IAEAの低濃縮ウラン備蓄バンクに初荷がオラノ社から到着
国際原子力機関(IAEA)は10月17日、加盟国の民生用原子力発電所で濃縮ウランの供給を保証するため、カザフスタンに設置した「低濃縮ウラン(LEU)備蓄バンク」に、仏国のオラノ・サイクル社から最初のLEUが到着したと発表した。これにより、IAEAが保有しカザフスタンが管理する同バンクは正式に運営を開始。IAEAは1957年の創立以来、最も意欲的かつ挑戦的なプロジェクトが本格的に始動したとしている。IAEAは昨年11月、一般競争入札で選定したオラノ・サイクル社、およびカザフの国営原子力企業カザトムプロムと、原子力発電所用燃料の原料となるLEUの購入契約を締結した。今回、オラノ・サイクル社から出荷されたシリンダー32本分のLEUは、まず仏国の港までトラックで輸送され、その後海路でロシアに到着。そこから列車により、カザフスタン北東部オスケメン市にあるウルバ冶金工場(UMP)の特設貯蔵施設(=写真)に運ばれた。到着までに4週間以上を費やしたが、今回のLEUは典型的な100万kW級軽水炉に装荷される1回分の取替用燃料に十分な量。今年末までには、カザトムプロムから2回目の積荷が到着することになる。核燃料の供給を保証しつつ、核物質の拡散リスク軽減も目指すという多国間管理システムの構築は2003年にIAEAのM.エルバラダイ事務局長(当時)が初めて提唱。2010年12月にIAEA理事会は、これを設置することを決定した。IAEAのLEU備蓄バンクは、商業市場その他の既存ルートからLEU供給が途絶した場合の最終手段として、IAEA理事会の適格性基準を満たした加盟国のみが利用できる。100万kW級の軽水炉を3年間運転するのに十分な最大90トンを備蓄する方針で、施設の安全・セキュリティはカザフ政府が責任を負い、同国の法制と規制要件に準じて運営される。また、LEUはIAEAの保障措置管理下に置かれ、利用国にはIAEAの包括的保障措置協定の締結と遵守が義務付けられる。IAEAは2015年8月、同バンクのホスト国となることを希望したカザフとバンクの設立協定を締結しており、2017年8月にはUMPで同バンク用のLEU貯蔵施設が完成した。設立経費とその後20年間の運営費については、米国と同国の民間団体「核脅威イニシアチブ(NTI)」、欧州連合(EU)、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、ノルウェー、カザフスタンから合計約1億5,000万ドルが拠出されている。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月18日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)