東芝エネルギーシステムズはこのほど核融合開発に関する 解説記事 を公開した。開発に携わる若手技術者へのインタビューや、ITER計画で納入される高さ16.5m、幅9m、総重量300トンのトロイダル磁場コイルを±0.02%の精度で製造する技術力を紹介した動画で分かりやすく解説している。
11 Dec 2019
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☆11月の主な動き☆【国内】▽8日 原子力総合防災訓練が中国電力島根発電所を対象に実施(~10日)▽11日 IAEA/RCA国内シンポ開催、原子力科学技術を通じた多分野の途上国協力紹介▽15日 エネ庁が2018年度需給実績発表、原子力再稼働でCO2排出量は5年連続で減少▽19日 経団連が「低炭素社会実行計画」の2018年度実績発表、原子力再稼働がCO2排出減に寄与▽19日 福島県が2019年度世論調査結果発表、農産物の安全性に高い関心▽20日 日立が北米初の重粒子線治療システム受注へ、米メイヨー・クリニックと基本合意▽27日 規制委、東北電力女川2号機が新規制基準に「適合」との「審査書案」まとめる▽28日 福島第一1号機使用済み燃料プールからの取り出し、ダスト飛散対策で大型カバー設置案も検討▽30日 更田規制委員長が新規制基準審査の進む中国電力島根2号機を視察【海外】▽1日 ロシアで第3世代+の120万kW級PWR、ノボボロネジII-2が営業運転開始▽4日 英産業連盟、SMR等の原子炉新設に向け財政支援モデルの構築を政府に提案▽5日 新型原子炉用HALEUの生産実証で米セントラス社がエネ省と3年契約▽5日 英国の戦略的研究機関「UKRI」がSMR開発企業連合に初回の資金投資▽8日 フィンランドのOL3、最新の起動スケジュールからさらに6週間の遅れ▽8日 ITER計画:2025年の運転開始に向けトカマク建屋の土木工事が完了▽10日 イランのブシェール発電所でロシア企業が2号機を本格着工▽13日 IEAの2019年版WEO:「持続可能な将来エネルギーの確保で大規模な変革 必要」▽13日 チェコ首相、「ドコバニ発電所で2036年までに新規原子炉完成へ」と発表▽15日 ヨルダン、米X-エナジー社製SMRを2030年までに建設する基本合意書に調印▽15日 カナダ原研、SMR開発支援イニシアチブの候補企業4社を選定▽19日 米核安全保障局、MOXプラントの建設中止にともない契約企業と和解協定▽19日 中国の昌江発電所で「華龍一号」を採用したⅡ期工事の起工式▽20日 仏電力、米国で保有する3原子力発電所の所有権 売却へ▽21日 ロシアのコラ2号機、運転期間を合計60年まで延長する工事終え 再稼働▽22日 スウェーデンの世論調査:原子力発電支持派の割合が約8割に増加▽25日 米国とブルガリア、原子燃料供給など原子力分野の協力拡大で合意▽25日 世界気象機関の「温室効果ガス年報」:2018年に世界のCO2濃度が過去最高に▽26日 カナダの深地層処分場建設計画、候補地点を2地点に絞り込みへ▽26日 UNEP報告書:「パリ協定の目標達成には毎年7.6%のCO2排出量削減が必要」
10 Dec 2019
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原産協会は12月9日、IAEAで新規導入国への原子力発電開発に関わる協力活動を担当している安良岡悟氏を迎え講演会を開催(=写真)。会員企業などから約50名の参加があった。同氏は、2006年に経済産業省に入省後、資源エネルギー庁で、福島第一原子力発電所事故対応や軽水炉の安全性向上に資する技術開発プロジェクトに従事したほか、製造産業局航空宇宙産業課などを経て、2017年より IAEA原子力エネルギー局原子力発電インフラ開発課に出向している。今回、原子力エネルギーを巡る最近の国際動向や導入検討国に対する支援について発表し、日本のステークホルダーがIAEAの場を活用するメリットなどを示唆した。安良岡氏は、2018年の世界の電源別発電量で原子力が約10%、水力と再生可能エネルギーも合わせると36%のシェアを占めることを図示し、「『全体最適としてどうバランスをとっていくか』が盛んに議論されている」と述べ、原子力の「クリーンエネルギーとしての位置付け」を強調。今後の原子力開発の流れに関しては、SMRを中心とする「技術シフト」とアジア諸国を中心とする「地域シフト」の2つの側面をあげ、「堅調な新設ペース」にあるとした。自身が携わる原子力発電の導入検討国に対するインフラ開発支援として、安良岡氏は「INIR」(Integrated Nuclear Infrastructure Review)ミッションを紹介。各国の要望に応じ、「INIR」で取りまとめたレポートは、2009~18年でアジア・アフリカ諸国を中心に27か国に達したとして、10年間の取組を振り返り「徐々に体系化されつつある」と一定の評価を述べた。また、原子力発電導入に向けたマイルストーンにおいてIAEAでは19の評価軸を示しているが、同氏は特にその一つである産業政策の立案支援について、自身の関わる業務を紹介。例えば、石炭産業が盛んなポーランドについては原子力を通じ環境保全技術の市場拡大も図るなど、地場産業へのベネフィットを考える必要性を述べた。安良岡氏は、「INIR」の実施されたアフリカ諸国として、南アフリカ(運転中)、ナイジェリア、ケニア、モロッコ、ガーナ、ニジェール、スーダンの6か国をあげたが、参加者から、今後原子力発電の導入が有望な国について問われたの対し、「モロッコはかなり進んでいる」としたほか、ザンビアの近年の動きにも触れ、「アフリカは注目すべき地域」と強調。また、日本の人的貢献に関して、「日本は有数の地震国」と述べ、関連する知見が蓄積されてきた地質学、耐震設計、防災対策などの分野での可能性を示唆した。
10 Dec 2019
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わが国の原子力発電所の運転実績
09 Dec 2019
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核不拡散・核セキュリティについて考える日本原子力研究開発機構主催の国際フォーラムが12月4日、都内で行われ、国内外の政府関係者や有識者らを招いた2つのパネルディスカッションを通じ、今後の課題や対応方策について議論した。核セキュリティは、「核物質、その他の放射性物質、その関連施設およびその輸送を含む関連活動を対象にした犯罪行為または故意の違反行為の防止、探知および対応」(2011年9月原子力委員会報告書)と定義されており、米国同時多発テロ発生以降、日本でも大規模イベントを控え、いわゆる「核テロ」の防止に向けた取組に関心が高まりつつある。前半のパネルディスカッションでは、米国エネルギー省国家核安全保障庁(DOE/NNSA)グローバルマテリアル安全保障局副局長補佐のエレノア・メラメド氏が、放射性物質の輸送時における不正取引や盗取の他、サイバーセキュリティやインサイダー脅威への対策など、近年のデジタル化進展に伴う問題を提起。各国で核セキュリティに関わるワークショップを開催している世界核セキュリティ協会代表のロジャー・ホーズリー氏は、ビデオメッセージを寄せ、「実効性のあるリソース配分」や「国境を越えた連携」の重要性を強調。これに対し、科学警察研究所主任研究官の土屋兼一氏は、「個人でもインターネットの動画を見て爆発物を作れる。脅威は時代とともに変わってきており、どのような対策が必要か継続的に評価していく必要がある」と述べた。また、大規模イベントをねらった「核テロ」として、爆発物と抱き合わせて放射性物質を拡散させる「ダーティ・ボム」や、人の集まる場所に致命的レベルの放射性物質を仕掛ける「サイレント・ソース・アタック」を例示。初動対応訓練を実施してきた経験にも触れ、地方警察部隊からの訓練用ダミーを求める要望に対し、スマートフォンのアプリに適確に反応するビーコン「ウソトープ」を開発したことを紹介した。原子力機構福島研究開発部門副ディビジョン長の鳥居建男氏は、福島第一原子力発電所事故後の広域モニタリングや、遠隔操作技術の研究に取り組んできた経験から、核セキュリティ分野におけるドローンや画像の3次元可視化に関する技術の有効性をあげ、事故の教訓や民間企業との協力の重要性に言及。IAEA原子力安全・セキュリティ局核セキュリティオフィサーのチャールズ・マッセィ氏は、「原子力安全と核セキュリティの対策には交わるところがある。双方が連携し有効性を高めていく必要がある」などと述べ議論をまとめた。後半のパネルディスカッションは、文部科学省原子力課長の清浦隆氏(進行役)、IAEA原子力エネルギー局INPRO課長ブライアン・ボイヤー氏、米国テキサスA&M大学院原子力専攻アシスタント研究生のマリオ・メンドーサ氏、東京工業大学先導原子力研究所准教授の相樂洋氏、原子力機構高速炉・新型炉研究開発部門研究副主幹の川﨑信史氏が登壇した。ボイヤー氏は「革新的原子炉および燃料サイクルに関する国際プロジェクト」(INPRO)について、川﨑氏は「第4世代原子力システムに関する国際フォーラム」(GIF)について、それぞれ国際協力の枠組を活用した取組状況を説明。次世代原子力システム開発に伴う制度的、技術的課題を踏まえ、将来の核不拡散・核セキュリティに関わる人材確保について議論が行われた。相樂氏は、東工大で2017年度より実施している体系的な教育カリキュラム「ANSET」(Advanced Nuclear 3S Education and Training)を紹介し、メンドーサ氏は、奨学金やフェローシップ制度の活用とともに、「政府省庁や研究機関が早い段階から学生に関心を持たせる」必要性を述べた。
06 Dec 2019
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「アジア原子力協力フォーラム」(FNCA)の大臣級会合が12月5日、都内で行われた(=写真)。FNCAは、日本が主導するアジア地域12か国の原子力平和利用協力の枠組で、オーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ、ベトナムが参加している。今回の会合は「健康、医療への放射線技術の利用」がテーマ。竹本直一内閣府科学技術担当大臣の歓迎挨拶で、今後の活動の方向性を示す共同コミュニケの発表に向けて政策討論が始まった。FNCA傘下に置かれた放射線治療プロジェクトでは、アジア地域で罹患率の高いがんの治療成績向上を目指し長く協力活動が進められてきた。議論に先立ち、量子科学技術開発研究機構の平野俊夫理事長が「日本の放射線治療の現状について」と題する基調講演を行い、世界に先駆けて同機構が取り組んできた重粒子線がん治療の開発経緯や、国内治療拠点が6か所にまで拡大してきた実績を紹介。その中で、1994年に臨床試験を開始した重粒子線がん治療装置「HIMAC」により、これまでの治験実績は総患者数1万人を超えたとした上で、既存の病院にも設置できる小型装置の開発状況や、海外展開として、最近日立製作所が北米初となる装置の受注を獲得したことなどを披露した。さらに、平野理事長は、「がん死ゼロ 健康長寿社会の実現を」と目標を掲げ、超電導やレーザーなど、同機構の技術力を結集した高性能の次世代重粒子線がん治療装置「量子メス」の開発を展望。各国からの出席者に対し、「Dreams are meant to be achieved」(夢は実現するためにある)と強調した。毎年開催されるFNCA大臣級会合は今回で20回目の節目を迎えたが、原子力委員会の岡芳明委員長は、「原子力関連分野の人材育成について」と題する講演の中で、「アジア諸国の研究者が来日してトレーニングを行い、自国でも人材開発に取り組むようになった。将来に向けて人のネットワークは極めて重要」などと述べ、今後のFNCA活動の発展に期待を寄せた。
05 Dec 2019
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「原子力総合シンポジウム2019」が12月2日、日本学術会議(東京都港区)で開催された(=写真、同会議主催、関連48学協会共催・協賛・後援)。今回は、「社会のニーズと調和する原子力技術の開発・利用」をテーマに、3つの基調講演の後、会場参加者との質疑応答を中心に総合討論を行った。総合討論は、野口和彦氏(横浜国立大学大学院環境情報研究院教授)の進行のもと、パネリストとして、粟津邦男氏(大阪大学工学系研究科教授)、上坂充氏(東京大学大学院工学系研究科教授)、岡嶋成晃氏(日本原子力学会会長)、開沼博氏(立命館大学衣笠総合研究機構准教授)、松岡猛氏(宇都宮大学基盤教育センター非常勤講師)、山口彰氏(東京大学大学院工学系研究科教授)が登壇。討論に際し、原子力利用の原点として、原子力基本法が目的とする(1)将来におけるエネルギー資源確保、(2)学術の進歩と産業の振興、(3)人類社会の福祉、(4)国民生活の水準向上――や、原子炉等規制法が目的とする「原子力利用に伴う災害の防止」などが論点として提示された。これに対し、会場参加者から「資源・エネルギーは50年、100年、1,000年先を見据えた議論をすべき」との意見があったのに対し、総合資源エネルギー調査会の委員を務めている山口氏は、原子力の議論に関し、「政策的視点や社会による意思決定も関係する」と、リードタイムに関わる制約をあげる一方、「技術基盤は将来にわたって着実に維持していかねばならない」とも述べた。また、「持続可能な社会を実現するための原子力技術」との基調講演を行った粟津氏は、「例えば、2050年の生活者の視点に立って2020年の時点で何をすべきか。逆に30年前の1990年頃の考え方が今うまくいっているのか」を考察する「フューチャー・デザイン」と呼ばれる政策立案手法を紹介。さらに、将来的な人類社会への福祉の関連で、岡嶋氏は、国連の掲げる「持続可能な開発目標」(SDGs)をあげ、原子力科学技術がエネルギーの確保や気候変動問題の解決だけでなく、貧困撲滅や産業の技術革新に問題にも貢献する可能性を強調した。日本の原子力・エネルギー問題の関連では、会場参加者より、「原子力には、都会の人たちが受益者で、立地地域がリスクを背負っている特殊性がある」、「エネルギー需要そのものの妥当性も検証すべき」といった声があった。これに対し、地域との対話活動に取り組む開沼氏は、「リスクを背負っているだけでなく、世界最先端の技術が生まれていることがもっと発信されるべき」と、エネルギー生産地に対する理解を切望。福島第一原子力発電所事故の教訓について講演を行った松岡氏は、東日本大震災時に行われた計画停電に伴う需要抑制について、「のど元を過ぎる前に」と、遠からず検証しておく必要性を指摘した。また、同シンポジウムの成果について「若い人たちに継承していく努力が必要」との意見があったのに対し、上坂氏は10月に敦賀市で開催された将来の研究炉に関するシンポジウムでの大学生との討論を、開沼氏は8月に富岡町で開催された「福島第一廃炉国際フォーラム」の高校生セッションの経験をあげ、それぞれ若手を交えた議論の重要性を強調した。
03 Dec 2019
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経済産業相をヘッドとする福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策チーム会合は12月2日、燃料デブリ取り出しを2号機から行うことなどを記した中長期ロードマップの改訂案について議論した。近く関係閣僚会議で正式決定となる運び。〈経産省発表資料は こちら〉中長期ロードマップは、事故発生後、福島第一原子力発電所のプラント安定化を受け、汚染水対策、1~4号機の使用済み燃料プールからの燃料取り出し、1~3号機の原子炉圧力容器・原子炉格納容器からの燃料デブリ取り出しなど、廃止措置に向けた時期的目標や具体的計画を示すものとして、2011年12月の策定以降、進捗状況を踏まえ改訂が行われてきた。今回の改訂案では、現行のロードマップで2021年内開始としていた燃料デブリ取り出しについて、安全性、確実性、迅速性や、廃炉作業全体の最適化の観点を踏まえ、2号機から試験的に着手し、段階的に取り出し規模を拡大していくとされた。同機では、2019年2月の原子炉格納容器内部調査で、小石状の堆積物を持ち上げることに成功しており、今後、最大約22m長のアーム型アクセス装置を導入した少量サンプリングも計画されている。使用済み燃料プールのからの燃料取り出しに向けては、2019年4月に取り出しを開始した3号機では2020年度内の完了を目指すとされた。東京電力では、11月末に1号機では大型カバーを設置する新工法を含めた検討を始め、2号機でも建屋を解体しない工法を選択するなど、燃料取り出しに際しダスト飛散を抑制する対策を進めており、中長期ロードマップ改訂案では、いずれの号機についても、個別の目標工程は、精査の上、適切に再設定するものとしている。中長期ロードマップの改訂案提示に際しては、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が、8月の「福島第一廃炉国際フォーラム」(いわき市・富岡町)での議論も踏まえ、9月の地元関係者評議会で「技術戦略プラン」を示している。
02 Dec 2019
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原子力規制委員会は11月28日の臨時会議で、中国電力の清水希茂社長らと意見交換を行った。同委が原子力事業者の経営トップを順次招き実施しているもの。清水社長は、島根原子力発電所の安全性向上に向けて実施している「リスク情報等の活用」、「自然災害への対応」、「原子力防災」、「技術力の維持・向上」、「広報活動」などの取組状況を説明。その中で、11月8~10日に実施された政府主催の原子力総合防災訓練の概要を報告し、得られた課題や改善事項については、今後、自社主催で実施する訓練へも反映させ、検証していくとした。これに対し、地震・津波関連の審査を担当する石渡明委員は、先の総合防災訓練で地震に伴う津波発生が想定されていなかったことから、「是非色々な厳しい気象条件を想定した訓練に努めて欲しい」として、自然災害に対する感受性を高めていくよう要望。また、山中伸介委員は、島根3号機で新検査制度導入に備えた検査官の実務訓練が実施されたことへの謝意を表した。さらに、現在、島根1、2、3号機がそれぞれ廃止措置中、新規制基準適合性に係る審査中、建設中と、異なる段階にあることに関し、「人材育成には非常によい環境となっており、是非活用して現場力を養って欲しい」と期待を寄せた。現在島根2号機は審査が大詰めとなっているが、更田豊志委員長は、審査における事業者側との「共通理解」の重要性を改めて強調した上で、同委が随時実施している原子力部門責任者との意見交換(CNO会議)など、技術的課題について実務者レベルでの接点を密にする必要性を述べた。
29 Nov 2019
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東京電力は11月28日、福島第一原子力発電所1号機の使用済み燃料プールからの燃料取り出しについて、これまでの「がれき撤去完了後に燃料取り出し用のカバーを設置する」プランに加え、ダスト飛散対策の観点から、「先行して原子炉建屋を覆う大型カバーを設置し、カバー内のクレーンでがれき撤去を行う」プランも合わせ検討を進めていることを発表した(=図、東京電力発表資料より引用)。いずれのプランも現在実施中のがれき落下対策以降の作業となる。1号機の燃料取り出しに向けては、崩落した屋根の下敷きとなっている天井クレーン・燃料交換機が、がれき撤去の際に使用済み燃料プールに落下するおそれもあり、障害物や汚染状況の調査をこれまで進めてきたが、調査結果を踏まえ、「ダスト飛散に留意したより慎重な作業が求められる」との考えから、新たなプランが追加された。プラン検討に当たり今後、(1)ダスト飛散対策、(2)作業員被ばく、(3)雨水対策、(4)原子炉建屋周辺工事への影響――を中心に総合的に評価していく。福島第一廃止措置の中長期ロードマップでは、2023年度を目処に1号機使用済み燃料プールの燃料取り出しを開始することとなっている。
29 Nov 2019
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食品中の放射性物質に関する意見交換会(主催=消費者庁、内閣府食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省)が11月27日、都内で開催され、生産者、流通事業者、消費者団体を交え、福島県産品を始めとする被災地産物に関わる消費者意識や情報提供のあり方について考えた(=写真)。消費者庁が2012年度から継続している風評被害に関する全国意識調査によると、2019年2月の調査で「普段の買物で食品を購入する際に、その食品がどこで生産されたかを気にしますか」との質問に対し、「気にする」または「どちらかといえば気にする」との回答は59.0%だった。意見交換会の進行を務めたサイエンスコミュニケーターのすずきまどか氏は、同調査結果を踏まえ、基準値を超える食品はほとんど検出されなくなった一方、震災直後と比べて関連情報を得る機会が減っており、現状を正しく知らずに不安を抱える人たちもいるとして問題を提起した。消費者の立場から、全国消費者団体連絡会事務局長の浦郷由季氏は、先の意識調査で食品の産地を気にする人の多くは、「味が異なる」(29.7%)、「鮮度が異なる」(20.8%)、「価格が異なる」(22.1%)を理由としてあげているが、「放射性物質の含まれていない食品を買いたい」との回答も15.6%あることから、「まだまだ情報が十分に行き届いていない」と懸念を示した。また、日本橋三越本店で食品販売に携わる三越伊勢丹食品・レストランMD統括部の林真嗣氏は、被災地産品に対する消費者意識に関して「『応援』組と『拒絶』組に分かれているようだ」とした上で、生産者団体との協力で開催する即売会「マルシェ」を通じ、検査結果などの客観的事実とともに、「安全への気持ち」を生産者から直接伝えてもらう重要性を強調。生産者の立場からは、福島市で稲作を営む(株)カトウファーム代表の加藤晃司氏が、消費者の信頼獲得に向け、農産物の安全確保に関わる取組「GAP」(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理)認証が有効なことをあげ、「まだ普及段階だが、福島全体の一次産業のイメージアップにつながる」と期待感を述べた。同意見交換会は、10月の宮城を皮切りに、福岡、京都、東京で順次行われてきたが、すずき氏は、「『生産者も生活者』という声が印象に残っている」と、これまでの開催を振り返った。カトウファームとともに福島産品の販売促進に努めてきたという林氏は、「生産人口が減っていることが最大の問題」と、地元農業の実態を述べ、「生産者、販売者、消費者が一緒に作る」を今後のキーワードとして掲げた。
29 Nov 2019
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原子力規制委員会は11月27日、東北電力女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kW)について、新規制基準に「適合している」とした「審査書案」を取りまとめた。今後、原子力委員会と経済産業相への意見照会、一般からの意見募集を経て正式決定となる運び。同機は2013年12月に審査が申請され、規制委員会では、女川原子力発電所が過去に大地震を経験してきた地理的特性を踏まえ、特に地質・地震動評価や耐震設計について慎重な審査を行ってきた。 同発電所は、2011年3月の東北地方太平洋沖地震の震源地に最も近い原子力発電所で、発災時には最高水位13mの大津波が押し寄せたが、建設段階から津波対策を重要課題として、敷地高さを海抜14.8mに設計していたことなど、緊急時対策の積み重ねにより、重大事故には至らなかった。 現在東北電力では、さらなる安全性向上を目指し、基準津波評価に対し十分な裕度を持つ海抜29mまでの防潮堤かさ上げ工事を進めている。新規制基準や最新知見を踏まえ実施している女川原子力発電所の安全性向上対策は2020年度に完了予定(特定重大事故等対処施設、常設直流電源設備を除く)。2019年3月の定例社長会見によると、同2号機の安全対策工事費は3,400億円程度となっている。
27 Nov 2019
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理化学研究所は11月26日、コンクリートインフラ構造物の劣化診断や、工場での原料・製品の解析などにも広く利用できるコンパクトサイズの小型加速器中性子源システム「RANS-II」(=写真、理化学研究所提供)を報道関係者に公開した。現在、産業利用に供される中性子源としては、大強度陽子加速器施設「J-PRAC」や研究炉「JRR-3」などがあるが、理研では、産業界との協力のもと、可搬型の中性子源の開発に取り組んでおり、2013年には小型中性子源システム「RANS」により、鋼材の内部腐食を非破壊で可視化することに成功。その後、2016年にはコンクリート内損傷の透視、2018年にはコンクリート内塩分の非破壊測定の技術開発に至っている。このほど開発された「RANS-II」は、従前の「RANS」の小型化に向け、線形加速器で加速される陽子線エネルギーを7MeVから2.49MeVに絞り、加速器は2台連結から「RFQ加速器」と呼ばれるタイプ1台にすることで、長さ・重量を半分に抑制したほか、遮蔽体重量も7分の1程度に大きく減量させた(=図、理化学研究所提供)。今後は、可搬型小型中性子源のプロトタイプとして、橋梁などの内部劣化を可視化する屋外非破壊計測システムの実現を目指すとともに、現場で手軽に利用可能な普及型中性子線源システムの据置型モデルとなるよう開発を進めていく。同システムの開発に関わった理研光量子工学研究センター中性子ビーム技術開発チームは、記者団への説明で、10月に台湾の漁港で死傷者を出した落橋事故をあげ、コンクリート内部への水分・塩分の浸透や鉄筋の腐食など、老朽化や施工不良が懸念される社会インフラの保全対策に中性子利用が有効なことを強調した。日本各地では高度経済成長期以降に整備されたインフラの一斉老朽化が見込まれており、最新の国土交通白書によると、建設後50年以上経過する道路橋(橋長2m以上)の割合は、2017年度末の約25%が、2022年度末に約39%、2032年度末には約63%に、港湾岸壁では2017年度末の約17%が、同じく約32%、約58%にも達するとみられ、計画的な維持管理・更新が急務となっている。
26 Nov 2019
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原産協会は11月21日、「原子力発電に係る産業動向調査 2019報告書」(概要)を発表した。今回、9基の原子力発電プラントが運転していた2018年度を対象に、会員企業を含む原子力発電に係る産業の支出や売上、従事者を有する営利を目的とした企業350社にアンケートを実施し、251社(電気事業者11社、鉱工業他228社、商社12社)から有効回答を得た。それによると、原子力発電を巡る産業の環境は、福島第一原子力発電所事故後の悪化から、新規制基準対応や再稼働により回復の兆しを見せていたが、鉱工業他の原子力関係売上高は前年度比9%減、原子力関係受注残高は同11%減と、いずれも下降。原子力関係売上高を産業構造区分別にみると、「バックエンド」が同23%減、「デコミッショニング」が同25%減となっていた。一方で、電気事業者の原子力関係支出高は同12%増の大幅な伸びを見せており、費目別では、「機器・設備投資費」が同40%増、「燃料・材料費」が同28%増となっていた。また、原子力関係従事者数は、鉱工業他も電気事業者も前年度から微増していた。 原子力発電に係る産業の景況感については、現在(2019年度)を「悪い」とする回答が80%と最も多く、1年後(2020年度)に「悪くなる」とする回答も前年度調査の10%から24%へと増加。「原子力発電所の運転停止に伴う影響」の問い(複数回答)に対しては、「売上の減少」(58%)、「技術力の維持・継承」(56%)をあげる回答が依然として多かった。また、「技術力の維持・継承への影響」の問い(複数回答)に対しては、「OJT機会の減少」(83%)が最も多く、「雇用の確保の困難」(31%)がこれに次いだほか、「企業の撤退・解散等による技術やノウハウの散逸」(26%)が前年度より9ポイント増となっていた。さらに、「自社の技術・ノウハウの維持のために力を入れている工夫」の問い(複数回答)に対しては、「教育・訓練の強化」(77%)が最も多かった。 「原子力発電に係る産業を維持する上での課題」(複数回答)の問いに対しては、「政府による一貫した原子力政策の推進」(73%)が最も多く、次いで「原子力に対する国民の信頼回復」(59%)、「原子力発電所の早期再稼働と安定的な運転」(58%)となった。また、海外との取引における課題としては、「海外におけるカントリーリスク(政治・経済情勢の変化など)への対応」、「海外の規制・規格への対応」の回答が多かった。
22 Nov 2019
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日立製作所は11月20日、米国の大手総合病院メイヨー・クリニックと、北米初となる重粒子線治療システムの納入に関して基本合意書を締結したと発表した。重粒子線治療システムは、メイヨー・クリニックの拠点の一つであるフロリダ州の病院に建設予定。〈日立発表資料は こちら〉これを受け、メイヨー・クリニックのジャンリコ・ファルジアCEOは、「重粒子線治療は、従来治療が難しかった患者を治療する方法として、大きな可能性を秘めている」と期待を述べた。また、日立の小島啓二副社長(ライフセクター担務)は、「日立が持つ重粒子線治療システムの実績やデジタル技術、メイヨー・クリニックとのパートナーシップを通じて、北米だけでなく世界中で、先進的ながん治療の実現と社会価値の向上に貢献できる」と、今後の国際展開に意欲を示した。同社の重粒子線治療システムは、2018年に治療をした大阪重粒子線センター「HyBEAT」への国内納入実績があるほか、海外でも台湾の台北栄民総医院から同年に受注となった。重粒子線がん治療は、量子科学技術研究開発機構の放射線医学総合研究所「HIMAC」が1994年に世界初の専用施設として臨床試験を開始した。これに続いて国内では、前述の大阪重粒子線センターの他、群馬大学、神奈川県立がんセンター、兵庫県立粒子線医療センター、九州国際重粒子線がん治療センター(佐賀)で治療が行われている。量子科学技術研究開発機構が10月に原子力委員会で報告したところによると、近年重粒子線治療施設は、アジア地域を中心に東芝、日立、中国近代物理学研究所による供給が進んでおり、韓国でも東芝製の治療装置が2022年に運用開始となる見込み。
21 Nov 2019
2033
日本経済団体連合会は11月19日、全62業種が参加する「低炭素社会実行計画」の2018年度実績(速報値)を発表。CO2排出総量は、2013年度(日本が国連に提出した約束草案に記載の2030年度温室効果ガス削減目標の基準年)からの5年間で9.9%の削減となった。〈経団連発表資料は こちら〉「低炭素社会実行計画」は、(1)国内事業活動からの排出抑制、(2)連携強化、(3)国際貢献、(4)革新的技術開発――の4本柱を通じ地球規模・長期の温暖化対策に貢献する産業界の自主的取組として、毎年のフォローアップ結果は政府審議会の議論にも供されている。 2018年度の部門別のCO2排出量は、産業部門(製造、建設など)が前年度比2.5%減、エネルギー転換部門(電力、石油など)が同9.3%減、業務部門(電気通信、金融など)が同6.5%減、運輸部門が同16.0%減となり、原子力発電所の再稼働、再生可能エネルギーの活用、高効率火力発電設備の導入など、エネルギーの低炭素化が各部門のCO2排出量削減に効果を及ぼした。2018年度は、関西電力大飯3、4号機、九州電力玄海3、4号機の計4基が原子力規制委員会による新規制基準をクリアし再稼働(営業運転再開)している。今回、速報段階として57業種からのCO2排出削減に向けた取組状況報告をまとめているが、「低炭素社会実行計画」のもと、各業種が掲げるフェーズI目標(2020年度)、フェーズII目標(2030年度)に対し、それぞれ37業種、23業種が既に到達しており、さらに高い目標への見直しを実施した業種もあった。また、今回の発表では、エネルギー多消費型産業における排熱・副生ガスなどを回収・利用した燃料消費量削減の取組が注目される。例えば、セメント業界では、電力使用に占める排熱発電の割合が2018年度に11.2%に達し、鉄鋼業界でも、製造プロセスで発生する副生エネルギーの有効利用を図っており、いずれも省エネルギーやCO2排出削減に大きく寄与したとしている。日本鉄鋼連盟からは、回収蒸気の発電利用などによる年間約680万トンのCO2排出削減効果の算定も報告された。
20 Nov 2019
823
福島県は11月19日、2019年度の 県政世論調査 の結果を発表した。15歳以上の県民1,300人を対象に、復興に関する情報発信、福島イノベーション・コースト構想など、11のテーマについてアンケート調査を実施したもの。618人から有効回答を得た。それによると、震災・原子力発電所事故や復興について知りたい情報としては(複数回答可)、「食品や農産物の安全性確保についての取組・モニタリング情報」が最も多く51.8%、次いで、「廃炉に向けた取組や現状に関する情報」の48.7%、「放射線の健康への影響や健康管理に関する情報」の47.4%となっており、上位3つは2018年度の調査と同じだった。福島県の現状について県外に伝えたいこととしては(複数回答可)、「農産物や県産品の安全性」が最も多く68.9%、次いで、「農産物や県産品の魅力」の43.0%、「観光情報、来県の呼びかけ」の35.1%となっており、これも上位3つは2018年度の調査と同じだった。また、「県は、原子力災害の被災地域の復興・再生に向けて、十分な取組を行っていると思いますか」との質問に対しては、「はい」と「どちらかといえば『はい』」を合わせて49.2%で、2018年度調査の46.4%をやや上回った。「福島県の復興が進んでいると思いますか」との質問に対しては、「はい」と「どちらかといえば『はい』」を合わせて48.5%だった。福島県の復興に必要な取組としては(3つまで回答可)、「環境の回復(除染土の搬出など)」が最も多く42.4%、次いで、「風評払拭・風化防止」の39.3%、「医療介護体制の整備」の36.6%、「子育て・教育環境の整備」の35.0%などとなっている。福島イノベーション・コースト構想の認知状況については、「名前も内容も知らない」と「名前は聞いたことがあるが、内容はあまりよく知らない」が合わせて83.3%だった。知っている取組としては(複数回答可)、「廃炉に向けた取組」が最も多く34.8%、次いで、「ロボット産業推進に関する取組」の30.4%、「新エネルギー導入に向けた取組」の27.5%となった。
19 Nov 2019
782
福島第一原子力発電所の処理水に関する資源エネルギー庁の委員会が11月18日に開かれ、東京電力より貯蔵・処分の時間軸について説明を受け議論した。それによると、福島第一の多核種除去設備(ALPS)による処理水は、10月末時点で貯蔵量は約117万立方m、トリチウム総量は約856兆ベクレルと推定。これをもとに、(1)処分および減衰により単純に毎日定量のトリチウムが減少、(2)処分開始日は2020年1月1日から5年刻みに4ケース、(3)処分完了日は廃炉30年(2041年12月31日)と廃炉40年(2051年12月31日)の2ケース、(4)トリチウム総量は2020年1月1日現在で860兆ベクレル、(5)毎日150立方mの汚染水が発生――などを仮定条件に試算を行った。東京電力は8月の同委員会で、2020年12月末までにALPS処理水用の溶接型タンク約134万立方m分を確保する計画を示し、2022年夏頃にはタンク容量が満杯となるとしている。2020年に処分を開始するケースでは、1年当たりのトリチウム量の減少幅が、2041年末完了、2051年末完了で、それぞれ約39兆ベクレル、約27兆ベクレルとなり、想定保有水量はタンク容量を上回ることはないとした。一方、2025年、2030年、2035年に処分を開始するケースでは、いずれも2022年夏頃に想定保有水量がタンク容量を上回り、2035年ケースでは、処分開始時に保有水量が約200万立方mに達すると想定。また、合わせて、資源エネルギー庁よりALPS処理水の放出による放射線影響について、UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)の評価モデルを用いた評価結果が示された。海洋放出については、砂浜からの外部被ばくと海洋生物による内部被ばくを考慮し、仮に、タンクに貯蔵されている処理水すべてを1年間で処理した場合、放射線による影響は年間約0.052~0.62マイクロSvと、自然放射線の年間2.1m Svと比較し十分小さいとしている。これに対し、委員からは、希釈やモニタリングも考慮した現実的な時間軸を求める意見とともに、処理後のタンク再利用の可能性を問う声があり、東京電力は「ありうるかもしれないが、処理を終えたタンクは原則解体撤去する」とした。この他、風評対策に関する議論があり、水産業については小山良太氏(福島大学食農学類教授)が首都圏の飲食店を中心に展開される「常磐ものフェア」を、観光関連では開沼博氏(立命館大学衣笠総合研究機構准教授)が海外インフルエンサーの活用や若者向け動画コンテンツが数十万もの閲覧を集めていることを紹介し、これまでと違った新しい方策を考える必要性を強調した。
18 Nov 2019
839
東芝は11月14日、「東芝 IR Day」を開催。エネルギーシステム、インフラシステム、デジタルなど、7つの事業部門の幹部がそれぞれ事業方針、数値目標、成長に向けた取組について投資家や報道関係者に説明を行った。エネルギーシステムに関しては、東芝エネルギーシステムズの畠澤守社長が説明に立ち、2040年を念頭に置いたビジョンとして、「将来のエネルギーのあり方そのものをデザインする企業として、新しい未来を始動させる」と標榜。「Smart:顧客価値を生む技術力」、「Sustainable:持続可能な発展を生む社会への貢献」、「Profitable:収益を生む健全な経営」の3つの軸を常に意識した事業判断を行っていくとした。エネルギーを取り巻く市場環境については、2030年頃までの発電設備容量・発電量の見通しから、国内外ともに「原子力と火力はほぼ現状維持となる一方、再生可能エネルギーが大きく伸びる」として、今後、点検・保全・更新といったサービス部分の強化など、エネルギー市場の転換に合ったリソース配分を図る考えを述べた。また、営業利益については、2019年度の黒字転換とともに、原子力では2021年度にかけて170億円程度で安定継続となる見通しを示し、「構造改革を含む高利益体質への変換を進めており、これから結果が出てくるもの」と説明。前日に発表された東芝プラントシステム社の完全子会社化に関する質問に対し、畠澤社長は、技術・人材やリスク管理の面で両社が協力し合い、サービス事業拡大のシナジー効果につなげるねらいを強調。また、8月に行われた東京電力ホールディングス、中部電力、日立製作所とのBWR事業に係る共同事業化を目指した基本合意書締結に関しては、「原子力産業の競争力を向上するためには、色々な課題を解決しなければならない」と述べ、現在議論を進めている段階にあるとした。
15 Nov 2019
1618
資源エネルギー庁は11月15日、2018年度エネルギー需給実績(速報)を発表した。それによると、一次エネルギー国内供給は、全体で前年度比1.9%減となり、化石燃料が5年連続で減少する一方、再生可能エネルギーや原子力などの非化石燃料は6年連続で増加。発電電力量は、1兆471億kWh(前年度比1.3%減)で、非化石電源の割合は23.1%(同4.0ポイント増)。全体の構成では、再生可能エネルギーが16.9%(同0.9ポイント増)、原子力が6.2%(同3.1ポイント増)、火力が76.9%(同4.0ポイント減)だった。エネルギー自給率は11.8%(同2.3ポイント増)となった。また、2018年度のエネルギー起源CO2排出量は、前年度比4.5%減の10.6億トンで、5年連続の減少。電力のCO2排出原単位も同4.8%減の0.49kg/kWhとなった。東日本大震災後、増加し続けたCO2排出量は、需要減、再生可能エネルギーの普及、原子力発電所の再稼働により、減少傾向にある。2018年度は、関西電力大飯3、4号機、九州電力玄海3、4号機の計4基が原子力規制委員会による新規制基準をクリアし再稼働(営業運転再開)した。
15 Nov 2019
533
情報通信研究機構は11月7日、太陽活動に伴う通信への影響や放射線被ばくなどに関する情報提供を、国際民間航空機関(ICAO)のグローバル宇宙天気センターのメンバーとして開始した。近年北極上空を飛行する極航路が増加しており、特に高緯度地域では太陽表面で稀に発生する爆発現象「太陽フレア」が人体への被ばくを高めることから、今回の取組を通じ海外の関係機関とともに安心・安全な航空運用に寄与する。同機構はオーストラリア、カナダ、フランスの各政府機関とともに、ICAOグローバル宇宙天気センター「ACFJコンソーシアム」として参画。情報の提供・共有に向けて活用される技術は、太陽放射線被ばく警報システム「WASAVIES」と呼ばれるもの。「WASAVIES」の開発に際しては、同機構の他、日本原子力研究開発機構、国立極地研究所、広島大学、茨城高専、名古屋大学の各機関が分担し、宇宙天気、太陽物理、超高層大気、原子核物理、放射線防護など、様々な分野の研究者が連携した異分野融合研究として達成に至った。 同日の各機関連名の発表によると、地上と人工衛星の観測装置を用いて「太陽フレア」発生時に飛来する太陽放射線の突発的増加をリアルタイムに検出する「WASAVIES」では、高度100kmまでの宇宙放射線被ばく線量が高精度で推定され、乗務員の被ばく線量管理や航空機の運航管理に資するものとしている。 「WASAVIES」は、太陽放射線の(1)地球近傍までの伝搬、(2)地球大気上層部までの伝搬、(3)地球大気内で起こす核反応――の各数値シミュレーションから主に構成されており、これらを統合することで、航空機高度での被ばく線量を計算。急激な被ばく線量の上昇が検知された場合は警報発信となる。名古屋大学を中心に過去の大規模な「太陽フレア」発生時のデータによるシステムの性能評価で有効性も確認。今後は、有人月・惑星探査計画の進展などを見据え、宇宙飛行士の被ばく管理にも利用できるシステムの開発を目指すとしている。 ICAOのグローバル宇宙天気センターは、航空運用に支障を来すおそれのある宇宙天気現象の情報を各国に送信する役割を持ち、「ACFJコンソーシアム」の他、米国、「PECASUSコンソーシアム」(フィンランドなど9か国で構成)の3つが認定されている。
15 Nov 2019
1017
IAEAの「原子力科学技術に関する研究、開発および訓練のための地域協力協定」(RCA)で行われる途上国協力の取組について理解を深めるシンポジウムが11月11日、東京大学本郷キャンパスで開催。約140名の参加者を集めた。RCAのもと、アジア・太平洋地域の開発途上国を対象に、原子力科学技術に関する共同研究、開発、技術移転に向けた相互協力が行われており、今回のシンポジウムは、RCA活動に長く関わるNPO「放射線医療国際協力推進機構」の中野隆史理事長(群馬大学名誉教授)が中心となり、農業、医療、環境、工業の各分野のプロジェクトについて日本の専門家から紹介し議論するものとして企画された。開会に際し、RCAの国内担当機関である外務省より、尾身朝子大臣政務官、松本好一朗・国際原子力協力室長が挨拶に立ったほか、IAEAのダーズ・ヤン事務次長のメッセージを紹介。その中で、ヤン事務次長は、「『平和と開発のための原子力』は、故天野之弥事務局長の重要な遺産」と述べ、RCAが1972年の発足以来これまで、IAEAの活動の一つとしてアジア・太平洋地域の社会経済の発展に大きく貢献してきたと振り返った上で、日本のRCA活動を「リソースを有効に活かした重要な国際貢献」と高く評価し引き続き支援する意を表した。RCAのプロジェクトについては、医療分野で田巻倫明氏(福島県立医科大学)と畑澤順氏(大阪大学)、工業分野で玉田正男氏(量子科学技術研究開発機構)、農業分野で鈴木彌生子氏(農業・食品産業技術総合研究機構)、環境分野で辻村真貴氏(筑波大学)と加田渉氏(群馬大学)がそれぞれ活動内容・成果を発表。田巻氏は、「アジア全体のがん発生数は2040年までに65%増加する」と、プロジェクトを通じた放射線治療専門家育成の意義を述べ、2015年にはこれらの放射線治療医が結集し11か国による「アジア放射線腫瘍学会連合」(FARO)の設立に至ったことなどを披露。 同位体分析による米の産地判別技術の開発を目指す鈴木氏は、「米はアジアの代表的な農作物だが、アジア・アフリカ地域ではプラスチックによるかさ増しや規定以上の残留農薬が問題となっている」と、途上国の食糧事情を憂慮し、安全性・信頼性向上のため、さらに技術開発を進める必要性を強調。「水の保全には循環形態を知る必要がある」として、同じく同位体分析により地下水の年代や流動経路などの研究に取り組む辻村氏は、乾燥地帯の水資源確保とともに、オアシスの起源解明や国境河川における水紛争問題の解決にも貢献する可能性を示唆した。シンポジウムでは、小出重幸氏(日本科学技術ジャーナリスト会議理事)の進行によるパネルディスカッションやポスター展示も行われた。多くの海外取材経験を持つ小出氏は、RCAのプロジェクトに関する発表を受け、「インパクトがあると感じたが、なぜメディアで取り上げられないのか」と述べ、放射線利用を中心とした国際協力の意義を認識する一方、「原子力」、「放射線」、「核」という言葉がその有用性に関する理解を妨げていることなどを指摘した。これに対し、玉田氏は農作物の放射線育種に対し理解が不十分な現状から「エンドユーザーとの協働」を、学生の頃からプロジェクトに関わってきたという田巻氏は「日本人の勤勉さも是非伝えたい」と強調。医師の人材育成に取り組んできた畑澤氏は「ネットワーク作りの場としても重要」と、それぞれ今後のRCA活動に向けて期待を述べた。ポスター展示には14機関が参加し、来場者との活発な質疑応答が見られた。
15 Nov 2019
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日本原子力研究開発機構が最近1年間の活動について紹介する報告会が11月12日、都内で開催された。冒頭、同機構が10月末に取りまとめた「将来ビジョン『JAEA2050+』」について、児玉敏雄理事長が説明。最新の研究開発成果の発表とともに、同ビジョンが描く「原子力機構の研究と社会との関わり」をテーマにトークセッションも行われ、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会委員長を務める持続性推進機構理事長の安井至氏、日本エネルギー経済研究所原子力グループマネージャーの村上朋子氏らが登壇。産業界からは、中性子線解析でリチウムイオン電池の研究開発などに取り組む日産アークの松本隆常務より、「JAEA2050+」で実現を目指す未来社会「Society5.0」を展望し、AIを活用した材料分析の将来像が披露された。また、「福島の復興・再生」をテーマとするトークセッションも合わせて行われ、飯舘村復興対策課専門員(農業・食品産業技術総合研究機構上級研究員)を務める万福裕造氏、福島イノベーション・コースト構想推進機構専務理事の伊藤泰夫氏、東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座講師の越智小枝氏、経済産業省福島復興推進グループ長の須藤治氏らが討論に臨んだ(=写真)。福島第一原子力発電所事故後、被災地での医療活動に取り組む越智氏は、事故発生から8年以上が経過した現在、病院や商店などの復旧が未だ進まず、「『日常を生きる』ということが一番難しいと感じる」と強調。また、行政の立場から、須藤氏は、「一人一人が幸せに生活できて復興は達成する」として、被災地の約8,000もの事業所を訪ねる取組を通じ、「廃業したところもあるが、徐々に事業が再開している」と、産業復興の現状を述べた。これに対し、伊藤氏は、「企業にとって働く人がいないことが最大の課題」と憂慮した上で、南相馬市に整備を進めている「福島ロボットテストフィールド」を中核として、産業の集積が促進することを期待した。再生資材化した除去土壌による農地造成の実証事業について説明した万福氏が、「高齢化が進み危機的状況。若い人たちを呼び込む施策が必要」と営農再開が滞る現状を訴えると、須藤氏は、南相馬市小高区で進められるスマート農業に相馬農業高校から2人の卒業生が就職したことをあげ、「浜通りでしかできない新しい一次産業の形を作り出すこと」などと、今後の課題を指摘。原子力機構で福島研究開発部門を担当する野田耕一理事は、福島県内の機器メーカーやマリンレジャー企業との協力で得られた無人船開発の成果を例に、「地元企業と連携し福島の復興につなげていきたい」と述べた。
13 Nov 2019
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福島県の内堀雅雄知事は11月11日の定例記者会見で、東日本大震災・福島第一原子力発電所事故からの復興途上にある中、先般の台風19号襲来に伴う大災害が重なったことについて、「引き続き避難元・避難先の市町村と連携しながら、生活再建情報の提供や心のケアに関する相談など、きめ細かな支援に努めていく」と述べた。また、知事は、台風19号による多くの犠牲者発生や家屋の浸水について「極めて甚大な被害」と改めて強調した上で、これまでの各方面からの支援に対し謝意を表する一方、他県にわたる大規模水害の特殊性や交通の利便性によりボランティアの集まりに偏りがあったことを一つの課題にあげ、今後改善に向けた議論を深めていく考えを述べた。去る7日に行われた政府の復興推進委員会で、福島県は、2020年度までの「復興・創生期間」以降の取組に関わる要望の中で、「復興・再生を目指し軌道に乗ってきたものが台風によって壊されてしまった事業者や農家に対し、通常の災害とは異なる手当てが必要」と、県としての特殊性に鑑み制度・財政面上、特段の配慮を訴えている。同委員会では、今後の復興施策に関し、地震・津波被災地域と原子力災害被災地域とは復興の進捗状況が大きく異なるとして、両者を区分し整理した「『復興・創生期間』後における東日本大震災からの復興の基本方針」の骨子がまとめられた。
11 Nov 2019
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