「原子力人材育成ネットワーク」(運営委員長=高橋明男・原産協会理事長)の報告会が2月12日に都内で開催され、2019年度の活動状況を紹介するとともに、笹川平和財団会長の田中伸男氏他による特別講演や、原子力分野におけるジェンダーバランス改善の取組に焦点を当てたセッションを通じ、今後の原子力人材確保・育成を巡る課題について産官学の参加者らが意見交換を行った。「持続可能なエネルギー安全保障戦略」と題し特別講演を行った田中氏は、国際エネルギー機関(IEA)が毎年まとめる「世界エネルギー見通し」(WEO)に基づき、2040年までの中国とインドの石油需要増や、最近の産油国を巡る地政学的な緊張などについて説明。IEAが11日に発表した世界のエネルギー起源CO2排出量の推移も紹介し、「石油の時代から電気の時代への転換期にある」とした。その上で、原子力発電に関しては、風力や太陽光との比較から建設コスト面の厳しさを指摘しながらも、運転期間をできるだけ延長することで市場競争力が上がることを強調。さらに、炉型の標準化に関し、「安全性や核不拡散性の高い小型モジュール炉(SMR)の開発への早急な着手が必要」とも述べた。続いて「女性研究者の養成に関わる取組と全国ネットワーク」と題し特別講演を行った東京農工大学副学長の宮浦千里氏は、同学理工系分野のジェンダーバランス改善について、2009年設置の「女性未来育成機構」によるキャリア支援から、女子トイレなどの学内施設改修に至るまで、地道に取り組んできた結果、工学系の女子学生比率が2割を超え全国トップレベルとなったことを披露。さらに、女性研究者を取り巻く環境整備に向け、140超の大学・研究機関が参画する全国ネットワークを組織し情報交換を進めているという。同氏によると、日本の研究者に女性が占める割合は約15%と、OECD加盟国では最低レベルにあり、その背景として研究者の仕事の魅力が女性に伝わっていないことや、キャリア形成の難しさなどをあげている。OECD/NEAでは、12月にパリでジェンダーバランス改善に向けた会合を開催しており、今回の報告会では、原産協会国際部の上田欽一氏が同会合への参加報告を行った。世界の原子力部門における女性従事者の割合は22.4%とのデータをまず示し、各国参加者からの取組紹介や討議を通じ原子力部門への女性進出を妨げる要因として、「ジェンダーへの先入観」、「ワークライフバランスの問題」、「原子力に対する悪いイメージ」があげられたとしており、引き続き、データ収集やコミュニケーションを図っていく必要性を強調。また、「男女の職業選択は既に15歳で分岐している」とも述べ、初等中等教育での取組の重要性も示唆した。続いて、原子力損害賠償・廃炉等支援機構国際グループの野原薫子氏は、OECD/NEAとの共催で8月に開催した女子中高生を対象に理工系分野への進路を喚起するイベント「Joshikai in Fukushima」(福島県三春町)について紹介した。「原子力人材育成ネットワーク」では、日本全体として整合性を持った効果的・効率的な原子力人材確保・育成に向けて戦略立案が必要との考えから、2019年度に「戦略ワーキンググループ(WG)」を立ち上げており、今後同WGのもと、既存活動のPDCAや関係省庁との人材育成における連携を強化していくこととしている。これらの報告を受け、高等教育の立場から東京大学大学院工学系研究科教授の上坂充氏は、「『もんじゅ』跡地に研究炉を建設する構想もあり、学生に設計の絵コンテを描かせては」と提案。中学・高校で使われる理科・社会科の教科書を調査してきた九州大学名誉教授の工藤和彦氏は、「技術者としての倫理観も求められる。『技術者像』のあり方についても考えるべき」などと意見を述べた。
13 Feb 2020
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☆1月の主な動き☆【国内】▽14日 IAEA総合規制評価サービス(IRRS)のミッションが来日▽17日 双葉町・大熊町・富岡町の避難指示区域が3月上旬に一部解除へ、常磐線の3月14日全線復旧も決定▽14日 広島高裁が四国電力伊方3号機の運転差止仮処分を決定▽21日 IRRSミッションが日程終了、規制委に産業界とのコミュニケーションなどを指摘▽21日 日ポーランド首脳会談、モラビエツキ首相「原子力の活用も重要な課題」と▽21日 パリ協定を踏まえ2050年に向けた「革新的環境イノベーション戦略」が決定、核融合の実現も技術課題に▽28日 原電が東海第二の安全性向上対策工事の終了時期を2022年末に延期▽29日 規制委、九州電力3、4号機のテロに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重)で審査結果まとめる▽29日 関西電力、高浜3、4号機の特重設置期限前日からの定検入りを発表▽30日 ITER「トロイダル磁場コイル」の初号機が完成(三菱重工二見工場にて)、世界最大級▽31日 エネ庁委員会が福島第一処理水の取扱いで取りまとめ、水蒸気放出と海洋放出を「現実的な選択肢」と【海外】▽1日 2019年末にドイツでフィリップスブルク2号機が予定通り永久停止▽3日 WNAが2019年の原子炉動向とりまとめ:「閉鎖基数が新規運開を上回る」▽3日 韓国とサウジ、SMART炉の建設・輸出促進で「建設前設計契約」を改定▽7日 米ニュースケール社、同社製SMRでカナダのベンダー審査開始▽13日 英エンジニアリング企業、政府のCO2実質ゼロ化目標達成に向け原子力等の重要性訴える▽14日 GNF社、事故耐性燃料入り試験集合体を米国の商業炉に装荷▽14日 EUが欧州グリーンディール投資計画案を公表、原子力への支援なし▽15日 ロシア:昨年12月から年始にかけ既存炉5基で運転期間を最長60年に延長▽15日 仏オラノ社、米原子力発電所で使用済燃料を最新の乾式貯蔵システムに移送▽20日 トルコのエネルギー相、シノップ原子力発電所建設計画で他のサプライヤーを検討中▽20日 ロシアのロスアトム社、今年12月に中国・田湾発電所で7号機を本格着工へ▽20日 ロシア:「ブレークスルー計画」で高速炉用ウラン・プルトニウム混合窒化物燃料の試験体 完成▽21日 米エネ省のVTR計画への支援でGEH社がテラパワー社と協力▽24日 英ロールス・ロイス社、2029年までにSMR初号機の完成目指すと表明▽24日 カナダの深地層処分場計画:最終候補2地点のうち1地点と調査のための立入で合意▽28日 エストニアのSMR建設プロジェクトにフォータム社とトラクテベル社が協力▽28日 UAEのバラカ1号機、WANOが起動前審査で準備の完了を確認▽28日 ロシアで稼働中の高速実証炉「BN-800」に初回分取替用MOX燃料を装荷▽30日 米GEH社、同社製SMR「BWRX-300」設計で規制委の先行安全審査開始▽30日 フィンランド規制当局、SMRの安全評価と許認可の体制準備▽31日 南アの国営ESKOM社、傘下のPBMR社の売却先を募集☆過去の運転実績
11 Feb 2020
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福島県の内堀雅雄知事は、2月10日の定例記者会見で、トップブランド米としての流通を目指す県オリジナル米の愛称を、「福、笑い」と決定したと発表。これは、福島県が2018年秋より「県産米全体のイメージと価格をリードする高品質米」と位置付けるべく取り組んできたもので、今回愛称が命名されたのは、県農業総合センターで有望な新品種候補として選ばれた奨励品種の一つ「福島40号」。内堀知事は、愛称の決定に際し、県内外から約6,200件の応募を受け、流通関係者、料理人、クリエイターなどの意見をもとに選考したとしており、「手にした皆様に笑顔が訪れるようなお米になって欲しいとの思いを込めた」と説明。さらに、「県産米のトップブランド品種として引き続き関係の皆様と連携しながら、生産振興や販売促進に取り組んでいく」と、今後の販路開拓に向けての意気込みを述べた。「福、笑い」は2021年秋に本格デビューする。福島県産米の価格水準は、震災後に全国平均を大きく下回ったが、近年回復傾向にあり、農林水産省が昨春に取りまとめた「平成30年度福島県産農産物等流通実態調査報告書」によると、2017年度で全銘柄平均に対しマイナス2.5%にまで縮小した。同報告書では、北海道産の「ゆめぴりか」や山形県産の「つや姫」など、各道県発で売り出されている高価格帯米を紹介し、オリジナル米の市場投入に際しては、慎重なマーケティング戦略の策定が重要とも指摘している。他道県産米との競争を見据え、内堀知事は、「福、笑い」の生産に関し、徹底した品質基準の保持や生産者の登録制を、広報戦略として、プレデビューイベントや試験販売を通じた流通関係者や消費者へのPRを図るとしている。
10 Feb 2020
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日本財団はこのほど、気候変動に関する「18歳意識調査」の結果を発表した。近年の世界的な異常気象に伴う被害の拡大をとらえ、12月に全国の17~19歳の若者1,000人を対象として、インターネットにより実施したもの。それによると、「海面の水位および温度の上昇、大型台風や高潮、猛暑といった温暖化の影響と考えられる異常気象が世界で頻発している」とした上で、地球温暖化の原因について尋ねたところ、「人間の社会活動に伴う温室効果ガスの排出」との回答が63.7%、「地球の自然サイクル」が6.8%、「わからない」が29.5%だった。「人間の社会活動に伴う温室効果ガスの排出」と回答した理由(自由記述)としては、「ニュースで聞くから」、「学校の授業で習ったから」など、あまり具体的に記述していない回答が多く、CO2を排出する「化石燃料」、「石炭」、「石油」、「火力発電」という言葉で説明していたのは16人にとどまった。また、世界のCO2排出量の国別割合で日本が第5位であることを示し「どう思うか」と尋ねたところ、「削減すべきだ」が最も多く68.8%、「社会活動のためやむを得ない」が12.9%、「わからない」が18.3%。さらに、地球温暖化対策の国際的枠組「パリ協定」で日本が示した温室効果ガスの削減目標「2030年度に2013年度比26%減」については、「十分ではない」が29.4%、「十分だ」が23.0%、「わからない」が最も多く47.6%だった。「温暖化対策に向けて必要だと思うこと」(自由記述)としては、「一人一人が環境について考える」など、まず個人が問題意識を持って行動すべきことを述べた意見が多く、「公共交通機関を利用する」、「ハイブリッド車や電気自動車の普及と開発を進める」といった自動車による排出ガスの削減に関する記述も多かった。エネルギー起源のCO2排出削減につながるものとしては、省エネの他、再生可能エネルギーの開発・普及の関連で30人、原子力発電の推進の関連で4人が意見を述べていた。今回の調査では、トランプ米国大統領の「パリ協定」離脱通告や、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんの活動など、最近の地球温暖化問題を巡るニュース・人物も取り上げているが、「温暖化対策は誰が中心になるべきか」との質問に対しては、「社会全体」が最も多く48.8%を占めた。これに関して、日本財団の笹川陽平会長は2月7日のブログで、「社会の一員として温暖化に自ら立ち向かう18歳なりの責任感が『全体』の一言に感じられた」としている。同財団では、「恋愛・結婚観」、「災害・防災」、「憲法」、「国政選挙」など、テーマを設け、若者を対象とした「18歳意識調査」を随時実施している。
07 Feb 2020
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東京電力の諮問機関「原子力改革監視委員会」(デール・クライン委員長〈元米国原子力規制委員会委員長〉)が2月4日に開かれ、同社が行う原子力安全改革の進捗、前回会合でレビューされた自己評価に対する改善状況について報告を受けた。東京電力は、福島第一原子力発電所事故の反省を踏まえ、「安全意識の向上」、「対話力の向上」、「技術力の向上」を軸に原子力安全改革プランを進めている。2019年1月の前回委員会会合では、原子力安全改革における(1)組織・ガバナンスの強化、(2)人財育成の強化、(3)コミュニケーションの改善、(4)原子力安全文化の醸成、(5)内部監視機能の向上――の各重点課題に対する自己評価についてレビューし提言を示した。今回の会合では、提言を踏まえた同社の取組状況について、「より厳しい自己評価を実施し、組織・ガバナンスを強化する上で大きな進捗がみられた」などと評価。また、コミュニケーションについては、「『伝える』から『伝わる』への活動を展開しているが、一層取り組んで欲しい」としている。会合終了後、記者会見を行ったデール・クライン委員長は、「外部からの指摘を待たずに、自分で気付くことができているかをチェックした」と述べ、自組織を厳しく評価し弱点を見つける重要性を強調。さらに、情報発信については、「『何ベクレル』といった数値だけでなく、誰でもわかるように説明することが大事」と指摘した。東京電力は、原子力安全改革プランの進捗状況を四半期ごとに取りまとめており、2019年11月に発表した年度第2四半期の進捗報告では、6月の山形県沖地震発生時に柏崎刈羽原子力発電所で生じた通報内容の誤りを踏まえ、通報連絡用紙の見直し、当番体制の強化、訓練実施などの対策を講じ、立地自治体による確認を受けたとしている。クライン委員長は、12月に柏崎刈羽原子力発電所を訪れており、東京電力が進めている安全対策を現場で視察し、「通常運転および様々な仮想の事故シナリオに対して、大きな安全マージンを加えるもの」などと評価した。
05 Feb 2020
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原子力規制委員会は2月4日の臨時会合で、東北電力の原田宏哉社長らと意見交換を行った。同委が事業者の経営層を順次招き実施しているもの。原田社長は、11月に女川原子力発電所2号機について新規制基準に「適合する」との「審査書案」が取りまとめられたことから、「再出発に向けた大きな節目が近付いている」と、運転段階に向けた意識のシフトを述べた。その上で、「発電所の運営管理」、「災害への備え」、「地域との信頼関係」を軸に、経営トップとしてリーダーシップ発揮していく姿勢を示した。東日本大震災以降プラントが長期間停止していることから、「技術力の継承」、「生きたプラントから学ぶ」、「新たな設備の習熟」、「褒める活動」に力点を置いた人材育成強化の取組を説明。技術の継承としては、ベテラン社員による勉強会開催、シミュレーターを活用した教育訓練の実施、OBの活用などが紹介され、委員との意見交換の中で、原田社長は「技術力は一定のレベルに達している」と述べた。この他、委員からは、4月から本格運用を開始する新検査制度に関連して、事業者が小さな気付きを広く収集し改善につなげる取組「CAP」について、より拡充を求める意見などがあった。取材に応じる原田社長意見交換終了後、原田社長は記者団の取材に応じ、女川2号機の再稼働に向けて「工事計画認可、保安規定認可と、まだまだプロセスを踏まねばならないが、6年間に及んだ審査が合格となりモチベーションも上がっている」と、現場の意識高揚を強調。また、「運転経験のない社員が3割を占めており、感受性、技術力を養っていかねばならない」と、人材育成の重要性を改めて述べた。東北電力では、2020年度の完了を目指し同機の安全対策工事を進めることとしている。
05 Feb 2020
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経済産業省は2月3日、浜通り地域の産業創出を目指す「福島イノベーション・コースト構想」に関する情報発信ポータルサイト「Hama Tech Channel」を開設した。同構想のもとで革新的な事業創出に取り組む企業、そこで活躍する人たちへのインタビューをウェブ上で紹介し、SNSを通じた発信拡大も図る。「Hama Tech Channel」開設と合わせ、発信コンテンツの一つ、「福島イノベーション・コースト構想」関連の施設・企業や先端テクノロジーについて取り上げる「浜からビジョン」の第1弾記事が公開された。ここでは、南相馬市の「福島ロボットテストフィールド」の若手エンジニア・三枝芳行氏のロボット開発に抱く想いを紹介。今春に全面オープンする「福島ロボットテストフィールド」は、東西約1,000m、南北約500mの敷地内に「無人航空機エリア」、「インフラ点検・災害対応エリア」、「水中・水上ロボットエリア」、「開発基盤エリア」が設けられ、実際の使用環境を再現しながら、陸・海・空で活躍するロボットの研究開発、実証試験、性能評価、操縦訓練を行うことができる。幼少の時分からロボットが好きで大学生の頃はロボコンにも参加したという三枝氏は、インタビューの中で、「福島ロボットテストフィールド」のメリットとして、「同じ技術者として使用者に伴走しアシストする」と、開発支援の手厚さを強調している。この他、福島県出身の若者が地元で新しいことにチャレンジする姿を取り上げる「地元の星」、福島へ移住した人たちへのインタビューや移住・起業の支援制度を紹介する「移住リアルレポート」など、順次コンテンツを設けていく。
04 Feb 2020
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2021年卒業予定の大学生・大学院生・高専生らを対象とした合同企業説明会「PAI原子力産業セミナー2021」(主催:原産協会/関西原子力懇談会)が2月1日、ベルサール新宿セントラルパーク(東京都新宿区)で開催された。同セミナーは、原子力産業に関わる企業・機関への人材確保支援とともに、原子力産業に対する理解促進・情報提供を目的として、2006年度より毎年行われている。16日には、大阪市に会場を移し、関係企業・機関から36ブースの出展が予定。今回、東京会場45ブースと合わせた出展数計81ブースは過去最高となる。東京会場には約140名の学生たちが参集。同セミナーに初出展した放射線計測関連の外資系企業ミリオン・テクノロジーズ・キャンベラの技術者は、原産新聞の取材に対し、除染作業に伴う除去土壌を収納した土のう袋をトラックに載せたまま放射能濃度を測定できる「TRUCKSCAN」(大林組との共同開発)など、同社の持つ技術力に「学生が関心を持ってくれている」と語った。また、計8回の説明時間を設けた原子力規制庁の採用担当者は、「原子力施設の安全審査以外にも色々な活躍の場がある。訪れる学生の2割くらいは文系」などと、多分野の学生にまず関心を持ってもらう意図を強調。同セミナーに初回から連続参加している原子力発電環境整備機構の採用担当者は、「原子力を学んだ学生が多く訪れており、研究分野がそのまま活かせるのでは」と期待を述べたほか、各地で巡回説明を行う地層処分模型展示車「ジオ・ミライ号」を学園祭で見て関心を持った学生もいると話した。原産協会では、福島第一原子力発電所事故以降、企業・機関で採用ニーズの高い機械系、電気系、化学系などの学生の同セミナー来場者が横ばい状況にあることから、これまで参加経験のある大学・高専への訪問、新たに制作したパンフレット「原子力産業で働いてみませんか?」の配布、理工系学生へのダイレクトメールを通じ、情報発信に努めている。
03 Feb 2020
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国際熱核融合実験炉(ITER)計画で日本が製作を担う「トロイダル磁場コイル」(TFコイル)と呼ばれる機器の初号機が完成し、1月30日に三菱重工業の二見工場(兵庫県明石市)で記念式典が行われた。TFコイルは、ドーナツ状をした磁気の籠の中にプラズマを閉じ込めるトカマク型核融合の重要な機器の一つで、今回の完成により、2025年の運転開始に向けて現在フランスで進められているITERの建設が大きく前進することとなった。ITERで用いられるTFコイルは、高さ約16.5m、幅約9m、重量約300トンのD字型をした世界最大級の超電導コイルで、中心ソレノイドコイルを囲むように計18基が放射状に配置される。ビゴITER機構長らを招きテープカット予備1基を合わせ計19基が製作されるTFコイルのうち、9基を日本、10基を欧州が分担。巨大な寸法に対し1万分の1以下の精度でコイルを巻線・製作することが要求される。今回の完成を受け、式典に出席したITER機構長のベルナール・ビゴ氏は、「日本は常にプロジェクトの中心となる貢献をしており、世界の核融合開発の牽引役だ。クリーンで、安全で、持続可能なエネルギーを得られる核融合の実現に大きく近付いた」と、日本の製造技術を賞賛した。ITERで日本が調達する機器(量研機構ホームページより引用)また、TFコイルに関し、2005年から製作に向けて研究開発を進めてきた量子科学技術研究開発機構の平野俊夫理事長は「新たな挑戦に心が躍る」と、2012年から製作に取り組んできた三菱重工業の泉澤清次社長は「これまで培ってきた技術力を日本のワンチームとして発揮した」と、ITER計画の大きなマイルストーンに際し所感を述べた。TFコイルは、今回の初号機を含めた5基分について、巻線部を三菱電機が、外側構造物は韓国で製作し、同工場で一体化することで完成体となり、神戸港からフランスに向けて出荷される運び。ITER建設の進捗率は2019年末時点で約67%となっている。
31 Jan 2020
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原子力規制委員会は1月29日の臨時会合で、日本原子力発電の村松衛社長らと意見交換を行った。同委が事業者の経営トップを順次招き実施しているもの。村松社長は、「安全に対するモチベーション向上は当社の重要な経営課題」として、安全文化の育成に向けたレベルアップ活動など、自主的安全性向上の取組の強化について説明。その中で、「現場力の維持・向上」に関して、約9年間のプラント停止により、運転の経験者が減少・高齢化してきたほか、保修部門についても、福島第一原子力発電所事故後3年間の新卒採用中断を受け、若手とベテラン社員とがペアを組む教育訓練「現場ブラザーシスター制度」で年齢ギャップが生じていることをあげ、技術伝承の困難さを示唆した。2018年12月に東海第二発電所で発生した作業員の感電死亡事故を踏まえた対策としては、中堅社員による若手工事監理員への指導や協力会社とのコミュニケーション推進などを通じ、再発防止の徹底を図っているとした。東海第二発電所は2018年11月にBWRでは初めて運転期間の20年間延長が認可されており、村松社長は、委員との質疑応答の中で、国内初の商業炉である東海発電所(GCR:ガス冷却炉)の廃止措置とともに、「パイオニア精神を発揮していく」との姿勢を改めて示した。東海第二発電所については、2022年12月の完了を目指し安全性向上対策工事が進められている。また、村松社長は、原電の取組として、米国のエナジーソリューションズ社やエクセロン社との交流を通じたプラントの経年劣化や廃止措置、小型モジュール炉(SMR)開発に関する知見取得など、海外事業者との連携について紹介。「新しいものに関心を持つことは、若手のモチベーションにつながる」と強調した。これに対し、更田豊志委員長は、IAEAからSMRに関する規制の枠組への参加を求められたことを述べ、北米におけるSMR開発の進展状況などを尋ねた。この他、地震・津波に関する審査担当の石渡明委員が昨秋の大型台風を踏まえた気象災害への備えを、バックエンド担当の田中知委員はGCRの炉解体に関する英国の知見活用を指摘した。
30 Jan 2020
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原子力規制委員会は1月29日の定例会合で、関西電力大飯発電所3、4号機(=写真)のテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)について、設置許可基準に適合するとの審査結果をまとめた。本件に関しては、24日の同委臨時会合(セキュリティ上非公開)で技術的事項に関する「審査書案」が決定しており、今回の定例会合では、これに加えて平和利用の担保や工事資金調達などに係る妥当性を合わせた審査結果が取りまとめられた。今後、原子力委員会と経済産業相への意見照会を行い正式決定となる運び。新規制基準で求められる特重施設については、プラント本体の工事計画認可から5年間の設置猶予期間が設けられており、大飯3、4号機では2022年8月にその期限を迎える。2019年4月時点で、工事に要する期間はこれを約1年超過する見通し。2015年に先陣を切って再稼働した九州電力川内1、2号機は、それぞれ特重施設の設置期限が3月17日、5月21日と迫っており、同社はいずれも期限前日からの定期検査入りを昨秋発表。1月29日には、関西電力も現在定期検査中の高浜3、4号機について、同設置期限である8月3日、10月8日のそれぞれ前日から、次の定期検査を開始することを発表した。
29 Jan 2020
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経済産業省は1月27日、高レベル放射性廃棄物問題に関する国際連携強化に向けた「最終処分国際ラウンドテーブル」の第2回会合を、2月7日にOECDパリ本部で開催すると発表した。「最終処分国際ラウンドテーブル」は、2019年6月の「G20エネルギー・環境大臣会合」(軽井沢)で合意された世界の主要な原子力利用国の政府が参加する枠組で、10月に行われた第1回会合には、ベルギー、カナダ、中国、フィンランド、フランス、ドイツ、日本、韓国、オランダ、ロシア、スペイン、スウェーデン、英国、米国、OECD/NEA、IAEAが参加した。同会合では、共通課題である最終処分の実現に向けて、各国が重視する考え方や協力を強化すべき分野について議論。これまでの最終処分に関する国際連携は、技術面を中心に専門家レベルで実施されてきたことから、国家戦略レベルで議論する同ラウンドテーブルは意義があるものと歓迎された上で、国民理解活動の知見・経験・教訓を学び合う重要性や、研究開発に関する協力として海外専門家によるレビューや地下研究施設の活用などについて意見が交わされた。第2回会合は初回に続き日本と米国が共同議長を務める。2回の会合での議論を踏まえ、最終処分に関する政府間の連携強化に向けた基本戦略やベストプラクティスなどを盛り込んだ最終報告書の取りまとめとなる運び。
27 Jan 2020
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原産協会の高橋明男理事長は1月23日、プレスブリーフィングを行い、最近の原子力を巡る国内外の動きについて質疑に応じた。17日に広島高等裁判所で四国電力伊方3号機の運転差止めを命じる仮処分決定が出されたことについては、「大変残念」とした上で、CO2排出量の削減目標や太陽光・風力発電の限界など、日本のエネルギーを巡る課題に触れ、原子力の果たす役割を改めて強調。今回の司法判断を受け「次のステップに向けて準備し臨まねばならない」と、原子力発電に対し立地地域を始め社会から理解を得るよう説明していく必要性を述べた。海外の動きとして、12月に米国原子力規制委員会(NRC)により承認されたターキーポイント3、4号機(フロリダ州)の80年運転については、「技術的に可能なことが示された。こうした成果が日本にフィードバックされれば」と、海外から知見を得る重要性に言及。原子力発電所の運転期間延長に関し、原子炉圧力容器の中性子脆化など、経年劣化に対する技術的評価とともに、国際エネルギー機関(IEA)のレポートが示す経済面でのメリットを説明した。また、過日来日した原子力規制に関するIAEAレビュー「総合規制評価サービス」(IRRS)のミッションが「産業界とのコミュニケーションは原子力安全に資する」と指摘したことについては、「原子力エネルギー協議会(ATENA)に大いに期待する」と、今後の課題としての認識を示した。
24 Jan 2020
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福島大学と筑波大学の研究グループはこのほど、ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所周辺(半径30km圏内)で、土壌に浸透しきれなかった雨水が地表を流れる現象「地表流」を観測。森林火災跡地で放射性物質を含む土砂の移動が起きていることを明らかにした。同研究では、放射性物質の再拡散に対する懸念をとらえ、ウクライナの研究機関との共同プロジェクトで、2016年にチェルノブイリ原子力発電所から約2km離れた地点で発生した大規模森林火災の跡地と、火災の影響がなかった周辺の森林地のそれぞれに調査区を設け、「地表流」によって流出する放射性物質の量を比較。その結果、森林火災跡地では、火災の影響がなかった森林地と比べ「地表流」の流量は約2.7倍、さらに、「地表流」に含まれて移動する放射性物質は約30倍にも上っており、放射性物質の大きな増加は、水中に溶けた状態ではなく、水中に浮遊する微細な土壌粒子などに付着していることと関係付けられた。研究グループでは、森林火災跡地において放射性物質の拡散を防ぐには「地表流」による土砂流出を抑えるのが有効と考えられるが、河川周辺で森林火災が発生した場合の影響評価・対策に向け、今回の研究成果を発展させていくとしている。同研究は、科学技術振興機構と国際協力機構との連携プログラムにより実施された。
22 Jan 2020
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日本の原子力規制に関する制度や組織について評価を行うため来日していたIAEAの専門家チーム「総合規制評価サービス」(IRRS)のミッションが1月21日、8日間の日程を終え、チームリーダーのラムジー・ジャマール氏(カナダ原子力安全委員会上席副長官)は、原子力規制委員会の更田豊志委員長とともに合同記者会見を行った。今回のIRRSミッションは、2016年1月に来日したミッションで指摘された勧告・提言への対応状況についてレビューを行う「フォローアップミッション」と位置付けられるもの。IAEAのガイドラインでは、本ミッションの2~4年後が実施の目安とされている。前回のミッションで、2つの良好事例とともに、13の勧告と13の提言が示されたのを受け、規制委員会では、明らかとなった課題について対応方針を取りまとめ、検査制度の見直しや放射線源規制の強化に関わる法整備などに取り組んできた。会見で、ジャマール氏は「日本は相当な改善を成し遂げている」と、更田委員長は「大変活発な議論が行われた」と、それぞれ所感を述べた。検査制度に関して、規制委員会では、前回ミッションでの指摘を受け、検査官の施設へのアクセス権限を確保した制度設計や、能力向上のため、米国原子力規制委員会への派遣や教育訓練課程の開設などを図ってきた。2020年度からの新検査制度の本格運用開始に向けて、ジャマール氏は「検査官がしっかり訓練を受けていることを確認した」と評価。一方で、「規制組織の独立性を損なうことがあってはならないが、産業界とのコミュニケーションは原子力安全に資する」とも述べ、カナダの事例にも言及しながら、規制組織が産業界による技術的革新や改善活動などを知る重要性を繰り返し強調した。今回の「フォローアップミッション」の最終報告書は概ね3か月後に公開される運び。更田委員長は、福島第一原子力発電所事故の教訓として「継続的改善を怠ることは決して許されない」と述べ、「報告書提示を待たずに課題解決に取り組んでいく」姿勢を示した。
21 Jan 2020
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福島県の内堀雅雄知事は1月20日の定例記者会見で、政府の原子力災害対策本部が双葉町・大熊町・富岡町に設定された避難指示区域の一部解除を決定したことについて、「帰還困難区域と双葉町では初めての解除となり、住民の方々に希望を与えるものと考えている」と、期待を述べた。その上で、「『避難指示が解除された地域の復興』と、『帰還困難区域も含めた今後の避難指示解除』の両輪が大切」として、引き続き地元自治体や国との連携に努めていく姿勢を示した。また、3月26日に「Jヴィレッジ」でグランドスタートを切る聖火リレーに関して、週内開催の実行委員会で双葉町も含めたルート設定が協議される見通しに言及。3日間にわたる 福島県内の聖火リレー は、1、2日目に浜通りの市町村を通ることが五輪大会組織委員会より公表されているが、全域に避難指示区域が設定された双葉町は現時点で外れている。さらに、3町の避難指示解除を受け常磐線が全線開通することについては、「人の流れが加速し、地域全体の復興が前に進む」と、期待感を示す一方で、今冬の県内観光の現状として「スキー場は過去に例を見ない雪不足」と、暖冬の影響による厳しい一面もあげ、若者向けのキャンペーンや外国人向けのSNSなどを通じ、きめ細かな情報発信を図る考えを強調した。
20 Jan 2020
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政府の原子力災害対策本部は1月17日、福島県の双葉町、大熊町、富岡町に設定されていた避難指示区域の一部を3月に解除することを決定した。原子力災害対策現地本部長を務めている松本洋平経済産業副大臣が地元と協議を行い、12月末までに合意されていたもので、双葉町における避難指示解除は初めてとなる。 双葉町については、75世帯の229人(2019年4月時点)に設定されていた避難指示解除準備区域が3月4日に解除される予定。伊澤史朗町長は、12月に都内で開催されたシンポジウムで、2022年春の帰還開始目標に向けて、雇用の確保を重要課題に掲げ企業立地の取組を進めていることを強調した。 また、双葉町、大熊町、富岡町に設定されていた帰還困難区域のうち、同区域を通るJR常磐線の線路と、双葉、大野、夜ノ森の各駅と周辺道路などについても避難指示が解除されることとなった。3月4、5、10日にそれぞれ、双葉町、大熊町、富岡町について解除となることを受け、JR東日本は震災後不通となっていた常磐線の富岡~浪江間を同14日に運転再開すると発表。同区間には、都内から仙台までを直通する特急「ひたち」も1日3往復運転される。 原子力災害対策本部会合で、安倍晋三首相は、今回の避難指示解除に関し、常磐線の全線開通とともに「Jヴィレッジ」で3月26日にグランドスタートを切る聖火リレーにも触れ、「浜通り地域の利便性が向上することから、多くの方々に訪れてもらいたい」と、観光面も含めた福島復興の加速化に期待。また、田中和德復興相は、「福島復興に向けた大きな一歩」と述べ、今後も産業創生や風評対策など、中長期的課題に鋭意取り組んでいく姿勢を示した。
17 Jan 2020
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原子力規制委員会は1月16日の臨時会議で、東京電力ホールディングスの小早川智明社長らと意見交換を行った。同委が原子力事業者の経営層を順次招き実施しているもの。小早川社長は、福島第一原子力発電所の廃炉作業に関わる最近のトラブル事例に関し、「現場/現物を徹底的に把握できていない」との共通要因が存在すると分析。その上で、分析結果は、昨秋に規制委員会の現地事務所が指摘した「現場に目が行き届いておらずトラブルが多発」などの背景となっているとして、今後のプロジェクト遂行と安全・品質向上に適した組織改編と合わせ、本社から現場へ70~90名の要員シフトを図る考えを示した。これを受け、更田豊志委員長は、「現場へのリソース投入」の必要性を繰り返し述べ、トラブルを受けて進められている改善活動がインセンティブを与えるものとなるよう切望。小早川社長は、協力企業と協働した現場/現物の徹底把握を通じ無事故・無災害を達成したフランジ型タンク解体工事の事例を紹介し、「改善活動が効果を上げた事例を活かしていきたい」と強調。さらに、2018年に発生した3号機使用済み燃料プールからの取り出しに用いる燃料取扱い設備のクレーン不具合を振り返り、部品の海外調達にも鑑み「標準化の重要性を感じている」として、品質管理上の問題への対応も含め、改善活動は広範囲にわたる認識を示した。12月末に福島第一廃炉の中長期ロードマップが改訂され、2号機からの燃料デブリ取り出しが明記されたが、小早川社長とともに意見交換に出席した福島第一廃炉推進カンパニープレジデントの小野明氏は、「今後は分析業務が重要となってくる」として、現場の変化に応じた人材確保・技術力向上に努めていく考えを強調した。
16 Jan 2020
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原子力委員会は1月14日の定例会合で、日本原子力学会の安全規制に関する分科会で活動している近藤寛子氏(マトリクスK代表)より、米国の原子炉監督プロセス(Reactor Oversight Process:ROP)について説明を受けた。2020年度より原子力発電所の新たな検査制度の実運用が開始するが、制度見直しのひな形となった米国ROPは、1990年代からの一貫した規制理念のもと、2000年初頭より開発・改善が行われてきたもので、新制度の導入に際し成功要因を学ぶことが重要とされている。近藤氏は、米国の原子力規制の仕組み、ROPの前身となる「設置者パフォーマンスの体系評価」(Systematic Assessment Licensee Performance:SALP)が見直しに至った経緯、ROPの開発と運用状況など、教訓となる事項にポイントを置いて説明。SALPは、1979年のTMI事故を受けて、それまでケース・バイ・ケースだった事業者のパフォーマンス評価を長期的視点で評価するため翌1980年に導入された仕組みで、運転、保守、エンジニアリング、プラント支援の分野について、「1:最高レベル」、「2:満足すべきレベル」、「3:最低許容レベル」、「N:未実施」の4区分で原則18か月ごとに評価していた。近藤氏は、SALP見直しの発端として1985年に発生したデービスベッセ発電所の給水喪失事故をあげ、「『2』評価を得ていたことから、SALPにおいて事象の予兆を見逃していた」問題から、規制当局幹部による「シニアマネジメントミーティング」(SMM)を通じ「ウォッチリスト」に掲載された問題プラントに対し厳しい検査を課すようになった変遷を述べた。一方、こうした規制プログラムの上乗せにより、制度が複雑化し、安全に対するパフォーマンスの実態と乖離した評価も行われるようになったことから、議会、政府、事業者、メディアなどからの批判が相次ぎ、ROPの開発に至った経緯を説明。近藤氏は、ROPの理念検討に際し開催された官民共同によるワークショップ(1998年)や、「一般の専門家が関わること」で規制当局と事業者との二者関係に陥ることなく、より開かれた制度として運用を開始できた経緯とともに、その後も様々なステークホルダーによる多角的な検証を通じ改善が進められていることを、米国の好例として紹介。IAEAでも「リスク情報を活用し、安全のパフォーマンスに基づいている。予見性があり、透明性があるという点で、ROPはよい実践」と高く評価されているとし、米国原子力規制委員会(NRC)が理念とする独立性に関しては、「Trust but Verify」(事業者を信頼するが、検証する)と強調した。
15 Jan 2020
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☆12月の主な動き☆【国内】▽4日 原子力機構が核不拡散・核セキュリティを考える国際フォーラム開催▽5日 「アジア原子力協力フォーラム(FNCA)」大臣級会合開催、20年目を迎え12か国が「医療への放射線利用」で議論▽10日 原子力委員会が人材育成で大学からのヒア開始▽11日 規制委、関西電力大飯1、2号機の廃止措置計画を認可▽17日 安倍総理が故天野之弥IAEA事務局長を偲ぶ会に出席、10年間の功績を称える▽19日 福島第一1号機使用済み燃料プールからの取り出し、ダスト飛散対策で大型カバー先行設置へ▽22日 学術振興会が「エネルギー社会と原子力」でシンポ、立地地域の首長らを交え議論▽23日 エネ庁委員会が福島第一処理水で取りまとめ案、海洋放出と水蒸気放出に焦点▽27日 福島第一廃炉の中長期ロードマップが改訂、燃料デブリ取り出しは2号機から▽27日 経産相が会見で、双葉町と大熊町の3月一部避難指示解除で地元合意と発表【海外】▽1日 カナダの3州の首相がSMR開発で協力覚書▽2日 カナダのSNC-ラバリン社、中国が建設予定の第3世代・重水炉で準備作業契約 受注▽4日 米規制委と加安全委、初の共同技術審査にテレストリアル社の溶融塩炉 選択▽5日 米規制委、ターキーポイント3、4号機で2回目の運転期間延長を承認、全米初の80年運転へ▽5日 ロシアで鉛冷却高速実証炉「BREST-300」施設の総合建設契約をTITAN-2社が受注▽9日 カナダのNB州政府、既存原子力発電所敷地内でのARC社製SMR建設を支持▽9日 トルコで建設中のアックユ原子力発電所、国内送電網との接続契約締結▽10日 米エネ省、オクロ社の小型高速炉建設用にアイダホ研の敷地使用を許可▽10日 米国でボーグル3号機の建設工事が進展、遮へい建屋に円錐形の屋根を設置▽12日 韓国の官民原子力使節団、ロシアの海外原子力事業に参加申し入れ▽13日 仏電力、来年から予算1億ユーロで原子力機器の品質向上等で行動計画▽17日 米規制委、TVAのSMR建設用クリンチリバー・サイトに「事前サイト許可」発給▽18日 米商務長官、「日米ともに新たな原子力発電設備が必要」と強調▽19日 ロシアが開発した世界初の海上浮揚式原子力発電所、極東ペベクで送電開始▽19日 フィンランドで建設中のOL3、営業運転開始が2021年3月にさらに延期▽19日 米NNSA、原子力事故時の大気中放射線計測で新たに3機の航空機 配備▽19日 ブルガリア、ベレネ発電所建設計画の戦略的投資家候補を5社に絞り込み▽30日 スウェーデンのリングハルス2号機が2019年末に永久閉鎖☆過去の運転実績
14 Jan 2020
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原子力産業新聞が電力各社から入手したデータによると、2019年は、国内全体で、原子力発電所の設備利用率は21.4%、総発電電力量は685億3,416万kWhだった。福島第一原子力発電所事故以降、プラントが停止し暦年を通した設備利用率は2014年にゼロを記録したが、再稼働が徐々に進み2019年には2割台の回復となった。この1年間、新たに再稼働したプラントはなかったが、司法判断に伴う運転停止が影響した2018年と比べ総発電電力量では33.1%の伸びを見せた。東京電力福島第二1~4号機が9月に、九州電力玄海2号機が4月にいずれも法令上運転終了となり、国内の原子力発電所は計33基・3,308.3万kWとなった。2019年は、関西電力高浜3号機が通年で稼働し設備利用率は105.2%に達した。*各原子力発電プラントの2019年運転実績(同年12月分を併記)は こちら をご覧下さい。
10 Jan 2020
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原子力規制委員会の更田豊志委員長は、1月8日の定例記者会見の中で、2020年の重点事項として、(1)新検査制度の運用開始、(2)福島第一原子力発電所の廃炉、(3)六ヶ所再処理工場の新規制基準適合性審査――をあげた。2020年度より本格運用を開始する新検査制度については、着実に機能するよう「被規制側との意思の疎通、相互の信頼関係が醸成されることが大きなポイント」と強調。福島第一原子力発電所については、特に処理水の取扱いをあげ「苦渋だが、早期に決断せざるをえない時期に差し掛かっている」との見方を示した。六ヶ所再処理工場の審査は申請から丸6年が経っているが、「様々な審査案件の中でも大きな判断の対象」と、大詰めの段階にあることを示唆した。福島第一原子力発電所廃炉の関連で、12月末の 中長期ロードマップ改訂 を受けた質問もあり、燃料デブリ取り出しについては、「まだまだ非常に難しい問題がある」と、収納・保管・移送方法も含め技術的課題が山積している現状を指摘。また、昨秋再開の事故分析で実施された3号機原子炉建屋内現地調査の 映像 に関しては、「まだ推測の域を出ないが、損傷状態を見ることができたのは大きな前進」と、成果を認める一方、「線量の高さが調査を阻んでいる。緊急時に備え原子力規制庁職員の被ばく管理も改めて考える必要がある」などと述べた。
09 Jan 2020
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原産協会の「原子力新年の集い」が1月8日、東京プリンスホテル(東京都港区)で開催され、会員企業等、政府関係、駐日大使館などから約900名が参集し、新しい年の幕開けを慶び親睦を深めた。年頭挨拶に立った今井敬会長(=写真上)は、昨今の異常気象を振り返り、「気候変動の危機感がますます高まっている」とした上で、地球温暖化の要因となるCO2排出の削減のため、「原子力発電は必要不可欠」と強調。一方で、国内の原子力発電の現状について「9基しか動いていない。今年は暫く数基が止まる可能性がある」と懸念し、温室効果ガス排出量削減の国際公約を果たすべく、「2030年度時点で30基程度の稼働が必要」と、残るプラントの早期再稼働とともに40年超プラントの運転期間延長に産業界として意欲を示した。さらに、年内にも次期エネルギー基本計画策定の議論が開始される見通しから、新増設・リプレースの必要性も含め「長期的視点に立ったエネルギー・原子力政策」が図られるよう切望。また、欧米における次世代型原子炉開発の躍進に言及し、「国際的潮流から取り残されぬよう、イノベーション創出における産官学の一層の連携が必要」と呼びかけた。来賓として訪れた牧原秀樹経済産業副大臣は、福島復興・廃炉汚染水対策の取組や国内のエネルギー供給を巡る課題とともに、中国の国産原子炉建設や米国の80年運転など、海外の原子力動向にも触れ、「現実をしっかり直視した上で、原子力を含めたエネルギー政策の舵取りを行っていく」と強調。また、電気事業連合会会長の勝野哲氏は、電力業界の信頼回復や電力インフラのレジリエンス強化に向けた取組など、2019年の振り返りを披露。特に原子燃料サイクルに関しては、「長期的視点に立って一貫性を持って進める必要がある」として、現在原子力規制委員会による審査が大詰めとなっている六ヶ所再処理工の早期しゅん工に向け引き続き支援していく姿勢を示した。「原子力産業のますますの発展を祈り」と、車谷暢昭副会長(東芝会長)が音頭を取り、一同は祝杯を上げた。
08 Jan 2020
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梶山弘志経済産業相(=写真)は1月7日の閣議後記者会見で、米イラン対立に伴う原油供給への影響に関する質問に対し、「中東は世界のエネルギー供給を支える重要な地域の一つ。深刻に懸念している」として、引き続き注視していく必要性を述べ、原油調達先の多角化、国内における資源開発、緊急時に備えた石油備蓄など、今後の資源・エネルギー安全保障政策の視点を示した。梶山大臣は、元旦に発表した 年頭所感 の中で、エネルギー・環境政策に関して、「資源に乏しい日本にとって、エネルギーコストを抑制し、海外依存構造から脱却することは不変の要請」、「パリ協定を踏まえた脱炭素化の取組を果たすことが、次の世代に持続可能な社会をつなぐ、われわれの使命」との認識を改めて強調。北海道胆振東部地震や大型台風からの復旧対応を急務とし、再生可能エネルギー導入の拡大、資源・燃料の安定供給を図ることなどをあげ、原子力については、「依存度を可能な限り低減する方針のもと、安全最優先で再稼働を進める」とした上で、「強靭で持続可能なエネルギー供給体制を構築していく」と述べている。福島復興・廃炉汚染水対策については、「原子力災害からの復興は、いかなる時でも経済産業省一丁目一番地の最重要の政策課題」との取組姿勢を示している。因みに、資源エネルギー庁が昨夏取りまとめたデータによると、日本の原油消費量に対する中東依存度は2018年で87%に上っている。
07 Jan 2020
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