キーワード:小型モジュール炉(SMR)
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加NB州 合計60万kWのSMRを建設へ
カナダ北東部のニューブランズウィック(NB)州政府は12月13日、安価なエネルギーを提供しつつ、同州経済の成長とクリーン・エネルギー化の促進を目指した新しいエネルギー戦略「Powering our Economy and the World with Clean Energy -- Our Path Forward to 2035 」を公表した。クリーン・エネルギーへの移行に向け、2035年まで12年間のロードマップも盛り込まれており、原子力に関しては同年までに州内のポイントルプロー原子力発電所(カナダ型加圧重水炉、70.5万kW)内で合計60万kWの小型モジュール炉(SMR)を建設すると表明している。同戦略のなかでNB州政府は、手頃なエネルギー価格と信頼性の高いエネルギー供給、新たなエネルギー技術や発電戦略等に合せたエネルギー市場改革、および州経済の成長という4点に重点を置いた。その結果、太陽光や風力などの再生可能エネルギーと、無炭素なベースロード用電源としてSMR等の原子力利用を大幅に拡大する方針を明示。これらを使って、ピーク時の電力需要に十分応えられる発電設備を州内で確保するほか、水素やバイオ燃料などの新しいエネルギー源を輸送部門に適用、さらなる省エネ対策やエネルギーの効率化を進めていく産業部門の電化は温室効果ガスの排出量削減で主要な役割を担うが、州政府の試算によると、NB州では2022年の年間電力需要の145億kWhが、2035年には234億kWhに拡大するため、発電設備を約60%増強する必要がある。カナダでは商業炉がNB州とオンタリオ州のみで稼働しており、NB州唯一の原子力発電所として州内の発電設備容量の15%を占めるポイントルプロー発電所は、過去40年以上にわたり同州の主要なベースロード用電源だった。NB州は2022年、オンタリオ州とサスカチュワン州、およびアルバータ州とともに、SMRを開発・建設していくための共同戦略計画を策定。NB州は、小型でモジュール式のSMRは従来の大型炉と比べて建設コストが低いだけでなく、太陽光など間欠性のある再生可能エネルギー源を補える柔軟なエネルギー源と認識しており、州営電力のNBパワー社と協力して、同社が運転するポイントルプロー発電所にSMRを2035年までに60万kW分新たに建設する。差し当たり2030年頃までに、最初の15万kW分の運転を開始して電力需要の増加に応えるほか、2035年までに残りを完成させて発電部門の脱炭素化を促す方針である。NBパワー社はすでに今年6月、ポイントルプロー発電所に米ARCクリーン・テクノロジー(ARC)社製の先進的SMR「ARC-100」(電気出力10万kW~15万kW)を建設するため、ARC社のカナダ法人と協同で「サイト準備許可(LTPS)」をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請した。2030年頃に送電開始し60年にわたって運転していく計画で、この「ARC-100」も含めた60万kW分のSMR建設によって、同州の原子力発電設備は2035年に現在の約2倍に拡大する見通し。これと同時に、同州政府は既存のポイントルプロー発電所の運転効率や信頼性を向上させる考えで、NBパワー社がパートナーらと協力してこれを進めていくとしている。(参照資料:NB州の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 Dec 2023
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英国 米ホルテック社製「SMR-300」の設計審査開始
英原子力規制庁(ONR)は12月7日、政府のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)の要請を受けて、米ホルテック・インターナショナル社製小型モジュール炉であるSMR-300(電気出力30万kW)について、包括的設計審査(GDA)を開始したと発表した。DESNZは同日、ホルテック社の英国法人であるホルテック・ブリテン社に対し、全4段階で構成されるGDAの1、2段階分の補助金として、3,005万ポンド(約54億円)を「未来の原子力実現基金(Future Nuclear Enabling Fund=FNEF)」から拠出していた。DESNZはホルテック社が提出していたGDA申請書を事前に精査し、同プラントがGDA開始前の4つの評価基準をクリアしていることを確認。これを踏まえて、ONRが同プラントの安全性とセキュリティ面について、環境庁(EA)とウェールズ自然保護機関(NRW)が環境影響面について、英国の基準を満たしているか約5年をかけて評価する。ホルテック社は2022年12月、PWRタイプの同社製SMR「SMR-160」(電気出力16万kW)をGDAにかけ、2028年までに英国内で初号機を着工するため、2023年初頭にも申請書を提出すると表明していた。同社はまた、米国でも「SMR-160」の建設を計画しており、米原子力規制委員会(NRC)とは設計認証審査に向けて申請前の事前協議を実施中である。ホルテック社は英国の原子力発電プログラムに対し、25年以上にわたって様々な機器やサービスを提供している。SMR開発にあたっては、エネルギー関係の英国コンサルティング企業であるモット・マクドナルド(Mott MacDonald)社を英国チームに加えたほか、国外では三菱電機や現代E&C社とも協力している。DESNZのA.ボウイ原子力・ネットワーク担当相は今回、「国内原子力産業の再活性化を目指し、過去数十年間で初めて公的基金を活用する」と説明。「FNEF」は、2022年5月にビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)(当時)が立ち上げた1億2,000万ポンド(約217億円)の補助金交付制度である。同相は、「約3,000万ポンドの投資は、英国エネルギー・ミックスのクリーン化とCO2排出量の実質ゼロ化に向けて、最新技術を用いた原子力発電所の建設を迅速かつ低コストで進めていくためのものだ」と強調している。なお、ホルテック社は、革新的な技術を用いたSMRの開発促進に向けてDESNZが今年7月に開始した支援対象の選定コンペにも参加。同コンペは、原子力発電所の新設計画を牽引する新しい政府機関「大英原子力(Great British Nuclear=GBN)」が担当しており、ホルテック・ブリテン社は今年10月、フランス電力(EDF)、英国のロールス・ロイスSMR社、米国籍のニュースケール・パワー社、GE日立・ニュクリアエナジー・インターナショナル社、ウェスチングハウス(WH)社の英国法人とともに、同コンペの次の段階に進むことが決定した。2024年に支援対象として選定された場合、ホルテック社は2050年までに複数のSMRで合計出力500万kW以上の設備を建設するため、英国内に主要機器の製造工場を設置する考えだ。(参照資料:ONR、DESNZ、ホルテック社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Dec 2023
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ポーランド 6地点の米社製SMR建設計画にDIP発給
ポーランドで米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の建設を計画しているオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社は12月7日、国内6地点における合計24基の「BWRX-300」建設計画に、気候環境省が原則決定(decision-in-principle=DIP)を発給したと発表した。DIPは原子力発電所建設計画に対する最初の基本的な行政判断で、DIP発給によりこれらのプロジェクトは国家のエネルギー政策に則し、国益に適うと正式に認められたことになる。今回の発表はOSGE社のR.カスプローCEOが、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された「第1回ネットゼロ原子力(NZN)サミット」の場で発表した。OSGE社は今年の4月中旬、数十の候補地点の中からSMRの建設サイトとして最も有力な7地点を選定。今回はこのうち、首都ワルシャワを除いた6地点─北東部のオストロウェンカ(Ostrołęka)とブウォツワベク(Włocławek)、南部のスタビ・モノフスキエ(Stawy Monowskie)とドンブローヴァ・グルニチャ(Dąbrowa Górnicza)、ノバ・フタ(Nowa Huta)それぞれの近郊地点、タルノブジェク(Tarnobrzeg)の特別経済区─で「BWRX-300」の建設が認められた。同社はこれらのいずれかで2030年にも初号機の完成を目指しており、カスプローCEOは今回、「世界的に見てもポーランドはCO2の排出量が多いため、複数の『BWRX-300』で国内産業や暖房部門にエネルギーを安定供給しながらCO2排出量を実質ゼロ化し、ポーランド経済の脱炭素化を促していきたい」と述べた。OSGE社は、ポーランド最大の化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社と同国最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社が50%ずつ出資して、2021年12月に設立した合弁事業体。同社は4月下旬、6地点の建設計画についてDIPの発給を気候環境省に申請した。同じ時期に、米ニュースケール・パワー社製SMRの建設計画でDIPを申請していた鉱業大手のKGHM銅採掘会社に対しては、気候環境省が今年7月にDIPを発給した。また、同じく7月に気候環境省は、国営エネルギー・グループ(PGE社)の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社が北部ポモージェ県内で計画している同国初の大型炉(ウェスチングハウス社製AP1000)建設についてDIPを発給。11月には、同省はPGE社傘下のPGE PAK原子力エネルギー(PGE PAK Energia Jądrowa)社が同国中央部ポントヌフのコニン地区で計画している韓国製大型炉「APR1400」の建設プロジェクトに対しても、DIPを発給している。なお、OSGE社は11月9日、欧州諸国の石炭火力発電所をSMRに転換しクリーン・エネルギーへの移行を直接支援するという米国務省(DOS)の新しいイニシアチブ「プロジェクト・フェニックス」で、同社が支援対象に加えられたことを明らかにした。「プロジェクト・フェニックス」では同社のほかに、スロバキア政府が34%出資するスロバキア電力(SE社)とルーマニア国営原子力発電会社(SNN社)にも、SMR建設計画の実行可能性調査や技術支援等で資金が提供される予定である。(参照資料:OSGE社の発表資料(ポーランド語)①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 11 Dec 2023
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米国務省と輸出入銀行 SMR等の輸出に財政支援
米国務省(DOS)は12月5日、CO2排出量の実質ゼロ化に向けた世界的な動きの中で、小型モジュール炉(SMR)など米国製の先進的原子炉システムの輸出・建設を促進するため、米輸出入銀行(US EXIM)を通じて一連の財政支援策を講じると発表した。DOSはまた、米、英、加、仏、日の5か国の共通認識として、原子燃料の製造能力拡大により原子力発電の導入を支援するとの方針を明らかにしている。SMRの輸出支援策は、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催されている国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)で、DOSのB.ジェンキンス特命大使・軍備管理・国際安全保障次官とEXIMのR.J.ルイス総裁が表明した。US EXIMは政府系の輸出信用機関として米国企業の輸出事業促進を目的に、国際市場でこれらの企業が競争力を持ち大規模なプロジェクトを受注できるよう支援するほか、対象国には低金利融資を提供している。米国製SMRのシステム・機器の輸出申請に資金を提供するという決議は、EXIM理事会が11月30日付で承認していた。EXIMによると、同決議とそれに付随する一連の支援策は、EXIM独自の資金調達方策で米国製の安全・確実なSMRの輸出をサポートし、大規模で柔軟な資金調達を提供するためのもの。地球温暖化への対応とエネルギー供給保障という重要目標を達成するため、世界中が米国製のSMR導入に関心を示すなか、EIXMにはこうした動きへの対応として、適格な輸出申請の承認を加速する用意がある。このため、EXIMは新しく柔軟な複数の融資ツールを通じて、多くの借り手やプロジェクト関係者がプロジェクトの将来性を明確に見通せるようにする考え。具体的には、SMRの機器製造段階における輸出前支払い金の提供や利息に関する支援、融資保証や直接融資の返済期限を最大22年まで拡大することなどを挙げている。DOSの2件目の発表は、原子燃料サプライチェーンの確立に向けた多国間協力に関するもので、今年4月に札幌で先進7か国の気候・エネルギー・環境相会合が開催された際、原子力発電の重要性を強調した原子力フォーラムの米、英、加、仏、日の5か国――いわゆる「サッポロ5」の方針として、今回示された。これら5か国では今後3年間に、信頼性の高いサプライヤー全体でウランの濃縮・転換能力を拡大するため、政府が主導する投資や民間投資で少なくとも42億米ドルの投入を計画。世界的規模でウランのサプライチェーンが確保されるよう、趣旨に賛同する国々すべてを受け入れるとしている。(参照資料:米国務省、EXIMの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 08 Dec 2023
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UAE SMRやマイクロ炉の導入に向け米国ベンダー3社と覚書
アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電プログラムを担当する首長国原子力会社(ENEC)は、連邦内での小型モジュール炉(SMR)やマイクロ原子炉の導入に向けて、12月3日から5日にかけて、これらを開発している米国ベンダーのGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社とテラパワー社、およびウェスチングハウス(WH)社の3社と、相次いで協力覚書を締結した。これらの覚書は、11月30日から12月12日までUAEのドバイで開催されている「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)」の会期中に結ばれた。ENEC社はその開幕の前日、先進的な原子炉技術を通じて連邦の脱炭素化を加速するという「アドバンス・プログラム(ADVANCE Program)」を始動しており、3件の覚書締結は同プログラムの一環ということになる。UAEでは現在、連邦初の原子力発電設備となるバラカ発電所(韓国製の140万kW級PWR×4基)の建設が順調に進展中。連邦原子力規制庁(FANR)は11月17日に同発電所の4号機に運転許可を発給しており、2024年の起動が見込まれている。ENEC社によると、すでに営業運転を開始した1~3号機はアブダビ首長国におけるクリーン電力の80%以上を賄うなど、UAEの発電部門や重工業などエネルギー多消費産業の脱炭素化は大幅に進んでおり、2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化するというUAEの目標達成に大きく貢献している。ENEC社は「アドバンス・プログラム」でこのような大型炉の建設経験と国際的な先進的原子炉サプライヤーのネットワークを統合、エネルギー多消費産業の脱炭素化を一層加速して、世界のクリーン・エネルギーへの移行を主導していく方針だ。同プログラムでは、SMRやマイクロ原子炉など最新の原子力技術を評価し、国内関係者や国際的なパートナーらとともにこれらの原子炉の建設に向けた具体的な道筋を決定付けるとしている。ENEC社はまず、12月3日にGEH社と協力覚書を締結しており、同社製SMR「BWRX-300」をUAEのみならず、中東地域やアフリカで建設する機会を共同で模索するとした。「BWRX-300」は電気出力30万kWの軽水炉型SMRで、2014年に原子力規制委員会(NRC)から設計認証を取得した同社製原子炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」の技術や機器を最大限に活用している。両社は「BWRX-300」のように小型で経済的、かつ柔軟性の高い運転が可能な原子炉で安価なクリーン電力を生産し、エネルギーの持続可能性や脱炭素化を追求する世界の潮流に歩調を合わせていく。この協力はまた、UAEが米国と進めているクリーン・エネルギーの促進イニシアチブ(U.S.-UAE Partnership for Advancing Clean Energy=PACE)の目標を達成する一助にもなるとのこと。ENEC社はまた、4日にテラパワー社と協力覚書を締結、署名式にはテラパワー社のビル・ゲイツ会長が同席した。同社が開発した電気出力34.5万kWのナトリウム冷却高速炉「Natrium」で、送電網の安定化やクリーン・エネルギーへの移行促進に向けた共同評価を行う方針。「Natrium」は溶融塩を使ったエネルギー貯蔵システムを組み合わせることにより、発電所のピーク時の電気出力を50万kWまで拡大して5時間以上稼働できるなど、コスト面の競争力が高いという。「BWRX-300」と同じく、「Natrium」を中東地域やアフリカ、南アジア地域でも建設することを目指し、両社が結んだライセンシング契約や「PACE」イニシアチブに基づいて「Natrium」の商業化を世界規模で進めていく。ENEC社はさらに、5日にWH社と協力覚書を締結しており、同社製のマイクロ原子炉「eVinci」をUAEやその他の国で建設し、CO2排出量実質ゼロ化に貢献する可能性を共同で研究する。「eVinci」は電気出力が最大0.5万kW、熱出力は1.3万kWで、遠隔地や鉱山等での熱電併給が主な目的だが、エネルギー供給保障や地球温暖化の対策としても解決策になり得るという。ENEC社はアドバンス・プログラムの牽引役としてSMRやマイクロ原子炉の技術を評価し、今後の建設につなげる考えだ。ENEC社のM.アル・ハマディCEOは、COP28 に向けたUAEのメッセージとして「原子力はCO2排出量の実質ゼロ化に不可欠のエネルギー源であり、UAEのクリーン・エネルギー化戦略においても中心的役割を担っている」と強調した。(参照資料:ENEC社の発表資料①、②、③、④、WH社、テラパワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 07 Dec 2023
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英ロールス・ロイス社 月面基地用マイクロ炉の概念を公表
英国のロールス・ロイス社は12月1日、北アイルランドのベルファストで先週開催されていた「英国宇宙会議(UK Space Conference)」で、将来の月面基地に電力供給するモジュール式マイクロ原子炉の概念モデルを公表したことを明らかにした。同炉は政府の宇宙庁が資金援助する研究プログラムで開発されており、ロールス・ロイス社は今回の概念モデルは、同社の「最新の原子力技術チーム」がこれまでに実施した研究の集大成になると説明。同炉を月に向けて送り出す準備を2030年代初頭にも整えたいとしている。ロールス・ロイス社のマイクロ原子炉開発には、宇宙庁のほかに様々な大学や機関が協力中。これには、オックスフォード大学やラフバラー大学、ウェールズのバンガー大学のほか、シェフィールド大学の「先進製造研究センター (AMRC)」、溶接技術者協会、先進的原子力機器製造研究センター(NAMRC)などが含まれている。英国宇宙庁は今年2月、欧州宇宙機関の「ムーンライト計画」の一環として、月へのミッション用通信・ナビゲーション・サービスの開発で5,100万ポンド(約95億円)を国内企業に提供すると発表した。ロールス・ロイス社との提携はこの一環で、翌3月に月面基地における原子力の活用研究資金として290万ポンド(約5億3,900万円)を同社に支払っている。同社の研究プログラムでは、「熱を発生させる燃料」と「熱の伝達手段」および「熱を電力に変換する技術」の3点に集中的に取り組んでいる。ロールス・ロイス社によると、すべての宇宙探査ミッションの成否は十分な動力を確保できるか否かにかかっており、自給自足型で電力密度が高いマイクロ原子炉は、惑星表面の探査や居住に電力供給するとともに、宇宙船に電力や推進力を与えることも可能。人工衛星では、電力や推進力の継続的な供給によって一層柔軟に動けるようになり、重要な軌道を防御できる。また、マイクロ原子炉はその他の動力供給システムと比べて小型で軽量なため、太陽光が届かないなど悪環境条件下でも継続的に電力の供給が可能である。ロールス・ロイス社は、マイクロ原子炉の活用ポテンシャルは幅広く、宇宙探査ミッションのみならず、軍事利用や商業利用も可能だと指摘。開発の主目的は世界中の複数市場に電力や推進力を提供することだが、同炉は世界中で進められているCO2排出量の実質ゼロ化にも貢献できるとしている。なお、ロールス・ロイス社は、小型モジュール炉(SMR)の開発子会社であるロールス・ロイスSMR社を通じて、英国内の4サイトでSMR発電所の最初の一群(合計出力:約1,500万kW程度)を稼働させることを計画中。ロールス・ロイスSMR社は2021年11月、PWRタイプで出力47万kWの同社製SMRについて、包括的設計審査(GDA)の実施を政府に申請しており、原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)は2022年4月から同審査を開始した。同年8月にはオランダでの同社製SMRの建設に向けて、同社は現地の新興原子力事業者と協力独占契約を締結。同年11月には、英国内の有力な建設候補地としてイングランドとウェールズにある閉鎖済みの原子力発電サイトなど、4地点を選定した。また、今年2月にポーランドで同社製SMRを建設するため、現地企業と協力趣意書(MOI)を交わしたほか、3月には北欧とウクライナでの建設を念頭に、複数の関係企業と協力覚書を締結している。(参照資料:ロールス・ロイス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 05 Dec 2023
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仏EDF カナダ、チェコ、インドの事業者やサプライヤーと協力協定
フランス電力(EDF)は11月28日、フランス製の大型原子炉や小型モジュール炉(SMR)の新規建設を通じて世界的なクリーン・エネルギーへの移行を促進していくため、カナダ、チェコ、インドの発電事業者や機器サプライヤーとそれぞれ戦略的協力協定を締結した。これらの協定は、フランス原子力産業協会(GIFEN)が主催する民間原子力コミュニティ最大のマーケットプレイス「世界原子力展示会(WNE)」がパリで開幕したのに合わせて結ばれた。フランス政府も同日、民生用原子力分野における協力の強化で、カナダ政府と共同声明を発表している。今回のWNEでは地球温暖化対策としての貢献が期待される原子力について、十分な工業力や人的資源を確保する重要性が強調されており、EDFはこの機会を捉えてフランスが開発した複数の原子炉技術やサービス、ノウハウ等をアピール。クリーン・エネルギー社会への移行にともない、欧州や世界中の将来的なエネルギー・ミックスの中で原子力の果たす役割について同社の展望を国外パートナーと共有し、相互利益や社会経済的価値の創造を目的とした長期的な協力を通じて、欧州およびその他の国々で原子力開発を加速するとの意欲を改めて表明している。今回の協力協定への調印には、EDFのR.レモン会長兼CEOが同席。これらの協定が目指すものとして、EDFは傘下のフラマトム社が開発した第3世代+(プラス)のPWR設計「欧州加圧水型炉(EPR)」や、EDFが中心となって開発中のSMR「NUWARD」を欧州その他の国々で建設していくため、現地の産業界やサプライチェーンと確固たる協力関係を築くことなどを挙げている。今回EDFと協力協定を結んだ各国の企業は以下の通り。カナダ: EDFは今回、オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社と基本合意書(LOI)を交わしており、EPRを同州あるいはカナダの他の州で建設する際、このLOIに基づいて包括的な評価を共同で行うことになる。新規建設に関する両国間の協力には大きなポテンシャルが見込まれることから、EDFは翌29日にWNEの枠内で「仏加サプライチェーン・ワークショップ」を開催すると表明。これにはOPG社のほかに、カナダの建設大手エーコン(Aecon)グループや発電事業者のブルース・パワー社、フランスの大手ゼネコンであるブイグ(Bouygues Travaux Publics)社、フランスを拠点とする国際的な原子力エンジニアリング企業のアシステム(Assystem)社、EDF傘下のフラマトム社など20社以上が参加を予定。米国のBWXテクノロジーズ(BWXT)社や、GE社の電力・エネルギー事業を統合したGEベルノバ(Vernova)社((2024年初頭に上場企業として独立・分社化が予定されている。))もこれに加わるとしている。チェコ:チェコでは現在、ドコバニ原子力発電所5号機の建設入札が行われており、EDFはEPRの出力を120万kW級に縮小した「EPR1200」を提案中。このため、落札した場合に備えて、EDFは同国のエンジニアリング関係企業で構成されるチェコ・エネルギー産業連合(CPIA)やクレーン会社のADAMEC社、世界シェア第一位の産業用蓄電池メーカーのEnerSys社、ポンプ機器メーカーであるISH Pumps社などと協力協定を結んだ。インド:インド南西部のジャイタプールでは、合計6基のEPR(160万kW級)建設が計画されているため、EDFは今回、インド政府が世界の研究開発・製造ハブとなることを目指して掲げている国家産業政策「メイク・イン・インディア」に沿って、インドのバーラト重電公社(BHEL)がプロジェクトに最大限参加できるよう同社と了解覚書を締結。両社はEPR建設でさらなる協力や、「NUWARD」関係の協力の機会も模索していく考えだ。このほか、フランスとカナダの両政府が今回発表した民生用原子力分野の共同声明では、両国は安全・確実なエネルギー供給システムと世界経済のためのビジョン共有を表明している。世界が現在直面している課題を考慮すると、民生用原子力エネルギー分野で志を同じくするパートナー同士の協力の強化はこれまで以上に重要になると指摘。ロシアのウクライナに対する不当な侵略と気候変動の影響の増大により、世界のエネルギー情勢は根本的に変化しているため、同盟国間で協力する必要性は大幅に加速しているとした。両国はまた、原子力発電は廉価な低炭素エネルギーを提供すると同時に、信頼性の高いクリーン・エネルギー源としてエネルギー供給の安全性に貢献すると指摘。SMRなどの新型原子炉(ANR)は、CO2排出量を削減しつつエネルギー需要を満たすために、両国は大型原子炉やANR、SMR などのプロジェクトにとって極めて重要な、研究開発関係の協力を強化していく。このほか、ANRや SMR などの原子炉技術の利用促進が世界の安定的な発展に役立つことから、核不拡散関係の義務事項に沿ってこれらが確実に行われるよう、両国は経験共有や研究開発協力を進めていくとしている(参照資料:EDF、カナダ政府、OPG社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 04 Dec 2023
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加オンタリオ州 サスカチュワン州のSMR建設へ協力拡大
カナダ・オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は11月20日、100%子会社のコンサルティング企業であるローレンティス・エナジー・パートナーズ(Laurentis Energy Partners=LEP)社とともに、サスカチュワン州の州営電力であるサスクパワー社の小型モジュール炉(SMR)建設プロジェクトへの協力を強化すると発表した。OPG社はカナダで稼働する全19基の商業炉のうち18基を所有しており、原子力発電所が立地しないサスカチュワン州のSMR導入計画を引き続き支援するため、これまで実施してきた原子力関係の協力を拡大。LEP社とサスクパワー社が今回締結した5年間有効な「マスター・サービス協定(MSA)」を通じて、OPG社が原子力発電所の運転で蓄積した経験や専門的知見、技術的資源などをサスクパワー社と共有するほか、今後協力の可能性がある分野としてプロジェクト開発や発電所の運転などを挙げている。3社の発表によると、この協定はサスカチュワン州におけるSMR開発の効率化を目的としたもので、両州間の長期的な戦略協力の基盤になる。LEP社は具体的に、建設プログラムの管理や許認可手続き、発電所の運転に向けた準備活動等に集中的に取り組むとしており、両州の産業サプライヤーを調整してカナダで複数のSMR建設を可能にするほか、両州の大学や職業訓練校とも協力して技術力を改善。サスカチュワン州がクリーンで信頼性の高い原子力を電源ミックスに加えられるよう、サポートしていく考えだ。OPG社は2021年12月、オンタリオ州内のダーリントン原子力発電所で建設するSMRとして、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の「BWRX-300」を選定。今年7月には追加で3基建設すると表明しており、2028年末までに初号機を完成させた後、2029年末までの運転開始を目指している。サスクパワー社は2022年6月、同州で建設する可能性がある初のSMRとして同じく「BWRX-300」を選定したが、これはオンタリオ州の方針に追随することで初号機建設にともなうリスクの回避を狙ったもの。現在、建設候補地を選定中で、2029年に建設実施の判断が下れば、2030年代半ばまでに最初のSMRの運転を開始する。3社の今回の発表に同席したオンタリオ州エネルギー省のT.スミス大臣は、「OPG社が培ってきた知見やサプライチェーンを活用し、サスカチュワン州のみならずカナダ全土や世界中でSMRの建設計画を支援する準備ができている」と表明。サスカチュワン州のD.ダンカン・サスクパワー社担当大臣は、「今回の協定は両州にとって有益なだけでなく、今後数十年にわたりカナダのエネルギー供給保障を持続的に支えていく」と強調している。カナダでは2019年12月、オンタリオ州とニューブランズウィック州、およびサスカチュワン州が「多目的SMR開発・建設のための協力覚書」を締結しており、2021年4月にアルバータ州もこれに参加。2022年3月には、これら4州でSMRの開発と建設に向けた「共同戦略計画」を策定している。(参照資料:OPG社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 22 Nov 2023
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ロシア ノリリスク地方の金属採鉱事業にSMRの利用を検討
ニッケルやパラジウムなど非鉄金属の採鉱で世界的大手企業であるロシアのノリリスク・ニッケル(Norilsk Nickel)社は11月13日、ノリリスク産業地区における電力供給源として小型モジュール炉(SMR)の利用可能性を探るため、ロシアの原子力総合企業ロスアトム社と合意文書に調印した。ロシア北部のノリリスク-タルナフ地域に位置する同産業地区は、ロシアの主要送電網から離れているため、安定したエネルギー供給システムが強く求められてきた。今回の合意に基づき、ノリリスク社は独自の戦略開発計画に沿ってSMRが導入可能か調査する方針。ロスアトム社が開発した最新の陸上設置式SMR「RITM-400」を最有力候補に、複数のオプションを比較評価するほか、立地に最も適した地点をロスアトム社とともに選定。必要となるインフラ設備なども確認する。候補炉である「RITM-400」は電気出力8万kW~9万kWとなる予定だ。ロスアトム社はこれまでに傘下のOKBMアフリカントフ社を通じて、海上浮揚式原子力発電所(FNPP)に搭載するSMRとして「KLT-40S」(電気出力3.5万kW)や「RITM-200M」(電気出力約5万kW)、陸上用として「RITM-200N」などを開発。極東のチュクチ自治区では、世界初のFNPPとして「KLT-40S」を2基搭載した「アカデミック・ロモノソフ号」が、2020年5月から同地区内のペベクに電力を供給中である。同地区ではまた、バイムスキー銅鉱山プロジェクト用として、鉱山近郊のナグリョウィニン岬に「RITM-200M」を2基搭載した「最適化・海上浮揚式原子炉(OFPU)」の配備が進められている。 このほか、ロシア北東部に位置するサハ共和国ウスチ・ヤンスク地区では、陸上用の「RITM-200N」を2028年までに完成させる計画があり、連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)は2021年8月、ロスアトム社の国際事業部門としてこの計画を担当するルスアトム・オーバーシーズ社に、建設許可を発給している。(参照資料:ノリリスク・ニッケル社、ロスアトム社(ロシア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 16 Nov 2023
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ノルウェー ハルデンでのSMR建設で3者が可能性調査実施へ
ノルウェー南部のハルデン自治体と新興エネルギー企業のノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社、およびエストフォル・エネルギー(Østfold Energi)社は11月10日、かつて研究炉が稼働していたハルデンで小型モジュール炉(SMR)建設の実現可能性を探るため、共同でハルデン・シャーナクラフト社(Halden Kjernekraft AS)を設立した。同社の調査結果に基づき、後の段階で建設の是非を決定する方針だ。3者の発表によると、オスロ特別市や近隣のアーケシュフース県、ハルデンなど18の自治体を含むエストフォル県では目下、160億kWhの電力不足に陥っているという。国内送電網を所有・運営する国営企業のスタットネット社は、この地域で新たな発電・送電容量を追加しない限りこの需要を満たせる設備はなく、現行計画のままでは2035年までこうした設備の追加は望めないと警告している。ハルデンでは1950年代から2018年6月まで、60年以上にわたりエネルギー技術研究所(IFE)がハルデン研究炉(BWR、最大熱出力2.5万kW)を運転。この実績に基づいて同自治体は前日の9日、SMRの立地調査を行なう新会社の設立構想を決定した。同自治体は、「エストフォル県における電力不足の解消策としてSMRを加えるべきか、あらゆる可能性を模索すべき時が来た」と表明している。新たに設立されたハルデン・シャーナクラフト社にはハルデン自治体が20%出資するほか、ノルスク・シャーナクラフト社とエストフォル・エネルギー社がそれぞれ40%ずつ出資。ノルスク・シャーナクラフト社は近年、同国初の商業用原子力発電所となるSMRの建設計画を独自に進めており、この計画についてフィンランドのティオリスーデン・ボイマ社(TVO)のコンサルティング子会社から支援を得るため、今年6月にこの子会社と基本合意書を交わした。ノルスク社はすでにノルウェー国内で複数の立地候補地を特定しており、これらの自治体と結んだ協定に基づき、今月2日には候補地の一つで調査プログラムの実施を石油・エネルギー省に申請している。ノルスク・シャーナクラフト社のJ.ヘストハンマルCEOは、「ハルデンでは原子炉が長期間稼働していたため、適切な判断を下すだけの専門的知見があり住民も抵抗がない」と指摘。長期的な雇用の創出も見込まれることから、原子力が同自治体の電力需要に貢献するか徹底的に調査することは、意義があると述べた。エストフォル・エネルギー社は、エストフォル県の全自治体、および同県が所在するヴィーケン地方の議会が共同保有するエネルギー企業で、ハルデン自治体も7.67%出資している。水力を中心に太陽光や風力など、様々な再生可能エネルギーで電力を供給中だが、同社のM.バットネ取締役は「原子力は再エネの代替エネルギーというより、再エネを長期的に補完していくエネルギーになり得る」と強調。「最新の原子力発電所は、敷地面積が小さく運転時間が長いなど有利な点も多いが、十分な解決策を要する課題も多いため、今回の調査も含めて様々な議論を行うべきだ」としている。(参照資料:ハルデン自治体、ノルスク・シャーナクラフト社、エストフォル・エネルギー社の発表資料(すべてノルウェー語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月10日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Nov 2023
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オランダでのSMR建設計画 3社が合意
オランダのULCエナジー社が同国内で進めている英ロールス・ロイスSMR社製小型モジュール炉(SMR)の建設計画に、同国の建設企業BAMインフラ・ネーデルランド社が加わった。3社はそのための基本合意書に11月7日付で調印しており、ロールス・ロイスSMR社のSMRを標準設計としてオランダで複数基建設し同国のクリーン・エネルギーへの移行を促すなど、長期的に協力していくことを確認した。原子力プロジェクトの開発企業であるULCエナジー社は、2022年8月にオランダ国内でロールス・ロイスSMR社の技術を使用する独占契約を同社と締結。実証済みの技術に基づく最新鋭のモジュール式原子炉の建設を通じて、信頼性の高い安価なエネルギー供給システムを構築することになる。ロールス・ロイスSMR社は、英ロールス・ロイス社が80%出資する子会社として2021年11月に設立された。同社によると、同社製SMRは既存のPWR技術を活用した出力47万kWのモジュール式SMRで、少なくとも60年間稼働が可能。ベースロード用電源としての役割を果たすほか、不安定な再生可能エネルギーを補い、再エネ電源の設置容量拡大にも貢献できるという。2022年4月からは、英原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)が同炉について「包括的設計審査(GDA)」を開始している。また、英政府のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)(当時)は2021年11月、民間部門で行われている投資支援のため、同社に2億1,000万ポンド(約391 億円)を提供すると約束。ロールス・ロイスSMR社はすでに英国内の建設候補地として、閉鎖済みの原子力発電所サイトなど4地点を選定しており、2030年代初頭にもSMR発電所を送電網に接続することを目指している。国外ではポーランドやウクライナ、スウェーデン、フィンランド等での建設に向けて、協力覚書を結んでいる。BAMインフラ・ネーデルランド社は、欧州の建設大手であるロイヤルBAMグループの傘下企業で、オランダでは150年以上にわたり様々なインフラ設備を建設してきた。ロールス・ロイスSMR社のSMRは、1基でオランダ国内の140万世帯に十分なクリーン・エネルギーを供給できるほか、工場で製造したモジュールを現地で組み立てることで従来の大型炉と比べて工期が短くなり、世界中で幅広く利用が可能と高く評価している。BAMインフラ・ネーデルランド社のS.デンブランケン商業事業開発理事は今回、「戦略的パートナーとなったロールス・ロイスSMR社、ULCエナジー社とともにクリーン・エネルギーへの移行に向けた長期計画を作成する」と表明。「SMRという強力な解決策を通じて、迅速かつリスクを最小限に抑えながらオランダにイノベーションをもたらし、一層持続可能な国にしたい」と抱負を述べた。ロールス・ロイスSMR社サプライチェーン・グループのR.エベレット・グループリーダーは、「ロイヤルBAMグループとは英国子会社のBAMナットル社を通じてすでに協力関係にあるので、今回の合意に基づいて事業機会を模索していく」と表明している。(参照資料:ロールス・ロイスSMR社、BAMインフラ・ネーデルランド社(オランダ語)、ULCエナジー社(オランダ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 14 Nov 2023
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米ニュースケール社のSMR初号機建設計画が打ち切り
米国のユタ州公営共同事業体(UAMPS)とニュースケール・パワー社は11月8日、エネルギー省(DOE)のアイダホ国立研究所(INL)でニュースケール社製小型モジュール炉(SMR)の初号機建設を目指した「無炭素電力プロジェクト(CFPP)」を打ち切ると発表した。UAMPSの100%子会社であるCFPP社が進める同プロジェクトでは、電気出力7.7万kWの「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を6基備えた発電設備「VOYGR-6」(46.2万kW)で、最初のモジュールを2029年までに完成させることを計画。これに向けて、CFPP社は今年の7月末、建設・運転一括認可(COL)申請の最初の部分となる「限定工事認可(LWA)」を米原子力規制委員会(NRC)に申請しており、2024年1月にはCOL申請の残りの部分を提出するとしていた。今回の発表で両社は、プロジェクトの継続に十分な資金が得られる可能性が低いことが判明したと述べており、協議の結果、最も賢明な判断としてプロジェクトを打ち切ることで合意したと説明している。ニュースケール社は2020年9月、出力5万kWの「NPM」について、SMRとしては初となる「標準設計承認(SDA)」をNRCから取得しており、2023年1月には「設計認証(DC)」を取得した。同じ月に同社は、出力7.7万kWの「NPM」を6基備えた設備についてもSDAを申請したが、NRCは同社に補足資料の追加提出を要求。今年3月から補足資料を必要としない部分について安全関係の審査を開始したものの、同申請を正式に受理したのは7月末のことである。SDA審査はA~Dまで4フェーズで構成されているが、現時点ではニュースケール社からの資料提出待ちの部分が多く、最初のフェーズAも完了していない。UAMPSは、米国西部7州の電気事業者約50社で構成される公共電力コンソーシアム。域内の高経年化した化石燃料発電所を原子力等のクリーン・エネルギーで段階的にリプレースし、クリーンな大気を維持するという独自の「CFPP」を2015年から推進していた。2016年2月にDOEから、INLにおけるSMR建設を許可されており、2020年10月には、NPMを複数基備えた発電設備の建設・実証を支援する複数年の補助金として13億5,500万ドルを獲得している。CFPP社の「VOYGR-6」の建設については、ニュースケール社が2022年12月に最初の長納期品(LLM)製造を韓国の斗山エナビリティ社に発注。原子炉圧力容器(RPV)の上部モジュールを構成する大型鍛造品や蒸気発生器の配管等を調達するとしていた。ニュースケール社のJ.ホプキンズ社長兼CEOは今回、「過去10年以上にわたるCFPPのお陰で、当社の技術は商業炉の建設段階まで到達した。今後は国内外のその他の顧客とともに当社の技術を市場に届け、米国における原子力製造基盤の成長や雇用の創出に貢献したい」と述べた。UAMPSのM.ベイカーCEOは、「当社も含めた関係各位のCFPPに対するこれまでの努力を思うと、この決定は非常に残念だが、CFPPで我々は多くの貴重な教訓を学んでおり、UAMPS会員の将来のエネルギー需要を満たすため、今後の作業を進めていく」としている。米国内ではこのほか、ウィスコンシン州のデーリィランド電力協同組合が2022年2月、供給区内でニュースケール社製SMRの建設可能性を探るため、了解覚書を締結した。国外では、ポーランドの鉱業大手のKGHMポーランド銅採掘会社が2022年2月、「VOYGR」設備の国内建設に向けてニュースケール社と先行作業契約を交わしている。また、ルーマニアでは同年5月、南部のドイチェシュティで「VOYGR-6」を建設するため、国営原子力発電会社とニュースケール社、および建設サイトのオーナーが了解覚書を結んだ。(参照資料:ニュースケール社、UAMPSの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 10 Nov 2023
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スウェーデン リングハルス増設に向け地元自治体に計画申請
スウェーデン国営のバッテンフォール社は11月1日、ヴェーロー半島にあるリングハルス原子力発電所(PWR×2基、各約120万kW)の西側に小型モジュール炉(SMR)を少なくとも2基建設するため、詳細計画の策定申請書を地元ヴァールベリ市に提出すると発表した。同社はすでに同半島で約1km2の土地を確保済みだが、9月からは建設準備に向けて追加分の土地購入手続きを開始。建設の最終投資判断(FID)は、必要な許認可をすべて取得した後に下す予定で、初号機の運転開始は2030年代初頭を目指している。今回の申請書では、現時点の計画として「運転エリア」に原子炉建屋や補助建屋を建設するほか、「諸活動エリア」で作業工場や貯蔵所、事務スペース、食堂などを設置する青写真を提示。今後はリングハルス発電所の既存インフラを、新規SMRとどの程度共有できるか調査していく。スウェーデンでは2022年9月の総選挙で中道右派連合の新政権が発足し、同年10月のティード城における政策協議で、環境法に記されている原子力発電関係の禁止事項(新たなサイトでの原子炉建設禁止、同時に運転できる原子炉の基数は10基まで、閉鎖済み原子炉の再稼働禁止)を撤廃すると決定。2040年までにエネルギー供給システムを100%非化石燃料に変更するため、2026年までに合計4,000億クローナ(約5兆5,000億円)の投資を行い、原子炉の建設環境を整えるとした。今年1月には、U.クリステション首相が環境法の改正を提案しており、政府は9月末に同法の改正法案を議会に提出、2024年1月初頭にも同法案が成立・発効することを目指している。バッテンフォール社は2022年6月から、リングハルス発電所でSMR建設に向けた諸条件の予備調査を始めており、急速な増加が見込まれる電力需要を非化石燃料電源で賄えるか調査中。リングハルス発電所では2020年末までに1、2号機が永久閉鎖されたことから、従来の大型炉やSMRであっても、既存の環境法の規定範囲内でリプレース用原子炉としての建設が可能である。また、送電インフラが整っており新設炉との接続が容易であるなど、同社は複数の理由から建設に適していると判断、この予備調査は年末までに完了する見通しだ。同社はこのほか、今春から環境影響声明書(EIS)の作成に向けて地盤調査などのフィールドワークを開始。夏以降は、原子炉ベンダーへの要求事項に関する作業も開始したことを明らかにしている。なお、政府の気候・ビジネス省は11月2日、エネルギー供給システムの100%非化石燃料化に向けて、原子炉建設に関する許認可手続きの迅速化と簡素化に向けた分析調査を開始した。大型炉やSMRの建設加速の条件整備には、規制の枠組みや申請審査等の効率化が欠かせないとの判断によるもの。これにより、安全保障の基本要件でもある盤石なエネルギー供給システムを確保するとしている。(参照資料:バッテンフォール社の発表資料(スウェーデン語)①、②、スウェーデン政府の発表資料(スウェーデン語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 08 Nov 2023
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ノルウェーのエネルギー企業 SMR建設に向けた手続きを開始
ノルウェーの新興エネルギー企業であるノルスク・シャーナクラフト社(Norsk Kjernekraft AS)は11月2日、国内で複数の小型モジュール炉(SMR)を備えた発電所の建設を石油・エネルギー省(OED)に提案した。最初の正式手続きとして、立地候補地の一つで調査プログラムを申請したもので、商業炉を持たないノルウェーでOEDがこのプログラムを承認すれば、同社は環境面や技術面、経済面、および安全面の影響評価を開始することができる。今回の調査プログラムは、同国西部ノルウェー海側のアウレ(Aure)自治体とハイム(Heim)自治体の境界に位置する共同工業地帯でのSMR建設に向けたもの。今年4月に、同社がこれらの両自治体、および北極圏のナルビク(Narvik)自治体と同プログラムの実施協定を締結したのにともなう措置で、6月には同社は、バレンツ海に面したヴァ―ドー(Vardø)自治体とも同様の協定を締結している。これら地区の適切なエリアでSMRを建設すれば、地区内のCO2排出量が削減されるだけでなくグリーン産業が新たに根付くと同社は指摘した。また、複数のSMRを備えた発電所により同社は年間約125億kWhを発電し、ノルウェーの総発電量は約8%増加すると予測。ノルウェーのクリーン・エネルギーへの移行にも大きく貢献すると強調している。ノルスク・シャーナクラフト社は、2022年7月に同国の民間投資会社のMベスト・グループが設立した企業。核物理学や核化学、石油産業等についての専門社員で構成されおり、ノルウェー国民や産業界がクリーンで価格も手ごろなエネルギーを確実に得られるようにすることを企業戦略としている。現段階では電力多消費産業との協力によりSMRの立地サイトを選定中で、その後は国の原子力規制や国際的な基準に則り許認可手続き等の実施準備を進めていく。同社はすでに今年3月、英国のロールス・ロイスSMR社と了解覚書を締結しており、将来的に同社製SMRの建設プロジェクトを立ち上げる可能性について協力することになった。ノルスク社はこの建設計画について透明性を持って進めると明言しており、許認可手続き等には地元住民を交える方針。環境等の影響評価でSMR発電所の影響が許容範囲内と判明すれば、ノルウェーの法規に則って許認可手続きを開始するが、同社は建設の最終投資判断を下す前には、それ以外にも様々な重要手続きを踏まねばならないと説明している。同社のJ.ヘストハンマルCEOは、「どれだけ迅速に許認可手続きを進められるかにもよるが、アウレとハイムでは自治体も住民も受入れを表明しており、当社は今後10年以内にSMR発電所の運転が可能だ」と指摘。「ノルウェーでは現在エネルギー消費量の約半分を化石燃料に依存しているが、メンテナンスを適切に行なえば100年利用できるという原子力発電所によって、電化が大幅に進むだけでなくCO2の排出量も抑えられる」と強調している。(参照資料:ノルウェー・シャーナクラフト社の発表資料(ノルウェー語)①、②、③、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 07 Nov 2023
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NEAのSMR等の廃棄物管理戦略策定に米EPRIが協力
OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)は10月26日、小型モジュール炉(SMR)や先進的原子炉が排出する放射性廃棄物の管理戦略を統合するため、新たに開始する共同プロジェクト「Joint Project on Waste Integration for Small and Advanced Reactor Designs (WISARD)」で、米国電力研究所(EPRI)と協力することを発表した。NEAのW.マグウッド事務局長とEPRIのN.ウィルムシャースト上席副理事長が合意したのにともない、EPRIは「WISARD」への最初の資金拠出者になると同時に、SMRや先進的原子炉の持続的な活用に関するNEAの継続的な取り組みも支援。同プロジェクトでは、原子力発電のライフサイクルにおけるすべての分野から専門家を集め、SMRや先進的原子炉などの革新的な発電システムが、同じく革新的な廃棄物管理ソリューションをどのような形で必要とするかを検討していく。NEAは今年から2024年にかけて、同プロジェクトのカバー範囲を決定した後、2024年第3四半期にもプロジェクトを正式に始動。2027年まで3年間継続する計画だ。NEAの説明によると「WISARD」は、持続可能な原子力発電システムになり得るSMRと先進的原子炉、およびそれらで使用する革新的な原子燃料への、世界的な関心の高まりから発足したプロジェクト。「WISARD」の作業プログラムでは具体的に、原子炉の設計や燃料製造等のフロントエンドがバックエンド戦略に及ぼす影響などを探る。原子炉開発の初期段階から持続可能な廃棄物管理戦略を統合するというもので、SMR等の使用済み燃料や放射性廃棄物に特有の特性に焦点を当てて、前例のない国際的な知識基盤を構築する。その後は同基盤の知見に基づき、次世代の使用済み燃料や放射性廃棄物に対する現在の管理ソリューションの適合性を評価する方針で、 これらの廃棄物に関し、①長期的な処分、②輸送、③処理とリサイクルおよび再処理、④中間貯蔵――の主要トピックに焦点を当てていく。原子炉の設計等がバックエンドに与える影響を評価することにより、将来的な課題を早期に特定し、原子炉ベンダーや発電事業者、政府機関に、不要なコストをかけずに効率的かつ持続可能な方法で解決策を提供できるとNEAは説明。EPRIは科学者やエンジニア、政府、学術界との協力により、原子炉の設計から閉鎖に至るまで技術革新を推進してきたことから、その広範な経験が「WISARD」に活かされると考えられている。EPRI はまた、エネルギー部門の広範なニーズを特定することでエネルギーの未来図を描くことを目指している。NEA は次世代原子炉の持続可能性支援に向けて、今後も国際的な規模で追加の協力参加者を募ると表明している。(参照資料:OECD/NEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 31 Oct 2023
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カナダ SMR等で2州の石炭火力を廃止へ
カナダの連邦政府と北東部に位置するノバスコシア(NS)州およびニューブランズウィック(NB)州の両政府は10月16日、これら2州の石炭火力発電所を2030年までに段階的に廃止しクリーンで安価な電源に移行するため、小型モジュール炉(SMR)等の活用を含めた政策を共同で進めていくとの声明を発表した。カナダの送電網の脱炭素化は、経済面や環境面におけるカナダの基本目標であることから、連邦政府と2州は石炭火力の廃止に加えて2035年までに両州の発電部門から排出されるCO2を実質ゼロ化、2050年までには両州の産業全体からの排出量も実質ゼロとする方針だ。連邦政府はこれら2州のクリーン・エネルギーへの移行に合計で約2,000万カナダドル(約22億円)を支援する。内訳として、NB州がポイントルプロー原子力発電所内で計画している米ARCクリーン・テクノロジー(ARC)社製SMR「ARC-100」(電気出力10万kW~15万kW)の建設について、連邦政府は支援金として700万加ドル(約7億7,000万円)を提供すると表明。「ARC-100」については、NB州北部のベルドゥーン港湾管理局(BPA)もグリーン・エネルギー・ハブとなることを目指して導入を計画しているため、連邦政府はサイトの準備調査費用として約100万加ドル(約1億1,000万円)を提供する。これら3者の共同声明は同日、連邦政府のエネルギー・天然資源相、公共安全・民主主義制度・州政府間関係相、住宅問題・インフラ・コミュニティ相のほか、NB州とNS州から両州の首相(知事)と天然資源関係の大臣を交えた協議の後に公表された。3者の合意事項として、共同政策は二重(ツートラック)のアプローチで進めることになっており、まず2030年までの石炭火力廃止に向けて投資が必要な項目を特定。具体的には、NB州におけるSMRの建設やベルドゥーン石炭火力発電所のバイオマス発電への転換、NB州営電力が所有するマクタクアック水力発電所の運転期間延長、風力発電と太陽光発電設備の増設、NB州のポイントルプローからソールズベリおよびNS州のオンスローまでを結ぶ送電線の敷設などが挙げられた。もう一方のアプローチとして、3者は2035年までに発電分野からのCO2排出量を実質ゼロ化する協力のなかで、特に重要となる分野を確認。NB州におけるSMR建設計画とNS州の海上風力発電計画を引き続き進めるほか、両州で再生可能エネルギー源と蓄電池の統合、スマートグリッドの管理ツールや水素にも対応する複数燃料混合発電機の開発などを実施する。また、連邦政府はカナダ・インフラ銀行の活用のほかに、クリーン・エネルギー源の開発や電化の促進に特化した複数の税額控除プログラム等を通して、財政支援を実施する。3 者はさらに、2州の周辺に位置するケベック州やニューファンドランド・ラブラドール州、プリンスエドワード・アイランド州と送電網を結ぶことや、エネルギーを融通し合うための機会も模索。これに向けて、連邦政府と各州間のエネルギー協力イニシアチブである「地域エネルギー・資源テーブル(Regional Energy and Resources Tables)」を引き続き活用していく考えだ。NB州のB.ヒッグス首相は今回、「脱炭素化等の目標を達成するには、連邦政府から多額の資金援助が無ければ不可能」と強調した。公共安全省のD.ルブラン大臣は、「NB州とNS州に周囲の2州を加えた大西洋岸の4州にとって、クリーン・エネルギーは莫大な経済的利益をもたらす可能性がある」と指摘。連邦政府はこれらの州との協力を継続し、一層クリーンで強靭な送電網を築く意向を示した。(参照資料:カナダ政府の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 18 Oct 2023
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英シェフィールド社 米X-エナジー社のSMRに協力
英国政府所有の大型鋳鍛造品メーカーであるシェフィールド・フォージマスターズ社は10月12日、米X-エナジー社が英国内で計画している第4世代の小型モジュール炉(SMR)「Xe-100」の建設に協力するため、同社および英国における同社の開発パートナー企業であるキャベンディッシュ・ニュークリア社と協力覚書を締結した。X-エナジー社の「Xe-100」は小型のペブルベッド式高温ガス炉(HTGR)で、電気出力は8万kW。産業用の高温熱や蒸気、電力を生産できることから、同社は英国内で「Xe-100」の建設機会を探り、最大40基の建設を目指している。今回の覚書では、シェフィールド社が原子力関係の鋳鍛造品製造で数十年にわたり蓄積してきたノウハウを活用し、SMRの主要機器を製造する。シェフィールド社も、同覚書を英国のSMRサプライチェーン構築に向けた足掛かりとしたい考えだ。米国ではエネルギー省(DOE)が2020年10月、「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」における7年間の支援対象企業の一つとしてX-エナジー社を選定。同社は2022年8月に「Xe-100」の基本設計を完了しており、ワシントン州の2つの公益電気事業者(グラント郡PUDとエナジー・ノースウエスト社)が、「Xe-100」をエナジー・ノースウエスト社が所有するコロンビア原子力発電所サイト内で建設することを計画している。2027年以降に初号機を建設すると見られていることから、英国での建設はそれ以降になる見通しである。英国では、脱炭素化に有効な無炭素エネルギー源として、政府が原子力に注目しており、2030年代初頭の実証を目指して建設する先進的モジュール式原子炉(AMR)として、2021年12月にHTGRを選択した。政府はまた、2022年4月に新しい「エネルギー供給保障戦略」を発表。原子力開発における方向性として100万kWの大型炉のほかにSMR、およびHTGRなどのAMRを開発する方針を示している。英国ではまた、今年7月に原子力発電所新設の牽引役として発足したばかりの政府機関「大英原子力(Great British Nuclear=GBN)」が、革新的なSMR技術の開発を促して英国のエネルギー供給保障を強化するため、支援対象の選定コンペを開始。今月2日に発表された最終候補の6社にX-エナジー社は含まれなかったが、英政府は選考に漏れたSMRについても、別ルートでの市場化に向けた協議を今秋から開始すると約束していた。シェフィールド社はすでに、同様の覚書を米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社や英ロールス・ロイスSMR社などと締結済み。米ニュースケール・パワー社とは、同社製SMRのベッセル・ヘッドを共同で実証鍛造する計画を2016年に発表している。シェフィールド社のD.アシュモア戦略・クリーン・エネルギー事業開発部長は、今回の覚書について「SMRの商業化に向けて、当社がこれまでに交わしてきた数多くのSMR開発企業との協力覚書の中で最新のものだ」と説明。同覚書に基づき、今後は「Xe-100」の一層明確なコスト見積もりと建設計画の策定に向けて、同炉に必要な鋳鍛造品を詳細に検討するとした。X-エナジー社のC.タンスリー副社長は、「『Xe-100』の建設に際し、契約総額の約8割を英国企業に発注するなど、英国サプライチェーンの最大限の活用を目指す」と表明。シェフィールド社との覚書はこれに向けた重要な一歩であり、40基の「Xe-100」建設は英国産業界の脱炭素化を促進するだけでなく、英国全土の企業に莫大なチャンスをもたらすと強調している。(参照資料:シェフィールド・フォージマスターズ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 16 Oct 2023
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英ニュークレオ社 小型高速炉の商業化で伊企業と協力
英国で2年前に設立された先進的原子炉技術の開発企業であるニュークレオ(Newcleo)社は10月9日、開発中の小型鉛冷却高速炉(LFR)の商業化に向けて、イタリアの機器製造企業であるトスト・グループ(Tosto Group)と協力・投資協定を締結した。ニュークレオ社の現時点の計画では、2026年にLFRの電熱加熱式プロトタイプ装置を、2030年には実証炉「LFR-AS-30」(電気出力3万kW)を完成させた後、2032年までに商業炉の「LFR-AS-200」(電気出力20万kW)と、海上でも使用可能な「LFR-TL-30」(電気出力3万kW)それぞれの初号機を建設。原子力・石油・ガスなどのエネルギー部門や、化学製品部門で大型機器の製造を手掛けてきたトスト・グループと協力していく考えだ。今回結ばれた協定は、LFRの研究・設計から実証、商業化まですべての段階をカバー。ニュークレオ社によると、同グループの中でも主要企業であるイタリアのウォルター・トスト(Walter Tosto)社と、その傘下企業であるベッレーリ・エナジーCPE(Belleli Energy CPE)社は、長納期の産業用機器の製造・供給実績があり、これらの企業が持つ製造ノウハウや幅広い実績、臨海地帯の製造プラント等をニュークレオ社の設計・エンジニアリング能力と統合、小型LFRの建設に活かすとしている。ニュークレオ社のS.ブオノ会長兼CEOは、「LFRの建設では非常に意欲的なスケジュールを設定しているので、トスト・グループとの協力を通じてその基盤を固めたい」と表明。トスト・グループのL.トスト常務は、「ニュークレオ社は第4世代の原子炉技術開発リーダーなので、持続可能なエネルギーの開発や技術革新で協力し合い、当社が積極的な投資を通じて事業の拡大を目指している原子力部門に貢献したい」との抱負を述べた。なお、ニュークレオ社はトスト・グループとの今回の協力に先立つ2022年3月、イタリア経済開発省の新技術・エネルギー・持続可能経済開発局(ENEA)とも協定を締結。同年から7年以内に、原子燃料や放射性物質を使わないプロトタイプのLFR装置を原子力推進国で建設することを計画中だ。また、同年6月には、LFRに装荷するウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)の製造工場建設に向け、英仏の両国でサイトを確保するため、仏オラノ社に実行可能性調査を依頼している。(参照資料:ニュークレオ社の発表資料①、②、ウォルター・トスト社(イタリア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 13 Oct 2023
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伊エジソン社 仏製SMRの建設に意欲
イタリアの電力会社で、フランス電力(EDF)のイタリア子会社でもあるエジソン社は10月4日、今後の同社の新しい展望として、2030年から2040年までの間に出力34万kWの小型モジュール炉(SMR)プラントを国内で2つ、建設することに意欲を表明した。ただし、イタリアは1990年に脱原子力を完了しており、原子力の復活に向けた国内条件が整えばとの条件付きだ。親会社のEDFは仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)などと協力して、欧州主導のSMR「NUWARD」(出力17万kWの小型PWR×2基)を開発中。エジソン社は「2040年までに自社電源の9割を脱炭素化する」ことを目指している。エジソン社は2023年から2030年までに100億ユーロ(約1兆5,800億円)を投資し、2022年の減価償却・控除前利益(EBITDA)である11億ユーロ(約1,740億円)を、2030年末までに20億~22億ユーロ(約3,170億~3,490億円)に倍増する方針。しかし、これには過去3年間の平均でEBITDAの35%を占めていた「CO2をほとんど出さない発電」を70%に拡大するなど、電源ミックスの大幅な変更が必要。同社はこれまで力を入れていた再生可能エネルギーに加えて、CO2回収・貯留(CCS)や(条件が整えば)新世代の原子力を導入したいとしている。原子力に関して同社は、欧州連合(EU)がCO2排出量の実質ゼロ化を達成する上で重要な役割を担うと評価。また、電力供給システムの安定化能力だけでなく、再生可能エネルギーの間欠性も補えることから、「CO2の排出量や設置面積が最も少ない電源の一つであり、合理的な発電が可能である」とした。さらに、新しい原子力技術のSMRなら熱電併給にも活用できるため、エネルギーを多量に消費する地区のニーズにも高い柔軟性を持って対応可能だと指摘している。イタリアではチョルノービリ原子力発電所事故後の1987年、国民投票で既存原子炉4基の閉鎖と新規建設の凍結を決定。1990年に脱原子力を完了したが、2009年になるとEU内で3番目に高い電気料金や世界最大の化石燃料輸入率に対処するため、原子力復活法案が議会で可決している。しかし、2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて、同じ年の世論調査では国民の9割以上が脱原子力を支持。当時のS.ベルルスコーニ首相は、政権期間内に原子力復活への道を拓くという公約の実行を断念した。近年は世界規模のエネルギー危機にともない、イタリアのエネルギー情勢も急激に変化。議会下院は今年5月、脱炭素化に向けた努力の一環として、イタリアの電源ミックスに原子力を加えるよう政府に促す動議を可決。9月に環境・エネルギー保障省が開催した「持続可能な原子力発電に向けた国家政策(PNNS)会議」の第一回会合では、近い将来にイタリアで原子力発電を復活させる可能性が議論されている。(参照資料:エジソン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 12 Oct 2023
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フィンランドの2社 SMRを活用した地域熱供給で合意
フィンランドのヘルシンキ市が保有するエネルギー企業のヘレン(Helen)社は10月3日、同社の供給地域に小型モジュール炉(SMR)で無炭素な熱を供給するため、熱供給用SMRの商業化を目的に設立されたスタートアップ企業のステディ・エナジー(Steady Energy)社と基本合意書を交わした。フィンランドで発電や熱エネルギーの生産を迅速かつ低コストで脱炭素化するにはSMRが最も有望との認識に基づくもので、両社は原子力で地域熱供給の脱炭素化を図るとともに熱エネルギー価格の変動を安定化、フィンランド全体のエネルギー供給を支えていく。地域熱供給における化石燃料の利用停止は最も重要な目標であり、ヘレン社はステディ社から熱出力5万kWの熱供給用SMR「LDR-50」を最大10基調達し、2030年までにヘレン社の事業が排出するCO2を実質ゼロ化していく。同社の地域熱供給ネットワークは全長1,400kmに及び、北欧諸国の中で最長だが、このネットワーク全体の脱炭素化により国家レベルの地球温暖化防止策になるという。一方のステディ社は、フィンランド国営の「VTT技術研究センター」から今年スピンアウトした直後の企業で、この6月にSMRを活用した地域熱暖房プラントの建設に向けて、約200万ユーロ(約3億1,300万円)の研究開発資金を調達した。VTTが2020年から開発中の「LDR-50」を複数基備えた熱暖房プラントを2030年までに完成させ、地域熱供給業など様々なエネルギー集約型産業の脱炭素化を目指している。今回結ばれた基本合意書で、両社は原子力による熱エネルギーの生産に向けて、投資前協定を今後6か月以内に締結できるよう計画を立てる。フィンランド国内で熱供給用のSMRを建設するには法的措置が必要になるため、この投資前協定を2024年から2027まで有効なものとし、この間に原子力法の改正を推進し、立地許可や設計審査を申請。建設するSMRプラントの契約価格も固めたいとしている。ヘレン社のO.シルッカCEOは、「ステディ社との合意に基づいて、原子力による熱エネルギーの生産をフィンランドで開始し、同様の熱エネルギー生産のための基盤を築く」と表明。この目標に向けて、ステディ社のみならずその他のエネルギー企業や政府機関、政策決定者などとも協力していくと述べた。ヘレン社はこのほか、2022年11月にSMRなどの新たな原子力発電所建設に向けて、国内の原子力事業者であるフォータム社と協力の可能性を共同で調査すると発表している。ステディ社のT.ニューマンCEOは、「フィンランドのSMR技術を2020年代中に実行する重要な道筋が付いた」と表明。化石燃料を燃焼せずに地域熱供給を行えれば、フィンランドのCO2排出量を8%削減することも可能だとした。また、「当社の目標は新たなクリーン・エネルギーの輸出にも取り組み、世界中の地域熱供給市場に参入することだ」と指摘、原子力による熱供給にはCO2排出量の削減で大きな可能性があると強調した。(参照資料:ヘレン社、ステディ・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 05 Oct 2023
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