米原子力規制委員会(NRC)は3月3日、モンティセロ原子力発電所(BWR、60万kW)の運転期間延長申請を受理。22日に公開ヒアリングを開催する。1970年に運転開始した同発電所が運転期間延長を申請するのは2度目となる。モンティセロ発電所はエクセル・エナジー(Xcel Energy)社が所有しており、1970年に送電を開始。NRCは2006年11月、同発電所が当初の運転期間の40年に20年追加して運転することを承認しており、この認可は2030年9月まで有効である。エクセル・エナジー社の子会社で運転者であるノーザン・ステーツ・パワー社は今年1月、この認可にさらに20年を追加し、2050年9月まで80年間運転継続するための申請書をNRCに提出。NRCはこの申請書を受理できるか、過不足の有無を点検していた。3月22日の公開ヒアリングでは、まずNRCスタッフが運転期間の延長にともなう環境影響の評価プロセスを説明し、実施すべき評価の範囲等についてコメントを受け付ける。また、4月10日までの期間に、バーチャル会合も追加で開催する方針である。NRCはこれまで、送電開始以降の運転期間を合計で80年とする認可をターキーポイント3、4号機とピーチボトム2、3号機、およびサリー1、2号機に発給した。また、後続案件として、セントルーシー1、2号機、オコニー1~3号機、ポイントビーチ1、2号機、ノースアナ1、2号機についても、2回目の運転期間延長申請を審査中である。しかしNRCは2022年2月、今後これらの審査では地球温暖化など潜在的な環境リスク関係の基準を見直すと表明。運転期間延長の環境影響を評価する際に使われている「包括的環境影響評価書(GEIS)」の改訂方針を示した。現行GEISでは2013年時点の判明事項がまとめられているが、NRCによると同GEISでは運転期間を60年から80年に延長する際の環境影響がカバーされない。これにともない、ターキーポイントとピーチボトムの計4基については、NRCスタッフが2024年頃に環境影響問題の再評価を完了するまで、運転期間の延長が実質的に取り消された。今月3日になると、NRCはGEIS改訂方針への対応として、初回やそれ以降の運転期間延長に関する規則の修正を提案するとともに、個々の延長申請を審査する際に取り組むべき環境問題の数や範囲などを再定義した。これに対する意見を募集するため、5月2日までの期間に公開会合を複数回開催する。これらの会合で得られたコメント等を参考に、改訂規則やGEISの最終版を確定するとしている。(参照資料:NRCの発表資料①、②、③、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Mar 2023
2009
米国のニュースケール・パワー社は3月9日、同社製小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を備えた最初の発電所建設に向けて、昨年末に最初の長納期品(LLM)製造を韓国の斗山エナビリティ社に発注しことを明らかにした。これは昨年4月に両社が締結した契約に基づくもので、その際ニュースケール社はLLM発注の準備として、原子炉圧力容器(RPV)の上部モジュール製造に必要な鍛造金型の作製を斗山エナビリティ社に依頼。その後この鍛造金型が完成したことから、斗山エナビリティ社は今回の受注でRPV上部モジュールを構成する大型鍛造品や蒸気発生器(SG)の配管、溶接材など、6基分の総重量2,000トンを超える機器を製造する。ニュースケール社初のSMR発電所は、ユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)が米アイダホ国立研究所(INL)の敷地内で、1モジュールの出力が7.7万kWのNPMを6基備えた発電設備「VOYGR-6」(46.2万kW)として建設する。最初のモジュールを2029年までに完成させるため、UAMPSは2024年の第1四半期を目途に建設・運転一括認可(COL)を原子力規制委員会(NRC)に申請し、2026年前半に認可を受け着工したいとしている。NRCは出力5万kWのNPMについて、2020年8月にSMRとしては初となる「標準設計承認(SDA)」を発給した。その後、最後の規制手続として「最終規則」の策定が完了したことから、今年1月にはSMRとして初の「設計認証(DC)」を発給している。ニュースケール社も同月、出力7.7万kWのNPMでSDAの取得申請をNRCに対して行った。ニュースケール社のJ.ホプキンズ社長兼CEOはLLMの発注が最終決定したことについて、「当社のSMR開発がモジュールの製造段階に移行したことを意味しており、2020年代終わりまでに最初のNPM完成が現実的となるなど、SMR市場における当社の主導的地位が一層鮮明になった」と強調している。両社はまた、将来的に実施する「VOYGR」建設プロジェクトについても、今回と同様の納期でモジュール製造が可能になるよう調整中であることを明らかにした。(参照資料:ニュースケール社、斗山エナビリティ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Mar 2023
3160
米国のコンステレーション・エナジー社は3月7日、ニューヨーク州北部で保有するナインマイルポイント(NMP)原子力発電所(BWR×2基、60万kW級と130万kW級)で、米国初となる水素の実証製造を開始した。同発電所では、ノルウェー企業が製作した「プロトン交換膜式(PEM)電解槽(0.125万kW)」で、一日当たり560kgの水素を製造する。発電所の冷却等に使用する水素としては十分な量だが、同社は2025年までに9億ドル以上の投資を行って商業規模の水素製造を実現し、同社のその他の原子力発電所でも水素を製造・貯蔵・活用する方針。米国社会がクリーンエネルギー経済に向かって移行するなか、原子力発電所の無炭素電力を活用したクリーンな水素の製造能力を実証するとしている。この実証プロジェクトは、同社が進めている幅広い脱炭素化戦略の一部。水素の大規模製造が成功すれば、次世代のエネルギーとして脱炭素化が難しい航空業界や長距離の輸送業、鉄鋼生産業、農業などの脱炭素化に貢献できると同社は考えている。コンステレーション・エナジー社はこのため、地方での水素製造から流通ハブの開発に至るまで、各段階に関わる国営や民営の事業体と連携協力を進めている。米エネルギー省(DOE)は昨年、水の電気分解で水素製造するシステムをNMP発電所に建設・設置するという同社の計画を承認し、「H2@Scaleプログラム」の中から580万ドルの補助金交付を決定した。同プログラムはDOEのエネルギー効率・再生可能エネルギー局(EERE)と水素・燃料電池技術室が進めているもので、水素を適正な価格で製造・輸送・貯留・活用できることを実証し、様々な産業部門の脱炭素化促進を目指している。同社の発表によると、9億ドルの投資計画の中には、DOEとの連携協力により水素製造インフラの開発プロジェクトを進めている「中西部州クリーン水素連合(MachH2)」や「北東部州クリーン水素ハブ」、「中部大西洋地域水素ハブ」に参加することも含まれている。コンステレーション・エナジー社のJ.ドミンゲス社長兼CEOは、「水素利用は温暖化問題の解決に不可欠のツールであり、当社は原子力発電所の無炭素電力活用が最も効率的かつコスト面の効果も高いことをNMP発電所で実証する」と表明。DOEとともにクリーンエネルギー関係の雇用を創出し、米国のエネルギー供給保証を強化しつつ、化石燃料に依存する多くの産業界について脱炭素化への道筋を原子力で開きたいと述べた。DOEのK.ハフ原子力担当次官補は今回、「既存の原子力発電所での水素製造が可能であることが明らかになった」と指摘。DOEは引き続き、2021年11月の「インフラ投資法」と2022年8月の「インフレ抑制法」に基づいて開始した投資を継続し、低価格な水素の提供に向けた費用分担方式のプロジェクトを支援する。水素市場を一層拡大するとともに、経済面や環境保全面における原子力の利点をさらに活用していくもの。なお、DOEはNMP発電所のほか、オハイオ州のデービスベッセ原子力発電所とミネソタ州のプレーリー・アイランド原子力発電所、およびアリゾナ州のパロベルデ原子力発電所で行われている水素製造実証プロジェクトに対しても、支援を提供中。米国では現在、水素の約95%を天然ガス火力発電所でのガス改質法によって製造しており、製造過程でCO2を排出している。DOEとしては100万kW級の原子炉一基で、電解法により年間最大15万トンの水素をCO2を排出せずに製造できると見込んでいる。(参照資料:コンステレーション・エナジー社、DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
13 Mar 2023
3363
米ウェスチングハウス(WH)社は3月2日、ブルガリアのコズロドイ原子力発電所(100万kW級ロシア型PWR=VVER-1000×2基)にAP1000を1基以上建設することを視野に、コズロドイ原子力発電所増設会社(KNPP-NB社)と協力覚書を締結した。KNPP-NB社は、既存インフラや認可を活用して1~2基の原子炉増設計画を管理するため、コズロドイ発電所が設立したプロジェクト企業。この覚書に基づき、WH社とKNPP-NB社はAP1000の建設計画を立案する共同作業グループを設置する。両社間の協力を拡大して、ブルガリアにおけるエネルギー供給の強化や気候変動防止目標の達成を推進。また、同国の原子力規制に則した建設計画を合理的に進めるため、共同作業グループは同国の設計面や許認可関係の規制体系に改めて取り組んでいく方針だ。ブルガリアは2007年に欧州連合(EU)に加盟する際、設計上の安全性に懸念が表明されていた同発電所1~4号機(各44万kWのVVER)を2006年までにすべて閉鎖した。現在は5、6号機の2基だけで総発電量の約35%を賄っているが、追加の原子炉建設は1980年代から継続的に検討中。採用炉型は、その時々の政府の意向により二転三転している。2012年に経済的理由でベレネ原子力発電所建設計画を中止した際、代わりにコズロドイ発電所でWH社製AP1000を採用した7号機の建設案が浮上したものの、資金不足のためWH社との当時の協力合意は期限切れとなった。2020年に政府が7号機の建設を再検討した時点では、規制当局が建設サイトの環境影響声明書の中でWH社製AP1000とロシアのVVERの両方を承認していたが、2021年1月に政府は最終的に、「ベレネ発電所用に購入済みのVVER機器で7号機を建設するのが経済的で合理的」と表明。その一方では、同年2月にKNPP-NB社が米国のニュースケール・パワー社と協力覚書を締結しており、コズロドイ発電所では小型モジュール炉(SMR)を建設する可能性も出てきた。今年1月には、エネルギー省が2050年までカバーする新しいエネルギー戦略を公表し、コズロドイ発電所と計画中のベレネ発電所で2基ずつ建設する方針を明示している。同国議会はこれに先立ち、コズロドイ発電所の増設計画について票決を行っており、WH社製AP1000の導入に向けて、米国政府と政府間協力協定(IGA)の締結交渉を開始する方針が確定。これにともない、関係閣僚らは7号機の建設承認手続きと8号機の環境影響声明書作成を迅速化するため、3月1日までに必要な措置を講じることになっていた。WH社はすでに昨年12月、コズロドイ発電所5、6号機の1基に対し、2024年から10年間にわたり燃料供給する契約を獲得している。今回の覚書について、同社のD.ダーラム・エネルギーシステム担当社長は、「当社の技術でブルガリアに経済面や環境面の利点をもたらしつつ、エネルギーの供給保証にも貢献していきたい」と抱負を述べた。(参照資料:WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
10 Mar 2023
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ポーランドの国営エネルギー・グループ(PGE社)と国有資産省(MOSA)が一部出資するエネルギー企業のZE PAK社は3月8日、同国中央部ポントヌフにおける韓国製原子炉の建設に向け、合弁の特別プロジェクト企業を設置する方向で予備的合意に達した。新会社はこの建設プロジェクトにおける実行可能性調査やサイト調査、環境影響評価など、両社の協力活動を実施する。これまでに行った4か月間の予備的分析調査の結果、両社はヴィエルコポルスカ県東部に位置するコニン地区のポントヌフで、韓国電力公社(KEPCO)の主導で開発された140万kW級PWR「改良型加圧水型炉(APR1400)」を少なくとも2基(合計出力280万kW)建設する可能性を視野に入れている。ポーランドの主要エネルギー・ハブの一つであるポントヌフでは、現在ZE PAK社の大規模な石炭火力発電所が稼働中だが、これら2基を新たに建設することで、ポーランドの総電力需要の約12%に相当する約220億kWhの発電が可能になる。早ければ2035年にも初号機が完成するとの見通しである。ポーランドでは2021年2月に閣議決定した「2040年までのエネルギー政策」に基づき、政府が約100万kWの大型原子炉を2043年までに6基、合計600万~900万kW建設するプログラムを進めている。PGE社が設立した原子力事業会社のPEJ社は2021年12月、北部ポモージェ県のルビアトボ-コパリノ地区を建設サイトに選定しており、最初の3基、375万kW分についてはウェスチングハウス(WH)社製AP1000の採用が決定している。J.サシン副首相兼国有資産相によると、ポーランド経済のさらなる成長を促すには強靭かつ他国に依存しないエネルギー部門が必要であり、無炭素電力を安定的に供給できる原子力発電は再生可能エネルギーと同様に重要なもの。その意味から、ZE PAK社が韓国水力・原子力会社(KHNP)との協力で進めているポントヌフのプロジェクトは同じPGE社が関わっているが、政府の原子力プログラムを補完するという位置づけであり、今回設置が合意された新会社はKHNP社の直接的なパートナー企業ということになる。企業活動用のプロジェクトという側面はあっても、実現すればポーランドにおけるエネルギーの供給保証と自給強化に資することから、政府としてはこのポントヌフのプロジェクトを全面的に支援していく考えだ。このプロジェクトについては、2022年10月に韓国の産業通商資源部(MOTIE)とポーランドのMOSAが関係情報の交換等で協力するための覚書を締結。PGE社とZE PAK社およびKHNP社はその際、企業間協力意向書(LOI)を締結した。同年末までの期間にこれら3社はポントヌフでのAPR1400の建設に向けた予備計画を作成しており、その一部としてサイトでの地震や環境面、地質工学面の条件についても予備的分析調査を実施。このような準備作業や建設段階で必要な予算の見積もりも行っている。今回、設立が決まった新会社への出資比率はPGE社とZE PAK社はともに50%で、会社としての方針は双方の合意に基づき決定する。この新会社はプロジェクトのすべての段階でポーランド側を代表することになるため、サイト調査や環境影響調査のみならず、詳細な資金調達計画の準備やその後の許認可取得等についても、韓国側と協力しながら進めていく。正式な設立までには、ポーランド競争消費者保護庁(UOKiK)の同意が必要なことから、PGE社とZE PAK社は今後直ちに申請書を提出する方針である。(参照資料:PGE社、ZE PAK 社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 Mar 2023
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フランス電力(EDF)とそのイタリア法人であるエジソン社、イタリアのアンサルド・エネルギア・グループ、およびその100%子会社のアンサルド・ヌクレアーレ社は3月6日、欧州で小型モジュール炉(SMR)等の原子炉開発や建設で協力する可能性を探るため、基本合意書(LOI)に調印した。この合意は、脱原子力国であるイタリアで将来的に、エネルギー政策変更の可能性があることを見越したもので、同国での原子力発電所建設を念頭に置いている。アンサルド・ヌクレアーレ社がイタリアで主導する原子力発電部門の知見を活用し、EDFグループの新規原子力プロジェクトをともに推進。イタリアがクリーンエネルギーに移行する際、原子力発電が果たす役割についても4社は議論の口火を切る方針だ。イタリアでは1973年の石油危機を契機に原子力発電開発が加速し、1963年以降4基の商業炉が稼働したものの、チョルノービリ原子力発電所事故の影響で1990年までにこれらはすべて閉鎖された。2008年に発足したS.ベルルスコーニ政権は原子力発電の再開を試みたが、福島第一原子力発電所事故が発生したため国民投票では9割以上が原子力発電所の建設に反対、新たな国家エネルギー戦略では原子力が排除された。しかし近年は、原子力発電所が国内に存在しないにも拘わらず、原子力コースを選択する学生数が徐々に増加している。4社の協力に向けた今回の合意にともない、各社はそれぞれの技術力が生かされる協力方法を模索していく。アンサルド・エネルギア・グループが原子力を含むエネルギー分野で、関係機器の開発やサービスの提供に携わる一方、EDFは世界最大の原子力発電事業者として、新たな原子炉の開発プロジェクトも実施。これにはSMRの「NUWARD」が含まれており、アンサルド・ヌクレアーレ社とEDFは最近、同設計のエンジニアリング調査の実施契約を交わしている。また、出力120万kWの中型欧州加圧水型炉(EPR)や、通常の大型EPR(165万~175万kW)もこれに含まれている。4社はまた、イタリア国内でエネルギーの供給保証と輸入に依存しない電力供給システムの必要性が高まっていることから、同国で新しい原子力発電所の建設可能性を評価していく。イタリアでは総発電量の4割を再生可能エネルギーで賄う一方、依然として6割を天然ガス等の化石燃料で発電している。今回の協力を通じて、再エネ設備を新しい原子力発電所で補い、電力供給システムの安定性や環境面の持続可能性を確保。欧州全体やイタリアが掲げる「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化」という意欲的な地球温暖化防止目標の達成を目指す。4社はともに、原子力が最良の低炭素電源の一つであり、設備容量あたりの設置面積も小さいと認識。さらに、SMRのような革新炉では、安全性が非常に高い上に必要とされる投資額が少ない。熱電併給も可能なことから、エネルギー供給上の様々な要求にも柔軟に対応できると考えている。アンサルド・ヌクレアーレ社のR.カサーレCEOは、「今回の合意の正当性を当社は信じており、イタリアの産業界や研究機関とともに、欧州諸国の様々な原子力プロジェクトに積極的に参加する」とコメント。欧州の原子力発電に寄せられている新たな関心に対し、イタリアが提供できる高い付加価値を実証していくと表明した。(参照資料:EDF、アンサルド・エネルギア社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Mar 2023
1829
米ジョージア州で建設中のA.W.ボーグル原子力発電所3号機(PWR、110万kW)が3月6日、初臨界を達成した。同機は米国で約30年ぶりの新規炉であり、国内初のウェスチングハウス(WH)社製AP1000となる。同機では今後、起動試験を引き続き実施して、一次冷却系や蒸気供給システムで設計通りの性能が得られることを実証する。出力を徐々に上げて送電網に接続した後は、複数の出力レベルで試験を行いフル出力の達成を目指す。営業運転の開始までにすべてのシステムの機能と運転手順を確認する方針で、同機が供用を開始するのは2月中旬の発表通り5月か6月になる見通し。後続の4号機については、今年の第4四半期後半~2024年第1四半期の終わり頃を見込む。ボーグル3、4号機の建設工事はそれぞれ、2013年3月と11月に開始されており、サザン社傘下のジョージア・パワー社はこの建設プロジェクトに45.7%出資。このほか、オーグルソープ電力とジョージア電力公社(MEAG)およびダルトン市営電力がそれぞれ、30%と22.7%、および1.6%出資している。これら2基の運転は、同じくサザン社傘下のサザン・ニュークリア社が担当する。ジョージア・パワー社の会長と社長を兼任する C.ウォマックCEOは、「今後も起動試験のあらゆる段階で課題の解決に取り組み、3号機を安全に稼働させる」と表明した。WH社のP.フラグマン社長兼CEOも同日、「ジョージア州でこれから数世代の州民に安全で信頼性の高い電力を供給していく重要な一歩になった」とコメント。同社のAP1000により、米国の原子力開発利用に新たな時代が到来したとしている。同社は第3世代+(プラス)のAP1000について、受動的安全系を全面的に採用しておりモジュール工法が可能な省スペース型の設計だと説明。中国ではすでに世界初のAP1000が4基営業運転中であるほか、ポーランドは最初に建設する大型炉3基にAP1000の採用を決定した。ロシア型PWR(VVER)を15基備えたウクライナでも、AP1000を9基建設する計画が浮上するなど、世界中の様々なサイトで建設される可能性があると強調している。(参照資料:ジョージア・パワー社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
07 Mar 2023
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米原子力規制委員会(NRC)は3月2日、カリフォルニア(加)州のディアブロキャニオン原子力発電所(DCPP)(各PWR、約117万kW×2基)の運転継続が同州の送電網の信頼性向上等、様々な点で有益であることを考慮し、運転期間の延長に向けた規制手続の実施を承認した。これは、DCPPの事業者であるパシフィック・ガス&エレクトリック(PG&E)社の要請を受け入れた判断。これにともない、同社はNRCが今年1月に提示した条件に従って、12月末日までにDCPPの運転期間の最大20年延長に向け、最新の申請書をNRCに改めて提出する。1984年と1985年に送電開始した同発電所1、2号機の現行の運転認可は、それぞれ2024年11月と2025年8月まで有効。PG&E社は2009年11月、これらの運転期間を60年に延長するための申請を行ったが、2016年6月には「現行認可の満了時にDCPPを永久閉鎖する」と決定、2018年3月にこの申請を取り下げていた。NRCの規制では、運転期間の延長申請書は現行認可が満了する少なくとも5年前までに提出しなければならない。NRCはこの規制の適用除外を求めるPG&E社の要請書を審査した上で、適用除外が法的に認められていることや、認めた場合でも州民の健康や安全が過度に脅かされるリスクがないこと、加州の送電網の信頼性を維持する上でも有効である点を考慮、今回の判断を下したと説明している。申請書の審査は通常約22か月かかるが、今回の適用除外により、NRCの審査期間中は現行の運転認可が有効になる見通しだ。DCPPを送電開始後40年で閉鎖するという2016年時点の判断は、この当時、供給地域における電力需要が伸び悩み、再生可能エネルギーの発電コストが低下したことなどが背景にあった。加州の公益事業委員会(CPUC)もこの計画を承認していたが、同州では2020年夏に厳しい熱波に見舞われ、G.ニューサム知事は緊急事態を宣言、電力会社には計画停電を指示する事態となった。同様の宣言は、同じく熱波と電力需給のひっ迫が懸念された2022年も発出されており、ニューサム知事は州議会議員に対しDCPPの運転期間延長に向けた立法を提案している。DCPPはまた、加州における総発電量の約9%を賄っているほか、無炭素電力については約17%を供給。DCPPの運転を継続することは、加州の天然ガスへの依存度を軽減するだけでなく一層多くの無炭素電力を州民に提供することになる。このような事実や州知事の提案を踏まえ、加州の議会下院は2022年9月、DCPPの運転期間を2030年まで延長する法案(上院846号)を圧倒的多数で可決。これを受けてPG&E社は、運転期間延長申請書の提出期限に関する規制の適用除外と、2018年に中止された審査の再開をNRCに求めていた。DCPPはこのほか、2022年11月に米エネルギー省(DOE)の「民生用原子力発電クレジット(CNC)プログラム」で、初回の適用対象に選定された。CNCプログラムでは、早期閉鎖のリスクにさらされている商業炉の救済とCO2排出量の削減を目的としている。(参照資料:米規制委の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Mar 2023
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欧州連合(EU)域内で原子力利用を推進する11か国のエネルギー相は2月28日、原子力協力を一層強化することを改めて確認。欧州原子力共同体(ユーラトム)条約の目標に沿って原子力研究を促進し、技術情報の普及に努めるべきだと訴えた。この声明は、EU理事会の今期議長国を務めるスウェーデンが、27日と28日に首都ストックホルムで開催したエネルギーと輸送関係の閣僚および代表高官の非公式会合で取りまとめられた。共同議長はスウェーデンのE.ブッシュ副首相兼エネルギー・ビジネス・産業大臣と、A.カールソン住宅・インフラ大臣が務めており、声明に賛同した11か国はブルガリア、フランス、ハンガリー、フィンランド、オランダ、ポーランド、チェコ、スロバキア、ルーマニア、スロベニア、クロアチアである。欧州諸国が現在、未曽有のエネルギー供給危機に瀕していることから、会合では共通エネルギー市場の構築に向けた長期の見通しに焦点を当てる一方、次回以降の冬季を念頭にエネルギーの供給準備についても議論を実施。加盟国すべてがエネルギー危機を克服できるような将来のエネルギー政策や、域内で2030年までに温室効果ガスを1990年比55%削減するための政策パッケージ「Fit for 55」の実施準備についても意見を交わした。仏エコロジー移行・地域結束省とエネルギー移行省の発表によると、原子力は欧州における地球温暖化の防止目標達成とベースロード用電力の確保、エネルギー供給保証のための重要電源の一つ。声明に合意した各国は、それぞれの原子力部門相互の協力を一層緊密化することにより、サプライチェーン全体の協力を最大限に拡大し、人材育成プログラムや産業プロジェクトを共同実施していく。革新的な原子力技術の開発や既存の原子力発電所の運転についても、新たな原子力プロジェクトの実施を後押しするとしている。このほか、安全分野における科学協力の強化や、国際的な良好事例の共有についても協議が行われた。なお現地の報道によると、この会合に先立ち仏エネルギー移行省のA.パニエ=リュナシェ大臣が、「フランスが目指しているのは原子力利用促進同盟の樹立だ」と述べた模様。フランスは、欧州諸国が地球温暖化の防止目標を達成し、輸送用の水素を製造する上でも原子力が有効だと確信している一方、この問題についてEU域内では意見が分かれており、ストックホルムの会合ではドイツとスペインを筆頭にオーストリアとルクセンブルクが反対の立場を確認したと伝えている。(参照資料:仏政府(フランス語)、欧州理事会の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Mar 2023
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国営のチェコ電力(CEZ社)は2月27日、国内で2基目と3基目の小型モジュール炉(SMR)の建設に向けた予備的評価の結果、候補サイトとして北東部のポーランド国境に近いジェトマロヴィツェ(Dětmarovice)と、北西部のドイツ国境付近のトゥシミツェ(Tušimice)を暫定的に指定した。同社は大型炉が稼働する国内2つの原子力発電所のうち、ドコバニ発電所の増設計画を進める一方、SMRの導入プログラムも進めている。これまでにSMRデベロッパーである米国のニュースケール・パワー社やGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社、ウェスチングハウス(WH)社、ホルテック・インターナショナル社とSMR関係の協力覚書を締結したほか、英国のロールス・ロイスSMR社やフランス電力(EDF)、韓国水力・原子力会社(KHNP)とも同様の覚書を結び、建設の実行可能性等を調査中である。チェコ初のSMRについては、CEZ社は2022年3月に既存のテメリン原子力発電所の敷地南西部を建設サイトとして選定。同発電所が立地する南ボヘミア州の州政府、および傘下の国立原子力研究機関(UJV Rez)とともに、SMR建設を加速する「南ボヘミア原子力パーク」プロジェクトを始動させており、CEZ社のD.ベネシュCEOが非公式に「2032年の完成を目指す」と述べたことが伝えられている。後続SMRの建設が検討されているジェトマロヴィツェとトゥシミツェは、ともにCEZ社の石炭火力発電所が立地しており、SMRでこれらをリプレースする計画である。同グループは「2030年代の事業ビジョン」の中で、2040年代以降に合計100万kW以上のSMR建設に向けた準備を進めるとしているが、2、3号機については早ければ2030年代後半に完成する可能性を指摘。SMRを通じて、無炭素なエネルギーを長期にわたり安定供給する方針である。CEZ社のT.プレスカッチ再エネ担当理事は、SMRについて「大型炉の代用品という位置付けではなく、石炭等の大型火力発電所を代替する適切な電源として役割を担っている」と説明。SMRの建設プログラムでは、機器の製造やサプライチェーンに参加する機会や、関係地域にサービス・訓練センターを設置する可能性があるなど、チェコ経済の発展に向けた大きな機会になると述べた。CEZ社は今後、これら2か所の候補サイトの最終決定に向けて、今秋までさらなる調査やモニタリングを継続する。このような活動も含め、許認可申請までに3~5年を要すると同社は説明している。(参照資料:CEZ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Mar 2023
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米国のコンステレーション・エナジー社は2月21日、イリノイ州で運転中のブレードウッド原子力発電所(PWR×2基、各約120万kW)とバイロン原子力発電所(PWR×2基、各約120万kW)で合計約13.5万kW相当の出力増強を行うため、8億ドル投資すると発表した。これらの発電所は、電力市場の自由化にともなう経営の悪化で一時期早期閉鎖のリスクに晒されていたが、2021年に成立した州法と昨年8月に米国議会で成立したインフレ抑制法(IRA)により、税制優遇措置等の経済的支援が得られるようになった。今回の投資も、これらの法に基づいて可能になったと同社は説明。2つの原子力発電所では今後、燃料の交換時にメイン・タービンを高効率の最新鋭設備に段階的に取り換えていく。これにより、2026年~2029年に計13.5万kW分の出力が増強される。同社の発表では、今回の出力増強は風力発電換算で216基のタービンを新たに追加したことになる。また、このプロジェクトにともない、発電所周辺のコミュニティで経済の活性化が期待され、実施期間中に2つの発電所では合計で数千人規模の雇用が新たに生み出されるとしている。コンステレーション社はメリーランド州のボルチモアを本拠地としており、米国北東部の卸売電力市場「PJM」の管内で同社が運転する原子力発電所は、8サイト・16基に及ぶ。同社は2012年、米国最大手の原子力発電事業者エクセロン社に買収されたが、米国社会が無炭素な未来に向けて移行するなかでエクセロン社は2022年1月、この動きを加速するのに最適な企業としてコンステレーション社を分離独立させると発表。翌2月にこの分離手続きは完了した。コンステレーション社はその後、2022年10月にイリノイ州内で保有するクリントン原子力発電所(BWR、109.8万kW)とドレスデン原子力発電所(2、3号機、各BWR、91.2万kW、1号機は閉鎖済み)の運転期間を、それぞれ20年延長する方針を表明している。(参照資料:コンステレーション・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Feb 2023
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カナダ政府は2月23日、小型モジュール炉(SMR)の商業化を支援するため、サプライチェーンの構築や燃料の確保、放射性廃棄物の安全な管理に資する研究開発プロジェクトに、今後4年間で総額2,960万加ドル(約29億6,200万円)の資金援助を実施すると発表した。連邦政府の天然資源省(NRCan)は2018年、SMRをカナダ国内で開発・利用するだけでなく、将来世界のSMR市場で主導的地位を占めることを目指し、州政府や産業界、電気事業者などを交えた協議を10か月にわたって実施。その結果をSMRの戦略ロードマップとして取りまとめており、2020年にはCO2排出量の削減と国内原子力産業の拡大を図るため、SMR開発の努力目標やSMRが発電分野で果たす役割などを示したSMR行動計画を公表している。政府は今回、2022会計年度(2022年4月~2023年3月)予算から支援金を拠出し、SMR開発・利用への支援を継続すると改めて表明。カナダが世界のクリーンエネルギー開発でトップランナーに位置付けられるよう、同プログラムではニューブランズウィック州やサスカチュワン州などと同じく、各州の送電網の脱炭素化を推進する。また、CO2を大量に排出する産業の脱炭素化も進め、遠隔地域のコミュニティに対してはディーゼル発電からSMRへの転換を促す方針である。支援金として研究開発プロジェクト一件につき、期間や規模等に応じて平均50万加ドル~250万加ドル(約5,000万円~2億5,000万円)を交付する予定。原則として総コストの75%まで、500万加ドル(約5億円)を上限とする。受給資格は営利・非営利を問わず、カナダ国内で登録された電気事業者やその他企業、州政府や地方自治体、大学および学術機関など。申請書の受け付けは4月7日までとなっている。今回の政府発表によると、カナダが低炭素経済に移行するには、クリーンで低価格な電力の需要拡大のため、原子力のようにCO2を排出しない安全で安定した発電技術も含め、様々な無炭素エネルギー源が必要である。その中でも、次世代の原子力技術は重要な役割を担っており、中でも従来の大型炉と比べて構造がシンプルで操作し易く、安価なSMRは大いに貢献すると見込まれる。連邦政府はすでに、地球温暖化の影響緩和を目的としたSMR開発の支援活動を行っており、カナダ・インフラストラクチャー銀行(CIB)は2022年10月、オンタリオ州のダーリントン原子力発電所で世界初のSMRを建設するというプロジェクトに過去最高規模の9億7,000万加ドル(約970億円)の融資を約束した。今月6日には、政府機関のカナダ自然科学・工学研究会議(NSERC)がNRCanとの協力により、独自の補助金プログラムの下でSMR開発プロジェクトを募集すると発表。サプライチェーンの構築や廃棄物の管理に取り組む大学からの申請に資金を提供するとしており、次世代の原子力技術者の養成や大学の能力拡大などで、NRCanの今回の資金援助プログラムを補完する。 (参照資料:NRCanの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
27 Feb 2023
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ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)の原子力事業子会社Polskie Elektrownie Jądrowe (PEJ)社は2月22日、同国初の大型原子炉の建設に向け、米ウェスチングハウス(WH)社とフロントエンド・エンジニアリング等の初期活動を実施する契約を締結した。ポーランド政府は国内の複数のサイトで、2043年までに100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万~900万kW建設する計画で、2022年11月には最初の3基、小計375万kW分に採用する設計として、WH社製の第3世代+(プラス)PWRであるAP1000を選定した。同国北部のルビアトボ-コパリノ地区で2026年にも初号機の建設工事を開始し、2033年の完成を目指している。2022年12月には発電所のレイアウトなど、プロジェクトの細かな取り決め事項についてWH社と合意している。今回結ばれた契約は、建設プロジェクトの実施契約締結に先立ち、WH社が進める10項目の準備作業を定めたもの。発電所の詳細な開発モデルの作成や予備的リスク評価に先立つ準備作業が含まれるほか、AP1000技術を現地の要件すべてに適合させるため投資の実施要件をリスト化し、ポーランドのサプライヤーを中心とした資機材調達戦略の枠組みを設定、建設プロジェクトに対する外部資金の調達についても原則を定める。PEJ社によると、このような作業は建設プロジェクトの実施スケジュールを維持していく上で重要であり、これまで世界中で行われてきた原子力発電所建設プロジェクトの教訓に基づいている。同社はすでに2022年、建設許可の取得に向けてプロジェクトの環境影響評価報告書をポーランド気候環境省に提出しており、関係インフラを建設する計画の策定やサイト周辺自治体との交流なども始めている。今回の契約締結について、気候環境省のA. モスクヴァ大臣は、「原子力はエネルギー・ミックスの重要な構成要素となり、ポーランドのエネルギー供給を保証する」と説明。「このような戦略的投資により、将来の電力価格が低く抑えられるだけでなく、クリーンで安全な国産エネルギーを確保できる」とした。また、この計画で数多くの国内企業が刺激を受け、関係サプライヤーやパートナー企業になるなど、国家経済や雇用にも良い影響があるとしている。一方、WH社の発表によると、同社はすでにポーランドの国内企業35社と提携契約を結んでおり、同国内で大規模なエンジニアリングセンターの設置も計画している。追加の産業投資を通じて、ポーランドの人材育成や機器供給基盤の構築も支援していく方針である。同社はまた、本格的な受動的安全系を備えたAP1000はモジュール方式で建設することができ、クリーンな電力や蒸気、水素も製造可能だと指摘。米ジョージア州では現在、2基のAP1000が建設中だが、中国ではすでに世界初のAP1000が4基営業運転中だとした。さらに、ロシア型PWR(VVER)を15基備えたウクライナでも、AP1000を9基建設する計画が浮上するなど、世界中のサイトで建設される可能性があると強調している。(参照資料:PEJ社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Feb 2023
1533
カナダ原子力研究所(CNL)は2月13日、ベルギー原子力研究センター(SCK-CEN)と共同で、昨年10月にドローンを使って原子炉施設上空の放射線検知実験を行ったことを明らかにした。ベルギー北部のモルにあるSCK-CENの研究炉「BR1」の上空に、クロメック社製ガンマ線検知器やCNLが設計したタングステン合金視準器(コリメーター)などを搭載したドローンを飛ばし、同炉の通常運転時に堆積したプルーム(放射性雲)を検知・計測できるか調査したもの。CNLはすでに何度か、ドローン搭載用の放射線検知器を製造しており、このような機器を搭載したドローンをチョークリバー研究所の「国立研究ユニバーサル(NRU)炉」(2018年閉鎖)上空で飛行させた実績がある。今回のようにシールドされた検知器を上向きに設置し、プルームの真下を既定のコースで横切りながら特定の同位体の量を測ることは、CNLにとっても貴重な試みだったという。このプロジェクトは、カナダ政府が2015年にカナダ原子力公社(AECL)と共同で策定した「原子力科学技術(FNST)ワークプラン」の下で行われており、CNLは今回の結果から、「特定のプルームを検知することは可能だ」と指摘。得られた情報は、事故時の緊急時対応チームやその後に活動する復旧チームにとって、極めて貴重なものになると強調している。CNLによると今回の試験飛行で重要な点は、飛行プランを作成した上で専用に製造した検知器でプルームを計測し、結果の分析評価を行ったこと。ドローンによるプルームの計測実績は過去に多々あるものの、同試験飛行により事故発生時に備えた訓練や計測技術の開発が進展し、データの蓄積も進む。検知器から送られるデータによって、放射能がどの方向から来ているのか正確に知ることも出来るとしている。一方、SCK-CENも昨年12月、ベルギーの航空宇宙企業サブカ(SABCA)社と共同で、SCK-CENのPWRプロトタイプ「BR3」(1987年閉鎖)の上空に、特製のヨウ化セシウム・シンチレータを搭載したサブカ社製ドローンを飛ばす実験を行っている。閉鎖後も放射線を発している原子力関係施設やその他の一層広いエリアで放射線の地図を描き、これら施設の廃止措置や監視プログラムに役立てることが目的。これは両者が進めている「半自立制御型ドローンの活用に関する技術革新(BUDDAWAKU)研究プロジェクト」の一環であり、ベルギー連邦政府の「エネルギー移行基金(ETF)」から資金援助を受けている。SCK-CENは「放射線の地図作成において、両者の機器の組み合わせは理想的なツールになる」と表明。今年の後半には、両者はSCK-CENサイト全体の上空に固定翼のドローンを飛ばし、長時間の計測飛行が可能なことを実証する計画である。(参照資料:CNL、SCK-CENの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
22 Feb 2023
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米サザン社は2月16日、子会社のジョージア・パワー社がジョージア州で建設しているボーグル原子力発電所3、4号機(各ウェスチングハウス社製AP1000、110万kW)の送電開始時期の延期を発表。3号機は今年の5月あるいは6月に、4号機は今年の第4四半期後半~2024年第1四半期の終わりに延期された。これは同日に開催されたサザン社の決算報告会で明らかにされた。同社は先月上旬、証券取引委員会(SEC)に提出した報告書の中で、「3号機の運転開始前試験と起動試験の際に冷却系配管の一部に振動が認められたため、今年の第1四半期(2023年1月~3月)に予定していた3号機の送電開始時期を、今年4月に延期する」と明記。今回、その修理が完了したことを明らかにする一方、起動試験中に新たに生じた課題の改善作業を追加で実施中だと表明。先月の見通しから計画をさらに1~2か月後ろ倒しすることになったもので、同機で最初の臨界条件を達成するのは今年3月か4月中になるとしている。報道によると、サザン社のT.ファニング会長兼CEOはこの件について、「長期にわたり3号機に最高のパフォーマンスを発揮させるため、もう少し時間をかけてこの課題に取り組み、関係リスクを軽減する」と説明しているようだ。新たに生じた課題としては、一部のバルブの漏れや冷却材ポンプの流量問題などと伝えられている。4号機についても、同社は3号機で得られた教訓を生かし、試験段階に入る際に同様課題の発生を防ぐ方針と見られている。同CEOは去年4月の段階で、「様々な課題に直面しているため追加の工期やコストもかかるが、当社が最優先としているのは3、4号機を安全に稼働させることだ」と表明。「スケジュールを守るために安全性や品質を犠牲にするつもりはないし、完成すれば信頼性の高い無炭素電源として、今後60年から80年にわたり顧客にエネルギーを供給できる」と述べていた。今回の延期と残りの作業等により、この建設プロジェクトに45.7%出資しているジョージア・パワー社の負担分は2億100万ドル増加する見通し。同プロジェクトにそれぞれ30%と22.7%、および1.6%出資しているオーグルソープ電力とジョージア電力公社(MEAG)およびダルトン市営電力にも、出資比率に応じた影響が及ぶと見られている。ボーグル3、4号機の建設プロジェクトは米国で約30年ぶりとなる原子力発電プラントの新設計画で、それぞれ2013年3月と11月に本格着工した。3号機では2020年10月に冷態機能試験が、2021年7月には温態機能試験が完了。2022年8月に原子力規制委員会(NRC)が同機への燃料装荷と運転開始を許可したことから、ジョージア・パワー社は同年10月に燃料を装荷している。今回の発表でサザン社は、4号機についても冷態機能試験が昨年12月に完了した事実に言及。現在は機器・システムの試験を実施中で、最新のタイムスケジュールは残りの作業量とこれまでの経験に基づいていると説明した。(参照資料:サザン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
21 Feb 2023
2289
フィンランドの経済雇用省は2月16日、フォータム社が同国南部で運転するロビーサ原子力発電所(ロシア型PWR=VVER-440×2基、各53.1万kW)に新たな運転認可を発給し、2050年末まで約70年間運転を継続することを承認した。この判断は、今年1月にフィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)が政府に提示した肯定的な見解に基づいている。フォータム社は2022年3月、同発電所の2基について運転期間の延長を申請、STUKでは両機で広範な安全性評価を行った結果、これらが2050年まで安全に運転継続することは可能であり、フォータム社には法令が求める能力や競争力、財力も備わっていると判断していた。ロビーサ1、2号機はそれぞれ1977年と1980年に送電を開始した。VVERの公式運転期間は30年とされる。2007年にフィンランド政府はSTUKの助言に従い、両機の運転期間をそれぞれ2027年と2030年まで20年間延長することを承認した。2度目の延長となる今回の認可発給で、両機の運転期間はそれぞれ73年と70年になる見通しである。経済雇用省によると、同発電所が発電する年間約80億kWhの電力はフィンランドにおける総電力需要の約10%に相当。このため、これを継続利用することはフィンランドの電力供給力が強化され、電気料金の削減にも貢献する。フォータム社では、今回認可された延長期間中に両機が発電する無炭素電力は合計1,700億kWhに達すると強調している。フォータム社によると、ロビーサ発電所の運転期間延長に向けた投資は同社にとって、経済面や雇用面など広範囲でプラスに働く。旧ソ連時代に建設されたVVERである両機では、安全系や制御系、自動化システムなどに西側諸国の技術を用いて改造されている。また、安全性と操作性を向上させるため、同社は同発電所で設備のバックフィットを継続的に実施。過去5年間に同社がこの改修工事で投じた総額は約3億ユーロ(約429億円)にのぼっており、2度目の運転期間延長申請を判断した際、同社は2050年までの運転継続にかかるコストを約10億ユーロ(約1,432億円)と見積もっていた。フォータム社のM.ラウラモ社長兼CEOは今回の政府承認について、「当社にとって歓迎すべき判断というだけでなく、フィンランドがクリーンで豊かな将来を築く上でも重要だ」と指摘。同国が意欲的な温暖化防止目標を達成し産業界の脱炭素化を図るには、クリーンな電力が大量に必要であり、再エネのように間欠性のある電源を追加設置しただけではカバーし切れない。原子力による安定した電力定供給はまた、北欧諸国の発電システムにおける太陽光や風力といった電源の設置拡大も可能にすると述べた。同社長はまた、フォータム社の主要市場であるフィンランドとスウェーデンでは原子力に対する支持率が高く、同社はロビーサ発電所が立地するロビーサ市およびその周辺地域と良好な関係を保っているとした。原子力発電所の運転期間延長と並行して、同社は現在、これら2つの国で新規の原子炉建設に向けた経済性の評価等を実施中。建設に必要な技術面や経済面、および社会面の前提条件について、来年までの予定で実行可能性を集中的に調査しており、フォータム社が新たな大規模投資を長期的に行う上で、このような条件整備が必要と説明している。なお、フォータム社はロビーサ発電所の運転期間延長を申請した際、同発電所サイト内で操業している低・中ベル放射性廃棄物の処分場が2090年末まで利用可能となるよう申請している。経済雇用省は現在、この件に関する審査を行っており、今春中に判断を下す見通し。同発電所から発生する使用済燃料に関しては、フォータム社とティオリスーデン・ボイマ社(TVO)が共同出資するポシバ社が、2016年末からユーラヨキ地方のオルキルオト原子力発電所近郊で深地層処分場を建設中である(参照資料:フィンランド経済雇用省、フォータム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Feb 2023
2224
チェコの国営電力(CEZ)は2月14日、テメリン原子力発電所(ロシア型PWR×2基、各108.6万kW)の60年超運転に対応するため、追加で36億コルナ(約218億円)を投じてバックフィット作業を継続すると発表した同社は先月27日、チェコのもう一つの原子力発電所であるドコバニ発電所(ロシア型PWR×4基、各51万kW)についても、2047年までの累計約60年間、安全・確実に運転継続できるよう、今年は機器の更新等で23億コルナ(約139億円)を投資すると表明。仏フラマトム社とは2月14日、同発電所に設置されているモジュール型デジタル方式の計装制御(I&C)系「Spinline」の性能確認装置について、改造・製造契約を交わしている。これら2つの原子力発電所は2021年に同国の総発電量の約37%を供給している。CEZ社は、これら2つの発電所の運転サイクルを現在の約12か月から、最終的に18か月に延長することを目指しており、ドコバニ発電所については先月、4基すべてを当面は16か月にすると表明。テメリン発電所では、今後数年間の主要プロジェクトとして運転サイクルの延長を行うほか、I&C系の近代化作業を継続、発電機の取替え準備も進める方針である。テメリン発電所でこのようなバックフィット作業にともなう投資案件は、今年は昨年より46件増の271件を予定。テメリン発電所の2基が運転を開始して以降、CEZ社が同発電所のこれまでの改修工事に投資した総額は280億コルナ(約1,697億円)以上にのぼっている。テメリン1、2号機はそれぞれ、2002年6月と2003年4月に営業運転を開始。ドコバニ発電所では、5号機の建設に向けて2022年3月に入札が始まった一方、テメリン発電所では一時期進められていた増設計画が、財政難で2014年に頓挫した。CEZ社はそれ以降、テメリン発電所サイト内で南ボヘミア州の「原子力パーク」プロジェクトとして、小型モジュール炉(SMR)の建設を計画している。CEZ社のB.ズロネク原子力本部長は、「テメリンの2基を最良の状態で運転し続けたい」と表明。機器の近代化や効率性向上工事を継続する意思を強調した。運転サイクルの延長については、「世界中の大多数の原子力発電所が18か月というサイクルを取り入れているので、わが国でも複数の分析評価を実施した上で慎重に進めたい」と述べた。同本部長によると、2号機では早ければ今年中にも運転サイクルを2か月間延長して14か月サイクルとする。これにより、原子炉の効率が増すだけでなく、燃料交換時に機器の冷却や開閉にともなう負荷が減少するとした。テメリン発電所ではまた、2029年までの予定でI&C系の近代化を実施する。CEZ社は2号機が昨年定期検査に入った際、主要な作業をすでに開始しており、今年は長さ5kmの送電ケーブルや45kmの光通信ケーブルを新たに敷設する予定である。新しい発電機については入札の募集を計画しており、1号機については2028年に、2号機ではその2年後を目途に取替えを実施する考えだ。(参照資料:CEZ社の発表資料(チェコ語)①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Feb 2023
1704
カナダ原子力安全委員会(CNSC)とポーランドの国家原子力機関(PAA)は2月13日、両者のこれまでの協力関係を補足・強化し、小型モジュール炉(SMR)や先進的原子炉に関する活動を共同で進めるため、協力覚書を締結した。この覚書は両者が2014年9月、原子力安全分野の一般的な協力について締結した情報交換のための了解覚書に基づいている。これらの原子炉に関係する審査で、規制上の良好事例や経験の共有を一層拡大するとしており、中でもGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のSMR「BWRX-300」(30万kW)に関する情報を交換、共同で技術審査を行うことを目指している。「BWRX-300」の初号機については、カナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が、ダーリントン原子力発電所サイト内で2028年第4四半期までに完成させることを計画。CNSCが提供する「ベンダー設計審査(VDR)」では第2段階の審査が行われており、OPG社は2022年10月に同炉の建設許可を申請した。一方ポーランドでは、大手化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業が、石油化学企業大手のPKNオーレン社と合弁でオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社を設立しており、2033年以降の完成を目指して「BWRX-300」の建設を進める方針である。OSGE社は同設計を選択した理由として、許認可手続きや建設・運転に至るまでOPG社の経験を参考にできると説明。PAAに対しては2022年7月、「BWRX-300」建設計画に関する予備的な評価見解の提示を要請していた。今回の協力覚書は、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで国際原子力機関(IAEA)が規制関係の国際会議を開催したのに合わせ、PAAのA.グウォヴァツキ長官代理とCNSCのR.ヴェルシ委員長が調印した。両者が協力を進める主要事項は以下のとおり。先進的原子炉とSMRの技術に関する審査アプローチを共有し、共通する技術的課題の解決を促進する。審査の効率的な実施に向けて双方が確実に準備を整えるため、申請の前段階の活動を共同で実施する。安全性を確保するため、これらに特有の全く新しい技術的問題点に取り組めるような規制アプローチを共同で研究・開発し、研修も行う。PAAのA.グウォヴァツキ長官代理は今回の協力覚書について、「規制審査関係の経験を共有することで許認可手続きの合理化が進み、双方の規制アプローチの調和が図られる」とコメント。ポーランドのみならず、その他の国でもこのような原子炉の建設が一層効率的に進むことになると指摘している。(参照資料:PAA、CNSCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Feb 2023
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米ホルテック・インターナショナル社の英国法人は2月9日、同社製小型モジュール炉(SMR)「SMR-160」の機器製造協力で、英国の大型鋳鍛造品メーカーであるシェフィールド・フォージマスターズ社と了解覚書を締結した。シェフィールド・フォージマスターズ社は、世界中の民生用原子力プロジェクトに鍛造品を供給している。今回と同様の覚書をすでに、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社や英ロールス・ロイスSMR社と締結済み。米ニュースケール・パワー社とは2016年、同社製SMRのベッセル・ヘッドを共同で実証鍛造する計画を発表している。ホルテック社との協力では、SMR機器が実際の製造工程に適合するよう設計に改良を加える作業を実施するほか、特定の機器の鍛造品について、機械加工や組み立て、溶接、供用期間中検査時の要件や仕様を詳細に記した「購買仕様書」を作成する。同社はこれまでの実績を足掛かりに、ホルテック社が2050年までに英国で計画している32基、合計512万kWの「SMR-160」建設に向けて、機器の最適な製造工程を特定し英国のSMR機器サプライチェーンの頂点に立つ方針だ。 ホルテック社の「SMR-160」は電気出力16万kWのPWR型SMRで、事故時に外部からの電源や冷却材の供給なしで炉心冷却が可能な受動的安全系を備えている。開発チームには三菱電機の米国子会社が計装制御(I&C)系の開発で参加しているほか、カナダのSNC-ラバリン社や米国最大の原子力発電事業者であるエクセロン・ジェネレーション社が協力、燃料はフランスのフラマトム社が供給する予定である。同SMRは2020年12月、米エネルギー省(DOE)の「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象に選定され、2030年~2034年頃の実用化を目指すSMRに分類されている。ホルテック社は2022年7月、米国内で同SMRを4基建設する計画に政府の融資保証プログラムの適用を求めてDOEに申請書を提出。建設予定地としては、同社が保有する閉鎖済みの旧オイスタークリーク原子力発電所や、原子力発電事業者であるエンタジー社のサービス区域内などが検討されている。国外では、チェコやウクライナが建設に向けた評価作業や準備作業を実施中である。英国については、ホルテック社が昨年12月、「包括的設計審査(GDA)」の申請書を2023年初頭にも英国政府に提出すると発表。早ければ2028年にも、初号機の建設工事を開始する考えを表明している。今回、ホルテック社で国際プロジェクトを担当するR.スプリングマン上級副社長は、「盤石な安全性を備えた当社のSMRを英国で多数建設し、900万世帯にクリーンな電力を24時間休まず供給する」と表明。シェフィールド・フォージマスターズ社のD.アシュモア戦略・事業開発部長は、「核融合炉の実現可能性や大型炉の建設とともに、SMRは英国の将来的な民生用原子力プログラムを構成している。今回の覚書を通じて当社が同プログラムで引き受けている作業の多くが補われる」と指摘した。(参照資料:シェフィールド・フォージマスターズ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Feb 2023
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国際エネルギー機関(IEA)は2月8日、「電力市場報告書」の最新版を公表。原子力や再生可能エネルギーなどの低炭素エネルギー源により、今後3年間に世界で増加する電力需要をほぼすべてカバーできるとの見通しを明らかにした。2023年版の報告書でIEAは、2025年までの電力需給やCO2排出量の予測、これとともに変化する発電ミックスの詳細な調査などを通じて、世界各国の現在のエネルギー政策や市場動向を詳細に分析。様々なエネルギー危機に直面した欧州の2022年のエネルギー開発動向を包括的に分析しているほか、エネルギー需要が急速に拡大し、クリーンエネルギー開発が加速しているアジア太平洋諸国についても焦点を当てている。同報告書によると、2022年に世界の電力需要は気候条件や世界的なエネルギー危機を背景に伸び率が約2%に低下したものの、それ以降3年間は平均3%で増加することが見込まれる。こうした速いペースの増加は主に、中国とインドおよび東南アジア諸国の需要によるもので、2025年までの増加分2兆5,000億kWhの7割以上を占めている。一方の先進諸国も、輸送部門や暖房用、産業界で使用されてきた化石燃料発電をクリーン電力に置き換えて使用量を拡大する方針だ。幸いにも世界では、再エネと原子力の発電量がこれらの増加分をほぼすべて賄うのに十分な速さで拡大していくと予想され、増加分の大半がカバーされる見込みだ。このような見通しについて、IEAのF.ビロル事務局長は「発電部門のCO2排出量が転換点に近づいたことを意味しており、各国政府は低炭素なエネルギー源の開発を一層迅速に進め排出削減目標を満たしながらエネルギー供給が確保されるよう努力する必要がある」と述べた。EU諸国の原子力発電量は低下2022年に欧州連合(EU)諸国では、原子力発電量が2021年実績に比べ17%低下したが、これはドイツとベルギーで原子炉が閉鎖されたほか、フランスで原子炉のメンテナンスやその他の問題により、利用率がかつてないレベルに低下したため。欧州ではこれに水力発電量の低下と、火力発電所の閉鎖にともない出力調整可能な電源の容量が低下したことが組み合わさって、残りの調整可能設備の発電容量が一層圧迫されることになった。結果として、様々な再エネによる発電量が増加し、ガス価格の記録的な高値が石炭火力への切り替えを促したにも拘わらず、EU諸国では2022年にガス火力の発電量が2%増加した。このようなファクターは、EU諸国のこれまでの電力輸出入構造を大きく変化させることになり、フランスが実質的に電力輸入国となった一方、英国は過去数十年間で初めて輸出国に転じている。欧州ではまた、電力供給量を保証するため2022年~2023年、および2023年~2025年の冬季に向けて、従来の発電設備で予備の容量を確保しようとする動きがみられた。発電所の閉鎖時期を延期するというもので、ドイツでは原子炉3基の閉鎖時期を延期させたほか、現行の火力発電設備の15%に相当する火力プラントを再稼働、あるいは閉鎖を延期させている。 アジア諸国では原子力発電量急増へ世界規模のエネルギー危機によって、エネルギーの供給保証と発電部門のCO2排出量削減で原子力の果たす役割に新たな関心が寄せられている。欧州と米国では今後のエネルギーミックスの中で原子力が果たす役割について議論が再燃しているが、世界のこれら以外の地域ではすでに原子力発電所の建設を加速する動きがみられている。その結果、2023年~2025年に世界では原子力発電量が平均で約4%増大する見通し。これは2015年~2019年の増加率2%をはるかに超える数値で、2025年まで毎年約1,000億kWhの原子力発電量が新たに追加されることを意味しているが、これは米国の原子力発電量の約8分の1に相当する。この増加分の半分以上は中国とインド、日本、および韓国の原子力発電所によるもので、中でも中国は2022年から2025年の間に原子力で新たに580億kWhを発電するなど、高い成長率を牽引。インドの成長率は過去最高の81%を記録すると予想され、日本がこれに続くと思われるが、これは日本政府が輸入天然ガスへの依存削減とエネルギー供給保証の強化に向けて、原子力発電量の増加政策を推し進めた結果となる見通しである。(参照資料:IEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
13 Feb 2023
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ポーランド国営の産業開発会社(ARP)に所属する産業グループ「インダストリア(Indsutria)」は2月8日、低炭素な電力を用いたエネルギー・プロジェクトの実施に向け建設する小型モジュール炉(SMR)として英ロールス・ロイスSMR社製のSMRを選定した。同日に交わした協力のための趣意書(MOI)に基づき、両社は今後、最大3基のSMRを建設して、ポーランド南部地方のエネルギーインフラの脱炭素化と、低炭素な製造方法による水素を年間5万トン製造することを目指す。また、2030年代に同地方で合計出力800万kWの石炭火力発電所をSMRで代替する可能性を探り、ロールス・ロイスSMR社製SMRのパーツやモジュールを製造するサプライチェーンも、同地方で構築する方針である。インダストリアはポーランド南部地方シフェントクシシュ県の産業グループで、2021年11月に同県で設立された水素製造クラスターを主導してきた。同じ月にポーランド政府の閣僚会議で「ポーランドにおける2030年までの水素戦略」が採択され、同国全土の地方自治体や企業が新たに水素製造に参入してきたことから、「シフェントクシシュ水素製造クラスター」は2022年7月に名称を「中央水素製造クラスター」に変更。CO2を排出しない電源で水素を製造し、複数の関係企業が連携し合うエコシステムを構築する考えだ。ARPのC.レシス社長はロールス・ロイスSMR社との協力について、「シフェントクシシュ県や当社の傘下企業にとって、SMR用ハイテク産業の基盤を築く大きなチャンスになる」と指摘。「産業界がSMR等により新たな能力を獲得することに積極的なのは、ポーランドがエネルギー供給保証の強化とクリーン・エネルギー経済に向かっていることの表れだ」と述べた。ロールス・ロイスSMR社のT.サムソンCEOは、「SMRを使ってポーランドのエネルギー多消費産業の脱炭素化を進め、後世のためのクリーン電力発電計画をインダストリアと共同で策定していく」と表明。出力47万kWの同社製SMRは工場で製造可能であり、クリーン電力を安価で供給できることから、ポーランドは戦略的に重要な国際市場の一つだと述べた。また、「今回の連携協力を通じて、ポーランドと英国では数千人規模の長期雇用がサプライチェーンで確保されるなど、経済的に大きな可能性を秘めている」と強調した。ポーランドではこのほか、政府が大型原子炉の導入計画として、2022年11月に最初の3基、375万kW分に米ウェスチングハウス(WH)社製AP1000を採用すると決定。国営エネルギー・グループ(PGE)の原子力事業会社PEJ社が翌12月、細かな取り決め条件でWH社と合意している。小型炉関係では、化学素材メーカーのシントス社が2021年12月、石油化学企業のPKNオーレン社と合弁事業体を設立し、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」の建設計画を進めている。また、鉱業大手のKGHMポーランド採掘会社は2022年2月、米ニュースケール・パワー社のSMRを複数備えた「VOYGR」発電設備を2029年までに国内で建設するため、先行作業契約を締結した。リスペクト・エナジー(Respect Energy)社も今年1月、とフランス電力(EDF)らが開発しているSMR「NUWARD」のポーランド国内での共同建設に向け、協力協定を締結している。(参照資料:ロールス・ロイスSMR社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
10 Feb 2023
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エストニアの新興エネルギー企業フェルミ・エネルギア社は2月8日、2030年代初頭の完成を目指して同国で建設する最初の小型モジュール炉(SMR)として、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社の「BWRX-300」を選定した。今後は、原子力発電の導入に対するエストニア議会の承認や、適切な建設サイトの確保、原子力関係の法整備が必要になる。フェルミ社は、「必要な作業の分析はすべて終えており、現実的に見ても2031年のクリスマスまでに、我が国初の原子力発電所で信頼性の高いクリーン・エネルギーを低価格で供給することが可能だ」と指摘。SMRの建設は地球温暖化防止に向けたエストニアの目標達成に資するだけでなく、同国経済にとっても有益だと強調している。フェルミ社は、エストニアで第4世代のSMR導入を目指して、同国の原子力科学者やエネルギー関係の専門家、起業家などが設立した企業。2019年から様々なSMR設計について、実行可能性調査を実施していた。2022年9月には、再エネとは違い天候に左右されずに長期的な固定価格で確実に電力供給が可能な第4世代のSMRの導入を目指し、フェルミ社は最終選考に残った米国のGEH社とニュースケール・パワー社、および英国のロールス・ロイス社に入札の招聘状を送付した。選定基準としては、発電技術としての成熟度や経済的な競争力、サプライチェーンにエストニア企業を含めることなどを挙げていた。折しも2021年12月には、カナダ・オンタリオ州のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が、州内のダーリントン原子力発電所で建設するSMR初号機として「BWRX-300」を選定した。フェルミ社はOPG社の設計・建設経験に基づいて、エストニアでもSMR計画を徐々に進めていくことができると説明している。フェルミ社のK.カレメッツCEOは、OPG社がすでに2022年10月、「BWRX-300」の建設許可申請書をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に提出したことや、ポーランドのPKNオーレン社が化学素材メーカー大手のシントス社と共同で、「BWRX-300」も含めて合計74基のSMRを建設すると表明した事実に言及。ポーランドやスウェーデンに加えて、その他の欧州諸国も「BWRX-300」を選択すれば、その性能は保証されたものとなり、欧州内で十分なサプライチェーンも確保されると指摘している。GEH社によると、出力30万kWの次世代原子炉である「BWRX-300」は、原子炉上部に設置した大容量冷却プールの水で外部電源や人の介在なしに燃料を冷却できるなど、高い安全性を備えている。同社のJ.ワイルマン社長兼CEOは、「簡素化したプラント構造や確証技術を用いた機器、すでに認可済みの原子炉設計などを組み合わせており、有力なSMR設計であることが今回の選定ではっきりした」と表明。「BWRX-300」は短い工期で、コスト面の競争力も備えた無炭素な発電が可能だと強調した。両社の協力関係は、2019年にフェルミ社が「BWRX-300」の建設可能性を探るため、GEH社と交わした合意文書により始まった。2021年には、同炉の許認可手続きやサプライチェーン開発など重要事項について協力チームを結成することで合意していた。GEH社の説明では、「BWRX-300」に対する関心は米国でも高く、テネシー峡谷開発公社(TVA)が2022年8月、テネシー州のクリンチリバー・サイトで同炉を建設する可能性に基づき、予備的な許認可手続きを開始した。カナダではダーリントン発電所での建設計画に続き、サスカチュワン州のサスクパワー社も2022年6月、州内で2030年代半ばまでに建設するSMRとして同設計を選定している。スウェーデンではプロジェクト開発企業のシャーンフル・ネキスト(Kärnfull Next)社が2022年3月、同国内で複数の「BWRX-300」を建設していくため、GEH社と了解覚書を締結した。GEH社はこのほか、英国でも同炉の建設が可能になるよう、昨年12月に包括的設計審査(GDA)の申請書を英国政府に提出済みである。(参照資料:フェルミ・エネルギア社、GE社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 Feb 2023
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フランスとインドおよびアラブ首長国連邦(UAE)の3国は2月4日に共同声明を発表し、原子力をはじめとするエネルギー分野や地球温暖化対策等、様々な分野で3国が協力プロジェクトの実施に向けた協議を行う場としてイニシアチブを立ち上げたことを明らかにした。共同声明は、フランスのC.コロナ欧州・外務相とインドのS.ジャイシャンカル外相、およびUAEのシェイク・アブダッラー・ビン・ザーイド外務・国際協力相が、同日の電話会談で最終決定した。「3国間協力イニシアチブ」は、3国がプロジェクトで協力を拡大する基盤になるほか、インドが今年9月に議長国としてニューデリーで開催する「主要20か国・地域首脳会議(G20サミット)」や、UAEがドバイで議長国を務める11月の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)等の場で、3国共同の様々なイベントを運営する。共同声明によると、3国の外相は昨年9月に米ニューヨークで開催された国連総会に合わせて初会合。国際社会の安定と繁栄の促進という目標を共有し、これまでに築かれた建設的な協力関係をさらに発展させることで合意。3国間の正式なイニシアチブを通じて、相互に利益が得られる分野に協力を拡大することになった。4日の電話会談では、エネルギー分野の協力でも特に、太陽光と原子力に関する協力プロジェクトの実施や地球温暖化対策、またインド洋地域における生物多様性の保護に集中的に取り組む方針で見解が一致。クリーンエネルギーの開発や環境の保全等を目的とした具体的かつ直ちに実行可能なプロジェクトの実施に向け、環インド洋(地域協力)連合(IORA)とも協力の可能性を探ることになった。「3国間協力イニシアチブ」ではまた、3国の開発機関による協力の拡大に加えて、2020年以降の温室効果ガス排出削減の新たな国際枠組みであるパリ協定の目標達成に向け、経済面や社会面、および技術面の政策遂行で連携を強めていくとしている。UAEでは現在、初の原子力発電所として2012年7月から韓国製PWRを備えたバラカ発電所を建設しており、1、2号機はそれぞれ2021年4月と2022年3月から営業運転中。3号機も2022年10月に送電を開始したほか、4号機の建設工事も最終段階に入っている。一方、インドの商業炉は出力が最大でも70万kW級という国産加圧重水炉(PHWR)が中心で、大型軽水炉としてはロシア製の2基が稼働中のほか、4基が建設中。2010年にフランス製の欧州加圧水型炉(EPR)建設に向けて印仏両国が枠組み合意に達したが、事故発生時のベンダー責任など様々な理由から欧米諸国の原子炉導入は進んでいない。(参照資料:フランスの欧州・外務省(フランス語)、UAE国営通信WAMの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Feb 2023
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フランスのE.マクロン大統領は2月3日、自らが議長を務める閣僚級のハイレベル会合「原子力政策審議会(CPN)」を招集し、今年6月までに(2030年~2035年を対象とする)複数年の新たな「エネルギー計画(PPE)」案を準備するための審議を行った。同大統領は2022年2月に東部のベルフォールで演説を行い、フランスのCO2排出量を2050年までに実質ゼロとし国内の原子力産業を再活性化するため、フランスで改良型欧州加圧水型炉(EPR2)を新たに6基建設するほか、さらに8基の建設に向けた調査を開始すると発表している。2008年に設置されたCPNは年に2回、フランスの全体的な原子力政策や各プロジェクトを短期的、長期的に管理・調整するため招集されている。今回のCPNでは、議会でエネルギーや温暖化関係の法案審議が始まる前に、最初の1基を遅くとも2035年までに完成させるための、将来的なエネルギーの供給と自立の強化に向けた方針が確認された。過去2年にわたり原子力発電量が大幅に低下したことを背景に、CPNに出席した関係閣僚らは、今年冬季の電力確保に向けて原子炉の適切な定検スケジュールを組むため、原子力発電強化に向けて動き出した。また、無炭素で競争力のある電力を長期的に供給する観点から、原子力安全規制当局(ASN)の厳しい監督の下、安全性を確保しながら既存の原子力発電所の運転期間を60年間、あるいはそれ以上に延長するための調査開始を了承した。CPNではまた、EPR2を新たに6基建設する計画の主要課題についてもレビューを行った。この件は今月末に終了予定の公開討論でも議題の一つになっていることから、この結論を新しいPPEに盛り込む方針である。これらのEPR2をスケジュール通りに起動させるには、既存の原子力サイト周辺における建設手続きの迅速化法案が速やかに成立する必要がある。CPNのメンバーはさらに、2021年10月にマクロン大統領が発表した新たな産業政策「フランス2030」の主要課題として、小型モジュール炉(SMR)や先進的モジュール炉(AMR)の開発が原子力プログラムに含まれたことから、この作業を加速させることを確認。フランス電力(EDF)が中心となって開発しているSMRの「NUWARD」、およびその他の先進的原子炉開発について、少なくとも最初の1基が2030年代に完成するよう支援していく。この件については、フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)が関係機関の調整役を担っているため、CEAの役割を強化する考えである。CPNではこのほか、原子力産業を再活性化するには、フランスがこの分野で戦略的に自立した立場を維持できるよう、燃料サイクルの課題に徹底的に取り組む必要があると指摘。最終的に残る放射性廃棄物の管理計画を新たなPPEに反映させるため、次回6月のCPNに向けて複数の調査を開始するとしている。(参照資料:仏大統領府の発表資料(フランス語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
07 Feb 2023
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