原子力発電環境整備機構(NUMO)は1月18日、マイナビニュースとタイアップした動画「地層処分を学ぼう!」シリーズの第4弾を公開した。〈NUMO発表資料は こちら〉マイナビニュースがX(旧Twitter)で配信しているタレントのカンニング竹山さん、篠田麻里子さん、越智ゆらのさん、3人が演じる「家族」の体験を描くショートストーリー番組「竹山家のお茶の間で団らん」の一環。「地層処分を学ぼう!」シリーズでは、これまで、「竹山家」は、北海道幌延町の「ゆめ地創館」、高レベル放射性廃棄物の処分地選定に向けた文献調査が進められている同神恵内村、青森県六ヶ所村の日本原燃原子燃料サイクル施設を訪問。施設内の展示や研究開発・事業が行われる現場の見学、技術者からの説明、村長インタビューなどとともに、各地の観光スポットやグルメも紹介してきた。今回、第4弾では、「in 東京」と題し、「竹山家」は、科学技術館(東京・北の丸)を訪れ、昨春にリニューアルオープンした地層処分関連の展示を見学。さらに、NUMO(東京本社)を訪問し、近藤駿介理事長へのインタビューを行っている。科学技術館では、NUMOの新展示「アトミックステーション ジオ・ラボ 体感!なぜ?なに?地層処分!!」で、大型スクリーン上にアバター化した自身の姿を見ながら地層処分技術を学ぶゲームを体験。さらに、全国各地を巡る地層処分展示車「ジオ・ラボ号」も見学する。続いて、「竹山家」は、NUMOを訪問し、近藤理事長にインタビュー。竹山さんが今後の地層処分地選定に向けた展開に関し質問したのに対し、近藤理事長は、「まずは場所を見つけること」と述べ、日本全国の適性を色分けした科学的特性マップを示した上で、輸送手段の重要性から「海岸に近い方がいい」などと説明。また、昨秋、長崎県対馬市で文献調査応募に至らなかったことについては、地元の懸命な検討に謝意を示した上で、今後の理解活動に向けて、「まずは見ていただくのが一番」と、研究開発の現場を知ってもらう重要性を強調。NUMOとして、「地域社会の皆様と共生して事業を進めていく」使命をあらためて述べている。篠田さんは、NUMOの技術者から、ベントナイトの開発に向けて、銅を利用する研究にも取り組んでいることを知り、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関し、「自分たちが生きている間に現場を見られないかもしれないが、『もっと良いものがあるのでは』という研究の意気込みがすごい」と述べる。見学・インタビューを終え、「竹山家」は、「未来のために考えていかねばならない問題」とのメッセージをあらためて発信する。
18 Jan 2024
2306
量子科学技術研究開発機構(QST)は1月16日、国際熱核融合実験炉(ITER)の推進に向け、核融合エネルギーにおいて機器類から排出されるガス中のトリチウム除去のための新たな設備を開発し、その性能試験を完了したと発表した。〈QST発表資料は こちら〉核融合エネルギーでは、トリチウムを高純度に濃縮して燃料として用いるが、放射能を持つため、施設外への排気が環境・一般公衆に影響を及ぼさないよう除去する必要がある。ITER計画では、これまで、トリチウムを扱う機器類から排出されるガス中のトリチウムを酸化させ、水蒸気の形で乾燥塔により取り除く方法に着手していたが、その後の建設活動で、乾燥塔の連続使用では、頻繁なバルブ切替え作業に伴う機器類の故障リスクが高くなることが判明。そのため、こうしたリスクに対応すべく、QSTでは、工場や汚水処理施設から発生する排出ガスの煤塵や悪臭除去などにも用いられる「スクラバー塔」を利用した新たなシステムの開発に取り組んできた。「スクラバー塔」によるトリチウム除去は、特殊な充填物が詰まった塔に、純水をシャワー散布しトリチウムを含む水蒸気を連続的に洗い流すシンプルな構造とすることで、作業を簡略化し故障のリスクを低減。従来の乾燥塔方式に比べ、排水量が増えるというデメリットがあったが、充填物の化学的特性を改良することで解決した。QSTでは、旧日本原子力研究開発機構が核融合開発を担っていた頃を含め、およそ11年にわたって、「スクラバー塔」を用いたトリチウム除去の信頼性実証に取り組んでおり、今回、10年に及ぶ運転においても、性能低下がないことを確認。ITER計画の推進に有効なトリチウム除去設備として、長期的な健全性を維持できることを実証した。今回の技術開発に当たったQST研究チームでは、「ITERの安全性を向上させるとともに、日本の原型炉開発にも大きく貢献するもの」と、期待を寄せている。
17 Jan 2024
2201
東京工業大学のゼロカーボンエネルギー研究所(加藤之貴所長)は1月12日、原子炉内の核分裂生成物から放出される反電子ニュートリノ(電気的に中性な素粒子の一種)を利用し、原子炉内部の様子をリアルタイム、非破壊、遠隔で監視できる新たなモニタリング手法を発表した。同研究所は、気候変動問題への関心の高まりから、原子力エネルギーを「貴重なゼロカーボンエネルギー」ととらえ、2021年6月に開設されて以来、安全かつ経済的な原子力エネルギーシステムの開発に取り組んできた。今回の研究成果は、原子力の安全性に加え、核セキュリティの向上にも貢献するもの。原子炉内で核燃料物質が中性子を吸収し核分裂する際、エネルギーとともに、およそ1,000種類に及ぶ核分裂生成物が放出される。それらの物理的な性質の違いをもとに、核分裂を起こした核種の種類を同定することが可能となる。それにより、核分裂生成物が放出する反電子ニュートリノの観測で得られたデータ計算から、原子炉の運転状態(稼働の有無)の他、原子炉内のウランとプルトニウムの組成比を検知することを可能とした。つまり、「原子炉が申告通りに運転・燃料交換を行っているか」といった核査察の技術向上に貢献することが期待される。実際、関西電力美浜3号機の運転条件を模したシミュレーションを行い、運転中の原子炉内の燃料組成をリアルタイムかつ遠隔測定により監視可能なことが確認されている。研究チームでは、「今後、増加していくことが予想される原子力利用において、未申告の核物質移動や核兵器製造への転用を防ぐことができる」と、期待を寄せており、引き続き本手法のさらなる精緻化に取り組んでいくとしている。
16 Jan 2024
1481
原子力産業新聞が電力各社より入手したデータによると、2023年(暦年)の国内原子力発電所の平均設備利用率は28.0%(対前年比9.3ポイント増)、総発電電力量は810.8億kWh(同49.6%増)と、近年では最も高い水準となった。2023年は関西電力の高浜1・2号機が、同美浜3号機に次ぐ、40年超運転を開始。これにより稼働したプラントは、いずれもPWRで12基・1,160.8万kWとなった。2022年は、テロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」の整備に伴う停止もあり、稼働状況は下降を見せたが、2023年には関西電力高浜1・2号機、および、既に再稼働している九州電力玄海4号機で同施設が運用を開始。関西電力では、現存の計7基が揃って稼働することとなり、設備利用率の向上に貢献した。*2023年の運転実績は こちらです。
15 Jan 2024
6759
日本原子力産業協会は、東北大学大学院工学研究科・遊佐訓孝教授らの協力を得て、「エレクトロネーション-エネルギーミックスボードゲーム」を1月26日に発売する。発売に先立ち、10日より予約販売を開始した。原産協会では、遊佐教授の監修のもと、日本を代表するボードゲームデザイナーであるカナイセイジ氏(カナイ製作所代表)と宮﨑雄氏(WAZAgames)を、それぞれゲームデザイナー、アートディレクターに迎え、ボードゲームの開発を進めてきた。遊佐教授が2021年に論文発表したゲームを基に、カナイ氏らが幅広い世代層が楽しめるよう趣向を凝らした。エネルギーミックスがいかに国の発展・繁栄を左右し得るかを理解してもらうことが目的。ゲームを通じ、日頃の生活の中で、エネルギー問題を「自分ごと化」して考えるようになることが期待される。ゲームの中で、各プレイヤー(2~5人)は、国家のエネルギー管理者となり、自らの国が必要としている電力供給量を確保し、温室効果ガス(GHG)排出量の規制を守りながら、国を発展させていく。ゲームカードに記載された発電設備や投資戦略を購入・駆使し、資源枯渇などの「イベント」を乗り越えながら、「各国にとってベストなエネルギーミックスの実現」を競うことがゲームの主軸。国ごとに特色が異なり、戦略性も大きく変わってくるので、遊ぶたびに異なる国のエネルギー管理者となることで何度遊んでも楽しめる設計となっている。監修に当たった遊佐教授は、「エネルギーの持つ一長一短」を理解してもらえるよう、「エネルギーミックスについて自分で考える」ことを目指しゲームの制作に取り組んできた。「教材としてだけでなく一般向けに遊びやすいゲームに仕上がっている」と話す。ボードゲームはコロナ禍以降注目が集まり、家族・友人問わず楽しめる娯楽として人気が高まっている。遊佐教授の教材を「コンパクトで遊びやすいゲーム」に作り上げたカナイ氏は、ボードゲームについて「遊びとしての楽しさはもちろん、対面だからこそのコミュニケーションの楽しさがある」と話す。アートディレクターの宮﨑氏は「事実を歪めないことを大前提に、なるべく親しみやすい印象を与えるイラストやデザインになるよう心がけた」と語る。発案者である原産協会の深澤伊弦さんは、「ゲームとしての面白さを追求した」「各電源のメリットデメリットを踏まえつつその国のベストミックスを実現する難しさを多くの人に実感してもらいたい」と話している。プレイ時間は60~90分。対象年齢は12歳以上。本体価格は4,950円(税込/送料別)。オンラインのみでの販売を予定している。購入は、原産協会ウェブサイトから。
12 Jan 2024
1814
「原子力新年の集い」(日本原子力産業協会主催)が1月10日、東京プリンスホテル(東京・港区)で開催され、会員企業・組織、国会議員、駐日大使館関係者ら、約700名が参集し親睦を深め合った。冒頭、年頭挨拶に立った原産協会の三村明夫会長は、まず、元旦に発生した令和6年能登半島地震による犠牲者への哀悼の意を表明。被災地の電力復旧について、北陸電力を中心とした送配電事業者による復旧活動に対し、「安全には十分留意し、多くの被災地に安心の灯を点して欲しい」と述べた。2023年を振り返り、三村会長は、12月のCOP28(UAE・ドバイ)で、COP史上初めて公式成果文書において、温室効果ガス排出削減の重要な手段として原子力が明記されたことを強調。「原子力が『クリーンエネルギー』としての地位を世界的に確立したことは、われわれ原子力産業界にとって大きな節目であり、社会から原子力が受け入れられる、受容性向上への大きな一歩となった」とした。国内においては、エネルギー安全保障と脱炭素効果を重視した政策の進展として、2023年2月の「GX実現に向けた基本方針」の閣議決定、続く「GX脱炭素電源法」成立など、原子力を最大限活用する方針が明確に示され、「原子力産業界にとって大きな前進であった」と強調。その上で、本年に策定が見込まれる次期エネルギー基本計画に向け、「原子力の位置付けが明確化され、原子力の再興が確かなモメンタムとなる上で、極めて重要」との認識を示した。また、2024年に見込まれる動きとしては、東日本大震災後、初となるBWRプラントの再稼働をあげた上で、「原子力発電プラントの新規建設が欠かすことのできない大変重要な要素」と指摘。新規建設に関して、将来の技術継承、人材の確保・育成、サプライチェーンの維持に大きく貢献するものと期待を寄せた。この他、六ヶ所再処理工場のしゅん工予定など、核燃料サイクル事業の進展にも言及し、「それぞれの事業の意義について、あらゆる方策を尽くし、広く国民理解の促進に尽力していきたい」との考えを述べた。続いて、来賓挨拶に立った齋藤健経済産業相はまず、能登半島地震に伴う電力を含むインフラ被害・復旧支援の取組について言及。日本の原子力産業の現状については、「原子炉圧力容器から小さなバルブに至るまで、世界に冠たる技術を有した原子力サプライチェーン、人材を保持していた。しかし、長きにわたる建設機会の喪失で、その基盤が脅かされている」と危惧し、技術基盤や人材確保の維持・強化の必要性を強調。加えて、原子力の必要性に関する国民理解について、「10年かけて勝ち取るものだが、失うのは一瞬だ」と述べ、油断せず取り組んでいくよう訴えかけた。電気事業連合会の池辺和弘会長は、2023年を振り返り、依然と続く燃料価格の高水準、ウクライナ・中東の政情不安など、世界のエネルギーを取り巻く状況に鑑み、「エネルギーセキュリティはナショナルセキュリティだ」と指摘。2024年に向けては、「新しいステージに向けて歩みを進める年にしたい」とした上で、事業者として、稼働中の原子力発電所の安全・安定運転、BWRを中心とした再稼働、再処理事業を着実に進めていくことの重要性を強調。安定供給とカーボンニュートラルの両立に向けて、「原子力をしっかりと前進させ軌道に乗せていく」と述べた。
10 Jan 2024
1782
原子力規制委員会は12月27日、柏崎刈羽原子力発電所の核物質防護に係る不適切事案に伴い設定した原子力規制検査の対応区分「第4区分」(安全活動に長期間にわたるまたは重大な劣化がある)を、「第1区分」(自律的な改善ができる)に変更することを決定した。これにより、法令運用上、同所に発出されていた特定核燃料物質の移動を禁ずる是正措置命令が、約2年8か月ぶりに解除された。また、規制委が2017年12月に柏崎刈羽6・7号機の新規制基準適合性審査に係る原子炉設置変更許可と合わせて、東京電力に対し、福島第一原子力発電所事故の当事者として実施した「原子炉設置者としての適格性に係る判断」の再確認に関しても、当時の結論を「変更する理由はない」とし、同社に対し「適格性あり」と判断した。これらの判断に先立ち、規制委では、山中伸介委員長と伴信彦委員が2023年12月11日に現地調査を行い、20日には東京電力の小早川智明社長らとの意見交換を実施。社長からは、柏崎刈羽原子力発電所の保安規定に定める原子力事業者としての基本姿勢7項目を始め、社長直轄の「核物質防護モニタリング室」を通じた行動観察など、同社の取組について説明がなされた。規制委では、27日の会合で、核物質防護に係る不適切事案を受け、2021年度以降、柏崎刈羽原子力発電所に対し実施した合計4,268人・時間に及ぶ追加検査の報告書を了承。追加検査が終了し、今後は、東京電力による改善活動の実施状況について、基本検査で引き続き監視していくこととしている。山中委員長は同日の定例記者会見で、「あくまでもスタートライン」との認識を示したほか、今後の課題として、企業文化の改善や全社的なコミュニケーションについても言及した。原子力規制検査に係る結果および対応区分の変更を受け、東京電力は12月27日、「原点である福島第一原子力発電所事故の反省と教訓にもう一度立ち返り、自律的な全員参加型の改善活動を継続し、原子力事業者として地元の皆様、社会の皆様から信頼してもらえるよう取り組んでいく」とのコメントを発表。28日には、柏崎刈羽原子力発電所の核物質防護に係る不適切事案の原因分析再検証・改善措置実施報告書を取りまとめ発表した。
09 Jan 2024
1983
三菱総合研究所は12月26日、先のCOP28(UAE・ドバイ)で発表された「2050年までに、2020年比で世界全体の原子力発電設備容量を3倍にする」共同宣言(「原子力3倍化の宣言」)に関し、日本として、既存炉の再稼働に向けたこれまでの取組に加え、「世界の安全・安定な原子力稼働に積極的に貢献すべき」とする意見を発表した。〈発表資料は こちら〉「原子力3倍化の宣言」の賛同国は計25か国(12月15日時点)。日本は、第三国への革新炉導入支援や同志国と連携したサプライチェーンの強靭化などの取組を通じて、世界全体の原子力発電設備容量の増加に貢献する観点から賛同している。今回、三菱総研が発表した意見ではまず、「原子力3倍化の宣言」について、同じくCOP28で発表された再生可能エネルギー拡大の文書とともに、「従来施策の延長線上では達成できない野心的な内容だ」と評価。その上で、原子力と再生可能エネルギーの二者択一ではなく、「脱炭素エネルギー全体を考慮した国際レベルでの議論が必須」と、指摘している。「原子力3倍化の宣言」を巡る世界のエネルギー情勢については、IEAによる「World Energy Outlook 2023」(WEO2023)などをもとに解説。それによると、WEO2023のシナリオで最も原子力導入を進める「ネットゼロエミッションシナリオ」でも、2050年時点の原子力発電設備容量は、「原子力3倍化宣言」の目標に対しおよそ3億kW不足する見通し。さらに、世界原子力協会(WNA)のデータに基づく世界の既存・建設中・計画中の原子力発電設備容量との関係から、既存炉の閉鎖を考慮した場合、「2050年までに新たに約7億5,000万kWの新設が必要」とも指摘している。また、「原子力3倍化の宣言」に賛同した国の原子力発電の状況を分類・整理。同宣言には、原子力主要国であるロシア、中国、インドが参加していないことから、目標達成に向け「各国のさらなるコミットが必要不可欠」と、強調している。「原子力3倍化の宣言」に対する日本の立ち位置については、直近の課題として、国内既存炉の早期再稼働と運転期間延長をあげたほか、世界の原子力市場への貢献に向けて、原子力産業が培ってきた技術基盤やリスク評価、人材育成のノウハウを活かすことを「日本が世界での存在感を発揮する役割」として期待。サプライチェーンの強靭化に関しては、他国と比べた競争優位性、性能・品質の高度化の必要性にも言及している。
26 Dec 2023
2938
日本エネルギー経済研究所は12月20日、2024年度のエネルギー需給見通しを発表。一次エネルギー国内供給は、対前年度比0.6%減となり、3年連続で小幅な減少が続く見通しを明らかにした。化石燃料については、石炭が対前年度比0.5%増、石油が同1.6%減、天然ガスが同8.3%減となっている。再生可能エネルギー(水力を除く)は、同3.3%増で、一次エネルギー国内供給の7%を占める。原子力については、計16基が再稼働し同36.0%増となる見通し。エネルギー起源CO2排出量は、3年連続で減少し、2024年度は9億900万トンで、同26.4%減となるものの、2013年度比では26.4%減と、「2030年度に2013年度比45%削減」の目標には及ばず、排出量削減進捗は遅れるものとみている。原子力発電に関するシナリオとしては、2024年度末までに、現在再稼働しているプラント12基のみが稼働する「低位ケース」、16基が稼働する「基準シナリオ」、17基が稼働する「高位ケース」に加え、既に新規制基準適合性審査が申請された計27基がすべて稼働する「最高位ケース」を想定し評価。経済効率性では、化石燃料の輸入総額が、「高位ケース」では、「基準シナリオ」比1,300億円節減、「最高位ケース」で同9,100億円節減されるとの試算結果を示している。特に、ウクライナ情勢に伴う地政学リスクに鑑み、原子力発電のシナリオに応じたLNG輸入量については、「基準シナリオ」に比して、「高位ケース」で140万トン減、「最高位ケース」では960万トン減となると見込んでいる。また、CO2排出量については、同じく、「高位ケース」で400万トン減、「最高位ケース」では2,800万トン減となると見込んだ上、「個々のプラントの状況に応じた適切な審査を通じた再稼働の円滑化がわが国の3E(経済性、環境適合、エネルギー安定供給)に資する」と結論付けている。
25 Dec 2023
1963
原子力規制委員会は12月20日の定例会合で、東京電力の小早川智明社長ら、経営幹部を招き、柏崎刈羽原子力発電所の核物質防護問題に関する取組について意見交換を行った。規制委は同社に対し2021年4月、原子炉等規制法に基づき、規制上の検査対応区分が改善するまで、特定核燃料物質の移動を禁ずる(事実上運転できない)是正措置命令を発出。これを踏まえた追加検査の結果が2023年12月6日の同委会合で報告された。総検査時間は4,000人・時間を超えた。13日には山中伸介委員長らによる現地調査が行われている。また、同委は、柏崎刈羽6・7号機の新規制基準適合性審査に係る原子炉設置変更許可(2017年12月)と合わせ、福島第一原子力発電所事故を踏まえ、東京電力に対し実施した適格性判断について、核物質防護問題に鑑み再確認を行うことを今夏決定。これを受け、東京電力は2023年11月1日に柏崎刈羽原子力発電所の保安規定変更の認可を規制委に申請。保安活動における7項目の基本姿勢に一連の不祥事から得た教訓などを反映している。同申請は12月13日に認可された。20日の会合における意見交換で、小早川社長は、経営トップの立場から、核物質防護の不適切事案が発生した際の社長としての受止め核物質防護の改善に際しての社長としての取組保安規定「原子力事業者としての基本姿勢」への対応と、安全性向上の取組への拡張・展開一過性にせず改善を継続していくための、目指す姿の共有・取組・意志の継続――について説明。小早川社長は「福島第一原子力発電所の事故を起こした東京電力が、地域や社会に信頼してもらうのは、簡単な道ではない。今後も全員参加型の改善活動を継続していく」との決意を表明した。これを受け、山中委員長は、原子力の安全・セキュリティ確保は一義的に事業者に責任があることを強調し、今後の規制委による最終判断の如何にかかわらず、「規制委が決してお墨付きを与えるものではない」と述べた。その上で、柏崎刈羽原子力発電所に関する追加検査については「一定程度の改善が見られた」、東京電力に対する適格性判断については「先の判断(原子炉を設置し、その運転を適格に遂行するに足りる技術的能力がないとする理由はない)を変える必要はない」と述べ、いずれも各委員の意見も一致した。27日に開催が予定される規制委員会会合で、総合的判断がなされる見通し。柏崎刈羽原子力発電所に係る特定核燃料物質の移動を禁ずる是正措置命令については、検査区分が通常の第1区分に改善変更されるものとみられ、この時点で、法令運用上、解除となる。
22 Dec 2023
1489
日立製作所は12月18日、現場作業を迅速に進めるための技術を組み合わせ、産業分野での活用を想定した「産業拡張メタバース」を発表した。〈日立発表資料は こちら〉同社では、これまで、エネルギーや交通分野の建設・製造・保全などの現場で、施工・製造他、現場関係者と設計・品質保証・管理部門との情報共有や合意形成を通じ、メタバース(仮想空間)技術の開発に取り組んできた。このほど、同技術を、日立GEニュークリア・エナジーおよび日立プラントコンストラクションとも連携し、両社内で実施した原子力発電所の実寸大模型の移設工事に適用。その結果、特殊なデジタル技術を使わず、遠隔の部署同士での認識食い違いによる手戻り頻度を減少し、他の作業の完了待ちを低減するといった業務効率の向上に有効であることを確認した。今回、開発された技術は、「従来は物理的な制約によって、その場にいる作業員にしか把握できなかった現場を、仮想空間に拡張し、遠隔地にいる関係者にも直感的な形で現場に見える化する」というもの。主な特徴としては、現場のデータを5W1Hの情報とともに迅速に収集する技術蓄積データ活用のためのAI技術ウェブブラウザベースの簡便かつ軽量なデータ可視化――をあげている。熟練者からの技術継承が課題となる中、日立GEニュークリア・エナジーおよび日立プラントコンストラクションでは、「三現主義」(「現場」で「現物」を見て「現実」を認識することを重視する考え)を拡張する技術として、原子力発電所における各種作業に同技術を活用していくとしている。日立、日立GEニュークリア・エナジー、日立プラントコンストラクションでは、三社合同で2023年7月から8月の約2か月間にわたり、原子力発電所のモックアップの移設工事で同技術を実際に使用している。
20 Dec 2023
2611
総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=山口彰・原子力安全研究協会理事)が12月19日、5か月ぶりに開催され、COP28での共同宣言など、原子力政策を巡る内外動向についてあらためて整理し議論した。〈資料は こちら〉冒頭、挨拶に立った資源エネルギー庁電力・ガス事業部長の久米孝氏は、今夏の関西電力高浜1・2号機の運転再開に伴い、国内の再稼働炉が12基に上り、来年は東北電力女川2号機、中国電力島根2号機と、新たにBWRの再稼働も見込まれていると期待。国内の原子力発電を巡る状況につき「足下では再稼働が着実に進んでいる」との見方を示した。先のCOP28(UAE・ドバイ)で12月2日に発表された日本を含む20国超による「2050年までに2020年比で世界全体の原子力発電設備容量を3倍にする」旨の共同宣言にも言及し、日本の「第三国の革新炉導入支援や同志国と連携したサプライチェーンの強靭化などの取組を通じ、世界全体の原子力発電容量の増加に貢献する」姿勢を示した。また、サプライチェーンの維持・強化に関して、資源エネルギー庁原子力政策課は、去る3月の「原子力サプライチェーンプラットフォーム」(NSCP)の設立および日本原子力産業協会との共催によるシンポジウム開催についてあらためて紹介。9月のNSCPウェブサイト開設や今後のシンポジウム開催検討にも言及し、議論に先鞭をつけた。原子力エネルギー協議会(ATENA)からは、自主的な安全性向上に関する取組について報告があり、2018年設立以降の評価、今後の課題・方向性について説明。委員からは、原子力安全推進協会(JANSI)との役割分担の明確化に関し意見があった。専門委員として出席した原産協会の新井史朗理事長は、サプライチェーンの維持・強化に関連し、世界最大級の原子力展示会「WNE2023」(11月28~30日、フランス・パリ)へのブース出展について紹介。「WNE2023」には約780社の出展、24,000人の来場があったと述べ、「海外とのチャンネルをつくるよい機会」と強調した上で、今後、会員企業の海外市場展開を支援していきたいと述べた。ATENAによる自主的安全性向上の取組については、「リスク情報を活用した安全性の維持向上とプラントのパフォーマンス向上の両立を図って欲しい」と述べた。〈発言内容は こちら〉この他、遠藤典子委員(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授)は、「新増設を進めないとサプライチェーンは続かない」と強調。ファイナンスや地域の産業力調整も含め、次世代炉の開発に向けた国の関与に期待した。また核不拡散の観点からプルサーマル計画の推進にも言及している。
19 Dec 2023
1937
原子力発電事業者11社は12月14日、「リスク情報活用の実現に向けた戦略プランおよびアクションプラン」の改訂を共同発表した。「リスク情報を活用した意思決定」(RIDM:Risk-Informed Decision-Making)により、原子力発電の安全性向上を図るもので、2018年2月の策定以降、今回の改訂は、2020年6月以来、約3年半ぶり。RIDMは、原子力施設の安全性向上対策などを行う際、確率論的安全評価(PRA)で得られる定量化されたリスク情報も加え、意思決定を行う手法だ。福島第一原子力発電所事故の反省として、原子力発電所の安全性向上のため、原子力発電事業者では、リスクに向き合う仕組みの構築と、巨大地震・津波といった発生頻度は低くとも発生した場合の影響が大きい外的事象への取組強化を進めてきた。「リスクはゼロにならない」という考えに基づき、規制基準を満たすことにとどまらず、事業者の一義的責任のもと、自ら安全性向上・防災対策の充実を追求し、適切にリスクを定量化・管理する「リスクマネジメント」が重要となる。発電所のリスクを継続的に管理していくため、プラントの設備や運用において、リスク情報を活用し強化すべき点を特定して有効な対策をタイムリーに講じるRIDMを導入すべく、原子力発電事業者は2018年2月に「リスク情報活用の実現に向けた戦略プランおよびアクションプラン」を取りまとめた。RIDMの研究開発は、原子力リスク研究センター(NRRC、電力中央研究所内に2014年設立)が一元的に行っており、具体的取組例としては、四国電力伊方3号機の地震ハザード評価プログラム(SSHAC)があげられる。原子力発電事業者によるRIDM導入に向けた戦略プランは、前回の2020年6月改訂で、フェーズ1(2018~20年) RIDMに必要な機能を整備し、リスク情報活用を実践フェーズ2(2020年~) RIDMのための技術基盤の活用・改善、研究開発の継続と成果の適用、RIDMプロセスの適用範囲の拡大――と、それぞれ成果、目標を提示。続く今回の改訂では、フェーズ2の進捗状況を確認した上で、今後の取組・目標を設定。例えば、技術的取組としては、関西電力美浜3号機で実施されたリスク低減に有効な対策として、非常用炉心冷却装置の再循環自動切替装置の2025年以降導入の決定などがあげられる。この他、産業界を挙げた取組として、原子力エネルギー協議会と連携した運転中保全(OLM)の適用範囲拡大に向けた検討も行われており、今後は、規制当局と様々な側面から議論を進め、実機プラントへの早期適用を目指すとした。これにより、あくまで結果として、安全性向上とともに、プラントのパフォーマンス向上につながることも期待される。電気事業連合会の池辺和弘会長は、12月15日の定例記者会見で、RIDMの活用に関し、「新しいプロセスも活用しながら、さらなる安全性向上に努め、原子力発電の最大限の活用を図っていく」と述べた。
18 Dec 2023
1851
就任会見を行う齋藤経産相西村康稔経済産業相が12月14日に退任したのに伴い、後任として衆議院議員の齋藤健氏が就任。同日晩、就任記者会見を行い、抱負を述べた。同氏は、安倍内閣で農林水産相などを歴任している。その中で、齋藤経産相はまず、経産省が取り組む政策分野に関し、「通商産業、エネルギー、そして災害対応と、大変幅広く、それぞれの分野で多くの課題に直面している」との問題意識を示した。さらに、東日本大震災から12年以上が経過した福島の復興、GXの具体化に向けた取組、大阪・関西万博の準備を重点課題にあげ、「待ったなしの課題が山積している」と強調。さらに、通商産業省(当時)に職員として勤務した経験を持つ同氏は、40年程前の就職当時を「あの頃、『通商産業政策を命がけでやる』という気持ちで門をくぐった」と、振り返りながら、「今、初心に立ち返りもう一度、しっかりやっていく」と、就任に際しての決意を述べた。エネルギー・環境政策については、「再稼働や核燃料サイクル含めた原子力政策、再生可能エネルギーの拡大、GXの実現など、一つ一つ確実に対応していく」と明言。福島の復興や福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策に関しては、「8月に開始したALPS処理水の海洋放出について、政府として全責任をもって取り組んでいく」としたほか、「帰還困難区域の避難指示解除に向けて、交流人口の拡大などを通じ、被災地の復興を着実に進めていく」と述べた。近々議論が本格化するとみられる次期エネルギー基本計画の策定については、自身の資源エネルギー庁課長職時代の勤務経験も活かし、「まずはしっかりと現状を把握し取り組んでいきたい」と強調した。なお、齋藤経産相は、翌15日の閣議後記者会見で、COP28(11月30日~12月13日、UAE・ドバイ)が採択したUAEコンセンサスに関連し、日本の化石燃料からの脱却に向けた取組について問われたのに対して、再生可能エネルギーや原子力など、脱炭素電源への転換を進め、2050年カーボンニュートラル実現を目指す姿勢から、「整合的なものである」と明言。また、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関しては、一連の核物質防護事案に鑑み、「予断を持って発言することは差し控えたい」とした上で、事業者に対する徹底した指導の他、「安全確保を大前提に、発電所の必要性や意義について新潟県など、地域の理解が得られるよう引き続き丁寧に説明していく」と述べた。
15 Dec 2023
1578
COP最終日となった12月13日、参加国約200か国が、化石燃料からの移行を全ての国に求めることで合意。成果文書となる「UAEコンセンサス」を採択し、閉幕した。なお今回の成果文書ではCOP史上初めて、炭素排出量を削減するための重要なアプローチの1つとして「原子力」が明記された。焦点であった化石燃料については、その段階的な削減を明確に約束する文言は盛り込まれていない。しかし各国に対し、「公正に科学的知見に則って2050年までのネットゼロを達成するために、エネルギーシステムにおける化石燃料からの移行に向けた世界的な取り組みに貢献」するよう求めるなど、化石燃料からの移行を初めて明確に要求しており、COPとして化石燃料からの移行という方向性を打ち出すことに成功した点で、UAEコンセンサスは高く評価されている。UAEコンセンサスでは、化石燃料からの移行手段に言及しており、移行手段として初めて原子力が取り上げられた。これは排出量削減が困難な分野や水素製造等におけるゼロ炭素/低炭素テクノロジーの中で、再生可能エネルギーやCO2回収・貯留(CCUS)と並ぶテクノロジーとして原子力がリスト入りしたもの。これまでCOPの場では原子力が話題になることがあっても、文書化されたことはなく、今回初めてCOPに原子力の名が刻まれた。COP28の議長としてUAEコンセンサスをとりまとめたスルタン・アル・ジャベールUAE産業・先端技術相は今回の合意について、「地球規模の気候変動問題へ心から誠実に取り組む人々にとっての真の勝利。 これは現実的で、結果を重視し、科学を重視する人々にとっての真の勝利だ」と高らかに宣言した。世界原子力協会(WNA)のサマ・ビルバオ・イ・レオン事務局長は、「原子力の扱いが180度転換した。(COP3の)京都議定書メカニズムから除外された唯一のテクノロジーが、ついにCOP28においてさまざまな枠組みに含まれることになった」と述べ、「今年、世界の原子力産業界がCOPでの存在感をさらに高めるべく、ネットゼロ原子力(NZN)イニシアチブを設立した。 今こそ、世界の原子力発電設備容量を急速に拡大すべき時だ」と強い意欲を示した。英国原子力産業協会(NIA)のトム・グレイトレックスCEOは、コンセンサスに原子力が含まれたことを歓迎し、「これは気候変動との戦いにとって重要な瞬間だ」と述べた。そして「今必要なのは、英国が同盟国とともに重要な役割を果たし、原子力発電を大規模かつハイペースで拡大し、ネットゼロを達成すること」と指摘した。会合出席のため来日したNEAのマグウッドDG日本原子力産業協会の新井史朗理事長は、「公式文書において原子力の低炭素価値が認められ明記されたのはCOP史上初めてであり大変意義深い」としたうえで、「NZNパビリオン、IAEAパビリオンを中心とした活動のほかに50にも及ぶ原子力関連サイドイベントが開催された。また、今回初めて、日本政府主催のジャパン・パビリオンで、原子力に係るパネル展示が実施されたほか、米国、カナダ、韓国、英国、仏国などの各国パビリオンでも積極的に原子力に関する展示やイベントが行われたことは大きな前進である」と強調した。原子力産業新聞の独占インタビューに応じたOECD原子力機関(NEA)のウィリアム・マグウッド事務局長は、COP28について、「今回は原子力が話題の中心だった」と振り返り、「CO2排出量削減には原子力が大きな役割を果たすことが認められたということであり、ネットゼロ達成に必要な主要テクノロジーの中に原子力が初めてリスト入りした」との認識を示した。次回のCOP29は、来年11月にアゼルバイジャンのバクーで開催される。
14 Dec 2023
3134
太陽フレア爆発などの宇宙現象が通信・放送、航空運用、電力網に影響を及ぼすことが懸念されている。大規模な太陽フレアは平均で年1回程度発生しており、X線などの電磁波や、航空乗務員の被ばく原因となる太陽放射線が放出されることから、総務省・研究機関でも発生予報の高度化に向け、対策に努めているところだ。こうした太陽現象の解明に資することが期待される研究成果を、東京大学、名古屋大学と、レンズメーカーの夏目光学が12月14日に発表した。〈発表資料は こちら〉東大先端科学技術センター・三村秀和教授らによる研究グループは、X線望遠鏡用の高精度ミラーを製作する技術を確立。宇宙X線は非常に高いエネルギーを持つ光であるため、一般的なレンズやミラーで集めることができない。宇宙X線観測用の望遠鏡では、ウォルターミラーと呼ばれる特殊な筒型ミラーが用いられる。ウォルターミラーは、極めて高い精度が要求され、これまで小指程度の大きさにとどまり、大型のものは製作が困難であった。このほど開発された手法は、鋳造によるものだが、まず、マンドレルと呼ばれる筒状のガラス製の型を製作。次に、電気メッキの原理で、マンドレルの表面を覆うように厚さ0.5~2mmの殻を作る。この殻をマンドレルから引き抜き、ウォルターミラーを量産する(考古学展示品のレプリカ作成のイメージ)。ここで、殻には、副反応により表面に気泡が生じ、特に大型のミラーでは形状を歪めてしまう難点があった。今回、真空を利用した「気泡除去手法」を用いることで、X線望遠鏡に適用できる大きなミラーを、誤差1μmの精度で製作可能となった。今回の研究では、日米共同の太陽観測ロケット実験「FOXSI-4」に用いられる直径60mm、長さ200mmのウォルターミラーを製作。誤差0.3μmの高精度が達成された。「FOXSI-4」では、NASAの観測ロケットを用い、太陽フレアから放出されるX線を詳細に観測する計画だ。日本は、今秋のX線分光撮像衛星「XRISM」の打ち上げなど、X線天文学をリードしており、研究開発に当たった研究グループでは、今回の成果について、望遠鏡の高性能化・低コスト化とともに、X線天文学の進展にも貢献すると期待を寄せている。研究に参画した夏目光学は、光学機器メーカーが集まる長野県に本社を有し、半導体製造、レーザー加工など、幅広い技術分野を手がけている。
14 Dec 2023
1147
原子力規制委員会は12月13日、東京電力より申請された柏崎刈羽原子力発電所の保安規定変更を認可した。柏崎刈羽原子力発電所では、2021年1月以降に相次いで発生した核物質防護に係る不適切事案に鑑み、今夏以降、規制委による適格性判断の確認が行われてきた。規制委は、東京電力経営幹部との公開会合などを経て、2023年11月1日、東京電力より、保安活動における7項目の基本姿勢に一連の不祥事から得た教訓などを反映した保安規定変更の申請を受けた。変更された保安規定では、社長自身が従業員や協力会社の安全に関する意識と行動をモニタリングすることや、日常的に課題の共有や対策の議論を行うことで、自主的な安全性の向上を実現するとしている。11月29日の会合における議論で、変更内容は妥当とされており、本日、正式な認可に至った。東京電力では、今回の保安規定変更認可を受け、「引き続き、規制委員会による審査に真摯に対応するとともに、福島第一原子力発電所の事故から得た教訓を踏まえ、さらなる安全性、信頼性の向上に努めていく」とコメントしている。柏崎刈羽6・7号機について、同委は2017年12月に新規制基準適合性に係る原子炉設置変更許可を発出した上で、福島第一原子力発電所事故の当事者としての、適格性判断を実施。「原子炉を設置し、その運転を適格に遂行するに足りる技術的能力がないとする理由はない」と結論づけており、今回の適格性判断は2度目となる。なお、柏崎刈羽原子力発電所について、規制委は、東京電力に対し、原子炉等規制法に基づき、規制上の検査対応区分が改善するまで、特定核燃料物質の移動を禁ずる(事実上運転できない)是正措置命令を2021年4月に発出しており、これを踏まえた追加検査の結果が12月6日の同委会合で報告された。続く13日の会合では、11日に山中伸介委員長と伴信彦委員が行った現地調査の結果が報告され、山中委員長は、会合終了後の記者会見で、「適格性については一定程度確認ができた」と評価。その上で、翌週に予定される小早川社長との面談に向け、「事案発生から3年間の取組の総括、今後の意気込みを聴きたい」と述べた。最終的判断についてはその後、改めて委員間で議論するとしている。
13 Dec 2023
1844
福島第一原子力発電所近傍における海水・海底土や福島県の水産物の採取によるIAEAの海洋モニタリングに関する2022年報告書が12月12日までに公表された。〈発表資料は こちら〉日本政府の要請に基づき、わが国の海域モニタリングの信頼性、透明性を担保すべく、2014年から実施されている分析機関間比較調査で、IAEAが福島第一原子力発電所廃炉の進捗について、2013年度に取りまとめた報告書のフォローアップとなるもの。2022年は、11月7~14日に、モナコのIAEA海洋環境研究所(MEL)の専門家に加え、さらなる透明性向上の観点から、独立した第三国として韓国とフィンランドの分析機関も参加している。今回公表された報告書によると、採取した海水・海底土、福島県で水揚げした数種類の魚は、均質化した上で、日本の11機関、IAEA/MEL、第三国の分析機関に送付され分析。IAEAが集約・評価した。その結果、それぞれの試料中の放射性核種を比較し、大多数に有意な差がみられず高い信頼水準にあると結論付けた上、「日本の分析機関が、引き続き高い正確性と能力を有する」と、評価している。2022年からは、日本政府とIAEAとの覚書により実施されているALPS処理水安全性レビューの一環となる分析機関間比較調査も行われており、その結果については別途公表される予定。2023年も、10月16~23日、IAEA/MELに加え、IAEAから指名されたカナダ、中国、韓国の専門家も来日し、同調査が行われた。
12 Dec 2023
1391
総合資源エネルギー調査会の革新炉ワーキンググループ(座長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所所長)が12月11日、およそ1年ぶりに会合を開催し、高速炉・高温ガス炉の実証炉、サプライチェーン・人材を中心とした次世代革新炉の今後の検討課題について整理、議論した。〈配布資料は こちら〉今会合では初めに、資源エネルギー庁が2023年2月の「GX実現に向けた基本方針」閣議決定以降の次世代革新炉の動向について、海外の動向も紹介しつつ、整理。同方針では、革新軽水炉、小型軽水炉、高速炉、高温ガス炉、核融合炉について、2050年頃までを見据えた「目標・戦略」、「GX投資」、「規制・制度」、「国際戦略」に係る各行程が示され、「安全性の確保を大前提として、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む」とされている。また、高速炉、高温ガス炉の実証炉開発に向けては、「GX経済移行債」による投資促進策として、今後3か年で高速炉に460億円、高温ガス炉に431億円を措置し、研究開発を加速していくこととなったほか、いずれも今夏には中核企業として三菱重工業が選定されている。こうした状況変化をふまえ、高速炉・高温ガス炉を中心とした次世代革新炉の技術ロードマップのさらなる具現化に向け、本WGは再開された。今回、資源エネルギー庁は、高速炉、高温ガス炉の実証炉開発における技術的検討に向け、設計段階による実証炉の仕様決定規格・基準の整備燃料製造施設のあり方その他、各炉型に係る要素技術開発――といった論点を提示。また、国内サプライチェーンの維持・強化、人材に係る課題をあらためて示した。委員からは、国内サプライチェーンの現状について、田村多恵委員(みずほ銀行産業調査部次長)が、ウクライナ侵攻以降のエネルギー自給率の重要性を鑑み、非化石電源である原子力の重要性をふまえ、「GX経済移行債を活用しながら、原子力技術の維持・強化に資する取組への支援を行う」ことを評価。人材育成に関しては、高木直行委員(東京都市大学原子力安全工学科教授)が、「意欲的な学生は増えているが、まだまだ魅力的な分野というには程遠い」と述べ、次世代層への啓発の必要性を強調した。また、小伊藤優子委員(日本原子力研究開発機構高速炉・新型炉研究開発部門)からは、サプライチェーンや人材の課題だけでなく、国民理解の観点から、「革新炉による経済や他産業への波及効果に関する議論も併せて行っていくべき」との意見も出された。一方、遠藤典子委員(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授)は、「新増設に関する政策的な議論の深化が見られない」ことに言及、革新軽水炉開発に向けた政策推進が急務との認識を示したほか、永井雄宇委員(電力中央研究所社会経済研究所主任研究員)は、「次世代革新炉への投資活性化には、現在検討中の長期脱炭素電源オークションや非化石電源比率義務では不十分」としたうえで、費用回収リスクが発電事業者に偏らない仕組みの整備の必要性を主張した。また、産業界の立場から参加している大野薫専門委員(日本原子力産業協会)は、今後の次世代革新炉の展開の時間軸をふまえ、審査基準策定における規制当局間の国際連携、協力の必要性を提起した。今後、これら意見をふまえ、技術ロードマップの具体化や次世代革新炉の建設に向けた課題について検討していく。
12 Dec 2023
2092
COP9日目の12月8日、ドバイ市内のホテルで開催されていたCOP併催「第1回ネットゼロ原子力(NZN)サミット」が閉幕した。これはNZNイニシアチブ発足初となるサミットで、首長国原子力会社(ENEC)が事務局を務め、2日間の日程で開催。特に7日木曜日は、COP会場が休日で閉鎖されていたこともあり、多くの関係者がサミットに出席した。サミットでは、新規建設をめぐる政治的な課題やファイナンス面でのソリューション、次世代による新しいコミュニケーションのあり方や、これからの環境主義(environmentalism)などが議論され、ミス・アメリカのグレース・スタンケさんやTikTokで著名なインフルエンサーであるイザベラ・ベメキさんなどが登壇した。同国初の原子力発電所バラカ1~3号機が好調に稼働する、アラブ首長国連邦(UAE)らしいプログラム構成だった。閉会セッションで最後にあいさつした日本原子力産業協会の植竹明人常務理事は、2050年までに原子力発電設備容量を3倍に拡大するという目標を、ドバイの観光名所である「バージュ・カリファ」(2010年に完成した世界一高いビルで828m206階。ちなみに世界二位は632m)にたとえ、「きわめて高い目標」だと指摘。そして、このような巨額のプロジェクトを成し遂げるには、「並外れた先見性、洞察力、思慮深さ、決断力、そして勇気が必要」であり、「原子力産業界も高い目標を達成するために同様の覚悟が必要」との考えを示した。また「バージュ・カリファ」の大規模な基礎部分の強度になぞらえ、原子力産業界の目標達成においても、「確固たる原子力政策、次世代人材の確保、革新的な技術、ファイナンス、国際連携」などの堅牢な基礎が必要だと説明。そのうえで、「すべての根底にある最も重要な要素は安全」であると強調した。さらに「福島第一原子力発電所事故から学んだことは、安全について社会とコミュニケーションすることの重要性」であり、「常に安全性について社会と議論しコミュニケーションすることが、私たちの 2050 年の目標に向けた長い挑戦を支える基礎になる」と結んだ。
11 Dec 2023
2024
原子力発電環境整備機構(NUMO)は、環境に配慮した製品・サービスに関する国内最大級の展示会「エコプロ」(日本経済新聞他主催)に初めて出展した。〈NUMO発表資料は こちら〉今回の「エコプロ2023」(第25回)は12月6~8日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催されており、計432社・団体が出展し、会期中の来場者数は65,000人にのぼる見込み。同イベントには学生ら、若手の来場も多く、NUMOでは、今回の出展が、次世代層に地層処分事業について知ってもらう機会となることを期待している。「地層処分コミュニティパーク NUMOの森」と銘打つNUMOの出展ブースには、地層処分展示車「ジオ・ラボ号」も登場。「ジオ・ラボ号」は、「最終処分場とはどういうものか、その長期的安全性は?」について、直感的に伝えることをコンセプトに2021年以降、前身の地層処分模型車「ジオ・ミライ号」を引き継ぎ、現在、全国各地の科学館や商業施設などを巡回し活躍中。地表から300m以上深い場所に作られる処分場のイメージを大型ディスプレイでリアルに体感できるデジタル映像などを通じ、楽しみながら地層処分のイメージを体験できる。今回のイベントで、NUMOは、「触れる」、「見る」、「聞く」といった感覚に訴える展示を重視し、例えば、地層処分に使われる多重のバリア(ベントナイトなど)に実際に触れて実験したり、VRゴーグルを装着して処分場の状況を疑似体験するといった工夫を凝らしている。また、「エコプロ2023」がテーマとするSDGsに関連し、NUMOの各展示には、SDGsが目指す17目標のいずれに対応するのかを表示。例えば、「電気をつくる、電気をつかう。SDGsで考えよう ガラス固化体と地層処分」との展示では、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」をロゴで示している。NUMOの広報担当者によると、6、7日の2日間でそれぞれ約1,500名がブースに訪れたという。特に、社会科見学の小中高生らの来場も非常に多く、生徒たちからは地層処分について「初めて知った」という声が聞かれたほか、引率教員で関心を持つ人もあり、「まずは知ってもらう」ことが重要と話している。
08 Dec 2023
1379
COP8日目の12月7日、日本をはじめとする米国、フランス、カナダ、英国の“札幌5”((今年4月に札幌でコミュニケを採択した5か国のため、こう呼ばれる))首脳が、原子燃料の供給保障を万全にするため、新たな燃料サプライチェーンの構築に42億ドルを投じることを発表(仮訳)した。これは同日開催されていた第1回ネットゼロ原子力(NZN)サミットの場を借りて、急遽発表されたもので、2日に発表された22か国((その後アルメニアも加わり、23か国))による2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍にする宣言の実現に向けた具体的な動きだ。42億ドルという巨額を投じ、今後3年でウランの濃縮および転換能力を拡大し、世界の原子燃料市場で大きなシェアを占めているロシアの影響力を排除した新しい燃料市場を創設する。主導した米エネルギー省(DOE)のK.ハフ原子力担当次官補は「2050年までに世界の炭素排出ネットゼロおよび1.5℃目標を達成できるのは原子力だけ」とし、そのためには「信頼性のある安全な原子燃料サプライチェーンが必要だ」と述べた。日本原子力産業協会をはじめ、米原子力エネルギー協会(NEI)、欧州原子力産業協会(nucleareurope)、カナダ原子力協会(CNA)、英原子力産業協会(NIA)は共同で声明を発表し、新しい原子燃料サプライチェーンの構築に向けた政府の姿勢を歓迎。安定した燃料供給は脱炭素化とエネルギー・セキュリティを向上させるだけでなく、国家安全保障も強化すると指摘した上で、「産業界の供給能力拡大には今回のような政府による支援も不可欠だが、さらに前進させるには、民間企業および金融機関からの投資が不可欠だ」と強調した。ロシアは、世界のウラン濃縮および転換市場でほぼ50%を支配しており、米国の原子力発電所で使用される燃料の約2割はロシア製と言われている。ロシアは、安価な価格で原子燃料を供給し、世界市場における支配力を強めているが、特に、今後新興国も含む世界規模での導入が予想される先進炉の多くが装荷するHALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の供給元は、ロシアだけだった。こうした独占状況を打破するため今年10月、米国のウラン濃縮企業であるセントラス・エナジー社(旧USEC)が、オハイオ州パイクトンでHALEU燃料の製造を開始したばかり。HALEU燃料は先進的原子炉の設計を一層小型化するとともに、運転サイクルを長期化し運転効率を上げることにも役立つと目されており、今後の需要増が見込まれている。DOEが進める「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」においても、支援対象に選定された10の先進的原子炉のうち、9の炉型でHALEU燃料の装荷が予定されている。会場で記念のセルフィーを撮るハフ次官補とセントラス・エナジー社のD.ポネマンCEO
08 Dec 2023
3134
COP7日目となる12月6日、「電力部門ならびに排出削減困難なセクターにおける原子力の活用」をテーマにトークセッションが開催された。COP公式イベントとして 開催された同セッションには、日本から東京大学公共政策大学院の有馬純特任教授と、日本原子力産業協会の植竹明人常務理事が登壇した。有馬教授は、日本では「原子力か、再生可能エネか」の二項対立的な議論があるが不毛だ、東京大学が実施したシナリオ分析では、最小限のシステムコストで電力部門の脱炭素を実現するのは、再生可能エネルギーと原子力をともに最大限活用するケースである、と指摘。また、非電力部門の脱炭素化には電化が必須だが、電化ではまかなえない鉄鋼・セメント等の産業では水素を利用した技術が寄与するとし、グリーン水素製造にあたっては「再生可能エネルギーを唯一の選択肢とするのではなく、原子力も活用するべき」との考えを示した。また岸田政権が今年4月に打ち出した「今後の原子力政策の方向性と行動指針」に言及し、日本は、既存原子炉の再稼働と運転期間延長、次世代革新炉の開発と建設、核燃料サイクルの推進、国内サプライチェーンや人材の維持/強化に取り組んでいくと説明。「すでに12基のPWRが再稼働しているが、来年には福島第一事故以来初めて、2基のBWRの再稼働が計画されている」との見通しを示した。植竹氏は、非電力部門の脱炭素化のカギを握るのは原子力由来水素だと指摘。日本で開発が進められている水素製造の具体例として、日本原子力開発機構の高温ガス炉を用いた「熱化学法ISプロセス」や、関西電力が10月から敦賀市で開始した「水素トラッキング」を紹介した。これは、原子力由来の水素を原子力発電所の発電機冷却に利用しつつ、製造から利用に至るまでの一連の流れの追跡(トラッキング)を実証するもので、原子力由来水素を原子力発電所で利用する国内初の取り組みだ。なおセッションではそのほか、サイモン・ワクター氏(Quantified Carbon社シニアアナリスト)やヘザー・ファーガソン氏(オンタリオ・パワー・ジェネレーション社上級副社長)から、スウェーデンやカナダでの事例等が紹介された。
07 Dec 2023
1843
COP6日目となる12月5日、OECD原子力機関(NEA)はネットゼロへむけ小型モジュール炉(SMR)導入を加速させるイニシアチブ「Accelerating SMRs for Net Zero」を発表。SMRを最大限活用するため、産官学および規制当局の英知を結集し、研究開発から建設、運転までの流れを加速させる方針を示した。イニシアチブはNEAのほか、仏エネルギー移行省、米エネルギー省が設立メンバーとして参加。マグウッド事務局長は「クリーンエネルギーである原子力の中で、SMRは筆頭のニューウェーブ」との認識を示し、「SMRの導入の成否を握るカギは、官民が協力して課題に立ち向かうかどうか」と強調した。具体的には、NEAの持つ各国政府/研究機関/各種専門家のネットワークを活用して、協働作業を可能にするようなプラットフォームを構築する。そしてNEAが第三者機関として、SMR各炉型の商業化および導入に向けた進捗状況を包括的に評価。評価項目は許認可、立地、資金調達、サプライチェーンの確保、燃料の手配など多岐にわたり、各SMRプロジェクトの進捗状況の把握を容易にすることで、金融機関らの投資決定に寄与する情報を提供するという。
07 Dec 2023
1815