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エストニア 原子力導入に向けWG設置へ
モルダー環境相©Estonian Governmentエストニア環境省は4月9日、同国における原子力発電の導入に向けて、政府が8日の閣議で「原子力作業グループ(WG)」を正式に設置することを承認したと発表した。同WGは、エストニアにおける原子力の必要性や既存の電力網との適合性も含め、今後20年間の同国のエネルギー需給などを分析評価。2022年9月までに政府に結果を報告するとともに、提案も行うことになる。同国では、新興エネルギー企業のフェルミ・エネルギア社が第4世代の原子炉導入を目指して、小型モジュール炉(SMR)や先進炉を開発中の複数の外国企業とエストニアへの導入可能性を検討中である。同社は、エストニア国内でSMRの開発・建設を支持する原子力科学者やエネルギーの専門家、起業家などが設立。すでに、米国のGE日立・ニュクリアエナジー社や英国のロールス・ロイス社、モルテックス・エナジー社などと協力覚書を締結している。しかしエストニア政府としては、検討を始めたばかりであり「国家レベルでは今のところ何も決定していない」と環境相は強調している。たとえ原子力発電の導入を決定したとしても、実際に運転を開始するのは2035年以降になるとの見方もある。WGは環境省が経済問題・コミュニケーション省などと協力して開催することになっており、構成メンバーはこれらの省と環境委員会のほかに、内務省、財務省、法務省、教育・研究省、防衛省、外務省、社会問題省などが挙げられている。原子力の導入についてT.モルダー環境相は、「エストニアのエネルギーセキュリティや持続可能性、競争力などを強化し、2050年までに炭素排出量実質ゼロ(カーボンニュートラル)の実現という欧州連合(EU)の目標を達成する上で、原子力の導入は可能性のある解決策の1つだ」と指摘。その利点について、「1日24時間、気候に左右される事なく電力供給が可能」とする一方、「実際の導入まで非常に長期間を要する上に、使用済燃料処分という難題を解決しなければならない」と強調した。同相はまた、WGのミッションとして「周辺諸国におけるエネルギー・経済の開発動向や、カーボンニュートラルの達成に向けた連携などを明らかにすること」と説明。「他国で開発中のエネルギー技術や進展中のプロジェクトが、エストニアへ適用可能かという点も分析する必要がある」とした。さらに、発電所の建設を官民のいずれが実施すべきか、あるいは官民が協力して進める可能性についても評価しなければならないと述べた。同相によると、エストニアにとって第4世代のSMRは従来の大型原子力発電所と比べて建設が比較的容易であり、これらの経済効果や信頼性、安全性という点においても優れている。しかし、原子力を導入するには、PAなど社会的側面が無視できないため、科学的根拠に基づいたアプローチだけでは不十分。国民全体で原子力を受入れる準備が出来ていなければならないとも指摘している。(参照資料:エストニア政府の発表資料(エストニア語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 12 Apr 2021
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日揮が米ニュースケール社SMR開発への参画を表明
ニュースケール社が開発するSMR(©NuScale Power社)日揮ホールディングスは4月6日、海外における小型モジュール炉(SMR)のEPC(設計・調達・建設)事業に進出すべく、米国ニュースケール社に4,000万ドルの出資を行うことを決定したと発表した。〈日揮発表資料は こちら〉ニュースケール社は、アイダホ州の国立研究所内に2029年の運転開始を目指し軽水炉型SMR(直径約4.5m、高さ約23m、1基当たりの電気出力7.7万kW)の開発を進めている。SMRは小型炉心のため、自然循環を使用した原子炉の冷却機構など、システムのシンプル化を通じた信頼性向上とともに、工場でのユニット生産も可能。従来の100万kW級原子炉に比べ工期短縮・建設コスト削減を図れるメリットを持ち、米国の他、カナダ、英国でも、実証炉建設から第三国への展開に向けた開発プロジェクトが進行中だ。日揮ホールディングスは、SMRの将来的な市場拡大に加え、再生可能エネルギーと並び、脱炭素社会の実現に貢献できるものと期待。中でもニュースケール社の技術が、他のSMR技術に先駆けて、2020年8月に米国初の設計認証を取得し、米国原子力規制委員会(NRC)によりその安全性が認められたことから、商業化に最も近いSMR技術であると見て、今回の決定に至った。今後は、海外市場を中心にSMRのEPCプロジェクトの受注・遂行を視野に活動していくほか、SMRと再生可能エネルギー設備、水素製造設備、海水淡水化設備とを統合したプラントシステムの開発も検討していく。会見を行う梶山経産相(インターネット中継)2050年カーボンニュートラル宣言を受けて2020年12月に策定された「グリーン成長戦略」では、原子力産業の取組に関し、「海外で進む次世代革新炉開発に、高い製造能力を持つ日本企業も連携して参画していく」とされている。梶山弘志経済産業相は、4月6日の閣議後記者会見で、「多様な原子力技術のイノベーションを促進することは、原子力の安全性向上を絶えず追求する観点からも重要。今回、日米企業の連携による具体的取組に進捗が見られたことは大変喜ばしい」と述べた。
- 06 Apr 2021
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エストニアがSMR導入に向け米GEH社、英ロールス・ロイス社と協力
バルト三国の1つエストニアの新興エネルギー企業であるフェルミ・エネルギア社は3月8日、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製・小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」のエストニアでの建設に向け、実施中の適性評価をさらに進展させるため、同社と協力チームの結成協定を結んだと発表した。フェルミ社はまた、これに先立つ3月2日、英ロールス・ロイス社製・SMRの国内建設の可能性を探る目的で、同社と協力覚書を締結したことを明らかにしている。フェルミ社は、エストニアで第4世代の原子炉を導入することを目指して、同国の原子力産業界でSMRの開発と建設を支持する原子力科学者やエネルギーの専門家、起業家などが設立した企業である。同社はすでに、英モルテックス・エナジー社の燃料ピン型溶融塩炉「SSR-W300」、加テレストリアル・エナジー社の「一体型溶融塩炉(IMSR-400)」、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)の「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」、米ニュースケール・パワー社の「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」について、エストニアへの導入可能性を調査中。これらの設計がデベロッパーそれぞれの国で認可を受け次第、採用技術を最終決定する方針である。GEH社との協力について、フェルミ社はすでに2019年10月、「BWRX-300」の国内建設に関する経済面の実行可能性調査で同社と覚書を締結しており、今回のチーム結成協定はこれに続くもの。GEH社側が発表したリリースによると、両社の協力チームはエストニアにおけるSMRの許認可、人材育成とサプライチェーンの構築、建設に必要な情報の収集・分析の継続などでフェルミ社を支援していく。GEH社のJ.ボール執行副社長は「両社の連携を一層深めることで、エストニアがエネルギーの供給保証と地球温暖化の防止目標を達成する手助けをしたい」とコメント。革新的な技術を採用した「BWRX-300」であれば、エストニアが無炭素エネルギーを確保する理想的な解決策になると述べた。フェルミ社のK.カレメッツCEOも「今回の合意を通じて、2019年の覚書から始まった両社の協力を一層拡大していく」と表明。採用技術の最終決定に向けて一層詳細なデータを収集し、エストニアの国土政策計画に役立てたいとしている。一方、ロールス・ロイス社との協力についてフェルミ社は、同社製SMRの国内建設に関わるすべての側面を調査すると説明。具体的には、適性な送電網や緊急時計画区域の指定、人材育成計画、許認可体制、SMR発電所の経済性、サプライチェーンなどをカバーするとした。同社製SMRでは、規格の標準化により工場製作が可能な機器を装備するため、従来の大型炉と比べて建設費の大幅な削減と工期の短縮が可能。これにより、建設工事の遅れとそれにともなうコストの増加リスクを抑えられるとフェルミ社は考えている。「英国SMR企業連合」を率いるロールス・ロイス社は、英国政府との連携により今後10年以内に出力44万kWのSMRを英国内で複数建設し、英国がパリ協定の下で目標とする「CO2排出量の実質ゼロ化」を支援する方針。ロールス・ロイス社の企業連合には、仏国を拠点とする国際エンジニアリング企業のアシステム社、米国のジェイコブス社、英国の大手エンジニアリング企業や建設企業のアトキンズ社、BAMナットル社、レイン・オルーク社のほか、溶接研究所と国立原子力研究所(NNL)、および英国政府が産業界との協力により2012年に設置した先進的原子力機器製造研究センター(N-AMRC)が参加している。(参照資料:フェルミ・エネルギア社(エストニア語)の発表資料①、②、GEH社、ロールス・ロイス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月4日付け、8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 09 Mar 2021
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ベルギーのトラクテベル社、SMR事業を重点推進へ
ベルギーの大手エンジニアリング企業であるトラクテベル社は12月11日、小型モジュール炉(SMR)に対する同社のビジョンを記した白書「2.0バージョンに進展する原子力技術」を公表した。その中で同社の将来展望として、SMR事業をエネルギー問題の統合的解決策として重点的に推進していく方針を表明している。同社は、ベルギーで稼働する原子炉7基中6基の建設でアーキテクト・エンジニアを務めたほか、世界中の複雑な原子力開発プロジェクトにおいてもエンジニアリング企業として活動。半世紀以上にわたって原子力に関する経験を蓄積してきた。同社によると、SMRは単なる原子力製品ではなく、21世紀の重要なエネルギー問題に懸命な解決策をもたらす「ビジネス・モデル」である。エネルギーの生産・貯蔵から輸送まで、分野横断的な事業を幅広く手がける中心的企業として、トラクテベル社はSMRによるソリューションの提案を推し進める考えである。同社はまず、コストの超過やスケジュールの遅延といった大型原子炉の新設にともなう課題によって、原子力産業界がダメージを負ってきたと指摘。その結果、民間部門からの投資が減少し、自国内で原子力を長期的に開発していこうとする国でのみ建設プロジェクトが維持されてきた。同様の現象は航空業界でも見られており、今や規模の小さい柔軟性のある航空機利用が新たなスタンダードになってきている。原子力産業界でも、シンプルで規格化した小型のモジュール式原子炉を新たな「標準」として定義しつつあるが、革新的な設計を普及させるには許認可の枠組などが必要になってくる。同社はこのため、通常よりも一層拍車をかけてSMRを量産し、そこから経済的恩恵を得るというビジョンがSMR産業界には必要だと説明。それに不可欠な事項として、SMRが第3世代炉の新規建設プロジェクトから教訓を学んでおり、予算内でスケジュール通りに完成させることができると投資家に証明しなければならないとした。また、現実問題として、需要に応じて出力調整する能力と、既存の産業ハブに隣接する地点でプラントの立地が可能という2重の基準を経済的に満たせる無炭素発電技術はほとんどない。これらのことからトラクテベル社は、電力や水素、蒸気など複数のエネルギーを統合したエコ・システムの中心にSMRを置くというビジョンを描いている。同社によれば、米国やカナダ、仏国、英国、フィンランド、エストニア、ポーランド、チェコ、およびその他の東欧諸国は、すでにSMRを活用して将来を築くという方針を明確に表明済み。SMRには無炭素社会への移行を可能にする能力が複数あり、それらは具体的に、①再生可能エネルギーの間欠性を補い、その普及を助ける出力調整能力と100万kWh規模のエネルギー貯蔵能力、②市場の需要に応じた発電所規模や運転時の温度の高さなどにより、地域熱供給や海水脱塩など幅広い分野の適用が可能--などである。トラクテベル社は、現実社会の産業プロジェクトを通じてSMRのこのような価値を実証し、今後活用される複雑なエネルギー・システムの全側面を経験した企業として、建設プロジェクトの機会を世界中で模索していく。その一環として同社はすでに今年1月、エストニアのエネルギー企業が同国内で計画しているSMR建設に協力するため、フィンランドのフォータム社とともに協力覚書を締結している。(参照資料:トラクテベル社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 14 Dec 2020
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スウェーデンのバッテンフォール社、エストニアのSMR導入計画への協力を拡大
スウェーデンの電力大手バッテンフォール社は11月30日、エストニアの新興エネルギー企業「フェルミ・エネルギア社」が国内で進めている小型モジュール炉(SMR)導入計画への協力強化に向け、同社と基本合意書を交わしたと発表した。バッテンフォール社は過去数年間にわたり、SMR建設に向けたフェルミ社の実行可能性調査に参加してきた。近年世界では、ますますSMRへの期待が高まりつつあることから、バッテンフォール社は欧州でSMR建設イニシアチブを成功させたいとするフェルミ社への協力を今後さらに強化。具体的には、原子力発電所の建設や資金調達、発電所スタッフとSMR運転員の教育訓練を含む人的資源開発、サプライチェーン開発などで同社の経験を提供。個別の作業分野で一層調査を掘り下げていき、フェルミ社がSMR建設計画を申請しエストニア議会がこれを「原則決定」するまで支援を続ける考えである。バッテンフォール社はこの協力を通じて、SMR技術の成熟度や1基以上のSMRをエストニア国内で建設する可能性などを検証。同社以外にも、このイニシアチブには複数の欧州企業が参加しているため、「参加企業すべてが実用的なSMR技術についての洞察を深め、それぞれにとって貴重な経験となるようにしたい」と述べた。バッテンフォール社によると、発電をオイル・シェールなどの化石燃料に依存するエストニアは、EU加盟国のなかでもkWh当たりのCO2排出量が最も多い。これに対してスウェーデンは、水力と原子力、および風力と太陽光を組み合わせた電力供給により、化石燃料による発電はほとんどゼロ。世界の中で排出量が最も低い国の一つであり、こうした事実がエストニアに協力する最大の背景になっていると説明した。一方のフェルミ社は、第4世代炉の導入を目的に、エストニア原子力産業界でSMR開発/建設を支持する専門家らが立ち上げた企業。2030年代初頭にも、欧州連合(EU)域内で初のSMR建設を国内で目指している。EUとしては、2025年末までに同国を含むバルト三国およびポーランドを旧ソ連の統合電力システムから切り離し、欧州24か国が共同管理する「大陸欧州送電網」に統合する方針。しかし、これらの地域がロシアからの電力輸入を停止する期限が迫っているため、フェルミ社はSMRの形で原子力発電を国内に導入し、EUが掲げる「2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化」の目標達成に貢献したいとしている。フェルミ社のK.カレメッツCEOは、「SMRの高度な安全性とシンプルな設計、資本コストの低さは、エストニアにおける原子力導入を現実的なオプションにした」と指摘。このことは同国政府も認識しており、原子力の導入影響を評価するため、すでに国家作業グループの設置を決めた。同グループは年内にも初会合を開催して、来る2年間に行う作業の計画を作成。諸外国の専門家の支援も得ながら、エストニアの確実なエネルギー供給保証にとり原子力発電の導入が適切であるか分析する。同社はまた、これまでに実施した調査結果に基づき、エストニア国内の2つの自治体とSMRの受け入れ条件に関する協議を正式に開始した。首尾よく進展すれば、自治体は政府の正式な選定プロセスの下で「国家指定国土形成計画(NDSP)」に組み込まれ、適切なサイトの選定に向けて戦略的環境影響声明書(EIS)などが作成される。エストニアのSMR導入計画には、すでにフィンランドの国営電気事業者フォータム社やベルギーの大手エンジニアリング・コンサルティング企業トラクテベル・エンジー社が協力中。このほかフェルミ社は、米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社や英国のモルテックス・エナジー社などとも協力覚書を締結しており、それぞれが開発したSMRの建設可能性を探るとしている。(参照資料:バッテンフォール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 03 Dec 2020
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経団連が「。新成長戦略」発表、新型炉開発も提言
日本経済団体連合会は11月9日、2030年に向けて(1)DX(5月に発表したデジタル技術に関する提言)を通じた新たな成長、(2)働き方の改革、(3)地方創生、(4)国際経済秩序の再構築、(5)グリーン成長の実現――を柱に新政権とともに推進すべき施策を提言する成長戦略を発表した。同戦略では、「地球環境の持続可能性と豊かな生活が両立する社会」を未来像の一つとして標榜。新政権の目指している「2050年カーボンニュートラル」(CO2排出実質ゼロ)の実現に関しては、既存の取組では力不足と指摘。脱炭素社会を目指したイノベーションを一層加速化すべく、革新的技術の開発・普及を産業政策の中軸と位置付けた上で、次世代蓄電池導入などの国家プロジェクトを立ち上げ、産学官総力を挙げた取組が進むよう長期的な国費投入を求めている。原子力についても、「欠くことのできない手段」と、重要性を改めて示した上で、継続的な活用に向けて、安全性向上の取組や再稼働の推進とともに、2030年までの建設着手を目指し新型炉(SMR、高温ガス炉、核融合炉など)の開発を国家プロジェクトとして進めることを提言。一方で、再稼働が進まぬ状況下、建設・運転・保守を支える技術とノウハウの継承が喫緊の課題となっていることを強調。また、原子力の必要性に関し国が前面に立ち正面から論じるべきとも述べている。「。新成長戦略」と題する今回の提言について、経団連の中西宏明会長は、序文の中で「これまでの成長戦略の路線に一旦終止符『。』を打ち、『新』しい戦略を示す意気込みを表している」と説明している。経団連による成長戦略発表に関し、梶山弘志経済産業相は、11月10日の閣議後記者会見で、原子力政策について、国民の信頼回復に努め既存のプラントの再稼働を進める重要性を改めて述べた上で、「現時点では新増設・リプレースは想定していない」と、政府の方針に変わりはないことを明言。また、「2050年カーボンニュートラル」実現に向けては、「再生可能エネルギーのみならず、原子力を含め、あらゆる選択肢を追求し使えるものは最大限活用することが重要」として、エネルギー政策を所管する経産省が主導し着実に議論していく姿勢を示した。
- 10 Nov 2020
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マイケル・W・レンチェック ブルース・パワー社 社長兼CEO
原子力でスモッグが劇的に改善──カナダでは原子力に対して世論が好意的だ。ブルース・パワー社ではオンタリオ州全体を対象に、これまで多くの世論調査を実施してきました。特に知りたいのは、既存原子力発電プラントのリプレースや運転期間延長についての反応です。調査結果により、原子力に対する支持は常に8割程度あることが分かっています。原子力への支持率が高い理由としてはいくつかの要因があります。原子力はクリーンで、供給安定性が高く、安全であり、そしてオンタリオ州の州民に手頃な価格のエネルギーを提供しているからです。中でも環境面でのベネフィットは大きいでしょう。2013年に、オンタリオ州政府は州内の石炭火力発電プラントを廃止し、私たちは2基の原子炉を再稼働させました。いずれも、1990年代後半にオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社や旧オンタリオハイドロ(OH)社などの財政難により、休止させていたプラントです。石炭火力の全廃によって、トロントの大気汚染は劇的に改善されました。2005年ごろには、年間最大80日間の「スモッグ日」が記録されていました。ご存知ないでしょうが「スモッグ日」とは、喘息患者の場合、呼吸困難になる可能性があり外出できなくなるぐらいヒドいものです。しかしブルース原子力発電所が再稼働したため、2015年から2019年の間に、スモッグは数日単位ではなく数時間単位で測定するまでに減少しました。原子力が大気汚染の浄化に、多大な貢献をしたのです。オンタリオ州は脱炭素化の世界的リーダーとして、気候変動の対策を取ってきました。電力部門では一般的に、脱炭素化の定義は1MWh(1000kWh)当たりの炭素排出量が50g未満であると考えられています。「脱炭素のリーダー」を自称しているドイツは、(1MWh当たり)約500gです。同じく「脱炭素のリーダー」とみなされている米国カリフォルニア州は約250gであり、それに対してここオンタリオ州はわずか45gなのです。つまりオンタリオ州はすでにかなり脱炭素化されており、それを手頃な価格で実現しています。オンタリオ州の一般家庭の電気料金は、1kWh当たり12.5カナダ・セント※ですからね。米カリフォルニア州の場合は20カナダ・セント以上ですし、ドイツはそれよりはるかに高いでしょう。これはオンタリオ州のエネルギーミックスのおかげです。オンタリオ州のエネルギーミックスは原子力が60%、水力発電は25%、再生可能エネルギーは7%です。※日本のおよそ半額程度。オンタリオ州では、再生可能エネルギーに対する税制上の補助金がありません。ですので、納税者からの支援は受けていませんが、電気料金にコストが直接反映されます。オンタリオ州の電気料金を管理するオンタリオ・エネルギー委員会によると、電源別コストは、太陽光が1kWh当たり48カナダ・セント、風力が15カナダ・セント、天然ガスが13カナダ・セント、原子力が7.5カナダ・セント、水力が6カナダ・セントです。オンタリオ州の電気料金がリーズナブルなのは、水力発電と原子力のおかげです。そしてこの組み合わせのおかげで、私たちは脱炭素化だけでなく気候変動にも取り組む最高のポジションにいるのです。ブルース・パワー社は再生可能エネルギーにも注力しており、風力発電プラントを先ごろ完成させたばかりです。風力発電とベースロード電源(原子力)の組み合わせは、非常にうまく機能していると考えています。それでも、すべてのエネルギー源が必要だという観点から、責任を持って対応しなければなりません。すべての人にとって安全で、クリーンで、供給安定性が高く、手頃な価格の電力を提供することが使命です。原子力発電所が「がん治療」に貢献──原子力の有用性をもっとアピールしたい。原子力産業は、世界屈指の安全産業と言えます。たとえ汚染を発生させたとしても非常に少ない量です。たとえば、ブルース・パワー社の原子力発電所で発生したすべての物質は、サイト内でキャニスタなどで管理されています。他の業界では考えられないことでしょう。他業界では自社製品や副産物が、それこそそこら中にほったらかしです。プラスチックは海にも、道路沿いにも捨てられています。自動車の排気ガスは世界中でスモッグを発生させ、二酸化炭素を排出しています。原子力はそんなことがありません。今後そういうストーリーを強調していこうと考えています。ブルース原子力発電所ブルース・パワー社が生産している医療用アイソトープは、人命を毎日救っています。こうした側面が社会であまりにも過小評価されていますよね。実は、ブルース原子力発電所で生産されているコバルト60は、世界中の使用済み医療器具の4割を消毒しているんです。あなたが世界のどこで病院や歯科医院にかかっても、そこで使用された医療器具を消毒するコバルト60は、オンタリオ州南西部のブルース原子力発電所で生産された可能性が高いということです(笑)OPG社のピッカリング原子力発電所でもコバルト60を生産しているまた、脳腫瘍の新しい治療法も開発しています。ブルース・パワー社では、メスを使わずに脳腫瘍を攻撃する「ガンマナイフ」と呼ばれる装置に力を入れています。最先端の生産システムを導入し、これまでにはなかった規模でアイソトープを大量生産できるよう準備を進めています。医療分野ではこれまで、がん治療に有効なアイソトープを特定するところまできていますが、肝心のアイソトープが量産出来ませんでした。量産できれば一般の患者さんでも手頃な費用でこの最先端治療を受けることができるでしょう。私たちはそうした治療が可能になるよう、量産体制を整えつつあります。裕福な患者さんだけでなく、すべての人のための治療になるのです。うまくいけば2021年か2022年ごろに、新しい生産システムが導入されます。ブルース原子力発電所OPG社のピッカリング原子力発電所でもコバルト60を生産している──医療分野に進出する契機は何だったのか?そもそもカナダは歴史的にも、医療用アイソトープ生産の最先端を走っていました。おぼえていらっしゃるか分かりませんが、数年前にチョークリバー研究所の原子炉「NRU」に問題が起き※、モリブデン99の生産が停止されたことがありました。これが国際的な供給不足を引き起こしてしまいました。ちょっと考えてみてください。もしもあなたが治療を必要としている患者で、アイソトープの在庫が底をついているために突然治療を受けられなくなったらどうでしょうか? ブルース・パワー社はそうした事情を鑑み、医療分野に進出することにしました。※2009年、同研究所のNRU炉(熱出力135MW、1957年初臨界)がトラブルで運転を停止し、モリブデン99の供給が世界的に停止した。核医学検査に使うアイソトープのなかでもっとも多く使われているのがテクネチウム99だが、その原料となる親核種がモリブデン99だった。そもそもNRUは老朽化しており、2016年に閉鎖することになっていたので、ブルース原子力発電所の設備に改良を加え、今ではNRU炉に替わってブルース発電所が、これらのアイソトープを生産できるようになりました。もっと多くのアイソトープを作る余裕がありますので、今後も市場の動向を見ながら、ニーズがあれば率先してそのニーズを満たすように努力していくつもりです。ブルース3号機では改修プロジェクトが進行中だブルース3号機では改修プロジェクトが進行中だ 「原子力が安全であることを 肌で感じています」回答者キンカーディン市長アン・イーディー私たちは五大湖の一つであるヒューロン湖沿いのコミュニティであり、原子力発電所にとっては理想的な立地点です。1970年代にブルースAとブルースBが着工され続々と運転を開始しました。今では世界最大の(稼働中の)原子力発電所です。私たち自治体はホスト・コミュニティとして、原子力を誇りに思い、原子力の未来を信じています。クリーンなエネルギーである原子力は、オンタリオ州の約3分の1の電力を供給しているだけでなく、世界中に医療用アイソトープを供給しているのです。この地域が初めて入植者のために開放されてから、私たちの祖先がイギリスとアイルランドから渡ってきて農民になりました。私たちはヒューロン湖が大好きです。環境面での最大の関心事は、湖が健全かどうかなんです。ですから、私がコミュニティの代表になったとき(最初は市議として、次に副市長として、最後に市長として)、私は原子力に関するすべてのことを知りたくなりました。いいことも、悪いことも、全て知りたかったのです。今、私は原子力の強力なサポーターです(笑)原子力のおかげで、地元のオンタリオ州だけでなく、全世界的にスモッグの日数が減っていると思います。アイソトープという(がん治療の)解決策も提供されています。他にもSMRがあります。これは非常にワクワクする技術です。また、気候変動との闘いにおいて原子力が果たす役割も忘れてはなりません。私はこれまで何度もCNSCの公聴会へ足を運んだり、原子力発電所の見学会に参加してきましたが、カナダの原子力安全レベルは非常に高いものです。他業界は原子力の安全文化から学ぶところが実に多いと思います。私は農場で育ち、毎日の仕事を無事に終わらせることが主な関心でした。私たちは農業の仕事こそが安全だと思っていましたが、原子力と比較したら、農業その他の業界は安全性という点では原子力の足元にも及びません。原子力から多くのことを学べると思います。キンカーディンの夕陽私自身はこのキンカーディンで一生を過ごしてきましたし、原子力が安全であることを肌で感じています。キンカーディンに遊びに来てください。原子力産業をしっかりとサポートしています。ブルース原子力発電所のスタッフの約3人に1人はキンカーディンの出身であり、残りは周辺地域からです。今は本当にワクワクする(刺激的な)時代です。経済的にも、私たちは非常に恵まれています。原子力発電所の運転期間を延長させるための改修作業のために、大勢の人々がやってきていますからね(笑)キンカーディンの夕陽事業者から見た許認可体制──カナダはスムーズな許認可体制で有名だ。規制当局であるカナダ原子力安全委員会(CNSC)は、何十年もの間、現在に至るまで、世界的には規制分野のリーダー的存在であると思います。CNSCの行うプロセスは、非常にオープンであると同時に、科学的事実に基づいていると言えます。そして、CNSCは政治と独立した規制当局であるため、業界の見解、一般世論、科学者の意見、他の政府機関の意見などを考慮に入れて決定や結論を導き出しています。しかし同時にCNSCは、安全に基づいている機関であるので、必ずしも当時の政治的・経済的な雰囲気に左右されません。そのおかげで現在誇っている世界的評判が確立できたのでしょう。CNSCのルミナ・ヴェルシ委員長は、IAEAの原子力安全基準の策定担当にも就任しました。これは、彼女の属しているCNSC、そしてCNSCが維持している水準が高く評価された成果だと思います。SMRが原子力業界だけでなく世界を変える──カナダは、SMRにかなり力を入れている。その背景やモチベーションは何か?気候変動対策として、他のクリーンエネルギーに多大の資金が投資されているにもかかわらず、それに見合うほどの進歩がないことは明らかでしょう。世界中で数兆ドルの投資が行われてから、今年のCO2排出量はようやく横ばいになりましたが、それまでの過去数年間は増加する一方でした。また、各国政府による安価な石炭火力発電所の建設の動きが見られ、CO2排出削減をなおさら困難にしています。X-エナジー社の「Xe-100」設計 ©X-energy日本の状況は大変遺憾なことです。CO2排出量の削減に真剣に取り組むなら、原子力こそが一定の役割を果たさなければならないと考えています。誰もがクリーンで手頃な価格で供給安定性の高い電気を必要としています。SMRは、より多くの国が利用できる、原子力分野での技術革新だと思います。また、既存の原子力プラントとは本質的な違いがあるため、各国はSMRによって原子力発電を容易に導入できるようになるのです。X-エナジー社の「Xe-100」設計「BWRX-300」の断面図現在稼働している原子炉、そして現在導入している様々な技術革新は、10年前の状況とは大きく異なっているではありませんか。今後SMRの技術革新が進むにつれて、世界中にあらゆるクリーン・エネルギーの可能性・機会が提供されるだろうと思います。「BWRX-300」の断面図©GE パワー社──SMR開発に必要な資金はどうやって確保を?ご存知のように、SMRの新設計には多くのベンチャーキャピタルが関心を寄せています。環境問題と気候変動は現実のものであり、高度な原子炉設計などの技術的ソリューションが重要な変化をもたらすと考えられています。技術開発へ多くの投資家が出資しています。原子力が一つのクリーンエネルギーとして認められれば、クリーンエネルギーやグリーンを対象とした融資を受けられるようになります。SMRなどの小型原子炉を支援/推進し、世界に革新をもたらすのです。それによって世界が直面しているさまざまな環境問題に対処する、より多くのドアが開かれるでしょう。奥はジョン・ピーバース広報部長奥はジョン・ピーバース広報部長──SMRのコスト、特に発電コストは、他電源と競合できるか?まだわかりません。ブルース・パワー社は現在、SMRを検討しながらそれを見極めようとしています。オンタリオ州は、連邦政府から1トンあたり約50ドルの炭素税が課せられています。再生可能エネルギーなどのクリーンエネルギーは、補助金の対象になっていません。オンタリオ州政府委員会は、消費者に課される料金を次のように試算しています。太陽光は1kWhあたり約48カナダ・セント、風力は同約15カナダ・セント、ガスも同約15カナダ・セント、原子力は同約7.5カナダ・セント、水力発電は同約6カナダ・セントです。もしこの中で、特定の電源を支援するための税補助が導入されたら、市場が歪んでしまうと私は思います。政治家は補助金で敗者と勝者を選ぼうとしますが、どうしても市場の歪みが生じる傾向があると思っています。しかし次世代炉を設計しているベンチャー企業にとって、補助金のあるなしは、設計の一部として検討しなければならないほど重要な事項でしょう。電気を手頃な価格で維持するために、一定のコストに合わせて設計しなければならないからです。「SMR-160」の完成予想図世界中から優秀な人材を原子力業界へ──SMR以外に十分な規模または大きさの原子力プロジェクトはあるか?ええ、カナダでは、CANDU炉がもう1基建つ可能性があります。ここオンタリオ州では、電力の余剰があり、数年間は現状のままで順調だと思いますが、今後、きっともう1基のCANDU炉を検討するでしょう。CANDU炉の出力は約80万~90万kWですが、SMRは10万~30万kW程度、さらに小型なマイクロ原子炉は0.5万~5万kW程度です。ですから、幅広い需要に対応が可能であり、CANDU炉が除外されているわけではありません。また今後も既存炉の運転期間延長は続くでしょう。カナダではほとんどの既存炉が運転期間を延長しています。OPG社のダーリントン原子力発電所(CANDU×4基)では、運転期間延長へ向けた作業が進行中ですし、ブルース・パワー社でも同様の運転期間延長へ向けたプログラムを実施しています。──CANDU炉の運転期間延長は、経済性が高いのか?経済的には非常に効果的です。だからこそ実施しています。オンタリオ州政府の会計検査院が2018年に、原子力反対派からの依頼を受けて実施した調査では、オンタリオ州で必要な電力を効果的かつ手頃な価格でクリーンに提供できる技術は、原子力のほかにない、と結論付けています。──多くの企業がSMR開発でシノギを削っている。必要な人材をどのように確保するのか?カナダの大学は数多くの優秀な若いエンジニアを輩出しており、SMR分野には多くのニューカマーが参入し、アイデアを競っています。今はエキサイティングな時代で、原子力分野に世界中から最も優秀な人材を引き入れるよう、数多くの機会が提供されています。原子力業界に入ってくる新しい人材は、ただモノを作るということだけではなく、環境・社会を大きく改善していくことになるのです。ミレニアル世代やこれから学校に入ろうとしている子供たちは、そのことを十分にわかっていると思います。彼らは世界に有意義な変化をもたらすことを望んでおり、原子力発電は彼らに革新と創造をする機会を与えています。同時に、彼ら自身のキャリア形成にも効果的に作用するでしょう。──カナダの大学と原子力産業は、良好な関係が維持されているか?運転期間延長プログラムの実施に伴い、現在新規採用を行っていますが、人事担当副社長によると、ブルース・パワー社に過去3年間で41,000名の応募が殺到しているそうです。学生にとって何が魅力なのか調査させたところ、それは学生が「自らのスキルと才能を生かして世界に変化をもたらしたい」と考えていることでした。なおかつ高所得ですしね(笑)ブルース・パワー社は従業員にとって、毎日仕事に行くことができ、学生ローンがあるならばそれを完済するのに十分な収入があり、子供を育て、快適で安全な生活が確保できる場所です。同時に、世の中の人々の生活を改善していることも大きな魅力なのです。
- 29 Oct 2020
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加OPG社、SMR建設に向けベンダー3社と協力
カナダ・オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は10月6日、同州内で小型モジュール炉(SMR)を建設する道を拓くため、北米の有力なSMRデベロッパー3社と設計・エンジニアリング作業を共同で進めていると発表した。3社のうち、カナダを本拠地とするテレストリアル・エナジー社は、第4世代の革新的原子炉技術として電気出力19.5万kW、熱出力40万kWの小型一体型溶融塩炉(IMSR)を開発中。また、米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は、受動的安全システムなどの画期的な技術を採用した電気出力30万kWの軽水炉型SMR「BWRX-300」を、同じく米国のX-エナジー社は小型のペブルベッド式高温ガス炉(HTR)「Xe-100」(熱出力20万kW、電気出力7.5万kW)を開発している。一方のOPG社はカナダで稼働する全19基の商業炉のうち、オンタリオ州内に立地する18基を所有しており、これらの原子炉と再生可能エネルギーの活用により、同州ではすでに2014年に州内の石炭火力発電所の全廃に成功した。同社のK.ハートウィック社長兼CEOは、「CO2を排出しない原子力技術の開発で当社は50年以上にわたる経験を活用中。3社との協力では、その他のSMR計画と合わせて当社がSMR利用の世界的リーダーになることを実証したい」と述べた。同社は今回の計画の他に、遠隔地のエネルギー需要を満たすための支援として、カナダのグローバル・ファースト・パワー社との協力により、米国のウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)が開発した第4世代の小型モジュール式高温ガス炉「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」をカナダ原子力研究所内で建設・所有・運転することを計画している。これらのSMRはオンタリオ州の経済を再活性化する一助となるだけでなく、地球温暖化の防止目的で同州とカナダ連邦政府が目指しているCO2排出量ゼロの電力供給にも役立つとした。OGP社はこの関連で、昨年12月にオンタリオ州とニューブランズウィック州、およびサスカチュワン州の3州が革新的技術を用いた多目的のSMRをそれぞれの州内で開発・建設するため、協力覚書を締結した事実に言及。今年8月には、同覚書にアルバータ州が新たに加わることになった。OPG社は近年、オンタリオ州内でのSMR建設に向けて適正評価をその他の大手電力企業と共同で実施しており、その結果からその他の州においてもSMRを建設する可能性が拓かれる。このことは、カナダが優先順位の高い政策として、次世代のクリーン・エネルギー技術を開発・建設するというアプローチとも合致するとしている。同社によると、オンタリオ州のSMR開発は州内の既存の原子力サプライ・チェーンをフルに活かすことになるほか、他の州においても石炭火力から脱却することに繋がる。また、エネルギー集約型産業に代替エネルギーのオプションが提供され、カナダにおける雇用の促進と技術革新の進展にも貢献。温室効果ガスの排出量が経済的に持続可能な形で大幅に削減されるため、カナダの電力網では化石燃料からCO2排出量ゼロの電源への移行が進むと強調している。(参照資料:OPG社、GEH社、テレストリアル・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 07 Oct 2020
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米NRC、ニュースケール社製SMRに「標準設計承認」発給
米原子力規制委員会(NRC)は9月29日付けの連邦官報で、ニュースケール・パワー社製の小型モジュール炉(SMR)設計に対し、同月11日付けで「標準設計承認(SDA)」を発給していたと発表した。これにより同設計はNRCの安全・規制要件をすべて満たした米国初のSMR設計となり、建設・運転一括認可(COL)および各種の申請書への記載が可能になった。同設計の初号機については、ユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)がエネルギー省(DOE)のアイダホ国立研究所内で建設することを予定しており、同計画は2029年に最初のモジュールの運転開始を目指して大きく動き出す。ニュースケール社は2016年12月末日にSMR設計としては初めて、同設計の設計認証(DC)審査を申請しており、NRCは翌2017年3月にこの申請を受理。その後42か月にわたった同設計の技術審査を終えて、NRCスタッフは今年8月末に最終安全評価報告書(FSER)を発行していた。今回のSDA発給は、DC審査における技術審査とFSER発行が完了したことにより、当該設計が技術的に受け入れ可能とNRCスタッフが判断したことを意味している。委員会としての全面的な認証を得るには認証規則の制定とNRC委員による承認が必要で、NRCは現在、同規則の制定準備を進めている。来年にもニュースケール社製の電気出力各5万kWのモジュールに対し、DCが発給されると見られている。ニュースケール社のSMRはモジュール統合型のPWRで、このモジュールを12基連結することで電気出力を最大60万kWまで拡大することができる。同社によれば、同設計は固有の安全性能により異常な状況下で原子炉を自動停止し、人の介入や追加の注水、外部からの電力供給なしで原子炉の冷却が可能である。ニュースケール社はまた、2018年6月に同モジュールの出力を20%増強して6万kWとすることが可能になったと発表した。これにより12モジュールの合計出力は72万kWに拡大、同社は6万kW版の「ニュースケール720」について、2021年(暦年)の第4四半期にもNRCにSDA申請することを計画している。なお、現地の報道によると、UAMPSに所属するユタ州内の市町村のうち、主要都市であるローガン市とレヒ市の両市議会が8月25日までに同SMRの建設プロジェクトから撤退することを決議した。同プロジェクトに遅れが生じ、コスト超過などの財政リスクが発生することを懸念したと見られている。(参照資料:9月29日付け米連邦官報、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 30 Sep 2020
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ニュースケール社製SMR、設計認証取得に向け米規制委の技術審査をパス
米国の原子力規制委員会(NRC)は8月28日、ニュースケール・パワー社製の小型モジュール炉(SMR)設計についての設計認証(DC)審査の最終(第6)段階を終え、安全評価報告書の最終版(FSER)を発行したと発表した。同設計はSMRとしては唯一、NRCのDC審査を受けていたもので、DCが発給されればNRCの安全・規制要件をすべて満たした米国標準設計の1つとなり、エネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)敷地内における初号機の建設・運転計画が具体的に動き出すことになる。大手のエンジニアリング企業フルアー社の出資協力を受け、ニュースケール社が開発したSMRは出力5万kWのモジュール統合型PWR。このモジュールを12基連結すれば、出力を最大60万kWまで増強できる。同社によればまた、このSMRは固有の安全性を備えているため、異常な状況下でも原子炉が自動停止し、人の介入や追加の注水および外部からの電力供給なしで冷却することが可能である。ニュースケール社は2016年12月末日に同設計のDC審査をNRCに申請し、NRCは翌2017年3月にこの申請を受理した後、今回42か月間にわたった同設計の技術審査を完了した。NRCのスタッフは、「運転システム内の対流や重力を活用したこの設計では受動的安全機能により、緊急の状況下においても原子炉を安全に停止させ、そのままの状態で維持することが可能」と確認。今後は同設計の認証に向けてFSERをNRC委員に提出し、設計規則の制定準備を進めることになる。同SMRの初号機建設計画はユタ州市町村公社(UAMPS)が進めているもので、DOEは2016年2月にINLの敷地を建設用地として使用することを許可した。現地の報道によると、UAMPSは2029年6月にも同サイトで最初のモジュールの稼働を開始すると表明。運転については、西海岸ワシントン州の電力企業エナジー・ノースウエスト社が担当することになっている。実際の建設に際しては、通常の商業炉と同じく建設・運転一括認可(COL)の取得が必要で、同設計がNRCから全面的に認証された場合、UAMPSその他の電気事業者はCOL申請書にニュースケール社製SMRを明記。NRCのDC認証は発給日から15年間有効であり、追加で10年~15年間更新することが可能である。なお、ニュースケール社は2022年にも、同設計の出力を増強した6万kWモジュール版で改めて標準設計承認を申請する方針だ。NRCが5万kWモジュール版のDC審査を進めている最中の2018年6月、ニュースケール社は「固有の安全性に影響を及ぼすことなく、経済面と性能面の合理化に成功した」と発表。6万kW版のモジュールを12基連結することで、合計出力は72万kWまで拡大が可能になるとしていた。同社製SMRについては、すでにヨルダンやルーマニア、チェコが国内で建設することに関心を表明。ニュースケール社は実行可能性調査等の実施に向けて、それぞれの国の担当組織と了解覚書を交わしている。(参照資料:NRC、ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 01 Sep 2020
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ルミナ・ヴェルシ カナダ原子力安全委員会 委員長
事業者を束縛しない──カナダの許認可体制はスムーズなことで有名だ。日本が遅すぎるのかもしれないが、ポイントは?カナダ原子力安全委員会(CNSC)は何十年もの歴史ある規制当局です。CNSCが卓越しているのは、規制の枠組みがいわゆるテクノロジー・ニュートラルであることです。柔軟性があり、すべてパフォーマンスに基づいて規制をします。ああしろこうしろと命令的なやり方はしません。事業者に一方的に指示するのでなく、「目指すべき目標がこれですが、どうやって実現するか示してください」とだけ言うのです。こうすることで、事業者は柔軟性を得てイノベーティブになり、自主的に新しいアイデアを思いつきます。我々は事業者を束縛しません。最近、国際的な規制審査団がカナダにやって来て、私たちの規制体制(枠組み)とプロセスを審査されました。その結果、「包括的で堅牢な規制体制」と高い評価をいただきました。CNSCが提供しているサービスでもう一つ非常に好評なのは、いわゆる「ベンダー設計審査」※と呼ばれる予備的設計評価サービスです。事業者が予め審査対象となる設計を私たちとシェアすることで、認可プロセスに入る前の段階から、その設計や技術に「致命的な欠陥(showstoppers)」がないかどうかを確認することができます。もちろんプロセスは非公式なものですが、それにより、CNSCはその設計をよりよく理解できるようになります。また、事業者も我々の条件・規制要件をより詳しく知ることができす。そして、致命的な欠陥があれば、それを早い段階で見つけることも出来ます。CNSCのもう一つユニークな点は、許認可の審査体制です。私はCNSCの委員長兼CEOであり、この組織のスタッフ約900人を統括していると同時に、委員会の議長でもあります。現在、委員は5人ですが、最大7人まで増員が可能です。すべての許認可決定、規制および規制文書の承認すべてがこの委員会によってなされ、すべての委員会の審議は一般公開されています。なぜなら、それは一般の人々が参加し、介入し、意見を共有できるオープン・フォーラムだからです。多くの人々の意見を取り入れているため、それが良質な情報に基づく意思決定につながります。※ベンダーの要請により実施される任意の評価サービスで、事業者が建設許可等の申請を実際に行う前に、当該設計がカナダの規制要件を満たしているか評価。実際の要件に照らしたレベルの高い同審査を通じて、設計上の問題点などを早い段階でフィードバックすることが可能になる。審査は第3段階まであり、「ARC-100」のほかに米ホルテック・インターナショナル社のSMR設計や、テレストリアル・エナジー社の小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)などが審査中となっている。リスクと便益のバランス──「規制者と被規制者とのやり取り」において、カナダは合理性・効率性においてトップクラスと聞いている。CNSCは無駄な質問をしないし、原子力事業者も無駄な書類は作らない。その根源的な理由はなんだろうか?なぜ、カナダは合理的に進められるのか?「合理性がある」というお褒めの言葉に、完全に同意していいのかわかりませんが、私たちはリスクに精通した規制当局として、常に合理性に基づいた形で判断を行います。ご存知かどうか分かりませんが、私たちが掛ける努力の度合いも、どれだけリスクがあるかにかかっています。低リスクの場合はそれほど時間をかけません。また、事業者に課している規制上の負担についても、リスクと便益の分析を試みています。我々は長い経験を持ち、良好な実績を持ち、他者から常に学び、改善を図っています。あなたのおっしゃる「合理的な意思決定」のことを、我々は「リスク情報に基づいた意思決定」と呼んでいます。まず、すべての人に意見を表現する機会を与え、それを基にして決定を下します。SMR開発をリード──カナダはSMRに大変力を入れているが、何がモチベーションとなっているのか?SMRの開発当事者ではなく、外から物事を見る規制当局者として話しますが、多くの海外諸国と同様に、カナダのクリーンエネルギーの目標は非常に野心的です。その目標だけでなく、パリ協定の目標も達成するために、原子力が大きな役割を果たさなければならない、果たし続けなければならないという認識があります。そして、SMRには多くの利点があります。カナダは広大な国で、ファーストネーションらのコミュニティーの多くは遠隔地にあり、ディーゼル発電に依存しています。SMRは彼らのそうしたディーゼル依存からの脱却に大いに貢献するのです。またカナダは非常に資源多消費型の国ですので、SMRは資源の有効利用にも役立ちます。同様に、出力が小さく柔軟な運転が可能でより安全なSMRは、送電系統においてもはるかに大きな役割を果たせるようになるでしょう。そのため、連邦政府の天然資源省(Natural Resources Canada)では様々なステイクホルダーを交えて検討を重ねた「SMRロードマップ」を策定し、SMRの登場・活用に備えています。カナダ企業が国内外でSMRを展開した場合に備え、我々規制当局も準備を整えています。規制当局としてどのように準備しているかというと、先ほど「ベンダー設計審査」についてお話しましたが、このプロセスが効果を上げているのです。現在、12種の異なるSMR設計を審査中です。すでにチョークリバー向けの15 MWのマイクロ原子炉※のために最初のサイト準備許可(LTPS)申請を受け取っており、今年後半には、もう1件の、より出力の大きいSMRのLTPSが申請されるだろうと予想しています。※USNC社が開発した第4世代の小型モジュール式(高温ガス)炉「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」のこと。カナダ原子力研究所(CNL)のチョークリバー・サイトに建設予定だ。もはやSMRの勢いが増していることは誰の目にも明らかです。カナダの3つの州(オンタリオ州、ニューブランズウィック州、サスカチュワン州)では最近、SMRの開発および建設を目指して協力していくことを発表しています。私自身の成果の一つは、昨年、米国原子力規制委員会のスビニッキ委員長とMOUやMOCに署名し、SMRの設計審査に関してより緊密に協力することに合意したことです。両国がSMR設計の評価結果や研究結果を共有し、それによって互いに学び、リソースを共有するだけでなく、審査をより効率的に進め、より良い判断を通して安全性を改善することができます。このカナダと米国の取り組みを出発点に、他国の規制当局を広く迎え入れ、国際的な規制要件の統一に移行できればいいと考えています。それは、標準設計が各国に展開されるのを促進するだけでなく、SMRに大きな関心を示している新興国にとっても、先進規制当局の専門知見から、確実な便益を得られるからです。たとえば、米国、カナダ、日本などの規制当局が合意した規制要件であれば、新興国はそれに依存できますよね。こうして世界中のSMRの安全性を合理的に高めることができるでしょう。トリチウムに精通──日本では福島第一サイトでのトリチウムの処理に苦しんでいる。カナダでは重水炉からかなりの量のトリチウムが発生すると思うが、どのように管理しているのか?CANDU炉は、重水を減速材としても冷却剤としても使用しています。したがって、トリチウムは、カナダのCANDU炉にとって非常に重要な役割を果たしています。私は保健物理学者になる以前は原子力発電所で働いていましたが、トリチウムは常に私たちにとってハザード(危険を引き起こす状況・物質)でした。そのため、カナダは長年にわたり、多くの技術(トリチウムを制御、測定、除去、監視する技術、必要な防護服など)を開発してきました。トリチウム量が蓄積すると重水ごとトリチウム除去設備へ送られ、トリチウムガスを抽出します。そしてトリチウムは廃棄物としてキャニスターに保管されます。全工程を通じてモニタリングされており、徹底的に制御されています。規制当局としても事業者とは別にモニタリング(環境モニタリング)を行っており、事業者の報告と照らし合わせています。他にもトリチウムを監視する州および連邦当局があります。国民は我々のトリチウム管理に信頼を寄せているのです。 福島第一よりも多いトリチウム?カナダでは資源!?回答者オンタリオ工科大学グレン・ハーベル教授トリチウムの発生源は?CANDU炉では、重水を用いて中性子を減速しています。トリチウムは主にその過程で発生します。トリチウム量を最小限に抑えるために、トリチウム除去設備を用意しています。そこでは重水とともにトリチウムを取り入れ、トリチウムを気化させて抽出し、重水を再び原子炉内へ循環させています。抽出されたトリチウムはどこへ?抽出されたトリチウムはさまざまな形態で保管されます(それこそ種類もさまざまです!)。企業に販売されるケースもあります。ご存知の通りトリチウムは自発光塗料として利用されており、出口用の看板等で需要がありますから。しかし多くの場合は、トリチウムを含んだ重水をそのまま保管し、半減期を待ちます。トリチウムの半減期は13年程度ですので、大した懸念はありません。シールドで遮蔽された部屋やタンクに保管されていますし、人に触れるような場所ではないからです。ですから、我々はトリチウムのことをそれほど心配しておりません。最大の問題はプラントを廃炉にして永久閉鎖するときです。それまで保管していたトリチウムをそのまま保管できればよいのですが、早急な処理を迫られた場合は対応が難しくなりますね。日本ではトリチウムの抽出が困難とされている抽出プロセスは大変コストが掛かりますので、世界でも現実に実施しているところは少ないでしょう。カナダではダーリントン原子力発電所に優秀なトリチウム除去設備があるので、容易なのです。日本では「ふげん」 ※ にトリチウム除去設備がありましたが小規模でした。現実的ではありませんね。お金をいくらかけてもいいならば話は別ですが(笑)※ふげん:日本の国家プロジェクトとして開発された新型転換炉。2003年3月に運転を終了し、廃止措置中。カナダのトリチウム保管量はかなり多く、福島第一より多いとのことだが?カナダのトリチウムは、多くがトリチウム重水の状態です。福島第一のトリチウム総量は860兆ベクレルですか?そのまま比較はできませんが数字だけを並べると、ダーリントン原子力発電所から2015年の1年間に放出された液体のトリチウム量だけでも241兆ベクレル※です。規制当局から定められた年間の放出限度(DRL)が5,300,000兆ベクレルですから、これでも規制値の0.004%にすぎません。※同年の気体のトリチウム放出量は、254兆ベクレル。「トリチウムは保管」という先ほどの話と矛盾するようだが?ご説明しましょう。それはカナダでは、河川や湖や海洋に、意図的にトリチウムを放出しているわけではないからです。日本のみなさんならばよくご存知でしょうが、トリチウムは水素ですから、完全に封じ込めることは大変困難です。意図的な放出はありませんが、漏洩は避けられません。繰り返しますがカナダのトリチウムは、トリチウム重水ですから、大部分は原子炉内に存在します。またドラム缶等に備蓄し、半減期を待っている状態のトリチウム重水もあります。トリチウム除去設備で処理され、ガス化してキャニスタ等に保管されるトリチウム重水はごくわずかです。ほとんどはトリチウム重水のまま残されています。それはトリチウムの市場規模が小さいからです。そして重水はバルブやシールを通して漏洩します。これは必ず起こります。移送過程で、ホースやポンプやバルブなどから、果てにはドラム缶からも漏洩します。これは防げません。以前も起こりましたが、これからも起こるでしょう。そのような制御不能なトリチウム放出に対処するために、CNSCがDRLという規制値を定めました。このDRLは、一般市民の線量限度である年間1ミリシーベルトを下回るように設定されており、設備や周辺環境の変化に応じて、各発電所毎に数字は異なります。もちろん数字は、都度アップデートされています。大事なことは漏洩した時にその影響を最小限度にとどめることです。違いますか?いずれは大気や海中に放出?規制当局の承認が必要ですが、放出も可能です。しかし期待されている一つの可能性は核融合プラントの実現です。これが実現すると、トリチウムが燃料となるわけですから、トリチウムの抽出設備が極めて重要となってきます。我々には大規模なトリチウム在庫があり、それが役に立ちます。もし(核融合プラントの)実現がない場合でも、おそらくトリチウムは保管して半減期を待ち、その後別の原子炉に再利用するか、分散するか、それらが将来の選択肢です。トリチウムは将来の資源?そうです。トリチウムは将来的に資源になりうるのです。トリチウム抽出の過程でアクシデント的に外部環境へ流出した、損失したトリチウム量は低く、気になる程度ではないのです。現地のコミュニティから反発は?ありませんよ(笑)アクセスを容易に──カナダでは原子力に対する世論の支持が高いと聞いた。日本では数多くの対策をし、安全基準を十二分にクリアしても、国民からさほど支持を得られていない。私をはじめCNSCの優先分野の一つは、規制当局としての我々に対する国民の信頼をどのように取り付け、強化するかです。強力かつ独立し有能な規制当局とみなされることは我々にとって望ましいことですし、原子力産業界にとっても良いことです。規制当局に対する信頼度について、世論調査も実施しています。国民が我々をどれだけよく知っているか、我々についてどう思うか、そして我々はどういうところを改善すればいいかなどを理解することが目的です。CNSCのウェブサイトでは、委員会に提示されているすべてのものを一般公開しています。国民は我々の情報(事業者にも情報提供するよう勧めていますが)に簡単かつスピーディーにアクセスできるようになることは、その信頼構築に大いに貢献しています。また、審査会合に誰でも参加できるように、非常にインフォーマルな形を取っています。公聴会に12歳の参加者が登場することもあります。我々はすべてを非常にアクセスしやすくしようとしています。そうすることによって、国民に安心を感じさせることができると思います。我々のもう一つの義務・任務は客観的な情報発信です。原子力産業界は非常に規制された業界です。我々はウェブサイトへの掲載や、出版物への掲載など、さまざまな媒体を通して、原子力産業界で起きていることを一般人に伝えようとしています。リスクはどこにあるか、どのように規制しているか、ということをです。こうした情報発信には常に改善の余地があり、我々は新しいツールや仕組みを常に模索しています。先ほど申し上げた世論調査もそうですが、我々の(コミュニケーションの)やり方を改善するためにいろいろな方法を試しているのです。広報は「中間層」を狙う──原子力反対派とどう対話すべきか?長いこと原子力業界に携わってきて、発見したことがあります。率直に言って、この世には決して心を変えない人がいるということです。もちろん必ずしも彼らに心を変えて欲しいというわけではありません。ただ、正しい情報を彼らに伝え、理解して欲しいだけです。それでもなかには決して受け入れない人々がいます。私はそうした(反対派に対して説明する)努力をしても無駄だと気づきました。十分な情報を検討した結果、態度を決めている人たちは、それが自らの判断なのであれば、それでOKだと思います。その一方で、賛成反対の両極端の間、真ん中にいる非常に大きな中間層が存在します。この中間層の人たちは何も知らないか、あるいはあまり信頼できない情報源に依存してますので、彼らを広報のターゲットにする必要があると思います。そのためにありとあらゆるコミュニケーション手法をとる必要があります。なお、CNSCをはじめ多くの世論調査の分析結果によると、原子力に関しては、女性のほうが男性より比較的支持が低い傾向があり、男性よりも情報源が少ないことが分かりました。また、多くの調査・研究が、女性が(男性ではなく)女性同士の方をより信頼する傾向があることを示しています。彼女たちが信頼しているのは、数多くの男性科学者ではなく、実際に原子力業界に入っている女性や、信頼できる情報源と見なしている女性なのです。そうしたことを踏まえ、工夫の余地はまだまだあります。これも規制当局としてのCNSCの任務の重要な一環です。そうそう、私たちが実施した世論調査で、とても大事なことが明らかになりました。実は、半数のカナダ人は、CNSCについて何も知らなかったのです(笑)
- 27 Aug 2020
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米X-エナジー社、開発中の小型高温ガス炉「Xe-100」でカナダのベンダー審査開始
米国のX-エナジー社は8月11日、同社が開発している小型のペブルベッド式高温ガス炉「Xe-100」について、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が提供する予備的設計評価(ベンダー設計審査)を開始したと発表した。このベンダー設計審査では建設・運転許可の取得に向けた正式な申請手続に先立ち、当該設計がカナダの規制要件を満たしているかCNSCがメーカー側の要請に基づいて評価する。法的に有効な設計認証や関係認可が得られるわけではないが、X-エナジー社は今回、カナダのパートナー企業やサプライチェーンとの協力により、同国でXe-100の建設準備を進めるには効率的と判断したもの。同設計の完成度の高さから、3段階で構成される同審査のフェーズ1と2が一まとめに実施される予定だが、審査に際してはカナダ国籍のKinectrics社がX-エナジー社を支援する。Kinectrics社は、カナダ電力部門の専門的知見やエンジニアリング・コンサルティングで100年以上の卓越した実績を誇っている。X-エナジー社はCNSCの先進的な審査を通じて、Xe-100設計がカナダの規制要件に適合していることを実証し、カナダでXe-100の許認可手続きを進める際に根本的な障害が全くないことを確認する方針。また、Xe-100設計のさらなる改善に向けて、貴重な初期フィードバックを得る考えである。同社によれば、リスク情報を活用したカナダの進歩的な規制枠組みと定評のあるサプライチェーンを組み合わせれば、カナダはXe-100初号機を建設する理想的な場所となり、その将来的な輸出に向けた連携関係も構築される。さらに、ベースロード運転や負荷追従運転が可能な同設計を使って、カナダはクリーン・エネルギーの比率を高めるという目標を達成しつつ、遠隔地域のコミュニティに十分な電力と高温の蒸気を提供、海水の脱塩や水素生産などにも活用できるとしている。 Xe-100は電気出力7.5万kWのSMRだが、これを4基連結することで出力は30万kWまで拡大が可能。X-エナジー社は同設計により、世界中で高まっているクリーン・エネルギーの需要に応えられると考えている。同設計はまた、燃料として3重被覆・粒子(TRISO)燃料を用いるため、同社は2025年までに商業規模のTRISO燃料製造加工工場「TRISO-X」を米国内で完成させる方針。この目標の達成に向けて、同社は米国のウラン濃縮企業セントラス・エナジー社や日本の原子燃料工業と協力する契約や覚書を締結している。また、ヨルダンがXe-100を2030年までに国内で4基建設することを希望しているため、同社は2019年11月にヨルダン原子力委員会と基本合意書を交わしている。(参照資料:X-エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 18 Aug 2020
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米USNC社のSMR開発に韓国原研と現代エンジニアリングが協力
韓国原子力研究院(KAERI)は8月3日、米国のウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)が進めている小型モジュール式高温ガス炉(HTGR)「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」の開発に協力するため、現代エンジニアリング社を加えた3者で7月3日に相互協力協定を締結したことを明らかにした。CO2を排出せずに電力とプロセス熱、および水素の効率的な生産が可能なMMRの開発で技術協力を促進し、国内外のMMR事業を効率的に推進できるよう協力の基盤を造成する考え。超小型炉に分類されるMMRの開発と建設のみならず、熱電併給が可能なHTGRと環境に優しい水素生産を目的とした超高温ガス炉(VHTR)の各技術の開発・利用について、今年7月から5年間にわたり共同作業を進めていく。米国内の報道ではまた、MMRを韓国に建設する可能性についても3者が連携して追求する方針だと伝えられている。今回の発表の中でKAERIは、2004年から韓国政府の原子力研究開発事業の一環としてHTGRベースの原子力水素生産技術を開発中であると説明。今回の相互協力協定を切っ掛けに、産業界との協力を通じて現在進めている研究開発事業を成功に導きたいと述べた。KAERIはまた、USNCが完了したMMRの概念設計活動に参加していたことから、現在進められている基本設計活動においても技術協力を継続中。KAERIの朴院長は、「2社との協力により、原子力技術開発だけでなくビジネス・モデルを共同開発し、海外市場に進出する足場を固めたい」との抱負を述べた。現代エンジニアリング社に関しては、今年3月に現代グループ内の複数企業が共同で大型建設機器用の水素燃料開発を開始した。同社自身も原子炉で水素と熱を生産する技術を開発中であり、MMRの実証炉建設に向けた基本設計活動にはKAERIとともに参加中となっている。USNCのMMRは熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWで、シリコン・カーバイドで層状に被覆されたウラン粒子を燃料に用いる第4世代の小型モジュール式HTGR。20年の運転期間中に燃料を交換する必要がなく、いかなる事故シナリオにおいても、物理的な対応なしですべての熱が受動的に環境中に放出されるという。カナダのエネルギー関係プロジェクト開発企業であるグローバル・ファースト・パワー(GFP)社は2019年3月、パートナー企業であるUSNC社のMMRをオンタリオ州のカナダ原子力研究所(CNL)チョークリバー・サイトで建設するため、SMRとしては初の「サイト準備許可(LTPS)」をカナダ原子力安全委員会に申請。現時点では環境影響評価が行われている。また、CNLは2017年4月に公表した今後10年間の「長期戦略」の中で、2026年までにチョークリバー・サイトでSMRを建設するという意欲的な目標を設定。2019年7月にはSMRの研究開発と建設を支援するコスト分担方式の研究開発イニシアチブ(CNRI)を設置しており、最初の支援対象として選定したUSNC社のMMRについては、今年2月に同社の子会社と協力協定を締結している。(参照資料:KAERIの発表資料(韓国語)、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 05 Aug 2020
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加サスカチュワン州政府、州内でのSMR建設に向け原子力事務局設置へ
カナダ中西部に位置するサスカチュワン州政府は6月24日、同州の原子力政策・プログラムの調整を図るため、環境省の気候変動・対応局内に原子力事務局を設置すると発表した。同局では、クリーン・エネルギー源である小型モジュール炉(SMR)を州内に建設するという戦略計画の策定と実施が最優先事項になるとしている。サスカチュワン州には今のところ原子力発電所は存在しないもののウラン資源が豊富であり、2018年に世界のウラン生産量国別ランキングでカナダを世界第2位に押し上げた。こうした背景から、同州は昨年11月に公表した2030年までの経済成長計画の中に、発電部門におけるCO2排出量の削減と無炭素発電技術であるSMRの開発方針を明記。州内のウラン資源を活用して、2030年代の半ばまでに初号機の完成を目指すとした。翌12月には、商業用原子力発電所を州内に擁するオンタリオ州、ニューブランズウィック州の両政府とSMRの開発・建設に向けて協力覚書を締結した。この中で3州は、「遠隔地域も含めたカナダ全土でSMRは経済面の潜在的可能性を引き出す一助になる」と明言。国内の主要発電業者に協力を求めてフィージビリティ報告書を作成し、2020年秋までにSMRの戦略的開発計画を策定する。今回の発表を行ったサスカチュワン州政府環境省のD.ダンカン大臣は、「SMRを開発してその恩恵を全面的に享受するには、複数のパートナーとの協力が不可欠だ」とコメント。SMRが内在する利点として、州内のウラン資源に経済的価値連鎖を付与できるほか雇用を促進、同州独自の気候変動対策策定にも寄与する点を挙げた。また、カナダでSMR開発が進展すれば経済・環境面の恩恵に加えて、安全で信頼性が高く価格競争力もあるクリーン・エネルギー源が同州に新たにもたらされると強調している。なお、カナダでは連邦政府もSMRの潜在的可能性に期待をかけており、2018年11月には天然資源省が「カナダにおけるSMR開発ロードマップ」を公表した。サスカチュワン州政府によると、カナダの全州および準州の電気事業者がこの構想への参加機会を模索しており、同州としてもSMRの利点を享受するためこれらとの協力を拡大していく考えである。(参照資料:サスカチュワン州政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 26 Jun 2020
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米規制委、オクロ社製SMRの建設・運転一括認可(COL)申請を受理
米原子力規制委員会(NRC)は6月15日、カリフォルニア州の原子炉開発企業オクロ(Oklo)社が今年3月に同社製の小型高速炉設計「オーロラ」(=完成予想図)について提出していた建設・運転一括認可(COL)の申請書を受理したと発表した。オクロ社は「先進的な原子炉は地球温暖化の防止対策としても重要なツールであり、そのための申請書が受け入れられたことは先進的原子力技術の商業化に向けたブレークスルーを意味する」と表明している。オクロ社による申請は非軽水炉型の先進的小型原子炉としては初のもので、米エネルギー省(DOE)はすでに昨年12月、「オーロラ」を傘下のアイダホ国立研究所(INL)敷地内で建設することを許可していた。同社は今のところCOLの発給に必要な設計認証(DC)審査を「オーロラ」で申請していないが、NRCは2016年から同社と認可申請前協議を行っており、許認可申請前のガイダンス提供や潜在的課題の事前の指摘などを通じて申請の準備作業を支援。申請書が受理されても最終的にNRCがCOLの発給を承認するとは限らないが、オクロ社としては2020年代初頭から半ばにかけてINLで初号機の着工を目指す考えである。「オーロラ」は電気出力0.15万kWのコンパクト設計で、熱も供給する。同炉では米国でこれまでに開発・実証されてきた先進的な金属燃料を使用するほか冷却水が不要であり、少なくとも20年間は燃料交換なしで熱と電気の供給を続けることができる。また、究極的には燃料をリサイクルしたり、放射性廃棄物からクリーン・エネルギーを取り出すことも可能。NRCの説明によれば、同炉の開発は安全確実な先進的原子炉の商業化という国益にかなうものであり、このことは先進的原子力技術改革への支援を促進する「原子力技術革新・規制最新化法(NEIMA)」の目的でもある。NRCは今後、審査の準備がし易い効率的な審査日程を同社に提示するため、審査の初期段階として同設計の安全面や主要設計部分の作業に集中する。また、COL発給の可否に関する公聴会への参加要項を近いうちに連邦官報に掲載する。COLの発給により影響を受ける可能性のある者や利害関係者として参加を希望する者は、連邦官報で告知された後60日以内に参加申請手続が必要である。なお、SMR関係の許認可手続としては、ニュースケール・パワー社が独自に開発した「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」について、NRCが2017年3月からDC審査を実施中。全6段階ある安全性関係の審査は、昨年12月時点で第4段階まで完了した。NPMの初号機も「オーロラ」と同様、INL敷地内での建設が予定されている。(参照資料:NRCの発表資料①、②、オクロ社の声明文、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 17 Jun 2020
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学術会議が安全と安心の関係をテーマにシンポ
日本学術会議は5月28日、「安心感等検討シンポジウム」を開催。同会議の工学システムに関する委員会が主催するもので、安全と安心の関係に焦点を当て、市民の安心の実現に向けた課題・対応について議論した。シンポジウムでは冒頭、2019年度に文化勲章を受章した数理工学者の甘利俊一氏(東京大学名誉教授/理化学研究所名誉研究員)が特別講演を行い、趣味の囲碁の話も交えながら自身の取り組んできた研究について紹介。今回のシンポジウムは、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、オンラインでの開催となり、チャット機能を通じた参加者との質疑応答では、人工知能が人間を超える「シンギュラリティ」に関する質問もあった。学術会議では毎年7月に多分野の学協会共催のもと「安全工学シンポジウム」を開催しているが、昨夏に「リスク共生社会の構築」を主張した野口和彦氏(横浜国立大学都市科学部教授)は、今回も「安心な社会の構築には、社会目的や他のリスクとの関係も含めて考える必要がある」と述べ、「社会総合リスク」を整理し、行政、企業、学界、市民の役割を改めて考えるべきと、議論に先鞭を付けた。続いて、モノづくりの視点から向殿政男氏(明治大学教授)が、安全目標と安心感の関係について松岡猛氏(宇都宮大学基盤教育センター非常勤講師)が講演。パネル討論に入りまず、電気学会から中川聡子氏(東京都市大学名誉教授)が発表。同氏は、2018年の北海道胆振東部地震による道内全域停電の教訓から、「事は起こるもの」としてのレジリエンスの視点で、4つの「R」、Robustness(頑強性)、Redundancy(多重化)、Rapidity(早期対応)、Resourcefulness(人材・投資の活用)の重要性を強調。「生活の安心感はインフラの確保」と述べ、道内に店舗展開するコンビニが、自動車からの給電によるレジ機能確保、ガス釜炊飯、重油の備蓄などにより、発災時にも95%が営業し市民生活を支えた好事例を紹介した。原子力安全研究協会会長の矢川元基氏は、タラゴナの考古遺産群として現存するローマ時代の水道橋のアーチ構造を図示し、「原理が自然で、フェールセーフ、ローテクだと、理解度・納得度が高く安心感が得られる」とした上で、小型モジュール炉(SMR)の自然循環による受動的安全システムをその一例としてあげた。さらに、「目で確かめられない」と人々の理解度・納得度は低くなるとして、放射線、溶接接合、新型コロナウイルスなどを例示。また、感性工学の立場から中央大学理工学部教授の庄司裕子氏は、安全・安心の問題と、親子間のギャップの類似性を述べた上で、「まず受け手の心を知ることで、信頼関係が回復し伝えたいことが伝わる」などと主張した。前半の講演では、辻佳子氏(東京大学環境安全研究センター教授)が、「課題解決のできる人材育成、社会実装」を図る実効的な安全教育の必要性を強調し、この他、発表者からはイノベーション、安全の定義、技術者への信頼、説明責任、マスコミの役割といった言葉があがった。これを受け参加者を交えた討論では、今後の教育のあり方や、「想定外」といった言葉の理解を巡り意見が交わされた。
- 29 May 2020
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米規制委、SMR等の緊急時対応要件策定に向け提案中の規則でパブコメ募集
米原子力規制委員会(NRC)は5月12日、小型モジュール炉(SMR)や非軽水炉型の新しい原子炉技術について、リスク情報やパフォーマンスに基づいた緊急時対応要件を策定するため、スタッフが提案中の規則(rule)と要件を実行する際のガイダンス案に対して一般からのコメントを7月27日までの期間に募集すると発表した。NRCはすでに数年前、SMRその他の新しい原子炉技術に関して将来実施することになる許認可手続きの検討を始めており、その際初めて、パフォーマンスに基づく緊急時対応策の可能性について検討を開始した。今回NRCスタッフが提案している規則に対しては、2016年6月にNRC委員がその制定計画を承認している。また2017年4月には、新たな規制要件を策定することになった規制上の論理的根拠を示した文書(規制根拠)について、NRCスタッフが案文をパブリック・コメントに付しており、同年11月に最終版を発行していた。今回の措置はこれらに続くもので、NRCは既存の緊急時対応プログラムが主に大型で軽水冷却型の原子炉を対象とする一方、提案中の規則と規制ガイダンス案は原子力施設の設計や安全研究の進展に対応し、SMRその他の最新原子炉技術の将来的な操業に向けた申請に取り組むものだと紹介。現行規制を修正してSMR等に対する緊急時対応の枠組みを代替選択肢として創出することを提案しているが、この新しい枠組みではリスク情報を活用するとともにパフォーマンスに基づいた技術包括的なアプローチを取る。一例として、放射性雲(プルーム)による外部被ばくの経路に関して緊急時計画区域(EPZ)の大きさを決定する際、拡大・縮小可能な柔軟性の高いアプローチを採用する方針だとした。NRCはまた、このような提案規則と規制ガイダンス案が最終的に有効になった場合、SMRや非軽水炉型原子炉の既存の事業者にも影響が及ぶと説明。合衆国連邦規制基準第10部50項(10CFR Part 50)に基づく既存の要件の代替要件として、事業者や申請者はパフォーマンスに基づいた緊急時対応プログラムの策定が選択肢の一つとして可能になる一方、これらの規則は大型の軽水炉や原子燃料サイクル施設、あるいは現在稼働中の(非発電型の)試験・研究炉には適用されないとしている。(参照資料:NRCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 18 May 2020
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米ホルテック社、同社製SMR用の燃料調達でフラマトム社を選択
米国のホルテック・インターナショナル社は4月28日、軽水炉方式の同社製小型モジュール炉(SMR)「SMR-160」に装荷する燃料の供給業者として、仏国のフラマトム社を選定したと発表した。フラマトム社が広く販売している、技術面でも実証済みの燃料集合体「GAIA(17×17)」を利用するため、ホルテック社は必要となるエンジニアリング作業すべての実施契約をフラマトム社と締結。これにより同社は、新しい燃料を導入する際のエンジニアリング作業を大方削減できることになった。また、標準的なPWR燃料に「SMR-160」の炉心設計を適合させることで、ホルテック社は燃料関係で生じる可能性のあるリスクを実質的に排除。世界中の既存軽水炉で培われた燃料関係の運転経験を、同社製SMRに生かすことができる。「SMR-160」はポンプやモーターを必要としない受動的安全系を備えた電気出力16万kWのSMRで、ホルテック社は2026年末までに初号機の運転開始を目指している。開発チームには三菱電機の米国子会社が計装・制御(I&C)系の開発で参加しているほか、米国最大の原子力発電事業者エクセロン・ジェネレーション社やカナダのSNC-ラバリン社が協力。また、ウクライナの国営原子力発電公社が同SMRをウクライナで建設するとともに、一部機器の製造については国産化を目指す可能性があるため、ホルテック社は2019年6月、ウクライナ国立原子力放射線安全科学技術センターを交えた国際企業連合を設立している。発表によると、フラマトム社がホルテック社のSMR開発プログラムに加わったことから、同SMRの将来的なオーナーは実質的に、十分な実績をもつ燃料の国際サプライチェーンにアクセスしたことになる。燃料開発では、燃焼度の向上や中性子漏れの軽減、取り換えサイクルの(24か月まで)拡大、水化学上の難しい課題への取り組みなど、要求される条件が次第に絞り込まれていくなか、フラマトム社は「GAIA燃料集合体の開発において高い安全裕度と最適な性能の確保を保証。当社製SMRとは理想的な適合になることが実証されている」と強調した。ホルテック社は今のところ、「SMR-160」で米原子力規制委員会(NRC)の設計認証(DC)審査を受けていないが、カナダ原子力安全委員会が提供する全3段階構成の「許認可申請前設計(ベンダー)審査」については、2018年7月からフェーズ1の審査が進展中である。(参照資料:ホルテック社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 30 Apr 2020
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カナダ原研、SMR開発促進イニシアチブで英モルテックス社を支援
カナダ原子力研究所(CNL)は4月23日、英国のベンチャー企業モルテックス・エナジー社が開発しているピン燃料型溶融塩炉「SSR(Stable Salt Reactor)-W」(出力30万kW)で、燃料も含む開発プロジェクトに支援・協力することになったと発表した。これは、CNLが昨年7月に設立した「カナダの原子力研究イニシアチブ(CNRI)」で支援する2件目の小型モジュール炉(SMR)研究開発プロジェクトとなる。同プロジェクトの下、CNLとモルテックス社およびカナダのニューブランズウィック大学(UNB)は協力して、燃料試験装置をUNBの原子力研究センター内で設計・建設し、最適化を図る計画。これと並行して、英国マンチェスター大学では補足活動が進められる。CNRIは1年単位・コスト分担方式の研究開発支援イニシアチブであり、カナダにおけるSMRの研究開発と建設を促進し、同技術の商業化を加速することを目的としている。このためCNLは、CNL傘下の国立研究所の専門的知見や世界レベルの研究設備を世界中のSMRベンダーに提供すると表明。初回の提案募集では、国内外の主要なSMR開発ベンダーの中からモルテックス社も含めて申請を4件に絞り込み、1件目の支援対象として米国のウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)と同社製SMR設計を選定した。次回の募集は今年春に実施を予定しており、プログラムの詳細等を専用ウェブサイトで公表中だとしている。 今回のCNRIプロジェクトでCNLは具体的に、燃料試験用の特殊機器をモルテックス社が準備し、設置・起動する段階で支援を提供するとした。燃料試験はまず非放射性物質を使って行われるが、これらの機器を遮へい施設に移し実燃料や放射性物質で試験を完結させる際も、CNLはその専門的知見によって計画の立案やコスト計算、安全性分析などをサポート。このような試験で集められたデータは最終的に、モルテックス社が将来、カナダ東部のニューブランズウィック(NB)州政府や州営電力のNBパワー社と共同でフル・スケールの燃料製造施設を同州内に建設する時、その設計や許認可活動に活用されることになる。NB州政府はすでに2018年7月、世界的水準のSMR開発で同州がカナダのリーダー的立場を確立することを目的に、モルテックス社のSSR-Wについて商業規模の実証炉を2030年までに州内のポイントルプロー原子力発電所敷地内で建設する計画を発表している。CNLによると、カナダで開発・計画されているモジュール式の原子炉設計の多くが革新的な燃料と燃料製造プロセスを採用しており、このような技術の進展は原子炉で一層高いレベルの効率性と安全性を約束する。モルテックス社の場合、放射性廃棄物が少ない特性が期待できるが、そうした利点を現実化するにはコンセプトの実証や許認可プロセスの準備等で研究開発の実施が不可欠だとした。モルテックス社のR.オサリバン北米担当CEOも、「研究開発を進展させプロジェクトを成功させるには、CNLからの財政支援と技術的専門知識が重要になる」とコメント。間欠性のある再生可能エネルギーだけでは、現時点も将来的にも電力需要を賄えないのに対し、原子力発電は世界的なエネルギー問題に取り組む上で非常に重要との見方を強調している。(参照資料:CNLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 Apr 2020
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IAEAが主催する「SMR規制者フォーラム」、SMRの安全性問題で新たな提言を発表
国際原子力機関(IAEA)は4月22日、同機関が2015年3月から主催している「小型モジュール炉(SMR)規制者フォーラム」が先月下旬の会合で、SMRの安全性に関する新しい提言を出したと発表した。同フォーラムによると、SMR開発では設計それぞれの新たな技術領域に関わる安全性問題で、柔軟な規制の枠組みが必要である。SMRに採用されているモジュール方式やコンパクト設計が発電所の安全性に影響を及ぼすかもしれないとしたほか、SMRの設計から建設、起動、運転、廃止措置まで、ライフサイクル全般の許認可の枠組みにも新たな課題をもたらすと指摘している。このフォーラムには、米国、英国、カナダ、仏国、中国、韓国、ロシア、フィンランド、サウジアラビアの原子力規制当局が参加し、出力30万kW以下の様々な新しいSMR設計を規制する際に課題となる点を協議。規制関係の知識や経験を共有するとともに、共通する安全性問題について解決策を特定・提案することなどを目的としている。IAEAによると、数多くの加盟国政府が温室効果ガスの排出量を最小化しつつ、多量の電気を使って経済の活性化を目指しており、SMRを含む先進的な原子炉設計はそうした目的の達成に重要な役割を担うことが期待される。しかし、SMRを設計・開発するための新たなアプローチは、既存の原子力規制の枠組みにこれまでとは違った観点の課題を突き付けることになった。IAEAが設定した原子力発電所の安全基準は、放射線の有害な影響から人々や環境を守る包括的規範として機能し、SMRにもほとんどの場合は適用可能。しかし、「SMR規制者フォーラム」の専門家は新しい概念の原子炉であるSMRに最適の規制を開発し、各国規制当局の一助とする考えである。同フォーラムはまた、SMRの許認可プロセスにおける課題や作業手続の現状について理解を深める方針。IAEA原子力安全・セキュリティ局のG. リジェットコフスキー原子力施設安全部部長は、「現時点でSMRに特化した安全基準を策定する計画はないが、特定の技術にこだわらない総体的な安全性の枠組みを設定する際、SMR関係の洞察を利用する」と説明した。そうした枠組みを新しい設計に適用するほか、IAEAの安全基準を活用して各国の様々なアプローチを調和させるのに役立てたいとしている。今回の提言のうち、SMRのモジュール方式に起因する安全性への影響について、同フォーラムはまず、複数のモジュールを接続することで電力供給などのサービス利用率や信頼性が向上する利点があると述べた。一方、複数ユニットで構成する既存の原子力発電所の運転経験から、安全面で明確な配慮を必要とする可能性が示されたと指摘。具体的には、福島第一原子力発電所で複数ユニットが関わった事故の教訓を挙げており、複数のシステムを共有することで設備同士が依存しあうなど、設計に脆弱性リスクがもたらされるかもしれないとした。また、SMRのコンパクト設計に起因する安全性問題に関しては、まずSMRを工場で製造しトラックで設置場所まで輸送するため、そのような設計になっていると説明。しかし、SMRで運転やメンテナンス、点検等を実施するとなると、SMRのコンパクト設計にはライフサイクル全般にわたって根本から考えなければならない点があると指摘。一例として、SMRの品質チェックのために機器の溶接部で点検や非破壊検査をどこでどのように行うかなどを検討課題として挙げている。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 24 Apr 2020
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