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加サスカチュワン州、GEH社の「BWRX-300」を選定
カナダ中西部サスカチュワン州の州営電力会社であるサスクパワー社は6月27日、同州内で2030年代半ばまでに小型モジュール炉(SMR)を建設する場合、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のBWR型SMRである「BWRX-300」(出力30万kW)を採用すると発表した。このSMR建設計画を実際に実行するかについて、同社は2029年まで判断を下さない方針だが、そのために必要なプロジェクトの開発業務や許認可など規制関係業務を現在進めている。この中でも特に重要なのが、採用炉型の選定と建設サイトの選定で、サスクパワー社はSMRを受け入れる可能性のあるサイトの詳細な技術評価をさらに進め、年内にも適切と思われるサイトを複数選定するとしている。サスクパワー社は、2030年までに州内の温室効果ガス(GHG)排出量を2005年レベルの50%削減し、最終的には2050年までに実質ゼロ化することを目標に掲げている。そのため、GHGを排出しない発電オプションについて技術評価を実施しており、その中には風力と太陽光発電の拡大、隣接州との送電網相互接続、バイオマス、地熱、および原子力としてのSMR導入が含まれている。この評価で同社が特に重点を置いたのは、安全性や発電技術としての完成度のほかに、発電規模、燃料のタイプ、予想される発電コストなど。SMRに関しては、カナダ全域で複数のユニットを建設するアプローチについて、2019年から独自の包括的な評価作業をオンタリオ州の州営電力(OPG)などと緊密に協力して実施した。同社によれば、この方式であれば規制面や建設・運転面のコストが低く抑えられるほか、初号機建設にともなうリスクも回避され、サスカチュワン州にとって多くの利点がある。OPG社は2021年12月、オンタリオ州内のダーリントン原子力発電所内で、早ければ2028年初頭までに完成させるSMRとして「BWRX-300」を選定しており、GEH社の今回の発表では、OPG社は年内にも同SMRの建設許可を申請する見通しである。これらのことから、サスクパワー社は同じ設計を選択することで「カナダ全域で複数ユニット」方式の利点が発揮されると説明している。同社の今回の決定について、サスカチュワン州政府のD.モーガン・サスクパワー社担当大臣は、「当州が一層クリーンで持続可能な未来に向けて前進する重要な節目になった」と評価。同州が設定した「サスカチュワン成長計画」に基づき、CO2を排出しないSMRの建設計画がさらに進展したと強調した。サスクパワー社のT.キング暫定社長兼CEOは、「原子力産業界の一リーダーであるGEH社は、当社とサスカチュワン州の住民に今後数十年にわたって恩恵をもたらす可能性がある」と指摘。「同社の『BWRX-300』設計は、安全で信頼性の高い持続可能な電力を供給しつつCO2排出量を削減するという当社の目標達成に大きく貢献する」と述べた。カナダでは2019年12月、大型の原子力発電所が立地するオンタリオ州とニューブランズウィック州、およびウラン資源が豊富なサスカチュワン州の州政府が、出力の拡大・縮小が可能で革新的な技術を用いた多目的SMRを国内で建設するため協力覚書を締結。2021年4月にはこの協力覚書にアルバータ州も加わっており、これら4州は今年3月に、SMRを開発・建設してくための共同戦略計画を発表している。SMR建設の許認可手続については、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が2019年7月、プロジェクト開発企業のグローバル・ファースト・パワー社が、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社製「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」をオンタリオ州内のチョークリバー・サイトで建設するために提出した「サイト準備許可(LTPS)」の申請書を受理。同審査は2021年5月、技術審査段階に進展している。一方、ダーリントン発電所内でOPG社が建設する「BWRX-300」については、同社が大型炉建設計画のために2012年に取得したLTPSの10年延長を、2020年6月にCNSCに申請。CNSCは2021年10月にこれを承認しており、ダーリントン・サイトは現在、カナダで唯一LTPSが認められている地点である。(参照資料:サスクパワー社、GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 29 Jun 2022
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カナダのNWMO、処分場建設候補地の1つと約束事項で覚書
カナダで使用済燃料の深地層最終処分場・建設候補地を選定している核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は6月15日、立地点として最終決定した場合にNWMOが約束する事項について、候補に残っている2地点のうち、オンタリオ州南部のサウスブルース地域の自治体と了解覚書を締結したと発表した。同覚書は、最終的に処分場の受け入れ合意書(案文)を作成する際、叩き台になるとNWMOは説明。同自治体が実施を求める優先事項にNWMOが重点的に取り組めるほか、今後さらなる合意文書を結ぶための下準備にもなるとしている。カナダでは、原子力発電所の使用済燃料を再処理せずに直接処分する方針であり、NWMOはそのための処分場建設に向け、2010年からサイト選定プロセスを開始した。処分場の受け入れに関心を表明した22地点は、これまでにサウスブルース地域、および同じオンタリオ州の北西部イグナス地域の2地点に絞り込まれており、NWMOは周辺の住民や環境の安全が確保されるだけでなく地元コミュニティには利益がもたらされることを確認した上で、協力的で好ましい1地点を2023年までに最終決定する方針である。サウスブルース地域の自治体はすでに、コミュニティとして優先したい事項や希望項目を「指針となる36の原則」に取りまとめており、NWMOはこれに応えて、同自治体が建設サイトとなった場合に次の事項を実行すると約束。すなわち、同地域を科学技術に関する世界的な中核拠点とし、地元コミュニティの役に立つ様々な機会を通じて協力関係を結ぶほか、地上施設の設置面積を抑えるなど可能な限り現在の地形を維持して地元の資産価値を保全。NWMOはまた、処分するのはカナダの原子力発電所から出る使用済燃料のみで他国の廃棄物を対象としないこと、処分場にNWMOから継続的に資金を提供する、などとしている。NWMOはこのほか、これらの両地点について「最終処分場建設の要件を満たすことが可能であり、建設に適している」とする報告書を16日付けで公表した。両地点で数年にわたり、NWMOが注意深く実施した研究やフィールド調査の結果を地点別にまとめたもので、両地点はともに、使用済燃料を周辺住民や環境から安全に隔離し閉じ込められる地質学的特徴を備えているとNWMOは指摘。具体的には、地震活動が少ない安定した地点であり、使用済燃料の処分に必要な深さや幅、容積を持った岩石層を備えている。また、この岩石層には鉱物資源や塩など経済的利益が見込めるような成分が含まれていないため、将来的に人が立ち入るリスクも少ないとした。建設サイトに決定した地点については後日、処分場設計との適合性や長期的な安全性の保証に関する規制審査が追加で行われるとしている。NWMOのL.スワミ理事長兼CEOは、「安全性の確保がこのプロジェクトの最優先事項であり、我々が実施する設計・エンジニアリングや環境調査、地元コミュニティとの協力等に至るまで、すべてこの原則に貫かれている」と説明。これら2つの報告書は、NWMOが10年以上前に開始したサイト選定プロセスにおける重要な成果だと強調した。(参照資料: NWMOの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 20 Jun 2022
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アツイタマシイ Vol.2 マシュー・メイリンガーさん
コミュニケーションを通じて先入観や思い込みを払拭マシューさんが原子力業界で働きたいと思ったきっかけは何でしたか?マシュー私が9年生、日本でいえば高校1年生の時、国語の授業で小論文(エッセイ)を書くことになり、たまたま選んだテーマが「原子力」、それがきっかけでした。いろいろ調べていくと原子力技術は効率のよい発電方法であると同時に、医療や工業、農業など幅広く社会に貢献し、エネルギー問題や環境問題にも寄与することを知りました。将来的に原子力分野の仕事は意義があり、また安定しているため、キャリアを積み重ねていく価値があると思ったのです。原子力業界に入る前と入った後で、意識などに何か変化はありましたか?マシュー実際に原子力分野で仕事を始めてから感じたことは、原子力が社会に幅広く利用されるためには一般市民の人たちに理解してもらうことが重要だ、ということでした。原子力工学を学んでいた時にはもっぱら技術的なことに取り組んでいましたが、様々な経験を経て、原子力利用の普及のためには技術の問題よりも一般市民に理解されるかどうか、つまりコミュニケーションを通じて先入観や思い込みの部分を払拭していくことが必要だと実感しました。この10年ほどYGNの活動を通じて一般市民の方々との対話を重ねてきましたが、こうした活動をまだまだ今後も続けていくことが重要だと考えています。ウクライナ問題などエネルギー情勢はめまぐるしく変化しています。このような時期にあって、原子力利用の意義と将来性についてどうお考えですか?マシューロシアのウクライナに対する軍事侵攻により、エネルギーや食糧の自給自足がいかに大事かということが明らかになりました。とりわけ各国が発電の手段を確保しておくことは重要です。ロシアのような資源国の状況変化に左右されないよう、発電手段を確保することが必要だと思います。エネルギー不足に直面すると、結局のところ、苦しむのは一般の人々です。特にドイツでは痛感されているのではないでしょうか。ドイツは天然ガスをロシアに依存していたことから、外交のカードとして使われてしまった。ベルギーも同じような状況にあり、脱原子力の立場から見直しを迫られている状況です。まして気候変動問題に真剣に取り組むことが求められている現状では、原子力発電は再生可能エネルギーと並んで最適な選択肢です。ウクライナではロシアの軍事侵攻によって多くの発電設備が破壊され、電力供給が停止していると聞きます。そのような中で、原子力発電所は運転を継続し電力を供給し続けています。安全性や安定供給が原子力発電所の特長といえますが、今後SMRが実現すると、より安全性の高い原子炉が運転を開始することになります。ウクライナ問題は各国政府が原子力発電の特長を再評価するきっかけになるでしょうから、原子力の将来性について国際的な評価が高まると期待しています。カナダの原子力利用の将来を担うであろう小型モジュール炉(SMR)開発について、またそれを支える人材の育成などについて、どのようにお考えでしょうか?マシューSMR開発についてカナダは、世界に先行するトップランナーの位置にあるといえるでしょう。カナダの4つの州、すなわちオンタリオ州、ニューブランズウィック(NB)州、サスカチュワン州、およびアルバータ州で覚書を取り交わして導入にむけた共同戦略計画を進めているところです。連邦政府のレベルでSMR開発のロードマップ(工程表)が定められ、それに基づいてアクションプラン(行動計画)が策定されています。アクションプランの中に人材育成やサプライチェーンの構築などの進め方も盛り込まれており、SMRを導入する事業者側の課題も挙げられています。またSMR開発自体については連邦政府が財政的な支援を行う計画です。英モルテックス・エナジー社やテレストリアル・エナジー社、米ウェスチングハウス(WH)社などカナダ国内でSMR建設を進める企業に資金を拠出します。カナダでは主に3つのSMR開発プロジェクトが進められていますが、オンタリオ州営の電力公社オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が建設するマイクロモジュール炉は2026年の運転開始を予定しています。またOPG社が2028年の運転開始を目指し、GE日立のBWRX-300を建設するプロジェクトも進行しています。PAが重要な課題SMRの導入に関して現在、重要な課題は何でしょうか?マシューもっとも重要な課題は一般市民の合意、すなわちパブリックアクセプタンス(PA)だと考えています。そのために継続的に対話活動に取り組んでいく必要があります。カナダ政府としても、「実証されていない」あるいは「投資に見合わない」と国民に思われてしまっているものをわざわざ推進しようとは考えません。例えば気候変動やエネルギー不足への対応、水素供給や地域熱供給への活用、そうしたメリットについて広く理解が進み、一般市民の側からプロジェクト推進の声が寄せられるような状況が望ましいと思います。一方で技術的な課題についてですが、初号機に採用された技術は実証済みのものですので、当面する課題は特にないと考えています。それ以降の、いわゆる第4世代の新技術については、今後の課題として進めていくものだと思います。最初に実現するSMRは実証された確実な技術で進めればよいでしょう。新技術の開発などにあたり、若手の研究者や技術者への期待は大きいと思うのですが、マシューさんから見て、現状や今後への期待などはいかがでしょうか?マシューおよそ10年前の福島第一原子力発電所事故の後、カナダでも原子力に対する世論が厳しくなった時期もありましたが、様々な活動を通じた印象としては原子力利用に将来的な希望を抱く若者は少なくないと思います。日本の状況について詳しくは承知していませんが、原子力に対して希望を抱く若者は、日本よりカナダのほうが多いといえるでしょう。私は、大事なことは彼らに「原子力のメリット」に目を向けてもらうことだと考えています。環境にクリーンな電源であることや、医学や工業、農業などの分野で社会に貢献する多様なメリットを原子力技術が有していることを実感してもらえるような活動が重要です。現在も絶えず技術革新を遂げつつある原子力分野の仕事は、若者に「COOL(クール)」と感じてもらえる側面がありますよね。ですから彼らにもそういった印象を持ってもらえるよう、常日頃から心掛けています。日常的にこなすルーティンな仕事というだけでなく、熱い意欲をもって取り組む価値のある仕事だということを理解してもらえるよう努力したいと思っています。そのために今後も引き続き、原子力の様々なメリットを実感してもらうために、シンポジウムや交流会への参加や、発電所サイトの視察機会を多く作っていこうと考えています。マシューさんが取り組んでいるYGNで、そうした機会を作っていくということですか?マシューはい。YGNの活動を通じて今までも取り組んできましたが、これからも引き続き、様々な機会を作る努力をしていきたいです。実は私、6月から3年の任期でYGNのプレジデント(理事長)に就任します。今後の活動について、私自身、強調していきたいのは国際的な活動の充実です。国を越えて若者同士がお互いのベストプラクティスを共有できればと考えています。今回の来日中に福島第一原子力発電所に訪れ、その後に日本のYGNのみなさんと交流する機会を持つ予定ですので、お互いの活動についても共有し、様々な学びが得られると楽しみにしています。私たちが活動する北米のYGNでは、将来を担う子供たちを対象に、コンテスト形式で絵を書いてもらったり、作文を発表してもらうイベントを開催しているほか、わかりやすい絵本を作って読み聞かせをするといった活動をしています。また政府・関係団体に対して若手の視点から意見を表明する政策的な活動として、州が開催する公聴会に参加して意見を表明するといった活動もしています。さらに幅広いネットワークを活かして地域社会の皆さんとの交流を続けています。YGNのメンバーが地域の皆さんに良い印象を持ってもらえるよう交流の場を作ることは大切な活動ですから、今後も原子力利用に対する理解を深めてもらえるよう努力をしていきたいと考えています。SMRが切り拓く 私たちの未来最近の情勢変化を踏まえ、欧州では原子力発電を脱炭素にむけた主要電源として見直す動きもあるようです。環境問題に対する原子力の役割についてどのようにお考えでしょうか?マシュー環境問題への対応の観点から、SMRを導入することで原子力利用の新たな市場が開拓できるというメリットについてお話ししたいと思います。カナダでは従来の大型の原子炉を導入すると、州によっては電力需要を上回ってしまう状況がありました。その点でSMRは各州の状況に応じて柔軟に対応できるため、新たな市場を切り拓くことになるでしょう。またカナダには遠隔地の電力需要をどのように賄うかという問題があります。冬期には道路が凍結するため、事前にディーゼル発電機用の燃料を備蓄する必要があるわけですが、SMRはより安定した電源であり、かつ脱炭素化が可能になります。同様のことはカナダの主要産業である鉱業部門にもいえます。天然資源採掘の現場にSMRを導入すれば安全で安定した電源というばかりでなく、大幅に脱炭素化がはかれるというメリットが期待できます。さらに水素製造や淡水化への応用、負荷追従運転による電力需要への柔軟な対応など、幅広いメリットを考えれば、SMRの実現によってさまざまな新たな可能性が切り拓けると思います。そして重要なことは、環境問題への対応という面で、従来とは違う観点で原子力をとらえることができるようになるということです。つまり、これからは原子力か再生可能エネルギーか、という対立した選択肢ととらえるのではなく、両者をうまく組み合わせ、原子力が再生可能エネルギーを補うといった新たな考え方が可能になると思うのです。それから、輸送部門への活用もSMRに期待されるメリットのひとつです。船舶の動力に使えば、脱炭素化がかなりスピーディーに実現できるでしょう。現在は原子力潜水艦など舶用の小型原子炉は軍事利用がメインとなっていますが、今後民生用の舶用炉という新たな市場がSMRによって切り拓かれることになると期待しています。
- 16 Jun 2022
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米加両国の規制委、先進的原子炉設計に関する初の共同技術審査を完了
カナダのテレストリアル・エナジー社の6月7日付け発表によると、同国の原子力安全委員会(CNSC)と米国の原子力規制委員会(NRC)が初の「共同技術審査」として実施した同社製小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)の審査が、このほど完了した。この共同技術審査は、NRCとCNSCが小型モジュール炉(SMR)や先進的原子炉設計を一層効率的、効果的かつタイムリーに分析し、原子力安全・セキュリティを一層向上させるために締結した2019年8月の協力覚書(MOC)に基づいており、国境を跨いで両機関が実施する共同規制プログラムの一部である。同MOCは両機関による2017年8月の了解覚書(MOU)の協力項目を拡大させたもので、ここではSMR等の技術開発における経験や専門的知見、良好事例を両機関が共有し、原子力安全規制の実効性をさらに高めることが目標となっている。今回の初の共同技術審査で、両機関はテレストリアル・エナジー社が実施したIMSRの「設計に起因して想定される事象(PIE)」の分析結果やIMSRに使われている技法などを審査。テレストリアル・エナジー社によると、このような作業は将来、同社がカナダや米国でのIMSR建設に向けて許認可申請の準備を行う際、一層詳細な安全評価作業を実施するための基盤になる。CNSCのM.バインダー前委員長は初の共同技術審査が完了したことについて、「IMSRの商業化に向けた規制プログラムが大きく進展するとともに、原子力規制で国際的な調和が可能であることを明確に示した」と評価。「独立の立場を持つ2国家の規制機関が審査することで、対象技術の信頼性が高まるだけでなく、世界市場への投入に向けた推進力が生み出される」と強調した。NRCのJ.メリフィールド元委員は、「2つの規制機関の間で審査の調和を図り、規制の重複を避けるという意味で重要な節目が刻まれた」と指摘。「今回の審査で、北米大陸における次世代原子炉の開発は実際の建設に向けて大きく前進した」と述べた。テレストリアル・エナジー社のIMSR(熱出力40万kW、電気出力19万kW)は、電力のみならずクリーンな熱エネルギーも供給可能な第4世代の原子炉設計。他の先進的原子炉設計の多くがHALEU燃料(U-235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を装荷するのに対し、IMSRはこれまで世界中の軽水炉に装荷されてきた(濃縮度5%以下の)標準タイプの低濃縮ウランを使用する。同社としては、まずIMSRの最初の商業用実証炉をカナダで建設し、その後に米国法人(TEUSA社)を通じて、北米を始めとする世界市場にIMSRを売り込む方針。CNSCは現在、カナダの規制要件に対するIMSRの適合性を「ベンダー設計審査」と呼ばれる非公式の予備的設計評価サービスで審査中である。IMSRはすでに同審査の第1段階をクリアし、2018年12月から第2段階の審査が行われている。NRCの設計認証(DC)審査に関しては、TEUSA社が将来的に申請することを計画中である。 (参照資料:テレストリアル・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 09 Jun 2022
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加サスカチュワン州の企業、WH社製マイクロ原子炉建設に向け協力覚書
カナダのサスカチュワン州政府が一部出資する「サスカチュワン研究評議会(SRC)」と、米ウェスチングハウス(WH)社のカナダ法人は5月18日、同州内におけるWH社製マイクロ原子炉「eVinci」(電気出力0.5万kW)の建設に向けて、協力覚書を締結したと発表した。SRCはカナダで第2位の規模を持つ技術研究関係の公共企業体で、農業・バイオテクノロジーやエネルギー、環境、および鉱業の分野で世界中の顧客に科学的なソリューションを提供中。同州中央部のサスカトゥーン市にあるSRC環境分析研究所では、1981年3月から2021年11月まで電気出力20 kWの研究炉「SLOWPOKE-2」を運転した経験もある。WH社の「eVinci」は遠隔地や鉱山等における熱電併給を目的としており、設計寿命は40年間。10年以上燃料交換なしで運転することが可能で、炉外復水器となる部分の周囲にチューブを環状に巻き付け、主要熱交換器とする設計である。両者は将来的にサスカチュワン州内で、「eVinci」をエネルギー利用を含む様々な分野で活用するための試験を実施する。安全で輸送も容易な「eVinci」を使い、同州のクリーンエネルギー生産について、ニーズに即した解決策を生み出したいとしている。サスカチュワン州は今年3月、オンタリオ州とニューブランズウィック州およびアルバータ州とともに、4州が協力して小型モジュール炉(SMR)を開発・建設するための共同戦略計画を策定した。将来的にカナダのSMR技術や専門的知見を世界中に輸出していくのが目的で、ウラン資源に恵まれたサスカチュワン州では今のところ原子力発電設備は存在しないが、オンタリオ州で2028年までに送電網への接続が可能な出力30万kWのSMRを完成させた後、サスカチュワン州で後続のSMRを建設する計画が設定されている。今回の覚書締結について、同州のJ.ハリソンSRC担当相は「SRCでは38年間にわたって『SLOWPOKE-2』研究炉を運転した実績があるので、この経験を新たな技術であるマイクロ原子炉に生かしたい」と述べた。D.モーガン州営電力担当相も「近代的な原子炉設計には、州民が日々必要とするクリーンで安全なベースロード電源を提供する能力がある」と指摘。サスカチュワン州内で原子力発電開発を進めていけば、州内送電網の近代化が促されるだけでなく、数10億ドル規模の経済活動が州内で新たにもたらされると強調した。「eVinci」については、米エネルギー省(DOE)が2020年12月、官民のコスト分担方式で進めている「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象に選定。7年間に総額930万ドル(このうち740万ドルをDOEが負担)を投じて、2024年までに実証炉の建設を目指している。一方、カナダにおいては2018年2月、WH社が同設計について「ベンダー設計審査(予備的設計評価サービス)」の実施をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請したが、実施条件等で両者が協議中で審査はまだ始まっていない。それでもカナダ政府は今年3月、「eVinci」を将来カナダ国内で建設するため、イノベーション・科学・研究開発省の「戦略的技術革新基金(SIF)」から、2,720万カナダドル(約27億円)をWH社のカナダ法人に投資すると発表した。この投資を通じてカナダ国内の技術革新を促進し、SMR技術が持つ「いつでも利用可能で運搬も容易な低炭素エネルギー源」という特質を活用、カナダ経済への多大な貢献を期待するとともに、同国が目標とする「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化」の達成で一助としたい考えだ。(参照資料:SRCおよびWH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 20 May 2022
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加SNC-ラバリン社、カナダでのモルテックス・エナジー社製SMRの建設に協力
カナダで原子力等インフラ関係のプロジェクト管理を遂行しているSNC-ラバリン・グループは4月13日、傘下のCANDUエナジー社を通じて、英モルテックス・エナジー社のカナダ法人と戦略的連携関係を結んだと発表した。カナダ東部のニューブランズウィック(NB)州では、州政府が2018年以降、州営電力会社が運転するポイントルプロー原子力発電所の敷地内で、モルテックス社製の第4世代小型モジュール炉(SMR)「燃料ピン型溶融塩炉(Stable Salt Reactor-Wasteburner: SSR-W)」(電気出力30万kW)」の初号機を、2030年代半ばまでに建設する計画を進めている。SNC-ラバリン社はこの計画の許認可手続きや建設工事でモルテックス社に協力するだけでなく、カナダ全体の次世代SMRの開発と建設をさらに促進していく方針である。カナダでは現在、カナダ原子力公社(AECL)が中心となって開発したカナダ型加圧重水炉(CANDU炉)が19基稼働しており、2011年10月に同公社で組織改革が行われた際、そのCANDU炉事業はCANDUエナジー社に売却されている。その親会社であるSNC-ラバリン社のJ.セントジュリアン社長は、「CO2排出量の実質ゼロ化に向けた世界の動きのなかで原子力は重要な部分を担っており、原子力に関する世界中の専門的知見や数100件もの特許の活用で60年以上の経験を持つ当社は、SMR開発のあらゆる段階でベンダーに協力できる」と指摘した。同社長はまた、「当社が設計する原子炉技術はカナダ原子力安全委員会(CNSC)の3段階の「ベンダー設計審査(予備的設計評価サービス)」をすべてクリアし、実際の許可も受けた唯一の技術だ」と強調。このような背景から同社は、SMRの開発企業が設計を完成させるための支援や、カナダ国内で許認可手続き進める際の助言を提供できるとした。同社はまた、モルテックス社はSNC-ラバリン社が保有する世界的規模の専門家ネットワークを活用可能だと指摘。これらの専門家は、設計・エンジニアリングや規制・許認可問題のみならず、コストの試算やサプライヤーの資格認定と管理、品質保証、建設・運転計画の立案など、様々な分野に習熟している。これらを通じてSNC-ラバリン社は、モルテックス社が新たな顧客を呼び込めるよう緊密に連携し、モルテックス社の事業目的達成を支えていく考えだ。なお、両社の連携協力に対し、NB州政府のM.ホーランド天然資源・エネルギー開発相はサポートの提供を約束している。同相は、「この協力はNB州のエネルギー部門で質の高い雇用を生み出し、その長期的な成長に貢献する。また、モルテックス社とNB州がともに、次世代の原子力技術を発展させるリーダー的役割を担うことになる」と述べた。また、ポイントルプロー発電所以外の商業炉がすべて立地するオンタリオ州のT.スミス・エネルギー相も、「当州でエネルギー産業と原子力関係の優秀な労働力、および強力なサプライチェーンを築いたSNC-ラバリン社が、モルテックス社と新たに協力するのは願ってもないことだ」とコメント。「SMR開発に関してカナダは今や世界の注目を集めており、今回の協力によってSMR開発の世界的ハブとしてのカナダの名声や、クリーンエネルギー開発における優位性が高まる」と強調している。(参照資料:SNC-ラバリン社、モルテックス・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 19 Apr 2022
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【第55回原産年次大会】セッション5「若手が考える原子力の未来」
第55回原産年次大会を締めくくるセッション5では、原子力の将来を担う若手が原子力の現状をどのように捉え、原子力の未来をどのように描くのかについて、国内外の有識者を迎え、パネル討論を実施。東京大学大学院工学研究科付属レジリエンス工学研究センター 准教授の村上健太氏がモデレーターを務めた。パネリストの発表に先立ち、村上氏からは「既存の原子力施設から新しい価値を生み出すには」という題で、ステークホルダーの孤立と不健全あるいは不十分な関与を問題設定として挙げ、将来の原子力技術がどのように社会的受容性を高めながら活躍の場を確保し続けることができるのかが問われた。事業者、規制機関、ステークホルダー がどのように対話しながら安全性を高めていけるのかという観点でINSAG(国際原子力安全諮問グループ)の2017年の報告書からR.メザーブ議長の提言を引用。独立した規制機関によって原子力事業の安全性を監視すること、事業者同士が協力し安全性を高めていくこと、規制機関も国際的なピアレビューの中で安全性を高めることが求められているとした。日本においては、日本の特徴的な組織構造と、それを当然と考える日本人のマインドセットが指摘されている。国際原子力機関の福島事故の報告書の中では人的・組織的および技術的要因との相互作用を考慮して安全に対する体系的なアプローチを確立することが謳われている。2022年に第二民間事故調が、福島第一事故から10年後の検証をまとめた。その中で東京大学公共政策大学院教授の鈴木一人氏が、規制当局が設定した「宿題」を、事業者がこなすという宿題型の規制のあり方に警鐘を鳴らしている。本来は、規制当局が目標と効果を定め、方法は事業者が定めるもの。規制当局はその方法を監督し、よりよい規制につなげていくことが望ましい。こうした背景を踏まえ、「60年超長期運転と新設を選べる環境づくり」「負の遺産(CO2や高レベル廃棄物) を増やさないための利用率向上」「時間軸と規模を切り分けての未来への種まき」という3つの論点を政策、規制、技術の視点で展開した。そして想定よりも長い間停止しているプラントが多いことを踏まえ、村上氏は停止プラントの政策的意味づけを考える必要があると指摘。さらには次世代炉の新設あるいは同程度の安全性を持つ既設炉の60年超運転をオプションとし、どちらがよりステークホルダーにとって好ましいかを話し合える環境をつくりながら原子力事業を進めていくことが求められているとした。また、それに伴い、運転期間延長認可制度や、事故耐性燃料活用時の安全要件など革新的な規制基準が求められる。ここには両者の安全パフォーマンスを比較評価するための技術も必要となる。負の遺産については、昨今、重視されるカーボンニュートラルを原子力の追い風にすることが出来ておらず、原子力は「CO2を出さないが放射性廃棄物は出す」という捉え方をされている現状がある。「原子力業界が再エネ導入を邪魔する」といった誤解を解く必要もある。プラント利用燃料の高燃焼度化のための研究開発は、将来的に廃棄物の減容につながる技術を追求すべき。そのためには、炉心・燃料分野の基盤維持のためにも、研究開発人材を増やす施策をとらねばならない。とはいえ、研究の予算や公的資金は、短期的な課題解決に優先的に充てられる。SDGsでさえも2030年を目標にしている。こうした現状を原子力産業も研究コミュニティも認識し、既存の原子力に関するいろんな基盤技術を使い、エネルギー問題を短期間で解決しようという視点で研究開発を再考する必要があるとした。衛生や教育の環境改善に貢献し、なおかつ将来的には日本にとっても種になるような技術開発というのを大学としても考えていきたいと述べ、冒頭の問題提起とした。♢ ♢最初のパネリストとして、北米原子力若手連絡会(NAYGN)のカナダ最高執行責任者であるマシュー・メイリンガー氏が登壇。カナダにおける原子力の状況と、アドボカシー活動について発表した。メイリンガー氏 発言要旨カナダではカナダ型重水炉(CANDU)が19基稼働し、国内の電力の最大15%を占める。天然ウランと重水を使用しており、水平のカランドリア管から運転中に燃料を交換することが可能。停止系統は2つあり、過圧防護のための真空建屋が存在する。そのほかの州では原子力が普及していないが、今後は小型モジュール炉(SMR)の普及で変わっていくものと期待する。原子力の概要は、サスカチュワン州とオンタリオ州がそのほとんどを占める。サスカチュワン州では、ウラン採掘と破砕・粉砕、および一部の研究開発を、粉砕工程以降はすべてオンタリオ州で行われる。オンタリオ州はサプライチェーンを継続し、発電と廃棄物管理の大部分を占める。メイリンガー氏カナダの核燃料サイクルについては、世界第2位のウラン生産国で、13%がサスカチュワン州北部で採掘と破砕・粉砕されている。オープンサイクルなので再処理はしない。2002年に核燃料廃棄物法が施行され、核燃料使用計画を策定・実施するためにカナダ核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が設立された。3年にわたる調査とパブコメを経て、NWMOの適応的段階的管理計画(深層地層処分)が選択された。最終的にサウスブルースとイグナスの2自治体に候補が絞られ、来年決定する。使用済燃料の深地層処分場(DGR)は2043-2045年に稼働する予定となっている。連邦政府レベルでは、2020年、連邦天然資源省がカナダの1996年の放射性廃棄物政策を見直すこととした。2つの構成要素があり、一つは、既存の放射性廃棄物政策の枠組みを更新する。国民の理解を得て、国際的なベストプラクティスに合わせる。もう一つは、低・中レベル放射性廃棄物を含めた包括的な放射性廃棄物管理戦略を開発するための対話を主導するようNWMOに要請した。NWMOの戦略案は第2四半期に発表される予定となっている。2050年までにネット・ゼロを達成するために、原子力エネルギーが重要な役割を果たすことに積極的に言及している。例えば、がん治療など医療用の放射性同位体(ラジオアイソトープ)を世界に供給する技術力や、2050年までに廃棄物処理インフラを整備するという連邦政府のコミットメントが強調されている。カナダのエネルギーの見通しは、全てのセクターの電力需要は、2050年まで着実な増加が見込まれる。また、再生可能エネルギーと原子力の予測も増加している。2050年までにネット・ゼロを目指すという目標を掲げている。原子力発電が現在の15%から25%に伸びるという想定をしている。オンタリオ州では、石炭火力発電がなくなり、電力部門からの温室効果ガス排出量は大幅に削減された。しかしながら、カナダの発電量のうち石炭火力発電はまだ7%を占めている。今後増えることが見込まれる電力需要に対応するためには、今後30年間で発電量を3倍に増やす必要がある。それと同時にゼロカーボンを達成しなければならない。化石燃料から脱却するために、2050年までにグリッドスケールでSMR 45基、大型原子炉20基、その他 水力発電などの自然エネルギーに加え、遠隔地では小型原子炉も必要になることが見込まれる。主な原子力プロジェクトとして、ブルース・パワー社とオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が原子力発電所の大規模改修を実施している。カナダ最大のインフラプロジェクトであり、スケジュール通り予算内で収まる見込みだ。カナダは、SMR技術の開発と商業化において、世界をリードする位置付けにある。廃棄物管理、規制体制、国際協力を含むSMRロードマップもあり、SMRがクリーンエネルギーミックスをサポートするためのシナリオも考えられている。オンタリオ州では、12月にOPG社がGE日立ニュクリア・エナジー社と共同で、ダーリントン原子力発電所にBWRX-300(SMR)を設置すると発表。また、OPG社との合弁会社である原子力会社Global First Power社がUltra Safe Nuclear社と提携し、熱出力15MWのマイクロ原子炉を、2026年を目標に建設する予定となっている。連邦政府の動きとして、5,000万カナダドルをこうした事業者に出資している。放射性同位体では、半世紀以上にわたって、カナダは医療用アイソトープと放射性医薬品の研究開発・製造において国際的にリードしてきた。カナダ原子力安全委員会は、カナダ国内で250以上のアイソトープの使用と製造を許可している。原子力発電所関連についてはコバルト60が、1970年代からピッカリング原子力発電所で生産され、ダーリントン原子力発電所でもまもなく生産される予定。モリブデン99とテクニチウム99mは、ダーリントン原子力発電所で今年から製造される。その他の同位体については、かつて廃棄物と考えられていたものが、社会にとって価値のあるものだと見直されている。♢ ♢続いてAfrica4Nuclearの創設者であるプリンセス・トンビニ氏が発表。アフリカ大陸でのステークホルダー・インボルブメントについて自身の活動を踏まえて紹介した。Africa4Nuclearを設立した背景を、同氏のお気に入りの作家が「TED Talks」で語った“The Danger of a Single Story”(シングルストーリーの危険性)を挙げて説明した。トンビニ氏 発言要旨私たちの社会はさまざまな文化や価値観の中で構成されるストーリーがあることを忘れてはいけない。原子力は危険な技術というシングルストーリーを、TMI、チョルノービリ、福島をもとに展開し、開発に反対する動きは根強い。その一方で、原子力により得られる恩恵は大きい。アフリカでの原子力開発を守るために、2021年10月にAfrica4Nuclearが設立された。AUアジェンダ2063の達成に向けて原子力を推進することを目的とするアドボカシー・キャンペーンである。あくまでもアフリカ大陸における原子力プログラムの開発が目的であり、各国政府に対してどの技術を導入すべきかを規定するものではない。アフリカ大陸が原子力を含むエネルギーミックスを追求する理由は、エネルギー貧困を解消貧困、不平等、失業という脅威への対処気候危機の問題への対処経済復興と復興計画ポストパンデミックで重要な役割を果たすこと──が挙げられる。大規模な工業化に踏み切るためにも、エネルギー貧困に対処することは喫緊の課題である。トンビニ氏Africa4Nuclearは原子力に特化したシンクタンクとして、ステークホルダーと協力しながら、持続可能な開発に向け、原子力についての啓蒙活動を行い、短編ビデオなどを活用したソーシャルメディアキャンペーンを通じて情報を提供したりする。オピニオンリーダーとして、論説を書き、イベントやウェビナーにも参加する。SDG7(安価でクリーンなエネルギー)の実現は、SDGsの全項目を達成するために不可欠であり、政策立案者や指導者に原子力の利点を伝えることで、原子力を含むエネルギー政策に影響を与えることを目標とする。アフリカの原子力開発の動向として、ガーナは6月、商用利用されている原子力発電所の技術を評価するため、情報提供依頼書(RFI)を発行。中国、フランス、カナダ、韓国、ロシア、アメリカから15のベンダーがRFIに回答した。国際原子力機関(IAEA)はアフリカのケニアとウガンダで統合原子力基盤レビュー(INIR)会合を2度開催し、各国の原子炉インフラストラクチャ―開発の進捗状況を確認した。ナイジェリア政府は、5つの原子力関連規制を承認、可決した。 400万kWの原子力施設建設のための入札が近頃公開された。南アフリカは 250万kWの新規原子力発電所のための計画を承認した。調達プロセスは2024年までに終了する予定。ザンビアの放射線防護局は、国内の原子力技術の使用に対する規制体制が整ったことを発表。ルワンダは今後短期間のフィージビリティ・スタディに関する契約締結を予定している。ニジェールは政府の開発プログラムに含まれる原子力プログラムを確実に実行に移すことを確認した。考慮すべきは、アフリカでは、いまだ6億人が電気のない生活を送っていること。貧困撲滅に向けた国際的な取り組みを成功させる方法としてクリーンな近代的エネルギーを活用できることが不可欠と考える。大陸が直面する社会経済的課題を見れば、エネルギーミックスの重要性は明らか。ガスは、CO2収支の面でメリットが大きいが、一部の国では、パイプラインで発電所にガスを供給するためのインフラを開発する必要がある。南アフリカでは2030年以降、石炭火力発電所の老朽化による設備の廃止により容量1,000- 2,400万kW超分のエネルギーが失われる予定。他のエネルギーに置き換えるにも水不足が大きな課題であり、水力発電という選択肢はあり得ない。アフリカ諸国の現状を、イギリスの家庭1世帯が1日に2回お湯を沸かすために使う電力は、マリ国民1人当たりの年間電気使用量の5倍である。アフリカが目指す原子力の将来像は、適正な価格で確実なエネルギーが供給されること。「持続可能な開発のためのアジェンダ」実現のカギを握る原子力を、若い世代が、気候変動の解決に役立つクリーンなエネルギー源として評価する未来を描く。「メイド・イン・アフリカ」のSMR技術を商業利用にむけた共同研究の機会提供も検討される。アフリカには、軽水炉、SMR、HTRなど、豊富な原子力市場がある。日本の組織・機関には、アフリカが原子力開発の新たなフロンティアであり、原子力技術を有するすべての国が機会を求めて競い合い、すでに自らを位置づけていることを認識してほしい。Africa4Nuclearやその関係者とネットワークを構築し、アフリカ大陸の環境についてより深く理解し、機会を追求しないことは、日本にとって不利である。原子力に関しては、技術不足がアフリカが抱える課題だが、同様に原子力発電、原子力設置許可、サイト選定、原子力インフラの運転などの経験がなかったアラブ首長国連邦はバラカ原子力発電所を、2012年7月に建設を始め、2018年12月に完成させている。南アフリカは、ここで述べた大半の経験がある。50年以上にわたって研究炉SAFARI-1を運転しており、今や南アフリカは核医学において世界のトップクラスを誇る。クバーグ原子力発電所は1984年以来、安全に稼働している。こうした実績が、アフリカ大陸全体に、能力の面で競争力につながっている。ネルソン・マンデラ氏は、「奴隷制やアパルトヘイトと同様、貧困は自然のものではない。人間が生み出したものだ。それゆえに人間の行動で貧困を克服、撲滅させることができる。貧困や不正、差別がこの世からなくなるまでは、誰一人として本当に休むことはできない」と言っていた。原子力産業で働く現在の若い世代として、「包括的な成長と経済開発を基盤とした豊かなアフリカ」を築くことを約束する!♢ ♢続いて京都大学総合生存学館 特定准教授の武田秀太郎氏が、核融合スタートアップの状況について発表した。武田氏 発言要旨30年先の技術と言われながらも、急速に加速する核融合業界。その背景には核融合スタートアップの存在がある。公的な長期ビジョンに基づく戦略的プロジェクトと民間資金によるアジャイルなイノベーションが並走する土壌が醸成されつつある。先月、ホワイトハウスで核融合サミットが開催され、米エネルギー省が、民間部門と協力しながら、商用核融合エネルギーの実行可能性を加速させる「核融合エネルギーとプラズマ科学10か年国家戦略計画」を策定と表明。メジャーな米紙や日経新聞でも核融合の話題が取り上げられている。この一年を見ても英国のB.ジョンソン首相により「グリーン産業革命に向けた10項目の計画」が発表され、2040年までに商用利用可能な核融合発電炉の建設を目指すとした。さらに民間ではMITのスピンアウトであるCommonwealth Fusion Systems社は「2030年に発電」するとし、ビル・ゲイツ氏から2,000億円の資金調達に成功している。Googleが1,200億円を出資するTAE Technologies社も「2030年に原型炉完成」を目指す。国家レベルで20年、民間レベルではあと8年で発電開始が見込まれる。武田特任教授核融合は、国家レベルで予算が与えられるビッグサイエンスの位置付けを確立した。ビッグサイエンスプロジェクトとは、国際宇宙ステーションが代表的。このビッグサイエンスにベンチャーが進出した。特に有名なものとしてはスペースX社が挙げられる。2020年5月にスペースX社は歴史上初の民間による有人宇宙飛行を実現し、国際宇宙ステーションへの輸送コストをわずか1/20に削減した。ベンチャー企業によるビッグサイエンス領域への参入という新しい時代の幕開けが核融合業界にも起きつつある。核融合による新エネルギー開発の超大型国際プロジェクト(ITER)という長期ビジョンに従ったプロジェクトがある。その一方で民間資金によるアジャイルのイノベーションを狙う動きがある。核融合は各国政府によりビッグサイエンスとして半世紀以上研究されてきた。2050年頃に実用化が見込まれている。そんな中、この20年間、核融合関係のスタートアップは増えている。自社で核融合炉建設からエネルギー利用までを目指すと宣言する民間スタートアップの数は、過去20年間、増加の一途を辿り、これら企業の68%が過去10年間に、56%が過去5年間に設立されている。欧米が先行するが、国内でも京都大学発の京都フュージョニアリング社に続いて大阪大学発のEX-Fusion社が誕生した。74%の核融合スタートアップが2030年代に送電開始を想定しており、起業の勢いはますます加速する。さらに、IAEAの核融合装置データベースによれば、数ベースでは既に建設・計画中装置の半数が民間によるものとなっている。民間資金も2021年単年でも3,000億円に達する。新たなステークホルダーとして団体投資家が核融合という窓口を通じて続々と原子力業界に参入している。環境志向により、ESG投資((環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素を考慮した投資))先として核融合を選択する動きがある。長期ビジョンに基づいた公的なプログラムと、より活力のあるイノベーション思考の民間スタートアップ。こうしたものが同じ領域に存在する。さらに民間には、新しい風が常に吹き込まれる。こうした状況は核融合業界のみならず原子力業界全体にとっても望ましい方向性と言える。次世代原子力の有する環境上の利点を客観的に訴求し、かつイノベーションにより小型化・低コスト化・早期実現が可能であることを示すことで、新たなプレーヤーである民間投資家やスタートアップを惹きつける。♢ ♢パネル討論では、ステークホルダーの多様性と共感できるビジョンの提示について議論。原子力産業に対する理解を広めるにあたりどのような活動をしているのかについて、「絵本を使った読み聞かせや作文コンクールの実施、実際に設備を見学する機会をつくるなど地域コミュニティとの交流」(メイリンガー氏)、「短編ビデオの活用や若手への技術継承」(トンビニ氏)、「ライバルであり共に核融合業界を築くコミュニティの形成」(武田氏)が挙げられた。村上氏は、産業界と研究コミュニティの距離が生まれていることに懸念を示しつつ、コミュニケーションを取りながらいろんなステークホルダーの意見が意思決定に取り入れられる重要性を強調した。
- 15 Apr 2022
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カナダの4州、SMRの戦略的開発・建設計画を共同策定
カナダのオンタリオ州、ニューブランズウィック(NB)州、サスカチュワン州、およびアルバータ州の4州は3月28日、小型モジュール炉(SMR)を開発・建設していくための共同戦略計画を策定したと発表した。この戦略計画では、各州の経済成長や人口増加に対し、安全で信頼性の高い無炭素なエネルギーをSMRがどのように提供していくかを集中的に取り上げており、将来カナダのSMR技術や専門的知見を世界中に輸出していくための新たな機会を模索。これらの州ですでに進展中の3つの方向性にSMRの建設を進めていくとしており、2026年までにチョークリバーで小型の高温ガス炉を完成させる計画や、2028年までにダーリントン原子力発電所敷地内で送電網への接続が可能なSMRを完成させる計画などを明記している。同戦略計画の元になっているのは、オンタリオ州とNB州、およびサスカチュワン州の3州が、2019年12月に締結したカナダ国内での多目的SMR開発・建設するための協力覚書に基づき、それぞれの州営電力に委託して実施した「SMR開発の実行可能性調査(FS)」の結果である。アルバータ州が2021年4月にこの覚書に加わった際、同時に公表されたFS調査の結果報告書によると、「出力30万kW以下のSMRはカナダのエネルギー需要を満たすのに貢献するだけでなく、温室効果ガスの排出量を削減。そのクリーンエネルギー技術と地球温暖化との取り組みで、カナダを世界のリーダーに押し上げることが期待される」と結論付けていた。今回の戦略計画で4州が進める5つの優先対策は以下の通りである。送電網に接続可能なSMRとそうでないものの両方について、3つの方向性で複数のSMR技術の開発・建設を推進し、カナダを世界的なSMR輸出国に位置付ける。SMR用に適切な規制枠組みが構築されるよう促し、SMR周辺住民の健康と安全、環境を防護しつつ合理的な建設コストと工期を実現する。新しいSMR技術の開発に対し、財政面や政策面でカナダ連邦政府の支援を取り付け、カナダ全土でその経済的利益を得るとともにCO2の削減目標達成の一助とする。SMR計画に先住民コミュニティを含むカナダの一般市民が参加可能となるよう、機会を創出する。SMRから出る廃棄物の盤石な管理計画の策定で、連邦政府や原子力発電所の運転会社と協力する。最初の優先方策で示された3つの方向性について、戦略計画はオンタリオ州のダーリントン原子力発電所内で、2028年までに送電網に接続可能な出力30万kWのSMRを1基建設すると表明。後続のSMRを複数サスカチュワン州内で建設するとしており、このうち最初の1基の運転開始時期を2034年に設定している。ダーリントンでの建設計画については、オンタリオ州営電力(OPG)会社が2021年12月、候補の3設計の中から米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のBWR型SMR「BWRX-300」(電気出力30万kW)を選定した。2つ目の方向性としては、第4世代のSMRを2種類、NB州のポイントルプロー原子力発電所敷地内で建設する。米ARCクリーン・エナジー社製のナトリウム冷却・プール型高速中性子炉のSMR「ARC-100」(電気出力10万kW)を、2029年までに本格的に運転開始するほか、英国のモルテックス・エナジー社が開発した「燃料ピン型溶融塩炉(Stable Salt Reactor-Wasteburner: SSR-W)」(電気出力30万kW)については、2030年代初頭までに商業規模の実証炉を建設する計画である。3つ目では、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)製の第4世代の小型高温ガス炉「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」(電気出力0.5万kW)を、USNC社とOPG社の合弁事業体であるグローバル・ファースト・パワー社が、2026年までにカナダ原子力研究所(CNL)のチョークリバー・サイトで完成させる。これにより、基幹送電網に接続できない遠隔地域への電力供給や、鉱山での採掘活動におけるSMRの実行可能性を実証するとしている。今回の戦略計画について、オンタリオ州政府は「我々のSMR開発を世界中が注目しており、SMR技術の研究開発の世界的センターとしてのわが州の名声はますます高まっていく」と指摘した。また、「SMRは信頼性の高い廉価なクリーンエネルギーを生み出せるため、新たな雇用の創出に貢献するほか、クリーンエネルギーにおけるカナダの優位性を一層促進、オンタリオ州では州の全域で雇用を生み出す新たな投資が確保される」と強調している。(参照資料:オンタリオ州、ニューブランズウィック州、サスカチュワン州、アルバータ州の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 31 Mar 2022
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カナダ政府、WH社製SMRの国内建設に向け約2,700万加ドル投資
カナダ政府は3月17日、米ウェスチングハウス(WH)社が開発している次世代のマイクロ原子炉「eVinci」(電気出力は最大0.5万kW)をカナダ国内で将来的に建設するため、2,720万カナダドル(約26億円)を同社のカナダ支社に投資すると発表した。この資金は、イノベーション・科学・研究開発省(ISED)の「戦略的技術革新基金(SIF)」から拠出される予定。同基金からはすでに2020年10月、テレストリアル・エナジー社の「小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)」開発を加速するため、2,000万カナダドル(約19億円)を投資することが決まっている。発表によると、カナダは原子力発電とその安全性確保で世界のリーダー的立場を自負しており、国内には小型モジュール炉(SMR)技術を安全かつ責任ある形で開発できる世界的に有望な市場も存在する。そのため同国は、WH社が約5,700万加ドル(約54億円)かけて進めているeVinci開発プロジェクトを支援し、SMR技術の「いつでも利用可能で運搬も容易な低炭素エネルギー源」としての能力を活用するほか、カナダ経済への多大な貢献を期待。同国が目標とする「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化」達成の一助になると説明している。カナダ政府はまた、eVinciプロジェクトへの投資を通じて、カナダ国内の技術革新を促進していく方針である。具体的には、ディーゼル発電に依存しているコミュニティのクリーンエネルギーへの移行を促すほか、エネルギー部門で高給の常勤雇用200名分以上を創出・維持する。eVinciプロジェクトはさらに、カナダの将来的な経済成長と技術革新を支える主要要素として、高度な技術力を持った労働力の育成や新たな基礎技術研究を促進していくと指摘。政府がカナダを世界の技術革新の中心地とするため、2017年予算で発表した「技術革新と技能計画」をも後押しするとした。eVinciプロジェクトはこのほか、カナダのSMR技術開発、およびその長期的なビジョンを示した2020年の「SMRアクション計画」を支援するとカナダ政府は指摘している。WH社の説明では、「eVinci」の設計寿命は40年間。10年以上燃料交換なしで運転することが可能である。主に送電網の届かない遠隔地や島しょ地域におけるクリーンな熱電併給を想定した設計であり、分散型発電を必要とする鉱山や産業サイト、データセンター、大学、舶用推進、水素製造、海水脱塩等に利用できる。また、負荷追従運転にも対応するなど、柔軟性の高い運転が可能な「eVinci」は主要なエネルギー源として活用するほかに、再生可能エネルギーなどその他の電源と組み合わせれば、恒久的なインフラ設備の建設費用を抑えられるため、カナダのエネルギーコスト削減にも役立つ。ISEDのF.-P.シャンパーニュ大臣は、「脱炭素化に取り組みながらカナダ政府はコロナ後の経済再興を進めているところであり、地球温暖化の防止策をしっかり講じた有望な将来基盤が形作られつつある」とコメント。「この投資は地球温暖化の防止で重要な役割を果たすだけでなく、カナダのエネルギー部門で確実に雇用を確保することにもつながる」と強調している。(参照資料:カナダ政府、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 22 Mar 2022
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加OPG社、ダーリントンでのSMR建設でサイト準備作業開始へ
カナダのオンタリオ州営電力(OPG)は3月10日、既存のダーリントン原子力発電所でGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」を建設するため、初期のサイト準備作業を開始すると発表した。この作業に向けた第一段階として、OPGは今回、カナダの様々な産業界でEPC(設計・調達・建設)事業を多角的に展開しているE.S.フォックス社と3,200万カナダドル(約29億5,000万円)の契約を締結した。実際に準備作業を始めるには、カナダ原子力安全委員会(CNSC)等から許認可を得る必要がある。そのため、これらがOPGに発給されるのを待って、E.S.フォックス社は今年後半にも、建設サイトに通じる道路の整備やサイトに電力や水を供給するサービスなど、建設インフラの整備事業を開始する計画だ。オンタリオ州南部のダラム地方に立地するダーリントン発電所では、2012年8月にCNSCがOPGの大型炉増設計画(当時)に対して「サイト準備許可(LTPS)」を発給した。しかし、OPG社はその後この計画を保留しており、2020年11月には「ダーリントン新設サイト」でSMRの建設に向けた活動を開始すると発表している。取得したLTPSは有効期限が2022年8月に迫っていたため、OPGはこれに先立つ2020年6月に更新申請書をCNSCに提出。CNSCは2021年10月に同LTPSの10年延長を承認しており、同サイトは現在、カナダで唯一LTPSが認められている地点である。2021年12月になると、OPGは同サイトで建設するSMRとして、3つの候補設計の中からGEHの「BWRX-300」を選定した。両社は現在、SMRの建設に向けた設計・エンジニアリングや計画立案、許認可手続きの実施準備等で協力中。OPGは2022年末までに建設許可をCNSCに申請し、早ければ2028年にもカナダ初の商業用SMRを完成させる方針である。カナダでは、国内の商業炉19基のうち18基がオンタリオ州に立地しており、同州はこれらを通じて、2014年に州内の石炭火力発電所の全廃に成功している。同州はまた、出力の拡大・縮小が可能で革新的技術を用いた多目的SMRをカナダ国内全体で開発・建設するとし、2019年12月にニューブランズウィック州およびサスカチュワン州の3者で協力覚書を締結。2021年4月には、この覚書にアルバータ州も加わっている。これらの州政府はともに、「原子力発電はCO2を出さずに安全で信頼性の高い電力を適正価格で供給できる発電技術」と認識しており、OPGは「原子力が電源構成要素に含まれなければ、地球温暖化の防止構想は目標を達成できない」と指摘。出力30万kW程度のSMRが1基あれば、その設置場所次第で温室効果ガスの排出量を年間30万トン~200万トン削減できると強調している。今回のE.S.フォックス社との契約締結について、OPGのK.ハートウィック社長兼CEOは、「輸送その他の部門で電化が進んでいるため、オンタリオ州では電力需要の増加が見込まれている。今回の契約を通じて、当州ではクリーンで安全な電力を追加でもたらす発電設備の建設に向けて、基盤が形成される」と述べた。同CEOはまた、このような初期作業によりオンタリオ州では約100名分の雇用が新たに創出されると表明している。(参照資料:OPGの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 14 Mar 2022
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ウクライナがカナダ製原子炉の導入に向けカナダの原子力産業界と協力覚書
ウクライナで4サイト・15基の民生用原子炉を運転する国営のエネルゴアトム社、およびカナダの原子力産業機構(Organization of Canadian Nuclear Industries =OCNI)は2月2日、ウクライナにおけるカナダ製原子力発電所の建設に向けて、協力覚書を締結した。OCNIはカナダの原子力産業界のサプライヤー240社以上で構成される非営利団体で、カナダ型加圧重水炉(CANDU炉)や軽水炉の機器設備を設計・製造する企業やエンジニアリング・サービス企業などが参加。国内外の原子力市場に、これらの機器やサービスを提供している。今回の覚書を通じてOCNIは、カナダ製の大型原子力発電所や小型モジュール炉(SMR)をウクライナで建設する機会が得られるよう支援していくほか、原子力発電所サイトにおける大規模データセンターの設置、原子力発電所の廃止措置、原子力発電を活用した医療用放射性同位体の生産や水素製造などでもウクライナ側と協力する。両者はまた、両国の原子力関係研究機関や、原子力教育および原子力研究開発関係の学部を有する大学相互の協力も促進する方針である。覚書への調印は、カナダ・オンタリオ州のピッカリングにあるOCNI本部とウクライナの首都キエフにあるエネルゴアトム社の本部をインターネットで結び、OCNIのR.オーベルト理事長とエネルゴアトム社の実質トップであるP.コティン総裁代理が行った。R.オーベルト理事長は、「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化するという世界的な構想の実現に向けて、ウクライナが推進するプロジェクトに緊密に協力していきたい」と述べた。P.コティン総裁代理も、「原子力発電所における信頼性の確保や関連する研究開発、技術革新、環境保全など、原子力発電に関わる最も有望な分野で、カナダの原子力産業界と連携協力する新たな機会が開かれた」と表明している。ウクライナでは2014年に親ロシア派のV.ヤヌコビッチ政権が崩壊し、それ以降は親欧米派が政権を維持。クリミアの帰属問題や天然ガス紛争等により、旧宗主国であるロシアとの関係は悪化の一途をたどっている。ロシアからのエネルギー輸入依存から脱却するため、ウクライナは国内15基のロシア型PWR(VVER)で使用する原子燃料を、米ウェスチングハウス(WH)社やカナダのカメコ社など、ロシア以外の企業から調達する手続を進めている。また、国内で米ホルテック・インターナショナル製SMRの建設可能性を探るため、エネルゴアトム社は2018年3月にホルテック社と協力覚書を締結。2021年9月には米ニュースケール・パワー社が開発したSMRの導入に関しても協力覚書を締結した。さらに同年8月末にエネルゴアトム社は、VVER設計による一部の建設計画が凍結されていたフメルニツキ原子力発電所、およびその他のサイトにおけるWH社製AP1000の建設に向けて、WH社と独占契約を締結している。(参照資料:OCNIの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 07 Feb 2022
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加OPG社、ダーリントン発電所内で建設するSMRとして「BWRX-300」を選定
カナダのオンタリオ州営電力(OPG)会社は12月2日、新たに既存のダーリントン原子力発電所で建設する小型モジュール炉(SMR)として、候補の3設計の中からGE日立・ニュークリアエナジー(GEH)社製「BWRX-300」を選定したと発表した。OPG社とGEH社は今後、SMRの建設に向けた設計・エンジニアリングや計画立案、許認可手続きの実施準備等で協力する。OPG社はまた、関係の各種承認が下りるまでの間、2022年春にも建設工事に必要なサービス業務の手配などサイトの準備作業を開始し、同年末までにカナダ原子力安全委員会(CNSC)への建設許可申請を目指す。早ければ2028年にも、カナダでは初となる商業用のSMRを完成させる計画だ。オンタリオ州南部のダラム地方に立地するダーリントン発電所については2012年8月、OPG社が当LTPS)」を発給した。しかし、オンタリオ州はその後この計画を保留、その一方で、同発電所で稼働中の4基および州内のその他の発電所でも、運転期間の延長計画や大規模な改修プロジェクトが進められている。2020年11月になるとOPG社は、LTPSを取得したダーリントン新設サイトでSMRの建設に向けた活動を開始すると発表した。同LTPSについては有効期限切れが2022年8月に迫っていたため、同社はこれに先立つ2020年6月に更新申請書をCNSCに提出済み。CNSCは2021年10月に同LTPSの10年更新を承認しており、同サイトは現在、カナダで唯一LTPSLが認められている地点となった。OPG社としては、州内に確立されているサプライチェーンを活用しつつ新たな雇用を創出し、ダラム地方をオンタリオ州におけるクリーンエネルギー供給の中心地とする方針である。OPG社のK.ハートウィック社長兼CEOは、「原子力は実証済みの技術を活用したCO2排出量ゼロのベースロード電源であり、2040年までに当社がCO2排出量の実質ゼロ化を達成し、2050年までに経済全体で幅広く脱炭素化を実現するために機能する」と指摘。SMRという革新的技術の建設をGEH社と連携して進めることにより、同社はカナダのみならず国外においても、次世代の原子炉を開発・建設していく道を拓きたいと抱負を述べた。GEH社の「BWRX-300」は電気出力30万kWのBWR型SMRで、2014年に原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得した第3世代+(プラス)の同社製設計「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」がベースとなっている。GEH社の説明によると、「BWRX-300」は自然循環技術を活用した受動的安全システムなど画期的な技術を多数採用しており、設計を大胆に簡素化したことで単位出力あたりの資本コストはその他のSMRと比べて大幅に削減されている。このようなSMRを建設する意義についてOPG社は、オンタリオ州内の輸送その他の部門で広範囲に増加が見込まれる電力需要に対し、クリーンエネルギーを提供する重要な電源となり、同州経済の脱炭素化に幅広く貢献するとした。同社はまた、国際エネルギー機関(IEA)を含む複数の国際機関が、「原子力を電力供給ミックスに含めなければ脱炭素化は達成できない」とはっきり述べている事実に言及。出力約30万kWのSMR一基で、年間30万トン~200万トンのCO2排出を抑制できると強調した。雇用・経済面の効果に関しても、同社はシンクタンクに依頼して実施した調査の結果、建設段階および60年間の運転期間も含めて多大な恩恵が同州にもたらされると指摘。間接的な雇用も含めて、開発期間中に年平均で約700名分の雇用が生み出されるほか、機器の製造期間に約1,600名分、運転期間中に約200名分、廃止措置期間には約160名分の雇用が創出されるとした。OPG社はまた、カナダの国内総生産(GDP)に対するプラスの影響として、25億カナダドル(約2,200億円)以上が見込めるとともに、オンタリオ州経済に対しても8億7,000万加ドル(約780億円)以上の増収が期待できると述べた。OPG社の発表によると、カナダではサスカチュワン州も石炭火力発電所に替えてSMRの建設を検討しており、2030年代初頭に最大4基のSMRのうち最初の一基が同州で運転を開始する可能性がある。国外でも英国や米国、フランス、ポーランド、エストニアなどが同様にSMRの建設に強い関心を抱いており、オンタリオ州は、このような国内外のサプライチェーンに貢献できる有利な立場にあると強調した。(参照資料:OPG社、GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 03 Dec 2021
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米ニュースケール社、プロディジー社の海洋原子力発電所建設に向け協力覚書
米国のニュースケール・パワー社は11月17日、カナダのプロディジー(Prodigy)・クリーン・エナジー社が開発している「海洋原子力発電所(MPS)」の建設と商業化を支援するため、規制インフラの構築に向けた提案などでカナダのキネクトリックス(Kinectrics)社とともに同社に協力する覚書を3社間で締結したと発表した。プロディジー社のMPSには、ニュースケール社が開発した小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」が最大で12モジュール組み込まれる予定。MPSは海岸に設置したタービン等の発電構造物に原子炉を統合する発電所で、造船所で製造後に海上輸送され、海岸線の防水仕様の係留地点に据付けられて、そこから海岸の送電網に接続され送電する。短い工期で建設が可能な上、低炭素なエネルギーをベースロード・モードで供給できることから、ニュースケール社はMPSが世界的規模で化石燃料発電に取って替わっていくと強調している。今回締結された協力覚書は、ニュースケール社とプロディジー社が2018年に締結した既存のパートナーシップに基づいており、SMR技術の商業化に向けた重要なステップとなる。同覚書を通じて3社はMPSの潜在的な顧客や、許認可体制など規制インフラに関する当局者との協議に備え、技術仕様書や規制関係文書を作成する。ニュースケール社によると、SMR建設にプロディジー社のMPSシステムを活用する利点は、従来の大型発電所と比べて建設コストを大幅に削減できることと、環境への影響や建設工期が縮減されることにある。このため同社は今回、電力産業界に許認可関係や環境分析、海辺の送電インフラに関するサービスを提供しているキネトリックス社とも協力。再生可能エネルギー源と連結したMPSをプロディジー社が一つだけ建設した場合や、MPSを水素燃料などのクリーンエネルギー製造に活用した場合について、経済性や商業規模などを評価する方針だ。ニュースケール社のNPMを動力源とするMPSは、沿岸部の都市やコミュニティ、臨海工業地帯のみならず、島国に対してもクリーンで持続可能なエネルギーを確実に提供することが可能。ベースロード用電源としてだけでなく負荷追従運転にも対応し、高度に合理化された廉価なクリーンエネルギーの供給手段になるとニュースケール社は強調している。プロディジー社は現在、カナダ原子力安全委員会(CNSC)とMPSに関する協議を始めたところで、許認可手続きの開始に先立ち実施すべき諸活動などを提案中。同社のM.トロジャーCEOはMPSの規制について、「北米での規制案件としては最初のものとなるが、カナダでは連邦政府がSMR開発に意欲的な方針を堅持しているほか、原子力規制当局の経験が豊富。国内の原子力発電所の収益性も高く、安全運転の実施では世界をリードするなど、当社のMPS開発を成功に導く環境は整っている」とした。その上で、「カナダの政策や規制体制に助けられて当社のMPSがスタート地点に立ち、将来的な輸出にも道が開かれることを期待している」と述べた。(参照資料:ニュースケール社、キネクトリックス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 Nov 2021
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カナダの調査報告書:「同国製の第4世代SMRはカナダ経済に大きな利益もたらす」
カナダのテレストリアル・エナジー社は11月8日、同社製の小型モジュール炉(SMR)など、カナダで開発された第4世代のSMRがオンタリオ州で建設された場合、膨大な利益が同州やカナダ経済にもたらされるとの分析調査結果を発表した。この調査は、同社がオンタリオ州を本拠地とする土木建築・コンサルティング企業、ハッチ社に委託して実施したもの。同州では現在、州営電力のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社がダーリントン原子力発電所の敷地内で、テレストリアル社の小型モジュール式・一体型溶融塩炉「IMSR」を含む3つのSMR設計の中から、1つを選択して建設することを検討している。ハッチ社によると、オンタリオ州およびカナダ全体でどれほどの規模の利益が得られるかは、この「ダーリントン原子力新設プロジェクト(DNNP)」で選択されるSMR設計にかかっている。カナダで開発されたSMR技術の場合、その設計を世界市場に輸出する可能性も含めて、数十年の間に数千億ドル規模の「触媒効果的利益」が期待できる。一方、カナダ以外の国で開発されたSMR技術では、その国のサプライチェーンが引き続き、開発企業に協力するためそうした可能性は低い。DNNPではIMSRのほかに、米GE日立・ニュクリアエナジー社製の軽水炉型SMR「BWRX-300」、および同じく米国企業のX-エナジー社が開発した小型のペブルベッド式高温ガス炉「Xe-100」が候補設計に選定されている。テレストリアル社が開発したIMSRは電力のほかに熱エネルギーを供給可能で、使用する溶融塩燃料は第4世代設計のなかで唯一、これまで軽水炉に装荷されてきた標準タイプの低濃縮ウランで製造される。同社は今年9月、IMSRと発電機を2基ずつ搭載する電気出力39万kWの改良型発電所設計「IMSR400」を発表しており、カナダで開発されているSMR設計のなかでは最大出力となる。ハッチ社の調査報告書によると、IMSR400発電所をダーリントンで建設した場合、設計・建設段階の9年間に30億カナダドル(約2,700億円)以上の利益がカナダのGDPに追加され、年平均で2,100名以上の雇用を支えることになる。これに加えて、同発電所の運転段階で年間合計45億加ドル(約4,100億円)以上の利益が生み出され、創出される雇用は年間580名分におよぶと予測。設計から廃炉までの全期間で試算した場合は、オンタリオ州のGDPにもたらされる利益は約66億加ドル(約6,000億円)、カナダ経済に対しては79億加ドル(約7,200億円)に達するとしている。ハッチ社はまた、第4世代の原子力発電所はカナダのみならず、世界中の発電システムの中で化石燃料に取って替わる莫大な可能性があると指摘。第4世代の原子炉技術のみが原子力の経済性を改善し、商業用原子力発電におけるカナダのこれまでのリーダーシップを永続させることができるとしている。テレストリアル・エナジー社のS.アイリッシュCEOは、「英国グラスゴーでは各国のリーダー達がCOP26でCO2排出量の実質ゼロ化に向けた方策を話し合ったが、IMSRはカナダの数多くのサプライチェーン・パートナーと協力して開発したカナダの第4世代炉であり、カナダのみならずその貿易相手国でCO2の実質ゼロ化に貢献できる」とコメント。ダーリントン発電所でのSMR建設は、その切っ掛けになるとの認識を示している。(参照資料:テレストリアル・エナジー社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Nov 2021
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GEH社とBWXTカナダ社、BWRX-300の商業化促進で協力合意
米GE社の10月19日付け発表によると、傘下のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は同社製小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の商業化をカナダで促進するため、BWXTカナダ社と設計・製造に向けたエンジニアリングおよび資機材の調達等での協力で合意した。カナダでは、オンタリオ州の州営電力であるOPG社が2020年11月、同社保有のダーリントン原子力発電所で早ければ2028年にもいずれかのSMRを完成させると発表、それに向けた準備を開始している。同社はまた、SMRデベロッパーの候補として、GEH社および同じく米国籍のX-エナジー社、カナダのテレストリアル・エナジー社の3社を選定していた。OPG社がBWRX-300を建設すると最終決定した場合、BWXTカナダ社は同設計の機器・設備の製造に向け、詳細なエンジニアリングと設計の業務(サービス)を実施する。将来的には、カナダ国内でのBWRX-300建設に必要な主要原子炉機器も供給していく考えだ。BWRX-300は電気出力30万kWの軽水炉型SMRで、2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得した第3世代+(プラス)のGEH社製設計「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」を最大限に活用している。同社の説明によると、「BWRX-300」では自然循環技術や受動的安全システムなどの画期的技術が組み込まれており、設計を大幅に簡素化したことで、単位出力当たりの資本コストはその他のSMRと比べて大幅に削減されている。 同設計ではまた、グローバル・ニュークリア・フュエル社が開発した認証済みの高性能燃料集合体「GNF2」を採用。ほかにも実証された機器技術や専門的知見を多数取り入れていることから、GEH社は「最も低リスクでコスト面の競争力も高いBWRX-300は、SMR市場で最初に実現する設計になる」と強調している。GEH社とBWXTカナダ社による今回の協力合意は、昨年6月に両社が結んだ協力覚書に基づくもので、GEH社は「オンタリオ州でBWRX-300の建設を進めるにあたり、カナダ国内でサプライチェーンを構築する重要な節目になった」と説明。「原子炉の主要機器を供給するBWXTカナダ社の能力は、オンタリオ州がそれらの高度な機器の製造の世界的拠点(ハブ)となることに貢献する」と述べた。BWXTカナダ社も、「GEH社との協力により、BWRX-300を建設する世界中のプロジェクトに参加する機会が得られる」としている。(参照資料:GE社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 21 Oct 2021
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カナダのテレストリアル社、IMSR用の燃料確保で仏オラノ社と協力
カナダのオンタリオ州を本拠地とするテレストリアル・エナジー社は9月29日、第4世代設計として開発中の小型モジュール式・一体型溶融塩炉「IMSR」について、使用する燃料を確保するため、仏オラノ社の米国法人と包括的な協力契約を締結した。この契約の下で、オラノ社は濃縮ウランやIMSR用に燃料を転換するサービスをテレストリアル社に提供する。燃料の製造のみならず輸送やパッケージングなど広範に作業を請け負う予定で、IMSR用の燃料を商業規模で本格製造するための分析調査も実施。カナダや米国、英国、日本など、将来の主要なIMSR販売市場においても商業製造した燃料を適用する考えである。今回の契約は、テレストリアル社が進める「複数ルートの燃料調達戦略」に基づいており、幅広い燃料サービスを通じて次世代原子炉の商業化を支援するというオラノ社の方針も反映。独占契約ではないので、双方がともに同種の契約をその他の企業と結ぶことが可能である。テレストリアル社の米国法人(TEUSA社)はすでに2020年11月、IMSRに使用する溶融塩燃料の詳細な試験を実施するため、米エネルギー省(DOE)傘下のアルゴンヌ国立研究所と協力すると発表。今年8月には、IMSR用濃縮ウラン燃料の商業規模での確保に向けて、同社は英国スプリングフィールドにある国立原子力研究所(NNL)、および同地で原子燃料製造施設を操業する米ウェスチングハウス(WH)社とも協力契約を締結した。テレストリアル社のIMSRは熱出力が40万kW、電気出力は19万kWで、電力のほかに熱エネルギーを供給可能。使用する溶融塩燃料は、これまで数10年以上にわたり軽水炉に装荷されてきた標準タイプの低濃縮ウラン(U-235の濃縮度が5%以下)を溶融フッ化物塩と混合して製造する。同社の説明では、先進的原子炉設計の多くがHALEU燃料(U-235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を使用するのに対し、IMSRは第4世代設計の中でも唯一、標準濃縮度のウランを使用することができる。同社はまた、9月14日に電気出力39万kWの改良型発電所設計となる「IMSR400」を発表した。電気事業者の要請により、原子炉と発電機を2基ずつツインユニットで設置しており、発電所としての出力を拡大。コスト面の競争力も改善しており、同設計はカナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社がダーリントン原子力発電所内で建設を検討している3種類の小型モジュール炉(SMR)候補設計の一つとなっている。テレストリアル社のS.アイリッシュCEOは、「燃料の購入にともない電気事業者が必要とするサービスは多岐にわたるため、今回の契約は燃料の輸送やパッケージング等の分野を幅広くカバーする包括的なものになった」と説明。このようなサービスは、IMSR初号機を早ければ2028年に稼働させる上で必要だとしている。(参照資料:テレストリアル社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 04 Oct 2021
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ポーランドでのSMR建設に向け4社が覚書
米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は9月23日、同社製小型モジュール炉(SMR)、「BWRX-300」のポーランドでのシリーズ建設に備え、同炉に必要なウラン燃料のサプライチェーンをカナダで構築する可能性評価を実施すると発表した。具体的にGEH社は、カナダの大手ウラン生産企業であるカメコ社、カナダでBWRX-300の建設を推進している子会社「GEH SMRテクノロジーズ・カナダ社」、およびポーランド最大の化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業「シントス・グリーン・エナジー(SGE)」の4社で協力覚書を締結。米GE社が日立製作所との合弁で運営している原子燃料製造企業、グローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社が開発した高性能燃料集合体「GNF2」を活用するなどして、低リスク・低コストのBWRX-300を最速でSMR市場に投入する考えだ。出力30万kWの水冷却型自然循環SMRであるBWRX-300の設計は、2014年に米原子力規制委員会(NRC)の設計認証を受けたGEH社の第3世代+(プラス)設計「ESBWR(革新型単純化BWR)」がベース。受動的安全システムを備えており、GEH社によれば設計を飛躍的に簡素化したことで、BWRX-300のMW当たりの建設コストは、その他の水冷却型SMRや既存の大型炉設計と比較して大幅に削減される。また、同炉にはESBWRの設計認証における基礎的部分を利用、技術的に実証済みの機器も組み込んだという。GEH社はすでに2019年10月、ポーランドでBWRX-300を建設する可能性を探るため、シントス社グループのSGE社と協力覚書を締結。翌2020年8月には、この建設計画の実施に向けて戦略的パートナーシップ協定を結んだ。GEH社はまた、BWRX-300の商業化を促進しカナダやその他の国で同設計を建設していくため、カメコ社およびGNF社の米国法人と今年7月に協力覚書を交わしている。一方のシントス社は今年8月、BWRX-300あるいは他の米国製SMRをポーランド国内で4基~6基(出力が各30万kW程度)建設するため、国内のエネルギー企業であるZE PAK社と共同で投資を行うと発表。建設予定地としては、ZE PAK社がポーランド中央部のポントヌフで操業する石炭火力発電所を挙げた。また、グループ企業のSGE社は2020年10月、BWRX-300技術を用いたプラントの建設・運営プロジェクトについて、ポーランドの原子力規制機関と協議を開始している。今回の協力覚書に関してGEH社は、「カメコ社やSGE社と協力してポーランドに無炭素なエネルギー源をもたらす一方、カナダではウラン供給関連の雇用を創出したい」と述べた。カメコ社側は、「世界中の国家や企業がCO2排出量の実質ゼロ化を達成する際、原子力は重要な役割を果たす」と指摘。その上で、「SGE社がSMRで模索している脱炭素化事業に、BWRX-300は革新的な技術で解決策をもたらす優れた実例になる」と強調した。SGE社も今回の覚書に加えて、「カナダで構築されつつあるBWRX-300の製造・輸出能力を補うべく、ポーランド国内でもサプライチェーン構築に向けてGEH社と一層緊密に連携していく」と表明している。(参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 Sep 2021
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カナダのテレストリアル社、溶融塩炉燃料の確保でWH社と英NNLを選択
IMSRの炉心ユニット©Terrestrial Energyカナダを本拠地とするテレストリアル・エナジー社は8月17日、開発中の小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)で使用する濃縮ウラン燃料を商業的に確保するため、米国のウェスチングハウス(WH)社および英国の国立原子力研究所(NNL)と協力契約を締結した。WH社は現在、英国スプリングフィールドで原子燃料の製造施設を操業しており、世界中の商業炉にウラン燃料を供給。NNLもスプリングフィールドのプレストン研究所で原子力研究を実施中で、同じサイトのWH社には技術支援サービスを提供している。テレストリアル社は両者の原子燃料製造能力と世界レベルの知見を活用して、一層安全でクリーン、信頼性やコスト競争性も高い第4世代の先進的原子炉となるIMSRに産業規模でウラン燃料を供給する体制を構築、出来るだけ早期にIMSRを建設する方針である。テレストリアル社のIMSRは熱出力=40万kW/電気出力=19万kWで、電力のみならずクリーンな熱を供給できる。使用する溶融塩燃料は、これまで数10年以上にわたり軽水炉に装荷されてきた標準タイプの低濃縮ウラン(U-235の濃度が5%以下)と溶融フッ化物塩を混合して製造。同社によると、先進的原子炉設計の多くがHALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を使用するのに対し、IMSRは第4世代設計の中でも唯一、標準濃縮度のウランを使用することが可能である。同社はまず、IMSRの最初の商業用実証炉をカナダで建設し、その後、同社の米国法人(TEUSA社)を通じて北米をはじめとする世界市場でIMSRを幅広く売り込む方針。現在、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が同国の規制要件に対するIMSRの適合性を「予備的設計評価(ベンダー設計審査:VDR)」で審査中である。また、TEUSA社は米原子力規制委員会(NRC)に対して、将来的に設計認証(DC)審査を受ける計画だと表明済み。TEUSA社は2020年代後半に米国初号機を起動できるよう、米エネルギー省(DOE)から財政支援を受けながら許認可手続き前の準備活動をNRCと進めている。 今回の契約について、テレストリアル社のS.アイリッシュCEOは「民生用として直ちに利用可能な標準濃縮度燃料を使用できるよう、我々はIMSRを設計しており、これは早期のIMSR建設実現に向けて大きな強みになる」と指摘。同社は現在、IMSRの燃料確保で複数の戦略を進めており、英国スプリングフィールドにおけるWH社とNNLの燃料関係の技術水準は世界でも最高レベルと考えている。このため、「この契約はIMSRを運転する電気事業者に専用燃料を長期的かつ確実に供給する重要ステップとなり、IMSR発電所の商業運転を明確に決定づけるものになる」と強調した。NNLのP.ハワース最高責任者は「IMSRに使用する商業用原子燃料の供給者として、テレストリアル社がNNLとWH社を選定したことをうれしく思う」と表明。この契約によって、IMSR初号機の運転開始に向けて新たな雇用が地元で創出されるとした。WH社のS.ルメール地域副社長も、「商業用原子燃料の世界的供給企業である当社には、先進的原子炉向けに新しい原子燃料を開発・製造する知識と技術と能力がある」と強調。「このような技術は地元スプリングフィールドに高度な製造専門職をもたらすとともに、英国にとっては戦略的国家資産にもなる」と指摘している。(参照資料:テレストリアル社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 20 Aug 2021
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カナダとルーマニアが民生用原子力分野の協力を強化
カナダの天然資源省とルーマニアのエネルギー省は8月5日、ルーマニアの民生用原子力部門の拡充や近代化などを目的に、両国間の原子力協力を強化する了解覚書を締結した。ルーマニアでは現在、唯一の原子力発電設備であるチェルナボーダ発電所でカナダ型加圧重水炉(CANDU炉)の1、2号機(各70万kW級)が稼働中。先月末からは米国との協力により、運転開始後25年が経過した1号機の改修工事と、建設工事が停止した3、4号機(各70万kW級CANDU炉)を完成させるプロジェクトが動き始めた。ルーマニアはまた昨年10月、同様の目的からフランスとも民生用原子力分野の協力を強化していくと表明、両国の(当時の)首相が協力宣言に調印した。今回はこれらの国にCANDU炉の開発国であるカナダが加わったことから、ルーマニアは既存炉の運転期間延長のための改修工事と新規原子炉の運転開始に向けて、カナダの原子力産業界が積み重ねてきたCANDU炉分野の高い実績に期待。このほか、小型モジュール炉(SMR)のさらなる開発支援に関する実行可能性分析や市場調査、原子力サプライチェーンの統合、高度な技能を有する労働力の育成なども両国の協力分野に含まれている。カナダは2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成すると約束した約120か国の1つであり、今回同国の天然資源省は「この意欲的な目標を達成するには、原子力を含めて様々なクリーンエネルギーを活用しなければならない」と表明。ルーマニアとの覚書は、このような地球温暖化の防止に向けた共通目標の達成と電力供給システムの脱炭素化という共通利益で、両国間の戦略的パートナーシップがいかに重要か示していると述べた。今回の覚書にはルーマニアのV.ポペスク・エネルギー相と、同国駐在カナダ大使館のA.グーレ大使がS.オレガン天然資源相に代わって調印、ルーマニアのF.クツ首相も同席した。ポペスク・エネルギー相は「我が国の新しい原子炉建設や既存炉の近代化プロジェクトに、米国とフランスに続いてカナダが加わってくれたことは非常に喜ばしい」とコメント。これらを通じて両国の協力関係をさらに深めるだけでなく、将来のグリーンエネルギーとなる新しい技術をともに実現していきたいと述べた。(参照資料:ルーマニア政府(ルーマニア語)、カナダ政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 11 Aug 2021
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次期エネ基に向け「原子力の活用が不可欠」、原産協会・新井理事長
日本原子力産業協会の新井史朗理事長は6月25日、記者会見を行い、現在検討作業が佳境となっている次期エネルギー基本計画に関して、「『原子力の依存度を可能な限り低減』とする現行方針の見直しと、新増設・リプレースへの言及」を改めて訴えた。新井理事長は、4月に菅首相が表明した「2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減」および「2050年カーボンニュートラル」の達成に向け、「原子力の活用が不可欠」と明言。原子力が役割を果たすため、4月26日の理事長メッセージで示す通り、新規制基準に適合したプラントの再稼働を着実に進めるとともに、設備利用率の向上や運転期間の延長が必要だと再度述べた。さらに、2050年を見据え、「今から新増設・リプレースの明確な方針を打ち出し必要な準備を進めるべき」とした上で、「より高い安全性を目指すことは大前提。そのための技術開発、人材育成を官民挙げて進める必要がある」と強調。原産協会として、「脱炭素社会の実現と持続的発展に貢献する『原子力の価値』に対する国民理解が深まるよう、精一杯努めていく」と述べた。また、国内初の40年超運転に向け関西電力美浜3号機が6月23日に原子炉を起動したことに関して、5月18日発表の理事長メッセージ「高浜発電所1、2号機および美浜発電所3号機の60年運転について」を配布。3基は1970年代に運転を開始しているが、10年ごとの定期安全レビュー、運転開始から30年以降は高経年化技術評価の実施とそれに基づく長期保守管理方針の策定、40年を超える運転期間延長に際しては、原子炉圧力容器などの取替が困難な設備の健全性確認が行われており、「延長期間における運転に問題がないことが確認されている」と説明。他プラントでの運転期間延長にも期待を寄せた。さらに、「世界の40年以上運転している原子力発電所」一覧表(原産協会作成、2021年1月現在)から、米国における近年の長期運転に向けた動きを述べ、5月に原子力規制委員会(NRC)より2回目の運転期間延長認可の承認を受けたサリー発電所1、2号機(バージニア州、PWR、各87.5万kW)を始め、80年までの延長認可が6基に上っていることを紹介。各国で進む原子力の長期運転について、IEAとOECD/NEAによる経済性評価にも触れ、電力安定供給における優位性とともに、エネルギーの脱炭素化にかかる期待も述べた。記者から、長期サイクル運転(定期検査の間隔を現在国内すべてのプラントが区分されている13か月を超えて運転すること)導入や運転期間制度の見直し(いわゆる「審査中は時計を止める」)について質問があったのに対し、新井理事長は、原子力エネルギー協議会(ATENA)による技術的取組・原子力規制員会との対話への期待や地元理解の重要性などを述べた。原子力発電所の新規建設計画が進まぬ中、既存プラントを通じた技術の蓄積・継承に関しては、今後の長期運転に向けた大規模改造が場を提供する可能性にも言及。この他、新井理事長は、6月24日の原産協会とカナダ原子力協会との協力覚書締結について紹介。同協力覚書のもと、新たなパートナーシップの構築を通じ、カナダの国家レベルでの小型モジュール炉(SMR)開発、ウラン供給を通じた原子力産業界との長いつながりを背景に、気候変動対策における原子力発電の推進、原子力イノベーション促進に資する活動を進めていく。
- 28 Jun 2021
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