米国のX-エナジー社は1月17日、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が同社の小型モジュール炉(SMR)「Xe-100」(出力8万kW)に対し実施している「ベンダー設計審査(VDR)」で主要部分の第1、第2段階が完了したことを発表した。CNSCは19の審査分野についてX-エナジー社が提出した400以上の技術文書を評価した結果、「Xe-100」の正式な許認可審査の際に根本的障害となるような課題は認められず、カナダの原子力発電所に対するCNSCの要求事項の意図をX-エナジー社が正しく理解していると結論づけた。X-エナジー社のC.セルCEOは、「事前審査の第2段階の完了は、Xe-100建設の規制上および商業上の準備が整っていることを示すものであり、当社の先進的な高温ガス炉技術をカナダ市場に展開するにあたり、正式な許認可申請への自信が強まった」と語る。CNSCによるXe-100のVDRは、審査プロセスの最初の2段階について2020年7月に開始された。VDRはベンダーの要請に基づき、CNSCが提供している任意の設計評価サービスで、2つの段階の審査を同時に進めることは可能。VDRは、設計段階において、潜在的な規制上や技術上の問題点、特に設計の大幅な変更につながる可能性のある重要課題を特定し、早期にフィードバックをすることを目的とする。審査の過程で得られたフィードバックは、最終段階のVDRやCNSCへの提出書類に反映される。なお、CNSCによる審査の過程で、X-エナジー社がCNSCの規制要件を厳格に順守するために、さらなる対応が必要な技術分野がいくつか指摘された。X-エナジー社は最終段階にあたる第3(フォローアップ)段階で、これら指摘事項についてCNSCに更なる情報を求めながら詳細に検討を加え、建設に向けた設計の具体化で追加の策を講じ、CNSCの評価を仰ぐとしている。X-エナジー社は、VDRの第3段階の実施に向け、今後もCNSCと緊密に協力していく意向を表明している。第4世代の原子炉に属する「Xe-100」はペブルベッド式小型高温ガス炉(HTGR)で4基連結して32万kWの発電容量に拡張が可能。海水脱塩や水素生産などの幅広い分野に適用が可能だ。燃料には、X-エナジー社独自のTRISO-X(3重被覆層・粒子燃料)を使用する。米国の大手化学メーカーであるダウ・ケミカル社は、テキサス州のメキシコ湾沿いに位置するシードリフト市にXe-100が4基連結した発電所の建設を計画している。X-エナジー社の100%子会社であるTRISO-X社は、テネシー州オークリッジの「ホライズンセンター産業パーク」内で商業規模の「TRISO-X燃料製造施設(TF3)」を建設中だ。Xe-100の初号機とTF3は、米エネルギー省(DOE)の「先進的原子炉設計実証プログラム(ARDP)」の支援対象となっている。また、X-エナジー社は、米国北西部ワシントン州にあるコロンビア原子力発電所(BWR、121.1万kW)の隣接区域に最大12基のXe-100を設置するため、同州の電気事業者であるエナジー・ノースウエスト社と共同開発合意書に調印している。
24 Jan 2024
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オランダ政府の原子力利用拡大の意向を受け、オランダの原子力および教育セクターの関係者は1月12日、原子力の理工系分野における職業教育の強化を目的とした共同声明に署名した。原子力分野でのキャリアに対する学生の関心を高めるために、新しい原子力教育カリキュラムの共同開発などを視野にいれている。現在、オランダの原子力シェアは小さく、国内唯一の原子力発電所であるボルセラ発電所(PWR、51.2万kW)が国内の総発電電力量の約3%を供給するのみ。同発電所は1973年の運転開始後40年目の2013年に運転期間が20年間延長され、運転認可は2033年末まで有効である。2021年3月に発足した連立政権の4党は、2040年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指しており、同年12月に4党が合意した2025年までの政策方針の中で、ボルセラ発電所の運転を長期に継続するとともに、政府の財政支援により新たに2サイトで原子力発電所を建設する方針を明記。2022年12月、政府は第3世代+(プラス)の原子炉(各100万~165万kW)2基の新設を計画し、建設サイトとして、ボルセラ発電所の立地エリアを指定している。いずれも2035年に運転開始させ、2基で国内の総発電電力量の9~13%を賄うと試算する。また、ボルセラ発電所では、政府の資金提供を受け、2034年以降の運転継続に向けた実行可能性調査が進行中である。オランダでは、クリーンエネルギーへの移行に寄与するとして小型モジュール(SMR)の建設計画も進められている。オランダのULCエナジー社は英ロールス・ロイス社製のSMRを複数基導入する考えで、2023年11月、英ロールス・ロイスSMR社とオランダの建設企業BAMインフラ・ネーデルランド社と長期的に協力することで基本合意している。また、ロシアのウクライナ侵攻による地政学的な変動で、原子燃料の需要の高まりを受け、英国に本拠地を置く濃縮事業者のウレンコ社は、オランダにあるアルメロ工場の濃縮能力を拡大する計画だ。核医学分野では、医療用アイソトープ製造のため、新しい研究炉PALLAS(熱出力5.5万kW)が北ホラント州のペッテンで建設中である。原子力研究コンサルタント・グループ(NRG)が1960年から運転する高中性子束炉(HFR、熱出力4.5万kW)の後継機となる。HFRは、医療用アイソトープの欧州の需要の約60%、世界の需要の約30%を生産する。政府は、PALLAS建設への資金拠出を通じて世界市場における地位の向上と北ホラント州の高い知見と雇用の維持を目指している。「これらの野心的な目標を実現するには、原子力分野の十分な知識を持つスタッフを増やす必要がある」「そのためには、職業教育が重要な役割を果たすため、原子力産業界と教育機関との連携を強化する必要がある」と共同声明は指摘している。共同声明の署名式には、産業界からはCOVRA(放射性廃棄物の処理・貯蔵)、EPZ社(原子力発電)、NRG-Pallas(医療用アイソトープ製造)およびUrenco社(ウラン濃縮事業)が参加した。教育機関からは中等職業教育(MBO)機関のScalda、Horizon College/Regio College、Vonk、ROC van Twenteおよびデルフト工科大学(TU Delft)が参加している。
23 Jan 2024
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社が建設中の鉛冷却高速実証炉「BREST-OD-300」(電気出力30万kW)で1月17日、鋼鉄製の原子炉ベースプレートと格納容器の下層部分が原子炉シャフトに据付けられた。重量165トン、直径21m以上、厚さ300mmの原子炉ベースプレートは、2022年9月に2つに分割されて建設サイトに搬入され、組み立てられた。ベースプレートは、原子炉容器内の構造物から基礎部分にかかる荷重を均等にするためのもの。コンクリート打設は2021年8月に完了しており、遅くとも2027年に運転を開始する予定。BREST-OD-300は、シベリア西部のトムスク州セベルスク市にある、核燃料製造企業トヴェル社傘下のシベリア化学コンビナート(SCC)で建設中である。2021年2月、SCCに連邦環境・技術・原子力監督庁(ロステフナゾル)から建設許可が発給され、同年6月に建設が開始された。設計上固有の安全性を持つBREST-OD-300は冷却材に鉛を使用し、ウラン・プルトニウム混合窒化物(MNUP)燃料を使用する。同サイト内で建設中のMNUP燃料製造加工施設は2024年中に稼働予定。また、同炉から発生する使用済燃料専用の再処理モジュールを併設し、回収したウランとプルトニウムをMNUP燃料製造施設で新燃料に再加工する。再処理モジュールは2030年に稼働予定である。これら3施設で「パイロット実証エネルギー複合施設(PDEC)」を構成する。PDECは、ロスアトム社が進めている戦略的プロジェクト「ブレークスルー(Proryv)」の主要施設である。BREST-OD-300の主任設計者兼ブレークスルー・プロジェクトチームの設計責任者であるV.レメホフ氏は、「世界初の第4世代の鉛冷却高速炉の据付工事の開始という画期的瞬間を迎えた。従来のVVER炉とは異なり、BRESTは一体型レイアウトを採用。VVERのようなオールメタル構造ではなく、一次系設備を収納する金属製空洞のあるメタル・コンクリート構造。空洞間は建設中にコンクリート充填材で徐々に埋める。BREST炉はサイズが大きく部品単位でしか搬入できず、最終的な組立ては建設サイトでしかできない」と語る。BREST-OD-300のような高速炉は、従来の熱中性子炉などの燃料再処理からの副産物であるプルトニウムを燃料に使用する。放射毒性の強いマイナーアクチノイドの燃焼消滅も可能。また、ウラン238からプルトニウム239が生成されるが、天然ウランの約99%はウラン238であるため、ロスアトム社は「天然ウランの利用効率が飛躍的に向上する」としている。ロシアは、ブレークスルー・プロジェクトで、天然ウランなど資源の有効活用を図るとともに、蓄積する使用済燃料や放射性廃棄物を処分するため、閉じた燃料サイクルの確立を目指している。ロスアトム社は熱中性子炉のみならず、運転経験が豊富なナトリウム冷却高速炉(SFR)に加え、鉛冷却高速炉(LFR)の開発を進める。今回の30万kWの実証炉の運転は性能確認に重点を置き、10年後には120万kWのBR-1200(LFR)の商業運転を後続させると意気込んでいる。
22 Jan 2024
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カナダのキャピタル・パワー社とオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は1月15日、電気出力30万kWの小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」のアルバータ州での建設を目指し、協力することで合意した。技術面だけでなく事業運営も含めた実現可能性を検討する。実現可能性評価は、2年以内に完了するが、その後の取り組みでも協力を継続する。この合意により、アルバータ州、オンタリオ州、サスカチュワン州、ニューブランズウィック州政府が2022年に発表したSMR導入のための共同戦略計画が前進することになる。キャピタル・パワー社は、アルバータ州エドモントンに本社を置く、北米の電力会社。アルバータ州、ブリティッシュコロンビア州、オンタリオ州、および米国10州に、火力、太陽光、風力など約760万kWの発電設備容量を所有している。カナダ・オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は、北米初のSMRをオンタリオ州のダーリントン原子力発電所サイト内に建設するため、準備作業を実施している。採用炉型は、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のBWRX-300で、計4基建設予定。1基目の建設は2028年末までに完了し、2029年末までに運転を開始する計画だ。キャピタル・パワー社のA.デイCEOは、「SMRはアルバータ州にとって、安全で信頼性が高く、柔軟性があり、手頃な価格で重要なクリーンなベースロード電源になる。この合意は長期的な戦略的パートナーシップの基礎を築くものである」「30万kWのSMRは、アルバータ州の電力市場にとって適切なサイズであり、OPG社の原子力発電の経験を活かし、アルバータ州でのSMR導入を加速させる」と期待を寄せる。同社は、2030年から2035年にかけて最初のSMRの設置を目指している。OPGのK.ハートウィックCEOによると、ダーリントン原子力発電所サイト内での新しいプラントの建設許可取得の規制手続きを完了し、2025年初頭までにSMR全4基のコストを公表できるだけの情報が十分に揃うという。初号機は少し高価になるが、後続機はコストが低減されるという。なお、この提携同意の発表式典には、アルバータ州とオンタリオ州の関係政府機関の大臣も列席。アルバータ州政府のN.ノイドルフ公共事業担当大臣は、「SMRはクリーンで信頼性が高く、手頃な価格の電力を供給するための適切なエネルギーミックスを求めるアルバータ州にとって、大きな役割を果たす可能性がある」とし、「このパートナーシップは、オンデマンドのベースロード電力を維持しながら脱炭素化を目指す我々にとり、エキサイティングで重要な前進である」と述べた。同大臣は、SMRを1か所あるいはそれ以上の場所に設置するかは実現可能性の段階で検討されるが、SMRの魅力は、原子炉をフリート化したり、より離れた場所に単独で設置したりと両方が可能なことだ、と指摘する。アルバータ州は2023年9月、同州のオイルサンド事業へのSMR導入に関する複数年にわたる調査に700万カナダドル(約7.7億円)を投資すると発表。アルバータ州政府のB.ジーン・エネルギー鉱物資源大臣は、SMRはクリーンな発電供給ミックスの重要な要素であり、オイルサンド事業にとって有望であると語った。オンタリオ州政府のT.スミス・エネルギー大臣は、「世界トップクラスのオンタリオ州の原子力の専門知識を活用した次世代のSMR技術の推進を期待する」「SMRは高賃金の雇用を創出する新たな投資を確保し、安全で信頼性の高い電力を供給、地域社会の増大するニーズに対応する」と述べた。折しも、発表式典の2日前、週末のアルバータ州の気温はマイナス45度近くまで下がり、高い電力需要により輪番停電の可能性が発生、住民に節電が要請された。スミス大臣は、アルバータ州の州都エドモントンからソーシャルメディアに投稿。風力発電や太陽光発電がほとんど稼働せず、輪番停電の可能性があることに触れ、オンタリオ州の原子力に関する専門知識をエネルギーの自立と安全保障を求める世界中の地域に輸出していきたい、と発信している。
19 Jan 2024
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米国北西部ワシントン州の電気事業者であるエナジー・ノースウエスト社は1月10日、先進炉の開発と設置を目的とした同社のプロジェクトの実現可能性調査に、ピュージェット・サウンド・エナジー(PSE)社が出資すると発表した。PSE社はワシントン州最大の電力会社で、出資額は1,000万ドル(約14.7億円)。PSE社による出資は、エナジー・ノースウエスト社とそれを支援する事業体がこれまでに拠出した約1,000万ドルに追加されるもの。エナジー・ノースウエスト社はワシントン州内の28の公益電気事業者で構成される公営電力共同運営機関。この2年以上、数多くの新しい原子力技術の可能性調査を実施し、米・X-エナジー社の「Xe-100」が、この地域特有のニーズに最も適した炉型であるとの結論に達している。第4世代の「Xe-100」はペブルベッド式小型高温ガス炉(HTGR)で3重被覆層・粒子燃料(TRISO燃料)を使用する。電気出力8万kW、熱出力は20万kW。12基連結することで最大96万kWの電気出力を得る。エナジー・ノースウエスト社は自らが所有・運転するワシントン州内唯一の原子力発電所、コロンビア発電所(BWR、121.1万kW)の隣接区域で「Xe-100」発電所を建設し、2030年までに同炉のモジュールの運転を開始することを想定し、2023年7月、X-エナジー社と共同開発合意書(JDA)に調印している。建設プロジェクトの背景には、2019年5月、ワシントン州内の電力を2045年までに100%クリーンエネルギーとする州法が制定され、電力会社は新たにクリーン電源を特定、評価をするようになっていることがある。
17 Jan 2024
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英国のEDFエナジー社は1月9日、今後3年間で13億ポンド(約2,405億円)を投じて運転中の5サイト計9基の運転期間を延長することを発表した。EDFエナジー社は、8サイトの原子力発電所を管理している。運転中の5サイト(サイズウェルB、トーネス、ヘイシャムA、ヘイシャムB、ハートルプール)と廃止措置中の3サイト(ハンターストンB、ヒンクリー・ポイントB、ダンジネスB)である。同社は、イングランド南西部サマセット州で、170万kW級の欧州加圧水型炉(EPR)2基構成のヒンクリー・ポイントC(HPC)原子力発電所を建設中であり、南東部サフォーク州のサイズウェルC(SZC)原子力発電所では同じくEPR2基の建設を計画中である。2009年にブリティッシュ・エナジー社から取得して以降、EDFエナジー社が運転中の5サイトへ投資した総額は、今回発表の13億ポンドと合せると、およそ90億ポンド(約1.67兆円)に達する。2023年の英国の原子力発電電力量は373億kWhであった。2021~2022年にかけての3サイトの原子力発電所(ダンジネスB、ヒンクリー・ポイントB、ハンターストンB)の閉鎖や定期検査による運転停止により、2022年比で15%減少したものの、少なくとも2026年までは原子力発電電力量はこの水準を維持する計画である。この予測は、昨年の予測より40%高いが、2023年3月にハートルプール原子力発電所(各AGR、65.5万kW×2基)とヘイシャムA原子力発電所(各AGR、62.5万kW×2基)の運転を2年延長し、現時点で2026年3月まで延長することを決定したことによる。また、ヘイシャムB原子力発電所(各AGR、68万kW×2基)、トーネス原子力発電所(各AGR、68.2万kW×2基)の運転期間延長を目指しており(現在、この4基は2028年3月までの運転を予定)、点検および規制当局の承認を条件として、2024年末までに再度、運転期間を見直す予定である。サイズウェルB原子力発電所(PWR、125万kW)は、1995年の運転開始時から2,500億kWh以上を発電。運転終了時期となっている2035年以降も、技術的には20年間以上の運転が可能とみられている。EDFエナジー社は、2025年中にこれに関する最終的な投資決定を下す予定。EDFエナジー社は、5サイトでの運転期間延長により現在の発電量レベルを維持し、エネルギー安全保障を強化、CO2排出量を削減する意向である。HPCやSZCのような大規模な新設計画が実施されることで、5,000人もの長期雇用や、サプライチェーンにおける数千人の雇用も維持される。EDFエナジー社では、2024年に原子力事業全体で1,000人以上の雇用を計画中だ。今回の投資がなければ近いうちに、サイズウェルBが運転中の唯一の原子力発電所となり、英国の電力需要量に占める原子力発電の割合は13%ではなく、僅か3%となり、天然ガスへの依存度はさらに高まり、エネルギー価格は上昇、大気中のCO2量はさらに増えることになる。英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックスCEOは、EDFエナジー社の発表を歓迎しつつも、「運転期間延長は短期的には助けとなるが、閉鎖間近の原子力発電所を巡る中長期的な問題には対処できない。政府が迅速にSZCへの最終投資を決定し、将来にわたるエネルギー安全保障と経済的繁栄をもたらす大型炉から小型炉までさまざまな規模の新しい原子力発電所の計画を策定することが必要だ」と強調した。EDFエナジー社は閉鎖したAGR炉の燃料取り出し作業にも取り組んでおり、3サイトで2021年半ばから廃止措置の初期段階に入った。ハンターストンB原子力発電所では燃料取り出しが半分以上、ヒンクリー・ポイントB原子力発電所では4分の1以上が終了している。この2サイトの原子力発電所は燃料取り出し後、2026年に長期間の廃止措置のため、原子力復旧サービス(Nuclear Restoration Services:NRS。以前の名称はマグノックス社)に移管される。ダンジネスB原子力発電所は、2023年5月に燃料取り出し作業を開始した。政府との2021年廃炉協定に基づき、EDFエナジー社が燃料取り出しを行い、NRSがその後の長期の廃炉プログラムを管理する。資金は原子力債務基金(Nuclear Liability Fund:NLF)から拠出される。2023年3月末の基金残高は204億ポンド(約3.8兆円)。
16 Jan 2024
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米エネルギー省(DOE)は1月9日、J.バイデン大統領の「米国への投資(Investing in America)」アジェンダの一環として、HALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の国内での大規模供給体制を確立するため、濃縮サービスに関する提案依頼書(Request for Proposals:RFP)を発行した。DOEのJ.グランホルム長官は、「原子力は現在、国内のカーボンフリー電力のほぼ半分を供給しており、今後もクリーンエネルギーへの移行において重要な役割を果たし続ける」と強調した。HALEUは、現在開発中の多くの先進的原子炉に採用されている新型燃料で、先進的原子炉の展開は、バイデン大統領の掲げる2050年までのCO2排出量実質ゼロ(ネットゼロ)の達成、エネルギー安全保障の強化、高賃金の雇用の創出、米国の経済競争力の強化に貢献する。また、HALEU燃料の利用により炉心寿命は長くなり、安全性、効率向上が期待できる。現在、米国に拠点を置く供給事業者からHALEU燃料の商業的規模の供給はなく、原子力発電事業での積極的活用上の懸念材料となっていることから、国内供給が増加すれば、米国における先進的原子炉の開発と配備が促進されると見込まれている。バイデン大統領のインフレ抑制法は、2026年9月までとの期限付きの総額7億ドル(約1,015億円)を限度とする「HALEU利用プログラム」により国内にHALEUサプライチェーンを確立することを目的としている。今回のRFPで採択されるHALEU濃縮契約と昨年11月に発表されたRFPによる別契約(濃縮されたウランを先進的原子炉向けの金属、酸化物等の形態に再転換するサービス)に最大5億ドル(約725億円)の拠出が予定されている。DOEの原子力局は、国内のウラン濃縮事業者とHALEU燃料製造の契約を複数締結する計画だ。濃縮されたHALEUは、再転換事業者に出荷する必要があるまで製造サイトで保管する。最大契約期間10年のHALEU濃縮契約に基づき、政府は各ウラン濃縮事業者に対し最低発注金額として200万ドル(約2.9億円)を保証する。濃縮および貯蔵活動は米国本土で行われ、国家環境政策法に準拠する必要がある。今回のRFPによる提案提出の期限は3月8日。このRFPには、昨年6月に発行されたRFP草案に対する業界からのコメントに基づく修正がされている。DOEは、政府所有の研究炉の使用済み燃料のリサイクルを含む、先進的商業炉のHALEUサプライチェーンを拡大するための活動を支援している。DOEの予測では、2035年までに100%のクリーンな電力、2050年までにネットゼロの達成という政府目標の達成のためには、2020年代末までに先進的原子炉用にHALEU燃料40トン以上が必要であり、毎年、さらにこれを上回る燃料を製造しなければならない。昨年11月、DOEはHALEU燃料の実証製造プロジェクトにおいて重要なマイルストーンを達成した。米国のウラン濃縮事業者のセントラス・エナジー社(旧・USEC)が国内初となるHALEU燃料を20kg製造。なお、DOEは今後3年間で世界のウラン濃縮と転換能力を拡大し、ロシアの影響を受けない強靱なウラン供給市場の確立をめざし、官民セクターの投資促進のために有志国と連携を深めている。昨年12月7日、COP28の会期中に開催された第1回ネットゼロ原子力(NZN)サミットの場で、米国、カナダ、フランス、日本、英国は合同で、安全で確実な原子力エネルギーのサプライチェーンを確立するために政府主導の拠出42億ドル(約6,090億円)を動員する共同計画を発表した。これは、COP28における、日本をはじめとする米英仏加など25か国による、世界の原子力発電設備容量を2020年比の3倍に増加させるという宣言文書の具体化である。
15 Jan 2024
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スウェーデンのE. ブッシュ・エネルギー・ビジネス・産業大臣兼副首相は1月4日、同国の原子力発電拡大計画を始動するにあたり、国家原子力発電コーディネーター(調整役)にスウェーデン原子力協会事務局長のC. ベルグロフ氏を任命したと発表した。同氏は今後、政府の原子力発電牽引、加速の中心的役割を担う。また、進捗のフォローアップや分析により、必要な対策を検討していくほか、立地地域のステークホルダーとのコミュニケーションを図る役割も期待されている。就任は2月1日付。スウェーデンでは2022年9月に総選挙が行われ、翌10月、40年ぶりに原子力を全面的に推進する中道右派連合の現政権が新たに誕生した。そのスウェーデン政府は2023年11月、原子力発電の大規模な拡大をめざすロードマップを発表。これには、非化石燃料による電力を競争力のある価格で安定的に確保し、社会の電化にともない総発電量を25年以内に倍増させるため、2035年までに少なくとも大型原子炉2基分の原子力発電設備を完成させ、さらに2045年までに大型炉で最大10基分相当の原子力発電設備を追加することなどが盛り込まれている。また今月1日には、環境法の一部改正法が発効、新たなサイトでの原子炉の建設禁止や国内で同時に運転できる原子炉基数を10基までとする制限事項が撤廃されるなど、原子力推進に向けた環境整備が着々と進められている。今回、国家原子力発電コーディネーターに任命されたベルグロフ氏は、スウェーデンのエネルギー貿易協会であるSwedenergyのシニア原子力アドバイザーであり、2017年から原子力産業政策協力グループであるスウェーデン原子力協会の事務局長を務めている。同氏はストックホルムのスウェーデン王立工科大学で原子炉物理学の博士号を取得し、国営企業のバッテンフォール社で6年間、原子力発電所の運転と新規建設準備に従事した経験を持つ。また、昨年4月に開催された日本原子力産業協会の第56回原産年次大会にもスピーカーとして参加している。ベルグロフ氏によると、スウェーデンが原子力推進に舵を切る背景には、気候変動や脱炭素化の世界的な潮流に加え、2015年以降に国内4基の原子炉が閉鎖されたことによる、電力価格の高騰と発電設備容量の不足、そしてロシアによるウクライナ侵攻に端を発するエネルギー危機などが影響しているという。気候変動や電化に対する野心的な目標が掲げられるなか、自ずと原子力の役割が明確になり、原子力に対する国民の支持もこれまで以上に大きくなったと指摘する。同氏らが行った世論調査によると、回答者の59%が新規建設を支持する一方、原子炉の段階的廃止に賛成する割合は過去最低の8%に低下。この強い世論の支持が、原子力をめぐる政治的転換の大きな要因となったと分析している。ベルグロフ氏は今回の任命について、原子力分野における自身のキャリアをふまえ、「準備は整っている。これまで培ってきた知識やネットワークを生かし、この難しいタスクに取り組んでいく」と意気込みを語った。
12 Jan 2024
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英国政府は1月11日、2050年のCO2排出実質ゼロ(ネットゼロ)へ向けた原子力ロードマップを発表。2050年までに国内で合計2,400万kWの新規原子力発電所を稼働させ、国内電力需要の4分の1を原子力でまかなうことなどを盛り込んだ、野心的な原子力開発目標への具体策を示した。2,400万kWの原子力発電設備容量は現在の約3倍にあたり、政府が2022年4月に公表した「エネルギー供給保障戦略」の中で掲げられていた。エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)はロードマップについて、あるべき原子力開発の道筋を示し、「原子力産業界や投資家に、政府としての明確なシグナルを送る」ことが目的と説明。「原子力を活用しないかぎり、ネットゼロもエネルギー供給保障も覚束ない」と強調した。そのうえで、2050年までに2,400万kWの新規原子力発電設備を稼働させるべく、建設中のヒンクリー・ポイントC原子力発電所(EPR、172万kW×2基)を2020年代に確実に完成させる新しい資金調達方式であるRABモデル((個別の投資プロジェクトに対し、総括原価方式による料金設定を通じて建設工事の初期段階から、需要家(消費者)から費用(投資)を回収するスキーム。これにより投資家のリスクを軽減でき、資本コスト、ひいては総費用を抑制することが可能になる。))を適用したサイズウェルC原子力発電所(EPR、167万kW×2基)建設プロジェクトへの、EDFエナジー社の最終投資判断(FID)を年内メドに促す2030~2044年にかけて5年毎に300~700万kWの原子力発電設備の新設を促す新規原子力発電所に関する既存の「国家政策声明書(NPS)」(2011年発行)は、100万kW級の大型炉のみを対象としているため、新たに小型モジュール炉(SMR)も対象としたNPSを策定する原子力サイトとして認可された地点の多くで、今後プラントの廃炉を迎えるため、既存サイト以外にも新たな立地点を模索する──等を実施するとしている。また、新規建設にあたって最大の障壁となる資金調達に関しては、投資家や事業者に対し、差金決済取引(CfD)やRABモデルの適用を検討する原子力第三者賠償制度を強化するために、原子力損害の補完的な補償に関する条約(CSC)への加盟を目指す準備を進めている英国のグリーンタクソノミーに、原子力が含まれるよう働きかける──等、原子力プロジェクトへの投資のインセンティブを高めていくという。英国原子力産業協会(NIA)のトム・グレイトレックスCEOは、ロードマップについて、SMRと並行して大型炉プロジェクトも検討するという政府方針を歓迎。「5年のインターバルで新規原子力プロジェクトを決定することで、将来の予測可能性が高まり、頑健なサプライチェーンが構築される」と指摘している。
12 Jan 2024
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英国政府は1月7日、3億ポンド(約558億円)を投じて、HALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の製造計画を立ち上げると発表した。欧州では初の試みであり、英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)のC.クティーニョ大臣は、「国内外のエネルギー安全保障にとって極めて重要」と強調する。HALEU燃料は、現在開発中の次世代原子炉の多くに採用されている新型燃料。現在、HALEUを大規模に製造できるのはロシアだけである。今回資金提供により、英国政府はHALEU燃料の国内製造を支援するとともに、2050年までに民生用原子力発電設備を最大2,400万kWまで拡大し、国内電力需要の約25%を原子力でまかないたい考えだ。加えて、1,000万ポンド(約18.6億円)を投じて英国内において他の新型燃料の製造技術や設備を開発する。これにより、イングランド北西部の核燃料生産拠点を強化し、地元産業と雇用を促進するほか、長期的な国内核燃料供給体制を確立する。海外の需要にも応えることにより国際的な連携に貢献するという。英国では、2030年代初めには先進的モジュール炉(AMR)の運転開始が見込まれている。AMRは小型モジュール炉(SMR)同様に、小型でモジュール工法が可能であり、建設をより迅速かつ安価にする可能性があるため、英国の原子力復活において重要な役割を果たすと考えられている。水素や産業用熱の生産など、低炭素発電以外でさまざまに応用される可能性もある。新型燃料の製造インフラへの支援は英国内外の原子力インフラ整備にも寄与し、世界的なネットゼロ目標の達成に不可欠。CO2排出量実質ゼロ(ネットゼロ)への移行はエネルギーの価格上昇を避けつつ、世界的な燃料供給の不安定性に起因する価格の乱高下から家計を守り、手頃でクリーンな電力の供給に役立つとしている。なお、世界の核燃料市場から、特にウラン転換サービスの市場からロシアを締め出し、2020年代末までに英国にウラン転換能力を取り戻すために、政府と産業界は協働している。ロシアは現在、世界のウラン転換能力の約20%、濃縮能力の約40%のシェアを持つ。DESNZは2023年7月、国産燃料のサプライチェーン構築を支援する国内8つのプロジェクトに対し、原子燃料基金(NFF)から総額2,230万ポンド(約41.5億円)を拠出すると発表した。NFFは、英国がウランと核燃料の供給源を多様化させようとする中、英国の原子力事業者が自国産で製造された燃料を使用する選択肢を増やすことを目的としている。8つのプロジェクトには、米ウェスチングハウス(WE)社の英スプリングフィールドにある同社の原子燃料製造工場の拡張・アップグレードや、HALEU燃料製造の検討を含む多様な燃料製造への支援(1,050万ポンド、約19.5億円)、カーペンハーストにあるウレンコ社のウラン濃縮工場における低濃縮ウランおよびHALEU燃料製造への支援(950万ポンド、約17.6億円)、ニュークリア・トランスポート・ソリューションズ社のHALEU燃料輸送パッケージの開発支援(100万ポンド以上、約1.9億円)、熔融塩炉の国内開発企業のモルテックスFLEX社のAMRであるバーナー・リグなど熔融塩の製造に必要な機器の製造と運転の支援(120万ポンド、約2.2億円)が含まれる。なお、COP28で英国はあらためて、G7の原子力パートナーと協力し、ロシア製燃料への世界的な依存を減らすというコミットメントを表明した。
11 Jan 2024
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エストニア政府の原子力作業部会は12月29日、原子力導入がエストニアの気候変動目標の達成とエネルギー安全保障の向上に役立つと結論づけ、特に小型モジュール炉(SMR)が最適とする報告書をとりまとめた。作業部会は、国際原子力機関(IAEA)の「原子力発電導入にむけたインフラ開発のロードマップ」に従い、SMRの導入の可能性について2年半にわたり分析。原子力は再生可能エネルギーを支援するものであり、タイムリーな計画、十分な資金、政治的・国民大の支持があれば、エストニアにおける原子力導入は可能であるとしている。政府とエストニア議会は、原子力計画について2024年初めの数か月にも議論を開始する予定である。原子力作業部会の代表であり、気候省のA.トゥーミング次官は、「原子力エネルギーは、エストニアにおいて将来世代にわたって安定したエネルギー供給を保証する可能性を秘めている」としながらも、「原子力を選択することで、再生可能エネルギーの生産・貯蔵能力の強化に影響を与えたり、排出削減を先送りしてはならない」と強調している。公表された報告書では、原子力の経験のない国で原子力を導入するには何年もの準備が必要であり、原子力計画の実施から発電を開始するには9〜11年のリードタイムを要すると予測。原子力利用を決定した場合、エストニアにおける次のステップは、法的枠組みの整備、人材育成、原子力発電所の建設サイトの選定であるとしている。また、原子力発電所の建設資金を民間部門から調達し、原子力利用を可能にする枠組みを構築するための国家予算の初期費用は、約7,300万ユーロ(約115.4億円)となるが、原子力エネルギーの導入は、主に税収の増加や経済活動の活性化により国家に安定した歳入をもたらすという。エストニアの現在の電源は、化石燃料、特にオイルシェール燃料が大半を占めている。エストニアは、2050年までに排出量実質ゼロを達成することを掲げており、国内のオイルシェールの段階的廃止を開始する2035年までにエネルギー・ミックスを多様化するため、信頼性が高く低炭素な電源の選択肢として原子力発電に注目している。報告書では、電気出力40万kW以下のSMRの導入が適切とし、小規模なバルト海電力市場、再生可能エネルギー、供給目標、欧州の水素市場の発展の可能性を考慮し、水素製造が可能なSMRを3~4基または合計120万kWまでの導入可能性を検討。炉型の選択にあたっては稼働実績と燃料供給の安定性を重視するという。なお、2023年2月、エストニアの新興エネルギー企業のフェルミ・エネルギア社は、GE日立・ニュクリアエナジー社のSMR「BWRX-300」を2030年代初頭までに建設すると発表している。
10 Jan 2024
1688
韓国の新ハヌル原子力発電所2号機(PWR, 140万kW)が12月21日、送電網に接続し、送電を開始した。同機は韓国で4基目となるAPR1400を採用している。新ハヌル原子力発電所(以前の名称は新蔚珍原子力発電所)の1号機は2022年5月22日に初臨界を達成し、同年6月9日に送電開始、12月7日に営業運転を開始している。新ハヌル2号機は、2023年9月7日、韓国の原子力規制機関である韓国原子力安全委員会(NSSC)から運転認可を発給された。その後、規制側による予備検査を経て、9月11日~18日にかけて241体の燃料集合体を装荷。温態機能試験など各種試験を行った後、2023年12月6日に初臨界を達成した。同機を所有・運転する韓国水力・原子力会社(KHNP)によると、今後、定格出力まで各段階の出力で試験を行った後に、同国で運転中の26基目の商業炉として2024年上期を目途に営業運転を開始する。韓国では、セウル1、2号機(以前の名称は新古里3、4号機)、新ハヌル1号機に続き、新ハヌル2号機が4基目のAPR1400となる。また、後続のAPR1400として、セウル3、4号機(新古里5、6号機)が建設中で、新ハヌル3、4号機の建設が計画中である。新ハヌル3、4号機は、ムン・ジェイン(文在寅)前大統領が始めた脱原子力政策で、2017年の「エネルギー転換(脱原子力)ロードマップ」と「第8次電力需給基本計画」に基づき、建設計画が一時白紙化されていた。国外では、アラブ首長国連邦(UAE)のバラカ原子力発電所(4基)がAPR1400を採用しており、2021年4月に1号機、2022年3月に2号機、2023年2月に3号機が営業運転を開始、4号機は燃料装荷を終え、起動準備中である。これに続く輸出案件として、KHNP社は2022年10月、ポーランドのポントヌフ地域におけるAPR1400建設に向けてポーランドの国営エネルギー・グループ(PGE)、エネルギー企業のZE PAK社と3社間で協力意向書(LOI)を締結している。
09 Jan 2024
2695
スウェーデンの気候・企業省は12月19日、原子力の大規模な拡大政策を円滑に進めるため、原子力分野におけるフランス・エネルギー移行省との協力を長期的に進めていくと発表。気候・企業省のE.ブッシュ・エネルギー産業担当相とフランスのA.パニエ=リュナシェ・エネルギー移行相が、意向宣言書(declaration of intent)に署名した。これは、2017年11月と2019年6月に両国がイノベーションや環境問題対策等に関して結んだ戦略協力関係や、今年1月に両国の国家元首が、両国間の戦略協力のなかで民生用原子力分野の協力が重要な役割を担うと共同で決定したことに基づく動き。原子力分野で豊富な経験を有するフランスの協力により、スウェーデンは2045年までに大型炉で最大10基分の発電設備追加に向けて、資金調達モデルのノウハウをフランスと共有するほか、双方の原子力産業界同士のさらなる協力を促す。具体的には、既存原子炉の出力増強や運転期間の延長、メンテナンス等でノウハウを共有するとしている。また、現地の報道によると、両国は燃料サイクルの分野でも協力を促進すると宣言。欧州域内で原子燃料や核物質の確実な供給体制を確立するため、両国の産業界はロシア産燃料や関係サービスに対する欧州諸国の依存を軽減し、調達先の多様化を図る。使用済燃料やその他の放射性廃棄物の管理協力も強化する方針で、両国がそれぞれの深地層処分場の着工と段階的な操業開始に向けて、廃棄物の安全かつ長期的な管理方法を開発するとしている。スウェーデンでは中道右派連合の新政権が2022年10月の政策協議で、環境法に記されている原子力発電関係の禁止事項を撤廃すると決定。2040年までにエネルギー供給システムを100%非化石燃料に変更するため、2026年までに最大4,000億クローナ(約5兆6,900億円)の投資を行い、新規原子力発電所の建設環境を整えていくとした。今年1月にはU.クリステション首相がこの環境法の改正を提案し、9月末に政府が提出した同法の改正法案は11月末に議会で承認された。これにともない、スウェーデンでは既存のフォルスマルク、リングハルス、オスカーシャムの3原子力発電所以外の地点でも、原子炉の新設が可能になったほか、同時に10基以上の稼働が許されることになった。これらの修正事項は、2024年1月1日付で発効する。スウェーデン政府はまた、11月中旬に原子炉の新設に向けたロードマップを公表した。非化石燃料による発電電力を競争力のある価格で安定確保し、社会の電化とともに必要となる総発電量を25年以内に倍増させるため、遅くとも2035年までに大型炉2基分に相当する原子力発電設備を完成させるとした。また、2045年までには大型炉で最大10基分の設備を新設すると表明している。スウェーデンでは、フォルスマルクとオスカーシャムの両発電所に一部出資するフィンランドのフォータム社が2022年10月、両国での大型炉や小型モジュール炉(SMR)の建設に向けて、2年計画で実行可能性調査(FS)を実施すると発表。同年12月にフォータム社は、スウェーデンでSMRの建設機会を模索するとし、地元のプロジェクト開発企業シャーンフル・ネキスト(Kärnfull Next: KNXT)社と了解覚書を締結した。また今年6月には、スウェーデンおよびフィンランドで、ウェスチングハウス(WH)社製大型炉のAP1000と、SMRであるAP300の建設可能性を探るため、フォータム社とWH社は了解覚書を締結している。スウェーデン企業も原子力拡大に向けた活動を開始しており、国営電力のバッテンフォール社は11月初頭、リングハルス発電所の西側にSMRを少なくとも2基建設することを念頭に、詳細計画の策定申請書を地元ヴァールベリ市に提出すると発表。建設に必要な追加分の土地購入手続きも、9月に開始したことを明らかにしている。(参照資料:スウェーデン政府(スウェーデン語)、議会の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Dec 2023
1726
インドで建設中のカクラパー原子力発電所4号機(PHWR, 70万kW)が12月17日、初臨界を達成した。インド原子力発電公社(NPCIL)は、計16基からなる70万kW級国産加圧重水炉(PHWR)建設プロジェクトを掲げているが、1基目となるカクラパー3号機は、今年6月末に営業運転を開始。今回の4号機はこれに次いで2基目となる。NPCILは2010年11月にグジャラート州のカクラパー発電所(PHWR×2基、各22万kW)で4号機を本格着工した後、原子力規制委員会(AERB)の許可に基づき、今年10月に燃料の初装荷を開始。今回、AERBの安全審査をすべてクリアしたことから同炉を起動した。今後は様々な試験を実施しながら出力を徐々に上昇していき、フル出力の運転に入る。インドで現在稼働している商業炉23基、748万kWの大部分は低出力の国産PHWRで、これらのPHWRのなかで最も出力の大きいものがカクラパー3号機である。3、4号機と同型の4基が、すでに北部ハリヤナ州のゴラクプール発電所と北部ラジャスタン州のラジャンスタン発電所で2基ずつ建設中である。それ以外では、同国唯一の大型軽水炉であるクダンクラム原子力発電所1、2号機(ロシア製PWRであるVVER-1000、出力各100万kW)がタミル・ナドゥ州で稼働中だが、これらはロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社が建設した。同発電所ではさらに3~6号機(各VVER-1000)の建設工事が行われている。インドはまた、米国製やフランス製の大型軽水炉導入に向けて交渉を進めている。慢性的な電力不足を解消しつつ国内原子力産業の急速な発展を促すため、インド政府は2017年5月、国内の4サイトで新たに10基の70万kW級PHWRを建設する計画を原則承認した。それらは、南西部カルナタカ州のカイガ原子力発電所5、6号機、ハリヤナ州のゴラクプール3、4号機、中央部マディヤ・プラデシュ州のチャッカ1、2号機、およびラジャスタン州のマビ・バンスワラ1~4号機である。現時点で、これらはすべて行政上の承認と財政的な認可を受けており、NPCILは着工前の様々な活動を展開中。いずれも2031年~2032年頃の完成を目指している。インド政府で原子力や科学技術を担当しているJ.シン閣外専管大臣の今年4月の発言によると、同国の原子力省(DAE)は2031年までに原子力発電設備容量を約2,300万kWに増強するとの目標を設定。2047年までに総発電量に占める原子力シェアは、9%近くまで増大するとの見通しである。(参照資料:NPCILの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Dec 2023
2730
ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は12月17日、フメルニツキー原子力発電所4号機(当初の予定はロシア型PWR、100万kW)の建設計画に続いて、同5号機としてウェスチングハウス(WH)社製AP1000を建設するため、同社と原子炉系統の購入契約を締結した。 ウクライナ議会がAP1000の建設に必要な法案を可決・成立させるのを待って、エネルゴアトム社は建設工事の関連作業を開始する。総工費は50億ドルに達する見通しで、この建設工事により国内では最大9,000名分の雇用が創出されると強調している。エネルゴアトム社は2021年8月、フメルニツキー原子力発電所で建設工事が中断中の4号機も含め、合計5基のAP1000を建設するためWH社と独占契約を締結した。同年11月には、フメルニツキー発電所でのAP1000建設に必要な追加契約をWH社と交わしており、4号機のこの変更計画はAP1000のパイロット建設プロジェクトと位置付けられている。2022年6月になると、同社は国内で稼働する15基のロシア型PWR(VVER)すべてにWH社製原子燃料を装荷するとともに、AP1000の建設基数も合計9基に拡大するため、さらなる追加契約をWH社と結んでいる。これらの契約締結後、エネルゴアトム社はWH社と共同でプロジェクトの実施に向けた準備作業や設計活動を展開。ウクライナ政府の今年1月の承認をうけて、実行可能性調査の実施案も作成した。今回の契約締結は、WH社とのその後の交渉で5号機用の機器購入で好条件が整ったことによる。5号機の原子炉系統はすでにWH社が製造済みで、納入を待つばかりだという。今回の契約への調印は、エネルゴアトム社のP.コティン総裁とWH社のP.フラグマン社長兼CEOが会談した後、ウクライナ・エネルギー省のG.ハルシチェンコ大臣が立ち会って行われた。エネルゴアトム社とWH社の協力関係はすでに長期にわたっており、ウクライナでは2015年から2016年にかけて、100万kW級のVVERが設置されている南ウクライナ原子力発電所やザポリージャ原子力発電所で、WH社製燃料の装荷がすでに開始されている。また、2022年の追加契約に基づいて、リウネ原子力発電所の40万kW級VVERに今年9月、WH社製の燃料が初めて装荷された。また、スウェーデンのバステラスでWH社が操業する燃料製造工場では、燃料集合体の製造についてウクライナへの技術移転が続けられている。コティン総裁はこの件について、「燃料集合体の製造ラインを国内に設置できたため、今後はロシアによる燃料市場の独占体制を打ち崩すことも可能だ」と述べた。WH社のフラグマンCEOも、「両社の協力関係を一層強化するため、共同エンジニアリング・センターをウクライナに設置する計画がある」と表明。同センターを通じて両国が共同プロジェクトを進め、連携を強めていきたいとしている。両社間ではこのほか、WH社製の小型モジュール炉(SMR)「AP300」のウクライナ導入に向けた了解覚書も今年9月に結ばれている。(参照資料:エネルゴアトム社の発表資料①、②、ウクライナ・エネルギー省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
22 Dec 2023
1878
米原子力規制委員会(NRC)は12月19日、カリフォルニア州で唯一稼働するディアブロキャニオン原子力発電所(DCPP)(各PWR、約117万kW×2基)について、運転期間の20年延長を求めるパシフィック・ガス&エレクトリック(PG&E)社の申請書を正式に受理すると発表した。州政府の指示に基づき同社が11月7日に提出していた申請書について今回、NRCは不備がないことを確認。今後NRCはこの計画の安全面や環境影響面について詳細な審査を開始するほか、同申請関係のヒアリングを開催する。米国における運転期間は一律40年に設定されている。同発電所の1、2号機はそれぞれ1984年と1985年に送電を開始しており、PG&E社は2009年、これらの運転期間を20年延長してそれぞれ60年とするための申請書をNRCに提出した。しかし、電力供給地域における需要の伸び悩みと再生可能エネルギーによる発電コストの低下を理由に、同社は2016年6月にこの申請の取り下げを決定。各40年の運転期間満了にともない、1号機を2024年11月に、2号機を2025年8月に閉鎖する計画を2016年8月にカリフォルニア州の公益事業委員会(CPUC)に提出しており、同委は2018年1月にこれを承認している。しかし、同州では2020年夏に厳しい熱波に見舞われ、G.ニューサム知事は緊急事態を宣言、電力会社には計画停電を指示する事態となった。同様の宣言は2022年にも発出されており、同知事は州議会に対しDCPPの運転期間を5~10年延長するための立法を提案した。州議会は2022年9月、DCPPの運転期間を2030年まで延長する法案(上院846号)を圧倒的多数で可決、ニューサム知事も同月に署名している。今月14日にはCPUCも、同法の実施にともなう料金の設定方法や、1、2号機の運転期間満了日をそれぞれ2029年10月と2030年10月に再設定することを承認。これらを可能にする3つの条件として、①NRCがDCPPの運転を引き続き承認すること、②同法の下で州政府の水資源省がPG&E社に提供している最大14億ドルの融資契約が温存されること、③NRCが将来的にもDCPPの運転期間延長を適切と判断すること――を挙げていた。また、米エネルギー省(DOE)も2022年11月、早期閉鎖のリスクにさらされている商業炉を救済するために設置した「民生用原子力発電クレジット(CNC)プログラム」で、DCPPを初回の適用対象に認定。認定日より4年間で、最大11億ドルを拠出すると発表している。NRCの規制では、運転期間の延長申請書は現行認可が満了する少なくとも5年前までに提出しなければならない。NRCは今年3月、この規制の適用除外を求めるPG&E社の要請書を審査した上で、同社が2023年末までに20年の運転期間延長申請することを条件に、規制適用から除外することを承認。これを受けてPG&E社は、中止された審査の再開を年末までにNRCに求めるとしていた。PG&E社によると、DCPPはカリフォルニア州における総発電量の8.6%を賄っており、無炭素電力としては同州最大の約17%を供給。従業員も約1,300名を抱えるなど、サン・ルイス・オビスポ郡では最大規模の民間企業である。DCPPのM.ザワリック副所長は、「DCPPを2025年以降も運転するという選択肢を州政府が認めているので、カリフォルニアは今後もクリーン・エネルギー社会に向かって進んでいく」と表明している。(参照資料:NRC、PG&E社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Dec 2023
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カナダ北東部のニューブランズウィック(NB)州政府は12月13日、安価なエネルギーを提供しつつ、同州経済の成長とクリーン・エネルギー化の促進を目指した新しいエネルギー戦略「Powering our Economy and the World with Clean Energy -- Our Path Forward to 2035 」を公表した。クリーン・エネルギーへの移行に向け、2035年まで12年間のロードマップも盛り込まれており、原子力に関しては同年までに州内のポイントルプロー原子力発電所(カナダ型加圧重水炉、70.5万kW)内で合計60万kWの小型モジュール炉(SMR)を建設すると表明している。同戦略のなかでNB州政府は、手頃なエネルギー価格と信頼性の高いエネルギー供給、新たなエネルギー技術や発電戦略等に合せたエネルギー市場改革、および州経済の成長という4点に重点を置いた。その結果、太陽光や風力などの再生可能エネルギーと、無炭素なベースロード用電源としてSMR等の原子力利用を大幅に拡大する方針を明示。これらを使って、ピーク時の電力需要に十分応えられる発電設備を州内で確保するほか、水素やバイオ燃料などの新しいエネルギー源を輸送部門に適用、さらなる省エネ対策やエネルギーの効率化を進めていく産業部門の電化は温室効果ガスの排出量削減で主要な役割を担うが、州政府の試算によると、NB州では2022年の年間電力需要の145億kWhが、2035年には234億kWhに拡大するため、発電設備を約60%増強する必要がある。カナダでは商業炉がNB州とオンタリオ州のみで稼働しており、NB州唯一の原子力発電所として州内の発電設備容量の15%を占めるポイントルプロー発電所は、過去40年以上にわたり同州の主要なベースロード用電源だった。NB州は2022年、オンタリオ州とサスカチュワン州、およびアルバータ州とともに、SMRを開発・建設していくための共同戦略計画を策定。NB州は、小型でモジュール式のSMRは従来の大型炉と比べて建設コストが低いだけでなく、太陽光など間欠性のある再生可能エネルギー源を補える柔軟なエネルギー源と認識しており、州営電力のNBパワー社と協力して、同社が運転するポイントルプロー発電所にSMRを2035年までに60万kW分新たに建設する。差し当たり2030年頃までに、最初の15万kW分の運転を開始して電力需要の増加に応えるほか、2035年までに残りを完成させて発電部門の脱炭素化を促す方針である。NBパワー社はすでに今年6月、ポイントルプロー発電所に米ARCクリーン・テクノロジー(ARC)社製の先進的SMR「ARC-100」(電気出力10万kW~15万kW)を建設するため、ARC社のカナダ法人と協同で「サイト準備許可(LTPS)」をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請した。2030年頃に送電開始し60年にわたって運転していく計画で、この「ARC-100」も含めた60万kW分のSMR建設によって、同州の原子力発電設備は2035年に現在の約2倍に拡大する見通し。これと同時に、同州政府は既存のポイントルプロー発電所の運転効率や信頼性を向上させる考えで、NBパワー社がパートナーらと協力してこれを進めていくとしている。(参照資料:NB州の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Dec 2023
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傘下企業を通じてベルギーの全原子力発電所(計5基)を所有・運転する仏エンジー社は12月13日、これらのうち最も新しいドール4号機(PWR、109万kW)とチアンジュ3号機(PWR、108.9万kW)の運転期間を2035年まで10年延長する計画の諸条件について、ベルギー政府との最終合意文書に調印した。両機はともに1985年に営業運転を開始しており、40年目となる2025年に閉鎖が予定されていた。今回の合意により、両機は2025年に一旦運転を停止した後、最大20億ユーロを投じてバックフィット作業等を実施。2025年11月の再稼働を目指す。ベルギーでは2003年に緑の党を含む連立政権が脱原子力法を制定し、既存の原子炉7基(当時)の運転期間を40年に制限するなどして、これらを2025年までに全廃することになった。しかし、2020年に発足した7政党の連立政権は2021年12月、総発電量の約5割を賄っていたそれら7基の代替電源が確保できないことから、7政党の政策協議において、エネルギー供給で必要な場合に限り、ドール4号機とチアンジュ3号機で運転を継続する可能性を残していた。さらに、ロシアのウクライナ侵攻が2022年2月に始まったことから、ベルギーを含む欧州各国では天然ガスの調達で苦境に立たされている。同年1月にベルギーの原子力規制当局がこれら2基の運転期間延長を条件付きで認めていたことから、政府は同年3月にこれら2基合計約200万kWの原子力発電設備の運転期間を10年延長し、2035年まで維持する方針を決定。事業者であるエンジー社とは同年7月、運転期間の延長に向けて交渉していくことで合意していた。その後、2022年9月にドール3号機(PWR、105.6万kW)が、今年2月にはチアンジュ2号機(PWR、105.5万kW)が40年間の稼働を終えて永久閉鎖されたが、政府とエンジー社は2023年1月、ドール4号機とチアンジュ3号機の運転期間延長に関し、法的拘束力を持たない予備的合意案に署名。今年6月に暫定合意文書を交わした後、7月には枠組合意に達しており、今回はこの合意案の主要原則に基づき以下の事項を定めている。両者の「柔軟な長期運転(LTO)シナリオ」に基づいて、今後両機に16億~20億ユーロ(約2,480億円~3,100億円)を投資、2025年11月の再稼働を目指して最善を尽くす。政府とエンジー社の折半出資により、これら2基専用の法的裏付けのある組織を設置、同組織が2基の管理にあたる。両者間でバランスの取れたリスク配分が行われるよう、両機が発電する電力の売買には差金決済取引(CfD)を取り入れた経済モデルを活用。CfDの行使価格は連邦原子力規制局(FANC)が設定した安全要件等に基づき、実際にかかるコストを考慮して決定する。2025年に初期の行使価格を設定した後、2035年までの期間をカバーする最終コストを反映させて2028年に行使価格を改定する。エンジー社所有の原子炉すべてが排出する放射性廃棄物の管理固定費を、総額で150億ユーロ(約2兆3,300億円)と見積もる。これらの事項は、欧州委員会(EC)の承認を受けて最終決定する見通しで、関係協議はすでに始まっている。エンジー社のC.マクレガーCEOは、「2基の運転期間延長に向けて政府とのリスク分担を可能にし、放射性廃棄物に関する条項の不確実性を排除する合意文書に署名できたことをうれしく思う」と表明している。(参照資料:エンジー社(フランス語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Dec 2023
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英原子力規制庁(ONR)は12月7日、政府のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)の要請を受けて、米ホルテック・インターナショナル社製小型モジュール炉であるSMR-300(電気出力30万kW)について、包括的設計審査(GDA)を開始したと発表した。DESNZは同日、ホルテック社の英国法人であるホルテック・ブリテン社に対し、全4段階で構成されるGDAの1、2段階分の補助金として、3,005万ポンド(約54億円)を「未来の原子力実現基金(Future Nuclear Enabling Fund=FNEF)」から拠出していた。DESNZはホルテック社が提出していたGDA申請書を事前に精査し、同プラントがGDA開始前の4つの評価基準をクリアしていることを確認。これを踏まえて、ONRが同プラントの安全性とセキュリティ面について、環境庁(EA)とウェールズ自然保護機関(NRW)が環境影響面について、英国の基準を満たしているか約5年をかけて評価する。ホルテック社は2022年12月、PWRタイプの同社製SMR「SMR-160」(電気出力16万kW)をGDAにかけ、2028年までに英国内で初号機を着工するため、2023年初頭にも申請書を提出すると表明していた。同社はまた、米国でも「SMR-160」の建設を計画しており、米原子力規制委員会(NRC)とは設計認証審査に向けて申請前の事前協議を実施中である。ホルテック社は英国の原子力発電プログラムに対し、25年以上にわたって様々な機器やサービスを提供している。SMR開発にあたっては、エネルギー関係の英国コンサルティング企業であるモット・マクドナルド(Mott MacDonald)社を英国チームに加えたほか、国外では三菱電機や現代E&C社とも協力している。DESNZのA.ボウイ原子力・ネットワーク担当相は今回、「国内原子力産業の再活性化を目指し、過去数十年間で初めて公的基金を活用する」と説明。「FNEF」は、2022年5月にビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)(当時)が立ち上げた1億2,000万ポンド(約217億円)の補助金交付制度である。同相は、「約3,000万ポンドの投資は、英国エネルギー・ミックスのクリーン化とCO2排出量の実質ゼロ化に向けて、最新技術を用いた原子力発電所の建設を迅速かつ低コストで進めていくためのものだ」と強調している。なお、ホルテック社は、革新的な技術を用いたSMRの開発促進に向けてDESNZが今年7月に開始した支援対象の選定コンペにも参加。同コンペは、原子力発電所の新設計画を牽引する新しい政府機関「大英原子力(Great British Nuclear=GBN)」が担当しており、ホルテック・ブリテン社は今年10月、フランス電力(EDF)、英国のロールス・ロイスSMR社、米国籍のニュースケール・パワー社、GE日立・ニュクリアエナジー・インターナショナル社、ウェスチングハウス(WH)社の英国法人とともに、同コンペの次の段階に進むことが決定した。2024年に支援対象として選定された場合、ホルテック社は2050年までに複数のSMRで合計出力500万kW以上の設備を建設するため、英国内に主要機器の製造工場を設置する考えだ。(参照資料:ONR、DESNZ、ホルテック社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Dec 2023
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COP最終日となった12月13日、参加国約200か国が、化石燃料からの移行を全ての国に求めることで合意。成果文書となる「UAEコンセンサス」を採択し、閉幕した。なお今回の成果文書ではCOP史上初めて、炭素排出量を削減するための重要なアプローチの1つとして「原子力」が明記された。焦点であった化石燃料については、その段階的な削減を明確に約束する文言は盛り込まれていない。しかし各国に対し、「公正に科学的知見に則って2050年までのネットゼロを達成するために、エネルギーシステムにおける化石燃料からの移行に向けた世界的な取り組みに貢献」するよう求めるなど、化石燃料からの移行を初めて明確に要求しており、COPとして化石燃料からの移行という方向性を打ち出すことに成功した点で、UAEコンセンサスは高く評価されている。UAEコンセンサスでは、化石燃料からの移行手段に言及しており、移行手段として初めて原子力が取り上げられた。これは排出量削減が困難な分野や水素製造等におけるゼロ炭素/低炭素テクノロジーの中で、再生可能エネルギーやCO2回収・貯留(CCUS)と並ぶテクノロジーとして原子力がリスト入りしたもの。これまでCOPの場では原子力が話題になることがあっても、文書化されたことはなく、今回初めてCOPに原子力の名が刻まれた。COP28の議長としてUAEコンセンサスをとりまとめたスルタン・アル・ジャベールUAE産業・先端技術相は今回の合意について、「地球規模の気候変動問題へ心から誠実に取り組む人々にとっての真の勝利。 これは現実的で、結果を重視し、科学を重視する人々にとっての真の勝利だ」と高らかに宣言した。世界原子力協会(WNA)のサマ・ビルバオ・イ・レオン事務局長は、「原子力の扱いが180度転換した。(COP3の)京都議定書メカニズムから除外された唯一のテクノロジーが、ついにCOP28においてさまざまな枠組みに含まれることになった」と述べ、「今年、世界の原子力産業界がCOPでの存在感をさらに高めるべく、ネットゼロ原子力(NZN)イニシアチブを設立した。 今こそ、世界の原子力発電設備容量を急速に拡大すべき時だ」と強い意欲を示した。英国原子力産業協会(NIA)のトム・グレイトレックスCEOは、コンセンサスに原子力が含まれたことを歓迎し、「これは気候変動との戦いにとって重要な瞬間だ」と述べた。そして「今必要なのは、英国が同盟国とともに重要な役割を果たし、原子力発電を大規模かつハイペースで拡大し、ネットゼロを達成すること」と指摘した。会合出席のため来日したNEAのマグウッドDG日本原子力産業協会の新井史朗理事長は、「公式文書において原子力の低炭素価値が認められ明記されたのはCOP史上初めてであり大変意義深い」としたうえで、「NZNパビリオン、IAEAパビリオンを中心とした活動のほかに50にも及ぶ原子力関連サイドイベントが開催された。また、今回初めて、日本政府主催のジャパン・パビリオンで、原子力に係るパネル展示が実施されたほか、米国、カナダ、韓国、英国、仏国などの各国パビリオンでも積極的に原子力に関する展示やイベントが行われたことは大きな前進である」と強調した。原子力産業新聞の独占インタビューに応じたOECD原子力機関(NEA)のウィリアム・マグウッド事務局長は、COP28について、「今回は原子力が話題の中心だった」と振り返り、「CO2排出量削減には原子力が大きな役割を果たすことが認められたということであり、ネットゼロ達成に必要な主要テクノロジーの中に原子力が初めてリスト入りした」との認識を示した。次回のCOP29は、来年11月にアゼルバイジャンのバクーで開催される。
14 Dec 2023
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トルコのアックユ原子力発電会社(ANPP社)は12月12日、トルコ原子力規制庁(NDK)が同国初の商業炉となるアックユ原子力発電所(ロシア型PWR、出力120万kW×4基)1号機の起動許可を発給したと発表した。ANPP社は、建設工事を請け負ったロシアの原子力総合企業ロスアトム社が現地で設立したプロジェクト企業で、2018年4月に1号機の建設工事を開始。同社は今年の3月と8月、同炉の起動許可を2回に分けてNDKに申請しており、その際、起動段階に移行する準備が整ったことを示す文書を複数提出した。4月には、ロスアトム社の傘下企業が製造した1号機用の初装荷燃料が、地中海沿岸メルシン県の建設サイトに到着している。今回の許可に基づいて、ANPP社は1号機の起動準備と安全運転に向けた調整作業を実施する。また、次の段階で燃料を装荷し運転プロセスに入れるよう、運転認可を申請する方針である。同発電所では後続の2~4号機も、それぞれ2020年4月と2021年3月、および2022年7月に本格着工、建設工事は順調に進展中である。ANPP社のA.ゾテエバCEOによると、許認可の取得は原子力発電所のサイト選定から設計、建設と運転、廃止措置に至るまで、あらゆる段階で必要な重要事項だが、トルコ初の原子力発電設備となるアックユ発電所では、すべての許認可手続きが初体験。規制当局は、アックユ発電所と同型の原子炉が4基稼働するロシアの実績を頼りにしている。NDKの今回の起動許可発給で、同炉では建設に関するトルコの法令や国際基準の要件をすべて満たしていることが確認された。アックユ原子力発電所建設プロジェクトは、2010年5月にトルコとロシアが結んだ政府間協定(IGA)に基づいて進められており、第3世代+(プラス)の120万kW級ロシア型PWR(VVER-1200)を4基建設する計画。約200億ドルと言われる総工費は差し当たりロシア側が全額負担するが、これを返済するため、トルコ電力卸売会社(TETAS)は発電所の完成後から15年にわたり、発電電力をANPP社から固定価格で購入する。ロスアトム社はまた、IGAの規定に基づいて、ANPP社株の最大49%を最終的にトルコや第三国の企業に売却する方針。2017年6月、トルコの大手エネルギー・インフラ建設企業3社の連合体が49%の出資に合意したものの最終確定せず、以降ロスアトム社はその分の出資者を模索中である。同IGAではさらに、建設工事に必要な許可がすべて発給されてから7年以内の2025年までに、初号機の試運転を開始しなければならないと規定。ロスアトム社は2024年の1号機起動に向けて、今年中にその開始準備を整えたいとしている。(参照資料:ANPP社、ロスアトム社(ロシア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Dec 2023
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米原子力規制委員会(NRC)は12月12日、ケイロス・パワー社が開発しているフッ化物塩冷却高温炉「KP-FHR(Kairos Power Fluoride salt-cooled High temperature Reactor」の実証炉「ヘルメス(Hermes)」(熱出力3.5万kW)について、第4世代の原子炉としては初の建設許可を発給すると発表した。ケイロス社は、テネシー州オークリッジにある米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」に建設する計画で、2024年の着工に向けてサイトの最終準備作業を進め、2026年までに同炉を完成させる方針だ。同社が最終的に建設を目指している商業規模の「KP-FHR」は熱出力32万kW、電気出力14万kWで、冷却材としてフッ化リチウムやフッ化ベリリウムを混合した熔融塩を使用。燃料にはTRISO燃料((ウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆した粒子型の燃料))を用いるとしており、同炉では固有の安全性を保持しつつ電力と高温の熱を低コストで生成可能になるという。「ヘルメス」は「KP-FHR」の熱出力を約10分の1に縮小した非発電炉となる予定。ケイロス社は「KP-FHR」の商業化に向けた段階的アプローチの重要ステップとして、クリーンで安全かつ安価な核熱の生産能力を「ヘルメス」で実証する。NRCは現在、「ヘルメス」の隣接区域で同炉を2基備えた実証プラント「ヘルメス2」を建設するための許可申請書を審査中で、ケイロス社はこれらのヘルメス・シリーズで得られる運転データやノウハウに基づき、技術面や許認可面、建設面のリスクを軽減。「KP-FHR」のコストを確実化し、2030年代初頭に商業規模の「KP-FHR」の完成を目指すとしている。ケイロス社は2018年、「ヘルメス」の建設に向けたNRCとの幅広い申請前協議を開始した。DOEは2020年12月に同炉を「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」の対象として選定しており、プログラムの実施期間である7年間の総投資額6億2,900万ドルのうち、3億300万ドルをDOEが負担している。同社は「ヘルメス」の建設許可申請書を、2021年9月と10月の2回に分けてNRCに提出した。NRCは今年6月に同炉の安全性評価報告書(SER)最終版を完成させたのに続き、今年8月には環境影響声明書(EIS)の最終版を取りまとめた。NRCの委員4名は、10月19日のヒアリングでこれらの審査報告書が適正であると承認、同日の票決に基づいて建設許可の発給を決めていた。「ヘルメス」の建設計画に対しては、テネシー峡谷開発公社(TVA)が2021年5月に設計、許認可、建設、運転等でケイロス社に協力すると発表。テネシー州政府やオークリッジ市、東部テネシー経済審議会なども、同計画への支持を表明している。ケイロス社のP.ヘイスティングス副社長は、「過去50年以上の間に、米国で水以外の冷却材を使用する原子炉の建設が認められたのは初めて」と指摘。「ヘルメス」の完成後は運転認可の取得が別途必要になることから、「申請前の協議で築いた信頼関係に基づきNRCとは今後の審査でも協力していきたい」と述べた。 (参照資料:NRC、ケイロス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
13 Dec 2023
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アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電プログラムを推進する首長国原子力会社(ENEC社)は12月11日、小型モジュール炉(SMR)やマイクロ原子炉など、先進的な原子炉技術を開発している米英の企業3社と協力覚書を結んだことを明らかにした。ENEC社はまた、英国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)と、大型炉やSMRの建設等でさらに協力していくための覚書を締結。米エネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所とは、原子力でCO2排出量の実質ゼロ化を目指すためのロードマップを共同開発する方針を明らかにしている。これらはすべて、COP28に併催された「第1回ネットゼロ原子力(NZN)サミット」で締結された。ENEC社はすでに今月上旬、UAE内でのSMRやマイクロ原子炉導入に向けて、米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社、テラパワー社、およびウェスチングハウス社と相次いで協力覚書を締結した。今回はこれに続いて、米国のX-エナジー社とウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC社)、および英国のモルテックスフレックス(MoltexFLEX)社との協力覚書に調印した。ENEC社はCOP28の開幕直前、先進的な原子炉技術で連邦の脱炭素化を加速する「アドバンス・プログラム(ADVANCE Program)」を公表しており、これらの一連の覚書締結はすべて同プログラムに基づいている。X-エナジー社は第4世代の原子炉設計であるペブルベッド式高温ガス炉(HTGR)「Xe-100」を開発中で、1基あたりの熱出力は最大20万kW、電気出力は8万kW。需要に応じて出力を変動させることが可能という。ENEC社とX-エナジー社はUAE市場における同炉の実行可能性を評価するほか、英国など欧州諸国での建設に向けて協力の可能性を模索。さらには、中東や北アフリカ地域、インド亜大陸における建設も視野に入れている。 ENEC社はまたUSNC社との協力覚書を通じて、同社製の第4世代の小型HTGRである「モジュール式マイクロ原子炉(MMR)」と、同炉を複数基備えたエネルギー供給システムをUAE内で建設する可能性を探る。USNC社によると、MMRとそのたエネルギー供給システムでは1万kW~4.5万kWまでの様々なレベルの熱出力が設定可能で、コスト面の効率性が高いクリーンで安全な熱と電力を場所を選ばずにユーザーに提供できる。両社は同システムでUAEのエネルギー多消費産業の脱炭素化を図り、クリーン水素の製造等に活用するほか、「Xe-100」と同様に中東その他の国々で同システムの建設に向けたサプライチェーンや枠組みの構築を目指す。英国のモルテックスフレックス社は同じ英国モルテックス・エナジー社の子会社で、2022年から電気出力2.4万kW、熱出力6万kWの「フレックス(FLEX)溶融塩炉」を開発している。ENEC社は、同社との覚書に基づいて共同作業グループを設置し、UAE内で同炉を商業利用する可能性を検証。同炉が生産する低コストで低炭素な電力と熱を水素製造や海水の脱塩も含めた幅広い産業に活用し、低炭素なエネルギー生産社会への移行を促していくとしている。ENEC社はこのほか、英DESNZと原子力分野でさらなる協力関係を構築するための了解覚書を締結した。エネルギー供給保障とCO2排出量の実質ゼロ化という2つの優先事項を同時並行的に進められるよう、大型炉建設のほかに英国で開発されたSMRなど先進的原子炉技術の設計認証やパイロット建設、および商業炉の建設などで協力を進めていく。ENEC社とDESNZがこれまでの大型炉建設で培った経験を分かち合うとともに、今後建設する原子炉やサイトの選定、建設プロジェクトの資金調達についても協力、効率的な実行に向けて両国が経験した良好事例なども共有するとしている。(参照資料:USNC社、モルテックスフレックス社、ENEC社の発表資料①、②、③、④、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Dec 2023
1755
ポーランドで米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の建設を計画しているオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社は12月7日、国内6地点における合計24基の「BWRX-300」建設計画に、気候環境省が原則決定(decision-in-principle=DIP)を発給したと発表した。DIPは原子力発電所建設計画に対する最初の基本的な行政判断で、DIP発給によりこれらのプロジェクトは国家のエネルギー政策に則し、国益に適うと正式に認められたことになる。今回の発表はOSGE社のR.カスプローCEOが、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された「第1回ネットゼロ原子力(NZN)サミット」の場で発表した。OSGE社は今年の4月中旬、数十の候補地点の中からSMRの建設サイトとして最も有力な7地点を選定。今回はこのうち、首都ワルシャワを除いた6地点─北東部のオストロウェンカ(Ostrołęka)とブウォツワベク(Włocławek)、南部のスタビ・モノフスキエ(Stawy Monowskie)とドンブローヴァ・グルニチャ(Dąbrowa Górnicza)、ノバ・フタ(Nowa Huta)それぞれの近郊地点、タルノブジェク(Tarnobrzeg)の特別経済区─で「BWRX-300」の建設が認められた。同社はこれらのいずれかで2030年にも初号機の完成を目指しており、カスプローCEOは今回、「世界的に見てもポーランドはCO2の排出量が多いため、複数の『BWRX-300』で国内産業や暖房部門にエネルギーを安定供給しながらCO2排出量を実質ゼロ化し、ポーランド経済の脱炭素化を促していきたい」と述べた。OSGE社は、ポーランド最大の化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社と同国最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社が50%ずつ出資して、2021年12月に設立した合弁事業体。同社は4月下旬、6地点の建設計画についてDIPの発給を気候環境省に申請した。同じ時期に、米ニュースケール・パワー社製SMRの建設計画でDIPを申請していた鉱業大手のKGHM銅採掘会社に対しては、気候環境省が今年7月にDIPを発給した。また、同じく7月に気候環境省は、国営エネルギー・グループ(PGE社)の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社が北部ポモージェ県内で計画している同国初の大型炉(ウェスチングハウス社製AP1000)建設についてDIPを発給。11月には、同省はPGE社傘下のPGE PAK原子力エネルギー(PGE PAK Energia Jądrowa)社が同国中央部ポントヌフのコニン地区で計画している韓国製大型炉「APR1400」の建設プロジェクトに対しても、DIPを発給している。なお、OSGE社は11月9日、欧州諸国の石炭火力発電所をSMRに転換しクリーン・エネルギーへの移行を直接支援するという米国務省(DOS)の新しいイニシアチブ「プロジェクト・フェニックス」で、同社が支援対象に加えられたことを明らかにした。「プロジェクト・フェニックス」では同社のほかに、スロバキア政府が34%出資するスロバキア電力(SE社)とルーマニア国営原子力発電会社(SNN社)にも、SMR建設計画の実行可能性調査や技術支援等で資金が提供される予定である。(参照資料:OSGE社の発表資料(ポーランド語)①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
11 Dec 2023
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