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IAEAとEBRD ネットゼロ達成に向け原子力協力を拡大へ
国際原子力機関(IAEA)と欧州復興開発銀行(EBRD)は第29回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP29)会期中の11月13日、IAEAのR. グロッシー事務局長とEBRDのO. ルノーバッソ総裁が両機関の協力強化を目指す覚書を締結した。この新たな覚書の下で両機関は、EBRDの活動対象国が原子力利用を検討するにあたり、エネルギー政策・戦略、ガバナンスと資金調達の枠組み、ネットゼロ目標を達成するためのメカニズムなどの策定に向けた活動を支援する。原子力発電および非発電利用分野における原子力・放射線安全分野と技術インフラのほか、関連施設の廃止措置、放射性廃棄物の管理を支援対象とする。MOUに署名したIAEAのグロッシー事務局長は、「我々は共に、原子力安全における長年の協力をベースとするだけでなく、能力構築、クリーンエネルギー、経済回復力に向けて新たな扉を開いた。EBRDのような金融機関とのパートナーシップは、低炭素社会の実現に必要な投資を活性化するとともに、原子力のメリットがあらゆる人にアクセス可能で、安全で、持続可能であるために不可欠である。特に、SMRの技術的および商業的可能性についてEBRDと意見交換できることを楽しみにしている」と述べ、原子力エネルギーを拡大するための金融機関や民間セクターとのパートナーシップの重要性を強調した。IAEAは、政府、産業界、銀行、その他のステークホルダーに対し、資金やノウハウなどの提供を要請している。EBRDは、中東欧諸国における自由市場経済への移行並びに民間及び企業家の自発的活動を支援することを目的として、1991年に設立された国際開発金融機関。東欧、ロシア、中央アジアでも原子力関連施設の廃炉や環境復旧活動を支援する他、いわゆる「アラブの春」以降、チュニジアやヨルダン、エジプトなど、地中海の東南岸諸国も支援対象地域に加えている。2021年、IAEAとEBRDは、ウクライナ当局と協力して、チョルノービリ原子力発電所の廃炉と立入禁止区域における放射性廃棄物の管理に向けた安全で費用対効果の高い解決策に向けて、引き続き協力することで合意した。チョルノービリ関連プロジェクトに加え、IAEAはブルガリア、リトアニア、スロバキアにおける原子力発電所の廃炉のための技術的助言を実施するほか、中央アジアにおけるウラン採掘・製錬サイトの環境復旧活動においてEBRDと連携した。
- 19 Nov 2024
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COP29 「原子力三倍化」へ向けた資金調達を議論
アゼルバイジャンのバクーで11月11日~22日の日程で開催されている、第29回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP29)において11月13日、COP議長国と国際原子力機関(IAEA)共催による首脳級パネルが開催された。「原子力など低炭素エネルギーへのファイナンスに関する首脳級パネル」と題した同パネルでは、低炭素電源の大規模展開に必要な資金調達について議論された。2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍にするという「原子力の三倍化宣言」には、同日あらたに6か国が署名し、現時点で31か国が署名している。「パリ協定」で示された1.5℃目標の達成には、クリーンエネルギーの拡大と効率改善が必要であるが、そのための資金調達は喫緊の課題である。この首脳級パネルには、アゼルバイジャンのP. シャフバゾフ・エネルギー大臣、IAEAのR. グロッシー事務局長、国際エネルギー機関(IEA)のF. ビロル事務局長、世界原子力協会(WNA)のS. レオン事務局長のほか、ガーナ・エネルギー省、欧州復興開発銀行(EBRD)、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)、国連欧州経済委員会(UNECE)の高官が登壇した。グロッシー事務局長は、「金融機関は市場が求めるものに適応し、歩調を合わせなければならない。原子力には明確な需要がある」とした上で、「政府支援、グリーンローン、官民パートナーシップ、国際協調融資などの手段がある。今はコミットメントが必要。1.5℃の目標を達成可能な範囲に維持するためには、原子力は不可欠であり、我々が一丸となってその可能性を最大限に引き出す時が来た」と語った。IAEAが最近発行した、「気候変動と原子力発電」に関する報告書2024年版によると、2050年までに「原子力の三倍化」を達成するには、年間1,500億ドル(約23.4兆円)の投資が必要になるという。パネルでは、先進国と新興国・途上国(EMDEs)の双方で必要とされる低炭素技術の展開の大規模な拡大に対処するために必要な資金調達の選択肢について議論された。また、気候資金の新規合同数値目標(New Collective Quantified Goal on Climate Finance: NCQG)とともに、資金調達を支援・投資を誘致するための政府、民間セクター、多国間開発銀行の役割について検討され、官民セクター間の協力の重要性が示された。なお、パネルの最後に、シャフバゾフ・エネルギー大臣とIAEAのグロッシー事務局長は、エネルギー計画分野における協力に関する覚書を締結した。シャフバゾフ大臣は、「クリーンエネルギーへの移行にあたり、小型モジュール炉(SMR)を含む原子力エネルギーの可能性の分析に焦点を当てたIAEAのAtoms4NetZeroイニシアチブの下での協力は、アゼルバイジャンのエネルギー部門に新たな弾みを与えるものだ。原子力エネルギーの開発に関するIAEAとの共同研究やプロジェクトを通じて、アゼルバイジャンの将来の原子力エネルギー導入とエネルギーシステムの多様化を進めていく」との抱負を語った。これまで原子力とは縁のなかった産油国、産ガス国であるアゼルバイジャンが、COP議長国として堂々と原子力の価値を語り、COP29に原子力推進の風を吹かせたことは、現地でも驚きをもって迎えられている。昨年のCOP28では、初めてCOP公式文書に原子力の価値が盛り込まれ、大きなエポックメイキングとなったが、これはバラカ原子力発電所を有するアラブ首長国連邦が、議長国としてリーダーシップを取ったことが大きく影響していた。COP29に参加している日本原子力産業協会の植竹明人常務理事は「COP29は、非原子力国かつ産油/産ガス国のアゼルバイジャンが議長国であることから、会議全体の雰囲気が、原子力に対して冷ややかなものになると予測していた。しかしながら、本日のMOU締結や、原子力に対するアゼルバイジャンの力強いまでのポジティブな姿勢は嬉しい誤算であり、数年前まではタブーとまで言われていたCOPにおける原子力の議論が、今や堂々と公式プログラムの中で語られており、驚いている」と、COP会場を包む原子力への追い風について力強く語った。
- 15 Nov 2024
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美浜3号機 IAEAが長期運転に向けた取組を評価
関西電力は10月28日、美浜発電所3号機について、原子力発電所の長期運転を支援するIAEAプログラム「SALTO」(Safety Aspects of Long Term Operation)による評価報告書を受領したと発表した。〈関西電力発表資料は こちら〉美浜3号機は、新規制基準をクリアした後、2021年7月に国内初の40年超運転を開始。同機については、2024年10月15日、来年6月に本格施行となる「GX脱炭素電源法」で規定される運転開始から30年を超すプラントに必要な「長期施設管理計画」の認可申請も行われている。「SALTO」は、原子力発電所の長期運転に係る組織や体制、設備・機器の劣化管理などの活動がIAEAの安全基準に適合しているかを評価し、事業者に対して、さらなる改善に向けた推奨・提案事項を提供するプログラムだ。これまで海外では、欧州の他、中国、南アフリカ、メキシコなどで実績があるが、今回の美浜3号機は国内初の受入れとなった。「SALTO」チームは、4月16~25日に同機に係る調査を実施。良好事例6件、推奨事項7件、提案事項4件があげられた。今回の調査結果を受け、関西電力では、「経年劣化管理および安全な長期運転に向けた活動について、概ねIAEAの安全基準の推奨通りに管理されていることや、今後、改善が計画されていることについて評価された」と、述べている。同社では、今回の提案・推奨事項に対する改善をさらに進め、2026年度にも「SALTO」チームによるフォローアップを受け入れる予定だ。
- 29 Oct 2024
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IAEA SMRに関する初の国際会議を開催
国際原子力機関(IAEA)が主催する小型モジュール炉(SMR)とその応用に関する初の国際会議がウィーンで10月21日~25日に開催された。SMRのサプライヤーや規制関係者など約100か国から1,000人以上が集まり、世界のSMR活動を評価し、新たな課題と機会について議論した。IAEAは同会議を、大手テック企業から海運業界や鉄鋼業界まで、脱炭素化の目標達成を目指すあらゆる企業にとって、SMRをあらゆる角度から検討するのに最適な場と位置付けている。会議冒頭、R. グロッシー事務局長は「SMRは原子力において、最有望で、エキサイティングで、必要とされる技術開発の一つであり、現実なものになりつつある。クリーンエネルギーの未来を実現する上で原子力の導入を加速する必要があるが、SMR は産業の脱炭素化、経済の活性化に貢献できる」と強調。そして世界の大手テック企業が、低炭素エネルギーによって生成AI(人口知能)やその他の科学イノベーションを推進するためにSMRに注目し、開発途上国にもSMRの利用を検討する国が増えていると指摘。SMRの導入支援の強化に向けてIAEAが開設したSMRプラットフォームを通じて支援及び専門知識を提供するほか、SMR導入には資金調達が極めて重要になることから、国際金融機関に対し、従来型およびSMRのような新型炉への投資を促していると言及した。オープニングセッションでは、ガーナのK. メンサー・エネルギー省次官、米原子力エネルギー協会(NEI)のM. コースニックCEOから基調講演が行われた。会議の開催期間中には、4つの主要テーマ(①SMRの設計、技術、燃料サイクル、②法規制の枠組み、③安全性、セキュリティ、保障措置、④SMRの展開を促進するための考慮事項)に関するパネルディスカッションやポスターセッションが行われ、SMRの可能性について議論した。なお、10月21日、原子力の調和および標準化イニシアチブ(Nuclear Harmonization & Standardization Initiative:NHSI)の第3回年次総会が開催された。IAEAは2022年、先進炉、特にSMRの世界展開には、迅速かつ効率的に、また開発者がスケールメリットを達成するために、標準化された設計が複数の国において認可され、かつ安全に導入されるための各国間の調和された規制アプローチが不可欠であるため、同イニシアチブを創設。同イニシアチブは、規制トラックと産業トラックの別個でありながら補完的な2つのトラック構成により、各国を支援する。前者は、原子力安全と国家主権を損なうことなく、加盟国間の規制協力を強化し、取組みの重複を回避して効率を高め、共通規制の作成を促進することを目標とし、後者は、SMR の開発、製造、建設、運転のより標準化されたアプローチの開発に焦点を当て、認可手続き、コスト、展開の所要時間の短縮を目指している。今回の総会では、各トラックの作業の進捗状況をレビューし、ワーキンググループが提案する多くの推奨事項を実施するという次の段階に移行することとなった。
- 28 Oct 2024
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IAEAの新報告書「気候変動と原子力発電」、資金調達に焦点
国際原子力機関(IAEA)はこのほど、「気候変動と原子力発電」に関する報告書2024年版を発行した。原子力発電の拡大目標を達成するためには、投資を大幅に増やし、強固な資金調達の枠組みの必要性があると指摘し、その課題とベストプラクティスに焦点を当てている。IAEAは報告書の中で、各国がエネルギー安全保障の強化と経済の脱炭素化を目指す中、原子力発電への関心が世界中で高まりをみせているが、2050年ネットゼロの達成には、クリーンエネルギーの急速な拡大が必要であり、原子力発電は重要な役割を果たすと明言。IAEAの高予測シナリオでは、2050年までに原子力発電の設備容量が現在の2.5倍の9.5億kWeになると予測している。報告書によると、2050年の原子力発電設備容量に関するIAEAの高予測を達成するには、2017~2023年までの年間約500億ドル(7.6兆円)を上回る、年間1,250億ドル(約19兆円)の投資が必要であるという。昨年、UAEのドバイで開催された第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)で日本をはじめとする米英仏加など25か国が、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍に増加させるという野心的な「原子力の三倍化宣言」に署名したが、その実現には年間1,500億ドル(約22.8兆円)が必要になるとした。一方、原子力プロジェクトは、投資家の信頼を得るため、建設コストの予見可能性確保による金融リスクの軽減が不可欠であり、特定のリスク管理には政府の関与が依然として重要であるものの、民間部門の財政的関与が益々現実的になってきていると評価。具体的な動きとして、今年9月下旬、ニューヨークで開催された気候イベント「Climate Week」のサイドイベントにおいて、世界有数の14の大手金融機関による、原子力発電所の新規建設プロジェクトへの資金調達の支援表明を挙げた。また、グリーンボンドやグリーンローンなどの金融メカニズムが、保証と相まってリスクを軽減し、より広範な投資家の参加のためのツールを提供する、と指摘。欧州の持続可能な経済活動の分類である「EUタクソノミー」において、原子力が一定の条件で含まれたことが好影響をもたらしているとしたほか、2023年のフィンランドとフランスにおける原子力発電向けの初のグリーンボンドの発行や、フランス電力(EDF)と金融機関とのグリーンローン契約締結を例示した。今後、商業銀行の関与が更に促進される可能性に触れる一方で、特に金融市場が黎明期にある開発途上国では、多国間開発銀行が支援的な役割を果たす可能性があると分析している。IAEAのR. グロッシー事務局長も、「原子力発電は、ほぼ1世紀にわたる運転期間全体を通じて、手頃な価格でコスト競争力があるが、初期費用を賄うことは、特に市場主導型の経済や開発途上国で課題となる可能性がある」と述べ、「民間の金融部門が資金調達に貢献する必要性はますます高まるが、他の機関も同様だ。IAEAは原子力発電への投資に関して、途上国がより多くの、より良い資金調達オプションを確保できるよう、多国間開発銀行とその役割について協議中である」と説明した。本報告書は、10月3日、ブラジルで開催された第15回クリーンエネルギー大臣会合(CEM15)の枠内で、IAEAとCEMの「原子力イノベーション:クリーンエネルギーの未来(NICE)」イニシアチブが共同開催したサイドイベントで発表された。CEMは、クリーンエネルギー技術を進歩させるための政策とプログラムを推進し、学んだ教訓とベストプラクティスを共有するハイレベルな国際フォーラム。サイドイベントでは、クリーンエネルギーへの移行に向けた資金調達が主要議題として予定されている、11月11~22日にアゼルバイジャンのバクーで開催されるCOP29を見据え、ブラジル、IAEA、国際エネルギー機関(IEA)、米国の講演者が登壇し、原子力発電プロジェクトへの資金調達を確保する最善策について意見交換を行った。報告書では、新興国・途上国(EMDEs)における資金ギャップを埋め、クリーンエネルギーへの移行を加速させるためには、政策改革や国際パートナーシップを含む多面的なアプローチが必要であると勧告している。強固な規制の枠組み、新たな実現モデル(特にSMR向け)、熟練労働者の育成、包括的なステークホルダー・エンゲージメント戦略により、持続可能なエネルギーへの投資の新たな道が開かれる可能性を示唆。原子力規模、労働力、サプライチェーンの開発を支援する、革新的な資金調達メカニズムと、世界の気候目標の達成における原子力の重要な役割に対する認識の高まりを背景に、IAEAは、原子力の資金調達の広範な受け入れと支援へのシフトに協力していくとした。
- 24 Oct 2024
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原産協会・増井理事長 新規建設の重要性に言及
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は9月27日、定例の記者会見を行い質疑に応じた。増井理事長はまず、8月20日に行われた総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会における発言内容について紹介。6月の理事長就任後、専門委員として初の出席となった同日の小委員会会合では、国内における原子力発電所の新規建設の重要性をあらためて述べた上で、それに向けて、「資金調達・回収」と「革新炉の規制基準」の面で課題を指摘している。これに関して、記者から、将来の革新炉における規制整備に向け、産業界からの「仕掛け」を図る必要性について問われたのに対し、増井理事長は、原子力規制委員会の意見交換会(事業者の原子力担当によるCNO会議)で、原子力エネルギー協議会(ATENA)との議論が始まっていることを説明。実際、CNO会議では、3月の会合を皮切りに、ATENAが説明を行っており、最近の9月12日の会合では、三菱重工業が開発に取り組む革新軽水炉「SRZ-1200」を例に、「規制の予見性が十分でないと考える事項」に関し論点が提示されるなど、進展がみられている。また、増井理事長は、9月16~20日に開催されたIAEA通常総会に出席したことを説明。ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長、日本政府代表の原子力委員会・上坂充委員長らのスピーチについて紹介したほか、会期中に行われた「日本の最先端の原子力技術」をテーマとする日本ブースの展示に660名が来場し「盛況であった」と評価した。さらに、増井理事長は、IAEA総会に続いて出席したOECD/NEAよる第2回「新しい原子力へのロードマップ」会議における産業界共同声明の発表を紹介。その中で産業界として政府に行動を求めた8つの分野に関し、「資金調達、サプライチェーン、人材育成、規制、などが幅広くカバーされているという印象を持った」との所感を述べた。
- 30 Sep 2024
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環境省WG 除去土壌の再生利用で基準案示す
福島第一原子力発電所事故に伴う除去土壌の再生利用、減容化技術、最終処分について検討する環境省の3ワーキンググループ・チームは9月17日、合同会合を行い、環境再生の取組について審議した。〈配布資料は こちら〉今回の合同会合に先立ち10日、環境省は、IAEAより除去土壌の再生利用などに関し専門家会合が取りまとめた最終報告書を受領。同報告書は、技術的・社会的観点から日本の取組に対し助言を行うもので、「これまで環境省が実施してきた取組や活動はIAEAの安全基準に合致している」と、評価している。福島県内で発生した除去土壌については、中間貯蔵施設(大熊町・双葉町)に一時保管中。中間貯蔵後30年以内(2045年3月まで)に県外で最終処分を完了するため、必要な措置を講ずることが放射性物質汚染対処特別措置法で規定されている。福島県外の除去土壌についても、現在、仮置場などに保管されており、県内外で発生する除去土壌の処理を安全に進めるため、今回の合同会合では、再生利用の基準案が示された。周辺住民や工事作業者の「年間追加被ばく線量が1mSv/年を超えない」よう、再生資材化した除去土壌を行うとしている。福島県内で発生する除去土壌の保管量は約1,300万㎥(東京ドームの約11杯分に相当)。県外最終処分量を低減するため、環境省では、福島県出身のタレントで「福島環境・未来アンバサダー」を務めるなすびさんを起用した特設サイトや、国内各地での「対話フォーラム」などを通じ、除去土壌の再生利用に向け理解活動に努めている。既に、技術開発公募を通じ、実証事業も行われており、例えば、福島県飯舘村の長泥地区では、農業利用として、直接、食に供さない花きの試験栽培(再生資材で盛土した上に覆土することで農用地を造成)が行われている。今回、示された再生利用の基準案は、こうした実証事業で得られた知見を踏まえたものだ。なお、これまでも福島第一原子力発電所事故後の風評などをめぐり、多くの意見を述べてきた三菱総合研究所はこのほど、中間貯蔵施設に一時貯蔵される除去土壌に関し、「2024年度は最終処分の具体化への重要な目標年」との認識に立ち、提言を発表。社会的合意形成に向け、最低限必要な事項として、「最終処分に向けた取組の全体像を示すこと」、「物量・安全性などを定量的に示すこと」、「意思決定のプロセスを示すこと」をあげ、対応のあり方を考察している。
- 19 Sep 2024
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IAEA総会が開幕 上坂原子力委員長が処理水の海洋放出の安全性を強調
国際原子力機関(IAEA)の第68回通常総会が9月16日から20日の日程でオーストリアのウィーン本部で始まった。開会の冒頭ではIAEAのR.M.グロッシー事務局長が演説し、「世界が現在直面している課題に克服できないものは何もない」「課題解決にIAEAの役割と使命は不可欠だ。そして確かに、私たちはかつてない緊張と不確実性の時代にいるが、ここでの我々の仕事の絶対的な重要性を忘れてはならない」と各国代表を前にその決意を表明。その上で、同事務局長は「世界の平和と安全を支えてきた核兵器不拡散体制の崩壊を防ぎ、戦争時に原子力安全とセキュリティが確実に行き渡るようにすることも重要だ。また、原子力技術の効率的な応用を通じ、世界中の貧困と困難を減らしていく」と、IAEAが果たす幅広い役割を強調した。同事務局長はまた、最も重要な問題の一つに気候変動があると指摘。現在世界で生産されているクリーンエネルギーの約4分の1が原子力発電によるものであり、「昨年のドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)では、出席したすべてのメンバーから、原子力発電を加速すべきであるという世界的なコンセンサスが得られた」と述べ、今年11月にアゼルバイジャンのバクーで開催されるCOP29においてもこの取組みの継続に期待するとした。なお、IAEAは総会の初日、「2050年までのエネルギー、電力、原子力発電の予測」を発表。高予測シナリオでは、世界の原子力発電設備容量は2050年までに現在の2.5倍に増加し、低予測でも1.4倍の増加になると示すなど、4年連続で上方修正している。同事務局長はさらに、ウクライナのザポリージャ原子力発電所でIAEAの専門家が現地駐在しながら活動を継続し、最近ではロシアのクルスク原子力発電所を訪問したことに言及、「原子力発電所は、その立地場所にかかわらず、いかなる状況においても攻撃されるべきではない」と繰り返し表明した。これに続く各国代表からの一般討論演説では、日本から参加した上坂充原子力委員長が登壇。変動する国際情勢や科学技術の進歩の中で、IAEAの役割の重要性を指摘するとともに、日本は、原子力の平和利用、原子力安全、核セキュリティ、保障措置の3S、および地域の不拡散問題を重視する立場を表明した。上坂原子力委員長は、原子力安全を最優先とした、原子力発電所の再稼働や運転期間延長への取組み、次世代先端技術の研究開発、国際協力を通じたサプライチェーンの強化への取組みについて紹介。また、医療、農業、環境など幅広い分野への応用が期待されている原子力技術について、IAEAのイニシアチブである、放射線を用いたがん治療の能力強化「Rays of Hope」や、食料安全保障のための原子力技術の活用「Atoms4Food」への強い支持を表明するともに、医療用放射性同位元素の国産化に注力していることに言及した。さらに、次世代エネルギーである核融合の早期実現に向けた取組みについても紹介した。同委員長はまた、日本は、福島第一原子力発電所の事故の経験と廃炉による知見を国民と近隣諸国を含む国際社会と共有していることに触れ、ALPS処理水の海洋放出の安全性は、IAEAや専門家によるモニタリングとレビューにより裏付けられており、ALPSで十分に浄化された後、海水で希釈されて排出され、人や環境への影響はなく、処理水を汚染水と表現することは適切ではない、と改めて強調した。廃炉への取組みについては、難易度の高い燃料デブリ取り出し作業を含む新たなフェーズへ移行している現状を紹介。なお、核セキュリティの最高水準の確保のため、国際社会に潜在的な脅威となり得る核物質の在庫を最小限に抑える取組みや、3S実現に不可欠なグローバル人材育成事業について言及。核不拡散の要となるIAEAの保障措置の強化と効率化に向けた活動を引き続き支援していくとともに、国内外の関係者との関係強化を図り、国際社会に対して透明性のある説明を行っていくとした。さらに、不拡散問題については、日本は北朝鮮問題、イラン核問題の解決を重視しているとし、特に、北朝鮮に対し、全ての核兵器を完全で検証可能かつ不可逆的な方法で放棄することを強く求め、関連する国連安保理決議をすべての加盟国が完全に実施することの重要性を改めて訴えた。また、ウクライナにおける原子力安全・セキュリティの確保を強く支持すると述べ、厳しい国際環境におけるIAEAの献身的な努力への謝意を示すとともに、日本が引き続き最大限に支援していくと表明した。 ◇ ◇例年通りIAEA総会との併催で展示会も行われている。日本のブース展示では、「日本の最先端の原子力技術」をテーマに、GX実現にむけた原子力政策、高温ガス炉や高速炉サイクル、革新軽水炉開発などを紹介している。展示会初日には、日本政府代表である上坂原子力委員長がブースのオープニングセレモニーに来訪。同委員長は挨拶の中で、脱炭素化などエネルギー情勢の変化に対応するため原子力エネルギーの分野でイノベーションが必要だとするとともに、25周年を迎えたアジア原子力協力フォーラムについて言及、原子力は発電以外に幅広い放射線利用により社会に貢献していると述べた。この後、日本原子力産業協会の増井理事長による乾杯が行われ、福島県浜通り地方の日本酒がブース来訪者に振舞われるなどした。
- 18 Sep 2024
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原子力マネジメントスクール 15か国が参加
将来のリーダーシップ発揮が期待される国内外の若手人材を対象とした研修コース「Japan-IAEA 原子力マネジメントスクール(NEMS)2024」が8月20日、開講した。ブラジル、ブルガリア、エストニア、ガーナ、インド、ヨルダン、カザフスタン、マレーシア、フィリピン、ポーランド、サウジアラビア、スロバキア、スロベニア、ベトナムの海外14か国および日本から、32名(うち日本人13名)の研修生が参加。9月6日までの約3週間にわたり、東京大学本郷キャンパスでの座学、テクニカルツアーなどを通じ、原子力に関連する幅広い課題について学ぶ。NEMSは、2010年にイタリアで始まり、今回、日本での開催は12回目。ホスト機関の原子力人材育成ネットワーク、東京大学大学院工学系研究科、日本原子力研究開発機構、日本原子力産業協会、原子力国際協力センターは、2023年までに海外も含めた計52回の開催で「104か国から2,000人以上が参加した」と、NEMSの実績を評価している。今回、開講式で挨拶に立ったNEMS2024実行委員長の出町和之・東京大学大学院工学系研究科准教授は、NEMSのメリットとして、講義やグループワークを通じ、最新の知見が得られることに加えて、研修生同士の親睦形成も強調。日本開催は2020、21年と、新型コロナの影響により延期・オンライン併用となったが、例年、研修期間は暑さの厳しい時期に当たることを踏まえ、今回も健康管理に留意し楽しく学んでもらうよう期待した。IAEAからはヘレナ・ジヴィツカヤ知識管理専門官らが挨拶に立ち研修生らを歓迎。原産協会の増井秀企理事長は、原子力人材育成ネットワーク運営委員会委員長の立場からも、「原子力エネルギー計画を成功裏に進めるための最も重要な要素」と、人材育成の重要性を述べ、研修生らに対し、「皆のコミットメント、積極的な参加姿勢、学ぶ意欲」が求められていると期待を寄せた。今回もテクニカルツアーで、研修生一行は福島第一原子力発電所他を見学するが、これに関し、NEMS前実行委員長で原子力委員会委員長を務める上坂充氏は「大変重要な機会だ」と述べ、実際に現場を自分の目で見て話し合う意義を強調した。
- 26 Aug 2024
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IAEA 原子力導入に向けた指針の中でSMRを考察
国際原子力機関(IAEA)は8月9日、「原子力発電のための国家インフラ開発におけるマイルストーン」の改訂版を公開。その中で、小型モジュール炉(SMR)に関する諸問題を考察している。改訂版は、原子力発電の新規導入または既存の原子力発電計画の拡大の準備方法に関するIAEAの基本的な指針を示し、小型モジュール炉(SMR)特有の導入問題を概説した付属文書を含む。原子力発電所導入の計画、建設、運転、廃炉の全プロセスを通じて各国の指針となる段階的手法であるマイルストーン・アプローチが定義する、3つの全フェーズを完了または大きく進展させた国の現況にも焦点を当てている。IAEAは、「今は、多くの国がネットゼロの公約を達成するためエネルギーミックスとして原子力を検討する重要な時期。2007年の初版発行、2015年の改訂を経て、今回2度目となる改訂は時宜を得たもの」と指摘する。今回の改訂版では、原子力発電を新規導入または拡大している国に対する最近の統合原子力基盤レビュー(INIR)ミッションから得られた教訓を取り入れている。また、今後数年の間に、新規炉の多くが大型水冷却炉となると予想する一方で、SMRが排出削減と持続可能な発展のために重要な役割を果たすとの認識を示している。SMR導入の利点として、遠隔地や送電網が貧弱な地域への導入の利便性のほか、モジュール設計による工期短縮を掲げている。なお、増大する電力需要に応えるため原子力発電導入を検討するデータセンターなどの新たなエンドユーザーや、脱炭素化を必要とする産業用途が多数あり、SMRの展開は迅速なライセンス取得と商業化の達成次第であると強調する。IAEA原子力局のA.クロワゾー部長は、「原子力を取り巻く状況が進化するにつれて、IAEAの支援も進化していかなければならない。SMRがクリーンエネルギーへの移行に不可欠な要素であることは明白であり、SMRに関心を持つ国がプロジェクトを成功するには何が必要かを確実に理解するよう支援したい」と語った。改訂版では、SMRは従来の原子炉とシステムの多くが共通で、法的・規制的枠組み、ステークホルダーの関与、環境保護への配慮などもほとんど同じだが、低出力や簡素化された設計などの独自の特徴により、特定のインフラ要件が異なる可能性を指摘。特に非水冷却炉のSMR導入を計画する国は、新たな形態の放射性廃棄物が発生する可能性があるため、廃棄物管理計画への留意の必要性や、新たな種類の燃料採用にあたり、安定調達を可能にするサプライチェーンの確保、新設計の特徴に対応した、新たな保障措置アプローチの開発などが重要であると言及している。IAEAは、今年10月21日~25日にウィーンで「第1回SMRとその応用に関する国際会議」を開催する。会議ではSMR開発および展開の加速に向けた機会、課題、実現条件について議論する予定だ。
- 20 Aug 2024
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太平洋・島サミット ALPS処理水海洋放出も理解へ
太平洋・島サミット(PALM10)が7月16~18日、都内で開催された。同サミットは1997年以降、日本と太平洋島しょ国とのパートナーシップを強化することを目的として、3年ごとに日本で開催されているもの。前回、2021年は、コロナの影響によりテレビ会議方式で行われた。〈外務省発表資料は こちら〉岸田文雄首相は、会期中、17日までに、ツバル、バヌアツ、ニウエ、パプアニューギニア、パラオ、マーシャル諸島、フィジー、サモア、クック諸島、トンガ、ソロモンの各首脳と会談。福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水の海洋放出に関し、岸田首相が「今後も安心を高めていく」旨、発言したのに対し、各国首脳からは歓迎の意が示された。ALPS処理水の海洋放出に関しては、2023年7月4日、IAEAラファエル・グロッシー事務局長より、安全性レビューを総括する「IAEA総括報告書」が、日本政府に対し手交された。それを受け、8月24日に海洋放出が開始。2024年7月16日には、都合7回目の海洋放出が完了した。なお、IAEAは、ALPS処理水取扱いに関し、同年4月23~26日に海洋放出開始後2回目となる国際専門家からなる安全性レビューミッションを日本に派遣した。7月18日、現地調査、関係機関との議論などを通じた調査結果として、「国際安全基準の要求事項と合致しないいかなる点も確認されなかった」とする報告書が公表された。
- 18 Jul 2024
- NEWS
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アツイタマシイ Vol.8 クリスティン・マデンさん
ダイバーシティに取り組むIAEAまず、IAEAでのお仕事について教えてください。クリスティン原子力保障措置は、世界が原子力エネルギーを利用できるように、核拡散防止条約(Non-Proliferation Treaty=NPT)への法的コミットメントを維持しつつ、平和目的のためだけに原子力科学技術を移転できる基盤を各国に提供しています。保障措置局での私たちの任務は、加盟国が平和的でない目的で核物質や施設を悪用しないという国際的義務を果たしているかを確認することです。私は資格を持った査察官です。現在、査察官は180以上の国々を訪問し、保障措置を実施しています。現在の私の主な役割は、保障措置評価官として、上司である保障措置局長をサポートすることです。保障措置の実施について、局長や管理チームに専門的なアドバイスを提供することに重点を置いています。現在、IAEAには女性の職員はどれぐらいいるのでしょうか?クリスティンここ数年で大幅に増えました 。現在約2,500人の職員のうち4割が女性です。査察官については、2017年時点では女性の占める割合が23.1%でしたが、直近の2023年のデータでは30.6%になりました。女性向けのリクルート活動を強化したこと、リクルート活動自体に女性を幅広く参画させたことで、大幅に増やすことができました。私には、ジェンダーフォーカルポイント としての役割もあります。「ジェンダーフォーカルポイント」とは?クリスティンR.M.グロッシー事務局長が数年前に開始した「ジェンダー平等イニシアチブ」の達成を支援するために、各局で責任者が数名選ばれました。私は保障措置局に3人いるジェンダーフォーカルポイントの1人です。保障措置局では、世代間や地理的な平等性も考慮に入れ、「ジェンダー・地理的・世代的行動プロジェクト」を立ち上げました。誰もが局内に帰属意識を持てるようにすることに力を入れています。他の国際機関とも協力して、リクルートイベントなど、多くのアウトリーチ活動を行っています。さらに、IAEAの技術協力局と協力して、アジア地域の学校教師を対象に、原子力科学技術の理解と普及を強化する方法について議論しました。気候変動問題を懸念する両親の影響で原子力の道へ原子力工学を専攻されたきっかけを教えてください。クリスティン私は自動車産業のメッカ、ミシガン州デトロイト都市圏の郊外にあるロメオという町 で生まれ育ちました。父はフォードで働いていました。私も元々は父のようなキャリアを歩みたいと思っていたのですが、当時、米国の自動車産業は衰退期にありました。両親は気候変動問題に関心が高く、よくテレビのドキュメンタリー番組を見ていました。1990年代から2000年代初頭にかけて、アル・ゴア氏が気候変動と環境への影響について問題提起した時代です。両親は、「気候危機を解決するために力を貸してほしい。原子力工学はこの危機を解決する道だ」と言っていました。私は数学が得意だったので、STEM教育に重点を置いた高校に行きました。当時は原子力分野にあまり気乗りしませんでしたが、放射線腫瘍医になりたい気持ちはありました。いとこが幼い頃に目のがんに苦しんだことが心に残っていたからです。医学部への道筋になると考えて、原子力工学を学ぶことに折り合いをつけました。大学卒業後の進路はどのように決めたのですか?クリスティン学生時代に原子力発電所でインターンを経験しました。中央制御室で働く人たちや、原子炉の起動、進行中の核分裂を目の当たりにし、発電所がとても気に入りました。原子力発電が地域コミュニティにもたらすプラスのインパクトにも感銘を受けました。同僚の多くは、家族が原子力発電所で働いており、その息子や甥っ子がそこで働くようになる感じでした。私の場合、家族の中でこの業界で働くのは私が初めてです。両親の影響で早い段階から原子力に触れていなければ、そうしようとは思わなかったでしょう。その頃の米国の原子力発電所地元の発電所に就職されたのですか?クリスティンはい。2009年にミシガン大学を卒業してから2012年までミシガン州内のパリセード原子力発電所で働きました。どんな職場でしたか?クリスティン100人以上のスタッフがいる部門の中で、女性エンジニアは3人だけでした。「ボーイズクラブ」と呼ばれるような排他的な雰囲気がまだあって、ちょっと疎外感がありましたね。その後、運転部門に異動して、40年間運転しているプラントの歴史上初の女性として、上級原子炉運転員のライセンスクラスに参加しました。そのクラスには女性が3人いました。私たちが最初の3人だったのです。発電所では運転員を区別するために制服を着用します。白いシャツに黒いズボンです。今考えると馬鹿げた話ですが、当時は女性用の制服がありませんでした。女性用の制服を注文できないかと聞いたのですが、男性用を着るよう言われました。身体が小さいので、最小サイズでもドレスみたいにぶかぶかなんです。ある時、上司から、「クリスティン、君が制服を着ていないという苦情が来ている」と呼び出されました。「私に合うサイズがないんです。大きすぎる制服を着るのはプロフェッショナルではありませんよね」と言うと、上司は「なぜ誰も私に知らせなかったのか」と言いました。たぶん、事務担当の職員が制服を注文したくなかったんだろうと思います。結局、解決はしたのですが、このような細かなことが問題になるのです。たとえば、中央制御室には女性用のトイレがなくてとても不便でした。今でも原子力発電所で働いている友人によると、状況はかなり改善されているようです。ウェスティングハウスで働いている親友は、最近副社長に昇進しました。 女性が障壁を乗り越えて成功していくのはエキサイティングですが、まだまだ道半ばだと思います。福島第一原子力発電所の事故を受けとめてクリスティンさんが原子力発電所で働いていた2011年に、日本では福島第一原子力発電所の事故がありました。米国内にはどのようなインパクトがあったのでしょうか。クリスティン私はファクトベースの人間なので、とにかく、何が起きたのか、それはなぜなのかを知ることが重要でした。職場でさまざまな調査をしました。たとえば、私たちの発電所ではどのような自然災害が起こり得るのか、そして、その影響を評価し、定量化するのです。また、私は当時、北米原子力若手連絡会(NAYGN)のメンバーで、学生教育の責任者を務めていたので、米国原子力エネルギー協会(NEI)から、科学コミュニケーションを手伝ってほしいという依頼がありました。原子力に関する一般の人々からの質問にメールで答えるという任務です。事故を受けて、反原子力の機運が高まった時期もあります。そういった状況をクリスティンさんはどのように受け止めておられたのでしょうか?クリスティン人々の怖れは正当だと感じました。怖れは理解不足から生じる傾向がありますが、原子力業界ではシンプルに言えることを非常に複雑な言葉で表現しがちなのです。かつて両親は、幼稚園児や小学生のいとこたちにもわかるように、私に原子力のことを説明させることがありました。技術的な話を始めると、母は、「クリスティン、難しすぎるわ。もう一度やり直して」と言ったものです。人々は耳を傾けてもらいたいのです。時間をかけて相手の考えや懸念を理解し、建設的な対話をすれば、不安感は解消されていくと思います。私自身は原子力事故について懸念を持ったことはありませんでした。原子力を支持する環境で育ったため、偏っていたのかもしれませんね(笑)気候変動のリスクの方がはるかに大きいと考えていました。国際経験を積み、IAEAへキャリアチェンジその後、海外での仕事はご自身で志願されたのですか?クリスティンそれもNAYGNがきっかけです。ある会議でホルテックの副社長と知り合いました。そしてある日、職場のチームでソフトボールをしていたら、リクルーターから電話がかかってきたのです。その時は、「わかりました。後でかけ直します」と言ったのですが、まさか、チョルノービリで働くことになるとは思いもよりませんでした。喜んでオファーを受けたのですか?クリスティンええ、とてもワクワクしました。ホルテックは、乾式および湿式の使用済み燃料貯蔵システムを世界中で管理・開発しています。ホルテックへ転職し、ウクライナでのプロジェクトに8か月間携わりました。その後、一旦米国へ戻り、ウクライナとイギリス両方のプロジェクトをサポートしていた頃、エネルギー省の友人からIAEAに派遣する人材を探しているという連絡がありました。日本もそうですが、各国は国連の各機関にジュニア・プロフェッショナル・オフィサーを派遣しています。おそらく、ライセンス経験と国際経験を持つ32歳以下の候補者を見つけるのに苦労していたのでしょう。そこで、この面接を受けました。実はIAEAで査察官として働きたいといつも思っていたのです。IAEAの査察官に憧れていた?クリスティン元々は母の願望(笑)だったんです。母は、イラクに入って仕事をする査察官をテレビで見て、夕食の時、「いつかあなたもあそこにいるわ」と言っていました。私がIAEAで働きたいのは、IAEAの使命が国際平和と安全保障の促進、さらに、貧困からの脱却のためのエネルギーへのアクセスにとって非常に重要だと考えているからです。査察官としての初仕事の時はどんなお気持ちでしたか?クリスティン初めて査察に行った時は少し不安でしたが、私のメンターである経験豊富なもう一人の査察官と一緒に出張し、彼女は出発前に実用的なアドバイスをたくさんくれました。そのおかげで、私は準備万端、自信を持って臨むことができました。彼女は今や局内の上級査察官に昇進していますが、今でも私のメンターとしてアドバイスをくれます。査察官は、原子力科学技術が地域社会に恩恵をもたらすさまをこの目で見ることができ、仕事にとてもやり甲斐を感じています。故郷を離れ、出張続きで、 ホームシックになりませんか?クリスティンいいえ。旅行が大好きなんです。今までに59か国を訪ねました 。世界中に友だちがいます。私は就職して以来、国際青年原子力会議(IYNC)のメンバーで、IYNCには、50か国に10万人以上の若い専門家や学生のネットワークがありますからね。IYNC会長としてのリーダーシップそのIYNCで、クリスティンさんは現在、会長を務めておられます。リーダーとしてのお考えを聞かせてください。クリスティン私は、若い世代が意思決定プロセスに参加することが重要だと考えています。そこで昨年、原子力の応用分野、原子力発電分野、保障措置の3分野で若手の技術的なスキルやリーダーシップを磨くグローバルなパイプラインを開発する「Leaders for Nuclear Program」を立ち上げました。IAEAなどの機関と協力して最初の15人のフェローを選考しているところです。また、日本も参加している「NICE Future Initiative」を通じて、ワーキンググループに初めて若者の声を取り入れることができました。意思決定プロセスへの参加が可能になれば、当事者意識を持つことができ、その結果、さまざまな環境問題の解決に向けた力を得たように感じられます。持続可能性や気候変動の問題は、私のいとこたちも含めて世界中の若者にとって最大の関心事です。そこで、IYNCでは、原子力分野以外の若い世代のグループともパートナーシップを構築しています。昨年は、気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)の青年組織であるYOUNGOと緊密に連携しました。若い世代というのは、何歳ぐらいの人たちですか?クリスティンYOUNGOのメンバーは35歳未満です。10代の高校生もいます。IYNCでは原子力のリスクについて透明性を持って対話する場を提供しています。その際、原子力だけに焦点を当てるのではなく、問題をより広い文脈に位置付けることにしました。たとえば、「クリーンエネルギーの安全保障への貢献」とか「エネルギー部門の廃棄物戦略」といった具合で、原子力もたくさんのテーマの中の一つのトピックです。こうすることで、誰もが自分の問題として関心を持って考えられるようになります。ですから、私にとってリーダーシップとは、メンバーに自信を持たせるエンパワーメント、そして、これまでとは違った議論の道筋を作ることであると言えます。放射性廃棄物をどうする?今のお話に出てきた廃棄物ですが、高レベル放射性廃棄物の処分については、最終処分地をどこに決めても、同世代間の地理的な不公平がありますし、将来世代に負担をもたらす難しい問題です。クリスティンさんのお考えをお聞かせください。クリスティンコミュニティと若者を意思決定に参加させることが重要だと思います。そうすれば、決定に対する当事者意識を持つことができるからです。カナダ原子力学会が放射性廃棄物を定量化した際に出した比喩によると、原子力だけですべてのエネルギー需要をまかなった場合、人の一生で発生する廃棄物は1本のソーダ缶ほどの量だそうです。それを再処理すると、廃棄物はその10分の1ほどになります。すべてのエネルギーには廃棄物があり、生分解性でない廃棄物も多いのです。比較のうえでの基準が得られる形で文脈化することがだいじだと思います。しかし、放射性廃棄物だけについて言えば、そもそも廃棄物なのか?という問題もあります。そのほとんどは再利用可能だからです。放射性廃棄物と言うと怖しいものに聞こえますが、そのままの形ではコスト効率が良くないので原子炉で使えないという意味だったのでしょう。しかし、そのほとんどは実際には廃棄物ではありません。再処理すれば利用可能なのです。いつか再処理するかもしれないと?クリスティン現在、多くの国では再処理を行っていませんが、回収可能な容器に使用済み燃料を保管しています。将来再処理する可能性があると考えているからです。そして、このことも原子力産業が他の産業とは異なる点だと思います。他の産業では、将来使えるかもしれないから保管するよりは、今使えないものは埋め立て地に捨ててしまう傾向があるからです。もちろん、原子力ではそんなことはできません。でも、少なくとも原子力業界では、将来使いたければ使えるような形で廃棄物を保管していると言えるでしょう。原子力の魅力とはクリスティンさんにとって、原子力の魅力とは何でしょう?クリスティンいろいろなことに活用できることです。原子力は医療にも応用できますし、食品の安全性を高め、水不足を解消するのにも役立ちます。放射性同位体を照射してがん治療薬の開発にも役立ちます。これほどさまざまな用途に使えるエネルギー源は他にありません。今までずっと原子力の仕事をしてこられたクリスティンさんの、モチベーションを支えているものは何でしょうか。クリスティン保障措置の仕事は、これほど多くの異なる分野に大きな影響を与える技術と専門家を、各国が共有することができる基盤を提供していると思います。そのことに本当に奮い立たせられます。海外派遣の任務でも査察活動でも、世界中の人々と交流する機会が多くあります。IAEA内でも、毎日のように世界中からたくさんの訪問者がやってきます。彼らの話を聞くと、原子力科学技術がいかにプラスの影響を与えているかがわかり、自分の仕事が影響力を持っていることを感じます。そして、より大きな公平性を提供するためにこの仕事を続けること、特に女性のために、教育の擁護者であることが非常に重要だと思います。電気へのアクセスがあることは、水くみや料理など、主に女性の仕事とされている骨の折れる作業の負担を軽減し、女性が学校に通い、勉強し、社会に貢献する機会を与えてくれるのです。現在、ジェンダー平等の達成までに約200年かかると言われていますが、それは労働力の半分を活用していないことを意味します。もし誰もが貢献する機会を得られたら、人類としてどれほど大きな可能性を秘めていることでしょう。ですから、私がIAEAで担っている役割や、IAEA全体が担っている役割は、そのような障壁を取り除き、教育や意思決定への参加をより身近なものにしていると思います。教育こそは人間の能力を伸ばし、あらゆる可能性の基礎になるものだと思うのです。それが私のモチベーションになっています。そして、さまざまな異なる文化の人々と一緒に働くと、自分と似たような環境で育った人だけと働くよりも、はるかに影響力と洞察力のあるアイデアが生まれると思うことがしばしばあります。互いの違いに焦点を当てるのではなくさまざまな人々とのコミュニケーションの中で、これまでに、異なる考えの人から反対の意見をぶつけられたといったご経験もありましたか?クリスティン数年前からCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)に参加しているのですが、最初に参加した頃は、原子力の団体は、原子力が唯一の解決策であると言わんばかりに原子力を強力に推進していました。しかし、いろいろ議論するうちに、私は、原子力が必要であるのと同等か、それ以上に、再生可能エネルギーも必要だと考えるようになりました。すると人々は、「待って。あなたは原子力が唯一の解決策だとは思っていないのですね?そして、私が重要だと思うことにも意味があると思っているのですね」と言ったのです。実際、私はそう思っているのです。こうして私が発見したのは、互いの違いに焦点を当てるのではなく、そもそもなぜこの議論をしているのかに焦点を当てるのがだいじだということです。私たちは、気候変動の影響を緩和したいわけで、そこにたどり着くための方法は違うかもしれませんが、目的は同じです。ですから、互いの考えの相乗効果を生み出すことで、人々は原子力科学技術のアイデアに対してオープンになると感じています。昨年のCOP28では、原子力科学技術がネットゼロへの移行に重要であることが初めて認識されました。そのうえで、IYNCが20か国以上から70名以上の代表団をCOPに送り、若い世代の声を届けたことを誇りに思います。 COPの場で誰もが原子力を好きになるわけではありません。しかし、私の目的は、人の心を変えることではなく、ただ、事実を伝え、十分な情報に基づいた判断をしてもらうことなのです。ある時、COPのIYNCのブースにドイツの人が来て、原子力の本当の問題は核拡散だと言いました。そこで私は、IAEAという機関があり、世界中の国々を訪ねて施設が悪用されていないことを確認していると説明しました。彼女が「ニュースで報道されているのはごく一部の国だけだから、IAEAが行くのはごく一部の国だけだと思う」と言ったので、私は「いいえ、ぜひIAEAの公式サイトを見てみてください」と言いました。数日後、彼女はブースに立ち寄り、「IAEAのウェブサイトを見た。もう原子力のことを心配していない」と言いました。だから、コミュニケーションの相手を尊重することが大切だと思います。闘争的になるのではなく、その人の考えや懸念を受け入れることです。相手の考えは、自分の考えと同様に、正当なのです。それは原子力に限らずあらゆる問題について言えることですね。クリスティンそうですね。互いを尊重し合えば、人々はあなたの言っていることにもっと心を開いてくれるものです。こうした当たり前の教訓を学ぶのに、原子力業界は少し遠回りしてしまったのかもしれません。
- 24 Jun 2024
- FEATURE
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核セキュリティ対策を巡る内外の動きが活発化
核セキュリティ対策の強化に向け昨今、国内外で注目すべき動きがみられている。5月20~24日に、IAEA主催の「核セキュリティに関するIAEA国際会議」(ICONS、ウィーン)が開催され、日本からは、政府代表として辻清人外務副大臣が初日の閣僚会合に出席。同会議は、2013年の初回開催以来、概ね4年ごとに行われており、今回、第4回会合での議論は、今夏のパリ五輪開催を前に、国際的関心が高いものとみられる。〈外務省発表資料は こちら〉核セキュリティとは、テロリストなどが魅力とする核兵器の盗取盗取された核物質を用いた核爆発装置の製造放射性物質の発散装置の製造原子力施設や放射性物質の輸送等に対する妨害破壊行為――といった脅威が現実のものとならないよう、とるべき措置を指しており、国内でもIAEAミッションによる提言などを踏まえ、所要の法整備が図られてきた。辻外務副大臣は、今回のICONS閣僚会合での代表演説の中で、「各国におけるエネルギー需要の増大や脱炭素の世界的潮流の中で、原子力発電への国際社会の関心が高まる中、原子力の平和的利用を進める各国は、非国家主体への核兵器や核物質の拡散リスクといった核セキュリティに対する認識を向上させ、最高水準の核セキュリティの確保に向け取り組んでいく必要がある」と強調。閣僚会合で発出された議長声明では、加盟各国による小型モジュール炉(SMR)への関心高揚、サイバー攻撃に関するリスク対応など、昨今の情勢にも留意し、引き続き核セキュリティ分野のコミュニケーション向上を図っていくことが盛り込まれた。議長声明では、IAEA核セキュリティ実演訓練センターの開所を歓迎した上で、加盟各国による能力構築の重要性も強調している。日本では、これまでも核セキュリティ分野の能力構築に向け、技術的な立場から貢献してきた。2024年3月末には、日本原子力研究開発機構の核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)による核物質防護実習フィールド(PPフィールド)がリニューアル。5月10日には、元ISCNセンター長で現在、原子力委員会委員を務める直井洋介氏出席のもと、新施設の開所式が行われた。PPフィールドは、核物質防護・核セキュリティに係る国内外の人材育成を支援すべく2012年度に整備された施設で、実際の脅威を模擬し侵入検知センサーや監視カメラなどの機能を体験型で実習する施設だ。セキュリティ確保上、報道関係者による取材も厳しく制限されている。PPフィールドはこのほど、12年に及ぶ使用による経年劣化から、建屋の更新を中心とした整備・拡充を実施。バーチャルリアリティ(VR)システムを更新したほか、新たな脅威に対応するトレーニングシステムの開発機能も備え、「ISCN実習フィールド」としてリニューアルされた。
- 06 Jun 2024
- NEWS
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放射線審議会 ICRP2007年勧告の国内法令取り入れで部会設置へ
放射線審議会は4月23日に総会を開き、航空機乗務員の被ばく管理ガイドラインの見直し、国際放射線防護委員会(ICRP)2007年勧告の国内法令への取り入れ方等について審議し、今後、部会を設置するなどして必要な検討を進めることを決めた。航空機乗務員の宇宙線被ばく管理に関するガイドラインは、年間5mSvを管理目標値として航空会社に自主管理を求めたもので、2006年に策定された。以来、約18年経過している。その間にICRPが、航空飛行時の宇宙放射線からの防護に関する刊行物「ICRP Pub.132」を、また国際原子力機関(IAEA)が職業上の放射線防護に関する刊行物「GSG-7」などを発刊し、航空機乗務員の被ばく管理に関していくつか新たな考え方が示されている。民間航空機の飛行ルートに関しても、ロシアによるウクライナ侵攻によって2022年以降、欧州線が北極付近への迂回ルートをとることが増え、ロシア上空を通過する従来ルートより被ばく線量が高めになっている可能性が指摘されている。総会では、こうした状況の変化を的確にフォローアップし、論点を整理した上でガイドラインの見直しを進めてはどうかとの事務局(原子力規制庁)案が提案され、了承された。出席した各委員からは、被ばく線量の最新の状況を確認することや現場での被ばく管理の状況を確認した上で、必要な見直しについて議論を進めるべき、といった意見が出され、論点の整理や部会設置案など今後の検討にむけた準備を進めることになった。またICRP2007年勧告の国内法令への取り入れに関しては、これまで同審議会で進められてきた議論を踏まえ、外部被ばくと内部被ばくに分けて2つの部会を設置し、本格的に検討を開始することになった。2007年勧告に準拠した公衆の内部被ばくに関する刊行物はまだ発刊されていないため、その刊行を待ち技術的な情報が揃ってから部会を設置するなどの案も事務局から示されたが、各委員の意見を踏まえて2つの部会を設置し、内部被ばくに関しては職業人に関する検討から始めることになった。部会の設置、検討開始は来年度になる見通し。ICRPの2007年勧告は1990年勧告以来、放射線防護体系の総論的な勧告となるもので、国内法令への取り入れは多くの時間と作業量を要し、社会経済への影響も大きいため、同審議会ではどのように取り入れるか、その影響はどうか、また海外の状況確認や具体的な検討に必要な事項の調査などを進めてきた。2020年1月の総会では検討の中間とりまとめが行われ、「外部被ばくと内部被ばくの線量係数、職業被ばくと公衆の被ばくの線量係数を同時に法令に取り入れることが適当」との考え方が示された。昨年7月に開催された前回の総会では、検討が必要な技術的な事項や海外の状況確認がなされ、部会の設置やスケジュール等の案を準備することが了承されていた。
- 24 Apr 2024
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G7外相会合 ALPS処理水の海洋放出をあらためて支持
G7(=先進7か国)外相会合が4月17日~19日の3日間、イタリアのカプリ島で開催された。中東やウクライナ、インド太平洋といった地域情勢や国際社会の喫緊の諸課題について討議し、最終日の19日、「グローバルな課題への対処及びパートナーシップの促進」に関するG7外相コミュニケが発出された。同コミュニケによると、G7外相会合では30もの多岐にわたるテーマで討議。うち、原子力をめぐる課題は、軍縮、核不拡散、北朝鮮問題のほか、気候変動、エネルギーセキュリティー、環境のテーマの中で討議されている。気候変動、エネルギーセキュリティー、環境のテーマでは、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5°Cに抑制し、2050年までに世界の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという目標達成のため、国際社会が団結して、エネルギーシステムにおける化石燃料からの移行を公正、秩序ある、持続可能な方法で実施し、低排出技術やゼロ排出技術の加速化に貢献する必要性を訴えた。なお、エネルギー安全保障上の潜在的なリスクに対処するため、エネルギー源やエネルギー供給を多様化する政策を確保しつつ、クリーンで、安全、持続可能かつ手頃な価格のエネルギーの開発と普及を迅速に進める必要があるとしている。そのためG7諸国が達成に向けて具体的にコミットする戦略的分野として、バイオエネルギーなどの再生可能エネルギー、原子力エネルギー(先進的ならびに小型モジュール炉を含む)、エネルギー効率、メタン排出削減、産業の脱炭素化、水素エネルギー、炭素管理技術を掲げ、それらの重要な役割を認識すると表明している。軍縮、核不拡散のテーマでは、原子力安全、セキュリティ及び不拡散に関する最高水準の遵守を表明するとともに、国際原子力機関(IAEA)による国際的な不拡散体制の維持、原子力安全、セキュリティ及び保障措置の強化と、原子力技術の平和的利用の促進という、極めて重要な役割を強調した。また、ロシアのウクライナ侵略をうけて、ロシアからの民生用原子力及び関連製品への依存を更に低減するための措置を評価し、供給を多様化しようとする国々を支援するとのG7首脳のコミットメントにも言及。さらに、福島第一原子力発電所のALPS処理水に関し、「日本は海洋放出を責任をもって管理しており、科学者、パートナー及びIAEAと積極的に調整しながら、安全で透明性のある科学に基づくプロセスを実施していることを支持する」と表明した。G7外相会合では、ウクライナ情勢をめぐる討議も行われた。上川外務大臣は、「『きょうのウクライナはあすの東アジアかもしれない』という問題意識で取り組んでおり、ウクライナとともにあるという日本の立場は揺るがない」と述べ、ロシアに対する厳しい制裁とウクライナへの支援を継続していく方針を強調。最終日には、「ウクライナへの確固たる支援」に関するG7外相コミュニケが発出された。同コミュニケでは、より広範な国際社会への影響を伴う原子力安全、セキュリティに深刻なリスクをもたらすロシアによるウクライナのザポリージャ原子力発電所の占拠、継続的支配及び軍事化を非難、IAEA専門家の継続的な駐在と現場における原子力安全、セキュリティの確保など、IAEAのリスク軽減に向けた取り組みを支持する文言が盛り込まれた。
- 23 Apr 2024
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柏崎刈羽の核物質防護 IAEA専門家ミッションが終了
東京電力柏崎刈羽原子力発電所で3月25日より実施されていた、国際原子力機関(IAEA)による専門家ミッションの全日程が、4月2日に終了した。同ミッションは、IAEA主導のもと、国際的な専門家で構成されたチームが、加盟国内の事業者が有する原子力施設、その活動について、国際基準に照らして評価・助言を行うもの。柏崎刈羽原子力発電所では2023年12月27日、原子力規制委員会による「特定核燃料物質の移動を禁ずる是正措置命令」が、規制上の対応区分変更に伴い解除となった。今回、東京電力が受け入れたミッションは、核物質防護の国際専門家により、主にその設備面および運用面の改善に向けた同社の取組についてチェックを受け、継続的改善につなげていくのが目的。来日した5名の専門家らは期間中、ヒアリングや現場の視察を実施。最終日の4月2日、稲垣武之・柏崎刈羽原子力発電所長らとのミーティングに臨んだ。その中で、稲垣所長は、専門家ミッションによる助言に関し、「重要な意見として所員全員で受け止め、今後はこれらのアドバイスに基づきIAEAの国際基準に沿って、当社の核セキュリティを強化していく」と述べた。ミッションの一員であるテクニカルオフィサーのタパニ・ハック氏は、2018年に日本が受け入れた国際核物質防護諮問サービス(IPASS((IAEAが加盟各国の核セキュリティ強化のため勧告や助言を行うもので、日本では2015年に初めて受け入れられ、2018年にフォローアップミッションが行われた。)))を振り返り、「核物質防護システムの幾つかの分野で継続的な改善がなされていることを確認した」と評価。柏崎刈羽発電所において核物質防護事案が発生した2020年以前とも比較して、改善が進んでいると認められた形となる。今ミッションの最終報告書は数週間後に取りまとめられる見通し。
- 03 Apr 2024
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IAEAグロッシー事務局長来日 ALPS処理水に関し地元評議会に出席
福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水・処理水対策に係る資源エネルギー庁の評議会が3月13日、福島県いわき市で開催された。今回会合には、来日中のラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長も出席し、ALPS処理水の安全性レビューに関して説明し意見を交わした。同評議会は、県および立地市町村との意見交換の場として、随時行われているもの。ALPS処理水の海洋放出は2023年8月に開始。日本政府との覚書に基づき実施されているIAEA専門家による安全性レビューミッションが同年10月、海洋放出開始後、初めて行われ、2024年1月30日には、日本の取組について「妥当」とする報告書が公表されている。グロッシー事務局長の来日は昨夏以来。今回の評議会で同氏は、当時、日本政府に提出したALPS処理水の安全性に関し、IAEAが取りまとめた包括報告書についてあらためて言及。「IAEAは大変重要な意志決定を行った」と述べるとともに、「環境にマイナスの影響が及ばないようしっかりとプレゼンスを示していく」との強い姿勢を示した。これに立脚し、独立した評価を担保すべく、福島第一原子力発電所構内にIAEA職員を駐在させている意義を繰り返し強調。海洋放出の現状に関しては、「放出されているのはまだ5%未満に過ぎず、長い道のりの最初の段階にある」と述べ、引き続き「高い透明性、正確な技術を持ち、オープンに対話する」必要性を述べた。一方で、「近隣諸国からIAEAの活動自体に対する批判がある」と、政治的な懸念も示した上で、「皆様から色々なことを学んでいきたい」と、忌憚のない意見を求めた。グロッシー事務局長は、12日には齋藤健経済産業相との会談、東京大学での講演会などに臨んだ。13日には同評議会への出席後に福島第一原子力発電所を視察し14日には資源エネルギー庁・日本原子力産業協会主催の「原子力サプライチェーンシンポジウム」に出席する。
- 13 Mar 2024
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IAEAがレビューミッションの報告書 海洋放出後初
福島第一原子力発電所におけるALPS処理水に関し、海洋放出が始まってから初となるIAEA安全性レビューミッションの報告書が1月30日に公表され、日本の取組は「妥当」と評価された。〈資源エネルギー庁発表資料は こちら〉今回の安全性レビューミッションは、2023年10月24~27日に行われたもので、6回目となる。IAEAからは、リディ・エヴラール事務次長、グスタボ・カルーソ氏(原子力安全・核セキュリティ局調整官)ら、7名の職員が、この他、アルゼンチン、英国、カナダ、韓国、中国、フランス、ベトナム、マーシャル諸島、ロシアの国際専門家9名が来日。経済産業省、原子力規制委員会、外務省、東京電力との会合を通じ、海洋放出開始後のモニタリング状況、放出設備の状況などについて説明を受け、意見交換を行うとともに、現地調査を実施し、IAEA国際安全基準に基づき技術的事項を議論した。このほど公表された報告書は、技術的事項ごとに議論のポイントや所見の概要を記載したもので、「関連する国際安全基準の要求事項と合致しない如何なる点も確認されなかった。IAEAが2023年7月4日の包括的報告書で示した安全審査の根幹的な結論を再確認することができる」と、日本の取組を「妥当なもの」と評価。現地視察に基づき、機器・設備が国際安全基準に合致した方法で設置・運用されていることも確認したとしている。また、国際安全基準の要求事項とは別に、「すべてのモニタリングデータを単一のウェブサイトに集め、アクセスしやすい形式にすることが非常に有用」と、情報発信に関し指摘した。IAEAによる次回のレビューミッションは、今春に実施される予定。今回のIAEA報告書を受け、日本政府では、「引き続き、IAEAレビューを通じ国際的な安全基準に従った対策を講じ続け、安全確保に万全を期していく」としている。合わせて、IAEAは、ALPS処理水および海洋環境中の放射性核種分析に関する2つの報告書を公表しており、IAEAの研究所などによる「分析機関間比較」(ILC)を通じ、それぞれ、東京電力、日本の分析機関の分析能力の公正さが確認されている。
- 31 Jan 2024
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福島第一近傍の2022年海洋モニタリングでIAEAが報告書
福島第一原子力発電所近傍における海水・海底土や福島県の水産物の採取によるIAEAの海洋モニタリングに関する2022年報告書が12月12日までに公表された。〈発表資料は こちら〉日本政府の要請に基づき、わが国の海域モニタリングの信頼性、透明性を担保すべく、2014年から実施されている分析機関間比較調査で、IAEAが福島第一原子力発電所廃炉の進捗について、2013年度に取りまとめた報告書のフォローアップとなるもの。2022年は、11月7~14日に、モナコのIAEA海洋環境研究所(MEL)の専門家に加え、さらなる透明性向上の観点から、独立した第三国として韓国とフィンランドの分析機関も参加している。今回公表された報告書によると、採取した海水・海底土、福島県で水揚げした数種類の魚は、均質化した上で、日本の11機関、IAEA/MEL、第三国の分析機関に送付され分析。IAEAが集約・評価した。その結果、それぞれの試料中の放射性核種を比較し、大多数に有意な差がみられず高い信頼水準にあると結論付けた上、「日本の分析機関が、引き続き高い正確性と能力を有する」と、評価している。2022年からは、日本政府とIAEAとの覚書により実施されているALPS処理水安全性レビューの一環となる分析機関間比較調査も行われており、その結果については別途公表される予定。2023年も、10月16~23日、IAEA/MELに加え、IAEAから指名されたカナダ、中国、韓国の専門家も来日し、同調査が行われた。
- 12 Dec 2023
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IAEA/IRRSミッション受入 25年度下期に
原子力規制委員会は11月8日、IAEAによる総合規制評価サービス(IRRS)ミッションの2025年度下期頃の受入れに向け準備を進めることを決定した。〈規制委発表資料は こちら〉IRRSは、IAEAが加盟国の要請に基づき原子力利用の安全確保に向け実施しているレビューサービスの一つ。専門家で構成されるレビューチームにより、対象国の原子力規制に関し、その許認可・検査に係る法制度、関係組織も含む幅広い課題について、規制当局や被規制者へのインタビュー、原子力施設への訪問などを通じた総合的レビューを実施し助言・勧告を行う。IRRSミッションは、欧州諸国を中心に、毎年、数か国で受け入れられてきたが、近年では新興国での活動も顕著で、2022年には原子力発電所の建設が進むトルコ、バングラデシュでも受け入れている。日本におけるIRRSミッションは、2007年に旧原子力安全・保安院および旧原子力安全委員会が受け入れており、両者の役割の明確化などが助言・勧告された。福島第一原子力発電所事故後は、規制委員会が2016年に受け入れ。IRRSミッションによる勧告・提言に関し、同委は「IRRSにおいて明らかになった課題への対応方針」のもと、プロジェクトチームを設置し検討を行い、検査制度や放射線源規制の改善に向けた法整備などにつなげている。規制委員会による今回のIRRSミッション受入れは、山中伸介委員長が就任して1月後の2022年10月、今後の重点的活動方針の一つとして示された「国際機関による外部評価」を具体化するもの。同委では、今秋11月中を目途にIAEAに対する正式要請文書を発出。関係省庁とも調整しながら、2024年度冬以降、IAEAとの公式準備会合を行いスケジュールの詳細を詰めていく。なお、2023年に、IRRSミッションの受入れは、チェコ、オランダ、ベルギー、ポーランド、サウジアラビアで実施されたほか、ルーマニア、モロッコでも予定されている。
- 08 Nov 2023
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