【国内】▽2日 福島第一処理水の取扱いでIAEAがレビュー報告書、エネ庁委員会の検討結果を評価▽6日 エネ庁、福島第一処理水の取扱いに関し意見聴取を開始▽14日 2018年度エネ需給実績公表、原子力再稼働でCO2排出量が大幅減▽14日 規制委が新型コロナ拡大防止でTV会議による審査会合開始▽16日 若狭湾エネ研とJAXAが研究連携に向け覚書締結、宇宙放射線による影響評価など▽17日 量研機構他が熱利用による水素製造の大幅な省エネ化を達成、高温ガス炉利用にも期待▽21日 内閣府、日本海溝・千島海溝巨大地震で津波想定発表▽22日 核融合超伝導トカマク型実験装置「JT-60SA」が完成、ITER/BA(幅広いアプローチ)活動で▽22日 東北大で次世代放射光施設が着工、2024年度供用開始予定▽29日 福島第一、高さ120mの1/2号機排気筒の解体が完了▽30日 東北電力が女川2号機の安全対策工事完了時期を2022年度へ2年先送り 【海外】▽1日 米サザン社、新型コロナウイルスの流行でボーグル3、4号機建設工事の遅れを懸念▽1日 ロシアで送電開始後40年経過した高速原型炉の運転期間を5年延長▽7日 ロシア、バングラデシュの建設サイトのロシア人にチャーター機手配▽7日 米TVA、クリンチリバー・サイトにおけるSMR建設の評価についてテネシー大学と覚書▽8日 フィンランドのTVO、OL3の燃料装荷許可を申請▽8日 OECD/NEAの事務局長、加盟国にNEAのパンデミック対応を説明▽8日 フラマトム社、ロシア最新鋭の原子力発電所建設プロジェクトに安全保護システム納入へ▽10日 米規制委、サリー1、2号機の2回目の運転期間延長審査で最終EIS発行、6月に最終判断へ▽14日 仏電力、新型コロナの拡大で2020~2021年の財務目標をすべて撤回▽15日 米ジョージア・パワー社、新型コロナの影響対策でボーグル増設サイトの労働力20%削減▽15日 ロシアの専門家審査会、海上浮揚式原子力発電所用防護インフラの建設を承認▽15日 ベラルーシの原子力導入初号機で温態機能試験が完了▽21日 米国の温暖化防止団体、感染拡大時の原子力発電所早期閉鎖の延期をNY州知事に要請▽22日 英ホライズン社、原子力発電所建設に必要な国道の改修計画について許可の延長を模索▽22日 IAEAが主催する「SMR規制者フォーラム」、SMRの安全性問題で新たな提言を発表▽23日 米エネ省の作業部会、原子力で米国が再び優位に立つための戦略を公表▽23日 カナダ原研、SMR開発促進イニシアチブで英モルテックス社を支援▽28日 米ホルテック社、同社製SMR用の燃料調達でフラマトム社を選択▽29日 米NY州のインディアンポイント2号機が予定通り永久閉鎖▽30日 IEA、新型コロナの影響で世界のエネルギー需要は2020年に6%減と予測 ☆過去の運転実績
12 May 2020
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資源エネルギー庁は5月11日、福島第一原子力発電所の処理水の取扱いに係る「関係者のご意見をうかがう場」を開催し、日本経済団体連合会他から意見を聴取。2月に取りまとめられた小委員会による報告書を踏まえ、今後政府として処理水の取扱い方針決定に資するもので、4月6、13日に福島県の自治体や産業団体から意見を聴取したのに続き3回目となる。新型コロナウイルス対策のため、関係者は一会場に参集せずウェブ会議で行われた。資源エネルギー庁の小委員会では、処理水の処分方法とともに、風評被害などの社会的影響も含め総合的な検討を行ってきたが、経団連専務理事の根本勝則氏は、「地元自治体、農林水産業、食品加工業など、様々な方々の意見を丁寧に聴きながら、国民の理解を得て最適な処分方策を決定して欲しい」と切望。さらに、東日本大震災以降、東北地域の魅力を発信する「復興応援マルシェ」開催など、経団連が取り組んできた被災地産品の販路拡大・観光振興に向けた支援策を披露し、「風評対策にはこれまで以上に精力的に取り組んでいく」と強調した。また、全国約1,200社の旅行業者で構成する日本旅行業協会の理事長を務める志村格氏は、観光振興を通じた風評被害対策の有効性を「広い意味で農業や食品の分野にも貢献する」と述べた上で、(1)官民一体となったキャンペーンの企画、(2)観光客を受け入れる基盤整備(コンベンションなど)、(3)様々な形態の旅行に応じた情報提供、(4)食の安全に関する正しい情報発信――を要望。全国旅行業協会専務理事の有野一馬氏は、福島第一原子力発電所構内に立ち並ぶ処理水を保管するタンクに関し、「『福島の象徴』のように報じられている」と、復興に及ぼす影響を懸念し、処理水の取扱いについて「安全性を十分に確認した上で処分することが必要な時期にきている」とした。流通業界から、日本スーパーマーケット協会専務理事の江口法生氏は「安全性について国民に対し丁寧にわかりやすい言葉で説明を」と、日本チェーンストア協会専務理事の井上淳氏は「聞き手側に立った情報提供を」と、それぞれ要望。「消費者との接点」と自身の立場を位置付ける井上氏は、処理水の取扱いに関し、(1)正しい情報の分かりやすい開示、(2)結論の押し付けではない丁寧な議論、(3)安全確保に対する認識の全体共有――をあげ、「国民の安心を得ることは必須の条件」と繰り返し強調した。資源エネルギー庁では、引き続き6月15日まで処理水の取扱いに関する意見募集を行っている。
11 May 2020
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政府は5月1日、福島復興再生基本方針に基づき、県が作成した「重点推進計画」の変更を認定。浜通り地域の産業創出を目指す「福島イノベーション・コースト構想」に関し、計画期間が2020年度末から2025年度末までに延長するとともに、これまでの4つの重点分野、「廃炉」、「ロボット・ドローン」、「エネルギー・環境・リサイクル」、「農林水産」に加え、「医療関連」と「航空宇宙」を追加した。復興庁、経済産業省、福島県は2019年12月に「福島イノベーション・コースト構想を基軸とした産業発展の青写真」を策定しており、「医療関連」と「航空宇宙」を加えた重点6分野の産業集積を進めていくこととなった。これを踏まえ、新たな「重点推進計画」では、浜通り地域の産業発展を目指し青写真で掲げられた「あらゆるチャレンジが可能な地域」、「地域の企業が主役」、「構想を支える人材育成」を3本柱として取組内容を整理した。「医療関連」では、医療機器の開発から事業化までを一体的に支援する「ふくしま医療機器開発支援センター」(2016年開所、郡山市)などの拠点機能活用や、新規企業の参入促進も図っていく。例えば、京都・西陣織で創業し現在ウェアラブルIoTメーカーとして川俣町に工場を持つミツフジは、生体情報が取得できる電極付シャツを用いた医療機関との遠隔モニタリングシステムの開発にも取り組んでいる。また、「航空宇宙」の分野では、「空飛ぶクルマ」試験飛行を始めとする「福島ロボットテストフィールド」の利用拡大や、宇宙航空研究開発機構と地元企業との技術マッチングなどを通じた新規参入・取引拡大があげられている。
07 May 2020
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東京電力は4月30日、福島第一原子力発電所廃炉の進捗状況を発表した。昨夏より行われていた1/2号機排気筒解体が29日、予定していた工程(筒身部分16ブロック、鉄塔部分7ブロック)を完了した。今後の廃炉作業に向けて、高さ120mの排気筒は、損傷・破断が生じていたため、上部を解体しリスクを低減する必要があった。また、解体工事に際しては、作業員の被ばくを低減するため、現場での作業を無人化するよう切断・把持機能を有する解体装置を製作。2018年8月からモックアップ(模擬体)による遠隔解体の実証試験を行い、解体装置の性能や施工計画の検証、作業手順の確認など、準備を進め、2019年8月に解体工事を開始した。排気筒は、今回の解体工事で、破断が集中している高さ66m付近を含め、高さ59mより上部が撤去された。排気筒解体の進め方(東京電力発表資料より引用)排気筒の解体作業は、地元企業のエイブルが手掛け、現場で工事に当たった担当者は、「大きなプロジェクトに参加させてもらった。苦労したこともあったが、うまく作業を進めることができた」と語っている。今後は残された排気筒の頂部からの雨水侵入防止のため、蓋を設置する計画となっており、福島第一廃炉推進カンパニープレジデントの小野明氏は、30日の記者会見で、「最後まで気を緩めることなく、安全最優先で作業を進めていく」と強調。また、「地元に高い技術力を持つ企業があることを実感した」とした上で、「未知なる作業が控えており、今回の経験を活かしていきたい」と述べ、遠隔操作技術など、今後の燃料デブリ取り出しに向けても地元企業を活用していく考えを示唆した。2号機使用済み燃料プールからの燃料取り出しに向けては、遠隔操作でプール内調査を行う水中ROV(遊泳型ロボット)のモックアップ訓練を、南相馬市に3月末に全面開所した「福島ロボットテストフィールド」で5月中旬にも実施する予定。
01 May 2020
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政府は4月29日、春の勲章受章者を発表した。旭日大綬章を元東レ社長で前日本経済団体連合会会長の榊原定征氏、元四国電力社長の常盤百樹氏が受章。多年にわたり化学繊維業の発展に尽力してきた榊原氏は、2014年6月~18年5月に経団連会長を、2019年4月からは総合資源エネルギー調査会会長を務めるなど、経済政策においても手腕を発揮。2020年3月には関西電力会長に内定しており、今後は金品受領問題で損なわれた信頼の回復に向け、同社の経営改革・刷新に取り組んでいく。常盤氏は、2005年6月~09年6月の四国電力社長在任中、伊方3号機のプルサーマル発電計画推進に向け、三菱重工業・フランスメロックス社とのMOX燃料製造契約や地元理解活動に取り組んだ。電気事業連合会副会長や四国経済連合会会長を歴任するなど、電気事業・地域経済の発展に尽力。2017年にはフランス大使館より「レジオン・ドヌール勲章」を受章しており、日仏協力の功績に関しても高く評価されている。また、瑞宝重光章を元科学技術事務次官の石田寛人氏が受章。同氏は、1964年に科学技術庁(現文部科学省)に入庁し、当時通称「サブロク長計」と呼ばれた1961年策定の原子力長期計画を出発点に、日本の原子力開発利用の推進に取り組んできた。科学技術事務次官退任後は、駐チェコ大使として外交分野で、金沢学院大学学長や原子力安全技術センター会長として原子力人材育成や技術基盤の強化で幅広く手腕を発揮。古典芸能に造詣が深く子供歌舞伎に関する著書も出している。この他、旭日中綬章を科学技術振興機構理事長や日立製作所副社長を務めた中村道治氏が受章。同氏は、2008年の大強度陽子加速器施設「J-PARC」供用開始を機とした「中性子産業利用推進協議会」設立に関わるなど、研究開発施設の産業利用にも力を入れた。瑞宝中綬章を、2014年4月~17年12月に原子力委員を務めた元軍縮担当国連事務次長の阿部信泰氏、元科学審議官の池田要氏、元内閣府政策統括官の興直孝氏、元科学技術庁長官官房審議官の内藤香氏が受章。池田氏は科学技術庁の要職を歴任後、駐クロアチア大使を務め、2005年には初代ITER機構長に選任された。興氏は、科学技術庁原子力局長に在任中、JCO臨界事故が発生し、その後の原子力行政の立て直しに取り組んだ。IAEA保障措置局での勤務経験を持つ内藤氏は、行政職を退いた後、核物質管理センター理事長を務めており、近年も核セキュリティに関する原子力規制委員会での検討や海外調査などで活躍している。外国人では、旭日大綬章をマイクロソフト社共同創業者兼会長兼CEOのビル・ゲイツ氏、旭日重光章を元米国エネルギー省(DOE)副長官のダニエル・ポネマン氏が受章。ゲイツ氏は、技術誌やブログを通じ、地球温暖化問題の解決に貢献するものとして原子力技術の有用性を訴え続けている。ポネマン氏は「民生用原子力協力に関する日米二国間委員会」の米国議長を務めるなど、エネルギー分野における日米関係の強化に寄与した。
30 Apr 2020
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日本原子力文化財団はこのほど、パンフレット「私たちの暮らしを守るために」を制作した。主に女性層を対象として「地球温暖化防止の観点から見る将来のエネルギー」について考えてもらうことを目的としたもの。パンフレットは冒頭、「猛暑や台風、豪雨を生み出す温暖化」と題し、気温の上昇に伴う自然災害の頻発・大型化、健康や農作物に与える影響について事例をあげながら述べ、人間の様々な活動から排出される温室効果ガス、特に化石燃料の利用によるCO2が温暖化の原因となっているとして、「温暖化は“加害者”も“被害者”も私たち」と問題を提起。また、「2050年までに80%削減」とする日本の温室効果ガス排出に関する国際公約や、他国の削減目標についても示し、「求められるのは、大幅な“ダイエット”」と、世界全体による努力の積み重ねが必要なことを強調。その上で、生活者の視点から、「ポイントは、家庭などの電化と発電の低炭素化」として、例えば、電気を利用するヒートポンプ式のエアコンや給湯器では、使った電気エネルギーの3~6倍の熱エネルギーを作り出せることを述べ、電化による効果を「省エネルギーと省CO2」とアピール。さらに、温室効果ガス削減の長期目標達成に向け、原子力や再生可能エネルギーなど、発電に伴いCO2を排出しない「ゼロエミッション電源」の活用が重要なカギを握るとした。2050年に向けたCO2排出量削減に関しては、電力中央研究所が2019年にまとめたレポートを引用し、「徹底した省エネルギー」、「再生可能エネルギーの最大限の導入」、「原子力の活用」の3つを推し進めていく必要性を解説。原子力発電所の安全対策についても説明している。原子力文化財団では、今回のパンフレット作製に関し、現下の新型コロナウイルス感染症騒動により、地球温暖化問題への関心の薄れや収束後の経済建て直しに伴うCO2排出増が生じることも懸念し、「この機に電気のことについても考えてもらいたい」としている。
28 Apr 2020
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東北大学の青葉山キャンパス(仙台市)で次世代放射光施設の中核となる「基本建屋」の起工式が4月22日に行われた。地上2階、地下1階、延べ床面積約25,000平方mの「基本建屋」には、2021~23年度に加速器(電子エネルギー3GeV、蓄積リング周長約350m)の据付け・調整が行われ、同施設は2024年度に供用開始となる予定。1997年に供用開始した電子エネルギー8GeVの「SPring8」が主に高エネルギー領域のX線(硬X線、5~20keV)を用い「物質の構造を知る」解析を行うのに対し、この次世代放射光施設は、主に低エネルギー領域のX線(軟X線、~2keV)を用い「物質の機能を知る」解析に強みを持ち、燃料電池開発や創薬などの分野での活用が期待されている。軟X線向けの放射光施設については、スイス、フランス、英国、中国、韓国などに続き、近年、米国、台湾、スウェーデン、ブラジルでも新設が進んでおり、文部科学省の有識者委員会では2018年1月に、「諸外国と互角に競争するための環境が整っていない」、「高い産業利用ニーズが見込まれている」との認識から、早期に整備すべきとする報告書を取りまとめている。これを踏まえ、量子科学技術研究開発機構が「整備運用を進める国の主体」として指名され、2018年に9月には、同機構と、一般財団法人光科学イノベーションセンターを代表機関とする、宮城県、仙台市、東北大学、東北経済団体連合会による地域・産業界パートナーとが連携協力協定を締結し、施設の建設が具体化に向けて動き始めた。東北大学では、2019年3月に次世代放射光施設の敷地造成が始まったのを受け、10月には「国際放射光イノベーション・スマート研究センター」が発足するなど、同施設を活用した国際研究ネットワークの構築や教育・人材育成に向けた準備が進められている。4月20日には、新型コロナウイルス感染症の制圧に関し、有望な放射光利用関連技術を取りまとめた上で、研究課題の募集を開始するとともに、ウェブ会議により「世界主要放射光施設サミット」を開催することを発表した。
24 Apr 2020
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量子科学技術研究開発機構の那珂核融合研究所(茨城県那珂市)で建設が進められていた核融合超伝導トカマク型実験装置「JT-60SA」が4月22日に組み立てを完了した。〈量研機構発表資料はこちら〉国際熱核融合実験炉(ITER)計画を補完・支援するものとして日欧共同で取り組む「幅広いアプローチ(BA)」活動の一つで、2007年に従前の「JT-60」を改修する形で建設が開始。2013年より組立が始まり、2019年5月には、「JT-60SA」の心臓部となる「中心ソレノイドコイル」(直径2m、高さ7m、重量約100トン)の据付けが報道陣公開のもとに行われた。トカマク型核融合は、ドーナツ状の磁気のかごを作り、その中にプラズマを閉じ込める方式。「JT-60」を用いた研究では、プラズマをITERの運転に相当する高閉じ込め・高圧力の状態で世界最長時間(28秒間)維持する成果をあげた。これを踏まえ、「JT-60SA」は、ITER計画に資するデータ取得に向け、BA活動における「サテライト・トカマク計画」と、(1)経済性・環境適合性に向けた研究開発、(2)ITERへの科学的知見の提供、(3)ITER研究をリードする人材育成――を掲げるトカマク国内重点化装置計画のもと、ITERの約半分規模の装置として建設が進められた。今後、「JT-60SA」では、超伝導コイル冷却など、順次各機器の健全性を確認しつつ動作させ、今秋頃にも最初のプラズマを着火し統合試験運転を開始する予定。「サテライト・トカマク計画」の他、「国際核融合材料照射施設の工学実証・設計事業」など、日欧で3つの事業を進めるBA活動については3月に、2007年6月~2020年3月のフェーズIに続き、2024年度のITER運転開始を目指し、新たなフェーズに向けた共同宣言署名式(欧州委員会本部にて)が行われている。
23 Apr 2020
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内閣府(防災)の有識者検討会は4月21日、日本海溝の北部から千島海溝を対象とし巨大地震が発生した場合の震度分布、津波高、浸水域などに関する検討結果について報告書を取りまとめ発表した。北海道厚岸町付近で震度7など、岩手県から北海道に及ぶ太平洋側の広い範囲での強い揺れが推定されている。これは、東日本大震災の教訓を踏まえ2015年より検討を行ってきたもので、過去6,000年の津波堆積物に関する資料から最大クラスの津波断層モデルとして、「日本海溝(三陸・日高沖)モデル」と「千島海溝(十勝・根室沖)モデル」を構築し、津波シミュレーションを実施。沿岸における津波の高さや浸水範囲・深さを推計し、北海道、青森県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県について、その分布図が公表された。岩手県については自治体の要望により未公表。同報告書よると、北海道では根室市からえりも町付近にかけて10~20mを超える津波高となっており最大で27.9m(えりも町)だった。青森県は太平洋沿岸で10~20m程度となり最大は26.1m(八戸市)。岩手県は10~20m程度で宮古市がおよそ30mと今回の検討結果で最も高かった。宮城県以南では、場所によっては10mを超えていたが、一部の地域を除き東日本大震災時より低かった。 今回の報告書発表に関し、武田良太内閣府防災担当大臣は21日の閣議後記者会見で、最大クラスの地震・津波に伴う被害想定や災対策について検討する新たなワーキンググループと、自然災害に対する政府の初動対応・応急対策強化に向け「自然災害即応連携チーム会議」を立ち上げたことを述べ、「危機管理体制をより万全なものとする」と強調した。福島第一原子力発電所を立地する双葉町、大熊町の津波高は、「日本海溝モデル」によるシミュレーションで、それぞれ13.7m、14.1mだった。東京電力では昨秋より、福島第一原子力発電所の千島海溝津波対策として、高さ11m、全長約600mの防潮堤の設置工事を実施中。これに関し、原子力規制委員会の更田豊志委員長は22日の定例記者会見で、「強い関心を持っている」とした上で、「まず建屋の水密化をできるだけ早急に図って欲しい」と繰り返し述べた。
22 Apr 2020
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静岡県牧之原市に4月19日、原子力災害発生時に高齢者や障害者など、要配慮者が一時的に避難する施設として「地頭方原子力防災センター」が完成した。中部電力浜岡原子力発電所から4.6kmの距離にあり、これまで原子力災害に備えた避難施設としては既存の小中学校体育館などが指定・整備されてきたが、新設のものは県内で初となる。約260人を収容できる同センターは、鉄筋コンクリート構造2階建てで、避難室8部屋(うち和室2部屋)、備蓄倉庫、7日間の停電に対応できる非常用発電設備や地下軽油タンクを備えているほか、放射線防護のため、陽圧化装置(建物内の気圧を上げて外からの空気を入りにくくする)や鉛入りのカーテンが設置されている。およそ6.6億円の事業費が投じられ昨秋より建設工事を行っていた。市では、施設の完成に先立ち愛称を募集し、審査の結果、7日に「ジーボ」と決定した。浜岡発電所周辺の市町村(経産省発表資料より引用)浜岡発電所から20 km圏内には、発電所を立地する御前崎市の他、掛川市、菊川市、牧之原市など7市町が含まれ、全市町の人口総数は40数万人に上っている。牧之原市の杉本基久雄市長は3日の定例記者会見で、「市内全体には1,200人の要配慮者がおり500人分の収容施設が足りない」と述べ、災害に備えた施設の整備がさらに必要なことを示唆した。浜岡発電所では現在3、4号機について、新規制基準適合性に係る審査が行われている。
21 Apr 2020
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量子科学技術研究開発機構、芝浦工業大学、日本原子力研究開発機構による研究チームは4月17日、高温熱を利用した水素製造の効率(システムの駆動に要した全消費エネルギーに対し、製造した水素の燃焼エネルギーの割合)を40%にまで向上できる見通しが得られたと発表した。熱化学反応サイクルで水を水素と酸素に分解するシステム「ISプロセス」の実用化に向けて研究を進めてきたもの。〈量研機構他発表資料はこちら〉「ISプロセス」は、高温の熱源として高温ガス炉や太陽熱を用いる水素製造技術として期待されており、高温ガス炉では、原子力機構の「HTTR」について、3月末に新規制基準適合性の審査書案が取りまとめられ、所要の検査を経て年度末頃に運転再開の予定となっている。膜ブンゼン反応の原理(量研機構発表資料より引用)「ISプロセス」の中心となる「ブンゼン反応」では、大量の循環物質(ヨウ素と硫黄)と、これに伴う機器の大型化が必要となることから、過剰なヨウ素を抑えるため、量研機構と芝浦工大は2017年に「膜ブンゼン反応器」を開発した。これは、「ブンゼン反応」で起きる「硫酸(H2SO4)生成反応」と「ヨウ化水素(HI)生成反応」の中で、電極に挟まれたイオン交換膜を介して、水素イオン(H+)を陰極側に効率的に透過させる仕組みで、ヨウ素使用量の約8割削減につながったが、電圧の低減や強酸環境での耐食性などが課題となっていた。今回、量研機構の高崎量子応用研究所は、放射線照射による改質(量子ビームグラフト・架橋技術)で新たなイオン交換膜を開発し、水素イオンの透過に起因する電圧を約8割低減。耐食性に優れた貴金属によるめっき加工技術などに取り組んできた芝浦工大は、表面積を増大した金陽極を新たに開発し、硫酸生成に起因する電圧を約4割低減することに成功した。また、原子力機構は「ブンゼン反応」の最適温度を50度Cと判断。開発された陽イオン交換膜と金陽極を反応器に装着した試験も50度Cで実施され各技術を実証するデータが得られた。今回の研究成果では、太陽熱を熱源とした650度C程度の比較的低温でも水素製造効率40%を達成できる見通しが立ったとしている。
17 Apr 2020
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文部科学省はこのほど、全国国公私立の幼稚園から高校まで約5万校を対象に実施した学校安全の推進に関する2018年度調査の結果を発表。校内施設や通学路の安全点検、地域連携・防犯体制の整備状況、安全に関わる教育活動・教職員研修などの実態とともに、危機管理関連で、原子力災害や津波浸水に備えた訓練実施状況についても調査結果が示された。それによると、原子力施設から概ね30km圏内の「緊急時防護措置を準備する区域」(UPZ)に所在する学校2,340校(幼稚園・認定こども園520校、小学校996校、中学校515校、高校242校他)のうち、原子力災害を想定した危機管理マニュアルを作成している学校は1,932校(82.6%)、避難訓練を実施している学校は1,175校(50.2%)だった。都道府県別には、UPZ内に所在する学校が最も多いのは茨城県の317校で、次いで静岡県の245校、福島県の196校、島根県の186校、新潟県の178校、福井県の144校などとなっている。茨城県では、1999年のJCO臨界事故を受け、学校における原子力防災マニュアルを整備し、国による原子力災害対策指針の改訂を踏まえた見直しも行っている。今回の調査で、県内の学校のうち原子力災害を想定した危機管理マニュアルを作成していたのは306校(96.5%)、訓練を実施していたのは243校(76.7%)だった。東海村では、2019年6月に原子力発電所事故を想定した広域避難訓練の中で、初めて村内の小学生約80人を参加させ、避難所での保護者への引き渡し訓練を実施するともに、非常用物資の配布や自衛隊装具の展示を行うなど、防災対策の実効性向上に努めている。この他、危機管理の関連で、津波浸水の可能性が示されている学校は5,950校で、そのうち津波被害を想定したマニュアルを作成している学校は5,375校(90.3%)、避難訓練を実施している学校は5,344校(89.8%)。また、弾道ミサイル発射に関する避難訓練を実施、または合同訓練に参加したという学校は6,624校(13.4%)だった。
16 Apr 2020
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資源エネルギー庁は4月14日、2018年度のエネルギー需給実績を取りまとめ発表。最終エネルギー消費は前年度比2.7%減の13,124PJ(ペタジュール)となり、特に家庭部門では暖冬の影響により同7.8%の大幅な減少を見せた。2018年度の一次エネルギー国内供給は、前年度比1.8%減の19,728PJとなった。その中で、原子力発電の再稼働と再生可能エネルギーの普及が進んでおり、全体に占める割合がそれぞれ前年度比1.4ポイント、同0.5ポイント増加し、これらを含む非化石燃料の占める割合は6年連続で増加。一方、化石燃料の占める割合は85.5%で6年連続の減少となった。総発電電力量は、同0.8%減の1兆512億kWhで、電源構成別には火力が77.0%(同3.9ポイント減)、再生可能エネルギーが16.9%(同0.9ポイント増)、原子力が6.2%(同3.1ポイント増)となり、非化石電源の占める割合は23.0%と、同3.9ポイントの増加を見せた。年度内には、関西電力大飯4号機(PWR、118.0万kW)と九州電力玄海4号機(PWR、118.0万kW)の2基の原子力発電プラントが再稼働している。また、エネルギー起源のCO2排出量は、前年度比4.6%減の10.6億トンとなった。5年連続で減少し続けているが、下げ幅は近年で最大。東日本大震災後、原子力発電プラントが順次停止し化石燃料によるエネルギー供給がピークとなった2013年度との比較では、14.2%の減少となっている。環境省の同日発表によると、2018年度の国内温室効果ガス総排出量は12.4億トン(CO2換算)で、前年度比3.9%減、2013年度比で12.0%減となった。日本は、パリ協定に基づく国際公約として「温室効果ガスを2030年度に2013年度比26%削減」との目標を掲げている。
15 Apr 2020
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資源エネルギー庁は4月13日、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関する「関係者のご意見を伺う場」を福島市と富岡町で開催。2月に取りまとめた小委員会報告を踏まえ、政府としての方針決定に資するもので、6日の福島市開催に続き2回目となる。前半の福島市会場では、県商工会連合会会長の轡田倉治氏、ヨークベニマル社長の真船幸夫氏、県農業協同組合中央会会長の菅野孝志氏が意見を表明した。福島を中心とする5県に約230店舗の販売網を有するヨークベニマルの真船氏は、「安心・安全な食品を地域の皆様に届ける」という使命を繰り返し強調。福島第一原子力発電所事故後、独自に放射線測定機器を導入し日々食品の検査を実施した上で顧客に提供してきた結果、「徐々に福島県産品の安全性に対する理解が浸透してきている」とした。一方で、「風評は未だ払拭されるに至っていない」と憂慮し、毎年3月11日に打ち出す販売促進キャンペーン広告を示しながら、福島県産の農水産物の魅力発信に努めていることを述べた。その上で、処理水の取扱いに関し、(1)国内外に広く情報を提供しコンセンサスを得ること、(2)風評被害防止の事前プログラムを準備しておくこと――が担保されない限り、放出すべきではないと主張。また、菅野氏は、小委員会報告が「現実的な方法」とする海洋放出と水蒸気放出について「二者択一の考え方には反対」としたほか、2日に公表された同報告に対するIAEAレビューに関し「地元紙を除いてほとんど報道されていない」などと述べ、マスメディアによる情報発信や放射線教育の重要性にも言及した。後半は富岡町に会場を移し、いわき市、双葉町、富岡町、広野町、葛尾村、楢葉町、川内村、大熊町、浪江町の各首長が意見を表明。いわき市長の清水敏男氏は、処理水の取扱いに関し、資源エネルギー庁が2018年に開催した説明・公聴会(富岡町、郡山市、都内)での環境・健康影響を巡る議論を振り返り、小委員会報告について「科学的事実に対し共通認識が形成されるべき」と、国民全体による議論の必要性を示唆。また、市の観光復興の現状について述べ、海水浴客は震災前の1割程度に留まり、良質な波で知られる四倉海水浴場では「東日本サーフィン選手権大会」が2年連続で開催できたものの、サーファーからは放射線に対する不安の声が聞かれるなどと、「風評被害の固定化」を懸念した。この他、各町村長からはいずれも、地元産業に及ぼす風評被害への不安や慎重な対応を求める意見が述べられ、住民帰還に与える影響を憂慮する声、原子力発電所を立地する地域を含め全国各地で説明会を行うべきとの意見もあった。現下の新型コロナウイルス対策のため、東京にてテレビ会議を通じての出席となった松本洋平経済産業副大臣(座長)は、「皆様方の思いをしっかり受け止めていく」と述べ締めくくった。
14 Apr 2020
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☆3月の主な動き☆【国内】▽2日 ITER「幅広いアプローチ活動」、新たなフェーズに向け日欧共同宣言署名▽4日 九州経済連合会エネ戦略で提言、「再稼働の先行アドバンテージ」を強調▽5日 政府・未来投資会議、環境・エネ問題で「大所高所からの骨太のビジョン」検討へ▽7日 「福島水素エネ研究フィールド」が浪江町に開所、太陽光発電を用いた世界最大級のプラント▽10日 消費者庁風評調査、食品の産地を気にする人で「放射性物質の含まれていない食品を買いたいから」が震災後最少に▽11日 福島第一事故から9年、東京電力社長が訓示「復興と廃炉の両立」を強調▽17日 原子力文化財団が世論調査結果発表、原子力に対する考え方が「ややポジティブ側」に変動と分析▽18日 規制委、東北電力女川1号機と九州電力玄海2号機の廃止措置計画を認可▽20日 福井県「原子力災害制圧道路」が完成、原電敦賀と「もんじゅ」の行来が短縮し観光振興も▽24日 文科省が放射線教育に関する調査結果発表、副読本の活用状況も▽25日 規制委、原子力機構「HTTR」の新規制基準適合性で「審査書案」取りまとめ▽27日 東京電力が福島第一廃炉で向こう10年の中長期実行プラン示す、地元企業を通じた復興支援策も▽31日 「福島ロボットテストフィールド」が全面開所 【海外】▽2日 世界初の「華龍一号」設計の福清5号機で温態機能試験が完了▽2日 米国防総省、超小型炉の原型炉建設と実証に向けコメント募集▽5日 米原子力発電所の2019年の安全性パフォーマンス評価、全ユニットが最良カテゴリーに▽6日 米ピーチボトム2、3号機に規制委が2回目の運転期間20年延長を承認、米国で2件目▽6日 インド原子力省の常設委、原子力拡大計画で国産加圧重水炉の建設を推奨▽9日 米国防総省、超小型原子炉原型炉の設計契約でWH社など3社を選定▽9日 欧州の原子力企業7社、EUのタクソノミー報告に対し原子力の評価で専門家Grの設置を要請▽10日 米BWXT社、エネ省が開発中の超小型炉用にTRISO燃料の製造契約獲得▽10日 米規制委、ホルテック社の集中中間貯蔵施設の建設計画審査で「環境影響面の問題なし」と報告▽13日 米ビーバーバレー原子力発電所の事業者が2年前の早期閉鎖予告を撤回▽17日 米オクロ社、先進的SMRで初の建設・運転一括認可(COL)を規制委に申請▽19日 英ロールス・ロイス社、トルコで同社製SMRを建設する可能性調査でトルコ国営電力と覚書▽20日 米NEI、パンデミック時の燃料交換など原子力発電所への支援をエネ省長官に要請▽22日 IEA事務局長:「コロナウイルス危機に際しすべての発電設備オプション維持が重要」▽23日 仏電力、コロナウイルスの影響で原子力による今年の目標発電量を下方修正へ▽25日 IAEA、様々なSMRの経済性評価で3年計画の協働研究 開始▽25日 チェコ電力、ドコバニ原子力発電所での2基増設で立地許可を申請▽26日 EDFエナジー社、コロナウイルスの影響でサイズウェルC原子力発電所の「開発合意書」の申請書提出を延期▽26日 ロシア、国内外で運転・建設中の原子力発電所におけるコロナウイルス対策でさらなる警戒強化▽30日 IAEA、コロナウイルスによる感染拡大時の緊急時支援演習を実施 ☆過去の運転実績
13 Apr 2020
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原子力産業新聞が電力各社より入手したデータによると、2019年度の国内原子力発電所の設備利用率は20.6%と、前年度の19.3%より1.3ポイント増加。また、総発電電力量は概ね前年度並みの637億7,898万kWhだった。月ごとの設備利用率の推移(2018~19年度)2019年度内に新たに再稼働したプラントはなく、2018年度に引き続き、関西電力高浜3、4号機、同大飯3、4号機、四国電力伊方3号機、九州電力玄海3、4号機、同川内1、2号機の、いずれもPWRで計9基の運転となった。また、九州電力玄海2号機が4月に、東京電力福島第二1~4号機が9月に運転を終了。国内の原子力発電プラントは、計33基・3,308.3万kWとなっている。また、九州電力川内1号機が3月16日にテロ対策の「特定重大事故等対処施設」の設置期限満了を迎え定期検査入り。検査期間中は、新規制基準が要求する同施設、常設直流電源設備(3系統目)の設置工事などが行われる。
10 Apr 2020
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原子力規制委員会は4月8日の定例会合で、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた対応として、当面の審査会合などをテレビ会議・電話会議での開催を基本とすることとした。ウェブサイトでのライブ中継もこれまで通り実施する。現在通信試験のための模擬会合が行われており、最終的なチェックを経て運用を開始するが、審査会合については原則火・木曜の開催となる見通し。テレビ会議は、3月に福島第一原子力発電所に関する監視・評価検討会で、東京の本庁と現地原子力規制事務所と発電所サイトとを結んで行われたことがある。地震・津波関係の審査など、事業者が会場で図面を示しながら議論することが必要な会合については、サイト担当者が東京に出向くことを極力避けるよう、個別に人数を限定した審査会合の開催を検討する。また、セキュリティの観点からテレビ会議が利用できないテロ対策の「特定重大事故等対処施設」に関する審査や、判断・指示事項が明らかな案件については、委員の了解を得て書面審査とし、機微情報へのマスキングを施した上で文書を公開。規制委員会の新規制基準適合性に係る審査会合は、概ね日に1回程度開催されていたが、3月27日を最後に中断となっている。前回4月1日の定例会合で、審査を総括する原子力規制庁の山形浩史氏は、「審査に遅れが生じないように努めていく」として、早急に今後の審査会合の進め方をまとめる考えを示していた。7日には新型コロナウィルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言が7都府県に発令されたが、更田豊志委員長は8日の定例会合終了後の記者会見で、実施期間中の留意事項として、原子力施設にトラブルが生じた際の緊急時対応体制の維持の他、医療用放射性同位元素に係る申請への対応も重要などと述べた。なお、定例会合は当面これまでの毎週から隔週の開催となる。
08 Apr 2020
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資源エネルギー庁は4月6日、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関する報告書取りまとめを受けた第1回「関係者のご意見を伺う場」を福島市で開催。今後、地元を始めとした関係者の意見聴取を順次実施し、政府としての方針が決定される運び。今回は、内堀雅雄・福島県知事他、県内の市町村長、産業界の代表らが招かれ、それぞれの立場から意見を述べた。福島第一原子力発電所で原子炉内の燃料デブリ冷却などにより発生する汚染水は多核種除去設備(ALPS)で浄化処理されるが、取り除くことのできないトリチウムを含んだ水の取扱いが課題となっており、資源エネルギー庁の委員会は2月にこれまでの検討結果を取りまとめた報告書の中で、「現実的な方法は海洋放出および水蒸気放出」、また、「風評被害対策を拡充・強化すべき」としている。さらに、4月2日には、同報告書に対するIAEAのレビュー結果が公表され、海洋放出と水蒸気放出のいずれも「技術的に実施可能」と評価した上で、今後の処分方針について「すべてのステークホルダーの関与を得ながら喫緊に決定すべき」などと指摘された。6日の「ご意見を伺う場」で内堀知事は、震災から9年を経て、水産業では漁港の復旧とともに試験操業が順次拡大し出荷制限を受ける魚介類がゼロとなったことなど、県内産業の復興状況を説明。一方で、農産物の産地間競争の激化などに触れ、県産品の価格や観光客数に全国水準との格差が生じている実態や、一部の国・地域で続く食品輸入規制の現状を述べ、「風評払拭には長期にわたる粘り強い取組が不可欠」、「福島の現状とともに放射線に対する正しい知識が伝わっていない」として、処理水の取扱いに関し慎重な対応を要望した。産業界から、県旅館ホテル生活衛生同業組合理事長の小井戸英典氏は、処理水の放出に関し、「どれだけ希釈しても不安をゼロにすることはできない」、「風評ではなく故意の加害行為」と厳しく指摘。一方で、報告書の内容を踏まえ諸外国でのトリチウム放出の実績や安全性の担保に一定の理解を示し、処分期間を通じた損失補てんとともに、放出を容認する考えを述べた。また、県森林組合連合会会長の秋元公夫氏は、きのこ・山菜類への影響、林業の経営意欲低下などを懸念し、処理水の放出に反対。県漁業協同組合連合会会長の野﨑哲氏は、「これから正に増産に向け舵を切ろうという矢先」と、県水産業の本格復興に向けた正念場を強調したほか、若い後継者の機運に与える影響なども危惧し、「海洋放出には反対せざるをえない」、「福島県の漁業者だけで判断できることではない」とした。観光関連では、会津磐梯山を望み五色沼を擁する北塩原村の村長で県町村会会長の小椋敏一氏が、9年を経て漸く震災前の水準に戻りつつある国内外観光客の回復状況について説明し、「町村の現状はまだまだ厳しい」と訴えたほか、処理水の取扱いについては、県外での処分も選択肢に全国各地で幅広く意見を聴く必要性を述べた。第2回の「ご意見を伺う場」は、13日に福島市と富岡町で行われる予定。
07 Apr 2020
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福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関し、資源エネルギー庁の小委員会が2月に取りまとめた報告書に対するIAEAによるレビュー報告書が4月2日に公表された。IAEA主催の核セキュリティ国際会議(2月10~14日)に日本政府代表で出席した外務省の若宮健嗣副大臣が、ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長に小委員会報告書を手渡した後、レビューが行われていた。一方、IAEAでは、2018年11月に福島第一原子力発電所の廃炉に関する第4回調査団を日本に派遣し助言を行っており、今回のIAEAによるレビュー報告書は、そのフォローアップとして位置付けられている。福島第一原子力発電所では、原子炉建屋内の燃料デブリ冷却のため継続的に発生する汚染水を多核種除去設備(ALPS)により浄化処理しているが、取り除くことのできないトリチウムを含んだ処理水の取扱いが課題となっており、資源エネルギー庁の小委員会で議論が行われてきた。技術的な検討も踏まえ、同委が2月に取りまとめた報告書では、「実績があり現実的な方法」として海洋放出と水蒸気放出をあげ、いずれによっても「放射線の影響は自然被ばくと比較して十分に小さい」と評価。また、処理水の処分に際しては、これまでの事例を踏まえ「風評被害対策を拡充・強化すべき」としている。今回のIAEAのレビュー報告書では、小委員会による議論について「科学的・技術的根拠に基づいている」とした上で、管理された状況下での水蒸気放出と海洋放出は「技術的に実施可能」と評価。また、処理水の処分実施に関し、「数十年に及ぶと予測される類をみない複雑な事案」と述べ、安全性のレビュー、規制機関の監督、モニタリングプログラム、すべてのステークホルダーの適切な関与が必要などと指摘し、日本政府が処分方法を決定した際にもIAEAとして支援を図る姿勢が示されている。福島第一原子力発電所で発生する処理水を保管するタンクは2022年夏頃に満杯となる見通しで、IAEAのレビュー報告書でも「処分方針に関する決定は、すべてのステークホルダーの関与を得ながら喫緊になされる必要」と指摘。資源エネルギー庁では、今後政府として処理水の取扱い方針を決定するため、4月6日の福島市内開催を皮切りに「関係者のご意見を伺う場」を予定している。
03 Apr 2020
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原子力規制委員会の更田豊志委員長は4月1日の定例記者会見で、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策に関し「最も注意を払っている」とした上で、当面の原子力規制庁の特別な勤務体制について質疑に応じた。原子力規制庁では、3月30日~4月10日の間、業務内容に応じた必要最小限の人数のみの登庁とし原則在宅勤務としている。これに関し、更田委員長は、「さらに状況が進んだときにも緊急時対応体制は確実に維持しなければならない」として、課室ごとに職員を2チームに分け、接触をできるだけ避けることにより、万が一の際にも「共倒れにならないよう」対応すると述べた。また、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う国際協力への影響については、来日中の米国検査官の急きょ帰国や海外研究機関との情報交換の予定がすべてキャンセルとなったことなどをあげた。一方で、IAEAによる保障措置の査察活動には「規制庁も同行せざるをえない」として、世界的な混乱の最中「どさくさに紛れた盗取」を許さぬためにも、核セキュリティの確保に向けた対応が変わらず重要なことを強調。1日の規制委員会定例会合では、新規制基準適合性に係る審査の進捗状況が報告された。その中で、原子力規制庁新規制基準適合性審査チーム長の山形浩史氏は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策を踏まえた今後の審査会合の進め方について、ウェブ会議・TV会議を基本とし書面審議も併用しながら必要最小限の関係者を来場させるなどと、準備状況を説明し、「審査に遅れが生じないように努めていく」と述べた。
01 Apr 2020
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福島県南相馬市は、復興の重点戦略として取り組んでいる「ロボット振興ビジョン」の実現に向けた取組をPRする動画を作成し順次公開している。同市は、実際の使用環境を再現しながら陸・海・空で活躍するロボットの研究開発、実証試験、性能評価、訓練などを行う「福島ロボットテストフィールド」を立地。これを、最大限に活用し、国内外の優秀な研究者が集う環境整備、企業の技術革新やベンチャー輩出を推進するとしている。動画は、政府の科学技術イノベーション総合戦略が掲げる「Society5.0」に因み、「Minamisoma5.0 南相馬が目指すロボットイノベーションシティ」と題し、「南相馬のロボットは道具じゃない、○○だ」をキーフレーズに、門馬和夫市長始め、ドローンの開発・製品化に取り組む地元企業の技術者やロボット体験を授業に取り入れている小学校教員らがそれぞれの想いを語るシリーズ物。農業ロボットの開発に取り組む銀座農園社長の飯村一樹氏は、高齢化が進む果樹産業の支援などを目指し「人と一緒に動くロボットを作りたい」、「南相馬のロボットは道具じゃない、『息子』だ」と語る。動画の中で「市の人材輩出・育成」に向けた意気込みを「南相馬のロボットは道具じゃない、『復興の希望』だ」と訴えかける門馬市長は、昨春「福島ロボットテストフィールド」を活用したロボット関連人材育成に関わる新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との協力協定の締結に臨んでいる。「福島ロボットテストフィールド」は、浜通り地域の新産業創出を目指す「福島イノベーション・コースト構想」の中核として31日に全面開所。福島県の内堀雅雄知事は30日の定例記者会見で、「既に全国から最先端の企業や研究者が集まっており、世界初の実証試験やロボットの新たな基準作りに向けた試験が行われている」とした上で、「空飛ぶクルマ」の実証試験を一例にあげ、同所の持つ優位性を活かした取組を通じ、「メイドイン福島」の革新的なロボット技術や製品が生み出されることに期待を寄せた。
31 Mar 2020
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東京電力は3月27日、福島第一原子力発電所廃炉に関わる2031年末頃までの主要な作業プロセスを示す「廃炉中長期実行プラン2020」を発表した。福島第一原子力発電所の廃炉に向けては、2019年末に、原子力損害賠償・廃炉等支援機構による技術的提案を踏まえ、廃止措置終了までの期間について使用済み燃料プール内の燃料取り出しや燃料デブリ取り出し開始などのステップごとに区分し具体的対策を示した中長期ロードマップが改訂されている。「廃炉中長期実行プラン2020」は、この中長期ロードマップが掲げる目標を達成するための計画を、概ね10年程度を見据え、汚染水対策、使用済み燃料プール内の燃料取り出し、燃料デブリ取り出し、廃棄物対策について具体的取組を示したもので、今後の進捗に応じ毎年見直しが図られる見通し。その中で、現在進められている3号機の使用済み燃料プール内燃料取り出しは、2020年度内の完了を目指し、続く1、2号機の燃料取り出しについても、中長期ロードマップに従いそれぞれ2028年度、26年度までの開始に向けて、大型カバー、燃料取り出し用構台の設置を進めていくとされた。また、2021年内の開始を目指しまず2号機から着手する燃料デブリ取り出しに関しては、今後同機で得られる知見も踏まえ、炉内調査の進捗状況から引き続き3号機について検討を進め、1号機に展開していく。福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデントの小野明氏は同日の記者会見で、4月からの組織改編も見据え、「『廃炉中長期実行プラン2020』を安全かつ着実に進めていく」と強調した。また、東京電力は、同プランと合わせ、「復興と廃炉の両立に向けた福島の皆様へのお約束」も発表。3つのスローガンとして、「ひらく」、「つくる」、「やり遂げる」を掲げ、長期にわたる廃炉事業を通じて福島の復興に力を尽くす決意を示しており、小野氏は、「地元企業の方々と直接やり取りできるようにしたい」として、燃料デブリ取り出しに必要な設備の設計なども念頭に、今後の作業内容や要求される技術についてわかりやすく説明した資料を近くまとめる考えを述べた。なお、東京電力は24日に、福島第一原子力発電所で発生する処理水の処分方法と風評被害対策に関し、資源エネルギー庁の委員会が12月に取りまとめた報告書を受け「検討素案」を発表。これに関し、小野氏は、同報告書が「現実的な方法」とする水蒸気放出と海洋放出について「資機材の準備や許認可など、実施には2年程度かかると思う」との見通しを示し、政府による方針決定後に詳細設計を詰めていくとしたほか、「情報を正確に発信するようコミュニケーションに努めていく」と、風評被害対策に着実に取り組んでいく考えを強調した。
30 Mar 2020
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日本原子力研究開発機構は3月27日、福島第一原子力発電所の構内などを移動しながら放射性物質の分布をパノラマ的に可視化できる全方位型3次元放射線測定システム車「iRIS-V」を開発したと発表した。放射性物質を可視化する小型軽量カメラを複数台配置した「全周囲有感型コンプトンカメラ」を搭載。カメラで取得した車両周囲360度の放射線イメージと、レーザー光を用いた3次元距離測定センサーによるパノラマ画像とを重ね合わせ、放射線源の場所を様々な視点から立体的に表示するもので、次世代型モニタリングカーとして、今後除染・廃炉作業の円滑な推進に貢献することが期待される。「iRIS-V」を用いた放射線源のパノラマ画像 ©︎JAEA通常のコンプトンカメラで10分程度を要していた前方だけの測定が、新たな「全周囲有感型コンプトンカメラ」を搭載した「iRIS-V」では、全周囲にわたる測定をわずか80秒で完了でき、実際に原子力機構が駐車場内で行った試験で放射線源を置いた車を特定することに成功した。原子力機構の福島研究開発部門ではこれまでも、メーカーとの協力により重厚な遮蔽体を必要とせず高線量環境でも測定可能なコンプトンカメラの改良を重ねており、上空から広範囲の放射性物質分布を可視化するドローンシステムの開発などにつなげてきた。
27 Mar 2020
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文部科学省は3月24日、全国の小中高校(特別支援学校を含む)計約4,300校を対象として12~1月に実施した放射線教育に関する調査の結果を発表した。2018年に改訂した放射線副読本の活用状況についても把握し、授業の実践例を収集し取りまとめるなど、今後の放射線教育の充実化に資するのがねらい。それによると、授業などで放射線に関する内容を扱ったことや扱う予定のある学校は、小学校で約69%、中学校で95%、高校で80%、実施した教科としてあげられたのは、小学校で社会科、理科、中学校で理科、社会科、高校で理科、公民の順に多かった。また、授業などを準備する際に外部人材を活用していた学校は、小学校が6%、中学校が5%、高校が4%と、いずれも1割に満たなかった。その他、放射線について学ばせる上で工夫した点としては、防災学習での取扱い、修学旅行における広島・長崎訪問や語り部との対話、社会科と理科の学習内容を関連させた教科横断的な取組などがあげられた。放射線副読本の取扱いとしては、「すべての生徒に配布した」と回答した割合が、小学校で66%、中学校で62%、高校で52%といずれも半数を超えた。活用した学校は、小学校で52%、中学校で56%、高校で28%だった。また、活用の場としては、小中高校いずれも、「教師の説明」が最も多く、「調べ学習」、「話し合い・発表」がこれに次いだ。有効だった点としては、「絵や写真があることで子供たちにとってわかりやすい」、「内容がわかりやすく教師が活用しやすい」、「放射線についての基礎的な知識だけでなく、風評被害や差別についても触れられているので、多面的に学習できる」、「教科書よりも内容が詳しいため理解を深めるために有効だった」といった意見があった。一方、「教科の学習内容とどのように結び付いているのかを明確にし、授業内容で活用しやすいようにして欲しい」、「小学校低学年の指導で扱うことは難しい」、「危険性を正しく伝えることと同時に、放射線の有用性などについても大きく取り上げて欲しい」といった改善を求める意見もあった。
26 Mar 2020
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