関西電力では、美浜3号機、高浜1-2号機が40年超運転に入っている。これに加え、高浜3-4号機(PWR、各87.0万kW)についても、5月29日に、運転開始から60年までの運転期間延長が原子力規制委員会により認可された。それぞれ、2025年1、6月に法令に定める40年の運転期間を満了する。両機の運転期間延長に対し、2024年7月9日、立地地域の福井県および高浜町は理解を表明。これを受け、同社では、「地元をはじめとする皆様の理解を得ながら、原子力発電所の一層の安全性・信頼性の向上に努めていく」とのコメントを発表した。今後、経年劣化に鑑み、長期的な信頼性を確保する観点から、高浜3-4号機については、蒸気発生器一式を取り替えることとしており、規制委による認可を受け、それぞれ2026年6~10月、同年10月~27年2月に実施予定の定期検査で取替工事を行う計画だ。この他、関西電力では同日、高浜1-2号機の炉内構造物の取替計画について、福井県および高浜町より、原子炉設置変更許可の申請手続きを進めるための了承を受領。今後、準備が整い次第、規制委への申請を行う予定。それぞれ、2028年6~12月、11月~2029年4月に工事を実施する計画。なお、関西電力3基の他、今夏、7月4日には、新規制基準下での再稼働で先陣を切った九州電力川内1号機が国内4基目の40年超運転に入っている。
10 Jul 2024
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日立ハイテクは7月9日、同社が成田記念病院(愛知県豊橋市)に納入した画像誘導型高精度X線治療装置「線形加速器システム OXRAY」による治療が開始されたと発表した。「OXRAY」では、初めての臨床使用となる。〈発表資料は こちら〉「OXRAY」は、日立グループが培ってきた照射技術と画像技術を統合し、2023年7月に国内販売を開始した新しい画像誘導型高精度X線治療装置で、装置の回転に自由度を高めた「O-リング型ガントリー構造」が特長。正常組織へのダメージを低減し、呼吸などに合わせて動く腫瘍に対し高い精度で治療用X線を照射することが可能なほか、患者寝台を動かすことなく多方向から連続的に照射でき、線量分布の改善とともに、患者の精神的・身体的負担の軽減にもつながる。成田記念病院では、こうした「OXRAY」の特長を評価し導入。2024年6月17日より治療を開始した。日立では、放射線治療領域において、粒子線とX線の両方で事業を展開。粒子線治療では、これまで陽子線がん治療システムで多くの海外納入実績を積んでおり、呼吸に伴う臓器の動きを捉える動体追跡技術や、がんの形状に合わせて照射できるスポットスキャニングなど、革新的技術を開発し市場に投入してきた。今後も、「『がんを恐れることのない社会』に向けて、患者一人ひとりに寄り添った、低侵襲かつ経済性に優れた放射線治療システムを提供し、患者のQOL(Quality of Life)の維持・向上と、がん治療のさらなる発展に貢献していく」としている。
09 Jul 2024
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総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=隅修三・東京日動火災保険相談役)は7月8日、脱炭素電源の現状と課題について議論した。〈配布資料は こちら〉5月よりエネルギー基本計画の見直しを開始した同分科会だが、冒頭、資源エネルギー庁の村瀬佳史長官は、今回、供給面の議論に入るのに際し、「巨額の投資、一定のリードタイムを要することから、予見性確保や時間軸を踏まえた対応が必要」と強調。技術面の課題にも言及し、有意義な議論を期待した。各電源の現状と課題に関する整理の中で、資源エネルギー庁は、原子力の脱炭素電源としての特長について、ライフサイクルCO2排出量を数値比較。電源別に、石炭火力943g-CO2/kWh、石油火力738g-CO2/kWh、LNG火力474g-CO2/kWh、太陽光38g-CO2/kWh、陸上風力26g-CO2/kWh、原子力19g-CO2/kWh、地熱13g-CO2/kWh、水力11g-CO2/kWhとなっており、「水力・地熱に次いで低い水準」と説明した。また、電力需要増の要因となるデータセンターについては、前々回の会合で、その拡大に応じた電力設備の建設リードタイムも議論となっているが、IT分野における脱炭素電源活用の海外事例として、米国企業による原子力発電所直結のデータセンター整備などが紹介された。これを受け、立地地域の立場から、杉本達治委員(福井県知事)は、原子力政策の明確化をあらためて強調。次期エネルギー基本計画策定に向け、2040年以降、発電設備容量が激減する見通しから、「開発・建設をどのように具体化していくのか」と、必要量・時間軸の明確化とともに、再処理工場の竣工時期、高経年化、人材育成など、課題を列挙し、国の責任ある対応を求めた。澤田純委員(NTT会長)は、「福島第一原子力発電所事故を忘れるべきではない」と、原子力の安全確保の重要性をあらためて強調。インフラのレジリエンスをめぐっては、昨今、集中豪雨も頻発しており、住宅密集地では大規模水害対策に備える自治体も多いようだ。同氏は、江戸川区の「水害ハザードマップ」を例示し、原子力防災に関して「天候などの状況にも応じた避難対策を準備しておくべき」などと、複合災害に備えておく必要性を訴えた。また、革新技術開発の一例として、政府主導による高温ガス炉建設を通じた投資の予見可能性向上にも言及。発生熱によるクリーン水素製造、近隣データセンターへのオンサイト直流送電などを実施することを提案した。消費者の立場からは、河野康子委員(日本消費者協会理事)が、「これまで各電源の長所・短所が細切れで情報提供がなされてきた」などと指摘。国民自らがエネルギーについて考えるよう、的確なデータ開示の必要性を主張した。再生可能エネルギーに関しては、設置に伴う環境影響や地域理解、地産地消に係る意見も多く出された。この他、新たなエネルギー源として期待される水素・アンモニアの市場形成・投資判断促進に向けた国の関与、ガス火力発電とCO2回収・有効利用・貯留(CCUS)の組合せを通じたASEANとの連携、蓄電池の再利用などについても言及があった。
08 Jul 2024
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日本原子力学会の会長として、大井川宏之氏(日本原子力研究開発機構上級執行役)が選任された。6月14日に行われた通常総会で、大井川会長他、副会長として、佐藤拓氏(原子力エネルギー協議会)、越塚誠一氏(東京大学)、小崎完氏(北海道大学)らで構成する2024年度新体制が決定。大井川会長は7月3日、就任会見に臨み抱負を述べた。〈原子力学会発表資料は こちら〉その中で、大井川会長は、学会運営のキーワードとして、「伝える」、「つながる」、「はぐくむ」の3つのキーワードを提示。2年間の副会長在任期間を振り返り、「学会の取組が伝わっていない」と、発信力の弱さを猛省。今後は、SNSを通じた発信や積極的なプレス発表に努めていくとした。また、「原子力というと、どうしてもガードが固いと思われがち」などと、他分野から乖離したいわゆる「ガラパゴス化」を懸念。学会内の部会同士での交流、他の学協会とのコミュニケーションを活性化し、相互に課題解決に向け連携を図っていく考えを示した。大井川会長は、原子力機構の理事在任時、原子力科学研究、安全研究、防災支援、人材育成など、極めて重要な部門の統括を担当。人材育成に関しては、原子力委員会や産官学連携のプラットフォーム「原子力人材育成ネットワーク」などの場で、その重要性を訴え続けてきた。会見の中で、同氏は、工学系学生のキャリアパスを拡充する必要性にも言及し、「色々な議論をしている姿を通じ、原子力の魅力を発信していきたい」と抱負を語った。昨夏には同学会主催で、原子力を専攻する大学・院生・高専生らとメディア関係者を交え、長期にわたる福島第一原子力発電所廃炉の道筋をテーマとしたシンポジウムも開催されている。大井川会長は、「若い人と一緒になって」成長する学会として、価値をアピールしていくことを強調した。記者団から、革新的技術の関連で、核融合などを中心にベンチャー企業が台頭する欧米と比較した日本のスピード感の見劣りに関して質問があったのに対し、大井川会長は、「魅力的なコンセプトを提案していくことが学会としての役割」と述べ、産業界が参入しやすい仕組み作りに向け、学協会標準の策定などを通じ貢献していく考えを示した。現在、原子力学会の会員数は、概して「下げ止まり」の状況。会員がそれぞれの立場で参画する学会だが、一例として、現行の新規制基準のあり方に対する働きかけ関し、大井川会長は、「ニュートラルな議論は学会だからこそできる」と、存在意義を強調した。副会長を引き続き務める越塚氏は、日本電気協会の原子力規格委員会で規格基準の策定を技術的立場からリードしてきている。今後は、新体制のもと、規制側に対する提言発信も期待できそうだ。
05 Jul 2024
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原子力発電環境整備機構(NUMO)の理事長に、7月1日付で山口彰氏が就任。同氏は3日、記者会見に臨み抱負を語った。〈NUMO発表資料は こちら〉冒頭、山口理事長は、高レベル放射性廃棄物等の地層処分地選定に向け、文献調査を受入れた北海道寿都町・神恵内村、佐賀県玄海町に対し、感謝の意を表明。その上で、NUMOが使命とする地層処分事業に関し、あらためて「社会全体として解決すべき重要な仕事であり、その責任の重さに身の引き締まる思い」と、所感を述べた。現在、2020年に開始した寿都町・神恵内村における文献調査については、資源エネルギー庁の技術ワーキンググループで、取りまとめの議論が進められている。続く概要調査に向けては、知事の了解を要するが、今後の見通しについて質問を受けたのに対し、山口理事長は、「NUMO単独で決められるものではない」と述べ、予断を持たずに、現時点では粛々と調査活動に取り組んでいく姿勢を示した。また、この6月に文献調査が始まった玄海町も含め、3町村には「できるだけ速やかに訪問したい」と明言。今後も、最終処分事業について、国民理解の促進に努め、文献調査の受入れ地域の拡大に向け、「国や事業者との連携を強化し、地域への情報提供や地域に根ざした活動に邁進していく」と、抱負を述べた。山口理事長はこれまで、資源エネルギー庁の原子力小委員会・WG、文部科学省の原子力研究開発・基盤・人材作業部会をリードするなど、原子力政策の推進で手腕を発揮。同氏は、会見の結びで「原子力は、燃料の製造加工、発電、再処理、最終処分と、全体を完結することによって、非常に高い価値を生み出す技術で、エネルギーセキュリティ、地球温暖化対策にも貢献できる」と、核燃料サイクルの重要性に言及しつつ、原子力の持つ価値をあらためて強調した。
04 Jul 2024
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部屋着・運動着などを中心に、最近、綿100%製に替わり多く出回っているポリエステル製衣類に関連し、放射線治療の向上に資する研究成果が7月3日、早稲田大学らにより発表された。〈早大発表資料は こちら〉医療現場において脱衣を求めることは、患者に羞恥をもたらすなど、昨今、様々な課題が指摘されている。早大他、神戸陽子線研究センター、東北大学、大阪大学による研究グループは、放射線照射治療の際、発光する生地・衣類を模索してきた。その中で、木綿では発光しなかったが、ポリエステル製の衣類ではよく発光することを解明。さらに、陽子線ビーム照射で発光しリアルタイムに画像化できることも確認した。今回の研究では、アルファ線を種々の生地切片に照射することで、基礎的な性能を評価。その結果、ポリエステル製衣類では、木綿製などと比較し、10~20%の強度で発光することが明らかとなった。これをもとに、ポリエステル製のシャツなどを画像化実験材料として選択し、マネキン人形を用いて陽子線照射中の発光画像を高速高感度カメラで計測。その結果、陽子線ビーム照射中、衣服表面で、リアルタイムでの発光画像が得られた。ポリエステル生地は「柔らかく自在に曲がり、縫い合わせることで、任意の形状にすることが可能」との特性から、放射線治療を受ける患者にポリエステル製のシャツを着てもらうことで、患者表面の発光を画像化できる可能性が示されたとしている。研究グループでは今後、ポリエステル製生地の素材特性の他、低コストの利点にも着目し、実用化に向けて、放射線照射発光の多い材料開発、陽子線以外の他分野利用なども見据え、さらに研究を進めていく考えだ。
03 Jul 2024
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「安全工学シンポジウム2024」が6月26~28日、日本学術会議講堂(東京・港区)で開催された。同シンポは学術会議主催のもと、毎年、「国民安全の日」(7月1日)の実施時期に合わせ、多分野の学協会が共催し行われているもの。今回は、能登半島地震にも鑑み、大地震への備えや災害避難に係るセッションが多く設定されるとともに、AI導入や労働環境に対する関心の高まりなど、昨今の社会変化から、会期中を通じ、ソフト技術の信頼性や「安全とリスク」の考え方も広く議論された。27日には、「福島第一原子力発電所の安全確保」と題するパネルディスカッションが行われ、山本章夫氏(名古屋大学教授大学院工学研究科教授、進行役)、阿部守康氏(東京電力福島第一廃炉推進カンパニーバイスプレジデント)、岩永宏平氏(原子力規制庁東京電力福島第一原子力発電所事故対策室長)、高田孝氏(東京大学大学院工学系研究科教授)、斉藤拓巳氏(東京大学大学院工学系研究科教授)、更田豊志氏(元原子力規制委員会委員長)らが登壇した。現在、福島第一原子力発電所は、事故炉としての特性から原子炉等規制法上、「特定原子力施設」と位置付けられ、運転中の原子力発電所とは異なる規制対応がなされている。両者を比較したリスクの違いについて、事業者の立場から、阿部氏が整理。運転中の発電所については「運転に伴うリスク。つまり、運転しなければリスクはない」、その一方で、福島第一原子力発電所については「既に存在するリスク」と大別。設計で対処されていない様々なリスク、公衆・作業員へのリスクなど、「錯綜したリスク状況」にあるとした上で、長期にわたる廃炉作業に向け「このような状況をどのようにマネジメントしていくか」と、問題意識を示した。これに関し、原子力規制委員会は「中長期リスクの低減目標マップ」を策定し、随時、東京電力と意見を交わしているが、岩永氏は、将来的に燃料デブリを取り出し、発生する廃棄物を安定的に管理することなどを見据え、「技術的に経験のない領域において、求められる規制活動はどうあるべきか」と、課題を提起。さらに、「現在の技術水準で達成できるリスク低減の姿は、いかなるものか」と述べ、技術的課題と安全規制の適切なあり方については、模索中であることを示唆した。アカデミアの立場から、高田氏は、福島第一原子力発電所のリスク源の特徴として、「運転中の原子力発電所に比べ、安定な状態でエネルギー源も小さい」とした上で、「大規模な事故が発生しても、放射性物質の放出量はかなり少ない」、その一方で、「小規模な事故でも微量の放射性物質の放出があり得る」と説明。低頻度事象には緩和策、高頻度事象には防止策を、それぞれ充実させ、両側面について、「バランスを踏まえ、着実にリスクを減らす取組が重要」などと指摘した。また、斉藤氏は、廃棄物管理について発言。発生、前処理、保管、処分といった一般的な流れをあらためて整理した上で、福島第一原子力発電所由来の廃棄物の特徴として、多様な素性、発生量・時期が不透明、放射性核種の総量は限定的なことなどをあげた。原子力損害賠償・廃炉等支援機構の技術委員を務める更田氏は、使用済み燃料の取り出しや、燃料デブリ取り出しに関する課題・技術戦略の動向について説明。リスク管理に関しては、サイト周辺への影響は殆ど考えられず、むしろ現場に携わる作業員の安全管理を問題視した。また、燃料デブリなどの廃棄物処分に関し「地層処分しかないのでは」との見通しも述べた。
02 Jul 2024
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地球温暖化対策計画の改定について議論する経済産業省・環境省合同の有識者ワーキングループが6月28日、初会合を行った。現行の同計画は、2021年10月に閣議決定されており、間もなく地球温暖化対策推進法に基づく3年ごとの見直し時期を迎える。〈配布資料は こちら〉同じく3年ごとの見直し時期を前に、総合資源エネルギー調査会では5月15日に、エネルギー基本計画改定に向けた議論が開始された。政府・GX実行会議では、年度内を目途とする両計画の改定とともに、各界の幅広い有識者による「GX2040リーダーズパネル」からの見解聴取も踏まえ、2040年を見据えた国家戦略「GX2040ビジョン」策定につなげていく。日本の地球温暖化対策をめぐっては、2020年10月の「2050年カーボンニュートラル」宣言を受け、2021年4月に「2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指す」とされ、また、国際的な枠組みである「パリ協定」に基づき、「国が決定する貢献」(NDC)として、2025年2月までに次期の2035年目標を提出することが求められている。さらに、最近の国際的動向として、COP28(2023年11~12月、UAE・ドバイ)で初めて採択された「パリ協定」の進捗状況を評価する仕組み「グローバル・ストックテイク」において、温暖化を1.5℃に抑えるため、世界全体の温室効果ガス排出量を「2019年比で2030年までに43%、2035年までに60%削減する」必要性が指摘された。合同WGでは、こうした状況を踏まえ、地球温暖化対策計画の見直しを含めたわが国の気候変動対策について議論していく。WG会合の始動に際し、八木哲也環境副大臣が挨拶に立ち、その中で、気候変動問題に対する危機感を、「2023年の世界の平均気温は、1891年以降、最高を記録した。世界中で異常気象が頻発するなど、解決は待ったなしの状況」と強調。さらに、「先進国の一員として温室効果ガスの排出削減などを着実に進めていく必要がある」との認識を示す一方で、昨今の地政学的リスクの高まりを受けたエネルギー安全保障や、生成AIの進展に伴う電力需要増を課題としてあげた。日本については、人口減少・過疎化、労働力不足などの変化が加速していると指摘。国内外を俯瞰し「複雑な状況を踏まえた気候変動対策が求められている」と述べ、有意義な議論を期待した。環境省(今回会合の担当省庁で経産省と交互に進行役を受け持つ)による論点整理を受け、大下英和委員(日本商工会議所産業政策第二部長)、井上久美枝委員(日本労働組合総連合会副事務局長)は、それぞれ中小企業、労働者・生活者の立場から「安定・安価なエネルギー供給の確保」の重要性を強調。温暖化対策の評価に関し独自のモデル分析を行っている秋元圭吾委員(地球環境産業技術研究機構主席研究員)も、エネルギー多消費産業の途上国移転に向けた動きをとらえ、温室効果ガス排出量との相対的関係から「エネルギー価格感を強く意識した対策」が図られるよう求めた。また、総合資源エネルギー調査会でエネルギー基本計画見直しの議論にも参画する高村ゆかり委員(東京大学未来ビジョン研究センター教授)は、電源構成の3割が石炭を占めている日本の現状に言及。これまでも温暖化対策を通じた企業価値の向上に関し意見を述べてきたが、民間投資に向けた予見性確保の観点で「日本のエネルギー転換がどのように進んでいくのか道筋を示す」ことなどを、今後の議論に向けて期待した。地方の立場からは、福田富一委員(栃木県知事)が発言。全国知事会脱炭素・地球温暖化対策本部長を務める同氏は、大規模な太陽光発電「メガソーラー」導入に伴う地域間トラブルの事例を踏まえ、施設設置が地域への利益還元につながる制度設計や、パネルのリサイクルシステムなどを柱とする地域調整型再生可能エネルギーの導入を提案した。WG会合は今後、概ね月1回のペースで開かれる。
01 Jul 2024
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原子力規制委員会(規制委)は6月28日、原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合を開き、日本原子力発電(原電)の敦賀2号機(PWR、116万kW)敷地内に認められたK断層の連続性に関して議論した。規制委の審査チームは、K断層の活動性と連続性(K断層と原子炉建屋直下を通過する破砕帯との連続性)の観点から同断層を評価する方針で、原電の説明および規制委が実施した現地調査の結果を踏まえて検討を進めている。この日の会合で原電は、ボーリング調査結果等をもとに同断層を分析したところ、破砕帯との連続性は認められないと説明した。審査チームは同社の説明に関する指摘事項や確認事項を示し、7月に開催予定の次回審査会合において説明するよう求めた。また審査チームは、次回会合でK断層評価に関する審議をしめくくり、敦賀2号機の新規制基準への適合性を判断する方針を示した。原電は、次回会合において断層の活動性に関する同社の見解を改めて説明する。これまでに、原電は現地ボーリング調査の結果分析等を踏まえて断層の活動性、連続性はいずれも認められないと説明したが、活動性に関して審査チームは、前回の審査会合(5月31日開催)において、活動性を否定する科学的根拠に乏しいとの見解を示していた。K断層の活動性と連続性をどう評価するかが、敦賀2号機の新規制基準への適合性を判断する重要なポイントになっているため、規制委がどのような技術的判断を示すかに注目が集まっている。なお、原電が敦賀2号機の再稼働にむけた新規制基準の適合性確認申請を行ったのは2015年11月5日。その後、2023年8月末に補正申請しているが、敷地内断層の評価を中心に議論が進められ、審査はおよそ9年にもおよんでいる。
01 Jul 2024
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原子力規制委員会は6月26日、関西電力大飯原子力発電所3-4号機(PWR、出力各118万kWe)について、新たな法令のもと、運転開始から30年を超えるプラントに要求される長期施設管理計画を認可した。高経年化した原子炉に対する規制の厳格化を含めた「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」(GX脱炭素電源法)成立後、初の事例。昨夏に成立した同法では、規制側(原子炉等規制法)として、原子力事業者に対し、「運転開始から30年を超えて運転しようとする場合、10年以内ごとに、設備の劣化に関する技術的な評価を行い、その劣化を管理するための計画を定め、原子力規制委員会の認可を受けること」を規定。一方、利用側(電気事業法)には、「原子力発電の運転期間は最長で60年」との現行の枠組みは維持。事業者が予見しがたい事由による停止期間に限り、60年の運転期間のカウントから除外することを定めている。法令は2025年6月に本格施行されることとなっており、現在は準備期間中。大飯3-4号機らには、それぞれ1991年12月、93年2月に運転を開始し、既に30年を経過していることから、施行日までに新法下による長期施設管理計画の認可が求められていた。関西電力は、2023年12月に同計画の認可を申請。今回の認可を受け、「国内外の最新知見を積極的に取り込み、プラントの設計や設備保全に反映していくことで、原子力発電所の安全性・信頼性の向上に努めていく」とのコメントを発表した。
28 Jun 2024
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原子力委員会は6月25日、2023年度版の原子力白書を取りまとめた。日本の原子力利用に関する現状および取組の全体像について、「国民に対する説明責任を果たしていく」ため、発刊するもので、今回は、「放射線の安全・安心と利用促進に向けた課題の多面性」を特集。白書公表に際し序言の中で、上坂充委員長は、「原子力行政のアーカイブ」として広く活用されることを期待した上で、特集テーマに関連し、2023年に開始した福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の海洋放出に係る議論の背景として、「放射線に関する正確な知識が必ずしも国民に幅広く浸透しておらず、漠然と不安を感じている」と懸念。他方、放射線は、医療、工業、農業の各分野で幅広く利活用が図られ、「今日の生活基盤を支える技術となっている」といった観点から、安全性確保を前提として、「社会的受容性、経済性など、多面的な側面を考慮して取組を進める必要がある」と述べている。特集の冒頭では、「放射線に関する基礎知識」を整理。この部分を読むだけで、放射線の種類や強度・線量を測る単位、自然放射線の存在、低線量被ばくの影響などを学ぶことができる。原子力委員会では2024年に入ってから、「医療用等ラジオアイソトープ製造・利用推進アクションプラン」(2022年5月に同委決定)のフォローアップも合わせ、有識者らからのヒアリングを実施。国民理解の関連では、4月にMRIリサーチアソシエイツ社より説明を受けており(既報)、人々の様々なリスクに対する認識について、数千人規模の調査結果をもとに議論している。その中で、原子力・放射線関係のリスクについては、「一般層」と「原子力・放射線に関する知識を持っている層」とを比較し、「受け入れられない」とする割合は、「一般層」で顕著に高くなっていた。一方で、ワクチンや医薬品など、日常的に使用され、その便益が理解されているものについては、「ベネフィットがリスクを上回る」との回答割合が高くなっていたことから、今回の白書では、原子力・放射線利用に関し、電力安定供給に資する役割と、それに伴い発生する放射性廃棄物の安全な処分やクリアランス物の再利用なども含め、「社会的な意義について、国民の理解・信頼を得る継続的な努力が重要」と、結論付けている。なお、最近1年間の取組状況として、今回の白書では、「原子力利用の基盤となる人材育成とサプライチェーンの維持・強化」を項目立てし、2023年3月に設立された「原子力サプライチェーンプラットフォーム」、同年6月にOECD/NEAが公表した「原子力部門におけるジェンダーバランスの改善」などを紹介し、原子力分野における技術基盤の維持・強化やダイバーシティの確保について、一層踏み込んで取り上げている。
26 Jun 2024
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国立がん研究センターや神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター、量子科学技術研究開発機構(QST)等は6月24日、希少かつ難治性のがんである悪性の脳腫瘍に対し、日本で開発された新規放射性治療薬(64Cu-Atsm)の有効性を確認したことを発表した。安全性と有効性にメドを得たもの。この治療薬を投与することで、これまでの標準治療と比較して患者の生存期間を延長するかどうかを検証するための試験(ランダム化比較第3相医師主導治験)を、今月から開始した。試験は2029年3月までを予定、良好な結果を得て日本発の放射性治療薬としての承認をめざす。これまでの試験では、患者に対する投与法を含めて治療薬の安全性にメドを得た。また有効性については18人の患者に投与して生存期間の延長が認められた。例えば膠芽腫(こうがしゅ)の患者は、再発すると一般的に1年以上生存できるのは30~40%とされるが、投与した患者9人のうち5人が1年以上生存し、有効な治療効果が期待される可能性があるという。脳から発生する原発性脳腫瘍は国内の年間発生数が約3万人で、そのうち約7,000人程度が悪性脳腫瘍(がん)の患者だ。脳腫瘍は分類が複雑だが、悪性脳腫瘍の中でも、最も多い膠芽腫や星細胞腫(せいさいぼうしゅ)などは悪性神経膠腫(グリオーマ)と呼ばれる。膠芽腫の年間発生数は約2,100人で、5年生存割合は約15%程度と、最も治療が難しいとされるがんのひとつ。膠芽腫を含む悪性脳腫瘍は代表的な希少がんかつ難治性がんで、有効かつ安全な治療開発が課題になっている。悪性脳腫瘍の治療においては、既存の治療法(外科手術、放射線治療、化学療法等)で十分な効果が得られず再発した場合の治療法は確立していない。これは、悪性腫瘍は活発に増殖するため血管新生が追い付かず、酸素の供給が乏しい低酸素環境になるため、既存治療法の効果が弱まってしまうことが一つの重要な要因になっている。今回の「64Cu-Atsm」は、既存の放射性治療薬の効果に加え、がん細胞 DNA を効果的に損傷する特殊な電子(オージェ電子)を放出する特長があり、低酸素化した治療抵抗性腫瘍を攻撃する治療において、既存治療法で十分な効果が得られず再発した悪性脳腫瘍の治療に対し、効果を発揮することが期待されるとしている。
26 Jun 2024
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総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所所長・教授)が6月25日、4か月ぶりに開かれ、核燃料サイクルの確立に向けた取組を中心に議論した。〈配布資料は こちら〉黒﨑委員長は、今回、前任・山口彰氏を引き継ぎ、初の議事進行に臨んだ。冒頭、原子力・エネルギー政策立案をリードする責務を認識した上で、「是非前向きな議論を」と述べた。続いて、議論に先立ち、資源エネルギー庁が原子力に関する国内外動向、課題・論点を整理。同調査会の基本政策分科会では、5月にエネルギー基本計画改定に向けた検討が開始されているが、久米孝・電力・ガス事業部長は、2021年の現行基本計画策定以降、ロシアによるウクライナ侵略など、エネルギーをめぐる地政学的リスクの高まり、AIの社会実装に伴う急速な電力需要増を見据え、「脱炭素電源の安定供給をいかに確保するか」と、極めて困難な局面にある現状を強調。その中で、「原子力を活用していく上での課題」については、原子力小委員会において着実に議論していく姿勢を示した。委員からは、次期エネルギー基本計画策定に係る発言も多く、基本政策分科会の委員も兼ねる遠藤典子委員(早稲田大学研究院教授)は、最近の通信関連企業からのヒアリングに言及。データセンターの増加に伴う電力需要増に対し、「供給力をどう確保するか」を政策的課題としてあげた上で、原子力発電の建設リードタイムも見据え、今後の新増設に民間企業が投資できる制度設計を検討していく必要性を指摘した。同じく、村上千里委員(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会)は、原子力発電所の建設コスト上昇を、最近の欧米における状況から懸念した上で、「新増設の賛否にかかわらず納得できるコスト検証を行って欲しい」と要望。さらに、消費者の立場から、再稼働に伴う電気料金への影響、バックエンドコストに関し使用済み燃料の直接処分にも言及した。核燃料サイクル政策について、資源エネルギー庁は、「高レベル放射性廃棄物の減容化」、「有害度低減」、「資源の有効利用」などの観点から、今後も原子力発電を安定的に利用する上で、関係自治体や国際社会の理解を得ながら、「引き続き推進することが重要」とあらためて明示。立地地域の立場から、杉本達治委員(福井県知事)は、原子力政策の明確化、立地地域の振興、原子力防災の強化とともに、核燃料サイクルの確立について要望。その中核となる六ヶ所再処理工場のしゅん工に向けては、「国が責任をもって事業者の取組状況を管理するとともに、原子力規制委員会も遅滞なく効率的に審査を行う」など、政府全体での取組が図られることを求めた。技術的観点からは、竹下健二委員長代理(東京工業大学名誉教授)が発言。ウラン濃縮については、投資促進に関する日本・カナダ・フランス・英国・米国による共同宣言「札幌ファイブ」(2023年12月、産業界による共同声明は こちら)など、国際的な動きもみられる。同氏は、「ウラン濃縮は機微技術のため、国内で開発するしかない」との基本姿勢に立ち、濃縮能力の増強、経済性の向上に向け、日本原燃による遠心分離機開発に期待。さらに、将来的な資源の有効利用を見据え、回収ウラン利用に係る技術開発、高速炉MOX燃料の再処理にも言及した。専門委員として出席した日本原子力産業協会の新井史朗特任フェローは、「既設炉の最大限の活用」、「新増設・リプレースを含めた必要容量・時間軸の明記」、「事業者が適切な時期に新規建設の投資判断ができる事業環境整備」、「革新軽水炉に関する規制基準の検討」、「原子力の価値を広く知ってもらう国民理解の促進」の5点を、次期エネルギー基本計画に向け要望した。
25 Jun 2024
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筑波大学の研究グループは6月21日、2011年から13年間にわたり福島県内で実施した森林モニタリング調査により、「土壌中の放射性セシウムが下方移行する」という自然のプロセスが、根による放射性セシウム吸収量や空間線量率を低下させる、いわば除染効果を持つことを明らかにしたと発表した。〈筑波大発表資料は こちら〉同学放射線・アイソトープ地球システム研究センターの高橋純子助教らによるもので、これまでも同センターでは、恩田裕一教授が中心となり、浪江町・川内村での観測を通じ、降雨と空間線量率の変動を推定するモデルを開発するなど、原子力災害被災地の森林環境回復に資する研究成果をあげている。今回の研究では、川俣町のスギ林において、落葉落枝層、土壌層、木が養分を吸収する直径0.5mm以下の根(細根)、それぞれについてセシウム137の動態を調査。その結果、セシウム137の深度分布を経年でみると、存在量は、落葉落枝層では発災直後の2011年に最大だったのが2020年までにほぼゼロになった。表層から2cmまでの土壌層では2017年以降、急増し2020年頃にピークとなったのに対し、細根では2017年頃をピークに減少に転じていた。こうした土壌層と細根との間にみられたセシウム137の経年分布のズレに関し、「わずか数cmであっても土壌中でセシウム137の下方移行が進むことで、樹木によるセシウム137吸収が減少する効果がある」と分析。実際、細根では、表層から2cmまでの最も根が密集する深度で、2020年頃に著しくセシウム137の低下がみられており、「森林生態系の自浄作用効果を解明した」と結論付けている。今回の研究で、調査対象となった川俣町の山木屋地区は、2017年3月に避難指示が解除されているが、「事故以降、これまで森林管理が行われていない」と、被災地における林業再開の停滞を懸念。調査は、「スクレーパープレート」と呼ばれる土壌採取用具を用いて、土壌を5mm間隔で採取し、ふるい分けを行うという緻密な方法で2011年7月より実施されてきた。下方移行による除染効果が検証されたが、植林地が管理放棄され、下流域にセシウム137を流出させる土砂浸食といった長期的観点からのリスクも指摘。今後は、間伐によるセシウム137の下方移行の促進効果も検証し、新たな森林除染方策の提案を目指すとしている。
24 Jun 2024
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次期エネルギー基本計画策定に向けた検討が5月15日、総合資源エネルギー調査会で始まった。間もなく閉会を迎える今通常国会だが、こうしたエネルギー政策をめぐる重要な動きと合わせ、衆議院原子力問題調査特別委員会(委員長=平将昭氏〈自由民主党〉)が同31日に開催。元国会事故調(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会)委員長の黒川清氏(政策研究大学院大学名誉教授)ら、有識者を招き、原子力行政のあり方を中心に質疑応答が行われた。この約1年間、原子力・エネルギー政策をめぐる法整備としては、「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」(GX脱炭素電源法)など、重要法案が可決・成立。同法は、原子力基本法改正の他、運転期間に関連し高経年化した原子炉に対する規制の厳格化も盛り込まれている。福島第一原子力発電所事故から13年、国会事故調終了後もこれまで、原子力規制行政の建て直しに向け意見を述べてきた黒川氏は、2年ぶりとなる特別委員会への出席に際し、最近の海外交流経験も振り返りながら、「実際、あまり変わっていないのでは」と、日本の現状を厳しく指摘した。また、国会事故調で黒川氏をサポートし、次世代層への啓発にも力を入れている石橋哲氏(クロト・パートナーズ代表)は、事故調が示した提言に関して、この2年間、国会で実質的に発言があったのは「1回・10秒のみ」と、問題意識の低下を懸念。その背景として、立法府側に「『できない』のではなく『やらない』ことの集積があったのでは」などと推測した上で、「ソクラテスの弁明・クリトン」(岩波文庫)の一節から、古代ギリシャ時代の名言「君は恥辱と思わないのか」を紹介し、意識高揚を促した。総合資源エネルギー調査会にも参画してきた橘川武郎氏(国際大学学長)は、日本の原子力をめぐる課題として、「東京電力柏崎刈羽6・7号機の再稼働」、「次世代革新炉の建設」、「次期エネルギー基本計画と原子力発電の比率」を提示。柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関しては、元旦に発生した能登半島地震の影響も相まって、地元理解の課題をあげた。さらに、2040年のエネルギーミックスとして、再生可能エネルギー45%、原子力30%、水素・アンモニア5%、火力20%などと例示。その上で、「原子力は新用途の開拓が不可欠」と主張し、電力市場の将来も見据え「原子力をカーボンフリー水素の供給源として使う」ことを重要な選択肢として提案した。原子力技術開発に厳しい見方を示す佐藤曉氏(原子力コンサルタント)は、米国の現状とも比較しながら、運転期間延長や出力向上に伴う経済性に言及し、「電力事業者と規制当局が双方の役割を果たし次の10年を目指すべき」と主張。原子力委員を務めた経験のある鈴木達治郎氏(長崎大学核兵器廃絶研究センター教授)は、バックエンド問題について発言。高レベル放射性廃棄物の地層処分地選定に関し、1990年代の同委高レベル放射性廃棄物処分懇談会(評論家の木元教子氏の司会により全国各地で啓発に取り組んだ)の議論を振り返り、昨今の状況を「透明性が欠ける」などと指摘した。文献調査に応募する自治体も出ているが、「科学的特性マップ」の有用性、最近の日本原子力文化財団の世論調査結果も踏まえ、理解活動に向けて「まだ改善すべきことがある」と強調。さらに、国会の役割の重要性にも言及し、高レベル放射性廃棄物処分の管轄を経済産業省から環境省に移す法改正などを提案した。 有識者による発言を受け、細田健一委員(自民党)は、国会事故調の提言の一つ「規制当局の監視」を重要なミッションととらえた上で、昨今の情勢から、核テロ対策を踏まえた設計基準脅威に係る対応や、過重な規制に伴う弊害などに関して問いを発した。
21 Jun 2024
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資源エネルギー庁が設置する高速炉開発会議の戦略ワーキンググループは6月19日、高速炉実証炉の概念設計段階における開発体制について、研究開発統合機能を担う組織を7月にも、日本原子力研究開発機構に設置する方針を決めた。〈配布資料は こちら〉2016年12月の高速増殖原型炉「もんじゅ」廃炉決定後、将来的な高速炉の研究開発方針をあらためて明確化すべく、2018年12月に原子力関係閣僚会議において「戦略ロードマップ」が決定。2024~28年度に実証炉の概念設計・研究開発を進め、2026年頃に燃料技術の具体的検討、2028年頃に実証炉の基本設計・許認可手続きへの移行判断を行う計画だ。経済産業相がリードする高速炉開発会議のもと、エネ庁他、文部科学省、電気事業連合会、原子力機構ら、実務者レベルで構成される戦略WGはこのほど、およそ1年ぶりに会合を行い、高速炉実証炉の概念設計、基本設計・詳細設計、建設・運転の各開発段階で必要な「司令塔機能」について整理。2023年7月には、高速炉実証炉の設計・開発を担う中核企業として、三菱重工業を選定しているが、「もんじゅ」の責任体制所在に係る教訓などを踏まえ、今後の概念設計段階に向けて、プロジェクト全体戦略のマネジメント機能は引き続き政府が担い、新たに研究開発統合機能を担う組織を原子力機構に設置することを決定した。新組織の設置は7月1日の予定。エネ庁の説明によると、かつて「もんじゅ」は、主務会社を設けず重工メーカーが横並びでプロジェクトを請け負う「護送船団方式」であったため、システム全体の設計に対し、一貫性をもって実施する責任体制の明確化が課題だったという。実際、「もんじゅ」の現場では、電力・メーカーからの出向者の知見から保安体制に係るノウハウが活かされる一方で、十分な伝承がなされていないことも指摘されてきた。19日のWG会合で、原子力機構の板倉康洋副理事長は、今回、研究開発統合機能の同機構内設置が決定したことについて、「その役割を果たすべく最大限努めていきたい」と、使命感を強調。今後、高速炉の再処理技術開発も展望し、関係者の理解・支援を求めた。また、電事連の水田仁・原子力推進・対策部長は、将来を見据え「実用炉開発を進める上で、具体的開発体制が示されたもの」と、期待を寄せるとともに、原子力機構がリードする高速炉技術開発に対し「軽水炉の運用で培った知見も活かして欲しい」などと、事業者として協力姿勢を示した。
20 Jun 2024
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日本原子力産業協会は6月18日、定時社員総会を日本工業倶楽部(東京・千代田区)で開催し、2023年度決算および事業計画、2024年度の事業計画・予算案がそれぞれ承認、報告された。また、理事8名の改選を承認。総会終了後の理事会で、東原敏昭氏(日立製作所会長)が副会長に、増井秀企氏(東京電力原子力・立地本部副本部長)が理事長に就任することが決定された。総会の冒頭、三村明夫会長は、「原子力は優れた安定供給性と経済効率性を有しており、運転コストが低廉・安定な準国産の脱炭素電源であることから、長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する、重要なベースロード電源」と強調。現在、検討が進められている次期エネルギー基本計画策定に向けては、「原子力の持続的かつ最大限の活用、ならびに早期の新規建設開始を明記するべき」とした。その上で、「産業界の声」として、既設炉の最大限の活用原子力サプライチェーンの維持・強化新規建設の投資判断を可能とするための事業環境整備国民理解の促進――の4点をあげ、既設炉の活用に関しては、再稼働の他、長期サイクル運転の導入、運転中保全の導入拡大、既設炉の出力向上など、設備利用率の向上に言及。新規建設に向けては、電力の事業予見可能性の著しい低下を懸念し、「投資回収面および資金調達面での課題に対処し、約20年にも及ぶ建設リードタイムを踏まえた適切な時期に事業者が投資判断できる事業環境整備が必要」と訴えた。核燃料サイクル事業をめぐっては現在、六ヶ所再処理工場の年内しゅん工が見込まれ、高レベル放射性廃棄物の地層処分地選定に向けた文献調査が佐賀県玄海町で開始されている。三村会長は、日本原燃の再処理工場・MOX燃料工場について「サイクルの要」との認識をあらためて述べ、しゅん工への取組を着実に進め、バックエンドに関しても「国・原子力発電環境整備機構(NUMO)と密接に連携していく」と、原子力産業界として着実に支えていく姿勢を示した。〈挨拶文は こちら〉来賓として訪れた齋藤健経済産業相は挨拶の中で、日本のエネルギー情勢をめぐり、化石燃料の輸入に伴う国富流出など、昨今の状況から、「戦後最大の難所を迎えている」との危機感を示した上で、エネルギー安定供給とGXの両立を実現するため、「原子力の活用が不可欠」と強調。一方で、「福島第一原子力発電所事故の反省を一時も忘れることなく、高い緊張感を持って安全最優先で万全を期すこと」をあらためて述べた上で、原子力産業界との連携に関し、サプライチェーンの維持・強化、人材育成、国際競争力の強化、事業環境整備などの課題を列挙。5月に開始した次期エネルギー基本計画策定の関連では、将来的な電力需要の増大、それに伴う大規模な脱炭素電源投資の必要性に鑑み、今後、「政府のみならず、電力・産業、金融など、官民の様々なプレイヤーが危機感を共有し、それぞれの役割を果たしていくことが重要」と、訴えかけた。続いて、本田顕子・文部科学政務官が挨拶。研究開発・人づくりを担う立場から、日本原子力研究開発機構の「JRR-3」や「常陽」の活用とともに、現在、作業部会で検討が進められる「もんじゅ」跡地の試験研究炉設置にも期待を寄せ、産業界による理解・支援を求めた。新任の増井理事長は、19日に就任挨拶を発表。その中で「稼働する原子力発電プラントは12基と、現存する33基の約3分の1にとどまっている」と、原子力発電をめぐる現状を懸念。次期エネルギー基本計画の策定に向け、原産協会として、「IT需要や脱炭素化の進展で増加すると予想される電力需要に応えるため、既存プラントの再稼働はもとより、リプレースや新増設の必要性の明記、そしてそれらを実現するために必要な事業環境の整備について明示してもらうよう求めていきたい」と強調した。
19 Jun 2024
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総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=隅修三・東京海上日動火災保険相談役)は6月17日の会合で、エネルギーを巡る国際情勢について有識者からのヒアリングを行った。〈配布資料は こちら〉冒頭、齋藤健経済産業相は、「世界的に不確実性が高まる中で、いかにエネルギー安定供給と脱炭素化の両立を確保するか、コストの上昇にどのように対応するかが各国共通の課題。その状況を把握することは、わが国の対応を考えていく上で重要」と、今回のヒアリングを行う意義を強調。同分科会では、次期エネルギー基本計画策定に向けた検討を5月15日にキックオフ。以降、3回目となる会合に際し、齋藤経産相は、「野心を持ちつつ、着実かつ現実的なアプローチを追求していくためにも、今後、イノベーションを積極的に進めた上で、その進展状況を踏まえ、コスト面での検証を行いながら、あるべき政策の方向性を見出していく」と、さらに議論を深めていく姿勢を示した。ヒアリングでは、コスト面の課題について、中東情勢・化石燃料市場に詳しい日本エネルギー経済研究所専務理事の小山堅氏が、ウクライナ危機に伴い高騰したエネルギー価格が下降傾向にあると概観しながらも、原油価格は「歴史的観点で高水準」にあると指摘。過去のオイルショックを振り返り、中東・ウクライナ・東アジアを中心とする「地政学リスク」を筆頭に、「政策変更リスク」、「過少投資リスク」、「マーケットパワーリスク」、「需給構造変革リスク」、「自然災害・サイバーリスク」など、様々なリスクの存在をあげ、「国際エネルギー情勢にはまだまだ先行き不透明な要素がある」ことを強調。その上で、ウクライナ危機発生以降、中長期的な脱炭素化に向けた世界動向の一つとして、小山氏は、「原子力重視の潮流顕在化」をあげ、既存炉の有効活用、新規建設、新型炉の開発の他、米国で動きのある「廃炉が決定していたプラントの再稼働」にも言及した。脱炭素化に係る課題・不確実性に関しては、コスト抑制を「重要なカギ」と指摘。その他、「政策変更リスク」に関連し、11月に予定される米国大統領選挙も注目すべきとした。小山氏は、先進技術・イノベーションの役割、経済安全保障の重要性についても述べた上で、次期エネルギー基本計画に向けた論点として、新情勢を踏まえ、あらためて「S+3E」の同時達成を目指すこと総合的な観点でのコスト最小化・最適化の追求エネルギー戦略と成長戦略・産業政策の一体化・融合――などを提案。エネルギー安全保障政策を国家戦略ととらえ、GXを踏まえた政策策定を政府一体となって進める必要性を示唆した。同分科会会合のヒアリングでは、この他、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた課題に関連し、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インコーポレイテッド・ジャパン・シニアパートナーの堀井摩耶氏が、水素・アンモニア、CO2回収・貯留(CCUS)など、各技術の普及ペースとコスト低減の関係を整理した上で、投資加速化の重要性を主張。三菱UFJ銀行サステナブルビジネス部長の西山大輔氏は、同行が刊行する「MUFGトランジション白書」および欧米視察調査について紹介。ドイツにおける世論調査結果で、「原子力を許容」とする回答割合が、電力価格高騰を背景に、東日本大震災直後の24%から、2023年4月には59%に増加していることなどを示した。
18 Jun 2024
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電気事業連合会の林欣吾会長は、6月14日の定例記者会見で、夏の電力高需要期に向けて、近年の需給ひっ迫の懸念を振り返り、「緊張感をもって、供給力の確保を万全のものとしていきたい」と、電力安定供給を担う事業者としての使命をあらためて強調した。資源エネルギー庁が6月3日の総合資源エネルギー調査会会合で説明した今夏の電力需給対策によると、「全エリアで安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できる」見通し。しかしながら、北海道、東北、東京の各エリアでは、7月の最小予備率が4.1%と低くなっており、特に東京エリアについては、運転開始から40年以上が経過した高経年火力プラントが供給力の約1割を占めるなど、供給脱落のリスクが高くなっている。こうした状況を踏まえ、会見の中で林会長は、電力広域的運営推進機関(OCCTO)による今後10年間の「EUE」(Expected Unserved Energy)と呼ばれる分析結果を紹介した。「EUE」では、全国10エリアごとに、2024~33年度の各年間で停電がどれだけ発生する可能性があるかを確率論的に評価している。供給面における再生可能エネルギーの進展など、電源の多様化に伴い、需給両面での不確実性が高まり、各エリアで最大電力が発生する季節・時間帯の供給予備率だけによる需給リスク評価が困難となっていることから採り入れられた指標だ。それによると、沖縄を除く全国9エリアの合計でみた場合、2026年度以降は、供給信頼度の目標値が満たされず、「全国レベルで需給がひっ迫する懸念があり、決して予断を許さない状況」と、厳しい見方を示した。その上で、現実的な需要想定と、それに見合うだけの設備運用を計画的に進め、エネルギーの安全保障の観点も含めた電源のバランスを考えていくことの重要性をあらためて強調。さらに、具体的な選択肢の一つとして、原子力の最大限の活用をあげ、再稼働しているプラントの安定稼働、BWRの再稼働加速化、将来に向けて、新増設やリプレースの必要性にも言及した。現在、再稼働している12基はいずれもPWRで、新規制基準をクリアしたBWRのうち、東北電力女川2号機(5月27日に安全対策工事完了)、中国電力島根2号機が、それぞれ2024年9月、12月に再稼働する見通し。
17 Jun 2024
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齋藤健経済産業相は6月14日の閣議後、東京電力柏崎刈羽原子力発電所に係る対応について記者団からの質疑に応えた。前日、花角英世・新潟県知事の他、自由民主党でエネルギー政策に係る細田健一衆議院議員らによる訪問を受けて、今後の再稼働を巡り、記者会見の中で質疑応答があったもの。花角知事からは東京電力に対する指導・監督の強化、原子力災害時の住民避難を円滑にするための避難道路整備などに関する要望事項が示されており、これまでも地元住民からは、元旦に発生した能登半島地震に鑑み、厳寒期の広域的な防災対策について不安の声が出されている。齋藤経産相はまず、柏崎刈羽発電所の再稼働を巡り、「様々な懸念や不安の声がある」との現状認識をあらためて示した上で、今回の新潟県知事他による要望に対しては、「しっかりと受け止めて、今後あらためて回答したい」とした。その上で、今後も「地域の方々の理解が得られるよう、柏崎刈羽発電所の必要性・意義について説明を尽くしていく」と強調。防災対策については、「能登半島地震で得られた教訓を踏まえて、内閣府(原子力防災)と連携しつつ、地域の緊急時避難対応を取りまとめていく」と説明した。現在、新潟県では、柏崎刈羽発電所の再稼働に係る判断に向けて、県の技術委員会での議論が大詰めとなっており、東京電力や関係行政機関も説明に当たっている。会見の中で、齋藤経産相は、今回の知事との会談を好機ととらえ、「今後も様々な機会をとらえ直接コミュニケーションをとっていく。地域の実情を踏まえ丁寧に説明していきたい」と強調した。なお、新規制基準適合性に係る審査をクリアした柏崎刈羽7号機について、東京電力では、燃料装荷を完了後、6月12日までに、健全性確認を一通り実施し原子炉の起動に必要な主要設備の機能が発揮できることを確認したとしている。また、一連の核物質防護に係る事案を踏まえ受け入れたIAEAによるエキスパートミッション(3月25日~4月2日)からも、6月6日公表の結果報告書の中で、「核セキュリティ文化を改善するために措置を講じている」と、高い評価が得られている。こうした事業者による取組に対し、齋藤経産相は、「安全性向上に向けて自律的な改善の取組を進めていくとともに、丁寧に地域・社会に説明して欲しい」と述べた。
14 Jun 2024
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日立製作所は6月11日、同社の取り組む「デジタル」、「グリーン」、「コネクティブ」の各戦略について、投資家・報道関係者らを対象に説明する「Hitachi Investor Day 2024」を開催した。〈配布資料は こちら〉冒頭、小島啓二社長は、日立グループが事業のデジタル化を加速すべく掲げるビジョン「Lumada」のもと、「厳しい環境の中にも常に『成長』の2文字を追い求める企業でありたい」との経営姿勢を強調。AI技術に関しては、「新たなビジネスチャンスを生む」ものと大いに期待。一方で、それに伴うデータセンター需要の急拡大や半導体供給不足、中長期的には「電力不足の深刻化」などを懸念し、こうした将来課題に対しても「One Hitachi」で取り組み、「企業価値を一層向上させていく」との意気込みを示した。「グリーン」戦略については、グリーンエナジー&モビリティ戦略企画本部長のアリステア・ドーマー氏が登壇し説明。同氏は、昨今のAI技術の加速化を「デジタル革命、社会の転換」と称した上で、「膨大なデータセンターと大量のグリーンエネルギーを必要とする。それによってパワーグリッド事業のみならず、原子力事業における小型モジュール炉(SMR)の潜在需要も見込まれる」との見通しを述べた。さらに、2050年までの世界的な電力の産業需要に関し、IEAによる調査をもとに、保守的に見ても10兆kWh(日本の年間電力消費量の10倍規模に相当)オーダーでの増加が見込まれると予測。同社のデジタル技術を活用した最近の国内電力供給におけるソリューション事例として、2023年11月に送配電システムズ合同会社(全国エリアをカバーする送配電ネットワーク10社)より受注した「次期中央給電指令所システム」を紹介。昨今、電力需給のひっ迫が懸念される中、周波数制御などを通じ全国の需給運用を統合する初のシステムとして期待されている。2024年度以降のグローバル成長を見据え、ドーマー氏は、「市場は巨大で、われわれは強気な目標を設定している」と強調。モビリティの分野では、特に日立が強みとする鉄道事業に関して「そのサービスビジネスは圧倒的に収益性が高い」と期待し、一例として2022年に受注した米国メリーランド州・ワシントン地下鉄の車両製造工場・試験線の建設プロジェクトを紹介した。コンパクトでメンテナンスフリーな車両設計は、日本におけるノウハウも活かされそうだ。また、エネルギーの分野では、「SMRは非常に大きなポテンシャル」として、米国GEベルノバ社の原子力事業会社であるGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)による「BWRX-300」(BWRをベースとした30万kW級のSMR)開発に向けたパートナーシップの他、今後、カナダ、英国、ポーランドでの市場拡大も展望した。
13 Jun 2024
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原子力発電環境整備機構(NUMO)は6月10日、佐賀県玄海町において、高レベル放射性廃棄物等の地層処分地選定に向けた文献調査を開始した。5月10日、同町の脇山伸太郎町長が文献調査受け入れを表明。文献調査の実施は、2020年に開始された北海道寿都町・神恵内村に続き3件目。文献調査は、処分地選定に係る最初の段階。関心を示した市町村を対象として、地域の地質に関する文献・データについて机上調査を行うもので、調査期間中、国から最大20億円が交付される。玄海町には原子力発電所が立地するが、同調査で放射性廃棄物は一切持ち込まれない。同町では、4月より地元商工団体の要請を踏まえ、町議会で文献調査応募に係る議論がなされたほか、5月1日には資源エネルギー庁より申入れ文書が町長に手渡された。新たな文献調査の実施に際し、NUMOの近藤駿介理事長はコメントを発表。「地層処分の技術・安全性を含む事業内容や文献調査の進捗状況・結果などを丁寧に説明しながら、地域の皆様の関心に丁寧に答えていく」としている。地層処分事業を実施する立場から、文献調査について、「最終処分施設建設地の選定に直結するものではない」と、あらためてその位置付けを強調。今後、玄海町では、北海道2町村での実績を踏まえ、地元との「対話の場」が開かれる見通し。NUMOでは引き続き、全国での対話型説明会開催や次世代層への啓発に向けた取組を通じ、理解活動に努めていく。齋藤健経済産業相は、6月11日の閣議後記者会見で、文献調査を受入れた玄海町に対する敬意・謝意を述べた上で、原子力発電を利用した後の高レベル放射性廃棄物の処分問題に関し、「国家的課題だ」と、その重要性を強調。最終処分に関する検討が全国レベルで行われるよう、必要な情報提供を図っていく姿勢を示した。なお、総合資源エネルギー調査会の有識者ワーキンググループでは現在、寿都町・神恵内村での文献調査取りまとめに向けた審議が行われているところだ。
11 Jun 2024
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政府の「新しい資本主義実現会議」は6月7日、実行計画の2024年改訂版案を取りまとめた。6月下旬にも閣議決定となる運び。「新しい資本主義」の実現は、2021年10月に発足した岸田内閣が「成長と分配の好循環とコロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトに目指した経済政策。「新型コロナというピンチをチャンスに変え、希望のある未来を切り開いていく」ことを目指し、有識者らによる「新しい資本主義実現会議」を同月に始動。当初のメンバーとして、産業界からは、現在、日本原子力産業協会会長を務める三村明夫氏(当時、日本商工会議所会頭)も参画し、国内サプライチェーン企業を代表して意見を述べてきた。今回、2回目の改訂となる実行計画は、中小・小規模企業で働く労働者の賃上げ定着三位一体の労働市場改革の早期実行企業の参入・退出の円滑化を通じた産業の革新国内投資の推進GX・エネルギー・食料安全保障資産運用立国の推進 ――などが主な柱。GX・エネルギーについては、「安定的で強靭なエネルギー」の重要性を強調。「エネルギーの輸入によって海外に数十兆円が流出している現状は変えなければならない」とするとともに、「脱炭素化につながり、競争力強化に貢献するエネルギー構造に転換していくための国家戦略の策定・実行が不可欠」として、年度内を目途にエネルギー基本計画改定の議論を集中的に行うとした。その上で、同計画の裏打ちとして、前年に策定の「GX推進戦略」をさらに発展する内容として「GX国家戦略」を展開することを表明。「原子力の活用」については、安全性の確保を大前提に原子力規制委員会の審査・検査により規制基準の適合が確認され、地元の理解を得た原子炉の再稼働を進めるほか、高速炉・高温ガス炉・核融合など、次世代炉の開発・建設に取り組むとしている。
10 Jun 2024
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総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=隅修三・東京海上日動火災保険相談役)は6月6日の会合で、将来的な電力需要に関し、通信・半導体・鉄鋼関係企業よりヒアリングを実施。電力インフラへの先行投資の重要性が浮き彫りとなった。〈配布資料は こちら〉同分科会は、5月15日に次期エネルギー基本計画策定に向けた検討をキックオフ。その中で、GX(グリーントランスフォーメーション)に向けた取組の進展や、AIの社会実装に伴うデータセンター拡大など、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展による電力需要増加の可能性が指摘された。今回の会合ではまず、資源エネルギー庁がデータセンター需要の予測について整理。IEAの予測によると、2024年1月時点で、世界に8,000以上あるデータセンターの33%が米国、16%がEU、10%が中国に立地し、2022年から2026年にかけて、その電力需要はいずれも1.3倍程度増加する。また、世界のデータセンター・AIなどの電力需要は、同じく4,600億kWhから8,000 億kWhまで急増する見通しだ。英国の電力系統企業による調査では、同国のデータセンターの電力消費量が、2050年に2020年のおよそ10倍にまで達する可能性もあるという。国内のデータセンターの電力消費量については、科学技術振興機構の調査から、2018年の140 億kWhが、省エネの進展度合いに応じ、2030年に60~900億kWhに、2050年に1,100億~12兆kWhに変動すると説明した。これを受け、ソフトバンク、キオクシア、NTT、JFEホールディングスよりヒアリング。ソフトバンクは、同社が北海道苫小牧市に2029年までに整備する総受電容量30万kW級の大型AIプロジェクトなどを紹介した上で、将来的な計算需要の伸びから、国内のデータセンターが必要とする発電設備容量は、2030年から2040年の10年間で約8倍の3,300万kW(現在の国内原子力発電総設備容量に相当)に急増すると試算。電力需給それぞれの建設リードタイムに関し、データセンターが3年なのに対し、発電所はLNG6年、風力・地熱8年、原子力17年と、大きな開きがあることを示し、「発電所や系統への先行投資が必要」と、指摘した。NTTは、光通信を利用した未来のネットワーク構想「IOWN」(Innovative Optical and Wireless Network)を紹介。超低消費電力実現の可能性を述べながらも、電力事業の将来的課題として、「電力量確保」、「価格コントロール」、「連系線確保」、「法制度見直し」をあげた。半導体製造のキオクシアは「基本的に24時間・365日のフル稼働」が必要な現状を述べ、鉄鋼業のJFEホールディングスは、脱炭素化に向けて取り組む倉敷製鉄所(岡山県・水島コンビナート)の「高効率・大型電気炉」導入計画を紹介。電力需要の大幅増を見通し、それぞれ、原子力発電に係る課題として、東日本で再稼働が進まないこと、中国電力島根2・3号機の早期再稼働・運転開始の必要性などを訴えた。委員からの意見では、AIを利用した省エネの進め方・定量化の検討、需給調整に加え災害対策も見据えた蓄電池の活用などに関する提案もあった。
07 Jun 2024
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