キーワード:DOE
-
米アイダホ研 クリーンエネルギー社会への移行支援で新たな構想を開始
米エネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)は10月5日、全米の様々なコミュニティがクリーンエネルギー社会への移行に向けて、それぞれに適したエネルギー技術の選択が可能になるよう支援するイニシアチブ「Emerging Energy Market Analysis (EMA)」を5大学と共同で開始した。これまでは、各コミュニティが多数の化石燃料発電所を採用し、大型の原子力発電所や再生可能エネルギーが果たす役割は小さかった。しかし近年、多くのコミュニティがCO2を排出しないクリーンエネルギー社会への移行を模索するようになり、先進的なエネルギー技術が数多く浮上するなかで、確実で持続可能、誰にとっても公平なエネルギー・インフラを選択することが非常に複雑で難しくなっている。このため、INLは地元アイダホ州のボイシ州立大学、アラスカ大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)、ミシガン大学、ワイオミング大学と共同で「EMA」を設置した。これらに所属する社会学者や弁護士、エネルギー政策の専門家、エンジニア、科学者とチームを組み、各コミュニティがエネルギーを選択する際の基礎となる社会的条件や財源、関係インフラや能力などを包括的に分析。結果として、「意思決定のための多次元的枠組み」を開発した。「EMA」チームは、最適のエネルギー選択を可能にする主要ツールとしてこの枠組みを使い、様々なエネルギー技術が各コミュニティにもたらす恩恵や課題をリスト化、それぞれに都合の良い時期や場所に合わせてエネルギー選択ができるよう支援する。この枠組みを通じて、エネルギー技術のデベロッパーは実際の建設を始める前に社会的な認可が得られるなど、デベロッパーのみならずコミュニティの政策決定者にとっても有益なものになると強調している。この枠組みの開発に携わったINLの原子力エコノミスト、D.シュロップシャー氏によると、「他の機関と異なり、我々はユーザーが特定のエネルギー技術を評価しようとする際、何を重要視するか、ほかの選択肢とどのように比較するか、また、実際にかかるコストをどうするか等について理解するよう努めている」とのこと。原子力については、これまでの軽水炉も先進炉も、CO2を排出せず安全かつ信頼性が高いという点で非常に有利だが、「EMA」では原子力の評価方法を変えつつある。「以前にも増して原子力の社会的要素を考慮するようになっており、原子力のような技術をコミュニティがどのように受け入れるのか、また、その理由はなぜか等に着目している」と同氏は述べた。INLによると、「EMA」の枠組みはまた、DOEが先進的原子力技術の商業化支援のため実施しているイニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」や、同技術の実証を目的とした「国立原子炉技術革新センター(NRIC)」を補完する役割を担う。炉型等のデベロッパーがそれぞれの炉型の商業化に向けてこれらのプログラムを活用する際、「EMA」は専門的知見をデベロッパーに提供、その技術を市場に出す際の分析・評価等で支援することになる。(参照資料:INLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 14 Oct 2022
- NEWS
-
米エネ省、中間貯蔵に関心を持つコミュニティに支援金
米エネルギー省(DOE)は9月20日、原子力発電所から出る使用済燃料を管理し中間貯蔵する施設について、地元の合意に基づいた立地プロセスに関心を持つコミュニティを支援するため、合計1,600万ドルの支援金を交付すると発表した。DOEは使用済燃料と高レベル放射性廃棄物(HLW)の長期的処分に関する研究開発を進めているが、その実施にともなう透明性を最大限に高め、管理施設の建設を支援していく方策として、「地元の合意に基づくアプローチ」の形成を推進中。各コミュニティに特有のニーズを満たすことで、使用済燃料の中間貯蔵を実施する方針である。DOEは昨年11月、使用済燃料の中間貯蔵施設立地点の選定に向けて、「地元の合意に基づく立地プロセス」を策定するため、情報提供の依頼書(RFI)を関係するコミュニティやステークホルダーに対して発出した。今月初旬にその結果を公表しており、この立地プロセスを成功裏に進めるには、関係コミュニティと堅固な信頼関係を構築する必要があると表明。今回の支援金交付もRFIで得られた意見を反映している。DOEの計画では、18か月~24か月の間、最大8つのコミュニティに支援金を交付する。交付を受けたコミュニティは、内部で住民らが相互学習を進めるとともに関係情報を容易に入手できるようにし、オープンな議論が可能となる環境作りを目指す。支援金を通じてDOEが推進する主要なタスクは、以下の3分野である。関係コミュニティとステークホルダーが主導的な立場で、使用済燃料管理施設の立地プロセスに関与できるようにする。連邦政府が建設する集中中間貯蔵施設の立地プロセスに、関係するコミュニティとの協力や地元のニーズに基づくフィードバックを反映させるため、公共的な価値や利益、目的などを明確化する。関係コミュニティやステークホルダー、専門家の間で使用済燃料関係の相互学習促進を目指す戦略を策定し、実行していく。米国の民間部門では現在、中間貯蔵パートナーズ(ISP)社とホルテック・インターナショナル社がそれぞれ、テキサス州アンドリュース郡とニューメキシコ州南部で集中中間貯蔵施設の建設計画を進めている。一方、連邦政府は今回の支援においても、同様の施設を自発的に受け入れるサイトを募集しているわけではない。しかし、DOEとしてはこれを皮切りに、この問題に関心を持つコミュニティやステークホルダーらが、地元の合意に基づく立地プロセスについてオープンに話し合い、関わっていくよう促す考えだ。DOEのJ.グランホルム長官は、「信頼性の高い安全な原子力エネルギーを米国内で得ることは、J.バイデン大統領が掲げる(2035年までに米国の電力部門を脱炭素化し、2050年までに米国経済全体でCO2排出量を実質ゼロ化するという)目標を達成する上で非常に重要だ」コメント。今回の予算措置を通じて、使用済燃料を地元の合意ベースで貯蔵する最良の解決策について、関係するコミュニティと建設的な協議を重ねていきたいと述べた。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 22 Sep 2022
- NEWS
-
米エネ省調査:「石炭火力の原子力への転換でCO2排出量実質ゼロ化に有効」
米エネルギー省(DOE)の原子力局(NE)は9月13日、米国内で閉鎖された石炭火力発電所を、先進的原子炉等でリプレースした場合の課題とメリットについて、調査報告書を発表した。報告書は、前時代に「電化を通じて米国経済の構築に貢献した」数百もの石炭火力発電所を、原子力発電所に置き換えること(coal-to-nuclear =C2N )は十分可能であり、これにより確実で需要調整力の高いクリーン電力の供給量が大幅に増加すると指摘。米国が2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成する上でも、大きな効果があると強調している。この報告書は、DOE傘下の(アルゴンヌ、アイダホ、オークリッジ)3つの国立研究所が実施した調査をもとにNEがまとめたもので、「C2Nへの移行」にともなう3つの全体的な課題、①閉鎖済みの石炭火力発電所が米国内のどこに所在し、どのようなファクターが原子力への移行を可能にするか、②採用炉型やコスト、建設スケジュール等、投資家に建設プロジェクトへの投資を決断させるファクターは何か、③「C2Nへの移行」が地元コミュニティにどのような影響を及ぼすか――を取り上げている。国立研究所の調査チームはすべての石炭火力発電所の特性を精査して、C2N候補となる157の閉鎖済みサイトと237の運転中サイトを特定。これらをさらに、人口密度や地震断層からの距離、洪水の可能性など10項目のパラメーターで、原子力発電所の安全な運転が可能であるか評価した。その結果、同チームはこれらの80%が様々な規模やタイプの先進的原子炉の立地に必要な基本的特性を備えていると分析。閉鎖済みの125サイトで新たに計6,480万kW、運転中の190サイトでは計1億9,850万kWの原子力発電設備容量が設置可能だと結論付けた。現在米国では、約9,500万kWの原子力発電設備で無炭素電力の約半分を供給しているが、C2Nへの移行にともない、無炭素電源の設備容量を3億5,000万kW以上に拡大できると強調している。同報告書はまた、「C2Nへの移行」を通じて石炭火力の地元コミュニティでは、新たな雇用や経済活動が生み出され、環境条件も改善されると指摘。このような恩恵は、化石燃料発電による大気汚染で不利益を被ったコミュニティでは特に重要だと述べた。調査チームの計算では、ケーススタディとして出力120万kWの石炭火力発電所をほぼ同じ規模の原子力発電所((ニュースケール・パワー社製の出力7.7万kWのSMR×12基を使用。原子力の設備利用率の高さを考慮して出力は低めに設定。))でリプレースした場合、用地や送電網、事務棟、電気機器設備など石炭火力のインフラ設備を再利用できるため、更地に建設するケースに比べ原子力発電所の建設コストは15%~35%削減されるという。地元コミュニティでは年間2億7,500万ドルの追加的な経済効果が発生するとともに、新たに650名以上の常勤雇用が創出される。地元コミュニティには石炭火力発電所に勤務していた熟練の人材が残されており、新たな原子力発電プロジェクトではノウハウとスキルが豊富な地元の労働力を活用できる。環境面の利点としては、原子力発電へのリプレースにより石炭火力の地元コミュニティではCO2の排出量が86%削減され、調査チームはガソリン車50万台分以上の排出量削減に相当すると強調。大気質の改善により、喘息や肺がん、心臓病などの発病率も低下するとしている。調査チームの説明では、今回の報告書で評価した石炭火力発電所はあくまでも分析目的で選択されたもので、現時点で入手が可能なデータと文書化された仮説に基づいている。判明したのは一般的な情報であるため、関係するコミュニティや投資家、その他のステークホルダーが、特定の石炭火力発電所を特定の原子炉に置き換える際、詳細な分析等の実施に役立ててほしいとしている。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Sep 2022
- NEWS
-
米国で原子力への税額控除を盛り込んだ「インフレ抑制法」が成立
米国のJ.バイデン大統領は8月16日、原子力に対する税制優遇措置等を含めた気候変動対策や、高齢者の医療費負担軽減などを盛り込んだ「インフレ抑制法案(H.R.5376)(IRA of 2022)」に署名、これにより同法案は正式に成立した。インフレ抑制法案の審議では議会上院が7日付けで可決したのに続き、下院も12日に220対207の賛成多数で可決していた。総額で約4,370億ドルの歳出をともなうインフレ抑制法では、約3,690億ドルが「エネルギーの供給保証と気候変動対策への投資」に充てられており、CO2を排出しない原子力については、2024年以降に発電/販売される電力量に新たな税制優遇措置を適用。多数の先進的原子炉設計で利用が見込まれているHALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))については、その入手が一層簡便になるよう努力するとともに、エネルギー省(DOE)傘下の国立研究所におけるインフラ整備に一層の予算措置を講じることになった。NEIのコースニック理事長 ©NEI米原子力エネルギー協会(NEI)のM.コースニック理事長は、大統領の署名に先立つ12日に声明文を発表。そのなかで、「米国でクリーンエネルギー経済への移行を促進する重要法案であり、この移行にともなう原子力の重要性を示す明確なメッセージになった」と指摘した。同理事長によると、インフレ抑制法では既存の大型炉や今後建設される先進的原子炉、およびHALEU燃料や水素製造に対する投資と税額控除が明記されており、原子力発電は安定した電力供給の基盤を形成する電源として、その他のクリーンエネルギーと平等の扱いを受けることになる。同理事長の認識では、クリーンエネルギーへの需要が高まるなか、電気事業者やその他の関係企業が脱炭素化の目標達成に新たな原子炉が有効である点に注目。クリーンエネルギーへの投資条項を含んだインフレ抑制法が成立したことで、投資家は既存の原子炉のみならず、新たに建設される原子炉に対しても投資がし易くなる。各国で同様の傾向にあり、気候変動関係の目標達成のみならず、確実なエネルギー供給に向けて新たな原子炉の建設が検討されている。同理事長としては、今後も議会の政策立案者と協力して働く考えであり、原子力が「公正で安価なエネルギーへの移行」を進める原動力であり続けられるよう保証していきたいとしている。また、DOEのJ.グランホルム長官も12日付けで声明を公表しており、同法によって米国は2030年までにCO2排出量を半減させる規模とペースで、クリーンエネルギー源を建設できると指摘。「バイデン大統領は超党派のインフラ投資法や、半導体の国内生産を支援するCHIPS法を可決・成立させたのに続き、今回のインフレ抑制法で米国がクリーンエネルギーの世界市場をリードしていけるよう導いた」と述べた。当然のことながら、これを実現するには同法の条項を効果的に実行する必要があり、グランホルム長官は「米国民がクリーンエネルギー経済への移行を成し遂げて国家のエネルギー供給を強化し、さらなるアクションに向けた推進力を構築できることを確信している」と強調した。(参照資料:米国議会、DOE、NEIの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 17 Aug 2022
- NEWS
-
米国のダウ社、X-エナジー社製小型HTGRの建設に向け基本合意
米ミシガン州に本社を置く素材関連企業のダウ(Dow)社は8月9日、メキシコ湾沿いの同社施設の一つでX-エナジー社製の小型高温ガス炉(HTGR)「Xe-100」を建設するため、基本合意書を交わしたと発表した。ダウ社はプラスチックや人工化合物のシリコーン、産業用中間代謝産物といった素材製品分野で世界31か国の104地点に製造工場を持ち、2050年までに同社が排出するCO2の実質ゼロ化を目指している。そのため、同社の施設で2030年頃までに「Xe-100」を完成させ、同炉が生み出す無炭素で安価な電力と熱を自社の系列施設に供給する計画。この建設協力の一環としてダウ社は同日、X-エナジー社の少数株主となる方針も明らかにしている。両社の発表によると、第4世代の原子炉設計となる「Xe-100」は過去数十年にわたる研究開発と原子力発電所の運転経験に基づいて開発され、1モジュールあたりの電気出力は8万kW。これを4モジュール備えた発電設備では、クリーンで安全性の高いベースロード用電力を32万kW分供給できる。また、1モジュールあたりの熱出力は20万kWで、高温高圧の蒸気を産業用に提供することが可能である。米エネルギー省(DOE)は先進的な小型モジュール炉(SMR)設計を、「クリーンで安全、かつ安価な原子力オプションを開発する」上で非常に重要と認識しており、2020年10月には、原子力産業界が実施する先進的原子炉設計の実証を支援するため、X-エナジー社を「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」における初回支援金交付対象の1つに選定した。その後の今年4月、ワシントン州の2つの公益電気事業者が、州内での「Xe-100」初号機建設に向けて同社と了解覚書を締結した。また、6月にはメリーランド州のエネルギー管理局が、州内の石炭火力発電設備のリプレースとして、同設計の経済的実行可能性や社会的便益の評価等を開始している。ダウ社のJ.フィッタリング会長兼CEOは、SMRについて「当社がCO2排出量を実質ゼロ化する際の重要ツールであり、低炭素な方法で顧客に製品を提供できるという能力を示すもの」と評価。X-エナジー社の「Xe-100」は、その中でも最も進んだ次世代技術と指摘した上で、「これを建設することは、当社がCO2を排出しない製造方法で業界をリードする重要な機会になる」と強調している。(参照資料:ダウ社、X-エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月10日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 16 Aug 2022
- NEWS
-
米ホルテック社、米国内でのSMR建設で政府の融資保証を申請
米国のエネルギー関連サービス大手であるホルテック・インターナショナル社は7月20日、同社製小型モジュール炉(SMR)の建設計画、およびSMRの量産に向けた機器製造能力の向上計画に連邦政府の融資保証プログラムを適用してもらうため、74億ドル規模となる建設計画の申請書をエネルギー省(DOE)に提出したと発表した。発表によると同社はすでに今年3月、開発中の「SMR-160」(電気出力16万kW)を国内で4基建設する計画への融資保証プログラム適用を求めて、申請書の前半部分(パートI)をDOEに申請した。これを受けてDOEが、計画全般について申請を行うようホルテック社に要請したことから、同社は19日に計画の後半(パートⅡ)として、SMR用機器の既存の製造プラント拡張と新設に関する部分を申請した。2005年エネルギー政策法に基づくDOEの融資保証プログラムは、新たなエネルギー技術の商業利用化とクリーン・エネルギー計画に道筋をつけることが主な目的。原子力発電所の新規開発計画については、建設コストの最大80%まで政府が保証することとなっており、これまでにジョージア州におけるA.W.ボーグル原子力発電所3、4号機(各PWR、110万kW)増設計画に対して、融資保証が適用されている。ホルテック社は現在、ニュージャージー(NJ)州カムデンとペンシルベニア州ピッツバーグで機器の製造プラントを保有しており、SMR機器を毎年1,000点近く製造。計画では、カムデンにある先進的な製造プラントに機械加工やロボット溶接、原材料取扱関係の機器を追加してSMR機器の製造能力を拡大するが、これは今後10年間に予想されるSMR需要の増大を満たす措置となる。同社はまた、新たにSMR-160用機器を製造する大型プラントの建設を計画中。立地点は今のところ未定だが、同社ではこの「ホルテック重工施設(Holtec Heavy Industries)」を、カムデンの製造プラントよりも規模の大きい主力プラントにする方針である。SMR-160の国内建設に関してホルテック社は今回、米国の大手原子力発電事業者であるエンタジー社と合意覚書(MOA)を締結したことを明らかにしている。同MOAに基づいて、エンタジー社は同社のサービス区域内にある既存のサイト1か所以上で、SMR-160を1基以上建設する実行可能性を調査。同社のC.バッケン原子力部門責任者は「モジュール方式を採用したSMR-160には固有の安全性が備わっているほか、小型で操作が簡便、確証済みの軽水炉技術を採用するなど、CO2排出量を実質ゼロ化していく上で有効」と指摘している。SMRの建設でDOE融資保証の適用を受けるには、SMRの立地候補地を有する州政府から長期の電力購入契約や建設工事に対する財政支援を得ることが必要だ。ホルテック社が今回提出した融資保証申請書には、可能性のある立地点が複数記載されている。エンタジー社のサービス区域内に加えて、ホルテック社はNJ州内で保有するオイスタークリーク原子力発電所(※2018年9月に永久閉鎖された後、廃止措置のため当時の保有者であるエクセロン社から購入)の敷地内を潜在的なSMR立地点の1つに想定。ホルテック重工施設についても、最初の一群のSMR-160立地エリアに建設する可能性があるとしている。(参照資料:ホルテック社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 Jul 2022
- NEWS
-
米エネ省、4つの国立研究所で脱炭素化の試験プログラム開始
米エネルギー省(DOE)は5月25日、国内で脱炭素化が難しい産業に対して、CO2排出量の実質ゼロ化に向けた最初の取り組みモデルを示すため、ゼロ化対策の基盤構築を目的とした「国立研究所を脱炭素化する試験的プログラム(The Net Zero Labs Pilot Initiative)」を傘下の4つの国立研究所で開始すると発表した。J.バイデン大統領が2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指していることから、DOEはその支援のため、まず国内17の国立研究所の中からアイダホ国立研究所(INL)など、地理的、気候的に異なる地域でそれぞれに特有のエネルギー問題を抱える4つを選定。3,800万ドルの予算で、クリーンエネルギー・インフラの開発をこれらの国立研究所で促進するほか、CO2排出量の削減が可能な技術の開発や活用対策を4つの国立研究所で積極的に講じていく。これに倣って、産業界のみならずDOEのその他の施設や連邦政府、州政府、地方自治体でも、同様の対策を実施できるような基盤を固めたいとしており、DOEは次年度で、17のすべての国立研究所が競争ベースでこのプログラムの追加予算を獲得可能にする方針である。DOEの説明によると、傘下の国立研究所は連邦政府施設のなかでも最も複合的にエネルギーを活用しており、その他の標準的な施設と比べて、供給停止からの回復力(レジリエンス)といった要求事項がはるかに多い。それぞれの国立研究所が、産業規模の重機器やデータセンター、原子炉など、大容量で持続的な動力源を必要とする特殊なインフラ設備を備えているため、DOEは今回のプログラムを通じて、このような重要設備がクリーンエネルギーで動くことを実証する考えだ。INLのほかに今回選定された研究所は、ペンシルベニア州とウエスト・バージニア州およびオレゴン州に3つの分所を持つ「国立エネルギー技術研究所(NETL)」、コロラド州の「国立再生可能エネルギー研究所(NREL)」、そしてワシントン州の「国立パシフィックノースウエスト研究所(PNNL)」である。INLでは、米国が脱炭素化目標を達成するため先進的な原子力技術を研究しており、「この目標達成には、技術革新を進めるこれら4つの研究所が連携して取り組むことが重要だ」と指摘した。これに向けて、INLは先進的原子炉技術やその他の技術開発で、数10年にわたって積み重ねてきた研究や経験を活用すると表明。革新的原子力技術の開発・実証・実用化というミッションを担う国立の原子力研究所として、INLはこのプログラムでCO2排出量を実質ゼロ化するための包括的なアプローチを取っていく。原子力に関してINLは、24時間年中無休で無炭素なエネルギーを生み出せる確認済みの技術と評価しており、これによって化石燃料への依存度を大幅に下げるとともにCO2の排出量も削減できると強調。そのために、マイクロ原子炉や小型モジュール炉(SMR)など先進的原子炉技術の活用を進めており、これらを太陽光や風力などの再生可能エネルギー源と統合した場合は、小規模発電網が有効であることも実証するとしている。今回のプログラムについて、DOEのJ.グランホルム長官は、「CO2排出量の実質ゼロ化に移行していくには、海運業や製造業、建設業に至るまで、あらゆる産業界でCO2を大幅に削減しなければならないが、これは当省の国立研究所の運営についても言えることだ」と表明。連邦政府の施設の中でも、最も多量にエネルギーを消費し脱炭素化が難しい施設によって、DOEはCO2排出量の削減取り組みについて、その他の施設に模範例を示す。また、地球温暖化の破壊的な影響を緩和しつつエネルギーコストを削減、クリーンエネルギー業界で増加する労働者も支援していきたいとしている。(参照資料:DOE、INLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 May 2022
- NEWS
-
米エネ省、多目的試験炉の建設に向け最終EISを発行
エネルギー省(DOE)は5月13日、先進的原子炉の原子燃料や資機材、計測機器等の開発で重要な役割を担う「多目的試験炉(VTR)」の建設に向けて、環境影響声明書(EIS)の最終版(FEIS)を発表した。その中でDOEは、VTRを建設・運転するのに最も好ましいサイトとして、傘下のアイダホ国立研究所(INL)を特定。VTRの支援施設として可能な限りINLの既存設備を活用する方針だが、VTRで使用する燃料の製造サイトについては今のところ判断を下していない。DOEは今後も技術評価を継続し、燃料製造の好ましいサイト・オプションを特定するとしている。VTRはナトリウム冷却式の高速スペクトル中性子照射試験炉(熱出力30万kW)で、革新的な原子力技術の研究開発および実証を飛躍的に加速すると期待されている。DOEは米国が2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成する上でも、VTRは大きく貢献すると指摘。VTRの建設に関する最終決定は今年の後半に下す予定で、建設が決まった場合は議会が予算措置を講じるのを待って、2023年にも最終設計と建設工事を開始、2026年末までにVTRの運転を本格的に始める計画だ。DOEの発表によると、米国では過去30年近く高速炉タイプの中性子源や高速中性子の照射試験を行える施設が存在せず、そうした能力を有するロシアや中国、インドに遅れをとってきた。DOEの原子力局は高速スペクトル試験炉の必要性を指摘する複数の報告書を受け、2018年に「VTRプログラム」を設置。同年9月に成立した「2017年原子力技術革新法(NEICA2017)」でもVTRの必要性が強調されており、DOEは同法の指示に従って2019年2月にVTRの建設プロジェクトを発表している。翌2020年9月には、DOEはVTR建設に向けた次のステップとして「重要決定(CD)1」を承認した。研究インフラの設計・建設における意思決定プロセスでは、CD-1で施設の概念設計やコストの見積が認められており、環境影響調査の実施もこの中に含まれている。その後のCD-2で詳細設計、CD-3で建設開始、CD-4でVTRは運転開始に至る見通しである。EISは国家環境政策法(NEPA)に準じて作成されるもので、DOEはVTRの建設と運転、および燃料の製造が周辺のコミュニティや環境に及ぼす潜在的な影響を分析した。可能性がある3つの選択肢は、①「VTRと燃料製造施設をアイダホ州のINLに設置」、②「VTRのみをテネシー州のオークリッジ国立研究所(ORNL)に設置」、および③「燃料製造施設のみをサウスカロライナ州のサバンナリバー・サイト(SRS)に設置」。これらについて、VTRで行われる試料の照射後試験や、中間貯蔵と最終処分の実施に先立つ使用済燃料の調整と貯蔵、VTR燃料の原料調達と燃料ピンの製造および燃料集合体の組立、などの項目で影響評価を行った。DOEは2020年12月にEISの案文を公表しており、その後は案文に対するコメントを募集。インターネットを通じて公開ヒアリングを2回実施したほか、州政府や連邦政府の機関、および先住民を含む一般国民からも意見を聴取し、最終版を作成したとしている。(参照資料:DOEの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 18 May 2022
- NEWS
-
米エネ省、既存炉の早期閉鎖防止プログラムで申請の募集開始
米エネルギー省(DOE)は4月19日、既存の原子力発電所が早期閉鎖に追い込まれるのを防止するために設置した総額60億ドルの「民生用原子力発電クレジット(CNC)プログラム」で、初回分の申請書を受け付けると発表した。CNCプログラムでは、有資格と認定された商業炉に対しDOEが認定日から4年にわたり、一定の発電量に対して一定の適用価格で「クレジット」を付与。クレジットの総量に応じて支援金を支払うと見られており、DOEはプログラム基金に残金がある限り、2031年9月末までクレジットを付与していく考えだ。今回発表した申請ガイダンスで、DOEは経済的事情により早期閉鎖の可能性がある原子力発電所の所有者や運転事業者にプログラムへの申請方法を示している。有資格と認定されるには、経済的理由により早期閉鎖のリスクにさらされていること、当該炉の閉鎖が大気汚染物質とCO2の排出量増加につながること等を実証しなければならない。また、当該炉が安全に運転継続できることを原子力規制委員会(NRC)が保証し、DOE長官がこれを確認する必要がある。DOEはプログラムの手続きを迅速に進めるため、これらの認定に応募するための申請書と、クレジットの付与を求める「封かん入札」の申請書を一つにまとめて提出するよう指示している。初回の申請書締切日は5月19日で、DOEは初回に限り「早期閉鎖の方針をすでに公表済みの商業炉」を優先的に認定する。これは一般市民からの意見に促された措置であり、2023会計年度の第1四半期に予定されている2回目以降、このような優遇措置はなくなるとしている。CNCプログラムの実施は、昨年11月にJ.バイデン政権が承認した「超党派のインフラ投資法」で約束されていたもの。バイデン大統領は「2035年までに電力部門を100%カーボンフリーとし、2050年までに米国経済全体のCO2排出量を実質ゼロ化する」を目標に定めており、既存の原子力発電設備はその達成に極めて重要な役割を担うと考えている。DOEの説明によれば、国内電力市場の自由化およびその他の経済的ファクターにより、米国では2013年以降すでに12基の商業炉が早期閉鎖されている。これにともない、これらが立地していた地域では代替電源によりCO2の排出量が増大し大気の質も低下。地元コミュニティに財政的な貢献をしてきた高サラリーの雇用が、数千人規模で失われた。CNCプログラムでDOEはこのような課題に公平に取り組むことを目指しており、既存の原子力発電所の早期閉鎖を防ぐことでクリーンエネルギー関係の雇用を維持し、低炭素電力の供給量を確保する。全米のコミュニティが今後も持続可能なエネルギー・インフラから恩恵を受け続けられるよう、バイデン大統領のクリーンエネルギー政策の目標達成を促していく。DOEは60億ドル相当の戦略的投資計画となるCNCプログラムの開始に先立ち、今年2月に実施の意向を示した文書(NOI)と関連情報の提供を依頼する文書(RFI)を一般市民や関係者に発出している。RFIでDOEは、プログラムの仕組みや適用を受けるための認定プロセス、適格性の判断基準、クレジットの入札募集とその割り当て方法等について、120件以上のコメントを受領。同プログラムの策定に一般市民が幅広く参加したことについて、DOEは謝意を表明している。今回の募集に際しDOEのJ.グランホルム長官は、「米国における無炭素電力の半分以上は原子力によるものであり、バイデン政権はクリーンエネルギー政策の目標達成のため、既存の原子力発電所を最大限に活用する方針である」と表明。「目標の達成に利用できるツールはすべて活用しており、原子力発電所の運転継続を優先するのもその一環だ」と説明している。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 21 Apr 2022
- NEWS
-
米X-エナジー社、TRISO燃料製造施設の建設に向け特殊核物質の取扱い申請書提出
米メリーランド州のX-エナジー社は4月6日、商業規模の3重被覆層・燃料粒子(TRISO燃料)製造施設「TRISO-X(TF3)」の建設に向けて、特殊な核物質の取り扱いに関する許可(SNM)申請書を米原子力規制委員会(NRC)に提出した。TRISO燃料は、U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン(HALEU燃料)を黒鉛やセラミックスで3重に被覆した粒子型の燃料。X-エナジー社が開発している小型のペブルベッド式高温ガス炉「Xe-100」で使用予定であるほか、その他のデベロッパーが開発中の小型モジュール炉(SMR)や先進的原子炉設計の多くで、HALEU燃料が使用される見通しである。ただし、製造施設を建設するには連邦規則10CFR70に基づき、カテゴリーⅡの「特殊核物質所有認可」を取得する必要がある。NRCは今後、同カテゴリーでは初となったX-エナジー社の申請書を24~36か月かけて審査する。X-エナジー社はこれに先立つ4月4日、商業規模のTRISO燃料製造施設「TRISO-X(TF3)」を、テネシー州オークリッジの「ホライズンセンター産業パーク」内で建設すると発表した。同社はすでにオークリッジで、TRISO-Xのパイロット製造ラインとTRISO-X研究開発センターを保有。今年中にも同社の100%子会社で、TF3の建設と操業を担当するTRISO-X社がサイトの準備を開始し、その他の許認可を取得。早ければ2025年にもTF3の操業を開始する方針である。初期段階の生産量は、「Xe-100」12基分の燃料に相当する年間8トン(ウラン換算。以下同)だが、2030年代初頭までに16 トン/年の生産を目指す考えである。X-エナジー社はTF3開発でこれまでに約7,500万ドルを投じており、オークリッジで400人以上の雇用創出が見込まれる同建設計画では、今後3億ドル近い投資を呼び込む計画である。また、米エネルギー省(DOE)は2020年10月、「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」における7年間の支援対象企業の一つとして同社を選定。2021年11月には米国議会が同プログラムの下、「Xe-100」の実証炉建設に約11億ドルを交付すると決定しており、この支援金はTF3の建設にも活用される。「Xe-100」は電気出力7.5万kWのSMRで、これを4基連結することで出力を30万kWまで拡大することが可能。X-エナジー社は同設計により、世界中で高まっているクリーン・エネルギーの需要に応えられると考えている。同設計については、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が2020年8月から予備的設計評価(ベンダー設計審査)を開始。建設・運転許可の取得に向けた正式な申請手続に先立ち、同設計がカナダの規制要件を満たしているか、X-エナジー社の要請に基づいて評価中である。また、ヨルダンが2030年までに「Xe-100」を国内で4基建設することを希望。X-エナジー社とヨルダン原子力委員会は2019年11月、基本合意書を交わしている。米国内では、ワシントン州の2つの公益電気事業者(グラント郡PUDとエナジー・ノースウエスト社)が、「Xe-100」をエナジー・ノースウエスト社保有のコロンビア原子力発電所と同じサイト内で建設することを計画。両社とX-エナジー社は2021年4月、「3社間エネルギー・パートナーシップ」を構築するための覚書を締結した。TRISO-X社のP.パッパノ社長はTF3の建設サイト決定について、「TRISO燃料の技術は過去60年にわたって開発・改良されてきたものであり、TF3の建設はこのように画期的な燃料技術を市場にもたらすことになる」と表明。TRISO-X社が創設されて以降、同社の技術に対する内外の関心が高まりつつあり、軍事用マイクロ原子炉の開発を進めている国防総省(DOD)や、深宇宙探査用核熱推進(NTP)技術の開発を進めているアメリカ航空宇宙局(NASA)も、すでに同社の顧客だと強調している。(参照資料:X-エナジー社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 11 Apr 2022
- NEWS
-
米エネ省、先進的原子炉の廃棄物削減プロジェクトに3,600万ドル
エネルギー省(DOE)のエネルギー高等研究計画局(ARPA-E)は3月10日、次世代の先進的原子炉から出る放射性廃棄物の発生量削減や処分の促進を目指した11件のプロジェクトに対し、合計3,600万ドルを交付すると発表した。これらのプロジェクトは、米国で最も信頼性の高いクリーンエネルギー源の1つである原子力発電を今後一層開発・活用していくことや、廃棄物の処分促進を目的としたもの。小型のナトリウム冷却高速炉「Natrium」を開発中のテラパワー社やGE社などの民間企業、大学、研究機関等が提案中、あるいは実施しているプロジェクトである。DOEによると、原子力は米国における総発電量の約20%、無炭素電力では約50%を賄う国内最大のクリーンエネルギー源だが、排出される廃棄物は安全に貯蔵・処分する必要がある。これを実行に移し環境等への影響を緩和することは、原子力に対する支援の強化でJ.バイデン大統領が昨年11月に成立させた「超党派のインフラ投資・雇用法」における目標の達成にも貢献。原子力を含むクリーンエネルギー全体の、平等な開発支援につながるとDOEは説明している。今回の支援金は、ARPA-Eが2021年5月に起ち上げた「放射性廃棄物と先進的原子炉における処分システムの合理化(ONWARDS)」プログラムから拠出される。ONWARDSでは、先進的原子炉から出る使用済燃料を10分の1に削減するなどの目標を掲げており、これらの原子炉の燃料サイクルに関わる廃棄物の処分問題や貯蔵問題を解決するための技術開発を支援。今回選定されたプロジェクトは、安全で持続可能な燃料貯蔵およびクリーンエネルギーの開発を米国内で促進することになる。11件の選定プロジェクトのうち主なものは以下の通り:・GE社の研究開発部門であるグローバル・リサーチが実施を予定している、「再処理施設でも利用可能な核分裂性物質の計量管理システムの開発」(DOEから約450万ドル提供)。・テラパワー社が提案する、「高温下の不安定な塩化物塩の制御が可能な、使用済燃料からのウラン抽出法開発」(855万ドル)。・オクロ(Oklo)社が提案する、「最新の使用済燃料リサイクル施設における経済面の実行可能性研究」(400万ドル)。・DOE傘下のアイダホ国立研究所が実施中の、「革新的でシンプルな金属燃料のリサイクル・プロセス開発」(約200万ドル)。・ラトガーズ大学が実施を予定している、「使用済燃料を高密度で耐久性の高いセメント型廃棄物に転換するシンプルで拡張縮小可能な手法の開発」(約400万ドル)。DOEのJ.グランホルム長官は、「放射性廃棄物の安全な管理で全く新しい手法を開発できれば、CO2を排出しない原子力発電で米国内のより多くの家庭やビジネスに電力を供給できる」と指摘。先進的原子炉設計の近代化や、クリーンエネルギー事業の強化に資する次世代技術の開発企業や大学等を支援することで、ARPA-Eはこの目標を達成していく方針だと強調している。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 16 Mar 2022
- NEWS
-
米エネ省、クリーンエネルギーのサプライチェーン強化へ
米エネルギー省(DOE)は2月24日、クリーンエネルギーのサプライチェーンでレジリエンス(供給力の一時的な低下等からの回復力)を強化し、関係機器の製造能力を増強、数百万人規模の雇用を創出していくため、60以上の具体的なアクション項目を盛り込んだ包括的な戦略を公表した。米国最大の無炭素電源であり、国内で約50万人の雇用を支える原子力に関しては、昨年11月に成立した「超党派のインフラ投資・雇用法(BIL)」を通じて、先進的原子炉の開発等に約25億ドルの投資を行う考えを明らかにした。この戦略は「クリーンエネルギー社会への確実な移行に向けたサプライチェーンの確保戦略(America’s Strategy to Secure the Supply Chain for a Robust Clean Energy Transition)」と題されている。国家経済とエネルギー供給の保証、および国家安全保障のさらなる強化に向けた総合計画としては、米国初の試みであり、エネルギー部門で頑健かつ多様な産業基盤を構築するため、様々な重要戦略を盛り込んでいる。同戦略によって、DOEはクリーンエネルギー関係の機器製造や技術革新で世界的リーダーとしての米国の立場を確立する方針だ。サプライチェーンへの投資や強化を通じて経済成長と関係雇用の創出を促進するだけでなく、サプライチェーンの世界的な途絶を防止することで米国の各家庭や企業の金銭的負担を減らし、インフレとの闘いを支援していくとしている。同戦略は、米国の経済的繁栄と国家安全保障を確実なものとするため昨年2月にJ.バイデン大統領が公布した「米国サプライチェーンに関する大統領令14017」へのDOEとしての対応であり、DOEと傘下の国立研究所の研究者が、原子力関係も含めてエネルギー部門全体で幅広く実施した13のサプライチェーン評価の結果に基づいている。連邦政府はBILを通じてエネルギー部門で620億ドルの投資を行うが、今回の戦略でDOEは、クリーンエネルギーへの移行にともなうビジネス・チャンスを米国がどのように捉え、エネルギー関係で世界規模の製造基盤や労働力をどのように構築していくか概説している。先進的原子炉の開発、使用済燃料の中間貯蔵施設建設を促進同戦略によると、米国の原子力産業界では近年、大きさが様々なだけでなく冷却材や燃料、建設方法も異なる先進的原子炉を幅広い用途に活用できるよう、設計や実証、建設に向けた計画が進められている。このような技術革新や官民の連携協力に促され、先進的原子炉設計の多様化は今後数年間でさらに進むとDOEは予測。これらの設計では米国の原子力産業界が高い効率性と安全性を実現しており、革新的技術を用いたクリーンエネルギー技術の開発は、米国がこの部門で再び国際的なリーダーシップを確立する機会をもたらすことになる。DOEの認識では、様々な先進的原子炉を国内外で建設し、そのサプライチェーンについても米国がリーダーシップを発揮すれば、原子力以外のクリーンエネルギー技術が利用できない地域で脱炭素化を進展させることができる。また、安全性や核不拡散性等の点で最も厳しい基準を満たしている米国の原子炉が、確実に建設されていくとしている。これらのことから、DOEは原子力に特化した今後の政策戦略として、原子力規制委員会(NRC)と調整を図りつつ先進的原子炉開発をタイムリーに支援していく考えを表明した。具体的には、「2017年原子力技術革新対応法(NEICA2017)」を全面的に実行に移し、先進的原子炉の設計概念を民間部門と国立研究所が共同で実証。技術面で得られる専門的知見は、NRCと共有していく。また、2019年に成立した「原子力技術革新・規制最新化法(NEIMA)」に基づき、今後短期間のうちに次世代原子炉技術に効率的に許認可を与えていく。これらの原子炉の多くで使用されるHALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)に関しては、先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)と同様、DOEが米国の民間部門による供給体制の確立を支援していく。DOEはまた、放射性廃棄物の処分について総合的な戦略を策定するため、手始めに連邦政府所有の使用済燃料・集中中間貯蔵施設の建設に向けて、地元の合意を得ながら立地プロセスを進めていく考えを明らかにした。DOEはまた、このような戦略の実行に際し米国議会に勧告する事項として、研究開発インフラに欠けている重要部分に継続的に予算を投入していくことを指摘。例として、高速中性子の照射施設となる多目的試験炉(VTR)の建設計画を挙げている。さらに、革新的な原子力エネルギー・システムの開発と配備を加速するため、DOEのみならず国防総省(DOD)や航空宇宙局(NASA)にも研究開発・実証・配備(RDD&D)予算の充当支援が必要だと表明。そのほかにも、DOEが統合的な処分戦略に基づいて使用済燃料の輸送や中間貯蔵、最終処分を実施していけるよう、議会に対して「1982年の放射性廃棄物政策法(NWPA)」の改正を勧告している。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 03 Mar 2022
- NEWS
-
米エネ省、既存原子力発電所の運転継続支援プログラムで情報提供依頼書発出
米エネルギー省(DOE)はこのほど、国内で既存の原子力発電所の運転継続を支援していくため、実施予定の「民生用原子力発電クレジット(CNC)プログラム」について、DOEの意向を通知する文書(NOI)と関連情報の提供依頼文書(RFI)を関係者に向けて発出した。米国では現在、CO2を排出しないクリーン電力の発電量で原子力が最大シェアの52%を占めている。このため、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指すバイデン政権は、昨年11月に成立した「超党派のインフラ投資・雇用法」の中で、CNCプログラムの実施に60億ドルの予算を充当すると約束。同プログラムを通じて、DOEは全米に立地する原子力発電所が早期閉鎖に追い込まれるのを防ぐ方針であり、CO2の排出量を抑えつつ数千名分の関係雇用を維持していくとしている。NOIでは具体的に、原子力発電所のオーナーや運転企業、州政府や地元自治体の規制当局、同プログラムから影響を受けるコミュニティ、環境保護団体等に対し、DOEの計画を周知するとともに同計画への申請を促していく。また、RFIでは、CNCプログラムの仕組み、特に同プログラムの適用を受けるための認証プロセスや適格性の判断基準、クレジットの獲得に向けた入札の実施、クレジットの割り当て方法等について、3月初旬から中旬にかけて、意見や関連情報を募集する計画である。DOEの発表によると、バイデン政権は現在国内で稼働する93基の商業炉について、「CO2排出量の実質ゼロ化を達成する上で極めて重要なエネルギー供給源である」と認識。電力市場の自由化やその他の経済的ファクターにより、2013年以降すでに12基の商業炉が早期閉鎖されたが、これらが電力供給していた地域ではCO2の排出量が増加し大気の質が低下、高サラリーの雇用も数千人規模で失われた。DOEのCNCプログラムでは、原子力発電所のオーナーや運転企業がその運転の継続に向けてプログラムの適用申請を行うことになるが、これに際して申請者は、その商業炉が経済的理由により閉鎖の危機に瀕していること、その閉鎖が大気汚染物質の増加に繋がることなどを証明しなくてはならない。一方でDOE側も、その商業炉が安全に運転継続できることを原子力規制委員会(NRC)が保証しているか見極める必要がある。DOEはまた、「有資格」と認定した商業炉に対して認定日から4年にわたり、一定の発電量に対して一定の行使価格を設定した「クレジット」を付与。クレジットの総数に基づいて支援金が支払われると見られており、DOEとしてはプログラム資金に残金がある限り、2031年9月末までクレジットを付与していく考えである。DOEのJ.グランホルム長官は国内の原子力発電所について、「バイデン政権が掲げる地球温暖化の防止目標達成に絶対不可欠の重要電源であり、DOEは100%クリーンな電力の供給維持で原子力発電所の早期閉鎖を阻止していく」と表明。これは超党派のインフラ投資法によって可能であると述べており、「我々は既存のクリーン・エネルギー・インフラを活用してエネルギーの供給保証を強化、関係雇用を守るだけでなく次世代エネルギー技術の開発も促進できる」と強調している。(参照資料:米エネ省の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 21 Feb 2022
- NEWS
-
米エネ省、アイダホ研でマイクロ原子炉の実物大プロトタイプ作成
米エネルギー省(DOE)の原子力局(NE)は2月7日、傘下のアイダホ国立研究所(INL)内の燃料・材料研究施設群で、「MARVELマイクロ原子炉」の実物大プロトタイプが完成したと発表した。このプロトタイプは「一次冷却材試験装置(PCAT)」と呼称されており、核分裂反応ではなく電気加熱で発熱を模擬する。DOEは今後、PCATを使ってMARVELマイクロ原子炉の最終的な設計の性能を確認し、2024年までに同炉をINL内の小規模電力網に接続する計画である。MARVELの正式名称は、「Microreactor Applications Research Validation and EvaLuation(マイクロ原子炉の適用に関する研究検証と評価)」。DOEは2021年4月、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指す米国の地球温暖化防止取り組みの一つとして、電気出力100kWのマイクロ原子炉を建設するという「MARVELプロジェクト」を発表した。その際、「今後3年以内にINLの過渡事象試験(TREAT)施設内でマイクロ原子炉の運転を開始する」と表明していた。MARVELマイクロ原子炉では冷却材としてナトリウムとカリウムを使用、エネルギーを100kWの電力に変換するには、既存技術のスターリング・エンジン(*)を活用する。完成すれば、同炉ではマイクロ原子炉専用の規制承認プロセスの策定や、リモート操作によるモニタリング・システムの評価、自動制御技術の開発など、マイクロ原子炉の様々な適用に向けた試験が行われる。DOEはまた、水の浄化や地域暖房用の熱生産、地球温暖化の防止に資する気候制御など、幅広い用途にマイクロ原子炉を活用できないか可能性を模索する。MARVELマイクロ原子炉をINLの電力網に接続した後、DOEは同炉を直ちに外部研究者の共用施設にする方針だとしている。発表によると、PCATの組み立て作業は9か月で完了。その高さは3.6m、重さは900kg以上になるなど、INL内で組み立てられた機器類の中では最大級の大きさとなった。PCATを使った試験について、同プロジェクトのY.アラファト技術リーダーは、「MARVELマイクロ原子炉の設計を規制当局が確認する際はモデリング・ツールを利用することになるが、熱流動などすべての側面をモデル化するわけにもいかない」と説明。このため、同炉が最終的に高度な信頼性を備えた設計になるよう、MARVELチームはPCATを使ってシミュレーションの結果を確認する。その後は、モデリングやシミュレーションのツールを使って同炉の安全性等を保証するとしている。【注*】:19世紀初頭に開発された外燃機関の一種。シリンダー内に水素等の気体を封入し、外部から加熱・冷却を繰り返してピストンを作動させるエンジン。(参照資料:米エネ省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 10 Feb 2022
- NEWS
-
米エネ省、使用済燃料輸送車両の試作と試験で提案募集
米エネルギー省(DOE)は1月24日、原子力発電所の使用済燃料、および高レベル放射性廃棄物(HLW)を輸送する8軸(車輪が8対=16輪)の鉄道車両「Fortis」でプロトタイプを製造し試験する業務について、「提案募集(RFP)」(=発注側であるDOEの要件を記した文書)を産業界に向けて発出した。「Fortis」は、放射性廃棄物の専用キャスクのような大型コンテナの積載に適した極めて頑丈な設計。輸送時の状態を計測し、リアルタイムで監視者に伝えるハイテク計測機器を搭載している。予備設計はすでに2021年初頭、DOE傘下のパシフィック・ノースウエスト国立研究所(PNNL)の技術支援により完成しており、プロトタイプの製造・試験許可も同じ頃に米鉄道協会(AAR)から取得済みである。DOEはまた、「Fortis」のほかにHLWを専門に輸送する12軸の車両「Atlas」も開発しており、そのプロトタイプではすでに試験を実施中。DOEはこれら2つの開発を通じて、2027年までに放射性物質を安全かつ効率的に輸送する能力を獲得する方針である。米国では「1982年放射性廃棄物政策法」の規定により、全米の原子力発電所敷地内や中間貯蔵施設に保管されている放射性廃棄物をDOEが処分場まで輸送し、処分することになっている。DOEによると「Fortis」の開発は、使用済燃料とHLWの将来の輸送に備えて盤石な輸送能力を得るという取り組みの一環。使用済燃料を封入したコンテナは重さ80~210トンだが、米国ではトラック輸送の法定重量制限である約40トンを大幅に超えてしまうため、これらの輸送では鉄道を使うことが推奨されている。DOEは今回、3月21日までの期間にRFPで募集する提案の項目として、「Fortis」の製造のほかにハイテク・センサーやモニタリング装置を備えた輪軸の入手、高レベル廃棄物の輸送に特化したAARの厳しい性能基準「S-2043」で要件の1つとなっている車両試験の実施、などを盛り込んだ。「Fortis」の設計書は、RFPの結果に基づきDOEが実施契約を結んだ企業に提示することになるが、開発プロジェクトの製造と試験では引き続き、PNNLの技術支援を受けるとしている。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 26 Jan 2022
- NEWS
-
萩生田経産相が会見、米国との原子力協力や今冬の電力需給など
会見を行う萩生田経産相(インターネット中継)萩生田光一経済産業相は1月7日の閣議後記者会見で、6日のジェニファー・グランホルム米国エネルギー省(DOE)長官とのテレビ会談など、原子力・エネルギー政策を巡る最近の動きに関し質疑応答を行った。6日に行われたグランホルム長官とのテレビ会談では、萩生田大臣より「2050年カーボンニュートラル」や2030年度までの温室効果ガス削減目標(2013年度より46%減)達成に向けた取組について説明がなされるとともに、原子力を含めた幅広いクリーンエネルギー分野でのイノベーション・社会実装など、今後の日米間の協力について意見交換。福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水(トリチウム以外の核種が環境放出の規制基準を満たす水)の取扱いに関しては、グランホルム長官から「海洋放出の決定を支持する」として、今後も情報発信において協力していく姿勢が示された。〈経産省発表資料は こちら〉グランホルム米DOE長官とのTV会談の模様(経産省発表資料より引用)7日の会見で、萩生田大臣は、今回の会談で小型モジュール炉(SMR)や高速炉などの実証に日本政府として取り組む方針を伝達したことに関し、「エネルギー基本計画に基づき、国際連携や民間の創意工夫を活用して研究開発や技術実証を推進していくが、現時点において国内で新規にプラントを建設することは想定していない」と明言。さらに、核燃料サイクルについては「高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減や資源の有効利用などの効果をより高める高速炉開発を含め、引き続き推進していく」とした。また、この冬の電力需給見通しについて、萩生田大臣は、「全国的に厳しい。とりわけ東京電力管内では、最も供給予備率が低くなることが見込まれる2月のみならず、既に年末からかなり厳しい状況が続いており、追加的な対策を講じて安定供給に必要な供給力をぎりぎり確保している」と述べた。6日の降雪に伴う首都圏を中心とする電力需要増に関しては、「火力発電所の増出力運転や追加公募により調達した電源の稼働に加え、地域間の機動的な電力融通を行った。東京電力管内の電力使用は97%に上り、どこか1箇所でも不具合が起きれば停電が起きるところだった」と、危機感を示し、引き続き状況を注視しながら電力の安定供給確保に全力を期していくとした。
- 07 Jan 2022
- NEWS
-
米エネ省、地元の合意に基づく廃棄物の中間貯蔵に向け情報提供を依頼
米エネルギー省(DOE)は11月30日、原子力発電所から出る使用済燃料の中間貯蔵地点を特定するため、「地元の合意に基づく立地プロセス」の策定に向けた情報の提供依頼書(RFI)を、関係するステークホルダーやコミュニティに対して発出した。得られた情報は、同プロセスおよび放射性廃棄物の全体的な管理戦略の策定活動を、公正なやり方で次の段階に進めるために活用する。DOEによると原子力発電は、J.バイデン政権が目標とする「2035年までに米国の電力部門を脱炭素化」し、「2050年までに米国経済全体でCO2排出量の実質ゼロ化を達成する」上で非常に重要な電源。放射性廃棄物の適切な管理は、原子力を一層持続可能なオプションとするだけでなく、DOEが使用済燃料の管理義務を履行する一助にもなると指摘している。 DOEが1998年1月から各原子力発電所の使用済燃料引き取りを開始し、深地層最終処分場で処理するという事項は「1982年の放射性廃棄物政策法(NWPA)」に明記されているが、ネバダ州ユッカマウンテンにおける最終処分場の建設計画は2009年、同州の強い反対を背景にB.オバマ政権が打ち切った。政府の有識者(ブルーリボン)委員会は2012年、「NWPAを修正して地元の合意ベースで最終処分場の立地を進めつつ、複数の中間貯蔵施設を建設すること」を政府に対して勧告。これにともないDOEは翌2013年、2025年までに集中中間貯蔵施設を、2048年までに最終処分場の操業を開始するという管理処分戦略を策定した。2017年初頭には、地元の合意に基づく処分場立地プロセスの案文を作成したものの、発足したばかりのD.トランプ政権が優先項目を変更したため、同プロセスは最終決定していない。一方、民間部門においては、中間貯蔵パートナーズ(ISP)社がテキサス州アンドリュース郡で進めている集中中間貯蔵施設の建設計画に対し、原子力規制委員会(NRC)が今年9月に建設・操業許可を発給。NRCは、ホルテック・インターナショナル社がニューメキシコ州南部で進めている同様の建設計画についても、「周辺住民や環境への影響に問題なし」と結論付けた「環境影響声明書(EIS)」案文を2020年3月に公表している。DOEのJ.グランホルム長官は今回、「放射性廃棄物の管理問題を最終的に解決するには、このような施設の誘致に関心を持つコミュニティから直接意見を聞き、ともに働くのが最良の方法だ」とコメント。施設の建設にともない、地元では雇用の創出という現実的な恩恵がもたらされるほか、一般から意見を求めることにより、立地点の特定に向けたプロセスを可能な限り効果的、かつ多くの人が参加可能なものにできると述べた。DOEの発表によると、2020年12月末にトランプ政権が成立させた「2021会計年度の包括歳出法」では、「(放射性廃棄物の)中間貯蔵および放射性廃棄物基金の監督プログラム」に2,750万ドルの予算が認められており、DOEは使用済燃料を管理する当面の措置として中間貯蔵のパイロット・プログラムを進めることが可能になった。DOEとしては地元の合意ベースというアプローチの下、関係する人々やコミュニティを立地プロセスの中心部分に位置付け、使用済燃料の効果的な管理という数10年にわたる課題を成功裏に解決する機会を得たいとしている。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 01 Dec 2021
- NEWS
-
米エネ省の先進的原子炉開発支援、プエルトリコでのSMR立地調査含め850万ドル提供
米エネルギー省(DOE)は11月18日、原子力局(NE)が2017年から実施している「先進的原子力技術開発のための資金提供公募(Industry FOA)」で、産業界が主導する5件のプロジェクトへの支援金として合計850万ドルを交付すると発表した。「Industry FOA」は有望な先進的原子炉設計や燃料の商業化の加速を目的としており、DOEはこれまでの公募で2億1,500万ドル以上を投資。今回選定した5件は第11回目の募集によるもので、これらのプロジェクトではDOEが開発した最新のモデリング・ツールやシミュレーターを活用して、先進的原子炉設計を海上や離島で利用する場合の可能性の評価やその他の研究活動を実施できる。5件のうち「先進的原子炉設計の実証」分野におけるプロジェクトとして、約163万ドルが「プエルトリコにおける小型モジュール炉(SMR)やマイクロ原子炉の立地適性調査(第2段階)」のために交付される。この調査は、カリブ海に浮かぶ米国の自治連邦区の島プエルトリコで、これらの先進的原子炉設計の建設に向けた適性サイトを探るというもの。実際の評価作業は、米国の原子力産業界で働くプエルトリコの原子力エンジニア・グループが2015年に設立した非営利団体「Nuclear Alternative Project(NAP)」が実施する予定である。同島では2018年、議会の下院議長がSMRやマイクロ原子炉の建設に向けた実行可能性調査の実施を決議しており、DOE-NEはこれにともない、2019年に予備的な実行可能性調査の経費をNAPに提供した。この時の調査結果は2020年5月に公表されており、NAPがこれから実施する第2段階の調査の結果とともに、DOEが推進する「離島や遠隔地域における原子炉技術の商業化」に活用される。DOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)の調べによると、プエルトリコでは1960年代に建設した古い施設で発電しており、使用電力のほとんどを化石燃料発電による輸入電力に依存している。国内の発電施設も今後10年以内に4分の3を廃止しなければならず、発電システムの維持とエネルギーの自給確保はプエルトリコで喫緊の課題である。同島の電力庁はそのための取り組みとして、「統合資源計画」の中で再生可能エネルギーによる電力と天然ガスの供給量を拡大する方針を示しているが、ベースロード用の電力を確保するには間欠性のある風力や太陽光では不十分。この問題の解決に向けた有力候補として、プエルトリコでは小型原子炉の活用が上がっているとINLは説明している。なお、DOE-NEの「Industry FOA」はその他の資金提供プロジェクトとして、テレストリアル・エナジー社の米国法人が実施する「溶融塩炉のオフガス系におけるモデリングの不確実性取り扱いアプローチの開発」(約300万ドル)、ゼネラル・アトミックス社の電磁システム・グループによる「高温ガス炉向け炭化ケイ素製燃料被覆管のモデリングとシミュレーション」(約270万ドル)などを挙げている。(参照資料:DOEの発表資料①、②、③、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 26 Nov 2021
- NEWS
-
米サザン社、溶融塩高速炉開発に向け実験炉をINLで建設
米国の大手エネルギー供給企業であるサザン社は11月18日、高速スペクトル型・溶融塩高速炉(FS-MSR)の開発に向けた運転データの取得を目的に、「溶融塩実験炉(Molten Chloride Reactor Experiment: MCRE)」を米エネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)で設計・建設・運転するための協力協定を同省と締結した。同社によると、FS-MSRは、CO2排出量が実質ゼロという未来の実現に貢献する柔軟性の高い先進的原子炉技術であり、MCREは世界でも初のFS-MSRとなる予定。サザン社の研究開発チームにはINLのほかに、最大出力120万kWの「溶融塩高速炉(Molten Chloride Fast Reactor: MCFR)」を開発中のテラパワー社が協力しており、仏オラノ社の米国法人に所属する事業ユニット、電力研究所(EPRI)、化学・電気素材メーカーの3M社なども含まれる。サザン社の主導によりMCREをINL内で建設するという提案は、DOEが2020年12月、「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」における支援対象プロジェクトの一つとして選定しており、5年間の研究開発資金として合計1億7,000万ドルを官民が分担調達することで合意した。実際の建設工事に関しては、最終設計作業が完了し工事が始まる前までに、国家環境政策法に基づく環境審査を終えるとしている。サザン社の説明では、この計画はクリーンエネルギーで持続可能な未来を目指すテラパワー社のMCFR開発において、実証炉の設計・建設、運転に向けたロードマップとして技術開発の進展を加速する。テラパワー社のプロジェクトにはサザン社とEPRIのほか、DOE傘下のオークリッジ国立研究所、テネシー州のヴァンダービルト大学が参加しており、DOEは2016年1月、同技術の初期開発を支援する総合インフラの建設費用として、約4,000万ドルをテラパワー社らに交付した。サザン社が主導する今回の小規模のMCRE建設は、テラパワー社のMCFR技術を商業化する推進力として、引き続き貢献していくとサザン社は強調している。サザン社のM.ベリー研究開発担当副社長は、「クリーンで安全、信頼性の高い安価なエネルギーを顧客に提供する包括的戦略の一部として、当社は次世代の原子力技術を開発している」と説明。MCREを通じて、同社は地球温暖化に対応できる革新的な技術の商業化を進め、2050年までに同社が目標とする「CO2排出量の実質ゼロ化」を実現させると述べた。テラパワー社のC.レベスク社長兼CEOも、「サザン社とのこれまでの共同事業が今回、重要な試験段階に到達し、溶融塩炉技術を確認する試験設備が建設されることになった」と表明。「原子炉の許認可と運転に関するサザン社の経験と主導力は絶対不可欠のものであり、MCREの建設を通じて低コストでクリーンなエネルギーに基づく未来が必ず構築されるだろう」としている。(参照資料:サザン社、INL、テラパワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 22 Nov 2021
- NEWS
-
米国で原子力への支援を盛り込んだインフラ投資法案が成立
米国のJ.バイデン大統領は11月15日、1兆2,000億ドル規模という「超党派のインフラ投資法案(下院3684号)」に署名した。これを受けてエネルギー省(DOE)は同日、「地球温暖化に立ち向かいつつ、持続可能な経済を構築するための大型投資法が可決成立したことから、米国ではクリーンエネルギーに基づく将来や、かつて無い規模の大気質の改善、無数の高サラリー雇用の創出等に道を拓くための投資が行われる」と表明した。CO2を排出しない原子力に関しても、既存設備の温存と先進的な技術開発のために予算が配分されるため、DOEはバイデン大統領が目標に掲げる「2035年までに電力部門を100%カーボンフリーとし、2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化する」の実現に向け、同省が方向性の立案等で一層効果的な役割を果たせると強調している。バイデン大統領は就任前の選挙戦時代から、「より良い復興(Build Back Better)」をスローガンとする経済政策を発表しており、その中で「環境・インフラへの投資」を他の主要な3政策と合わせて表明。その主旨は「近代的で持続可能なインフラと公平なクリーンエネルギーの未来を築くこと」であり、具体的な項目として2035年までに排出量ゼロの電力部門を実現するほかに、エネルギー効率の高い建物の建設や(蓄電池や次世代素材のエネルギー設備等)クリーンエネルギーの技術革新に投資を行うことなどを挙げていた。DOEが11月9日に発表した「超党派インフラ投資法案」のファクトシートによると、同法はバイデン大統領の「より良い復興」計画における重要な要素である。同法がDOEに提供する620億ドルを通じて、DOEはより多くの米国民に一層公平にクリーンエネルギーを提供できるよう、エネルギーの効率化やクリーンエネルギーに対する各家庭やコミュニティ、企業らのアクセスを大幅に拡大。信頼性の高いクリーンな電力を廉価で提供するとともに、クリーンエネルギー技術の実証を通じて未来のエネルギー技術を構築するとしている。クリーンエネルギーの生産が可能な既存設備の温存に関しては、DOEはまず運転開始後数10年が経過した既存の原子力発電所と水力発電設備で、合計27%の電力を米国が得ていると指摘。クリーンエネルギー源として重要であるものの、高経年化にともない維持費がかさんでいるため、米国はこれらの無炭素な主要電源を失うリスクに直面している。「超党派インフラ投資法」ではこれらの電源を確実に維持するための資金が提供されることになっており、DOEによれば、原子力発電所の早期閉鎖を防止する「民生用原子力発電クレジット・プログラム」に60億ドルを配分。この予算を通じて、DOEは全米の原子力発電所で数千名という雇用を維持していくが、プログラムの適用が許されるのは早期閉鎖のリスクにさらされている発電所で、長期的に安全な運転を続けられる状態だと認められていることが条件になる。また、先進的な原子力技術の開発には25億ドルを割り当てる予定。これにより、DOEは1日24時間、年中無休でクリーンな電力を生産するほか、関係雇用も新たに生み出すとしている。なお、今回の法案成立を受けて、小型のペブルベッド型高温ガス炉「Xe-100」を開発中のX-エナジー社は同日、「DOEの『先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)』から引き続き、2025会計年度まで最大11億ドルが当社に提供されることになった」と表明した。DOEは昨年5月に開始したARDPの初回の支援金交付対象として、同年10月にX-エナジー社と、「ナトリウム冷却高速炉」を開発中のテラパワー社を選定した。ARDPは、このような先進的原子炉設計を2020年代末までに運転可能にすることを目指す官民のコスト分担型パートナーシップ。X-エナジー社はARDPを通じて、商業規模の「Xe-100」初号機をワシントン州で建設することを計画している。同社によれば、バイデン政権と議会は2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を米国のみならず世界中で達成するため、先進的原子力技術を無炭素の重要なベースロード電源と認識しており、同技術の実証で今後も世界を牽引していく方針だとしている。(参照資料:DOEの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 17 Nov 2021
- NEWS