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原子力委、海電調より世界のSMR開発状況についてヒア
原子力委員会は10月5日の定例会で、海外電力調査会(海電調)より世界の小型モジュール炉(SMR)の開発状況について説明を受けた。〈海電調発表資料は こちら〉海電調からは上席研究員の黒田雄二氏らが出席。同氏は、SMRを「電気出力が概ね30万kW以下の小型でパッケージ(モジュール)で製造される新型原子炉」と定義し、IAEAの資料をもとに各国の開発状況を整理し説明。それによると、世界で開発されているSMRは73基で、特に積極的な米国とロシアの2国で全体の約半分を占めているという。ロシアでは、2020年5月に世界で唯一実用化したSMRとしてKLT-40S(3.5万kW)2基を搭載した世界初の海上浮揚式原子力発電所(FNPP)「アカデミック・ロノモソフ」が運転を開始しており、陸上用のSMRも2024年の着工が予定されている。また、中国では、2021年7月にACP100「玲龍1号」(12.5万kW)が着工し、9月には高温ガス炉実証炉HTR-PM(21万kW)が臨界を達成。米国、英国、カナダで開発中のSMRは完成時期が2025年以降であることから、黒田氏は、世界のSMR開発状況の大勢を「ロシアと中国が西側先進国に先行している」と概観した。また、同氏は、OECD/NEAによる報告書などから、世界のSMR規模が2035年までに最大約2,000万kWに達するとして、(1)エネルギーシステムの脱炭素化、(2)変動型再生可能エネルギーの導入補完、(3)新しい分野や地域への活用促進――での貢献を期待。一方で、世界的展開に向けて、(1)経験が限られた技術のため実現性が不確実、(2)実証プロジェクトは有用だが商業化にはさらなる最適化が必要、(3)サプライチェーンの構築とHALEU(ウラン235濃縮度5~20%の燃料)の定常的な供給にリスクが伴う、(4)規制当局による円滑な安全性の審査・承認や世界的な規制体制の調和が重要、(5)SMR利用への社会的受容性(PA)の獲得が必要――との課題を指摘した。佐野利男委員がSMR開発を巡る海外市場動向について尋ねたのに対し、黒田氏は2029年の運転開始を目指す米国ニュースケール社のプロジェクトを例に、日揮とIHIによる出資に触れながらも「韓国斗山重工業も参画している」と、日本企業の置かれた厳しい競争環境を、また、「100万kWのプラント1基と10万kWのプラントを10基作るのを比較しても、大型炉のスケールメリットを覆すほどの経済性達成はまだ難しい」と、商業化の困難さを強調。さらに、日本のSMR開発に関し、「昨今メディア上でSMRが注目され過ぎている」とも危惧し、既存炉の再稼働や運転期間延長にまず取り組む必要性を示唆した。
- 06 Oct 2021
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カナダのテレストリアル社、IMSR用の燃料確保で仏オラノ社と協力
カナダのオンタリオ州を本拠地とするテレストリアル・エナジー社は9月29日、第4世代設計として開発中の小型モジュール式・一体型溶融塩炉「IMSR」について、使用する燃料を確保するため、仏オラノ社の米国法人と包括的な協力契約を締結した。この契約の下で、オラノ社は濃縮ウランやIMSR用に燃料を転換するサービスをテレストリアル社に提供する。燃料の製造のみならず輸送やパッケージングなど広範に作業を請け負う予定で、IMSR用の燃料を商業規模で本格製造するための分析調査も実施。カナダや米国、英国、日本など、将来の主要なIMSR販売市場においても商業製造した燃料を適用する考えである。今回の契約は、テレストリアル社が進める「複数ルートの燃料調達戦略」に基づいており、幅広い燃料サービスを通じて次世代原子炉の商業化を支援するというオラノ社の方針も反映。独占契約ではないので、双方がともに同種の契約をその他の企業と結ぶことが可能である。テレストリアル社の米国法人(TEUSA社)はすでに2020年11月、IMSRに使用する溶融塩燃料の詳細な試験を実施するため、米エネルギー省(DOE)傘下のアルゴンヌ国立研究所と協力すると発表。今年8月には、IMSR用濃縮ウラン燃料の商業規模での確保に向けて、同社は英国スプリングフィールドにある国立原子力研究所(NNL)、および同地で原子燃料製造施設を操業する米ウェスチングハウス(WH)社とも協力契約を締結した。テレストリアル社のIMSRは熱出力が40万kW、電気出力は19万kWで、電力のほかに熱エネルギーを供給可能。使用する溶融塩燃料は、これまで数10年以上にわたり軽水炉に装荷されてきた標準タイプの低濃縮ウラン(U-235の濃縮度が5%以下)を溶融フッ化物塩と混合して製造する。同社の説明では、先進的原子炉設計の多くがHALEU燃料(U-235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を使用するのに対し、IMSRは第4世代設計の中でも唯一、標準濃縮度のウランを使用することができる。同社はまた、9月14日に電気出力39万kWの改良型発電所設計となる「IMSR400」を発表した。電気事業者の要請により、原子炉と発電機を2基ずつツインユニットで設置しており、発電所としての出力を拡大。コスト面の競争力も改善しており、同設計はカナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社がダーリントン原子力発電所内で建設を検討している3種類の小型モジュール炉(SMR)候補設計の一つとなっている。テレストリアル社のS.アイリッシュCEOは、「燃料の購入にともない電気事業者が必要とするサービスは多岐にわたるため、今回の契約は燃料の輸送やパッケージング等の分野を幅広くカバーする包括的なものになった」と説明。このようなサービスは、IMSR初号機を早ければ2028年に稼働させる上で必要だとしている。(参照資料:テレストリアル社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 04 Oct 2021
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ポーランドでのSMR建設に向け4社が覚書
米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は9月23日、同社製小型モジュール炉(SMR)、「BWRX-300」のポーランドでのシリーズ建設に備え、同炉に必要なウラン燃料のサプライチェーンをカナダで構築する可能性評価を実施すると発表した。具体的にGEH社は、カナダの大手ウラン生産企業であるカメコ社、カナダでBWRX-300の建設を推進している子会社「GEH SMRテクノロジーズ・カナダ社」、およびポーランド最大の化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業「シントス・グリーン・エナジー(SGE)」の4社で協力覚書を締結。米GE社が日立製作所との合弁で運営している原子燃料製造企業、グローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社が開発した高性能燃料集合体「GNF2」を活用するなどして、低リスク・低コストのBWRX-300を最速でSMR市場に投入する考えだ。出力30万kWの水冷却型自然循環SMRであるBWRX-300の設計は、2014年に米原子力規制委員会(NRC)の設計認証を受けたGEH社の第3世代+(プラス)設計「ESBWR(革新型単純化BWR)」がベース。受動的安全システムを備えており、GEH社によれば設計を飛躍的に簡素化したことで、BWRX-300のMW当たりの建設コストは、その他の水冷却型SMRや既存の大型炉設計と比較して大幅に削減される。また、同炉にはESBWRの設計認証における基礎的部分を利用、技術的に実証済みの機器も組み込んだという。GEH社はすでに2019年10月、ポーランドでBWRX-300を建設する可能性を探るため、シントス社グループのSGE社と協力覚書を締結。翌2020年8月には、この建設計画の実施に向けて戦略的パートナーシップ協定を結んだ。GEH社はまた、BWRX-300の商業化を促進しカナダやその他の国で同設計を建設していくため、カメコ社およびGNF社の米国法人と今年7月に協力覚書を交わしている。一方のシントス社は今年8月、BWRX-300あるいは他の米国製SMRをポーランド国内で4基~6基(出力が各30万kW程度)建設するため、国内のエネルギー企業であるZE PAK社と共同で投資を行うと発表。建設予定地としては、ZE PAK社がポーランド中央部のポントヌフで操業する石炭火力発電所を挙げた。また、グループ企業のSGE社は2020年10月、BWRX-300技術を用いたプラントの建設・運営プロジェクトについて、ポーランドの原子力規制機関と協議を開始している。今回の協力覚書に関してGEH社は、「カメコ社やSGE社と協力してポーランドに無炭素なエネルギー源をもたらす一方、カナダではウラン供給関連の雇用を創出したい」と述べた。カメコ社側は、「世界中の国家や企業がCO2排出量の実質ゼロ化を達成する際、原子力は重要な役割を果たす」と指摘。その上で、「SGE社がSMRで模索している脱炭素化事業に、BWRX-300は革新的な技術で解決策をもたらす優れた実例になる」と強調した。SGE社も今回の覚書に加えて、「カナダで構築されつつあるBWRX-300の製造・輸出能力を補うべく、ポーランド国内でもサプライチェーン構築に向けてGEH社と一層緊密に連携していく」と表明している。(参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 Sep 2021
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米ニュースケール社、SMRの建設でポーランドの銅採掘企業らと覚書
米国のニュースケール・パワー社は9月23日、同社製小型モジュール炉(SMR)をポーランドで建設し商業化への道を模索するため、同国鉱業大手のKGHMポーランド銅採掘(KGHM)会社、およびコンサルティング企業のPielaビジネス・エンジニアリング(PBE)社と協力覚書を締結した。KGHM社はポーランド南西部にある欧州最大規模の銅鉱床で採掘を行っているほか、モリブデンやパラジウム、ニッケルなどの金属も生産している。これらの事業に必要な電力や熱エネルギーは石炭火力発電所から得ているが、2030年末までに必要なエネルギーの約半分を自社製で賄う方針。これには、再生可能エネルギー源やSMRが生産するクリーンエネルギーが含まれる。太陽光や海上風力による発電システムの設置プロジェクトはすでに進行中で、今回はこのエネルギーミックスにSMRを加えることになったもの。もう一方のPBE社は、主にポーランドのエネルギー部門や化学部門の企業に対して、運営・戦略や規制、エンジニアリング関係の助言を提供している。政府が進める地球温暖化対応やエネルギーの移行計画にも関与しており、政府機関や金融機関、規制当局などに関連するサービスを提供中。2009年以降は、ポーランドの原子力発電導入プログラムにも同社の専門家が携わっている。ニュースケール社の発表によると、KGHM社とPBE社は今回の覚書でニュースケール社の支援を受け、同社製SMRの導入計画および高経年化した既存の石炭火力発電所を別用途に活用できるか検証する。具体的には、SMR建設計画の技術面や経済面に加えて、法制面、規制面、財政面などを詳細に分析するとしている。ニュースケール社が開発したSMRはPWRタイプの一体型SMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」で、電気出力5万kW~7.7万kWのモジュールを最大12基まで連結して出力規模を決められる。米国の原子力規制委員会(NRC)は2020年9月にモジュール1基あたりの出力が5万kWのNPMに対し、SMRとしては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給。同社は出力7.7万kW版モジュールの「NuScale NPM-20」についても、SDAを2022年第4四半期に申請する予定である。KGHM社がポーランドで建設するSMRは「NuScale NPM-20」と見られており、同社は差し当たりモジュールを4基連結する計画。オプションで12基連結した場合の出力は、100万kW近くに拡大する。同社のM.クルジンスキー社長は、「地球温暖化を食い止めるには断固たる行動が必要だ」と指摘。その上で、「2030年までにSMRを建設するという計画は、エネルギー移行計画の一部であるとともに当社の堅い決意でもある。当社は早ければ2029年にも最初のSMRの運転を開始して、ポーランドにおけるSMR建設のパイオニアになる方針だ」と述べた。同社長によると、SMRは同社が環境に配慮して事業を行う一助となるだけでなく、事業運営費を大幅に削減できる。同社はポーランドがグリーンなエネルギーに移行できるよう、SMRでエネルギーを商業的に生産し、一般家庭の電気代の削減にも貢献する。PBE社の創設者であるP.ピエラ氏は、「ポーランドおよび化石燃料に依存するその他のEU諸国がエネルギーの移行を進める上で、モジュール式のエネルギー源はとりわけ重要な役割を担う」と指摘。「汎欧州グリーン・ディールを成功させる上でも、共通の利益を生む重要なエネルギー技術だ」と強調した。なお、ニュースケール社は同じ日、米オクラホマ州を本拠地とする石油・天然ガスの供給企業Getkaグループ、およびポーランドで電力やガスなど複数のエネルギーを供給するUNIMOT社とも、同様にポーランドでの同社製SMRの建設に向けてこれら3社が協力するための覚書を締結している。(参照資料:ニュースケール社、KGHM社(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 24 Sep 2021
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ポーランドの化学素材メーカー、他企業と合弁でSMR建設に投資
シントス社のソウォヴォフ氏©M.Solowowポーランドの大手化学素材メーカーのシントス社(Synthos SA)は8月31日、国内のエネルギー企業ZE PAK社と共同で、米国で開発された最も近代的で安全な小型モジュール炉(SMR)をポーランド国内で建設する計画に投資を行うと発表した。この共同プロジェクトのために、両社は今後合弁事業を立ち上げて原子力関係の活動を実施。ZE PAK社がポーランド中央部のポントヌフで操業する石炭火力発電所に、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のSMR「BWRX-300」、あるいは他の有望な米国製SMRを4基~6基(出力各30万kW程度)建設する方針である。シントス社はすでに2019年10月、ポーランドに「BWRX-300」を導入する可能性を探るため、GEH社と協力覚書を結んでいる。一方のZE PAK社は昨年、2030年までに石炭火力発電から撤退する方針を表明したが、これはパリ協定で設定された脱炭素化目標の達成に向け、ポーランドにおける最も意欲的で明確な対応策を示したもの。同社とシントス社が共同でSMRに投資し、ポーランドが「汚れたエネルギーからクリーンなエネルギー」に転換するのを支援していきたいとしている。シントス社とZE PAK社はそれぞれ、M.ソウォヴォフ氏とS.ソロルツ氏が所有する企業。両者はともに、ポーランドで最も富裕な実業家と言われている。シントス社のソウォヴォフ氏は今回、「脱炭素化を大規模に進めるには地球環境に配慮するだけでなく、経済的な要件を満たしつつコスト面の効率化を図ることが求められており、その解決策が原子力であることは明白だ」と強調。同氏によると、「欧州の工場」と言われるポーランドではCO2を排出しない安定したエネルギー供給源が必要で、「これまで通りの速いペースで一層豊かな社会の構築を目指し、さらなる外国投資を呼び込むには、価格の魅力的なエネルギーを活用しなくてはならない」としている。ZE PAK社のソロルツ氏も、「社会や国家の発展には安価でクリーンなエネルギーが欠かせないが、原子力はクリーンなだけでなく環境にも優しい」と指摘。同社はポーランドで最初の石炭火力発電所を運転してきたものの、現時点では石炭火力からの撤退する途中であるとした。その上で、「原子力や再生可能エネルギーは当社が投資する最も重要なエネルギー源であり、原子力への投資はポーランドの事業所や一般世帯にクリーンで安価なエネルギーを提供するとてつもなく大きな好機になる」との認識を示した。SMRを建設予定のポントヌフは、ポーランド政府が進める原子力発電プログラムにおいても発電所立地候補地点の一つだが、ZE PAK社の幹部は「SMRの建設計画は政府の進める大型原子力発電所の建設計画と競合するものではなく、むしろこれを補完する位置づけだ」と説明。原子力は化石燃料による発電から徐々に取って替わっていき、近い将来は石炭火力の閉鎖と電力需要の増加にともなう国内電力システムの容量不足を補うとしている。なお、シントス社のキャピタル・グループに所属するシントス・グリーン・エナジー(SGE)社は昨年11月、米国のウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)が開発したSMR「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」を使って、ポーランドにエネルギー供給システムを構築すると発表。実行可能性調査の実施を含む協力協定をUSNC社と結んでいる。(参照資料:シントス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 02 Sep 2021
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ロシア・サハ共和国内で計画中の陸上SMRに建設許可
ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は8月9日、同社の国際事業部門であるルスアトム・オーバーシーズ社(JSC RAOS)が極東のサハ自治共和国内で計画している小型モジュール炉(SMR)建設に対し、連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)が建設許可を発給したと発表した。ロスアトム社は2020年12月、ロシアでも初となる陸上設置式SMR「RITM-200N」(電気出力5.5万kW)をサハ共和国北部のウスチ・ヤンスク地区ウスチ・クイガ村で2028年までに完成させる計画で、同SMRが発電する電力の料金について同国政府との合意文書に調印した。建設計画の環境影響声明書や同サイトでのSMR建設の妥当性に関する資料の作成など、様々な所要の調査の大部分がすでに完了。今年6月にはサハ共和国内で公開ヒアリングも開催済みであることから、ロスアトム社は2024年にもSMR発電所の建設工事を開始する。ロシアでは、電気出力3.5万kWの小型炉「KLT-40S」を2基搭載した海上浮揚式原子力発電所(FNPP)の「アカデミック・ロモノソフ号」が2020年5月、極東チュクチ自治区内の湾岸都市ペベクで商業運転を開始した。ロスアトム社傘下のOKBMアフリカントフ社はこれに続き、「KLT-40S」の特性をさらに生かしたSMRシリーズ「RITM」を開発。熱出力17.5万kW~19万kWの「RITM-200」においては、ロシアの原子力砕氷船に搭載した小型炉のこれまでの運転経験を統合しており、同炉を2基搭載した最新の原子力砕氷船「アルクティカ」はすでに海上での試験航行を終え2020年10月に正式就航した。同様に、「RITM-200」を2基ずつ搭載予定の原子力砕氷船「シビル」と「ウラル」も現在建造中である。「RITM-200」はまた、FNPPに搭載する「RITM-200M」(電気5万kW)と陸上に設置する「RITM-200N」の2種類に分けられる。ロスアトム社は今年7月、極東のチュクチ自治区で計画されているバイムスキー銅鉱山プロジェクトに電力を供給すると決定。「RITM-200M」を2基搭載したFNPPを、同鉱山に近い東シベリア海沿岸のナグリョウィニン岬の作業水域に納入することになった。一方、陸上設置型の「RITM-200N」は顧客の要望に応じて柔軟性の高い幅広い活用が可能で、ロスアトム社は発電のみならず熱や水素の製造、海水の脱塩にも利用できると指摘。建設期間が3~4年と短期間で済む一方で耐用年数は60年と長く、燃料交換も5~6年に一回のサイクルだと説明。JSC RAOSのO.シラゼトディノフ副総裁は、「建設許可が降りたことでサハ共和国におけるSMR建設プロジェクトは新たな節目を迎えた」と表明している。(参照資料:ロスアトム社の発表資料①、②、ルスアトム・オーバーシーズ社(ロシア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 10 Aug 2021
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韓国のサムスンC&Tが米ニュースケール社のSMR事業に参加
米国で小型モジュール炉(SMR)を開発中のニュースケール・パワー社は7月22日、韓国のサムスンC&T社(サムスン物産)が同社に株式投資することになったと発表した。サムスン物産はこの投資でニュースケール社のSMR開発事業を支援していくが、これに加えてサムスン物産のエンジニアリング・建設グループは、ニュースケール社の主要株主であるフルアー社(大手の設計・調達・建設(EPC)企業)と「業務提携契約」を締結する方針。この契約を通じてサムスン物産は、ニュースケール社が今後世界中で展開するSMRの建設プロジェクトに対し、協力の可能性を広げていく。サムスン物産は化学薬品や鉄鋼、電子素材、エネルギーなど6つの事業分野に携わる総合商社で、建設ゼネコンの一つでもある。韓国電力公社(KEPCO)の企業連合がアラブ首長国連邦(UAE)からバラカ原子力発電所(140万kWのPWR×4基)建設計画を受注した際も、これに参加した。韓国国内ではハヌル5、6号機(各PWR、100万kW)の建設工事に加わったことから、同社はこのような経験を生かして、ニュースケール社やフルアー社の戦略的パートナーとして将来のSMR建設プロジェクトに協力する考えだ。ニュースケール社のSMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」は、開発が進展していくにつれ1モジュールあたりの出力が徐々に増加。5万kW版のNPMについては2020年9月、原子力規制委員会(NRC)が設計認証(DC)審査で、SMR設計としては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給しており、同設計は現時点で米国におけるSMR商業化レースの先頭を走っている。最新のNPMの出力はモジュールあたり7.7万kWで、これを最大で12基接続した場合の出力は92.4万kWとなる。サムスン物産は今回、「SMRは環境に優しい次世代技術であり、業務提携契約を締結すれば当社が今後大きく成長するための重要ステップになる」とコメント。ニュースケール社に投資することで、CO2を排出しない発電技術を世界中に広める機会を追求していきたいと述べた。ニュースケール社も、「原子力エンジニアリングと建設のパートナーとして、サムスン物産の確かな実績を当社の事業に活用できることは喜ばしい」と表明。サムスン物産の投資金と同社が保有する原子力事業の専門的知見は、ニュースケール社の革新的クリーンエネルギー技術を市場に送り出す上で非常に有益だと強調した。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は2017年6月、国内の原子力発電所を徐々に削減して2080年頃までに脱原子力を達成すると宣言する一方、原子力輸出や海外の原子力事業への参加については産業界を積極的に支援する方針を表明。国内で残される原子力分野が廃止措置や放射線関係に限られていくなか、産業界や人材を維持する観点から政府は原子力輸出等への産業構造転換を促している。ニュースケール社の投資については斗山重工業が7月20日、同社への支援を継続するため、国内の投資家らとともに追加で6,000万ドル相当の出資を行うと発表している。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 Jul 2021
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斗山重工がニュースケール社に追加投資
韓国の斗山重工業は7月20日、米国で小型モジュール炉(SMR)を開発するニュースケール・パワー社への支援を継続するため、国内の投資家らとともに追加で6,000万ドル相当の株式投資を行うと発表した。この投資により、同社がニュースケール社に納入するSMR用機器の金額は数10億ドル規模に増大する見通し。両社はまた、SMRを使った水素製造や海水脱塩にも協力の範囲を広げており、共同で実施するSMR事業の基盤を強化する。この日、斗山重工業の朴会長とニュースケール社のJ.ホプキンズ会長兼CEOは、韓国の首都ソウルで追加投資の合意書に調印した。斗山重工業は2019年からニュースケール社への金融投資企業に加わっており、すでに4,400万ドルの株式投資を現金で実行。これに今回の新しい投資が追加され、合計投資額は1億400万ドルとなった。両社はまた、2019年に「製造コンサルティング・サービス契約」を締結しており、この契約の下で斗山重工業は、原子炉圧力容器の製造に関する専門的知見をニュースケール社に提供している。斗山重工業はその後も、機器の製造試験などをニュースケール社のために実施。米国で最初のSMRを製造するチームの一員として、供給する機器の範囲を鍛造品や圧力容器用の重要パーツなどに拡大し、両社間の協力を長期に継続していく考えだ。ニュースケール社は、同社製のSMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の開発を開始して以降、1モジュールあたりの出力を徐々に増加。5万kW版のNPMについては2020年9月、原子力規制委員会(NRC)が設計認証(DC)審査で、SMR設計としては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給しており、同設計は現時点で米国におけるSMR商業化レースの先頭を走っている。最新NPMの出力はモジュールあたり7.7万kWで、これを12基接続した場合の出力は92.4万kWとなる。斗山重工業の発表によると、同社はユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)がアイダホ国立研究所内で建設を計画しているNPM初号機の建設に参加する予定で、来年にも初号機用の鍛造品製造を開始する。UAMPSはすでに昨年末、ニュースケール社の大株主であるフルアー社とエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約を締結。2023年に建設・運転一括認可(COL)をNRCに申請し、2025年にこれを取得して建設を開始、2029年には最初のモジュールの商業運転を始めたいとしている。ニュースケール社のホプキンズ会長兼CEOは、「大規模な製造ラインを持つ斗山重工業の専門能力は、当社のNPM初号機建設計画を進める上で非常に貴重なものだ」と指摘した。斗山重工業の朴会長も、「ニュースケール社に多くの機器を供給することにより、韓国のサプライチェーンにも新たな事業機会と推進力がもたらされる」と強調している。(参照資料:斗山重工業、ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 21 Jul 2021
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米NASA、深宇宙探査用の核熱推進システム開発で3社を選定
米エネルギー省(DOE)と共同で、深宇宙探査用核熱推進(NTP)技術の開発を進めているアメリカ航空宇宙局(NASA)は7月13日、有望な原子炉技術の詳細な設計概念と価格に関する「提案募集(REF)」に応じた企業の中から3社を選定したと発表した。いずれも、原子燃料や機器・サービスのサプライヤーで、すでにNASAと協力関係にあるBWXテクノロジーズ(BWXT)社、防衛等の多角的な技術製品企業であるジェネラル・アトミクス・エレクトロマグネティック・システムズ(GA-EMS)社、およびエネルギー関係のハードウェアとサービスを提供するウルトラ・セーフ・ニュークリア・テクノロジーズ(USNC-Tech)社である。今回のREFは、DOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)を管理・運営するバッテル・エナジー・アライアンス(BEA)社が、NASAの2021会計年度予算を使って今年2月中旬から4月末まで実施した。INLは今後、選定した3社それぞれと約500万ドル相当の契約を締結。将来的に、深宇宙探査の特定の性能要件を満たすための様々な設計戦略を立てるほか、このようなミッションに利用可能な原子炉の設計概念を12か月の契約期間に完成させる。契約の終了時、INLはそれらの設計概念についてレビューを実施し、NASAに勧告事項を提示。NASAはこのような情報を活用して、将来開発する技術設計の基盤を構築することになる。NASAによれば、核熱推進システムの推進効率は化学燃料ロケットと比べて非常に大きい。このため、火星の有人探査や貨物ミッション、および太陽系外縁部の科学ミッション用として有望な核熱推進技術を開発できれば、数多くのミッションを一層迅速かつ安定した形で実施することができる。今回の3社が開発に関わる小型モジュール炉(SMR)は、そのような核熱エンジンの重要機器であり、HALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を使用する予定である。3社のうち、BWXT社はNASAとの今回の契約実行に際し、航空機・宇宙船の開発製造企業ロッキード・マーチン社と提携する方針。また、GA-EMS社は、小型のペブルベッド式高温ガス炉「Xe-100」を開発中のX-エナジー社、およびロケットやミサイルの推進器を製造しているエアロジェット・ロケットダイン社と提携する。USNC-Tech社は、親会社で第4世代の小型高温ガス炉「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」を開発中のUSNC社と連携体制を取るほか、ブルーオリジン社(=アマゾン社の創業者J.ベゾス氏が創設した宇宙ベンチャー企業)、GE日立・ニュクリアエナジー社とGEリサーチ社、フラマトム社、高機能合金材料メーカーのマテリオン社と提携するとしている。(参照資料:NASAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Jul 2021
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中国、SMR「玲龍一号」の実証炉を本格着工
中国核工業集団公司(CNNC)は7月13日、中国南端の海南省(海南島)に位置する昌江原子力発電所で、多目的小型モジュール炉(SMR)「玲龍一号」の実証炉建設工事を正式に開始したと発表した。CNNCによると、「玲龍一号」は出力12.5万kWの一体型PWRで、CNNCが2010年から「第12次5か年計画」の主要プロジェクトとして、10年以上にわたる研究開発を通じて開発した。知的財産権もCNNCが保有しており、2016年4月にはSMR設計としては初めて、国際原子力機関(IAEA)の「包括的原子炉安全レビュー(GRSR)」をパス。今回のプロジェクトで「玲龍一号」は世界で初めて陸上で建設されるSMRとなり、中国が世界のSMR技術をリードしていることを示すものだとCNNCは強調している。「玲龍一号」は元々、「ACP100」と呼称されており、CNNCは福建省莆田市でこの「ACP100」を2基建設することを計画していた。しかし、CNNCはその後、建設サイトと登録商標を変更した上で2019年7月に「玲龍一号」の実証炉建設プロジェクトに着手すると発表。同プロジェクトは、海南自由貿易港の建設に向けてクリーンなエネルギーの供給を保証するものであり、CNNCと海南省政府が結んだ戦略的協力協定の成果となる。今年6月にはまた、国家発展改革委員会が同プロジェクトの実施を最終承認していた。CNNCの発表によると、モジュール化された小型のSMRは従来の大型原子炉技術とは異なり、完全に受動的な安全系によって高い安全性を確保しているほか、短期間で建設できるという特長がある。クリーンな分散型エネルギー源として利用が可能なため、海水の脱塩や地域の冷暖房用熱供給に加えて、離島や鉱山地区、エネルギー多消費産業に対するエネルギー源として、様々なシナリオに対応。「玲龍一号」が海南省で完成した場合、年間の発電量は10億kWhに達し、52万6,000世帯に電力供給が可能だ。また、化石燃料の消費を抑えられるため、CO2排出量の大幅な削減にも貢献するとしている。「玲龍一号」の実証炉が建設される昌江原子力発電所では現在、I期工事(1、2号機)として第2世代の出力65万kWのPWR「CNP600」が稼働中。Ⅱ期工事となる3、4号機については、中国が知的財産権を保有する第3世代の120万kW級PWR設計「華龍一号」が採用される予定で、今年3月に3号機の正式な着工式が執り行われた。(参照資料:CNNC(中国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 14 Jul 2021
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米エネ省、先進的原子炉の建設コスト削減でGEH社と協力
米エネルギー省(DOE)は7月7日、先進的原子炉など新しい原子力発電所の建設コスト削減を図るため、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と協力すると発表した。同社の率いるチームに580万ドルの支援金を提供し、建設コストの10%以上の削減を目指して3つの建設要素技術を実証していく。DOEのK.ハフ原子力担当次官補代行は、「原子力発電所の建設にかかるコストの超過とスケジュールの遅延という課題は、過去数十年にわたって新規の原子力発電所建設計画を悩ませてきた。しかし、進んだ建設要素技術を駆使することによって先進的原子炉の建設コストを引き下げ、作業をスピードアップすることは可能だ」と指摘。先進的原子炉の実用化は地球温暖化を防止する重要ステップでもあり、J.バイデン大統領が目指す「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化」を達成するのに必要であると強調した。今回の取り組みは、DOEが2019年に傘下のアイダホ国立研究所内に設置した「国立原子炉技術革新センター(NRIC)」の予算と管理の下で実行される。NRICの目標は先進的原子炉の設計を実証し建設を促進することであるため、この取組はNRICの「先進的建設要素技術(ACT)構想」の一部ということになる。ACTは2段階で構成されており、第1段階では先進的な建設要素技術の開発と小規模での実証に向けた準備を実施する。この作業が無事に完了しその後の予算が確保できれば、第2段階として支援金の提供から3年以内に技術の実証を行う計画である。GEH社のプロジェクト・チームには、カンザス州の大手エンジニアリング企業Black & Veatch社と米国電力研究所(EPRI)、テネシー峡谷開発公社(TVA)、インディアナ州のパデュー大学、ノースカロライナ大学が参加。また、英国のCaunton Engineering社と、「スチール鋼レンガ・システム」を開発したスコットランドのModular Walling Systems 社、および英国政府が産業界との協力により2012年に設置した「先進的原子力機器製造研究センター(NAMRC)」が加わっている。同チームは今後、DOEらとともに以下の3つの技術を実証し活用していく。これらは他の産業部門で開発されたもので、有望ではあるが原子力発電所の建設という観点で試験が行われたことはない。①トンネル掘削業界が開発した「立坑建設工法」を使って、原子力発電所の工期を1年以上短縮。②スチール鋼とコンクリートの複合構造物を使ったモジュール式の建設システム「スチール鋼レンガ・システム」を用い、現地で必要とされる労働力を大幅に削減。③高度な監視システムとデジタルツイン技術(物理世界の出来事をデジタル上に再現する技術)を統合し、原子力発電所構造物の3-Dレプリカを作成。DOEはこれらの技術を様々な先進的原子炉設計に適用し、早期に市場に送り出せるよう経済性の改善を図る。GEH社側は、「DOEやNRICと協力して革新的な建設要素技術を使ったコストの削減方法を評価していきたい」とコメント。「今回のDOEの支援金は小型モジュール炉(SMR)の商業化で非常にプラスとなるほか、その他の先進的原子炉の実現に向けて道を拓くことになる」と述べた。(参照資料:DOE、NRICの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 09 Jul 2021
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GEH社、「BWRX-300」の商業化に向けカメコ社らと協力
BWRX-300の断面図©GE Power米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は7月6日、BWRタイプの同社製小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の商業化を促進し、カナダやその他の国々で建設していくため、原子燃料メーカーのグローバル・ニュークリア・フュエル・アメリカズ(GNF-A)社、およびカナダの大手ウラン生産企業のカメコ社と協力覚書を締結した。カナダで稼働中の商業炉は19基すべてがカナダ型加圧重水炉(CANDU)だが、GEH社でカナダのSMRを担当するリーダーは「CANDU炉もBWRも燃料ペレットに二酸化ウラン、被覆管に類似の素材を使うなど燃料のタイプは非常に似ている」と説明。今回の協力で、設計と製造で似た側面をもつ2種類の燃料の製造企業同士でも相乗的な利益があり、カナダの燃料サプライチェーンでは性能が向上すると期待している。カメコ社側も「世界中がCO2排出量の実質ゼロ化に向けて突き進むなかで、原子力の果たす役割は非常に大きく、様々なSMRや先進的原子炉技術が浮上する原動力になっている」と表明。「カメコ社としては、このような革新的な原子炉に燃料供給する主力企業となる覚悟であり、GEH社やGNF社とともに新たなSMR設計にビジネスチャンスを見出していきたい」と述べた。GEH社によると、「BWRX-300」は電気出力30万kWのSMRで、2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得した第3世代+(プラス)の同社製設計「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」がベース。自然循環技術や受動的安全システムなど、画期的な技術を採用しているほか、設計の大胆な簡素化により単位出力あたりの資本コストはその他のSMRと比べて大幅に削減された。 また、原子燃料にはGNF社製の高性能燃料集合体「GNF2」のように、すでに承認された設計を採用。機器類も技術的に実証済みのものを組み込んでおり、GEH社は「SMRの中でもBWRX-300はコスト面の競争力が最も高くリスクは最低レベルとなり、市場に出るSMRとしては世界最初のものになるはずだ」と強調している。米国では、本格的な認証手続きの一つである設計認証(DC)審査を「BWRX-300」で実施するのに先立ち、NRCが2020年12月から先行安全審査を開始。カナダでもすでに2020年1月から、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が許認可申請前のベンダー設計審査を実施中である。カナダ国内ではこれまでに、オンタリオ州営電力(OPG)社が2020年11月、ダーリントン原子力発電所の敷地内でSMRの建設に向けた活動を開始すると発表。国外では、バルト三国のエストニアや東欧のポーランド、チェコが同設計を国内で建設することに関心を表明しており、可能性調査の実施に向けた覚書がこれらの国の関係者とGEH社の間で結ばれている。GEH社がビジネスアドバイザーのPwCカナダ社に委託して実施した同設計の経済性調査によると、初号機をカナダのオンタリオ州で建設した場合、BWRX-300の建設と運転はカナダの国内総生産(GDP)に約23億カナダドル(約2,024億円)貢献する見通し。稼働する全期間を通じて、19億ドル(約1,672億円)の労働所得を提供するとともに7億5,000万加ドル(約660億円)以上の税収をカナダ連邦政府や州政府、地元自治体にもたらす。また、後続のSMRを同州その他で建設すれば、GDPに対する一基あたりの貢献額は11億加ドル(約968億円)となるほか、税収については3億加ドル(約264億円)になるとしている。(参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 08 Jul 2021
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カナダのオイルサンド業界、CO2排出量の実質ゼロ化に向けSMRの活用を検討
カナダのオイルサンドの90%を生産する同国の大手生産企業5社は6月9日、生産時に発生するCO2を2050年までに実質ゼロにすることを目指し、小型モジュール炉(SMR)の活用・検討を含めた戦略構想を実行に移すと発表した。この構想を団結して進める枠組みとして、アルバータ州を本拠地とするCanadian Natural Resources社とCenovus Energy社、Imperial社、MEG Energy社、およびSuncor Energy社の5社は企業連合を形成。カナダがパリ協定で誓約した「2050年までのCO2実質ゼロ化」等も達成できるよう、連邦政府やアルバータ州政府とも協力していく考えである。同構想は、これら2つの政府がCO2排出量の削減に向けた計画やインフラの支援で重要プログラムを発表したのに続いて公表されており、両者がそれぞれの構想と地球温暖化の防止目標を達成するには、産業界と政府の協力が重要との認識を強調している。今回の構想はCO2の回収・利用・貯留(CCUS)を基本の方策としているが、これら5社は、地球温暖化の防止で「現実的かつ有効な」方策実現への堅い決意を表明。オイルサンド業界が排出する温室効果ガスが非常に多いことから、今後30年以上にわたりオイルサンドの生産関連でカナダのGDPに対して3兆カナダドル(約267兆円)の貢献をしつつ、CO2の削減で直ちに利用可能な方策を模索していく。5社はまた、この構想によってクリーンエネルギー部門の技術開発を促進し、関係雇用を創出すると指摘。その他の複数の部門にも利益をもたらすとともに、カナダ国民の生活の質向上に資するよう支援する。オイルサンド業界でCO2の排出量と吸収量を同レベルにすることを促すだけでなく、それによって各社の株主たちにも長期的利益を配分できるよう投資を行う。今回の発表によると、CO2排出量を削減する方策はただ一つではないため、参加企業は複数方策の並行的実施を構想に盛り込んでいる。その一つは、SMRや次世代のCO2回収技術、大気中からCO2を直接回収してCO2の量を減らす技術など、潜在的な可能性がある新技術について評価を行い、試験的な運用や適用を加速することである。また、アルバータ州で建設が計画されているインフラ道路を、州内のオイルサンド施設から近隣のCO2貯留ハブにつなぐことも検討する。さらに、このインフラ道路と並行して、CCUSやクリーン水素、エネルギー生産・使用の効率化、燃料転換など、新旧様々なCO2削減技術をオイルサンドの生産施設に設置することを挙げている。カナダでは2019年12月、オンタリオ州とニューブランズウィック州、およびサスカチュワン州の3州が、国内での多目的SMRの開発・建設に向けて協力覚書を締結。アルバータ州は今年4月に、この覚書に加わったことを明らかにしている。(参照資料:加オイルサンド企業連合の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 18 Jun 2021
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韓国原研とサムスン重工、海上浮揚式原子力発電所の共同開発で協力
韓国原子力研究院(KAERI)とサムスン重工業は6月8日、溶融塩炉(MSR)技術をベースとする小型モジュール炉(SMR)を搭載した海上浮揚式原子力発電所や原子力船を共同で開発するため、協力協定を締結した。MSRは重大事故の発生リスクが少ないとされており、両者はこれを海上での利用を想定して設計し、要素技術や熱交換器などの関連機器も開発。また、このようなこのSMR利用の発電所のビジネス・モデルを構築するとともに、性能検証や経済性評価に向けた共同研究も実施する計画だ。両者の発表によると、無炭素エネルギー源の一つであるMSRは気候変動問題への利用が大いに期待される。近年、海上輸送部門におけるCO2排出の国際的な規制が強化されていることから、MSRでCO2を排出しない原子力船等を開発することとした。燃料の交換サイクルは船舶本体の寿命とほぼ同じ20年ほどであるため、MSRを一旦搭載した後は燃料を交換する必要がなく、サイズが比較的小さいことも舶用炉利用に向くとされる。また、KAERIの説明では、MSR内部で異常信号が発生した場合、液体燃料の溶融塩が凝固するよう設計されているため、重大事故の発生を抑えることができる。このような安全性の高さに加えて、電力と水素を効率よく同時生産できる利点があり、MSRは次世代のグリーン水素の製造など様々な分野で活用が可能である。協力協定への調印式には、KAERIの朴院長とサムスン重工業の鄭社長をはじめ、両機関の主な関係者が出席。共同研究を通じて、相互の戦略的協力関係を築くことで合意した。KAERIはこれまでに、海水脱塩と熱電併給が可能なモジュラー式PWR「SMART」(電気出力10万kW)を開発し、サウジアラビア等の中東諸国に提案するなど、SMRの開発実績を保有している。KAERIの朴院長は、「海上輸送船用に開発したMSRは国際物流のゲームチェンジャーになり得る次世代技術だ」と指摘した。サムスン重工業の鄭社長も、「気候変動問題に効率的に対応できるMSR技術は当社のビジョンとも合致する」と表明。同社は現在、船舶用の低炭素な推進力としてアンモニア燃料や水素燃料の開発にも取り組んでおり、MSRがこのような新しい成長事業の原動力になるよう、その研究開発にさらに力を入れていくと述べた。海上浮揚式原子力発電所に搭載するSMRついては、ロシアの原子力総合企業ロスアトム社による開発が最も進んでいる。出力3.5万kWの小型炉「KLT-40S」を2基装備した「アカデミック・ロモノソフ号」は2020年5月、極東チュクチ自治区内の湾岸都市ペベクで営業運転を開始している。(参照資料:KAERIとサムスン重工業(韓国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Jun 2021
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中国の国家発展改革委、SMR「玲龍一号」の実証炉計画を承認
中国核工業集団公司(CNNC)は6月4日、同国の国家発展改革委員会が海南省昌江における多目的小型モジュール炉(SMR)「玲龍一号」の実証炉建設計画を承認したと発表した。CNNCは当初、仏国のPWR技術をベースに開発した10万kW級の第3世代炉「ACP100」の実証炉を、福建省莆田市で2基建設することを計画。同設計は2016年4月、国際原子力機関(IAEA)の「包括的原子炉安全レビュー(GRSR)」をパスしている。しかしCNNCはその後、60万kW級の国産PWRが稼働する昌江原子力発電所に同設計の建設サイトを変更。炉型名も「玲龍一号」に変えた上で2019年7月、実証炉の建設プロジェクトに着手すると発表していた。今回、国家発展改革委員会が承認したのは出力が各12.5万kWの実証炉建設で、CNNCの100%子会社である海南核電公司が建設プロジェクトを担当する。着工や竣工のスケジュールは明らかにされていないが、米国の業界紙は、2017年の国際原子力機関(IAEA)の会合で中国の代表者が「2022年以前に1号機を着工する」と発言したことを伝えている。CNNCの発表によると、SMR実証炉の建設は中国の原子力発電所の開発レベルと中国独自のイノベーションを促進する重要案件であるだけでなく、環境にやさしいエネルギーの供給を保証するものとなる。CNNCは今後も原子力発電所の安全性や品質向上を重視するとしており、原子炉建設現場ではプロジェクト・マネジメントを強化するだけでなく、立地点の地域振興にも留意するとしている。CNNCはこのほか、5月11日から江蘇省の田湾原子力発電所で試運転中だった6号機(PWR、111.8万kW)が6月2日の夜遅く、営業運転を開始したことを発表。同炉は中国で50基目の商業炉であり、同国の原子力発電設備容量は4,800万kWを超えた。田湾発電所では現在、ロシア製の100万kW級PWR(VVER-1000)を採用した1号機~4号機がすでに稼働中。6号機については、2020年9月に営業運転を開始した5号機とともにCNNC製の100万kW級PWRを採用している。(参照資料:CNNC(中国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 07 Jun 2021
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エネルギー白書2021がまとまる、「2050年カーボンニュートラル」などピックアップ
エネルギー白書2021(写真は報道配布用)2020年度の「エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2021)が6月4日、閣議決定された。今回の白書では、「エネルギーを巡る状況と主な対策」として、(1)福島復興の進捗、(2)2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と取組、(3)エネルギーセキュリティの変容――についてまとめている。例年、冒頭に取り上げている福島の復興については、「東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から10年が経過した」と、2020年度末を一つの節目ととらえ、これまでの廃炉に向けた取組と復興の進捗状況を記述。原子力災害からの復興がエネルギー政策を進める上での原点との認識を改めて示している。2020年度は、10月の菅首相による「2050年カーボンニュートラル」実現表明を受け、12月には14の重点産業分野(洋上風力、燃料アンモニア、水素、原子力、自動車・蓄電池、船舶、食料・農林水産、半導体・情報通信、物流・人流・土木インフラ、航空機、カーボンリサイクル、住宅・建造物/次世代型太陽光、資源循環、ライフスタイル)ごとに実行計画を示したグリーン成長戦略が策定された。今回の白書では、各分野の産業・技術競争力に関する主要国比較を紹介。日本、米国、中国、韓国、台湾、英国、ドイツ、フランスの8か国・地域を対象に、過去10年間における各分野の特許数、特許の注目度などを定量化した指標(トータルパテントアセット)をもとに評価を行い、順位表をまとめている。それによると、日本は、水素、自動車・蓄電池、半導体・情報通信、食料・農林水産の4分野で首位となったが、原子力では、米国(指標339,254)、中国(同220,847)、英国(同66,596)に次いで4位(同66,092)だった。これに関し、日本は原子力関連機器の製造分野での競争力が高いが、評価対象とした小型モジュール炉(SMR)や高温ガス炉などの次世代革新炉や核融合では、米国・中国が特許出願数の他、特許の注目度・脅威度も高いと分析している。各国のエネルギーセキュリティ定量評価(資源エネルギー庁発表資料より引用)また、白書では、エネルギーセキュリティに関し、エネルギー自給率、化石燃料の安定供給確保、蓄電能力、サイバーセキュリティ対策他、9つの指標による諸外国比較も紹介。随所にコラムを設け、昨冬の電力需給ひっ迫に係る要因・対策、2020年8月の米国カリフォルニア州大規模停電の経緯などを解説し、教訓を述べている。
- 04 Jun 2021
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バッテンフォール社、エストニアでSMR導入を計画するフェルミ社に出資
スウェーデンの電力大手バッテンフォール社は5月31日、エストニアで小型モジュール炉(SMR)の導入を計画している新興エネルギー企業「フェルミ・エネルギア社」に出資すると発表した。昨年11月、両社がSMRの導入協力を強化するために交わした基本合意書に基づき、バッテンフォール社はフェルミ社株の約6%を保有する株主として、100万ユーロ(約1億3,400万円)の着手金を同社に投資する。フェルミ社はエストニアで2035年までに1基以上のSMR建設を目指しており、バッテンフォール社はフェルミ社がこの計画について作成した事業モデルと、2026年に計画している政府への「原則決定(DIP)」申請には実現の見込みがあると認識。この投資によって、両社の連携を一層強化・拡大していく考えだ。バッテンフォール社はすでに、過去数年にわたりエストニアでのSMR建設に向けたフェルミ社の実行可能性調査に参加している。昨年11月の基本合意書調印以降は、SMR建設の原価計算や施工能力、資金調達構造、サプライチェーンに加えて、SMRの運転とメンテナンスに必要な人材の確保計画についても調査中。今後も、これらの分野で蓄積したノウハウで、フェルミ社の実行可能性調査に一層貢献するとしている。バッテンフォール社の発表によると、エストニアのkWhあたりの平均CO2排出量はEU諸国の中で最も多く、政府は関係する省庁の高級官僚をメンバーに「原子力に関する国家作業グループ」の設置を決めた。同グループでは、エストニアにおけるエネルギー供給保証の確保で原子力発電に適性があるか、国外の専門家も交えて分析・評価する方針である。フェルミ社のK.カレメッツCEOはバッテンフォール社の今回の決定について、「エストニア経済で真の脱炭素化を達成するには、CO2を出さずに信頼性の高い廉価な電力を供給する原子力が不可欠だ」と指摘。導入するSMRとしては、米国、カナダ、英国で開発中の設計が適しているとした上で、「バッテンフォール社は複数の原子力発電所で優れた安全運転の経験を蓄積しており、当社がSMRの導入で連携すべき適切なパートナーであることが分かる」と強調した。同CEOはまた、「バッテンフォール社の投資によって、当社は関係チームを拡大するとともに必要な能力を強化できる」と指摘。「原子力発電に関する情報を今後も継続的に国民に伝え、政府が知識データベースに基づいて原子力の導入判断を下せるよう、研究や訓練プログラムを進めていく」と述べた。同CEOによればフェルミ社は今後数年間にわたって、バッテンフォール社とともにSMRの活用に関する調査を複数実施し、バッテンフォール社の原子力発電所や訓練プログラムを視察するとしている。なお、エストニアのSMR導入計画には、すでにフィンランドの国営電気事業者フォータム社やベルギーの大手エンジニアリング・コンサルティング企業トラクテベル・エンジー社が協力中。フェルミ社は米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社や、英国のモルテックス・エナジー社などとも協力覚書を締結しており、それぞれが開発したSMRの建設可能性を探るとしている。(参照資料:バッテンフォール社(英語)、フェルミ・エネルギア社(エストニア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 02 Jun 2021
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英モルテックス社のSMR、カナダのベンダー審査で第1段階をクリア
英国ロンドンに拠点を置くモルテックス・エナジー社は5月25日、同社製の小型モジュール炉(SMR)が、カナダ原子力安全委員会(CNSC)の「許認可申請前設計審査(ベンダー設計審査:VDR)」の第1段階を完了したと発表した。モルテックス社は原子炉の開発企業で、現在出力30万kWの「燃料ピン型溶融塩炉(Stable Salt Reactor-Wasteburner: SSR-W)」を開発中。カナダ東部のニューブランズウィック(NB)州政府は2018年7月、同設計の商業規模の実証炉を2030年までに、州内のポイントルプロー原子力発電所敷地内で建設する計画を公表している。VDR第1段階の完了は、この計画の実行に向けた大きな一歩になったとモルテックス社のR.オサリバン北米担当CEOは表明。「当社の技術が適切な方向に進んでいることの証であり、現在の顧客のみならず将来の顧客からも、当社の先進的原子炉設計に一層の信頼を置いてもらうことができる」とした。NB州のM.ホーランド天然資源・エネルギー相も、「重要な節目をクリアしたモルテックス社が残りのVDR審査を着実にクリアすることを期待する」と述べた。VDRは、当該設計を採用した建設・運転許可の取得で事業者が正式な申請手続きを開始するのに先立ち、その設計がカナダの規制要件を満たしているか、メーカー側の要請に基づいてCNSCが実施する全3段階の評価審査。法的に有効な設計認証や関係認可が得られるわけではないが、カナダの規制要件に対する一般的な初期フィードバックが得られるほか、技術面の潜在的な課題を設計の早い段階で特定し解決策を探ることができる。モルテックス社によると、同社のSSR-Wは既存炉の使用済燃料を燃料として使用することができる。同社はこれにより、NB州やカナダ全体、世界においても放射性廃棄物の量を低減することが可能であり、将来的に使用済燃料を処分する際も、コスト面の削減効果が大きくて環境にも優しく、社会的受容が可能な解決策の一つになるとした。同設計はまた、日中の電力需要がピークになる時間帯に、出力を2倍、3倍に増強することが可能だとしている。2017年11月に開始したVDR第1段階の審査結果として、CSNCは「カナダの規制要件の意図を良く理解した設計であり、これらの要件を満たす確かな見込みがある」と結論付けた。ただし今後、追加の改善を要する点として、「モルテックス社の現行の管理システムでは、今後の設計活動を組織的にサポートできない」と指摘。また、同設計で使用する構造物・系統・機器(SSCs)の安全性の重要度区分が品質保証プログラムとリンクしておらず、VDRの第2段階では、これらを含む複数の課題が改善されたことを明示する必要があるとしている。(参照資料:モルテックス社、CNSCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 May 2021
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IHIが米ニュースケール社のSMR事業に参画へ
IHIは5月27日、米国ニュースケール社が開発を行っている小型モジュール炉(SMR)の事業に、日揮ホールディングスとともに参画することを決定したと発表した。〈IHI発表資料は こちら〉ニュースケール社が開発を進めているPWRタイプのSMRは、複数の原子炉モジュールをプール内に設置する構造で、出力7.7万kWのモジュール を最大12基設置可能(最大92万kW)。実証炉としてアイダホ州の国立研究所内に2029年の運転開始を目指しており、2020年8月には米国原子力規制委員会(NRC)より設計承認を取得した。ニュースケール社による出力調整のイメージ、風力発電の出力変動に対応する(日揮発表資料より引用)2021年4月には同社のSMR事業に対し日揮ホールディングスが出資を表明し、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会でも、国際連携を通じたイノベーション協力の一例として注目された。SMRはシステムのシンプル化による信頼性向上、モジュール生産による工期短縮のメリットを持ち、カナダや英国でも開発が進められている。ニュースケール社プラントについては、モジュールの着脱切替などにより再生可能エネルギーの出力変動調整を的確に行うことも可能。原子力機器メーカーとして多くの実績を持つIHIは、「SMRが脱CO2社会実現の有力なソリューションの一つになり得る」と期待し、今回のニュースケール社による事業への出資を決定したとしている。
- 27 May 2021
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総合エネ調原子力小委、技術基盤に関し産業界より意見聴取
総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=安井至・バックキャストテクノロジー総合研究所エグゼクティブフェロー)は4月14日の会合で、これまでの議論を整理した。同委員会は、昨秋からのエネルギー基本計画見直しに伴い2月に約2年ぶりに再開。2050年カーボンニュートラルも踏まえた原子力の持続的な利用システムの構築に向けて、今回、(1)安全性向上の不断の追求、(2)立地地域との共生、(3)持続的なバックエンドシステムの確立、(4)ポテンシャルの最大限の発揮と安全性の追求、(5)人材・技術・産業基盤の維持・強化、(6)国際協力の積極的推進――に取組策を大別した。〈資料は こちら〉諸外国における長期運転の動き(エネ庁発表資料より引用)原子力のポテンシャルの最大限発揮に関して、資源エネルギー庁は、継続的な安全性向上を図りつつ、(1)設備利用率の向上、(2)40年を超える長期運転――の取組を進めていく必要性をあげ、米国における80年運転の認可など、諸外国の動きを例示。電気事業連合会原子力開発対策委員長の松村孝夫氏は、「既存原子力発電の最大限の活用が重要」との考えから、定期検査の効率的な実施、長期サイクル運転、原子力エネルギー協議会(ATENA)と連携した技術的知見の拡充など、設備利用率向上の取組について述べた上で、現行の運転期間制度の見直しについても検討がなさるよう求めた。60年までの運転期間延長が認可されている関西電力の美浜3号機、高浜1、2号機に関しては、福井県の専門委員会が9日に、安全性向上対策に係る議論について、「原子炉の工学的な安全性を確保するために必要な対策が講じられている」とする報告書案をまとめている。14日の会合に出席した福井県知事の杉本達治氏は、「長期運転に際しては、むしろきめ細かな定期検査が必要なのでは。効率化はもとよりまずは安全最優先。広く国民の理解が得られるよう努めて欲しい」などと訴えた。また、原子力の人材・技術・産業基盤の維持・強化に関しては、原産協会理事長の新井史朗氏、日本製鋼所M&E社長の工藤秀尚氏、三菱重工業常務執行役員の加藤顕彦氏、日立製作所常務執行役の久米正氏、日揮社長の山田昇司氏が産業界の立場から発言。新井氏は、原産協会が毎年取りまとめている産業動向調査などから、原子力発電所の長期停止による影響や建設プロジェクト経験者の高齢化の実態を示した上で、「2050年カーボンニュートラル達成のためにも、原子力を将来にわたり一定規模で使い続けるようエネルギー政策にしっかりと位置付け、新増設・リプレースについても考慮してもらいたい」とした。工藤氏は、原子力発電所部材の製造プロセス・実績について紹介。材料メーカーとしての供給責任を自負する同氏は、原子炉圧力容器・蒸気発生器の納入数が2020年度に2011年度の半分にまで落ち込んだデータを示した上で、「高品質が要求されマニュアル化できない。製造実績を積まなければ伝承は難しい」と、今後の製造技術・技能の継承に係る課題を強調した。加藤氏、久米氏、山田氏は、各社による原子力イノベーションの取組を紹介。加藤氏は核融合炉までを見据えた将来展望を、久米氏は小型軽水炉「BWRX-300」の構想を、山田氏は先般発表された米国ニュースケール社の小型モジュール炉(SMR)開発への参画について説明した。委員からは、SMRなどの革新炉開発に関し、「米国DOEのように日本政府もサポートすべき」といった研究開発への投資や、廃棄物発生までを含めた議論、規制側の参画を求める意見の他、立地地域の安心感醸成や再生可能エネルギーの負荷調整に果たす役割についても言及があった。また、最近の原子力を巡る事案について、柏崎刈羽原子力発電所の核物質防護を巡る不祥事に関し、「きちんとガバナンスを建て直さねばならない。一方で、将来のエネルギー需給構造を考える上で、原子力技術の評価とは切り分けて冷静に考えるべき」という意見、13日に政府が決定した福島第一原子力発電所で発生する処理水(ALPS処理水)の海洋放出に関し、「漁業団体が反対している状況。決定する前に十分話し合って合意を得ることが必要だった」という声もあった。
- 14 Apr 2021
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