バングラデシュ初の原子力発電所として、ロシアの原子力総合企業ロスアトム社が2017年11月から同国で建設中のルプール発電所(出力120万kWのロシア型PWR:VVER-1200×2基)で、1号機用の初装荷燃料が到着したことを記念する式典が10月5日に開催された。ロスアトム社のA.リハチョフ総裁は、「ロシアとバングラデシュの協力関係は本日、新たなステージに移行する」と表明。「燃料が到着したことでルプール発電所は原子力施設として認定され、バングラデシュは正式に原子力の平和利用技術を保有する国の一員になった」と強調している。この燃料供給は、2019年8月にロスアトム社傘下の原子燃料製造企業TVEL社とバングラデシュ原子力委員会(BAEC)が結んだ契約に基づいており、ロシア側はその際、1、2号機の運転期間全般にわたって燃料供給することを約束。これら2基には第3世代+(プラス)のVVER-1200である「AES-2006」が採用されているため、60年という運転期間に加えて20年間の期間延長が可能である。1号機用の初装荷燃料は、TVEL社傘下のノボシビルスク化学精鉱プラント(NCCP)が製造したもので、その製造工程とバングラデシュへの輸送では、バングラデシュ原子力規制庁(BAERA)が監督した。1号機は2024年にも起動する予定である。電力不足に悩むバングラデシュで、原子力発電所の建設プロジェクトが立ち上がったのはパキスタンから独立する以前の1960年代。独立戦争や資金調達の失敗等により、何度か浮上した建設計画はことごとく頓挫している。ロシアは2009年にバングラデシュに原子力発電所の建設を提案しており、翌2010年に両国政府は原子力の平和利用に関する2国間協力協定を、2011年にはバングラデシュ国内の原子力発電所建設に関する協力協定を締結した。総工費については2基で約127億ドルという情報があり、バングラデシュ内閣は2016年6月、このうちの113億8,000万ドルをロシア政府から信用取引の形で受け取るための政府間協定案を承認したと伝えられている。ルプール原子力発電所の建設サイトは、バングラデシュの首都ダッカの北西約160 kmに位置するパブナ県。1号機に続いて、2号機も2018年7月に本格着工しており、両機がともに営業運転を開始すれば同国の電力不足解消と経済成長に寄与する見通しである。この日の記念式典には、ロシアのV.プーチン大統領とバングラデシュのS.ハシナ首相、および国際原子力機関(IAEA)のR.グロッシー事務局長がオンラインで参加。このほか、ロスアトム社のA.リハチョフ総裁やバングラデシュのY.オスマン科学技術大臣、世界原子力協会(WNA)のS.ビルバオ・イ・レオン事務局長らが現地で初装荷燃料の到着を祝福した。プーチン大統領は祝辞のなかで、「ロシアのバングラデシュへの協力は原子力発電所の建設に留まらず、運転期間全般にわたる燃料供給や設備のメンテナンス、放射性廃棄物の扱いなどで支援を提供する」と説明。高度な技術を身に付けた専門的人材の育成についても、80名以上のバングラデシュ学生がロシアの大学で専門課程を修了するなど訓練をすでに実施中であり、その人数は今後も増えていくと強調している。(参照資料:ロスアトム社、ロシア大統領府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Oct 2023
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フィンランドのヘルシンキ市が保有するエネルギー企業のヘレン(Helen)社は10月3日、同社の供給地域に小型モジュール炉(SMR)で無炭素な熱を供給するため、熱供給用SMRの商業化を目的に設立されたスタートアップ企業のステディ・エナジー(Steady Energy)社と基本合意書を交わした。フィンランドで発電や熱エネルギーの生産を迅速かつ低コストで脱炭素化するにはSMRが最も有望との認識に基づくもので、両社は原子力で地域熱供給の脱炭素化を図るとともに熱エネルギー価格の変動を安定化、フィンランド全体のエネルギー供給を支えていく。地域熱供給における化石燃料の利用停止は最も重要な目標であり、ヘレン社はステディ社から熱出力5万kWの熱供給用SMR「LDR-50」を最大10基調達し、2030年までにヘレン社の事業が排出するCO2を実質ゼロ化していく。同社の地域熱供給ネットワークは全長1,400kmに及び、北欧諸国の中で最長だが、このネットワーク全体の脱炭素化により国家レベルの地球温暖化防止策になるという。一方のステディ社は、フィンランド国営の「VTT技術研究センター」から今年スピンアウトした直後の企業で、この6月にSMRを活用した地域熱暖房プラントの建設に向けて、約200万ユーロ(約3億1,300万円)の研究開発資金を調達した。VTTが2020年から開発中の「LDR-50」を複数基備えた熱暖房プラントを2030年までに完成させ、地域熱供給業など様々なエネルギー集約型産業の脱炭素化を目指している。今回結ばれた基本合意書で、両社は原子力による熱エネルギーの生産に向けて、投資前協定を今後6か月以内に締結できるよう計画を立てる。フィンランド国内で熱供給用のSMRを建設するには法的措置が必要になるため、この投資前協定を2024年から2027まで有効なものとし、この間に原子力法の改正を推進し、立地許可や設計審査を申請。建設するSMRプラントの契約価格も固めたいとしている。ヘレン社のO.シルッカCEOは、「ステディ社との合意に基づいて、原子力による熱エネルギーの生産をフィンランドで開始し、同様の熱エネルギー生産のための基盤を築く」と表明。この目標に向けて、ステディ社のみならずその他のエネルギー企業や政府機関、政策決定者などとも協力していくと述べた。ヘレン社はこのほか、2022年11月にSMRなどの新たな原子力発電所建設に向けて、国内の原子力事業者であるフォータム社と協力の可能性を共同で調査すると発表している。ステディ社のT.ニューマンCEOは、「フィンランドのSMR技術を2020年代中に実行する重要な道筋が付いた」と表明。化石燃料を燃焼せずに地域熱供給を行えれば、フィンランドのCO2排出量を8%削減することも可能だとした。また、「当社の目標は新たなクリーン・エネルギーの輸出にも取り組み、世界中の地域熱供給市場に参入することだ」と指摘、原子力による熱供給にはCO2排出量の削減で大きな可能性があると強調した。(参照資料:ヘレン社、ステディ・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
05 Oct 2023
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米国のサザン・ニュークリア社は9月28日、ジョージア州で運転するA.W.ボーグル原子力発電所2号機(PWR、121.5万kW)に、U235の濃縮度が最大で6%という次世代型事故耐性燃料(ATF)の先行試験用燃料集合体(LTA)を装荷する計画について、米原子力規制委員会(NRC)から8月1日付で承認を得ていたことを明らかにした。米国の商業炉で、濃縮度5%を超える燃料の装荷が認められたのは今回が初めて。同ATFは、ウェスチングハウス(WH)社が燃焼度の高い燃料で発生エネルギーの量を倍加し、商業炉の現行の運転期間18か月を24か月に延長することを目指した「高エネルギー燃料開発構想」の下で開発した。サザン・ニュークリア社に対するNRCの現行認可では、燃料内のU235の濃縮度は5%までとなっていたが、今回認可の修正が許されたことから、WH社は今後、米エネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)との協力により、先行試験燃料棒(LTR)が各1本含まれるLTAを4体製造。サザン・ニュークリア社とともに、2025年初頭にもボーグル2号機に装荷する計画だ。WH社はDOEが2012年に開始した「ATF開発プログラム」に参加しており、同社製ATFの「EnCore」を開発中。同社とサザン・ニュークリア社は2022年1月にボーグル2号機への4体のLTA装荷で合意しており、同炉ではWH社の「EnCoreプログラム」と「高エネルギー燃料開発構想」で開発された重要技術が使用される。具体的には、商業炉を低コストで長期的に運転する際の安全性や経済性、効率性を向上させる方策として、酸化クロムや酸化アルミを少量塗布した「ADOPT燃料ペレット」、腐食耐性と変形耐性に優れた「AXIOM合金製被覆管」、先進的な燃料集合体設計の「PRIME」などが含まれる。一方、米国内で7基の商業炉を運転するサザン・ニュークリア社は、ATF技術を積極的に取り入れる事業者のリーダー的存在として知られており、DOEや燃料供給業者、その他の電気事業者らとともに米原子力エネルギー協会(NEI)の「ATF作業グループ」にも参加。2018年に初めて、グローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社製ATFのLTAをジョージア州のE.I.ハッチ原子力発電所1号機(BWR、91.1万kW)に装荷した。その後、同炉から取り出されたLTAの試料はオークリッジ国立研究所に送られ、2020年にさらなる試験が行われている。同社はまた、2019年にボーグル2号機にフラマトム社製ATF「GAIA」の先行使用・燃料集合体(LFA)を装荷した実績がある。NRCの今回の承認について、サザン・ニュークリア社のP.セナ社長は、「米国ではクリーン・エネルギーの約半分を原子力が供給しているため、当社はATFのように画期的な技術を原子力発電所に取り入れ、その性能や送電網の信頼性向上に努める方針だ」と表明。NRCに対しては、「米国商業炉へのさらなる支援として、今回のLTA装荷計画を迅速かつ徹底的に審査してくれたことを高く評価したい」と述べた。(参照資料:サザン・ニュークリア社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Oct 2023
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©UK Government英国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は10月2日、革新的な小型モジュール炉(SMR)の開発を促し英国のエネルギー供給保証を強化するため、7月に開始した支援対象の選定コンペで6社のSMR開発企業を最終候補として発表した。同コンペの実施は、原子力発電所新設の牽引役として7月に発足したばかりの政府機関「大英原子力(Great British Nuclear=GBN)」が担当。今回このコンペで次の段階に進むことが決定したのは、フランス電力(EDF)、英国のロールス・ロイスSMR社、米国籍のニュースケール・パワー社、GE日立・ニュクリアエナジー・インターナショナル社、ホルテック・ブリテン社、およびウェスチングハウス(WH)社英国法人の計6社である。これら企業は年内にも、支援契約の締結に向けて英政府招聘の入札に参加する。GBNは6社のSMRの中から、建設に向けた最終投資判断(FID)が2029年頃に下され、2030年代半ばまでに運転開始する可能性が高いものを2024年の春に選定、夏までに支援契約を締結する予定。このコンペは、DESNZが今年3月に公表したクリーン・エネルギーによる長期的なエネルギー供給保証と自給の強化に向けた新しい投資政策「Powering Up Britain」に基づいて行われている。GBNはかつてない規模とスピードで原子力の復活と拡大を進めるもので、コンペを通じてSMRの開発プロジェクトに数十億ポンド規模の官民投資を促す方針である。DESNZによると、SMRは設備が小さいため、工場での製造や迅速で低価格な建設が可能である。その一方で、政府は建設中のヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所や、HPC発電所と同型設計を採用するサイズウェルC発電所など、大型炉を備えた発電所の建設計画も引き続き支援。GBNは2050年までに総発電量の4分の1を原子力で供給するという政府の目標達成を下支えし、国内の雇用を維持しながら、欧州で最も低価格な電力卸売価格を実現する考えだ。DESNZのC.クティーニョ大臣は、「SMRなら原子力発電設備の迅速な拡大が可能であり、安価でクリーン、確実なエネルギー供給を実現できる」と指摘。さらに、高給雇用の創出と英国経済の発展も促すとしており、「このコンペで英国は世界中の様々なSMRを呼び込み、原子力技術革新を牽引する世界的リーダーとしてSMRの開発レースを主導する」と述べた。最終候補企業の一つに選定されたロールス・ロイスSMR社のC.コーラトンCEOは、「コンペの次の段階に速やかに移行して政府との契約締結に漕ぎつけるよう取り組み、2050年までに最大2,400万kWの原子力発電設備を確保するという政府の目標達成を支援したい」と表明した。同社はすでに2021年11月、PWRタイプで電気出力47万kWのSMRを英規制当局の包括的設計認証審査(GDA)にかけるため、申請書を提出。翌年3月から英原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)が審査を開始したことから、「その他の企業のSMRと比べて約2年先んじている」とも指摘。同社製SMRについては、すでにオランダやポーランドの事業者が関心を示しているが、コーラトンCEOは「世界中に多くのSMRを輸出していくためにも、国内契約の確保が極めて重要になる」としている。WH社は今年5月、中国や米国で稼働実績があるAP1000の電気出力を30万kWに縮小した1ループ式のSMR「AP300」を発表した。WH社は同炉ならAP1000のエンジニアリングやサプライチェーン、機器等を活用できるほか、許認可手続きも合理的に進められるため、2030年代初頭の初号機運転開始に自信を示した。同社のP.フラグマン社長兼CEOは「この機会に『AP300』が英国にとって最良の選択肢となることを実証したい」と述べた。「AP300」の建設は、ウクライナやスロバキア、フィンランドなどが検討中である。(参照資料:英政府、ロールス・ロイスSMR社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
03 Oct 2023
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カナダなど北米大陸の東部に居住する先住民の「北岸ミクマク部族協議会(NSMTC)」は9月25日、小型モジュール炉(SMR)を開発中の英モルテックス・エナジー社と米ARCクリーン・テクノロジー社の双方のカナダ法人に出資することで、両社それぞれと合意したと発表した。カナダでは東部ニューブランズウィック(NB)州の州営電力であるNBパワー社が、州内のポイントルプロー原子力発電所内で、両社の商業規模のSMR実証炉を2030年頃までに建設することを計画している。NSMTCとこれに所属する7地区のミクマク部族コミュニティは、今回の合意に基づきモルテックス社に総額200万カナダドル(約2億2,000万円)、ARC社には総額100万加ドル(約1億1,000万円)相当の出資を行い、両社がNB州やその他の国で建設するSMRプロジェクトを支援する。モルテックス社とARC社はすでにNB州内に事務所を設置しており、州内でのSMR建設に向けて先住民を含む州民コミュニティとの協議を進めてきた。NSMTCに対しては資本出資するよう提案したのに加えて、州内の先住民に雇用や職業訓練等の機会を提供できるよう追加の手段を講じる方針である。NSMTCも、世界中の経済・社会活動に先住民が参加できるよう働きかけているサー・ディーン(Saa Dene)社の支援を受けながら、「地球とその資源に対する畏敬」という先住民の教えが2社のSMR概念に合致すると判断したことを明らかにしている。モルテックス社のSMRは電気出力30万kWの「燃料ピン型熔融塩炉(Stable Salt Reactor-Wasteburner: SSR-W)」で、既存炉の使用済燃料を燃料として使用することが可能だという。同炉は2021年5月、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が提供する「許認可申請前設計審査(ベンダー設計審査:VDR)」の第1段階を完了した。一方、ARC社が開発中の「ARC-100」(電気出力10万~15万kW)はナトリウム冷却・プール型の高速中性子炉。同炉では現在、ベンダー設計審査の第2段階が行われており、NBパワー社は今年6月、ポイントルプロー発電所内での「ARC-100」建設に向けて、ARC社のカナダ法人と協同で「サイト準備許可(LTPS)」の申請書をCNSCに提出した。NSMTCのG.ギニッシュCEOは、「両社はともにSMRでクリーン・エネルギーの開発と廃棄物の削減に取り組んでおり、これは来るべき世代に継承すべき遺産という我々の価値観にも合致する」と強調している。(参照資料:NSMTC、モルテックス社、ARCクリーン・テクノロジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Oct 2023
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ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)傘下の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社は9月27日、同国初の大型原子力発電所建設に向けて、米ウェスチングハウス(WH)社およびベクテル社の企業連合とエンジニアリング・サービス契約を締結した。同国北部ポモージェ県のルビアトボ-コパリノ地区で、WH社製のAP1000(PWR、125万kW)を3基建設するため、WH社らは18か月の同契約期間中、建設サイトに基づいたプラント設計を確定する。契約条項には、原子炉系やタービン系などの主要機器に加えて、補助設備や管理棟、安全関連インフラなどの設計/エンジニアリングが含まれており、両者はこの契約に基づく作業を直ちに開始。初号機の運転開始は2033年を予定している。ワルシャワでの同契約の調印式には、ポーランドのM. モラビエツキ首相をはじめ、政府の戦略的エネルギー・インフラ大使を兼任するA.ルカシェフスカ–チェジャコフスカ首相府担当相、米国のM.ブレジンスキー・ポーランド駐在大使、米エネルギー省(DOE)のA.ライト国際問題担当次官補が同席。PEJ社のM.ベルゲル社長とWH社のP.フラグマン社長兼CEO、およびベクテル社のJ.ハワニッツ原子力担当社長が契約文書に署名した。今回の契約の主な目的は、建設プロジェクトの実施に際して順守する基準や、設計/エンジニアリング上の要件を特定すること。同発電所のスペックを満たす初期設計の技術仕様書作成など、両者は同契約の条項に沿って様々な許認可の取得で協力。同契約は、建設工事の進展に応じて次の段階の契約を結ぶ際のベースとなる。同契約はまた、建設プロジェクトがポーランドの規制当局である国家原子力機関(PAA)や技術監督事務所(UDT)の規制に則して実施されるよう、PEJ社を支援するもの。ポーランドと欧州連合の厳しい安全基準に則して建設許可申請を行う際、同契約で実施した作業の結果が申請書の作成基盤になるほか、原子力法の要件に準じて安全解析や放射線防護策を実施する際は、事前評価を行う条項が同契約に盛り込まれている。同契約はさらに、WH社らとの共同活動にポーランド企業を交えていくと明記している。これにより、ポーランド企業の力量や需要を考慮した上で、出来るだけ多くの企業が建設プロジェクトに参加できるよう、原子力サプライチェーンの構築を目指す。このほか、同契約を通じてポーランド企業の従業員が米国を訪問し、最新原子炉の設計/エンジニアリングや運転ノウハウを習得することも規定されている。ルカシェフスカ–チェジャコフスカ首相府担当相は、ポーランド環境保護総局(GDOS)が今月19日に同プロジェクトに対して「環境決定」を発給した後、21日付でWH社とベクテル社がポーランドでの発電所設計・建設に向けて、正式に企業連合を組んだ事実に言及。「これらに続く今回の契約締結は、国内初の原子力発電所建設をスケジュール通り着実に進め、国内産業を活用しながら予算内で完成させるというポーランドの決意に沿うもの」と指摘した。同相はまた、WH社とベクテル社が米国のボーグル3、4号機増設計画でもAP1000の完成に向けて協力中であることから、「両社がボーグル・プロジェクトで蓄積した経験と教訓、先進的原子炉のエンジニアリング・ノウハウは、ポーランドのエネルギー・ミックスの根本的な再構築に生かされていく」と表明。ポーランドにおける原子力エンジニアの育成や、ポーランド経済の発展にも大きな弾みとなると強調した。WH社のP.フラグマン社長は、「ポーランドのみならず、今回の契約締結は当社とベクテル社にとっても転機となるが、安全かつ信頼性の高い原子力でエネルギー供給を保証し、脱炭素化を図ろうと考えている国々にとっても、モデルケースになる」と指摘している。参照資料:PEJ社、WH社、ベクテル社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
29 Sep 2023
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国際原子力機関(IAEA)の第67回通常総会が、9月25日から29日までの日程でオーストリアのウィーン本部で始まった。開会の冒頭ではIAEAのR.M.グロッシー事務局長が演説し、「世界中の世論が原子力に対して好意的に傾きつつあるが、原子力発電の利用国はそれでもなお、オープンかつ積極的にステークホルダーらと関わっていかねばならない」と表明。安価で持続可能なエネルギーによる未来を実現するには大胆な決断が必要であり、原子力も含め実行可能なあらゆる低炭素技術をすべて活用する必要があると述べた。同事務局長はまた、IAEAの進める原子力の活用イニシアチブが地球温暖化の影響緩和にとどまらず、がん治療や人獣共通感染症への対応、食品の安全性確保、プラスチック汚染などの分野で順調に進展していると表明。原子力発電所の安全性は以前と比べて向上しており、他のほとんどのエネルギー源よりも安全だと指摘した。その上で、原子力が地球温暖化の影響緩和に果たす役割と、小型モジュール炉(SMR)等の新しい原子力技術にいかに多くの国が関心を寄せているかを強調。加盟各国でSMRの活用が可能になるよう、IAEAがさらに支援を提供していく方針を示した。同事務局長はさらに、8月から福島第一原子力発電所のALPS処理水の海洋放出が始まり、IAEAが独自に客観的かつ透明性のある方法でモニタリングと試料の採取、状況評価等を行っていると説明。この先何10年にもわたり、IAEAはこれらを継続していく覚悟であるとした。IAEAの現在の最優先事項であるウクライナ問題に関しても、ウクライナにある5つすべての原子力発電所サイトにIAEAスタッフが駐在しており、過酷事故等の発生を防ぐべく監視を続けるとの決意を表明している。これに続く各国代表からの一般討論演説では、日本から参加した高市早苗内閣府特命担当大臣が登壇。核不拡散体制の維持・強化や原子力の平和利用、ALPS処理水の海洋放出をめぐる日本の取組等を説明した。ウクライナ紛争については、同国の原子力施設が置かれている状況に日本が重大な懸念を抱いており、ロシアの軍事活動を最も強い言葉で非難すると述べた。また、原子力の平和利用に関しては、気候変動等の地球規模の課題への対応とSDGsの達成に貢献するものとして益々重要になっていると評価。その上で、食糧安全保障に係るIAEAの新しいイニシアチブ「アトムスフォーフード(Atoms4Food)」に対し賛意を示した。東京電力福島第一原子力発電所の廃炉にともない、8月にALPS処理水の海洋放出が開始されたことについては、処理水の安全性に関してIAEAの2年にわたるレビュー結果が今年7月に示されたことに言及。処理水の海洋放出に関する日本の取組は関連する国際安全基準に合致していること、人および環境に対し無視できるほどの放射線影響となることが結論として示された点を強調した。高市大臣はまた、日本は安全性に万全を期した上で処理水の放出を開始しており、そのモニタリング結果をIAEAが透明性高く迅速に確認・公表していると説明。放出開始から一か月が経過して、計画通りの放出が安全に行われていることを確認しており、日本は国内外に対して科学的かつ透明性の高い説明を続け、人や環境に悪影響を及ぼすことが無いよう、IAEAの継続的な関与の下で「最後の一滴」の海洋放出が終わるまで安全性を確保し続けるとの決意を表明した。 同大臣はさらに、日本の演説の前に中国から科学的根拠に基づかない発言があったと強く非難。この発言に対し、「IAEAに加盟しながら、事実に基づかない発言や突出した輸入規制を取っているのは中国のみだ」と反論しており、「日本としては引き続き、科学的根拠に基づく行動や正確な情報発信を中国に求めていく」と訴えた。 ♢ ♢例年通りIAEA総会との併催で展示会も行われている。日本のブース展示では、「脱炭素と持続可能性のための原子力とグリーントランスフォーメーション」をテーマに、GX実現にむけた原子力政策、サプライチェーンの維持強化、原子力技術基盤インフラ整備、高温ガス炉や高速炉、次世代革新炉、ALPS処理水海洋放出などをパネルで紹介している。展示会初日には、高市大臣と酒井庸行経済産業副大臣がブースのオープニングセレモニーに来訪。高市大臣は挨拶の中で、ブースにおいて次世代革新炉開発を紹介することは時宜を得ているとするとともに、ALPS処理水海洋放出は計画通り安全に行われており、関連するすべてのデータと科学的根拠に基づき透明性のある形で説明し続けることが重要だと述べた。4年ぶりに行われた今回のオープニングセレモニーでは、日本原子力産業協会の新井理事長による乾杯が行われ、福島県浜通り地方の日本酒が来訪者に振舞われるなどした。(参照資料:IAEAの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
27 Sep 2023
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米国の国務省(DOS)は9月13日、「小型モジュール炉(SMR)技術の責任ある利用のための基盤インフラ(FIRST)」プログラムに基づくガーナへのさらなる支援策として、原子力分野の人材育成資金175万ドルを提供すると発表した。原子力発電を持たないガーナは現在、SMRの導入を検討している。ガーナの民生用原子力プログラムでは、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国における「SMR訓練の地域ハブ」や「中核的研究拠点」となることを目指している。原子力の導入希望国で原子力安全・セキュリティや核不拡散など原子炉の導入に必要な能力の開発を支援するため、DOSが2021年4月に日本や英国などと提携して開始したFIRSTプログラムにも、ガーナは2022年2月から参加。同年10月には、国際原子力機関(IAEA)が米国で開催した原子力閣僚会議で、日・米・ガーナの3か国はガーナのSMR導入に向けた戦略的パートナーシップを結んでいる。ガーナが建設する初のSMRとしては、米ニュースケール・パワー社製の「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を複数搭載した発電設備「VOYGR」が候補炉の一つとして検討されている。そのため、3か国協力における最初のステップとして、日本政府は日米の原子力産業界がガーナの原子力関係政府機関と協力して実施しているSMR建設の実行可能性調査を支援。この調査にはニュースケール社、および同社のSMR事業に出資している日揮ホールディングス社とIHI、および米国のレグナム・テクノロジー・グループが参加している。今回の人材育成支援金により、DOSはガーナにSMRの運転シミュレーターを提供するほか、ガーナが「SMR訓練の地域ハブ」となるための学術交流や大学間の連携協力を促進。最も厳しい国際基準に準じて、原子力安全・セキュリティ等の高度な能力を備えた技術者や運転員の育成を支援する方針だ。DOS国際安全保障・不拡散局のA.ガンザー筆頭次官補代理は、「この連携協力を通じて、ガーナは国内のみならずその他のアフリカ諸国においても、脱炭素化やエネルギー供給保障の達成に資する有能な人材の育成が可能になる」と指摘。「これらの国々がクリーンで安全、安価なエネルギー源を確保できるよう、今後も支援していく」と語った。DOSによると、今年はすでにガーナとケニアの政府高官代表団がFIRSTプログラムの下で訪米し、米国との連携協力を深めるために国立研究所や運転中の原子力発電所を視察した。両国はともにFIRSTプログラムに参加しており、原子力の導入に向けて引き続き、技術協力や能力開発、人材育成等で支援の提供を受けることになる。(参照資料:在ガーナ米国大使館、米国務省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
26 Sep 2023
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ポーランド環境保護総局(GDOS)は9月19日、ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)傘下の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社が計画する同国初の大型原子力発電所(合計出力375万kW)建設に対し、「環境条件に関する意思決定(環境決定)」を発給した。これは、原子力発電所の建設に向けた重要な行政認可手続きの一つ。同決定により、同国北部ポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ-コパリノ地区における原子力発電所の建設・運転にあたり、環境保護上の要件などが確定したことになる。今後建設サイトへの投資決定や建設許可申請を行う際は、「環境決定」に明記された条件等と整合性を取る必要があり、建設許可申請時には改めて環境影響評価の実施が義務付けられることになる。気候環境省のA.ギブルジェ-ツェトヴェルティンスキ次官は、「環境防護の責任機関であるGDOSの専門家が評価した結果、CO2を大量に排出する我が国の経済活動に、ポーランド初の原子力発電所が環境面のプラス効果をもたらすことが明らかになった」と強調している。PEJ社はポーランドの改訂版「原子力開発計画(PPEJ)」に基づいて、2040年頃までに国内複数のサイトで最大6基の大型炉(合計出力600万~900万kW)の建設を計画中。2021年12月に最初の3基、合計375万kWの立地点としてルビアトボ-コパリノ地区を選定した。これら3基に採用する炉型として、ポーランド政府は2022年11月にウェスチングハウス(WH)社製PWRのAP1000を閣議決定。今年7月には、気候環境省がこれら3基の建設計画に「原則決定(DIP)」を発給した。これに続いてPEJ社は翌8月、AP1000建設サイトとして同地区の正式な承認を得るため、ポモージェ県知事に「立地決定」を申請している。 「環境決定」を取得するにあたり、PEJ社は2022年3月末、GDOSにポモージェ県内の環境影響評価(EIA)報告書を提出した。原子力発電所の建設・運転にともなう環境上の利点を確認するため、GDOSが分析した文書は1万9,000頁を越えたという。また、PEJ社はその際、ルビアトボ-コパリノ地区のほかに建設候補地として名前が挙がっていたジャルノビエツ地区(クロコバとグニエビノの両自治体が管轄)についても、原子力発電所の建設と運転が及ぼす影響等を分析していた。さらに、ポーランド政府はこの件に関する国民の意見を聴取するため、今年7月から8月にかけて国内協議を開催したほか、近隣の14か国を交えた越境協議を2022年9月から今年7月まで実施。「越境環境影響評価条約(エスポー条約)」に基づく諸手続きの一環として、ポーランド政府はこれらすべての国と議定書を締結している。政府の戦略的エネルギー・インフラ大使を兼任するA.ルカシェフスカ–チェジャコフスカ首相府担当相は、「原子力でエネルギー・ミックスを再構築するという我が国の計画は欧州で最も意欲的なものであり、様々な課題への取組と急速な変化をともなうが、だからこそ大規模で複雑なこの投資事業をスケジュール通りに進めることが重要になる」と指摘した。ポーランドではこのほか、政府のPPEJを補完する大型炉プロジェクトとして、国営エネルギー・グループ(PGE)とエネルギー企業のZE PAK社が韓国水力・原子力会社(KHNP)と協力し、中央部のポントヌフで韓国製大型PWRの建設を計画中である。(参照資料:ポーランド政府(ポーランド語)、PEJ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Sep 2023
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カナダのアルバータ州は9月19日、州内の石油・天然ガス総合企業であるセノバス・エナジー(Cenovus Energy)社が実施する「オイルサンド回収事業への小型モジュール炉(SMR)の適用可能性調査」に、州の「技術革新と温室効果ガスの排出削減基金」の中から700万カナダドル(約7億7,000万円)を助成すると発表した。アルバータ州は天然資源が豊富なカナダの中でも特に、石油や天然ガスなどの資源に恵まれているが、セノバス社が同州北部で手掛けるオイルサンド(からの超重質油)回収事業では非常に多くの温室効果ガスが排出される。このため州政府は、総額2,670万加ドル(約29億3,600万円)を要するというセノバス社の複数年の調査に資金協力し、州内のオイルサンド事業が排出するCO2の削減にSMRを安全かつ経済的に適用可能か、また、産業界がSMR建設を決定した場合の規制承認手続など必要な情報を探る。同州ではすでに、これに向けた規制枠組の構築準備が進められている。オイルサンドからビチューメンのような超重質油を回収するには、油層内に水蒸気を圧入し、その熱で超重質油の粘性を下げて重力で回収するという方法が複数存在する。このうち回収率の高い「スチーム補助重力排油法(SAGD)」については、カナダのエンジニアリング・開発コンサルティング企業であるハッチ(Hatch)社が今年8月、アルバータ州の公的研究イノベーション機関である「アルバータ・イノベーツ」やセノバス社のために、SMRをSAGDに活用した場合の実行可能性調査(FS)報告書を提出した。州政府によれば、この調査結果は、産業界から排出されるCO2の長期的な削減方法としてSMRが有効か見極めるための最初の一歩。州政府としては、セノバス社の今回の詳細調査に協力し、今後の事業化可能性に関する議論を本格化させたい考えだ。アルバータ州政府のR.シュルツ環境・保護地域担当相は、「数年前まで原子力を産業用に拡大利用する発想は後回しにされてきたが、最早そうではない」と断言。「SMRには当州のオイルサンド事業に熱と電力を供給するポテンシャルがあり、同時にCO2の排出量を削減することで、当州の将来的なエネルギー供給の選択肢になり得る」と述べた。また、州政府の助成金は、「アルバータ排出量削減機構(ERA)」を通じてセノバス社に提供される予定で、ERAのJ.リーマーCEOはSMRについて、「オイルサンド事業のみならず、異なる様々な産業用にも無炭素なエネルギーを供給できる」と指摘した。セノバス社のR.デルフラリ上級副社長は、「当社の事業から排出されるCO2を2050年までに実質ゼロにするため、複数の有望技術を検討模索中だがSMRはその中でも有望だ」と表明している。カナダでは、オンタリオ州とニューブランズウィック州、サスカチュワン州、およびアルバータ州の4州が2022年3月、SMRを開発・建設していくための共同戦略計画を策定。アルバータ州はその後、SMR開発を進めているカナダのテレストリアル・エナジー社や米国のX-エナジー社、ARCクリーン・テクノロジー社、韓国原子力研究院(KAERI)などと、それぞれのSMRの州内建設に向けて了解覚書を締結している。(参照資料:アルバータ州の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
22 Sep 2023
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©UK Government英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は9月18日、EDFエナジー社がイングランドのサフォーク州で計画しているサイズウェルC(SZC)原子力発電所(欧州加圧水型炉:EPR×2基、各167万kW)建設プロジェクトに対し、民間部門からの投資募集プロセスを開始すると発表した。同プロジェクトの実施に必要な資金を調達するため、その第一段階として、潜在的投資家である企業や個人に予め資格審査を受けてもらう方針。EDFエナジー社の親会社であるフランス電力(EDF)とSZCプロジェクトを50%ずつ保有する英政府は、EDFエナジー社傘下のプロジェクト企業であるサイズウェルC社(※今年6月にNNB GenCo社から社名変更)への投資に関心を持つ有望な企業らに、関心表明の登録と選定要件の詳細を一定程度盛り込んだ「事前の資格審査用質問票(PQQ)」の入手を要請しており、10月9日までPQQへの回答提出を受け付ける。回答書の評価結果次第で、第2段階としてサイズウェルC社株を入手する入札への参加資格が与えられる。ただし、その参加交渉に入る際も、候補企業らは大規模原子力発電所も含めた大型インフラ建設プロジェクトの実施経験など、いくつかの重要基準を満たしていることを実証するよう求められる。英政府は2022年11月、SZCプロジェクトに最大6億7,900万ポンド(約1,240億円)の直接投資を行うと発表。同プロジェクトの半分を保有した上で、今後は同プロジェクトへの出資を希望する第三者を募る方針を明らかにしていた。当時原子力政策を担当していたビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)によると、同プロジェクトは「規制資産ベース(RAB)モデル」((個別の投資プロジェクトに対し、総括原価方式による料金設定を通じて建設工事の初期段階から、需要家(消費者)から費用(投資)を回収するスキーム。これにより投資家のリスクを軽減でき、資本コスト、ひいては総費用を抑制することが可能になる。))を通じて資金調達を行う最初の原子力発電所建設計画。今年2月にBEISから原子力政策を引き継いだDESNZは今回、「RABモデルを通じた民間投資の呼び込みは、電力消費者や納税者にとって価値の高い結果を生む可能性がある」と評価しており、サイズウェルC社のみならず民間投資家側にも、プロジェクトを建設段階に進める自信と意欲をもたらすと強調している。DESNZはSZCプロジェクトを、英国が目指すエネルギー供給保障とCO2排出量の実質ゼロ化の両立において不可欠と考えている。従来の大型炉や新しい技術である小型モジュール炉(SMR)も含め、英国の原子力発電を活性化させることで、低コスト・低炭素な安定した電力供給システムを長期的に確保し、2050年までに英国の総発電量の最大25%を原子力で供給していく考えだ。このため、DESNZは直接投資として投入した約7億ポンドに加えて、建設サイトの準備作業を加速するため、今年7月と8月に追加で合計5億1,100万ポンド(約934億円)を拠出すると発表している。9月にDESNZのトップに就任したC.クティーニョ・エネルギー安全保障・ネットゼロ相は、「SZCプロジェクトで今後の世代にクリーンで価格も手ごろな電力を提供できるだけでなく、数千人規模の雇用が創出され、我が国のエネルギー供給保障を強化する一助になる」と指摘。DESNZのA.ボウイ原子力・ネットワーク担当相も、「政府による最初の直接投資に続いて、有力な民間投資家が国家インフラの重要部分の実現に向けて、サイズウェルC社に新たな知見や経験をもたらしてくれることを期待する」と述べた。(参照資料:英政府の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Sep 2023
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韓国の現代E&C(現代建設)社は9月12日、ポーランドでの新規原子力発電所建設プロジェクト推進に向け、ポーランドの建設産業雇用者協会(PZPB)や国立原子力研究センター(NCBJ)などと協力覚書を締結した。ポーランドの様々な関係機関や企業と協力ネットワークを構築することで、ポーランドのみならず東欧全体で原子力などエネルギー・インフラの分野に進出していく方針。PZPBと結んだ「新規原子力事業協力のための了解覚書」では、ポーランドの建設関係政策や業界動向といった現地情報を入手し、技術面での交流を深める考えだ。同覚書は、ポーランド南部のクリニツァで開催されていた経済フォーラムへの、韓国官民合同使節団参加にともない、首都ワルシャワで締結された。調印は現代E&C社のユン・ヨンジュン社長兼CEOとPZPBのD.カジミエラク副会長が行った。NCBJとの「原子力発電所の研究開発と研究炉協力に関する了解覚書」も同じ日に結ばれており、両者は原子力発電所と研究炉分野の協力に加えて、原子力技術とその安全性、人材交流など全般的な協力体制の構築で合意している。これらを通じて現代E&C社はポーランドの原子力市場に参入する一方、同国の大手建設企業であるERBUD社およびUNIBEP社とも、新しい再エネ、新空港や都心インフラの整備、スマートシティ分野で協力するための業務契約を締結した。関係報道によるとUNIBEP社は、原子力プロジェクトについても現代E&C社と協力する意向を表明。現代E&C社はこれらの企業との連携協力に際し、東欧への進出の拠点となる現地事務所の設立もワルシャワで進めている。現代E&C社は、韓国で数多くの原子力発電所建設に携わった実績があり、アラブ首長国連邦(UAE)への大型原子炉の初輸出事業にも参加。これらに基づき、小型モジュール炉(SMR)開発や原子力発電所の廃止措置、使用済燃料の中間貯蔵施設建設など、原子力関係の全事業分野に対応・管理する能力の獲得を目指しており、世界的な原子力発電設備メーカーと戦略的な協力体制を固めている。放射性廃棄物の貯蔵設備やSMRを開発している米ホルテック・インターナショナル社とは特に、2021年11月に事業協力契約を締結しており、同社の主要EPC(設計・調達・建設)契約企業としてホルテック社製SMR「SMR-160」の商業化に向けた標準モデルの完成に協力。今年4月には、韓国の政府系輸出信用機関である韓国貿易保険公社(K-SURE)と韓国輸出入銀行(KEXIM)がそれぞれ、現代E&C社とホルテック社の企業チームと個別に協力協定を締結している。今回のポーランド訪問を通じて現代E&C社は、ポーランドに経済的発展のポテンシャルを確認。両国間の相互交流を促進してポーランドのエネルギー・インフラ拡充に寄与するとともに、民間レベルの連携協力を強化して実質的な成果を上げたい考えだ。ポーランドは政府の原子力プログラムとして、国内の複数のサイトで2043年までに100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万~900万kW建設することを計画。2022年11月には最初の3基、小計375万kW分の採用炉型として、米ウェスチングハウス(WH)社製PWRのAP1000を選定した。同国ではこのほか、政府のこのプログラムを補完する計画として、PGEグループとエネルギー企業のZE PAK社が韓国水力・原子力会社(KHNP)などとの協力により、中央部ポントヌフで韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」の建設に向けた活動を進めている。(参照資料:現代E&C社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Sep 2023
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米国のホルテック・インターナショナル社は9月12日、ミシガン州で2022年に永久閉鎖となったパリセード原子力発電所(PWR、85.7万kW)を再稼働させるため、子会社を通じて、同原子力発電所が発電する電力を州内のウルバリン電力協同組合(Wolverine Power Cooperative)に長期にわたり販売する契約を締結した。ホルテック社は今年2月、同発電所の再稼働に必要な融資依頼を米エネルギー省(DOE)に申請している。米原子力規制委員会(NRC)のスタッフとは、すでに複数回の公開協議を通じて、同発電所の運転再認可に向けた規制手続について議論を重ねており、「パリセード発電所は閉鎖後に再稼働を果たす米国初の原子力発電所になる」と強調。再稼働を必ず実現させて、ミシガン州の各地に無炭素エネルギーによる未来をもたらしたいと述べた。また、長期停止中の原子力発電所を数多く抱える日本や脱原子力を完了したドイツでも、同様の流れになることを期待するとした。米国では、独立系統運用者が運営する容量市場取引きの台頭など、電力市場の自由化が進展するのにともない、電力事業者間の従来通りの電力取引をベースとしていたパリセード発電所の経済性が悪化。2007年に同発電所をコンシューマーズ・エナジー社から購入したエンタジー社は2022年5月、当時の電力売買契約が満了するのに合わせて、合計50年以上安全に稼働していた同発電所を閉鎖。その翌月には廃止措置を実施するため、同発電所を運転認可とともにホルテック社に売却していた。ホルテック社は、原子力発電所の廃止措置のほか、放射性廃棄物の処分設備や小型モジュール炉(SMR)の開発など、総合的なエネルギー・ソリューションを手掛ける企業。同社によると、近年CO2の排出に起因する環境の悪化から各国が炭素負荷の抑制に取り組んでおり、原子力のようにクリーンなエネルギー源が重視される時代となった。パリセード発電所の購入後、ホルテック社は、DOEが既存の原子力発電所の早期閉鎖を防止するため実施中のプログラムに同発電所を対象に申請書を提出。これを受けてミシガン州のG.ホイットマー知事は2022年9月、この方針を支持すると表明していた。ホルテック社が今回結んだ電力売買契約では、パリセード発電所が発電する電力の3分の2をウルバリン電力協同組合が買い取り、同組合に所属する他の電力協同組合を通じてミシガン州主要地域の家庭や企業、公立学校等に配電する。残りの3分の1は、ウルバリン協同組合が協力中のフージャー・エナジー(Hoosier Energy)社が買い取る予定。なお、今回の契約では、ホルテック社がパリセード原子力発電所敷地内で、出力30万kWのSMRを最大2基建設するという契約拡大条項も含まれている。これらを追加建設することになれば、ミシガン州では年間約700万トンのCO2排出量が削減される見通し。ホルテック社の説明では、パリセード発電所の再稼働に対する地元コミュニティや州政府、連邦政府レベルの強力な支持は、CO2の排出削減における原子力の多大な貢献に基づいている。ホルテック社で原子力発電と廃止措置を担当するK.トライス社長は、「パリセード発電所を再稼働させることで、ミシガン州は今後のエネルギー需要を満たしつつ地球温暖化の影響を緩和できるほか、高収入の雇用を数百名分確保し地方自治体の税収を拡大、州経済の成長にも貢献できる」と指摘している。(参照資料:ホルテック社、ウルバリン電力協同組合の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Sep 2023
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ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は9月12日、ウェスチングハウス(WH)社製の小型モジュール炉(SMR)「AP300」の導入に向けて、同社と了解覚書を締結した。今後10年以内に国内初号機の設置を目指すとともに、将来的には同炉設備の国内製造も視野に入れた内容。差し当たり、具体的な建設契約の締結に向けた作業や許認可手続き、国内サプライチェーン関係の協力を進めるため、共同作業グループを設置する。「AP300」は100万kW級PWRであるAP1000の出力を30万kWに縮小した1ループ式のコンパクト設計。AP1000と同様にモジュール工法が可能なほか、受動的安全系や計装制御(I&C)系などは同一の機器を採用している。ウクライナは2050年までのエネルギー戦略として、無炭素なエネルギーへの移行とCO2排出量の実質ゼロ化を目指している。このため原子力発電の増強を進めており、引き続き新しい大型炉を建設していく一方、ウクライナにとって有望な選択肢であるSMRの設置も進める考えだ。WH社との協力については、エネルゴアトム社が2021年11月、フメルニツキ原子力発電所で国内初のWH社製AP1000を建設するとし、同社と契約を締結。翌2022年6月には、国内で稼働する全15基のロシア型PWR(VVER)用にWH社製の原子燃料を調達し、AP1000の建設基数も9基に増やすための追加契約を結んだ。15基中13基の100万kW級VVER(VVER-1000)については、すでにWH社製原子燃料の装荷が進んでいるが、エネルゴアトム社は今月10日、残り2基の44万kW級VVER(VVER-440)に初めてWH社製の原子燃料を装荷している。WH社のP.フラグマン社長兼CEOは、「原子燃料の調達からプラントのメンテナンス、発電に至るまで、長期的に信頼されるパートナーとしてウクライナにクリーンで確実なエネルギーをもたらせるよう貢献したい」とコメントしている。今年5月に発表した「AP300」については、同社は稼働実績のある第3世代+(プラス)のAP1000に基づく炉型である点を強調しており、実証済みの技術を採用しているため許認可手続きが円滑に進むことや、AP1000用の成熟したサプライチェーンを活用できると指摘した。同社の計画では、2027年までに米原子力規制委員会(NRC)から「AP300」の設計認証(DC)を取得し、2030年までに米国で初号機の建設工事を開始、2030年代初頭にも運転を開始するとしている。(参照資料:エネルゴアトム社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Sep 2023
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アラブ首長国連邦(UAE)で初の原子力発電所を建設・運転中の首長国原子力会社(ENEC社)と、ポーランド初の小型モジュール炉(SMR)建設を計画しているオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社は9月11日、将来的に複数のSMRをポーランドのみならずその他の欧州地域で協力して建設していくため、了解覚書を締結した。建設が比較的容易でクリーンな電力を供給できるSMRへの投資を通じて、欧州のエネルギー部門や産業界の脱炭素化をともに支援。エネルギー・セキュリティと地球温暖化という二つの課題の解決に取り組む考えだ。ENEC社は2012年7月、北部のアブダビ首長国で韓国製の140万kW級PWR「APR1400」×4基で構成されるバラカ原子力発電所の建設工事を開始。1~3号機はそれぞれ2021年4月と2022年3月、および今年2月から営業運転中で、残る4号機の作業も佳境に入っている。もう一方のOSGE社は、カナダ・オンタリオ州のOPG社がカナダ初のSMRとして、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」の建設準備を進めているのに倣い、同じく「BWRX-300」をポーランドで建設することを計画。今年4月下旬には、候補地として絞り込んだ7地点のうち、6地点での建設計画について「原則決定(DIP)」を政府に申請している。OSGE社の「BWRX-300」初号機は2030年頃の完成を目標としているが、それ以降同社は、英国や中・東欧地域などその他の欧州大陸でも「BWRX-300」の建設を目指す方針。そのため今回、GEH社のパートナーとしてポーランド国内で同炉の独占使用権を持つOSGE社と、UAEで大型原子力発電所の建設を「スケジュール通り予算内」で進め、運転実績も有するENEC社が協力することになった。加えてENEC社は、「BWRX-300」の建設にファイナンス面での支援も視野に入れるとしている。協力覚書への調印は、世界原子力協会(WNA)が英国ロンドンで「世界原子力シンポジウム」を開催したのに合わせ、ENEC社のM.アル・ハマディCEOとOSGE社のR.カスプローCEOが実施した。同シンポでENEC社は、WNAと共同で「ネットゼロ原子力(Net Zero Nuclear=NZN)」イニシアチブを立ち上げたと発表。NZNでは、エネルギー・セキュリティの確保とCO2排出量の実質ゼロ化の両立に原子力が果たす多大な貢献を世界中に周知し、原子力開発の世界規模での拡大を目指している。UAEはまた、今年11月に開催される国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)のホスト国を務めることになっている。ENEC社は、原子力発電所の建設プロジェクトを成功に導くには、適切なパートナーの選定と高度な専門知識やスキルを持つスタッフの活用がカギだと強調。同社がバラカ発電所の建設と運転を通じて蓄積した様々な経験は、OSGE社の構想を支援する重要な要素になる。同社のM.アル・ハマディCEOは、「クリーン・エネルギー社会への移行とCO2排出量実質ゼロ化の推進で当社が培った知見と経験を共有し、世界中で原子力発電所の建設を加速していくという当社の計画は、覚書の締結により新たなステージに入った」と表明。「SMRの可能性については当社も綿密に検証中であるが、バラカ発電所の建設・運転経験はこのように新しい分野の研究開発や技術革新を大きく進展させるだけでなく、当社が様々な次世代原子炉を新たに建設していく機会になる」と強調した。OSGE社のカスプローCEOも、「ENEC社は、ポーランドその他で当社の複数の『BWRX-300』建設計画を支えてくれる心強いパートナーだ」と指摘。「SMR開発が原子力の将来に重要な意味を持つことをENEC社は理解しており、この協力によって我々は世界的規模のSMR建設に向けて大きな一歩を踏み出した」としている。(参照資料:OSGE社(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
13 Sep 2023
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ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は9月10日、国内で稼働する全15基のロシア型PWR(VVER)のうち、44万kW級のVVER(VVER-440)であるリウネ原子力発電所1、2号機に、初めて米ウェスチングハウス(WH)社製の燃料を装荷した。ウクライナ・エネルギー省のハルシチェンコ大臣は、「ロシアによるVVER燃料市場の独占が終了する歴史的な日になった」と指摘。ウクライナは燃料調達先を多様化するため、2020年9月にV.ゼレンスキー大統領立ち会いの下で両機用燃料集合体の供給契約をロシアによる軍事侵攻以前に結んでいた。ウクライナでは、2000年代に複数回にわたりロシア産天然ガスの供給が停止されたほか、2014年にはクリミア半島が強制併合されたことなどから、ロシア離れが加速。100万kW級VVER(VVER-1000)である13基の原子炉については、米国とウクライナの政府間協力合意に基づいてWH社が2001年に専用燃料の設計を開始した。2005年に最初のWH社製「先行試験用燃料集合体(LTA)」がウクライナの南ウクライナ3号機(VVER-1000、100万kW)に装荷されて以降、WH社および同社からライセンスを受けた国内での燃料製造により、ロシア製燃料からの切り替えが進んでいる。今回、リウネ1、2号機へのWH社製燃料の装荷に際し、エネルゴアトム社は記念式典を開催。ウクライナのH.ハルシチェンコ・エネ相とエネルゴアトム社のP.コティン総裁のほか、WH社の燃料製造工場が立地するスウェーデンの駐ウクライナ特命全権大使やリウネ地区の軍事行政局長、リウネ原子力発電所長などがWH社幹部とともに出席した。エネルゴアトム社によると、ロシアの軍事侵攻が始まった際、同社はVVER-440用燃料の開発製造を加速するようWH社に要請。WH社側は、エネルゴアトム社からエンジニアリング関係のサポートを受けながら、通常6~7年かかる燃料開発を1年半で完了させた。エネルゴアトム社のP.コティン総裁は、「今後はロシアからの燃料サービスへの依存から脱却し、米国製燃料に切り替える」と断言、将来的にはWH社の技術を使って国内製造することを計画中だと述べた。WH社のP.フラグマン社長兼CEOは、「ウクライナのみならず欧州でVVERを運転するその他の国々も、ロシアの燃料市場支配から完全に開放される」と強調している。(参照資料:エネルゴアトム社、ウクライナ政府(ウクライナ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Sep 2023
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世界原子力協会(WNA)とアラブ首長国連邦(UAE)の首長国原子力会社(ENEC)は9月7日、「ネットゼロ原子力(Net Zero Nuclear=NZN)」イニシアチブを共同で立ち上げた。NZNの下、エネルギー・セキュリティの確保と、CO2排出量の実質ゼロ化の両立に、原子力が果たす多大な貢献を世界中に周知し、原子力開発の世界規模での拡大を目指す。同時に、UAEがホスト国となる今年11月末から開催される国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)において、こうした原子力の価値が言及されることを狙う。同国の原子力発電の導入スピードはめざましく、発展が期待されるMENA地域(中東および北アフリカ)における、原子力導入のモデルケースとして世界中から注目を集めている。NZNは、国際原子力機関(IAEA)の同様のイニシアチブである「Atoms4NetZero」の協賛を得ており、英国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)もNZNへの参加を表明。日本からは、日本原子力産業協会(JAIF)が参加表明し、NZNの発足式には植竹明人常務理事が出席した。最新の分析では、世界的規模でクリーンなエネルギーによる供給を保障しつつ、2050年までに世界中のCO2排出量を実質ゼロ化するためには、原子力設備容量を少なくとも現在の3倍に拡大しなければならないと指摘されている。すなわち原子力発電プラントを年平均4,000万kWのペースで建設する必要があり、これは過去10年間の開発規模の6倍以上ときわめて難しい数字である。WNAのS.ビルバオ・イ・レオン事務局長は、「我々はエネルギー危機の真っただ中におり、CO2排出量の実質ゼロ化で原子力の果たす役割を過小評価している余裕はない」と強調。同時に、実際に原子力設備容量を拡大するには迅速で効率的な資金調達や政治的意志が必要だとした上で、「クリーン・エネルギーへの移行において、一刻も早く現実的かつ実証済みのアプローチを取るべきだ」との見解を示した。原産協会の植竹常務理事は「これまで国連気候変動枠組条約締約国会議の場では原子力の役割りが十分に議論されてこなかった。しかし、今や世界の多くの国は原子力なしで地球温暖化を防ぐことが難しいことに気付いている。今回こそイデオロギーの違いを乗り越えて原子力を正当に評価する議論をしてほしい」と、同イニシアチブ参加の意義を強調し、「COP28まで時間的余裕はないが、原産協会としても可能な限り広く賛同を得るべく努力していきたい」と強い意欲を示した。今後NZNでは、各国の政府機関や産業界、NGOなどに呼び掛けて、イニシアチブへの参加を促していく。そして世界中からステークホルダーが集まるCOP28の場で、世界へ向けてNZNとしての強いメッセージを発信していきたい考えだ。
12 Sep 2023
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国際原子力機関(IAEA)は、M.キュリー夫人の偉業に基づき、若い女性が原子力分野でキャリアを追及できるよう支援するために設置した「マリー・スクウォドフスカ・キュリー・フェローシップ・プログラム(MSCFP)」の今年の参加者を募集している。応募締め切りは9月30日。MSCFPは女性物理学者のパイオニアであるとともにノーベル賞を2度受賞したキュリー夫人にちなんで名付けられ、若い女性に原子力分野でキャリアを積む意欲を喚起させ、原子力分野における女性の数を拡大することを目的とし、現在のIAEA事務局長、ラファエル・グロッシー氏によって設置された。MSCFPは原子力関連課目の修士号取得を目指して勉強中の女子学生に修士課程への最高2万ユーロ(約313万円)の奨学金とIAEAが推進する実習研修制度(internship)に最大12か月参加する機会を提供している。さらに、学生には様々な教育的かつ専門的ネットワーク形成のためのイベントに参加する機会も提供される。2020年の創設以来、110ヶ国360人の学生が選抜されているが、さらに多くの女子学生に機会を付与できるよう、今年度は最大200名の奨学生を選ぶことを目標としている。IAEAは、女子学生を対象としたMSCFPの他にも、若手・中堅女性専門家向けのキャリア開発を目的としたリーゼ・マイトナー・プログラムを用意しており、これらを通じて原子力分野のジェンダーバランス改善に取り組んでいる。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
11 Sep 2023
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ハンガリーでパクシュ原子力発電所Ⅱ期工事(出力120万kWのロシア型PWR:VVER-1200×2基)の建設プロジェクトを進めているパクシュⅡ開発会社は9月5日、サイトでの準備作業として5号機用ピットの地盤を深さ5mまで掘削したのに続き、6号機用の地盤掘削も開始すると発表した。同プロジェクトは今後、建屋の建設や機器の製造など建設工事の主要段階に移行。プロジェクトを担当している外務貿易省のP.シーヤールト大臣は、「2030年までに建設プロジェクトを完了するという現行目標の達成は可能だ」と強調している。ハンガリーでは、旧ソ連時代に建設されたパクシュ原子力発電所の4基(各VVER-440、出力約50万kW)で総発電量の約5割を供給している。これらがすでに公式運転期間の30年を超過したことから、同国は運転期間を延長しながら容量の大きいⅡ期工事の5、6号機に徐々にリプレースしていく方針。シーヤールト大臣は、同発電所の拡張はハンガリーの長期的なエネルギー供給を保証する重要要素であり、総発電量の約70%も供給できるとしている。両機の建設工事については、2014年にハンガリーとロシアが政府間協定(IGA)を結んだほか、EPC(設計・調達・建設)契約を含む主要な3契約を締結した。総工費の約8割に相当する最大100億ユーロ(約1兆5,800億円)がロシア政府の低金利融資で賄われることになったが、両国政府は今年4月、IGAとEPC契約の資金調達関係項目を一部修正したと欧州委員会(EC)に伝えている。修正内容については明らかにされていないが、建設工事を請け負ったロシア国営の総合原子力企業ロスアトム社によると、ECがこの修正を承認したのに続いて両国も8月18日付で改訂契約に調印。これを受けて、パクシュⅡ開発会社は建設工事が主要段階に移行したと公式に宣言している。ロスアトム社のエンジニアリング部門であるアトムストロイエクスポルト(ASE)社も、8月21日に建設サイトで本格工事を開始。ハンガリーの請負企業が6号機用ピットの掘削準備を始めたほか、別のハンガリー企業が地下水遮断壁の作業を継続しつつ、地盤の整備作業を開始したことを明らかにした。6号機用ピットの地盤は、安定性確保の観点から部分的に地下23 mの深さまで掘削を予定しており、総掘削面積はサッカー・コート4面分に相当する。ロスアトム社の予想では、取り除く土砂の総量が約100万m3に達するため、30~40台のトラックを動員しているが、この作業は今秋の終わり頃までかかる見通しである。一方、地下水遮断壁の建設は今年7月、建設サイトの準備作業開始とともに始められており、パクシュⅡ開発会社は全長2.5 kmとなる遮断壁のうち、これまでに0.7 km 分が完成したと表明。このほかロシアでは、原子炉圧力容器の製造も始まっている。(参照資料:パクシュⅡ開発会社、ハンガリー政府、ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
07 Sep 2023
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米空軍省(DAF)の「エネルギーと施設および環境問題担当・空軍次官局(SAF/IE)」は8月31日、アラスカ州のアイルソン空軍基地に設置を計画しているマイクロ原子炉のベンダーとして、オクロ社(Oklo Inc.)を暫定的に選定した。DAFが進める「マイクロ原子炉パイロット・プログラム」に則して、国防総省(DOD)の国防兵站局(DLA)がDAFとDODを代表して、オクロ社に「発注意向書(NOITA)」を発出。オクロ社はアイルソン基地でマイクロ原子炉の設計・建設と所有・運転を担当し、今後は同炉の建設・運転認可を原子力規制委員会(NRC)に申請する。また、同炉が生産する熱や電力を、30年にわたってDLAに固定価格で販売する長期契約の締結を目指す。 オクロ社が開発したマイクロ原子炉は、燃料としてHALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))を使用する液体金属冷却高速炉「オーロラ(Aurora)」で、電気出力は0.15万kW~5万kW。同社によると、燃料交換なしで少なくとも20年間熱電供給することが可能である。DAFのパイロット・プログラムは、2019年に成立した米国国防権限法(NDAA2019)がDODに要求していた事項への対応計画として進められている。DODを構成する3省の一つであるDAFは、要求事項に沿って原子炉の設置点を選定するのにあたり、2020年9月に「関係情報の提供依頼書(RFI)」を産業界等に向けて発出した。2021年にアイルソン基地を設置点として選定した後は、2022年9月にDLAと共同で設置原子炉の「提案依頼書(RFP)」を発出しており、今後は2023年中にベンダーを確定しNRCを交えた許認可関係の活動を開始する。その後、2025年に着工して2027年末までに試運転を開始するなど、NDAA2019の要求通り10年以内にマイクロ原子炉を完成させる方針である。SAF/IEはマイクロ原子炉について、「固有の安全性を有する無炭素エネルギー源であり、炉心の過熱を防ぐために、変化する条件や需要を自動的に調整する能力を備えている」と指摘。「送電網から切り離された場所でも発電が可能なだけでなく、CO2の削減にも貢献するなど、重要な国防インフラへの電力供給源としては有望だ」と評価している。DODでエネルギーと施設および環境の問題を担当するB.オーウェンズ国防次官補は、DAFによる今回の発表について、「米国の国益に資する国産技術の開発促進にDODがどのように投資し続けていくか示したもの」と指摘。「国産の先進的原子炉をさらに多くの地点で建設し、軍事施設に対する電力供給と内部設備の信頼性が一層確保されるよう、プロジェクトの進展を絶えず注視し、国防関係の他の省とも協力していきたい」と述べた。オクロ社のJ.ドワイトCEOも、「国家の安全保障を強化しつつCO2の排出量を削減し、軍事施設の強靭性を増強する最前線に立てることを誇りに思う」と表明している。(参照資料:SAF/IE、オクロ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Sep 2023
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米国のGE社は8月29日、傘下のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社が開発した小型モジュール炉(SMR)を使って、大気からCO2を直接回収する(DAC)システムの地域ハブを国内に設置するプログラムで、米エネルギー省(DOE)から約255万ドルの補助金を獲得したと発表した。GE社では、電力・エネルギー事業を統合したGEベルノバ社((2024年初頭に上場企業として独立・分社化が予定されている))が原子力発電と再生可能エネルギーを活用したDACシステムの開発をテキサス州のヒューストン近郊で進めており、同地で予備的な実行可能性調査の実施を計画中。同調査にかかる約332万ドルのうち約255万ドルをDOEが2年間で拠出し、年間100万トンのCO2を大気中から回収して地下に貯蔵、あるいは「持続可能な航空燃料(SAF)」の原料等に活用できるか調査する。GE社は今後、同調査の実施範囲や条件を決定するため、DOEと詳細を詰める予定である。DOEは2021年11月に成立した「超党派のインフラ投資法」に基づくプログラムの一つとして、商業規模のDACシステム開発とその地域ハブ開発を推進している。2050年までに年間4億トン~18億トンのCO2を大気中から回収するため、8月11日にはテキサス州とルイジアナ州で計画されている商業規模のDACシステム開発計画に、「DAC地域ハブ開発プログラム」の予算から最大12億ドルを拠出すると決定した。今回はDAC地域ハブ開発の実行可能性と、同ハブの構造設計に関するプロジェクトを19件選定。この中にGEベルノバ社の予備的実行可能性調査プロジェクトが含まれていた。一方、GE社は今年3月、ニューヨーク州ニスカユナにあるGEベルノバ社の研究施設で、DACシステムのプロトタイプ実証が成功したと発表。今回、GEベルノバ社がDOEの補助金交付対象に選定されたことでDACシステムの開発が加速され、2020年代の終わりまでに商業規模のシステムを完成するという目標を達成できると考えている。この調査でGEベルノバ社は具体的に、DACシステムをGEH社製SMRの「BWRX-300」や再生可能エネルギー源と統合可能か調査するが、同社としては、「BWRX-300」の生産する熱や電力を活用することで、低コストで大気中からCO2回収が可能だと強調している。GEベルノバ社はこのほか、同じくDOEの「DAC地域ハブ開発プログラム」で補助金交付先に選定されたイリノイ大学主導の2つのプロジェクトにも、DACシステムの供給者として協力する。同プログラムではまた、イリノイ州のノースウエスタン大学が主導する「原子力を活用した中西部地域のDACハブ開発プロジェクト」も、補助金の交付先の一つに選定されている。同地域は米国でも2番目にCO2排出量が多く、原子力を中心に据えたプロジェクトにDOEは総費用393万ドルのうち300万ドルを拠出している。(参照資料:GE社、DOE①、②の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
05 Sep 2023
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スロバキアの国営バックエンド企業であるヤビス(JAVIS)社は8月25日、国内でフランス製の大型炉や小型モジュール炉(SMR)の建設が決定した場合に、フランス電力(EDF)との協力の基盤となる「枠組み協力協定(FCA)」を同社と締結した。仏フラマトム社が中心となって開発した欧州加圧水型炉(EPR)や、EDFが原子力・代替エネルギー庁(CEA)等と協力して開発中のSMR「NUWARD」など、フランス製原子炉の建設可能性について技術面や商業面の協議を詳細に行った結果、ヤビス社は原子力分野におけるEDFとの協力の中でも、新設プロジェクト関係に一層力を入れると決定。FCAへの調印は、スロバキアのP.ドフン経済相がフランスを公式訪問したのに合わせてパリで行われた。このFCAは独占的な協力合意ではなく、ヤビス社は今年7月、米ウェスチングハウス(WH)社製PWRであるAP1000(出力100万kW級)や、その出力縮小版となるAP300(出力30万kW)を国内で建設する可能性を探るため、WH社と了解覚書を締結している。ヤビス社はスロバキアの経済省が100%出資しており、同国の放射性廃棄物を管理するだけでなく、原子力発電所の廃止措置や増設と運転にも責任を負っている。2009年に同社はチェコ電力(CEZ社)との共同出資により、国内で稼働している原子力発電所の一つで原子炉の新設と運転を担当するJESS社を創設。同社に51%出資する親会社として、ヤビス社はあらゆる炉型を評価し、政府に候補炉型を提示することになっている。今回のFCAを締結した理由としてヤビス社は、新たな原子炉技術に関する情報交換をさらに緊密に行い、それらがスロバキアの国内送電網に適しているか評価するためだと説明。政府が新たに建設する原子炉の炉型や立地点を決定した際、同社は建設に向けたプロセスの管理責任を負うとしている。大型炉の候補炉型であるEPRは、出力165万kWのPWRだが、EDFがスロバキアに提案しているのは120万kW版の「EPR1200」。EDFによると、その安全性や運転効率は通常版と同等であり、国際原子力機関(IAEA)と西欧原子力規制者協会(WENRA)、および仏原子力安全規制当局(ASN)の安全要件や運転要件をクリアしている。また、福島第一原子力発電所事故後のストレス・テストをパスした原子炉であるほか、これまでに建設されたEPRやフランス国内で稼働中のPWRの教訓やフィードバックが反映されている。また「NUWARD」は、同じくEDFが手掛けるPWRをベースとしたSMR。出力17万kWの小型PWR×2基で構成される「NUWARD」プラントの合計出力は34万kWとなる。EDFの説明では、「EPR1200」と同じくIAEAとWENRAが要求する高い安全基準を満たしており、建設工事の容易さや運転面の競争力、環境上の持続可能性等に一層配慮した炉型である。EDFで新設原子力プロジェクトを担当するV.ラマニ上級副社長は、「スロバキアの原子力産業界など欧州のサプライチェーンを全面的に活用して、欧州の技術に基づいた原子力発電所の建設を欧州で進めることは当社目標の一つ。これを遂行していく上で、今回の合意は極めて重要なステップになった」と強調している。(参照資料:JAVYS社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Sep 2023
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英国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は8月29日、EDFエナジー社がサフォーク州で計画しているサイズウェルC(SZC)原子力発電所建設プロジェクトの準備作業を一層加速するため、昨年秋に政府が同計画用に確保した8億7,000万ポンド(約1,632億円)の中から、3億4,100万ポンド(約628億円)を拠出すると発表した。今年7月に、同じくサイトの準備活動や主要機器の調達、労働力の確保等に1億7,000万ポンド(約313億円)を拠出したのに続く措置。同サイトを「いつでも建設工事に取り掛かれる状態」にすることで、英国の原子力設備を迅速に拡大していき2050年までに総発電量の最大25%を原子力で供給。ロシアのプーチン大統領を世界のエネルギー市場から締め出す一助にするとしている。SZC計画では、サマセット州ですでに建設中のヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所(欧州加圧水型炉:EPR×2基、各172万kW)と同じく、EPRを2基(各167万kW)建設する。ただし、HPC計画では建設資金の調達方法として差金決済取引(CfD)を適用するのに対し、SZC計画では「規制資産ベース(RAB)モデル」((個別の投資プロジェクトに対し、総括原価方式による料金設定を通じて建設工事の初期段階から、需要家(消費者)から費用(投資)を回収するスキーム。これにより投資家のリスクを軽減でき、資本コスト、ひいては総費用を抑制することが可能になる。))を用いる予定。この方式で民間投資を呼び込み、EDFエナジー社には同計画への最終投資判断(FID)を促す方針だ。同計画ではまた、EDFエナジー社の子会社でプロジェクト企業のNNB GenCo(SZC)社(※今年6月に「サイズウェルC社」に社名変更)が2020年5月、国家的重要度の高いインフラ設備の建設・操業プロジェクトに取得が義務付けられている「開発合意書(DCO)」を計画審査庁(PI)に申請。ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)(当時)のK.クワルテング大臣は2022年7月、PIによる審査結果等に基づき、同計画へのDCO発給を決定している。 DESNZによると、今回の追加投資でサイトでは建設工事が始まる前に、従業員1,500名分のサイト内訓練施設の建設や発電プラントの詳細な設計エンジニアリング、地元コミュニティへの直接投資等への支援が行われる。このような方策を通じて、英国は2050年までに原子力関係の政府目標を達成し化石燃料の輸入量を削減、エネルギーの自給に向けてその供給を保証していく。今回の政府発表について、サイズウェルC社のJ.パイク取締役は、「本格的な建設工事の開始に向けて、当社の立ち位置は一層確かなものになった」と指摘。今後数か月以内に、複数の周辺コミュニティと関係業務を始められるとした上で、「地元住民の方々には、建設プロジェクトの恩恵を出来るだけ速やかに提供したいと考えている。主要な工事が始まるはるか以前から、この地域をより良くするための提案を幅広く示していきたい」と述べた。(参照資料:英政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Sep 2023
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エジプト初となるエルダバ原子力発電所(120万kWのロシア型PWR:VVER-1200×4基)の建設計画を、地中海沿岸地域のエルダバ市で実施中のエジプト原子力庁(NPPA)は8月30日、原子力・放射線規制機関(ENRRA)から4号機の建設認可を取得した。NPPAは今年の第4四半期にも同機の原子炉建屋部分に最初のコンクリートを打設する計画で、今後サイトで予備的な土木作業を進めていく。同サイトではすでに、2022年7月に1号機が着工しており、建設工事を請け負ったロシアの原子力総合企業ロスアトム社傘下のアトムストロイエクスポルト(ASE)社が2028年の営業運転開始に向けた作業を実施中である。また、2022年11月に2号機、今年5月には3号機の建設工事も始まった。ENRRAは4号機の建設認可発給に先立ち、NPPAの申請書を審査するためNPPAの専門家も交えて技術審査会合を複数回実施。4号機がエジプトの規制要件や規約すべてを満たし、高い安全性を備えたものになることを確認したという。また、7月30日と31日の両日には、建設サイトの準備状況を点検している。エジプトの国家プロジェクトであるエルダバ原子力発電所の建設については、エジプトとロシアの両政府が2015年11月に政府間協定(IGA)を締結しており、翌2016年5月にロシア政府は最大250億ドルの低金利融資(年3%)をエジプトに提供する大統領令を公布した。2017年12月になると、NPPAとロスアトム社は4基のVVER-1200をエルダバで建設するパッケージ契約の最終文書に調印。この契約に基づいてロシア側は発電所を建設するだけでなく、発電所の稼働期間である60年間に必要な原子燃料をすべて供給する。また、使用済燃料の貯蔵施設や貯蔵キャスクも提供し、運転開始後最初の10年間は発電所の運転・保守にも協力する。NPPAによると、エルダバ原子力発電所はクリーンで安価な電力をもたらすだけでなく、エジプトの経済発展や技術開発を大きく後押しすることになる。(参照資料:NPPAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Sep 2023
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