原子力規制委員会は7月29日、日本原燃の六ヶ所再処理工場について、新規制基準に「適合している」との審査書を決定し、同社に対し原子炉等規制法に基づき変更許可を発出。2014年1月の審査申請から約6年半を要した。同案件については、2020年5月13日に審査書案が取りまとめられ、30日間のパブリックコメントが行われていた。また、再処理施設の運転に係る審査は同委として初めてのケースであることから、審査書の決定に際して行われる経済産業相への意見照会では、エネルギー基本計画との整合性を含め意見を求めており、これに対し、原子燃料サイクル推進の基本的方針から、六ヶ所再処理工場のしゅん工に関して「同計画と整合している」との回答があった。29日の規制委員会定例会合で、原子力規制庁の市村知也新基準適合性審査チーム長代理らがパブリックコメント結果について説明。計574件の意見が寄せられたとしている。これを受けて取りまとめられた審査書の最終案を、更田豊志委員長他、4名の委員いずれも決定することで了承した。更田委員長は、同日の定例記者会見で、「品質管理の問題で審査が一旦中断することもあり、共通の理解を得る上で結構な時間がかかった」と、長期にわたった審査を振り返った。今後、六ヶ所再処理工場の運転開始に向けて設備工事計画の審査などが必要となるが、膨大な数の対象機器類を擁することから、更田委員長は「非常にチャレンジングだ」と、かなり難航する見通しを示した。今回の変更許可を受け、日本原燃の増田尚宏社長はコメントを発表し、「再処理工場のしゅん工、その後の安全な操業に向けての大きな一歩」との認識を示した上で、安全性向上対策の確実な実施、継続的な改善に努める決意と、立地地域からの支援に対する謝意を述べた。同社では2021年度上期の再処理工場しゅん工を予定。また、電気事業連合会の池辺和弘会長も「再処理工場のしゅん工に向けた大きな節目であり、大変意義深い」とコメント。原子力発電のベースロード電源としての活用、原子燃料サイクルの重要性を強調し、今後も業界一丸となって日本原燃を支援していくとしている。
29 Jul 2020
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鹿児島県の塩田康一知事が7月28日、就任会見を行い今後の県政運営に向けての抱負を述べた。塩田知事は、目下の新型コロナウイルス感染症拡大に対する予防対策・医療体制の確保を講じ、安心・安全と経済活動の両立を図ることを最優先に掲げ、中央省庁で地方創生に係った経験を活かし、県が直面する少子高齢化や離島の交通や教育を巡る課題への対応などに、県民の声を吸い上げながら取り組んでいく考えを強調。エネルギー政策に関して、知事はマニフェストの中で、県内の再生可能エネルギー導入促進や、九州電力川内原子力発電所1、2号機の運転期間延長について「必要に応じて県民の意向を把握するため、県民投票を実施する」との基本的考えを示している。会見で、知事は、「原子力の問題は非常に複雑で難しい」と述べ、県民の意見聴取の方法に関しアンケート実施の可能性にも言及。川内1、2号機はそれぞれ2024年7月、2025年11月に運転開始から40年を迎えるが、原子炉等規制法で認められる20年間の運転期間延長に関して、前任の三反園知事が設置した「原子力安全・避難計画防災専門委員会」の構成を見直した上で、九州電力による申請の時期を目途に検討に着手し、科学的・技術的な検証結果を踏まえ、同社や原子力規制委員会に対し所要の対応を要請する考えも示した。また、鹿児島市出身の知事は、2003年に地元で多くの死傷者を出した花火工場の爆発事故を振り返り、「安全というのは非常に大事なもの」として、産業界における安全確保対策の重要性を改めて強調した。
28 Jul 2020
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福島第一原子力発電所事故に関する日本学術会議の分科会活動について紹介する講演会が7月21日、原子力分野の学識経験者の集まり「原子力システム研究懇話会」でオンライン会議を通じて行われた。講演では、学術会議の総合工学委員会で主に事故調査に関して報告書・提言の取りまとめに係ってきた松岡猛氏(宇都宮大学名誉教授)が登壇。事故から8か月後の2011年11月に設置された同委原子力事故対応分科会は2014年に、政府、国会、民間などによる事故調査報告書について学術的立場から検討を行い、報告「福島第一原子力発電所事故の教訓」を発表した。事故の進展に関し、松岡氏は、1号機非常用復水器(IC)の作動、2号機のベント操作、3号機高圧注水系(HPCI)停止の妥当性など、分析の経緯や得られた見解を紹介し、原子力の安全性向上に向けた科学者コミュニティの役割を強調。また、同氏は最近の活動として、6月末発表の提言「原子力安全規制の課題とあるべき姿」を紹介。原子力安全規制機関を主な対象として、(1)規制機関と被規制者・事業者の関係と双方の取組姿勢、(2)リスク情報の活用、(3)優先順位と迅速性(グレーデッドアプローチ)、(4)安全対策機器の増設に伴う課題、(5)規制基準の体系的かつ継続的な改善、(6)安全目標、(7)組織文化と安全文化の課題、(8)安全研究・情報基盤の確立・人材育成の統合的マネジメント――について提言している。原子力の安全性向上に関して今後は、検討中の提言「新知見への取組強化について」を取りまとめた上で、9月にはシンポジウムを開催するなど、さらに議論を深めていく考えを述べた。続いて、森口祐一氏(東京大学大学院工学系研究科教授)が登壇し、同じく学術会議総合工学委員会による報告「福島第一原子力発電所事故による環境汚染の調査研究の進展と課題」(既報)について紹介。今回の講演会は福島第一原子力発電所事故から間もなく10年となるのを契機に行われたものだが、原子力委員長代理や日本原子力研究所理事長を歴任後、2013年に技術同友会で「過酷事故を二度と起こさないための対策と提言」を取りまとめた齋藤伸三氏は、学術会議の今後の活動に向けて、発表した提言に対するフォローアップなどを通じ、より存在感が示されるよう期待を寄せた。
27 Jul 2020
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日本原子力学会は7月21日、福島第一原子力発電所の廃炉に伴う廃棄物管理対策に関する報告書を取りまとめ発表した。同学会の廃棄物検討分科会によるもので、2021年から開始予定の燃料デブリ取り出しの終了を前提に、エンドステート(サイトの最終的な状態)に至るまでの放射性廃棄物の取扱いに係るシナリオを設定、分析した上で、廃炉・サイト修復を安全かつ効率的に進めるための課題を提言している。報告書ではまず、原子力施設の廃止措置、放射性廃棄物の分類・発生量・処分方策、サイト修復、エンドステートについて、国内の現状や国際機関の文書に基づき説明。また、事故炉としての廃棄物管理対策検討に向け、エンドステートに至るタムライン、サイト領域区分、廃棄物特性などの見通しを示した。福島第一原子力発電所廃炉のエンドステートとしては、サイト内の機器・構造物および汚染土壌・地下水等の汚染に関し(1)すべて取り除かれた状態(全撤去)、(2)一部が管理・監視の可能な状態で残存する状態(部分撤去)――の2ケースを、廃炉方式としては、IAEAの分類に基づき「即時解体」と「遅延解体」(「安全貯蔵」の後に解体撤去)をあげ、これらを組み合わせた4つの放射性廃棄物取扱いシナリオを設定し検討。それによると、「全撤去・即時」のシナリオでは、サイトはクリーンな更地となるが大量の放射性廃棄物が短期間で発生。「部分撤去・即時」のシナリオでは、放射性廃棄物の発生量を低減できるが、保管施設設置のためサイト開放が一部に限られるなどとされた。また、「全撤去・安全貯蔵」と「部分撤去・安全貯蔵」のシナリオでは、廃炉作業に取り組む時期が遅くなるため、施設解体のための技術的準備や作業の容易化などが可能となるが、それぞれ解体廃棄物の取扱い、サイト開放が限定的となることが課題としてあげられた。これらの検討結果を踏まえ、(1)福島第一廃炉終了の定義に係る議論、(2)エンドステートに係る議論、(3)ステークホルダーによる討議機会の整備、(4)放射性廃棄物低減の取組の早期実施、(5)放射性廃棄物処分に係る制度の見直し――を提言。エンドステートに関しては、工程ごとの達成目標「中間エンドステート」の設定に言及したほか、海外におけるサイト修復・環境管理の事例として米国の「EM計画」を紹介している。
22 Jul 2020
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資源エネルギー庁は7月17日、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関する「関係者のご意見を伺う場」を福島市内で開催した。2月に取りまとめられた委員会報告を受け、政府としての取扱い方針決定に資するため4月以降行われているもので、5回目となる。今回は、福島県議会、福島県青果市場連合会、福島県水産市場連合会他より意見を聴取。福島県議会の太田光秋議長は、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大に伴う外食産業の営業自粛やイベントの中止により生じた農林水産業・観光業への影響を、被災地として「より深刻なもの」と憂慮。処理水の取扱いに関し、県内市町村議会による海洋放出に反対する決議などを踏まえ、「国民の理解は十分に得られていない」として、(1)風評対策の拡充・強化、(2)幅広い関係者からの意見聴取と様々な観点からの検討、(3)取扱い方針を決定するまでのプロセス公開と丁寧な説明――を要望した。また、福島県青果市場連合会の佐藤洋一会長、福島県水産市場連合会の石本朗会長は、生産・出荷者と小売業の中間に位置する立場から、それぞれ「山菜・きのこ類(野生)が痛手を負っている」、「試験操業から脱せず苦しい思い」と、農産物の出荷制限や水揚量回復の遅れなど、実質的被害が継続している現状を訴えた。県漁業協同組合連合会との協調姿勢から、石本氏は「早急な海の回復が望まれる」と強調した上で、処理水の取扱い決定に際しては慎重を期するよう切望。川俣町在住の菅野氏、トリチウム分離技術の確立や全国レベルでの風評対策を強調(インターネット中継)この他、「福島原子力発電所の廃炉に関する安全確保県民会議」から4名が意見を述べた。その中で、川俣町在住の菅野良弘氏は、福島第一原子力発電所の汚染水を浄化する多核種除去設備(ALPS)では取り除けないトリチウムを巡る課題に関し、「分離技術が確立するまで保管の継続を」と述べ、委員会報告で処理水取扱いの現実的な方法の一つにあげられている海洋放出には反対する考えを表明。また、同氏は、風評被害対策に関し「今海洋放出を行ったらこれまでの努力が水泡に帰す。これは、福島県民皆が持っている不安」とした上で、長期的観点からわが国全体の問題として考える必要性を訴えた。資源エネルギー庁は、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関する意見募集を、7月31日にまで延長し実施している。
20 Jul 2020
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福島県立医科大学健康リスクコミュニケーション学講座の研究チームはこのほど、福島第一原子力発電所事故に伴う心理的影響に関する論文を発表した。6日にオンライン英文科学誌「PLOS ONE」に掲載されたもの。同研究では、マーケティングリサーチを手掛けるマクロミル社の協力を得て、2018年8月に福島県と東京都の各416人(20~59歳)にオンライン調査を実施。調査結果について、健康不安、精神的苦悩、放射線リスク認知、マインドフルネス(「今、この瞬間」を大切にする生き方)の関係を分析しモデル化した。その結果、福島県民、東京都民ともに、精神的苦悩に与えている影響は、放射線リスク認知よりも、全般的な健康不安の方が大きく、特に福島県民では学歴が高いほどその傾向が強く現れていた。また、東京都民では、放射線リスク認知と精神的苦悩との間に有意な関連性はみられなかった。これを踏まえ、研究チームの竹林由武助教は、「放射線への不安よりも、全般的な健康不安への支援が精神的苦悩の改善に有効では」などと述べている。今回の調査では、精神疾患者を見つける「ケスラー6」手法なども用いた詳細な解析を実施。これらを通じ、福島におけるコミュニティ支援の効果や、災害発生時におけるマインドフルネス強化の重要性を指摘している。
17 Jul 2020
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経済産業省と環境省は、地球温暖化対策計画(2016年5月閣議決定)の見直しを含めた気候変動対策について検討を開始する。8月にも産業構造審議会と中央環境審議会による合同会合を始動し、「ポストコロナ時代」を見据えた中長期の方向性を双方が協力・切磋しながら幅広く議論していく。パリ協定を踏まえ2020年3月に政府が国連に提出したNDC(国が決定する貢献)では、地球温暖化対策計画の掲げる中期目標「2030年度に2013年度比で26%減」の水準にとどまらない削減努力を追求すべく、同計画の見直しに着手し、エネルギーミックスと整合的に温室効果ガス全体の施策を積み上げ、「さらなる野心的な努力を反映した意欲的な数値」を目指すとしている。資源エネルギー庁長官に就任する保坂氏経産省は7月14日、20日付の幹部人事異動を発表。地球温暖化対策計画やエネルギー基本計画の関連では、エネルギーや産業技術・地球環境の政策分野で長く経験を積んだ保坂伸・貿易経済協力局長の資源エネルギー庁長官への起用他、技術系の登用、関連施策間の兼務を図るなど、エネルギー、環境、イノベーションの各施策を一体的に強化していく方向性がうかがえる。13日には総合資源エネルギー調査会の電力・ガス基本政策小委員会で、エネルギー安定供給に万全を期しながら脱炭素社会を実現すべく、非効率石炭火力のフェードアウトに向けた検討が開始。1日にはエネルギー基本計画の見直しに向け、同基本政策分科会が10か月ぶりに再開し、原子力発電の立地地域から2030年エネルギーミックスの掲げる「発電量比率20~22%」に遠く及ばぬ現状が指摘されたほか、新任の委員から小型モジュール炉(SMR)の将来展望が強調されるなどした。
15 Jul 2020
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福島県は7月15日より、県クリエイティブディレクター・箭内道彦氏監修、アイドルグループのTOKIOの出演による新作CMを通じ、旬を迎える県産の果物・野菜や魚介類の魅力を発信する。 このほど制作されたCMは、「桃篇」(城島茂さん出演)、「夏野菜篇」(国分太一さん出演)、「カツオ篇」(松岡昌宏さん出演)の3編あり、県内の他、首都圏、関西などでも放映予定。「桃篇」では城島さんと農家の人たちが桃をまるかじり。福島の子供たちも登場する「夏野菜篇」では、縁側で涼む国分さんが氷水で冷やしたきゅうり、トマトのおいしさをPR。「カツオ篇」では、松岡さんがしょうがをすりおろし、カツオの刺身を食べるが、盛り付け方法やおいしさの秘訣は県産農林水産物のPR特設サイト「ふくしまプライド。」でも紹介されている。福島県の内堀雅雄知事は7月13日の定例記者会見で、新作CMの見どころとして、「生産者の皆さんとTOKIOの皆さんの素敵な笑顔」、「ベコ太郎(郷土玩具赤べこをモチーフしたキャラクター)と『んだんだ』のリズム」、「正に今、旬を迎えた県産の農林水産物」を強調。これまでも国内外で食品や観光のトップセールスを積極的に行ってきた内堀知事は、震災から9年余りを振り返り「ハード面での復興は間違いなく前に進んできたが、風評の問題はやはり根強い」として、今後も県産農林水産物の品質の高さをアピールしていく考えを示した。
13 Jul 2020
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【国内】▽1日 原子力委が六ヶ所再処理工場の平和利用担保を「妥当」、規制委審査の意見照会で▽2日 内閣府が感染症流行下での原子力災害避難に関し考え方まとめる▽3日 規制委、原子力機構「HTTR」に対し新基準による原子炉設置変更許可▽5日 2020年度エネルギー白書が閣議決定▽11日 原子力機構が大気拡散予測を大幅に効率化する「WSPEEDI-DB」開発▽15日 慶大の研究グループがエネミックス選好に及ぼす社会的・経済的要因で研究成果発表▽17日 産業構造審が新型コロナ踏まえた今後の政策に向け議論、エネ基の着実な実施も▽19日 原子力学会会長に京大・中島氏が就任、福島第一事故から10年を機に来春のシンポ開催を表明▽22日 原子力防災会議が女川発電所に係る緊急時対応を了承、感染症対策も▽23日 茨城県議会が東海第二再稼働の県民投票条例案を否決▽24日 規制委、四国電力伊方発電所の使用済燃料乾式貯蔵で「審査書案」了承▽24日 内堀福島県知事が中央省庁を訪れ、復興・創生の加速化などを要望▽25日 規制委検討会が福島第一の水素爆発映像の分析へ、テレビ局の協力得て▽電力各社が株主総会開催▽26日 宮城県が女川発電所に関する住民説明会要綱発表、8月に7か所で開催▽30日 エネ庁、福島第一処理水の取扱いで4回目の意見聴取、小規模事業者・消費者団体より 【海外】▽1日 英HPC建設プロジェクトで2号機のベース・マット完成▽2日 仏フラマトム社、米BWXT社の原子力サービス事業買収完了▽3日 欧州の原子力関係企業ら、EC宛て公開書簡で原子力が経済復興に果たす役割強調▽4日 カナダのダーリントン2号機が約3年半の改修工事終え運転再開▽5日 米GLE社、サイレックス法ウラン濃縮施設の建設を念頭に米エネ省との契約を再調整▽8日 フェンノボイマ社、ハンヒキビ1号機の建設許可取得に先立ち管理棟着工へ▽9日 カナダ初の「サイト準備許可」申請中のSMRで関係企業がJV創設 ▽10日 フォーラトム、調和の取れた欧州原子力サプライチェーンへの支援をECに要請▽11日 IAEA:「パンデミックで停止を強いられた原子力発電所は皆無」 ▽13日 ベルギー規制当局、高レベルと長寿命低中レベル廃棄物の地層処分案を支持▽14日 南ア、合計250万kWの原子力新設計画の準備で情報提供依頼書を発出▽15日 米規制委、オクロ社製SMRの建設・運転一括認可(COL)申請を受理▽15日 ロシアが「ブレークスルー計画」で燃料製造ユニットへの機器設置開始▽18日 IEA:新型コロナ後の経済回復計画で原子力への投資も提案▽18日 ロスアトム社、ベレネ原子力発電所建設計画への投資家選定入札でGE社、フラマトム社と協力▽19日 IAEA理事会、イランに対し疑いのある2施設への査察求める決議を可決▽24日 英NIA、CO2排出量の実質ゼロに向け原子力ロードマップ作成 ▽24日 加サスカチュワン州政府、州内でのSMR建設に向け原子力事務局設置へ▽24日 英計画審査庁、サイズウェルCの開発合意書申請を受理▽25日 IEA:「新政策取られなければ2040年までに欧州の原子力設備は全体の5%に」▽26日 ロシア、最新設計のVVER-TOI含め4基の新規原子炉建設準備を開始▽26日 トルコのアックユ発電所建設計画で2号機のベース・マットが完成▽29日 仏EDF、フェッセンハイム2号機を永久閉鎖▽30日 WNA、技術政策方針書で原子力発電所の運転長期化に対する政府支援を要請▽30日 ハンガリーのパクシュⅡ期工事で建設許可申請 ☆過去の運転実績
10 Jul 2020
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日本学術会議の「原子力安全に関する分科会」(委員長=矢川元基・原子力安全研究協会会長)は7月7日、福島第一原子力発電所事故に伴う環境汚染の調査研究に関し報告書を取りまとめ発表。これまでの政府関係機関や学術界による取組を整理した上で、(1)事故進展解析分野と環境影響解析分野の連携、(2)事故からの経過時間に応じた環境動態モデルと環境モニタリングの継承、(3)情報や試料の散逸防止のための長期にわたる組織的対応、(4)アカデミアと行政機関との連携と役割分担、(5)放射線教育の定着、(6)研究進展の全貌把握・横断的解析――に取り組むよう提案した。福島第一原子力発電所事故時の炉内事象と環境放出との関連性について、報告書では、エネルギー総合工学研究所によるシビアアクシデント解析コードのSAMPSONと、原子力災害対策に用いられるWSPEEDI(世界版緊急時環境線量情報予測システム)との比較を紹介。セシウム137の放出量に関し、両者の解析結果に相違が見られたことから、今後の定量的な放出量評価に向け「甲状腺被ばくの点で重要度の高いヨウ素については高い評価精度が求められる」などとして、事故進展解析と環境影響解析との両分野間交流の意義を説いた。学際的な調査研究を通じ、事故から数年以内で、河川、ダム・ため池、海域、森林、農地、市街地など、水系や土地・土壌、そこにおける生態系に関し、放射性物質の環境動態の実測調査やモデル化が進展したことを評価した上で、今後も環境モニタリングの継承が重要な課題と指摘。さらに、情報の収集と蓄積について、ウェブサイト更新によるリンク切れ、測定試料のアーカイブ問題、住民個人による放射線測定データの活用の可能性にも言及。長期にわたる情報の散逸を防ぐため、「組織的対応を行う恒久的なアーカイブ機関が必要」などと提言した。また、「放射線に対する歴史上の経験を考えた場合、わが国は世界で最も充実した教育と人材育成をすべき」、「事故で明らかになったのは社会としての放射線に関連した知識の欠如」と述べ、放射線教育について、(1)初等中等教育で基本的な知識を系統的に取り入れる、(2)大学における総合教育として環境放射能や放射線の講義を行う、(3)学協会が中心となって関連分野の教員を派遣する――ことを提言。報告書では結びに、環境汚染調査と健康調査の連携が不十分などと、分野横断的な解析に係る課題をあげた上で、事故後10年の区切りを迎えるのに際し、「環境影響の全貌が把握でき、さらに包括的かつ緻密な報告」を、事故の当事国としてまとめる必要性を述べている。
09 Jul 2020
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パリ協定で掲げる温室効果ガスの排出削減目標実現に向け、環境エネルギーに関わる技術課題について議論する「グリーンイノベーション戦略推進会議」(座長=山地憲治・地球環境産業技術研究機構副理事長)が7月7日、初会合を開催した。「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減」を目指し、2019年6月に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」が閣議決定。2020年1月には、2050年までの確立を目指す具体的な行動計画「革新的環境イノベーション戦略」が策定された。同戦略では、(1)エネルギー転換、(2)運輸、(3)産業、(4)業務・家庭・その他・横断領域、(5)農林水産業・吸収源――の5分野・16技術課題について、コスト目標、開発内容、実施体制、工程などを整理した「イノベーション・アクションプラン」が示されており、このほど戦略実行に向けた府省横断(経済産業省、内閣府、文部科学省、農林水産省、環境省)の有識者会議「グリーンイノベーション戦略推進会議」が立ち上げられた。温室効果ガス排出削減総量約300億トン以上を目指すエネルギー転換の分野では、革新的原子力技術や核融合エネルギー技術の実現も含まれている。戦略推進会議では、ワーキンググループを設置し、これらの技術課題について専門的検討を進め、年内にも報告書の取りまとめを行う予定。戦略推進会議のキックオフに際し、松本洋平経済産業副大臣は、「高い目標達成のためには中長期的に多くの技術課題があり俯瞰的視点が重要」と、大所高所から幅広い議論がなされることを期待したほか、「地球温暖化は共通の課題」と、近年の環境イノベーションに関わる産学官連携の進展を歓迎。また、八木哲也環境大臣政務官も、新型コロナを踏まえた社会の再設計や、SDGs達成に向けた地域レベルでの実践的取組などに触れ、2021年のCOP26でアピールできるよう活発な討議を期待した。国際社会への発信に関し、前回のCOP25(スペイン)への参加経験から竹内純子氏(国際環境研究所理事)は、「環境政策はイメージが先行しがち、どのくらいの効果があるのか、エビデンスに基づいた説明も意識する必要」などと、メディアの役割に言及。また、橋本和仁氏(物質・材料研究機構理事長)は、太陽電池の世界的導入に結び付いた1970年代の「サンシャイン計画」を例に、日本がエネルギーの技術革新でいかに貢献してきたか、改めて見直す必要性を強調。一方、「日本はビジネスモデルを作っていくことが非常に苦手」、「成果をいかに社会へ還元していくか」、「将来の社会ビジョンを見据えながら有効な技術を考えていく必要」といった産業創出や社会実装に関する指摘もあった。
07 Jul 2020
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日本原子力学会はこのほど、小学校で使用されている社会科と理科の教科書のエネルギー・原子力関連の記述について調査し提言をまとめた。2009、11年に続く今回の同学会による小学校教科書調査では、新学習指導要領(2017年改訂)に基づいて編集され文部科学省の検定を受けた社会科14点(3~6年、上下巻などの分冊も含む)、理科24点(同)のうち、エネルギー資源や発電、原子力関連の記述が、社会科6点、理科6点で確認されたとしている。その上で、(1)資源・エネルギーについてわかりやすく、(2)日本の電力の状況について定量的に、(3)原子力発電の仕組みについても丁寧に、(4)原子力発電の特徴についてわかりやすく、(5)福島第一原子力発電所事故について適切に――説明を望むと提言。例えば、一部の社会科教科書で、日本における発電方式別(火力、水力、原子力)の発電量・比率をグラフで示しているものや、電力に関する単位(kW 、kWh)についても説明しているものがあり、他の教科書でも「積極的に取り扱われることを提言」などと推奨。また、資源・エネルギーについて考えさせる際、「S+3E」の観点について、「安全である」、「安定して利用できる」、「環境への影響(地球温暖化)が小さい」、「費用を抑えられる」などと、わかりやすく図示することを提言している。学習指導要領では6年の理科で発電について扱うこととなっているが、火力については、理科教科書6点いずれも「化石燃料を燃やして、その熱で蒸気を発生させ、タービンを回して発電機で電気を起こす」といった説明・図があるものの、原子力に関しては3点に記述がなく、「ウランを燃料とする。蒸気を発生させるまでの手段が異なるだけ」という火力との相違点を理解させるようと並列して示すべきと提言。原子力発電の特徴を箇条書きしたわかりやすい例としては、「少ない燃料で多くの電気を作ることができる」、「発電の時に二酸化炭素を出さない」、「燃料や廃棄物の扱いが難しく、安全のための十分な備えが必要になる」、「事故などで有害な物質が放出されると、広い範囲に長く影響を及ぼすことがある」などと、説明している社会科教科書(4年)があった。福島第一原子力発電所事故については、「津波の影響で電気の供給が止まり、原子炉を冷やすことができなくなった」発生原因、放射性物質や風評被害に関し適切に説明すべきと提言。福島の復興に関しては、避難指示区域の解除や富岡町の「桜まつり」復活を取り上げている社会科教科書(6年)があった。
06 Jul 2020
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梶山弘志経済産業相と電気事業連合会加盟各社社長らとの意見交換会が7月2日に行われ、電事連からは、関西電力の金品受領問題を受けた業界全体でのコンプライアンス徹底や、昨秋の大型台風襲来に伴う長期停電を踏まえた電力インフラのレジリエンス強化の取組について報告があった。今回の意見交換会は、使用済燃料対策推進協議会との併催となり、日本原子力発電、電源開発、日本原燃の各社社長も出席。同協議会は、現行のエネルギー基本計画が策定された2018年以来の開催で、電事連は引き続き、各事業者の連携を一層強化し、使用済燃料対策推進計画(2030年頃までに使用済燃料貯蔵容量の6,000トン程度の拡大)の実現、六ヶ所再処理工場とMOX燃料加工工場の早期竣工、プルサーマルの推進、高レベル放射性廃棄物最終処分や廃炉に伴う解体廃棄物への対応、地元の理解・地域振興に努めていくとした。その中で、プルサーマルに関しては、事業者間の連携・協力による、国内外のプルトニウム利用の推進と保有量の管理について検討を進めるとしている。原子力委員会は2018年に「プルトニウムを減少させる」ことを明記した「わが国におけるプルトニウム利用の基本的考え方」を策定。日本のプルトニウム保有量は国内保管分より海外保管分が多く、「事業者間の連携・協力を促すこと等により、海外保有分のプルトニウムの着実な削減に取り組む」としている。一方、電事連によると、現在までにプルサーマル発電で再稼働した四国電力伊方3号機、九州電力玄海3号機、関西電力高浜3、4号機のうち、伊方3号機で1月に商業炉として初めて使用済MOX燃料の取り出しが行われた。使用済MOX燃料の処理・処分の方策については、エネルギー基本計画で、その発生状況や保管状況、再処理技術の動向、関係自治体の意向を踏まえながら研究開発に取り組むとしており、経済産業省は今回、事業者に示した要望事項の中で、技術開発面での協力、具体的な貯蔵・運搬方法の検討を求めた。今回の意見交換会に先立ち、梶山経済産業相は6月30日と7月1日、青森県を訪れ、三村申吾知事ら、地元首長との会談に臨んだほか、日本原燃六ヶ所再処理工場、リサイクル燃料貯蔵(使用済燃料中間貯蔵施設)、東北電力東通原子力発電所を視察した。
03 Jul 2020
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総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=白石隆・熊本県立大学理事長)が7月1日に開かれ、新型コロナウイルス感染症拡大を起因とする国内外の情勢変化を踏まえ、次期エネルギー基本計画の検討に向けて意見交換を行った。現行のエネルギー基本計画は2018年に策定されており、間もなくエネルギー政策基本法に基づく「少なくとも3年ごと」の見直し時期を迎える。同分科会の開催はおよそ10か月ぶりで、冒頭、昨今の新型コロナウイルス感染症を起因とする情勢変化と、それを踏まえた課題と方向性について資源エネルギー庁が整理。IMFやIEAによる試算を示し、過去の第一次オイルショック(1973年)、第二次オイルショック(1979年)、リーマンショック(2008年)と異なり、物理的な行動が制限される「コロナショック」により、「2020年は世界的にGDPもエネルギー需要も大きく低下」などと見通した。また、国内においては、例えば電力需給で、4、5月は前年同月と比較し消費量がそれぞれ約3.6%(速報値)、9.2%(同)減少するなど、影響はあったものの、中央給電指令所や発電所での担当班が相互接触しないローテーション業務・バックアップ体制構築により、電力の安定供給に支障は生じていないと説明。その上で、今後の課題として、(1)新たな日常・生活様式・企業活動を踏まえたエネルギー需要高度化・全体最適化に向けた取組の検討、(2)エネルギー転換(電化・水素化など)の支援・推進、(3)資源・燃料の安定的な調達、(4)エネルギー・環境イノベーション投資に向けた環境整備・デジタル化の促進、(5)脱炭素エネルギー供給のさらなる導入、(6)レジリエンスの強化――をあげた。初出席の白石分科会長今回、分科会長として初めて会合に出席した白石氏は、2021年に見込まれるエネルギー基本計画の改定に向けて「大きな視点から方向性を議論して欲しい」と述べ、委員らに意見を求めた。これに対し、化石燃料に関して、豊田正和氏(日本エネルギー経済研究所理事長)は、石炭火力発電でのアンモニア混焼など、脱炭素化に向けた技術導入・国際協力の可能性を披露。原子力立地地域からは、杉本達治氏(福井県知事)が、「総発電電力量に占める比率は現在6%」と、2030年エネルギーミックスの掲げる「20~22%程度」に遠く及ばない状況を指摘し、次期エネルギー基本計画に向けて、MOX燃料の再処理、リプレース、廃炉の進展を踏まえた交付金制度のあり方、電力業界の不祥事なども「真正面から議論していく」必要性を強調。また、市民との対話活動に取り組む崎田裕子氏(ジャーナリスト)は、海洋プラスチック問題やレジ袋有料化など、SDGsを巡る最近の話題に触れたほか、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による水素社会構築の情報提供事業に対し若年層が高い関心を示していることを述べ、「社会との情報共有の定着化」の重要性を指摘。今回、委員として初出席した隅修三氏(東京海上日動火災保険相談役)は、官民一体となったイノベーション創出を図るべく「小型モジュール炉(SMR)のような安全性の高い原子力技術についても議論を」と主張した。資源エネルギー庁は「コロナショック」に伴うエネルギー需給への影響の一つとして、人流・物流の変化により「需要が集中型から分散型にシフト」したことをあげた。武田洋子氏(三菱総合研究所政策・経済研究センター長)は、最近のアンケート調査結果から「コロナ前後で一番の違いは地方中核都市への分散」と、住まい方に変化が生じつつあることを述べた上で、「コロナ以前から日本が抱えていた社会課題への投資、産業育成や雇用創出につなげていくことが重要」として、次期エネルギー基本計画で、生活者の行動変化を見据えながら中長期的方針を示す必要性を強調した。この他、中東の地政学的リスクへの対応、エネルギー教育・技術基盤の強化、原子力規制のあり方などに関する意見があった。
02 Jul 2020
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資源エネルギー庁は6月30日、福島第一原子力発電所で発生しタンクに貯蔵されている処理水の取扱いに係る意見聴取(4回目)を都内で行った。政府としての方針決定のため、2月に取りまとめられた委員会報告書を踏まえ4月以降実施しているもの。今回は、全国商工会連合会、日本ボランタリーチェーン協会、全国消費者団体連絡会より、小規模事業者や消費者の立場からの意見を聴取した。全国商工会連合会からは事務局長・苧野恭成氏が出席。同氏は、「地域に密着した唯一の総合経済団体」と、全国連の位置付けをアピールする一方、「高齢化により事業の継承が危機に」、「震災から9年が経過したが被災地での回復はいまだ途上にある」といった会員企業の抱える諸課題をあげ、処理水の放出に関し「風評被害に苦しむ小規模事業者がさらに苦境に立たされるのではないか」などと懸念。今後の処理水の取扱いに向けては、国内外への十分な説明と第三者機関による監視の必要性を訴えた。中小小売業の協同体組織とされる日本ボランタリーチェーン協会の常務理事・中津伸一氏も、加盟店について、「高齢者によるパパママストア」、「マスコミの力に弱い」と、報道による消費者行動の影響を受けやすい家族経営店舗の実態を強調。その上で、処理水の放出に関し「安全であれば流せばよいというのが率直なところ」とする一方、「わかりやすく国民に説明し納得してもらうことが大事。いくら安全・安心を呼びかけても買ってもらえなければ中小事業者にとっては死活問題」と、風評被害対策の拡充を切望した。リスコミの重要性を強調する全国消費者団体連絡会の浦郷氏また、消費者の権利保護や暮らしの向上などを目指し活動する全国消費者団体連絡会からは事務局長・浦郷由季氏が出席。同氏は、福島第一原子力発電所に関する学習会の開催を通じた消費者の声を紹介した上で、処理水に関する国民の理解、水蒸気放出と海洋放出以外の検討、地元住民の理解、風評被害対策、国と東京電力の責任の5点について意見を表明。消費者庁他が主催する食品安全シンポジウムにも登壇している浦郷氏は、特に風評被害に関し「福島の漁船というだけで仲卸業者に安く買いたたかれた」という漁業関係者の無念の声などをあげ、「多くの国民が考え、知ってもらうまでは処分方法について決めるべきではない」と、リスクコミュニケーションの重要性を強調した。資源エネルギー庁では7月15日まで、処理水の取扱いに係るパブリックコメントを行っている。
01 Jul 2020
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宮城県は8月に東北電力女川原子力発電所に関する住民説明会を開催する。発電所から30km圏内の在住・在勤者が主な対象で、1日の女川町を皮切りに、石巻市、東松島市、南三陸町と、19日までに計7会場で行われる予定。同発電所では2号機について、2月に原子力規制委員会より新規制基準適合性に係る原子炉設置変更許可が発出されたのを受け、梶山弘志経済産業相が村井嘉浩知事他、立地地域首長に対し同機の「再稼働を進めていく」政府の方針を伝えた。また、6月22日には、内閣府(原子力防災)で半島・周辺離島部の住民避難や避難車両・避難所における感染症拡大防止対策などを盛り込んだ「女川地域の緊急時対応」が了承されたところだ。住民説明会には、内閣府、資源エネルギー庁、原子力規制庁、東北電力が出席。県は今後、説明会開催を踏まえ県議会の意見も聴取した上で、再稼働に対する同意の是非に関し経済産業相に回答する。村井知事は22日の記者会見で、女川2号機について、説明会開催の考えとともに、東北電力との安全協定、防災対策と、3つの並行して進める手続きを整理した。安全協定については、県が設置する安全性検討会からの報告を受け、立地自治体である女川町と石巻市と協議の上、東北電力に回答。防災対策については、今回の「女川地域の緊急時対応」了承を大きな節目ととらえ、今後も引き続き避難計画の実効性向上に努めていくとしている。
29 Jun 2020
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原子力規制委員会の福島第一原子力発電所事故に関する検討会は、1、3号機で発生した水素爆発の映像を用いた調査分析に着手する。6月25日の同検討会会合に、映像を提供する福島中央テレビ/日本テレビが出席し説明に臨んだ。福島中央テレビによると、爆発の瞬間をとらえたカメラ(富岡町)は、福島第一、第二発電所から南西の方向に、それぞれ約17km、約10kmの距離にあり、JCO事故を受けて同局が2000年に設置したもの。その後、機材の高度化・増設が進められ、東日本大震災発生当時はバックアップ用となっていたが、山側の電源ルートを使用していたことにより停電を免れ唯一発電所の状況を撮影できた。爆発発生当時について、「原子炉建屋で白い煙が上がった」ことを確認し、放送中の番組を中断して映像を流し「いち早く発信することで報道としての責任を果たした」などと振り返った上で、「事故を検証し後世に伝えていくべき」と、映像提供の意義を強調。また、福島中央テレビと日本ニュースネットワーク(NNN)でつながる日本テレビの森田公三報道局長は、テレビが与えるインパクトの強さを改めて述べた上で、今回の映像提供に関し「事故の真相解明は極めて大事な責務」として、画像鮮明化などの技術面で引き続き規制委員会に協力していく姿勢を示した。同委検討会は昨秋5年ぶりに再開。前回までの会合で原子炉格納容器破損時の水素挙動が論点の一つとしてあがっていた。今後、水素爆発発生時の映像を用い、建物の変形、爆煙の広がり方、飛散物など、さらに調査分析を進め、年内を目途に一定の取りまとめがなされる見通し。
26 Jun 2020
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福島県の内堀雅雄知事は6月24日、経済産業省他、中央省庁を訪れ、復興・創生に向けた提案・要望活動を行った。梶山弘志経産相との会談では、浜通り地域の産業創出を目指す「イノベーション・コースト構想」のさらなる推進などを要望。新型コロナウイルス感染症が地域経済にもたらした影響の克服、「復興・創生期間」後における復興のさらなる加速化を全般的事項とし、避難地域・浜通りの復興・再生、風評被害対策の強化、「復興五輪」延期に伴う財政支援など、各省庁を通じて計46項目を要望。このほど、復興庁設置法等の改正により、地震・津波被災地域は「総仕上げ」段階にある一方、原子力災害被災地域では中長期的対応が必要となっている状況を踏まえ、2020年度までの「復興・創生期間」に引き続き復興を支える仕組み・組織・財源の整備が図られることとなった。要望事項の中で、「イノベーション・コースト構想」に関しては、3月に全面開所した「福島ロボットテストフィールド」の利用促進、エネルギー関連産業の集積、新重点分野(医療、航空宇宙)への支援の他、現在復興庁とともに検討が進められている国際教育研究拠点の構築について、「国立の研究開発法人として新設し、国が責任を持って長期にわたる予算、人員体制を確保すること」が盛り込まれた。東日本大震災・原子力災害伝承館のイメージ図(福島県発表資料より引用)また、今秋に双葉町に開館予定の「東日本大震災・原子力災害伝承館」への継続的支援として、資料収集を始めとする各事業の実施、研究体制構築などに要する運営費について、必要な予算確保を要望。今回の要望では、昨秋の東日本台風に伴う甚大な被害を踏まえ、大規模自然災害に備えた総合的な防災・減災対策や、国土強靭化の取組に向け必要な制度設計や財源確保に努めるよう関係省庁に求めている。
25 Jun 2020
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原子力規制委員会は6月24日の定例会で、四国電力伊方発電所における使用済燃料乾式貯蔵施設の設置について、原子炉等規制法で定める許可基準に「適合している」とする審査書案を了承した。今後、原子力委員会と経済産業相への意見照会、パブリックコメントを経て正式決定となる運び。乾式貯蔵施設の設置に係る審査書案了承は同委として初のケース。同施設は、伊方発電所で発生した使用済燃料を再処理工場へ搬出するまでの間一時的に貯蔵するもので、輸送・貯蔵兼用の使用済燃料貯蔵容器(乾式キャスク、高さ5.2m、直径2.6m)45基分の貯蔵容量を持つ。輸送・貯蔵兼用の乾式キャスクは、4つの安全機能(閉じ込め機能、臨界防止機能、遮蔽機能、除熱機能)を有し、使用済燃料を別の輸送容器に詰め替えることなく発電所外へと搬出できる。四国電力では乾式貯蔵施設を2023年度より運用開始する予定。原子力発電所を有する電力各社では、使用済燃料の貯蔵能力拡大に取り組んでおり、その一つとなる発電所敷地内の乾式貯蔵の審査は、2018年5月に申請された伊方発電所の他、九州電力玄海原子力発電所、中部電力浜岡原子力発電所について進行中。資源エネルギー庁が同年12月に発表した資料によると、乾式貯蔵施設を設置することで、使用済燃料貯蔵の余裕年数(同一サイト内で廃炉を除く全プラントの一斉稼働を仮定)が、伊方では11年から36年、玄海では3年から10年、浜岡では2年から8年へとそれぞれ延長すると試算されている。規制委員会の更田豊志委員長は、定例会終了後の記者会見で、東日本大震災に見舞われた福島第一原子力発電所内の乾式貯蔵施設について触れ、「あれだけの地震・津波にもかかわらず燃料に対する影響はまったくなかった」ことから、一定の冷却が進んだ使用済燃料は再処理までの間乾式貯蔵されることを改めて推奨した。
24 Jun 2020
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財務省はこのほど、税関行政の中長期ビジョン「スマート税関構想2020」を発表した。多様化・複雑化が進む税関業務の現状を踏まえ、「Solution」(S:利便向上策)、「Multiple-Access」(MA:多元連携)、「Resilience」(R:強靭化)、「Technology & Talent」(T:高度化と人材育成)の4つキーワードに掲げ、AIなどの先端技術を活用し「世界最先端の税関」を実現するための施策を取りまとめたもの。同構想では冒頭、過去30年間で、貿易額は約2.8倍、訪日外国人旅行者数は約13.2倍と、大幅な伸びを見せ、経済連携協定(EPA)の締結も進むなど、税関を取り巻く環境は大きく変化したとしている。こうした「モノの流れ」、「ヒトの流れ」、「カネの流れ」に加え、「社会構造の変化/災害リスク」、「先端技術の進展」、「国際治安情勢の変化」も見据え、「SMART」で今後10年程度に取り組むべき各種施策について工程表を整理。その中で、「Technology & Talent」に関する取組として、ビッグデータ解析、AIによるX線画像解析、NQR装置(覚醒剤隠匿探知装置)の活用などがあげられている。これまでも税関では、輸出入貨物の増加に伴い、全国各地の港にコンテナ車にも対応できる大型X線検査装置の配備を進め、検査時間を短縮化するとともに、不正薬物、銃器・銃弾、ワシントン条約に該当する動植物、盗難自動車などを摘発してきた。今後は、貨物のX線画像データを大量に学習させAIで貨物の品目を自動識別しリスクを判定するシステムを実用化し業務のさらなる高度化・効率化を図っていく。NQR装置は、旅客の体内や身辺に隠された覚醒剤をラジオ波により探知する。諸外国税関での先端技術活用事例としては、オランダでAIを用いたコンテナX線検査画像解析アルゴリズムの実証試験が、オーストラリアや中国では顔認証技術により空港旅客の通関を自動化する取組が進められている。
23 Jun 2020
3470
政府の原子力防災会議(議長=安倍晋三首相)は6月22日、東北電力女川原子力発電所を対象とした避難・屋内退避などの防護措置についてまとめた「女川地域の緊急時対応」を了承した。17日に内閣府の設置による立地地域の防災計画・避難計画を支援する「女川地域原子力防災協議会」(第2回)が開かれ、新型コロナウイルスなどの感染症流行下における防護措置を盛り込み、被ばくによるリスクと感染症拡大によるリスクの双方から住民の生命・健康を守る緊急時対応として、3月に取りまとめた初回版に対し改定が施されたもの。内閣府は2日に、現下の新型コロナウイルス感染症拡大を踏まえ、「感染症流行下での原子力災害時における防護措置の基本的考え方」を発表。今回の緊急時対応は、同考え方を反映した初めてのケースとなり、避難車両・避難所における感染防止対策の他、自宅での屋内退避を行う場合には「放射性物質による被ばくを避けることを優先して屋内退避を実施し、換気は屋内退避の指示が出されている間は原則行わない」としている。また、女川発電所が立地する地域の地理的特性から、牡鹿半島および周辺離島部については、海路による避難が想定されることを踏まえ、発電所から概ね5km圏内の「予防的防護措置を準備する区域」(PAZ)に準じた「準PAZ」を設定し、緊急時には放射性物質の放出される前の段階から予防的に避難を実施。津波との複合災害については、「原子力災害に対する避難行動よりも津波に対する避難行動を優先」などとしている。宮城県では5月、「女川地域の緊急時対応」(初回版)が3月に取りまとめられたのを受け、PAZおよび、発電所から概ね5~30km圏内の「緊急防護措置を準備する区域」(UPZ)における避難計画に関し、避難に要する時間や混雑状況など、シミュレーションによる調査結果を発表した。これに対し、内閣府は「訓練の中で検証し課題解決を図っていく」として、自治体とともに避難計画の改善に努めていく考えを示している。原子力防災会議に臨んだ安倍首相は、「災害対策に終わりはない」と述べ、今回の緊急時対応について、さらに継続的検証・改善を図っていく考えを強調した。
22 Jun 2020
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茨城県議会は6月18日、連合審査会(防災環境産業委員会・総務企画委員会)を開き、日本原子力発電東海第二発電所の再稼働の賛否を問う県民投票条例案を審議。防災環境産業委員会は採決を行い、反対多数で否決となった。今回の審査結果は23日の県議会本会議に報告され採決となる運び。「いばらき原発県民投票の会」共同代表の鵜澤氏同条例案は、「いばらき原発県民投票の会」が約87,000人の署名を集め、地方自治法に基づく請求により議会に提出されたもので、同会共同代表の鵜澤恵一氏は、「東海第二の再稼働は茨城県民全体が当事者」と、県民投票を実施する意義を主張。また、大井川和彦知事は、6月8日に開会した県議会への条例案提出に際し、県民の意見を聴く方法について「慎重に検討していく必要がある」との談話を発表している。住民投票を巡る現状について説明する茨城大・古屋氏今回の審査会に参考人として招かれた茨城大学人文社会科学部教授の古屋等氏によると、近年、いわゆる「NIMBY」施設に関する住民投票は、沖縄県の辺野古米軍基地に係る県民投票で前例があるが、原子力発電所については宮城県、静岡県、新潟県など、いずれも議会で条例案が否決されている。同氏は地元の立場から、「国策である原子力発電は国が責任を持って判断すべき」としたほか、県民の意見を聴く方法に関して「原子力の先進県としてできる限り独自性を出すべき」などと意見を述べた。JCO事故を踏まえた情報発信・対話活動について説明する東海村・山田村長また、東海村村長の山田修氏は、「東海第二の再稼働について、住民の意見をどう把握するか非常に悩み模索している最中」と述べた上で、1999年のJCO事故以降実施している安全懇談会や住民とのふれあい活動など、情報発信・直接対話の取組を紹介。さらに、松江市で原子力をテーマに行われた住民主体の「自分ごと化会議」を例に、「まずは関心を持ってもらい冷静に議論してもらう」重要性を強調した。この他、資源エネルギー庁政策統括調整官の覺道崇文氏、原子力規制庁安全規制管理官(実用炉審査)の田口達也氏らが、それぞれエネルギー基本計画における原子力の位置付け、東海第二発電所の新規制基準適合性審査の経緯を説明。同発電所は2018年に、1978年の運転開始から60年間の運転期間延長が認可されている。参考人からの意見聴取を受け、討論に立った委員はいずれも、県民投票条例の制定に向けて集められた多数の署名を「重く受け止める」としたが、議会で多数を占める会派のいばらき自民党他、県民フォーラム、公明党は、「投票結果の取扱いに関する準備が不十分」、「投票率が低いとかえって不信感を招く」、「投票時期によっては次期県議会の拘束につながる」など、現段階での投票実施は「時期尚早」と反対意見を述べた。東海第二発電所の安全性向上対策工事の終了時期は2022年12月が予定されており、また、広域避難計画が策定されている自治体は県内5市町に留まっていることなどから、今回の審査会を通じ、安全性の検証や防災対策に関わる情報提供の困難さや、県民の熟議、「○×形式」で民意を問う方法の是非を巡り多くの意見が交わされた。
19 Jun 2020
2749
経済産業省の産業構造審議会(会長=中西宏明・日本経済団体連合会会長)総会が6月17日に行われ、新型コロナウイルスの影響を踏まえた今後の経済産業政策のあり方について議論した。「新型コロナウイルス感染症の影響により、世界経済は大恐慌以来の大きな打撃を受けている」との認識のもと、「足下の緊急時対応」、「新たな日常への移行」、「新たな日常への適応」と、時間軸と連続性を意識した政策議論が必要との考えから、同審議会下の各部会長らが参集し意見交換を行ったもの。経産省の説明によると、2020年の世界全体の実質GDP成長率はマイナス5.2%と、リーマンショック時のマイナス0.1%を下回る水準となるものと予測。日本においても、多くの企業で前年同月と比較し売上に落ち込みが生じるなど、産業界や労働市場にもたらされた影響に関するデータを提示した上で、新型コロナウイルスによって「どのようなトレンドが見られ、どういうものが定着するのか」を見極め「新たな日常への移行」を念頭に必要となる政策の方向性を整理した。さらに、日本経済が「新たな日常」を迎えたときに抜本的な取組を強化すべき政策分野として、「医療・健康」、「デジタル」、「グリーン(気候変動への対応・エネルギー安全保障)」と、分野横断的に「レジリエンス」を提示。気候変動・エネルギー問題の関連で、IEAの試算によると、新型コロナウイルスの影響を受けた経済活動の停滞により2020年の世界のCO2排出量は8%減少する見通しだが、パリ協定で掲げる長期目標の達成には、世界全体でこの減少幅が続く必要があると分析。その上で、脱炭素化社会の実現に向けて日本がリーダーシップを発揮すべく、非効率な石炭火力のフェードアウト、さらなる再生可能エネルギーの導入・原子力の活用、需要側の電化、水素やカーボンリサイクルの技術開発などを進めるべきとしている。このほど総合資源エネルギー調査会会長に選ばれた白石隆氏(熊本県立大学理事長)は、「原子力の比率はまったく満たされていない。エネルギー基本計画をきちんと実施する意識が求められている」などと、エネルギー政策に対する意見を述べた。直近の政策課題の一つとして、雇用システム・人材育成のあり方があげられたが、武田洋子氏(三菱総合研究所政策・経済研究センター長)は、最近の生活者アンケート調査の結果を紹介し、「これまでなかったデジタル化、テレワークの継続」を求める多くの意見があったことを述べた上で、若手の育成や労働需給における分断・格差の問題を指摘。また、高等教育の立場から、益一哉氏(東京工業大学学長)がオンライン講義の有用性、研究開発の強化や公益性を考慮したオープンイノベーションの必要性を、被災地企業の立場から、御手洗瑞子氏(気仙沼ニッティング社長)が「予期せぬことは起きるもの」として、自然災害などのリスクも政策に織り込んでいくことを主張。中小企業政策審議会会長の三村明夫氏(日本商工会議所会頭)は、「大災害を乗り切った日本の強みを明確に示すべき」として、中小企業の活用や地方創生推進の重要性を強調した。
18 Jun 2020
3507
環境省はこのほど、中学生以上を対象に、福島第一原子力発電所事故の発生から、放射性物質の状況、除染、福島県産品の食品の安全性についてわかりやすく説明したパワーポイント学習教材「学んで、考えてみよう 放射線・放射性物質対策のこと」を公開した。2013年度より制作・公開している福島県出身のタレントなすびさんの現地取材によるコンテンツ「なすびのギモン」をベースにしたもの。環境省ではこれまでも、教師が「自身で放射線・除染に関する授業を実施する」、生徒が「身の周りの放射線や除染について知り、考え、成長して県外に出たときに、自分のこと、福島のことを少しでも説明できるようになる」ことを目標に、小学生向けの紙芝居「ふくろう先生の放射線教室」(全3巻)、放射線測定実習プログラムなど、授業での実践事例とともに、資料の制作・公開を行ってきた。今回公開されたパワーポイント資料は、「I.東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故」、「II.除染について」、「III.福島県産品の食品について」、「IV.放射線が体に及ぼす影響について」の4つのテーマを系統立ててスライド形式で整理。例えば、「II.除染について」では、校庭、雨どい、プール、道路、農地の除染手法や、除染効果の確認、除去土壌の保管、中間貯蔵施設への輸送など、一連の取組を写真や地図を交えて説明。また、「III.福島県産品の食品について」では、まず食品中の放射性物質の基準値を述べた上で、生産現場における安全確保の取組として、農地の反転耕(放射性セシウムが付着している表面土と汚染されていない下層の土を入れ替える)、放射性カリウムの吸収抑制対策を紹介。また、市場に流通する前の農水産物、米、牛乳の放射性物質に関するモニタリング検査について、県の他、身近なスーパーでも独自の検査を行っていることをあげるなど、生徒自身でも調べさせるようにしている。
17 Jun 2020
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