日本原子力産業協会とカナダ原子力協会(CNA)は6月19日、東京都港区の在日カナダ大使館で「第1回 日本・カナダ原子力フォーラム」を開催。80名を超す参加者が詰めかけた。両協会は、2021年に協力覚書を締結しており、今回のフォーラムはその活動の一環。両国の原子力産業界のさらなるビジネス交流の促進を図り、協業の在り方を模索するのが目的。カナダ側はCNAのほか、原子力研究所、在日カナダ商工会議所、各州政府在日事務所、原子力関連企業らが参加した。冒頭挨拶に立ち、日本原子力産業協会の増井理事長は、「CANDU炉に象徴されるように、カナダは原子力技術の面で世界をリードし、日本とはウラン供給などにおいて長年協力関係にある。また、西側諸国初のSMR(BWRX-300、30万kWe)実用化計画が進むダーリントン原子力発電所において、日本企業が関与するなど、以前から着目していた国のひとつだ。このフォーラムを通じて両国の新たな連携の芽が育まれる契機となってほしい」と述べた。CNAの一行は翌20日、福島県双葉郡に位置する東京電力廃炉資料館と、福島第一原子力発電所を視察。廃炉資料館では、東日本大震災の発生から原子炉の冷温停止までの経緯や、現在進められている廃炉作業の詳細について、映像や展示物を通じて説明を受けた。また、福島第一では、1~6号機の現状や処理水の海洋放出の流れ、燃料デブリの取り出しに関する取り組みについて、約1時間の構内バスツアーを通じて視察し、理解を深めた。CNAのジョージ・クリスティディス理事長は福島県での視察を終えて、「日本の原子力産業界関係者のレジリエンスに大きな感銘を受けたほか、緻密に計画された工程で廃炉作業に取り組んでいることを学んだ。この事故によって発生した犠牲や痛みを軽んじるつもりは一切ないが、ここで得られた知識や技術には大きな価値がある」と述べ、福島第一での経験が、今後多くの国の廃炉プロジェクトにも活かされるとの期待を示した。
23 Jun 2025
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内閣府は6月4日、核融合エネルギーの開発と推進を掲げた「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を改定した。2023年に策定された同戦略の改定は今回が初めてで、「世界に先駆けた2030年代の発電実証を目指す」と明記し、実現に向けた具体的な指針を打ち出した。改定された同戦略の冒頭では、日本の低いエネルギー自給率を踏まえ、化石燃料からクリーンエネルギーへの移行と同時に、エネルギー安全保障を確保する重要性が強調されている。昨今の異常気象の激化や地政学的リスクの高まりを背景に、核融合はCO₂を排出せず、海水中に豊富に存在する重水素を燃料とすることで、資源の偏在性を克服できる。こうした特性から、核融合は現代の多様なエネルギー課題を解決する可能性を秘めた「夢のエネルギー」として注目されている。今回、内閣府は今後10年を見据え、「フュージョンエネルギーの産業化」をビジョンに掲げた。次世代のグローバルエネルギーとして期待されるフュージョンエネルギーの実用化に向け、技術的優位性を活かして市場での勝機を狙っている。今回の戦略改定を通じて、国が主導して開発を進める姿勢を打ち出すことで、民間からの投資を呼び込む狙いがある。そして、改定後の最初の協力国として英国を選出。両国は核融合技術の開発協力に関する覚書を交わし、6月19日にロンドンで署名式が行われる予定だ。施設の相互利用や人材育成、安全規制の整備でも協力する方針だという。
19 Jun 2025
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三菱重工業は6月17日、英国のサイズウェルC(SZC)原子力発電所1~2号機(EPR-1750、172万kWe×2基)向け海水ポンプなど、計5機種34台を受注したことを明らかにした。同社は今後、兵庫県の高砂製作所にてポンプを製造し、運転試験を実施予定の英国トリリアム・フロー・テクノロジーズ社に、順次納入を進める。このトリリアム社が、プロジェクト管理、モーターの調達、工場試験、現地据付指導を手掛ける予定だ。SZCは、フランス電力(EDF)と英国政府が英国東部のサフォーク州サイズウェルにて計画するプロジェクトで、英国ですでに建設が始まっているヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所1~2号機(EPR-1750、172万kWe×2基)と同一設計。三菱重工はこれまでに、HPC向けにポンプ5機種、計34台を受注・製作しており、今回もその流れを受けた受注となった。
18 Jun 2025
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東北電力は6月16日、2024年3月に竣工した女川原子力発電所(BWR、82.5万kWe×2基)の防潮堤かさ上げ工事が、2024年度の公益社団法人土木学会の「技術賞」、および、公益社団法人地盤工学会の「技術業績賞」を受賞したと発表した。いずれの賞も、土木・地盤分野における優れた技術や、社会の発展に大きく寄与したことが認められたプロジェクトに贈られる最高峰の技術賞で、同社としては初の受賞となった(施工した鹿島建設株式会社と共同受賞)。2013年5月に着工した同工事は、東日本大震災の教訓と最新の科学的知見を踏まえ、津波や地震などの自然災害に対する安全性をさらに高めることを目的に実施された。津波の流入を防止するため、岩盤を支持層とした鋼管式鉛直壁およびセメント改良土による盛土堤防で構成された「防潮堤」を敷地の海側に設置。海抜約29mという国内最大規模の高さを誇る。また、防潮堤の前面には漂流物防護工を設置し、漂流物衝突や地盤液状化などの複合リスクに対応した構造となった。工事途中には、安全性向上のための追加補強や、施工済みの杭の深部の地盤改良など、難易度の高い工事がいくつも発生したが、さまざまな技術的工夫を重ね、品質と安全を確保しながら、2024年3月に完成。こうした課題克服に向けた工夫や技術開発が、社会や技術の発展に大きく貢献したものとして、高く評価された。同社は「引き続き『原子力発電所の安全対策に終わりはない』という確固たる信念のもと、さらなる安全性向上に取り組んでまいります」とコメントしている。
17 Jun 2025
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日本原子力産業協会は6月13日、定時社員総会を日本工業倶楽部(東京・千代田区)で開催し、2024年度決算および事業計画、2025年度の事業計画・予算案がそれぞれ報告、承認された。総会には、委任状を含む合計322人の会員が出席した。新理事には安藤康志電気事業連合会副会長、竹内努東芝エネルギーシステムズ取締役パワーシステム事業部長CNO、中西宏典発電設備技術検査協会理事長の3氏が就任した。総会の冒頭、日本原子力産業協会の三村明夫会長は、「今年は第7次エネルギー基本計画が閣議決定し、原子力の最大限活用が明確に打ち出され、ファイナンス、サプライチェーン、人材確保・育成といった課題への対応が盛り込まれた。原子力政策がようやく正常化し、力強く前に進みはじめたことは、原子力産業界全体にとって心強いかぎりだ」とコメント。その上で、原子力最大限活用の課題として、1.既設炉の再稼働と建設中プラントの早期完成2.新規建設の具体化3.原子燃料サイクルの確立と高レベル放射性廃棄物の最終処分を挙げた。そして、既設炉の再稼働と建設中プラントの早期完成について、「昨年の女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kWe)と島根原子力発電所2号機(BWR、82.0万kWe)の再稼働により、BWRのサプライチェーンにも動きが見られた一方で、全国には運転開始に至っていないプラントも多く、再稼働の加速が求められる」と指摘。「次世代に安心感と使命感を伝えるには、早期再稼働と現場の安定運営が必要だ」と語った。新規建設の具体化については、「持続可能な技術力の活用やサプライチェーン、人材の確保を支えるためにも、新設計画の着手は喫緊の課題」と述べ、政府に対して、「資金調達や投資回収の事業環境整備を早急に進めるよう求めていきたい」と語った。原子燃料サイクルと高レベル放射性廃棄物の最終処分については、「原子燃料サイクルの確立は、原子力の安定的な活用の前提条件」とした上で、関係者の連携によるさらなる前進を呼びかけた。また、来賓として挨拶に立った加藤明良経済産業大臣政務官は、「世界的に原子力の導入・再稼働が加速する中で、日本も脱炭素・エネルギー安定供給の柱として原子力を最大限活用するために、再稼働や新設、次世代革新炉の開発が重要」と強調。国内原子力産業の基盤・人材の維持強化、海外展開支援にも取り組む意向を示した。政府は政策と予算面で環境整備を進め、産業界には具体化と加速を期待。官民連携で原子力政策の実行を進める必要性を訴えた。同じく来賓の赤松健文部科学大臣政務官は、文部科学省として、次世代革新炉の研究開発や人材育成を強化していく方針を示し、高速実験炉「常陽」や、高温ガス炉のHTTRを活用した実証、核融合エネルギーの官民連携に言及した。さらに、先進的原子力教育コンソーシアム(ANEC)を軸とした産学連携による人材育成の取り組みを重視する考えを強調。産業界の協力を求めつつ、同分野での今後の連携強化に期待を寄せた。
16 Jun 2025
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北海道電力は6月11日、泊発電所(PWR、57.9万kWe×2基、91.2万kWe×1基)の再稼働に向けた安全対策の一環として、同発電所の構外北側に新港を建設する計画を発表した。同社は、泊発電所の北側・渋井地区に新たな荷揚場と専用道路を整備し、将来の原子燃料の事業所外運搬に備える計画だ。輸送ルートは新設するトンネルや橋を活用し、周辺の居住地に影響が出ないように設計。防護フェンスや監視カメラ、警備員の配置など、構外においても構内と同等の安全対策を徹底し、異常事態への対応も既存の防災計画に基づいて行う。例えば、泊発電所専用港湾に停泊する燃料等輸送船が、津波に伴い漂流し、防潮堤など津波防護施設を損傷させる可能性がある。これを防ぐために、燃料等輸送船を泊発電所専用港湾に入港させず、構外に新たに設置する荷揚場にて燃料等の搬入出を行うことも可能となる。同社は「引き続き、荷揚場および専用道路の新設に向けて、原子力規制委員会はもとより、その他関係機関、地元の皆さまをはじめ、道民の皆さまにご理解いただけるよう、しっかりと説明を尽くしてまいります」とコメントしている。
13 Jun 2025
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東京電力は6月10日、柏崎刈羽原子力発電所6号機(ABWR、135.6万kWe)で、燃料装荷を開始した。6号機は、新規制基準を踏まえた安全対策工事の施工や、燃料装荷までに行う使用前事業者検査を実施し、同日、原子力規制委員会の承認を受けている。また、5月22日の稲垣武之柏崎刈羽原子力発電所長の定例会見にて、同社の保安規定に定められた、重大事故が発生した際の対応が出来るかを確認する「シーケンス訓練」と「大規模損壊訓練」をそれぞれ5月13日から15日と、5月21日に実施したことを報告した。6号機では制御棒を挿入した後、使用済み燃料プールにある872体の燃料を1体ずつ専用の装置でつり上げて原子炉に移し、約2週間かけて順次装荷していく予定。これにより、再稼働に向けた準備が先行する柏崎刈羽原子力発電所7号機(ABWR、135.6万kWe)に続き、技術的な準備が最終段階に入る見通し。順調に進めば、8月中にも再稼働が可能な状態となる。同社は、今回の燃料装荷について「課題等が見つかれば立ち止まり、必要な対策を講じる」とコメントしている。
12 Jun 2025
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「リーゼ・マイトナー・プログラム(LMP)」の開講式が、6月9日、国際原子力機関(IAEA)と内閣府の共催で、東京大学で開かれた。原子力分野の実務経験者や、博士課程等を専攻する女性を対象とした人材育成研修プログラムで、今回が初の日本開催となる。LMPはIAEAのリーダーシップの下、原子力分野の実務者や博士課程を専攻する女性を対象とした人材育成研修として2023年にスタート。これまで米国、韓国、アルゼンチンで開催された。今回は81か国から373名の応募があり、選ばれた15名が参加した。多くの応募があったことについて、東京大学大学院工学系研究科原子力専攻の出町和之准教授は「日本という国に魅力を感じている応募者が多いようだ。また、福島第一原子力発電所の視察など、日本ならではのプログラムの前評判も良い」と話した。また、同プログラムを通して、参加者の技術的知識やリーダーシップ・スキルの強化が図られ、原子力分野でより多くの女性の活躍が促進されるよう期待を示した。約2週間にわたり開催される同プログラムでは、前半は座学研修、後半は原子力関連施設への視察が予定されている。座学研修では、IAEA、東京大学、東京電力、原子力関連メーカーなどの担当者より、原子力安全や廃棄物管理などをテーマに講義を実施。また、現地視察では、中部電力の浜岡原子力発電所、東京電力の福島第一原子力発電所や廃炉資料館、日本原子力研究開発機構の原子力人材育成・核不拡散・核セキュリティ総合支援センター、大洗研究所、原子炉安全性研究炉(NSRR)、楢葉町遠隔技術開発センターなどを視察する予定だ。また、静岡県内では日本文化を体験するプログラムも用意されており、事務局担当者は、「以前、韓国で実施された際には文化体験の評価が高かったと聞いている。日本ならではの企画を通じて、参加者同士の円滑なコミュニケーションの促進につながれば」と話している。
11 Jun 2025
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核融合エネルギーの開発ベンダーである「EX-Fusion」は6月5日、総額約26億円の資金調達を実施したと発表した。同社は、大阪大学出身の若手研究者によるスタートアップ企業。これまでに30億円の資金調達を実施しており、累計調達額は56億円となった。核融合の代表的な方式としては、ドーナツ型の燃料プラズマを生成し、それを太陽のように高温・高密度の状態にして磁場で閉じ込める「トカマク型」や、物体がその場にとどまろうとする慣性の法則を利用し、一瞬だけ閉じ込めたプラズマにレーザーなどを照射して加熱し、瞬間的な核融合反応を繰り返す「レーザー型」などがある。核融合は、エネルギー効率の高さや豊富な燃料資源、高い環境保全性がメリットで、脱炭素化とエネルギー安全保障の観点から、世界各地で開発が進められており、日本政府も2030年代の発電実証を目指している。同社は今回の資金調達により、1秒間に10回の核融合反応を連続的に起こす連続運転の実証を目指す。実証できれば、高出力レーザーや光制御技術を通じて、発電以外にも、加工、医療、宇宙など多分野への応用が可能となる。同社は「レーザー核融合を起点に新たな光産業を創出し、エネルギーと産業の姿を変えていきたい」と強く意欲を示している。
10 Jun 2025
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GX脱炭素電源法が、6月6日に全面的に施行された。同法案は、脱炭素電源の利用促進を進めながら電力の安定供給を保つために整備された法案で、計5本の法改正を束ねて2023年5月に成立した。このうち、原子力発電に関連する「電気事業法」や「原子炉等規制法」の改正により、実質的に「60年超」運転が可能となった。運転期間の原則40年、最大60年という枠組みは維持されたが、新規制基準の審査や司法判断など、事業者が予見しがたい事由による停止期間が、運転期間のカウントから除外されることになった。例えば、関西電力の高浜発電所1号機(PWR、82.6万kWe)は、審査等で約12年半稼働していないため、運転開始から72年後の2047年頃まで稼働可能となる。一方で、高経年化炉に対する安全規制は強化された。運転開始から30年を超える原子炉については、10年以内ごとに「長期施設管理計画」を策定し、原子力規制委員会の認可を受けることが義務付けられた。
06 Jun 2025
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関西電力とフランス電力(EDF)は6月3日、美浜発電所(PWR、82.6万kWe×1基、ほか2基が閉鎖)とビュジェイ発電所(PWR、94.5万kWe×2基、91.7万kWe×2基、ほか1基が閉鎖)との間で「姉妹発電所交流協定」を締結した。協定の締結期間は5年で、当日は福井県美浜町の美浜原子力PRセンターにて調印式が実施された。双方の発電所長らが年に1回程度、交互にプラントを訪問し、設備運用、技術、人材育成など幅広い分野で知見を共有することが目的。両社はすでに、2010年から原子力分野における包括協力協定を締結しており、今回の協定はその関係をさらに深めることになる。両発電所は、ともに40年超運転や廃止措置を実施しており、安全性や信頼性向上に向けた情報交換の強化が期待されている。
05 Jun 2025
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九州電力は6月3日、川内原子力発電所(PWR、89.0万kW×2基)で設置工事を進めてきた「廃棄物搬出設備」の工事が完了し、運用開始したことを発表した。同設備は、原子力発電に伴って発生する低レベル放射性廃棄物のうち、雑固体廃棄物と呼ばれる金属類などを、安全かつ効率的に処理・搬出するためのもの。「圧縮固化処理棟」と「固体廃棄物搬出検査棟」から構成され、廃棄物を圧縮した後、モルタルで固化し、「充填固化体」として搬出する仕組み。年間約1,500本のドラム缶を処理する計画だ。搬出先は、青森県六ケ所村にある日本原燃の低レベル放射性廃棄物埋設センターで、2027年度以降の搬出開始を予定している。なお、液体の低レベル放射性廃棄物については、川内原子力発電所の運転開始当初から固化設備を導入し、アスファルトで均質・均一に固化した上で搬出を行ってきた。今回の新設備の導入により、固体廃棄物についても、発電所のサイト内で充填固化体として搬出できるようになり、廃棄物の処理体制が強化される。九州電力は運用を開始するにあたり、「地域の皆さまに安心し、信頼していただけるよう、引き続き、低レベル放射性廃棄物の計画的な搬出に取り組んでまいります」とコメントしている。
04 Jun 2025
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原子力規制委員会(NRA)は5月28日、東北電力女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kW)と関西電力高浜発電所構内における、使用済み燃料乾式貯蔵施設の設置計画を許可した。東北電力は2024年2月に、関西電力は2024年3月に、乾式貯蔵施設設置に向けた原子炉設置変更許可をそれぞれ申請していた。乾式貯蔵施設とは、プールで一定期間冷却した使用済み燃料を、「キャスク」と呼ばれる金属容器に収容し、空気の自然対流によって冷却する方式の貯蔵施設である。水や電源を用いないため、維持管理が比較的容易であり、米国やスイスをはじめとした海外で多くの実績がある。日本では貯蔵はあくまで一時的なものであり、使用済み燃料の再処理を前提に行われているが、燃料の搬出先となる日本原燃の再処理工場の完成が延期(2026年度竣工予定)となっており、使用済み燃料の保管能力の確保は各電力会社にとって喫緊の課題であった。日本国内では、すでに日本原電東海第二発電所で乾式貯蔵が実施されているほか、東京電力と日本原電が共同出資したリサイクル燃料備蓄センター(青森県むつ市)にも昨年、使用済み燃料の搬入が開始されている。また、今回認可を受けた女川および高浜は、発電所構内の乾式貯蔵施設としては新規制基準施行後、四国電力伊方発電所、九州電力玄海原子力発電所に続き、3、4か所目の合格となった。
03 Jun 2025
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日本原子力産業協会の増井秀企理事長は5月30日、定例の記者会見を行い、4月に開催された「第58回原産年次大会」の総括をはじめ、最近の海外出張の報告や今後の取組みについて説明した。増井理事長はまず、4月8日、9日に開催された原産年次大会の総括が30日に公表されたことを受け、その概要を報告。「原子力利用のさらなる加速―新規建設の実現に向けて」を基調テーマとして掲げた同大会について、「安定したサプライチェーンと人材確保、国による明確なビジョンと戦略が不可欠という認識が改めて共有された」と総括した。さらに、海外登壇者を招いたセッションでは、海外の成功事例や教訓を踏まえた課題と対応策の議論を通じて、「新規建設の重要性を改めて発信する機会となった」と振り返った。記者から、「国内外の若手技術者による講演や、学生パネリストを交えたグループディスカッションに特に大きな盛り上がりを感じたが、この熱気をどのように一般の人に伝えていくか」と問われたのに対し、増井理事長は、「当協会が長年実施している出前授業が果たす役割は大きい。エネルギー問題への関心が高まるような施策を、これからも進めていきたい」と今後に意欲を示した。 また、増井理事長は、4月15日~17日にカナダ・オタワで開催されたカナダ原子力協会(CNA)の年次大会に参加。さらに、4月29日~30日に韓国・ソウルで開催された「第40周年記念韓国原子力産業協会(KAIF)年次大会」にも出席し、それぞれの参加概要を報告した。韓国では、日本の原子力発電の現況を発信するとともに、国際展開を志向する会員企業を海外企業に紹介したことなどを説明した。このほか、中国核能行業協会(CNEA)主催の「中国原子力開発フォーラム―2025年国際サミット春(CNESDS)」や、同時開催された「第16回中国原子力産業国際展示会(CIENPI)」にも参加。JAIFブースの出展に加え、CNEA協力のもと、中国の原子力関係施設への視察を行ったことも明らかにした。
02 Jun 2025
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IHIは5月27日、神奈川県横浜市の自社工場で、原子炉建屋の壁として使われる鋼製構造物の試作品を報道陣に公開した。これは、米国のニュースケール社がルーマニアで建設予定のSMRプロジェクトに使用されるもの。SMRは従来の原子炉よりも小型で、1基あたりの電気出力が30万kW以下。機器やシステムは工場で製造し、モジュール化して立地サイトに搬送することで、プレハブのように現地で組み立てることができる。そのため、量産化が容易で、工期短縮やコスト削減が期待されている。データセンターの急増などで電力需要が高まる中、CO₂を出さない脱炭素電源として世界的に注目されている。同社はこれまでの原子炉圧力容器の製造などで、高い技術を保有しており、同社はこうした海外案件を通じて技術継承や人材育成を図る狙いがある。また、国際的な原子力サプライチェーンの構築にも取り組む。同社は「これらの事業を通じて、技術力の維持・強化や、国内サプライチェーンの拡大にも貢献していきたい。さらに次世代革新炉に対するグローバル展開を推進し、国内外の原子力の安全・事業の発展と、2030年代には売上1,000億円を目指していく。」とコメントを発表している。
30 May 2025
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電気事業連合会は、5月20日、俳優の今田美桜さんが出演する新テレビCM「電気とひとの物語・冷蔵庫あけたら」篇、「電気とひとの物語・この撮影も」篇(各30秒)を、全国で放映開始した。また、5月27日から、新Webムービー「伝わるのは今だ-episode1-」の配信をスタートさせている。先行して公開されたテレビ CM では、日常のなかにある電気のありがたさや、そこに込められた人の思いをやさしく伝える内容となっている。新Webムービーでは、今後の電力需要の増加を見据え、CO₂を排出しない原子力や再生可能エネルギーの活用、火力の脱炭素化といった課題への取り組みを、ドラマ仕立てで紹介。日本のエネルギー自給率が約15%と低い現状を背景に、各電源をバランスよく組み合わせる「エネルギーミックス」の重要性を訴える内容となっている。今田さんがシリアスな表情を崩さずに、若干強引気味に説明するシーンがコミカルで、SNS上では早くも話題になっているようだ。Webムービーの最後には「エネルギーのこと、知ってほしいのは今だから」というメッセージが添えられており、若い世代をはじめ、多くの人にエネルギー問題を身近に感じてもらいたいという思いが込められている。また、電事連では安全性を最優先に、「安定供給」「経済効率性」「環境への適合」の3要素を同時に満たす「S+3E」の実現を掲げており、新しいテレビCMとWebムービーを通じて、こうした取り組みを伝えている。
28 May 2025
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日本原燃は5月21日、青森県六ヶ所村にあるウラン濃縮工場について、設備の設計および工事計画の認可申請を原子力規制委員会(NRA)に提出した。申請の対象は、年間150トンSWU(分離作業単位)の処理能力を持つ「2号カスケード設備(RE-2C)」を含む複数の設備。今後、老朽化した機器を新型の遠心分離機などへ更新し、安全性と効率の向上を図る。今回の申請では、新型遠心分離機の導入に加えて、耐震評価、追加の安全対策を実施。また、ウラン化合物を取り扱う六フッ化ウラン処理設備や高周波電源設備、放射線監視設備、非常用設備についても同様に設備更新や追加の安全対策が行われる予定だ。今回、申請分の設備は2028年度中の完成を見込んでいる。
23 May 2025
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中国電力は5月21日、運転中の島根原子力発電所2号機(BWR、82.0万kWe)に係る「長期施設管理計画」が、原子力規制委員会(NRA)から認可されたと発表した。同機は、2024年4月に、高経年化技術評価制度に基づき長期運転に関する認可を受けた。その後、原子炉等規制法の改正に伴い、運転開始から30年を超えて原子力発電所を運転する場合、経年劣化に関する評価を行い、今後実施すべき具体的な保全活動をとりまとめた長期施設管理計画を申請し、原子力規制委員会から認可を受けることとなった。今回は、原子力規制委員会が2025年5月14日までに行った審査内容に基づく補正を経て、正式に認可されたもの。島根2号機は1989年2月に営業運転を開始。すでに運転開始から36年が経過しており、長期施設管理計画の対象期間は、制度施行日である2025年6月6日から、運転40年目を迎える前日である2029年2月9日までとなっている。
22 May 2025
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日本原子力発電は5月19日、廃炉作業中の敦賀発電所1号機(BWR、35.7万kWe)の廃止措置工程について、完了時期を当初計画の2040年度より7年延期し、2047年度の完了を目指す方針を明らかにした。あわせて、同発電所が立地する福井県及び敦賀市に報告するとともに、原子力規制委員会(NRA)に廃止措置計画の変更届を提出した。敦賀1号機は、1970年3月に営業運転を開始した国内初の商業用軽水炉で、2017年から廃炉作業が進められている。廃止措置は3段階で構成されており、現在は第1段階にあたる「原子炉本体等解体準備期間」にある。すでに、解体で発生する廃棄物を効率的に移送するルート確保のため、原子炉建屋、タービン建屋内の設備や軽油貯蔵タンク等の解体、撤去工事を実施中で、2026年度から原子炉本体の解体に着手する計画だった。しかし、原子炉格納容器の一部であるサプレッション・チェンバの解体を予定していたメーカーが、事情により受注を辞退。その後、別のメーカーを選定したが、解体用装置の開発に時間を要することから、廃止措置の完了時期を延期することになった。日本原子力発電は「引き続き安全確保を最優先に、敦賀1号機の廃止措置を着実に進めるとともに、丁寧な情報発信に努めていく」とのコメントを発表している。
21 May 2025
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九州電力は、5月19日、2035年度までの長期経営計画を説明する記者会見の場で、従来の原子力発電所より安全性を高めた「次世代革新炉」の開発・建設を検討することを発表した。6月に代表取締役社長に就任予定の西山勝取締役常務執行役員は、「原子力を検討していくことは、エネルギー事業者として必須。ただ、具体的に検討していくためには、(資金調達など)さまざまな前提条件が揃わなくてはいけない」と説明し、慎重に判断する姿勢を示した。同社は現在、川内原子力発電所1・2号機(PWR、89.0万kWe×2基)と玄海原子力発電所3・4号機(PWR、118.0万kWe×2基)の計4基を所有、運転している。政府が2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画では、廃炉を決めた原子力発電所の代替として、同一事業者が発電所のサイト内に新設することを「建て替え」として容認。玄海原子力発電所1・2号機(PWR、55.9万kWe×2基)の廃炉を進める同社にとって、新設への道が開かれた形となっていた。具体的な新規建設サイトへの言及はなかったが、川内原子力発電所3号機(APWR、159.9万kWe)の建設予定サイトが次世代革新炉の設置場所の候補とみる向きも多い。
20 May 2025
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九州電力は5月19日、玄海原子力発電所(PWR、118万kWe×2基)において、使用済み燃料乾式貯蔵施設の設置工事を開始した。既存の燃料プールに加え、乾式貯蔵方式を導入することで、中間貯蔵手段の多様化と貯蔵余裕の確保を図る。2027年度の運用開始を目指している。同施設では、15年以上冷却した使用済み燃料を金属製の乾式貯蔵容器に封入し、専用の建屋に貯蔵する。最大960体の燃料集合体を貯蔵可能で、施設は地中構造を含む高さ約30メートル、幅約50メートル、奥行き約60メートルの規模となる。使用済み燃料を封入する貯蔵容器は、金属製の多重構造となっており、空気の循環によって冷却される設計だ。乾式貯蔵方式は、冷却に水や電源を必要としない構造から、地震や津波などの自然災害時にも高い安全性を確保できるとされ、国内外での導入が進んでいる。玄海発電所の乾式貯蔵施設については、2019年1月に原子炉設置変更許可を申請。2021年4月に許可されると、その後2024年6月に設計・工事計画の認可を申請し、今年4月30日には最終的な認可を得ていた。
20 May 2025
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新潟県は5月16日、柏崎刈羽原子力発電所6,7号機(ABWR、135.6万kWe×2基)において事故が発生した場合の、被ばく線量シミュレーションを公表した。シミュレーションは、原子力規制委員会(NRA)の検討チームが実施した手法をもとに、気象条件など柏崎刈羽地域の実情に合わせて行った。7日後のベント実施や、6・7号機が同時に事故を起こすケースなど、計6通りのシナリオを想定。事故発生後の時間経過に伴う被ばく線量の変化や、防護措置の実施タイミングをそれぞれのケースごとに分析し、IAEAが定める各種基準と比較評価した。今回のシミュレーションでは、発電所から2.5キロメートル圏内では、避難や屋内退避を必要とする100ミリシーベルト/週の実効線量に達する可能性があること、また、4.5キロメートル圏内では、安定ヨウ素剤の服用が推奨される50ミリシーベルト/週に達する場合があることが示された。いずれもフィルタベントを使用した複数のケースで確認されている。一方、発電所から概ね30キロメートル圏内のUPZ(緊急時防護措置準備区域)では、被ばく線量が、IAEAの基準値には達しないことが確認された。屋外にいた場合でも被ばく線量は十分低く、特に鉄筋コンクリート造の施設など屋内退避を行うことでさらに被ばく線量が低減されると分析した。今回の結果は、6月1日、7日に開催する県民への説明会にて説明される予定となっている。
19 May 2025
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原子力規制委員会(NRA)が4月30日、北海道電力の泊3号機(PWR、91.2万kW)について、再稼働に向けた安全対策が新規制基準に適合すると認めた審査書案を了承したことを受け、同電力は5月15日、札幌市で開催された道の原子力専門有識者会合で、同審査書案について説明を行った。今後、北海道電力は、有識者の指摘を踏まえ、3号機の再稼働に向けて必要な対策を盛り込んだ、一般向け説明資料をとりまとめ、公開する方針だ。なお、審査書案は、5月30日までパブリックコメントに付せられている。会合では、前回有識者から要望があった道民向けの説明資料について、北海道電力が、基準津波、対津波設計方針、基礎地盤と周辺斜面の安定性評価、重大事故等対処施設などの項目ごとに、より分かりやすく、内容を充実させた説明を実施。一方で、一部有識者からは、更なる情報の深掘りを求める声が上がった。津波の年超過確率、制御棒の自重落下やホウ酸水を使った原子炉出力抑制、審査対応状況に関する記載などに関して、さらに分かりやすい説明を求める意見が出された。現在、北海道では、次世代半導体の量産を目指す新工場建設や、国内最大級のデータセンターが建設予定。今年1月に電力広域的運営推進機関(OCCTO)が公表した最新の需要想定報告書によると、北海道エリアの需要電力量(送電端)は、2024年度(推定実績値)の292.14億kWhから2034年度には328.95億kWhへと大幅な増加が見込まれている。
16 May 2025
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「全国原子力発電所所在市町村協議会」(全原協、会長=米澤光治・敦賀市長)の年次総会が5月12日、都内で開催された。全国の原子力発電所などを立地する会員25市町村の首長らが一堂に会し、国に対して原子力・エネルギー政策に係る提言を行うもの。2025年度の活動として、「被災地の復興」、「安全規制・防災対策」、「原子力政策」、「立地地域対策」の分野で、計67の重点項目を掲げ、国・関係機関に要請していくことが了承された。総会には、政府より、竹内真二・経済産業大臣政務官、赤松健・文部科学大臣政務官他、内閣府、原子力規制庁、国土交通省も含め、関係省庁の幹部らが出席。立地地域との質疑応答に臨んだ。米澤会長は、政府関係者との意見交換に先立ち、「立地地域は様々な課題を抱えている」とした上で、2月に閣議決定された新たなエネルギー基本計画で「原子力を最大限活用」と明記されたことに鑑み、「今だからこそ、原子力政策の最前線に立つ立地地域の声を今後の政策に反映させて欲しい」と強調。さらに、「できるだけ地元の国会議員にも聴いてもらいたい」とも要望した。今回は、政界から、メーカーで原子力技術に携わっていた経験のある衆議院議員の森英介氏や、自民党政調会長などを歴任した同・稲田朋美氏らが出席。地域の声に耳を傾けた。今回の意見交換では、8市町村が発言。原子力防災に関し、大間町の野﨑尚文町長は、半島特有の課題に鑑み、大間町と函館市を結ぶフェリー「大函丸」の更新に言及。道路に限らない「防災インフラ」の充実化が図られるよう航路維持に係る補助金の創設を要望した。先般原子力規制委員会が策定した屋内退避の考え方に係る意見もあり、BWRとして再稼働した東北電力女川原子力発電所を立地する石巻市の渡邉伸彦副市長は、市内全域がUPZ圏内にあることを踏まえ、市民に分かりやすいQ&A資料の制作・公開を要望。人材育成の関連では、美浜町の戸嶋秀樹町長が、エネルギー環境教育体験館「きいぱす」、福井県内高校生による全国意識調査やクリアランス金属の利活用など、次世代層への原子力に対する理解に向けた取組を紹介した。また、現在、再稼働に向け地元の理解が焦点となっている柏崎刈羽原子力発電所が立地する柏崎市の櫻井雅浩市長は、エネルギー政策、原子力規制、原子力防災のそれぞれについて意見を陳述。特に、いわゆる「地元の合意」に関し、「法に基づかないものであるが、実質法のごとく拘束力を有している現状は是正されるべき」と主張した。
14 May 2025
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