日本経済団体連合会の中西宏明会長は、3月9日の定例記者会見で、「エネルギーは人類の存続・繁栄に必須。気候変動の問題も非常に深刻になってきた中、改めて原子力をどう使っていくか、議論し直さなければならない」と、大局的視点から原子力技術について考える必要性を強調した。東北電力女川原子力発電所2号機が2月26日に新規制基準適合性審査で原子炉設置変更許可を取得したことに関連し、今後の東日本地域における再稼働の見通しについて質問を受け述べたもの。再稼働に関しては、地元自治体の理解を得ることが「非常に難しくなっている」としている。同氏は、政府の成長戦略について議論する未来投資会議の議員を務めており、去る5日の会合で、「エネルギーを巡る長期的・世界的な課題と、わが国の対処について全政府的に検討すべき」との意見を示した。同会議では、エネルギー戦略の大きな方向性を議論する新たな場を設けることとなり、西村康稔・内閣府経済財政政策担当相は、翌6日の閣議後会見で、「じっくりと長い目で見ながら大所高所から骨太のビジョンを検討するもの」と説明。新たに設置される会議体の名称・スケジュールは未定だが、毎年6月策定の成長戦略も念頭に置き、必要に応じ経済産業相や環境相にも出席を求め、総合資源エネルギー調査会と連携しながら議論が進められる見通し。
10 Mar 2020
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福島県浪江町で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、東芝エネルギーシステムズ、東北電力、岩谷産業が2018年より建設を進めてきた「福島水素エネルギー研究フィールド」(FH2R:Fukushima Hydrogen Energy Research Field)の開所式が3月7日に行われた。〈NEDO発表資料は こちら〉FH2R では、18万平方mの敷地内に設置された2万kWの太陽光発電による電力を用いて世界最大級となる1万kWの水電解装置で年間約200トンの水素を製造する。今後、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、昼間の太陽光発電による余剰電力の発生が見込まれるが、FH2Rではこれを水素に変換し貯蔵・利用する技術の実証を行い、将来的に水電解技術の商用化に向けて、世界最先端の高効率で低コストの水素製造技術の確立を目指す。資源エネルギー庁の水素・燃料電池戦略室では、「再エネの大量導入は調整力確保とともに余剰の活用策が必要。水素利用のポテンシャルは大きい」と期待を寄せている。また、FH2R で製造する水素は、東京オリンピックの聖火台・聖火リレートーチ(福島県、愛知県、東京都の一部)を始め、大会車両の燃料電池自動車(FCV)500台、選手村の定置用燃料電池などにも供し、日本の技術力発信にも寄与する。FCVは、既存のガソリン車と同程度の機能を持ち、電気自動車(EV)と比べ航続距離が長く(500km以上)充てん時間も短い(3分)ほか、走行中の排出は水のみである。開発中の次世代FCVを運転し開所式に訪れた安倍首相(©経産省)FH2R開所式には安倍晋三首相他、関係閣僚、内堀雅雄福島県知事らが出席。今回の福島訪問で14日に全線開通する常磐線の双葉駅を視察し常磐自動車道常磐双葉インターチェンジの開通式に出席した後、FH2Rを訪れた安倍首相は、テープカットに臨むとともに施設内を視察し、「被災地の皆様の故郷への思いが大きな力となり、復興は確実に前進している」、「未来を見据えて新しい福島をつくっていく」などと述べた。
09 Mar 2020
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九州経済連合会はこのほど、「ゼロエミッションを先導する九州のエネルギー環境・産業の再構築」と題する提言を取りまとめ発表した。九州経済界が人口減少・少子高齢化、太陽光普及に伴う出力抑制、自然災害の頻発化などの諸課題に直面している現状下、全国比27%高のエネルギー自給率、同11%低のCO2排出量、同8%低の電気料金を「九州の強み」ととらえ、「チーム九州経済界」となってエネルギー分野の戦略的取組を通じ、日本の経済発展につなげようというもの。戦略軸として、(1)再エネの主力電源化、(2)蓄エネ(蓄電池、エコキュートなど)の社会実装、(3)脱炭素化の面的展開(デジタル技術の活用など)、(4)原子力の着実な運用、(5)環境ブランドの構築――を掲げ、ゼロエミッション化、イノベーションの牽引、地域活性化、世界展開を先導していくとしている。九州地域では、2015年に九州電力川内原子力発電所1、2号機が先陣を切って新規制基準をクリアし再稼働した。現在国内で再稼働した原子力発電プラント9基中4基が九州地域に立地しており、今回の提言では、「再稼働の先行アドバンテージをいかに継続するか」との認識のもと、安定運転の継続と技術・人材の維持を柱に、必要に応じ九州電力が中心となって取り組む広報・政策要望への支援を行い、「3E+S」(安定供給・経済効率性・環境への適合+安全性)の達成を図るとしている。また、再生可能エネルギー関連では、九州・沖縄・山口について、地熱では53.5%、太陽光では22.6%、バイオマスでは20.8%などと、全国の発電実績に占めるシェアを例示した上で、2030年度の導入見通しから経済波及効果を合計55兆円と試算。さらに、地政学的優位性として、インド、ベトナム、台湾など、アジア再エネビジネス市場への参入も有望とみている。
05 Mar 2020
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内閣府(原子力防災)は3月4日の原子力規制委員会定例会合で、東北電力女川原子力発電所に係るオフサイトセンターの概要を説明し同委に意見を求めた。オフサイトセンターは、原子力災害発生時に現地対策本部が設置され、国、地方自治体、事業者、関係機関が参集し、モニタリング、被ばく医療、避難、住民への情報発信などを指揮する拠点となるものだが、女川オフサイトセンターは東日本大震災に伴う津波で壊滅的な被害を受け使用不能となったため、発電所から約53km離れた仙台市内の旧消防学校校舎を暫定的に使用してきた。津波で崩壊した旧女川オフサイトセンター(内閣府発表資料より引用)内閣府では2017~18年度、女川オフサイトセンターの再建事業として総額27億円を計上し宮城県に費用を交付。このほど、発電所の北西約7km、海抜約39mの地点に、免震構造3階建ての鉄筋コンクリート建屋が完成した。TV会議システム、電話・FAX装置、統合原子力防災ネットワークなど、所要の通信設備、合同対策協議会や報道対応に供する各種スペースを備えているほか、隣接する学校のグラウンドに大型ヘリの離発着が可能。また、複合災害に備え、仙台市と大崎市の発電所からそれぞれ約54km、約49kmの地点に2か所の代替オフサイトセンターが指定されている。内閣府の説明を受け、地震・津波関連の審査を担当する石渡明委員は、発電所周辺の道路が急峻で蛇行していることを踏まえ、「複数のルートを確保しておくことが大事」と強調。さらに更田豊志委員長は、今後のオフサイトセンター整備に関し、「県庁からの距離が、島根発電所のように近い場合もあるし、女川発電所のように遠い場合もある」などと地域特性をあげた上で、自治体の機能についても合わせて検討する必要性を指摘した。新たな女川オフサイトセンターは、3月2日より暫定運用を開始しているが、今回の原子力規制委員会への意見照会を踏まえ、近く正式に政府より指定を受ける運び。
04 Mar 2020
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国際熱核融合実験炉(ITER)計画を補完・支援する日欧共同プロジェクト「幅広いアプローチ活動」(BA)の継続に向けた共同宣言の署名式が3月2日、欧州委員会本部(ベルギー・ブリュッセル)で行われた。兒玉和夫欧州連合日本政府代表部特命全権大使とカドリ・シムソン欧州委員(エネルギー担当)が共同宣言に署名。日欧間の協力により核融合エネルギーの研究開発を一層発展させていくことが合意された。萩生田光一文部科学大臣は、ビデオメッセージの中で、「エネルギー問題と環境問題を根本的に解決する」と、核融合エネルギーの実現に期待を寄せたほか、ITER計画やBA活動など、様々な協力を通じ日欧間の友好関係をさらに強化していく意欲を示した。BA活動では、(1)サテライト・トカマク(JT-60SA)、(2)国際核融合材料照射施設工学実証設計活動(IFMIF/EVEDA)、(3)国際核融合エネルギー研究センター(IFERC)――の3事業が日本を拠点に2007年より進められている。共同宣言に基づき、2020年3月までのフェーズIで得られた成果を受け、新たなフェーズIIへと移行する。核融合発電のイメージ(文科省発表資料より引用)例えば、量子科学技術研究開発機構那珂核融合研究所(茨城県那珂市)で建設が進められている「JT-60SA」では、2019年5月に心臓部ともいえる世界最大級の磁場コイル「中心ソレノイド」の据え付けが行われた。「JT-60SA」は、3月中の組立作業完了が見込まれており、4月以降のフェーズIIでは、まず今秋にもファーストプラズマを達成した上で、様々なデータを取得しITERの運転シナリオ開発に活かしていくほか、ITERではできない高出力運転など、発電実証を行う原型炉の開発に向けた挑戦的研究にも取り組む。2025年のファーストプラズマ達成を目指しフランス・カダラッシュで建設が進められているITERは約67%の進捗率となっている(2019年末時点)。
03 Mar 2020
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東京電力は2月27日、福島第一原子力発電所廃炉の進捗状況を発表した。燃料デブリ取り出しに向けては、1号機原子炉格納容器内部調査のためのアクセスルート構築作業で、2月12日に所員用エアロック「X-2ペネ」の内扉に1か所目の孔(直径約0.2m)の切削が完了した。内扉には3か所の孔を施工する予定で、早ければ3月上旬頃から続く2か所目の孔の切削に入る見通し。同機の原子炉格納容器内部調査については、2017年3月に自走式調査装置(形状変化型ロボット)を投入し、ペデスタル(原子炉圧力容器下部)外の画像取得・線量測定を行い堆積物が確認されている。アクセスルートを構築後、原子炉格納容器内に潜水機能付きのボート型アクセス装置を導入し、堆積物の形状・厚さ・燃料成分含有状況の確認、少量サンプリングなどを行う。3号機の使用済み燃料プールからの燃料取り出しについては、2月26日時点で566体中84体の取り出しが完了。昨夏に着手した1/2号機排気筒の解体工事は、23ブロックに分けて解体する計画となっており、2月1日に11ブロック目までが完了した。5月上旬の解体完了を目指す。東京電力では、プロジェクトマネジメント機能や安全・品質面のさらなる強化を目指し、4月に福島第一原子力発電所に関わる組織改編を実施することとしている。組織改編に伴い東京から現地へ70~90名の要員シフトが計画されており、福島第一廃炉推進カンパニーの小野明プレジデントは2月27日の記者会見で、これまでに発生したトラブルを振り返り、「作業は現場で行われる。東京ではなく現場でものを考える必要がある」と強調した。なお、来日中のラファエロ・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は、26日に福島第一原子力発電所を視察した。同氏は、来日に先立ち、IAEA主催の核セキュリティ国際会議(2月10~14日、ウィーン)の際、政府代表として出席した若宮健嗣外務副大臣より、発電所の処理水に関する資源エネルギー庁小委員会の報告書を受け取っており、27日の梶山弘志経済産業相との会談で、IAEAとして同報告書のレビューを行っていることを述べた。
28 Feb 2020
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原子力規制委員会は、2月26日の定例会合で、東北電力の女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kW)が新規制基準に「適合している」とする審査結果を決定し、同社に対し原子炉設置変更許可を発出した。同案件については、11月に「審査書案」を了承し、原子力委員会と経済産業相への意見照会、パブリックコメントが行われていた。新規制基準適合性に係る審査をクリアしたプラントは16基となり、BWRでは4基目。同機の審査は、2013年12月に申請され、過去に大地震を経験してきた地理的特性から、地質・地震動評価や耐震設計に関して慎重な審査が行われた。定例会合終了後の記者会見で、更田豊志委員長は、「東北電力には概ねきちんと対応してもらえた」と、6年以上に及んだ審査を振り返った。東北電力の原田宏哉社長は、2月4日に行われた規制委員会が随時実施する事業者意見交換の後、記者団の取材に応じ、「審査が合格となりモチベーションも上がっている」と、女川2号機の再稼働に向けた現場の意識高揚を強調した。同社では、2020年度の工事完了を目指し、海抜約29mの防潮堤建設などの安全対策工事を進めていく。
26 Feb 2020
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原子力委員会は、2月25日の定例会議で、来日中のラファエロ・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長を招き意見交換を行った。会議には、日本の原子力関連機関を代表し、日本原子力研究開発機構の児玉敏雄理事長、量子科学技術開発研究機構の平野俊夫理事長、原産協会の高橋明男理事長も同席し、各々の活動について紹介した。冒頭、竹本直一内閣府科学技術政策担当大臣が挨拶に立ち、福島第一原子力発電所の廃炉に関するレビューミッション派遣など、IAEAによる日本への広範な支援に対し感謝の意を表明。また、昨秋のIAEA総会に日本政府代表として出席したことを振り返り、今回、グロッシー事務局長来日の機に設けられた意見交換の場を「歓迎すべきこと」と強調するとともに、引き続きIAEAとの緊密な協力のもと、原子力の平和的利用促進や核不拡散体制の強化に取り組んでいく考えを示した。1985年にアルゼンチン外務省に入省後、外交・国際機関の職務を歴任してきたグロッシー事務局長は、「35年間で何度も日本を訪れた」としている。今回、2019年12月のIAEA事務局長就任後、初の来日に際し、同氏は2019年7月に逝去した前任の天野之弥事務局長の功績に「10年間にもわたりリードしてきた」と敬意を表明。日本の原子力に関しては、福島第一原子力発電所の廃炉など、「独自の問題も抱えている」としながら、発電以外でも医学利用を始めとする幅広い原子力科学技術分野で「リーダーシップを発揮できる」と、期待感を示した。さらに、気候変動問題の解決に資する原子力発電の役割を改めて述べ、中国・インドの他、中東・アフリカ地域など、原子力導入を進めている国、一方で原子力から撤退し始めている国もあるとした上で、「どのような国も除外せず共に歩んでいく」と、IAEAとして支援を惜しまぬ考えを強調。この他、途上国の医療支援や食糧・水資源確保などにつながる放射線・放射性同位元素利用開発の重要性を述べる一方、国際機関であるが故の予算面の制約にも触れ、「民間からも様々な形で協力してもらえれば」と、今後の日本によるさらなる支援に期待を寄せた。これに対し、佐野利男委員は、原子力分野における女性の活躍、ジェンダーバランスに関するIAEAの取組について質問。グロッシー事務局長は、近くIAEAとしてキュリー夫人の功績に因んだ新たなフェローシップを立ち上げ、女性研究者の経済的支援を図る考えを明らかにした。また、中西友子委員が放射線利用を啓発するための戦略について尋ねると、グロッシー事務局長は、「一般の人たちも含め、より多くのコミュニケーション・チャンネルを持たねばならない」などと応えた。意見交換に臨む原子力機構・児玉理事長、量研機構・平野理事長、原産協会・高橋理事長(左から)原産協会の高橋理事長は、IAEA総会で併催される展示会への日本ブース出展や、IAEAとの協力で開催する原子力エネルギーマネジメントスクールなど、人材育成の取組を紹介した。グロッシー事務局長は、28日までの日本滞在中、関係閣僚らとの会談を行うほか、26日には福島第一原子力発電所を視察する予定。
25 Feb 2020
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原産協会の高橋明男理事長は2月20日、定例のプレスブリーフィングを行った。高橋理事長は最近の原子力人材確保・育成に関する取組について紹介。原産協会が関西原子力懇談会との共催で毎年行っている学生対象の合同企業説明会「PAI原子力産業セミナー2021」について、2月1日の東京会場に45社、16日の大阪会場に36社の関係企業・機関が出展したと説明した。計81社の出展数はこれまでで最多となった。一方、参加学生数は東京会場が140名、大阪会場が115名の計255名で前回より減少。高専の試験期間と重なったことを要因の一つにあげ、今後さらに分析を行うとしている。因みに前回は2019年3月3日(東京)と6日(大阪)に開催され、計339名の参加があった。また、2月12日に行われた「原子力人材育成ネットワーク」報告会で年間の活動実績とともに、原子力分野のジェンダーバランス改善について発表が行われたことを披露。同ネットワークが支援し、このほど日本で初の開催となった「IAEA国際スクール 原子力・放射線安全リーダーシップ」(IAEA主催、東海大学共催)が17日に開講したことも紹介した。現在開催中の同スクールには、主にアジア地域から若手の技術者・行政官ら計29名が参加。2週間にわたり講義・演習、福島第一原子力発電所見学などのカリキュラムが組まれており、28日の閉講式ではIAEAより修了証の授与が行われる。この他、高橋理事長は、最近の原子力を巡る動きとして、福島第一原子力発電所の処理水に関する資源エネルギー庁の委員会が10日に報告書を取りまとめたことに触れた。同報告書では、技術的に実績があり現実的な処理水の処分方法として、海洋放出と水蒸気放出をあげた上で、国内での実績や放出設備の取扱いなどから、海洋放出の方がより確実に実施できるとしている。記者との質疑応答の中で、高橋理事長は、風評被害に配慮し「地元、漁業関係の方々に対し丁寧に説明していく必要がある」と述べた。
21 Feb 2020
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原子力規制委員会の更田豊志委員長は、2月19日の定例記者会見で、大詰めを迎えている日本原燃の六ヶ所再処理工場などの新規制基準適合性審査の状況について質疑に応じた。六ヶ所再処理工場については、記者より18日に行われたプラントに関する審査会合で「概ね議論が終了した」として、「審査書案」取りまとめの見通しを問われると、更田委員長は、現状で示すことは「時期尚早」と述べた。六ヶ所再処理工場の審査は2014年1月の申請から6年が経過。日本原燃の増田尚宏社長は、同31日の記者会見で、最終の申請書類について「これまでの審査会合における指摘事項を反映し、早期に提出できるよう作業を進めている」としている。2月21日には地震・津波関連の審査会合が行われる予定。また、更田委員長は、同じく申請から6年が経過した使用済み燃料貯蔵施設の審査に関し、記者から「17日の審査会合でプラントに関する議論が実質終了した」として、「審査書案」の取りまとめ時期を問われたが見通しは示さなかった。審査が長期化した理由について、耐津波設計に関する論点で、「駄目出しは早めに出すべきだった」と、規制側としての反省点も明言。11月に「審査書案」が取りまとめられた東北電力女川2号機については、「パブリックコメントの取りまとめ結果を見せてもらってはいる。それほど長くかからない時期に委員会に報告されるだろう」と述べ、年度内にも同案件に関わる原子炉設置変更許可の発出となる見込みを示唆した。
20 Feb 2020
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福井県の杉本達治知事(=写真)は2月18日、県議会の開会に際し行った所信表明の中で、原子力関連施設を多く立地する嶺南地域を中心にエネルギーを活用した地域振興を図る「嶺南Eコースト計画」の案を取りまとめたことをあげ、議会での議論や県民からの意見を反映し年度内に同計画を策定する考えを示した。福井県ではこれまで、2005年に策定された「エネルギー研究開発拠点化計画」に基づき地域の持つ原子力技術を活用した取組を通じ多くの成果をあげてきたが、原子力発電プラントの廃炉進展など、エネルギーを取り巻く環境変化や、今後の北陸新幹線延伸計画も踏まえ、2018年より新計画の検討を進めてきた。「嶺南Eコースト計画」の案は、2020年度から概ね10年程度を展望し、「エネルギー」(Energy)をキーワードに、「地域経済の活性化」(Economy)、「エコなまちづくり」(Ecology)、「北陸新幹線の整備効果を活かした拡大・発展」(Expand)など、様々な「E」の実現を全体像として描いている。基本戦略として、(1)原子力関連研究の推進および人材育成、(2)デコミッショニング(廃炉)ビジネスの育成、(3)様々なエネルギーを活用した地域振興、(4)多様な地域産業の育成――を掲げ、国や自治体、産業界などと協力し具体的なプロジェクトを推進していく。2019年4月に就任した杉本知事は、前任の西川一誠知事から引き続き総合資源エネルギー調査会の委員を務めており、立地地域の立場から、原子力技術・人材の維持・強化の重要性を国に対し訴えかけている。
19 Feb 2020
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原子力委員会は、2月18日の定例会議で、量子科学技術研究開発機構量子医学・医療部門長の中野隆史氏を招き、IAEAの「原子力科学技術に関する研究、開発、および訓練のための地域協力協定」(RCA)による活動について説明を受けた。RCAは、1972年に発足したアジア・太平洋地域の開発途上国を対象に原子力科学技術の共同研究、開発、トレーニングを推進する協力ネットワークで、日本は1978年に加盟した。現在の締約国は22か国。RCA活動の一環として群馬大学で放射線治療のプロジェクトをリードしてきた中野氏は、2019年9月に外務省よりRCA日本政府代表に指名され、11月にはRCAで実施している農業、保健・医療、環境、工業の各分野の活動を紹介するシンポジウムの日本初開催となった。一方、日本が主導するアジア諸国との原子力平和利用協力の枠組として、1990年に原子力委員会が立ち上げた「アジア原子力協力フォーラム」(FNCA)があり、現在12か国の参加のもと、主に放射線利用に関するプロジェクト活動が行われている。18日の会合で、中野氏は、自身が関わってきた保健・医療分野のRCAプロジェクトを中心に、FNCAとの相関性を整理し、「RCAは実用技術の移転/垂直協力、FNCAは相互貢献/水平協力を実施する」と、両者の相違点を示した上で、アジア地域の発展のため「相乗効果を高める」重要性を強調した。例として、アジア地域に患者が多い子宮頚がんの放射線治療技術に関して、FNCAで標準的な治療手順(プロトコル)を確立して臨床試験を実施し、RCAでトレーニングを通じた技術移転を行うなどと説明。これを受け、佐野利男委員は、RCAプロジェクトについて、プライオリティやFNCAとの調整状況を尋ねたほか、「なかなかメディアで取り上げられない」とも指摘した。FNCAでは、プロジェクト活動の調整のため年1回開催するコーディネーター会合にRCA地域事務所(韓国)からもオブザーバー参加を求め意見交換を行っている。
18 Feb 2020
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IAEAが主催し東海大学が共催する「IAEA国際スクール 原子力・放射線安全リーダーシップ」が2月17日に開講した。これは、IAEAが2017年より実施している研修コースで、国際感覚に秀でた原子力・放射線安全の若手リーダーの育成を目的としており、今回、初めての日本開催となった。IAEA標準に基づき、原子力・放射線利用に関わる各国の若手・中堅の研究者、技術者、行政官らを対象に、ケーススタディやゲーム形式の演習など、ロールプレイ体験を通じて安全最優先の意識を養うもので、これまでの参加者から高い評価を得ている。カリキュラムは28日までの2週間にわたり、日本、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、バングラデシュ、モロッコから集まった29名の参加者は、東海大学湘南キャンパス(神奈川県平塚市)で講義、演習に取り組むほか、25日には福島へ移動し、福島第一原子力発電所や日本原子力研究開発機構の楢葉遠隔技術開発センターなどを見学する。カリキュラムを説明するIAEAのマリック氏東海大学校友会館(東京都千代田区)で行われた開講式で、主催者を代表し挨拶に立ったIAEAプログラム戦略コーディネーション課長のマリック・シャヒード氏は、参加者らに対し、歓迎の意を述べるとともに、「学ぶだけでなく、ネットワーク作りの機会でもある」と、同国際スクールの人脈形成の場としての意義も強調。来賓として訪れた文部科学省研究開発局原子力課長の清浦隆氏は挨拶の中で、福島第一原子力発電所の廃炉や研究炉の新規制基準対応などを例に、日本の原子力分野の人材確保が危機的状況にあることを訴えた。また、原産協会理事長の高橋明男氏は、産官学連携の「原子力人材育成ネットワーク」による海外人材育成の取組に触れた上で、各国の参加者らに「是非実りある時間を過ごして欲しい」と、同国際スクールを通じスキルアップが図られることを期待した。東海大学では、これまでも原子力分野の人材育成に力を入れており、開講式でスピーチを行った副学長の吉川直人氏は、経済産業省と文部科学省の共同事業「原子力発電分野の高度人財育成プログラム」(GIANTプログラム、2008~12年)や、国際原子力開発(JINED)との協力で実施したベトナムの発電所幹部候補生を対象とする人材育成プログラム(2012~18年)などを紹介した。
17 Feb 2020
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原子力事業者・メーカー・関係団体で構成される「原子力エネルギー協議会」(ATENA、理事長=門上英・三菱重工業特別顧問)が活動状況を報告し今後の課題について話し合う「ATENAフォーラム2020」が2月13日に都内で開催された。ATENAは、原子力発電のさらなる安全性向上に向けて産業界全体で知見結集・共通課題の抽出を図る組織として2018年7月に設立された。フォーラムで門上理事長は、(1)原子力発電所の共通課題への対応、(2)規制当局との積極的な対話、(3)様々なステークホルダーとのコミュニケーション――を柱とする活動方針のもとに実施されているATENAのこれまでの活動について説明。ATENAでは現在15件の技術課題に取り組んでいるが、その中で発足間もない2018年9月に作業を開始した「サイバーセキュリティ対策導入ガイドライン」作成については、2020年1月までにドラフト版に関する原子力規制委員会との対話も行われており、今後、自主ガイドとして発行し事業者・メーカーへと展開することとなっている。今回のフォーラムに来賓として訪れた原子力規制委員会の更田豊志委員長(=写真下)は挨拶の中で、「ATENAは申請者でも被規制者でもない。意見や反論が寄せられることを期待する」と、ATENAとの対話に積極的な姿勢を示したほか、原子力災害発生時の防護措置準備・実施に向けプラントの状況に応じて定める緊急時活動レベル「EAL」を例に、「現場を持つ事業者の知見が不可欠」とも述べた。ATENAは海外の原子力関係組織との連携も行っており、去る6月には米国原子力エネルギー協会(NEI)と技術協力協定を締結するなど、知見・技術の収集・活用に努めている。今回のフォーラムには、NEIのマリア・コーズニック会長が出席し講演を行った。その中で、コーズニック会長は、まず「気候変動は世界で喫緊の課題」として、地球温暖化問題の解決につながるクリーンエネルギーとして原子力に取り組む日米両組織による協力の意義を強調。さらに、「原子力以上に明るい未来に対応できる産業はない」とも述べ、米国における小型モジュール炉(SMR)の開発状況や、原子力規制委員会(NRC)による許認可の合理化に向けた動きなどを紹介した。コーズニック会長を交え、遠藤典子氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授)をモデレータとして行われたパネルディスカッション(=写真上)には、加藤顕彦氏(日本電機工業会原子力政策委員長)、倉田千代治氏(電気事業連合会原子力開発対策委員長)、山口彰氏(東京大学大学院工学系研究科教授)、山﨑広美氏(原子力安全推進協会理事長)、玉川宏一氏(ATENA理事)が登壇。意見交換の後、玉川氏は、「しっかりと受け止め、今後のATENAの活動に活かしていきたい」と、引き続き安全性向上に向けて取り組んでいく姿勢を示した。
14 Feb 2020
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「原子力人材育成ネットワーク」(運営委員長=高橋明男・原産協会理事長)の報告会が2月12日に都内で開催され、2019年度の活動状況を紹介するとともに、笹川平和財団会長の田中伸男氏他による特別講演や、原子力分野におけるジェンダーバランス改善の取組に焦点を当てたセッションを通じ、今後の原子力人材確保・育成を巡る課題について産官学の参加者らが意見交換を行った。「持続可能なエネルギー安全保障戦略」と題し特別講演を行った田中氏は、国際エネルギー機関(IEA)が毎年まとめる「世界エネルギー見通し」(WEO)に基づき、2040年までの中国とインドの石油需要増や、最近の産油国を巡る地政学的な緊張などについて説明。IEAが11日に発表した世界のエネルギー起源CO2排出量の推移も紹介し、「石油の時代から電気の時代への転換期にある」とした。その上で、原子力発電に関しては、風力や太陽光との比較から建設コスト面の厳しさを指摘しながらも、運転期間をできるだけ延長することで市場競争力が上がることを強調。さらに、炉型の標準化に関し、「安全性や核不拡散性の高い小型モジュール炉(SMR)の開発への早急な着手が必要」とも述べた。続いて「女性研究者の養成に関わる取組と全国ネットワーク」と題し特別講演を行った東京農工大学副学長の宮浦千里氏は、同学理工系分野のジェンダーバランス改善について、2009年設置の「女性未来育成機構」によるキャリア支援から、女子トイレなどの学内施設改修に至るまで、地道に取り組んできた結果、工学系の女子学生比率が2割を超え全国トップレベルとなったことを披露。さらに、女性研究者を取り巻く環境整備に向け、140超の大学・研究機関が参画する全国ネットワークを組織し情報交換を進めているという。同氏によると、日本の研究者に女性が占める割合は約15%と、OECD加盟国では最低レベルにあり、その背景として研究者の仕事の魅力が女性に伝わっていないことや、キャリア形成の難しさなどをあげている。OECD/NEAでは、12月にパリでジェンダーバランス改善に向けた会合を開催しており、今回の報告会では、原産協会国際部の上田欽一氏が同会合への参加報告を行った。世界の原子力部門における女性従事者の割合は22.4%とのデータをまず示し、各国参加者からの取組紹介や討議を通じ原子力部門への女性進出を妨げる要因として、「ジェンダーへの先入観」、「ワークライフバランスの問題」、「原子力に対する悪いイメージ」があげられたとしており、引き続き、データ収集やコミュニケーションを図っていく必要性を強調。また、「男女の職業選択は既に15歳で分岐している」とも述べ、初等中等教育での取組の重要性も示唆した。続いて、原子力損害賠償・廃炉等支援機構国際グループの野原薫子氏は、OECD/NEAとの共催で8月に開催した女子中高生を対象に理工系分野への進路を喚起するイベント「Joshikai in Fukushima」(福島県三春町)について紹介した。「原子力人材育成ネットワーク」では、日本全体として整合性を持った効果的・効率的な原子力人材確保・育成に向けて戦略立案が必要との考えから、2019年度に「戦略ワーキンググループ(WG)」を立ち上げており、今後同WGのもと、既存活動のPDCAや関係省庁との人材育成における連携を強化していくこととしている。これらの報告を受け、高等教育の立場から東京大学大学院工学系研究科教授の上坂充氏は、「『もんじゅ』跡地に研究炉を建設する構想もあり、学生に設計の絵コンテを描かせては」と提案。中学・高校で使われる理科・社会科の教科書を調査してきた九州大学名誉教授の工藤和彦氏は、「技術者としての倫理観も求められる。『技術者像』のあり方についても考えるべき」などと意見を述べた。
13 Feb 2020
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☆1月の主な動き☆【国内】▽14日 IAEA総合規制評価サービス(IRRS)のミッションが来日▽17日 双葉町・大熊町・富岡町の避難指示区域が3月上旬に一部解除へ、常磐線の3月14日全線復旧も決定▽14日 広島高裁が四国電力伊方3号機の運転差止仮処分を決定▽21日 IRRSミッションが日程終了、規制委に産業界とのコミュニケーションなどを指摘▽21日 日ポーランド首脳会談、モラビエツキ首相「原子力の活用も重要な課題」と▽21日 パリ協定を踏まえ2050年に向けた「革新的環境イノベーション戦略」が決定、核融合の実現も技術課題に▽28日 原電が東海第二の安全性向上対策工事の終了時期を2022年末に延期▽29日 規制委、九州電力3、4号機のテロに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重)で審査結果まとめる▽29日 関西電力、高浜3、4号機の特重設置期限前日からの定検入りを発表▽30日 ITER「トロイダル磁場コイル」の初号機が完成(三菱重工二見工場にて)、世界最大級▽31日 エネ庁委員会が福島第一処理水の取扱いで取りまとめ、水蒸気放出と海洋放出を「現実的な選択肢」と【海外】▽1日 2019年末にドイツでフィリップスブルク2号機が予定通り永久停止▽3日 WNAが2019年の原子炉動向とりまとめ:「閉鎖基数が新規運開を上回る」▽3日 韓国とサウジ、SMART炉の建設・輸出促進で「建設前設計契約」を改定▽7日 米ニュースケール社、同社製SMRでカナダのベンダー審査開始▽13日 英エンジニアリング企業、政府のCO2実質ゼロ化目標達成に向け原子力等の重要性訴える▽14日 GNF社、事故耐性燃料入り試験集合体を米国の商業炉に装荷▽14日 EUが欧州グリーンディール投資計画案を公表、原子力への支援なし▽15日 ロシア:昨年12月から年始にかけ既存炉5基で運転期間を最長60年に延長▽15日 仏オラノ社、米原子力発電所で使用済燃料を最新の乾式貯蔵システムに移送▽20日 トルコのエネルギー相、シノップ原子力発電所建設計画で他のサプライヤーを検討中▽20日 ロシアのロスアトム社、今年12月に中国・田湾発電所で7号機を本格着工へ▽20日 ロシア:「ブレークスルー計画」で高速炉用ウラン・プルトニウム混合窒化物燃料の試験体 完成▽21日 米エネ省のVTR計画への支援でGEH社がテラパワー社と協力▽24日 英ロールス・ロイス社、2029年までにSMR初号機の完成目指すと表明▽24日 カナダの深地層処分場計画:最終候補2地点のうち1地点と調査のための立入で合意▽28日 エストニアのSMR建設プロジェクトにフォータム社とトラクテベル社が協力▽28日 UAEのバラカ1号機、WANOが起動前審査で準備の完了を確認▽28日 ロシアで稼働中の高速実証炉「BN-800」に初回分取替用MOX燃料を装荷▽30日 米GEH社、同社製SMR「BWRX-300」設計で規制委の先行安全審査開始▽30日 フィンランド規制当局、SMRの安全評価と許認可の体制準備▽31日 南アの国営ESKOM社、傘下のPBMR社の売却先を募集☆過去の運転実績
11 Feb 2020
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福島県の内堀雅雄知事は、2月10日の定例記者会見で、トップブランド米としての流通を目指す県オリジナル米の愛称を、「福、笑い」と決定したと発表。これは、福島県が2018年秋より「県産米全体のイメージと価格をリードする高品質米」と位置付けるべく取り組んできたもので、今回愛称が命名されたのは、県農業総合センターで有望な新品種候補として選ばれた奨励品種の一つ「福島40号」。内堀知事は、愛称の決定に際し、県内外から約6,200件の応募を受け、流通関係者、料理人、クリエイターなどの意見をもとに選考したとしており、「手にした皆様に笑顔が訪れるようなお米になって欲しいとの思いを込めた」と説明。さらに、「県産米のトップブランド品種として引き続き関係の皆様と連携しながら、生産振興や販売促進に取り組んでいく」と、今後の販路開拓に向けての意気込みを述べた。「福、笑い」は2021年秋に本格デビューする。福島県産米の価格水準は、震災後に全国平均を大きく下回ったが、近年回復傾向にあり、農林水産省が昨春に取りまとめた「平成30年度福島県産農産物等流通実態調査報告書」によると、2017年度で全銘柄平均に対しマイナス2.5%にまで縮小した。同報告書では、北海道産の「ゆめぴりか」や山形県産の「つや姫」など、各道県発で売り出されている高価格帯米を紹介し、オリジナル米の市場投入に際しては、慎重なマーケティング戦略の策定が重要とも指摘している。他道県産米との競争を見据え、内堀知事は、「福、笑い」の生産に関し、徹底した品質基準の保持や生産者の登録制を、広報戦略として、プレデビューイベントや試験販売を通じた流通関係者や消費者へのPRを図るとしている。
10 Feb 2020
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日本財団はこのほど、気候変動に関する「18歳意識調査」の結果を発表した。近年の世界的な異常気象に伴う被害の拡大をとらえ、12月に全国の17~19歳の若者1,000人を対象として、インターネットにより実施したもの。それによると、「海面の水位および温度の上昇、大型台風や高潮、猛暑といった温暖化の影響と考えられる異常気象が世界で頻発している」とした上で、地球温暖化の原因について尋ねたところ、「人間の社会活動に伴う温室効果ガスの排出」との回答が63.7%、「地球の自然サイクル」が6.8%、「わからない」が29.5%だった。「人間の社会活動に伴う温室効果ガスの排出」と回答した理由(自由記述)としては、「ニュースで聞くから」、「学校の授業で習ったから」など、あまり具体的に記述していない回答が多く、CO2を排出する「化石燃料」、「石炭」、「石油」、「火力発電」という言葉で説明していたのは16人にとどまった。また、世界のCO2排出量の国別割合で日本が第5位であることを示し「どう思うか」と尋ねたところ、「削減すべきだ」が最も多く68.8%、「社会活動のためやむを得ない」が12.9%、「わからない」が18.3%。さらに、地球温暖化対策の国際的枠組「パリ協定」で日本が示した温室効果ガスの削減目標「2030年度に2013年度比26%減」については、「十分ではない」が29.4%、「十分だ」が23.0%、「わからない」が最も多く47.6%だった。「温暖化対策に向けて必要だと思うこと」(自由記述)としては、「一人一人が環境について考える」など、まず個人が問題意識を持って行動すべきことを述べた意見が多く、「公共交通機関を利用する」、「ハイブリッド車や電気自動車の普及と開発を進める」といった自動車による排出ガスの削減に関する記述も多かった。エネルギー起源のCO2排出削減につながるものとしては、省エネの他、再生可能エネルギーの開発・普及の関連で30人、原子力発電の推進の関連で4人が意見を述べていた。今回の調査では、トランプ米国大統領の「パリ協定」離脱通告や、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんの活動など、最近の地球温暖化問題を巡るニュース・人物も取り上げているが、「温暖化対策は誰が中心になるべきか」との質問に対しては、「社会全体」が最も多く48.8%を占めた。これに関して、日本財団の笹川陽平会長は2月7日のブログで、「社会の一員として温暖化に自ら立ち向かう18歳なりの責任感が『全体』の一言に感じられた」としている。同財団では、「恋愛・結婚観」、「災害・防災」、「憲法」、「国政選挙」など、テーマを設け、若者を対象とした「18歳意識調査」を随時実施している。
07 Feb 2020
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東京電力の諮問機関「原子力改革監視委員会」(デール・クライン委員長〈元米国原子力規制委員会委員長〉)が2月4日に開かれ、同社が行う原子力安全改革の進捗、前回会合でレビューされた自己評価に対する改善状況について報告を受けた。東京電力は、福島第一原子力発電所事故の反省を踏まえ、「安全意識の向上」、「対話力の向上」、「技術力の向上」を軸に原子力安全改革プランを進めている。2019年1月の前回委員会会合では、原子力安全改革における(1)組織・ガバナンスの強化、(2)人財育成の強化、(3)コミュニケーションの改善、(4)原子力安全文化の醸成、(5)内部監視機能の向上――の各重点課題に対する自己評価についてレビューし提言を示した。今回の会合では、提言を踏まえた同社の取組状況について、「より厳しい自己評価を実施し、組織・ガバナンスを強化する上で大きな進捗がみられた」などと評価。また、コミュニケーションについては、「『伝える』から『伝わる』への活動を展開しているが、一層取り組んで欲しい」としている。会合終了後、記者会見を行ったデール・クライン委員長は、「外部からの指摘を待たずに、自分で気付くことができているかをチェックした」と述べ、自組織を厳しく評価し弱点を見つける重要性を強調。さらに、情報発信については、「『何ベクレル』といった数値だけでなく、誰でもわかるように説明することが大事」と指摘した。東京電力は、原子力安全改革プランの進捗状況を四半期ごとに取りまとめており、2019年11月に発表した年度第2四半期の進捗報告では、6月の山形県沖地震発生時に柏崎刈羽原子力発電所で生じた通報内容の誤りを踏まえ、通報連絡用紙の見直し、当番体制の強化、訓練実施などの対策を講じ、立地自治体による確認を受けたとしている。クライン委員長は、12月に柏崎刈羽原子力発電所を訪れており、東京電力が進めている安全対策を現場で視察し、「通常運転および様々な仮想の事故シナリオに対して、大きな安全マージンを加えるもの」などと評価した。
05 Feb 2020
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原子力規制委員会は2月4日の臨時会合で、東北電力の原田宏哉社長らと意見交換を行った。同委が事業者の経営層を順次招き実施しているもの。原田社長は、11月に女川原子力発電所2号機について新規制基準に「適合する」との「審査書案」が取りまとめられたことから、「再出発に向けた大きな節目が近付いている」と、運転段階に向けた意識のシフトを述べた。その上で、「発電所の運営管理」、「災害への備え」、「地域との信頼関係」を軸に、経営トップとしてリーダーシップ発揮していく姿勢を示した。東日本大震災以降プラントが長期間停止していることから、「技術力の継承」、「生きたプラントから学ぶ」、「新たな設備の習熟」、「褒める活動」に力点を置いた人材育成強化の取組を説明。技術の継承としては、ベテラン社員による勉強会開催、シミュレーターを活用した教育訓練の実施、OBの活用などが紹介され、委員との意見交換の中で、原田社長は「技術力は一定のレベルに達している」と述べた。この他、委員からは、4月から本格運用を開始する新検査制度に関連して、事業者が小さな気付きを広く収集し改善につなげる取組「CAP」について、より拡充を求める意見などがあった。取材に応じる原田社長意見交換終了後、原田社長は記者団の取材に応じ、女川2号機の再稼働に向けて「工事計画認可、保安規定認可と、まだまだプロセスを踏まねばならないが、6年間に及んだ審査が合格となりモチベーションも上がっている」と、現場の意識高揚を強調。また、「運転経験のない社員が3割を占めており、感受性、技術力を養っていかねばならない」と、人材育成の重要性を改めて述べた。東北電力では、2020年度の完了を目指し同機の安全対策工事を進めることとしている。
05 Feb 2020
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経済産業省は2月3日、浜通り地域の産業創出を目指す「福島イノベーション・コースト構想」に関する情報発信ポータルサイト「Hama Tech Channel」を開設した。同構想のもとで革新的な事業創出に取り組む企業、そこで活躍する人たちへのインタビューをウェブ上で紹介し、SNSを通じた発信拡大も図る。「Hama Tech Channel」開設と合わせ、発信コンテンツの一つ、「福島イノベーション・コースト構想」関連の施設・企業や先端テクノロジーについて取り上げる「浜からビジョン」の第1弾記事が公開された。ここでは、南相馬市の「福島ロボットテストフィールド」の若手エンジニア・三枝芳行氏のロボット開発に抱く想いを紹介。今春に全面オープンする「福島ロボットテストフィールド」は、東西約1,000m、南北約500mの敷地内に「無人航空機エリア」、「インフラ点検・災害対応エリア」、「水中・水上ロボットエリア」、「開発基盤エリア」が設けられ、実際の使用環境を再現しながら、陸・海・空で活躍するロボットの研究開発、実証試験、性能評価、操縦訓練を行うことができる。幼少の時分からロボットが好きで大学生の頃はロボコンにも参加したという三枝氏は、インタビューの中で、「福島ロボットテストフィールド」のメリットとして、「同じ技術者として使用者に伴走しアシストする」と、開発支援の手厚さを強調している。この他、福島県出身の若者が地元で新しいことにチャレンジする姿を取り上げる「地元の星」、福島へ移住した人たちへのインタビューや移住・起業の支援制度を紹介する「移住リアルレポート」など、順次コンテンツを設けていく。
04 Feb 2020
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2021年卒業予定の大学生・大学院生・高専生らを対象とした合同企業説明会「PAI原子力産業セミナー2021」(主催:原産協会/関西原子力懇談会)が2月1日、ベルサール新宿セントラルパーク(東京都新宿区)で開催された。同セミナーは、原子力産業に関わる企業・機関への人材確保支援とともに、原子力産業に対する理解促進・情報提供を目的として、2006年度より毎年行われている。16日には、大阪市に会場を移し、関係企業・機関から36ブースの出展が予定。今回、東京会場45ブースと合わせた出展数計81ブースは過去最高となる。東京会場には約140名の学生たちが参集。同セミナーに初出展した放射線計測関連の外資系企業ミリオン・テクノロジーズ・キャンベラの技術者は、原産新聞の取材に対し、除染作業に伴う除去土壌を収納した土のう袋をトラックに載せたまま放射能濃度を測定できる「TRUCKSCAN」(大林組との共同開発)など、同社の持つ技術力に「学生が関心を持ってくれている」と語った。また、計8回の説明時間を設けた原子力規制庁の採用担当者は、「原子力施設の安全審査以外にも色々な活躍の場がある。訪れる学生の2割くらいは文系」などと、多分野の学生にまず関心を持ってもらう意図を強調。同セミナーに初回から連続参加している原子力発電環境整備機構の採用担当者は、「原子力を学んだ学生が多く訪れており、研究分野がそのまま活かせるのでは」と期待を述べたほか、各地で巡回説明を行う地層処分模型展示車「ジオ・ミライ号」を学園祭で見て関心を持った学生もいると話した。原産協会では、福島第一原子力発電所事故以降、企業・機関で採用ニーズの高い機械系、電気系、化学系などの学生の同セミナー来場者が横ばい状況にあることから、これまで参加経験のある大学・高専への訪問、新たに制作したパンフレット「原子力産業で働いてみませんか?」の配布、理工系学生へのダイレクトメールを通じ、情報発信に努めている。
03 Feb 2020
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国際熱核融合実験炉(ITER)計画で日本が製作を担う「トロイダル磁場コイル」(TFコイル)と呼ばれる機器の初号機が完成し、1月30日に三菱重工業の二見工場(兵庫県明石市)で記念式典が行われた。TFコイルは、ドーナツ状をした磁気の籠の中にプラズマを閉じ込めるトカマク型核融合の重要な機器の一つで、今回の完成により、2025年の運転開始に向けて現在フランスで進められているITERの建設が大きく前進することとなった。ITERで用いられるTFコイルは、高さ約16.5m、幅約9m、重量約300トンのD字型をした世界最大級の超電導コイルで、中心ソレノイドコイルを囲むように計18基が放射状に配置される。ビゴITER機構長らを招きテープカット予備1基を合わせ計19基が製作されるTFコイルのうち、9基を日本、10基を欧州が分担。巨大な寸法に対し1万分の1以下の精度でコイルを巻線・製作することが要求される。今回の完成を受け、式典に出席したITER機構長のベルナール・ビゴ氏は、「日本は常にプロジェクトの中心となる貢献をしており、世界の核融合開発の牽引役だ。クリーンで、安全で、持続可能なエネルギーを得られる核融合の実現に大きく近付いた」と、日本の製造技術を賞賛した。ITERで日本が調達する機器(量研機構ホームページより引用)また、TFコイルに関し、2005年から製作に向けて研究開発を進めてきた量子科学技術研究開発機構の平野俊夫理事長は「新たな挑戦に心が躍る」と、2012年から製作に取り組んできた三菱重工業の泉澤清次社長は「これまで培ってきた技術力を日本のワンチームとして発揮した」と、ITER計画の大きなマイルストーンに際し所感を述べた。TFコイルは、今回の初号機を含めた5基分について、巻線部を三菱電機が、外側構造物は韓国で製作し、同工場で一体化することで完成体となり、神戸港からフランスに向けて出荷される運び。ITER建設の進捗率は2019年末時点で約67%となっている。
31 Jan 2020
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原子力規制委員会は1月29日の臨時会合で、日本原子力発電の村松衛社長らと意見交換を行った。同委が事業者の経営トップを順次招き実施しているもの。村松社長は、「安全に対するモチベーション向上は当社の重要な経営課題」として、安全文化の育成に向けたレベルアップ活動など、自主的安全性向上の取組の強化について説明。その中で、「現場力の維持・向上」に関して、約9年間のプラント停止により、運転の経験者が減少・高齢化してきたほか、保修部門についても、福島第一原子力発電所事故後3年間の新卒採用中断を受け、若手とベテラン社員とがペアを組む教育訓練「現場ブラザーシスター制度」で年齢ギャップが生じていることをあげ、技術伝承の困難さを示唆した。2018年12月に東海第二発電所で発生した作業員の感電死亡事故を踏まえた対策としては、中堅社員による若手工事監理員への指導や協力会社とのコミュニケーション推進などを通じ、再発防止の徹底を図っているとした。東海第二発電所は2018年11月にBWRでは初めて運転期間の20年間延長が認可されており、村松社長は、委員との質疑応答の中で、国内初の商業炉である東海発電所(GCR:ガス冷却炉)の廃止措置とともに、「パイオニア精神を発揮していく」との姿勢を改めて示した。東海第二発電所については、2022年12月の完了を目指し安全性向上対策工事が進められている。また、村松社長は、原電の取組として、米国のエナジーソリューションズ社やエクセロン社との交流を通じたプラントの経年劣化や廃止措置、小型モジュール炉(SMR)開発に関する知見取得など、海外事業者との連携について紹介。「新しいものに関心を持つことは、若手のモチベーションにつながる」と強調した。これに対し、更田豊志委員長は、IAEAからSMRに関する規制の枠組への参加を求められたことを述べ、北米におけるSMR開発の進展状況などを尋ねた。この他、地震・津波に関する審査担当の石渡明委員が昨秋の大型台風を踏まえた気象災害への備えを、バックエンド担当の田中知委員はGCRの炉解体に関する英国の知見活用を指摘した。
30 Jan 2020
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