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フラマトム社、ATFが100%の燃料集合体を米原子力発電所に納入
フランスのフラマトム社は11月2日、事故耐性燃料(ATF)100%で構成される先行使用・試験燃料集合体(LFA)を原子力産業界として初めて製造し、米メリーランド州のカルバートクリフス原子力発電所(91.2万kWのPWR×2基)に納入したと発表した。同発電所で最近行われた燃料交換の際、このLFAも装荷されたとしている。フラマトム社は現在、米エネルギー省(DOE)が福島第一原子力発電所の事故後に開始した「ATF開発プログラム」に参加しており、今回のLFAは、同プログラムの一環でフラマトム社が進めている独自のプログラム「PROtecht」の下で開発された。カルバートクリフス発電所への装荷は、同発電所を所有する米エクセロン・ジェネレーション社とフラマトム社が2019年に結んだ契約に基づくもので、LFAもこの契約に沿って、米ワシントン州リッチランドにあるフラマトム社の工場で製造された。同LFAではクロムを塗布した176本のジルカロイ合金製被覆管に、クロム合金の酸化被膜で覆ったペレットが充てんされている。フラマトム社の発表によると今回のATF 100%のLFAは、これまで米国やスイスの原子力発電所の18か月サイクル運転で実施したLFA試験の結果に基づき製造した。炉心内の温度変化に対して、同社のLFAは高い耐久性を示しており、高温条件下においても腐食や水素の発生が抑えられたとしている。フラマトムで燃料事業を担当するL.ゲフェ上級副社長は、「ATFのみの燃料集合体が商業炉に装荷されたことは、当社のみならず原子力産業界にとっても大きな節目になった」と表明。今後も「PROtecht」プログラムで原子燃料技術の開発を進め、低炭素なエネルギーの生産を一層効率的かつ信頼性の高いソリューションで支えていく」との抱負を述べた。2012会計年度予算で始まったDOEの「ATF開発プログラム」では、産官学の協力により2022年までに商業炉にLFAを装荷する計画。産業界からはフラマトム社のほかに、GE社とウェスチングハウス社の3グループが参加しており、各社が被覆管その他に新素材を用いて独自に開発したATFを、米国やその他の国の原子力発電所で試験中となっている。(参照資料:フラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 08 Nov 2021
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米会計監査院、使用済燃料の最終処分で議会に打開策を要請
米国政府の会計監査院(GAO)は9月23日、国内の商業炉から出る使用済燃料の最終処分政策に関する報告書を作成し、議会の関係委員会等に提出した。ネバダ州ユッカマウンテンにおける最終処分場建設計画の、2010年に頓挫して以降の行き詰まりを打開するため、最終処分場の立地点特定に向けた新たな取り組みや統合的な管理戦略の策定で議会に早急の措置を取るよう訴えている。GAOは連邦議会の要請に基づき、政府機関の財務検査や政策プログラムの評価を通じて予算の執行状況を監査する機関。今回の報告書の中でGAOは、国内33州の原子力発電所75か所(閉鎖済みのものを含む)で約8万6千トンの使用済燃料が貯蔵されている現状に触れ、この量は今後も年間約2千トンずつ増加していくと指摘した。オバマ政権がユッカマウンテン計画を停止した後、この問題への取り組みは政治的に行き詰っており、放射性廃棄物政策法(NWPA)に明記された「1998年までに使用済燃料の引き取りを開始し処分する」という義務をエネルギー省(DOE)が履行できていないことから、連邦政府は2020年9月、原子力発電所の事業者に使用済燃料の保管にともなう賠償経費として約90億ドルを支払っている。GAOの説明によると、米国の商業炉から出た使用済燃料は現在、暫定措置の下で管理されており、発電所毎に管理方法が異なるため、最終処分の今後の判断やコストにも影響が及ぶ。今回の報告書を作成するため、GAOがインタビューした専門家のほとんど全員が「解決策を見つけ出し、その計画コストを下げるには統合的な戦略を取ることが重要だ」と回答。しかしながら、議会による確固たる決断抜きでは、担当部局であるDOEが関係戦略を本格的に策定し実行することは出来ないとGAOは強調した。DOEは2017年初頭、政府の有識者特別(ブルーリボン)委員会が2012年に提示した勧告に従い、地元の同意に基づく処分場立地プロセスの案文を作成したものの、新たに発足したトランプ政権が優先項目を変更したため、このプロセスは最終決定がなされていない。1987年の修正により現行のNWPAは、最終処分場としての調査活動をユッカマウンテンのみに限定しているが、議会がこれをさらに修正し、ユッカマウンテンやそれ以外のサイトで使用済燃料の貯蔵や処分が可能になるよう最終決定すれば、DOEは地元の合意を得て使用済燃料の集中中間貯蔵施設や深地層最終処分場の立地プロセスを進めることができるとGAOは指摘した。このような背景から、GAOは今回、以下の4項目について審議・決定するよう議会に要請している、すなわち、(1)現行NWPAを修正し、地元の合意に基づいて中間貯蔵施設や最終処分場の立地と建設を進められる新たなプロセスを承認する。(2)政治的理由によって、使用済燃料を長期に管理するプログラムの優先項目や主導体制が変更されないよう、独立の立場の審議会といった監督メカニズムを創設する。(3)最終処分場の建設・操業用に設置された「放射性廃棄物基金」の仕組みを再構築し、最終処分場開発プログラムの全体的なライフサイクル・コストを同基金で支払えるようにする。(4)修正版のNWPAに沿って、DOEが統合的な放射性廃棄物管理戦略を策定・実行できるようにする。GAOによると、DOEはこれらの勧告に同意した。使用済燃料の管理処分で解決策を見出すには、計画的かつ統合的な判断と政策立案が必要であり、成功に至るという保証もないが、カナダやフィンランド、スウェーデンなどでは同様の行き詰まりに直面したあと、順調に管理処分プログラムを進めている。これらの国の経験や専門家の勧告を生かせば、先に進んでいくための有用な教訓が得られるとGAOは強調している。(参照資料:GAOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 28 Sep 2021
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米ナインマイルポイント原子力発電所で水素製造の実証プロジェクト
米国最大手の原子力発電事業者であるエクセロン・ジェネレーション社は8月18日、ニューヨーク州北部のオスウェゴ郡で運転するナインマイルポイント原子力発電所(60万kW級と130万kW級のBWR各1基)で、水素の現地製造の可能性を実証するプロジェクトを実施すると発表した。米エネルギー省(DOE)から提供される補助金により、水素の現地製造がもたらす将来的なメリットを評価するのが主な目的である。これにともない、同社は水素の製造に必要な装置(電解槽)の入手でノルウェー国籍のNel Hydrogen社と連携するほか、DOE傘下のアルゴンヌ国立研究所とアイダホ国立研究所、および国立再生可能エネルギー研究所と協力。水素を同発電所内で一貫的に製造、貯蔵、活用できることを実証する。エクセロン社の発表によると、同プロジェクトでは具体的に、原子力発電から派生する副産物の水素を経済的に供給していくことができる見通し。(安全に回収・貯留した上で、100%無炭素な電源として市場に提供する可能性を探り、将来は輸送その他の目的に産業利用することになる。同社のD.ローデス原子力部門責任者(CNO)は、「プロジェクを実施する沢山の候補サイトの中から当社はニューヨーク州を選んだが、これは同州の公益事業委員会(PSC)が2016年、州北部の原子力発電所に補助金を提供する支援プログラムも含め、意欲的な温暖化防止政策『クリーン・エネルギー基準(CES)』を採択したことによる」と指摘。同州の州政府とは強い結びつきがあるとの認識を表明した。DOEの補助金は、DOEのエネルギー効率・再生可能エネルギー局(EERE)、水素・燃料電池技術室が推進する「H2@Scaleプログラム」からエクセロン社に提供される。この構想でDOEは、水素を適正な価格で製造・輸送・貯留・活用できることを実証し、様々な産業部門を脱炭素化する方策を模索。CO2の排出量も削減して大気汚染の影響を緩和するほか、経済的に不利な条件下にあるコミュニティには利益をもたらしたいとしている。今回のプロジェクトではまた、Nel Hydrogen社が2022年に約260万ドルの「プロトン交換膜式(PEM)電解槽(0.125万kW)」をナインマイルポイント発電所に納入する。同社はノルウェーの水素技術企業であるNel ASA社の米国子会社で、その8月11付けの発表によると、エクセロン社は同原子力発電所で水素を自給した上で、タービン冷却や化学制御関係の要件を満たす計画。また、Nel Hydrogen社の電解槽を適切に運転して、原子力発電所における水素製造の経済的実行可能性を実証するほか、DOEの「H2@Scaleプログラム」の支援で、CO2を排出せずに製造した水素の大規模輸出に向けて詳細計画をもたらしたいとしている。(参照資料:エクセロン社、DOE、Nel Hydrogen社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 Aug 2021
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ルーマニアの増設計画に米国が実務協力開始
ルーマニアの国営原子力発電会社(SNN)は7月30日、米エネルギー省(DOE)のK.ハフ原子力担当次官補代行を団長とする一行がルーマニア側との原子力関係協力で運営会議に参加するため、同国唯一の原子力発電設備であるチェルナボーダ原子力発電所(稼働中の1、2号機は各約70万kWのカナダ型加圧重水炉:CANDU炉×2基)を訪れたと発表した。ルーマニアと米国の両国は2020年10月、建設工事が中断したチェルナボーダ3、4号機(各70.6万kWのCANDU炉)の完成プロジェクトも含め、ルーマニアの民生用原子力発電部門の能力拡充と近代化に米国が協力するため政府間協定を締結した。今年6月にルーマニア議会が同協定を批准したことから、SNNのエネルギー戦略に沿って、3、4号機がそれぞれ2030年と2031年に運転開始できるよう、今回DOEの代表団が実質的な協力活動を開始したもの。SNN株主総会が承認した同戦略によると、3、4号機は以下の3段階で完成させる予定。すなわち、①24か月間の準備段階に契約を締結し、米国から技術面や法制面、および財政面の支援を受けるための準備を進める、②18~24か月間の予備的作業段階で、EPC(設計・調達・建設)契約企業が同プロジェクトのエンジニアリング作業を実施し、安全性関係の文書を準備する、③その後は69~78か月の建設段階に入り、工事を実行する。また、米国との協力を通じて、ルーマニアは多国籍の建設チームと米国の技術や専門的知見を活用する機会を確保する。チェルナボーダ1号機については、改修工事を実施する計画である。SNNのC.ギタCEOは、「我が国はレジリエンス(耐久性)と持続可能性を兼ね備えたエネルギーシステムを必要としており、原子力発電設備を拡張することでルーマニアはクリーン経済に移行しつつ、これらの必要性を満たすことができる」と指摘。チェルナボーダ発電所で3、4号機を完成させて、社会経済の成長やサプライチェーンの開発を促すとともに、脱炭素化にパラダイム・シフトするための要件を満たしていくとした。具体的には、間接雇用も含めて1万9,000名もの雇用を産業界で創出し、新しい世代の専門家を育成。これと同時に、合計4基のCANDU炉で年間2,000万トンのCO2排出を抑制すると強調している。チェルナボーダ3、4号機は1980年代半ばに本格着工したが、1989年のチャウシェスク政権崩壊により、進捗率がそれぞれ15%と14%のまま建設工事が停止した。これらを完成させるという政府決定を受け、SNNは2009年にプロジェクト会社を設置したものの、同社への出資を約束していた欧州企業6社は経済不況等によりすべて撤退した。その後、2011年に中国広核集団有限公司(CGN)が出資参加の意思を表明したことから、SNNはCGNと2015年11月に両炉の設計・建設・運転・廃止措置に関する協力で了解覚書に調印した。2019年5月にはプロジェクトの継続に関する暫定的な投資家協定を締結したが、2020年1月にルーマニアのL.オルバン首相は地元メディアに対しCGNとの協力をキャンセルすると表明。同年6月には、この協力関係から撤退したことが報じられた。首相のこの判断は、当時の米トランプ政権が中国との対決姿勢を強めたことから、米国との戦略的パートナーシップに配慮したものとみられている。(参照資料:SNNの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 05 Aug 2021
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米ケイロス社の先進的原子炉、2026年に実証炉完成へ
米国の原子力技術・エンジニアリング企業ケイロス・パワー社は7月16日、テネシー州のB.リー州知事、および同州経済開発庁(TNECD)のB.ロルフ・コミッショナーと連名で、同社製の「フッ化物塩冷却高温炉(FHR)」の実証炉を同州内に建設すると発表した。この構想はすでに2020年12月に同社が公表していたもので、今回はテネシー州政府の合意を得た同社が1億ドルを投じて、最終完成版より低出力の実証炉「ヘルメス」をオークリッジにあるエネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」内で建設すると表明。ETTP内で55名分の雇用の創出が見込まれる同炉の完成を、2026年に目指すとしている。ケイロス社のFHR(KP-FHR)は電気出力14万kWで、冷却材として低圧の液体フッ化物塩を用い、燃料には3重被覆層・燃料粒子「TRISO」を使用。固有の安全性を保持しつつ電力と高温の熱を低コストで生成するもので、2002年にテネシー州にあるDOE傘下のオークリッジ国立研究所(ORNL)がFHRの概念を提案した後は、それに基づきMITやUCバークレーなどが個別の要素技術の研究を進めている。ケイロス社は、天然ガスのコンバインドサイクル発電とコスト面で競合可能な、無炭素で安全なエネルギー源として、KP-FHRを市場に送り出すことを計画。社内で重要機器類の製造能力を高めながらサプライチェーンの確認も実施し、許認可手続きが確実に進むようKP-FHRが完璧な原子力システムであることを実証、同設計をプロトタイプから商業規模の段階に進展させる考えだ。ケイロス社のKP-FHR開発については、DOEが2020年12月、設計開発や許認可手続きおよび建設段階におけるリスク削減を目指した官民のコスト分担方式の「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」で、実証炉「ヘルメス」を支援対象の一つに選定。商業規模のFHR開発につなげることを目的に、同プログラムにおける7年間の総投資額6億2,900万ドルのうち、3億300万ドルをDOEが負担する。テネシー州のリー知事は今回、「ケイロス社が参加したことで、当州のオークリッジは今後も米国の革新的な技術開発を牽引していく」と表明。同州におけるエネルギー開発は、米国その他の国々にプラスの効果をもたらすとした上で、「実証炉開発の支援を受ける場としてケイロス社が当州を選んだことに感謝する」と述べた。ケイロス社の創設者の1人であるM.ローファーCEOも、「当社の先進的原子炉技術をテネシー州で実証することは、米国にクリーンで廉価なエネルギーシステムをもたらす重要な節目になる」と説明。パートナーとして支援の提供を受けているORNLやテネシー峡谷開発公社(TVA)、オークリッジ市、東部テネシー経済審議会、州政府のTNECDらに謝意を表明した。TVAは今年5月、ETTPにおけるケイロス社の実証炉「ヘルメス」の建設計画に対し、原子炉のエンジニアリングや運転および許認可手続き関係の支援を提供すると発表。ケイロス社が同炉を通じて、出力調整可能な米国の電源としては最も手頃な価格でFHRを市場に出せるよう、協力するとしている。(参照資料:ケイロス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 Jul 2021
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米NASA、深宇宙探査用の核熱推進システム開発で3社を選定
米エネルギー省(DOE)と共同で、深宇宙探査用核熱推進(NTP)技術の開発を進めているアメリカ航空宇宙局(NASA)は7月13日、有望な原子炉技術の詳細な設計概念と価格に関する「提案募集(REF)」に応じた企業の中から3社を選定したと発表した。いずれも、原子燃料や機器・サービスのサプライヤーで、すでにNASAと協力関係にあるBWXテクノロジーズ(BWXT)社、防衛等の多角的な技術製品企業であるジェネラル・アトミクス・エレクトロマグネティック・システムズ(GA-EMS)社、およびエネルギー関係のハードウェアとサービスを提供するウルトラ・セーフ・ニュークリア・テクノロジーズ(USNC-Tech)社である。今回のREFは、DOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)を管理・運営するバッテル・エナジー・アライアンス(BEA)社が、NASAの2021会計年度予算を使って今年2月中旬から4月末まで実施した。INLは今後、選定した3社それぞれと約500万ドル相当の契約を締結。将来的に、深宇宙探査の特定の性能要件を満たすための様々な設計戦略を立てるほか、このようなミッションに利用可能な原子炉の設計概念を12か月の契約期間に完成させる。契約の終了時、INLはそれらの設計概念についてレビューを実施し、NASAに勧告事項を提示。NASAはこのような情報を活用して、将来開発する技術設計の基盤を構築することになる。NASAによれば、核熱推進システムの推進効率は化学燃料ロケットと比べて非常に大きい。このため、火星の有人探査や貨物ミッション、および太陽系外縁部の科学ミッション用として有望な核熱推進技術を開発できれば、数多くのミッションを一層迅速かつ安定した形で実施することができる。今回の3社が開発に関わる小型モジュール炉(SMR)は、そのような核熱エンジンの重要機器であり、HALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を使用する予定である。3社のうち、BWXT社はNASAとの今回の契約実行に際し、航空機・宇宙船の開発製造企業ロッキード・マーチン社と提携する方針。また、GA-EMS社は、小型のペブルベッド式高温ガス炉「Xe-100」を開発中のX-エナジー社、およびロケットやミサイルの推進器を製造しているエアロジェット・ロケットダイン社と提携する。USNC-Tech社は、親会社で第4世代の小型高温ガス炉「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」を開発中のUSNC社と連携体制を取るほか、ブルーオリジン社(=アマゾン社の創業者J.ベゾス氏が創設した宇宙ベンチャー企業)、GE日立・ニュクリアエナジー社とGEリサーチ社、フラマトム社、高機能合金材料メーカーのマテリオン社と提携するとしている。(参照資料:NASAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Jul 2021
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米エネ省、先進的原子炉の建設コスト削減でGEH社と協力
米エネルギー省(DOE)は7月7日、先進的原子炉など新しい原子力発電所の建設コスト削減を図るため、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と協力すると発表した。同社の率いるチームに580万ドルの支援金を提供し、建設コストの10%以上の削減を目指して3つの建設要素技術を実証していく。DOEのK.ハフ原子力担当次官補代行は、「原子力発電所の建設にかかるコストの超過とスケジュールの遅延という課題は、過去数十年にわたって新規の原子力発電所建設計画を悩ませてきた。しかし、進んだ建設要素技術を駆使することによって先進的原子炉の建設コストを引き下げ、作業をスピードアップすることは可能だ」と指摘。先進的原子炉の実用化は地球温暖化を防止する重要ステップでもあり、J.バイデン大統領が目指す「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化」を達成するのに必要であると強調した。今回の取り組みは、DOEが2019年に傘下のアイダホ国立研究所内に設置した「国立原子炉技術革新センター(NRIC)」の予算と管理の下で実行される。NRICの目標は先進的原子炉の設計を実証し建設を促進することであるため、この取組はNRICの「先進的建設要素技術(ACT)構想」の一部ということになる。ACTは2段階で構成されており、第1段階では先進的な建設要素技術の開発と小規模での実証に向けた準備を実施する。この作業が無事に完了しその後の予算が確保できれば、第2段階として支援金の提供から3年以内に技術の実証を行う計画である。GEH社のプロジェクト・チームには、カンザス州の大手エンジニアリング企業Black & Veatch社と米国電力研究所(EPRI)、テネシー峡谷開発公社(TVA)、インディアナ州のパデュー大学、ノースカロライナ大学が参加。また、英国のCaunton Engineering社と、「スチール鋼レンガ・システム」を開発したスコットランドのModular Walling Systems 社、および英国政府が産業界との協力により2012年に設置した「先進的原子力機器製造研究センター(NAMRC)」が加わっている。同チームは今後、DOEらとともに以下の3つの技術を実証し活用していく。これらは他の産業部門で開発されたもので、有望ではあるが原子力発電所の建設という観点で試験が行われたことはない。①トンネル掘削業界が開発した「立坑建設工法」を使って、原子力発電所の工期を1年以上短縮。②スチール鋼とコンクリートの複合構造物を使ったモジュール式の建設システム「スチール鋼レンガ・システム」を用い、現地で必要とされる労働力を大幅に削減。③高度な監視システムとデジタルツイン技術(物理世界の出来事をデジタル上に再現する技術)を統合し、原子力発電所構造物の3-Dレプリカを作成。DOEはこれらの技術を様々な先進的原子炉設計に適用し、早期に市場に送り出せるよう経済性の改善を図る。GEH社側は、「DOEやNRICと協力して革新的な建設要素技術を使ったコストの削減方法を評価していきたい」とコメント。「今回のDOEの支援金は小型モジュール炉(SMR)の商業化で非常にプラスとなるほか、その他の先進的原子炉の実現に向けて道を拓くことになる」と述べた。(参照資料:DOE、NRICの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 09 Jul 2021
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米オクロ社、先進的原子炉燃料の商業化でエネ省基金から100万ドル獲得
米国の先進的原子炉開発企業オクロ社(Oklo Inc.)は6月25日、同社製の超小型高速炉「オーロラ」に使用する先進的原子炉燃料の製造技術とリサイクル技術の商業化で、エネルギー省(DOE)の技術商業化基金(TCF)から支援を受けることになったと発表した。DOEおよび傘下のアルゴンヌ国立研究所と合計200万ドルのコスト分担型官民連携プロジェクトを実施するというもので、オクロ社側はこのうち少なくとも50%(100万ドル)をマッチングファンドで提供。電解精製技術を使って放射性廃棄物を転換し先進的原子炉燃料を製造するほか、使用済燃料をリサイクルする技術の商業化を進めていく。これらを通じて放射性廃棄物の量を削減し、先進的原子炉の燃料コスト削減を目指す考えだ。電気出力0.15万kWの「オーロラ」では、HALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を燃料として使用する一方、原子炉の冷却に水を使わない設計。同社によれば、「オーロラ」は少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給を続けることができる。オクロ社はすでに2020年3月、子会社のオクロ・パワー社を通じて、先進的な超小型高速炉としては初の建設・運転一括認可(COL)を原子力規制委員会(NRC)に申請。2020年代初頭から半ばにかけて、DOE傘下のアイダホ国立研究所敷地内で「オーロラ」の着工を目指している。同社に資金を提供するTCFは、有望なエネルギー技術の開発を促進するため、DOEの技術移転局(OTT)が「2005年エネルギー政策法」の下で立ち上げた基金。DOE傘下の国立研究所と民間企業が提携し、エネルギー技術の商業化に向けた取り組みを実施。その際、民間企業側には50%のマッチングファンド提供が義務付けられている。DOEは6月24日、TCFによる2021会計年度の支援対象を公表しており、クリーンエネルギー技術や先進的な製造技術、次世代の材料物質開発など、合計68プロジェクトを選定している。これらにはTCFの連邦政府予算から約3,000万ドル、民間部門の基金から約3,500万ドルを充当し、革新的技術を用いた解決策を採用していく。新たな事業や雇用を創出する一助とするほか、米国の経済的競争力を増強し、J.バイデン大統領が目標とする「2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化」を達成する。この発表の中でDOEは、連邦政府予算の中からアルゴンヌ国立研究所に415万ドルを充てると説明。国内8州のパートナー企業と費用を分担し、エネルギー貯蔵に向けた材料物質の加工やCO2の合成による高効率の化学品(オレフィンなど)製造、先端材料を使った高速炉用燃料の製造などを実施すると述べた。オクロ社のC.コクラン最高執行責任者(COO)は、「先進的燃料技術の商業化を通じて、クリーンなパワーを迅速かつコスト効率も高い方法で市場に届けたい」と表明。手持ちの燃料のエネルギー密度が代替燃料より数百万倍高ければ、電解精製技術を用いた最も低価格な方法でクリーンパワーを生み出すことができると述べた。また、「使用済燃料にはクリーンパワーを世界中にもたらすための、極めて大きなエネルギーを秘めている」と強調した。(参照資料:オクロ社、DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 29 Jun 2021
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米規制委、セントラス社のHALEU燃料製造で最大20%のウラン濃縮を許可
米国のセントラス・エナジー社(旧・米国濃縮会社(USEC))は6月14日、HALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)の製造に向けて、同社が昨年提出していたウラン濃縮許可の「修正申請」を原子力規制委員会(NRC)が承認したと発表した。セントラス社はこれまで、オハイオ州パイクトンの「米国遠心分離プラント(ACP)」でウラン235を最大10%まで濃縮することを許されていた。今回の承認により、同社が現在ACPのサイト内で建設しているHALEU燃料製造実証施設は米国で唯一、U235を最大20%まで濃縮できる施設になる。セントラス社は2019年11月にエネルギー省(DOE)と結んだ契約に基づき、独自に開発した新型遠心分離機「AC100M」16台によるカスケードをACPサイト内で建設中。この施設でHALEU燃料の製造実証を行うことになった。この計画では2022年半ばまでの3年間に1億1,500万ドルを投入することになっており、セントラス社はすでに今年3月、すべての「AC100M」の組立を終えカスケード内への設置に向けた最終準備を行うと発表。2022年初頭にも同施設でHALEU燃料の製造を開始するとしている。同社の説明によると、HALEU燃料のU235最大濃縮度20%は、核兵器の開発や海軍の船舶推進用に使用するには、はるかに低いレベルである。それでもHALEUは、米国その他の国で稼働する既存の原子力発電所にとって次世代の先進的原子燃料となるほか、小型モジュール炉(SMR)等の開発中の次世代原子炉で使用することで高い性能を発揮することが出来る。すなわち、単位体積あたりの電力量(電力密度)や原子炉性能の向上が期待できるほか、燃料交換停止の頻度を削減。放射性廃棄物の排出量が少なくなり、核拡散の抵抗性が高いという利点がある。また、DOEの「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」で支援対象に選定された10の先進的原子炉設計のうち、9設計のベンダーが「HALEU系の燃料が必要になる」と表明。その多くは19.75%レベルの濃縮度となる見通しだが、今のところHALEU燃料を国内で商業的に入手することは困難である。DOEの原子燃料作業部会(NFWG)が最近取りまとめた報告書によると、HALEU燃料は米国が先進的原子力技術の開発で世界のリーダー的立場を再構築する重要ステップとなる。このことは、原子力の推進事業を展開する約100社のコンソーシアム「米国原子力インフラ評議会(NIC)」が2020年4月に実施した調査の結果からも裏付けられており、先進的原子炉を開発している米国企業の多くが「HALEU燃料の入手可能性」を最も気がかりな課題の1つに挙げていた。(参照資料:セントラス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 16 Jun 2021
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米バイデン政権初の予算教書、過去最高額の原子力予算を計上
米国のJ.バイデン政権は5月28日、今年10月から始まる新しい(2022)会計年度の予算編成方針を示した「予算教書」を公表し、議会に提出した。エネルギー省(DOE)予算としては合計約462億ドルを計上しており、同政権が新型コロナウイルスによる感染の爆発とその後の経済復興に向けた対応を進めるなか、2050年までに米国が確実にCO2排出量の実質ゼロ化を達成できるよう、クリーンエネルギーによる経済基盤の構築に主眼を置いている。DOEのJ.グランホルム長官は「今回の予算要求は、100%クリーンエネルギーによる経済への移行で米国が主導権を握ることを目指している」と指摘。米国は、「地球温暖化防止と高サラリーの雇用創出に重要なエネルギー技術の研究開発と実証で、世界を牽引する」と強調した。DOE予算のなかでも、地球温暖化防止に資する原子力エネルギー局(NE)の予算額は過去最高の18億5,000万ドルを計上。DOEによれば、米国の原子力発電所は国内の総発電量の5分の1、無炭素電力については半分以上を賄うなど、クリーンエネルギーを主流とする米国の将来の重要部分を担っている。このためバイデン政権は、NEが実施する既存の原子力技術と先進的原子炉技術の支援で、前年度の予算額から23%増の金額を計上した。このうち10億ドル以上が原子力技術の研究開発および実証プログラム(RD &D)のための予算で、この中から2億4,500万ドルを投じて6年以内に2つの先進的原子炉技術の実証を支援する。官民のコスト分担により先進的な小型モジュール炉(SMR)を開発するほか、既存の商業炉で材料物質の経年劣化や安全裕度、計装・制御(I&C)系等に関する研究を実施し、運転期間の延長や経済的競争力の強化を図る。その他の先進的な原子炉技術に関する研究も進め、高温熱と電力を併給する際の経済性や安全性を向上させるとしている。NE予算ではまた、「多目的試験炉(VTR)」の開発プロジェクトに前年度予算の3倍以上の1億4,500万ドルを要求した。VTRは、先進的な原子炉設計で使用される革新的な原子燃料や資機材、計測器等の開発で重要な役割を担う「ナトリウム冷却式の高速スペクトル中性子照射試験炉」である。DOEはVTRを傘下のアイダホ国立研究所に建設し、2026年初頭の運転開始を目指している。当面の活動としては予備設計や燃料の設計、建設プロジェクトのリスク低減等に注力するとしている。なお、DOEは使用済燃料や高レベル放射性廃棄物の集中中間貯施設の建設を地元の合意を前提とした方針で進めている。このため、「放射性廃棄物基金」の中から750万ドルを活用して同基金を管理するほか、一時期、使用済燃料の最終処分場建設予定地となっていた、ネバダ州ユッカマウンテン・サイトの安全を確認する活動に充てる方針である。(参照資料:DOEの発表資料①、②、ホワイトハウスの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 03 Jun 2021
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米仏のエネ相 温暖化対策の共同声明に原子力を盛り込む
米エネルギー省(DOE)と仏エコロジー移行省の両大臣は5月28日、共同声明を発表。地球温暖化の防止に向けた共通の目的や解決策を共有し、パリ協定に明記された野心的な目標を達成するため、先進的原子力技術の利用も含めて協力する方針を明らかにした。地球温暖化にともなう近年の深刻な影響を早急に緩和するため、両省は最先端の科学技術や研究を活用。画期的な技術革新やエネルギー技術の利用を通して、一層安全でクリーンなエネルギーにより繁栄した未来を実現するための政策を進める。仏エコロジー省のB.ポンピリ大臣 ©Ambassade de France au JaponDOEのJ.グランホルム長官と仏エコロジー省のB.ポンピリ大臣によると、両国は今回、2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化するという共通目標の下で団結。そのためには、CO2を排出しない既存の技術すべてを活用する必要がある。また同時にCO2を排出しない新しいエネルギー源やシステムの研究開発や建設を加速する。こうしたエネルギーシステムの効率性・信頼性を確保しながら、再生可能エネルギーと原子力発電を統合することは、低炭素なエネルギー源への移行を加速する上で非常に重要である。また、CO2を出さない様々な電源やシステムに対しては、有利な融資条件等を幅広く提供する必要があるとした。こうした観点から両国は、CO2排出量の実質ゼロ化に向け、既存の「エネルギーの移行」、および新しい技術の開発で協力していくことを約束した。脱炭素化に貢献する革新的な発電システムとしては、小型モジュール炉(SMR)やマイクロ原子炉など先進的な原子力技術が含まれるが、これらのシステムによって再生可能エネルギー源のさらなる拡大や、地方の電化率の向上を図り、輸送部門の脱炭素化を促す水素製造などを促進。さらには、水不足の地域に対する飲料水の提供支援や、様々な産業の排出量クリーン化に向けて原子力を活用していく。両国はまた、地球温暖化がもたらした脅威を、エネルギー部門の再活性化やクリーン産業・技術のブレイクスルーとして活用すると表明した。米仏の関係省庁や産業界は、先進的原子力技術や長期のエネルギー貯蔵、先進的な輸送部門、スマート・エネルギー・システム、二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)といった革新的な脱炭素化エネルギー技術を複数の部門で開発中だ。これらはすべて、CO2を排出しないエネルギーの生産に大きく貢献するだけでなく、クリーンエネルギーへの移行にともない、高サラリーかつ長期雇用が保証されるとしている。今回の協力について、仏エコロジー省のB.ポンピリ大臣は「パリ協定の意欲的な目標の達成など、地球温暖化に効果的に取り組むには、世界の主要な経済大国が力を合わせて解決のための技術力を統合しなければならない」と述べた。DOEのグランホルム長官も、「世界で技術革新を牽引している米仏は、2050年までのCO2排出量実質ゼロ化に向けて、不可逆的な道筋を付けるための活動を強化する」と表明。原子力や再生可能エネルギー、CCUSなどのあらゆる無炭素技術を活用する方針を強調した。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 31 May 2021
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米エネ省、使用済燃料輸送用車両の試作・試験で許可取得
米エネルギー省(DOE)の原子力局は2月9日、使用済燃料(SNF)と高レベル放射性廃棄物(HLW)の輸送用として予備的に設計した8軸(車輪が8対=16輪)のハイテク鉄道車両「Fortis」について、米国鉄道協会(AAR)からプロトタイプを製造し試験を開始するための許可が得られたと発表した。DOEはすでに、「Fortis」開発の次の段階であるプロトタイプの製造・試験契約の締結に向けて、契約オプションに関する情報提供依頼書(RFI)と市場調査通知(SSN)を産業界に向けて発出済み。予備設計通りのプロトタイプの製造と試験の実施で契約を2つに分けるオプションと、製造と試験を一本化したオプションの2種類について情報や意見の提供を求めている。首尾良く契約が結ばれて、試験車両が完成するまでに約18か月を要する見通しだが、DOEとしては5年以内に「Fortis」の運用を可能にする方針である。米国では「1982年放射性廃棄物政策法」に従って、DOEが全米の原子力発電所敷地内や中間貯蔵所に保管されているSNFとHLWの処分と、処分場までの輸送義務を負っている。SNF等の輸送容器(キャスク)は主に鋼鉄製の円筒型で、外部への漏洩防止のため溶接かボルトで密閉されている。重さも80~210トンに達することから、DOEは主に鉄道の利用をキャスクの輸送手段として想定している。「Fortis」はSNFキャスクのように大型のコンテナの積載に適したフラットな設計の車両で、ハイテク・センサーやモニタリング・システムを搭載。これらによって、輸送時に起こり得る11種類の状況をリアルタイムでオペレーターに伝えることができる。予備設計は今年初頭、パシフィック・ノースウエスト国立研究所の技術支援により完成しており、AARは鉄道産業界の厳しい設計基準に照らして「Fortis」を製造し、試験するようDOEに要求している。なお、DOEは「Fortis」のほかに、高レベルの放射性物質を輸送する12軸の車両「Atlas」の開発も進めている。「Atlas」ではすでに、単一車両のプロトタイプを使った試験をコロラド州プエブロで実施中。DOEは2020年代半ばまでに、これら車両の両方について運転許可をAARから取得するとしている。(参照資料:DOEの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 17 Feb 2021
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米エネ省の作業部会、原子力で米国が再び優位に立つための戦略を公表
米エネルギー省(DOE)のD.ブルイエット長官は4月23日、原子燃料作業部会(NFWG)が取りまとめた包括的戦略「米国が原子力で競争上の優位性を取り戻すために」(=写真)を公表した。同戦略の示すアクションを通じて、米国は原子力発電技術の優位点を増強するとともにウランの採鉱や精鉱、転換に関わる産業を再活性化し、米国の技術面での優位性を強化する。米国では議会の上下両院ともに超党派で原子力発電を広範に支援していることから、米国が推進する核不拡散政策との整合性や国家安全保障を維持しつつ、関連の輸出も拡大する方針である。NFWGは2019年7月、原子燃料サプライチェーン全体が関わる国家安全保障上の留意事項について全面的な分析を行い、報告書を作成する目的でD.トランプ大統領が創設した。国内原子力産業の再生に向けて関係省庁が協力し、全体的な原子燃料サプライチェーンについて様々な政策オプションを策定することになる。今回の戦略でNFWGはまず、原子力産業界の現状を分析。それによると米国は今日、この分野の世界的リーダーとしての競争力を失い、ロシアや中国など国営原子力企業を有する国にその立場を明け渡した。途上国の国々も米国を脅かす勢いで迫っており、過去数十年にわたり放置されてきた米国の商業用原子力部門では、ウラン採掘から発電に至るまで企業破産のリスクが高まっている。具体的には、米国は国産原子燃料の生産能力を失いつつあり、それがエネルギー確保を含む国家安全保障に脅威となっている。また、米国が強力な核不拡散体制や安全・セキュリティ基準を設定する際、必要となる国際的影響力を損なう事態になっていると分析した。これに対してロシアはエネルギー供給を他国支配の道具として利用し、国際的な原子力市場を支配。これによって経済上、外交政策上の影響力を世界中で強めており、諸外国での原子炉建設受注額は合計1,330億ドルにのぼる。このほか、19か国で建設予定の50基以上の原子炉についても、費用を全面的に負担していると指摘。戦略的競争国である中国もまた、現在4基の原子炉を国外で建設中であり、さらに16基を複数の国で建設することを計画中。中国国内で建設した基数も過去33年間で45基となったのに加え、12基が建設中となっている。NFWGは、米国企業が諸外国の原子炉市場で請け負った建設計画が現在一件もなく、今後10年間に取り逃がすことになる受注金額を5,000億~7,400億ドルと予測。米国の原子力企業は今や、その他の国際的な企業との競争のみならず国営原子力企業との競争に直面しており、もはや「真に自由な世界市場で活動」などと取り繕っている場合ではないと訴えている。ブルイエット長官も今回、原子燃料サイクル・フロントエンドにおける米国の産業基盤が過去数十年間に弱体化し、それによって米国の国益と国家安全保障が脅かされていると指摘。NFWGの戦略はこのような課題を認識した上で、米国が原子力エネルギーと原子力技術で世界のリーダーシップを取り戻すための政策オプションを数多く提示している。国家安全保障問題として、米国内の原子力関係企業基盤を保持し成長させるために大胆な措置を取ることが重要であり、トランプ政権は米国が原子力分野の競争力を持った世界のリーダー的立場に再び復帰することを約束した。NFWGはそのための勧告事項を、今回の戦略で以下のように示している。すなわち、ウランの採鉱、精鉱、転換など各産業を復活・強化する迅速かつ大胆な措置を連邦政府が取り、原子燃料サイクル・フロントエンド全体のポテンシャルを回復させる、米国における技術革新と先進的な原子力研究開発・実証活動への投資を活用して、米国の技術的優位を確固たるものとし、次世代原子力技術における米国のリーダーシップを強化する、健全かつ世界をリードする原子力部門を確立し、その中でウラン採掘業者や燃料サイクル関連企業、原子炉ベンダー等が製品やサービスを販売する、連邦政府全体での取り組みとして、民生用原子力技術の輸出でロシアや中国などの国営原子力企業と競争する際、米国原子力産業の支援策を取る、――である。DOEによると、米国は現在、防衛面で将来的に必要となる2種類のウラン供給を明確に定義。それらは、①2040年代の核兵器製造でトリチウムを生産するのに必要な低濃縮ウラン、および②2050年代に原子力船で必要となる高濃縮ウランである。また、今回の戦略によってDOEは、国家安全保障が原子燃料サイクルの健全なフロントエンドと密接に関係するという事実を認識。すなわち、米国は国家防衛上、強力な民生用原子力産業を必要としているということを強く指摘した。米国が推進する核不拡散体制の信頼性は、健全堅固な原子力産業の生存能力と米国が技術面でリーダーシップを取ることによって決定付けられるため、D.トランプ大統領は重要な第一歩として2021会計年度(2020年10月~2021年9月)の予算要求で、「国産ウラン備蓄」のためのDOE予算1億5,000万ドルを計上した。これにより、国内の鉱山からウラン鉱や転換サービスの購入を開始する考えである。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 01 May 2020
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米国防総省、超小型炉の原型炉建設と実証に向けコメント募集
米国防総省(DOD)の戦略的能力室(SCO)と国防長官府は3月2日、エネルギー省(DOE)原子力局との連携により、先進的な可動式超小型原子炉の原型炉建設と実証に向けて、環境影響声明書(EIS)を作成すると同日付け連邦官報に掲載した。EISは国家環境政策法の要件に基づき、計画された活動が周辺住民の健康や環境に及ぼす可能性のある悪影響を軽減、最小化することを目的としている。SCOは同EISでカバーする範囲について、一般からのコメントを同日から4月1日までの期間に募集。それらを斟酌した上でEIS案を作成し、最終的には同炉を建設、様々な実証活動に加えて運転終了後の処分も行うという提案を実行に移す。SCOの説明によると、DODは世界でも最大規模のエネルギーを消費するユーザーの1つであり、今後の軍事作戦を遂行するにあたり、必要なエネルギー量は大幅に増加する見通し。作戦行動の実施地で配電網への依存を軽減することがDOD設備に求められているが、こうした配電網の多くは、様々な脅威にともない機能停止が長期化しやすく、DODの重要ミッションを「エネルギー供給の途絶」という高いリスクにさらしている。バックアップ電源としては主にディーゼル発電機が用いられているが、これらは現地での燃料備蓄が限られるほか、母国の新たな防衛ミッション用としては小さ過ぎて持続性と信頼性に乏しい。先進的な原子力発電であれば、エネルギー供給保証や(送電網の一時的機能停止からの)回復力などの点でDODのニーズを満たせるものの、技術面と安全面の仕様を全面的に実証する必要があるとした。このため、DODが今回提案した超小型炉では、通常運転時や異常時も含めて放射線被ばくを「合理的に達成可能な限り低く」抑えることが必須条件。具体的な仕様は、HALEU(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)の3重被覆層・燃料粒子「TRISO」燃料を使用する先進的な超小型ガス冷却炉(AGR)となる。予定している活動としては、同炉の原型炉を候補地となっているDOE傘下のアイダホ国立研究所など2か所で建設するが、1つは既存インフラ施設内部での建設となる一方、もう1つは屋外とする計画。その上で、プロジェクトの対象物質の試験と照射後試験、原子炉の起動時と過渡変動時の試験を行うほか、サイト・バウンダリ内における同炉と専用機器の可動性評価や運転試験も実施する。また、これに付随する活動として、燃料の製造加工や試験モジュールの組み立て、放射性廃棄物と使用済燃料の管理などが含まれるとしている。(参照資料:3月2日付連邦官報、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 05 Mar 2020
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ポーランドの原子力導入計画、米国との協力を確認
米エネルギー省(DOE)は2月26日、ポーランド政府の代表とエネルギーに関する第三回目の戦略的対話をワシントンで開催した。同省のD.ブルイエット長官はこの中で、ポーランドのエネルギー供給保証強化に向けた協力方策として、クリーンで信頼性が高く、送電網の一時的な機能不全からの回復力(レジリエンス)も高い原子力発電所をポーランドで建設することに、米国の原子力産業界が引き続き関心を抱いていると表明した。この認識はポーランド代表側も確認・共有しており、この対話に出席したポーランドのP.ナイムスキ戦略エネルギー・インフラ特任長官は自身のホームページで、「ポーランドとしてはCO2を排出しない原子力は国内のエネルギー供給ミックスにおける重要要素になると考えている」と説明。これは地球温暖化防止のための欧州連合(EU)目標とも合致していると述べた。同特任長官はまた、リンク付けした現地報道記事の中で「わが国との長期的な協力を望む数社の潜在的パートナーが米国におり、我々は原子力発電所の建設で現実的な解決策に近づきつつある」と指摘。大型原子力発電所の導入を目指して早ければ数か月以内、遅くとも一年ほどで建設パートナーを選定すると伝えている。ポーランドでは石炭や褐炭といった化石燃料資源が豊富である。しかし、EUが2020年までのエネルギー政策目標の中でCO2排出量を2005年比で14%削減などを設定したため、ロシアからの石油と天然ガスの輸入量削減とエネルギー源の多様化を推進中。チェルノブイリ原子力発電所事故により、一度は頓挫した原子力発電の導入計画も進めている。ナイムスキ戦略エネルギー・インフラ特任長官によると、ポーランドの現在の原子力導入プログラムでは、2040年から2045年頃に出力100万kW以上の大型炉を少なくとも6基、合計設備容量で900万kW分を約20年間に3段階に分けて建設する計画。これらの原子炉によって安全かつ安定的なエネルギーを20数%程度、60年にわたって確保する方針であり、いずれ同プログラムのパートナー企業を正式に招聘すると述べた。両国のエネルギーに関する戦略的対話は、2018年9月に米国のD.トランプ大統領とポーランドのA.ドゥダ大統領が定期的に開催することで合意した。これを受けてDOEのR.ペリー長官(当時)は同年11月、ポーランドのK.トゥホジェフスキ・エネルギー相と会談し、この対話構想の下で民生用原子力協力に向けた作業グループの設置を決めるなど、先進的原子力技術を含めた両国間のエネルギー供給保証協力の強化で共同宣言に署名。その後、2019年中にすでに二回、戦略的対話を実施している。(参照資料:DOEの発表資料、ナイムスキ長官HP(ポーランド語)、同リンク付け記事(1)、(2)(ポーランド語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 03 Mar 2020
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米トランプ大統領の2021会計年度予算教書、ユッカマウンテンの建設審査経費含めず
米国のD.トランプ大統領は2月10日に2021会計年度(2020年10月~2021年9月)の予算教書を公表し、エネルギー省(DOE)予算として2020年度で成立した予算レベルから8.1%減の354億ドルを要求していることを明らかにした。このうち13億6,000万ドルが原子力局(NE)予算で、新型炉の開発支援費用や「多目的試験炉(VTR)」の建設費用、国産ウランの備蓄経費などを含める一方、ネバダ州ユッカマウンテンにおける使用済燃料等の最終処分場関連では、同政権による例年の予算教書と異なり建設許可申請書の審査手続予算が含まれていない。原子力規制委員会(NRC)の2021会計年度予算要求でも同様で、DOE予算ではその代わりに、「(廃棄物の)中間貯蔵と放射性廃棄物基金の管理」プログラムに2,750万ドルを計上。放射性廃棄物を一時的に集中貯蔵する施設の開発・実行プログラムを進めるほか、原子力発電事業者から徴収した「放射性廃棄物基金」が他目的に流用されないよう監督を継続する。この中で、ユッカマウンテンの維持およびその環境要件とセキュリティ関連の活動も行うとしている。ユッカマウンテン関係でトランプ大統領は、2月7日のTwitterに「ネバダ州の意見を尊重する。これまでの政権は長年、持続的な解決策を見つけられなかったが、私の政権は革新的な解決アプローチを必ず探し出す」と投稿。これに対して、ネバダ州のS.シソラック州知事は2月10日、ユッカマウンテン関係費用が予算教書に含まれなかったことを歓迎する内容の書簡を担当官に手渡している。原子力に関して予算教書は、その他のエネルギー源と同様、国内エネルギー・ミックスにおける重要要素だとしており、様々な先進的原子力技術開発プログラムへの支援を約束。国内原子力産業の再生と諸外国に対する技術的競争力の強化に向けて、12億ドルを原子力研究開発(R&D)に充当した。この中では、高速中性子の照射施設となるVTRの建設費用として2億9,500万ドルを計上。民間セクターにおける新技術の開発・実証を支援する高速炉としては、最初のものになる。また、原子燃料サイクルの能力拡充を支援するため、予算教書は市場でウラン供給が途絶した場合の追加保証として、国内でウランの生産・転換・供給を行う制度の設置経費1億5,000万ドルを計上。これはトランプ大統領が昨年7月、「米国はウランの約93%を輸入するなど国産ウランの供給面で大きな課題に直面しており、これは国家的な安全保障問題だ」と判断、作業グループを設置したことに端を発している。予算教書はさらに、米国の原子力産業界が今なお苦慮している大きな課題の1つが使用済燃料の処分問題だと指摘。この課題は余りにも長期にわたり膠着状態にあるが、トランプ政権は使用済燃料の法的な引取・管理義務を全面的に履行する考えであり、ユッカマウンテンの足踏み状態をいつまでも傍観しているつもりはない。新たな推進力を得て前進するため、代わりとなる解決策や直ぐにでも実行可能な道筋の開発を始めていると強調した。予算教書ではこれと並行して、盤石な中間貯蔵プログラムの実施を支援する方針。国内の放射性廃棄物を貯蔵・輸送・処分する代替技術の研究開発、地元の受け入れ意欲が高まるような処分システムの開発を進めていくとしている。(参照資料:DOE、予算教書(DOE分)、NRC、ネバダ州知事の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 13 Feb 2020
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米エネ省のVTR計画への支援でGEH社がテラパワー社と協力
2018年に米エネルギー省(DOE)の「多目的試験炉(VTR)」プログラムの支援企業に選定されたGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は1月21日、ビル・ゲイツ氏が出資する原子力開発ベンチャー企業のテラパワー社と共同で、VTRの設計と建設に向けた官民協力を推進していくと表明した。VTRは、新型炉に使われる革新的な原子燃料や資機材、計測機器等の開発で重要な役割を担うナトリウム冷却式の高速スペクトル中性子照射試験炉となる予定。DOEは官民の費用分担で同プログラムを進めたいとしており、テラパワー社はすでにVTRの設計促進等で同プログラムを支援中。DOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)で運営を担当するバッテル・エネルギー・アライアンス(BEA)が、昨年11月に費用分担パートナーシップの構築をDOEに代わって関係者に依頼した際、GEH社とテラパワー社は共同で提案書を提出していた。また、ワシントン州の地方自治体など27の公益電気事業者で構成されるエナジー・ノースウェスト社は両社の連携協力を支援していく考え。これに続くその他の企業や投資家が、両社の取組に追加で参加する意思を表明している。米国には現在、高速スペクトル中性子の照射を行える施設が存在せず、それが可能なVTRの国内建設は、2018年9月に成立した「2017年原子力技術革新法(NEICA2017)」でも必要性が強調されていた。DOEは、GEH社のモジュール式ナトリウム冷却高速炉「PRISM」で実証済みの技術をVTR開発に活用する方針で、2019年3月にはVTRの概念設計に取りかかると発表。VTRプログラムを通じて建設プロジェクト全体のコストやスケジュールの見積作業を進め、本年中には建設の可否について最終的な判断を下す。建設が決まれば、2025年12月までに建設工事をINL内で完了し、2026年から最大限に利用できる施設として運転開始することになる。GEH社は今回の連携によって、ナトリウム冷却炉の技術で豊かな経験を有するエンジニアや科学者の最強チームが結成されると説明。双方のチームがVTRの設計と資機材調達・建設に関する特殊な経験を互いに補い合えるとした。テラパワー社は第4世代の進行波炉(TWR)を開発するため、10年にわたってナトリウム技術の開発に投資を行っているが、原子力のポテンシャルを最大限に活かすには、新素材の実験や最新技術の実証に対する投資で産業界と政府が協力していかねばならないと指摘した。また、同社によれば米国の原子力産業界は、原子力技術で世界のリーダーシップを握るため、次世代の原子力技術を構築する準備が出来ている。VTRによって原子力技術革新の基盤が米国にもたらされ、それが米国の経済や国家安全保障を促進することになるとしている。(参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月22日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 23 Jan 2020
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米エネ省、オクロ社の小型高速炉建設用にアイダホ研の敷地使用を許可
米エネルギー省(DOE)は12月10日、カリフォルニア州を本拠地とする超小型原子炉の開発企業、オクロ(Oklo)社が設計した小型高速炉「オーロラ」(=完成予想図)を、傘下のアイダホ国立研究所(INL)敷地内で建設することを許可すると発表した。これは、先進的原子力技術の商業化支援イニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」の一環となる措置であり、DOEはこれまでにユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)に対しても、INLの敷地を使ってニュースケール・パワー社製・小型モジュール炉(SMR)の初号機を建設することを許可している。オクロ社は、「非軽水炉型の先進的原子炉設計として、INLサイトの使用許可が下りたのは初めて」と強調しており、2020年代初頭から半ばにかけての「オーロラ」着工を目指す。同社は今のところ、「オーロラ」の設計認証(DC)審査や建設・運転一括認可(COL)などを申請していないが、その商業化に向けた重要な一歩になったとしている。オクロ社によると、「オーロラ」は電気出力0.15万kWのコンパクト設計で、米国でこれまでに開発・実証されてきた先進的な金属燃料を使用。冷却水が不要であり、少なくとも20年間は燃料交換なしで熱電併給を続けることが可能。また、究極的には燃料をリサイクルしたり、放射性廃棄物からクリーン・エネルギーを取り出すこともできる。米原子力規制委員会(NRC)はすでに2016年から、X-エナジー社の「小型モジュール式・高温ガス炉(Xe-100)」やテレストリアル・エナジー社の「小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)」などと同様、「オーロラ」設計に対して「認可申請前活動」を適用。許認可申請のガイダンス提供や、潜在的な課題の事前の指摘などで、オクロ社が申請書を提出する準備作業を支援していた。今回、DOEが発給したサイト使用許可は「オーロラ」が運転を終了するまで有効なもので、着工前にオクロ社がクリアしなければならない様々な要件や許認可手続きを明示。使用したサイトは最終的に元の状態に戻して返還しなければならないが、DOEは同許可の発給により、新しいクリーン・エネルギー技術、中でも特に、先進的核分裂技術の商業化という誓約を明確にしたとオクロ社は評価している。(参照資料:DOE、オクロ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 13 Dec 2019
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新型原子炉用HALEUの生産実証で米セントラス社がエネ省と3年契約
米メリーランド州のセントラス・エナジー社(旧米国濃縮会社(USEC))は11月5日、新型原子炉用の燃料として使用が見込まれているHALEU(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)の生産能力を実証するため、遠心分離機カスケードをオハイオ州パイクトンの「米国遠心分離プラント(ACP)」に配備するという3年契約を米エネルギー省(DOE)と締結した。HALEUを国内で確保できなければ、米国が世界の新型原子炉開発市場でリーダー的立場を確立する上で、大きな障害になることは広く知られていると同社は指摘。2017年の調査によると、米国内で新型原子炉を開発している大手企業のうち67%が、「HALEUの供給確保は緊急の課題」あるいは「重要課題」と回答したという。今回の契約の下で、同社は独自に開発した新型遠心分離機「AC100M」、およびHALEU生産用のカスケードを構成するインフラについて、許認可手続と建設・組立および運転を請け負うことになる。HALEUで製造した燃料は、米国の政府と民間の両部門で開発されている数多くの新型原子炉で必要となる一方、国内で商業的に入手することは困難。典型的な既存の原子力発電所ではU235の濃縮度が5%程度のウランを燃料に使用するのに対し、HALEUではこれが最大で20%となるため、セントラス社は「技術面と経済面ともに潜在的な利点がある」とした。一例として、ウラン濃縮度が高まることによって燃料集合体や原子炉を小さくすることが出来、燃料交換の頻度は低下すると同社は指摘。原子炉内では高い燃焼度を達成できるため、燃料の必要量が少なくなり、結果的に放射性廃棄物の排出量も少なくなる。HALEUはまた、米国をはじめ世界中で稼働している既存の原子炉に対し、将来的に次世代燃料を製造する際に用いられる。HALEUをベースとするこれらの新しい燃料であれば、既存の原子炉で発電量を増やしつつ、経済性を改善し固有の安全性も得られると同社は説明している。DOEとセントラス社による今回の連携プログラムは、今年5月末に両者が調印した予備的合意書簡に基づき進められてきた。セントラス社のD.ポネマン社長兼CEOは、「(この連携により)次世代の新型原子炉への移行を米国がリードする一助になる」と指摘。官民の両部門で様々な使命を持つ新型原子炉に、同社が力を与えられると確信していると述べた。また、国産HALEU技術への投資は、新型原子炉や燃料を開発している顧客のニーズに同社が応えることを可能にすると強調した。米国内では現在、HALEUの製造が直ちに可能な商業施設が存在せず、DOEはアイダホ国立研究所(INL)内に保管中のHALEU約10トンを使って、原子燃料を製造加工するパイロット・プログラムを推進中。昨年10月に、同プログラムが周辺環境に大きな影響を及ぼすことはないとする評価結果(案文)を1か月間、パブリック・コメントに付しており、今年1月には、INL設備を使ってのHALEU燃料製造が決定している。(参照資料:セントラス・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 07 Nov 2019
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【短信】米エネ省のペリー長官、年内に辞任する意向を表明
米エネルギー省(DOE)のR.ペリー長官は10月17日、今年中に長官職から退くとの意向をD.トランプ大統領宛ての書簡で明らかにした。同氏はトランプ政権発足直後の2017年3月からDOE長官を務めていたが、ここ数か月は、同大統領に対する弾劾調査の原因となったウクライナ疑惑への関与が取り沙汰され、下院からは召喚状を出されていた。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 18 Oct 2019
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