キーワード:SMR
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カナダのNB州政府、既存原子力発電所敷地内でのARC社製SMR建設を支持
カナダ東部ニューブランズウィック(NB)州のM.ホランド天然資源・エネルギー開発大臣は12月9日、米ARCニュークリア社が開発中の先進的小型モジュール炉(SMR)「ARC-100」(電気出力10万kW)について、州内唯一の原子力発電設備であるポイントルプロー発電所敷地内で、商業規模の実証炉を建設するという同社カナダ法人(ARCニュークリア・カナダ社)の計画を支持すると発表した(=写真)。大型炉から出る使用済燃料のリサイクルも可能という「ARC-100」は、第4世代のナトリウム冷却高速炉技術に基づいており、今年10月にはカナダ原子力安全委員会(CNSC)が提供する予備的設計評価サービス(ベンダー設計審査)の第1段階を完了した。ホランド大臣は、安全で信頼性が高く、経済的にも競争力のある低炭素なエネルギー源となるSMRの商業化をARC社が目指しているとした上で、優れた安全運転実績を持つポイントルプロー発電所には経験豊かな運転員もいることから、SMR実証炉の建設サイトに適していると指摘。同サイトで「ARC-100」を少なくとも2基、引き受けることが可能との考えを表明している。カナダの連邦政府はSMRのような次世代原子力技術について「国民が低炭素経済におけるエネルギー需要を満たしつつ、一層クリーンで安全な社会を構築する一助になる」と認識しており、将来は世界のSMR市場でリーダー的立場を得ることを目標としている。 カナダ国内のオンタリオ州、サスカチュワン州、NB州の州政府も今月1日、出力の拡大・縮小が可能で革新的技術を用いた多目的のSMRをカナダ国内で建設するため、3州が協力していくとの覚書を締結。NB州はこの中でも、世界水準のSMR開発で国内リーダーとなる目標を示しており、すでに2018年7月、英国籍のMoltexエナジー社が開発中の「燃料ピン型溶融塩炉(SSR-W)」について、商業規模の実証炉を2030年までにポイントルプロー原子力発電所敷地内で建設すると発表した。ARCカナダ社との協力に関してもNB州は同じく2018年の7月、州営電力のNBパワー社を通じて協力することで合意。NBパワー社はポイントルプロー原子力発電所の所有者であることから、同発電所敷地内で「ARC-100」初号機の建設可能性を探るとしていた。NB州のホランド大臣は、SMR技術導入の意義に触れ、たとえ送電網につながれていない遠隔地のコミュニティに対してもクリーンで低コストな電力を供給することであり、エネルギー多消費産業には低炭素で安定したエネルギー供給を約束できるとした。また、この技術がカナダ全土のみならず世界中で採用されれば、カナダは経済成長と輸出機会の拡大チャンスを得ることになると述べた。 州政府としては、SMR技術から同州が多大な恩恵を得ると考えており、ARCカナダ社のような企業との協力でSMR建設への道を拓くとともに、SMR開発を支援する世界的なリーダーとなる方針。また、世界レベルのSMR供給チェーンを構成する主要要素となる態勢も整いつつあると強調した。(参照資料:NB州政府、ARCカナダ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月10日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 11 Dec 2019
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カナダの3州の首相がSMR開発で協力覚書
カナダ・オンタリオ州のD.フォード首相、ニューブランズウィック州のB.ヒッグス首相、およびサスカチュワン州のS.モー首相は12月1日、出力の拡大・縮小が可能で革新的技術を用いた、多目的の小型モジュール炉(SMR)をカナダ国内で開発・建設するため、3州が協力覚書を締結したと発表した(=写真)。 3人の首相はともに、原子力発電は炭素を出さず信頼性が高く、安全で価格も手ごろな発電技術と認識しており、SMRは遠隔地域などを含むカナダ全土において、経済面の潜在的可能性を引き出す一助になると明言した。同覚書に法的拘束力はないものの、今後は3州のエネルギー大臣が2020年1月から3月の間に冬季会合を開催して、最良の開発・建設戦略を議論。国内の主要な発電事業者には、費用対効果検討書も含めたフィージビリティ報告書の作成で協力を求める方針であり、同年秋までにSMRの戦略的開発計画を策定するとしている。 SMRの利点について3首相は具体的に、送電系統とつながっていないコミュニティに対してもクリーンで低コストなエネルギーを供給できるとしたほか、鉱山業や製造業などエネルギー多消費産業に対して便宜を図れるなどと指摘。また、SMR技術がカナダのみならず世界中で採用されれば、カナダの経済成長を促すとともに輸出機会を拡大することにもつながるとした。こうしたことから、3州の政府はそれぞれに特有の必要性や経済面の優先事項に見合う方法で経済を成長させ、温室効果ガスの排出量を削減するために協力体制を敷く方針。力を合わせて革新的なエネルギー・ソリューションを開発し、地域の雇用や成長促進に向けた最良のビジネス環境を創出していくと述べた。今回の覚書によると3州は、カナダ連邦政府の天然資源省が昨年10月に公表した「カナダにおけるSMRの開発ロードマップ」とともに、付託された「行動要請文」の策定に貢献した。カナダは原子力産業の全領域を備えるなど最上位に位置する原子力国家であり、SMR開発で先駆的国家となることにより、このように高度な革新的技術分野で戦略面や経済面、および環境面の利益が得られるとした。3州は世界でも有数の原子力企業が多数所在する地域であり、3州それぞれが州内でSMRを導入することに関心を抱いている。このような背景から、3州は以下の点について合意し、相互協力を行うことになったもの。(1)地球温暖化や州内のエネルギー需要、経済開発などに取り組むため、それぞれの必要性に応じたSMRの開発と建設を3州が協力して進める。(2)SMR開発における重要課題――技術的な準備状況、規制上の枠組整備、経済性と資金調達、放射性廃棄物の管理、国民および先住民との関わり合い――などに一致協力して取り組む。(3)「原子力のようにクリーンなエネルギーは地球温暖化への取組みの一部として必要」という明瞭明解なメッセージが発せられるよう、3州が連邦政府に積極的に働きかける。(4)3州内のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社、ブルース・パワー社、ニューブランズウィック・パワー社、およびサスクパワー社のCEOから要請されたように、開発ロードマップで特定されたSMR開発への支援提供を、3州が協力して連邦政府に働きかける。(5)原子力やSMRが有する経済面や環境面の利点について一般国民に情報提供するため、3州が協力する。――などである。 (参照資料:オンタリオ州政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 03 Dec 2019
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カナダ原研、SMR開発支援イニシアチブの候補企業4社を選定
カナダの国立原子力研究所(CNL)は11月15日、同国内で小型モジュール炉(SMR)の研究開発と建設を促進するため、今年7月に設置した「カナダの原子力研究イニシアチブ(CNRI)」の候補となる企業4社を選定したと発表した。CNRIは世界中のSMRベンダーに対し、CNLの専門的知見や世界レベルの研究設備を提供する新しいプログラム。対象分野としては市場分析や燃料開発、原子炉物理、モデリングなどを指定しており、これらに関するプロジェクトの提案企業を毎年募集することになっている。参加企業はCNLが提供する資源を最大限に活用するとともに、技術的知見を共有。開発中のSMR技術の商業化に向けた支援を、出資金あるいは現物出資の形でCNLから受けることができる。次回の募集についても、CNLは来年初頭を予定していることを明らかにした。同イニシアチブで最初の受益者に選ばれたのは、(1)英国の原子炉開発企業モルテックス・エナジー社のカナダ支社、(2)米カリフォルニア州のKairosパワー社、(3)米ワシントン州のウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)、(4)カナダを本拠地とするテレストリアル・エナジー社。CNLは今後、研究開発費の分担等について、これら4社との最終交渉を開始する。モルテックス社は現在、カナダのニューブランズウィック大学と共同で、カナダ型加圧重水炉(CANDU)の使用済燃料をピン型溶融塩炉(SSR)の燃料に転換する試験装置について、建設と合理化を進めている。また、Kairos社の提案プロジェクトは、高温のフッ化塩で冷却する「KP-FHR」設計を実現するため、トリチウムの管理戦略を策定するというもの。片やUSNCは、同社製「Micro Modular Reactor(MMR)」の開発で浮上する様々な技術的課題について、解決に向けた作業プロジェクトを提案した。テレストリアル社は、同社製「一体型溶融塩炉(IMSR)」等に対して、安全・セキュリティや核不拡散関係の技術を適用する可能性を評価したいと提案。CNLが保有する設備の中でも特に、「ZED-2原子炉」の利用機会を得たいとしている。CNLのM.レジンスキー所長兼 CEOは今回の選定について、「CNLが実施した市場調査の結果や、カナダのSMR開発ロードマップの判明事項からも、原子力産業界がCNLの知見や設備を一層必要としていることが明確に示された」と説明。CNLのCNRIプログラムは、そのような利用機会を実現する方法として設置されたと強調した。CNLのK.マッカーシー科学技術担当副所長も、「カナダをSMR研究のハブとするため、CNLが過去3年間に実施した作業は大きく前進した」と指摘。SMRに共通する主要な技術分野で、CNLが膨大な知見を蓄積してきたという事実に言及した。SMR開発についてCNLは、2017年4月に公表した今後10年間の「長期戦略」の中で、2026年までにCNLの管理サイト内で少なくとも1基、実証炉を建設するという目標を明示した。2017年中にSMRの開発企業から19件の関心表明を受けており、2018年4月に開始した全4段階の審査プロセスにより、提案企業の募集と選定作業を進めている。今年2月には、USNCが開発したMMR設計が同審査で唯一フェーズ3に進んだほか、テレストリアル社のIMSRもフェーズ2に移行している。MMRについては、エネルギー関係のプロジェクト開発企業グローバル・ファースト・パワー(GFP)社が今年4月、CNLのチョークリバー・サイト内で建設するため、SMRとしては初の「サイト準備許可(LTPS)」をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請した。CNLの審査プロセスは、CNSCの許認可プロセスから完全に独立していることから、許認可段階に進展した建設プロジェクトには法的規制要件が課され、提案企業は一般国民や先住民コミュニティなどとプロジェクトの重要事項に関する協議を行わねばならない。 (参照資料:CNLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、WNAの11月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 20 Nov 2019
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英国の戦略的研究機関「UKRI」がSMR開発企業連合に初回の資金投資
英国で小型モジュール炉(SMR)開発の企業連合を率いるロールス・ロイス社は11月5日、同国の準自治的非政府組織で戦略的政策研究機関の「UKリサーチ・アンド・イノベーション(UKRI)」から、英国政府の「産業戦略チャレンジ基金」のうち1,800万ポンド(約25億2,000万円)を受領したと発表した。これは、国内初のSMRを予備設計している同企業連合への、4年にわたる共同投資金の初回分となるもの。ロールス・ロイス社は英国全体の計画として、2050年までに最大で16のSMR発電所を国内で建設できると考えており、これにより最大4万人分の雇用が創出されるとともに、英国経済に対する貢献は520億ポンド(約7兆3,000億円)、輸出への貢献は2,500億ポンド(約35兆円)にのぼるとした。また、必要な法制やサイト選定プロセスなど、許認可手続や支援措置が順調に進めば、2030年代初頭から最初のSMRで信頼性の高い低炭素なエネルギーを得られるとしている。UKRIは2018年4月、革新的技術開発企業に研究開発費などの助成を行う英国政府機関「イノベートUK」、科学政策を調整する政府外公共機関である国内7つの「英国研究会議(RCUK)」、および大学の研究活動や知識交換活動への助成を担当する「リサーチ・イングランド(RE)」を統合して設立された。UKRIの投資金は、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)の科学予算を通じて提供されている。英国では今年6月、国内すべての温室効果ガス(GHG)排出量を2050年までに実質ゼロとするための法案が可決・成立した。この目標を達成するには、政府と産業界との協力が不可欠であるとの認識から、BEISは7月、新規原子力発電所建設プロジェクトの資金調達モデルとして検討中の「規制資産ベース(RAB)モデル」について、実行可能性の評価結果をパブリック・コメントに付した。また、革新的技術を用いたSMR原子力発電所の建設に対し、政府資金の中から最大で1,800万ポンドの投資を提案していた。ロールス・ロイス社の企業連合は、国際的な原子力エンジニアリング・研究開発サービス企業のアシステム社とアトキンズ社、建設土木企業のBAMナットル社とレイン・オルーク・グループに加えて、英国溶接研究所(TWI)、国立原子力研究所(NNL)、先進的原子力機器製造研究センター(NAMRC)などで構成される。ロールス・ロイス社によると、同企業連合が計画しているコンパクト設計の原子力発電所であれば、既存の原子力サイトへの輸送前に機器類を工場で製造し、サイト内の雨よけのある場所で迅速に組立てることが可能。天候による作業の中断を回避できるためコストの削減につながり、標準化・合理化された機器製造プロセスの活用により効率性も徐々に向上していくとした。また、各発電所の目標建設コストとして、同社は5つ目までは18億ポンド(約2,500億円)を設定、それぞれの運転期間は60年を想定している。今回の投資金は、規制当局が実施する包括的設計審査(GDA)の準備に宛てられるほか、革新的技術の開発推進と実現に向けた最終意思決定に活用される。ロールス・ロイス社のP.ステイン最高技術責任者は、「官民が連携することで、2050年までのGHG排出量実質ゼロ達成に向け、持続可能で適正価格かつ効率的な方策を見つけることができる」と強調。「政府との連携作業は、英国経済の低炭素化に向けた、また、英国社会にとって極めて重要な電力需要量を満たすための重要な一歩になる」と述べた。(参照資料:ロールス・ロイス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月7日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 08 Nov 2019
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英産業連盟、SMR等の原子炉新設に向け財政支援モデルの構築を政府に提案
英国最大の産業組織で日本の経団連に相当する英国産業連盟(CBI)は11月4日、国内の温室効果ガス(GHG)排出量を2050年までに実質ゼロとする目標を掲げた英国にとって、「クリーン・エネルギー産業中心の経済成長に向けた投資の促進」といった国家的なアクションが緊急に必要とする報告書を公表した。発電部門においては、再生可能エネルギーに加えて原子力に対する支援を(12月の総選挙後の)次期政権に要請する考えで、2030年までに小型モジュール炉(SMR)の初号機を完成させるため、新設計画への資金調達用に「規制資産ベース(Regulated Asset Base=RAB)モデル」を構築すべきだと強調している。英国は2020年11月の国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP26)を国内で開催予定であり、CBIによれば、GHGの削減で英国が世界的リーダーとなるための国際的協調活動と並行して、長期の国家的アクションの重要性を実証することになる。このため、直面している事態の複雑さと早急に動く必要性等に鑑み、ビジネス界が今後10年間で加速していくアクションに対し、政府による支援策の中でも優先すべき決定項目のいくつかを今回の報告書の中で指摘した。分野としては具体的に、(1)CO2の削減に向け輸送部門全体で必要となる(電気自動車の導入など)重要な変更事項の促進、(2)熱源の低炭素化とエネルギー効率の改善、に加えて(3)発電部門におけるCO2排出量の削減――など。(3)の中でCBIは、SMRの初号機建設を支援する資金調達の枠組整備を挙げた。政府は新規の原子炉建設に対する支援方針を明確に表明しているが、それは適正なコストでの建設であり、その他の低炭素電源に対してもコスト面の競争力を実証しなくてはならない。また、資金調達の新たなアプローチにより、将来的な原子炉建設プロジェクトでコストを削減できることも判明した。この点に関してCBIは、「RABモデル」を詳細に検討する方向性を支持しており、これにより建設期間中のリスク共有と収益確保の可能性が高まるとした。RABモデルはまた、資本コストの大幅な削減により、電気料金の削減という形でエンド・ユーザーに利益をもたらすことも可能。CBIは、政府が「環境と社会およびガバナンス(ESG)を考慮した責任投資」の中に原子力を含める努力を続けるべきだと指摘している。CBIはまた、従来の大型炉に加えてSMRも、コスト面や革新的技術の側面で英国のエネルギー・ミックスに貢献できる可能性があるとした。もちろん、2030年までに初号機の運転開始を可能とするためには、政府が時宜を得たタイミングで行動する必要がある。CBIによると、この目標の達成に向け、政府は可能な限り早急にSMRの建設サイトを特定しなければならず、SMRへの将来的な投資を支えていく政策面での支援も必要。政府はまた、今後のSMR建設プロジェクトでコストを削減するためには、サイト許可が継続的に発給されるよう規制手続の整備を確実に進める必要があるとしている。今回の報告書に関してCBIのC.フェアバーン事務局長は、「温暖化防止への取組みで残されている時間を考えると、我々はこれまで以上に迅速、かつ一層踏み込んだ取り組みが必要で、これからの10年間は非常に重要な時期だ」と指摘。「技術開発が急速に進展しコストも低下しているため、CO2排出量の実質ゼロという目標達成は可能だが、ビジネス界だけで成し遂げることはできない。目標達成までのあらゆる段階で、政府と連携することが必要だ」と訴えている。(参照資料:CBIの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月4日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 05 Nov 2019
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GEH社、ポーランドで「BWRX-300」の建設可能性を探るため現地企業と覚書
GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は 10月21日、ポーランドで同社製小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」を建設する可能性を探るため、同国最大の化学素材メーカー「シントス社(Synthos SA)」と協力していくことで合意し、了解覚書を締結したと発表した。シントス社は合成ゴムなどの製造で知られる大手企業で、CO2を排出しない発電技術による電力を需要に応じて適正価格で、信頼性の高い専用電源から得ることに関心を持っている。今回の覚書で両社は具体的に、「BWRX-300」の建設可能性調査をポーランドで共同実施することで合意。また、同国におけるエネルギー部門の近代化や現実性を踏まえた脱炭素化達成など、ポーランドが抱えるエネルギー問題への取組みでSMRが果たす役割に期待をかけるとしている。一方、ポーランド政府は昨年11月、公開協議に付した「2040年までのエネルギー政策(PEP2040)」(ドラフト版)の中で、2033年までに出力100万~150万kWの原子力発電初号機の運転を開始し、その後2043年まで2年毎に、追加で5基(合計出力や600万~900万kW)建設していくと発表。これらの原子力発電設備で、国内電力需要の約10%を賄うとしていた。GEH社の発表によると、「BWRX-300」は自然循環を活用した受動的安全システムなど、画期的な技術を採用した出力30万kWの軽水炉型SMR。2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証を受けた第3世代+(プラス)の同社製設計「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」がベースとなっており、原子力産業界で深刻な課題となっているコスト面の対策として、開発設計の全段階を通じてコストが目標内に収まるよう管理するアプローチを採ったという。これにより同設計は、コンバインドサイクル・ガス発電や再生可能エネルギー、その他の発電技術に対しても、コスト面で競争力があるとGEH社は強調。1MWあたりの資本コストも、既存の大型炉やその他の軽水炉型SMRとの比較で最大60%削減するとしており、このようなSMR技術に注目し、ポーランドでクリーン・エネルギーの利用オプションも提唱しているシントス社への期待を述べた。シントス社側も、「クリーンなSMRを活用することで石炭火力から脱却する機会が増し、産業界やポーランド全体に良い影響が出る」とコメントしている。なお、GEH社は今年5月、同設計についてカナダで申請していた許認可申請前ベンダー審査が始まったと発表した。今月初旬には、バルト三国の1つであるエストニアでも同SMRが建設可能かを調査するため、同国のエネルギー企業フェルミ・エネルギア社と協力覚書を締結している。(参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、WNAの10月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 23 Oct 2019
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小型炉資金調達のための市場の枠組み
英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は 2018 年 1 月に小型炉資金調達ワーキンググループ(EFWG((The Expert Finance Working Group on Small Reactors)))を設置した。BEIS は EFWG に、小型炉建設計画に対し民間資金を募る上で必要となる主要な政策案と市場の枠組み、ならびにその英国議会での審議に資するための提言案につき諮問した。原子力資金調達の専門家で NECG のアフィリエイトでもあるアムジャド・ゴーリ氏はこの EFWG の主要なメンバーの一人であった。「小型炉資金調達のための市場の枠組み」はこの EFWG での何か月にもわたる議論を経て取りまとめられた報告で、小型モジュール炉(SMR)建設計画とその資金調達を市場メカニズムに基づいて円滑に進めるための政策案を英国政府に対して答申したものである。NECGのアフィリエイトであるアムジャド・ゴーリ氏はEFWG の主要なメンバーの一人として、そのエネルギー・原子力分野の資金調達についての専門性を発揮して同報告取りまとめに貢献した 。EFWG 報告とその提言は SMR を産業として確立させるのに必要となる SMR 初号機の建設計画に焦点を当てたものである。A. EFWG 報告以下は EFWG 報告を短くまとめたものである。これだけで実際の報告を読むのに代えることはできないから詳細については原文を参照されたい。EFWG での検討は小型炉建設計画に対して民間の投資資金募集の可能性を評価するべく行われた。第 2 章では英国政府の意欲的な低炭素化政策である「クリーン成長戦略」達成のために、いかに小型炉がクリーンで安全、かつ経済的にも魅力あるか、そしてその実現のためには民間部門の投資が必要であることが併せて示されている。しかし現実には市場の失敗の問題があって民間投資が行われることにはならないので、小型原子力プロジェクトの初号機建設計画では、まず英国政府が先鞭をつけるとともに成し遂げ、産業界を支援するという英国政府の役割が不可欠であることが示されている 。第 3 章では SMR が持つ将来的なメリット(例えばモジュール化やリードタイム短縮化によるコストダウン)について、大型炉と比較しながら解説がされている。そうしたメリットは技術開発ならびに製造能力確保が適切になされれば一層大きなものとなる。第 4 章では SMR に関する技術開発、製造能力確保、および建設計画立案のどれをとってもコーポレートファイナンスあるいはプロジェクトファイナンスによる資金調達が必要となることが示されている。第 5 章では小型炉建設計画が持つリスク特性を考えると大型炉建設計画よりは投融資の機会を得やすいと考えられることが示されている。第 6 章では世界各地のエネルギー関係施設等の建設計画実例を踏まえ、小型炉への資金調達方法を 9 種類に類型化して示したうえで、リファイナンスの可能性についても検討がなされている。第 7 章では英国政府に対する以下の 7 点からなる提言がまとめられている。初めから技術の選択肢を狭めて決めつけるのではなく、政策や市場の枠組みを通じて実現を図る。初めから技術の選択肢を狭めて決めつけるのではなく、政策や市場の枠組みを通じて実現を図る。小型炉の初号機建設計画は 2030 年までに市場に投入できるよう注力する。革新的な小型炉製造サプライチェーン確立に向けた計画を主導的に作る。規制当局の協力を得ながら小型炉建設計画に関する最適かつ柔軟性に富んだ安全審査プロセスを作り上げる。小型炉の初号機建設サイトを政府が準備し、小型炉建設を行う事業者のリスクを低減する。小型炉の初号機建設計画の資本費を低減させ、また民間投資家のリスクを一部分担して負う。付録 A には EFWG のメンバー、報告作成の手順、および報告の根拠となる資料を提供した関係者名が記されている。付録 B では大規模建設計画(すなわち大型炉建設計画)ではどうして工期遅延や費用超過が発生するのか、リーズ大学ジョルジオ・ロカテリ博士が解説をしている。付録 C では設計、製造、建設の 3 段階について詳細なリスクマップを示し、どこにどんなリスクがあるかを実際に示している。これらは IAEA の一般的なリスクマップ表示手法に基づいている。付録 D では第 6 章で示された 9 種類の資金調達方法の詳細な内容が示されている。B. 評価英国政府が報告の提言内容を承認しそれが実行に移されたとしても、最初の小型炉が実際に建設され、SMR のバリューチェーンと製造能力が英国内で確立されるまでには長期間を要することになる。市場だけに依存していても原子力産業が発展成長することにはならず、原子力推進のためには政府が大きな役割を担うことが必要となることが本報告で再び示されていることが重要なポイントである。この EFWG 報告の提言では原子力産業は国有化すべきだ(例えば中国、ロシアなどのように)というところまでは踏み込んでいないが、原子力産業における市場の失敗については注記されている。アムジャド・ゴーリ氏は以下の通り述べている。「原子力建設計画立案と資金調達の仕組みを市場だけに委ねて考えるのは不適切だ。小型炉建設計画を具体化し産業界を支援するためには、具体的プロセスの一つ一つについて政府が措置を講じていくことが必須である。」 PDF版
- 22 Aug 2018
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