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ALPS処理水海洋放出後初 IAEAレビュー終了・年内に報告書
福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の海洋放出に関するIAEAレビューミッションが10月27日、4日間の日程を終了した。今回のミッションは、2022年2月以来、6回目で、2023年8月24日に海洋放出が開始されてからは初となる。〈資源エネルギー庁発表資料は こちら〉日本を訪れたIAEAタスクフォースチームは、リディ・エヴラール事務次長、グスタボ・カルーソ氏(原子力安全・核セキュリティ局調整官)を含む、7名のIAEA職員の他、アルゼンチン、英国、カナダ、韓国、中国、フランス、ベトナム、マーシャル諸島、ロシアの9名の国際専門家で構成。日本滞在中、経済産業省、原子力規制委員会、外務省、東京電力との会合を通じ、海洋放出開始後のモニタリング状況、放出設備の状況などについて説明を受け、意見交換を行うとともに、25日には現地調査を実施。ALPS処理水の海洋放出の安全性について、IAEA国際安全基準に基づき技術的議論を行った。今回のミッションに関しては、年内に報告書をまとめる予定。レビュー開始に先立ち、23日にフォーリン・プレスセンターで外国人記者団らとの会見に臨んだエヴラール事務次長はまず、7月にIAEAが公表したALPS処理水の安全性レビューに係る包括報告書に言及。海洋放出計画に関し、「国際安全基準に合致しており、人および環境に対して無視できるほどの放射線影響だ」と、あらためて強調した上で、IAEAとして、海洋放出中・放出後を通じ、引き続き安全性評価にコミットしていく姿勢を示した。同氏は、ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長と上川陽子外相が9月の国連総会に伴う渡米中、署名したALPS処理水に係る日本・IAEA間の協力覚書についても紹介。IAEAによる確認・評価に関する枠組みを設定したもので、専門家の日本駐在、独立した裏付け(サンプリング・分析)、アウトリーチ・広報活動などを盛り込んでいる。会見には、ドイツ、フランス、スペイン、ロシア、シンガポール、韓国、中国の外国人記者が参加。エヴラール事務次長は、「独立性、客観性、透明性を確保することで、国内外の信頼醸成につながるものと考える」と、IAEA安全性レビューのスタンスを強調したALPS処理水の海洋放出は、10月23日に2回目が終了。11月2日に3回目の放出が始まる予定。
- 30 Oct 2023
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IAEAの海洋モニタリング開始 中国も参加
福島第一原子力発電所周辺の海洋試料を採取し分析を行う、モナコ所在のIAEA海洋環境研究所(MEL)の専門家一行が、10月16~23日の日程で調査を開始した。日本の海域モニタリングの信頼性・透明性確保に向け、IAEAや国内外分析機関による分析結果を比較評価するもので、2014年より継続実施されている。〈外務省発表資料は こちら〉今回、さらなる透明性向上の観点から、IAEA/MELに加え、IAEAから指名されたカナダ、中国、韓国の専門家も新たに参加する。中国の参加に関し、日本サイドとして同調査をリードする原子力規制委員会の山中伸介委員長は、11日の定例記者会見で、「IAEAの客観的モニタリングについて、中国も含めた第三者が加わったことで、より中立性、透明性、公平性が高まった」と、期待を寄せた。調査期間中、専門家一行は海水・海底土、水生生物・水産物などの試料を採取。評価結果は、IAEAが別途、実施しているALPS処理水の取扱いに関する安全性レビューの裏付けにも資する。例えば、水産庁が参画する水産物の採取については、福島県で漁獲される6種程度を予定しており、19日にいわき市沿岸で採取した後、20日に海洋生物環境研究所(千葉県御宿町)で分析状況の確認を行う。直近、2021年度実施分の報告書では、「日本の分析機関の試料採取方法は適切であり、高い正確性と能力を有している」と、評価されている。ALPS処理水の海洋放出は8月24日~9月11日の初回分が終了し、続く2回目が10月5日から約17日間の予定で行われている。海洋放出開始後、初となるIAEAの安全性レビューミッションは、10月24~27日に来日する予定。今回、調査を行うタスクチームには、IAEA職員の他、独立した立場で参加するアルゼンチン、豪州、カナダ、中国、フランス、韓国、マレーシア、マーシャル諸島、ロシア、米国、英国、ベトナムの各国出身の国際専門家11名が含まれる。
- 16 Oct 2023
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原産協会・新井理事長 処理水放出「着実に安全に」
日本原子力産業協会の新井史朗理事長は10月6日、記者会見を行い、福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水の海洋放出について発言した。8月24日から17日間かけて行われた1回目の海洋放出は、安全かつ着実に実施され、海域モニタリングや魚のトリチウム濃度分析においても異常値は検出されておらず、10月5日からは2回目の放出が始まっている。今のところ、福島県内魚介類の価格低下はみられず、むしろ「常磐もの」の流通量が不足していることから、新井理事長は、「全国の多くの方々が福島を応援している」と、原子力産業に携わる立場から謝意を表した。一方で、中国や北朝鮮による科学的根拠によらない主張や、中国による日本の海産物輸入の全面停止を「大変遺憾に思う」と非難。特に、北海道産ホタテへの影響を憂慮した。さらに、新井理事長は、先般、開催されたIAEA総会(ウィーン、9月25~29日)への出席、「原子力とグリーントランスフォーメーション(GX)」をテーマとする日本ブース展示について紹介。そのオープニングセレモニーは、高市早苗内閣府科学技術担当相の「処理水海洋放出を科学的根拠に基づき透明性のある形で説明し続けることが重要」とのスピーチで幕を開け、浜通り地方の日本酒を来訪者に振る舞い福島の復興をアピールしており、「好評だった」と所感を述べた。その上で、新井理事長は、処理水の海洋放出に関し、「何十年にもわたって続く長い取組」との認識をあらためて示し、「東京電力が着実に安全に海洋放出を継続することが大前提であり、その上で、一日一日、異常がないというデータが積み重なっていくことが極めて重要」と強調した。また、新井理事長は、9月29日に資源エネルギー庁と共同で公開したウェブサイト「原子力サプライチェーンプラットフォーム」について紹介。日本国内では、1970年以降に運転開始した原子力発電所の多くで、原子力技術の国産化率が90%を超えるなど、国内企業にその技術が集積されており、国内の発電所の安定利用や経済・雇用に貢献してきた。しかしながら、東日本大震災以降は、再稼働の遅れや新規建設プロジェクトの途絶により将来の事業見通しが立たず、重要な技術を持つ中核サプライヤーの撤退が相次いでいる。こうした状況を踏まえ、3月に原子力サプライチェーンの維持・強化を目的とした「原子力サプライチェーンプラットフォーム」が資源エネルギー庁により設立され、原産協会が共同事務局を務めることとなった。このたび公開したウェブサイトでは、人材や技術の維持・強化に向けた各事業者の取組事例、補助金・税制に関する紹介の他、海外の建設プロジェクトへの参画に向けた情報公開を行っていく。
- 10 Oct 2023
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IAEA総会が開幕 高市大臣が処理水問題で安全性を強調
国際原子力機関(IAEA)の第67回通常総会が、9月25日から29日までの日程でオーストリアのウィーン本部で始まった。開会の冒頭ではIAEAのR.M.グロッシー事務局長が演説し、「世界中の世論が原子力に対して好意的に傾きつつあるが、原子力発電の利用国はそれでもなお、オープンかつ積極的にステークホルダーらと関わっていかねばならない」と表明。安価で持続可能なエネルギーによる未来を実現するには大胆な決断が必要であり、原子力も含め実行可能なあらゆる低炭素技術をすべて活用する必要があると述べた。同事務局長はまた、IAEAの進める原子力の活用イニシアチブが地球温暖化の影響緩和にとどまらず、がん治療や人獣共通感染症への対応、食品の安全性確保、プラスチック汚染などの分野で順調に進展していると表明。原子力発電所の安全性は以前と比べて向上しており、他のほとんどのエネルギー源よりも安全だと指摘した。その上で、原子力が地球温暖化の影響緩和に果たす役割と、小型モジュール炉(SMR)等の新しい原子力技術にいかに多くの国が関心を寄せているかを強調。加盟各国でSMRの活用が可能になるよう、IAEAがさらに支援を提供していく方針を示した。同事務局長はさらに、8月から福島第一原子力発電所のALPS処理水の海洋放出が始まり、IAEAが独自に客観的かつ透明性のある方法でモニタリングと試料の採取、状況評価等を行っていると説明。この先何10年にもわたり、IAEAはこれらを継続していく覚悟であるとした。IAEAの現在の最優先事項であるウクライナ問題に関しても、ウクライナにある5つすべての原子力発電所サイトにIAEAスタッフが駐在しており、過酷事故等の発生を防ぐべく監視を続けるとの決意を表明している。これに続く各国代表からの一般討論演説では、日本から参加した高市早苗内閣府特命担当大臣が登壇。核不拡散体制の維持・強化や原子力の平和利用、ALPS処理水の海洋放出をめぐる日本の取組等を説明した。ウクライナ紛争については、同国の原子力施設が置かれている状況に日本が重大な懸念を抱いており、ロシアの軍事活動を最も強い言葉で非難すると述べた。また、原子力の平和利用に関しては、気候変動等の地球規模の課題への対応とSDGsの達成に貢献するものとして益々重要になっていると評価。その上で、食糧安全保障に係るIAEAの新しいイニシアチブ「アトムスフォーフード(Atoms4Food)」に対し賛意を示した。東京電力福島第一原子力発電所の廃炉にともない、8月にALPS処理水の海洋放出が開始されたことについては、処理水の安全性に関してIAEAの2年にわたるレビュー結果が今年7月に示されたことに言及。処理水の海洋放出に関する日本の取組は関連する国際安全基準に合致していること、人および環境に対し無視できるほどの放射線影響となることが結論として示された点を強調した。高市大臣はまた、日本は安全性に万全を期した上で処理水の放出を開始しており、そのモニタリング結果をIAEAが透明性高く迅速に確認・公表していると説明。放出開始から一か月が経過して、計画通りの放出が安全に行われていることを確認しており、日本は国内外に対して科学的かつ透明性の高い説明を続け、人や環境に悪影響を及ぼすことが無いよう、IAEAの継続的な関与の下で「最後の一滴」の海洋放出が終わるまで安全性を確保し続けるとの決意を表明した。 同大臣はさらに、日本の演説の前に中国から科学的根拠に基づかない発言があったと強く非難。この発言に対し、「IAEAに加盟しながら、事実に基づかない発言や突出した輸入規制を取っているのは中国のみだ」と反論しており、「日本としては引き続き、科学的根拠に基づく行動や正確な情報発信を中国に求めていく」と訴えた。 ♢ ♢例年通りIAEA総会との併催で展示会も行われている。日本のブース展示では、「脱炭素と持続可能性のための原子力とグリーントランスフォーメーション」をテーマに、GX実現にむけた原子力政策、サプライチェーンの維持強化、原子力技術基盤インフラ整備、高温ガス炉や高速炉、次世代革新炉、ALPS処理水海洋放出などをパネルで紹介している。展示会初日には、高市大臣と酒井庸行経済産業副大臣がブースのオープニングセレモニーに来訪。高市大臣は挨拶の中で、ブースにおいて次世代革新炉開発を紹介することは時宜を得ているとするとともに、ALPS処理水海洋放出は計画通り安全に行われており、関連するすべてのデータと科学的根拠に基づき透明性のある形で説明し続けることが重要だと述べた。4年ぶりに行われた今回のオープニングセレモニーでは、日本原子力産業協会の新井理事長による乾杯が行われ、福島県浜通り地方の日本酒が来訪者に振舞われるなどした。(参照資料:IAEAの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 Sep 2023
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Net Zero Nuclear イニシアチブをロンドンで立ち上げ 原産協会も参加
世界原子力協会(WNA)とアラブ首長国連邦(UAE)の首長国原子力会社(ENEC)は9月7日、「ネットゼロ原子力(Net Zero Nuclear=NZN)」イニシアチブを共同で立ち上げた。NZNの下、エネルギー・セキュリティの確保と、CO2排出量の実質ゼロ化の両立に、原子力が果たす多大な貢献を世界中に周知し、原子力開発の世界規模での拡大を目指す。同時に、UAEがホスト国となる今年11月末から開催される国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)において、こうした原子力の価値が言及されることを狙う。同国の原子力発電の導入スピードはめざましく、発展が期待されるMENA地域(中東および北アフリカ)における、原子力導入のモデルケースとして世界中から注目を集めている。NZNは、国際原子力機関(IAEA)の同様のイニシアチブである「Atoms4NetZero」の協賛を得ており、英国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)もNZNへの参加を表明。日本からは、日本原子力産業協会(JAIF)が参加表明し、NZNの発足式には植竹明人常務理事が出席した。最新の分析では、世界的規模でクリーンなエネルギーによる供給を保障しつつ、2050年までに世界中のCO2排出量を実質ゼロ化するためには、原子力設備容量を少なくとも現在の3倍に拡大しなければならないと指摘されている。すなわち原子力発電プラントを年平均4,000万kWのペースで建設する必要があり、これは過去10年間の開発規模の6倍以上ときわめて難しい数字である。WNAのS.ビルバオ・イ・レオン事務局長は、「我々はエネルギー危機の真っただ中におり、CO2排出量の実質ゼロ化で原子力の果たす役割を過小評価している余裕はない」と強調。同時に、実際に原子力設備容量を拡大するには迅速で効率的な資金調達や政治的意志が必要だとした上で、「クリーン・エネルギーへの移行において、一刻も早く現実的かつ実証済みのアプローチを取るべきだ」との見解を示した。原産協会の植竹常務理事は「これまで国連気候変動枠組条約締約国会議の場では原子力の役割りが十分に議論されてこなかった。しかし、今や世界の多くの国は原子力なしで地球温暖化を防ぐことが難しいことに気付いている。今回こそイデオロギーの違いを乗り越えて原子力を正当に評価する議論をしてほしい」と、同イニシアチブ参加の意義を強調し、「COP28まで時間的余裕はないが、原産協会としても可能な限り広く賛同を得るべく努力していきたい」と強い意欲を示した。今後NZNでは、各国の政府機関や産業界、NGOなどに呼び掛けて、イニシアチブへの参加を促していく。そして世界中からステークホルダーが集まるCOP28の場で、世界へ向けてNZNとしての強いメッセージを発信していきたい考えだ。
- 12 Sep 2023
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IAEA 女子学生向け支援制度の参加者募集
国際原子力機関(IAEA)は、M.キュリー夫人の偉業に基づき、若い女性が原子力分野でキャリアを追及できるよう支援するために設置した「マリー・スクウォドフスカ・キュリー・フェローシップ・プログラム(MSCFP)」の今年の参加者を募集している。応募締め切りは9月30日。MSCFPは女性物理学者のパイオニアであるとともにノーベル賞を2度受賞したキュリー夫人にちなんで名付けられ、若い女性に原子力分野でキャリアを積む意欲を喚起させ、原子力分野における女性の数を拡大することを目的とし、現在のIAEA事務局長、ラファエル・グロッシー氏によって設置された。MSCFPは原子力関連課目の修士号取得を目指して勉強中の女子学生に修士課程への最高2万ユーロ(約313万円)の奨学金とIAEAが推進する実習研修制度(internship)に最大12か月参加する機会を提供している。さらに、学生には様々な教育的かつ専門的ネットワーク形成のためのイベントに参加する機会も提供される。2020年の創設以来、110ヶ国360人の学生が選抜されているが、さらに多くの女子学生に機会を付与できるよう、今年度は最大200名の奨学生を選ぶことを目標としている。IAEAは、女子学生を対象としたMSCFPの他にも、若手・中堅女性専門家向けのキャリア開発を目的としたリーゼ・マイトナー・プログラムを用意しており、これらを通じて原子力分野のジェンダーバランス改善に取り組んでいる。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 11 Sep 2023
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原子力マネジメントスクール 14か国が参加
「Japan-IAEA 原子力エネルギーマネジメントスクール(NEMS) 2023」が8月22日~9月8日の日程で、東京大学本郷キャンパス(一部の講義とテクニカルツアーを福島・茨城県で実施)で開催されている。原子力発電の導入を検討する各国および日本の原子力政策・規制組織の若手担当者、技術者・研究者が対象。NEMSは、世界各国で原子力エネルギー計画の策定・管理をリードする人材の育成を目指し、エネルギー戦略、核不拡散、国際法、経済・環境問題など、幅広い課題について学ぶ機会を提供し、マネジメントに必要な基礎能力を養うことを目的に、2010年にイタリアで始まった。日本での開催(2012年初開催、2014年より日本主催・IAEA共催)は今回で11回目。東京大学大学院工学系研究科の他、日本原子力研究開発機構、日本原子力産業協会、原子力国際協力センターなどで運営する産学官プラットフォーム「原子力人材育成ネットワーク」により実施され、国内行政機関、電力・メーカーからも講師を招く。今回の研修生は、海外13か国(ブルガリア、チェコ、エストニア、ガーナ、インドネシア、ヨルダン、カザフスタン、メキシコ、フィリピン、ポーランド、サウジアラビア、スロバキア、ベトナム)から18名、日本からは11名、計29名が参加した。今回のNEMSは4年ぶりの全面的な対面開催となり、8月22日に行われた開講式で、組織委員長の東京大学大学院工学系研究科准教授・出町和之氏は、会期を通じ対面・現地で講義、グループワーク、施設見学に臨む各国研修生らを大いに歓迎。続いて挨拶に立ったIAEA企画・経済調査官のアンリ・パイエール氏は、気候変動対策における原子力発電の重要性を述べた上、研修を通じ将来に向け専門的なネットワーク構築が図られることに期待を寄せた。また、NEMS前組織委員長の上坂充原子力委員会委員長は、「国際的な討論は極めて重要」と、原子力政策の立案において他国の状況も理解する必要性を強調するとともに、研修生らに対し、カリキュラムの一環となる福島訪問に関して「ALPS処理水対応も含め、福島第一原子力発電所廃炉の現状をよく見て理解して欲しい」と述べた。研修生らは、8月25日まで東大で講義とグループワークに臨んだ後、28日~9月1日には茨城・福島県に移動。原子力機構の高温工学試験研究炉「HTTR」、福島第一・第二原子力発電所、水素エネルギー研究フィールドなどを見学。4日には東京へ戻り、最終テストが実施され、8日に閉幕となる運びだ。
- 01 Sep 2023
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処理水海洋放出 引き続きIAEAと連携
8月24日に福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水の海洋放出が開始された。〈既報〉西村康稔経済産業大臣は25日、IAEAのラファエル・グロッシー事務局長とオンライン会談。廃炉が完遂するまで日本政府として責任をもって取り組んでいく考えを述べた上、引き続き長期にわたるIAEAによる安全性確保への協力を要請。また、林芳正外務大臣も同日、グロッシー事務局長と会談し、ALPS処理水の安全性確認に係る日本・IAEA間の協力・連携関係を対外的に示す文書を早期作成・公表することで一致した。ALPS処理水の安全性に関しては、IAEAが7月に「海洋放出は関連する国際安全基準に合致しており、人および環境に対し、無視できるほどの放射線影響」とする包括報告書を日本政府に提出している。ヨークベニマル各店舗に掲示されているポップには、関係省庁と並び弊紙記事へのリンクもまた、西村経産相は8月24日に放出後の東京電力、環境省、水産庁による海水や魚のトリチウム濃度の分析結果の公表とともに、地元水産業の風評影響に備えた対応や漁業者らの生業の継続支援に取り組むとの談話を発表。28日には、太田房江副大臣とともに、福島県を訪問し、東日本大震災被災地の水産物「三陸・常磐もの」の魅力発信・消費拡大に向けた取組の一環として、県内の流通・小売事業者との意見交換・試食イベントを福島市内のスーパー「ヨークベニマル南福島店」で行ったほか、復興再生に関する地元関係者との協議会に出席。「ヨークベニマル」では、ALPS処理水の安全性を科学的根拠に基づき説明すべく、「連携しながら県産品の魅力発信に力を入れていきたい。安全性を確認しデータを公表することが一番の風評対策になる」と強調。海洋放出後に福島県相馬市で水揚げされたヒラメやホッキ貝の刺し身を試食するなどした。東京電力は、24日のALPS処理水の海洋放出開始後に、発電所から3km以内の10地点で海水試料を採取。すべての地点でトリチウム濃度は検出下限値(10ベクレル/リットル程度)未満であることが確認された。なお、海水による希釈後のトリチウム濃度は1,500ベクレル/リットル未満とされている。東京電力は、海洋放出の状況を知りたいというニーズに応え、ALPS処理水に関するポータルサイトを刷新。経産省も、福島第一原子力発電所近傍における海水中のトリチウム濃度の分析結果について、「異常なし」は青丸表示、「放出停止判断レベルを超える」ときは警告表示と、一目でわかるウェブサイトを公開した。
- 28 Aug 2023
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IAEAグロッシー事務局長が講演 産業界に支援求める
日本原子力産業協会は7月7日、都内で、IAEAのラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長(7月4~7日に日本滞在)による講演会を開催(日本経済団体連合会共催、外務省後援)。グロッシー事務局長は、産業界から集まった約70名の参加者に、IAEAが途上国の支援に向け実施している活動への理解および経済的支援を強く呼びかけた。IAEAでは、発電分野にとどまらず、保健・医療、食料、農業、環境保全、水資源管理など、多分野の放射線利用に係る取組に注力しており、加盟各国からの関心も高まっている。今回の講演会は、「IAEAがSDGsや気候変動といった『グローバルアジェンダ』に対し、いかに幅広く貢献しているのか」について紹介し、IAEAと日本企業との関係構築の一助とするもの。グロッシー事務局長はまず、「IAEAをパートナーとして見て欲しい。われわれが取り組む世界的な活動のどこかに皆さんが『ともに参加できる領域』がある」と述べ、日本の産業界と今後も連携していく意向を示した。その中で、グロッシー事務局長は、「アフリカでは人口の7割が放射線治療にアクセスできない」と、途上国のがん患者をめぐる状況を危惧し、自身が音頭を取って1年半前、放射線治療施設が欠陥・不足している20以上の加盟国を支援するイニシアティブ「Rays of Hope」を立ち上げたことを紹介。その他、医療分野では感染症を媒介する虫の根絶に、農業分野ではかんばつに強い作物の品種開発で放射線技術が用いられ、開発途上国の経済発展に寄与していると述べた。また、最近、関心が高まっている取組として、海洋プラスチック問題に対応するイニシアティブ「NUTEC Plastic」を紹介。「同位体トレーシング」と呼ばれる技術により、プラスチックの再利用をより環境に優しく実現するもので、インドネシアなどでパイロットプラントが立ち上がっているという。「Rays of Hope」も「NUTEC Plastics」も日本政府が拠出金による支援を行っている。一方で、グロッシー事務局長は、「今、われわれが取り組んでいる問題の規模は巨大で、民間企業のダイナミックな力も必要だ」と強調し、産業界に対しIAEAが進めるプロジェクトへの理解・支援をあらためて求めた。グロッシー事務局長は、地球温暖化に伴い原子力エネルギーが世界中で大きな関心を集めている点にも言及。講演後、参加者との間で、浮体式原子力発電所の将来性、一方で、規制対応、産業界の標準化、ファイナンス面での課題についても質疑応答がなされた。また、若手女性研究者を支援する「IAEAマリー・キュリー奨学金」に関連し、参加者から学生向けプログラムの導入を求める声があったのに対し、グロッシー事務局長は、「今回の来日で、福島を訪問した際、生徒たちに原子力について説明したいという地元の高校の先生に会った。次回、福島を訪れた際には、高校生たちと対話したい」などと、微力ながら応えていく姿勢を示した。
- 10 Jul 2023
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ALPS処理水の海洋放出設備 使用前検査が完了
原子力規制委員会は7月7日、東京電力に、福島第一原子力発電所のALPS処理水((多核種除去設備(ALPS)等により、トリチウム以外の放射性物質について安全に関する規制基準値を下回るまで浄化した水。海水と混合し、トリチウム濃度を1,500ベクレル/リットル(告示濃度限度の40分の1)未満に希釈した上で放水する。))の海洋放出に係る移送/希釈/放水の各設備について、使用前検査終了証を交付した。ALPS処理水の海洋放出設備は、(1)測定・確認用設備、(2)移送設備、(3)希釈設備、(4)放水設備――で構成。そのうち、(1)については、3月に使用前検査終了証が交付されており、今回、(2)~(4)の検査が完了し、規制委による使用前検査はすべて完了したこととなる。ALPS処理水の海洋放出設備は、2022年7月に規制委員会より福島第一原子力発電所に係る実施計画変更認可を受け、8月に設置工事が開始された。2023年4月26日には放水トンネル(長さ約1km)が完成。6月26日にすべての施設の設置が終わり、同30日に最終の使用前検査が実施された。ALPS処理水の処分に関する関係閣僚会議は2023年1月に、「海洋放出設備工事の完了、工事後の規制委員会による使用前検査、IAEAの包括的報告書等を経て、具体的な海洋放出の時期は、本年春から夏頃を見込む」との見通しを示している。ALPS処理水の安全性レビューに関するこの包括的報告書は7月4日に日本政府に提出されており、今回の使用前検査終了により、海洋放出開始に向け設備・保安上の準備は整ったこととなる。東京電力は、「ALPS処理水希釈放出設備および関連設備の保守管理に努めるとともに、同設備を的確に運用するため、引き続き、運転操作訓練・警報対応訓練を行なうなど、現場での安全に係る品質向上について積極的に取り組んでいく」とするコメントを発表した。
- 07 Jul 2023
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「処理水の海洋放出計画は国際的な安全基準に合致」IAEA結論
福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水((多核種除去設備(ALPS)等により、トリチウム以外の放射性物質について安全に関する規制基準値を下回るまで浄化した水。海水と混合し、トリチウム濃度を1,500ベクレル/リットル(告示濃度限度の40分の1)未満に希釈した上で放水する))の取扱いの安全性に係るレビューを総括するIAEA包括報告書〈要旨仮訳は こちら〉が7月4日、ラファエル・グロッシー事務局長より岸田文雄首相に手交された。2021年7月に日本政府とIAEAとの間で署名された「ALPS処理水の取扱いに係るレビューの包括的な枠組みに関する付託事項」に基づき、IAEAが行ってきた一連のレビューを総括するもの。IAEA包括報告書では、ALPS処理水の海洋放出へのアプローチ、並びに東京電力、原子力規制委員会および日本政府による関係する活動は国際的な安全基準に合致している東京電力が現在計画しているALPS処理水の海洋放出が人および環境に与える放射線の影響は無視できる水準――と結論付けている。今回、グロッシー事務局長が来日したのは、2022年5月以来、3度目。来日初日の7月4日には、岸田首相の他、林芳正外相、西村康稔経済産業相、山中伸介原子力規制委員会委員長と会談を行った。グロッシー事務局長と面会した岸田首相は、包括報告書の受取りに際し、これまでのIAEAによる協力に謝意を表した上で、「科学的根拠に基づいて、高い透明性をもって国内外に丁寧に説明していきたい」と強調。グロッシー事務局長は、「科学的かつ中立的で、日本が次のステージに進むに当たって決断を下すのに必要な要素がすべて含まれている」と述べた。包括報告書は、ALPS処理水の海洋放出について「あくまで決定するのは日本政府であり、この報告はその方針を推奨するものでも、支持するものでもない」としている。会談後、グロッシー事務局長は日本記者クラブで記者会見に臨み、海外からの不安に関する質問に対し「われわれは科学的に健全な評価ができたと確信している」と、包括報告書の意義を強調。また、海洋放出前・中・後を通じモニタリング・評価を継続すべく、福島第一原子力発電所構内にオフィスを立ち上げ、職員を常駐させる考えを表明した。グロッシー事務局長は5日、福島に赴き、午前中、政府・原子力災害対策本部が設置する地元との意見交換の場「廃炉・汚染水・処理水対策福島評議会」(いわき市)に出席。IAEA包括報告書について説明した上で、ALPS処理水の安全性の理解に関し「魔法の杖はない。皆さんの声に耳を傾けることが何よりも大事」と、対話の重要性を強調した。午後からは、福島第一原子力発電所を視察する。IAEA包括報告書の公表を受け、東京電力は、「内容をしっかりと確認し、ALPS処理水の放出に係る安全・品質の確保・向上に活かしていく」とのコメントを発表した。
- 05 Jul 2023
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ALPS処理水を巡る2度目のIAEA規制レビュー 日本側取組を評価
IAEA・カルーソ氏原子力規制委員会は5月10日の定例会合で、2023年1月に行われた福島第一原子力発電所のALPS処理水(トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水)取扱いに関するIAEA規制レビュー(ミッション団長=グスタボ・カルーソIAEA原子力安全・核セキュリティ局調整官)の報告書について原子力規制庁より説明を受けた。〈規制委発表資料 こちら〉同報告書は、ALPS処理水の海洋放出に関し、2021年7月に日本政府がIAEAによる支援を要請し署名した付託事項に基づき行われたレビューのうち、規制面でのレビューについて取りまとめたもの。1月のIAEAによる規制レビューは2022年3月に続き2回目となり、規制委員会へのヒアリングや現地視察を終了後、団長のカルーソ氏は、「前回のミッションで出たほとんどの問題について考慮されていることを確認できた」と、日本の規制当局の取組を評価した上で、3か月以内にも報告書を公表するとしていた。今回、IAEAが公表した報告書では、政府の役割と責任、主要概念と安全目的、認可プロセスなど、規制に係る5つの技術的事項に関するレビューについて記載。進捗報告書との位置付けで、結論には言及しておらず、「ALPS処理水の海洋放出開始まで、および放出開始後において、国際安全基準に照らし規制プロセスとその活動を引き続き監視する」としている。IAEAはレビュー全側面にわたる包括的報告書を年央にも公表することとしているが、原子力規制庁担当者によると、これに向けたミッションが5月末にも来日する予定。日本政府は海洋放出開始時期を春から夏頃と見込んでいる。トンネル掘進完了後の放水トンネルの様子©東京電力この他、10日の定例会合では、東京電力が昨秋に申請した福島第一原子力発電所廃炉に関する実施計画の変更認可が決定された。ALPS処理水の海洋放出に当たり、トリチウム以外に測定・評価を行う対象核種として29核種を選定し放出基準を満足することを確認するとしたもの。ALPS処理水の希釈放出設備の設置工事は、4月26日に全長約1,031mの放水トンネルの掘進が完了している。
- 10 May 2023
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西村経産相がグロッシーIAEA事務局長と初会談
西村康稔経済産業相は4月20日、IAEAのラファエル・グロッシー事務局長とオンライン会談を行った。福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水((トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水))の取扱い、ウクライナ情勢が主な内容。両者による会談は初めてのこと。〈資源エネルギー庁発表資料は こちら〉西村経産相からは、ALPS処理水の安全性に関するレビューに係る諸活動への謝意とともに、引き続き日本政府として、IAEAによる厳格なレビューにしっかり対応していくことが述べられた。さらに、IAEAによる継続的な情報発信を改めて要請するとともに、科学的根拠に基づく透明性ある情報発信の重要性を確認。加えて、先般、「G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合」(4月15、16日)が採択したコミュニケの中で、「ALPS処理水に関するIAEAによる独立したレビューを支持する」との記述が盛り込まれたことに言及した。ALPS処理水の安全性レビューで、IAEAは年内にも包括的報告書を公表することとなっている。また、ロシアからの侵攻を受けているウクライナの原子力施設の安全確保に関しては、グロッシー事務局長が「最前線で指揮を執っている」との現状。経産省として、IAEAに対し200万ユーロの拠出(2022年度補正予算で2.7億円計上)を行ったことを明らかにした。同拠出金事業は、IAEAによるウクライナ・ザポリージャ原子力発電所の安全確保・回復に向けた調査団派遣などの取組を踏まえ、日本の民間企業が有する技術や知見を活用し支援を図るもの。今後の具体的な支援内容に関し、資源エネルギー庁原子力政策課では、「まずは現地のニーズを丁寧に把握することが必要」などと説明している。
- 21 Apr 2023
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福島第一ALPS処理水 IAEAレビュー報告書公表
IAEAは4月5日、福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水((トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水))の安全性レビューに関する報告書を公表。IAEAの国際基準に照らし、今後、海洋放出が行われるALPS処理水の取扱いに係る計画進展を評価するものとなっている。〈資源エネルギー庁発表資料は こちら〉今回の安全性レビューは、2022年11月にIAEAの国際専門家(アルゼンチン、中国、韓国、フランス、マーシャル諸島、ロシア、英国、米国、ベトナム)らが来日し実施された。同安全性レビューは、日本政府とIAEAとの間で2021年7月に署名された協力枠組みに基づくもので、2022年2月に続き2回目となる。今回、ALPS処理水の性状、放出管理のシステムとプロセスに関する安全性、放射線影響評価など、8つの技術的事項について確認。報告書では、第1回レビュー(2022年4月報告書公表)での指摘事項に対する適切な対応を評価する一方、東京電力に対し、放射線環境影響評価に係るより明確な説明、定量的な評価を求めている。IAEAは今後、包括的報告書を公表する予定。日本政府はこれを踏まえた上で本年春から夏頃にも海洋放出を開始することとしている。IAEAよるレビューはALPS処理水の放出後も継続される運び。なお、IAEAがALPS処理水の取扱いについて、直近で2022年12月に公表した「IAEAによる独立したサンプリング、データの裏付けおよび分析活動」報告書に関しては、IAEA研究所の専門家が2023年3月28~31日に福島第一原子力発電所を訪れ、放射線核種の分析方法の適切性について現地確認を行っている。〈資源エネルギー庁発表資料は こちら〉
- 06 Apr 2023
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IAEAと東海大 原子力・放射線安全のリーダー育成に向け国際スクール
IAEAと東海大学との共催による研修コース「IAEA国際スクール 原子力・放射線安全リーダーシップ」が2月20日~3月3日、同学湘南キャンパス(神奈川県平塚市)を中心に行われた。IAEAと東海大学が2018年度に締結した原子力安全教育分野における協力協定に基づくもので、2020年の日本での初開催以来、対面で行われるのは3年ぶり。同スクールは、IAEA標準の「GSR-Part2」に基づき、原子力安全のためのリーダーシップとマネージメントに関する能力開発を目的としている。今回、日本原子力研究開発機構、日本原子力産業協会の支援を得て参加者を募り、日本およびアジア諸国(マレーシア、ベトナム、バングラデシュ、フィリピン)から34名が受講した。同スクールは、原子力・放射線利用に関わる若手・中堅の研究者、技術者を対象に、授業形式の講義ではなく、グループワーク、ケーススタディ、ゲーム形式の演習など、ロールプレイ体験(例えば、原子力発電所の定期検査におけるスケジュール管理と保全活動遂行の葛藤といった場面を想定)を通じ、原子力安全のためのリーダーシップ能力を養うのが特長。今回の研修でも、実際、現場で遭遇し得る場面での「登場人物」の振る舞いや意思決定のプロセスをリーダーシップの観点から検証。指導に当たった東海大学工学部・若杉圭一郎教授は、「参加者は事故に至る複雑な状況や原子力分野で直面しそうな立場や役割を疑似体験し、改善を試みることで、より深いレベルで理解することができた」などと評価している、スクール参加者は3月2~3日に福島県を訪れ、東京電力廃炉資料館や原子力機構の楢葉遠隔技術開発センターなどを見学。閉会式(於:いわきワシントンホテル)では、参加者全員に「卒業証書」が授与された。参加者の一人、フィリピン原子力研究所スタッフでフィリピン大学大学院にも在学するジェナ・サプレインさんは、「特に印象に残ったのは、リーダーとは役職ではなく誰もがなれる資質があるということだった。心を落ち着かせ、異なる意見を受け入れながら議論すれば、周囲との信頼関係を得られる。今後の仕事に活かしていきたい」と話している。東海大学では、これまでも経済産業省と文部科学省との共同事業「原子力発電分野の高度人材育成プログラム」(GIANTプログラム、2008~12年)や国際原子力開発(JINED)との協力によるベトナムの発電所幹部候補生を対象とした人材育成プログラム(2012~18年)を実施するなど、原子力分野の人材育成に力を入れてきた。海外から来日した研修生には、専門教育や現場体験だけでなく、日本語や日本の文化・風習の理解に係るカリキュラムも設けてきた。
- 10 Mar 2023
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原子力のサプライチェーンでシンポ
経済産業省と日本原子力産業協会は3月6日、国内原子力企業による海外展開や事業承継・人材育成支援など、原子力サプライチェーンの維持・強化策を議論するシンポジウムを都内で開催した。2022年12月末に資源エネルギー庁が提示した「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」で原子力サプライチェーンの維持・強化が重要な柱の一つとなっており、今回のシンポジウムで経産省は、原子力関連企業を支援する枠組み「原子力サプライチェーンプラットフォーム」の設立を発表した。開会挨拶に立った西村康稔経産相は、「地球規模の課題解決に向けて、今ほど原子力に注目が集まっているときはない」と、シンポジウムの開催意義を強調。日本の原子力産業に関し「半世紀以上にわたる卓越した技術・人材の蓄積がある」と評価するとともに、1月の米国エネルギー省(DOE)・ジェニファー・グランホルム長官との会談における日米間の原子力サプライチェーン構築に向けた議論にも言及し、「経済安全保障の観点からもサプライチェーンの維持・強化は喫緊の課題」と明言。新たな枠組み「原子力サプライチェーンプラットフォーム」を通じた取組を積極的に支援していく姿勢を示した。また、海外からのビデオメッセージで、IEAのファティ・ビロル事務局長は、昨今の世界的なエネルギー危機を懸念。IEAが昨夏発表した原子力の有用性を説く勧告を多くの国が実行していることに触れ、「世界が原子力にカムバックしている」と述べた。IAEAのラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は、IAEAが昨秋発表した世界の原子力発電規模の高位予測から、「今後30年以内に600G((ギガ:10の9乗))Wの新規原子力開発が見込まれる」と説明。「計装機器、ギアなど、専門知識を有するサプライヤの役割」に期待する一方、「世界のあらゆる産業がサプライチェーンの課題に直面している」と懸念。サプライチェーンの維持に向け、国境を越えた議論の必要性を指摘するとともに、日本に対して、「高度なものづくり技術や研究開発基盤を多く有している」などと期待を寄せた。世界原子力協会(WNA)のサマ・ビルバオ・イ・レオン事務局長は、同じくビデオメッセージの中で、原子力サプライチェーンの維持・強化に向けて、オープンで透明性のあるビジネス環境の構築、事業の予見性向上、熱利用などの発電以外の用途への技術展開、いわゆる「セクターカップリング」の必要性を指摘した。ディスカッションで説明する原産協会・植竹明人常務理事国内における革新炉の開発状況については、三菱重工業が革新軽水炉「SRZ-1200」、日立GEが小型炉「BWRX-300」(米国GE日立と共同)の展望を紹介。日揮とIHIは、米国ニュースケール社の小型モジュール炉(SMR)開発への出資について説明した。ディスカッションでは、原産協会が海外とのビジネス交流や会員企業と海外企業とのマッチング事業について紹介。国内サプライヤとしてTVE(原子力向けバルブ)、日本ギア工業(バルブアクチュエータ)が品質保証、供給途絶対策(他企業への製造移管、製造技術の転換など)、技術継承に関する課題・取組状況を説明した。原産協会の新井史朗理事長は閉会挨拶の中で、現在、世界各国で検討されている新規建設プロジェクトに際し、「わが国の企業が海外プロジェクトに参画することで、その技術力の維持・強化を図るとともに、世界の原子力発電所の安全性向上にも寄与できる」と、強い期待を表明した。
- 08 Mar 2023
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高経年化炉の安全規制で新たな仕組み 運転期間延長見据え
原子力規制委員会は12月21日の定例会合で、高経年化した原子力発電プラントに関する新たな安全規制の仕組みを取りまとめた。資源エネルギー庁による運転期間の見直しに係る検討を受け、現行の「40年+20年」の上限を超えて運転する可能性を見据え、今後必要となる安全規制の整備について定例会合の場で集中議論を行ってきたもの。〈規制委発表資料は こちら〉新たな安全規制の仕組みは、現行の高経年化技術評価と運転期間延長認可の両制度を統合するもので、運転開始後30年を超えて運転しようとする場合、先々10年以内ごとに、施設の劣化を管理するための「長期施設管理計画」(仮称)の策定を事業者に義務付け、規制委員会が認可。同計画に従って講ずべき措置の実施状況は規制検査の対象とする。今後、パブリックコメントに付すとともに、26日を皮切りに事業者との意見交換を実施した上で正式決定し、原子炉等規制法改正案が年明けの通常国会に提出となる運び。運転期間の見直しについては、16日に行われた総合資源エネルギー調査会において、「現行制度と同様に、運転期間は40年、延長を認める期間は20年との制限を設けた上で、新規制基準適合性審査に伴う停止期間などを除外し、追加的な延長を認める」との考え方が示されている。また、同定例会合では、IAEAの国際核物質防護サービス(IPPAS)ミッションの2024年半ば頃の受入れをIAEAに対し正式要請することが了承された。IPPASは、IAEA加盟国からの要請に基づき、核セキュリティに関する視察・ヒアリングを実施し助言などを行うもので、日本では2015、18年の受入れ実績がある。山中伸介委員長は就任から1か月後の10月26日、今後の重点的取組の一つとして、国際機関による外部評価を掲げている。
- 21 Dec 2022
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フィンランド IAEAが深地層処分場をレビュー
国際原子力機関(IAEA)は11月27日から12月8日にかけて、フィンランドで建設中の世界初となる使用済燃料の深地層最終処分場に「アルテミス(=ARTEMIS: 放射性廃棄物・使用済燃料管理、廃炉、除染に関する総合レビューサービス)」ミッションを派遣。12月9日にレビュー結果を取りまとめ、同国の取り組みを高く評価した。同処分場の建設工事は、原子力発電事業者のティオリスーデン・ボイマ社(TVO)とフォータム社の共同出資企業であるポシバ社が、2016年末からユーラヨキ自治体のオルキルオトで進めており、現時点で2025年頃に操業開始できる見通し。同社はすでに2021年12月末、同処分場を2024年3月から2070年末まで操業するための許可を政府に申請済みである。IAEAはフィンランド政府の要請に基づいて、加盟各国の専門家から成るアルテミス・チームを同処分場に送り、12日間にわたって建設工事や操業の準備状況などを審査。同チームはまた、フィンランドで原子力発電問題を管轄する雇用経済省、社会福祉保健省、放射線・原子力安全庁(STUK)の幹部らと会談したほか、TVOやフォータム社傘下の熱電供給企業、ポシバ社、フィンランドVTT技術研究センター、ヘルシンキ大学の関係者とも会合を持った。アルテミス・チームは審査に際し、地球温暖化の防止目標達成に向けたフィンランドの国家戦略の中に、後の世代や環境を守れる方法で放射性廃棄物を安全に管理することが含まれている点に注目。今回のミッションに参加した米原子力規制委員会(NRC)のJ.タッパート・チームリーダーは、「使用済燃料の深地層処分場建設計画も含め、フィンランドは国家戦略を効率的に実行している」と評価した。その上で、「IAEAの安全基準や技術的ガイダンスに基づいて、国際的な専門家が独立の立場で評価と助言を行うこのピア・レビューを通じて、我々はフィンランドが約束した安全で効率的な放射性廃棄物管理プログラムの実行状況をタイムリーに確認できた」と述べた。また、フィンランド政府が今後も責任を持って、使用済燃料その他の放射性廃棄物の安全な管理政策を推進していけるよう、同チームは以下の点を勧告している。フィンランド政府が放射性廃棄物に関する現行の複雑な管理・規制を簡素化する際、法制面の矛盾が生じないよう改善する。フィンランド政府は、放射性廃棄物に関する現行の政策や戦略が同国の将来の地球温暖化対策やエネルギー戦略に対しても適切なものになるよう、引き続き評価を行っていく。フィンランド政府は、放射性廃棄物の管理に関する国家プログラムの管理・運営に際し、必要となる財源の評価を随時実施する。雇用経済省でエネルギー問題を担当するL.ヘイキンヘイモ次官は、今回のIAEAミッションについて、「提示してくれた勧告や将来のための貴重な示唆により、我々の放射性廃棄物管理政策は一層進め易くなる」と指摘。「ポシバ社の深地層最終処分場に世界初の操業許可を与える際は、特に重要になる」と強調した。同ミッションの最終報告書は、約2か月後にフィンランド政府に提出される予定である。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 16 Dec 2022
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ALPS処理水 IAEAが2回目の安全性レビュー終了
福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水((トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水))の安全性レビューに関し来日していたIAEAのミッションが11月18日、5日間の日程を終了した。ALPS処理水の放出前・中・後にわたり継続的に実施されるIAEAによる安全性レビューは、2月に続き2回目となる。〈資源エネルギー庁発表資料は こちら〉今回は、IAEA原子力安全・核セキュリティ局調整官のグスタボ・カルーソ氏を筆頭に7名のIAEA職員と、9名の国際専門家(アルゼンチン、中国、韓国、フランス、マーシャル諸島、ロシア、英国、米国、ベトナム)が来日。一行は、経済産業省、東京電力との会合で、前回レビュー後、4月に取りまとめた報告書で技術的事項として示されている横断的な要求事項と勧告事項ALPS処理水/放出水の性状放出管理のシステムとプロセスに関する安全性放射線環境影響評価放出に関する規制管理と認可ALPS処理水と環境モニタリング利害関係者の関与職業的な放射線防護――についてレビュー。特に、東京電力が11月14日に原子力規制委員会に提出した放出を管理するための組織体制の明確化、処理水中の測定対象核種の改善などを含む実施計画の変更認可申請書について、IAEAの安全基準に基づいて専門的な議論を行った。16日には、福島第一原子力発電所を訪問。希釈放出設備の工事進捗状況などを視察し同社と意見交換を行った。会見を行うIAEA・カルーソ氏(インターネット中継)18日にフォーリン・プレスセンターで記者会見を行ったカルーソ氏は、「われわれが作成するレポートはすべて一般に公開される。科学的な評価を行うことで、日本だけでなく、IAEAメンバー各国にとっても安心感を与えるものとなる」と、IAEAが堅持する厳しい国際基準と高い透明性を確保する姿勢を強調。来春に予定されるALPS処理水の放出を前に包括的な報告書を公表する考えを述べた。
- 21 Nov 2022
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COP27:「若い世代が活躍する場を」グロッシー事務局長
COP会場内の原子力パビリオンで11月10日、国際原子力機関(IAEA)のグロッシー事務局長と原子力分野の若手専門家との懇談セッションが開催された。冒頭挨拶した事務局長は、若手登壇者がいずれも途上国出身である事に触れ、多くの途上国で原子力の導入が進められている今、「こうした若手専門家が活躍できるよう支援することが、IAEAの重要なミッションの1つ」と強調した。核医学分野の医師であるエブリン・アチーン氏はケニヤ出身。 IAEA フェローとして核医学のトレーニングを受けた同国初の女性である。化学療法よりもストレスの少ない核医学をケニアで広めていきたいと考えている。事務局長は核医学でがん撲滅を目指すIAEAプロジェクトである「Rays of Hope」に言及し、同プロジェクトをアフリカでどのように展開すべきか問い掛けた。これに対しアチーン氏は「トレーニングが重要」と指摘し、 IAEA のサポートでアフリカの女性が核医学の訓練を受ける機会を増やすことができれば、非常に大きな一歩となると述べた。また、長期的なトレーニングでは多額の費用がかかるため、医師が短期的なトレーニングを受け、そのノウハウを地元に還元する仕組みが構築できるとよいと語った。またアチーン氏は、アフリカでは国ごとにプライオリティや人材のレベルが大きく異なるとし、同プロジェクトの実施にあたっては「国ごとに異なる既存のがん治療のニーズに合わせ、それぞれの政府と協力するべき」と強調した。そしてケニアの場合は、放射性同位体製造施設が必要だと訴えた。ディナラ・ヤマコバ氏はカザフスタン出身。カルフォルニア大学バークレー校でエネルギーを専攻している。事務局長から世界で原子力はどのように活用されていくと思うかと尋ねられたヤマコバ氏は、途上国対象と前置きした上で、「発電だけでなく水素製造や海水淡水化へのニーズが高まっている」と指摘。「原子力がそれを実現する大きな可能性を秘めている」と思いを語った。ビシシ・スナシー氏はアフリカの島国モーリシャス出身で、北米原子力青年ネットワーク連絡会(NAYGN)の代表。原子力について「私自身18歳で国を出るまで原子力の存在を知らなかった。知った時は衝撃だった」と語った。そして原子力にはSDGs に影響を与える数多くのメリットがある。地域の学校に出かけるなどして気候変動対策における原子力のメリットを若い人にもっと知らせていきたいと語った。ウォチェック・ザコウスキ氏はポーランド出身。コンサルタントを務めている。新規建設の経済的側面について、このほど発表されたポーランドでの新規建設計画を例にあげ「原子力は再生可能エネルギーよりも長期間稼働し、はるかに大きな雇用を生む」と強調した。そして建設段階で1万人、50年運転するとしても4万人の雇用を生むとの見通しを示した上で、直接雇用だけでなく、間接的に地域社会のあらゆるレベルにポジティブな経済効果を与えると指摘した。事務局長は懇談の最後に「多様なバックグラウンドを持つ、多様な専門分野の人材の力で、原子力が前に進んでいる」、「今すぐとは言わないが君たちの目指す世界はすぐそこまできている」と語り、「私たちの世代の使命は若い世代が活躍する場を用意すること」と結んだ。
- 18 Nov 2022
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