玄海町議会は17日、原子力対策特別委員会を開き、地層処分施設立地の「文献調査」受け入れを求める地元3団体からの請願書について審議を始めた。請願書は玄海町の旅館組合、飲食業組合、防災対策協議会の3つの団体から提出されていた。「文献調査」は地層処分施設の立地選定の第一段階となる事前調査で、これまでに応募があった北海道の寿都町と神恵内村での調査が2020年11月から開始されている。17日の会合では資源エネルギー庁からエネルギー政策、地層処分の実施主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)から地層処分の安全性や「文献調査」の内容などについての説明が行われ、出席した議員との間で脱炭素をめざすエネルギー政策の現状と課題、また北海道の寿都町と神恵内村で実施中の「文献調査」の進捗状況や地域住民との対話活動、風評問題等をめぐって質疑が行われた。風評被害に関してNUMOは、すでに調査が行われている2町村で現状、風評問題は起こっていないことを説明し、今後も風評被害を招かないように分かりやすく丁寧に理解活動を進めていくとした。同委員会は来週中にも開催を予定しており、請願の紹介議員から趣旨説明を受けたうえで審議を行う。玄海町議会に請願書が提出されたことに関してNUMOは15日、「地層処分について、地域の皆さまに関心をもっていただけることに深く感謝申し上げます。当機構では今後も、玄海町をはじめとする全国の皆さまに地層処分の仕組みや日本の地質環境などについてご理解を深めていただくため、引き続き全国での対話活動に取り組んでまいります」との理事長コメントを発表した。NUMOでは「対話の場」などを通じてオープンな形での理解活動を、2町村はじめ全国で実施している。地層処分の技術・安全性を含む事業内容や文献調査の進捗状況・結果だけでなく、事業が地域の産業に及ぼしうる効果やリスクなども幅広く説明、加えて地域の経済発展ビジョンについても議論するため継続的な対話を進めてきている。寿都町と神恵内村で「文献調査」が開始されたことを受けて、経済産業省は「文献調査段階の評価の考え方」を昨年11月までにとりまとめた。透明性を確保しながら丁寧に議論を進めるという方針のもと、地層処分技術WGを設置して今年2月からNUMOがとりまとめた文献調査報告案の検討に着手している。
17 Apr 2024
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原子力産業新聞が電力各社から入手したデータによると、2023年度の国内原子力発電所の平均設備利用率は28.9%、総発電電力量は840億5,506万kWhで、それぞれ対前年度比9.6ポイント増、同49.9%増となった。いずれも新規制基準が施行された2015年度以降で最高の水準。2023年度は、関西電力高浜1・2号機が、それぞれ8、9月に発電を再開し、国内で再稼働したプラントは、いずれもPWRで、計12基・1,160.8万kW。国内の40年超運転は、両機の再稼働により、同美浜3号機と合わせ計3基となった。関西電力では、美浜3号機の安全な長期運転に対し客観的に国際的評価を受けるべく、IAEAのSALTO(発電所の経年劣化管理などの活動がIAEAの安全基準に満足しているかを評価する支援プログラム)チームを受け入れ、4月16日に同25日までの予定で調査が開始されたことを発表。今回の調査で得られた知見を、今後のプラント設計や設備保全に反映し、原子力発電所の安全性・信頼性向上に取り組んでいく。〈関西電力発表資料は こちら〉最も高い設備利用率を記録したのは、九州電力玄海4号機で99.8%。同機は3月27日に定期検査入りし、年度内のフル稼働には至らなかった。同川内1号機がこれに次いで99.6%。新規規制基準をクリアし再稼働の先陣を切った川内1・2号機は、それぞれ2024年7月、2025年11月に法令で定める40年の運転期間を満了するが、いずれも20年間の運転期間延長に向け、原子力規制委員会による認可が2023年11月に発出された。両機とも2024年3月の設備利用率はそろって107.7%を記録し好調だ。*2023年度の各プラント運転実績は こちら です。
16 Apr 2024
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2日目のセッション4「原子力業界の人材基盤強化に向けて」では、これからの原子力業界の歩みの中で極めて重要な課題となる人材に焦点をあてて4名のパネリストからの講演、その後に学生のパネリスト3名が加わってのディスカッションが行われた。パネリストには、コンステレーション社 燃料設計エンジニア・クリーンエネルギー推進担当でミス・アメリカ2023のグレース・スタンケ氏、近畿大学 原子力研究所 教授の若林源一郎氏、アジア経済研究所 開発研究センター 主任研究員の牧野百恵氏、国際原子力機関(IAEA) 保障措置評価官/保障措置査察官で原子力青年国際会議 (IYNC) 会長のクリスティン・マデン氏の4名、学生パネリストとして福井南高等学校 3年生の西田 杏乃氏、福島工業高等専門学校 機械システム工学科 5年生の高橋那南氏、早稲田大学 先進理工学部物理学科 学部4年の舟坂柚香氏が登壇した。モデレーターを芝浦工業大学 工学部物質科学課程 環境・物質工学コース 教授の新井剛氏が務めた。セッションへの導入として新井氏は、「原子力産業を学生に魅力あるものにするために」をテーマに講演。特に、原子力産業を学生に魅力あるものにするため、ジェンダー・ダイバーシティにより原子力産業で活躍する女性を増やすことを提言し、原子力産業への関心を呼び起こすためのアプローチの検討を呼びかけた。スタンケ氏は「原子力における若者の役割とメンターシップ」をテーマに、自身が原子力工学に関心を持った背景、若い世代と原子力業界との橋渡しをすることへの思いを語った。原子力産業が求めるのはエンジニアだけではなく、コミュニケーションなどさまざまな人の関わりが大事であることから、スタンケ氏は、次第に原子力産業を若い世代に広く知ってもらう活動にも力を注ぐようになったという。若林氏からは「近畿大学原子炉を活用した原子力人材育成」における高等教育と中等教育について報告があった。中高生のための原子炉実験研修会はこれまで5回開催。毎回定員の16名をはるかに上回る応募があり、参加者の半数以上は女子生徒だという。しかしながら、大学入試の頃になると原子力工学を目指す女子は激減している現状がある。ここに疑問をもった若林氏は、原子力に関心のある子どもたちに対し、進学や仕事の将来像を示すことが、このギャップを埋める鍵になるのではないかと述べた。開発ミクロ経済学の実証研究を専門にする牧野氏は、欧州ではSTEM分野が圧倒的に所得が高く、女子がSTEM分野を専攻しないということが男女間の所得格差の5割を説明していると解説。思い込みがジェンダー格差にもたらす影響の大きさについて紹介した。マデン氏からは、IAEAとIYNCが若い世代や女性に働きかける取り組みが紹介された。特にIYNCでは、若者の専門能力開発と育成に取り組んでおり、気候変動の議論に若い世代の声を反映させるべく、欧州原子力学会等とも連携を図っているという。その後、これまで登壇したパネリストに、学生パネリスト3名が加わり、新井氏のファシリテーションでパネルディスカッションが行われた。パネルディスカッションでは、ジェネレーションとジェンダーという2つの軸を中心に意見が交わされた。西田氏は、「原子力との関わりには広報など文系からのアプローチもできそう」との思いを述べた。高橋氏は、東日本大震災や台風による被災を受ける中、中学生の時に長崎の学生と福島の原発について話し合う機会があり、危ないものだと思い込み原子力発電のことを全く知っていなかったことに気がついて学び始めたという。舟坂氏は「長い海外生活を通じて、人種の問題、多様性について考える機会に恵まれた。原子力産業は社会と科学技術のつながりについて考えられる研究分野だと感じ、宇宙分野での加速器や放射線利用への興味とも合致したので、原子力分野を選んだ」と力強く述べた。実際に原子力業界に飛び込んだスタンケ氏からは、米国で35年ぶりに新規炉の運転が始まり、今年さらに1基が運転開始するなど、技術的な発展に期待を寄せる。また、大学時代にさまざまな企業の面接を受ける機会にも恵まれたことから、原子力工学の専門家だけではなくいろんな人がこの業界で必要とされていることに希望を感じているという。一方マデン氏は、若い世代が気候問題に関心を持っていることを挙げ、原子力はネットゼロに大いに寄与することを若い世代との議論の場を設けて対話をしていきたいと強調した。また、さまざまな人材を原子力産業に巻き込むための人材マッチングツールの開発や、IAEAでの働く環境を知ってもらうためのポッドキャストの展開などについても紹介した。若林氏は、具体的なロールモデルや、自分なりの将来像が見せることで、原子力業界に就職する学生が確実に増えていると指摘。原子力産業で働く近畿大学の卒業生を研究室へ招き、経験談を話してもらう会を何回も開催することで、具体的な将来イメージが湧く。自分の研究を実社会でどのような形で役立てられるのかがわかれば、原子力の分野に進む意欲につながると語った。
15 Apr 2024
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12日に開かれた原子力規制委員会(規制委)の新規制基準適合性に係る審査会合で、北陸電力は今年1月1日に発生した能登半島地震の後、同社の志賀原子力発電所で確認された状況を踏まえ、2014年8月に行った志賀2号機(ABWR、135.8万kW)の新規制基準適合性審査の申請内容に対する影響の有無などについて報告した。地震発生後、志賀発電所に関する初の審査会合となる。北陸電力は、概ね審査済みの「敷地内断層」、「敷地近傍断層」については既往評価への影響の有無を確認。審査未着手の「津波」、「基礎地盤」については申請時の評価への影響の有無及び施設の安全性を確認した結果をとりまとめ、審査会合の場で報告した。報告のなかで同社は、これまでの状況確認の結果を説明したうえで、志賀2号機の既往の申請に示されている敷地内断層等、また津波や基礎地盤に関する評価に影響はないとの見解を示した。また各種研究機関等により本地震に関する調査研究が開始されていることから、同社としても確認が必要な項目について調査を開始したことを明らかにした。さらに同社は今後この地震から得られた知見を収集、整理して必要な調査、今後の審査への反映をしていく、などと報告した。報告を受けた規制委は、敷地内及び敷地近傍の断層に関する同社の報告について「説明はおおむね理解できた」などとし、「新たな知見の収集と整理、審査への反映をしてほしい」と要望した。また断層のずれの有無を確認するための追加的な調査の実施や、各資料の記述の明確化や充実などの点を指摘し、既往の評価に対する影響の有無をより明確にするよう、北陸電力に対応を求めた。同審査会合を担当する規制委の石渡明委員は、今回の地震は広域の液状化という特徴があると述べ、「影響がなかったということをきちんと示すことが大事なので、液状化に関する観察事実をきちんと記述し、既往評価への影響がないという根拠をきちんと示してほしい」などと要望した。会合での指摘を踏まえ、北陸電力は、今後の審査にあたって必要な調査や検討を行って事実の確認や明確化、新たな知見の収集等につとめる考えを示した。なお、同社は地震の後に実施した志賀発電所の点検結果から、志賀2号機の主変圧器に油漏れが認められる等、一部設備に被害が生じたものの外部電源や冷却設備等の重要機能を維持しており、原子炉施設の安全確保に問題は生じていないとしている。現在、被害のあった設備等の復旧が段階的に進められている。
15 Apr 2024
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「第57回原産年次大会」では2日目の4月10日、セッション3(福島セッション)「福島第一廃炉進捗と復興状況」が行われた。同セッションではまず、東京電力福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデントの小野明氏が、福島第一原子力発電所における廃炉・汚染水・処理水対策の現状と課題について講演。2023年8月に開始したALPS処理水の海洋放出については、2023年度内に計4回の実施で、総放出量31,145㎥との実績を述べ、「海水希釈後、海洋放出後のいずれにおいても、トリチウム濃度に異常は出ていない」などと説明。2024年度には、計7回の実施で約54,600㎥を放出する計画だ。1~4号機の使用済燃料プールからの燃料取り出しについては、残る1、2号機で、それぞれ2027~28年度、2024~26年度の開始が予定されている。そのうち、1号機(新燃料を含み392体の燃料が保管)については、取り出しの準備に向け、原子炉建屋を抱きかかえるように囲む大型カバーの設置が2025年夏頃の完了を目指し進捗している状況。2号機(新燃料を含み615体の燃料が保管)については、汚染拡散の防止、作業時の被ばく低減のため、既存建屋の南側に開口部を設け燃料取扱設備を出し入れする計画で、現在、これに必要なクレーンや走行台車を設置する構台・前室の建設が進められているところだ。また、小野氏は、安全な使用済燃料の乾式保管方式として、海外で実績のあるコンクリートキャスクの適用性を検討していることを紹介した。燃料デブリの取り出しに向けては、調査の最も進んでいる2号機から「ごく少量の取り出しから試験的に」着手する予定だが、これに用いるロボットアームは現在、モックアップ試験・訓練中で「現場への適用にはもう少し調整に時間がかかる」ことから、2019年度の調査でも実績のあるテレスコ式装置(望遠鏡の筒が伸縮するイメージ)を補完的に用い、「遅くとも2024年10月には開始したい」と説明。また、1号機では、2024年2月下旬より原子炉格納容器内の燃料デブリの状態を確認するため、小型ドローン(計4機)および無線を中継するヘビ型ロボットを用いたペデスタル(原子炉圧力容器下部の土台)内の調査を実施しており、小野氏は最近取得した映像を披露。今後の取り出し規模の拡大に向けては、3月に原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)の技術委員会が示した提言「気中工法(燃料デブリが気中に露出、もしくは低水位で浸漬した状態で取り出す)に軸足を置きつつ、充填固化工法(充填材で燃料デブリを安定化させ線量を低減し、掘削により取り出す)を組み合わせる」を踏まえ、「今後、1~2年かけて、実際に現場に適用するための設計を検討していく」と述べた。「復興と廃炉の両立」を目指し、小野氏は、廃炉事業への地元企業による参入促進に向けたマッチングの取組を紹介。2024年1月までに、その成約件数は約1,000件にのぼったという。さらに、被災地域の復興の動きを、地元祭礼の復活などから振り返り、「少しずつ人々が戻り、賑わいを見せている。今後も住民の方々が安心してふるさとに帰還してもらえるよう、引き続き安全第一で廃炉を進めていく」と強調した。講演に続いて、パネルディスカッションでは、東京大学大学院情報学環・学際情報学府准教授の開沼博氏がモデレーターを務め、パネリストとして、それぞれの立場から福島の復興に取り組む一般社団法人HAMADOORI13代表理事の吉田学氏、株式会社haccoba代表取締役の佐藤太亮氏、浅野撚糸株式会社代表取締役社長の浅野雅己氏が登壇。いわき市出身で福島復興に関し多くの著書を有する開沼氏は、2015年開催の「第48回原産年次大会」で、福島セッション「ふくしまの未来予想図」のモデレーターを務めたことがあるが、今回の登壇に際し、ALPS処理水の海洋放出開始、双葉町における避難指示の一部解除など、近年を振り返り、「毎年、新しい動きがあるが、まだ解決せねばならない細かな課題が山積している」と、議論に先鞭をつけた。大熊町出身で東日本大震災発生時、建築士として福島第一原子力発電所構内で作業に従事していたという吉田氏は、原子力災害発生後、被災地家屋の調査に尽力。その中で、双葉郡の人口急減を憂慮し、2021年に浜通りの若者による起業を支援する「HAMADOORIフェニックスプロジェクト」を立ち上げた。実際、双葉郡8町村の人口は、2011年の約75,500人から2024年には約17,900人にまで減少しているという。同プロジェクトでは現在18社が採択されており、同氏は、地元食材を利用した古民家カフェ(川内村)、地元の伝統行事「相馬野馬追」に因んだ乗馬ジム展開構想(南相馬市)、震災前には特産品であったキウイの再創出事業(大熊町)などを紹介した。続いて、同プロジェクトに参画している佐藤氏が登壇。同氏は、埼玉県出身だが、誕生日が震災発生日の「3月11日」という因縁から一念発起し、新潟県で酒造りの修業を積んだ後、浪江町・南相馬市で酒蔵「haccoba -Craft Sake Brewery-」を始めた。どぶろくの文化に立ち返り「自由な酒作り“クラフトサケ”」とともに、「若者も集う新しいコミュニティ作り」を標榜。最近はJR常磐線・小高駅を利用した観光にも供する醸造所を開設しており、今後はベルギーでの酒蔵作りも目指しているとした。繊維業の浅野撚糸は、岐阜県に拠点を置いているが、浅野氏は、外国製品の台頭などによる厳しい下請け経営環境からの脱却、国産繊維の復権を目指し、経済産業省からの打診を受けて、2023年に新工場「SUPER ZERO」を双葉町に開設。同社は福島・東北の復興に貢献すべく、昨秋、紳士服のコナカによるプロジェクトともタイアップし「福島復興国産Tシャツ」を製造・販売した。2024年には若手新入社員を迎え入れたほか、最近では、学生も見学に訪れているという。ディスカッションの中で、若者との議論にも積極的な開沼氏は、地元に娯楽が少ないことなど、将来的に人が地方に定着していく上での課題を指摘。これに対し、浅野氏は、最近の外国人記者による取材対応経験に触れ、「社員の生活に責任が取れるのか」といった厳しい質問を受けたとする一方、若手社員らに対するインタビューを通じ「記者たちは納得した様子だった」ことを述べ、「世界はまだ『福島という響き』に誤解を持っている」として、「福島を見てもらう、来てもらう」必要性を強調した。
12 Apr 2024
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大会初日最後のセッション2では、「バックエンドの課題:使用済み燃料管理・高レベル放射性廃棄物(HLW)最終処分をめぐって」というテーマの下、(公財)原子力安全研究協会の山口彰理事がモデレーターを務め、国内外の専門家4名が講演した。高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定、使用済燃料管理の柔軟性確保について、海外事例も参考に、地元との共生という視点を取り入れた議論を通じて、今後のわが国の原子燃料サイクルに係る示唆を得ることが狙い。山口氏は冒頭、原子力の持続的活用には、GX実現に向けた基本方針と国が決定する貢献(NDC)に合致する「正当性」、原子力基本法第一条にある目的(エネルギー資源の確保、学術の進歩、産業の振興、地球温暖化防止)との「合目的性」、革新技術による安全向上や合理的なバックエンドプロセスといった「将来性」、そして、社会的信頼と国民理解、立地自治体との信頼関係、中長期的な対応の柔軟性の「実現性」がカギであるとし、高レベル放射性廃棄物の最終処分へ向けた取組みは、国が前面に立つだけでなく、使用済み燃料の安全管理と貯蔵能力の強化により、対応の柔軟性を高め、中長期的なエネルギー安全保障に繋げるべきと指摘した。その後、原子力発電環境整備機構(NUMO)理事長の近藤駿介氏が、日本の取組状況を発表。最終処分場の選定プロセスにおいて、2002年から文献調査の受入れを公募し、2017年に地層処分に係る科学的特性マップを公開。2020年に北海道寿都町と神恵内村から文献調査の申し出を受け、2024年2月に文献調査報告書草案が完成したばかりだと説明。「容易な道ではないが、原子力発電の持続的利用のために真摯に取り組む」との決意を示した。最後に同氏は、数々の地域社会との対話活動を通じて、事業者が正しい情報を提供し多様な意見に耳を傾け、信頼できる存在であること、事業者の提案する取組みがそこで実施する正当性を有すると認められること、そして事業者が地域社会を大切に考え、信用できる存在であること、が大切であると強調した。続いて、フランス放射性廃棄物管理機関(ANDRA)国際関係部長のダニエル・ドゥロール氏が、「仏深地層処分場の立地から許認可取得までの主な課題と成功要因」と題して講演。ANDRAは2023年1月、高レベルならびに長寿命中レベル放射性廃棄物の深地層処分施設「Cigéo」の建設許可を申請しているが、同氏によると、「Cigéo」プロジェクトは段階的に進められ、フランス議会の継続的かつ強力な関与を受け、役割と責任の明確な分担の下、安定して資金を調達しているという。同氏は「Cigéo」プロジェクトの重要な成功要因について、①明確なガバナンスとステークホルダーとの継続的な対話、②意思決定に余裕のあるロードマップとマイルストーン、③各決定マイルストーンで科学的根拠を示せる研究開発、④安定した資金調達と複数年開発計画を可能にする法と政令──の4点を挙げた。スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)広報担当上級副社長のアンナ・ポレリウス氏は、スウェーデンのバックエンド進捗状況と地元での合意形成について発表。スウェーデンでは、高レベル放射性廃棄物はオスカーシャムの集中中間貯蔵施設(CLAB)で中間貯蔵し、短寿命の低中レベル放射性廃棄物は海底岩盤で処分するほか、使用済み燃料の最終処分場の建設がフォルスマルクで計画中であることなどを紹介した。同氏は、最終処分場をめぐっては、過去に住民とのコミュニケーション不足からデモ騒動にまで発展したが、2023年時点で支持する意見が86%に達していることを明らかにした。そして立地選定プロセスでは、安全第一を原則に、自治体の自発的参加を促し、オープンかつ透明性を確保しつつ合意形成に取り組むほか、調査、評価、運用の段階的な実施がプロジェクトの成否を握る、とその重要性を強調した。最後に同氏は、スウェーデンでは、規制当局が中立の専門家として信頼性が高いことに触れ、事業者は社会の一員となり、一緒に社会を築いていく意識が必要であると強調した。またフィンランドPOSIVA社上級副社長のティナ・ヤロネン氏は、同国で建設中の使用済み燃料最終処分施設(オンカロ)について講演した。POSIVA社は、2001年に最終処分施設サイトとして正式に選定されたオルキルオトのオンカロの操業許可を2021年12月に申請。現在、建設とシステムの試運転を継続中で、今年中に試験操業を見込んでいる。また、オンカロの地上には使用済み燃料の封入プラントも建設している。同氏は、オルキルオトを処分地に選定した理由として、地質学的・長期使用の適切性、サイト面積の広さ、使用済み燃料の大部分がオルキルオトにあること、地元の既存インフラの活用、地元住民の理解、地域の将来戦略上の重要性を挙げた。同氏によると、地元との会合を2か月毎に実施するなど理解促進に努め、処分場を選定する直前に実施された住民調査では住民の約60%が建設候補地になることを支持、全国調査では地層処分の安全性について、1990年の肯定的回答の約10%が2020年には40%前後まで増えたという。立地決定の成功のカギは、①事業者の信頼性と透明性の堅持、②信頼できる当局、明確なプロセスと責任・役割分担、③国民に有益な原子力産業──と指摘した。モデレーターの山口氏は最後に、日本が学ぶべき点として、地域の信頼を得るために原子力や最終処分の正当性を伝えること、ステークホルダーの役割と責任を明確にすること、独立性と専門性の高い信頼される規制機関が安全性を地域住民や国民に伝えること、といった貴重な示唆を得たと評価し、セッションを総括した。
11 Apr 2024
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東京電力では、柏崎刈羽原子力発電所に係る「核物質防護強化の取組」や「安全性を向上させる取組」について、地元からの意見を聴き今後の発電所運営に活かしていくため、「県民の皆様への説明会」を開催している。柏崎刈羽原子力発電所については、2023年12月27日に、一連の核物質防護事案を受け原子力規制委員会により発出されていた「特定核燃料物質の移動を禁ずる是正措置命令」が、規制上の対応区分変更に伴い解除された。東京電力は、2024年に入り1月の柏崎市と刈羽村に続いて、4月2~9日には、県内の新潟市、上越市、長岡市、見附市において、各市内会場で最大約200~400名の県民参加を見込み説明会を開催。福田俊彦・原子力・立地本部長、橘田昌哉・新潟本社代表、稲垣武之・柏崎刈羽原子力発電所長らが県民からの質疑に応じた。説明会は6日、長岡市内のホールで開催。同市は立地自治体と隣接し(刈羽村は飛び地)、柏崎市とは中心駅同士で約35kmの距離にあるが、参加した県民からは福島第一原子力発電所事故にも鑑み、広域的・長期的な防災対策に関する質問・不安の声が多く出されたほか、東京電力が3月28日に規制委員会に提出した柏崎刈羽7号機への燃料装荷を含む使用前確認変更申請について反論の声が上がった。開会に際し、挨拶に立った福田本部長は、「双方向のコミュニケーションの場にしたい」と、忌憚のない意見を求めた上で、一連の核物質防護事案に関して「あらためて地域の皆様を始め、広く社会の皆様に大変な不安・不信を抱かせてしまったことをお詫びする」と陳謝。核物質防護に関するこれまでの改善活動については、「自ら『気付き』を発見し、改善する仕組みを構築できたことは大きな成果。一過性のものとせず、しっかりと定着させることが重要」と述べ、引き続き本社と発電所が一体となり、慢心することなく継続していく姿勢を示した。続いて稲垣所長らが、県民より多く寄せられる疑問に対し回答。元旦に発生した能登半島地震や2007年に発生した中越沖地震に鑑みた自然災害に係る不安に対しては、福島第一原子力発電所事故以前からの対策、それ以降の新規制基準を踏まえ追加・強化した対策、それぞれについて具体策を図示し、「同等の地震が来ても、十分耐えられるように重要設備の耐震設計、地震・津波対策を行っている」と説明した。再稼働に関しては、「地域の皆様の理解があってのこと」との姿勢を繰り返し強調。4つの柱として、「核物質防護」、「安全対策工事・主要設備の健全性確認」、「緊急時等の対応能力」、「コミュニケーション」をあげた。また、運転員についても「約35%が運転経験のない」ことを課題ととらえ、稼働している他社の原子力発電所、共通する設備の多い火力発電所などでの訓練を日々重ねることで、「安全な運転を実現できるものと考えている」と説明。実際、6・7号機の若手運転員からは「停止している今だからこそ、機器類を直接見たり触れたりする機会を大切にしている」との声もあるという。県民からは、福島第一原子力発電所事故の影響を振り返り、事故発生時の避難・防護措置、農林水産物への被害に関する不安の他、説明会開催方法を巡るコミュニケーションの課題などが指摘されるとともに、「ミサイルが飛んできたらどうなるのか」、「原子力発電は止めるべき」との声もあがった。東京電力では、参加者アンケートなども踏まえ、引き続き説明会を行っていく考えだ。
11 Apr 2024
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大会初日午後のセッション1では、「カーボンニュートラルに向けた原子力事業環境整備」と題し、パネル討論が行われた。原子力発電所の新規建設プロジェクトを掲げる英国およびフランスの、プロジェクト実現に向けた技術開発、資金調達、法規制、サプライチェーン・人材確保面での取り組み事例を参考に、エネルギー基本計画の改定を控えた日本への示唆を検証する内容となった。モデレーターを務めたみずほ銀行・産業調査部次長の田村多恵氏は冒頭、英仏両国の特徴として、政府が原子力の価値・役割を明確にし、新規建設実現に向けたロードマップを明示していることを強調。その上で、英国のRABモデル((個別の投資プロジェクトに対し、総括原価方式による料金設定を通じて建設工事の初期段階から、需要家(消費者)から費用(投資)を回収するスキーム。これにより投資家のリスクを軽減でき、資本コスト、ひいては総費用を抑制することが可能になる。))やフランスのMatchプログラム((能力開発プログラム))等、海外事例から学ぶことは多いと指摘した。フランス原子力産業戦略委員会(CSFN)のエルヴェ・マイヤール氏は、同国が2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、既設炉の運転期間を60年以上に延長したことや、新型炉であるEPR2を14基新設する計画であること、SMRプロジェクトにも支援していく方針であること等を紹介。そのためにMatchプログラムや原子力専門大学などを通じて、技能者を育成し、必要となる人材のギャップを埋めていく取り組みを示した。またウクライナ戦争、コロナを経て、国民の間でエネルギー安全保障の観点から原子力への肯定的な意見が増えてきているとし、「長期的に電力価格が安定していることが大切」と強調した。英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)のマーク・ヘイスティ・オールドランド氏は、今年1月に発表された「2050年に向けた民生用原子力のロードマップ」について紹介。原子力人材の高齢化に伴うスキル継承が、英国最大の課題であると指摘した。そしてサイズウェルC原子力発電所(SZC)建設プロジェクトへの適用が検討されているRABモデルについて、「これまで水道や送電線、洋上風力などのインフラに適用してきた実績があるが、原子力へは初適用のため課題が多い。また各国の事情は異なることから、英国の制度をそのまま他国へ導入してもうまくいくとは限らないが、自由市場における民間事業者による運用に限れば、RABモデルは有効である」との認識を示し、「RABモデルを選ぶか、差金決済(CfD)を選ぶかは目標設定によって変わる」と述べた。また、「エネルギー安全保障、気候安全保障、国家安全保障の観点から原子力は重要であり、原子力があるリスクだけでなく、原子力がないときのリスクも考慮すべきだ」との考えを示した。経済産業省原子力政策課長の吉瀬周作氏は、脱炭素化とエネルギー安全保障を両立させる原子力が世界的に脚光を浴びていると強調。COP28での原子力の位置付けや、原子力3倍宣言、世界初となる原子力サミット(於ブリュッセル)の開催等、国際的な機運が高まっていることに加え、IT産業や製造業など幅広い産業において原子力利用の可能性が拡大していると指摘した。そして国内では、データセンターや半導体工場の増加により、電力需要の増加が予測されており、既設炉の再稼働を加速する必要があるとの考えを示した。また吉瀬氏は、人材育成についても、文科省とも連携して力を入れていく考えを示した。電気事業連合会副会長の佐々木敏春氏は、2024年はBWRの再稼働に力を入れていくと言明。新増設については、「民間事業である以上、株主・金融機関などのステークホルダーに対し、収益性が確保されていることを示さなければならない」とした上で、電力市場自由化後の事業予見性の低下や、安全対策投資の大幅増加など、ファイナンス面が改善されない限り状況は厳しいと強調した。また、日本の原子力損害賠償が無過失無限責任である点にも触れ、「このことが民間事業にとって投資判断やファイナンスにおけるネックとなっている」とし、事業予見性が確保されるよう現行制度の見直しを訴えた。同時に佐々木氏は、「原子力の必要性については国民のコンセンサスが得られていると考えている。むしろ原子力発電設備の規模感が重要だ。電力需要増が予想される中で、既設炉の稼働延長にも限界があることから、新増設が不可欠だ」と強調した。最後に田村氏は、オールドランド氏が指摘した「原子力を活用しないリスク」を踏まえた上で原子力の価値をしっかりと認識していく必要があるとし、「一体何のために事業環境を整備するのかを改めて考え、官民で取り組んでいく必要性を再確認できた」と、セッションを締め括った。
10 Apr 2024
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「第57回原産年次大会」が4月9日、東京国際フォーラム(東京・千代田区)で開幕した。国内外より約700名が参集し(オンライン参加を含む)、10日までの2日間、「今何をすべきか 国内外の新たな潮流の中で原子力への期待に応える」を基調テーマに議論する。開会セッションの冒頭、挨拶に立った日本原子力産業協会の三村明夫会長はまず、「原子力発電の積極的な活用の機運が国内外において極めて高まっている」と強調。最近1年間を振り返り、2023年4月の「G7札幌エネルギー・環境大臣会合」では日本がG7議長国として「原子力の最大限活用」が謳われ、12月のCOP28(ドバイ)では「COP史上初めて公式に原子力が積極評価されるとともに、25か国により『原子力3倍宣言』が発出された」とした。また、直近3月には、ベルギー・ブリュッセルで、IAEAとベルギー政府の主催による史上初の原子力に特化した首脳会議「原子力サミット」が37か国参加のもとで開催されたことに言及。こうした動きをとらえ、「原子力発電の拡大を目指す国際的な動きが加速している」と、あらためて述べ、「国内外の強い原子力推進モメンタムの中で、われわれ原子力産業界は今何をすべきなのか」と、今大会基調テーマの趣旨を訴えかけた。開会セッションに続き、セッション1では「カーボンニュートラルに向けた原子力事業環境整備」、セッション2では「バックエンドの課題:使用済み燃料管理・高レベル放射性廃棄物最終処分をめぐって」、10日のセッション3では「福島第一廃炉進捗と復興状況」、同セッション4では「原子力業界の人材基盤強化に向けて」と題し、それぞれ議論する。三村会長は、これらセッションを通じ「原子力の最大活用に向けた課題と展望、日本のみならず世界のエネルギー・環境問題を解決するための糸口について、見出せることを切に願う」と、活発な議論が展開されるよう期待した。続いて、来賓挨拶に立った岩田和親・経済産業副大臣は、「福島第一原子力発電所事故の反省を一時も忘れることなく、高い緊張感を持って、安全最優先で万全の対策を行うことが大前提」と、原子力エネルギーを活用する上での姿勢をあらためて強調。さらに、元旦に発生した能登半島地震に伴うエネルギーインフラに係る被災・復旧状況も踏まえ、「不断の安全性向上に努めていくことが重要。長い積み重ねであっても、一瞬の気の緩みで信頼が失われかねない」との教訓を述べた。原子力発電に関しては、東日本大震災以降、新規プラントの建設機会喪失により、「サプライチェーン・人材を含めた原子力産業を支える事業環境は年々危機的な状況になりつつある」と懸念。次世代革新炉の建設、核燃料サイクルの推進、バックエンドの課題対応などを見据え、原子力産業の基盤を支援すべく「強靭なサプライチェーン構築に向け政策支援を一層強化していく」と、引き続き事業環境整備に取り組んでいく姿勢を示した。開会セッションでは、特別講演として、世界原子力発電事業者協会(WANO)の千種直樹CEO、元米国エネルギー省(DOE)副長官のダニエル・ポネマン氏(ビデオメッセージ)が登壇。千種氏は、1986年のチョルノービリ発電所事故を契機に設立後、世界の原子力発電事業の安全性を向上する「リーダー」となるビジョンを掲げ、35年にわたって情報交換、ベストプラクティス共有などに取り組んできたWANOの活動を紹介。WANOのメンバーとなる発電所は現在、世界で運転中460基、建設中60基に上るという。これまで蓄積された豊富なデータとその分析は「これから建設に入る国々への支援にも資する」などと、WANOのグローバルな活動姿勢を示した上で、こうした活動に対し、産業界からの一層の支援を求めた。また、同氏は、ロシアによるウクライナ侵攻に関し、「ウクライナのすべての原子力発電所にとって非常に由々しき状況」と危惧。WANOとして、IAEAとも協力し、ザポリージャ発電所に係るタスクフォースミッション派遣の他、住民らの心理的ケアも行っていることを紹介した。ポネマン氏は、「エネルギー戦略における新しい視点と原子力の役割」と題し講演。かつても原産年次大会に登壇した経験のある同氏は、あらためて原産協会との協力意義を振り返りながら、「2050年カーボンニュートラル」実現に向けた原子力の役割を強調。電力部門にとどまらず「電気自動車の普及が進むことにより、運輸部門の脱炭素化にも重要な役割を果たす」などと、産業界による技術革新への期待を述べた上で、「世界のエネルギー業界ではますます原子力の拡大が必要」と訴えかけた。さらに、同氏は、データセンターやAIの普及に伴う世界のエネルギー需要増を、「原子力発電所の新設でも賄いきれない、遥かに速いスピードで進む爆発的勢いだ」と懸念。その上で、再生可能エネルギーの限界にも言及し、原子力の役割について、「すべての人の意見が一致することはできないが、こうした深刻な懸念にも立ち向かわねばならない」などと述べ、今大会の議論に先鞭をつけた。
09 Apr 2024
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日本原子力産業協会は4月5日、「世界の原子力開発の動向」2024年版を刊行した。世界の原子力関係施設から得たアンケートなど、独自の調査をもとに、2023年における世界の原子力発電開発の主な動向およびデータ(2024年1月1日現在)を取りまとめたもの。それによると、世界で運転中の原子力発電所は、2023年に、中国で2基、米国、フィンランド、ベラルーシ、インド、UAEでそれぞれ1基ずつ、計7基が営業運転を開始し、一方で、ドイツ、ベルギー、台湾で計5基が閉鎖され、計433基・4億1,244万kWとなった。また、建設中の原子力発電所は、中国で5基、ロシアで2基、エジプトで1基が着工し、計73基に、計画中の原子力発電所は、中国で6基、フランスで2基、韓国で2基、カザフスタンで2基、ウクライナで2基、ブルガリアで1基が新たに計画入りし、計89基となっている。原産協会の新井史朗理事長は、4月5日の記者会見で同書を紹介。福島第一原子力発電所事故以降のエネルギー情勢を振り返り、「原子力発電の導入が停滞していたが、ロシアによるウクライナ侵攻と中東情勢の緊迫化によって、化石燃料の価格高騰に拍車がかかり、エネルギー安全保障の重要性が認識されるとともに、安定供給と脱炭素の両立が可能な原子力の評価が世界的に高まっている」と強調。2023年の特筆すべき動きとしては、米国のアルビン・W・ボーグル3号機、フィンランドのオルキルオト3号機の営業運転開始をあげた。ボーグル3号機は、米国で35年ぶりの新設プラントで同国初のAP1000。同4号機も2024年中に営業運転を開始する見込みだ。オルキルオト3号機は、欧州で12年ぶりの新設プラントとして、2005年に着工したものの、欧州初のEPRということもあり、様々なトラブルに見舞われ、18年を要し2023年5月に営業運転に至った。また、近年、欧米諸国では、小型モジュール炉(SMR)の開発が非常に活発になっており、設計認証手続きが進み、他産業からも関心が表明されていることも注目点だ。一例として、新井理事長は、米国大手化学メーカーのダウ・ケミカル社による小型高温ガス炉の導入に向けたX-エナジー社との協定締結、北米最大の鉄鋼メーカーであるニューコア社の製鉄所・SMR併設計画の他、データセンターへの電力供給を図るSMR導入計画も進んでいることを紹介。同書について、「国ごとに最新の動向をまとめているほか、世界中で進む運転期間延長の状況や、SMRの開発動向などを取りまとめている」と、有用性をアピールした。
08 Apr 2024
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福井県美浜町で3月29~30日、エネルギーへの理解を深める「美浜エネルギー・キャンプ」が開催され、電力生産地と電力消費地の中学生、高校生、高専生、大学生など20名が参加。2日間にわたる様々な体験を通して、エネルギーや電気に対する理解を深めた。同キャンプは福井南高等学校と美浜町の共催。同校の生徒たちが企画し、島根大学、慶應義塾大学、岐阜工業高等専門学校、兵庫県立舞子高等学校、京都府立桃山高等学校、京都教育大附京都小中学校などから希望者が自主的に参加。美浜町が全面的に協力した。参加者は、美浜町レイクセンターで電池推進船に体験乗船し、関西電力・美浜原子力発電所を見学。さらに同町のエネルギー環境教育体験館「きいぱす」((日本で唯一、エネルギー環境教育に特化した体験館で、廃校となった小学校を再利用し、2017年に美浜町営の施設として開館))で、日本のエネルギー事情や電源の特徴に加え、実験を通じて、交流/直流、同時同量、長距離送電を可能にする変圧器の仕組みなどを学んだ。また、きいぱすに電気を供給する太陽光、風力、蓄電池を組み合わせたエネルギーシステムも見学。気候に左右される再生可能エネルギーの通年での稼働状況などを通し、エネルギーをめぐるさまざまな状況を「体感」した。2日間にわたって行われた同キャンプは、生徒たちを主体に進められ、周囲の大人はサポートに徹していた。また、多くの時間を、参加者同士の意見交換に費やしていたことも同キャンプの特徴と言える。最後の意見交換では、幅広い世代にエネルギー問題を理解してもらうにはどうすればよいか議論。「今回のような交流会イベントを定期的に開催し、自分から話し合う機会を設ける」、「発電所を訪問して体験することで、理解度が飛躍的に高まる」、「楽しい旅行のような交流会イベントを企画し、幅広い世代に参加してもらう」、「移動式きいぱすのようなもので、各地を回る」、「電気を全く使わないNO電気デイを過ごしてみる」、「子供がさまざまな体験を通じて学び、そこから親を巻き込んでいく」など様々なアイデアが出た。2日間の日程を参加者たちは「エネルギー問題について自分で考え、また他者の発表を聞く事で自分が思いつかない意見を知り、大変ためになった」、「いろんな地域の人たちが、それぞれ違う考えを持っていて、それをお互いに受け入れて、そのうえで議論し合う、というのが新鮮で面白かった」、「美浜町では原発が地域となじんでいる、生活の一部になっていると感じた」などと語り、今後も引き続きエネルギー問題に取り組む考えを示しながら、互いに再会を期していた。美浜町エネルギー政策課・上野和行課長は、「きいぱすは『エネルギーを通じて主体的に考える』をテーマに掲げた施設。子供たちがそれを体現し、主体的にエネルギー問題を議論する姿に感銘を受けた。原子力発電所の見学と、きいぱすでの実験を通してエネルギーへの理解を深めていただけたようで、町が運営する施設としても自信につながった。皆さんの知的好奇心はまだまだ満足されていないと思うので、これからも学び続けてほしい。美浜町としても応援していきたい」と語った。きいぱす・橋場隆館長は、「豊かな時代はエネルギー問題を意識しなくて済んだ。しかし今は、エネルギー問題を知らないといけない厳しい時代になっている。参加者の皆さんには、今回得たものを周囲の方に話して、あらゆる世代に広げてほしい」と期待を込めた。
08 Apr 2024
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原子力・放射線を含む国民のリスク認識に関する調査報告が、4月2日の原子力委員会定例会合で発表された。同委受託によりMRIリサーチアソシエイツが取りまとめたもの。同調査は、「科学的なデータから推定されるリスクと国民の一人一人が認識しているリスクとの間に乖離がある」との観点から、「一般層」と「原子力・放射線に関する知識を持っている層」の2層に対し、2月にインターネットを通じて実施。各々6,000件、1,000件のサンプル回答を回収した。「原子力・放射線に関する知識を持っている層」は、男性が86.6%で大半を占め、年代別には60代以上が6割を超えていた。「リスク項目」としては、ALPS処理水、産業廃棄物、放射性廃棄物、クリアランス物、化学物質、放射線治療、コロナワクチン、農薬、タバコ、お酒、遺伝子組み換え食品、放射線照射食品、自動車・自転車の運転、電磁波が出る電子機器(スマートフォンなど)など、計21項目を提示。各々、認知度、受容度、危険度について調査した。調査結果によると、各「リスク項目」の認知度に関し、「他の人に説明できる」、「他の人への説明は難しいが、内容を理解している」と回答した「内容理解」の割合は、原子力・放射線関係の項目で「一般層」の認知度が低く、レントゲン検査などの医療系を除きほぼ4割未満。特に、ALPS処理水の「内容理解」については、「一般層」が29.1%だったのに対し、「原子力・放射線に関する知識を持っている層」が48.9%と、両者の差が顕著だった。各「リスク項目」とも、認知度は、「原子力・放射線に関する知識を持っている層」が「一般層」を上回っており、両層ともに、最も高かったのはタバコで、それぞれ、91.7%、69.9%。お酒、自動車・自転車の運転、コーヒー・紅茶・緑茶がこれに次いでいた。また、各「リスク項目」の受容度に関し、「受け入れられない」と回答した割合は、「一般層」の方が「原子力・放射線に関する知識を持っている層」より高く、特に、ALPS処理水については、両者の差が27.9ポイントと、最も顕著。こうした差分は、放射線照射食品の25.2ポイント、クリアランス物の20.8ポイントがこれに次いでいた。各「リスク項目」について、「受け入れられない」理由としては、「少なくても危険性がある」、「自分でコントロールできない」が主にあげられた。逆に、「受け入れられる」理由としては、「ベネフィットがリスクを上回る」があげられ、今回の調査では、受容度を得点化しさらに詳細分析。受容度は、「ベネフィットがリスクを上回る」との回答割合との間に正の相関がみられた。また。危険度に関して、科学的な危険度ではなく、「回答者が当該項目を自身の生活や健康にとって危険だと感じるか否か」を得点化し分析。その結果、受容度と危険度の間には負の相関がみられた。今回の調査では、原子力・放射線関連の項目について、リスクの認知度が低い結果となり、「国や原子力・放射線関係者による情報発信や説明にさらなる改善の余地がある」などと提言している。
05 Apr 2024
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東京電力柏崎刈羽原子力発電所で3月25日より実施されていた、国際原子力機関(IAEA)による専門家ミッションの全日程が、4月2日に終了した。同ミッションは、IAEA主導のもと、国際的な専門家で構成されたチームが、加盟国内の事業者が有する原子力施設、その活動について、国際基準に照らして評価・助言を行うもの。柏崎刈羽原子力発電所では2023年12月27日、原子力規制委員会による「特定核燃料物質の移動を禁ずる是正措置命令」が、規制上の対応区分変更に伴い解除となった。今回、東京電力が受け入れたミッションは、核物質防護の国際専門家により、主にその設備面および運用面の改善に向けた同社の取組についてチェックを受け、継続的改善につなげていくのが目的。来日した5名の専門家らは期間中、ヒアリングや現場の視察を実施。最終日の4月2日、稲垣武之・柏崎刈羽原子力発電所長らとのミーティングに臨んだ。その中で、稲垣所長は、専門家ミッションによる助言に関し、「重要な意見として所員全員で受け止め、今後はこれらのアドバイスに基づきIAEAの国際基準に沿って、当社の核セキュリティを強化していく」と述べた。ミッションの一員であるテクニカルオフィサーのタパニ・ハック氏は、2018年に日本が受け入れた国際核物質防護諮問サービス(IPASS((IAEAが加盟各国の核セキュリティ強化のため勧告や助言を行うもので、日本では2015年に初めて受け入れられ、2018年にフォローアップミッションが行われた。)))を振り返り、「核物質防護システムの幾つかの分野で継続的な改善がなされていることを確認した」と評価。柏崎刈羽発電所において核物質防護事案が発生した2020年以前とも比較して、改善が進んでいると認められた形となる。今ミッションの最終報告書は数週間後に取りまとめられる見通し。
03 Apr 2024
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核融合エネルギーの産業化を目指す「一般社団法人フュージョンエネルギー産業協議会」(J-Fusion)が3月29日に設立され、4月1日には産業界に対し賛同・参画を呼びかけるウェブサイトが立ち上がった。「J-Fusion」は、昨春に政府の統合イノベーション戦略推進会議が策定した「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」に基づくもの。同戦略では、物納貢献を主体としたITER(国際熱核融合実験炉)計画が進展することによる調達減少など、今後の核融合関連産業における「空白期間」を懸念した上で、発電実証を行う将来の原型炉建設への民間企業参画を見据え、「フュージョンインダストリーの育成を目的とした場の設立」を明記。これを踏まえ、内閣府(科学技術政策)では、昨年末より「J-Fusion」設立の準備を進め、発起人として、メーカー、商社、ゼネコンなど、計21社の企業が参集した。2024年3月22日には、高市早苗・内閣府科学技術担当大臣が「J-Fusion」の設立を発表。同日、ワシントンDCにおいて、米国の産業協議会に当たる「Fusion Industry Association」他との共催イベントも開催された。「J-Fusion」では、今後、議決権を持つ特別会員・正会員の他、賛助会員・アカデミア会員・連携会員、個人レベルのサポーター会員を募集。国内外の核融合産業の動向調査、会員企業間の情報共有、技術の標準化や安全規制も含めた国への政策提言、若手との意見交換会、海外産業協議会との連携イベントの開催など、幅広く活動していく。「J-Fusion」の会長には、京都大学発のベンチャー企業である京都フュージョニアリングの代表を務める小西哲之氏が就任した。研究者として日本原子力研究所(日本原子力研究開発機構の前身)在任時より核融合エネルギーの実現を標榜してきた同氏は、新たな協議会の設立に際し、「業界内外の有志企業を始め、大学や研究所、公的機関や国の組織の同志も集まり、産官学の知恵と人材、知識と経験を集めて新たな産業を興し、未踏のサプライチェーンを構築していく」との決意を強調。副会長には、住友商事執行役員の北島誠二氏、「株式会社 Helical Fusion」代表の田口昂哉氏が就いた。3月に、京都フュージョニアリングは東京都による「ゼロエミッション東京の実現等に向けたイノベーション促進事業」に、Helical Fusionは経済産業省主催のGX(グリーントランスフォーメーション)スタートアップに関するコンテストの大賞にそれぞれ選定されており、昨今、行政による核融合分野への理解・評価も進んできている。また、科学技術振興機構は29日に、挑戦的な研究開発を推進する「ムーンショット型研究開発事業」として、新たに核融合分野をリードするプログラムマネージャーの募集を開始した。こうした核融合に関連する新興産業や研究分野の開びゃく的な動きが今後、加速化しそうだ。
03 Apr 2024
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岸田文雄首相は3月28日、「2024年度中を目途とするエネルギー基本計画改定に向けて、議論を集中的に行う」ことを表明した。現行の第6次エネルギー基本計画は2021年10月に閣議決定。エネルギー政策基本法に基づく3年ごとの見直し時期を間もなく迎え、今後、総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会を中心に議論が本格化しそうだ。岸田首相は同日、2024年度予算の国会成立を受け、記者会見を行い、まず、震災対応の取組を被災地のニーズに沿いながら進めていくことを述べた上で、デフレ経済からの脱却に向けた「最大のカギ」として、賃上げ、人手不足対策など、中小企業の支援方針を示した。それに伴い、「中小企業を含め、日本の稼ぐ力を復活させる上で今後重要なのは、低廉で強靭なエネルギー」との認識を示すとともに、「エネルギーの輸入によって海外に数十兆円が流出している現状は変えなければならない」と、経済安全保障の観点からもエネルギー政策の重要性をあらためて強調。「脱炭素につながり、国内で稼ぐ力を強くするエネルギー構造に転換していくため、国家戦略の実行が不可避」として、エネルギー基本計画改定に着手する考えを述べた。第6次エネルギー基本計画は、2050年カーボンニュートラル、「2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減」の実現に向け、エネルギー政策の道筋を示すことが重要テーマとなった。2030年度のエネルギーミックスについては、総発電電力量に占める電源別シェアが、石油2%、石炭19%、LNG20%、原子力20~22%、再生可能エネルギー36~38%、水素・アンモニア1%となっている。同計画の策定以降、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻に伴い、エネルギー供給保障が世界的に大きな課題となる中、脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長の3つを同時に実現すべく、2023年2月に「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」が閣議決定され、関連法が成立。7月には政策を具体化する「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」(GX推進戦略)が閣議決定。岸田首相は、会見の中で、「GX推進戦略」をさらに発展させ、次期エネルギー基本計画の裏打ちとなる「GX国家戦略」を策定することも表明した。現在、電力政策関連では、総合資源エネルギー調査会において、電力システム改革の検証、元旦に発生した能登半島地震を踏まえた対応など、また、電力広域的運営推進機関(OCCTO)においては、将来の電力需給シナリオに関する検討が行われており、これらの検討結果が次期エネルギー基本計画の議論に資することとなりそうだ。
01 Apr 2024
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茨城大学は4月1日、「原子科学研究教育センター」(RECAS:Research and Education Center for Atomic Science)を開設する。東海サテライトキャンパスを拠点に、エネルギー技術や原子・物質・生命科学を融合的に推進する「原子科学」の先進的な研究と高度専門人材の育成を進めていく。RECASは2008年に設置されたフロンティア応用原子科学研究センター(iFRC)を発展的に改組するもの。〈茨城大発表資料は こちら〉iFRCが開設された当時は、大強度陽子加速器施設「J-PARC」(東海村)が本格稼働を開始し、茨城県によるビームラインが設置され、中性子の産業応用に対する地域の期待が高まっていた。また、「原子力ルネッサンス」の政策を受けた動きも盛んで、茨城大学では2009年に、日本原子力研究開発機構と全国6大学とが連携しプログラム実施・情報交流を通じ専門人材の育成を図る「原子力教育大学連携ネットワーク」協定に参画するなど、原子力エネルギー利用に対する機運が高揚していた。RECASは、iFRCがこれまで担ってきた中性子や放射光などに係る研究・教育に加え、原子科学をベースにしたより安全な次世代のエネルギーに関連する新たな技術開発、環境放射線の健康や生命への影響評価に係る取組を総合的に進めるべく、「応用原子科学部門」、「次世代革新炉部門」、「放射線安全部門」を新設し、分散されていた機能を1か所に集結。さらに、これら3部門をつなぎ、学内外の研究施設群との共同研究や社会・地域との連携、新たなプロジェクトの企画・立案を進める「社会/地域課題共考解決室」を設置。同室は、エネルギー問題に関する社会のニーズの把握・分析や地域コミュニケーションのハブとしての機能を担う「原子科学による社会への貢献のフロント役」となることが期待されている。RECASが拠点とする東海村では、1999年にJCO臨界事故が発生。その後、東日本大震災に伴う影響も受けている。一方で、こうした災害時には地域に近接する原子力機構の施設・専門家らが事故収束や防護対策などの支援に当たってきた。RECASの開設に際し、太田寛行学長は、「事故の経験を有する茨城の国立大学」としての役割をあらためて認識した上で、「世界有数の原子科学研究機関とともに、新たな総合原子科学の確立と研究者・高度技術者の育成に貢献し、持続可能なエネルギー社会の構築を目指していきたい」と、コメントしている。
29 Mar 2024
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「低線量による人体への影響に関する疫学的調査」を実施する放射線影響協会は、原子力発電所などの放射線業務従事者約20万人を対象とした1990~2014年度の5期・25年間にわたる調査結果を踏まえ、「低線量域の放射線が悪性新生物の死亡率に影響を及ぼしていると結論付けることはできない」との見解を示した。同協会放射線疫学調査センターの三枝新氏が、3月19日の原子力委員会定例会合で説明したもの。〈放影協発表資料は こちら〉同調査は、原爆のように高線量を短時間に被ばくして現れる「急性障害」と異なり、被ばくのリスク増加に統計学的に有意な差が認められないとされる「低線量域の放射線の慢性被ばく」の健康影響について科学的知見を得るのが目的。調査結果は5年ごとに公表されており、1990年度を始期とする「第Ⅰ期」以降、調査対象者は、当初の約18万人から、研究施設なども含めた若手の放射線業務従事者を追加し、2014年度を終期とする「第Ⅴ期」には約27万人となっている。「第Ⅴ期」では、生死・観察状況が確認され評価を行うに値する20歳以上の男性約20万人が解析対象者となった。総観察人員・期間は288.9万人・年にのぼり、1人当たりの平均観察期間は14.2年。解析結果によると、1人当たりの平均累積線量は13.8mSvで、累積線量は5 mSv未満が65.4%、100mSv以上が3.2%と、相対的に低い側に偏った分布状況だった。女性は対象者数が少なく線量分布が極端に低いことから除外されている。発がんのリスクは、生活習慣に大きく依存し、被ばくによる影響なのか区別が難しい。職業集団の方が一般集団と比べて死亡率が低い「健康労働者効果」も評価を行う上で一種のバイアスだ。国立がんセンターの研究によると、継続した喫煙は1,000~2,000 mSv、運動不足は200~500 mSv、野菜不足は100~200 mSvの被ばくと同等とされている。三枝氏は、こうした要因が累積被ばく線量と相関している場合、健康との関連に影響を与える「交絡因子」となり得るとした。さらに、単位線量当たりの死亡率上乗せ分を示す「ERR」(過剰相対リスク)と呼ばれる指標を用いた有意性の評価結果を紹介。それによると、解析対象者約20万人の死因に関し、肝臓がんと肺がんで「ERR」が有意に高くなっており、さらに、がんの部位別の分析結果も踏まえ、「喫煙が累積線量と死亡との関連に交絡している」などと推察している。「第Ⅴ期」までの調査では教育年数も「交絡因子」の一つとしてあげられており、これまでに得られた示唆をもとに、2015年度からの「第Ⅵ期」調査以降は、生活習慣の調査(喫煙、飲酒、教育年数、業務内容他)、がん罹患情報の活用、ICRP勧告を踏まえた主要12臓器別の線量換算など、新たな方策を導入した。現在、同調査は、2020年度からの「第Ⅶ期」が進行中。三枝氏は、生活習慣の調査にまでは及ばない海外の放射線疫学研究を例示・比較した上で、「世界初の調査であり、放射線リスクの検討に際して、精度、妥当性の高い結果を得るもの」と、期待を寄せている。
27 Mar 2024
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北海道電力は3月22日、泊発電所の津波対策として、新たな防潮堤の設置工事を3月28日より開始すると発表した。〈北海道電力発表資料は こちら〉新たな防潮堤は、海抜高度19.0m、延長約1,200m、最大幅30mで、地中の強固な岩盤に直接支持させる安全性の高い「岩着支持構造」を採用。総工事費約1,800億円を投じ、「現状考え得る工程短縮方策を織り込み、工事着工後3年程度での完成」を目標とし、さらに少しでも早い完成を目指し取り組んでいく。泊発電所は現在、2012年5月に3号機が定期検査入りして以来、1~3号機すべてが停止中。新規制基準の適合性に係る審査については、2013年7月の施行直後に全号機そろって申請された後、既に10年以上が経過している。同社では、福島第一原子力発電所を襲った津波と同等の浸水高さ15mの津波にも敷地への浸水を防止すべく、2012年8月より、泊発電所敷地前面の海岸部全域にわたり海抜高度16.5m、延長1,250mの防潮堤の建設に着手。2014年12月に完成している。3号機に関しては審査が先行して進捗。その中で、重大事故対処など、プラント関連の審査はほぼ終了したものの、日本海東縁部に想定される津波や火山への対策など、自然ハザードに係る論点が残されている。北海道電力では、耐津波設計方針として、「安全性をより一層高める」観点から、既設防潮堤の撤去工事を2022年より開始し、地盤の地震による液状化の影響を考慮した新たな防潮堤を設置することとした。2024年2月までに、原子力規制委員会に対し防潮堤の設計方針・構造成立性評価結果について説明し基本構造を確定した。
26 Mar 2024
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日本原子力文化財団は3月22日、2023年度の「原子力に関する世論調査」の結果を発表した。同財団が2006年度から継続的に行っているもので、今回、2023年9月30日~10月13日に、全国の15~79歳男女を対象として、質問票により実施。1,200人から回答を得た。同調査は、「全国規模の世論調査を定点的、経年的に実施し、原子力に関する世論の動向や情報の受け手の意識を正確に把握する」のがねらい。今回の調査結果によると、「今後日本は、原子力発電をどのように利用していけばよいと思うか」との問いに対し、最も多かった回答は、「原子力発電をしばらく利用するが、徐々に廃止していくべきだ」の42.3%で、前回調査の44.0%を下回った。一方で、「原子力発電を増やしていくべきだ」と「東日本大震災以前の原子力発電の状況を維持していくべきだ」とを合わせた「増加+維持」の回答割合は19.1%、さらに、「わからない」は29.5%で、いずれも、最近10年間では最も高い水準となった。近年でやや増加傾向にある「わからない」とする回答割合は、年代別にみると、24歳以下で41.5%を占め(前回調査では31.5%)、他の年齢層と比して高く、特に若年層に対し「判断材料となる情報の発信が重要」であることが示された。「増加+維持」の回答割合は25~44歳で最も高く23.0%、「徐々に廃止」の回答割合は65歳以上で最も高く52.7%に上っており、今回の調査では年代による意識の差が顕著にみられた。また、原子力発電の再稼働に対する考えに関して、最も多かった意見(複数回答可)は、「国民の理解は得られていない」の46.9%で、近年、続いており回答割合もほぼ横ばい傾向。一方で、電力の安定供給、地球温暖化対策、経済への影響などの観点から、肯定的な考えが、否定的な考えに対し、拮抗から徐々に優勢となってきている。「原子力やエネルギー、放射線の分野において、関心のあること」(複数回答可)については、「地球温暖化」が最も多く52.8%、「電気料金」の45.0%、「原子力の安全性」の38.3%がこれに次いだが、「高レベル放射性廃棄物の処分」は19.4%、「原子力発電所の廃炉」は18.5%で、前回調査からそれぞれ10.6ポイント減、8.3ポイント減となり、廃炉・バックエンド対策に対する関心が低下している傾向がみられた。原子力に対するイメージとしては、「危険」と「不安」が減少し、いずれも過去最低となったが、全般に否定的なイメージが依然と優勢となっている状況。これまでの調査結果を踏まえ、同財団では、福島第一原子力発電所事故や再稼働の動きに関連し「ニュースによって伝えられる情報量によって変動している」と推測している。同調査では、毎回、原子力やエネルギー、放射線に関する情報源についても分析しており、「テレビニュース」は年代を問わず定着しているものの、今回、「新聞」をあげた回答割合(複数回答可)は、24歳以下で15.7%(前回調査では24.8%)、65歳以上では67.4%(同74.0%)などと、若年層の活字離れが際立っていた。
25 Mar 2024
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齋藤健経済産業相は、3月22日の閣議後記者会見で、東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関し、「新潟県、柏崎市、刈羽村等の関係自治体とよく相談させてもらいながら、地域の方々の理解が得られるよう取り組んでいく」と述べた。その中で、元旦に発生した能登半島地震にも鑑み、地域の避難計画を含む緊急時対応の取りまとめに内閣府(原子力防災)とも連携し取り組んでいく考えを示したほか、引き続き柏崎刈羽原子力発電所の必要性について丁寧に説明していきたいと強調。柏崎刈羽6・7号機は2017年に新規制基準をクリア(原子炉設置変更許可取得)。核物質防護に係る不適切事案に伴い原子力規制委員会により発出されていた核燃料物質移動禁止命令も、昨年末に解除された。今後は地元の理解が焦点となる。齋藤経産相は、3月15日に東京電力の小早川智明社長と会談。小早川社長は、「自律的改善の継続」、「社外の目線を取り入れること」、「信頼回復の方針」に係る各取組状況を報告。核セキュリティに関しては、3月25日~4月2日にIAEAの専門家ミッションを現地に受け入れ、国際基準に照らした評価・助言を踏まえ、核物質防護の強化を図っていくとした。これを受け、3月18日、齋藤経産相は、新潟県の花角英世知事、柏崎市の櫻井雅浩市長、刈羽村の品田宏夫村長と電話で会談。その中で、原子力については、新規制基準に適合すると認められた場合、地元の理解を得ながら再稼働を進めていく原子力災害対応の実効性向上に取り組んでいく東京電力に対し「信頼を獲得するのは10年、失うのは一瞬」ということを肝に銘じ、緊張感を持って対応するよう指導していく――ことを説明。こうした点について、21日には、村瀬佳史資源エネルギー庁長官らを各自治体に派遣し、「柏崎刈羽6・7号機の再稼働に向けた政府の方針」とする文書を手渡した。その中で、脱炭素電源としての活用とともに、「東日本エリアにおいて、東京湾岸に火力発電所が集中していることに加え、1割以上を占める老朽火力を最大限維持している」といった首都圏の電力需給状況にも言及し、「柏崎刈羽原子力発電所の再稼働が非常に重要」と、理解を求めている。実際、資源エネルギー庁が昨秋に取りまとめたところによると、東日本エリアで運転開始から40年以上を経過した火力発電設備は、およそ600万kW(冬季最大需要のほぼ9分の1に相当)に上っており、電力供給における脱落リスクが懸念される現状だ。同日、柏崎市議会では、1969年の誘致決議に立ち返り、運転開始以降、電力安定供給を通じ日本の経済発展や地域活性化に寄与してきた柏崎刈羽原子力発電所の「一日も早い運転再開を求める」請願が賛成多数で可決された。村瀬長官は25日、柏崎市議会、刈羽村議会の各議長の訪問を受け会談に臨む予定だ。
22 Mar 2024
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高度経済成長期以降に整備された社会インフラの老朽化対策が課題となっている。2023年の国土交通省白書によると、建設後50年以上を経過する道路橋(橋長2m以上、約73万橋)の割合は、2020年の約30%が、2030年に約55%、2040年に約75%と、立地環境や維持管理の状況によって異なり一概には言えないものの、「加速度的に高くなる」見通しだ。実際、老朽化が進行した橋には、通行閉鎖され、落橋したものもあり、計画的な維持管理・更新が急務となっている。こうした社会インフラの健全性維持に向けた放射線利用の有効性について、国内で高速道路を管理・運営するNEXCO中日本他が、3月5日の原子力委員会定例会合で発表した。〈NEXCO発表資料は こちら〉NEXCO中日本環境・技術企画部の青木圭一氏によると、NEXCO東日本・中日本・西日本全社の高速道路総延長は9,663km(JR全旅客路線営業キロの約半分に相当)、日平均利用台数は約729万台にのぼるという。車両の走行を支える橋梁・土構造物・トンネルは、使用年数のみならず、重量違反車両や過酷さを増す気象条件などにより、老朽化の進行が懸念されており、今後、15年をかけて、総額約3兆円を投じ更新していく計画だ。同氏はその中で、高速道路の橋梁に用いられるプレストレストコンクリート(PC)鋼材の腐食に関し、「ひび割れなどの変状が桁表面に現れにくく、目視点検を主体とする方法で把握することが困難」なため、X線を用いた非破壊検査が有効であることを、大型車両の通行が多い北陸自動車道の橋梁への適用事例などから紹介。作業者の被ばく管理、周辺住民への立入り制限・説明、通行車両への対応など、安全管理にも万全を期しているとした。X線以外にも、超音波や磁束密度測定を利用した手法も紹介したが、「どうしても測定する部材の厚みは限界(300mm程度)がある」現状。そのため、近年、産業界による応用・成果が期待されている中性子を用いた非破壊検査手法も検討しているという。実際、「橋梁劣化の大部分の要因は水。目に見えない水の状況が把握できれば、劣化状態の把握も容易となり先んじた対策も可能」と強調した上で、今後、「水の有無がわかる」中性子による非破壊検査の有用性を示唆。その中で、理化学研究所他が2019年に発表した小型中性子源システム「RANS-Ⅱ」を例示。同機は、コンクリートインフラ構造物の劣化診断などに広く適用できる加速器中性子源で、現場への車載搬入も可能なコンパクトな機材(全長約5m)として、実用化が期待されている。
21 Mar 2024
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量子科学技術研究開発機構(QST)は3月15日、マルチイオンを用いた重粒子線がん治療を、骨軟部肉腫を対象に開始したことを発表した。〈QST発表資料は こちら〉マルチイオンによる重粒子線がん治療は、QSTが取り組む次世代装置「量子メス」実現に向けた要素技術の一つ。住友重機械工業とともに2016年より開発を進めてきた。従来の重粒子線がん治療装置では、炭素イオンのみが用いられていたが、マルチイオン治療は、「病変への細胞殺傷効果をさらに高めつつ、副作用を低減するため、腫瘍の悪性度に応じて最適な種類のイオンビームを組み合わせて用いる」もので、両者は2022年に、ネオン、酸素、ヘリウムなど、複数のイオンによる「マルチイオン源」の開発に成功。QST放射線医学研究所の重粒子線がん治療装置「HIMAC」(千葉市)に設置・接続し研究を進めてきた。例えば、腫瘍の中心には炭素より重い酸素を、正常組織に近い部分には軽いヘリウムを照射。線量分布や生物効果分布を分析したところ、炭素イオンのみを照射する場合と比較し、様々なイオンビームを用いることで、重粒子線がん治療の高い効果が確認された。骨軟部肉腫は、部位によっては手術することで神経障害を生じる患者が多いとされている。重粒子線の適用で、手術が困難な患者にも良好な治療成績をあげてきたが、大きな腫瘍での再発などが課題だった。今回、開始したマルチイオン治療の1例目は、2023年11~12月に実施され、計16回照射。炭素イオンと酸素イオンの同日治療は初の試みとなったが、イオン線の切替えも順調で、患者は治療終了の翌日に退院。2か月が経過したが、早期副作用はない状況だ。「HIMAC」は、重粒子線がん治療のパイオニアとして、1994年の臨床試験開始以来、30年にわたり新技術の導入や対象部位の拡大に努め、これまで多くの治療実績を上げており、国内外への普及に向け礎となった。超伝導磁石を採用した回転ガントリーの開発・適用では、治療台を傾けずに患部への集中照射が可能となり、治療成績の向上とともに患者の負担低減にもつながっている。「HIMAC」に対しては2月1日に、電気学会が毎年、社会生活に大きく貢献した概ね25年以上の実績を有する電気技術への顕彰「でんきの礎」が授与(顕彰先:QST、住友重機、東芝エネルギーシステムズ、日立製作所)されている。〈東芝ESS発表資料は こちら〉
19 Mar 2024
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日本原子力産業協会と資源エネルギー庁による第2回「原子力サプライチェーンシンポジウム」が3月14日に都内ホールで開催された。〈既報〉来日中の国際原子力機関(IAEA)ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長による挨拶、「原子力産業の未来」と題するセッションに続き、サプライチェーン強化の取組として、人材育成・確保、海外プロジェクトへの参画、供給途絶対策の3つの個別テーマを設け議論。近藤寛子氏(マトリクスK代表)がファシリテータを務め、文部科学省、大手メーカーの他、原子力発電プラントの運用を支える国内バルブメーカー、日本の技術力に期待を寄せる海外企業も登壇した。その中で、人材育成・確保については、産官学によるプラットフォーム「原子力人材育成ネットワーク」で国際化分科会主査を務める日立製作所・吉村真人氏が10年先を見据えたロードマップを示し、国内外、産業界、大学・研究機関、学生らを巻き込んだ広範な取組を進めていく必要性を強調。技術者教育に関しては、東芝エネルギーシステムズの小向夕紀氏が、同社の取り組む将来の革新軽水炉「iBR」開発などを踏まえた教育プロセスを紹介。社会人としての基礎教育、ものづくり、グローバルな視点とともに、原子力技術者としての安全文化醸成も重視した「高い専門性を有するプロフェッショナル」育成を目指していると強調した。海外プロジェクトへの参画については、米国ホルテック社がミシガン州に建設する「SMR-300」(電気出力30万kW)プロジェクトにおける三菱電機との計装機器関連の協働を紹介。SMR(小型モジュール型炉)の固有の安全性、工業地域への熱供給の可能性、既存軽水炉の許認可が準用できるといったメリットをあげ、「今後、世界の需要に応えていくには、日本のサプライヤーとも協力していく必要がある」と、日本の技術力活用に期待を寄せた。また、原子力分野の国際連携強化と海外展開支援に関し、原産協会の植竹明人常務理事が2023年11月28~30日にフランス・パリで開催された「世界原子力展示会」(WNE2023)について紹介。同展示会の会場レイアウトを図示し、88か国・地域から約23,600人が参加した盛況ぶりを述べる一方、中国や韓国に比して日本の占める展示スペースが見劣りしていたことに懸念を示した。供給途絶対策については、CGD(Commercial Grade Dedication、一般品を評価・検証することで原子力施設での使用を可能とする手法)の取組が焦点となった。その中で、日本電機工業会原子力部長の小澤隆氏は、54年前の同日、国内初のBWRプラントである日本原子力発電敦賀1号機が運開したことに触れ、これまで60年余にわたり築かれた国内サプライチェーン発展の経緯を振り返るとともに、福島第一原子力発電所事故以降の状況として、新規プラント建設の停滞による経験者の高齢化・リタイヤを懸念。大手メーカーとして、日立GEニュークリア・エナジーからは、電動弁、排風機など、CGDの適用可能が確認済みの品目とともに、「原子力品としての供給力が困難となった製品、設計変更により供給不可となった製品、従来のサプライヤーが撤退した製品」の品質レベルを維持した供給に向けて、その適用意義が述べられた。また、サプライヤーとして、岡野バルブからは、「新規採用品を一般品とすることができれば、サプライヤーの候補や製品選択肢の幅が大きく広がる」メリットがある一方で、シビアアクシデント対策など、新たな調達品目により、不適合・トラブル対応時の影響や、品質管理規格の高度な要求から、労力・コストに見合った顧客対応に支障をきたす可能性が課題としてあげられた。
18 Mar 2024
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日本原子力産業協会と資源エネルギー庁は3月14日、国内原子力関連企業による海外展開や事業承継、人材育成支援などの原子力サプライチェーン維持・強化策を紹介・議論し、取組を加速すべく、「原子力サプライチェーンシンポジウム」を都内ホールで開催。オンラインも含め約400名が参加した。同シンポジウムの開催は、昨春に続き2回目。前回、経産省より「原子力サプライチェーンプラットフォーム」(NSCP)の設立が発表され、NSCPの枠組みを通じ、原子力人材の育成・確保、部品・素材の供給途絶対策や事業承継、海外プロジェクトへの参画に対し、地方経済産業局とも連携した支援態勢を構築する取組が進められている。シンポジウム開会に際し、挨拶(ビデオメッセージ)に立った齋藤健経済産業相は、昨年末のCOP28の成果などから、「世界では原子力の必要性を再認識する動きが着実に加速している」と期待。その一方、国内で元旦に発生した能登半島地震にも鑑み、今後の原子力活用に向け、「福島第一原子力発電所事故への反省を一刻も忘れることなく、高い緊張感を持って安全最優先に万全の対応を行うことが大前提」とあらためて強調。さらに、東日本大震災後の13年を振り返り、原子力発電所新規建設の機会が失われていることから、「次世代にバトンを引き継ぐ時間的猶予は殆ど残されていない」と、技術基盤・人材確保の維持を危惧し、政府として官民ミッション団の北米派遣など、同志国とのサプライチェーン交流を通じて、政策支援の多角化を強化していく方針を示した。今回のシンポジウムには、来日中のラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長も出席。同氏も、COP28を振り返り、「再生可能エネルギーと原子力が並び、国際的なコンセンサスが得られるようになってきた」と、原子力の役割に期待。海水淡水化やデータセンターへの運用など、原子力技術の多様な可能性にも言及したほか、近くベルギーで開催予定の各国首脳が参集する原子力エネルギーのサミットについて紹介し、新たな原子力市場・プロジェクトの開拓をリードしていくことに意欲を示した。また、グロッシー事務局長は、「産業界も規制当局も一つの傘の下で議論する必要がある」と指摘。IAEAとして「皆様と新しい時代を切り拓いていきたい」とエールを送った。また、原産協会の三村明夫会長も、挨拶の中で「原子力発電の積極的な活用の機運は、国内外にて極めて高まっている」と強調。近く検討が開始される次期エネルギー基本計画に向けて、「原子力の役割がより具体的に示される必要があり、そうなるものと信じている」とした。さらに、日本の原子力開発を振り返り、原子炉圧力容器や発電タービンなど、主要機器の国内供給比率は9割に及び、プラント保守も50年以上の経験を有すると、国内サプライチェーンの技術力を再認識し、「既存炉の最大限の活用にとどまらず、新設炉の建設において大いに力を発揮する」と期待を寄せる一方で、具体的な新規建設計画が停滞していることから、「産業基盤の劣化が進行する」と、現状を危惧。今回のシンポジウムでは学生も参加し合同企業説明会が併催されることに触れ、「これからの原子力産業界を背負っていく可能性のある皆さんに世界の原子力利用推進の熱量を感じ取ってもらいたい」と強調した。「原子力産業の未来」と題するセッションでは、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会をリードした山口彰氏(原子力安全研究協会理事)が講演を行ったほか、三菱重工業より革新炉開発の取組について発表。サプライチェーン強化の取組に関する個別テーマについては、人材育成・確保、海外プロジェクトへの参画、供給途絶対策に関する3つのセッションが設けられ、資源エネルギー庁、文部科学省、日本電機工業会、大手メーカーの他、原子力発電プラントを支えるバルブメーカー、日本の技術力に期待を寄せる海外企業などが登壇し議論した。
15 Mar 2024
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