キーワード:小型モジュール炉(SMR)
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英政府 原子力を同国のグリーン・タクソノミーに分類へ
英国財務省のJ.ハント大臣は3月15日、議会下院で新年度の予算案を公表。その中で、原子力を環境上の持続可能性を備えたグリーン事業とみなし、英国グリーン・タクソノミーの投資対象に含める方針を明らかにした。同相はまた、小型モジュール炉(SMR)関係で政府が最初のコンペの実施を計画しており、このコンペを通じて年末までに国内外のベンダーの優れたSMR炉型をいくつか選定。建設の実行可能性が実証されたものは、政府が共同出資するとしている。同相はまず、国内で原子力を強力に支持している自治体として、かつてガス冷却炉が稼働していたウェールズのアングルシー島や現在も稼働中のイングランド北東部ハートルプール、地層処分場の受け入れを検討中のイングランド北西部カンブリア州のコープランド、国立原子力研究所の分室が存在しSMRの誘致にも関心表明している同州ワーキントンを列挙。これらの自治体が、「CO2排出量の実質ゼロ化という目標を英国が達成するには、原子力設備の拡大が極めて重要」と述べている点を指摘した。その上で同相は、国内原子力プログラムへの民間投資を促すだけでなく、公開協議という手続きにより原子力を英国のグリーン・タクソノミーに含めていくことを確認したと表明。再生可能エネルギーと同様に、原子力も投資対象となるよう促すとした。この関係で、同相はビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が昨年11月、サフォーク州のサイズウェルC原子力発電所(167万kWの欧州加圧水型炉:EPR×2基)建設プロジェクトに、政府として初めて6億7,900万ポンド(約1,089億円)の直接投資を行うと発表した事実に触れた。同相はまた、政府がこれまでの約束を踏まえ、2022年4月の「エネルギー供給保証戦略」で明示していた「大英原子力(Great British Nuclear)」を立ち上げると述べた。同組織は、明確な費用対効果を確認しながら、原子力発電施設の開発プロセスの各段階で事業者に支援を提供。これにより開発コストを削減し、原子力サプライチェーン全体にビジネス・チャンスをもたらすもので、2050年までに英国の総発電量の四分の一までを原子力で賄えるようにする考えだ。英国では、SMR関係でBEISがすでに2021年11月、ロールス・ロイスSMR社製のSMR(PWR、47万kW)に対し、民間部門の投資に対するマッチング・ファンドとして2億1,000万ポンド(約337億円)の提供を約束。2022年3月には、同SMRの包括的設計審査(GDA)の実施を原子力規制庁(ONR)に要請しており、同年4月から審査が始まった。その後ロールス・ロイスSMR社は、同年11月にSMRの建設候補地としてイングランドとウェールズの旧原子力発電サイトなど、4地点を選定している。政府の今回の予算案に対しては、英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックス理事長が同日、歓迎のコメントを発表。英国のグリーン・タクソノミーに原子力を加えることで、英国のエネルギー供給保証は一層強化され、CO2の排出量も実質ゼロ化に向けて大きく前進するとした。新たな原子力開発プロジェクトに極めて重要な投資が行われることで、原子炉開発プロジェクトへの資金調達は一層容易になり、建設コストも抑えられると指摘した。同理事長はまた、「大英原子力」が始動して新たな原子力発電所開発プロジェクトのサイト選定が進めば、発電所建設の効率性が飛躍的に増すとともにサプライチェーンの受注ルートも明確になると表明。SMRコンペにより、英国原子力産業界は世界レベルの競争に返り咲くことになり、国産その他の技術を通じてビジネス・チャンスや新たな雇用、投資の機会を確保、世界的な巨大市場に輸出するチャンスも得られると強調している。(参照資料:英政府、NIAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 16 Mar 2023
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米ニュースケール社 SMR発電所の長納期品を発注
米国のニュースケール・パワー社は3月9日、同社製小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を備えた最初の発電所建設に向けて、昨年末に最初の長納期品(LLM)製造を韓国の斗山エナビリティ社に発注しことを明らかにした。これは昨年4月に両社が締結した契約に基づくもので、その際ニュースケール社はLLM発注の準備として、原子炉圧力容器(RPV)の上部モジュール製造に必要な鍛造金型の作製を斗山エナビリティ社に依頼。その後この鍛造金型が完成したことから、斗山エナビリティ社は今回の受注でRPV上部モジュールを構成する大型鍛造品や蒸気発生器(SG)の配管、溶接材など、6基分の総重量2,000トンを超える機器を製造する。ニュースケール社初のSMR発電所は、ユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)が米アイダホ国立研究所(INL)の敷地内で、1モジュールの出力が7.7万kWのNPMを6基備えた発電設備「VOYGR-6」(46.2万kW)として建設する。最初のモジュールを2029年までに完成させるため、UAMPSは2024年の第1四半期を目途に建設・運転一括認可(COL)を原子力規制委員会(NRC)に申請し、2026年前半に認可を受け着工したいとしている。NRCは出力5万kWのNPMについて、2020年8月にSMRとしては初となる「標準設計承認(SDA)」を発給した。その後、最後の規制手続として「最終規則」の策定が完了したことから、今年1月にはSMRとして初の「設計認証(DC)」を発給している。ニュースケール社も同月、出力7.7万kWのNPMでSDAの取得申請をNRCに対して行った。ニュースケール社のJ.ホプキンズ社長兼CEOはLLMの発注が最終決定したことについて、「当社のSMR開発がモジュールの製造段階に移行したことを意味しており、2020年代終わりまでに最初のNPM完成が現実的となるなど、SMR市場における当社の主導的地位が一層鮮明になった」と強調している。両社はまた、将来的に実施する「VOYGR」建設プロジェクトについても、今回と同様の納期でモジュール製造が可能になるよう調整中であることを明らかにした。(参照資料:ニュースケール社、斗山エナビリティ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 14 Mar 2023
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仏EDF SMR等で伊企業と協力
フランス電力(EDF)とそのイタリア法人であるエジソン社、イタリアのアンサルド・エネルギア・グループ、およびその100%子会社のアンサルド・ヌクレアーレ社は3月6日、欧州で小型モジュール炉(SMR)等の原子炉開発や建設で協力する可能性を探るため、基本合意書(LOI)に調印した。この合意は、脱原子力国であるイタリアで将来的に、エネルギー政策変更の可能性があることを見越したもので、同国での原子力発電所建設を念頭に置いている。アンサルド・ヌクレアーレ社がイタリアで主導する原子力発電部門の知見を活用し、EDFグループの新規原子力プロジェクトをともに推進。イタリアがクリーンエネルギーに移行する際、原子力発電が果たす役割についても4社は議論の口火を切る方針だ。イタリアでは1973年の石油危機を契機に原子力発電開発が加速し、1963年以降4基の商業炉が稼働したものの、チョルノービリ原子力発電所事故の影響で1990年までにこれらはすべて閉鎖された。2008年に発足したS.ベルルスコーニ政権は原子力発電の再開を試みたが、福島第一原子力発電所事故が発生したため国民投票では9割以上が原子力発電所の建設に反対、新たな国家エネルギー戦略では原子力が排除された。しかし近年は、原子力発電所が国内に存在しないにも拘わらず、原子力コースを選択する学生数が徐々に増加している。4社の協力に向けた今回の合意にともない、各社はそれぞれの技術力が生かされる協力方法を模索していく。アンサルド・エネルギア・グループが原子力を含むエネルギー分野で、関係機器の開発やサービスの提供に携わる一方、EDFは世界最大の原子力発電事業者として、新たな原子炉の開発プロジェクトも実施。これにはSMRの「NUWARD」が含まれており、アンサルド・ヌクレアーレ社とEDFは最近、同設計のエンジニアリング調査の実施契約を交わしている。また、出力120万kWの中型欧州加圧水型炉(EPR)や、通常の大型EPR(165万~175万kW)もこれに含まれている。4社はまた、イタリア国内でエネルギーの供給保証と輸入に依存しない電力供給システムの必要性が高まっていることから、同国で新しい原子力発電所の建設可能性を評価していく。イタリアでは総発電量の4割を再生可能エネルギーで賄う一方、依然として6割を天然ガス等の化石燃料で発電している。今回の協力を通じて、再エネ設備を新しい原子力発電所で補い、電力供給システムの安定性や環境面の持続可能性を確保。欧州全体やイタリアが掲げる「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化」という意欲的な地球温暖化防止目標の達成を目指す。4社はともに、原子力が最良の低炭素電源の一つであり、設備容量あたりの設置面積も小さいと認識。さらに、SMRのような革新炉では、安全性が非常に高い上に必要とされる投資額が少ない。熱電併給も可能なことから、エネルギー供給上の様々な要求にも柔軟に対応できると考えている。アンサルド・ヌクレアーレ社のR.カサーレCEOは、「今回の合意の正当性を当社は信じており、イタリアの産業界や研究機関とともに、欧州諸国の様々な原子力プロジェクトに積極的に参加する」とコメント。欧州の原子力発電に寄せられている新たな関心に対し、イタリアが提供できる高い付加価値を実証していくと表明した。(参照資料:EDF、アンサルド・エネルギア社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 08 Mar 2023
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チェコ 石炭火力発電所サイトをSMRでリプレースへ
国営のチェコ電力(CEZ社)は2月27日、国内で2基目と3基目の小型モジュール炉(SMR)の建設に向けた予備的評価の結果、候補サイトとして北東部のポーランド国境に近いジェトマロヴィツェ(Dětmarovice)と、北西部のドイツ国境付近のトゥシミツェ(Tušimice)を暫定的に指定した。同社は大型炉が稼働する国内2つの原子力発電所のうち、ドコバニ発電所の増設計画を進める一方、SMRの導入プログラムも進めている。これまでにSMRデベロッパーである米国のニュースケール・パワー社やGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社、ウェスチングハウス(WH)社、ホルテック・インターナショナル社とSMR関係の協力覚書を締結したほか、英国のロールス・ロイスSMR社やフランス電力(EDF)、韓国水力・原子力会社(KHNP)とも同様の覚書を結び、建設の実行可能性等を調査中である。チェコ初のSMRについては、CEZ社は2022年3月に既存のテメリン原子力発電所の敷地南西部を建設サイトとして選定。同発電所が立地する南ボヘミア州の州政府、および傘下の国立原子力研究機関(UJV Rez)とともに、SMR建設を加速する「南ボヘミア原子力パーク」プロジェクトを始動させており、CEZ社のD.ベネシュCEOが非公式に「2032年の完成を目指す」と述べたことが伝えられている。後続SMRの建設が検討されているジェトマロヴィツェとトゥシミツェは、ともにCEZ社の石炭火力発電所が立地しており、SMRでこれらをリプレースする計画である。同グループは「2030年代の事業ビジョン」の中で、2040年代以降に合計100万kW以上のSMR建設に向けた準備を進めるとしているが、2、3号機については早ければ2030年代後半に完成する可能性を指摘。SMRを通じて、無炭素なエネルギーを長期にわたり安定供給する方針である。CEZ社のT.プレスカッチ再エネ担当理事は、SMRについて「大型炉の代用品という位置付けではなく、石炭等の大型火力発電所を代替する適切な電源として役割を担っている」と説明。SMRの建設プログラムでは、機器の製造やサプライチェーンに参加する機会や、関係地域にサービス・訓練センターを設置する可能性があるなど、チェコ経済の発展に向けた大きな機会になると述べた。CEZ社は今後、これら2か所の候補サイトの最終決定に向けて、今秋までさらなる調査やモニタリングを継続する。このような活動も含め、許認可申請までに3~5年を要すると同社は説明している。(参照資料:CEZ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 01 Mar 2023
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加政府 SMRのサプライチェーン構築等で資金援助
カナダ政府は2月23日、小型モジュール炉(SMR)の商業化を支援するため、サプライチェーンの構築や燃料の確保、放射性廃棄物の安全な管理に資する研究開発プロジェクトに、今後4年間で総額2,960万加ドル(約29億6,200万円)の資金援助を実施すると発表した。連邦政府の天然資源省(NRCan)は2018年、SMRをカナダ国内で開発・利用するだけでなく、将来世界のSMR市場で主導的地位を占めることを目指し、州政府や産業界、電気事業者などを交えた協議を10か月にわたって実施。その結果をSMRの戦略ロードマップとして取りまとめており、2020年にはCO2排出量の削減と国内原子力産業の拡大を図るため、SMR開発の努力目標やSMRが発電分野で果たす役割などを示したSMR行動計画を公表している。政府は今回、2022会計年度(2022年4月~2023年3月)予算から支援金を拠出し、SMR開発・利用への支援を継続すると改めて表明。カナダが世界のクリーンエネルギー開発でトップランナーに位置付けられるよう、同プログラムではニューブランズウィック州やサスカチュワン州などと同じく、各州の送電網の脱炭素化を推進する。また、CO2を大量に排出する産業の脱炭素化も進め、遠隔地域のコミュニティに対してはディーゼル発電からSMRへの転換を促す方針である。支援金として研究開発プロジェクト一件につき、期間や規模等に応じて平均50万加ドル~250万加ドル(約5,000万円~2億5,000万円)を交付する予定。原則として総コストの75%まで、500万加ドル(約5億円)を上限とする。受給資格は営利・非営利を問わず、カナダ国内で登録された電気事業者やその他企業、州政府や地方自治体、大学および学術機関など。申請書の受け付けは4月7日までとなっている。今回の政府発表によると、カナダが低炭素経済に移行するには、クリーンで低価格な電力の需要拡大のため、原子力のようにCO2を排出しない安全で安定した発電技術も含め、様々な無炭素エネルギー源が必要である。その中でも、次世代の原子力技術は重要な役割を担っており、中でも従来の大型炉と比べて構造がシンプルで操作し易く、安価なSMRは大いに貢献すると見込まれる。連邦政府はすでに、地球温暖化の影響緩和を目的としたSMR開発の支援活動を行っており、カナダ・インフラストラクチャー銀行(CIB)は2022年10月、オンタリオ州のダーリントン原子力発電所で世界初のSMRを建設するというプロジェクトに過去最高規模の9億7,000万加ドル(約970億円)の融資を約束した。今月6日には、政府機関のカナダ自然科学・工学研究会議(NSERC)がNRCanとの協力により、独自の補助金プログラムの下でSMR開発プロジェクトを募集すると発表。サプライチェーンの構築や廃棄物の管理に取り組む大学からの申請に資金を提供するとしており、次世代の原子力技術者の養成や大学の能力拡大などで、NRCanの今回の資金援助プログラムを補完する。 (参照資料:NRCanの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 Feb 2023
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カナダとポーランドの規制当局 SMR関係の協力強化で合意
カナダ原子力安全委員会(CNSC)とポーランドの国家原子力機関(PAA)は2月13日、両者のこれまでの協力関係を補足・強化し、小型モジュール炉(SMR)や先進的原子炉に関する活動を共同で進めるため、協力覚書を締結した。この覚書は両者が2014年9月、原子力安全分野の一般的な協力について締結した情報交換のための了解覚書に基づいている。これらの原子炉に関係する審査で、規制上の良好事例や経験の共有を一層拡大するとしており、中でもGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のSMR「BWRX-300」(30万kW)に関する情報を交換、共同で技術審査を行うことを目指している。「BWRX-300」の初号機については、カナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が、ダーリントン原子力発電所サイト内で2028年第4四半期までに完成させることを計画。CNSCが提供する「ベンダー設計審査(VDR)」では第2段階の審査が行われており、OPG社は2022年10月に同炉の建設許可を申請した。一方ポーランドでは、大手化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業が、石油化学企業大手のPKNオーレン社と合弁でオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社を設立しており、2033年以降の完成を目指して「BWRX-300」の建設を進める方針である。OSGE社は同設計を選択した理由として、許認可手続きや建設・運転に至るまでOPG社の経験を参考にできると説明。PAAに対しては2022年7月、「BWRX-300」建設計画に関する予備的な評価見解の提示を要請していた。今回の協力覚書は、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで国際原子力機関(IAEA)が規制関係の国際会議を開催したのに合わせ、PAAのA.グウォヴァツキ長官代理とCNSCのR.ヴェルシ委員長が調印した。両者が協力を進める主要事項は以下のとおり。先進的原子炉とSMRの技術に関する審査アプローチを共有し、共通する技術的課題の解決を促進する。審査の効率的な実施に向けて双方が確実に準備を整えるため、申請の前段階の活動を共同で実施する。安全性を確保するため、これらに特有の全く新しい技術的問題点に取り組めるような規制アプローチを共同で研究・開発し、研修も行う。PAAのA.グウォヴァツキ長官代理は今回の協力覚書について、「規制審査関係の経験を共有することで許認可手続きの合理化が進み、双方の規制アプローチの調和が図られる」とコメント。ポーランドのみならず、その他の国でもこのような原子炉の建設が一層効率的に進むことになると指摘している。(参照資料:PAA、CNSCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Feb 2023
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米ホルテック社 SMRの機器製造で英企業と提携
米ホルテック・インターナショナル社の英国法人は2月9日、同社製小型モジュール炉(SMR)「SMR-160」の機器製造協力で、英国の大型鋳鍛造品メーカーであるシェフィールド・フォージマスターズ社と了解覚書を締結した。シェフィールド・フォージマスターズ社は、世界中の民生用原子力プロジェクトに鍛造品を供給している。今回と同様の覚書をすでに、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社や英ロールス・ロイスSMR社と締結済み。米ニュースケール・パワー社とは2016年、同社製SMRのベッセル・ヘッドを共同で実証鍛造する計画を発表している。ホルテック社との協力では、SMR機器が実際の製造工程に適合するよう設計に改良を加える作業を実施するほか、特定の機器の鍛造品について、機械加工や組み立て、溶接、供用期間中検査時の要件や仕様を詳細に記した「購買仕様書」を作成する。同社はこれまでの実績を足掛かりに、ホルテック社が2050年までに英国で計画している32基、合計512万kWの「SMR-160」建設に向けて、機器の最適な製造工程を特定し英国のSMR機器サプライチェーンの頂点に立つ方針だ。 ホルテック社の「SMR-160」は電気出力16万kWのPWR型SMRで、事故時に外部からの電源や冷却材の供給なしで炉心冷却が可能な受動的安全系を備えている。開発チームには三菱電機の米国子会社が計装制御(I&C)系の開発で参加しているほか、カナダのSNC-ラバリン社や米国最大の原子力発電事業者であるエクセロン・ジェネレーション社が協力、燃料はフランスのフラマトム社が供給する予定である。同SMRは2020年12月、米エネルギー省(DOE)の「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象に選定され、2030年~2034年頃の実用化を目指すSMRに分類されている。ホルテック社は2022年7月、米国内で同SMRを4基建設する計画に政府の融資保証プログラムの適用を求めてDOEに申請書を提出。建設予定地としては、同社が保有する閉鎖済みの旧オイスタークリーク原子力発電所や、原子力発電事業者であるエンタジー社のサービス区域内などが検討されている。国外では、チェコやウクライナが建設に向けた評価作業や準備作業を実施中である。英国については、ホルテック社が昨年12月、「包括的設計審査(GDA)」の申請書を2023年初頭にも英国政府に提出すると発表。早ければ2028年にも、初号機の建設工事を開始する考えを表明している。今回、ホルテック社で国際プロジェクトを担当するR.スプリングマン上級副社長は、「盤石な安全性を備えた当社のSMRを英国で多数建設し、900万世帯にクリーンな電力を24時間休まず供給する」と表明。シェフィールド・フォージマスターズ社のD.アシュモア戦略・事業開発部長は、「核融合炉の実現可能性や大型炉の建設とともに、SMRは英国の将来的な民生用原子力プログラムを構成している。今回の覚書を通じて当社が同プログラムで引き受けている作業の多くが補われる」と指摘した。(参照資料:シェフィールド・フォージマスターズ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 14 Feb 2023
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英ロールス・ロイスSMR社製のSMRを建設へ ポーランド
ポーランド国営の産業開発会社(ARP)に所属する産業グループ「インダストリア(Indsutria)」は2月8日、低炭素な電力を用いたエネルギー・プロジェクトの実施に向け建設する小型モジュール炉(SMR)として英ロールス・ロイスSMR社製のSMRを選定した。同日に交わした協力のための趣意書(MOI)に基づき、両社は今後、最大3基のSMRを建設して、ポーランド南部地方のエネルギーインフラの脱炭素化と、低炭素な製造方法による水素を年間5万トン製造することを目指す。また、2030年代に同地方で合計出力800万kWの石炭火力発電所をSMRで代替する可能性を探り、ロールス・ロイスSMR社製SMRのパーツやモジュールを製造するサプライチェーンも、同地方で構築する方針である。インダストリアはポーランド南部地方シフェントクシシュ県の産業グループで、2021年11月に同県で設立された水素製造クラスターを主導してきた。同じ月にポーランド政府の閣僚会議で「ポーランドにおける2030年までの水素戦略」が採択され、同国全土の地方自治体や企業が新たに水素製造に参入してきたことから、「シフェントクシシュ水素製造クラスター」は2022年7月に名称を「中央水素製造クラスター」に変更。CO2を排出しない電源で水素を製造し、複数の関係企業が連携し合うエコシステムを構築する考えだ。ARPのC.レシス社長はロールス・ロイスSMR社との協力について、「シフェントクシシュ県や当社の傘下企業にとって、SMR用ハイテク産業の基盤を築く大きなチャンスになる」と指摘。「産業界がSMR等により新たな能力を獲得することに積極的なのは、ポーランドがエネルギー供給保証の強化とクリーン・エネルギー経済に向かっていることの表れだ」と述べた。ロールス・ロイスSMR社のT.サムソンCEOは、「SMRを使ってポーランドのエネルギー多消費産業の脱炭素化を進め、後世のためのクリーン電力発電計画をインダストリアと共同で策定していく」と表明。出力47万kWの同社製SMRは工場で製造可能であり、クリーン電力を安価で供給できることから、ポーランドは戦略的に重要な国際市場の一つだと述べた。また、「今回の連携協力を通じて、ポーランドと英国では数千人規模の長期雇用がサプライチェーンで確保されるなど、経済的に大きな可能性を秘めている」と強調した。ポーランドではこのほか、政府が大型原子炉の導入計画として、2022年11月に最初の3基、375万kW分に米ウェスチングハウス(WH)社製AP1000を採用すると決定。国営エネルギー・グループ(PGE)の原子力事業会社PEJ社が翌12月、細かな取り決め条件でWH社と合意している。小型炉関係では、化学素材メーカーのシントス社が2021年12月、石油化学企業のPKNオーレン社と合弁事業体を設立し、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」の建設計画を進めている。また、鉱業大手のKGHMポーランド採掘会社は2022年2月、米ニュースケール・パワー社のSMRを複数備えた「VOYGR」発電設備を2029年までに国内で建設するため、先行作業契約を締結した。リスペクト・エナジー(Respect Energy)社も今年1月、とフランス電力(EDF)らが開発しているSMR「NUWARD」のポーランド国内での共同建設に向け、協力協定を締結している。(参照資料:ロールス・ロイスSMR社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 10 Feb 2023
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エストニアのフェルミ社 GEH社のBWRX-300を選定
エストニアの新興エネルギー企業フェルミ・エネルギア社は2月8日、2030年代初頭の完成を目指して同国で建設する最初の小型モジュール炉(SMR)として、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社の「BWRX-300」を選定した。今後は、原子力発電の導入に対するエストニア議会の承認や、適切な建設サイトの確保、原子力関係の法整備が必要になる。フェルミ社は、「必要な作業の分析はすべて終えており、現実的に見ても2031年のクリスマスまでに、我が国初の原子力発電所で信頼性の高いクリーン・エネルギーを低価格で供給することが可能だ」と指摘。SMRの建設は地球温暖化防止に向けたエストニアの目標達成に資するだけでなく、同国経済にとっても有益だと強調している。フェルミ社は、エストニアで第4世代のSMR導入を目指して、同国の原子力科学者やエネルギー関係の専門家、起業家などが設立した企業。2019年から様々なSMR設計について、実行可能性調査を実施していた。2022年9月には、再エネとは違い天候に左右されずに長期的な固定価格で確実に電力供給が可能な第4世代のSMRの導入を目指し、フェルミ社は最終選考に残った米国のGEH社とニュースケール・パワー社、および英国のロールス・ロイス社に入札の招聘状を送付した。選定基準としては、発電技術としての成熟度や経済的な競争力、サプライチェーンにエストニア企業を含めることなどを挙げていた。折しも2021年12月には、カナダ・オンタリオ州のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が、州内のダーリントン原子力発電所で建設するSMR初号機として「BWRX-300」を選定した。フェルミ社はOPG社の設計・建設経験に基づいて、エストニアでもSMR計画を徐々に進めていくことができると説明している。フェルミ社のK.カレメッツCEOは、OPG社がすでに2022年10月、「BWRX-300」の建設許可申請書をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に提出したことや、ポーランドのPKNオーレン社が化学素材メーカー大手のシントス社と共同で、「BWRX-300」も含めて合計74基のSMRを建設すると表明した事実に言及。ポーランドやスウェーデンに加えて、その他の欧州諸国も「BWRX-300」を選択すれば、その性能は保証されたものとなり、欧州内で十分なサプライチェーンも確保されると指摘している。GEH社によると、出力30万kWの次世代原子炉である「BWRX-300」は、原子炉上部に設置した大容量冷却プールの水で外部電源や人の介在なしに燃料を冷却できるなど、高い安全性を備えている。同社のJ.ワイルマン社長兼CEOは、「簡素化したプラント構造や確証技術を用いた機器、すでに認可済みの原子炉設計などを組み合わせており、有力なSMR設計であることが今回の選定ではっきりした」と表明。「BWRX-300」は短い工期で、コスト面の競争力も備えた無炭素な発電が可能だと強調した。両社の協力関係は、2019年にフェルミ社が「BWRX-300」の建設可能性を探るため、GEH社と交わした合意文書により始まった。2021年には、同炉の許認可手続きやサプライチェーン開発など重要事項について協力チームを結成することで合意していた。GEH社の説明では、「BWRX-300」に対する関心は米国でも高く、テネシー峡谷開発公社(TVA)が2022年8月、テネシー州のクリンチリバー・サイトで同炉を建設する可能性に基づき、予備的な許認可手続きを開始した。カナダではダーリントン発電所での建設計画に続き、サスカチュワン州のサスクパワー社も2022年6月、州内で2030年代半ばまでに建設するSMRとして同設計を選定している。スウェーデンではプロジェクト開発企業のシャーンフル・ネキスト(Kärnfull Next)社が2022年3月、同国内で複数の「BWRX-300」を建設していくため、GEH社と了解覚書を締結した。GEH社はこのほか、英国でも同炉の建設が可能になるよう、昨年12月に包括的設計審査(GDA)の申請書を英国政府に提出済みである。(参照資料:フェルミ・エネルギア社、GE社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 09 Feb 2023
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仏大統領 原子力産業の再活性化で閣僚招集
フランスのE.マクロン大統領は2月3日、自らが議長を務める閣僚級のハイレベル会合「原子力政策審議会(CPN)」を招集し、今年6月までに(2030年~2035年を対象とする)複数年の新たな「エネルギー計画(PPE)」案を準備するための審議を行った。同大統領は2022年2月に東部のベルフォールで演説を行い、フランスのCO2排出量を2050年までに実質ゼロとし国内の原子力産業を再活性化するため、フランスで改良型欧州加圧水型炉(EPR2)を新たに6基建設するほか、さらに8基の建設に向けた調査を開始すると発表している。2008年に設置されたCPNは年に2回、フランスの全体的な原子力政策や各プロジェクトを短期的、長期的に管理・調整するため招集されている。今回のCPNでは、議会でエネルギーや温暖化関係の法案審議が始まる前に、最初の1基を遅くとも2035年までに完成させるための、将来的なエネルギーの供給と自立の強化に向けた方針が確認された。過去2年にわたり原子力発電量が大幅に低下したことを背景に、CPNに出席した関係閣僚らは、今年冬季の電力確保に向けて原子炉の適切な定検スケジュールを組むため、原子力発電強化に向けて動き出した。また、無炭素で競争力のある電力を長期的に供給する観点から、原子力安全規制当局(ASN)の厳しい監督の下、安全性を確保しながら既存の原子力発電所の運転期間を60年間、あるいはそれ以上に延長するための調査開始を了承した。CPNではまた、EPR2を新たに6基建設する計画の主要課題についてもレビューを行った。この件は今月末に終了予定の公開討論でも議題の一つになっていることから、この結論を新しいPPEに盛り込む方針である。これらのEPR2をスケジュール通りに起動させるには、既存の原子力サイト周辺における建設手続きの迅速化法案が速やかに成立する必要がある。CPNのメンバーはさらに、2021年10月にマクロン大統領が発表した新たな産業政策「フランス2030」の主要課題として、小型モジュール炉(SMR)や先進的モジュール炉(AMR)の開発が原子力プログラムに含まれたことから、この作業を加速させることを確認。フランス電力(EDF)が中心となって開発しているSMRの「NUWARD」、およびその他の先進的原子炉開発について、少なくとも最初の1基が2030年代に完成するよう支援していく。この件については、フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)が関係機関の調整役を担っているため、CEAの役割を強化する考えである。CPNではこのほか、原子力産業を再活性化するには、フランスがこの分野で戦略的に自立した立場を維持できるよう、燃料サイクルの課題に徹底的に取り組む必要があると指摘。最終的に残る放射性廃棄物の管理計画を新たなPPEに反映させるため、次回6月のCPNに向けて複数の調査を開始するとしている。(参照資料:仏大統領府の発表資料(フランス語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 07 Feb 2023
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加アルバータ州 X-エナジー社製SMR導入に向け覚書締結
カナダ・アルバータ州の外国投資誘致機関であるインベスト・アルバータ社(IAC)は1月30日、米X-エナジー社が開発した小型ペブルベッド型高温ガス炉「Xe-100」の州内建設を通じて、同州経済を活性化する可能性を探るため、同社のカナダ法人と了解覚書を締結した。具体的には、「Xe-100」のサプライチェーンの構築や、建設プロジェクトへの資本参加に関心を持つ地元コミュニティとの関係強化等に両社が共同で取り組む。IACはまた、X-エナジー社による現地事務所設置を支援する方針である。第4世代の原子炉設計である「Xe-100」は需要に応じて出力を変動させることが可能で、1基あたりの熱出力は最大20万kW、電気出力は8万kWである。565℃の高温蒸気を効率的に生産するなど、柔軟性の高いコジェネレーション(熱電併給)オプションにもなることから、オイルサンド開発や石油化学工業などの重工業を同炉のクリーンエネルギーで直接支えることが出来る。同社はまた、「Xe-100」を4基備えたプラントをアルバータ州で建設した場合、カナダでは同州を中心に最大3,800名分の雇用が生まれると予測。これには、建設地の地元請負企業やサービス企業、関係サプライチェーンでの雇用も含まれるとしている。X-エナジー・カナダ社のK.M.コール社長は「アルバータ州のエネルギー産業はカナダ全体の経済的繁栄にとって不可欠であり、当社はSMRを通じてCO2の排出量を抑え、州内のエネルギー産業や化学工業、鉱業などを支えていく」と表明。「Xe-100」の州内建設が成功すれば、アルバータ州にとってはビジネス・チャンスとなるため、州経済の多様化や健全化も持続的に進展するとしている。アルバータ州は2021年4月、カナダ国内のオンタリオ州とニューブランズウィック州およびサスカチュワン州の3州が2019年12月に締結した「多目的SMR開発・建設のための協力覚書」に参加。2022年3月には、これら4州でSMRの開発と建設に向けた共同戦略計画を策定している。アルバータ州ではまた、テレストリアル・エナジー社が開発した小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)の建設を念頭に、IACが2022年8月に同社と覚書を交わしている。X-エナジー社の「Xe-100」については、オンタリオ州も同州を中心とするカナダ国内の産業サイトで幅広く利用する可能性を探る方針。州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は2022年7月、協力のための枠組み協定をX-エナジー社と締結している。(参照資料:X-エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 02 Feb 2023
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米ネブラスカ州 SMRの立地調査を開始
米ネブラスカ州の電力公社(NPPD)はこのほど、先進的な小型モジュール炉(SMR)の建設が同州内で決まった場合に備え、候補地の実行可能性調査(FS)を開始すると発表した。その結果から直ちに建設工事を始めるわけではないが、既存の商業炉と比べて安全かつ出力の増減が容易なSMRの建設候補地を、2024年の春ごろまでに4地点まで絞り込みたいとしている。米国ではJ.バイデン大統領が就任直後の2021年3月、コロナ禍の経済不況からの復興を目指す広範な経済対策として、各州政府や個別の機関・団体に総額1.9兆ドルの助成金を交付するという「米国救済計画法(ARPA)」に署名した。ARPAでネブラスカ州に割り当てられた助成金の中から、州政府は2022年4月に成立した州法(LB 1014)に基づき、100万ドルを今回のFSプログラムに充当すると決定。州内全域で先進的原子炉の立地点を新たに模索するオプションと、既存の発電施設で先進的原子炉の受け入れが可能なものについてFSを行うとした。州政府また、電力部門のCO2排出量を2005年比で30%削減するため、B.オバマ政権下の環境保護庁(EPA)が導入した「クリーン・パワー・プラン(CPP)」の目標を達成するには、新たな原子力発電設備の建設が有効だと指摘。これに向けて、適切な計画の策定コストも調査するとしている。助成金の実際の申請は、同州唯一の原子力発電所であるクーパー発電所(BWR、83.5万kW)の所有者であるNPPDが実施。同社の申請書はすでに今月6日、州政府の経済開発省が承認済みである。同FSの第一段階で、NPPDは地理的データや予備的な許認可基準に基づき、SMRの立地に最適の地点15か所を特定する。許認可基準の中でも、冷却水と送電網へのアクセスを重点的に考慮する方針で、この作業は今年の春までに完了させる。その後の第二段階では一層詳細な評価を行う予定で、原子力規制委員会(NRC)が審査の際に使用している環境面や建設関係の基準により、候補地点を4か所まで絞り込む。この段階の作業を完了するには、約1年を要するとNPPDは予想している。(参照資料:ネブラスカ電力公社、ネブラスカ州政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 25 Jan 2023
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米規制委 SMRとしては初の設計認証を発給
米原子力規制委員会(NRC)は1月19日、ニュースケール・パワー社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」(電気出力5万kW版)に対し、SMRとしては初の設計認証(DC)を発給した。米国での利用を許可するため、NRCがこれまでにDCを発給した炉型はウェスチングハウス(WH)社製AP1000などの大型炉も含めると7つ目。米エネルギー省(DOE)は2014年以降、ニュースケール社製も含め、様々なSMRの設計や許認可手続き、立地等に6億ドル以上の支援を実施してきたが、K.ハフ原子力担当次官補は、「SMRはもはや抽象的な概念ではなく、建設準備ができた現実のものになった」と指摘。「最も優れた技術革新の結果であり、我々はここ米国でその活用を開始する」と宣言した。ニュースケール社は2016年12月に「NPM」のDC審査をNRCに申請しており、NRCスタッフは2020年8月に同設計の技術審査を終えて最終安全評価報告書(FSER)を発行。翌9月には、同スタッフが当該設計について「技術的に受け入れ可能」と判断したことを意味する「標準設計承認(SDA)」を発給している。NRCはその後、DC審査の最終段階として、電気事業者が当該設計の建設・運転一括認可(COL)を申請する際、米国内で建設可能な標準設計の一つに適用する規制手続き「最終規則」の策定作業を進めていた。NRCの委員5名も2022年7月末にNRC全体の決定として、「NPM」が米国での使用を承認された初のSMRと票決していた。今回はこの最終規則の策定が完了し連邦官報に公表されたもので、同規則が発効する2月21日から「NPM」のDCも有効である。DCはその後15年間効力を持ち、さらに10年~15年間延長することも可能。今回のDC発給により、「NPM」のCOL申請審査ではDC規則で解決済みの課題に取り組む必要がなくなる。発電所の建設サイトに特有の安全性や環境影響について、残る課題のみに対処することになる。「NPM」の初号機については、ユタ州公営共同事業体(UAMPS)が単基の電気出力7.7万kW版の「NPM」を6基備えた設備「VOYGR-6」(出力46.2万kW)を、DOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)内で建設する計画を進めており、最初のモジュールは2029年の運転開始を目指している。このため、ニュースケール社は今月1日、7.7万kW版の「NPM」についても、NRCにSDAの取得を申請した。UAMPSもINL内での用地調査を終え、2024年の第1四半期を目途に「VOYGR-6」のCOLを申請する予定である。米国内ではこのほか、ワシントン州グラント郡の公営電気事業者「グラントPUD」が2021年5月、ニュースケール社製SMRの性能を評価するため、同社と協力覚書を交わした。また、ウィスコンシン州のデーリィランド電力協同組合も2022年2月、同SMRを事業域内で建設する可能性を探るとして、了解覚書を締結している。国外では、カナダやチェコ、ウクライナ、カザフスタン、ルーマニア、ブルガリアなどの企業が国内でのNPM建設を検討中で、それぞれが実行可能性調査等の実施でニュースケール社と了解覚書を締結済み。ポーランドでは、鉱業大手のKGHMポーランド銅採掘会社が「VOYGR」設備をポーランド国内で建設するため、2022年2月にニュースケール社と先行作業契約を締結している。(参照資料:DOEの発表資料、連邦官報、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 23 Jan 2023
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スウェーデン首相 原子炉の新設に向け法改正を提案
昨年10月にスウェーデンで発足した中道右派連立政権のU.クリステション首相は1月11日、環境法に記されている原子力関連の制限事項の撤廃を提案した。多くのサイトで原子炉の新設を可能にすることが目的。現行法では、新たなサイトでの原子炉建設が禁止されているほか、同時に運転できる原子炉の基数も10基までに制限されている。これらを撤廃することで、クリステション政権は中道左派の前政権が提唱していた「2040年までに100%再生可能エネルギーのエネルギー供給システムに移行」を、「(再エネのみに限定しない)非化石燃料100%のシステム」に変更。小型モジュール炉(SMR)も含めた数多くの原子炉を国内で建設することにより、CO2を排出せずに安価な電力を潤沢に発電し、産業界や輸送部門の電化を進めていく。また関係雇用を創出しスウェーデンの競争力を強化、グリーンなエネルギーシステムへの移行を促進する。原子力発電は堅固なエネルギー供給システムを構築するインフラとして、同国のエネルギーミックスに必要だと強調している。クリステション首相は今回、この提案を気候・企業省で気候・環境問題を担当するR.ポルモクタリ大臣とともに発表した。同提案については、今後3か月にわたり一般から幅広く意見を募集し、今年の夏以降に正式に法改正を提案、2024年3月にも改正法を発効させたいとしている。クリステション政権は右派勢力である穏健党などの3党、および閣外協力するスウェーデン民主党による連立政権で、原子炉の新設と維持に関する今回の方針は、2022年10月にティード城における4党の政策協議で合意されていた。この「ティード合意」では、2045年時点の電力需要が少なくとも3,000億kWhになることを見込んでおり、現在の倍の規模となるこの需要を安定的に満たすため、原子炉の新設を含め、合計4,000億クローナ(約4兆9,400億円)の投資を実施する。具体的な方策として同首相は今回、規制当局であるスウェーデン放射線安全庁(SSM)の予算を拡充し、既存炉や新設炉に関する許認可手続きを規制の見直しで迅速化すると表明。原子力の研究開発予算も増額する。また、より多くの事業者が原子炉を建設できるよう門戸を開き、SMRの建設と運転に向けた条件整備として関係規制を制定。SMRでは発電のみならず、水素や高温熱の製造にも利用を広げる方針である。スウェーデンでは現在、6基の商業炉で総発電量の3割を発電するなど、原子力は水力と並ぶ主力電源だが、1980年には前年のTMI事故とその後の国民投票の結果を受け、2010年までに脱原子力を達成するという政策を施行した。1999年と2005年にバーセベック1、2号機を閉鎖したものの代替電源の確保が進まず、2006年に発足した中道右派政権は2010年に脱原子力政策を見直し、当時運転中だった原子炉10基に限り建て替えを認める法案を議会に提出、同年6月に可決された同法案は2011年1月に発効した。しかし、2014年9月に社会党を中心とする中道左派連立政権(前政権)が発足。政権内の政策協議で、「原子力は将来的に再生可能エネルギーとエネルギーの利用効率化で代替する」、「原子力発電所の安全要件を厳格化し、放射性廃棄物基金の徴収額を増額する」などの方針を打ち出し、再び原子力利用を制限する方針に傾いていた。(参照資料:スウェーデン政府の発表資料(スウェーデン語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 13 Jan 2023
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米ニュースケール社 出力7.7万kWのSMRで設計承認申請
米ニュースケール・パワー社は1月4日、同社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」のうち、単基の電気出力が7.7万kWのモジュール設計について、1日付で原子力規制委員会(NRC)に「標準設計承認(SDA)」を申請したと発表した。NRCはすでに2020年9月、出力5万kWのNPMに対してSDAを発給済み。ニュースケール社は2018年6月にモジュールの出力を20%増強して6万kWとし、さらに2020年11月には先進的試験のデータやモデリング・ツールによる分析結果から、出力を25%増強した7.7万kW版を設計していたもの。今回の申請は、顧客が希望する出力レベルに応じて、同NPMを6基搭載した原子力発電設備「VOYGR-6」(出力46.2万kW)の建設を念頭に置いている。7.7万kW版も基本的な安全性能は5万kW版と同じであり、この出力増強によってNPMの経済性はさらに改善されると強調している。ニュースケール社によると現時点でNRCの承認が得られたSMRはNPMのみであり、このことは同社のみならず原子力産業界全体にとって重要な節目となった。最初の1件が承認されたことで、2件目の審査は一層効率的かつ効果的に進むと同社は指摘。7.7万kW版のNPMについては、すでにNRCが申請前から予備的協議と申請の準備状況に関するレビューを進めていたという。NRCがNPMの安全性を認めたことで、「VOYGR」の建設を目指すルーマニアやポーランドの計画が過去2年の間に大きく進展した。ルーマニアでは2022年5月に、国営原子力発電会社(SNN)が建設サイトのオーナーとともにニュースケール社と了解覚書を締結。SNNは同年10月、民間のエネルギー企業と共同でプロジェクト企業を設立した。ポーランドでは2021年9月、鉱業大手のKGHMポーランド銅採掘会社らがニュースケール社と協力覚書を締結。採掘事業に必要な電力や熱エネルギーを石炭火力発電所ではなく、SMRで供給することを検討している。2022年2月には、両社は「VOYGR」の建設に向けて先行作業契約を締結した。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 Jan 2023
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サムスン重工 海上浮揚式原子力発電所の概念設計を完了
韓国のサムスン重工業(SHI)は1月4日、デンマークのシーボーグ(Seaborg)社製コンパクト溶融塩炉(CMSR)を搭載した海上浮揚式の原子力発電所「CMSRパワー・バージ」の概念設計を完了したと発表した。また、アメリカ船級協会(ABS)から、初期段階の実行可能性を認証したことを意味する「原則承認(AIP)」を取得したことを明らかにした。SHI社の造船技術と溶融塩炉の開発企業であるシーボーグ社の技術を融合した「CMSRパワー・バージ」は、電気出力10万kWのCMSRを2~8基搭載でき、24年間稼働が可能。船体には蒸気タービン発電機や陸上の送・配電施設と接続する設備も備わっており、設置点まではタグ・ボート等で曳航されるためサイト選定上の制約が少ない。また、製造期間が約2年と短いことから、コストも大幅に軽減されると指摘している。今後は同バージの設備について詳細設計を進め、2028年までの商業化を目指す方針だ。同バージは化石燃料発電所を代替する熱電併給設備として需要が見込まれるだけでなく、水素製造や海水脱塩、産業用の熱供給施設にも幅広くエネルギーを供給できるとしている。SHI社はすでに2021年6月、溶融塩炉(MSR)技術に基づく小型モジュール炉(SMR)で海上浮揚式原子力発電所や原子力船を開発するため、熱電併給可能なSMR「SMART」(電気出力10万kW)の開発実績を持つ韓国原子力研究院(KAERI)と協力協定を締結した。その際KAERIは、MSR内部で異常信号が発生した場合、液体燃料の溶融塩が凝固するよう設計されているため重大事故の発生を抑制できると説明。このような固有の安全性に加えて、MSRには電力と水素を効率よく生産できるという利点があり、次世代のグリーン水素製造など様々な分野で活用が可能である。2022年4月には、SHI社は溶融塩炉の技術についてシーボーグ社と戦略的技術協力の覚書を締結した。この覚書に基づき、両社は「CMSRパワー・バージ」をターンキー契約で製造・販売し港湾に係留するほか、陸上の送電施設と接続することを計画。協力オプションとして、同バージの近くに水素やアンモニアの製造プラントを共同建設し、同バージから安全かつクリーンな電力を安定的に供給するとしている。SHI社の開発担当者は、「引き続き海上浮揚式原子力発電所の開発を進め、将来的に新たな市場を開拓していきたい」と述べた(参照資料:サムスン重工業、シーボーグ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 Jan 2023
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フィンランドのフォータム社 スウェーデンでのSMR建設に向け地元企業と覚書
フィンランド政府が株式の過半数を保有するエネルギー企業のフォータム社は12月15日、スウェーデンで小型モジュール炉(SMR)の建設機会を探るため、スウェーデンのプロジェクト開発企業であるシャーンフル・ネキスト(Kärnfull Next: KNXT)社と了解覚書を締結したと発表した。フォータム社は今年10月、フィンランドとスウェーデンの両国で、大型炉やSMRなど新たな原子力発電所の建設に向けた実行可能性調査(FS)を2年計画で実施すると発表。KNXT社との覚書はその一環であり、スウェーデンで商業面や技術面、社会面の新設要件を特定するFSの実施に協力して取り組んでいく。両社の発表によると、スウェーデン初のSMRを稼働させる時期については、現状では禁止されている新たなサイトでの原子炉建設や10基までに制限されている運転中原子炉の基数など、法制面や許認可関係の制限事項がどの程度撤廃されるかにかかっている。地球温暖化への対応策として、フォータム社はクリーン電力への需要が今後数十年間で大幅に高まると予想。スウェーデン政府が掲げた温暖化防止目標を達成するには、CO2を排出しない電源の大規模な拡大が求められており、産業界からはSMRの持つ可能性に期待が高まっていると指摘している。フォータム社は、SMRであれば産業界や各自治体に価格の安定した無炭素な電力や熱、水素を提供できると考えており、新たな原子力発電所を風力発電設備とともに建設していくことは、地球温暖化への対抗手段になると強調。同社とKNXT社の異なる能力を生かし、互いに補い合ってSMR建設を進めていきたいと述べた。なお、フォータム社は今回の発表に先立つ今月8日、同FSにおける活動の一部として、フランス電力(EDF)と協力するための枠組み協定を締結した。EDFは2019年9月、原子力・代替エネルギー庁(CEA)などとの協力により、実証済みのPWR技術とモジュール方式を取り入れたSMR「NUWARD」(電気出力34万kW)を開発したと発表。仏フラマトム社らが開発した欧州加圧水型炉(EPR)の建設を欧州全土で進めつつ、NUWARDについても2030年から実証プラントの建設に取り掛かる計画である。フォータム社は先進的原子炉建設に関するEDFのこのようなアプローチも取り入れて、北欧で新たな原子力発電所の建設機会を探る方針である。フォータム社はまた、このFSの一環で先月、ヘルシンキ市が保有するエネルギー企業のヘレン社と、SMRの建設に向けた協力の可能性を模索すると発表した。ヘレン社は同市内のプラントで熱や電力を生産・供給しており、無炭素な熱電併給が可能なSMRは注目に値すると述べている。一方のKNXT社は今年3月、スウェーデンで複数のSMRを可能な限り迅速に建設するため、米国でSMRを開発中のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と了解覚書を締結している。KNXT社は、環境保全技術のスタートアップ企業であるシャーンフル・フューチャー(Kärnfull Future)社の100%子会社であり、KNXT社のC.ソーランダーCEOはフォータム社について、「稼働率の高いロビーサ原子力発電所を運転するなど、原子力関係の優れた知見を幅広く有している」と評価。同社との協力を通じて、安価でより良い総合的な解決策を顧客に提案できるとしている。(参照資料:フォータム社、シャーフル・ネキスト社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 20 Dec 2022
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米ThorCon社 インドネシアで溶融塩炉搭載バージの建設検討へ
フランスの検査認証企業であるビューロー・ベリタス(Bureau Veritas)社の12月14日付発表によると、同社と米国の原子力技術デベロッパーであるThorCon社は、インドネシアでThorCon社製溶融塩炉「ThorCon」(電気出力25万kWのモジュール×2基)を搭載したバージ(はしけ)の実証・建設に向けて協力することになった。具体的にビューロー・ベリタス社は、同炉に適用される安全基準やコードなどを特定し、その適用にともなうリスクの評価と取り組み方法等についてThorCon社を支援。少なくとも約3年をかけて、技術の認定プロセスを完了する。その後は実際に建設する可能性を探るため、さらに2年間で産業利用に関する実行可能性を評価するとしている。ThorCon社はこのバージの実証を行い最終的に設置する地点について、すでにインドネシアの国営電力(PLN)と原子力規制庁(BAPETEN)、およびスマトラ島の東方沖に位置するバンカ島とビリトゥン島(バンカ・ビリトゥン州)の州政府と協議中。船体に溶融塩炉を組み込んだバージは設置点の浅瀬まで引き船で曳航され、そこで送電網に接続、主に近隣地域の電力需要を満たすことになる。インドネシアは同炉で多量の電力を発電し、信頼性の高い低炭素エネルギーへの移行を図る考えだ。インドネシアでは電力需給のひっ迫等を理由に、1980年代に原子力発電の導入が検討されたが、建設予定地における火山の噴火や地震の可能性、福島第一原子力発電所事故などが影響し、100万kW級大型炉の導入計画はこれまで進展していない。一方、初期投資の小ささや電力網への影響軽減等の観点から、中小型炉への関心は維持されており、インドネシア原子力庁(BATAN)は2018年3月、大型炉導入の前段階として小型高温ガス炉(HTGR)を商業用に導入するため、熱出力1万kWの実証試験炉の詳細工学設計を開始している。ThorCon社は世界第4位の人口を擁するインドネシアについて、電力需要が今後も大幅に増加すると予想。このため、低コストで出力調整可能な無炭素エネルギーが緊急に必要な東南アジアで、同社の技術を最初に実現する国としてインドネシアを選定した。電力需要の増加を満たす実用的な対策を東南アジアに提供し、世界的な温暖化問題の解決に貢献したいとしている。ThorCon社の資料によると、同社は2018年にインドネシアのエネルギー省と覚書を交わし、出力50万kWの溶融塩炉の実証炉建設に関する実行可能性調査の実施で合意している。エネ省は2019年に国営電力会社とともにこの調査を完了し、実証炉の安全性と経済性および送電網への影響等を検証済みである。同社はまた、今年2月にインドネシア国家研究イノベーション庁(BRIN)と原子力分野の研究開発と技術革新、中でもモジュール式溶融塩炉の開発に関する協力で覚書を締結。7月には、将来の溶融塩炉建設に向けて両者が合意したことを明らかにしていた。(参照資料:ビューロー・ベリタス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Dec 2022
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米ニュースケール社 SMR関連機器の設計をフラマトム社に発注
米ニュースケール・パワー社は12月5日、同社製の小型モジュール炉(SMR)である「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の燃料取扱い装置と貯蔵ラックの設計契約を仏フラマトム社に新たに発注したと発表した。将来的にはこれらの機器をフラマトム社が製造することになっており、ニュースケール社は「SMRの機器製造とサプライチェーンの構築に向けた重要な一歩」と評価。これらの契約を通じて、ニュースケール社は顧客のスケジュールに沿って、2020年代末までにNPMを複数基備えた発電設備VOYGRの建設が可能になるとしている。ニュースケール社のNPMはPWRタイプの一体型SMRで、電気出力が5万kW~7.7万kWのモジュールを最大12基連結することで出力の調整が可能。米国の原子力規制委員会(NRC)は2020年9月、1モジュールあたりの出力が5万kWの「NPM」に対し、SMRとしては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給した。同社はまた、2021年12月に出力7.7万kWの「NPM」を複数搭載したSMR発電設備の呼称を「VOYGR」に決定。搭載基数に応じて、出力92.4万kWの「VOYGR-12」、46.2万kWの「VOYGR-6」、30.8万kWの「VOYGR-4」と名付けている。ニュースケール社によると、フラマトム社との協力関係は2014年にさかのぼり、フラマトム社はNPMのSDA取得に向けて、エンジニアリング・サービスの提供や許認可プロセスの分析等でニュースケール社を支援してきた。今回の協力拡大により、両社はVOYGRの建設と商業化をさらに進める考えだ。フラマトム社は今回の契約業務を遂行するのに際し、米ペンシルベニア州の起重機企業であるアメリカン・クレーン社、および仏オラノ社と連携する方針。これらの機器の既存設計をVOYGR設備の仕様に適応させて合理的な設計・製造方法を開発し、VOYGRの建設スケジュールを順守可能にする。燃料取扱い装置については、同社は本格的な遠隔操作機能を追加して性能強化を図るとした。また、高密度・使用済燃料貯蔵ラックの設計では、VOYGR設備独特の要件を満たすため関係技術を有するオラノ社とチームを組み、原子力産業界全体で培ってきた経験を活用するとしている。今回の契約を通じて、両社はこれまでの協力関係を一層強化しVOYGR設備の建設工事に至るまでこれを継続。世界中の多様なエネルギー需要に応えられるよう、VOYGR設備で柔軟性の高い発電オプションを売り込んでいく。また、フラマトム社としてはSMR機器の設計・製造能力をさらに向上させて、SMRを含む将来の先進的原子炉への機器・サービス提供でシェアを拡大したいとしている。(参照資料:ニュースケール社、フラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 07 Dec 2022
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チェコ テメリン発電所でSMR初号機建設の地質調査を実施
チェコの国営電力(CEZ社)は12月2日、既存のテメリン原子力発電所で計画している同国初の小型モジュール炉(SMR)の建設準備作業として、初期の地質調査を完了したと発表した。建設サイトは正確には、テメリン発電所(ロシア型PWR×2基、各108.6万kW)の敷地南西部の外端に位置しており、複数の専門家が地盤のタイプや健全性を見極めるため、その状態を詳細に調査中。特別な振動発生機を使って地震波の到達速度や電気抵抗値などを計測するほか、深さ30mの調査抗も掘削して初期の調査結果を検証、地盤底土の組成なども分析する。CEZ社は現在、2015年5月の「国家エネルギー戦略」とこれをフォローする「原子力発電に関する国家アクション計画」に基づいて、既存のドコバニ原子力発電所(ロシア型PWR×4基、各51万kW)で大型原子炉の増設計画を推進中。ドコバニⅡ原子力発電会社(EDU Ⅱ社)は今年3月、最初の増設1基(120万kW級)についてベンダーの競争入札を開始しており、11月30日には招聘した3社から最初の入札文書を受領している。CEZ社は大型炉とSMRの建設計画を並行して進めている。テメリン発電所におけるSMRの初号機建設は、他の場所でSMRを建設する際のモデルケースとなる予定で、国内の老朽化した火力発電所をSMRでリプレースとすると強調している。CEZ社は、テメリン発電所が立地する南ボヘミア州の「原子力パーク」プロジェクトとしてSMR建設を推進しており、同社と傘下の国立原子力研究機関(UJV Rez)、および南ボヘミア州政府は今年5月、共同で同プロジェクトを始動すると表明。これら3者は、プロジェクトの準備作業を調整する「南ボヘミア原子力パーク会社」の株主となり、SMR分野の研究開発と建設準備を実施している。採用するSMRについて、CEZ社はこれまでに米国のニュースケール・パワー社、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社、ホルテック社のほか、英国のロールス・ロイス社、フランス電力(EDF)、韓国水力・原子力会社(KHNP)とSMR関係の協力覚書を交わした事実に言及。米ウェスチングハウス社とは、同プロジェクトについて集中的な協議を実施中であることを明らかにしている。CEZ社のT.プレスカッチ理事は、「(地質調査を実施中の地点が)SMR建設に最適だとの確信はあるが、建設前に地盤の状態やその他の影響ファクターを正確に把握しておかねばならない」と表明した。南ボヘミア州のM.クバ知事は、SMRについて「単にクリーンで安全な電力や熱を生産できるだけでなく、欧州の将来的なエネルギーミックスを支えることは確かだ」と指摘。SMRに加えて、人材の訓練センターも設置する機会にしたいと抱負を述べた。(参照資料:CEZ社の発表資料(チェコ語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 Dec 2022
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