米国の先進的原子炉開発企業であるオクロ社は8月28日、ウラン濃縮企業のセントラス・エナジー社(旧・USEC)との協力を拡大するため、新たな了解覚書を締結した。両社は2021年、オクロ社製のマイクロ高速炉「オーロラ(Aurora)」に装荷するHALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の製造施設建設に向けた協力で基本合意書を締結。今後は、オクロ社の「オーロラ」建設とセントラス社によるHALEU燃料の製造を、ともにオハイオ州南部で協力して進め、同地域を米国原子力産業界の将来を担う重要ハブとする方針。同炉の機器製造や同炉が発電するクリーンで安価な電力の売買にも、協力範囲を広げたいとしている。「オーロラ」は冷却材として液体金属を使用するマイクロ高速炉で、電気出力は0.15~1.5万kW。オクロ社の説明では、燃料交換なしで20年以上熱電併給が可能なほか、放射性廃棄物をリサイクルしてクリーン・エネルギーに転換できるという。オクロ社は2019年12月、米エネルギー省(DOE)が進める先進的原子力技術の商業化支援イニシアチブの一環として、「オーロラ」初号機をDOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)敷地内で建設することを許可された。しかし、同社が2020年3月に原子力規制委員会(NRC)に申請した初号機の建設・運転一括認可(COL)は、審査用に提出された情報が不十分だとして2022年1月に却下されている。オクロ社は現在、2026年か2027年にINLで商業規模の「オーロラ」初号機の起動を目指しているほか、今年5月には、将来的に2基目と3基目の「オーロラ」を建設する地点としてオハイオ州南部のパイクトン郡を選定。同郡を含めたこの地域の4郡で構成される「オハイオ州南部の多様化イニシアチブ(SODI)」と、土地の利用に関する合意書を交わしている。一方のセントラス社は、2019年11月にDOEと結んだ契約に基づき、HALEU燃料の実証製造に向けて、独自に開発した新型遠心分離機「AC100M」16台から成るカスケードを、オハイオ州パイクトンの「米国遠心分離プラント(ACP)」サイト内で建設した。NRCは今年6月、完成したカスケードの操業に向けた準備状況を審査し、カスケードの遠心分離機にウランの注入を許可。これを受けて、セントラス社は年末までにHALEU燃料の実証製造を開始するほか、十分な予算や長期の販売契約が確保できれば、最終的に「AC100M」の数を商業規模の120台まで拡大。年間約6,000 kgのHALEU燃料を製造することを検討している。今回の覚書に基づき、オクロ社とセントラス社は今後の協議で、以下の協力活動案のうち1件以上を確定する方針。オクロ社は、将来的に商業規模に拡大されたパイクトンのHALEU燃料製造施設から同燃料を購入する。セントラス社は、オクロ社が将来的にパイクトンで建設する2基の「オーロラ」の発電電力を購入する。セントラス社は、「オーロラ」用の機器をテネシー州オークリッジにある自社の先進機器製造施設で製造し、ACP内でHALEU燃料の製造能力を増強する。両社は将来的に、HALEU燃料を六フッ化ウランから金属ウランに逆転換し「オーロラ」用燃料集合体の製造能力を確立する。セントラス社のD.ポネマン社長兼CEOは、「国産HALEU燃料のサプライチェーンを確立するには、官民の連携協力が不可欠であることは明らかだ」と指摘。「米国では国産濃縮ウランの確保に向けた投資で、オクロ社のような産業界のリーダーから強力な支援を受けるとともに、議会やJ.バイデン政権からも超党派の支持を得ている」と強調した。(参照資料:オクロ社 セントラス・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
30 Aug 2023
2545
カナダ・サスカチュワン州が所有するクラウン・インベストメント・コーポレーション(CIC)は8月24日、同州内で小型モジュール炉(SMR)のサプライチェーンを構築するため、「サスカチュワン産業鉱業サプライヤー協会(SIMSA)」に総額47万9,000カナダドル(約5,157万円)の支援金を提供すると発表した。SIMSAの会員企業やパートナー企業が同州やカナダ国内、あるいは世界中で行われるSMRの開発事業に参加できるよう支援するのが目的で、CICは今後2年にわたり資金を提供する。具体的には、州内のSMRサプライチェーンに属するスペシャリストをSIMSAに迎え入れるほか、先住民電力公社(FNPA)にも資金の一部を提供して、先住民がカナダの電力部門で経済的利益を得る機会を模索。また、カナダ原子力産業機構(OCNI)が一部の州で、SMRサプライチェーン構築のために進めている「Ready4SMRプログラム」にも協力していく。サスカチュワン州政府は、2030年までに州内の温室効果ガス排出量を2005年レベルから50%削減し、最終的には2050年までに実質ゼロ化を目指している。この目標の達成に向けた活動の一環として、同州はオンタリオ州およびニューブランズウィック(NB)州とともに2019年12月、出力変動が容易で革新的な技術を用いた多目的SMRを国内で建設する協力覚書を締結。2021年4月にはこの覚書にアルバータ州も加わり、これら4州は2022年3月にSMRを開発・建設していくための共同戦略計画を発表している。その後、サスカチュワン州の州営電力であるサスクパワー社は2022年6月、2030年代半ばまでに建設するSMRとしてGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の「BWRX-300」を選定。州内の建設候補地2地点((南部ロアバーン地方自治体内のエルボー村、および南東部のエステバン市。))も2022年中に選定済みである。SIMSAはサスカチュワン州内の製造や建設・エンジニアリングなどの産業部門、鉱業部門、エネルギー部門に属する300社以上のサプライヤーで構成される非営利団体。SIMSAはCICとの協力を通じて専門人材を集め、州内で原子力関係の製造能力や建設能力を有する企業を育成していく方針だ。OCNIはカナダ原子力産業界の主要サプライヤー200社以上で構成される非営利団体で、カナダ型加圧重水炉(CANDU炉)や軽水炉の機器設備を設計・製造する企業やエンジニアリング・サービス企業などが参加している。OCNIが昨年夏に始動した「Ready4SMRプログラム」は、NB州など北東部の大西洋に面した4州((ニューブランズウィック州、プリンスエドワード・アイランド州、ノバ・スコシア州、ニューファンドランド・ラブラドール州の4州。))を中心に、地元企業が原子力産業に参入してNB州が州内で進めるSMR建設プログラムに参加するよう働きかけるプログラム。カナダ連邦政府も、大西洋地域開発庁(ACOA)を通じて同プログラムを支援している。OCNIのB.ウォーカー理事長兼CEOは、「サスカチュワン州でSIMSAやFNPAが当方の『Ready4SMRプログラム』に協力してくれるのは非常に有難く、世界中でSMRの建設計画を牽引するカナダの中でも、サスカチュワン州がクリーン・エネルギー・ミックス構想の一部としてSMR計画を実行することに期待する」と表明。「OCNIの役割はカナダ全体で原子力サプライチェーンを構築することだが、サスカチュワン州のようにすでにサプライヤーとしての確かな基盤を有する州にも、経済発展の機会をもたらしたい」としている。(参照資料:サスカチュワン州政府、SIMSAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
29 Aug 2023
1766
スロバキア政府が34%出資するスロバキア電力(SE社)は8月25日、国内で所有・運転している44万kW級ロシア型PWR(VVER-440)の原子燃料調達先を多様化するため、米ウェスチングハウス(WH)社と長期的に協力していくための合意文書を交わした。SE社は現在、スロバキアの総発電量の約70%を供給しており、合計4基のVVER-440(合計出力200万kW)が稼働するボフニチェとモホフチェの両原子力発電所だけで、総発電量の約59%を賄っている。また、モホフチェ発電所では追加の2 基(各VVER-440)を建設中((建設中の2基のうち、モホフチェ3号機(VVER-440、47.1万kW)は2023年1月31日に送電を開始した。))で、これらが運転を開始し西部ノヴァキーにある褐炭発電所が年末に閉鎖されれば、原子力の発電シェアはさらに拡大する見通し。これらの原子炉が必要とする原子燃料および関連サービスを確保するため、SE社は今回国際入札を通じてWH社を選定。これにより、スロバキアのエネルギー供給保証を一層強化する考えだ。WH社は今回の合意に基づき、スウェーデンにある燃料製造工場でスロバキア向けの原子燃料を製造・供給する予定だが、その前にスロバキアの法律に基づく許認可手続きで、これらの原子炉がWH社製原子燃料で安全に稼働できると承認されなければならない。このため、同社から実際に最初の原子燃料が納入されるのは、この承認を得てから約1年後になるとしている。SE社は原子燃料の調達先を段階的に多様化する戦略の基本方針として、世界中の燃料サプライヤー・チェーンの中から少なくとも2社の供給企業を選定。関係資機材とサービスについても、供給可能な企業を数社確保するとしており、そのための様々な取り組みや協力を推進中である。今年5月には、同社は仏フラマトム社とも同様の協力覚書を締結している。フラマトム社はその際、「近年の国際情勢の中で、SE社も含め欧州でVVERを運転するすべての電気事業者から欧州独自の原子燃料を開発するよう要請された」と表明。ロシアが供給する燃料への依存を軽減し、燃料の途絶により欧州のVVERが運転停止することが無いよう、欧州が主体的に運営できる燃料供給体制を築くと述べていた。SE社のB.ストリーチェク会長兼CEOは、「原子力はスロバキアのエネルギー・ミックスの重要な柱であり、原子燃料の供給企業を追加で確保できたことは非常に重要だ。これらが供給する燃料で、原子力発電所を安定的に運転していく」と述べた。WH社のT.チョホ燃料担当社長は、「スウェーデンの燃料製造工場で完全に西欧製の原子燃料をVVER用に製造・提供して、古くからのパートナー企業であるSE社の原子燃料調達先の多様化戦略に貢献し、協力関係を強化できることは喜ばしい」と表明している。(参照資料:SE社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Aug 2023
1696
スウェーデンの放射性廃棄物処理専門企業であるスタズビック社は8月24日、同国南部のニュヒェーピング(Nyköping)近郊にある同社サイトに、複数の小型モジュール炉(SMR)を備えた商業用「SMRパーク」の建設可能性を調査するため、SMRのプロジェクト開発企業シャーンフル・ネキスト(Kärnfull Next:KNXT)社と協力覚書を締結した。SMRパークの建設構想はKNXT社が中心となって進めているもので、同社はすでに5月からスタズビック社サイトの実行可能性調査(FS)の予備的作業を実施中。現時点では暫定的ながら、SMRの商業利用に適した条件を備えているとの結果が出ている。同社は12月までに本格的なFSを実施し、SMRパーク建設の技術面や環境面、および社会面や財政面の実行可能性を評価。地元住民の合意を得るのは当然のことながら、同FSで良好な結果が得られれば、KNXT社はスタズビック社と共同で、2024年後半に同プロジェクトに関する資金調達や許認可手続き、発電電力の売買契約など主要事項を決定、2030年代初頭にも欧州初のSMRパークの実現を目指す。スタズビック社によると、スウェーデン南部では将来的に電力需要の大幅な増加が見込まれている。同じく南部にある同社のサイトでは、原子燃料や核物質関係の技術、原子炉の安全解析ソフト、廃止措置や放射線防護関係のサービスなど、原子力技術の専門的知見が幅広く利用できるため、戦略的にもこの需要を満たすことが可能である。同社はまた、化石燃料発電を削減してクリーン・エネルギー社会に移行し、環境面で持続可能な将来を築くには、その重要手段の一つである原子力発電が大きく貢献すると認識。自社サイトにSMRを設置することは、同社ビジョンにも合致すると考えている。一方のKNXT社は、クリーン・エネルギーへの移行解決策として、短期間で建設可能なSMRなどの原子力プロジェクトをスウェーデンのあらゆる部門に提案する方針。国内で複数のSMRを可能な限り迅速に建設するため、2022年3月に米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と同社製SMR「BWRX-300」の建設に向けた了解覚書を締結した。KNXT社はまた、フィンランドとスウェーデンの両国で新たな原子炉の建設を検討しているフィンランドの電気事業者フォータム社とも、2022年12月に了解覚書を締結しており、共同でスウェーデン国内でのSMR建設機会を探っている。スタズビック社のC.ホフルンドCEOは、「サイト条件の本格的な調査はまだ実施しておらず、実際にSMRを設置するまで何年もかかるが、確かな知見を有するKNXT社との協力により、FSで良い結果が出ることを期待している」と述べた。KNXT社のC.ソーランダーCEOは、「既存の3つの原子力発電所に続く新たな原子炉の立地点として、スタズビック社のサイトは非常に適していると思う」と表明。その上で、「複数のSMRを設置することで安定した雇用が多数創出され、その他のハイテク産業を呼び込む機会も生まれる」と指摘している。(参照資料:スタズビック社、KNXT社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Aug 2023
1785
英国政府は8月23日、ウクライナの原子力発電所における原子燃料確保を支援するため、英国輸出信用保証庁(UKEF)を通じて1億9,200万ポンド(約354億円)の融資保証をウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社に提供すると発表した。UKEFとエネルゴアトム社が今回締結した合意文書に基づき、ロンドンを本拠地とするウラン濃縮サービス企業のURENCO社が、ウクライナ国内の原子力発電所向けに引き続き濃縮ウランを供給する。ウクライナが冬季に向けて十分な電力を原子力発電所で確保し、ロシア産燃料への依存から脱却することや、プーチン大統領を国際的な原子力市場から締め出すことが目的である。英国政府はこのほか、ウクライナのエネルギー部門が将来的にクリーン・エネルギーに移行するための協力覚書を同国と締結している。英国政府の今回の発表に先立ち、エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)のG.シャップス大臣は22日にウクライナの首都キーウを訪問。ウクライナの副首相やエネルギー大臣など複数の政府高官、エネルゴアトム社のP.コティン総裁を含むエネルギー企業の要人らと、同国の復興に向けた英国の支援について協議。また、ロシアの砲撃を受けて修理中の発電所や幼稚園なども視察した。今回の英国の支援決定は、英国とウクライナの両政府が今年6月、ロンドンで「ウクライナ復興会議」を共催してからわずか2か月後のこと。両政府首脳はその際の共同議長声明で、支援国や機関がウクライナに新たに総額600億ドル(約8兆5,800億円)を拠出することで合意したと表明。英国政府はまた、今年4月に日本政府が札幌で開催したG7気候・エネルギー・環境大臣会合でも、原子力分野におけるロシアへの依存を低減し設備・機器や燃料の供給源を多様化する協力で、参加した英、米、仏、加、日の5か国が合意した事実にも今回触れている。今回の支援が実行されれば、英国がウクライナに提供する民生向け支援金は総額50億ポンド(約9,220億円)に達する見通し。原子力はウクライナの総発電量の半分以上を供給していることから、英国はウクライナが必要とする電力の確保を引き続きサポートし、エネルギー供給保証の強化に協力していく考えだ。DESNZのシャップス大臣は、「プーチンはエネルギーを戦争兵器として利用しているが、その野蛮な侵略に直面するウクライナへの我が国の支援は揺るがない」と強調した。URENCO社のB.シューヒトCEOは、エネルゴアトム社に対する2009年からの濃縮サービス提供など、既存の契約を挙げた上で、「ウクライナ支援で今後も責務を果たす準備は出来ている。このためには、今回のような英国政府との協力が不可欠だ」と指摘している。(参照資料:英国政府、URENCO社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Aug 2023
1460
ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社は8月22日、同国初の大型原子炉となる米ウェスチングハウス(WH)社製AP1000の建設サイトとして、ポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ-コパリノ地区の正式な承認を得るため、「立地決定」申請書を同県のD.ドレリヒ知事に提出した。PEJ社は同国の改訂版「原子力開発計画(PPEJ)」に基づき、2040年頃までに国内の複数サイトで最大6基の100万kW級原子炉(合計600万~900万kW)の建設を計画しており、2021年12月に最初の3基、合計375万kWの立地点として、同国北部のバルト海に面したルビアトボ-コパリノ地区を選定した。これら3基の採用炉型として、ポーランド政府は2022年11月にWH社製・第3世代+(プラス)のPWRであるAP1000を閣議決定しており、今年7月には気候環境省が同地区で3基のAP1000を建設するという計画に「原則決定(DIP)」を発給している。これに続く「立地決定」の申請は、原子炉の着工に向けた行政手続き上、最も重要なものの一つである。「立地決定」は、2011年6月に成立した「原子力施設と関連設備の準備と建設に関する法律」に基づき、県知事が発給する。発給されれば、PEJ社は建設に必要な土地や海上エリアに投資する権利を取得。また、投資を行う際の技術面や環境面の具体的な条件が決まる。この申請について、政府の戦略的エネルギー・インフラ大使を兼任するA.ルカシェフスカ–チェジャコフスカ首相府担当相は、「PPEJを着実に進めることにより、原子力発電でポーランド国民に安全かつ無炭素なエネルギーを安定供給できる日が近づく」と指摘した。「DIP」が発給された時点で、同計画は「ポーランドの国家政策に則しており国民の利益にも適う」と正式に認められた。また、ポーランドの規制当局である国家原子力機関(PAA)からは、同計画に関する安全分析の検証範囲が正確だったことを確認したとの包括的見解が得られている。同計画ではさらに、今後一層進んだ段階の環境影響面の手続きとして、環境上の条件決定も取得する必要があるとPEJ社は指摘している。ポーランドではこのほか、政府のPPEJを補完する大型炉プロジェクトとして、国営エネルギー・グループ(PGE)とエネルギー企業のZE PAK社が韓国水力・原子力会社(KHNP)との協力により、ポーランド中央部のポントヌフで韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」(出力140万kW)の建設を計画中。現地の報道では、PGEとZE PAK社が折半出資する合弁企業のPGE PAK原子力エネルギー社が6月16日、この計画の「DIP」を気候環境省に申請したと伝えられている。(参照資料:PEJ社、ポモージェ県(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
23 Aug 2023
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カナダ連邦政府は8月19日、中西部サスカチュワン州で州営電力のサスクパワー社が進めている小型モジュール炉(SMR)の導入計画に対し、合計で最大7,400万カナダドル(約79億7,200万円)の支援金を提供すると発表した。その内訳は、天然資源省(NRCan)が「電力の予備的開発プログラム」の中から、最大5,000万加ドル(約53億8,600万円)をサスクパワー社のSMR計画に提供。このプログラムは、SMRなどクリーン電力の発電プロジェクトにおける予備段階の活動支援を目的としている。また、環境・気候変動省(ECCC)の「将来電力基金」から、2,400万加ドル(約25億8,600万円)以上をサスカチュワン州政府に提供することになる。サスカチュワン州政府は、2030年までに州内の温室効果ガス排出量を2005年レベルから50%削減し、最終的には2050年までに実質ゼロ化することを目指している。この目標の達成に向けた活動の一環として、サスクパワー社は2022年6月、2030年代半ばまでに建設するSMRとしてGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の「BWRX-300」を選定したほか、州内の建設候補地2地点((南部ロアバーン地方自治体内のエルボー村、および南東部のエステバン市。))も2022年中に選定済み。同社としてはこの計画を実行に移すかを2029年に最終決定するが、連邦政府からの支援金は同計画を前進させる一助として、予備的エンジニアリング作業や技術面の調査、環境アセスメント、規制関係の調査、関係コミュニティや先住民との協議等に活用する方針である。連邦政府は、世界がCO2排出量実質ゼロの経済に移行していくなか、カナダが優位な競争力を確保し、カナダ自らの削減目標を達成するには、各家庭や企業に提供する電力の無炭素化を大規模に進める必要があると認識。SMRのような次世代原子力技術も含め、CO2を排出しない新しい電力インフラの開発プロジェクトはこの移行で重要な役割を担い、カナダのあらゆる地域に経済的繁栄をもたらすと考えている。SMRに関しては、連邦政府は州内の送電網やCO2を多量に排出する産業の脱炭素化に大きく貢献すると指摘。出力30万kWのSMRは、それ一基で30万戸の世帯に無炭素電力の供給が可能であり、送電網が届かない遠隔地域のコミュニティが、汚染度とコストの高いディーゼル発電への依存度を低減するにも非常に有効である。また、CO2を排出しない新しいインフラ開発プロジェクトへの支援は、カナダ全土に安価で信頼性の高いクリーンな電力をもたらすための、連邦政府による包括的アプローチの一部。このことは、NRCanが8月10日付で公表した発電部門の脱炭素化ビジョン「パワーリング・カナダ・フォワード(Powering Canada Forward)」にも記されている。この報告書では、2035年までにカナダ中の送電網を安定的に脱炭素化するとともに、各家庭の電気代を低く抑えることを目標にしている。これらのことから、連邦政府はサスカチュワン州やその他の州が有望な無炭素エネルギー源としてSMRの開発や建設計画を進めるのを引き続き支援。これらの州が、州民にクリーンで信頼性の高い安価な電力を提供できるよう協力する方針である。(参照資料:カナダ政府、サスクパワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
22 Aug 2023
1678
米サザン社の子会社であるジョージア・パワー社は8月17日、ジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所で、ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)原子炉AP1000として建設中の4号機(PWR、110万kW)で燃料装荷を開始した。157体の燃料集合体はWH社がサウスカロライナ州の工場で製造したもので、数日間で装荷を完了するとしている。同発電所では先月31日、米国で約35年ぶりに本格着工した同型の3号機(PWR、110万kW)が営業運転を開始。4号機でも燃料の装荷後は、起動試験で一次冷却系や原子力蒸気供給系が設計通りの温度や圧力で動くことを実証し、様々な出力レベルで試運転を実施する。ジョージア・パワー社は、今年の第4四半期か2024年の第1四半期には同機で送電が可能になると予想。同社と両機を共同保有する3社のうち、オーグルソープ電力は「これらの試験が首尾よく進めば、現時点のスケジュールどおり2024年3月に営業運転が開始される」と述べた。同発電所では、すでにWH社製PWRの1、2号機(各121.5万kW)が稼働していることから、4基が揃えば同発電所は米国でも最大規模となる。3、4号機だけでもそれぞれ、50万戸の世帯や企業に無炭素で安全、安価な電力を十分供給できるとジョージア・パワー社は強調している。米国初のAP1000であるボーグル3、4号機は、2013年3月と11月にそれぞれ本格着工したが、2017年3月にWH社が倒産申請したのを受けて、サザン社のもう一つの子会社で3、4号機の運転を担当予定のサザン・ニュークリア社がWH社からプロジェクト管理を引き継いだ。また、2020年には新型コロナウイルスによる感染の影響を軽減するため、建設サイトの労働力を約20%削減するなど、プロジェクトは様々なトラブルに見舞われたが、4号機では今年3月から5月にかけて温態機能試験を実施。7月末には米原子力規制委員会(NRC)から、「同機は建設・運転一括認可(COL)が認定した基準とNRCの規制通りに建設され、運転も行われる見通し」だとする確認事項書「103(g)」がサザン・ニュークリア社に到着。これにより、同機では実質的に燃料の装荷と起動が許可されていた。 WH社によると、AP1000はすでに中国・浙江省の三門発電所と山東省の海陽発電所で、合計4基が2018年以降順次営業運転を開始。ボーグル3、4号機はこれらに続いて、世界で5基目と6基目のAP1000となる。中国ではまた、中国版のAP1000となる「CAP1000」や「CAP1400」が合計6基、三門と海陽、および山東省の栄成石島湾発電所で建設中である。さらに、ポーランドなどの中・東欧地域やウクライナでも複数基のAP1000建設が計画されている。(参照資料:ジョージア・パワー社、オーグルソープ電力、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
21 Aug 2023
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カザフスタンのエネルギー省は8月17日、原子力発電の再導入に向けた諸活動の進展状況を公表。建設予定地があるアルマトイ州政府では、地元住民を交えた公開協議を実施し、その後の段階では環境法に基づく公開ヒアリングも開催する方針である。化石燃料資源が豊富な同国では、総発電量の7割を石炭火力で、2割を天然ガス火力で供給している。ウラン資源についても現在世界第一位の生産量を誇り、旧ソ連時代にはアクタウに建てられた熱電併給・海水脱塩用の高速炉「BN-350」(出力15万kW)が1973年から1999年まで営業運転していたが、現時点で国内に原子力発電所はない。2014年5月にカザフ政府は、出力30万kW~120万kWのロシア型PWR(VVER)建設に向けてロシア政府と了解覚書を調印したものの、電力の供給過剰を理由に建設計画は2015年に凍結している。現在の候補炉型は、ロシアのVVER-1000(100万kW級)とVVER-1200(120万kW級)のほかに、中国核工業集団公司(CNNC)の「華龍一号(HPR-1000)」(100万kW級PWR)、韓国水力・原子力会社(KHNP)の「改良型加圧水型炉(APR1400)」(140万kW級PWR)、フランス電力(EDF)の「EPR1200」(120万kW級PWR)となっている。また、立地点の選定に関する調査結果は、2022年5月にカザフ政府の省庁間委員会が承認しており、同国のK.-J.トカエフ大統領は翌6月、複数の建設候補地点の中から、アルマトイ州ザンビル地区のバルハシ湖西南に位置するウルケン村が建設に最も適していると発表していた。同国の原子力利用法では、原子力関係施設の建設および立地点に関する決定は、政府が地元代表組織の合意に基づいて下すと定められているため、アルマトイ州議会は2022年11月、地元住民の支持を条件に建設計画を進めると決定。ザンビル地区の当局は今年7月、アルマトイ州の主導により公開協議を開催すると公式サイトや複数のSNS、マスメディアで発表している。エネルギー省によると、この「公開協議」は大統領令の承認を受けた地方議会の規則に基づくもので、原子力発電所建設計画に対する地元住民の意見をまとめるために行われる。地方議会の常設委員会が同委の特別会合という形で同協議を実施する方針で、これには地元の自治会や組織、一般市民、マスメディア等が参加する。一方の「公開ヒアリング」は、環境法の下で建設プロジェクトの詳細を評価する目的で開催される。具体的には、プロジェクトのあらゆる段階で環境アセスメントを実施することになる。カザフ政府はこのほか、小型モジュール炉(SMR)についても国内建設の可能性を探っている。エネルギー関係の政府系投資ファンド「サムルク・カズィナ国家福祉基金」が2014年7月に設立したカザフ原子力発電所会社(KNPP)は2021年12月、米ニュースケール・パワー社製のSMRを複数備えた発電設備「VOYGR」をカザフで建設可能か評価するため、同社と了解覚書を交わしている。(参照資料:カザフ政府(カザフ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Aug 2023
2030
仏国の原子力安全規制当局(ASN)は8月10日、運転開始後約40年が経過した国内32基の90万kW級(ネット出力)PWRのうち、4回目の定期安全審査が完了したトリカスタン原子力発電所1号機(PWR、グロス出力95.5万kW)に対して初めて、運転期間の10年延長を認める決定を下した。6月29日付で同機に課す追加要件を定めたことにともなうもので、同機が最終的に50年間、安全運転を継続できるよう引き続き監督していく考えだ。仏国では商業炉の運転期間に規定がなく、国内56基の商業炉すべてを保有・運転するフランス電力(EDF)は環境法に基づいて10年毎に詳細な安全審査を実施し、次の10年間の運転継続で課題となる設備上のリスクへの対応策等を検討。ASNがこれらの対応策を承認し、関係要件がクリアされると判断すれば、次の10年間の運転許可が付与される。定期安全審査ではまず、「包括的評価段階」で対象炉に共通する事項をレビューした後、「各原子炉に特有の事項」をレビュー。ASNは2021年2月、1970年代~1980年代にかけて運転開始した仏国で最も古い90万kW級PWRの運転期間を、50年に延長するための諸条件を決定した。対象炉はルブレイエ発電所の4基、ビュジェイ発電所の4基、シノンB発電所の4基、クリュアス発電所の4基、ダンピエール発電所の4基、グラブリーヌ発電所の6基、サンローラン・デゾーB発電所の2基、およびトリカスタン発電所の4基で、この決定によりこれら32基では「包括的評価段階」が完了。2031年までにすべての対象炉で個別の評価を行い、4回目となる10年毎の定期安全審査を終える予定である。1980年に営業運転を開始したトリカスタン1号機の運転期間は現時点ですでに40年を超えているが、運転開始後39年目の2019年にEDFは同機で定期安全審査を実施している。この審査の一部として、EDFが提案した同機に特有の安全性改善策は2022年1月中旬~2月中旬までの期間に公開諮問に付され、公開諮問委員会はこれらの改善策に肯定的な見解を表明していた。ASNはこのような見解や、「包括的評価段階」でASNが下した判断へのEDFの対応策を吟味した結果、運転期間の延長中も同機の安全性を確保することは可能と判断。地震災害のレベルに関する追加要件等をEDFに課している。ASNはこのほか、2000年代に運転開始した4基の145万kW(ネット出力)級PWR(N4タイプ)についても、7月11日に3回目の定期安全審査における「包括的評価段階」の方向性を提示。同審査でEDFが達成すべき目標は、90万kW級および130万kW級(各ネット出力)原子炉でASNが示した4回目の安全審査の目標と同一のものになる。ASNは145万kW級PWRの「包括的評価段階」の審査を終えてから、運転期間の10年延長にともなう諸条件を決定するとしている。(参照資料:ASNの発表資料(フランス語)①、②、原産新聞・海外ニュース、原産資料「40 年以上稼働する原子力発電プラント」、およびWNAの8月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Aug 2023
2152
米ワイオミング州のエネルギー当局(WEA)は8月8日、BWXTアドバンスド・テクノロジーズ(BWXT AT)社が同州内で実施を予定している「マイクロ原子炉建設の実行可能性評価プロジェクト」に対し、約1千万ドルのマッチング・ファンドを提供すると発表した。BWXT AT社は原子力機器・燃料サービス企業であるBWXテクノロジーズ(BWXT)社の子会社で、BWXT社製の先進的なマイクロ高温ガス炉(HTGR)を同州内で複数基建設することに向けて、先駆けとなるユニット(lead unit)の建設を計画している。同社製HTGRについては、国防総省(DOD)が軍事作戦用への導入を目指して、原型炉(電気出力0.1~0.5万kW)の建設をアイダホ国立研究所(INL)内で予定している。BWXT AT社は今回の評価プロジェクトで、ワイオミング州の産業界の中でも特に、石油・ガス採取産業に原子力の無炭素な電力や熱を供給できるかを評価、同炉を州内で複数基建設する可能性を模索する。また、州内の既存のサプライチェーンが原子炉機器のどの部分に製造能力を発揮できるか確認し、その建設をサポート。このほか、同州の将来的な発電設備にマイクロHTGRを組み込めるよう、調査のためのエンジニアリング活動を実施する計画だ。ワイオミング州議会は2022年、州内のエネルギー需要を満たすために行われている様々な技術の研究、実証、パイロット計画、商業規模の建設計画に対し、民間部門や連邦政府の資源を補う「エネルギー関係のマッチング・ファンド(EMF)」として、1億ドルの予算を州知事室に充当。同ファンドの管理は州知事からWEAに委託されており、対象技術は太陽光や風力発電に留まらず、CO2の回収・有効利用・貯留(CCUS)や石炭精製、水素製造、電池貯蔵なども含まれている。BWXT AT社は、同炉で既存の発電設備を補完し州内で増加するエネルギー需要に応える方針であり、今回の評価プロジェクトには約2千万ドルが必要と見積もっている。BWXT社のHTGRは、すでに米エネルギー省(DOE)のコスト折半型「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」の3方式のうち、2030年代前半を運転目標とする「将来的な実証に向けたリスク削減」に選ばれ、支援を受けている。今回のプロジェクトでは、同社は具体的にワイオミング州の関係者が先駆けとなるユニットの建設判断を下せるよう、州内のエンドユーザー専用の概念設計を開発する。これにより、同炉の製造や建設、許認可活動に必要なコストの見積もりが可能になる。また、後続機の幅広い建設モデルの一環として、州内の既存のサプライチェーンをどの程度活用できるかも見極める方針である。プロジェクトは2段階に分けて行われる予定で、まず州内のユーザーの個別ニーズに合わせて設計上の要件を確定。次の段階では、州内での同炉の製造と販売に向けて詳細分析を実施するほか、ビジネス開発戦略を策定する。BWXT AT社のJ.ミラー社長は、「この評価プロジェクトを終える頃には、州内での雇用創出の見通しやビジネス機会などが一層明確になる」と指摘。「州内の建設ロードマップも作成する計画で、州政府や連邦政府の機関が民間部門と協力することにより、原子力の技術革新が生み出す経済面や環境面の恩恵を享受することが可能になる」と強調している。なお、ワイオミング州ではこのほか、電気事業者のパシフィコープ社が南西部のケンメラー(Kemmerer)で、米テラパワー社製のナトリウム冷却高速炉「Natrium」(電気出力34.5万kW~50万kW)の建設を計画中。2024年3月にも、実証炉の建設許可申請書(CPA)を原子力規制委員会(NRC)に提出予定だと伝えられている。(参照資料:ワイオミング州政府の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Aug 2023
1726
スウェーデンの原子力規制当局である放射線安全庁(SSM)は8月9日、政府が進めようとしている原子力の利用拡大にともない、規制の枠組みや法整備など、必要となる前提条件の特定調査を終えて最終報告書を気候・企業省に提出した。既存の原子力発電所の運転期間延長や新型炉の導入には、様々な法改正が必要だと指摘しており、新型炉に関しては予備的設計審査を行うことなどを提案している。スウェーデンでは現在、6基の商業炉が稼働中だが、現行法では新たなサイトでの原子炉建設が禁止されているほか、全土で同時に運転できる基数も10基までに制限されている。昨年9月の総選挙で発足した中道右派連合の新政権は、前政権が目指していた「再エネ100%のエネルギー供給システム」を、同年10月の政策協議(ティード合意)で「非化石燃料100%のシステム」に変更。新規原子炉の建設も含めた対策に、合計4,000億クローナ(約5兆4,000億円)の投資を行うことを決めた。今回の調査は、前政権の指示によりSSMが昨年から実施していたもので、同型の原子炉を複数サイトで建設する場合の許認可についても、SSMは必須となる前提条件を分析している。今年2月には中間報告書を提出しており、SSMは環境法と原子力技術法、および放射線防護法の改正を提案。既存の原子力発電所で安全性が確保されている限り、これらの法的枠組みやその他の前提条件が整えば運転期間の延長は可能との見解を表明していた。最終報告書は中間報告書を補完する内容になっており、SSMは新型炉の導入について関係法のさらなる改正とその他の方策が必要だと指摘。安全性を損なうことなく、新型炉の許認可手続きを簡素化することは可能だという。また、諸外国との協力を拡大して、新型炉で事前の設計審査を行うことを提案。これにより、規制当局としては正式審査の効率的な実施に向けて審査能力を拡充し、準備態勢を整えることができる。設計の最終段階になってから、認可の発給を阻むような根本的課題や障害が判明するリスクを軽減することも可能となる。今回のSSM報告を受けて、気候・企業省で環境問題を担当するR.ポルモクタリ大臣は、「地球温暖化に対応するには非化石発電量を現在の2倍にする必要があるが、増加分の大部分は原子力で供給しなければならない」と指摘。この目標に向けて、「2045年までに従来型の大型炉を少なくとも10基建設し、設備容量を現在の3倍近くにする必要がある」と表明、SSMの報告書はこうした政府目標のベースになるとしている。SSMでこの調査を担当したプロジェクト・マネージャーは、「原子炉の設計要件は主にその性能に基づいており、炉型や容量によるものではない」と説明。このため、軽水炉以外の炉型の場合、さらなる調査が必要になるなど多少の調整が必要だが、既存の規制要件の大部分を適用できる。「SSMの現行審査や新しい規制の開発では、このような点を考慮したい」と強調している。(参照資料:SSM、スウェーデン政府(スウェーデン語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
10 Aug 2023
1869
ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社は8月7日、原子力部門における人材育成や研究等で、ワルシャワ工科大学(WUT)と協力協定を締結した。同協定では双方が培ってきた経験を共有するとともに、WUTの学生や院生が同国の原子力部門で職を得るのに必要な知識とスキルを身に付けられるよう、PEJ社とWUTが共同でカリキュラムや奨学金プログラム、有給の実務研修制度などを開発。科学論文やプロジェクトのコンテストも共同開催する予定で、この協力を通じて同国初の原子力発電所の建設と運転、および同国の原子力産業界が必要とする人材育成を促進する方針だ。ポーランドは政府の原子力プログラムとして、国内の複数のサイトで2043年までに100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万~900万kW建設することを計画中。2022年11月には最初の3基、小計375万kW分の採用炉型として、米ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)PWRのAP1000を選定した。これらは、PEJ社が北部ポモージェ県のルビアトボ-コパリノ地区で建設することになっており、同社は今年4月に建設プロジェクトの「原則決定(decision-in-principle=DIP)」を気候環境省に申請、同省は今年7月にDIPを発給している。同国ではこのほか、政府のプログラムを補完する計画として、PGEグループとエネルギー企業のZE PAK社が韓国水力・原子力会社(KHNP)などとの協力により、中央部ポントヌフで韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」の建設に向けた活動を推進中。また複数の民間企業が、米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社やニュースケール・パワー社が開発した小型モジュール炉(SMR)の建設計画を進めている。化学素材メーカーのシントス社と共同で、GEH社製SMR「BWRX-300」の建設を計画する石油化学企業PKNオーレン・グループは今年1月、同国の教育科学省およびWUTを含む国内6つの工科大学と、技術スタッフの教育・訓練プログラム設置に向けた合意書に調印している。WUTのK.ザレンバ総長は今回、「本学では長年にわたって原子力分野のスタッフを教育し、傑出した専門家を数多く輩出してきたが、国内で原子力プログラムを実施するのにともない、熟練のエンジニアや専門家の需要が大幅に高まっている」と強調。「PEJ社との協力により、本学はトップクラスの専門家を国内で育成し、安全で先進的な原子力発電所の建設のみならず、その運転管理や維持など関係インフラ全体の運営を担う人材を育てていく」と述べた。気候環境省のA.モスクヴァ大臣は、原子力プログラム関係の投資により、ポーランドではGDPの約1%に相当する大きな経済成長が見込めると指摘。その上で、「初号機建設費用の少なくとも40%に国内企業が関わる見通しで、この金額はそれ以降の原子炉建設でさらに増加する」と述べており、プログラムが進展するにつれ、国内エンジニアがさらに必要になるとの見通しを示した。同省の調べによると、ポーランドではすでに約80社の国内企業が、世界中の原子炉ベンダーに原子力関連サービスを提供中。さらに300社が、ポーランドの原子力プログラムに沿って、サプライチェーンに加わる準備を整えている。(参照資料:PEJ社、ワルシャワ工科大の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 Aug 2023
1730
インド政府で原子力等の科学技術を担当するJ.シン閣外専管大臣は8月2日、議会下院における答弁の中で、国産小型モジュール炉(SMR)の開発に向けて、インド政府が諸外国と協力するオプションや法改正を通じて民間部門と協力する方策を検討中であることを明らかにした。インド原子力省(DAE)は、現在合計出力748万kWの国内原子力発電を2031年までに約3倍の2,248万kWに増強する目標を設定。シン大臣によると、大型炉の建設を通じてこれを達成する方針に変わりないものの、政府はSMR建設の実行可能性や有効性を調査するロードマップの作成に向け、技術面の詳細を検討中である。同大臣はまた、SMRは産業界の脱炭素化、その中でも電力の安定供給を必要とする産業にとって特に有望なエネルギー技術だと指摘。インドはクリーン・エネルギーへの移行を果たす一助としてSMRの開発方策を検討しており、その一つとして、民間部門やスタートアップ企業が開発に参加できるよう1962年原子力法の条文見直しを実施中だと説明した。今年5月、インド政府の公共政策シンクタンクでN.モディ首相が会長を務める「インド改革国立研究委員会(NITI Aayog)」は、「エネルギーの移行におけるSMRの役割」と題する報告書を取りまとめた。同シンクタンクは、SMRの国内建設を成功裏に進めるには、民間部門による投資の活用が欠かせないと指摘している。インドでは現在、安全で環境に優しく経済性も高い原子力技術の開発と、原子力発電所の運転をインド原子力発電公社(NPCIL)が主に担っている。NITI Aayog の結論では、インドにおけるSMRの大規模開発と建設に向けて民間投資を確保するには、技術的に中立でしっかりとした政策の枠組が必要。投資の流れに大きな影響を及ぼす要因として、社会面や環境面のファクター、タクソノミーなどを挙げている。NITI Aayogの報告書はまた、いくつかのSMR実証プラントを早期に建設する重要性を指摘している。これによりリスクに対する見通しが立てやすくなり、サプライチェーンの形成に弾みを与えるとともに、この業界に投資と安定をもたらせるという。また、SMRの主要特性を考慮して許認可手続きや規制の枠組みを合理化することは、世界的なSMR市場を開拓する上で重要だとした。そして、SMRが地球温暖化の影響緩和で有意な役割を果たせるとしたら、市場に十分浸透して変化を与えられるよう2030年代初頭、あるいはそれより早い時期にSMR初号機を建設するべきだと指摘している。(参照資料:インド政府の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Aug 2023
2101
カナダのテレストリアル・エナジー社は8月3日、同社製の「小型モジュール式・一体型熔融塩炉(IMSR)」で使用する燃料を将来的に調達するため、同燃料の製造・供給契約を米ウェスチングハウス(WH)社の英国子会社と締結した。この子会社「スプリングフィールド燃料会社(SFL)」は、英ランカシャー州のスプリングフィールドにあるWH社の燃料製造工場を運営している。この契約の下で両社は、同工場の様々な既存インフラを活用してIMSR用燃料の試験製造プラントを設計・建設する計画だ。同契約はまた、2030年代に複数のIMSRを稼働できるよう、最終的に商業規模の製造施設建設を想定している。このため、英国政府はこの試験製造プラント建設に「原子燃料基金(NFF)」の中から290万ポンド(約5億2,500万円)の支援を約束。同契約は元々、テレストリアル社とSFL社および英国の国立原子力研究所(NNL)がIMSR用燃料の商業規模の確保に向け、2021年7月に調印した協力契約に基づいていることから、英国政府もこの協力関係を利用して国内エネルギー供給の保証戦略を進めていくとしている。テレストリアル社のIMSRは熱出力40万kW、電気出力は19万kWで、電力のほか熱エネルギーの供給が可能。使用する熔融塩燃料は、これまで数10年以上にわたり民生用の軽水炉に装荷されてきた「標準タイプ」の低濃縮ウラン((U-235の濃縮度が5%以下))を熔融フッ化物塩と混合して製造する。同社の説明によると、先進的原子炉設計の多くがHALEU燃料((U-235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))を使用するのに対し、IMSRは第4世代設計の中でも唯一、標準濃縮度のウランを使用する。この関係で、同社は2022年11月にこの標準タイプ燃料の梱包方法と国境を越えた輸送について、第三者に依頼して規制面の独自評価を行っている。その結果、これまで既存炉に利用されてきた燃料の梱包方法は、新たな種類の燃料梱包に派生するコンテナの設計や製造、許認可等の面でコストや時間がかからず、IMSRの燃料輸送に適していることが実証された。IMSRを主要な市場に速やかに送り出すという商業的側面でも、有利な燃料選択だったと強調している。同炉は今年4月、カナダの規制要件に対する適合性の事前審査で、同国の原子力安全委員会(CNSC)が提供している「予備的設計評価(ベンダー設計審査:VDR)」の第2段階を完了。CNSCが「カナダで同炉の商業利用を阻むような根本的障害は見受けられなかった」と結論づけたほか、テレストリアル社も、「VDRは熔融塩を燃料として使う先進的原子炉がクリアした最初の規制審査になった」と指摘していた。IMSRについては、カナダのアルバータ州政府が建設に向けた検討を進めており、テレストリアル社と同州の州営非営利企業「インベスト・アルバータ(Invest Alberta)社」は2022年8月、同州をはじめとするカナダ西部地域でのIMSR建設に向けて了解覚書を締結している。(参照資料:テレストリアル・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
07 Aug 2023
1977
米アラスカ州は7月27日、州内で検討されている複数のマイクロ原子炉利用計画の実現に向けて、これまで主に大型炉を対象としていた関係規制手続の合理化を決定した。アラスカ州内で原子力施設を建設するには連邦政府と州政府両方の許可が必要だが、民生用原子力施設の安全性については原子力規制委員会(NRC)が各申請書の審査で全般的権限を有する一方、州政府の権限は施設の立地に留まっている。これまで同州の環境保全省(DEC)は、建設候補地について地元自治体が承認し州議会が建設指定を行った場合に限り、立地許可を発給していた。昨年中に、州議会では関係州法(AS 18.45)を改訂する上院法案(SB 177号)が成立し、M.ダンリービー州知事も署名を済ませたことから、8月から州議会による候補地の指定要件が撤廃された。今後州議会は、自治体が存在しない自治区が候補地となった場合にのみ、立地許可の発給承認を行うことになった。その一方で同法は、申請者に対して立地許可手続きの初期段階から、地元民との協議を義務付けている。この変更により、地元コミュニティのプロジェクトへの関与が強まり、デベロッパーが遠隔地域に原子力の無炭素な電力を提供する基盤が築かれたと州政府は指摘。ダンリービー知事も、「ディーゼル発電に依存する農村地域では、マイクロ原子炉で電気料金やCO2排出量の削減が可能になるなど、画期的エネルギー源になる」とコメント。「2030年までに、すべての州民が低価格な電力を利用できるようにしたい」と表明している。アラスカ州では、米空軍省(DAF)がフェアバンクス近郊に位置するアイルソン空軍基地(AFB)で、マイクロ原子炉を試験的に運転するプログラムを進めている。同基地を原子炉の設置点として選定するにあたり、DAFは2020年9月に「関係する情報の提供依頼書(RFI)」を産業界等の関係者に向けて発出。2022年9月には国防兵站局と共同で、「提案の依頼文書(RFP)」を発出していた。DAFは今年中にも、マイクロ原子炉のベンダーを選定してNRCを交えた許認可関係の活動を開始し、2025年に建設工事を始める予定。2027年に試験運転を実施し、10年以内に商業炉を完成させる方針だ。同州ではまた、電力共同組合の「コッパー・バレー電気協会(CVEA)」が、ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)製マイクロ原子炉「MMR」を中心とする先進的エネルギー・システムの建設構想を推進中である。州内の電気事業者が共同運営するCVEAは、ディーゼル発電所や水力発電所など合計約4万kWの発電設備で同州南東部に電力と熱を供給。2021年の理事会では、高額で価格変動も激しい化石燃料から脱却し、一層クリーンで経済的な電力供給に転換することが戦略計画の目標に掲げられ、2022年9月にはUSNC社との協力により、MMR建設に関する予備的な実行可能性調査を実施中だと発表していた。CVEAによると、USNC社は今年6月に同調査の報告書をCVEAに提出。CVEAが熱電併給しているグレンナレンからバルディーズにかけて、複数地点で熱出力1.5万kWのMMRを2基、一つの発電設備として建設した場合のコストやリスクを調査した結果、バルディーズ南東部の山岳地帯が建設に適している、などと報告している。(参照資料:アラスカ州、CVEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Aug 2023
1646
SZC原子力発電所の完成予想図 ©DESNZEDFエナジー社が英国で計画しているサイズウェルC(SZC)原子力発電所(167万kWの欧州加圧水型炉=EPR×2基)建設プロジェクトの準備を加速するため、英国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は7月24日、同計画用資金の中から1億7,000万ポンド(約309億円)を新たに歳出すると発表した。この資金は、サイトでの建設準備活動や主要機器の調達、労働力の確保等に充てられる。同計画では建設ピーク時に英国内で1万人規模の雇用が見込まれるほか、関連契約の約70%が英国内のサプライチェーンにもたらされる見通し。DESNZとしては、新しい資金調達方法として「規制資産ベース(RAB)モデル」を採用した同計画に新たな民間投資を呼び込み、EDFエナジー社に対しては同計画への最終投資判断(FID)を促す方針である。DESNZはまた、同発電所のこの2基を追加することで、2050年までに英国の原子力発電を現在の約4倍の2,400万kWに拡大する政府目標の達成に近づき、英国のエネルギー供給保証を強化できると指摘。ロシアのV.プーチン大統領を、世界のエネルギー市場から締め出す原動力にもなるとしている。DESNZの発表によると英国では7月中旬、原子力発電所の迅速な新設を主導する新しい政府機関の「大英原子力(GBN)」が正式に発足した。GBNでは近年浮上してきた原子炉技術のみならず、SZCやヒンクリーポイントC(HPC)のような従来型大規模原子力発電所の建設プロジェクトも支援していく予定であり、国家経済の成長や電気料金の削減にも貢献すると強調している。SZCプロジェクトついては、EDFエナジー社の下で同計画を担当している子会社のNNB GenCo(SZC)社が2020年5月、計画法に基づいて「開発合意書(DCO)」の発給を計画審査庁(PI)に申請した。この当時、エネルギー政策を担っていたビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は、PI審査官の報告書等の結論に基づき、2022年7月にDCOの発給を決定している。BEISはまた、同年11月にSZCプロジェクトに対して総額6億7,900万ポンド(約1,236億円)の直接投資を行うと発表した。EDFエナジー社の親会社であるフランス電力(EDF)とともに同計画に50%ずつ出資する一方、NNB GenCo社と協力して、SZCプロジェクトへの出資者を新たに募る方針。同計画では2015年の合意に基づき、中国広核集団有限公司(CGN)がEDFエナジー社に20%の出資を約束していたが、BEISは英政府が出資することで所有権の買取や税金なども含めて、CGNの撤退を促すことが可能だと指摘した。同計画のFIDに関してはEDFエナジー社が昨年、「うまくいけば2023年中に下すことが可能」と述べていた。今年2月にBEISからエネルギー政策を引き継いだDESNZのG.シャップス大臣は、SZCプロジェクトについて、「すでに実施中のHPCプロジェクトと、国産原子力発電シェアの25%まで拡大という長期目標を橋渡しする役割を担っている」と指摘。その上で、「新しい原子力発電所で信頼性の高いクリーン・エネルギーを安価で提供するだけでなく、英国がプーチンのような暴君にエネルギーの身代金を支払わずに済むようにしていく」との決意を表明している。(参照資料:英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
03 Aug 2023
1972
米ユタ州公営共同事業体(UAMPS)の100%子会社である「無炭素電力プロジェクト社(CFPP LLC)」は7月31日、米国初の小型モジュール炉(SMR)をアイダホ国立研究所(INL)内で建設するため、建設・運転一括認可(COL)申請の最初の部分となる「限定工事認可(LWA)」を原子力規制委員会(NRC)に申請した。CFPP社は現時点でCOL申請書を提出しておらず、これは完全なCOL申請に先立ちLWAを単独で申請した最初の例になる。CFPP社は2024年1月にもCOL申請の残りの部分を提出予定だが、先にLWAを取得することによって、ニュースケール・パワー社製のSMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」(出力7.7万kW版)を6基備えた発電設備「VOYGR-6」(46.2万kW)の建設に向け、初期作業を2025年の半ば頃から開始する方針だ。西部7州の電気事業者約50社で構成されるUAMPSは、様々なエネルギー・サービスを近隣地域に提供するユタ州の機関。SMRなど原子力を中心に発電システムの脱炭素化を図り、クリーンな大気を維持するという独自の「CFPPプロジェクト」を2015年から推進している。2016年2月にエネルギー省(DOE)から、傘下のINLにおけるSMR建設を許可されており、2020年10月にはDOEから、NPMを複数基備えた発電設備の建設・実証を支援する複数年にわたる補助金として最大14億ドルを獲得。UAMPSは同年9月に、非営利企業のCFPP社を設立していた。ニュースケール社は2020年9月、SMRとしては初となる出力5万kWのNPMについて「標準設計承認(SDA)」をNRCから取得した。これはNRCスタッフが同設計を「技術的に許容可能」と判断したことを示すもので、2023年1月にはNRC全体の決定となる「設計認証(DC)」が発給された。同じ月に同社は、7.7万kW版のNPMについてもSDA申請書を提出しており、NRCは8月1日付発表の中で、同申請を正式に受理し審査を開始する方針を明らかにしている。CFPP社は2021年8月から、COLの申請に向けた作業を開始した。この作業には、ニュースケール社の大株主で大手EPC(設計・調達・建設)契約企業のフルアー社が専門的知見を提供、ニュースケール社の許認可手続き専門チームも参加している。建設サイトとなるINLは、アイダホフォールズ市の近郊に約2,300km2の広大な敷地を保有しており、同社はLWAの取得手続きと並行して、初期的建設作業の開始前に国家環境政策法(NEPA)に基づく許可をDOEと協力して取得する。CFPP社のM.ベイカー社長はLWAの取得申請について、「スケジュール通り2029年末までに最初のNPMの営業運転開始を目指す上で、必要不可欠だ」と指摘。COLを取得して建設プロジェクトの全面的な承認を得る前に、LWA取得で建設サイトの作業を出来るだけ進めておきたいとしている。ニュースケール社はすでに2022年12月、UAMPSの「VOYGR-6」建設に必要な最初の長納期品(LLM)製造を韓国の斗山エナビリティ社に発注した。同年4月に両社が締結した契約に基づくもので、原子炉圧力容器(RPV)の上部モジュールを構成する大型鍛造品や、蒸気発生器の配管等を調達する計画だ。(参照資料:CFPP社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Aug 2023
2154
米ジョージア・パワー社は7月31日、ジョージア州内のA.W.ボーグル原子力発電所で建設中だった3号機(PWR、110万kW)が、同日付で営業運転を開始したと発表した。同機は今年3月に初臨界に達した後、4月に送電網に接続されていた。建設費の高騰やスケジュールが6年以上遅延するなど難産ではあったが、米国でようやくウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)PWRのAP1000が本格稼働した。米国で新たに着工した商業炉としては、約35年ぶり。建設工事と各種試験が最終段階に入った同型の4号機は、早ければ年末に起動できる見通しだ。ボーグル3、4号機はジョージア州内の4社が共同保有しており、ジョージア・パワー社が45.7%、オーグルソープ電力が30%、ジョージア電力公社(MEAG)が22.7%、ダルトン市営電力が1.6%それぞれ出資。米エネルギー省(DOE)から83億3,000万ドルの政府融資保証適用を受けた唯一の新設プロジェクトとして、3、4号機はそれぞれ2013年の3月と11月に本格着工しており、当時は2017年と2018年の完成を予定していた。一方、サウスカロライナ州では、これらとほぼ同時期にスキャナ社とサンティー・クーパー社がV.C.サマー原子力発電所で、同じくAP1000を採用した2、3号機を着工したが、2017年3月のWH社の倒産申請を受けて同プロジェクトは中止となった。ボーグル発電所では、サザン社のもう一つの子会社で3、4号機の運転会社となるサザン・ニュークリア社が、WH社からプロジェクト管理を引き継いで建設工事を継続。この間、ジョージア・パワー社は2020年4月、新型コロナウィルスによる感染の影響を軽減するため、建設サイトの労働力を約20%削減している。また2021年7月末に3号機の温態機能試験が完了したものの、翌8月に原子力規制委員会(NRC)から「安全系に係わる電気ケーブルの配管が正しく設置されていない」と指摘されたこともあり、運転開始スケジュールは徐々に先送りされている。3号機ではその後、安全性と品質に関する398項目の厳しいチェックが行われ、サザン・ニュークリア社のチームは2022年7月、「(同機が)運転開始前の検査や試験、解析等に関する基準(ITAACs)をすべて満たした」とする文書をNRCに提出した。NRCは同文書およびその他の提出物を厳格に審査した結果、「3号機が建設・運転一括認可(COL)とNRCの規制どおりに建設され、運転も行われる見通し」と確認。同年8月にその確認事項書「103(g)」をサザン・ニュークリア社に送付し、同機の燃料装荷と起動を許可していた。ジョージア・パワー社は今回、4号機についてもサザン・ニュークリア社が前の週にNRCから「103(g)」を受け取ったことを明らかにしている。4号機は今年5月に温態機能試験を完了しており、建設サイトにはすでに同機用の初装荷燃料集合体157体も到着。現在の日程では、今年の第4四半期後半、あるいは2024年の第1四半期に同機の運転を開始する見通しである。 (参照資料:ジョージア・パワー社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Aug 2023
3403
米ウェスチングハウス(WH)社は7月27日、英国スプリングフィールドにある同社の原子燃料製造工場の拡張・アップグレード用として、英国政府の「原子燃料基金(NFF)」の中から総額1,050万ポンド(約19億1,200万円)の補助金を獲得したと発表した。2025年3月末までに交付される見通しだ。WH社はこの補助金を次世代原子炉関係の3つの用途に使用する予定で、まず第3世代+(プラス)の同社製PWRであるAP1000、およびその出力縮小版のAP300など、様々な軽水炉に使用する原子燃料を同工場で製造。英原子力産業界が将来にわたって、最新の燃料を供給できるようにする。また、英国での新規炉開発に備え、WH社は同工場でのHALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の製造検討に補助金を活用する。同社はさらに、カナダのテレストリアル・エナジー社および英国立原子力研究所(NNL)との協力に基づき、テレストリアル社製の小型モジュール式・一体型熔融塩炉(IMSR)に使用する4フッ化濃縮ウラン(UF4)燃料と熔融塩燃料の試験製造にも補助金を活用する方針だ。NFFは2022年7月、英国内の原子力部門で高度なスキルを要する雇用を維持しつつ新たな原子力インフラへの投資を促進するため、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)(当時)が発電用原子燃料の国内製造拡大を目的に、7,500万ポンド(約136億5,700万円)の予算で設置した。これは、2050年までに国内の民生用原子力発電設備を2,400万kWまで拡大(現在は653.4万kW)して、英国のエネルギー供給を保証するには、しっかりとした燃料サプライチェーンを国内で確保・維持することが重要との認識に基づいている。英国政府はすでに2022年12月、NFFの7,500万ポンドのうち最大1,300万ポンド(約23億6,700万円)をWH社のスプリングフィールド・サイトに提供すると決定した。英国内で稼働する既存のガス冷却炉(AGR)用として、回収ウランと新たに採掘されたウランの両方を転換する能力の開発を目的としたもの。これにより、現時点でロシア以外の国では不可能な回収ウランの転換を可能にし、国際社会がロシアの燃料供給から脱却することを目指している。今年1月には、英国政府はNFFに残っている約5,000万ポンド(約91億円)の中から、資金提供するプロジェクトの競争入札を開始した。ここでの目的は、SMRを含む軽水炉用として英国産の燃料サプライチェーンを新たに構築するとともに、2030年代以降に運転開始が見込まれる先進的モジュール炉(AMR)用のHALEU燃料など、新しいタイプの燃料製造プロジェクトを支援すること。BEISのエネルギー政策を今年2月に引き継いだエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は7月18日、国産燃料のサプライチェーン構築を支援する国内8つのプロジェクトに対し、今回総額2,230万ポンド(約40億6,200万円)の補助金をNFFから拠出するすると発表した。WH社の燃料製造工場に交付する1,050万ポンド以外では、カーペンハーストにあるURENCO社のウラン濃縮工場に950万ポンド(約17億3,000万円)を拠出し、低濃縮ウランおよびHALEU燃料の製造を支援。また、AMRの一つである熔融塩炉の国内開発企業であるモルテックスFLEX社に120万ポンド(約2億1,800万円)以上を交付し、バーナー・リグなど熔融塩の製造に必要な機器の製造と運転を支援するとしている。(参照資料:WH社、英国政府①、②、③の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
31 Jul 2023
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米国船級協会(ABS)は7月24日、小型モジュール炉(SMR)など先進的原子炉技術が海運業にもたらす恩恵についての調査結果で、載貨量の増量やCO2排出量の削減など大きな可能性が判明したと発表した。ABSは船体への装備の取り付け工程や取り付けられた機器の状態等を検査し、船級登録する機関。米エネルギー省(DOE)から、先進的原子炉を民間商船に搭載した場合の障害等について研究調査の実施契約を受注したことから、ABSは海運業関係のサービス会社ハーバート・エンジニアリング社(HEC)にこの調査を委託。長さ約6mのコンテナ換算で1.4万個を輸送可能なコンテナ船と、スエズ運河を航行可能な載貨重量15.7万トンのタンカー(スエズマックス船)について、先進的原子炉がこれらの運航や船体設計など、商業面で及ぼす潜在的な影響を調査した。その結果、鉛冷却高速炉(LFR)(出力3万kW)を2基搭載することによって、民間の商用コンテナ船の載貨量が増加し、運航速度も上昇する可能性が高いと結論。また、これらのLFRの運転期間である25年間に、燃料交換は不要だという。一方、スエズマックス船については、ヒートパイプ冷却型のマイクロ原子炉(出力0.5万kW)を追加で4基設置した場合、載貨量は減るものの運航速度が上昇。燃料交換も25年間で1回のみで済むことが判明した。どちらの場合も排出されるCO2の量はゼロになるなど、海運業にもたらされる恩恵は莫大だと強調している。ABSのC.ヴィエルニツキ会長兼CEOは、「大型商船の効率的な運航やCO2排出量の削減など、原子力がもたらす大きな可能性が今回の調査で明らかになった」と指摘。「SMRや先進的原子炉は、安全性の確保や効率性の強化、コストと廃棄物の削減、核拡散の防止など、これまで原子力を海運業に活用する際に課題となっていた数多くの点に対処することができる」と強調した。このほか英国では、クリーンで安全な第4世代の先進的原子炉を開発するため2021年9月に設立された新興企業のニュークレオ(Newcleo)社が7月25日、イタリア船級協会(RINA)、および同国の大手造船グループのフィンカンティエリ(Fincantieri)社と共同で、海運業でのSMR活用に向けた実行可能性調査(FS)を実施すると発表した。これに関連し、国際海事機関(IMO) が7月上旬にロンドンで第80回海洋環境保護委員会を開催し、2050年頃までに海運業界の温室効果ガス排出量を実質ゼロ化するため、新たな削減目標値を設定した。このため同FSでは、ニュークレオ社が開発した革新的な小型LFR(出力3万kW)のクリーン・エネルギーを大型商船の推進力として活用し、莫大な化石燃料を消費する海運業界の迅速な脱炭素化を探るのが目的となる。ニュークレオ社によると、同炉では10年~15年燃料交換が不要なため、メンテナンスが非常に容易かつ効率的になる。また、このLFRを大型商船に設置した場合は、事故発生時に海洋生態系を守ることも可能。同社のLFR設計では、原子炉内部の液体鉛が冷たい水に触れると固体化して原子炉を包み込むため、あらゆる放射線を内部に閉じ込めることができる。RINAのU.サレルノ会長兼CEOは、「船舶燃料の効率化や船体の設計改良、CO2の排出量削減など、原子力ではあらゆる課題の解決が可能だ」と指摘。これに加えて、「SMRであれば海運業における原子力利用の、最も効率的な解決策になる」と説明している。(参照資料:ABS、ニュークレオ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Jul 2023
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フランスのE.マクロン大統領は7月19日、自らが議長を務める閣僚級の「原子力政策審議会(CPN)」を招集し、改良型欧州加圧水型炉(EPR2)を建設する国内3番目の地点として東部のビュジェイ原子力発電所(PWR×4基、各90万kW級)を選定した。EPR2を2基ずつセットで建設する最初の3地点として、フランス電力(EDF)が2021年5月に政府に提案した既存の原子力発電所のうち、最初の2基を建設するオー=ド=フランス地域圏(州)のパンリー発電所と、次の2基を建設する同地域圏のグラブリーヌ発電所はすでにCPNが承認済み。3セット目のEPR2 を建設する候補地点として、EDFはオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏内のビュジェイ発電所、あるいはトリカスタン発電所を提案していた。同大統領は2022年2月に東部のベルフォールで演説した際、フランスのCO2排出量を2050年までに実質ゼロ化し国内の原子力産業を再活性化するため、国内で6基のEPR2を新たに建設するほか、オプションとしてさらに8基の建設に向けた調査を開始すると発表。今回のCPNで地元議員の支援を受けたビュジェイ発電所が選定され、第一段階で建設する合計6基の地点が決定した。一方、CPNは今後もトリカスタン発電所で新規原子炉を建設する可能性について、技術面の調査・分析活動を継続する方針である。フランスでは今年5月に議会が原子炉新設手続きの迅速化法案を可決し、6月23日付で発効した。EDFはこれを受けて、同月29日にパンリー発電所でEPR2を2基増設するための設置許可申請書(DAC)を規制当局に提出した。CPNの今回の審議では、2025年までにこれら2基の関係作業を開始するというスケジュールに合わせるため、様々な手続きが進展中であることを確認している。CPNではこのほか、同国の原子力研究の主導・調整役として中心的役割を担うフランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)のスタッフを大幅に増員し、その民生用原子力部門の研究施設を刷新すると決定した。優秀な人材を新たに呼び込み、既存の原子力発電所で高いレベルの安全性を保証するとともに、EPR2や先進的な小型モジュール炉(SMR)など最新技術の原子力発電所を建設。これらを通じて、発電所の運転期間延長にともなう様々な課題の解決に向けた研究も強化されるとしている。CPNはさらに、議会付属の科学技術選択評価局(OPECST)が報告書の中で、原子力安全と放射線防護の両面を、独立の立場で管轄する規制当局の創設を勧告している点に注目。現行の原子力安全規制当局(ASN)、およびその技術的支援機関である放射線防護原子力安全研究所(IRSN)の使命や人的資源をすべて温存しながら、新当局の創設方向に進んでいきたいとする政府の意向をCPNは確認。その上で、秋までに関係法案の準備を整えるため、関係者や議会と協議を始めるようエネルギー移行省に指示している。(参照資料:原子力政策審議会(仏語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Jul 2023
2193
フランス電力(EDF)は7月19日、小型モジュール炉(SMR)「NUWARD」の建設に向け、予備的な許認可手続きを開始した。EDFは将来、「NUWARD」プラントの最初の運転事業者となることから、今回同炉の安全オプション文書(DOS)を仏原子力安全規制当局(ASN)に提出した。同炉の正式な建設許可申請を行う前に、ASNから初期段階のフィードバックを得るのが目的だ。DOSは、当該原子力施設の安全確保のために採用した技術や設計の特徴、運転とリスク管理関係の主要原則等をまとめた文書で、公開討論等の場で施設の基本的な安全性の考え方や経済面、環境面の影響を説明するのに用いられる。「NUWARD」は、EDFがフランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)と政府系造船企業のネイバル・グループ、および小型炉専門開発企業のテクニカトム社らと共同開発したSMR。同国で50年以上の経験が蓄積されたPWRをベースとしており、出力17万kWの小型PWR×2基(合計出力34万kW)で構成される。「NUWARD」の建設を通じて、EDFは世界中の老朽化した石炭や石油、天然ガスの火力発電所をリプレースするだけでなく、高圧送電網から外れた遠隔地域の需要に応えるとともに、水素製造や地域熱供給、脱塩への応用も支援していく。EDFは今年3月、同炉の開発を担当する企業として100%子会社のNUWARD社を設立しており、基本設計と予備的許認可手続きの実施に向けた作業を開始。2025年からは詳細設計と正式な許認可手続きに入る予定で、2030年には国内で実証炉の着工を目指している。「NUWARD」の開発には、ベルギーの大手エンジニアリング企業のトラクテベル社も協力しており、同社は2022年5月、EDFのエンジニアリング・センター(CNEPE)から同炉のタービン系やBOP(主機以外の周辺機器)の概念設計調査を受注。今年6月には、「NUWARD」開発への協力を強化・延長するため、NUWARD社と枠組み協定を締結している。EDFが今回DOSをASNに提出したことについて、NUWARD社のR.クラッスー社長は「『NUWARD』の開発を確固たるものにする上で、ASNの評価や勧告は欠かせない」と指摘。「世界のクリーン・エネルギーへの移行を当社が主導し、欧州SMRの評価基準になるという当社戦略の一環として『NUWARD』のモデル・プラントを仏国内で建設、その性能と競争力を実証する」と述べている。EDFはこれと同時に、複数の国でSMRを建設する考え。SMRの許認可手続きについては、欧州各国が規制環境の整備を加速しつつ国際間で調整を図れるよう、ASNが2022年6月、フィンランド、チェコの規制当局と共同で「NUWARD」の規制審査を行うと発表した。この審査は、欧州でSMRの規制条件調整に向けた初期段階のケーススタディになるとしている。(参照資料: NUWARD社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Jul 2023
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米国北西部ワシントン州の電気事業者であるエナジー・ノースウエスト社は7月19日、同州内で最大12基のX-エナジー社製・ペブルベッド式小型高温ガス炉(HTGR)「Xe-100」を建設するため、同社と共同開発合意書(JDA)に調印した。第4世代の小型モジュール炉(SMR)となる「Xe-100」は電気出力8万kW、熱出力は20万kWで、これを12基連結することで最大96万kWの電気出力を得ることが出来る。エナジー・ノースウエスト社は自らが所有・運転するワシントン州内唯一の原子力発電所、コロンビア発電所(BWR、121.1万kW)の隣接区域で「Xe-100」発電所の建設を計画しており、2030年までに最初のモジュールの運転開始を目指す方針である。エナジー・ノースウエスト社は同州内の地方自治体など28の公益電気事業者で構成され、2020年からX-エナジー社と協力して「Xe-100」の建設プランを作成していた。当初は「Xe-100」を4基備えた発電設備の建設を計画していた。今回のJDAでは「Xe-100」の商業化に向けて、立地点や建設スケジュールの詳細等を明確化した。今後は、同炉の許認可手続きや規制事項への対応等を共同で決定していく。米エネルギー省(DOE)は2020年10月、「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」における初回支援金の交付対象の一つとしてX-エナジー社を選定した。「Xe-100」の実証炉建設に向けた支援金として、DOEは同プログラムから今後7年間で総額12億ドルを交付。これらの一部は、同炉で使用する3重被覆層・粒子燃料(TRISO燃料)の商業規模の製造施設を、テネシー州オークリッジで建設する計画にも利用されている。「Xe-100」の実証炉については、素材関連企業のダウ(Dow)社がメキシコ湾沿いにある同社施設の一つで建設するため、2022年8月にX-エナジー社と基本合意書を締結。今年5月には、同社は「Xe-100」の立地点として、テキサス州メキシコ湾岸のシードリフト市を選定した。同社が2001年に合併吸収したユニオン・カーバイド社(UCC)の製造施設で2026年に実証炉を着工し、ARDPの一環として2020年代末までにその性能を実証するとしている。エナジー・ノースウエスト社のB.シュッツCEOは、同社の使命は米国の北西部地域にクリーンで信頼性の高い安価な電力を供給することだと説明。その上で、「この地域が送電網を将来的にクリーンなものに変える際、信頼性の高い無炭素電源が新たに必要なのは明らかだ。X-エナジー社の先進的原子炉技術はCO2を多量に排出する発電システムにとって最適の、理想的な特性を多く備えている」と強調した。なお、合同会社((合同会社(LLC)は出資者(会社の所有者)と経営者が同一。設立費用が安く決算公告や役員重任登記が不要で、剰余金分配の制限がないというメリットがある。))であるX-エナジー社(X-Energy, LLC)は昨年12月、特別買収目的企業(SPAC)((未公開会社の買収を目的として設立される法人。))のアレス・アクイジション社(Ares Acquisition Corporation) と最終的な合併契約を締結している。手続きは今夏中に完了すると見込まれており、合併後は「X-Energy, Inc.」の新名称でニューヨーク証券取引所に上場する予定である。(参照資料:X-エナジー社、エナジー・ノースウエスト社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Jul 2023
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