キーワード:小型モジュール炉(SMR)
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カナダの調査報告書:「同国製の第4世代SMRはカナダ経済に大きな利益もたらす」
カナダのテレストリアル・エナジー社は11月8日、同社製の小型モジュール炉(SMR)など、カナダで開発された第4世代のSMRがオンタリオ州で建設された場合、膨大な利益が同州やカナダ経済にもたらされるとの分析調査結果を発表した。この調査は、同社がオンタリオ州を本拠地とする土木建築・コンサルティング企業、ハッチ社に委託して実施したもの。同州では現在、州営電力のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社がダーリントン原子力発電所の敷地内で、テレストリアル社の小型モジュール式・一体型溶融塩炉「IMSR」を含む3つのSMR設計の中から、1つを選択して建設することを検討している。ハッチ社によると、オンタリオ州およびカナダ全体でどれほどの規模の利益が得られるかは、この「ダーリントン原子力新設プロジェクト(DNNP)」で選択されるSMR設計にかかっている。カナダで開発されたSMR技術の場合、その設計を世界市場に輸出する可能性も含めて、数十年の間に数千億ドル規模の「触媒効果的利益」が期待できる。一方、カナダ以外の国で開発されたSMR技術では、その国のサプライチェーンが引き続き、開発企業に協力するためそうした可能性は低い。DNNPではIMSRのほかに、米GE日立・ニュクリアエナジー社製の軽水炉型SMR「BWRX-300」、および同じく米国企業のX-エナジー社が開発した小型のペブルベッド式高温ガス炉「Xe-100」が候補設計に選定されている。テレストリアル社が開発したIMSRは電力のほかに熱エネルギーを供給可能で、使用する溶融塩燃料は第4世代設計のなかで唯一、これまで軽水炉に装荷されてきた標準タイプの低濃縮ウランで製造される。同社は今年9月、IMSRと発電機を2基ずつ搭載する電気出力39万kWの改良型発電所設計「IMSR400」を発表しており、カナダで開発されているSMR設計のなかでは最大出力となる。ハッチ社の調査報告書によると、IMSR400発電所をダーリントンで建設した場合、設計・建設段階の9年間に30億カナダドル(約2,700億円)以上の利益がカナダのGDPに追加され、年平均で2,100名以上の雇用を支えることになる。これに加えて、同発電所の運転段階で年間合計45億加ドル(約4,100億円)以上の利益が生み出され、創出される雇用は年間580名分におよぶと予測。設計から廃炉までの全期間で試算した場合は、オンタリオ州のGDPにもたらされる利益は約66億加ドル(約6,000億円)、カナダ経済に対しては79億加ドル(約7,200億円)に達するとしている。ハッチ社はまた、第4世代の原子力発電所はカナダのみならず、世界中の発電システムの中で化石燃料に取って替わる莫大な可能性があると指摘。第4世代の原子炉技術のみが原子力の経済性を改善し、商業用原子力発電におけるカナダのこれまでのリーダーシップを永続させることができるとしている。テレストリアル・エナジー社のS.アイリッシュCEOは、「英国グラスゴーでは各国のリーダー達がCOP26でCO2排出量の実質ゼロ化に向けた方策を話し合ったが、IMSRはカナダの数多くのサプライチェーン・パートナーと協力して開発したカナダの第4世代炉であり、カナダのみならずその貿易相手国でCO2の実質ゼロ化に貢献できる」とコメント。ダーリントン発電所でのSMR建設は、その切っ掛けになるとの認識を示している。(参照資料:テレストリアル・エナジー社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Nov 2021
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ニュースケール社、米国内でのSMR建設の可能性評価で新たに公営電力と覚書
米国のニュースケール・パワー社は5月26日、同社の小型モジュール炉(SMR)事業に日本のIHIの出資参加が決まったとする発表に加え、北西部ワシントン州で同社製SMRを建設した場合の性能を評価するため、同州グラント郡の公営電気事業者「グラントPUD」と協力覚書を交わしたと発表した。同社が開発したPWRタイプの一体型SMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」は、西部6州の電気事業者48社で構成されるユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)が、初号機をアイダホ国立研究所(INL)内で建設することを計画。UAMPSは2023年の第2四半期までに建設・運転一括認可(COL)を申請し、2025年の後半までにこれを取得、その後、直ちに建設工事を開始する方針である。 米原子力規制委員会(NRC)はすでに2020年9月、モジュール1基あたりの電気出力が5万kWのNPMについて、SMR設計としては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給した。工場内での製造・組立を基本とする同設計では、最大12基のモジュール接続で出力を拡大することができ、現時点では米国におけるSMR商業化レースの先頭を走っている。ニュースケール社はまた、7.7万kW版の「NuScale NPM-20」についても、SDAを2022年第4四半期に申請する予定である。この「NuScale NPM-20」の出力は、4基接続するオプションの場合30.8万kW、6基で46.2万kW、12基で92.4万kWとなる。今回の覚書でニュースケール社とグラントPUDは、ワシントン州の中心部でNPMが信頼性の高い廉価な低炭素エネルギーの供給ソリューションとなり得るか、その適性の評価作業を協力して進めていく。ニュースケール社によれば覚書の締結は、「革新的な技術を採用したSMRでクリーンエネルギーを地域コミュニティに供給する」という需要の高まりを反映したもの。予定通りに建設されれば、グラント郡の顧客の電力需要に応えるとともに、適正価格による同設計の商業化に向けて、ニュースケール社が希望した通りのスケジュールを厳守することができる。グラントPUDは郡庁所在地のエフラタを本拠地としており、水力発電所など合計約210万kWの再生可能エネルギー源で、無炭素な電力を米国の太平洋岸北西部地域や、グラント郡内の発展著しい産業部門を含む約4万の小売顧客に供給中だ。グラントPUDのK.ノルトCEOは、「原子炉の安全性や革新的技術に対するニュースケール社の真剣な取り組みは当社の価値観とも一致する」と指摘。「太平洋岸北西部地域におけるカーボンフリーな社会実現のため、原子力に重要な役割を持たせるべく協力して取り組みたい」と抱負を述べた。ニュースケール社のSMR設計についてはこのほか、カナダのブルース・パワー社が2018年11月、カナダ市場への導入を目指してニュースケール社と協力覚書を締結。さらに、ヨルダン、ルーマニア、チェコ、ウクライナの国営電気事業者や原子力委員会が同社製SMRの導入を検討中で、実行可能性調査の実施に向けた覚書を締結済みである。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 28 May 2021
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英ロールス・ロイス社、今秋の設計審査開始に向けSMRの出力を増強
英国で小型モジュール炉(SMR)開発の官民企業連合を率いるロールス・ロイス社は5月17日、開発の第一段階が終了した現時点での最新設計を公開。出力を44万kWから47万kWに増強したことを明らかにした。同企業連合は2030年代初頭の初号機完成を皮切りに、2035年までに最大10基のSMR建設を目指している。折しも、英国では先週11日、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が包括的設計審査(GDA)の対象として、SMRを含む「先進的原子力技術」まで範囲を広げると表明。このため同企業連合は、今年の後半にも最新設計のSMRでGDAの開始に漕ぎつけたいとしている。ロールス・ロイス社の「英国SMR開発企業連合」には、仏国の国際エンジニアリング企業のアシステム社や米国のジェイコブス社、英国の大手建設エンジニアリング企業であるアトキンズ社、BAMナットル社、レイン・オルーク社などが参加。このほか、英国の国立原子力研究所(NNL)、および英国政府が原子力産業界との協力で2012年に設置した先進的原子力機器製造研究センター(N-AMRC)も加わっている。今回の発表によると、第一段階の作業で同企業連合は発電所としての設計を調整・改善しており、200以上の重要項目について設計上の改良を図った。具体的には、機器類の配置見直し等で、追加のコストをかけずに出力を47万kWまでに拡大させた。また新たな設計では、美的なカットを施した屋根で発電所を覆い、周囲の景観とマッチする盛り土が発電所を取り囲んでいる。さらに、床面のレイアウトで一層の合理化を図ったことから、基礎伏図はさらにコンパクトになったとしている。今後もこの開発プログラムを継続するにあたり、英国SMRの開発チームは「共同作業を実施する企業連合」から「独立した法人」に移行する方針である。一群のSMR発電所を、再生可能エネルギーと並んで、英国における低炭素エネルギーの拠点とするほか、これらが世界の低炭素化に資するよう輸出の機会を模索していく考えである。同企業連合のT.サムソンCEOは、「地球温暖化の防止や経済の再生、およびエネルギー供給保証で原子力は中心的役割を果たす」と断言。そのためにも、「原子力は今後も廉価で信頼性が高く、投資の対象に適した存在である必要があり、発電所の製造方法も洋上風力の1MWh当たり約50ポンド(約7,700円)という価格と同程度でなくてはならない」と指摘した。同CEOはまた、「世界の脱炭素化に向けて主要な役割を担うことができ、最終商品とほとんど同じレベルの製品を開発チームがすでに設計済みだ」と指摘。今秋にも同企業連合の設計をGDA申請することを強調した。ロールス・ロイス社の発表によれば、SMRの開発プログラムにより英国内だけでも以下が見込まれている。2050年までに4万人分の雇用創出520億ポンド(約8兆円)の経済的利益発電所を構成する機器の80%は英国内で調達発電所の輸出で新たに2,500億ポンド(約38兆6,600億円)の貿易利益を目指す(エストニアとトルコ、およびチェコとはすでに、輸出に向けた覚書を締結済み)初号機の建設コスト約22億ポンド(約3,400億円)は、5基が完成するまでに18億ポンド(約2,800億円)まで低減可能1基あたり、少なくとも60年稼働(参照資料:ロールス・ロイス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 18 May 2021
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英政府がSMRと先進的原子炉設計を設計認証審査の対象に、申請ガイダンスを公表
©BEIS英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は5月11日、包括的設計認証審査(GDA)の対象を小型モジュール炉(SMR)とその他の先進的原子炉設計を含む「先進的原子力技術」に広げると表明し、そのための申請ガイダンスを公表した。新たな原子炉設計を開発中の企業が適切なGDA申請準備を整えられるよう、政府が審査で要求するデータ等について情報提供することが目的である。この中でBEISは、申請書を提出する3か月前に申請の意思を連絡するよう指示。こうしたことを通じて、GDAを柔軟性のある時代に即した審査とする考えを明らかにした。BEISはまた、同じ日に「先進的原子力技術」の開発政策を示した文書を更新し、このような技術は、国内経済を低炭素なものに移行させる上で重要な役割を担うとの認識を改めて表明している。GDAは、英国内で初めて建設される原子炉設計に対して行う事前の設計認証審査。原子力規制庁(ONR)が対象設計の安全・セキュリティ面について、環境庁(EA)が環境保護と放射性廃棄物管理の側面について、英国の基準を満たしているか、約5年かけて評価する。これまでに、フラマトム社製の「欧州加圧水型炉(EPR)」とウェスチングハウス(WH)社製「AP1000」、および日立GE社製の「英国版ABWR」に対し、ONRが設計承認確認書(DAC)を、EAが「設計承認声明書(SoDAC)」を発給済み。ONRらは現在、中国広核集団公司(CGN)を中心とする中国企業が開発した英国版の「華龍一号」設計について審査を行っている。更新した政策文書の中で、英政府は開発中の様々な原子炉設計を意味する「先進的原子力技術」の定義として、「従来の原子炉より小型のもの」で、「工場内で製造した後、設置場所まで輸送が可能なほか、建設リスクやコストを軽減できるもの」と説明。これらの技術は一般的に、①SMR:「第3世代の水冷却炉(軽水炉、重水炉)で規模の小さいモジュール設計」と②AMR:「第4世代以降の先進的モジュール炉で、新しい冷却方式や燃料、熱供給機能等を備えるとともに、大幅なコスト削減の可能性がある設計」に分類されるとした。BEISはまた、B.ジョンソン首相が2020年11月に公表した「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」と、BEISが2020年12月に公表した新しい「エネルギー白書」に言及。これらを通じて、英政府は2050年までに国内の温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロ化する方針であり、そのために大型炉に加えてSMRや先進的原子炉を国内で建設するとの方針を強調している。具体的な10項目の重要施策を示した「10ポイント計画」のなかで、英政府は「先進的原子力基金」として最大3億8,500万ポンド(約593億円)を充当すると表明。これには、SMR開発資金の最大2億1,500万ポンド(約331億円)が含まれるとともに、AMR研究開発プログラムに対する最大1億7,000万ポンド(約262億円)の投資が約束された。政府はまた、これらの技術開発にともなう規制枠組みの整備や、これらを市場に送り出すサプライチェーンへの支援で、別途4,000万ポンド(約62億円)を投資する計画。これらを通じて、SMRの初号機とAMRの実証炉を2030年代初頭に完成させたいとしている。(参照資料:英政府の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 13 May 2021
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米国務省がSMRの活用支援プログラムを始動
米国の国務省(DOS)は4月27日、地球温暖化を防止するバイデン=ハリス政権の取り組みの一環として、国際支援プログラム「小型モジュール炉(SMR)技術の責任ある活用に向けた基本インフラ(FIRST)」を始動すると発表した。国内で60年以上にわたり蓄積してきた原子力関係の革新的技術と専門的知見に基づき、米国はパートナー国がクリーンエネルギーの利用を拡大する際、同プログラムを通じて国際的に最も厳しい安全・セキュリティ基準や核不拡散基準の下で原子力プログラムが策定されるよう、能力の向上を支援。そのための初期予算として、DOSは同プログラムで実施するプロジェクトの支援に530万ドルを投入する方針である。J.バイデン大統領は4月22日と23日の2日間、40か国・地域の首脳らを招いて気候変動サミットをオンライン開催したが、その中でFIRSTプログラムを初めて紹介。これはクリーンエネルギー増産のための技術革新と、前例のない世界規模の国際協力体制構築に向けた米国の主要な努力活動になると説明していた。今回の発表によると、FIRSTはパートナー国における確実にして安全な原子力基盤の整備を目的に、技術協力も含めた戦略的連携を深めるとともに、エネルギー関係の技術革新を推進する。DOSは具体的に、国際原子力機関(IAEA)の「マイルストーン・アプローチ」に沿って、SMRなど先進的原子力技術の導入をパートナー国で支援する計画。同アプローチではIAEA加盟国で健全な原子力発電プログラムが開発されるよう、フェーズ毎にIAEAがレビュー・ミッションを実施、推奨事項の提示やフォローアップも行っている。SMRに関してDOSは、低価格で設置容量の選択性があり、負荷変動への対応や他のクリーンエネルギーの補完など、柔軟性の高い運転が可能な発電設備だと認識。信頼性の高い発電能力に加えて、海水の脱塩やエネルギーを大量消費する産業プロセスで石炭火力に代わる能力を持っているとした。SMRはまた、輸送その他の部門で脱炭素化を促進する水素の製造も可能なことから、DOSはFIRSTを通じてパートナー国の政府や産業界、国立研究所、学術機関との連携を強化。地球温暖化の防止に向けた取り組みと技術革新の促進のほか、環境保全、地域社会の経済成長に向けて、米国は新しい様々な方策を安全確実なやり方で主導していく考えである。(参照資料:米国務省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 30 Apr 2021
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「SMR技術でカナダが世界のリーダーに」とのFS結果
カナダのオンタリオ州、ニューブランズウィック(NB)州、サスカチュワン州の各首相は4月14日、3州の電気事業者が共同で実施した小型モジュール炉(SMR)開発の実行可能性調査(FS)の結果を公表した。SMR開発が同国の経済成長に大きく貢献すると結論づけている。また、アルバータ州は同日、これら3州が多目的SMRをカナダ国内で開発・建設するため、2019年12月に締結した協力覚書に加わったと表明。これら4州の首相は、地球温暖化とエネルギー需要への取り組み、および経済成長と技術革新を支援するクリーンエネルギー・オプションとして、SMR開発を協力して進めることで合意している。FSの結果報告書によると、出力30万kW以下のSMRはカナダのエネルギー需要を満たす一助となるだけでなく、温室効果ガスの排出量を削減し、SMR技術でカナダを世界のリーダーに押し上げることが期待される。また、既設の大容量送電網のみならず、遠隔地のコミュニティや資源開発プロジェクトで使用する小容量送電網にも組み込むことができると表明している。今回のFSは3州の協力覚書の一環として、各州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社、ブルース・パワー(BP)社、NBパワー社、およびサスクパワー社が州政府の要請を受けて行った。これら3州ではすでに、複数のSMR開発プロジェクトが進められているが、FS報告書はそれらについて3州の州政府が考慮すべき方向性を以下のように提案している。①(オンタリオ州がダーリントン原子力発電所敷地内で進めているSMR計画について)送電網への接続が可能な出力30万kW程度のSMR初号機を2028年までに建設し、これに続くフェーズで最大4基のSMRの最初の一基を2032年までにサスカチュワン州内で完成させる。ここでは複数の地点で早急かつ効率的にSMRを建設できるよう、共通技術を1つに絞り込みSMR群を一まとめに建設する“フリート”アプローチを取る。これに向けて、OPG社とBP社、およびサスク社は協力して、2021年末までに採用技術と開発企業を選定する。②(NB州がポイントルプロー原子力発電所敷地内で進めているSMR計画については)第4世代の先進的SMR実証炉を2種類、建設する。NB州が協力関係を結んでいる2社のベンダーのうち、米ARCクリーン・エナジー社のナトリウム冷却・プール型高速中性子炉「ARC-100」の実証炉を2030年までに完成させる。また、英モルテックス・エナジー社の「燃料ピン型溶融塩炉(SSR-W)」と廃棄物リサイクル施設を2030年代初頭までに稼働可能にする。③遠隔地のコミュニティや鉱山で主に使用されているディーゼル発電機に代わって、超小型SMR(MMR)を導入する。このため、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)が開発した電気出力0.5万kWの小型モジュール式高温ガス炉を、2026年までにオンタリオ州のカナダ原子力研究所チョークリバー・サイトで建設する。このMMRに関してはすでに2019年3月、USNC社のパートナー企業であるカナダのグローバル・ファースト・パワー(GFP)社がチョークリバー・サイトで実証炉を建設するため、サイト準備許可(LTPS)をカナダ原子力安全委員会に申請している。FS報告書によると、これら3つの方向性すべてで「カナダに新たな雇用を生み出し経済成長に貢献する」ことが期待できる。地球温暖化など地球規模の課題への取り組みにも資することから、SMR技術とその専門的知見を輸出できる可能性もあるとした。また、すべての方向性において技術面と商業面両方に実行可能性がある一方、重要な点は連邦政府とコストやリスクを共有することだとFS報告書は指摘。これらのSMR技術は、廉価なクリーンエネルギーを提供しつつカナダが2030年までに石炭火力を全廃し、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成する一助になる。また、これらのSMRプロジェクトは原子力産業界の活動に新たなサブカテゴリ―を創出する。カナダは世界中のSMR建設で大きな役割を果たせる有利な立場にあるため、3つの方向性すべてが順調に進展するよう連邦政府からタイムリーな支援を確保することが重要になる。さらに、勧告事項としてFS報告書は、州政府が各州それぞれの経済優先事項や必要性に沿ったやり方で連邦政府と協力し、カナダのCO2排出量削減と経済成長を支援していくべきだとした。SMR開発で得られるビジネス機会を共有しながら、産業界と州政府、および連邦政府は協力してカナダ中で経済成長と雇用を促し、輸出も視野に入れた理想的な事業環境を創出、革新的エネルギー技術の開発を続けるべきだとしている。なお、アルバータ州が新たに加わった3州の協力覚書における次のアクションとして、4州の州政府は共同戦略計画案を策定するとしており、今春中に完成する見通しである。また、これら4州は原子力産業界全体との協力も継続し、原子力技術革新の最前線にカナダが留まれるよう力を合わせる方針。今後の経済成長や雇用の創出、技術革新、低炭素社会の構築に向けて、新たな機会を模索するとしている。(参照資料:オンタリオ州、NB州、サスカチュワン州、アルバータ州の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 16 Apr 2021
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カナダ連邦政府がNB州のSMR研究開発を支援
「SSR-W」の構造図©Moltexカナダの連邦政府は3月18日、東部のニューブランズウィック(NB)州が進めている小型モジュール炉(SMR)の技術研究開発を支援するため、総額5,600万カナダドル(約48億7,400万円)以上の資金供与を行うと発表した。その内訳は、NB州内で商業規模の実証炉建設が計画されている2つのSMR設計のうち、「燃料ピン型溶融塩炉(SSR-W)」を開発した英モルテックス・エナジー社に対して、「戦略的技術革新基金(SIF)」から4,750万加ドル(約41億3,600万円)、大西洋地域開発庁(ACOA)の「技術革新による地域経済成長(REGI)プログラム」から300万ドル(約2億6,000万円)を支出する。これに加えて、SMR実証炉の建設予定地であるポイントルプロー原子力発電所の準備資金として、同炉を所有する州営電力のNBパワー社に約500万加ドル(約4億3,500万円)、NB州内でSMR技術の開発研究を支援しているニューブランズウィック大学・原子力研究センターの能力を拡充するため約56万加ドル(約4,900万円)をACOAから提供する方針である。連邦政府の考えでは、これらの支援を通じてCO2排出量が削減され、カナダがクリーンな経済成長に移行するために役立てることが出来る。連邦政府の「技術革新と能力の増強計画」にも、高度な能力を持つ人材が育ち、将来的な経済成長と技術革新の主要要素となる新しい基盤技術の研究が進展。カナダのSMR技術開発、およびその長期的なビジョンを示した「SMRアクション計画」をも下支えすることになる。今回の決定について連邦政府のF.-P.シャンパーニュ技術革新・科学産業相は、「このような革新的技術の開発利用を連邦政府が支援することで、低炭素なエネルギー源の開発が促進され、世界のSMR開発におけるカナダのリーダーシップが確立される」と強調。「連邦政府は新型コロナウイルスによるパンデミック後の復興も含め、一層豊かで健全なカナダのために基盤を築かねばならないが、今回の資金援助は地球温暖化との戦いやパンデミック後のカナダ経済の安定性を取り戻す上で、重要な役割を担うことが期待される」と指摘した。NB州の「SSR-W」実証炉計画NB州政府が、モルテックス社製「SSR-W」の実証炉を2030年までにポイントルプロー原子力発電所のサイト内で建設すると表明したのは2018年7月のこと。同州政府によれば、先進的なSMR技術の開発は安全・確実かつクリーンで経済的な原子力エネルギーを開発する一助になる。また、エネルギー需要を満たすだけでなく、輸出の機会も得られるようなエネルギー・ソリューションの開発で、同州はカナダのリーダー的立場の確立を目指すとしている。モルテックス社の発表では、出力30万kWの「SSR-W」は既存炉の使用済燃料を低コストで新燃料に転換できるため、NB州内では将来、使用済燃料の処分問題に解決の道筋をつけることができる。同社はポイントルプロー発電所の敷地内でその商業規模の実証炉を建設するほかに、廃棄物を安定塩にリサイクルする施設「WAste To Stable Salt (WATSS)」の建設も計画。2030年初頭にもSMRを完成させて、無炭素な電力をカナダ国内に送りだしたいとしている。モルテックス社はまた、同設計の開発にSIF基金から4,750万加ドルが提供されるのを受けて、自らも同額の資金を拠出する方針である。これらを合計した金額で「SSR-W」と「WATSS」の設計を一層前進させ、カナダ原子力安全委員会が同設計について実施中の「許認可申請前設計審査(ベンダー設計審査)(VDR)」を第2フェーズに進めていく。ACOAからの300万加ドルもWATSS研究のさらなる促進に利用する方針で、このような技術の商業化が急速に進展すれば、カナダでは付加価値の高い数百人規模の雇用が創出される。これらの雇用は15年間で約10億加ドル(約870億円)の国内総生産(GDP)への寄与を生み出し、連邦政府に1億加ドル規模(約87億円)の歳入をもたらすと強調している。(参照資料:カナダ連邦政府、モルテックス・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 Mar 2021
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ブルガリア、SMR建設の実行可能性調査でニュースケール社と覚書
米国のニュースケール・パワー社は2月17日、ブルガリアのコズロドイ原子力発電所内で同社製の小型モジュール炉(SMR)を建設する可能性を探るため、コズロドイ原子力発電所増設会社(KNPP-NB)と協力覚書を締結したと発表した。コズロドイ発電所では現在、5、6号機(各100万kWのロシア型PWR=VVER)のみが稼働中だが、これらは同国唯一の原子力発電設備であり、総発電量の約35%を賄っている。ブルガリア内閣は昨年10月14日、欧州連合(EU)が目標に掲げる「2050年までに気候中立(CO2の排出量と吸収量がプラスマイナスゼロ)を達成」を前進させるためにも、同発電所の設備容量拡大に向けた可能性調査や準備活動を実施すると閣議決定した。内閣はその際、世界の潮流に沿って、将来的にSMRを第3世代+(プラス)の大型炉に代わる選択肢として活用する方針を明示。コズロドイ発電所では設備容量の上限を定めていないため、原子炉の増設に向けて現在進めている活動の範囲を広げることや、様々な原子炉技術を考慮することなどを指示した。また、具体的な措置として、SMRのデベロッパーを含む米国企業と新たな原子炉技術の開発協力で交渉に入るなど、必要なアクションを取るようエネルギー大臣と国営エネルギー持ち株会社(BEH)に命じている。実際、ブルガリア政府は今年1月、頓挫したベレネ原子力発電所のために調達した一部機器を使って、コズロドイ発電所7号機の建設を検討すると発表している。この方法が最も経済的であり、環境面や技術面でも適していると述べた一方、SMRなどの新技術を採用した原子炉を建設する可能性についても調査を継続するとしていたニュースケール社が今回覚書を結んだKNPP-NB社は、既存のコズロドイ発電所サイトに新たな原子炉を建設するために設立された株式会社。閣議決定に沿って、KNPP-NB社は先進的な原子炉技術を同発電所に導入する方針であり、ニュースケール社のSMRについても技術的な適性を評価する。ニュースケール社側もKNPP-NB社のこのような活動に協力するため、様々な分析・調査をサポートする予定。具体的には、実行可能性調査の実施も含めた開発スケジュールの作成や費用見積もり、エンジニアリングや許認可手続きなど、ニュースケール社製SMRの導入で双方が合意した項目を支援していく。ニュースケール社は2016年12月末日、SMR設計としては初の設計認証(DC)審査を原子力規制委員会(NRC)に申請した。その後約4年半の審査を経て、NRCは2020年9月29日付けの連邦官報で、「電気出力各5万kWのモジュール×12基」で構成される同社製SMRに「標準設計承認(SDA)」を発給したと発表した。同設計の初号機については、ユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)がエネルギー省傘下のアイダホ国立研究所内で建設することを計画しており、ニュースケール社は2027年までに最初のモジュールを納入する考え。また、米国以外では、カナダやヨルダン、チェコ、ルーマニアで同社製SMRの建設可能性調査に関する覚書がニュースケール社と結ばれている。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、コズロドイ原子力発電所増設会社(ブルガリア語)の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 18 Feb 2021
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英国のクリーン・エネ企業、風力とSMRの複合発電所建設を米ニュースケール社と検討
英国で洋上風力発電などのクリーン・エネルギー事業を展開するシアウォーター・エナジー社は1月12日、風力発電と小型モジュール炉(SMR)を組み合わせたハイブリッド・エネルギー・プロジェクトをウェールズで進めていくため、米国のニュースケール・パワー社と協力すると発表した。同社はすでに、このプロジェクトの概要を英国政府のほかウェールズ、北アイルランド、スコットランドの各政府にもオンラインで提案。同社によれば、いずれの政府もこのプロジェクトから経済面で多くの恩恵を得ることができる。このプロジェクトでシアウォーター社は、米国のSMR商業化レースで先頭に立つニュースケール社のSMRを選択した。ニュースケール社のSMRは負荷追従運転にも対応するベースロード用エネルギー源であり、このプロジェクトのためにクリーンなエネルギーの生産が可能。シアウォーター社は今回、ニュースケール社と了解覚書を締結しており、プロジェクトの詳細調査などで両社間の協力を強化する。早ければ2027年にもウェールズ北部のアングルシー島ウィルファで、無炭素なクリーン電力の出力300万kW、CO2を排出しない「グリーン水素」の生産量が年間3000トン以上という風力・SMR複合発電所の運転を開始する。発表によると、今回の覚書で両社は双方の技術を統合し、電力と水素を複合生産する可能性を探る。近年、再生可能エネルギーが世界中で成長しているが、両社の協力は適用性が一層柔軟で信頼性の高い低炭素電源が求められていることを示している。ニュースケール社はプロジェクトに適合したSMRのエンジニアリングや計画立案、許認可手続でシアウォーター社に協力するほか、数多くの英国企業をプロジェクトに参加させる方策を同社とともに模索。ニュースケール社が英国のサプライチェーンを評価した結果、SMRで使用する資機材の75%以上が英国内で調達可能だと結論付けている。シアウォーター社のS.フォースターCEOは今回のプロジェクトについて、「複数の低炭素発電技術を組み合わせれば、高額のコストや長期の建設工事、環境への影響なしで大型火力発電所と同等の性能を得ることができる」と指摘。風力・SMR複合発電所が完成すれば、従来の原子力発電所を建設するコストのほんの一部分で出力300万kWの無炭素電力が得られるほか、グリーン水素の生産により輸送部門を低炭素燃料に移行させるための支援が可能になるとした。同社はまた、英国が2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成できるよう、2030年までに洋上風力発電の設備を速やかに拡大するとともに、SMRにも投資すると政府が発表した事実に言及。これらを考慮すると、同社とニュースケール社の風力・SMR複合発電所は、送電網の安定性問題や再生可能エネルギーの間欠性問題にも打ち勝つことができるとした。さらに、この複合発電所が生産するグリーン水素によって、様々な産業の脱炭素化とエネルギー供給保証の価格適性化の達成を後押しすることも可能だとしている。(参照資料:シアウォーター・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 Jan 2021
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米貿易開発庁、ルーマニアにおけるニュースケール社製SMR建設に向け技術支援
米国の貿易開発庁(USTDA)は1月14日、オレゴン州のニュースケール・パワー社が開発した小型モジュール炉(SMR)をルーマニアで建設するための技術支援金として、ルーマニア国営の原子力発電会社(SNN)に対し約128万ドルを交付したと発表した。返金不要の同支援金を通じて、SNN社は国内唯一の原子力発電設備であるチェルナボーダ発電所(70万kW級加圧重水炉×2基)とは別に、SMR建設に適したサイトを新たに選定するための予備的評価作業を実施する。SMRはまた、2035年以降のエネルギー生産や関係事業に利益をもたらす可能性があるため、SMRの許認可手続に関するロードマップも作成する方針である。ルーマニアの2020年のエネルギー戦略プロジェクトによると、SMRを採用することにより同国では2035年以降、CO2を排出しないエネルギー源や水素生産源を拡大することが可能になる。このためSNN社は、適切な時期にSMR建設サイトの評価を開始する方針であり、ニュースケール社とはすでに2019年3月、同社製SMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の建設可能性を探る目的で了解覚書を締結。SMRの革新的な技術や関係ビジネスの情報を入手して、この目標の達成に向けた評価を実施するとしている。USTDAのT.アブラジャノ最高執行責任者(COO)兼代表によると、将来のエネルギー需要を満たすために最新鋭の民生用原子力技術を欲するルーマニアにとって、USTDAは理想的なパートナー。その上で同COOは、「今回の支援で両国の原子力産業間に強固な連帯が築かれ、米国の原子力産業界にとっては重要市場で新たな事業チャンスが生み出される」と述べた。また、USTDAはルーマニアのエネルギー戦略にSMRを導入する手助けをすることになり、SNN社がすでにサイト選定やサイト固有の許認可ロードマップ作りで具体的な支援が得られるよう、イリノイ州のサージェント&ランディ社を選択したことを明らかにした。一方、SNN社のC.ギタCEOは、「チェルナボーダ発電所で現在、3、4号機の増設計画を進めているのに加え、当社は国内原子力産業界のさらなる発展に向けた長期的対策として、SMRの建設・評価に高い関心を抱いている」と述べた。同CEOはSMRの特徴であるモジュール方式や運転の柔軟性、発電効率の高さが、ルーマニアにおける2035年以降のエネルギー・システムや関係事業を有利に導くかもしれないと指摘。USTDからの支援に適合するSMR技術について建設サイトを選定し、最終決定につなげられるよう評価作業を始めたいとしている。なお、ニュースケール社のNPMは昨年9月、米原子力規制委員会(NRC)が実施中の設計認証(DC)審査において「標準設計承認(SDA)」を取得。2029年に同SMRで最初のモジュールの運転を開始するため、ユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)はアイダホ国立研究所敷地内で建設計画を進めている。このほか、カナダやヨルダン、チェコ、ウクライナが国内でNPMの建設を検討中。それぞれの国の担当機関が、実行可能性調査を実施するための了解覚書をニュースケール社との間で結んでいる。(参照資料:USTDAとSNN社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 18 Jan 2021
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米トランプ政権、宇宙探査と国防目的のSMR利用促進で大統領令発令
任期満了まで残すところ約1週間となった米国のD.トランプ政権は1月12日、深宇宙の探査や国家防衛のために、極小原子炉など小型モジュール炉(SMR)技術のさらなる利用促進を目指した大統領令を発令した。大統領令は国内政府機関や職員に対して発せられる行政命令で、議会の承認を得ることなく行政権を直接行使することが可能である。トランプ政権は米国の国家安全保障にとって原子力技術は非常に重要と認識しており、今回の大統領令を通じて国内原子力部門の再活性化と拡大を図る方針。国防長官に対しては同令の発令後180日以内に、原子力規制委員会(NRC)の認可を受けた極小原子炉を国内遠隔地の軍事施設に設置した際のコスト効果や、エネルギー源の柔軟な活用がもたらす効果の実証プランを作成・実行するよう指示した。また、国防総省が1日に消費する燃料は1,000万ガロン以上、民生用電力網から使用する年間の電力消費量も300億kWhに及ぶことから、トランプ政権は先進的原子炉が国防に立つかについては国防長官が判定し、輸送可能な極小原子炉の試用も行うとした。宇宙動力炉の軍事利用や敵対国における利用プログラムについても、同長官が分析を指示すべきだとしている。同政権はさらに、米航空宇宙局(NASA)長官に対しても180日以内に、2040年までのロボット探査や人的探査ミッションに原子力システムを利用する際の要件を特定し、利用にともなう同システムのコストや利点を分析するよう指示した。このほか同政権は、国内の原子燃料サプライチェーンが安全かつ安定的に成長するは、米国の国益にとって重要だと指摘。今後の発展が期待できる燃料サプライチェーンは、国家の安全保障・防衛活動を支えるとともに民生用原子力産業界の発展を保証するとした。ところが、先進的原子炉概念の多くがHALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を使用することから、同政権は国内に商業用のHALEU生産設備が存在しない米国では国産のHALEU燃料確保で対策を講じなければならないと述べた。こうした観点からトランプ政権は、軍用の先進的原子炉で使用するHALEU燃料の生産能力を実証するため、1億1,500万ドルの予算で現在進行中の3年計画を完了させるようエネルギー省(DOE)長官に指示。同計画の予算の範囲内で、HALEU燃料生産技術を成功裏に民間部門の商業利用に移転させるプランを策定するよう促している。これらを踏まえて同政権は、今回の大統領令の中で国務長官、国防長官、商務長官、エネルギー長官、およびNASA長官に対し、2030年までを見据えた共通技術開発ロードマップの作成を指示した。ここでは、開発が望ましい技術を明記するほか、地上設置用の先進的原子炉と宇宙探査用の原子力推進システム等の開発について可能な限り省庁間の調整を行うとしている。なお、大統領令の発令に至るまでの経緯として、トランプ政権は発足した2017年に原子力部門の再生イニシアチブを開始したほか、原子力政策の包括的見直しを指示したと説明。2019年7月に「ウランの輸入が国家安全保障に及ぼす影響と国家原子燃料作業グループの設置」と題する大統領覚書に書名した後、同年8月には宇宙探査を促進するため、宇宙探査機に搭載する原子力発電システムの開発・利用を呼びかける大統領覚書を発出したことも指摘している。また、今回の大統領令は、国内原子力部門の再生と米国の宇宙開発プログラムの再活性化、および国防上必要とされる多様なエネルギー・オプションの開発を目指して、重要な追加施策を取ることが目的だと説明。同令により、米国政府はSMRを国防や宇宙探査に利用することも含め、米国の技術が世界でも優位となるよう原子力の利点を効果的に適用する活動を調整。これにより、トランプ政権が最優先事項とする「研究開発や発明、また先進技術の革新における米国の主導」、およびそれに基づいて米国の国家安全保障ミッションを推し進める上で重要であると表明。また、米国による「エネルギー支配」の原動力としても、最も厳しいレベルの核不拡散に留意しながらこれらの目標をすべて達成する上でも重要だと指摘している。(参照資料:ホワイトハウスの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)。
- 14 Jan 2021
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米国の公営電力事業体、ニュースケール社に同社製SMRのCOL申請準備を指示
米国のニュースケール・パワー社は1月11日、アイダホ国立研究所(INL)敷地内で同社製小型モジュール炉(SMR)の建設を計画しているユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)から、建設・運転一括認可(COL)の申請準備を行うよう指示されたと発表した。西部6州の電気事業者48社で構成されるUAMPSは、SMR建設を柱とする独自の「無炭素電力プロジェクト(CFPP)」を2015年から進めており、同プロジェクトの管理と開発リスク回避のためにニュースケール社と最近締結した協定を、今回実行に移したもの。UAMPSは2023年の第2四半期までにニュースケール社製SMRのCOLをNRCに申請し2025年の後半までにこれを取得、その直後からSMRの建設を開始したいとしている。 ニュースケール社が開発した「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」はPWRタイプの一体型SMR設計で、出力5万kWのモジュールを12基接続することにより最大で60万kWの出力を得ることができる。同設計が昨年8月、SMR設計としては初めて原子力規制委員会(NRC)の「標準設計承認(SDA)」を取得したのを受け、UAMPSはNMP初号機が生産するクリーンで安全かつコスト面の効率性も高い無炭素電力がUAMPS所属の電気事業者に提供されるよう、今回COLの申請準備を最初の指示としてニュースケール社に通達。同社、および同社の親会社で大手のエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約企業でもあるフルアー社は具体的な作業として、建設コストのさらに詳細な見積金額を算出するとともに、SMR建設の許認可手続と製造等で初期作業の計画を立案することになる。ニュースケール社のJ.ホプキンズ会長兼CEOは、「当社の画期的なSMR技術の商業化に向けて大きな一歩が刻まれた」とコメント。2022年頃にUAMPSからNPMの発注を受けられるよう、慎重に開発を進めていくと述べた。UAMPSのD.ハンターCEOも、「ニュースケール社のSMRを通じて価格の手頃な無炭素エネルギーをUAMPS所属の電気事業者に安定的に提供できる。我々の電力供給区域内で大規模な再生可能エネルギー源を開発し、SMRでその間欠性を補うことも可能だ」としている。今回の発表によると、ニュースケール社とUAMPSが結んだ協定には「実費精算契約」が含まれており、完成したSMRの所有・運転会社となるCFPP社(UAMPSの100%子会社)には、INLを所有するエネルギー省(DOE)から複数年にわたって合計13億5,500万ドルの支援金が支払われる。また、フルアー社もUAMPSと実費精算協定を締結しているため、フルアー社は建設地であるINLサイトに特化した設計・エンジニアリング・サービスの提供コストを見積もる方針。これに対してUAMPSは、CFPPに参加する電気事業者のニーズに合ったSMR発電所の規模(モジュールの連結数)や最適なエネルギー・コストを特定するため、評価作業を続ける考えである。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 13 Jan 2021
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ロスアトム社、ロシア極東サハ共和国で建設予定SMRの電力売買で合意
ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は12月24日、極東連邦管区のサハ自治共和国内で2028年までにロシア初の陸上設置式・小型モジュール炉(SMR)の完成に向け、同SMRが発電する電力の料金について23日に同国政府と合意に達したと発表した。サハ共和国の北部、ウスチ・ヤンスク地区のウスチ・クイガ村でSMRを建設する計画は今のところ、両者が2019年9月に締結した意向協定の枠組内で進められている。今回の合意により、同共和国政府はロスアトム社の容量4万~5万kWのSMRからの電力購入と、SMR建設用地の確保支援を約束。モジュール方式のロスアトム社製SMRは工期が短く経済的で、高い安全性を維持しつつ少なくとも60年間稼働することから、ウスチ・ヤンスク地区では発電コストが約半分に削減されると同社は強調している。2020年初頭までにウスチ・ヤンスク地区では両者の意向協定の下で現地調査が完了し、現在は準備作業が行われている。ロスアトム社が建設するのは、同社傘下のOKBMアフリカントフ社が原子力砕氷船用に開発した「RITM-200」設計をベースとする(5万kW程度の)低出力SMR発電所。「RITM-200」は熱出力17.5万kWのコンパクトな軽水炉でこれまでに6基建設されたが、このうち2基は今年10月に正式就航した最新式の原子力砕氷船「アルクティカ」に搭載されている。ロスアトム社はまた、海上浮揚式原子力発電所用のSMRついても開発を進めている。出力3.5万kWの小型炉「KLT-40S」を2基装備した「アカデミック・ロモノソフ号」は、今年5月に極東チュクチ自治区内の湾岸都市ペベクで商業運転を開始した。こうした背景から、ロスアトム社のA.リハチョフ総裁は「新たな世代の陸上設置式SMR原子力発電所を、ロシア国内で初めて建設する重要な一歩が本日刻まれた」と表明。「この建設プロジェクトを実行に移すことで、世界のSMR市場におけるロシアの主導的立場はますます強化される」と述べた。また、「アカデミック・ロモノソフ号」が極東地域で商業運転を開始した事実に触れ、「北極圏の条件下で様々な試験をクリアした「RITM-200」を諸外国のパートナーに提案することは非常に重要だ」と説明。「このように近代的な技術は、現在ロシアのみが保有しており、ロシア国内のみならず世界中で低出力の原子力発電所がもたらす明るい未来が約束された」と強調した。同社はさらに、ウスチ・ヤンスク地区でサハ共和国初の原子力発電所が建設された場合、老朽化した石炭火力発電所やディーゼル発電所が閉鎖されるため、同地区のCO2排出量を年間1万トン削減できるとした。サハ共和国内の金山開発計画にもクリーンエネルギーを安定的に供給することが可能になり、発電所の建設期間だけで最大で800人分の雇用を創出。遠隔地域の住民と地下資源開発業者の両方に対し、信頼性の高い熱電供給を約束するとしている。(参照資料:ロスアトム社(ロシア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 25 Dec 2020
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カナダ政府、SMR開発で国家行動計画を公表
カナダ連邦政府の天然資源省は12月18日、カナダ国民に信頼性の高い電力を供給する可能性を持つとともに、2050年までに同国がCO2排出量の実質ゼロ化に移行する一助にもなる小型モジュール炉(SMR)の開発に向け、国家行動計画を公表した。カナダ国内で様々なSMR技術の開発と建設を支援し、2020年代後半にも最初のSMRで運転を開始するため、連邦政府と各州の州政府および地方自治体、先住民、労組、電気事業者、産業界、イノベーター、学界、市民社会など、100以上の関係組織が一丸となって「チーム・カナダ」を結成。諸外国との連携によりSMRの輸出機会を探るほか、その国際標準化にも影響を与えてカナダ国内における将来的な投資を促進する考えである。カナダ政府は2018年11月にSMRの開発ロードマップを発表しており、今回の行動計画では同ロードマップが確認した53の勧告項目への対応が記されている。全カナダ的アプローチを通じて、安全かつ責任ある形でSMRの開発と建設を進めるため、カナダ政府は国民と環境を防護する規制上や政策上、法制上の枠組を確保。技術革新を加速していくほか、先住民を含むカナダの全国民との有意義な関わり合いを継続するとしている。同行動計画によると、SMRはクリーンで安全かつ価格も適正なエネルギー源となる可能性が有り、低炭素で盤石な未来社会への道を拓くとともに、カナダの全国民がその利益を享受することができる。また、従来型よりも小型でシンプル、コストもかからない原子力発電の必要性を、世界中の市場が示唆している。国際的な専門家の間でも、2030年から2050年までの間にCO2排出量を削減するという連邦政府や州政府の目標を達成し、地球温暖化に対処するには、あらゆる低炭素発電技術とともに新たな原子力発電技術が必要と言われている。このような背景からカナダ政府は、カナダのみならず世界全体が低炭素な将来に向かう上で、原子力の中でも特にSMRのような発電所が重要な役割を担うと認識。カナダにおいてSMRは、沢山の雇用や知的財産権、サプライチェーンを支える一方、世界市場では2040年までに1,500億ドル以上の規模に成長することが見込まれる。これに加えてSMRは、カナダが初期開発国としてSMR国際基準を設定するなどの戦略的影響力を発揮し、開発政策面においても世界のリーダー的立場を確保することに貢献。最終的には、SMRによって地域開発の機会が拓かれ、北部コミュニティや先住民と主なエネルギー問題への取組で建設的な協議を行うことにも繋がるとしている。これらを実現するため、カナダ政府は今回の行動計画で以下の活動を実施する。すなわち、関係組織それぞれの管轄や権限の範囲内で一致団結し、様々なSMR設計の開発と建設を支援。2020年代後半までに最初のSMRで運転を開始する。諸外国のパートナーとも連携してSMRの輸出機会を捉えるため、関係組織を「チーム・カナダ」として統合する。SMRをその他のクリーンエネルギー源や貯蔵技術、アプリなどと統合し、カナダが低炭素な未来社会に向けて移行するのを加速する。放射性廃棄物の排出量を最小限に抑えるとともに、再利用する可能性も追求。放射性廃棄物を安全かつ長期的に管理するためのカナダの慣行を補完する。原子力産業界に女性や少数民族、若者などを積極的に登用して多様化を進めるほか、先住民や遠隔地域、北部コミュニティなどと長期的に経済連携する機会を模索する。SMRの研究開発やエンジニアリング、製造と建設に関する学界の広範な能力を活用する。(参照資料:カナダ連邦政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 21 Dec 2020
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GEH社製SMR 先行安全審査が進展
米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は11月30日、米原子力規制委員会(NRC)が同社製小型モジュール炉(SMR)の「BWRX-300」について実施している先行安全審査で、最初の許認可トピカル・レポート(LTR)に対する最終安全評価報告書(FSER)が発行されたと発表した。米国で開発中のSMRについては、今のところニュースケール・パワー社製のSMRについてのみ、設計の本格的な許認可プロセス「設計認証(DC)審査」が行われている。GEH社は未だ、同審査をBWRX-300で申請していないが、LTRは多くの許認可申請に共通する安全審査事項をまとめた技術文書であり、顧客となる電気事業者が後日、当該設計を選定して予備的安全解析書(PSAR)を作成・提出する際の基礎的文書になる。BWRX-300の先行安全審査でGEH社は、設計の飛躍的な簡素化を実現した原理について2019年12月に最初のLTRをNRCに提出した。今年初頭に後続のLTRを2件提出した後は、4件目のLTRを今年9月に提出。2件目と3件目については、今後数か月以内に審査が完了すると同社は予想している。BWRX-300では、すでに2014年にDCを取得した同社製「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」から多くの技術を流用しているため、GEH社は今回のLTRによってBWRX-300の商業化に向けて審査がさらに進展すると強調。2020年代後半にも最初のBWRX-300の運転を開始するため、今後も集中的に作業を進めていく考えである。GEH社によるとBWRX-300は出力30万kWの軽水冷却式SMRで、ESBWRにも採用した受動的安全系を装備。自然循環技術等により冷却水を制御する仕組みで、設計を簡素化したことでMWあたりの資本コストはその他の軽水冷却式SMRや大型原子炉と比較して大幅に低下した。また、すでに認可が得られた燃料設計や技術的に実証済みの機器、サプライチェーンなどを活用しているため、BWRX-300はGE社が1955年に原子炉を商品化して以降、最もシンプルで革新的な技術を用いたコスト面の競争力も備えた設計になる。同設計については、これまでにバルト三国のエストニアやポーランドのエネルギー企業、チェコの国営電力会社などが、それぞれの国内で建設の可能性を探ると表明。いずれもCO2排出量の実質ゼロ化やエネルギーの自給等で新世代のSMR技術に期待を抱いており、BWRX-300のほか複数のSMR設計について同様の活動を行っている。 (参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 07 Dec 2020
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カナダのNBパワー社がARC社、モルテックス社とSMRベンダー・クラスター設立
カナダ東部ニューブランズウィック(NB)州の州営電力であるNBパワー社は11月16日、英国籍のモルテックス・エナジー社および米国籍のアドバンスド・リアクター・コンセプツ(ARC)社がそれぞれ開発している小型モジュール炉(SMR)のNB州内での建設に向け、相互協力メカニズムである「SMRベンダー・クラスター」を同州で設立すると発表した。同クラスターの目的は、3社間で相乗効果が生まれるよう互いに協力しあうこと。NBパワー社とモルテックス社、およびARC社のカナダ法人(ARCカナダ社)は、これまでの協力関係を同クラスターで一層強化するため、同日付けで了解覚書を締結した。具体的には、製造技術・販売また技術教育での提携、関係取引への取組み、共通する研究開発活動などで協力するとしており、早ければ2030年にも、NBパワー社が同州で操業するポイントルプロー原子力発電所(71.2万kWのカナダ型加圧重水炉)の敷地内で、ベンダー2社それぞれのSMRの営業運転を始める方針。州内の原子力産業界が継続的に協力し合うことで、地球温暖化に対処するとともに州の経済成長に貢献、NB州民の生活改善にも役立てたいとしている。NBパワー社によると、次世代の原子力技術と言われるSMRでは様々なタイプの設計開発が進行中で、出力は最大でも30万kW程度。多様な用途に活用が可能であるほか、機器を建設サイトに輸送してその場で組み立てることもできる。また、従来の原子力発電所より規模が非常に小さいため、大量生産により価格が手頃になり、建設工事も容易となる。学界や科学技術関係のコミュニティにも恵まれたNB州には、複数のSMR建設が可能な原子力発電所が立地し原子力関係の専門的知見も支援基盤として根付いているなど、先進的SMRの開発推進に適している。こうした背景からNB州政府とNBパワー社は2018年7月、世界的水準のSMR開発と製造で同州がリーダー的立場を確立するため、90件もの申請の中からARC社とモルテックス社を選定し、SMR開発で協力することで合意。州内唯一の原子力発電設備であるポイントルプロー発電所内で、ARC社製SMR初号機の建設可能性を探るとしたほか、モルテックス社製SMRについても商業規模の実証炉を同発電所内で建設する方針を明らかにした。モルテックス社のSMRは、カナダ型加圧重水炉の使用済燃料を低コストで新燃料に変換するという「燃料ピン型溶融塩炉(SSR-W)」で、日中のピーク時には出力を2倍、3倍に増やすことも可能と言われている。一方、ARC社が開発中のSMRは、ナトリウム冷却・プール型高速中性子炉の「ARC-100」。米エネルギー省(DOE)傘下の国立研究所で30年以上運転された「実験増殖炉II(EBR-II)」の技術に基づいており、金属燃料を使用する。NBパワー社の発表では、これら2つの設計では互いを補完し合う技術が採用されているが、どちらも受動的安全系を装備。また、方法は異なるものの、ともに使用済燃料の処分問題解決に役立つとしている。(参照資料:NBパワー社、モルテックス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 20 Nov 2020
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英ジョンソン首相、CO2排出量の実質ゼロ化に向け原子炉の新設を確約
英国のB.ジョンソン首相は11月18日付けの電子版フィナンシャル・タイムスに寄稿し、2050年までに英国内の温室効果ガス(GHG)排出量の実質ゼロ化を目指して重要施策を10項目に絞り込んだ「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」を公表した。英国では2019年6月に、GHG排出量を2050年までに実質ゼロとするための法案が成立し、首相は「10ポイント計画」の当面する重要施策の一つとして新規原子炉の建設を約束。今回の計画では、大型炉のみならず小型炉モジュール炉(SMR)や先進的モジュール炉(AMR)に至るまで、開発のための資金を政府が5億5,000万ポンド(約756億円)以上投資する方針を明らかにしている。「10ポイント計画」全体で、政府は民間部門の約3倍に相当する120億ポンド(約1兆6,500億円)の投資を計画しており、この支援により、地球環境の保全・修復に役立つ「緑の雇用」が約25万人分創出される。ジョンソン首相は同計画について、「雇用を促進し人々の生活様式を維持しつつ、GHG排出量の実質ゼロ化を達成するための『世界的ひな形』になる」と強調。同計画を実行することで、英国は緑の産業技術とそのための資金調達で世界の模範的先駆者となるとした。同首相はまた、GHG排出量の実質ゼロ化を牽引するタスク・フォースを設立するとしている。同計画の中で、先進的原子炉の新規建設は3番目のポイントとして挙げられており、政府はその中で、輸送部門や熱供給部門における低炭素電力の需要が増大し、英国の電力供給システムは2050年までに2倍の規模に成長・拡大すると予想。原子力は信頼性の高い低炭素電源であるため、英国内ではすでに、ヒンクリーポイントC原子力発電所のような大型炉の建設が進められている。国内ではまた、SMRやAMRへの投資が拡大するなど、原子力発電の将来には大きな期待が寄せられている。60年以上前に英国では、本格的な民生用原子力発電所が世界で初めて建設されたことから、政府は現在でも国内に関係技術のポテンシャルがあると考えている。導入規模や技術の世代とは無関係に、新しい原子炉は低炭素な電力と雇用、および経済成長をもたらすので、政府は大型炉の建設を支援するため開発基金を提供する。政府はまた、次世代原子力技術に対する一層の投資を予定。政府内の「歳出見直し」やコストパフォーマンスの点で問題がなければ、政府は「先進的原子力基金」として最大3億8,500万ポンド(約529億円)を充当する方針である。このうち最大2億1,500万ポンド(約295億円)が国内のSMR開発に投じられるほか、民間においても「マッチ・ファンディング」方式を通じて最大3億ポンド(約412億円)の投資機会に道が開かれるとした。政府はさらに、AMRの研究開発プログラムに最大1億7,000万ポンド(約233億円)の投資を約束している。ここでは、800℃以上の高温で稼働し水素や合成燃料を効率的に生産できる高品質の熱供給炉の開発を想定。これらは、二酸化炭素の回収・貯留(CCUS)や水素生産、および洋上風力発電への投資を補うものと位置付けられており、政府としては遅くとも2030年代初頭にこのようなAMRやSMRの実証炉を国内で建設するとともに英国を原子力国際競争の最前線に押し上げる計画である。なお、政府はこのほか、これらの技術を市場に出す手助けとして、規制枠組みの整備と関係サプライチェーンの支援に追加で4,000万ポンド(約55億円)を投資するとしている。(参照資料:英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 Nov 2020
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英ロールス・ロイス社のSMR開発チームに米エクセロン社が運転経験で協力
英ロールス・ロイス社は11月8日、同社が率いる官民企業連合の小型モジュール炉(SMR)開発に、米国の原子力発電事業者としては最大手のエクセロン・ジェネレーション社が協力することになり、両社は同日に了解覚書を締結したと発表した。これはロールス・ロイス社が将来、英国その他の国で「UK SMR」を建設する際、エクセロン社が約20年にわたって蓄積してきた20基以上の商業炉の運転経験が役立つとの認識に基づいている。同企業連合が建設した「UK SMR」が発電会社に引き渡されるまでの期間、エクセロン社は同企業連合と緊密に連携し、発電会社の運転能力向上や人材の育成・訓練などに協力する。また、関連スキルの現地化や堅固な安全文化の醸成、運転の効率化などにも尽力することになる。英国政府と原子力産業界が参加する同企業連合で、ロールス・ロイス社は出力40万~45万kW、PWRタイプのSMRを開発しており、運転期間は60年を想定。仕様を標準化した機器や先進的な製造プロセスで経費を削減し、天候に左右されない施設内でモジュールや機器類を迅速に組み立てることで、低コストなSMR発電所を工場生産する方針である。同社によれば、今後10年以内に当面目標とする出力44万kWのSMRが複数運転開始できれば、英国政府が目指す「2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロ化」を達成する一助となる。また、英国内での量産は、機器やモジュールの製造工場を新たに建設することとなり、新型コロナウイルスによるパンデミックからの英国経済の復活や、SMRの輸出に道が開けるとしている。同企業連合のT.サムソンCEO臨時代行 は、「地球温暖化や経済回復への取り組みで原子力発電は中心的役割を担うが、そのためには価格が手ごろで信頼性が高く、投資可能なものでなければならない」とコメント。同企業連合が目指しているのは、洋上風力発電と同レベルまで発電コストが削減されたSMRであると説明した。同CEOの認識では、SMRによって英国の発電業界には新しい事業者の参入が可能になり、顧客の選択肢の幅も広がる。これによって低炭素なエネルギーの安定供給が確保されるようになる。ロールス・ロイス社の企業連合は、主要メンバーが原子力エンジニアリング企業や建設企業、機器製造センターなどであるため、エクセロン社と連携することで同企業連合に不足している「世界的規模の原子力発電事業者」が補われ、開発プログラムの見通しは非常に明るくなった。また、原子力関係の米英連携が強化されるとともに、将来の顧客にはエクセロン社が最高水準の運転達成能力を提供、同企業連合の成長に向けた重要側面が新たに展開することになる。ロールス・ロイス社の予測によると、英国内でSMRの量産プログラムが本格的に実行された場合、2050年までに最大で4万人分の雇用が創出され、英国経済には520億ポンド(約7兆2,300億円)相当の価値と2,500億ポンド(約34兆7,600億円)の輸出が生み出されるとしている。(参照資料:ロールス・ロイス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月10日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 12 Nov 2020
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米ニュースケール社、開発中SMRの出力をさらに増強
米オレゴン州のニュースケール・パワー社は11月10日、開発中の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」で1基あたりの出力をさらに25%増強した7.7万kW(グロス)のモデルを設計したと発表した。これは、先進的な試験やモデリング・ツールを活用した結果によるもので、同社はまず2018年6月、モジュール統合型PWRとなるNPMで予定していた出力5万kWを20%増強して6万kWに拡大。同モジュールを12基連結した場合の合計出力も60万kWから72万kWとなったが、今回のさらなる出力増強により、NPM原子力発電所の最大出力は92.4万kWに拡大する。同社はその一方で、NPMモジュールを4基だけ接続した30.8万kWの発電所、および6基接続した46.2万kWの発電所オプションも提供が可能だと強調している。5万kW版のNPMについては今年9月、原子力規制委員会(NRC)が設計認証(DC)審査で、SMR設計としては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給しており、同設計は今のところSMR商業化レースの先頭を走っている。ニュースケール社としてはこのほか、6万kW版の「ニュースケール720」についても2021年第4四半期にSDAの取得を申請するほか、7.7万kW版の申請書も2022年に提出する方針。NPMの最初のモジュールは、2027年にも顧客への納入が可能になると明言した。同社のJ.ホプキンズ会長兼CEOは、「当社のエンジニアは今回再び、我々の技術が第一級のものであり、設計の安全性に影響を及ぼさずに、かつてないレベルのコスト削減と顧客の要求仕様に合わせた生産が可能であることを実証した」と表明。同社は今後も、SMRの商業化レースで世界をリードする企業であり続けると述べた。今回の発表によれば、出力を25%増強したモジュール12基のkWあたりの建設単価は、3,600ドルから約2,850ドルに低下する。このほか発電所としての出力が90万kW台になったことで、同モジュールは100万kW級原子炉の市場においても十分競合可能な設計に近づきつつある。ニュースケール社のSMRはまた、発電所の規模や出力だけでなく、運転の柔軟性、コスト面においても顧客に幅広いオプションを提供、建設工事の簡素化や工期の短縮、工事費の削減といった点で技術革新をもたらすとした。このようなことから、ニュースケール社は同設計を通じて、送電網の規模が小さい島国や送電網そのものから切り離された遠隔地域への電力供給、石炭火力発電所のリプレース用電源、クリーン・エネルギーへの移行目標達成といった顧客の様々なニーズに応えられると述べた。米国内ではすでに、ユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)がエネルギー省のアイダホ国立研究所内で同社製SMRの建設を計画している。国外では、カナダのブルース・パワー社が2018年11月、同社製SMRのカナダ市場導入を目指して同社と協力覚書を締結。カナダの原子力安全委員会は今年1月から、NPMの「許認可申請前設計審査(ベンダー審査)」を開始した。このほか、ヨルダンやルーマニア、チェコ、ウクライナの国営電気事業者や原子力委員会が同社製SMRの導入を検討しており、ニュースケール社は実行可能性調査の実施に向けた了解覚書をそれぞれと締結済みである。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 11 Nov 2020
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英ロールス・ロイス社、チェコでのSMR建設に向け国営電力と覚書
英国で小型モジュール炉(SMR)開発の官民企業連合を率いるロールス・ロイス社は11月9日、チェコ国内で同社製SMRを建設する可能性を評価するため、チェコの国営電力(CEZ)社グループと了解覚書を締結したと発表した。CEZ社グループのD.ベネシュ会長は、「我が国の産業にとって新しいエネルギー技術は重要な役割を担っており、SMRについてはすでに国立原子力研究機関(UJV Rez)がかなり前から研究を進めていた」と説明。その上で、「SMRは今後、重要な代替選択肢となり得るため、ロールス・ロイス社やその他のグローバル企業との連携は、チェコがこれまで重ねてきた対応の結果として当然の措置である」と述べた。チェコ政府は2015年5月の「国家エネルギー戦略」のなかで、原子力発電シェアを当時の約30%から2040年までに60%近くまで上昇させる必要があると明記。同戦略のフォロー計画である「原子力発電に関する国家アクション計画(NAP)」では、化石燃料の発電シェアを徐々に削減しつつ、合計6基が稼働する既存の2つの原子力発電所で1基ずつ、可能であれば2基ずつ増設する準備を進めなければならないとしていた。こうした背景から、CEZ社グループは2020年4月、2つの発電所のうちドコバニ原子力発電所で、ネット出力最大120万kWのPWRを新たに2基増設するための立地許可申請書を原子力安全庁(SUJB)に提出した。SMRに関しても、2019年9月に米ニュースケール・パワー社と、2020年2月にはGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と、それぞれのSMRをチェコ国内で建設する実行可能性調査の実施で了解覚書を締結している。一方、ロールス・ロイス社が開発中のSMRは出力40万~45万kWのPWRタイプで、運転期間は60年間。これらは再生可能エネルギーと競合できるレベルまで低コストで、工場で大量生産が可能、かつ設置場所までトラック輸送が可能なものを目指している。すでにヨルダン原子力委員会、およびトルコ国営発電会社(EUAS)の子会社とは、同社製SMRをそれぞれの国内で建設する技術的実行可能性調査の実施に向けて了解覚書を締結済みである。ロールス・ロイス社の「英国SMR開発企業連合」には、仏国の国際エンジニアリング企業のアシステム社や米国のジェイコブス社、英国の大手建設エンジニアリング企業であるアトキンズ社、BAMナットル社、レイン・オルーク社などが参加。このほか、英国の国立原子力研究所(NNL)、および英国政府が原子力産業界との協力で2012年に設置した先進的原子力機器製造研究センター(N-AMRC)も加わっている。(参照資料:CEZ社、ロールス・ロイス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 10 Nov 2020
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