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米国 燃料サプライチェーン強化に27億ドル拠出
米エネルギー省(DOE)は6月27日、米国内産の低濃縮ウラン(LEU)購入に関する「提案依頼書(RFP)」を発行した。RFPは、J. バイデン大統領の「米国への投資(Investing in America)」アジェンダから27億ドル(約4,363億円)を支援するもので、ロシア産LEUへの依存脱却に向け、米国内のウラン濃縮能力を強化し、商業用核燃料の供給源の多様化や安定供給を図ることが狙い。DOEは今回のRFPを通じて、新規の濃縮施設や既存の濃縮施設の拡張プロジェクトなど、新たな供給源と2件以上の契約を締結する予定だ。今回の発表について、J. グランホルムDOE長官は、DOEが国家安全保障の強化と国内原子力産業の成長に不可欠な、米国内のウラン供給力を強化しているとしたうえで、「原子力業界の世界的リーダーであり続けるという米国の決意を示すもの」と表明。また、A. ザイディ大統領補佐官兼国家気候アドバイザーは、バイデン政権下で進められてきたクリーンエネルギーの拡大促進が、高賃金な雇用を生み、なおかつエネルギー安全保障を高めてきたとこれまでの実績を強調した。ウランの調達をめぐっては、バイデン大統領が5月13日、ロシア産LEUの米国への輸入を禁止した「ロシア産ウラン輸入禁止法」に署名、来月8月11日に施行される。同法は、2040年まで有効。DOEによると、原子炉や米国の原子力関連企業の継続的な運営を維持するために、代替となるLEUの供給源がない、あるいは、LEUの輸入が国益にかなうと判断した場合は、輸入禁止の免除が可能。ただし、その場合もLEUの輸入量は限られ、いかなる免除も2028年1月1日までに終了しなければならない。DOEエネルギー情報局(EIA)が6月に発表した最新のウラン市況年次報告書(2023 Uranium Marketing Annual Report)によると、ロシアは米国の商業用原子力発電所向けLEUの27%を供給しており、米国に次ぐ第2位のシェアを占めている。現在、LEUの購入において、米国では全体の約72%が海外調達となっている。
- 03 Jul 2024
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米GNF 高燃焼度燃料の照射後試験へ
米GEベルノバ社傘下の燃料製造会社であるグローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社は5月9日、同社製の高燃焼度燃料棒を商業用原子炉で6年間燃焼後、米国エネルギー省(DOE)のオークリッジ国立研究所(ORNL)で照射後試験を実施することを明らかにした。燃料棒は、DOEの事故耐性燃料(ATF)プログラムの支援を受け、ノースカロライナ州ウィルミントンにあるGNF社の施設で製造され、ORNLで燃料の安全性と性能を確認する照射後試験を実施する。高燃焼度燃料は、長期貯蔵のために取り出す前により長く炉心に留まることが可能となり原子力の安全性を高め、燃料交換停止の回数は減少、発電量の増加による経済性の向上のほか、運転期間中に発生する使用済み燃料を減少させる。ORNLは今後数年間にわたって照射後試験を行う。GNF社は高燃焼度燃料の2020年代末までに商業展開を目指し、得られた試験データをエンジニアリング、ライセンス取得の取り組みに活用する予定だ。
- 21 May 2024
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米エネ省 石炭火力から原子力への移行ガイドライン
米エネルギー省(DOE)は4月1日、閉鎖済み、または閉鎖する石炭火力発電所の原子力発電所への代替を検討するコミュニティ向けにガイドラインを発表した。ガイドライン(Coal to Nuclear Transitions: An information guide)は、石炭火力発電所から原子力発電所への移行が、地元での雇用機会、高賃金の雇用創出、立地地域・発電事業者・地元サプライヤーの収入増など立地地域に利益をもたらすことを示した。これはDOE傘下の(アルゴンヌ、アイダホ、オークリッジ)の3つの国立研究所による詳細な共同研究に基づく。また、トレーニング・プログラムにより、既存の石炭火力発電所のほとんどのスタッフが代替する原子力発電所へ移行可能であることが研究で明らかになっている。2035年までに国内の石炭火力発電所の30%近くの閉鎖が予想されており、発電所が立地する地域社会にとって経済的な不確実性を意味する、とガイドラインは指摘する一方、先進的小型モジュール炉(SMR)は石炭火力発電所の代替に最適であるとしている。ガイドラインは、コミュニティに対して石炭から原子力への移行(coal-to-nuclear=C2N)に伴う経済的影響、労働力の移行に関する考慮事項、政策と資金に関する情報を提供するほか、電力会社向けに移行スケジュールやインフラの再利用などの考慮事項についても示している。「CO2排出実質ゼロ(ネットゼロ)経済への移行に取組む中、何十年にもわたって米国のエネルギーシステムを支えてきたエネルギーコミュニティと石炭労働者へのサポートは絶対不可欠である」とDOEのK.ハフ原子力担当次官補は語る。DOEの2022年の調査報告書では、C2Nの潜在的な候補地として、閉鎖157か所と運転中237か所の石炭火力発電所を特定し、候補地の80%が先進原子炉の立地に適していると報告。C2Nでは、用地や電気機器設備、道路や建物など石炭火力のインフラ設備を再利用できるため、何もない更地に建設する場合と比べ最大35%の建設コストの削減が見込まれている。先進炉開発会社であるテラパワー社は、同社製「Natrium」初号機の建設サイトに、閉鎖される石炭火力発電所の隣接サイトを選定している。3月末にワイオミング州南西部のケンメラーでの建設許可を米原子力規制委員会(NRC)に申請し、年内に非原子力部を着工する計画だ。この石炭火力発電所を運転するパシフィコープ社は昨年、「Natrium」をユタ州で運転中の石炭火力発電所の近くにも2基導入する検討を始めたことを発表している。
- 16 Apr 2024
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【第57回原産年次大会】「今何をすべきか」を基調テーマに開幕
「第57回原産年次大会」が4月9日、東京国際フォーラム(東京・千代田区)で開幕した。国内外より約700名が参集し(オンライン参加を含む)、10日までの2日間、「今何をすべきか 国内外の新たな潮流の中で原子力への期待に応える」を基調テーマに議論する。開会セッションの冒頭、挨拶に立った日本原子力産業協会の三村明夫会長はまず、「原子力発電の積極的な活用の機運が国内外において極めて高まっている」と強調。最近1年間を振り返り、2023年4月の「G7札幌エネルギー・環境大臣会合」では日本がG7議長国として「原子力の最大限活用」が謳われ、12月のCOP28(ドバイ)では「COP史上初めて公式に原子力が積極評価されるとともに、25か国により『原子力3倍宣言』が発出された」とした。また、直近3月には、ベルギー・ブリュッセルで、IAEAとベルギー政府の主催による史上初の原子力に特化した首脳会議「原子力サミット」が37か国参加のもとで開催されたことに言及。こうした動きをとらえ、「原子力発電の拡大を目指す国際的な動きが加速している」と、あらためて述べ、「国内外の強い原子力推進モメンタムの中で、われわれ原子力産業界は今何をすべきなのか」と、今大会基調テーマの趣旨を訴えかけた。開会セッションに続き、セッション1では「カーボンニュートラルに向けた原子力事業環境整備」、セッション2では「バックエンドの課題:使用済み燃料管理・高レベル放射性廃棄物最終処分をめぐって」、10日のセッション3では「福島第一廃炉進捗と復興状況」、同セッション4では「原子力業界の人材基盤強化に向けて」と題し、それぞれ議論する。三村会長は、これらセッションを通じ「原子力の最大活用に向けた課題と展望、日本のみならず世界のエネルギー・環境問題を解決するための糸口について、見出せることを切に願う」と、活発な議論が展開されるよう期待した。続いて、来賓挨拶に立った岩田和親・経済産業副大臣は、「福島第一原子力発電所事故の反省を一時も忘れることなく、高い緊張感を持って、安全最優先で万全の対策を行うことが大前提」と、原子力エネルギーを活用する上での姿勢をあらためて強調。さらに、元旦に発生した能登半島地震に伴うエネルギーインフラに係る被災・復旧状況も踏まえ、「不断の安全性向上に努めていくことが重要。長い積み重ねであっても、一瞬の気の緩みで信頼が失われかねない」との教訓を述べた。原子力発電に関しては、東日本大震災以降、新規プラントの建設機会喪失により、「サプライチェーン・人材を含めた原子力産業を支える事業環境は年々危機的な状況になりつつある」と懸念。次世代革新炉の建設、核燃料サイクルの推進、バックエンドの課題対応などを見据え、原子力産業の基盤を支援すべく「強靭なサプライチェーン構築に向け政策支援を一層強化していく」と、引き続き事業環境整備に取り組んでいく姿勢を示した。開会セッションでは、特別講演として、世界原子力発電事業者協会(WANO)の千種直樹CEO、元米国エネルギー省(DOE)副長官のダニエル・ポネマン氏(ビデオメッセージ)が登壇。千種氏は、1986年のチョルノービリ発電所事故を契機に設立後、世界の原子力発電事業の安全性を向上する「リーダー」となるビジョンを掲げ、35年にわたって情報交換、ベストプラクティス共有などに取り組んできたWANOの活動を紹介。WANOのメンバーとなる発電所は現在、世界で運転中460基、建設中60基に上るという。これまで蓄積された豊富なデータとその分析は「これから建設に入る国々への支援にも資する」などと、WANOのグローバルな活動姿勢を示した上で、こうした活動に対し、産業界からの一層の支援を求めた。また、同氏は、ロシアによるウクライナ侵攻に関し、「ウクライナのすべての原子力発電所にとって非常に由々しき状況」と危惧。WANOとして、IAEAとも協力し、ザポリージャ発電所に係るタスクフォースミッション派遣の他、住民らの心理的ケアも行っていることを紹介した。ポネマン氏は、「エネルギー戦略における新しい視点と原子力の役割」と題し講演。かつても原産年次大会に登壇した経験のある同氏は、あらためて原産協会との協力意義を振り返りながら、「2050年カーボンニュートラル」実現に向けた原子力の役割を強調。電力部門にとどまらず「電気自動車の普及が進むことにより、運輸部門の脱炭素化にも重要な役割を果たす」などと、産業界による技術革新への期待を述べた上で、「世界のエネルギー業界ではますます原子力の拡大が必要」と訴えかけた。さらに、同氏は、データセンターやAIの普及に伴う世界のエネルギー需要増を、「原子力発電所の新設でも賄いきれない、遥かに速いスピードで進む爆発的勢いだ」と懸念。その上で、再生可能エネルギーの限界にも言及し、原子力の役割について、「すべての人の意見が一致することはできないが、こうした深刻な懸念にも立ち向かわねばならない」などと述べ、今大会の議論に先鞭をつけた。
- 09 Apr 2024
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米DOE パリセード発電所再稼働に融資保証
米エネルギー省(DOE)融資プログラム局(LPO)は3月27日、2022年5月に閉鎖したパリセード原子力発電所(PWR、85.7万kW)の再稼働に向け、同発電所を所有するホルテック社に対して15.2億ドル(約2,306億円)を上限とする条件付き融資保証を決定した。この計画が進めば、閉鎖後に再稼働する米国初の原子力発電所となる。ホルテック社は、原子力発電所の廃止措置のほか、放射性廃棄物の処分設備や小型モジュール炉(SMR)の開発など、総合的なエネルギー・ソリューションを手掛ける企業。同社は2018年、ミシガン州南西部のパリセード発電所の廃炉に向けて、当時の所有者兼運転者のエンタジー社から同発電所の買収で合意。閉鎖から数週間後の2022年6月に買収が完了し、2041年までにサイトの解体、除染、復旧作業を完了する計画だった。しかし、CO2の排出削減に各国が取り組む中、原子力がクリーンなエネルギー源として重視されるようになり、DOEが既存の原子力発電所の早期閉鎖を防止するため2022年4月に設置した「民生用原子力発電クレジット(CNC)プログラム」に同発電所を適用対象として申請した。しかし、同発電所への適用は認められず、2023年初め、再稼働に必要な融資を求めてDOEのLPOに連邦融資資金を申請していた。パリセード発電所の再稼働方針は、ミシガン州のG.ホイットマー知事も2022年9月に支持を表明。同知事が2023年7月に署名したミシガン州の2024会計年度の州政府予算法案で、同発電所の再稼働に向けて1.5億ドル(約228億円)の支援を盛り込んでいる。ホルテック社は2023年9月、州内の非営利団体のウルバリン電力協同組合と、子会社を通じて再稼働時に同発電所による発電電力の長期の電力売買契約(PPA)を締結。同10月には米原子力規制委員会(NRC)にパリセード発電所の運転認可の再交付を申請した。DOEによると、ホルテック社はNRCの承認を条件に同発電所を稼働させ、少なくとも2051年までベースロードのクリーン電力生産のために改良する計画だという。同発電所の再稼働により、年間約447万トン、今後25年間で合計1.11億トンのCO2排出が削減される見込み。DOEのJ.グランホルム長官は、「原子力発電は、米国でカーボンフリーの唯一最大の電源であり、全米で10万人の雇用を直接支え、さらに数十万人の雇用を間接的に支えている」とし、「J.バイデン大統領の『米国への投資(Investing in America)』アジェンダは、パリセード発電所への多額の資金提供により、ミシガン州で活気に満ちたクリーンエネルギー分野において労働力を支援・拡大するもの」と強調している。DOEによる融資保証の発表を受け、ホイットマー知事は「パリセードの再稼働により600名の高賃金・高スキルの雇用維持と80万世帯にクリーンで信頼性の高い電力供給が可能になる。再稼働すれば、パリセードは米国初の閉鎖後の再稼働に成功した原子力発電所となり、地域経済に3.63億ドルの好影響をもたらす」と述べた。パリセード発電所の再稼働は、2022年8月に署名された米国インフレ削減法に基づくエネルギーインフラ再投資(Energy Infrastructure Reinvestment: EIR)プログラムを通じて条件付きの融資保証を提供された初プロジェクト。EIRプログラムでは、温室効果ガス排出への対処を目的に、稼働していない既存のエネルギーインフラの再稼働や、稼働中のインフラに対するプロジェクトへの融資が可能である。ホルテック社は、DOEが最終的な融資文書を作成し融資を実行する前に、一定の技術的、法的、環境的、財務的条件を満たす必要がある。なお、ホルテック社はパリセード・サイトに小型モジュール炉(SMR)の2基導入も計画している。DOEによるとSMRは条件付き融資の対象ではないが、「既存インフラを活用しながら、敷地内に容量を追加し、気候変動との闘いに不可欠な新型炉の国内開発を促進する可能性がある」という。パリセード発電所は1971年に営業運転を開始。閉鎖に至るまでの50年以上、安全で信頼性の高い運転実績を持つ。運転の認可期限は2031年であったが、エンタジー社は売電契約が満了したタイミングで同発電所を閉鎖した。同発電所は閉鎖後に燃料を取出し済みで、再稼働にあたっては、既存の発電所インフラを利用するが、既存設備の点検、試験、改修等は必要である。
- 02 Apr 2024
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米国 HALEU製造計画が一時減速
米国のウラン濃縮事業者のセントラス・エナジー社(旧・米国濃縮公社:USEC)は2月8日、HALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))を収納するシリンダーの一時的不足により、米エネルギー省(DOE)との契約の第2段階で予定していた900kgのHALEU燃料の年内納入は不可能との見通しを示した。DOEは契約上、製造されたHALEU燃料収納のための貯蔵用シリンダーを提供する必要があった。2023年第4四半期および通期決算報告の中で明らかにしたもので、同社の発表によると、DOEは、「サプライチェーンの問題により、必要な5B型シリンダーの確保が困難になっている」という。5B型シリンダー入手の遅れは一時的なものであるが、契約どおりの本年11月までには当初予想されていた900kgのHALEU燃料のDOEへの納入は困難との見方を示した。B型シリンダーは、濃縮ウランを含む燃料のガンマ線と中性子線からの遮蔽維持が可能な規制当局認定のキャスク。30B型シリンダーは、低濃縮ウランを燃料加工業者に輸送するために使用されるが、5%以上の濃縮ウランであるHALEU燃料には使用できない。セントラス社は昨年11月、オハイオ州パイクトンのポーツマス・サイトにある米国遠心分離濃縮プラント(ACP)で製造された20kgのHALEU燃料をDOEに初納入し、2022年に締結されたコストシェア((総費用を折半して支払う。))契約である第1段階を予算内かつ予定より早く終了した。その後、同社は第2段階のコスト・プラス・インセンティブ・フィー((原価加算契約の一種。発注者が負担すべき合理的な費用に加え、コスト削減を含め、パフォーマンス目標を達成または上回る契約に対して、成功報酬を上乗せして支払う。))契約である年間900kgのHALEU燃料製造に移行した。これら契約は、次世代原子炉用の先進燃料であるHALEU燃料を確保し、米国内のHALEU燃料のサプライチェーン構築を目的とするDOEの取り組みの一環である。製造されたHALEU燃料はサイト内の特設貯蔵施設に保管される。パイクトンでは、ポーツマス濃縮工場が1954年から2001年まで操業。当初は国の核兵器開発で濃縮ウラン製造のために建設されたが、1960年代に入り、商業的な用途に重点が置かれ、主に原子力発電所向けの濃縮ウランを供給した。冷戦終結後の1991年、兵器級ウラン濃縮は停止、1993年に濃縮施設はDOEからUSECにリースされたが、2001年に濃縮事業は中止された。USECは2014年に破産後、セントラス・エナジー社として再出発した。2019年のDOE原子力局との契約に基づき、同社はHALEU燃料製造を実証するため、ACPに新型遠心分離機「AC100M」16台連結の新しいカスケードを建設、昨年10月に濃縮役務を開始した。
- 27 Feb 2024
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米国 WE社製次世代燃料を照射後試験へ
米国のウェスチングハウス(WE)社は1月25日、事故耐性燃料(ATF)を含む25本の照射済みの試験用燃料棒を照射後試験のため、アイダホ国立研究所(INL)に送ったことを明らかにした。この照射後試験は、新型燃料の商業用原子炉での使用認可を得るために重要なプロセスの一環。納入された燃料は、ATFと商業用原子力発電所の炉心で照射された高燃焼度燃料。照射済み燃料が試験のためにINLに納入されたのは、20年ぶりのこと。INLを含む複数の国立研究所の技術支援と米エネルギー省(DOE)の資金援助を受けてWE社が開発・製造した次世代燃料は、安全性能の向上だけでなく、原子力発電所の運転サイクル期間を現在の18か月から24か月に延長することが可能だ。燃料交換停止回数の削減、使用済燃料の減容により発電事業者は大幅なコスト削減が可能になる。また、出力も増強されるため、原子炉の増設にも匹敵する。INLでは次世代燃料が通常の使用条件下でどのような性能を発揮するか実験・分析、また、想定される事故条件下における性能を確認し、貯蔵中や再処理中における挙動を実証するために追加試験を実施する。得られたデータは、米原子力規制委員会(NRC)の燃料に関する安全基準策定に利用される。同様の照射済み燃料棒は、以前にもテネシー州のオークリッジ国立研究所(ORNL)で試験された。INLとORNLにおける高度な検査と照射後試験は、次世代燃料を世界中の商用炉に装荷する最終承認を米NRCから得るための重要なマイルストーンである。WE社、米NRC、DOE原子力局、DOE国家核安全保障局(NNSA)のほか、日本、韓国、西欧の規制機関などにもデータが提供される。
- 06 Feb 2024
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米国 HALEU国内生産の提案を募集
米エネルギー省(DOE)は1月9日、J.バイデン大統領の「米国への投資(Investing in America)」アジェンダの一環として、HALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の国内での大規模供給体制を確立するため、濃縮サービスに関する提案依頼書(Request for Proposals:RFP)を発行した。DOEのJ.グランホルム長官は、「原子力は現在、国内のカーボンフリー電力のほぼ半分を供給しており、今後もクリーンエネルギーへの移行において重要な役割を果たし続ける」と強調した。HALEUは、現在開発中の多くの先進的原子炉に採用されている新型燃料で、先進的原子炉の展開は、バイデン大統領の掲げる2050年までのCO2排出量実質ゼロ(ネットゼロ)の達成、エネルギー安全保障の強化、高賃金の雇用の創出、米国の経済競争力の強化に貢献する。また、HALEU燃料の利用により炉心寿命は長くなり、安全性、効率向上が期待できる。現在、米国に拠点を置く供給事業者からHALEU燃料の商業的規模の供給はなく、原子力発電事業での積極的活用上の懸念材料となっていることから、国内供給が増加すれば、米国における先進的原子炉の開発と配備が促進されると見込まれている。バイデン大統領のインフレ抑制法は、2026年9月までとの期限付きの総額7億ドル(約1,015億円)を限度とする「HALEU利用プログラム」により国内にHALEUサプライチェーンを確立することを目的としている。今回のRFPで採択されるHALEU濃縮契約と昨年11月に発表されたRFPによる別契約(濃縮されたウランを先進的原子炉向けの金属、酸化物等の形態に再転換するサービス)に最大5億ドル(約725億円)の拠出が予定されている。DOEの原子力局は、国内のウラン濃縮事業者とHALEU燃料製造の契約を複数締結する計画だ。濃縮されたHALEUは、再転換事業者に出荷する必要があるまで製造サイトで保管する。最大契約期間10年のHALEU濃縮契約に基づき、政府は各ウラン濃縮事業者に対し最低発注金額として200万ドル(約2.9億円)を保証する。濃縮および貯蔵活動は米国本土で行われ、国家環境政策法に準拠する必要がある。今回のRFPによる提案提出の期限は3月8日。このRFPには、昨年6月に発行されたRFP草案に対する業界からのコメントに基づく修正がされている。DOEは、政府所有の研究炉の使用済み燃料のリサイクルを含む、先進的商業炉のHALEUサプライチェーンを拡大するための活動を支援している。DOEの予測では、2035年までに100%のクリーンな電力、2050年までにネットゼロの達成という政府目標の達成のためには、2020年代末までに先進的原子炉用にHALEU燃料40トン以上が必要であり、毎年、さらにこれを上回る燃料を製造しなければならない。昨年11月、DOEはHALEU燃料の実証製造プロジェクトにおいて重要なマイルストーンを達成した。米国のウラン濃縮事業者のセントラス・エナジー社(旧・USEC)が国内初となるHALEU燃料を20kg製造。なお、DOEは今後3年間で世界のウラン濃縮と転換能力を拡大し、ロシアの影響を受けない強靱なウラン供給市場の確立をめざし、官民セクターの投資促進のために有志国と連携を深めている。昨年12月7日、COP28の会期中に開催された第1回ネットゼロ原子力(NZN)サミットの場で、米国、カナダ、フランス、日本、英国は合同で、安全で確実な原子力エネルギーのサプライチェーンを確立するために政府主導の拠出42億ドル(約6,090億円)を動員する共同計画を発表した。これは、COP28における、日本をはじめとする米英仏加など25か国による、世界の原子力発電設備容量を2020年比の3倍に増加させるという宣言文書の具体化である。
- 15 Jan 2024
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米規制委 熔融塩炉実証炉の「ヘルメス」に建設許可発給
米原子力規制委員会(NRC)は12月12日、ケイロス・パワー社が開発しているフッ化物塩冷却高温炉「KP-FHR(Kairos Power Fluoride salt-cooled High temperature Reactor」の実証炉「ヘルメス(Hermes)」(熱出力3.5万kW)について、第4世代の原子炉としては初の建設許可を発給すると発表した。ケイロス社は、テネシー州オークリッジにある米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」に建設する計画で、2024年の着工に向けてサイトの最終準備作業を進め、2026年までに同炉を完成させる方針だ。同社が最終的に建設を目指している商業規模の「KP-FHR」は熱出力32万kW、電気出力14万kWで、冷却材としてフッ化リチウムやフッ化ベリリウムを混合した熔融塩を使用。燃料にはTRISO燃料((ウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆した粒子型の燃料))を用いるとしており、同炉では固有の安全性を保持しつつ電力と高温の熱を低コストで生成可能になるという。「ヘルメス」は「KP-FHR」の熱出力を約10分の1に縮小した非発電炉となる予定。ケイロス社は「KP-FHR」の商業化に向けた段階的アプローチの重要ステップとして、クリーンで安全かつ安価な核熱の生産能力を「ヘルメス」で実証する。NRCは現在、「ヘルメス」の隣接区域で同炉を2基備えた実証プラント「ヘルメス2」を建設するための許可申請書を審査中で、ケイロス社はこれらのヘルメス・シリーズで得られる運転データやノウハウに基づき、技術面や許認可面、建設面のリスクを軽減。「KP-FHR」のコストを確実化し、2030年代初頭に商業規模の「KP-FHR」の完成を目指すとしている。ケイロス社は2018年、「ヘルメス」の建設に向けたNRCとの幅広い申請前協議を開始した。DOEは2020年12月に同炉を「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」の対象として選定しており、プログラムの実施期間である7年間の総投資額6億2,900万ドルのうち、3億300万ドルをDOEが負担している。同社は「ヘルメス」の建設許可申請書を、2021年9月と10月の2回に分けてNRCに提出した。NRCは今年6月に同炉の安全性評価報告書(SER)最終版を完成させたのに続き、今年8月には環境影響声明書(EIS)の最終版を取りまとめた。NRCの委員4名は、10月19日のヒアリングでこれらの審査報告書が適正であると承認、同日の票決に基づいて建設許可の発給を決めていた。「ヘルメス」の建設計画に対しては、テネシー峡谷開発公社(TVA)が2021年5月に設計、許認可、建設、運転等でケイロス社に協力すると発表。テネシー州政府やオークリッジ市、東部テネシー経済審議会なども、同計画への支持を表明している。ケイロス社のP.ヘイスティングス副社長は、「過去50年以上の間に、米国で水以外の冷却材を使用する原子炉の建設が認められたのは初めて」と指摘。「ヘルメス」の完成後は運転認可の取得が別途必要になることから、「申請前の協議で築いた信頼関係に基づきNRCとは今後の審査でも協力していきたい」と述べた。 (参照資料:NRC、ケイロス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 13 Dec 2023
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COP28:第1回NZNサミットが閉幕
COP9日目の12月8日、ドバイ市内のホテルで開催されていたCOP併催「第1回ネットゼロ原子力(NZN)サミット」が閉幕した。これはNZNイニシアチブ発足初となるサミットで、首長国原子力会社(ENEC)が事務局を務め、2日間の日程で開催。特に7日木曜日は、COP会場が休日で閉鎖されていたこともあり、多くの関係者がサミットに出席した。サミットでは、新規建設をめぐる政治的な課題やファイナンス面でのソリューション、次世代による新しいコミュニケーションのあり方や、これからの環境主義(environmentalism)などが議論され、ミス・アメリカのグレース・スタンケさんやTikTokで著名なインフルエンサーであるイザベラ・ベメキさんなどが登壇した。同国初の原子力発電所バラカ1~3号機が好調に稼働する、アラブ首長国連邦(UAE)らしいプログラム構成だった。閉会セッションで最後にあいさつした日本原子力産業協会の植竹明人常務理事は、2050年までに原子力発電設備容量を3倍に拡大するという目標を、ドバイの観光名所である「バージュ・カリファ」(2010年に完成した世界一高いビルで828m206階。ちなみに世界二位は632m)にたとえ、「きわめて高い目標」だと指摘。そして、このような巨額のプロジェクトを成し遂げるには、「並外れた先見性、洞察力、思慮深さ、決断力、そして勇気が必要」であり、「原子力産業界も高い目標を達成するために同様の覚悟が必要」との考えを示した。また「バージュ・カリファ」の大規模な基礎部分の強度になぞらえ、原子力産業界の目標達成においても、「確固たる原子力政策、次世代人材の確保、革新的な技術、ファイナンス、国際連携」などの堅牢な基礎が必要だと説明。そのうえで、「すべての根底にある最も重要な要素は安全」であると強調した。さらに「福島第一原子力発電所事故から学んだことは、安全について社会とコミュニケーションすることの重要性」であり、「常に安全性について社会と議論しコミュニケーションすることが、私たちの 2050 年の目標に向けた長い挑戦を支える基礎になる」と結んだ。
- 11 Dec 2023
- CULTURE
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COP28:札幌5首脳 新たな燃料市場創設へ42億ドル
COP8日目の12月7日、日本をはじめとする米国、フランス、カナダ、英国の“札幌5”((今年4月に札幌でコミュニケを採択した5か国のため、こう呼ばれる))首脳が、原子燃料の供給保障を万全にするため、新たな燃料サプライチェーンの構築に42億ドルを投じることを発表(仮訳)した。これは同日開催されていた第1回ネットゼロ原子力(NZN)サミットの場を借りて、急遽発表されたもので、2日に発表された22か国((その後アルメニアも加わり、23か国))による2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍にする宣言の実現に向けた具体的な動きだ。42億ドルという巨額を投じ、今後3年でウランの濃縮および転換能力を拡大し、世界の原子燃料市場で大きなシェアを占めているロシアの影響力を排除した新しい燃料市場を創設する。主導した米エネルギー省(DOE)のK.ハフ原子力担当次官補は「2050年までに世界の炭素排出ネットゼロおよび1.5℃目標を達成できるのは原子力だけ」とし、そのためには「信頼性のある安全な原子燃料サプライチェーンが必要だ」と述べた。日本原子力産業協会をはじめ、米原子力エネルギー協会(NEI)、欧州原子力産業協会(nucleareurope)、カナダ原子力協会(CNA)、英原子力産業協会(NIA)は共同で声明を発表し、新しい原子燃料サプライチェーンの構築に向けた政府の姿勢を歓迎。安定した燃料供給は脱炭素化とエネルギー・セキュリティを向上させるだけでなく、国家安全保障も強化すると指摘した上で、「産業界の供給能力拡大には今回のような政府による支援も不可欠だが、さらに前進させるには、民間企業および金融機関からの投資が不可欠だ」と強調した。ロシアは、世界のウラン濃縮および転換市場でほぼ50%を支配しており、米国の原子力発電所で使用される燃料の約2割はロシア製と言われている。ロシアは、安価な価格で原子燃料を供給し、世界市場における支配力を強めているが、特に、今後新興国も含む世界規模での導入が予想される先進炉の多くが装荷するHALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の供給元は、ロシアだけだった。こうした独占状況を打破するため今年10月、米国のウラン濃縮企業であるセントラス・エナジー社(旧USEC)が、オハイオ州パイクトンでHALEU燃料の製造を開始したばかり。HALEU燃料は先進的原子炉の設計を一層小型化するとともに、運転サイクルを長期化し運転効率を上げることにも役立つと目されており、今後の需要増が見込まれている。DOEが進める「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」においても、支援対象に選定された10の先進的原子炉のうち、9の炉型でHALEU燃料の装荷が予定されている。会場で記念のセルフィーを撮るハフ次官補とセントラス・エナジー社のD.ポネマンCEO
- 08 Dec 2023
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COP28:原子力発電設備容量3倍に向け 産業界が誓約
COP6日目の12月5日、「ネットゼロ原子力(Net Zero Nuclear=NZN)」イニシアチブが発起人となり、2050年までに原子力発電設備容量を3倍にする目標に向け最善を尽くすことを誓う「Net Zero Nuclear Industry Pledge」(以下、誓約)が、世界120社・機関の賛同を得て署名、発表された。これは同2日に、日本をはじめとする米英仏加など22か国((その後アルメニアも署名し、23か国))が、世界の原子力発電設備容量を3倍に増加させるという宣言文書を発出したことを受けたもので、産業界としての決意表明と言えそうだ。誓約に賛同したのは、世界140か国で原子力関連事業を手がける120社・機関。日本からは、電気事業連合会、メーカー、ゼネコンなど13者が賛同。政府の宣言文書には署名していないロシアの企業も名を連ねている。誓約によると原子力産業界は、2050年までに原子力発電設備容量を3倍にする目標の達成に向け、政府、規制当局などと協力し、安全を最優先としながら、現在運転中 の既存炉の運転期間を最大限延長すると同時に、新規建設のペースを加速していく。誓約では、原子力発電は毎年平均 2.5兆kWhの電力を供給しており、世界の電力の約 1割、世界のクリーン電力の約 4 分の 1 を供給していることに言及している。その上で、持続可能な経済成長を維持しつつ、気候変動による壊滅的な被害を回避するために、原子力を含む利用可能なあらゆる低炭素テクノロジーを積極的に支持するべきとの考えを表明。各国政府が原子力を、政策面や資金調達面で、他のクリーンエネルギー源と同等に扱うことで原子力発電導入の世界規模での拡大が可能になると指摘している。誓約の詳細はコチラ。今回の誓約をとりまとめた世界原子力協会(WNA)のサマ・ビルバオ・イ・レオン事務局長は、「経済成長と気候変動防止を両立させるために原子力が必要とされる規模から逆算すれば、(3倍という数字は)野心的だが達成が必要」と強調し、「野心を現実の政策に反映させるとともに、目標達成のための資金調達を実現し、原子力新設を予算通りスケジュール通りに実施しよう」と呼び掛けた。米原子力エネルギー協会(NEI)のマリア・コーズニック会長は、原子力は低炭素エネルギーであるのみならず、高い信頼性を誇り、雇用やエネルギー安全保障をもたらすとした上で、 原子力は米国では超党派の合意が得られる分野の一つだと指摘した。一方で、サプライチェーンの再構築や労働力の確保などに課題があるとの考えを示し「原子力の拡大は容易ではないが、世界の産業界が総力を上げれば実現可能になる」との認識を示した。欧州原子力産業協会(nucleareurope)のイヴ・デバゼイユ事務局長は、「原子力アライアンス(Nuclear Alliance)」((欧州で原子力発電を利用している14か国の協力イニシアチブ。フランスが主導))の参加国など計16か国が今年の5月に、現在欧州で稼働する約1億kWの原子力発電設備容量を2050年までに1.5億kWに拡大することは実現可能と発表したことに言及。世界の原子力設備容量3倍という目標も、欧州の観点から見れば同様に実現可能との考えを示した。カナダ原子力協会(CNA)のジョン・ゴーマン理事長は、「クリーン電力を2〜3倍にするというのは、数学で考えて大変なチャレンジになる」としながらも、過去3年間で原子力を取り巻く環境に「大きな進展」があり現実味を帯びつつあるとの認識を示した。英国原子力産業協会(NIA)のトム・グレイトレックスCEOは、「今回の誓約は、CO2排出実質ゼロを達成し、将来にわたるエネルギーシステムを構築するために、産業界が原子力を大規模かつハイペースで建設する用意があることを示している」と強調。各国政府が進める原子力拡大目標を支援する準備があるとした上で「来年英国政府が策定するロードマップの中で、原子力を3倍にするという計画が盛り込まれるのが楽しみだ」と政府の行動に期待を寄せた。最後にスピーチした日本原子力産業協会の植竹明人常務理事は、「日本の原子力産業界は、福島第一発電所事故をすべての活動の礎として刻み込み、何よりも安全性を優先している」、「廃炉作業と福島地域の復興に全力で取り組んでいる」と述べたうえで、原子力安全推進協会(JANSI)や世界原子力発電事業者協会(WANO)の活動を通じ、自発的に原子力安全のレベルをさらに高めていることにも言及。「何よりも安全を最優先とする真摯な姿勢が、日本および世界で原子力が復権を果たす礎となっている」と述べた。また、植竹常務理事は「福島第一事故により、それまで総発電電力量の約3割を占めていた原子力はゼロに落ち込んだ。しかし、事故から12年を経て、12基が再稼働し、さらに5基が新規制基準に合格して再稼働の準備を進めている」と日本の現況を紹介。現在10基が審査中であり「仮に、これらすべてが再稼働すれば合計27基となり、2020年時点に稼働していた9基の3倍ということになる」と指摘した。そして日本の革新炉開発の状況にも触れ、革新大型軽水炉以外にも、小型モジュール炉(SMR)、ナトリウム冷却高速炉、高温ガス炉、核融合炉など様々な先進炉の開発を多くの国と協力しながら進めていることにも言及し「こうした技術協力を通じて誓約の実現に大きく貢献できる」との見方を示した。
- 06 Dec 2023
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米エネ省 X-エナジー社製マイクロ原子炉の商業化支援で補助金
米国で先進的原子炉と燃料の技術を開発中のX-エナジー社は10月25日、同社製の先進的マイクロ原子炉の商業化に向けた支援を得るため、米エネルギー省(DOE)と協力協定を締結した。同社はすでに、開発中の小型高温ガス炉「Xe-100」(電気出力8万kW)の初号機建設や、同炉で使用するHALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)の商業規模の製造施設建設に向けて、DOEの様々なプログラムから支援を受けている。DOEの原子力局と結んだ今回の協定では、同社製のマイクロ原子炉を備えた運搬可能なプラントで、0.3万kW~0.5万kWの電力を火力発電との競合価格で発電することを目指し、2024年末までの期間にDOEから総額250万ドルの支援を受けるとしている。「Xe-100」に対しては、DOEはこれまでにエネルギー高等研究計画局(ARPA-E)の「知的原子力資産による発電管理(GEMINA)プログラム」の下で、2020年5月に600万ドルの補助金交付対象に選定した。GEMINAでは次世代原子力発電所の運用・保守(O&M)コストを10分の1に削減し、経済性や柔軟性、効率性を高めることを目指しており、X-エナジー社は発電プラントにおける自動化技術やロボット、遠隔メンテナンスなど、先進的技術の活用に取り組んでいる。X-エナジー社はまた、2020年10月にDOEの「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」における初回補助金の交付対象の一つとして選定され、「Xe-100」の実証炉建設に向けた7年間の補助金として総額12億ドルが交付されることになった。その一部は、同炉で使用する3重被覆層・粒子燃料(TRISO燃料)の商業規模の製造施設を、テネシー州オークリッジで建設する計画にも利用される。同社はさらに、DOEの「新型原子炉概念の開発支援計画(ARC)」の下で、2022年8月に「Xe-100」の基本設計を完了している。X-エナジー社製のマイクロ高温ガス炉については、国防総省(DOD)の戦略的能力室(SCO)が2020年3月、遠隔地における軍事作戦用・可搬式マイクロ原子炉の設計・建設・実証を目的とした「プロジェクトPele」の候補炉型の一つとして選定。同プロジェクトでは最終的に、BWXテクノロジーズ(BWXT)社の先進的HTGRで原型炉を建設することになったが、DODは今年9月、候補設計段階にX-エナジー社と結んだ契約の範囲を拡大し、同社製のマイクロ高温ガス炉を民生用にも商業利用できるよう原型炉の設計を進めると発表。既存契約の範囲内で1,749万ドルをX-エナジー社に交付すると表明していた。X-エナジー社は現在、DOEとDODの両方と結んだ補助金契約に基づき、市場で商業的に活用可能な原子炉の開発を同時並行的に進めている。同社の主任エンジニアは「2つの省からサポートを受けて、軍事用と民生用両方のニーズに合わせた設計を低コストで提供していく」とコメント。「プロジェクトPeleにより、送電網が届かない地域でディーゼル発電を代替し、災害時の救助にも使える無炭素電源の建設にまた一歩近づける」と表明している。(参照資料:X-エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 30 Oct 2023
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米エネ省 3つのマイクロ原子炉で基本設計契約を締結
米エネルギー省(DOE)は10月23日、国内でマイクロ原子炉を開発中のウェスチングハウス(WH)社、ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)、およびスタートアップ企業のラディアント(Radiant)社と、総額390万ドルの基本設計・実験機設計(FEEED)契約を締結した。この契約金は、DOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)内にある国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)が提供するもので、NRICのFEEEDプロセスに沿って、WH社のマイクロ原子炉である「eVinci」、USNC社の「Pylon」、ラディアント社の「Kaleidos」の商業化を促進。具体的にはNRICの新しい「マイクロ原子炉実験機の実証用(Demonstration of Microreactor Experiments=DOME)テストベッド」を使って、3社の設計作業や機器の製造、燃料を装荷した実験機の建設と試験に際し、支援を提供する。NRICは、INLで30年以上運転された「実験増殖炉II(EBR-II)」の格納ドームを利用してDOMEテストベッドを建設中。DOEは早ければ2026年にもDOMEテストベッドでマイクロ原子炉の実験機試験を開始する計画で、3社が試験にかける経費を削減してプロジェクト全体のリスクを軽減するなど、これらの開発が一層迅速に進むよう促す方針だ。DOEのK.ハフ原子力担当次官補は、「今回のFEEED契約により、3社のマイクロ原子炉はさらに一歩、実現に近づいた」と指摘。「これらの原子炉は、クリーン・エネルギーへの移行を目指す様々なコミュニティに複数の選択肢を提供することになる」と述べた。WH社の「eVinci」はヒートパイプ冷却式の原子炉で、電気出力は0.2万kW~0.5万kW。DOEは2020年12月、官民のコスト分担方式で進めている「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象に選定しており、7年間に総額930万ドル(このうち740万ドルをDOEが負担)を投じて、2024年までに実証炉を建設する計画である。今回のFEEED契約による資金で、WH社はINLにおける5分の1サイズの実験機建設計画を策定。最終設計の決定や許認可手続きに役立てたいとしている。USNC社の「Pylon」は、第4世代の小型高温ガス炉(HTGR)として同社が開発中の「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」(電気出力0.5万kW~1万kW、熱出力1.5万kW)の技術に基づいている。MMRよりさらに小型で、送電網が届かない地域や宇宙への輸送が容易。「Pylon」1基あたりの電気出力は0.15万kW~0.5万kWだが、複数基連結することで出力を増強することが可能である。ラディアント社の「Kaleidos」は、電気出力が最大0.1万kW、熱出力は0.19万kWの小型HTGR。遠隔地域のディーゼル発電機を代替するほか、軍事基地や病院、データセンターその他の戦略的インフラ施設に確実にエネルギーを供給。陸上や海上の輸送のみならず空輸が可能であり、立地点では一晩で設置することができる。同社のD.バーナウアーCEOは今回の契約締結について、「2026年に『Kaleidos』で試験を行い、2028年に最初の商業炉を建設するという当社のスケジュールが保たれる」と強調。V.バッギオCOO(最高執行責任者)も、「DOMEテストベッドでの試験では『Kaleidos』の安全性やその他の性能に関する重要データが得られるので、そうしたデータやその分析結果を原子力規制委員(NRC)に提出することで、商業化に向けた許認可手続きが前進する」と指摘した。(参照資料:DOE、WH社、ラディアント社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 25 Oct 2023
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米政府のクリーン水素ハブ計画に原子力も加わる
米エネルギー省(DOE)は10月13日、「地域のクリーン水素製造ハブ(Regional Clean Hydrogen Hubs: H2Hub)」プログラムで全米から7地域の水素製造ハブを選定し、それぞれに約10億ドルずつ合計70億ドルの支援金を提供すると発表した。クリーン・エネルギーの製造関係では最大規模となるこの投資を通じて、DOEは原子力等のクリーン電力で製造した水素経済の確立に向け、官民全体で総額500億ドル規模の投資を促す方針。同プログラムで選定した7地域の水素製造ハブでは、高サラリーの雇用が数千人規模で生み出されるほか、米国全体のエネルギー供給保障の強化や地球温暖化への対応にも貢献すると強調している。米国のJ.バイデン政権は2035年までに発電部門を100%脱炭素化し、2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化することを目標に掲げている。産業部門の革新的な技術を用いたクリーンな水素の製造は、これに向けた戦略の一つであり、2021年11月に成立した「超党派のインフラ投資・雇用法」に基づくもの。水素の製造ハブ用に拠出される80億ドルのうち、70億ドルがDOEの「H2Hubプログラム」に充当されており、DOEは2022年11月に同プログラムへの応募を全米の水素製造団体に呼び掛けた際、国内の6~8か所にクリーンな水素の製造ハブを設置し、各地域における水素の製造者と消費者、接続インフラを結ぶ全国ネットワークの基盤を構築すると表明していた。今回DOEが決定した7地域の水素製造ハブは、イリノイ州とインディアナ州およびミシガン州をカバーする「中西部水素ハブ(MachH2)」や、ミネソタ州とノースダコタ州およびサウスダコタ州の「ハートランド水素ハブ(HH2H)」、ペンシルベニア州とデラウェア州およびニュージャージー州の「中部大西洋岸水素ハブ(MACH2)」、など。これらにより、DOEは低コストでクリーンな水素の製造施設が商業規模で設置されるよう促し、7ハブ全体で年間約300万トンのクリーン水素を製造するとともに、毎年2,500万トンのCO2排出を抑制する。これは550万台のガソリン車の年間排出量に相当する。中西部の「MachH2」には、米国最大の無炭素電力の発電企業であるコンステレーション・エナジー社をはじめ、水素バリューチェーンの各段階に係わる官民の70社以上が参加。同社はDOEから提供される支援金を用いて、イリノイ州の「ラサール・クリーン・エナジー・センター」にラサール原子力発電所(BWR×2基、各117万kW)のクリーン電力を活用した世界規模のクリーン水素製造施設を建設する。同施設の建設に必要な約9億ドルの一部をカバーできる見通しで、完成すれば年間33,450トンのクリーン水素を製造可能だと強調している。コンステレーション・エナジー社はすでに今年3月、ニューヨーク州で保有するナインマイルポイント原子力発電所(BWR×2基、60万kW級と130万kW級)で、米国で初となる水素製造の実証を開始。1時間あたり1,250kWの電気から、一日当たり560kgの水素を製造している。ラサール水素製造施設では、この実証製造で得られた知見を生かす方針である。また、「HH2H」には、電力・ガス会社を傘下に置く持株会社のエクセル・エナジー社が参加しており、DOEの発表同日、「既存の原子力発電所や太陽光、風力発電設備を活用してクリーン水素を製造する」と表明。同社はミネソタ州で、モンティセロ原子力発電所(BWR、60万kW)とプレーリーアイランド原子力発電所(PWR×2基、各55万kW)を所有・運転中で、交渉次第ではDOEの支援金の大半を受け取れるとの見通しを示した。このほか、中部大西洋岸地域の「MACH2」も、再生可能エネルギーや原子力の電力を活用して製造したクリーン水素で、同地域の脱炭素化を加速する考えを表明している。(参照資料:DOE、コンステレーション・エナジー社、エクセル・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 20 Oct 2023
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米セントラス社 HALEU燃料の実証製造を開始
米国のウラン濃縮サービス企業であるセントラス・エナジー社(旧・USEC)は10月11日、多くの先進的原子炉で利用が見込まれているHALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))を実証製造するため、HALEU製造用カスケードでウランの濃縮役務を開始した。同カスケードは、オハイオ州パイクトンにあるセントラス社の「米国遠心分離プラント(ACP)」内にあり、米国の技術による最新の濃縮設備。米原子力規制委員会(NRC)の認可を受けたHALEU燃料製造設備としては唯一のもので、今月後半にも製品としてのHALEU燃料が製造される見通しだ。このカスケードでは現在、新型遠心分離機「AC100M」が16台連結されており、年間約900kgのHALEU燃料の製造が可能である。追加の予算が確保できれば、同社は半年後にも2つ目のカスケードを設置し、その後は2か月毎に後続のカスケードを追加。予算の確保から42か月後には、120台の「AC100M」で年間約6,000kg(6トン)のHALEU燃料製造を目指す方針だ。 ACPではこれまで、ウラン235で最大10%までの濃縮しか許されていなかったが、NRCはセントラス社による濃縮認可の修正申請を受けて、2021年6月にこの濃度を最大20%までとすることを承認した。同社は2019年に米エネルギー省(DOE)と結んだ契約に基づいて「AC100M」を開発しており、DOEは2022年11月、米国におけるHALEU燃料の製造能力実証に向けて、セントラス社の子会社であるアメリカン・セントリフュージ・オペレーティング(ACO)社に、費用折半方式の補助金約1億5,000万ドルを交付していた。DOEの説明では、HALEU燃料は先進的原子炉の設計を一層小型化するとともに、運転サイクルを長期化し運転効率を上げるのにも役立つ。DOEが進めている「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」では、支援対象に選定された10の先進的原子炉のうち、9炉型のベンダーが「HALEU燃料を利用する」と表明。DOEはこのため、HALEU燃料を国内で商業的に調達できるようサプライチェーンを構築するとしている。セントラス社はDOEの補助金により、カスケードの建設をスケジュールどおり予算内で進め、HALEU燃料の実証製造も約2か月前倒しで開始できたと説明。また、カスケードの追加設置では、オハイオ州内で数百人の作業員が動員され、全国的には間接雇用も含めた数千人規模の雇用が創出される。ACPには数千台の「AC100M」を設置可能なスペースが残っているため、今後数十年にわたってウラン濃縮の需要に応えられると強調している。DOEのD.ターク・エネルギー次官補は同カスケードの操業開始について、「真の官民連携モデルでの成果であり、米国企業の手で米国初のHALEU燃料が製造される」と指摘。先進的原子炉に必要な燃料が提供されるだけでなく、米国の燃料供給保障にもつながっていくと述べた。セントラス社のD.ポネマン社長兼CEOは、「今後この実証カスケードに遠心分離機を順次追加していき、米国は再び世界の原子力分野でリーダーとなる」と強調している(参照資料:セントラス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 17 Oct 2023
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米規制委 濃縮度6%の試験用燃料集合体の装荷を承認
米国のサザン・ニュークリア社は9月28日、ジョージア州で運転するA.W.ボーグル原子力発電所2号機(PWR、121.5万kW)に、U235の濃縮度が最大で6%という次世代型事故耐性燃料(ATF)の先行試験用燃料集合体(LTA)を装荷する計画について、米原子力規制委員会(NRC)から8月1日付で承認を得ていたことを明らかにした。米国の商業炉で、濃縮度5%を超える燃料の装荷が認められたのは今回が初めて。同ATFは、ウェスチングハウス(WH)社が燃焼度の高い燃料で発生エネルギーの量を倍加し、商業炉の現行の運転期間18か月を24か月に延長することを目指した「高エネルギー燃料開発構想」の下で開発した。サザン・ニュークリア社に対するNRCの現行認可では、燃料内のU235の濃縮度は5%までとなっていたが、今回認可の修正が許されたことから、WH社は今後、米エネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)との協力により、先行試験燃料棒(LTR)が各1本含まれるLTAを4体製造。サザン・ニュークリア社とともに、2025年初頭にもボーグル2号機に装荷する計画だ。WH社はDOEが2012年に開始した「ATF開発プログラム」に参加しており、同社製ATFの「EnCore」を開発中。同社とサザン・ニュークリア社は2022年1月にボーグル2号機への4体のLTA装荷で合意しており、同炉ではWH社の「EnCoreプログラム」と「高エネルギー燃料開発構想」で開発された重要技術が使用される。具体的には、商業炉を低コストで長期的に運転する際の安全性や経済性、効率性を向上させる方策として、酸化クロムや酸化アルミを少量塗布した「ADOPT燃料ペレット」、腐食耐性と変形耐性に優れた「AXIOM合金製被覆管」、先進的な燃料集合体設計の「PRIME」などが含まれる。一方、米国内で7基の商業炉を運転するサザン・ニュークリア社は、ATF技術を積極的に取り入れる事業者のリーダー的存在として知られており、DOEや燃料供給業者、その他の電気事業者らとともに米原子力エネルギー協会(NEI)の「ATF作業グループ」にも参加。2018年に初めて、グローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社製ATFのLTAをジョージア州のE.I.ハッチ原子力発電所1号機(BWR、91.1万kW)に装荷した。その後、同炉から取り出されたLTAの試料はオークリッジ国立研究所に送られ、2020年にさらなる試験が行われている。同社はまた、2019年にボーグル2号機にフラマトム社製ATF「GAIA」の先行使用・燃料集合体(LFA)を装荷した実績がある。NRCの今回の承認について、サザン・ニュークリア社のP.セナ社長は、「米国ではクリーン・エネルギーの約半分を原子力が供給しているため、当社はATFのように画期的な技術を原子力発電所に取り入れ、その性能や送電網の信頼性向上に努める方針だ」と表明。NRCに対しては、「米国商業炉へのさらなる支援として、今回のLTA装荷計画を迅速かつ徹底的に審査してくれたことを高く評価したい」と述べた。(参照資料:サザン・ニュークリア社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 04 Oct 2023
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米国 SMRの初号機建設に向け限定工事認可申請
米ユタ州公営共同事業体(UAMPS)の100%子会社である「無炭素電力プロジェクト社(CFPP LLC)」は7月31日、米国初の小型モジュール炉(SMR)をアイダホ国立研究所(INL)内で建設するため、建設・運転一括認可(COL)申請の最初の部分となる「限定工事認可(LWA)」を原子力規制委員会(NRC)に申請した。CFPP社は現時点でCOL申請書を提出しておらず、これは完全なCOL申請に先立ちLWAを単独で申請した最初の例になる。CFPP社は2024年1月にもCOL申請の残りの部分を提出予定だが、先にLWAを取得することによって、ニュースケール・パワー社製のSMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」(出力7.7万kW版)を6基備えた発電設備「VOYGR-6」(46.2万kW)の建設に向け、初期作業を2025年の半ば頃から開始する方針だ。西部7州の電気事業者約50社で構成されるUAMPSは、様々なエネルギー・サービスを近隣地域に提供するユタ州の機関。SMRなど原子力を中心に発電システムの脱炭素化を図り、クリーンな大気を維持するという独自の「CFPPプロジェクト」を2015年から推進している。2016年2月にエネルギー省(DOE)から、傘下のINLにおけるSMR建設を許可されており、2020年10月にはDOEから、NPMを複数基備えた発電設備の建設・実証を支援する複数年にわたる補助金として最大14億ドルを獲得。UAMPSは同年9月に、非営利企業のCFPP社を設立していた。ニュースケール社は2020年9月、SMRとしては初となる出力5万kWのNPMについて「標準設計承認(SDA)」をNRCから取得した。これはNRCスタッフが同設計を「技術的に許容可能」と判断したことを示すもので、2023年1月にはNRC全体の決定となる「設計認証(DC)」が発給された。同じ月に同社は、7.7万kW版のNPMについてもSDA申請書を提出しており、NRCは8月1日付発表の中で、同申請を正式に受理し審査を開始する方針を明らかにしている。CFPP社は2021年8月から、COLの申請に向けた作業を開始した。この作業には、ニュースケール社の大株主で大手EPC(設計・調達・建設)契約企業のフルアー社が専門的知見を提供、ニュースケール社の許認可手続き専門チームも参加している。建設サイトとなるINLは、アイダホフォールズ市の近郊に約2,300km2の広大な敷地を保有しており、同社はLWAの取得手続きと並行して、初期的建設作業の開始前に国家環境政策法(NEPA)に基づく許可をDOEと協力して取得する。CFPP社のM.ベイカー社長はLWAの取得申請について、「スケジュール通り2029年末までに最初のNPMの営業運転開始を目指す上で、必要不可欠だ」と指摘。COLを取得して建設プロジェクトの全面的な承認を得る前に、LWA取得で建設サイトの作業を出来るだけ進めておきたいとしている。ニュースケール社はすでに2022年12月、UAMPSの「VOYGR-6」建設に必要な最初の長納期品(LLM)製造を韓国の斗山エナビリティ社に発注した。同年4月に両社が締結した契約に基づくもので、原子炉圧力容器(RPV)の上部モジュールを構成する大型鍛造品や、蒸気発生器の配管等を調達する計画だ。(参照資料:CFPP社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 02 Aug 2023
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米ワシントン州で最大12基のSMR建設へ
米国北西部ワシントン州の電気事業者であるエナジー・ノースウエスト社は7月19日、同州内で最大12基のX-エナジー社製・ペブルベッド式小型高温ガス炉(HTGR)「Xe-100」を建設するため、同社と共同開発合意書(JDA)に調印した。第4世代の小型モジュール炉(SMR)となる「Xe-100」は電気出力8万kW、熱出力は20万kWで、これを12基連結することで最大96万kWの電気出力を得ることが出来る。エナジー・ノースウエスト社は自らが所有・運転するワシントン州内唯一の原子力発電所、コロンビア発電所(BWR、121.1万kW)の隣接区域で「Xe-100」発電所の建設を計画しており、2030年までに最初のモジュールの運転開始を目指す方針である。エナジー・ノースウエスト社は同州内の地方自治体など28の公益電気事業者で構成され、2020年からX-エナジー社と協力して「Xe-100」の建設プランを作成していた。当初は「Xe-100」を4基備えた発電設備の建設を計画していた。今回のJDAでは「Xe-100」の商業化に向けて、立地点や建設スケジュールの詳細等を明確化した。今後は、同炉の許認可手続きや規制事項への対応等を共同で決定していく。米エネルギー省(DOE)は2020年10月、「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」における初回支援金の交付対象の一つとしてX-エナジー社を選定した。「Xe-100」の実証炉建設に向けた支援金として、DOEは同プログラムから今後7年間で総額12億ドルを交付。これらの一部は、同炉で使用する3重被覆層・粒子燃料(TRISO燃料)の商業規模の製造施設を、テネシー州オークリッジで建設する計画にも利用されている。「Xe-100」の実証炉については、素材関連企業のダウ(Dow)社がメキシコ湾沿いにある同社施設の一つで建設するため、2022年8月にX-エナジー社と基本合意書を締結。今年5月には、同社は「Xe-100」の立地点として、テキサス州メキシコ湾岸のシードリフト市を選定した。同社が2001年に合併吸収したユニオン・カーバイド社(UCC)の製造施設で2026年に実証炉を着工し、ARDPの一環として2020年代末までにその性能を実証するとしている。エナジー・ノースウエスト社のB.シュッツCEOは、同社の使命は米国の北西部地域にクリーンで信頼性の高い安価な電力を供給することだと説明。その上で、「この地域が送電網を将来的にクリーンなものに変える際、信頼性の高い無炭素電源が新たに必要なのは明らかだ。X-エナジー社の先進的原子炉技術はCO2を多量に排出する発電システムにとって最適の、理想的な特性を多く備えている」と強調した。なお、合同会社((合同会社(LLC)は出資者(会社の所有者)と経営者が同一。設立費用が安く決算公告や役員重任登記が不要で、剰余金分配の制限がないというメリットがある。))であるX-エナジー社(X-Energy, LLC)は昨年12月、特別買収目的企業(SPAC)((未公開会社の買収を目的として設立される法人。))のアレス・アクイジション社(Ares Acquisition Corporation) と最終的な合併契約を締結している。手続きは今夏中に完了すると見込まれており、合併後は「X-Energy, Inc.」の新名称でニューヨーク証券取引所に上場する予定である。(参照資料:X-エナジー社、エナジー・ノースウエスト社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 24 Jul 2023
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米DOE 中間貯蔵の地元合意を目指し補助金交付
米エネルギー省(DOE)は6月9日、連邦政府の使用済燃料集中中間貯蔵施設を地元の合意を得ながら建設していくため、全米の大学や非営利団体、民間企業などで構成される13のプロジェクト・チームに200万ドルずつ、合計2,600万ドルを交付すると発表した。これらのチームは、「地元の合意に基づく中間貯蔵施設や処分施設の立地プロセス」に関心をもつ地方自治体に関係情報や協議のための資金と要員等を提供するハブ(拠点)となり、自治体との協議や貢献活動を通じて得られた見解等をDOEの立地プロセスや戦略にフィードバックする。DOEは透明性と地元からの支援を確保しつつ、環境にも配慮した立地プロセスの下、施設建設を目指し、13チームと協力して引き続き地方自治体に働きかけていく。また、これと同時にDOEは使用済燃料の長期的な処分に関する研究開発も進め、J.バイデン政権が目標とする「2035年までに送電網を100%クリーン・エネルギー化」と、「2050年までに米国経済のCO2排出量を実質ゼロ化」の達成に不可欠な原子力を推進していく方針だ。DOEは「1982年放射性廃棄物政策法(NWPA)」に基づき、1998年1月末までに各原子力発電所の使用済燃料の引き取りを開始し、深地層最終処分場で処理することになっていたが、2009年にB.オバマ政権がネバダ州ユッカマウンテンにおける最終処分場建設計画を打ち切った。その後、2012年に政府の有識者(ブルーリボン)委員会が「NWPAを修正して地元の合意ベースで最終処分場の立地を進めつつ、複数の中間貯蔵施設を建設する」と勧告したのを受け、DOEは2017年1月に地元の合意に基づく貯蔵・処分場立地プロセスの案文を作成したが、D.トランプ政権が優先項目を変更したため同プロセスは最終決定しなかった。現時点でDOEは同プロセスの焦点を中間貯蔵施設の建設に当てており、これにより全米の原子力発電所から一先ず使用済燃料を取り出す考えだ。2021年12月に、中間貯蔵施設の立地点選定に向けて地元の合意に基づく立地プロセスを策定するため、情報提供の依頼書(RFI)を関係コミュニティやステークホルダーに対して発出。2022年9月には、得られた225件のコメントその他を集約して報告書を作成している。この立地プロセス案は、①計画の立案と関係能力の構築、②サイトのスクリーニングと評価、③サイトとの交渉および実行―の3段階で構成されており、DOEは実質的に①段階にあることから、今のところ中間貯蔵施設の受け入れ自治体を募集していない。また、2022年12月に議会上院に提出された「2022年放射性廃棄物管理法案」では、地元の合意に基づくサイト選定プロセスや中間貯蔵施設の早期実現に向けた制度などが盛り込まれた。DOEは今回、地理的側面や組織構造の異なる13チームを選定した。これらのチームには全米12州とワシントン特別区の団体が参加しており、今後新たな協力者やコミュニティと関わりを持ち、同プロセスに関する話し合いをさらに進めていく。これらのチームには、米国原子力学会(ANS)をリーダーとしサウスカロライナ州やアリゾナ州の4大学を協力者とするものや、ホルテック・インターナショナル社の主導の下で原子力エネルギー協会(NEI)や広報サービス企業のマクマホン・コミュニケーションズ社が協力しているもの、ノースカロライナ州立大がリーダーとなりカリフォルニア州の複数の先住民コミュニティやディアブロ・キャニオン原子力発電所が加わっているもの、異なる州の複数大学だけで構成されるものなどが含まれている。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 13 Jun 2023
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