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米DOE HALEUサプライチェーン確立に前進
米エネルギー省(DOE)の原子力エネルギー(NE)局は10月17日、バイデン大統領の「米国への投資(Investing in America)」アジェンダの一環として、HALEU((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の国内サプライチェーン確立を支援するため、濃縮役務を提供する国内4社と契約を締結した。バイデン政権は、国内に強固で信頼性の高いHALEUサプライチェーンを確立することにより、先進炉の実証と展開を支援、高レベルの雇用を創出し、同分野における米国のリーダーシップを確立したい考えだ。DOEは、2035年までに100%のクリーンな電力、2050年までにネットゼロの達成という政府目標を達成するためには、HALEU燃料を使用する先進炉の活用が欠かせないと予測。2020年代末までに先進炉用のHALEU燃料が40トン以上必要となるという。DOEのJ. グランホルム長官は、「先進炉の稼働により原子力発電は前進を続け、今後何世代にもわたり米国最大の無炭素電源を確保することとなる。今回の契約締結は、クリーンで信頼性の高い電力需要の高まりに応え、国内にHALEUサプライチェーンの構築を目指す、現政権の最新の取組みの現れ」と強調。ホワイトハウスのA. ザイディ国家気候アドバイザーは、「現政権の民間原子力部門への数十億ドルの投資は、閉鎖した原子力発電所の再稼働や、新しい原子炉の稼働、燃料サプライチェーンの構築など、全米各地で原子力産業を躍進させ、大きな成果をもたらしている」と評価した。NE局は、現在開発中の小型で運転サイクルが長い多くの先進炉では、高効率化のためにHALEUが必要になると指摘。今回の契約により4社間でHALEU製造の「競争原理」を生み出し、DOEが最適な企業を選択できるようにするという。契約は最長10年間、基本報酬として各社に最低200万ドル(約3億円)を支払う。契約を締結した4社は、 ルイジアナ・エナジー・サービス(Louisiana Energy Services:Urenco傘下)、オラノ・フェデラル・サービス(Orano Federal Services)、ジェネラル・マター(General Matter:新興企業)、アメリカン・セントリフュージ・オペレーティング(American Centrifuge Operating:Centrus Energy傘下)。予算の確保状況にもよるが最大27億ドル(約4,028億円)の契約が可能だという。DOEは今年1月、濃縮サービスに関する提案依頼書(Request for Proposals:RFP)を発行していた。これは、2020年エネルギー法によりDOEが民間による国内研究、開発、実証、商業利用のためHALEUへのアクセスの確保を目的に、インフレ抑制法(IRA)から資金手当てを得て実施する「HALEU利用プログラム」の一部である。今回の契約を通じてDOEが取得するHALEUは燃料に加工され、DOEの先進的原子炉実証プログラム(ARDP)を通じて開発中の、テラパワー社のNatriumやXエナジー社のXe-100などに供給される。なお、10月8日には、国内6社とHALEU再転換事業のサプライチェーン支援に関する契約が締結されている。米国では現在、商業レベルのHALEUの濃縮および再転換を行っていない。実証レベルでは、セントラス社が2023年11月、オハイオ州パイクトンのポーツマス・サイトにある米国遠心分離濃縮プラント(ACP)で20kgのHALEUを製造し、DOEに初納入した。現在、同社は年間900kgのHALEU製造フェーズに移行している。
- 21 Oct 2024
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Amazon SMRプロジェクトを支援
米大手テック企業のAmazon社は10月16日、米X-エナジー社が開発する小型モジュー炉(SMR)の商業化に向けて、約5億ドル(約750億円)を出資すると発表した。主に、同社の気候変動対策に関する誓約のための基金(Climate Pledge Fund)から拠出する。今回の出資には、多国籍ヘッジファンドCitadel社、オルタナティブ投資会社Ares Management社、エネルギーに特化した未公開株式投資会社NGP社、ミシガン大学も参加する。同基金は2020年、Amazon社が20億ドル(約3,000億円)を投じて設立。2040年までに同社事業の温室効果ガス排出量を実質ゼロとするために、持続可能な技術やサービス開発を支援している。Amazon社は電力需要が拡大し続ける中、再生可能エネルギーへの投資を継続するとともに、新たな電源としてカーボンフリーで規模の拡大が柔軟な原子力発電に着目。とりわけ、設置面積が小さく、送電による逸失を最小限にするためにデータセンターなどのサービス施設の近傍に設置可能で、建設期間が短いSMRを活用する考えだ。両社は今回の出資により、2039年までに米国内で合計500万kWe以上のX-エナジー社製SMRの稼働を目指す。Amazon社は自社のデータセンター事業を支えるため、SMR建設プロジェクトへの直接投資と長期の電力購入契約(PPA)を通じて、増大する電力需要に対応する考えだ。さらに両社は、SMR導入と資金調達のモデルを確立することで、標準化させることを狙っている。X-エナジー社への具体的な支援策としてAmazon社は、SMR設計や機器製造、許認可取得活動、およびテネシー州オークリッジのTRISO燃料(3重被覆層・燃料粒子)製造施設の第一期の完成作業のほか、ワシントン州の電気事業者であるエナジー・ノースウェスト社のX-エナジー社製SMR×4基による合計32万kWeの建設プロジェクトに直接資金を投入。12基、合計96万kWeへの拡張も視野に入れる。Amazon社は、原子力発電への投資はその拠点となる地域社会に雇用などの経済的効果をもたらすと指摘している。X-エナジー社製SMRは「Xe-100」と呼ばれる電気出力8万kWの小型高温ガス炉で、TRISO燃料を使用。連結して32万~96万kWの発電容量への拡張が可能。米エネルギー省(DOE)が2020年、先進的原子炉実証プログラム(ARDP)で5~7年以内に実証(運転)を目指し、支援対象に選定した二つの設計のうちの一つである。X-エナジー社は、米・大手化学メーカーであるダウ・ケミカル社のテキサス州メキシコ湾沿いに位置するシードリフトの製造施設で、Xe-100を4基連結させた発電所の建設を計画。エナジー・ノースウェスト社とは2023年、同社のコロンビア原子力発電所(BWR、121.1万kW)の隣接地でXe-100を採用した発電所を建設する共同開発合意書を締結している。またAmazon社はドミニオン・エナジー社と、同社がバ―ジニア州で所有・運転するノースアナ原子力発電所(PWR、100万kW級×2基)の近傍に、少なくとも30万kWeのSMR設置を検討する契約を締結したことを明らかにした。ドミニオン社は今年7月、将来的なエネルギー需要を見据え、同発電所でのSMR導入の実現可能性を評価するため、SMR開発企業を対象に「提案依頼書(RFP)」を発行している。バージニア州には米マイクロソフト社、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)社をはじめ、世界の巨大データセンターのうち、約35%にあたる約150施設が立地している。ドミニオン社の予測によると、バージニア州の電力需要は毎年5%以上増加しており、今後15年間で倍増するという。生成AI(人工知能)の普及により、データセンターの電力消費量が急増する中、大手テック企業では、再生可能エネルギーへの投資とともに、信頼性の高い原子力の活用を進める動きが活発化している。米マイクロソフト社は今年9月、大手電力会社のコンステレーション・エナジー社と閉鎖済みのスリーマイル・アイランド(TMI)1号機(PWR、89万kWe)を再稼働させ、マイクロソフト社のデータセンターに電力を供給する、20年間の売電契約の締結を発表。また同機と同じくペンシルベニア州にあるサスケハナ原子力発電所(BWR、133.0万kW×2基)に隣接するデータセンターを今年3月、米Amazon傘下のAWS社が買収した。10月14日には、Google社と米原子力新興企業のケイロス・パワー社が2035年までに複数の先進炉導入による電力購入契約(PPA)を締結したばかり。
- 18 Oct 2024
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Googleと米ケイロス・パワー社が先進炉導入で提携
米IT企業大手Google社と米原子力新興企業のケイロス・パワー社は10月14日、2035年までに複数の先進炉導入による電力購入契約(PPA)を締結した。この契約は、先進炉の複数基導入に関する米国初の企業間契約になるという。本契約により、ケイロス社が開発する先進炉のフッ化物塩冷却高温炉を複数基、合計出力にして最大50万kWeが建設され、Google社のデータセンターに電力を供給する。初号機を2030年までに運転開始させた後、後続機を順次建設していく計画だ。なお、建設サイトや契約額などの詳細は明らかにされていない。ケイロス社は、米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」でフッ化物塩冷却高温実証炉「ヘルメス」(非発電炉、熱出力3.5万kW)の土木工事(掘削工事)に着手している。ヘルメスは2023年12月に、米原子力規制委員会(NRC)が50年以上ぶりに建設を許可した非水冷却炉だ。TRISO燃料(3重被覆層・燃料粒子)と熔融フッ化物塩冷却材を組み合わせ、原子炉の設計を簡素化しているのが特徴で、2027年に運開予定。ヘルメスは、DOEによる「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象炉でもある。また、ヘルメスに隣接し、同炉を2基備えた実証プラント「ヘルメス2」(発電炉、2万kWe)の建設許可が昨年7月に申請されている。ケイロス社はこれらのヘルメス・シリーズで得られる運転データやノウハウを活用して、技術面、許認可面および建設面のリスクを軽減、コストを確実化して、2030年代初頭に商業規模の「KP-FHR」(熱出力32万kW、電気出力14万kW)の完成を目指している。Google社は脱炭素化に本格的に取り組んでおり、2010年以来、115件以上の契約により合計1,400万kWe以上の発電設備からクリーンな電力を調達している。今回の契約によりGoogle社は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの既存利用を補完するとともに、安定したカーボンフリーの電力供給と2030年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという野心的な目標の達成を目指している。Google社のエネルギー・気候変動担当シニアディレクターのM. テレル氏は今回の提携発表について、Google社とケイロス社が米国の電力網に新たに50万kWeのカーボンフリーの電力を年中無休で供給し、クリーンエネルギーへの移行を加速させると強調。先進的なエネルギー技術を商業化させて、規模を拡大し、将来的により多くのコミュニティがクリーンで安価な電力を享受できるようにするというGoogle社の強い意欲を示した。Google社は今年7月に公開した2024年の環境報告書で、2023年の温室効果ガスの排出量が2019年比で43%増加し、2030年までにネットゼロの目標達成は、データセンターの電力消費の増加とサプライチェーン・インフラによる排出量の増加で困難に直面していると指摘しており、クリーンかつ増大する電力需要を満たす電源の確保が急務となっていた。生成AI(人工知能)の普及により、データセンターの電力消費量が急増する中、大手テック企業では、再生可能エネルギーへの投資とともに、信頼性の高い原子力の活用を進める動きが活発化している。米マイクロソフト社は今年9月、大手電力会社のコンステレーション・エナジー社と閉鎖済みのスリーマイル・アイランド(TMI)1号機(PWR、89万kWe)を再稼働させ、マイクロソフト社のデータセンターに電力を供給する、20年間の売電契約の締結を発表。また同機と同じくペンシルベニア州にあるサスケハナ原子力発電所(BWR、133.0万kW×2基)に隣接するデータセンターを今年3月、米アマゾン傘下のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)社が買収している。
- 17 Oct 2024
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米DOE 2050年原子力3倍化に向けて報告書
米エネルギー省(DOE)は9月30日、報告書「Pathways to Commercial Liftoff: Advanced Nuclear(商業化へのパスウェイ:先進原子力((報告書が指す先進原子力とは、第3世代+と第4世代の原子炉において実証済みの技術から革新的な技術まで、大型炉/小型炉/マイクロ炉の3サイズがある。 報告書では一般例として、大型軽水炉=約100万kW、小型モジュール炉(SMR)=約5万~約35万kW、マイクロ原子炉=5万kW以下、と定義している。)))」の最新版を発表した。2023年3月に発表された同報告書の改訂版で、重要なクリーンエネルギーの商業化成功への道筋を示している。具体的には、新型炉の導入に至るスケジュール感などの認識を官民で共有し、より迅速かつ協調的な行動を促進することが狙い。報告書は、昨今の電力需要の増加、最新の大型炉であるAP1000 に対する関心の高まり、閉鎖炉の再稼働計画といった、既存炉が有する価値の再認識など、最近の原子力再評価の動きを反映した内容となっている。報告書はまず、米国の原子力発電設備容量が2024年の1億kWから2050年までに3億kWまで3倍になる可能性があるとの見通しを提示。背景として、人工知能(AI)やデータセンターによる電力需要が増加している現状を挙げ、それに伴い新規原子力への投資を支援する新たな顧客層が出現した、と指摘した。さらに、インフレ抑制法(IRA)のインセンティブが、既存原子力発電所および新規原子炉の評価に大きな変化をもたらしているとし、電力会社が2年前には原子炉を閉鎖していた状況から一変、2024年には原子炉の80年運転、出力増強、閉鎖炉の再稼働など、原子力の積極活用に舵を切っているとの現状認識を示した。また報告書は、原子力が再生可能エネルギーを補完する存在として、エネルギー移行に不可欠な役割を担っていると指摘。再エネの導入ペースにかかわらず、電力システムの脱炭素化モデルは、ネットゼロ達成のためには少なくとも7億~9億kWの追加のクリーンかつ確実な発電設備容量を必要としているとした。そして、原子力は、これを大規模に達成できる数少ない実証済みのオプションの一つであり、原子力を組み合わせることにより、安定しない電源の追加設置、エネルギー貯蔵、送電網の必要性を減らし、脱炭素化コストの削減にも寄与するとした。さらに、原子力は、脱炭素化においてさまざまな価値を提供すると紹介。具体的には、①カーボンフリー電力である、②再エネを補完する確実な電力を提供できる、③土地の利用が少ない、④分散型電源よりも送電に必要な条件が少ない、⑤高サラリーな雇用を提供し、地域経済にも大きなメリットがある、⑥ネットゼロへの公平な移行を支援し、産業用熱利用などさまざまな用途がある――ことなどを挙げた。そのうえで、今後の新規原子力の大規模展開に向けては、少なくとも同じ炉型を5〜10基シリーズ建設するという確約された受注が、商業展開を促進するための最初の重要なステップであると指摘。同一炉型を繰り返し建設することで、建設コストが大幅に削減されるとの見方を示した。また、最初のプロジェクトを適切にオンタイム、オンバジェットで実施することが不可欠とも強調。米国で30数年ぶりに建設開始し、このほど運転開始をしたボーグル3、4号機(AP1000×2基)の経験により、サプライチェーンの基盤や人材開発が整備され、さらに今後のAP1000の展開にあたっては、30~50%の投資税額控除やコストの最大80%のDOE融資プログラム局(LPO)による融資が適用されるなど、IRAにより大幅なコスト削減が可能、との見方を示した。最後に、商業化展開への障害として、①電力市場価格が原子力発電の価値を一貫してカバーしていない、②コストおよび超過リスク、③米国の原子力および巨大プロジェクトの実施基盤の不足――を挙げ、原子力産業界、投資家、政府、そしてより広範なステークホルダーらそれぞれが、これら課題を克服すべく役割を担っていると結論している。
- 16 Oct 2024
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米DOE HALEU再転換のサプライチェーンを支援
米エネルギー省(DOE)の原子力エネルギー(NE)局は10月8日、バイデン大統領の「米国への投資(Investing in America)」アジェンダの一環として、HALEU((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の再転換事業のサプライチェーンを支援するため、国内6社と契約を締結した。NE局は、現在開発中の小型で運転サイクルが長い多くの先進炉では、高効率化のためにHALEUが必要になると指摘。今回の契約により6社間でHALEU再転換の「競争原理」を生み出し、DOEが最適な企業を選択できるようにするという。契約は最長10年間、基本報酬として各社に最低200万ドル(約2.9億円)を支払う。契約を締結した6社は、BWX テクノロジーズ(BWXT)社、セントラス・エナジー社、フラマトム社、GE ベルノバ社、オラノ社、ウェスチングハウス社。予算の確保状況にもよるが最大8億ドル(約1,196億円)の契約が可能だという。DOEは昨年11月、濃縮ウランを先進炉向けに再転換するサービスの提案依頼書(Request for Proposals:RFP)を発行していた。これは、2020年エネルギー法によりDOEが民間による国内研究、開発、実証、商業利用のためHALEUへのアクセスの確保を目的に、インフレ抑制法(IRA)から資金手当てを得て実施する「HALEU利用プログラム」の一部である。今回の契約を通じてDOEが取得するHALEU燃料は、DOEの先進的原子炉実証プログラム(ARDP)を通じて開発中の、テラパワー社のNatriumやXエナジー社のXe-100などに供給される。米国では現在、商業レベルのHALEUの濃縮および再転換を行っていない。なおDOEは、HALEUサプライチェーンの全体をサポートする濃縮サービスの契約も締結する予定。DOEのD. トゥルク副長官はリリースの中で、「強力で信頼性の高い国内燃料サプライチェーンの構築によって、政府の野心的な気候目標の達成、および高賃金・高スキルの雇用の創出や経済競争力を強化する。今回の契約は、原子燃料のロシアへの依存を排除し、エネルギー安全保障の強化を掲げる米政府の姿勢を明確にするものだ」と強調した。DOEの予測では、2035年までに100%のクリーンな電力、2050年までにネットゼロの達成という政府目標の達成のためには、2020年代末までに先進炉用のHALEU燃料40トン以上が必要であり、毎年、追加の量が必要になるという。
- 15 Oct 2024
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米ケイロス・パワー ニューメキシコ州に施設拡充
米ケイロス・パワー社は10月2日、ニューメキシコ州アルバカーキ市にある同社サイトにおいて先進炉向け熔融塩冷却材製造施設の起工式を開催した。同社がテネシー州オークリッジで建設中の低出力実証炉「ヘルメス」をはじめ、同社の先進炉に高純度の熔融塩冷却材を供給する。ケイロス・パワー社のへルメスおよびフッ化物塩冷却高温炉(KP-FHR)は、Flibe(フリベ)と呼ばれる化学的に安定したフッ化リチウム塩とフッ化ベリリウム塩の混合物である熔融フッ化物塩冷却材によって冷却される。独自の伝熱媒体により、原子炉は低圧で動作し、放射能を封じ込め、堅牢な固有安全性を確保、設計を簡素化する。建設される熔融塩冷却材製造施設は、オハイオ州にある熔融塩精製プラントから得られたノウハウをベースとしている。同プラントでは、昨年、非原子力工学試験ユニット(ETU 1.0)向け14トンのFlibeの生産に成功した。ケイロス・パワー社は独自の化学プロセスを採用し、高純度のFlibeを大量に生産。将来のプロセス最適化と、商用炉向けのFlibeの生産を拡大する能力の確立を目指している。重要な部品や材料の生産を自ら実施することで、同社はサプライチェーンのリスクを軽減、コストとスケジュールを確実に管理しながら、自社の先進炉の開発と展開を加速させたい考えだ。ケイロス・パワー社は、熔融塩製造施設の建設と操業を支える、20~30名の高レベルの雇用創出を予定している。同製造施設は、ニューメキシコ州とアルバカーキ市から資金支援を受けるプロジェクト。また、米エネルギー省(DOE)の先進的原子炉実証プログラム(ARDP)からの資金も活用する。ケイロス・パワー社は2020年にアルバカーキ市のメサ・デル・ソルに製造開発に特化したサイトを開設。4年間で、同サイトへ1.25億ドル(約187億円)以上の設備投資を行い、現在130名以上の常勤のスタッフがいる。サイトには先進炉部品製造、Uスタンプ圧力容器製造、モジュール炉建設、大規模な非原子力試験のための施設やTRISO燃料の技術開発ラボがあり、今回、熔融塩の製造施設が加わることにより、ヘルメス実証炉の実現と商用炉向けの生産拡大が可能となる。また、これらの施設の操業により、ニューメキシコ州に、この先10年で4.78億ドル(約714億円)の経済効果をもたらすとの予測もある。熔融塩の製造施設は米国の原子力産業にとって初となるものであり、ケイロス・パワー社は、重要な材料の国内生産能力を確立し、海外サプライヤーへの依存の低減を狙う。
- 10 Oct 2024
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米政府 パリセード発電所再稼働に向けた資金支援を最終決定
米政府は9月30日、バイデン大統領の「米国への投資(Investing in America)」アジェンダの一環として、米エネルギー省(DOE)および米農務省(USDA)を通じて、同国中西部において信頼性が高く、安価なクリーン電力供給を支援するため、総額およそ28億ドル(4,100億円)の支援を発表した。内、DOEは融資プログラム局(LPO)を通じて、ミシガン州のパリセード原子力発電所(PWR、85.7万kWe)の復旧と再稼働に係る資金調達を支援するため、同発電所を所有するホルテック・パリセード社に対し、最大15.2億ドル(約2,225億円)の融資保証を最終決定した。今回の融資保証は、2022年に成立したインフレ抑制法(IRA)のエネルギーインフラ再投資(EIR)プログラムに基づくもので、今年4月、DOEは同発電所の再稼働に向けた融資保証としてLPOを通じて同額を上限とする条件付きの資金支援を発表していた。ホルテック社は現在、2051年まで運転できるよう大規模なバックフィットを実施中で、2025年第4四半期の送電開始をめざしている。今回の融資保証の決定は、米国の原子力発電所を再稼働させるためのDOE初の取組みであり、カーボンフリーの発電およびミシガン州の雇用拡大とともに、米国の原子力発電部門の強化に資するもの。パリセード発電所の再稼働により、ミシガン州で最大600名の常勤の高スキル、高サラリーの雇用が維持または創出される見込みで、さらに定検期間中には1,000名もの雇用も支えるという。また、同発電所の再稼働により、年間447万トンのCO2排出の削減に寄与し、これは、ガソリン車97万台以上による年間排出量にほぼ相当する。またUSDAは、IRAの一部である、エンパワリング・ルーラル・アメリカ(New ERA)プログラムの一環として、農村地域にある2つの電力協同組合のウルバリン電力協同組合(Wolverine Power Cooperative)とフージャー・エナジー(Hoosier Energy)に合計約13億ドル(1,900億円)を交付すると発表した。同プログラムは、農村地域の家庭や中小企業が安価な電力を利用できるようにし、農村地域の労働力やエネルギー、教育インフラに投資することで、農村地域のより豊かな未来を支援することを目的としている。ホルテック・パリセード社は、ミシガン州、イリノイ州、インディアナ州の農村地域に電力を供給する、これら2つの農村電力協同組合と長期電力購入契約を既に締結している。バイデン政権の気候政策担当上級顧問のJ. ポデスタ氏は、「閉鎖済みの原子力発電所を米国史上初めて復活させ、ミシガン州、ウィスコンシン州、インディアナ州、イリノイ州の農村地域に、信頼性が高く、安価なクリーン電力を供給する。インフレ抑制法が中西部のコミュニティをいかに活性化させているかを示している」と強調した。パリセード発電所は、1971年に営業運転を開始。その後、2022年5月に経済性を理由に永久閉鎖され、翌6月には同発電所は所有者・運転者のエンタジー社から、廃止措置を実施するホルテック社に売却された。近年、各国がCO2排出の抑制に取り組み、原子力のように発電時にCO2を排出しないエネルギー源が重視されるなか、ホルテック社は同発電所を再稼働する方針に転換、2023年10月、米原子力規制委員会(NRC)に運転認可の再交付を申請している。
- 04 Oct 2024
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米WE社のマイクロ炉開発に進展
米ウェスチングハウス(WE)社は9月16日、アイダホ国立研究所(INL)で同社製マイクロ炉「eVinci」のプロトタイプの試験に向けて、基本設計・実験機設計(Front-End Engineering and Experiment Design:FEEED) 段階を完了したことを明らかにした。WE社はFEEEDにおいて、eVinciの5分の1サイズの実験機の建設を計画。早ければ2026年にINL内で国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)が運営する世界初のマイクロ炉のテストベッドで試験を開始、最終設計の決定や許認可手続きに役立てたい考えだ。WE社傘下のeVinci テクノロジー社のJ. ボール社長は、「FEEEDプロセスの完了は、eVinciの商業化に向けた重要なステップ。今後10年以内に世界中に複数のeVinciの配置を目標としている」と述べ、NRICと協力し、eVinci試験計画の最終調整や、テストベッドへの設置に向けた長納期品の確保作業を開始するとしている。米エネルギー省(DOE)は2023年10月、国内でマイクロ炉を開発するWE社、ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)、およびスタートアップ企業のラディアント(Radiant)社の3社に、FEEEDプロセスの実施に向けて総額390万ドルをNRICを通じて提供。具体的には、燃料を装荷する実験炉の設計、機器製造、建設、およびNRICのマイクロ炉実験機の実証(Demonstration of Microreactor Experiments=DOME)用テストベッドを使った試験の計画策定を目指している。WE社はFEEEDプロセスの重要マイルストーンである、予備安全設計報告書 (PSDR) のNRICへの提出を他2社に先んじて行った。USNC社とラディアント社も年末までにFEEEDプロセスを完了予定。NRICは、INLで30年以上運転された「実験増殖炉II(EBR-II)」の格納ドームを利用したDOMEテストベッドを改修中である。同テストベッドはHALEU燃料を使用する最大熱出力2万kWの先進的な実験用原子炉を収容、初臨界時には安全性を重視した閉じ込め機能を持つ。産業界による新技術開発に伴うリスクを軽減して開発を促進させ、先進的な原子炉設計を概念段階から実証段階へと進めて、実用化と商業化への道筋をつけることを目的としている。DOEは2020年12月、eVinciを官民のコスト分担方式で進めている「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象に選定しており、7年間に総額930万ドル(このうち740万ドルをDOEが負担)を投じるとしている。eVinciは熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWのヒートパイプ冷却の可搬式原子炉で、軽水炉のような冷却ポンプは不要。2エーカー(約4,000㎡)ほどの敷地に設置し、HALEU燃料の3重被覆層・燃料粒子「TRISO」を使用、燃料交換は約8年おき。遠隔地のコミュニティへの熱電供給から採掘作業やデータセンターまで、幅広い用途を持つと期待されている。eVinciの建設をめぐっては、2023年、カナダのサスカチュワン州がeVinciの州内建設に向け、8,000万加ドル(約87億円)の研究補助金の交付を発表している。
- 04 Oct 2024
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米国防総省 マイクロ炉の建設に着手
米国防総省(DOD)は9月24日、アイダホ国立研究所(INL)で、軍事作戦用の可搬式プロトタイプのマイクロ炉「プロジェクト・ペレ」の建設に着手したことを明らかにした。原子炉は現在、同省の戦略的能力室(SCO)主導の下、バージニア州リンチバーグのBWXTアドバンスド・テクノロジーズ社で製造中。原子炉の組立を2025年2月に開始し、2026年に組立を終え完成した原子炉をINLに輸送、設置する計画で、米国初の第4世代炉となる。SCOは2022年6月、「プロジェクト・ペレ」と呼ばれる軍事作戦用の可搬式プロトタイプのマイクロ炉の設計・建設・実証プロジェクトにBWXT社の高温ガス炉(HTGR)設計を選定した。燃料には、HALEU((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))燃料の3重被覆層・燃料粒子「TRISO」を使用する。原子炉設備は20フィート(約6m)の輸送用コンテナ4つでINLに輸送され、2026年の設置に向けて、来年にもINLの重要インフラのテストサイトにコンクリート製の遮蔽構造物を建設する。原子炉設備は同遮蔽構造物の中に設置、INLの特殊なマイクログリッドに接続され、出力規模は1~5千kWe。DODによると、最終的な安全レビューを完了後、初期評価を行い、結果が良好であれば、DODの重要拠点である遠隔地や厳しい環境下に配置し、電力供給を行うとしている。SCOのJ. ドライヤー室長は、DODが戦略的かつ重要技術に関する米国のイノベーションの推進に貢献してきた長い実績に触れたうえで、「プロジェクト・ペレは、DODのエネルギー回復力の向上を目指すカギとなるイニシアチブであり、民生用の原子力技術を進歩させる上でも重要な役割を果たす」と強調した。プロジェクト・ペレは政府全体の取り組みであり、エネルギー省(DOE)、原子力規制委員会(NRC)、米国陸軍工兵隊、NASA、国家核安全保障局(NNSA)が重要な専門知識を提供するなど、大きく貢献している。このほか、同プロジェクトの主契約者BWXT社の業務支援には、様々な経験を積んだ企業チームが協力。その主要メンバーには、軍需メーカーのノースロップ・グラマン社、英ロールス・ロイス社の北米技術部門であるリバティワークス、防衛・宇宙製造業のトーチ・テクノロジーズ社が含まれている。原子炉はDOEのアイダホ・オペレーション室の監督の下、米国内でのみ実証される。INLで最低3年間稼働予定であり、クリーンで信頼性が高く、輸送可能な原子力の利用を実証し、全米の軍事基地で増大するエネルギー需要を満たすことが期待されている。BWXT社はまた、プロジェクト・ペレでの経験を活かし、DOEの将来実証リスク削減プログラム(ARDP)の支援を受けている民生用マイクロ炉のBANR(BWXT Advanced Nuclear Reactor)の開発を促進する方針。高温ガス炉の部品とサービスの国内サプライチェーンの確立のほか、TRISO燃料製造分野においても活用したい考えだ。
- 01 Oct 2024
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既存サイトで6,000万kW以上の新設が可能 米DOE報告書
米エネルギー省(DOE)は9月9日、米国内で運転中または最近閉鎖された原子力発電所サイトで、6,000万kW~9,500万kWの新規建設が可能とする報告書「原子力発電所および石炭火力発電所サイトにおける新規原子力立地評価(Evaluation of Nuclear Power Plant and Coal Power Plant Sites for New Nuclear Capacity)」を公表した。この報告書は、DOE傘下のオークリッジ、アルゴンヌ両国立研究所の協力を得て、DOEの原子力局(NE)がとりまとめたもので、54の運転中および11の閉鎖済み原子力発電所サイトを評価。サイトの敷地面積や空中写真などの情報を用いて分析したことに加え、冷却水の利用可能性、人口密集地や危険施設からの距離、地震、洪水の可能性などの観点からも分析を行った。その結果、運転中および閉鎖済みの41サイトで新規原子力発電所の立地が可能であることが判明。AP1000のような大型軽水炉の場合、6,000万kW、60万kWの小型先進炉の場合では、9,500万kWの原子力発電設備容量が設置可能と評価した。報告書は、既存サイトへの新規建設の優位性として、地元コミュニティが、①既に原子力を支持している、②安全文化に精通している、③厳格な環境モニタリングが継続的に実施されていることを認識している――ことを挙げたほか、地元への環境面、雇用面、地域経済面での恩恵を強調した。そのほか、米国原子力規制委員会(NRC)に建設・運転一体認可(COL)を申請済みだが、実際の建設には至っていない17の原子炉についても評価を実施。その結果、2,400万kWの原子力発電設備容量の追加導入が可能と結論し、このようなサイトの活用は、許認可プロセスの迅速化や新設に必要な時間とコストの節約につながるとした。また、報告書は、閉鎖済みまたは今後閉鎖予定の石炭火力発電所サイトへの原子力新設の可能性も検討。その結果、1億2,800万kW~1億7,400万kWの新規原子力発電設備容量の設置が可能と評価した。米国では、クリーンエネルギーへの移行に伴い、2035年までに国内の石炭火力発電所の30%近くが閉鎖されると予測されるなか、DOEは、「石炭から原子力への移行(coal-to nuclear (C2N) transitions」を通じて石炭火力の地元コミュニティでは、既存の労働力とインフラを活用することにより、地元経済と環境に多大な利益がもたらされる、とそのメリットを強調している。なお、DOEは、今回の報告書について、既存の原子力発電所を活用した、新たな原子力発電所の建設可能性について知見を提供するものとしつつも、あくまで予備的な分析であり、最終的には、電力会社と地域社会が協力して、建設の判断を下す必要があるとしている。DOEは2023年3月に発表した報告書のなかで、米国が2050年ネットゼロを達成するためには、米国内で2050年までに約2億kWの追加の原子力発電設備容量が必要との見方を示している。
- 13 Sep 2024
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仏オラノ 米国でウラン濃縮施設を建設へ
米テネシー州のB. リー知事は9月4日、仏オラノ社の米国法人であるオラノUS社が遠心分離方式によるウラン濃縮施設の建設候補地に同州オークリッジ市を選定したことを明らかにした。ウラン濃縮施設の敷地面積は約75万平方フィート(約7万平方メートル)と北米最大規模となり、操業すれば300人以上の直接雇用を創出する見込み。 今回の建設は、テネシー州が2023年に5,000万ドル(約71億円)を投じて創設した、原子力関連企業の同州への拠点移転支援や同州の大学・研究機関における原子力教育の発展を目的とする原子力基金を活用して建設されるもの。リー知事は、同州が、原子力関連投資に最適な州であり、オラノ社との提携を通じて、米国のエネルギー自立や継続的な経済成長と機会拡大の推進に貢献できると強調している。テネシー州では、このほどBWRX-300の導入に向け追加投資を決めたテネシー峡谷開発公社(TVA)が所有、運転するワッツ・バー1,2号機(PWR、120万kW級×2基)、セコヤー1,2号機(PWR、120万kW級×2基)の計4基の大型PWRが運転中。そのほか、オークリッジ国立研究所(ONRL)、ケイロス・パワー社、TRISO-X社、セントラス社などの原子力関連企業・機関約230社が拠点を置いている。 米国では、ロシア産低濃縮ウラン(LEU)の米国へ輸入を禁止した「ロシア産ウラン輸入禁止法」が8月11日から施行されているほか、米エネルギー省(DOE)が国内のウラン濃縮能力の強化、商業用核燃料の供給源多様化や安定供給を狙いとして27億ドル(約3,820億円)を拠出するなど、燃料のサプライチェーン強化に向けた動きが活発化している。
- 12 Sep 2024
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ガーナ 米製SMRを1基導入へ
ガーナの原子力発電公社(NPG)は8月29日、米国のレグナム・テクノロジー・グループと、ガーナに米ニュースケール社製の小型モジュール炉(SMR)「VOYGR-12」を1基建設することで合意した。「VOYGR-12」は、ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)を12基組み合わせた発電プラント。レグナム社は、ニュースケール社などと提携する原子力プロジェクト開発会社で、近くNPG社とガーナで「VOYGR-12」を所有/運転する子会社を設立する計画だ。契約は、ケニアの首都ナイロビ市で開催された米・アフリカ原子力エネルギーサミットの会期中に締結された。同サミットは、米エネルギー省(DOE)が主催。原子力導入に向けたアフリカ産業界の準備事項に焦点を当て、原子力サプライチェーン、能力開発、ステークホルダーの参加、資金調達などのテーマで討議された。昨年11月、ガーナで開催された初回に引き続き、2回目となる。同サミットに出席した米国務省(DOS)のB. ジェンキンス軍備管理・国際安全保障担当次官は、「今回の契約締結により、ガーナはアフリカにおけるSMR建設のリーダーとなり、地域の経済発展と雇用創出の起爆剤となる」と指摘。米DOEのA. ダンカン国際協力次官補代理は、「ガーナをはじめとする多くのアフリカ諸国が、経済発展、エネルギー安全保障、脱炭素化の目標達成のために原子力導入を目指している。米国がノウハウとリソースを提供する、強力かつ積極的なパートナーであり続け、アフリカ大陸全体への原子力導入を成功させたい」と抱負を語った。米DOEは2014年以来、NPMを複数設置したVOYGRシリーズの設計および許認可取得への支援に、5.79億ドル(約830億円)以上を投じてきた。5万kWeのNPMは、米原子力規制委員会(NRC)から唯一、設計認証(DC)を取得しているSMR。ニュースケール社は2023年1月、出力を7.7万kWeまで引上げたNPMの標準設計承認(SDA)を申請し、NRCが現在審査中である。米DOSは、今年5月にガーナで開催された、アフリカ原子力ビジネスプラットフォーム会合で、ガーナをSMRの地域ハブとすることを含む、新たな民生用原子力協力を発表している。DOSが主導する「SMRの責任ある利用のための基礎インフラ(FIRST)」プログラムなどの能力開発イニシアチブを通じ、ガーナをアフリカにおける最初のSMRの運転者とし、将来のSMRサプライチェーンのニーズを支える人材育成と雇用創出を支援していく考えだ。なお、ケニアのエネルギー・石油省のA.ワチラ筆頭次官は、同サミットでのスピーチの中で、2034年までにケニア初の原子力発電所を、2030年までに研究炉を完成させる目標を再確認した。米DOEは、次回のサミットを2025年7月にルワンダで開催、特にSMRに焦点を当てる予定だという。
- 10 Sep 2024
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米TVA SMR建設に向けて追加出資
米テネシー州のテネシー峡谷開発公社(TVA)の理事会は8月22日、テネシー州オークリッジ近郊のクリンチリバー・サイトへの小型モジュール炉(SMR)建設に向けて、1.5億ドル(約217.5億円)の追加出資を承認した。すでに2022年2月の理事会で2億ドル(約290億円)の出資を承認しており、今回の承認によりSMR建設プロジェクトは総額3.5億ドル(約507.5億円)となる。人口および経済が拡大する地域の電力供給にSMRを活用し、クリーンエネルギーへの移行の加速化をねらう。TVAのJ. ライアシュCEOは、「SMRは、米国が覇権を握るべきエネルギー革新技術。米国のエネルギー安全保障のためであり、まさに国家安全保障である」と述べた。また、テネシー州のB. リー知事は、「テネシー州民は、安全でクリーンで信頼性の高い原子力へのTVAの継続的な投資を高く評価。テネシー州は原子力エネルギー企業が投資して繁栄するナンバーワンの州となる」と今回の追加出資を歓迎している。TVAはクリンチリバー・サイトについて2019年12月、米原子力規制委員会(NRC)より、SMR建設用地として事前サイト許可(ESP)を取得済みだ。TVAは合計電気出力が80万kWを超えない2基以上のSMRの同サイトでの建設を想定し、2016年5月にNRCにESPを申請していた。TVAは、SMRの中でも最も実現性が高いとの判断から、2022年8月、クリンチリバー・サイトで、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMRのBWRX-300(BWR、30万kWe)を建設する可能性に基づき、予備的な許認可手続きを開始した(既報)。TVAは、先進炉の開発・導入には連邦政府による支援が不可欠であり、財務的・技術的リスク回避の観点から、複数のパートナーと連携して開発すべきとの考えだ。そのため、カナダのダーリントン新原子力プロジェクトにBWRX-300を採用した、加オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社と2022年4月に提携で合意、SMRの設計、許認可、建設、運転について協力するほか、ポーランドにBWRX-300導入を計画する、オーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社とも革新技術導入に伴う財務リスク低減のためノウハウの共有促進で協力する。さらに、TVAは2022年4月、米ケイロス・パワー社が結成した北米電力会社のコンソーシアム(加ブルース・パワー社、米コンステレーション社、米サザン・カンパニー)にも参加し、ケイロス社のフッ化物塩冷却高温炉(FHR、14万kWe)の開発を支援している。2021年5月、ケイロス社と低出力(熱出力3.5万kW)のFHR実証炉ヘルメスの建設への協力を表明。クリンチリバー・サイトに近い、米エネルギー省(DOE)の東部テネシー技術パーク(ETTP)内での建設に向けて、エンジニアリング、運転、許認可手続関係の支援を実施している。TVAは1933年、米大統領F. ルーズベルトが、世界恐慌の対策として実施したニューディール政策の一環として、テネシー川流域の総合開発と失業率対策を目的に行われた米政府による公共事業を実施する国有電力企業。現在、アラバマ州、テネシー州において3サイトで計7基の120万kW級の大型軽水炉を所有/運転する。
- 30 Aug 2024
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米パリセード発電所 再稼働へ向け冷却システムを更新へ
米ホルテック・インターナショナル社は8月15日、同社のパリセード原子力発電所の改修の一環として、ミシガン湖の水温上昇予測に対応する新しい熱交換器システムを製造中であると発表した。ホルテック社によると、湖や海、川などの水域からの冷却水に依存する発電所の出力は、地球温暖化の影響で水温が上昇するにつれて確実に低下。現在、改修工事中のパリセード原子力発電所に冷却水を供給するミシガン湖の水温は、世界の他の貯水池と同様に上昇を続けており、今後数十年の運転期間延長の間にも、上昇を続けると予想している。パリセード発電所の改修の一環として、ホルテック社は、ペンシルベニア州ピッツバーグにある自社の工場で冷却水熱交換器システムを製造している。既存の熱交換器の設置スペースが極めて限られる中、予想される湖水温度の上昇に対応するため、新しい熱交換器は既存の2倍以上の伝熱面積が必要であった。自社の革新的な設計開発によりアップグレードされた熱交換器セットは、2025年末に予定されるパリセード発電所の再稼働のため、今後1年以内に設置される予定。この冷却システムのアップグレードには土木/構造工事がほとんど必要なく、費用は当初の見込みより50%以上削減できる可能性があるという。ホルテック社のJ. ラッセル広報担当責任者は、「地球温暖化が原子力発電所やその他の発電所に及ぼす悪影響と闘うために何が可能か、この技術的成果を他の発電所の関係者と共有したい」と述べた。パリセード発電所(PWR、85.7万kWe)は、1971年に営業運転を開始し、2022年5月に永久閉鎖となり、翌6月、同発電所は所有者・運転者のエンタジー社から、廃止措置を実施するため、ホルテック社に売却された。近年、各国が炭素負荷の抑制に取り組み、原子力のようにクリーンなエネルギー源が重視される時代となったことを受け、ホルテック社は同発電所を再稼働する方針に切り替え、2023年10月、米原子力規制委員会(NRC)に運転認可の再交付を申請した。パリセード発電所の再稼働方針については、ミシガン州のG. ホイットマー知事が2022年9月に支持を表明。2023年7月には、同発電所の再稼働に1.5億ドル(約215.4億円)の支援を盛り込んだ2024会計年度の州政府予算法案に署名している。2024年4月には、米エネルギー省(DOE)が融資プログラム局(LPO)を通じて、同発電所の再稼働に向けた融資保証として15.2億ドル(約2,183.2億円)を上限とする条件付きの提供を発表。ホルテック社は、少なくとも2051年まで運転できるよう種々の機器の大規模な改修や交換工事プラントの改良を実施中だ。なお、ホルテック社は、同社製小型モジュール炉「SMR-300」(PWR、30万kWe)を2基、パリセード発電所サイトに建設する計画も進めている。同2基が稼働すれば、ミシガン州の無炭素電源の設備容量はほぼ倍増となる。2026年の建設許可申請を予定している(既報)。
- 26 Aug 2024
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米国 ATF燃焼度の引上げを国内初承認
米ウェスチングハウス(WE)社は8月15日、米原子力規制委員会(NRC)から、同社製事故耐性燃料(ATF)であるEncore燃料の燃焼度制限引上げの承認を取得した。国内で初承認となる。燃料効率の向上、燃料交換間隔の延長により、運転コストの削減に貢献する。米国のPWRは現在18か月サイクルで運転されており、この新しい高燃焼度燃料によって供給バッチサイズを小さくすることが可能になり、燃料サイクルの経済性が改善される。米国で初めて62,000MWd/tの燃焼度制限を超えた燃料装荷が可能となり、将来的には24か月サイクル運転になることが期待される。WE社は、今回の燃焼度引上げの承認が、2012年に同社が開始したATF開発プログラムにとって重要なマイルストーンと強調する。同プログラムには、米エネルギー省(DOE)が資金拠出。米国のエネルギー安全保障と気候目標の達成支援のため、原子炉性能と安全性を向上させることを目的としている。WE社のEncore燃料は、既存燃料よりもはるかに厳しい条件下で耐性を持つ。炭化ケイ素燃料被覆管の融点は極めて高く(2,800℃以上)、水との反応が少ないため、特にジルコニウム燃料被覆管が1,200℃を超えると水素と熱の生成反応が著しくなるのに比べ、過酷事故条件下で画期的な安全性を発揮するという。また、同社はジルコニウム-蒸気反応も抑制する代替被覆管材料であるクロムコーティングジルコニウム合金も開発している。
- 26 Aug 2024
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米オクロ社 SMRでシーメンスと機器供給契約
米国で先進炉開発を進めているオクロ社は8月13日、同社が開発する小型モジュール炉(SMR)である「オーロラ」向け電力変換システムに関する優先サプライヤー契約を、独シーメンス・エナジー社と締結した。オクロ社によると、本契約は昨年12月に締結した覚書に基づいており、顧客の増大する電力需要に応えるため、生産の拡張、コスト効率、および迅速な展開を強化するという同社のビジョン上、重要なステップとなるという。オクロ社は、複数の発電所全体で機器を標準化し、製造、建設、運転、メンテナンスのコスト削減のみならず、メンテナンスによる停止期間を短縮させ、全体的なパフォーマンスを向上させたい考えだ。オーロラは、液体金属冷却の高速中性子炉で、ヒートパイプを使用して炉心から超臨界二酸化炭素発電システムに熱を運び発電する。HALEU((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))燃料を使用しており、少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給が可能である。出力は顧客のニーズに合わせて1.5万~5万kWeの範囲で調整が可能だ。米エネルギー省(DOE)は2019年12月、先進的原子力技術の商業化を支援するイニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」の一環として、アイダホ国立研究所(INL)敷地内でオーロラの建設を許可。これを受けてオクロ社は翌2020年3月、原子力規制委員会(NRC)にオーロラ初号機の建設・運転一括認可(COL)を申請したが、NRCは、審査の主要トピックスに関する情報がオクロ社から十分に得られないとして、2022年1月に同社の申請を却下した。オクロ社は同年9月、オーロラの将来的な許認可手続きが効率的かつ効果的に進められるよう、NRCとの事前協議を提案する「許認可プロジェクト計画(LPP)」をNRCに提出している。なお、DOEおよびアルゴンヌ国立研究所やアイダホ国立研究所などと共同で、使用済み燃料から残りの潜在的エネルギーの90%以上を抽出し、オーロラの燃料として利用する、先進的な燃料リサイクル技術の開発にも取り組んでいる。
- 21 Aug 2024
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米WE社 高濃縮度燃料ペレットを製造
米ウェスチングハウス(WE)社は8月7日、英国のスプリングフィールド燃料加工工場で高濃縮度の新燃料ペレットの製造に成功した。この燃料ペレット「LEU+ADOPT」は、原子力発電所の性能と安全性の向上を目的に、米エネルギー省(DOE)の事故耐性燃料(ATF)プログラムを通じて開発された。同プラグラムは10年以内に商業化される可能性のある新燃料ペレットと被覆管設計を支援している。従来の燃料より安全性能を向上させ、濃縮度を8%まで高めることで、より長時間の運転を可能にし、燃料交換に必要な停止回数を減らして運転コストを改善する。現在、ほぼすべての商業用原子燃料はウラン235を3~5%に濃縮したものである。新燃料は英国の工場で4体の先行試験用燃料集合体に組み込まれ、2025年春、米ジョージア州にあるA.W.ボーグル2号機(PWR、122.9万kWe)での照射試験のため出荷される。
- 19 Aug 2024
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米国 熔融塩実証炉の土木工事開始
米ケイロス・パワー社は7月30日、熔融塩実証炉「ヘルメス(Hermes)」の建設予定サイトで土木工事を開始した。テネシー州オークリッジにある米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」内に建設される。ヘルメスは昨年12月、米原子力規制委員会(NRC)が50年以上ぶりに建設を許可した非水冷却炉。ヘルメス(熱出力3.5万kW)は、2020年12月にDOEによる「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象炉に選定。DOEは、同炉の設計、建設、試運転の支援のため最大3.03億ドルを資金援助することになっている。ヘルメスは、安価でクリーンな熱生産を実証するため、TRISO燃料((ウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆した粒子型の燃料))と熔融フッ化物塩冷却材を組み合わせて原子炉の設計を簡素化している。2027年に運開予定だ。また、ケイロス社はロスアラモス国立研究所と提携し、同研究所の低濃縮燃料製造施設でヘルメス向けのTRISO燃料を製造するほか、テネシー峡谷開発公社(TVA)とは、設計、許認可、建設、運転等で協力する共同開発契約を締結している。なお、ケイロス社は今年7月上旬、ニューメキシコ州アルバカーキの製造施設における最初の工学試験ユニット(ETU 1.0)でフッ化物熔融塩12トンを使った2,000時間の運転試験を完了した。ETU 1.0はヘルメスの実物大の電気加熱プロトタイプで、ヘルメスの設計、建設、運転の支援向けのユニット。熔融塩システムの試験ユニットでは世界最大規模だ。現在、ニューメキシコ州でヘルメスのモジュール設計の実証に焦点を当てたETU 2.0を建設中。最終段階のETU 3.0は、ヘルメスのサイトに隣接して建設される。
- 14 Aug 2024
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ルーマニア 米国との協力でSMRプロジェクトに進展
ルーマニアの国営原子力発電会社であるニュークリアエレクトリカ(SNN)と小型モジュール炉(SMR)建設プロジェクト会社のロパワー(RoPower)社は7月24日、米大手EPC(設計・調達・建設)契約企業のフルアー(Fluor)社と米ニュースケール・パワー社のSMR建設プロジェクトの基本設計の第2段階(Front-End Engineering and Design:FEED2)契約を締結した。ニュースケール社の大株主であるフルアー社は、2023年第4四半期に完了したFEED1に引き続きFEED2を受注。FEED2の契約に基づき、プロジェクトの最新のコスト見積とスケジュール、最終投資決定(FID)に必要な設計、関連する原子力安全およびセキュリティの分析結果を提供する。ルーマニアの首都ブカレストで開催された同契約の調印式典には、ルーマニア・エネルギ省のS. ブルドゥージャ大臣、米エネルギー省(DOE)のJ. グランホルム長官らが出席。式典では、両国間の強固な協力の継続とともに、カーボンフリーの電力需要への対応とエネルギー安全保障の強化におけるSMR技術の重要な役割が強調された。ロパワー(RoPower Nuclear)社は、SNNが国内で米ニュースケール社製SMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を建設するため、民間エネルギー企業のノバ・パワー&ガス社と合弁で2022年に設立したプロジェクト企業。ルーマニア南部ドゥンボビツア県のドイチェシュテイ(Doicesti)で13年前に閉鎖された旧・石炭火力発電所サイトに、出力7.7万kWeの「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を6基備えた「VOYGR-6」(合計出力46.2万kWe)の建設を計画し、現在、サイト準備が進められている。本プロジェクトでは、プラント内に約200名の正規雇用のほか、建設段階で1,500名、製造・部品組立段階で2,300名の雇用を創出するとともに、年間400万トンのCO2排出削減に貢献するという。ルーマニアは、経済的で安定供給可能なクリーン・エネルギーでエネルギー自給率向上を目指す一方、SMR機器の製造や組立、運転員や専門家の教育訓練を支援するハブ(拠点)となり、中・東欧地域におけるSMR建設と運転の模範例として後続国を牽引していく方針だ。なお、本SMR建設プロジェクトは、ルーマニア政府の他、米国貿易開発庁(USTDA)からの技術支援金の交付や、米輸出入銀行(US EXIM)と米国際開発金融公社(US DFC)からの多額の金融投資など、米国政府からも多大な支援を受けている。
- 05 Aug 2024
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米国 乾式貯蔵システムの耐震試験を完了
米エネルギー省(DOE)は7月22日、実物大の使用済み燃料乾式貯蔵システムの耐震試験を実施し、完了したことを明らかにした。カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者らは、DOEから資金提供を受け、屋外振動台を使用した耐震試験を実施。重さ125トンの実物大の垂直キャスクと111トンの水平貯蔵システムを対象に、どちらもダミーの燃料集合体と240以上のセンサーを装着し、約40種類の地震のシミュレーションのデータを収集した。今回の試験で得られたデータにより、国内の70を超える原子力発電所サイトで安全に貯蔵されている使用済み燃料に対し、地震が与える潜在的な影響を詳細に評価し、将来の使用済み燃料貯蔵システムの設計と許認可に有用なデータを収集する。また、現在の貯蔵方法の改善や、国内の使用済み燃料の安全で、効率的、持続可能な管理にも資するという。耐震試験の様子はDOEのYouTubeチャンネルで視聴できる。
- 01 Aug 2024
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