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内閣府、IAEA総会でバーチャルサイドイベント「放射線がん治療の加速的な進歩」を開催
内閣府(原子力委員会)は9月22日(日本時間16:00~17:10)、量子科学技術研究開発機構と共催で、IAEA総会バーチャルサイドイベント「放射線がん治療の加速的な進歩」を開催する。オンライン配信によるプレゼンテーションを通じ、放射線や加速器を利用した先端がん治療技術の研究状況や、関連機器の開発状況の国際的共有を図るもの。内容は、IAEA健康医療部長のメイ・アブデル=ワーブ氏と量研機構病院長の辻比呂志氏による基調講演、放射線治療機器3メーカー(東芝エネルギーシステムズ、日立製作所、住友重機械工業)によるテクニカルプレゼンテーション「放射線治療技術開発の最前線」(ファシリテーター=野田耕司・量研機構理事)が予定されている。〈詳細は こちら〉2020年のIAEA総会は、9月21~25日にIAEA本部(ウィーン)で開催されるが、今回は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、展示会や政府主催のレセプションはすべて中止。サイドイベントは基本的にバーチャル形式での実施となる。また、多くの加盟国は、代表団を派遣せず、在オーストリア大使による出席など、基本現地対応とし、閣僚レベルの一般討論演説も録画したものを会場で放映する見通し。会議の模様はインターネットで中継されることとなっている。なお、今回のバーチャルサイドイベントは、原産協会が運営協力(Webex会議運営/英語サポート)を行う。イベントの参加登録は、こちら へ。
- 15 Sep 2020
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規制委、新検査制度運用開始で現地事務所長から意見聴取
原子力規制委員会は8月19日の定例会合で、2020年度より運用を開始した新たな検査制度の第1四半期(4~6月)実施状況について、原子力規制庁から報告を受けた。新検査制度は、2016年に受け入れたIAEA総合規制評価サービス(IRRS)による「さらなる実効性を確保すべき」などとする指摘から、事業者の活動全般を、いつでも、どこでも、広く確認・評価し(フリーアクセス)、その結果に応じた措置を講じていくよう従前制度への見直しが図られている。今回の報告によると、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策により、本庁の検査官が中心となる「チーム検査」は当初予定されていた18件中、実施は4件に留まった。 複雑な事象への対応は「事業者への刺激」となると強調する山賀氏(インターネット中継)また、事業者の日常的な安全活動を継続的に監視する「日常検査」に関しては、現地原子力規制事務所の所長として、柏崎刈羽の水野大氏(当時)、美浜の山賀悟氏、六ヶ所の服部弘美氏(当時)の3名が所感を述べた。その中で、水野氏は、「検査官の専門知識を活かし、原子力安全を包括した検査ができた」と、一定の評価を示す一方、検査対象の見極めに関し「空振り」よりも「見逃し」の心配をあげ、今後も事例の積み重ねや検査官の知識レベル向上などに努めていく必要性を強調。また、事業者の対応について、「フリーアクセスの実施にも非常に協力的だった」と、新検査制度への理解や考え方の変化を認めた上で、「納得いくものとなるには、まだまだ時間がかかる」などと、規制側・被規制側ともにさらなる継続的改善が図られるべきとした。山賀氏は、美浜3号機の海水ポンプ停止事象に関し事業者自らによる原因分析を深めさせたことに触れ、「スキルアップにつながった」との感触を受けたと評価。服部氏は、所管する核燃料サイクル施設の発電炉との違いに触れ、今後の効率的な検査の維持に向けて「検査官の育成・確保が重要な課題」と指摘した。
- 19 Aug 2020
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ハンガリー:パクシュII期工事で建設許可申請
ハンガリーの国家原子力庁(HAEA)は6月30日、国営MVMグループのパクシュII開発会社からパクシュ原子力発電所II期工事の建設許可申請書を受領したと発表した。この増設計画では、国内唯一の原子力発電設備であるパクシュ発電所の隣接区域に第3世代+(プラス)の先進的な120万kW級ロシア型PWR(VVER-1200)を2基建設することになっており、HAEAは翌7月1日から審査手続を開始。12か月後には最終的な判断を下すが、必要であればさらに3か月を審査に費やすとしている。一方、パクシュII開発会社では「建設前サイト準備許可」を取得できれば2021年初頭にも地盤の工事を開始できると予想。最短で同年9月に主要建屋の建設許可を取得し、本格的な建設工事を始められるとしている。パクシュ発電所I期にあたる4基はいずれも出力50万kWのVVER-440で、これらでハンガリーの総発電電力量の約半分を賄っている。また、これらの原子炉ではすでにVVERの公式運転期間である30年が満了したため、追加で20年間運転期間を延長する手続が完了した。II期工事で建設される5、6号機は最終的にI期の4基を代替することになっており、ハンガリー政府は2014年1月にこの増設計画をロシア政府の融資により実施すると発表。翌月に両国は、総工費の約8割に相当する最大100億ユーロ(約1兆2,000億円)の低金利融資について合意したほか、同年12月には双方の担当機関が両炉のエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約など、関連する3つの契約を締結した。しかし、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は2015年11月、これらの契約が公的調達に関するEU指令に準拠しているかという点、およびEU域内の競争法における国家補助規則との適合性について調査を開始。2017年3月までにそれぞれについて承認裁定が下されたものの、プロジェクトの実施は当初計画から少なくとも3年遅延している。HAEAは2014年に同計画についてサイト調査とその評価作業を実施する許可を発給したほか、2017年にはサイト許可を発給した。2つの事務棟や作業員100名分の食堂とキッチン、作業用建屋、資機材の貯蔵建屋など建設工事に必要な建屋の建設許可も発給済みで、パクシュII開発会社は昨年6月に建設工事の準備作業として、80以上のこれら付属施設の建設工事を開始している。今回、パクシュII開発会社が提出した建設許可申請書は28万3千ページに及んでおり、HAEAは審査を効率的に行うために専用の作業プログラムを開始した。複数の法規が関係することから、HAEAのスタッフ180名のうち半数以上がこの審査に関与することになる。HAEAはまた、外部専門家の意見を取り入れるため、年末に国際原子力機関(IAEA)の技術安全レビュー(TSR)調査団を招聘する計画。申請書の中心部分である予備安全解析書を独立の立場の国際的な専門家に評価してもらうことが目的であり、調査団はIAEAの安全基準に対するパクシュ5、6号機の適合性について報告書を作成。HAEAはこの報告書に基づいて最終判断を下すことになる。なお、建設許可申請書の提出後3か月が経過すれば、パクシュII開発会社は関連するその他の許可も申請することができる。今年行われた原子力安全条例の修正にともなうもので、建設サイトの土壌改良やベースマット部分の掘削といった特定のサイト準備活動、および原子炉圧力容器のような長納期品の製造に関する許可申請などがこれに相当するとしている。(参照資料:HAEA、パクシュⅡ開発会社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 Jul 2020
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IAEA理事会、イランに対し疑いのある2施設への査察求める決議を可決
国際原子力機関(IAEA)の理事会は6月19日、核不拡散条約(NPT)に基づく包括的保障措置協定と追加議定書の義務事項、およびIAEAが要請している事項への対応をこれ以上遅らせることなく、全面的に履行するようイランに求める決議を25対2で採択した。この決議は仏国、ドイツ、英国の3か国が提出していたもので、反対票はロシアと中国が投じた。未申告の核物質の保有と原子力活動が疑われる2施設へのIAEAの立ち入りについては特に、速やかに実現させることを要求している。イランの核開発疑惑を巡り、国連安全保障理事会の5か国とドイツおよび欧州連合(EU)は2015年7月、イランのウラン濃縮活動を大幅に制限する一方、そうした制限の実行をIAEAが確認し次第、国連安保理やEU、米国が課してきた制裁の解除を盛り込んだ「包括的共同行動計画(JCPOA)」をイランと締結した。しかし、米国のD.トランプ政権は2018年5月、JCPOAからの離脱とイランへの経済制裁再開を指示。イランもこれに対抗して、一年後にJCPOAで課された制限の一部を今後は順守しないと宣言している。主要当事国が撤退表明したことで、JCPOAは事実上、無効になったと見る向きもあるが、IAEAは今回の決議により、加盟各国が保障措置協定における義務事項を全面的に順守し、IAEAが要求する施設への立ち入りを促進することの重要性が強調されたと指摘。イランが保障措置協定を順守している点や、その原子力プログラムが純粋に平和利用目的である点を確証する際、IAEAが担う重要かつ他からの干渉を受けない独自の役割が明確に示されたと強調している。決議文のなかでIAEA理事会は、R.M.グロッシー事務局長が今年3月3日と6月5日に公表した報告書について言及した。これらの報告書は、保障措置協定と追加議定書に基づきイランの申告が正確で完全であることを解明するためIAEAが傾注した努力や、疑惑があるとしてIAEAがイラン国内で特定した2施設の査察問題について説明している。これらを踏まえた上で同理事会は、2施設への立ち入り容認も含め、これらの協定や議定書の義務事項を遂行するにあたり、イランは全面的かつタイムリーにIAEAと協力すべきだと進言。イランの核物質がすべて平和利用目的であるとの「拡大結論」にIAEAが到達するには、このような協力が不可欠であることを改めて確認したと述べた。また、追加議定書に基づく2施設への立ち入りをイランが拒否している点については、事務局長が報告書の中で示した深刻な懸念に理事会は賛同すると表明。IAEAは未申告の核物質と原子力活動の可能性についてイランとの協議にほぼ1年を費やしたが、これらはあまり進展していない。このため理事会は、イランに対してIAEAのリクエストに速やかに応えることを要請。これにはIAEAが特定した2施設への立ち入りを直ちに許可することが含まれるとしている。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 22 Jun 2020
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IAEA:「パンデミックで停止を強いられた原子力発電所は皆無」
国際原子力機関(IAEA)は6月11日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的拡大(パンデミック)に際し、世界各国の原子力産業界ではこれに対処する特別な措置が取られているため、発電所の労働力やサプライチェーン等への影響により停止を強いられた原子力発電所は、今のところ皆無であると発表した。これは、IAEAが運営するCOVID-19運転経験ネットワーク(OPEX)や「原子力施設事象報告システム(IRS)」を通じて、各国の原子力発電所運転員や規制当局から得られた情報に基づいている。IAEA原子力発電部のD.ハーン部長は「実施が計画されていた定期検査やメンテナンスの日程など、このパンデミックは様々な形で世界中の原子力発電所に影響を及ぼしているが、運転員と規制当局は引き続きこれらの発電所で安全・セキュリティの確保に努めている」とコメント。IAEAがOPEX等から受け取る情報は、パンデミックが原子力産業界に与える影響について重要な洞察力をもたらしているほか、運転員や規制当局が互いの経験を学びあう一助にもなっていると指摘した。発表によると、原子力発電所では日々の運転業務の継続やスタッフ間の感染リスク軽減で複数の方策が取られる一方、経済活動の制限にともない電力需要が低下したことから、いくつかの発電所では出力を下げて運転中。メンテナンスのための定期検査は日程の調整を余儀なくされており、検査期間の短縮や規制当局の許可を得た上で重要度の低い作業を延期する例も見受けられている。これと同様に、発電所スタッフの配置数の検討やスタッフ間で距離を置くことも実行されており、日々変化する前代未聞の状況に際して発電所運転員が柔軟な措置を取り万全に準備している点、トラブルに際しても迅速に健全な環境に復帰できるよう対応している点を強調した。パンデミックが世界経済と産業活動に及ぼしている広範な影響は、今後も継続して世界のサプライチェーンにとっての課題となると予想され、IAEAは例として原子力発電所の中・長期的パフォーマンスへの影響、新規の原子炉建設や大規模改修プロジェクトにおけるリードタイムの長期化を挙げた。また、新規建設プロジェクトの資金調達で不確実性が増し、入札プロセスに遅れが生じる可能性などを指摘した。さらに、スタッフ数をこれ以上削減した場合の緊急時対応計画、発電所スタッフあるいはその家族の感染時に取られる対応措置についてもIAEAは情報を与えられている。IAEA原子力施設安全部のG.リジェットコフスキー部長は、「今回のようなパンデミックは原子力発電所で安全運転を続ける際に障害となり得るので、発電所の安全性を事業や優先事と統合させる特別な措置を講じなければならない」と説明。そのような措置においては、先例のない状況のなかでも安全性で妥協しないことを目標としており、有資格のスタッフ数については特に、適切なレベルを確保しなければならないこと、必要であれば原子炉を停止して、安全な停止状態で維持することも辞さないことを挙げている。IAEAはこのほか、世界原子力発電事業者協会(WANO)や経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)などの国際機関とも調整し、パンデミック状況下の原子力発電やエネルギー市場動向のデータを分析比較。今回のような事態や将来同様のアウトブレイクが発生した場合でも、原子力発電事業を後押ししたいとしている。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Jun 2020
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IAEAが加盟国から2,200万ユーロの拠出受け新型コロナ対策支援
国際原子力機関(IAEA)のR.グロッシー事務局長は5月11日、加盟国から予算枠外で強力な資金提供を受けて、世界約120か国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の封じ込めで支援イニシアチブを実施すると発表した。この資金はこれまでに合計約2,200万ユーロ(約25億9,640万円)に達しており、IAEAは原子力から派生した検査技術「リアルタイム逆転写PCR(RT-PCR)」を世界中の数百もの研究所で使用可能になるよう支援。この手法は現在のところ、COVID-19を引き起こすウイルスの検出で最も正確かつ迅速だと言われている。COVID-19に対するIAEAのこのような取り組みは、人や動物の健康など原子力技術の平和利用促進に向けた技術協力プログラムに基づいて行われている。例えば食糧農業機関(FAO)との連携協力では、IAEAは過去10年間にエボラ出血熱やジカ熱のように動物から人へ感染、あるいは人畜共通の伝染病と闘う国々に対し、簡易検査方法などの支援を行っている。今回の提供資金は、まず米国から1,100万ドル(約11億8,600万円)、日本が約4億7,200万円、カナダが500万カナダドル(約3億8,600万円)、ノルウェーが200万ユーロ(約2億3,600万円)、ドイツとオランダ、およびロシアが各50万ユーロ(約5,900万円)、フィンランドが20万ユーロ(約2,360万円)などを約束。このほか、中国は200万ドル(約2億1,600万円)相当の現物支給支援を行うと表明している。グロッシー事務局長は、「加盟各国の迅速で惜しみない資金提供と、世界中で緊急時支援を行うIAEAへの信頼には心から感謝する」とコメント。IAEAはCOVID-19と闘う国々の重要なパートナーであると強調している。IAEAが対象国に提供するのは主に、リアルタイムRT-PCR検査を直ちに行うのに必要な検査パッケージで、RT-PCR装置や個人用防護具、試薬、実験用消耗品、診断キットなどが含まれる。また、技術的な知見やガイダンスを提供するとともに、ヘルスケアの専門家を世界中で育成するためにオンライン・セミナーも開催。IAEAに支援要請する国の数は2か月前の10か国から119か国に増加しており、グロッシー事務局長は「危機に瀕し助けを求める人々をIAEAは見捨ててこなかったし、これからも見捨てることはない」と断言した。IAEAはこれまでに、約20台のRT-PCR装置を各国の医療現場に供給。ボスニア・ヘルツェゴビナやブルキナファソ、イラン、ラトビア、レバノン、マレーシア、ペルー、セネガル、タイ、トーゴはこのような装置を受け取る最初の国になる。これ以外の数多くの国々でも、数日後から数週間以内に同様のパッケージが到着する予定だとしている。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 21 May 2020
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IAEAが主催する「SMR規制者フォーラム」、SMRの安全性問題で新たな提言を発表
国際原子力機関(IAEA)は4月22日、同機関が2015年3月から主催している「小型モジュール炉(SMR)規制者フォーラム」が先月下旬の会合で、SMRの安全性に関する新しい提言を出したと発表した。同フォーラムによると、SMR開発では設計それぞれの新たな技術領域に関わる安全性問題で、柔軟な規制の枠組みが必要である。SMRに採用されているモジュール方式やコンパクト設計が発電所の安全性に影響を及ぼすかもしれないとしたほか、SMRの設計から建設、起動、運転、廃止措置まで、ライフサイクル全般の許認可の枠組みにも新たな課題をもたらすと指摘している。このフォーラムには、米国、英国、カナダ、仏国、中国、韓国、ロシア、フィンランド、サウジアラビアの原子力規制当局が参加し、出力30万kW以下の様々な新しいSMR設計を規制する際に課題となる点を協議。規制関係の知識や経験を共有するとともに、共通する安全性問題について解決策を特定・提案することなどを目的としている。IAEAによると、数多くの加盟国政府が温室効果ガスの排出量を最小化しつつ、多量の電気を使って経済の活性化を目指しており、SMRを含む先進的な原子炉設計はそうした目的の達成に重要な役割を担うことが期待される。しかし、SMRを設計・開発するための新たなアプローチは、既存の原子力規制の枠組みにこれまでとは違った観点の課題を突き付けることになった。IAEAが設定した原子力発電所の安全基準は、放射線の有害な影響から人々や環境を守る包括的規範として機能し、SMRにもほとんどの場合は適用可能。しかし、「SMR規制者フォーラム」の専門家は新しい概念の原子炉であるSMRに最適の規制を開発し、各国規制当局の一助とする考えである。同フォーラムはまた、SMRの許認可プロセスにおける課題や作業手続の現状について理解を深める方針。IAEA原子力安全・セキュリティ局のG. リジェットコフスキー原子力施設安全部部長は、「現時点でSMRに特化した安全基準を策定する計画はないが、特定の技術にこだわらない総体的な安全性の枠組みを設定する際、SMR関係の洞察を利用する」と説明した。そうした枠組みを新しい設計に適用するほか、IAEAの安全基準を活用して各国の様々なアプローチを調和させるのに役立てたいとしている。今回の提言のうち、SMRのモジュール方式に起因する安全性への影響について、同フォーラムはまず、複数のモジュールを接続することで電力供給などのサービス利用率や信頼性が向上する利点があると述べた。一方、複数ユニットで構成する既存の原子力発電所の運転経験から、安全面で明確な配慮を必要とする可能性が示されたと指摘。具体的には、福島第一原子力発電所で複数ユニットが関わった事故の教訓を挙げており、複数のシステムを共有することで設備同士が依存しあうなど、設計に脆弱性リスクがもたらされるかもしれないとした。また、SMRのコンパクト設計に起因する安全性問題に関しては、まずSMRを工場で製造しトラックで設置場所まで輸送するため、そのような設計になっていると説明。しかし、SMRで運転やメンテナンス、点検等を実施するとなると、SMRのコンパクト設計にはライフサイクル全般にわたって根本から考えなければならない点があると指摘。一例として、SMRの品質チェックのために機器の溶接部で点検や非破壊検査をどこでどのように行うかなどを検討課題として挙げている。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 24 Apr 2020
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福島第一処理水でIAEAがレビュー報告書、エネ庁委員会の検討結果を評価
福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関し、資源エネルギー庁の小委員会が2月に取りまとめた報告書に対するIAEAによるレビュー報告書が4月2日に公表された。IAEA主催の核セキュリティ国際会議(2月10~14日)に日本政府代表で出席した外務省の若宮健嗣副大臣が、ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長に小委員会報告書を手渡した後、レビューが行われていた。一方、IAEAでは、2018年11月に福島第一原子力発電所の廃炉に関する第4回調査団を日本に派遣し助言を行っており、今回のIAEAによるレビュー報告書は、そのフォローアップとして位置付けられている。福島第一原子力発電所では、原子炉建屋内の燃料デブリ冷却のため継続的に発生する汚染水を多核種除去設備(ALPS)により浄化処理しているが、取り除くことのできないトリチウムを含んだ処理水の取扱いが課題となっており、資源エネルギー庁の小委員会で議論が行われてきた。技術的な検討も踏まえ、同委が2月に取りまとめた報告書では、「実績があり現実的な方法」として海洋放出と水蒸気放出をあげ、いずれによっても「放射線の影響は自然被ばくと比較して十分に小さい」と評価。また、処理水の処分に際しては、これまでの事例を踏まえ「風評被害対策を拡充・強化すべき」としている。今回のIAEAのレビュー報告書では、小委員会による議論について「科学的・技術的根拠に基づいている」とした上で、管理された状況下での水蒸気放出と海洋放出は「技術的に実施可能」と評価。また、処理水の処分実施に関し、「数十年に及ぶと予測される類をみない複雑な事案」と述べ、安全性のレビュー、規制機関の監督、モニタリングプログラム、すべてのステークホルダーの適切な関与が必要などと指摘し、日本政府が処分方法を決定した際にもIAEAとして支援を図る姿勢が示されている。福島第一原子力発電所で発生する処理水を保管するタンクは2022年夏頃に満杯となる見通しで、IAEAのレビュー報告書でも「処分方針に関する決定は、すべてのステークホルダーの関与を得ながら喫緊になされる必要」と指摘。資源エネルギー庁では、今後政府として処理水の取扱い方針を決定するため、4月6日の福島市内開催を皮切りに「関係者のご意見を伺う場」を予定している。
- 03 Apr 2020
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IAEA、コロナウイルスによる感染拡大時の緊急時支援演習を実施
国際原子力機関(IAEA)は3月30日、新型コロナウイルスによる感染の拡大時に取られる支援方策として「国際緊急時対応演習(ConvEx)」を同月24日から26日まで実施したと発表した。ConvExの中で、支援の要請と提供の仕組みを試験する演習「ConvEx-2b」に35のIAEA加盟国と世界気象機関(WMO)の2つの地区特別気象センター(RSMC)が参加。コロナウイルス感染の世界的流行(パンデミック)にともない原子力事故または放射線緊急事態が発生したことを想定し、IAEAの「事故・緊急事態対応センター(IEC)」が中心となってウィーンから遠隔操作で支援方策を行った。IAEAは「この種の緊急事態対応で準備し過ぎるということはない。だからこそ、その演習シナリオには発生確率は低くてもリスクが高く、能力を試されるような事象が含まれるべきなのだ」と指摘した。IAEAのR.M.グロッシー事務局長も、「自然災害やパンデミック、その他の危機にともなう事象から、原子力事故や放射線緊急事態が発生する可能性に備えなくてはならない」と強調した。「コロナウイルスにより、我々の生活すべてが深刻な混乱に陥っている時期に今回の演習を行ったことで、緊急時の対応能力を絶えず維持するというIAEAの強い決意が示された」と指摘。如何なる事由や危機的状況の下におかれても、IAEAは効果的な国際対応を調整するため迅速に行動するとしている。ConvExの実施は、チェルノブイリ事故を契機に1986年のIAEA総会で採択された2つの条約「原子力事故早期通報条約」と「原子力事故援助条約」に基づいている。「ConvEx-2b」では、支援要請する発災国の役割を演じる国とそれを提供する役割の国それぞれが、関係活動と情報交換の効率性と有効性を試されことになっており、IECのE.ブグロバ・センター長は「世界中で同時発生する様々な危機への対応で、迅速かつ効率的な支援を加盟国に提供することは戦略的に重要な要件になる」とした。今回の演習では、IAEAの17加盟国が発災国役を演じる一方、18加盟国と2つのRSMCが支援提供国役を務め、パンデミック対応の安全・セキュリティ対策に集中的に取り組んだ。発災国役が仮想の緊急事態に必要な支援をIAEAに要請した後、IECは支援提供国役の所管官庁に指定されている機関および関係する国際機関に要請内容を伝達。これにより、発災国に対してどのように支援提供していくか決定する手続きが発動され、IECは発災国役と支援提供国役双方と協議した上で「支援行動計画」を作成、これには双方の役割と責任、および両者間で合意・調印した活動内容が記された。また、このような環境下での初期対応は非常に困難との認識から、発災国役は支援提供国役が派遣する現地支援チームに対して追加で予防的な防護プランを提示。また、IECの「支援行動計画」には、現地支援チームの到着と同時にウイルス検査を実施することや、個人用防護装備の提供等が盛り込まれたとしている。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 02 Apr 2020
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IAEA、様々なSMRの経済性評価で3年計画の協働研究 開始
国際原子力機関(IAEA)は3月25日、超小型炉を含む小型モジュール炉(SMR)の経済性評価に特化した3年計画の協働研究プロジェクト(CRP)を開始すると発表した。現在世界中で開発されている様々なコンセプトのSMR(約50設計)を実際に建設する際、必要となる経済性評価の枠組みや背景情報を加盟各国に提供することが目的。参加希望者は4月30日までに、研究契約や協定書の案をIAEAの研究契約管理部に提出するよう義務付けられている。IAEAが定義するSMRはモジュール毎の電気出力が最大30万kWであり、一部のものは予め製造したシステムや機器類を工場で組み立てるなどして建設コストや工期を削減。その安全性や設置方法、利用分野などで様々な設計が存在し、近年これらへの関心は急速に高まっている。また、新しい世代の原子炉は従来の100万kW級原子炉と比べて設計がコンパクトであり、1,000kW規模の超小型炉ならトラックや鉄道、船舶、航空機で容易に輸送することが可能。送電網の規模が小さい地域や遠隔地域にも信頼性の高い熱電供給を実現できるほか、出力が変化しやすい再生可能エネルギーや様々なエネルギー貯蔵システムに対応する進化型の送電網に、発電設備系統連系(アンシラリー)サービスを提供することも可能だとした。IAEAの認識では、現在開発中のSMR技術の成熟度はそれぞれ異なっており、建設に際してコストや納期を適切に評価・分析し、合理化する必要がある。市場のニーズに応えるにはSMR用のビジネスモデルを構築しなければならず、市場そのものについても、機器の需要や産業支援サービスが維持されるような規模の大きさが求められる。SMRの開発と建設にともなう経済面の効果を数値化し、社会的支援が得られるよう伝えていく必要があるとした。このためIAEAは今回のCRPで、①採用されている技術の成熟度の違い、②採用技術の詳細、③各設計コンセプトの潜在的なユーザー、および付随するリスク特性と収益への道筋――に集中的に取り組む方針。CRP参加者は以下の分野の調査を通じて、SMR開発プロジェクトの経済的評価に資する系統的アプローチを共同で開発することになる。調査分野とはすなわち、SMRの市場、SMRと非原子力による代替選択肢間の競争力分析、価値の高いプロジェクトの提案とその戦略的位置づけ、プロジェクト全体の企画経費予測と分析、プロジェクトの構成とリスク配分および財政評価額、経営計画とビジネス事例の実証、経済的な費用便益の分析-—など。評価の枠組みが完成した後は特に、SMRの量産に関する経済性評価に適用される予定で、既存の工場で量産する際の条件設定や、サプライ・チェーンを現地化する機会や影響の評価に使われる。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月26日付け「ワールド・ニュークリ ア・ニュース(WNN)」)
- 30 Mar 2020
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福島第一、1号機原子炉格納容器内部調査に向けアクセスルートの構築が進む
東京電力は2月27日、福島第一原子力発電所廃炉の進捗状況を発表した。燃料デブリ取り出しに向けては、1号機原子炉格納容器内部調査のためのアクセスルート構築作業で、2月12日に所員用エアロック「X-2ペネ」の内扉に1か所目の孔(直径約0.2m)の切削が完了した。内扉には3か所の孔を施工する予定で、早ければ3月上旬頃から続く2か所目の孔の切削に入る見通し。同機の原子炉格納容器内部調査については、2017年3月に自走式調査装置(形状変化型ロボット)を投入し、ペデスタル(原子炉圧力容器下部)外の画像取得・線量測定を行い堆積物が確認されている。アクセスルートを構築後、原子炉格納容器内に潜水機能付きのボート型アクセス装置を導入し、堆積物の形状・厚さ・燃料成分含有状況の確認、少量サンプリングなどを行う。3号機の使用済み燃料プールからの燃料取り出しについては、2月26日時点で566体中84体の取り出しが完了。昨夏に着手した1/2号機排気筒の解体工事は、23ブロックに分けて解体する計画となっており、2月1日に11ブロック目までが完了した。5月上旬の解体完了を目指す。東京電力では、プロジェクトマネジメント機能や安全・品質面のさらなる強化を目指し、4月に福島第一原子力発電所に関わる組織改編を実施することとしている。組織改編に伴い東京から現地へ70~90名の要員シフトが計画されており、福島第一廃炉推進カンパニーの小野明プレジデントは2月27日の記者会見で、これまでに発生したトラブルを振り返り、「作業は現場で行われる。東京ではなく現場でものを考える必要がある」と強調した。なお、来日中のラファエロ・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は、26日に福島第一原子力発電所を視察した。同氏は、来日に先立ち、IAEA主催の核セキュリティ国際会議(2月10~14日、ウィーン)の際、政府代表として出席した若宮健嗣外務副大臣より、発電所の処理水に関する資源エネルギー庁小委員会の報告書を受け取っており、27日の梶山弘志経済産業相との会談で、IAEAとして同報告書のレビューを行っていることを述べた。
- 28 Feb 2020
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原子力委、グロッシーIAEA事務局長を招き意見交換
原子力委員会は、2月25日の定例会議で、来日中のラファエロ・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長を招き意見交換を行った。会議には、日本の原子力関連機関を代表し、日本原子力研究開発機構の児玉敏雄理事長、量子科学技術開発研究機構の平野俊夫理事長、原産協会の高橋明男理事長も同席し、各々の活動について紹介した。冒頭、竹本直一内閣府科学技術政策担当大臣が挨拶に立ち、福島第一原子力発電所の廃炉に関するレビューミッション派遣など、IAEAによる日本への広範な支援に対し感謝の意を表明。また、昨秋のIAEA総会に日本政府代表として出席したことを振り返り、今回、グロッシー事務局長来日の機に設けられた意見交換の場を「歓迎すべきこと」と強調するとともに、引き続きIAEAとの緊密な協力のもと、原子力の平和的利用促進や核不拡散体制の強化に取り組んでいく考えを示した。1985年にアルゼンチン外務省に入省後、外交・国際機関の職務を歴任してきたグロッシー事務局長は、「35年間で何度も日本を訪れた」としている。今回、2019年12月のIAEA事務局長就任後、初の来日に際し、同氏は2019年7月に逝去した前任の天野之弥事務局長の功績に「10年間にもわたりリードしてきた」と敬意を表明。日本の原子力に関しては、福島第一原子力発電所の廃炉など、「独自の問題も抱えている」としながら、発電以外でも医学利用を始めとする幅広い原子力科学技術分野で「リーダーシップを発揮できる」と、期待感を示した。さらに、気候変動問題の解決に資する原子力発電の役割を改めて述べ、中国・インドの他、中東・アフリカ地域など、原子力導入を進めている国、一方で原子力から撤退し始めている国もあるとした上で、「どのような国も除外せず共に歩んでいく」と、IAEAとして支援を惜しまぬ考えを強調。この他、途上国の医療支援や食糧・水資源確保などにつながる放射線・放射性同位元素利用開発の重要性を述べる一方、国際機関であるが故の予算面の制約にも触れ、「民間からも様々な形で協力してもらえれば」と、今後の日本によるさらなる支援に期待を寄せた。これに対し、佐野利男委員は、原子力分野における女性の活躍、ジェンダーバランスに関するIAEAの取組について質問。グロッシー事務局長は、近くIAEAとしてキュリー夫人の功績に因んだ新たなフェローシップを立ち上げ、女性研究者の経済的支援を図る考えを明らかにした。また、中西友子委員が放射線利用を啓発するための戦略について尋ねると、グロッシー事務局長は、「一般の人たちも含め、より多くのコミュニケーション・チャンネルを持たねばならない」などと応えた。意見交換に臨む原子力機構・児玉理事長、量研機構・平野理事長、原産協会・高橋理事長(左から)原産協会の高橋理事長は、IAEA総会で併催される展示会への日本ブース出展や、IAEAとの協力で開催する原子力エネルギーマネジメントスクールなど、人材育成の取組を紹介した。グロッシー事務局長は、28日までの日本滞在中、関係閣僚らとの会談を行うほか、26日には福島第一原子力発電所を視察する予定。
- 25 Feb 2020
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原子力安全の若手リーダーを育成する「IAEA国際スクール」が初の日本開催、東海大共催
IAEAが主催し東海大学が共催する「IAEA国際スクール 原子力・放射線安全リーダーシップ」が2月17日に開講した。これは、IAEAが2017年より実施している研修コースで、国際感覚に秀でた原子力・放射線安全の若手リーダーの育成を目的としており、今回、初めての日本開催となった。IAEA標準に基づき、原子力・放射線利用に関わる各国の若手・中堅の研究者、技術者、行政官らを対象に、ケーススタディやゲーム形式の演習など、ロールプレイ体験を通じて安全最優先の意識を養うもので、これまでの参加者から高い評価を得ている。カリキュラムは28日までの2週間にわたり、日本、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、バングラデシュ、モロッコから集まった29名の参加者は、東海大学湘南キャンパス(神奈川県平塚市)で講義、演習に取り組むほか、25日には福島へ移動し、福島第一原子力発電所や日本原子力研究開発機構の楢葉遠隔技術開発センターなどを見学する。カリキュラムを説明するIAEAのマリック氏東海大学校友会館(東京都千代田区)で行われた開講式で、主催者を代表し挨拶に立ったIAEAプログラム戦略コーディネーション課長のマリック・シャヒード氏は、参加者らに対し、歓迎の意を述べるとともに、「学ぶだけでなく、ネットワーク作りの機会でもある」と、同国際スクールの人脈形成の場としての意義も強調。来賓として訪れた文部科学省研究開発局原子力課長の清浦隆氏は挨拶の中で、福島第一原子力発電所の廃炉や研究炉の新規制基準対応などを例に、日本の原子力分野の人材確保が危機的状況にあることを訴えた。また、原産協会理事長の高橋明男氏は、産官学連携の「原子力人材育成ネットワーク」による海外人材育成の取組に触れた上で、各国の参加者らに「是非実りある時間を過ごして欲しい」と、同国際スクールを通じスキルアップが図られることを期待した。東海大学では、これまでも原子力分野の人材育成に力を入れており、開講式でスピーチを行った副学長の吉川直人氏は、経済産業省と文部科学省の共同事業「原子力発電分野の高度人財育成プログラム」(GIANTプログラム、2008~12年)や、国際原子力開発(JINED)との協力で実施したベトナムの発電所幹部候補生を対象とする人材育成プログラム(2012~18年)などを紹介した。
- 17 Feb 2020
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IAEAのグロッシー新事務局長、IAEA業務の再調整で抱負を表明
国際原子力機関(IAEA)で昨年12月、故天野事務局長の後任に就任したばかりのR.M.グロッシー事務局長は2月5日、米ワシントンDCで開催されたカーネギー国際平和財団のイベントで講演し、「原子力の安全・セキュリティからガン治療、IAEA内での男女比平等化に至るまで、幅広い分野に特別な注意を払いIAEA業務の再調整を図りたい」との抱負を述べた。同事務局長は「福島第一原子力発電所の事故後も数多くの国が原子力発電を拡大、あるいは自国のエネルギー・ミックスへの導入に関心を抱いており、地球温暖化防止策として果たす役割も注目されている」と説明。拡大国として中国やインド、ロシアを、新規導入国としては初号機を建設中のベラルーシ、アラブ首長国連邦(UAE)の例を挙げ、原子力専門家や外交官、ジャーナリスト等の聴衆を前に「原子力発電事業は確実に成長している」との認識を強調した。IAEA予算の最大拠出国である米国への公式訪問は、同事務局長が昨年12月にエジプトおよび国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP25)の開催国スペインを訪問したのに続くもの。前日の4日にはM.ポンペオ国務長官やR.オブライエン(国家安全保障担当)大統領補佐官を含む複数の米国政府高官と協議し、世界の平和と発展に向けたIAEAの使命遂行に対し引き続き強力な支援が約束されたとした。また、米原子力規制委員会(NRC)のK.スビニッキ委員長とも会談の場を設けたとしている。今回の講演のなかでグロッシー事務局長は、原子力エネルギーとその他の分野における原子力技術の利用が拡大した結果、世界では部分的に核物質の使用量が継続して増大していると指摘。これにより、安全・セキュリティ面の国際協調を強化する必要性が高まりつつあると述べた。同事務局長は「セキュリティ上の注意を払わずに、原子力ビジネスを行うことは出来ない」とした上で、IAEAはこの分野でさらに思い切った努力を払う必要があると明言。原子力テロの防止対策に向けた国際協力でIAEAが果たす重要な役割を強調するとともに、IAEAが翌週の10日から14日までウィーンに閣僚級の出席者50名以上を招き、核セキュリティ国際会議(ICONS)を開催予定であることを明らかにした。また、IAEAのその他の活動分野に関して事務局長は、「171加盟国の多くが、ガン治療や水質管理、食糧安全保障などの面でIAEAから恩恵を受けている」とした。この関係で、アフリカ大陸における28か国以上の人々が、未だに放射線によるガン治療を受けられないことは「恥ずべきこと」だと指摘。IAEAがこの部分でやれることは、まだまだ沢山あるとの認識を示している。 (参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月6日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 07 Feb 2020
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規制委が原電と意見交換、村松社長「パイオニア精神」を強調
原子力規制委員会は1月29日の臨時会合で、日本原子力発電の村松衛社長らと意見交換を行った。同委が事業者の経営トップを順次招き実施しているもの。村松社長は、「安全に対するモチベーション向上は当社の重要な経営課題」として、安全文化の育成に向けたレベルアップ活動など、自主的安全性向上の取組の強化について説明。その中で、「現場力の維持・向上」に関して、約9年間のプラント停止により、運転の経験者が減少・高齢化してきたほか、保修部門についても、福島第一原子力発電所事故後3年間の新卒採用中断を受け、若手とベテラン社員とがペアを組む教育訓練「現場ブラザーシスター制度」で年齢ギャップが生じていることをあげ、技術伝承の困難さを示唆した。2018年12月に東海第二発電所で発生した作業員の感電死亡事故を踏まえた対策としては、中堅社員による若手工事監理員への指導や協力会社とのコミュニケーション推進などを通じ、再発防止の徹底を図っているとした。東海第二発電所は2018年11月にBWRでは初めて運転期間の20年間延長が認可されており、村松社長は、委員との質疑応答の中で、国内初の商業炉である東海発電所(GCR:ガス冷却炉)の廃止措置とともに、「パイオニア精神を発揮していく」との姿勢を改めて示した。東海第二発電所については、2022年12月の完了を目指し安全性向上対策工事が進められている。また、村松社長は、原電の取組として、米国のエナジーソリューションズ社やエクセロン社との交流を通じたプラントの経年劣化や廃止措置、小型モジュール炉(SMR)開発に関する知見取得など、海外事業者との連携について紹介。「新しいものに関心を持つことは、若手のモチベーションにつながる」と強調した。これに対し、更田豊志委員長は、IAEAからSMRに関する規制の枠組への参加を求められたことを述べ、北米におけるSMR開発の進展状況などを尋ねた。この他、地震・津波に関する審査担当の石渡明委員が昨秋の大型台風を踏まえた気象災害への備えを、バックエンド担当の田中知委員はGCRの炉解体に関する英国の知見活用を指摘した。
- 30 Jan 2020
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高レベル放射性廃棄物処分で国際ラウンドテーブルが2月開催、連携強化に向け基本戦略策定へ
経済産業省は1月27日、高レベル放射性廃棄物問題に関する国際連携強化に向けた「最終処分国際ラウンドテーブル」の第2回会合を、2月7日にOECDパリ本部で開催すると発表した。「最終処分国際ラウンドテーブル」は、2019年6月の「G20エネルギー・環境大臣会合」(軽井沢)で合意された世界の主要な原子力利用国の政府が参加する枠組で、10月に行われた第1回会合には、ベルギー、カナダ、中国、フィンランド、フランス、ドイツ、日本、韓国、オランダ、ロシア、スペイン、スウェーデン、英国、米国、OECD/NEA、IAEAが参加した。同会合では、共通課題である最終処分の実現に向けて、各国が重視する考え方や協力を強化すべき分野について議論。これまでの最終処分に関する国際連携は、技術面を中心に専門家レベルで実施されてきたことから、国家戦略レベルで議論する同ラウンドテーブルは意義があるものと歓迎された上で、国民理解活動の知見・経験・教訓を学び合う重要性や、研究開発に関する協力として海外専門家によるレビューや地下研究施設の活用などについて意見が交わされた。第2回会合は初回に続き日本と米国が共同議長を務める。2回の会合での議論を踏まえ、最終処分に関する政府間の連携強化に向けた基本戦略やベストプラクティスなどを盛り込んだ最終報告書の取りまとめとなる運び。
- 27 Jan 2020
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IAEA「総合規制評価サービス」日程終了、規制委に産業界とのコミュニケーションを指摘
日本の原子力規制に関する制度や組織について評価を行うため来日していたIAEAの専門家チーム「総合規制評価サービス」(IRRS)のミッションが1月21日、8日間の日程を終え、チームリーダーのラムジー・ジャマール氏(カナダ原子力安全委員会上席副長官)は、原子力規制委員会の更田豊志委員長とともに合同記者会見を行った。今回のIRRSミッションは、2016年1月に来日したミッションで指摘された勧告・提言への対応状況についてレビューを行う「フォローアップミッション」と位置付けられるもの。IAEAのガイドラインでは、本ミッションの2~4年後が実施の目安とされている。前回のミッションで、2つの良好事例とともに、13の勧告と13の提言が示されたのを受け、規制委員会では、明らかとなった課題について対応方針を取りまとめ、検査制度の見直しや放射線源規制の強化に関わる法整備などに取り組んできた。会見で、ジャマール氏は「日本は相当な改善を成し遂げている」と、更田委員長は「大変活発な議論が行われた」と、それぞれ所感を述べた。検査制度に関して、規制委員会では、前回ミッションでの指摘を受け、検査官の施設へのアクセス権限を確保した制度設計や、能力向上のため、米国原子力規制委員会への派遣や教育訓練課程の開設などを図ってきた。2020年度からの新検査制度の本格運用開始に向けて、ジャマール氏は「検査官がしっかり訓練を受けていることを確認した」と評価。一方で、「規制組織の独立性を損なうことがあってはならないが、産業界とのコミュニケーションは原子力安全に資する」とも述べ、カナダの事例にも言及しながら、規制組織が産業界による技術的革新や改善活動などを知る重要性を繰り返し強調した。今回の「フォローアップミッション」の最終報告書は概ね3か月後に公開される運び。更田委員長は、福島第一原子力発電所事故の教訓として「継続的改善を怠ることは決して許されない」と述べ、「報告書提示を待たずに課題解決に取り組んでいく」姿勢を示した。
- 21 Jan 2020
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原産協会がIAEA職員を招き講演会、新興国への支援策など
原産協会は12月9日、IAEAで新規導入国への原子力発電開発に関わる協力活動を担当している安良岡悟氏を迎え講演会を開催(=写真)。会員企業などから約50名の参加があった。同氏は、2006年に経済産業省に入省後、資源エネルギー庁で、福島第一原子力発電所事故対応や軽水炉の安全性向上に資する技術開発プロジェクトに従事したほか、製造産業局航空宇宙産業課などを経て、2017年より IAEA原子力エネルギー局原子力発電インフラ開発課に出向している。今回、原子力エネルギーを巡る最近の国際動向や導入検討国に対する支援について発表し、日本のステークホルダーがIAEAの場を活用するメリットなどを示唆した。安良岡氏は、2018年の世界の電源別発電量で原子力が約10%、水力と再生可能エネルギーも合わせると36%のシェアを占めることを図示し、「『全体最適としてどうバランスをとっていくか』が盛んに議論されている」と述べ、原子力の「クリーンエネルギーとしての位置付け」を強調。今後の原子力開発の流れに関しては、SMRを中心とする「技術シフト」とアジア諸国を中心とする「地域シフト」の2つの側面をあげ、「堅調な新設ペース」にあるとした。自身が携わる原子力発電の導入検討国に対するインフラ開発支援として、安良岡氏は「INIR」(Integrated Nuclear Infrastructure Review)ミッションを紹介。各国の要望に応じ、「INIR」で取りまとめたレポートは、2009~18年でアジア・アフリカ諸国を中心に27か国に達したとして、10年間の取組を振り返り「徐々に体系化されつつある」と一定の評価を述べた。また、原子力発電導入に向けたマイルストーンにおいてIAEAでは19の評価軸を示しているが、同氏は特にその一つである産業政策の立案支援について、自身の関わる業務を紹介。例えば、石炭産業が盛んなポーランドについては原子力を通じ環境保全技術の市場拡大も図るなど、地場産業へのベネフィットを考える必要性を述べた。安良岡氏は、「INIR」の実施されたアフリカ諸国として、南アフリカ(運転中)、ナイジェリア、ケニア、モロッコ、ガーナ、ニジェール、スーダンの6か国をあげたが、参加者から、今後原子力発電の導入が有望な国について問われたの対し、「モロッコはかなり進んでいる」としたほか、ザンビアの近年の動きにも触れ、「アフリカは注目すべき地域」と強調。また、日本の人的貢献に関して、「日本は有数の地震国」と述べ、関連する知見が蓄積されてきた地質学、耐震設計、防災対策などの分野での可能性を示唆した。
- 10 Dec 2019
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IAEAへ出張する際の注意喚起
写真がすべてを物語っていますが、原子力業界に身を置くすべての仲間たちへ向けて、注意を喚起しておきたいことがあります。IAEAでの写真撮影を侮ってはいけません。IAEAへの出張者は、地下鉄U1のカイザーミューレン(VIC)という駅で降り、正面ゲート右のゲスト用エントランスをくぐります。次に保安検査を経て、受付で入構するためのパスを作ってもらいます。事前に顔写真提出をIAEAに求められていれば、すでにパスは仕上がっているのですが、そうでない場合、写真撮影コーナーへ行くことになります。たいていの場合、これが長蛇の列になります。月曜日の朝イチにゲストが集中するわけですから当たり前ですよね。でもそこでうんざりした表情で撮影に臨むと、良い写真になりません。運転免許の写真みたいになります。私は長蛇の列を経て、ようやく係官と対面し、にこやかにパスポートを提出致しました。すると何やらPCで確認した係官が「お前はあっちへ行け」的なことを言うのです。指差す方向には「すでに写真を提出している方々」の看板が下がっています。なんだか嫌な予感がしたんですよ。というか嫌な予感しかしない。看板の下ではマダムがニコニコと待機しており、パスポートを提出すると、「はい」と顔写真が貼られた入構パスを寄越しました。その顔写真が上の写真の右のちびくろサンボです。たこ焼きかと思いましたよ。10年以上前に、まだ私がIAEA総会併設展示会で「日本刀の作り方」をやっていた頃の写真です。当時、「日本男児を強調する」と豪語して坊主頭で撮影してしまったシロモノです。若いって嫌ね。もちろん「この写真は大昔のもので今とは顔が違う!」と断固抗議しますが、マダムは受け入れません。こういう時の融通の効かなさは国際機関ならではですね。日本のお役所の方が余程融通が効く。この入構パスを、東京メトロの改札機が感度悪くなっちゃったような機械にスキャンすると、ゲートが開くと同時に警備スタッフのディスプレイにパス掲載顔写真が表示されるようになっています。そして警備スタッフはニコリともせずに「OK」。OKじゃねえだろ!どう見ても別人だろ!とも思うのですが、西洋人から見ると同じに見えるのかしら??みなさんもIAEAでの写真撮影は、真剣に臨んでください。おそらくそれが今後10年、20年と使い回されることになるざんす。
- 09 Dec 2019
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IAEAの新事務局長にアルゼンチンのグロッシ大使 就任へ
国際原子力機関(IAEA)の加盟国中35か国で構成される理事会は10月29日、天野之弥事務局長の後任指名のため同日に実施した選挙で、在ウィーン国際機関アルゼンチン政府代表部のラファエル・M・グロッシ大使(58)(=写真)が過半数の24票を獲得し、新たな事務局長に決定したと発表した。今年7月に天野事務局長が任期半ばで死去した後、アルゼンチン、ブルキナファソ、ルーマニア、スロバキアの各国政府は、9月5日までに理事会に対し、それぞれの後任候補者を推薦。10月10日以降、当選に必要な3分の2以上の票数を獲得する候補者が現れるまで、理事会で非公開の投票が重ねられていた。今後は10月30日に、全加盟国の参加も可能な理事会を開催して、グロッシ大使を任期4年の新事務局長に指名。さらに、この決定を臨時総会に提出し、これら171加盟国の代表から承認を得るとしており、同大使は2019年中に6人目のIAEA事務局長に就任する。1957年にIAEAが設立されて以来、米国、スウェーデン、エジプト、日本が歴代事務局長を輩出しており、グロッシ大使は初の南米からの選出となる。グロッシ大使は学生時代、政治学で学士号、国際関係学で修士号を取得したほか、国際史と政治学および国際関係学で博士号を取得。IAEAでは2010年~2011年まで事務局長室のトップ、その後2013年までは政策関係の幹部職(Assistant Director General for Policy)も勤めた。アルゼンチン国内では、連邦計画・公的投資省の戦略計画委員会で原子力問題の特別顧問、外務省の政策調整官、アルゼンチン宇宙活動委員会(CONAE)の特別顧問などを歴任。国際機関関連では、化学兵器禁止機関(OPCW)の事務局長室や北大西洋条約機構(NATO)のアルゼンチン政府代表部で外交活動を担った。また、IAEAに加えて包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)、国連薬物犯罪事務局(UNODC)、国連工業開発機関(UNIDO)でも、アルゼンチン大使を務めている。2015年に国連安全保障理事国+ドイツが結んだイランとの核合意(「包括的共同行動計画(JCPOA)」)は、米国の離脱により、ますます危機的状態に陥っているが、現地の報道によると同大使は、この問題も含めてIAEAの役割を確実に、しかし「公平に」扱っていきたいとしている。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 30 Oct 2019
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