、同行を通じてクリーン電力分野に最大100億加ドル(約9,800億円)、グリーン・インフラ分野に100億加ドルを投資、無炭素エネルギーへの移行加速に活用する。規制審査や承認手続きの簡素化に向けて、関係予算を13億加ドル(約1,300億円)増強する。対象機関はカナダ原子力安全委員会(CNSC)や環境影響評価庁など。クリーン・エネルギー経済への移行に民間投資を呼び込むため、政府の投資や企業の利益を管理している「開発投資公社」と、公務員の年金管理を担当する国営企業「公務員年金投資委員会」の間で連携協力する。10年以上の期間に「戦略的イノベーション基金」に5億加ドル(約490億円)を供与する。同基金ではこれまで、モルテックス社やウェスチングハウス(WH)社、テレストリアル・エナジー社のSMRプロジェクトに対する支援が提供された。(参照資料:CNA、カナダ連邦政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 05 Apr 2023
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加アルバータ州 ARC社製SMRの建設に向け覚書締結
カナダ中西部アルバータ州の外国投資誘致機関であるインベスト・アルバータ社(IAC)は3月23日、米ARCクリーン・テクノロジー社のカナダ法人(ARCカナダ社)と了解覚書を締結、同州内でARC社製の第4世代小型モジュール炉(SMR)「ARC-100」の建設と商業化に向けて協力することになった。「ARC-100」はナトリウム冷却・プール型の高速中性子炉で、電気出力は10万kW。同炉の技術は、米エネルギー省(DOE)傘下のアルゴンヌ国立研究所で30年以上運転された「実験増殖炉II(EBR-II)」で確認済みのものである。アルバータ州は天然資源豊富なカナダの中でも特に、石油や天然ガスの資源に恵まれており、州内には重工業やエネルギー企業の本社が多数置かれている。今後はSMRが生み出す無炭素な電力や熱を活用して、水素製造や医療用放射性同位体の生産、オイルサンドからの燃料抽出、化学製品の製造、鉱山業、海水脱塩といった産業の脱炭素化を推進。低炭素社会への移行に際しても、エネルギー生産州としての立場を維持していく方針だ。ARCカナダ社によると、「ARC-100」の小規模な設計や熱電併給可能という柔軟性、化石燃料に対するコスト面の競争力の高さは、同州にとって理想的な無炭素エネルギー源となる。そのためIACは、今回の覚書を通じて州内複数地点での「ARC-100」建設に向けた支援を行うとしており、間欠性のある再エネをSMRで補うことで同州の脱炭素化戦略を進める。一方のARCカナダ社は、IACによる支援の下で同州の関係者や産業界との連携を深め、複数の「ARC-100」の製造・建設と運転に不可欠のサプライチェーンを構築し、関連サービスを提供していく考えだ。アルバータ州は2021年4月、カナダ国内のオンタリオ州とニューブランズウィック(NB)州およびサスカチュワン州の3州が2019年12月に締結した「多目的SMR開発・建設のための協力覚書」に参加。2022年3月には、これら4州でSMRの開発と建設に向けた共同戦略計画を策定している。アルバータ州ではまた、テレストリアル・エナジー社が開発した小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)の建設を念頭に、IACが2022年8月に同社と覚書を締結。今年1月には、米X-エナジー社の小型ペブルベッド型高温ガス炉「Xe-100」の州内建設を通じて同州経済活性化の可能性を探るため、IACが同社のカナダ法人と了解覚書を締結している。ARC社の社名は元々、アドバンスド・リアクター・コンセプツ社だったが、その後はARCニュークリア社、ARCクリーン・エナジー社と変更していき、現在はARCクリーン・テクノロジー社と呼称している。ARC社は2018年7月、カナダ東部NB州の州営電力であるNBパワー社と協力合意しており、同社が州内で運転するポイントルプロー原子力発電所内で、2029年までに「ARC-100」を完成させる計画だ。これにともない、同社はNB州セントジョンに初のカナダ事務所を設置している。同州ではまた、北部ベルドゥーンの港湾管理局が2022年11月にARCカナダ社の提案を受け入れ、「ARC-100」の建設に向けて米国のプロジェクト開発企業と協力することになった。(参照資料:ARCクリーン・テクノロジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 29 Mar 2023
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GEH製SMRの標準化に向け国際連携
カナダ、米国およびポーランドで、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の建設を計画している各事業者は3月23日、GEH社が世界中で同炉の建設プロジェクトを円滑に進められるよう、チームを組んで「BWRX-300」の標準設計開発に協力することで合意した。これら4者の協力合意は同日、関係3か国の政府代表が参加した米ワシントンDCでのイベントで明らかにされた。カナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は、ダーリントン原子力発電所で2028年末までに「BWRX-300」初号機を完成させることを計画中。2022年10月にカナダ原子力安全委員会(CNSC)に建設許可申請を行うとともに、サイトの準備作業も実施している。米国のテネシー峡谷開発公社(TVA)は、テネシー州クリンチリバー・サイトで「BWRX-300」を建設する可能性に基づき、2022年8月に予備的な許認可手続きを開始した。ポーランドのシントス・グリーン・エネルギー(SGE)社は同国のPKNオーレン社との合弁企業により、2033年以降の完成を念頭に「BWRX-300」初号機の建設サイトの選定作業を始めている。「BWRX-300」の原子炉容器や炉内構造物など、主要機器の標準設計開発や詳細設計にかかる約4億ドルと見積もられる費用の一部をこれら3事業者が負担。カナダや米国、ポーランドも含め、様々な法制が敷かれている複数の国で、「BWRX-300」の許認可手続きや建設工事が可能になるよう、標準設計開発のための「設計センター作業グループ」を共同で設置する方針である。GEH社のJ.ワイルマン社長兼CEOは、「今回の協力体制によってチームのメンバーそれぞれに利益がもたらされるだけでなく、エネルギーの供給保証や脱炭素化を推進するその他の国においてもSMRが果たす役割の有効性が実証される」と指摘。GEH社はSMRの開発と製造にかかるコストの管理に体系的に取り組んでいることから、この協力を通じて「BWRX-300」のコスト面の競争力も強化されるとしている。「BWRX-300」は出力30万kWの次世代原子炉で、2014年に米国の原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得したGEH社の第3世代+(プラス)型炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」の技術や機器を最大限に活用している。カナダではすでに今月15日、「BWRX-300」はCNSCが提供している任意の予備的設計評価サービス「ベンダー設計審査(VDR)」の主要部分をクリア。VDRは対象設計がカナダの規制要件に適合しているか、正式な許認可手続きに先立ち評価するもので、GEH社はこの直後の同月21日、「BWRX-300」の原子炉圧力容器(RPV)のエンジニアリング契約を、BWXテクノロジーズ(BWXT)社のカナダ支社に発注した。ポーランドでは、SGE社とPKNオーレン社の合弁企業であるオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社が2022年7月、「BWRX-300」に対する国家原子力機関(PAA)の包括的な評価見解を求めて、GEH社の技術文書に基づいてまとめた文書を提出している。GEH社はこのほか、同炉を英国の包括的設計審査(GDA)にかけるため、昨年12月に申請書をビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)に提出した。同国の原子力規制局(ONR)と環境庁(EA)は約5年をかけて、対象設計が安全・セキュリティ面と環境影響面で英国の基準を満たしているか評価中である。(参照資料:GE社、OPG社、TVAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 Mar 2023
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BWRX-300 カナダの事前審査の主要段階をクリア
米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は3月15日、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が同社の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」(出力30万kW)で実施している「ベンダー設計審査(VDR)」で、主要部分である第1、第2段階が完了したと発表した。CNSCは19の審査分野についてGEH社が提出した200以上の文書を審査した結果、「BWRX-300」には正式審査の際に根本的障害となるような課題は認められなかったと指摘。「GEH社はCSNCがカナダの原子力発電所に課している要件の意図を正しく理解している」と結論づけた。最終段階にあたる第3(フォローアップ)段階では、カナダの規制要件を厳格に順守できるよう、GEH社はCNSCが第2段階で指摘したいくつかの技術分野について詳細に検討を加え、建設に向けた設計準備で追加の策を講じるとともに、この策に対するCNSCの評価も得ていく考えだ。VDRはベンダーの要請に基づき、CNSCが提供している任意の設計評価サービス。第1段階では主に、カナダの規制要件に対する適合性を評価する一方、第2段階では根本的な課題の有無について、正式な許認可プロセスの申請に先立ち審査する。当該設計や技術に致命的な欠陥があれば、それを早い段階で特定し解決につなげていくことになる。これら2つの段階の審査を同時に進めることも可能で、CNSCは2019年12月にGEH社と交わした合意文書に基づき、2020年1月からこれらの審査を並行して開始。GEH社からは「BWRX-300」の概要のほか、制御システム等の設備、研究開発、設計プロセスなどに関する文書の受け取りを開始していた。出力30万kWの次世代原子炉である「BWRX-300」は、2014年に米国の原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得したGEH社の第3世代+(プラス)型炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」の技術や機器を最大限に活用。受動的安全系を採用しており、原子炉上部に設置した大容量冷却プールの水で、外部電源や人の介在なしに燃料を冷却することができる。GEH社で先進的原子力技術を担当するS.セクストン上級副社長は、「当社の『BWRX-300』はVDRの主要2段階の審査を完了した最初のSMRになった」と指摘。「BWRX-300」の建設に向けた重要ステップとして、指摘された事項を同炉にフィードバックしていくと述べた。「BWRX-300」の実際の建設に関しては、2021年12月にカナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が、ダーリントン原子力発電所内で建設するカナダ初のSMRとして「BWRX-300」を選定。2022年10月には「BWRX-300」の建設許可申請書をCNSCに提出しており、同サイトで取得済みの「サイト準備許可(LTPS)」に基づき、2028年第4四半期の完成を目指して準備作業を始めている。同社はまた、GEH社やSNC-ラバリン社などの関係企業3社と、今年1月に6年契約でチームを組む協力協定を締結している。GEH社によると「BWRX-300」に対する関心は世界中で高まっており、カナダではこのほか、中西部サスカチュワン州のサスクパワー社が昨年6月、同州内で2030年代半ばまでに建設するSMRとして同炉の採用を決定した。米国ではテネシー峡谷開発公社(TVA)が2022年8月、テネシー州のクリンチリバー・サイトで同炉を建設する可能性に基づき、予備的な許認可手続きを開始している。北米以外では、エストニアのフェルミ・エネルギア社が先月、2030年代初頭の完成を目指して同国で建設する最初のSMRとして選定。ポーランドでも、大手化学素材メーカーのシントス社のグループ企業が、石油化学企業大手のPKNオーレン社と合弁で2033年以降に「BWRX-300」を建設する方針である。(参照資料:CSNC、GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 17 Mar 2023
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加政府 SMRのサプライチェーン構築等で資金援助
カナダ政府は2月23日、小型モジュール炉(SMR)の商業化を支援するため、サプライチェーンの構築や燃料の確保、放射性廃棄物の安全な管理に資する研究開発プロジェクトに、今後4年間で総額2,960万加ドル(約29億6,200万円)の資金援助を実施すると発表した。連邦政府の天然資源省(NRCan)は2018年、SMRをカナダ国内で開発・利用するだけでなく、将来世界のSMR市場で主導的地位を占めることを目指し、州政府や産業界、電気事業者などを交えた協議を10か月にわたって実施。その結果をSMRの戦略ロードマップとして取りまとめており、2020年にはCO2排出量の削減と国内原子力産業の拡大を図るため、SMR開発の努力目標やSMRが発電分野で果たす役割などを示したSMR行動計画を公表している。政府は今回、2022会計年度(2022年4月~2023年3月)予算から支援金を拠出し、SMR開発・利用への支援を継続すると改めて表明。カナダが世界のクリーンエネルギー開発でトップランナーに位置付けられるよう、同プログラムではニューブランズウィック州やサスカチュワン州などと同じく、各州の送電網の脱炭素化を推進する。また、CO2を大量に排出する産業の脱炭素化も進め、遠隔地域のコミュニティに対してはディーゼル発電からSMRへの転換を促す方針である。支援金として研究開発プロジェクト一件につき、期間や規模等に応じて平均50万加ドル~250万加ドル(約5,000万円~2億5,000万円)を交付する予定。原則として総コストの75%まで、500万加ドル(約5億円)を上限とする。受給資格は営利・非営利を問わず、カナダ国内で登録された電気事業者やその他企業、州政府や地方自治体、大学および学術機関など。申請書の受け付けは4月7日までとなっている。今回の政府発表によると、カナダが低炭素経済に移行するには、クリーンで低価格な電力の需要拡大のため、原子力のようにCO2を排出しない安全で安定した発電技術も含め、様々な無炭素エネルギー源が必要である。その中でも、次世代の原子力技術は重要な役割を担っており、中でも従来の大型炉と比べて構造がシンプルで操作し易く、安価なSMRは大いに貢献すると見込まれる。連邦政府はすでに、地球温暖化の影響緩和を目的としたSMR開発の支援活動を行っており、カナダ・インフラストラクチャー銀行(CIB)は2022年10月、オンタリオ州のダーリントン原子力発電所で世界初のSMRを建設するというプロジェクトに過去最高規模の9億7,000万加ドル(約970億円)の融資を約束した。今月6日には、政府機関のカナダ自然科学・工学研究会議(NSERC)がNRCanとの協力により、独自の補助金プログラムの下でSMR開発プロジェクトを募集すると発表。サプライチェーンの構築や廃棄物の管理に取り組む大学からの申請に資金を提供するとしており、次世代の原子力技術者の養成や大学の能力拡大などで、NRCanの今回の資金援助プログラムを補完する。 (参照資料:NRCanの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 Feb 2023
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カナダとベルギーの原研 ドローンで放射線検知実験
カナダ原子力研究所(CNL)は2月13日、ベルギー原子力研究センター(SCK-CEN)と共同で、昨年10月にドローンを使って原子炉施設上空の放射線検知実験を行ったことを明らかにした。ベルギー北部のモルにあるSCK-CENの研究炉「BR1」の上空に、クロメック社製ガンマ線検知器やCNLが設計したタングステン合金視準器(コリメーター)などを搭載したドローンを飛ばし、同炉の通常運転時に堆積したプルーム(放射性雲)を検知・計測できるか調査したもの。CNLはすでに何度か、ドローン搭載用の放射線検知器を製造しており、このような機器を搭載したドローンをチョークリバー研究所の「国立研究ユニバーサル(NRU)炉」(2018年閉鎖)上空で飛行させた実績がある。今回のようにシールドされた検知器を上向きに設置し、プルームの真下を既定のコースで横切りながら特定の同位体の量を測ることは、CNLにとっても貴重な試みだったという。このプロジェクトは、カナダ政府が2015年にカナダ原子力公社(AECL)と共同で策定した「原子力科学技術(FNST)ワークプラン」の下で行われており、CNLは今回の結果から、「特定のプルームを検知することは可能だ」と指摘。得られた情報は、事故時の緊急時対応チームやその後に活動する復旧チームにとって、極めて貴重なものになると強調している。CNLによると今回の試験飛行で重要な点は、飛行プランを作成した上で専用に製造した検知器でプルームを計測し、結果の分析評価を行ったこと。ドローンによるプルームの計測実績は過去に多々あるものの、同試験飛行により事故発生時に備えた訓練や計測技術の開発が進展し、データの蓄積も進む。検知器から送られるデータによって、放射能がどの方向から来ているのか正確に知ることも出来るとしている。一方、SCK-CENも昨年12月、ベルギーの航空宇宙企業サブカ(SABCA)社と共同で、SCK-CENのPWRプロトタイプ「BR3」(1987年閉鎖)の上空に、特製のヨウ化セシウム・シンチレータを搭載したサブカ社製ドローンを飛ばす実験を行っている。閉鎖後も放射線を発している原子力関係施設やその他の一層広いエリアで放射線の地図を描き、これら施設の廃止措置や監視プログラムに役立てることが目的。これは両者が進めている「半自立制御型ドローンの活用に関する技術革新(BUDDAWAKU)研究プロジェクト」の一環であり、ベルギー連邦政府の「エネルギー移行基金(ETF)」から資金援助を受けている。SCK-CENは「放射線の地図作成において、両者の機器の組み合わせは理想的なツールになる」と表明。今年の後半には、両者はSCK-CENサイト全体の上空に固定翼のドローンを飛ばし、長時間の計測飛行が可能なことを実証する計画である。(参照資料:CNL、SCK-CENの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 22 Feb 2023
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カナダとポーランドの規制当局 SMR関係の協力強化で合意
カナダ原子力安全委員会(CNSC)とポーランドの国家原子力機関(PAA)は2月13日、両者のこれまでの協力関係を補足・強化し、小型モジュール炉(SMR)や先進的原子炉に関する活動を共同で進めるため、協力覚書を締結した。この覚書は両者が2014年9月、原子力安全分野の一般的な協力について締結した情報交換のための了解覚書に基づいている。これらの原子炉に関係する審査で、規制上の良好事例や経験の共有を一層拡大するとしており、中でもGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のSMR「BWRX-300」(30万kW)に関する情報を交換、共同で技術審査を行うことを目指している。「BWRX-300」の初号機については、カナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が、ダーリントン原子力発電所サイト内で2028年第4四半期までに完成させることを計画。CNSCが提供する「ベンダー設計審査(VDR)」では第2段階の審査が行われており、OPG社は2022年10月に同炉の建設許可を申請した。一方ポーランドでは、大手化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業が、石油化学企業大手のPKNオーレン社と合弁でオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社を設立しており、2033年以降の完成を目指して「BWRX-300」の建設を進める方針である。OSGE社は同設計を選択した理由として、許認可手続きや建設・運転に至るまでOPG社の経験を参考にできると説明。PAAに対しては2022年7月、「BWRX-300」建設計画に関する予備的な評価見解の提示を要請していた。今回の協力覚書は、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで国際原子力機関(IAEA)が規制関係の国際会議を開催したのに合わせ、PAAのA.グウォヴァツキ長官代理とCNSCのR.ヴェルシ委員長が調印した。両者が協力を進める主要事項は以下のとおり。先進的原子炉とSMRの技術に関する審査アプローチを共有し、共通する技術的課題の解決を促進する。審査の効率的な実施に向けて双方が確実に準備を整えるため、申請の前段階の活動を共同で実施する。安全性を確保するため、これらに特有の全く新しい技術的問題点に取り組めるような規制アプローチを共同で研究・開発し、研修も行う。PAAのA.グウォヴァツキ長官代理は今回の協力覚書について、「規制審査関係の経験を共有することで許認可手続きの合理化が進み、双方の規制アプローチの調和が図られる」とコメント。ポーランドのみならず、その他の国でもこのような原子炉の建設が一層効率的に進むことになると指摘している。(参照資料:PAA、CNSCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Feb 2023
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加アルバータ州 X-エナジー社製SMR導入に向け覚書締結
カナダ・アルバータ州の外国投資誘致機関であるインベスト・アルバータ社(IAC)は1月30日、米X-エナジー社が開発した小型ペブルベッド型高温ガス炉「Xe-100」の州内建設を通じて、同州経済を活性化する可能性を探るため、同社のカナダ法人と了解覚書を締結した。具体的には、「Xe-100」のサプライチェーンの構築や、建設プロジェクトへの資本参加に関心を持つ地元コミュニティとの関係強化等に両社が共同で取り組む。IACはまた、X-エナジー社による現地事務所設置を支援する方針である。第4世代の原子炉設計である「Xe-100」は需要に応じて出力を変動させることが可能で、1基あたりの熱出力は最大20万kW、電気出力は8万kWである。565℃の高温蒸気を効率的に生産するなど、柔軟性の高いコジェネレーション(熱電併給)オプションにもなることから、オイルサンド開発や石油化学工業などの重工業を同炉のクリーンエネルギーで直接支えることが出来る。同社はまた、「Xe-100」を4基備えたプラントをアルバータ州で建設した場合、カナダでは同州を中心に最大3,800名分の雇用が生まれると予測。これには、建設地の地元請負企業やサービス企業、関係サプライチェーンでの雇用も含まれるとしている。X-エナジー・カナダ社のK.M.コール社長は「アルバータ州のエネルギー産業はカナダ全体の経済的繁栄にとって不可欠であり、当社はSMRを通じてCO2の排出量を抑え、州内のエネルギー産業や化学工業、鉱業などを支えていく」と表明。「Xe-100」の州内建設が成功すれば、アルバータ州にとってはビジネス・チャンスとなるため、州経済の多様化や健全化も持続的に進展するとしている。アルバータ州は2021年4月、カナダ国内のオンタリオ州とニューブランズウィック州およびサスカチュワン州の3州が2019年12月に締結した「多目的SMR開発・建設のための協力覚書」に参加。2022年3月には、これら4州でSMRの開発と建設に向けた共同戦略計画を策定している。アルバータ州ではまた、テレストリアル・エナジー社が開発した小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)の建設を念頭に、IACが2022年8月に同社と覚書を交わしている。X-エナジー社の「Xe-100」については、オンタリオ州も同州を中心とするカナダ国内の産業サイトで幅広く利用する可能性を探る方針。州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は2022年7月、協力のための枠組み協定をX-エナジー社と締結している。(参照資料:X-エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 02 Feb 2023
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北米初のSMR建設に向け、加OPG社が関係企業と協力協定
カナダ・オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は1月27日、ダーリントン原子力発電所内で計画している小型モジュール炉(SMR)の建設に向けて、関係企業3社と6年契約でチームを組む協力協定を締結した。この計画でOPG社は、北米初のSMRとして米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のSMR「BWRX-300」(30万kW)を、2028年第4四半期までに完成させる方針。今回の協力協定は、GEH社のほか同国でカナダ型加圧重水炉(CANDU)事業を手掛けるSNC-ラバリン社、および建設大手エーコン(Aecon)グループと結ばれており、送電網への接続が可能な北米のSMR建設では初の商業契約となる。同協定では、各社がそれぞれの分野で数十年にわたり蓄積してきた専門的知見とサービス経験を共有。OPG社はライセンス保持者として、SMRの運転員養成や先住民らコミュニティ対応など、プロジェクト全体の運営・監督責任を担う。GEH社は「BWRX-300」の開発企業として、その設計や主要機器の調達等に責任を持つ。また、SNC-ラバリン社はアーキテクト・エンジニアとして、設計・エンジニアリングや資機材調達など工程管理を担当。エーコン社は建設工事の請負企業として、建設計画の立案と工事関係実務サービスを実施する。ダーリントンでのSMR建設は、カナダでその他の州(サスカチュワン州とニューブランズウィック州、およびアルバータ州)が計画している同様のプロジェクトの先陣を切ることになる。ダーリントンは現時点で、カナダ原子力安全委員会(CNSC)から新たな原子炉建設を許されたカナダで唯一のサイトであり、OPG社は2022年10 月末に「BWRX-300」の建設許可申請書をCNSCに提出済み。その翌月からは、CNSCの「サイト準備許可(LTPS)」に基づき、準備作業を始めている。 同社はこのほか、2016年に10年計画で開始したダーリントン発電所の4基(各CANDU炉、93.4万kW)の改修工事で、SNC-ラバリン社およびエーコン社とはすでに協力関係にあり、これまでに半分以上の作業がスケジュール通りに予算の範囲内で進展している点を強調した。今回の協力協定について、OPG社のK.ハートウィック社長兼CEOは「大規模プロジェクトに関する各社の経験を活用すれば、州民に信頼性の高い電力を提供できる」と指摘。SMRの建設を通じて、オンタリオ州では新たな雇用が創出されるとともに、様々な分野の電化や州経済の成長に必要なエネルギーを供給できると述べた。GEH社で先進型原子力部門を担当するS.セクストーン副社長は、「カナダのみならず世界中で当社のSMRを建設していく重要な節目になった」と表明。「BWRX-300」は、カナダ・サスカチュワン州のサスクパワー社も2022年6月、州内で2030年代半ばまでに建設するSMRとして選定している。GEH社によると「BWRX-300」は米国でも関心が高く、テネシー峡谷開発公社(TVA)が2022年8月、テネシー州のクリンチリバー・サイトで同炉を建設する可能性に基づき、予備的な許認可手続きを開始した。また、ポーランドのオーレン・シントス・グリーン・エナジー社が同国で2020年代末までに「BWRX-300」を建設することを念頭に、パートナー企業と同様の手続きを開始している。(参照資料:OPG社、GEH社、SNC-ラバリン社、エーコン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 31 Jan 2023
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カナダNB州の港湾当局 SMR導入を目指す
米ARCクリーン・テクノロジー社の11月28日付発表によると、カナダ・ニューブランズウィック(NB)州の北部に位置するベルドゥーンの港湾管理局(BPA)がグリーン・エネルギー・ハブ化を目指し、ARC社製小型モジュール炉(SMR)の導入でプロジェクト開発企業のクロス・リバー・インフラ・パートナーズ社(CRIP)と協力することになった。BPAとCRIPはARC社カナダ法人による提案を受け入れたもので、同社が開発したナトリウム冷却・プール型高速中性子炉のSMR「ARC-100」(電気出力10万kW)で、電力と熱を生産する方針。ARC社は、BPAがNB州北部地域の経済成長を促す目的で計画しているクリーンエネルギーの特別開発地区「グリーン・エネルギー・ハブ」で同炉の建設を進め、同地区の様々な産業ユーザーのエネルギー源として活用する。今後の実行可能性調査や環境影響面の承認、カナダ原子力安全委員会(CNSC)による許認可手続き等を経て、2030年~2035年頃の商業運転開始を目指している。「グリーン・エネルギー・ハブ」構想は、BPAが最近公表した「2022年~2052年のマスター開発計画」における主要部分であり、BPAとCRIPはすでに今年8月、同地区で輸出用のアンモニア燃料を水素から製造する施設の建設で合意した。この施設ではCO2を排出しないエネルギーを動力として用いる予定であり、SMRの建設を加えることで同地区には地元やカナダ、および世界の市場にも貢献する新たな能力が備わる。同SMRはまた、水素の製造能力拡大や先進的製造業、金属製造業など、ベルドゥーンを本拠地とする産業のエネルギー源としても活用される。NB州では州営電力であるNBパワー社が2018年、同社のポイントルプロー原子力発電所敷地内で第4世代のSMRの実証炉を2種類建設するというプロジェクトを開始。この計画は、同州を含むカナダの4州が今年3月に策定した「カナダのSMR開発・建設の共同戦略」にも明記されており、ポイントルプローでの「ARC-100」建設は2種類のうちの1つ。2029年の運転開始が見込まれている。一方、ARC社が今回ベルドゥーンで提案した建設プロジェクトはNB州の経済規模拡大に貢献するだけでなく、同社のSMR技術が産業用エネルギー源として直接利用が可能であることを示す規範にもなる。同社のカナダ法人のB.ラベーCEOは、「ARC-100」が実証済みの技術と固有の安全性を備えているほか、モジュール式の低コストな建設と運転が可能である点を強調。その上で、「ベルドゥーンでの採用、および産業用として選定されたのは当然のことであり、NB州は『ARC-100』でカナダやその他の国のSMR建設でリーダー的地位を獲得する」と指摘した。 NB州のM.ホランド天然資源・エネルギー開発相も、同様の可能性を表明しており、「第4世代のSMR開発を牽引する当州としては、ARC社がベルドゥーンの『グリーン・エネルギー・ハブ』で、産業用のクリーンエネルギーを生産するSMRをカナダで初めて建設するのが楽しみ」としている。(参照資料:ARCクリーン・テクノロジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 05 Dec 2022
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加OPG社 ダーリントンのSMR計画で建設許可申請
カナダ・オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は10月31日、同州南部のダーリントン原子力発電所でGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」(出力30万kW)を建設する計画について、カナダ原子力安全委員会(CNSC)に建設許可を申請した。申請文書はOPG社とGEH社が共同作成したもので、OPG社は今後も約6か月間にわたり複数の情報文書を順にCNSCに提出する。このプロセスの最終段階となる2024年頃、CNSCは公開ヒアリングも開催する予定。これらの手続きを経て、OPG社としては早ければ2028年にもカナダ初の商業用SMRを完成させる方針である。折しも、カナダ連邦政府は11月2日に「2022年秋の経済声明(予算編成方針)」を発表しており、この中でクリーンエネルギーの開発投資金に課す税額を最大で30%控除すると表明。対象となるクリーンエネルギーの中には、太陽光や風力などとともに「SMRによる発電システムの機器・設備」を含めている。ダーリントン発電所ではOPG社が2012年8月、大型炉の増設(最大4基、480万kW)用としてCNSCから「サイト準備許可(LTPS)」を取得した。大型炉の建設計画を保留にした後、同社は同じ場所でSMRを建設する計画(最大4基、120万kW)を進めており、CNSCに要請して2021年10月にこのLTPSを10年更新。同年12月には、「ダーリントン新規原子力開発プロジェクト(DNNP)」で採用する設計として、3つの候補の中からBWRX-300を選定した。今年10月の初頭からは、同社は建設用の道路や電気・水道等の公共設備、サービス建屋など、非原子力インフラ設備の建設に向けた整地等の準備作業をサイトで開始、この作業は2025年まで継続するとしている。カナダにおける建設許可申請書の審査プロセスでは、地元コミュニティの住民や一般国民、先住民らが申請書について幅広く議論する機会が与えられており、質問やそれぞれの利益事項を提示することも可能。CNSCの10月24日付の発表によると、OPG社が提出した「(BWRX-300の建設にともなう)環境影響声明書(EIS)」の審査報告書や「BWRX-300設計の技術パラメーター文書」などについて、一般国民が評価を行う10月24日から12月2日までの期間、CNSCは数多くの参加を促すための資金として15万カナダドル(約1,600万円)を提供する。これは第一段階の資金提供であり、第二段階の資金提供についてCNSCは後日発表すると表明。審査プロセスの残りの部分に参加する一般国民のために活用するとしており、具体的には、CNSC委員が作成した文書やOPG社の建設許可申請関係文書の評価作業、公開ヒアリングへの参加を促すために用いるとしている。なお、この建設プロジェクトに対しては、連邦政府のカナダ・インフラストラクチャー銀行(CIB)が10月25日に、9億7,000万加ドル(約1,056億円)という過去最大規模の投資を約束している。(参照資料:OPG社、CNSCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 07 Nov 2022
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カナダのインフラ銀行 ダーリントンでのSMR建設に約10億加ドル投資
カナダ・オンタリオ州の州営電力オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は10月25日、同国初の小型モジュール炉(SMR)を同社のダーリントン原子力発電所で建設するというプロジェクトに対し、連邦政府のカナダ・インフラストラクチャー銀行(CIB)が9億7,000万カナダドル(約1,050億円)という過去最大規模の投資を約束したと発表した。国家の経済政策に合わせた投資戦略を進めるCIBの資金によりOPG社はSMR建設を進め、その無炭素電力を同社の地球温暖化防止計画に役立てる方針。2040年までに同社の発電設備によるCO2排出量を実質ゼロ化し、2050年までに同州がCO2実質ゼロの経済を確立する一助にしたいと表明している。OPG社は2021年12月、ダーリントンで建設するSMRとして、3つの候補設計の中からGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社の「BWRX-300」(電気出力30万kW)を選定した。これに続いて、サスカチュワン州の州営電力サスクパワー社も今年6月、同州内で建設するSMRとして「BWRX-300」を選定している。これら2州とニューブランズウィック州、およびアルバータ州はこれに先立つ今年3月、それぞれの州内でSMRを開発・建設していくための共同戦略計画を発表しており、CIBの資金提供はSMR建設にともなう先行事例としてその他の州や米国、欧州で同様のプロジェクトを牽引するとOPG社は強調。また、SMR市場は2040年まで年間約1,500億ドル規模で成長が見込まれており、同社のプロジェクトはカナダが世界のSMR建設のハブを目指す上でも有効だと指摘している。OPG社の発表によると、CIBが財政支援するフェーズIの作業は、プロジェクト設計やサイト準備、長納期品の調達手配、送電網との接続準備、プロジェクト管理のコスト見積もりなど、建設に先立つ準備作業をすべてカバー。2020年代末までに同SMRが完成すれば、約16万台のガソリン車の排出量に相当する年間約74万トンの温室効果ガスの排出を抑制するとしている。民間シンクタンクのカナダ産業審議会が2020年に実施した調査によると、SMRを1基建設し約60年間運転した場合の経済的利益は、間接雇用も含めて年平均約700名分の雇用が建設の前段階に生み出されるほか、機器製造と建設期間中の雇用は1,600名分、運転期間中は約200名分、廃止措置期間中には約160名分になると指摘した。CIBのE.コリーCEOは今回、「原子力なしで2050年までに世界中のCO2排出量を実質的にゼロ化するのは不可能だとエネルギーの専門家が指摘していた」とコメント。約10億カナダドルの投資を通じて、CIBはOPG社がカナダ初のSMRを建設するのを支援し、温室効果ガスの排出量抑制を加速したいと述べた。オンタリオ州エネルギー省のT.スミス大臣は、「新しい原子力技術の採用という点で当州は常に世界をリードしており、CIBによる投資は、クリーンなエネルギーを生産しつつ新たな投資や雇用を生み出し、経済成長を促す原子力発電の素晴らしい可能性を実証するはずだ」と述べた。(参照資料:OPG社、CIBの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 31 Oct 2022
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加テレストリアル社、IMSRの建設に向けアルバータ州と覚書
カナダのテレストリアル・エナジー社は8月11日、同社製小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)の建設と商業化を、アルバータ州をはじめとするカナダの西部地域で進めるため、同州の州営非営利企業「インベスト・アルバータ(Invest Alberta)社」と了解覚書を締結したと発表した。テレストリアル社の説明によると、第4世代の原子炉設計であるIMSRは熱出力40万kW、電気出力19万kW。また、同炉を組み込んだ発電所では、CO2を排出せずにコストの競争力もある高温熱を生み出せるため、天然資源の抽出や低炭素な水素やアンモニアの製造、その他のエネルギー多消費産業に適している。 こうしたことから、同社はIMSRであればアルバータ州内の石油や天然ガス、および石油化学製品部門など様々な産業の熱電併給ニーズに応えられると指摘。州内で小型モジュール炉(SMR)開発を推し進めている州政府とインベスト・アルバータ社、および産業界や学術機関などと連携し、カナダの西部全域で質の高い雇用の創出等に貢献する考えだ。カナダでは、2019年12月に東部のオンタリオ州とニューブランズウィック州、および中部のサスカチュワン州の3州が、地球温暖化とエネルギー需要への取り組みや、経済成長と技術革新を支援するクリーンエネルギー・オプションとしてSMR開発を進めることで合意。アルバータ州はこれら3州の協力覚書に2021年4月に参加。今年3月には4州がカナダ国内で多目的SMRの開発・建設を促進する共同戦略計画を策定した。インベスト・アルバータ社は価値の高い投資の誘致を目的とした企業で、今回の覚書ではテレストリアル社との協力により、連邦政府や州政府の政策、産業界からの要望に沿って、IMSRのように革新的なエネルギー技術の開発を州内で促進する。同州のS.サベッジ・エネルギー相はSMRについて、「当州のオイルサンド層開発プロジェクトから排出されるCO2の量を削減し、遠隔地域の産業利用にCO2を排出しないエネルギーを供給できる可能性が高い」と指摘。テレストリアル社のような民間企業が、同州内でSMR技術の開発を進める覚書に合意したことを歓迎した。テレストリアル社の計画ではIMSRの最初の商業用実証炉をカナダで建設し、その後、同社の米国法人(TEUSA社)を通じて北米をはじめとする世界市場でIMSRを幅広く売り込む方針。カナダ原子力安全委員会(CNSC)は2016年4月から、同国の規制要件に対するIMSRの適合性を「許認可申請前設計審査(ベンダー設計審査:VDR)」で審査しており、2018年12月から同審査は第2段階に移行している。(参照資料:テレストリアル・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 Aug 2022
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加OPG社、SMRの産業利用で米X-エナジー社のHTGR活用へ
カナダ・オンタリオ州の州営電力会社であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は7月12日、米X-エナジー社が開発している小型のペブルベッド型高温ガス炉「Xe-100」をカナダ国内で幅広く産業利用する可能性を探るため、同社と協力する枠組み協定を締結したと発表した。OPG社は昨年12月、既存のダーリントン原子力発電所で完成させるカナダ初の小型モジュール炉(SMR)として、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の「BWRX-300」(電気出力30万kW)を選定。「Xe-100」はその際、候補の3設計の中に含まれていた。今回の協定を通じて、両社は「Xe-100」を用いて産業界の脱炭素化を促したいと考えている。オンタリオ州内の様々な産業サイトで「Xe-100」を建設する機会を模索するだけでなく、カナダ全土においても同設計の活用が可能な産業サイトやエンド・ユーザーを特定していく。発表によると、「Xe-100」では電力と高温蒸気の生産技術を効率的に組み合わせるなど、国内産業の脱炭素化に貢献できる実証済みの原子力技術を最大限に採用。具体的には、オイルサンドから石油を抽出する事業や鉱山での採掘事業などでの応用が可能だとしている。第4世代の原子炉設計に位置付けられる「Xe-100」は、需要に応じた出力の変動が可能で、1基あたり最大で20万kWの熱出力と8万kWの電気出力を備えている。565℃の高温蒸気を効率的に生産できるなど、柔軟性の高いコジェネレーション(熱電併給)オプションとなるため、両社は「複数の産業プロセスの脱炭素化を促進するとともに、エンド・ユーザーの電力ニーズにも応えられる理想的な設計」だと評価している。連邦政府の天然資源省が作成した「SMR行動計画」によると、カナダにおけるSMRの開発と建設は2030~2040年の期間に、年間190億カナダドル(約2兆250億円)の経済効果を国内で生み出すほか、カナダ全土で年間6,000名以上の新規雇用を創出する可能性がある。カナダはまた、地球温暖化への対応およびエネルギー供給保証の観点から、世界中でSMRの建設機会が生まれるようリードしていく方針。「SMR行動計画」では、2040年までにSMRは世界中の様々な分野で年間1,500億加ドル(約15兆9,900億円)の価値を生み出すと試算。具体的にそれらの分野は、重工業への熱電併給に加えて石炭火力発電所のリプレース、遠隔地の島国や送電網が届かないエリアへの電力供給だと指摘している。 X-エナジー社カナダ法人のK.M.コール社長は、「オンタリオ州のみならず、カナダ全土におけるクリーンエネルギーの課題に、当社は腰を据えて取り組んでいく。今回の枠組み協定を通じて、当社のSMRが産業界の脱炭素化に貢献できることを実証するが、このことは州政府とカナダ連邦政府が地球温暖化の防止で掲げた目標の達成においても重要だ」と指摘した。 オンタリオ州政府のT.スミス・エネルギー相は、「原子力分野の技術革新とエネルギー供給の保証対策という点で、当州は引き続き世界をリードする」と表明。その上で、「SMR技術への初期投資、およびカナダのその他の州政府や諸外国と進めている協力はCO2排出量の削減に役立つだけでなく、経済成長や雇用の創出などの機会を国中に提供している」と強調した。(参照資料:OPG社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 14 Jul 2022
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