量子科学技術研究開発機構、芝浦工業大学、日本原子力研究開発機構による研究チームは4月17日、高温熱を利用した水素製造の効率(システムの駆動に要した全消費エネルギーに対し、製造した水素の燃焼エネルギーの割合)を40%にまで向上できる見通しが得られたと発表した。熱化学反応サイクルで水を水素と酸素に分解するシステム「ISプロセス」の実用化に向けて研究を進めてきたもの。〈量研機構他発表資料はこちら〉「ISプロセス」は、高温の熱源として高温ガス炉や太陽熱を用いる水素製造技術として期待されており、高温ガス炉では、原子力機構の「HTTR」について、3月末に新規制基準適合性の審査書案が取りまとめられ、所要の検査を経て年度末頃に運転再開の予定となっている。膜ブンゼン反応の原理(量研機構発表資料より引用)「ISプロセス」の中心となる「ブンゼン反応」では、大量の循環物質(ヨウ素と硫黄)と、これに伴う機器の大型化が必要となることから、過剰なヨウ素を抑えるため、量研機構と芝浦工大は2017年に「膜ブンゼン反応器」を開発した。これは、「ブンゼン反応」で起きる「硫酸(H2SO4)生成反応」と「ヨウ化水素(HI)生成反応」の中で、電極に挟まれたイオン交換膜を介して、水素イオン(H+)を陰極側に効率的に透過させる仕組みで、ヨウ素使用量の約8割削減につながったが、電圧の低減や強酸環境での耐食性などが課題となっていた。今回、量研機構の高崎量子応用研究所は、放射線照射による改質(量子ビームグラフト・架橋技術)で新たなイオン交換膜を開発し、水素イオンの透過に起因する電圧を約8割低減。耐食性に優れた貴金属によるめっき加工技術などに取り組んできた芝浦工大は、表面積を増大した金陽極を新たに開発し、硫酸生成に起因する電圧を約4割低減することに成功した。また、原子力機構は「ブンゼン反応」の最適温度を50度Cと判断。開発された陽イオン交換膜と金陽極を反応器に装着した試験も50度Cで実施され各技術を実証するデータが得られた。今回の研究成果では、太陽熱を熱源とした650度C程度の比較的低温でも水素製造効率40%を達成できる見通しが立ったとしている。
17 Apr 2020
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文部科学省はこのほど、全国国公私立の幼稚園から高校まで約5万校を対象に実施した学校安全の推進に関する2018年度調査の結果を発表。校内施設や通学路の安全点検、地域連携・防犯体制の整備状況、安全に関わる教育活動・教職員研修などの実態とともに、危機管理関連で、原子力災害や津波浸水に備えた訓練実施状況についても調査結果が示された。それによると、原子力施設から概ね30km圏内の「緊急時防護措置を準備する区域」(UPZ)に所在する学校2,340校(幼稚園・認定こども園520校、小学校996校、中学校515校、高校242校他)のうち、原子力災害を想定した危機管理マニュアルを作成している学校は1,932校(82.6%)、避難訓練を実施している学校は1,175校(50.2%)だった。都道府県別には、UPZ内に所在する学校が最も多いのは茨城県の317校で、次いで静岡県の245校、福島県の196校、島根県の186校、新潟県の178校、福井県の144校などとなっている。茨城県では、1999年のJCO臨界事故を受け、学校における原子力防災マニュアルを整備し、国による原子力災害対策指針の改訂を踏まえた見直しも行っている。今回の調査で、県内の学校のうち原子力災害を想定した危機管理マニュアルを作成していたのは306校(96.5%)、訓練を実施していたのは243校(76.7%)だった。東海村では、2019年6月に原子力発電所事故を想定した広域避難訓練の中で、初めて村内の小学生約80人を参加させ、避難所での保護者への引き渡し訓練を実施するともに、非常用物資の配布や自衛隊装具の展示を行うなど、防災対策の実効性向上に努めている。この他、危機管理の関連で、津波浸水の可能性が示されている学校は5,950校で、そのうち津波被害を想定したマニュアルを作成している学校は5,375校(90.3%)、避難訓練を実施している学校は5,344校(89.8%)。また、弾道ミサイル発射に関する避難訓練を実施、または合同訓練に参加したという学校は6,624校(13.4%)だった。
16 Apr 2020
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資源エネルギー庁は4月14日、2018年度のエネルギー需給実績を取りまとめ発表。最終エネルギー消費は前年度比2.7%減の13,124PJ(ペタジュール)となり、特に家庭部門では暖冬の影響により同7.8%の大幅な減少を見せた。2018年度の一次エネルギー国内供給は、前年度比1.8%減の19,728PJとなった。その中で、原子力発電の再稼働と再生可能エネルギーの普及が進んでおり、全体に占める割合がそれぞれ前年度比1.4ポイント、同0.5ポイント増加し、これらを含む非化石燃料の占める割合は6年連続で増加。一方、化石燃料の占める割合は85.5%で6年連続の減少となった。総発電電力量は、同0.8%減の1兆512億kWhで、電源構成別には火力が77.0%(同3.9ポイント減)、再生可能エネルギーが16.9%(同0.9ポイント増)、原子力が6.2%(同3.1ポイント増)となり、非化石電源の占める割合は23.0%と、同3.9ポイントの増加を見せた。年度内には、関西電力大飯4号機(PWR、118.0万kW)と九州電力玄海4号機(PWR、118.0万kW)の2基の原子力発電プラントが再稼働している。また、エネルギー起源のCO2排出量は、前年度比4.6%減の10.6億トンとなった。5年連続で減少し続けているが、下げ幅は近年で最大。東日本大震災後、原子力発電プラントが順次停止し化石燃料によるエネルギー供給がピークとなった2013年度との比較では、14.2%の減少となっている。環境省の同日発表によると、2018年度の国内温室効果ガス総排出量は12.4億トン(CO2換算)で、前年度比3.9%減、2013年度比で12.0%減となった。日本は、パリ協定に基づく国際公約として「温室効果ガスを2030年度に2013年度比26%削減」との目標を掲げている。
15 Apr 2020
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資源エネルギー庁は4月13日、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関する「関係者のご意見を伺う場」を福島市と富岡町で開催。2月に取りまとめた小委員会報告を踏まえ、政府としての方針決定に資するもので、6日の福島市開催に続き2回目となる。前半の福島市会場では、県商工会連合会会長の轡田倉治氏、ヨークベニマル社長の真船幸夫氏、県農業協同組合中央会会長の菅野孝志氏が意見を表明した。福島を中心とする5県に約230店舗の販売網を有するヨークベニマルの真船氏は、「安心・安全な食品を地域の皆様に届ける」という使命を繰り返し強調。福島第一原子力発電所事故後、独自に放射線測定機器を導入し日々食品の検査を実施した上で顧客に提供してきた結果、「徐々に福島県産品の安全性に対する理解が浸透してきている」とした。一方で、「風評は未だ払拭されるに至っていない」と憂慮し、毎年3月11日に打ち出す販売促進キャンペーン広告を示しながら、福島県産の農水産物の魅力発信に努めていることを述べた。その上で、処理水の取扱いに関し、(1)国内外に広く情報を提供しコンセンサスを得ること、(2)風評被害防止の事前プログラムを準備しておくこと――が担保されない限り、放出すべきではないと主張。また、菅野氏は、小委員会報告が「現実的な方法」とする海洋放出と水蒸気放出について「二者択一の考え方には反対」としたほか、2日に公表された同報告に対するIAEAレビューに関し「地元紙を除いてほとんど報道されていない」などと述べ、マスメディアによる情報発信や放射線教育の重要性にも言及した。後半は富岡町に会場を移し、いわき市、双葉町、富岡町、広野町、葛尾村、楢葉町、川内村、大熊町、浪江町の各首長が意見を表明。いわき市長の清水敏男氏は、処理水の取扱いに関し、資源エネルギー庁が2018年に開催した説明・公聴会(富岡町、郡山市、都内)での環境・健康影響を巡る議論を振り返り、小委員会報告について「科学的事実に対し共通認識が形成されるべき」と、国民全体による議論の必要性を示唆。また、市の観光復興の現状について述べ、海水浴客は震災前の1割程度に留まり、良質な波で知られる四倉海水浴場では「東日本サーフィン選手権大会」が2年連続で開催できたものの、サーファーからは放射線に対する不安の声が聞かれるなどと、「風評被害の固定化」を懸念した。この他、各町村長からはいずれも、地元産業に及ぼす風評被害への不安や慎重な対応を求める意見が述べられ、住民帰還に与える影響を憂慮する声、原子力発電所を立地する地域を含め全国各地で説明会を行うべきとの意見もあった。現下の新型コロナウイルス対策のため、東京にてテレビ会議を通じての出席となった松本洋平経済産業副大臣(座長)は、「皆様方の思いをしっかり受け止めていく」と述べ締めくくった。
14 Apr 2020
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☆3月の主な動き☆【国内】▽2日 ITER「幅広いアプローチ活動」、新たなフェーズに向け日欧共同宣言署名▽4日 九州経済連合会エネ戦略で提言、「再稼働の先行アドバンテージ」を強調▽5日 政府・未来投資会議、環境・エネ問題で「大所高所からの骨太のビジョン」検討へ▽7日 「福島水素エネ研究フィールド」が浪江町に開所、太陽光発電を用いた世界最大級のプラント▽10日 消費者庁風評調査、食品の産地を気にする人で「放射性物質の含まれていない食品を買いたいから」が震災後最少に▽11日 福島第一事故から9年、東京電力社長が訓示「復興と廃炉の両立」を強調▽17日 原子力文化財団が世論調査結果発表、原子力に対する考え方が「ややポジティブ側」に変動と分析▽18日 規制委、東北電力女川1号機と九州電力玄海2号機の廃止措置計画を認可▽20日 福井県「原子力災害制圧道路」が完成、原電敦賀と「もんじゅ」の行来が短縮し観光振興も▽24日 文科省が放射線教育に関する調査結果発表、副読本の活用状況も▽25日 規制委、原子力機構「HTTR」の新規制基準適合性で「審査書案」取りまとめ▽27日 東京電力が福島第一廃炉で向こう10年の中長期実行プラン示す、地元企業を通じた復興支援策も▽31日 「福島ロボットテストフィールド」が全面開所 【海外】▽2日 世界初の「華龍一号」設計の福清5号機で温態機能試験が完了▽2日 米国防総省、超小型炉の原型炉建設と実証に向けコメント募集▽5日 米原子力発電所の2019年の安全性パフォーマンス評価、全ユニットが最良カテゴリーに▽6日 米ピーチボトム2、3号機に規制委が2回目の運転期間20年延長を承認、米国で2件目▽6日 インド原子力省の常設委、原子力拡大計画で国産加圧重水炉の建設を推奨▽9日 米国防総省、超小型原子炉原型炉の設計契約でWH社など3社を選定▽9日 欧州の原子力企業7社、EUのタクソノミー報告に対し原子力の評価で専門家Grの設置を要請▽10日 米BWXT社、エネ省が開発中の超小型炉用にTRISO燃料の製造契約獲得▽10日 米規制委、ホルテック社の集中中間貯蔵施設の建設計画審査で「環境影響面の問題なし」と報告▽13日 米ビーバーバレー原子力発電所の事業者が2年前の早期閉鎖予告を撤回▽17日 米オクロ社、先進的SMRで初の建設・運転一括認可(COL)を規制委に申請▽19日 英ロールス・ロイス社、トルコで同社製SMRを建設する可能性調査でトルコ国営電力と覚書▽20日 米NEI、パンデミック時の燃料交換など原子力発電所への支援をエネ省長官に要請▽22日 IEA事務局長:「コロナウイルス危機に際しすべての発電設備オプション維持が重要」▽23日 仏電力、コロナウイルスの影響で原子力による今年の目標発電量を下方修正へ▽25日 IAEA、様々なSMRの経済性評価で3年計画の協働研究 開始▽25日 チェコ電力、ドコバニ原子力発電所での2基増設で立地許可を申請▽26日 EDFエナジー社、コロナウイルスの影響でサイズウェルC原子力発電所の「開発合意書」の申請書提出を延期▽26日 ロシア、国内外で運転・建設中の原子力発電所におけるコロナウイルス対策でさらなる警戒強化▽30日 IAEA、コロナウイルスによる感染拡大時の緊急時支援演習を実施 ☆過去の運転実績
13 Apr 2020
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原子力産業新聞が電力各社より入手したデータによると、2019年度の国内原子力発電所の設備利用率は20.6%と、前年度の19.3%より1.3ポイント増加。また、総発電電力量は概ね前年度並みの637億7,898万kWhだった。月ごとの設備利用率の推移(2018~19年度)2019年度内に新たに再稼働したプラントはなく、2018年度に引き続き、関西電力高浜3、4号機、同大飯3、4号機、四国電力伊方3号機、九州電力玄海3、4号機、同川内1、2号機の、いずれもPWRで計9基の運転となった。また、九州電力玄海2号機が4月に、東京電力福島第二1~4号機が9月に運転を終了。国内の原子力発電プラントは、計33基・3,308.3万kWとなっている。また、九州電力川内1号機が3月16日にテロ対策の「特定重大事故等対処施設」の設置期限満了を迎え定期検査入り。検査期間中は、新規制基準が要求する同施設、常設直流電源設備(3系統目)の設置工事などが行われる。
10 Apr 2020
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原子力規制委員会は4月8日の定例会合で、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた対応として、当面の審査会合などをテレビ会議・電話会議での開催を基本とすることとした。ウェブサイトでのライブ中継もこれまで通り実施する。現在通信試験のための模擬会合が行われており、最終的なチェックを経て運用を開始するが、審査会合については原則火・木曜の開催となる見通し。テレビ会議は、3月に福島第一原子力発電所に関する監視・評価検討会で、東京の本庁と現地原子力規制事務所と発電所サイトとを結んで行われたことがある。地震・津波関係の審査など、事業者が会場で図面を示しながら議論することが必要な会合については、サイト担当者が東京に出向くことを極力避けるよう、個別に人数を限定した審査会合の開催を検討する。また、セキュリティの観点からテレビ会議が利用できないテロ対策の「特定重大事故等対処施設」に関する審査や、判断・指示事項が明らかな案件については、委員の了解を得て書面審査とし、機微情報へのマスキングを施した上で文書を公開。規制委員会の新規制基準適合性に係る審査会合は、概ね日に1回程度開催されていたが、3月27日を最後に中断となっている。前回4月1日の定例会合で、審査を総括する原子力規制庁の山形浩史氏は、「審査に遅れが生じないように努めていく」として、早急に今後の審査会合の進め方をまとめる考えを示していた。7日には新型コロナウィルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言が7都府県に発令されたが、更田豊志委員長は8日の定例会合終了後の記者会見で、実施期間中の留意事項として、原子力施設にトラブルが生じた際の緊急時対応体制の維持の他、医療用放射性同位元素に係る申請への対応も重要などと述べた。なお、定例会合は当面これまでの毎週から隔週の開催となる。
08 Apr 2020
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資源エネルギー庁は4月6日、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関する報告書取りまとめを受けた第1回「関係者のご意見を伺う場」を福島市で開催。今後、地元を始めとした関係者の意見聴取を順次実施し、政府としての方針が決定される運び。今回は、内堀雅雄・福島県知事他、県内の市町村長、産業界の代表らが招かれ、それぞれの立場から意見を述べた。福島第一原子力発電所で原子炉内の燃料デブリ冷却などにより発生する汚染水は多核種除去設備(ALPS)で浄化処理されるが、取り除くことのできないトリチウムを含んだ水の取扱いが課題となっており、資源エネルギー庁の委員会は2月にこれまでの検討結果を取りまとめた報告書の中で、「現実的な方法は海洋放出および水蒸気放出」、また、「風評被害対策を拡充・強化すべき」としている。さらに、4月2日には、同報告書に対するIAEAのレビュー結果が公表され、海洋放出と水蒸気放出のいずれも「技術的に実施可能」と評価した上で、今後の処分方針について「すべてのステークホルダーの関与を得ながら喫緊に決定すべき」などと指摘された。6日の「ご意見を伺う場」で内堀知事は、震災から9年を経て、水産業では漁港の復旧とともに試験操業が順次拡大し出荷制限を受ける魚介類がゼロとなったことなど、県内産業の復興状況を説明。一方で、農産物の産地間競争の激化などに触れ、県産品の価格や観光客数に全国水準との格差が生じている実態や、一部の国・地域で続く食品輸入規制の現状を述べ、「風評払拭には長期にわたる粘り強い取組が不可欠」、「福島の現状とともに放射線に対する正しい知識が伝わっていない」として、処理水の取扱いに関し慎重な対応を要望した。産業界から、県旅館ホテル生活衛生同業組合理事長の小井戸英典氏は、処理水の放出に関し、「どれだけ希釈しても不安をゼロにすることはできない」、「風評ではなく故意の加害行為」と厳しく指摘。一方で、報告書の内容を踏まえ諸外国でのトリチウム放出の実績や安全性の担保に一定の理解を示し、処分期間を通じた損失補てんとともに、放出を容認する考えを述べた。また、県森林組合連合会会長の秋元公夫氏は、きのこ・山菜類への影響、林業の経営意欲低下などを懸念し、処理水の放出に反対。県漁業協同組合連合会会長の野﨑哲氏は、「これから正に増産に向け舵を切ろうという矢先」と、県水産業の本格復興に向けた正念場を強調したほか、若い後継者の機運に与える影響なども危惧し、「海洋放出には反対せざるをえない」、「福島県の漁業者だけで判断できることではない」とした。観光関連では、会津磐梯山を望み五色沼を擁する北塩原村の村長で県町村会会長の小椋敏一氏が、9年を経て漸く震災前の水準に戻りつつある国内外観光客の回復状況について説明し、「町村の現状はまだまだ厳しい」と訴えたほか、処理水の取扱いについては、県外での処分も選択肢に全国各地で幅広く意見を聴く必要性を述べた。第2回の「ご意見を伺う場」は、13日に福島市と富岡町で行われる予定。
07 Apr 2020
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福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関し、資源エネルギー庁の小委員会が2月に取りまとめた報告書に対するIAEAによるレビュー報告書が4月2日に公表された。IAEA主催の核セキュリティ国際会議(2月10~14日)に日本政府代表で出席した外務省の若宮健嗣副大臣が、ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長に小委員会報告書を手渡した後、レビューが行われていた。一方、IAEAでは、2018年11月に福島第一原子力発電所の廃炉に関する第4回調査団を日本に派遣し助言を行っており、今回のIAEAによるレビュー報告書は、そのフォローアップとして位置付けられている。福島第一原子力発電所では、原子炉建屋内の燃料デブリ冷却のため継続的に発生する汚染水を多核種除去設備(ALPS)により浄化処理しているが、取り除くことのできないトリチウムを含んだ処理水の取扱いが課題となっており、資源エネルギー庁の小委員会で議論が行われてきた。技術的な検討も踏まえ、同委が2月に取りまとめた報告書では、「実績があり現実的な方法」として海洋放出と水蒸気放出をあげ、いずれによっても「放射線の影響は自然被ばくと比較して十分に小さい」と評価。また、処理水の処分に際しては、これまでの事例を踏まえ「風評被害対策を拡充・強化すべき」としている。今回のIAEAのレビュー報告書では、小委員会による議論について「科学的・技術的根拠に基づいている」とした上で、管理された状況下での水蒸気放出と海洋放出は「技術的に実施可能」と評価。また、処理水の処分実施に関し、「数十年に及ぶと予測される類をみない複雑な事案」と述べ、安全性のレビュー、規制機関の監督、モニタリングプログラム、すべてのステークホルダーの適切な関与が必要などと指摘し、日本政府が処分方法を決定した際にもIAEAとして支援を図る姿勢が示されている。福島第一原子力発電所で発生する処理水を保管するタンクは2022年夏頃に満杯となる見通しで、IAEAのレビュー報告書でも「処分方針に関する決定は、すべてのステークホルダーの関与を得ながら喫緊になされる必要」と指摘。資源エネルギー庁では、今後政府として処理水の取扱い方針を決定するため、4月6日の福島市内開催を皮切りに「関係者のご意見を伺う場」を予定している。
03 Apr 2020
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原子力規制委員会の更田豊志委員長は4月1日の定例記者会見で、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策に関し「最も注意を払っている」とした上で、当面の原子力規制庁の特別な勤務体制について質疑に応じた。原子力規制庁では、3月30日~4月10日の間、業務内容に応じた必要最小限の人数のみの登庁とし原則在宅勤務としている。これに関し、更田委員長は、「さらに状況が進んだときにも緊急時対応体制は確実に維持しなければならない」として、課室ごとに職員を2チームに分け、接触をできるだけ避けることにより、万が一の際にも「共倒れにならないよう」対応すると述べた。また、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う国際協力への影響については、来日中の米国検査官の急きょ帰国や海外研究機関との情報交換の予定がすべてキャンセルとなったことなどをあげた。一方で、IAEAによる保障措置の査察活動には「規制庁も同行せざるをえない」として、世界的な混乱の最中「どさくさに紛れた盗取」を許さぬためにも、核セキュリティの確保に向けた対応が変わらず重要なことを強調。1日の規制委員会定例会合では、新規制基準適合性に係る審査の進捗状況が報告された。その中で、原子力規制庁新規制基準適合性審査チーム長の山形浩史氏は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策を踏まえた今後の審査会合の進め方について、ウェブ会議・TV会議を基本とし書面審議も併用しながら必要最小限の関係者を来場させるなどと、準備状況を説明し、「審査に遅れが生じないように努めていく」と述べた。
01 Apr 2020
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福島県南相馬市は、復興の重点戦略として取り組んでいる「ロボット振興ビジョン」の実現に向けた取組をPRする動画を作成し順次公開している。同市は、実際の使用環境を再現しながら陸・海・空で活躍するロボットの研究開発、実証試験、性能評価、訓練などを行う「福島ロボットテストフィールド」を立地。これを、最大限に活用し、国内外の優秀な研究者が集う環境整備、企業の技術革新やベンチャー輩出を推進するとしている。動画は、政府の科学技術イノベーション総合戦略が掲げる「Society5.0」に因み、「Minamisoma5.0 南相馬が目指すロボットイノベーションシティ」と題し、「南相馬のロボットは道具じゃない、○○だ」をキーフレーズに、門馬和夫市長始め、ドローンの開発・製品化に取り組む地元企業の技術者やロボット体験を授業に取り入れている小学校教員らがそれぞれの想いを語るシリーズ物。農業ロボットの開発に取り組む銀座農園社長の飯村一樹氏は、高齢化が進む果樹産業の支援などを目指し「人と一緒に動くロボットを作りたい」、「南相馬のロボットは道具じゃない、『息子』だ」と語る。動画の中で「市の人材輩出・育成」に向けた意気込みを「南相馬のロボットは道具じゃない、『復興の希望』だ」と訴えかける門馬市長は、昨春「福島ロボットテストフィールド」を活用したロボット関連人材育成に関わる新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との協力協定の締結に臨んでいる。「福島ロボットテストフィールド」は、浜通り地域の新産業創出を目指す「福島イノベーション・コースト構想」の中核として31日に全面開所。福島県の内堀雅雄知事は30日の定例記者会見で、「既に全国から最先端の企業や研究者が集まっており、世界初の実証試験やロボットの新たな基準作りに向けた試験が行われている」とした上で、「空飛ぶクルマ」の実証試験を一例にあげ、同所の持つ優位性を活かした取組を通じ、「メイドイン福島」の革新的なロボット技術や製品が生み出されることに期待を寄せた。
31 Mar 2020
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東京電力は3月27日、福島第一原子力発電所廃炉に関わる2031年末頃までの主要な作業プロセスを示す「廃炉中長期実行プラン2020」を発表した。福島第一原子力発電所の廃炉に向けては、2019年末に、原子力損害賠償・廃炉等支援機構による技術的提案を踏まえ、廃止措置終了までの期間について使用済み燃料プール内の燃料取り出しや燃料デブリ取り出し開始などのステップごとに区分し具体的対策を示した中長期ロードマップが改訂されている。「廃炉中長期実行プラン2020」は、この中長期ロードマップが掲げる目標を達成するための計画を、概ね10年程度を見据え、汚染水対策、使用済み燃料プール内の燃料取り出し、燃料デブリ取り出し、廃棄物対策について具体的取組を示したもので、今後の進捗に応じ毎年見直しが図られる見通し。その中で、現在進められている3号機の使用済み燃料プール内燃料取り出しは、2020年度内の完了を目指し、続く1、2号機の燃料取り出しについても、中長期ロードマップに従いそれぞれ2028年度、26年度までの開始に向けて、大型カバー、燃料取り出し用構台の設置を進めていくとされた。また、2021年内の開始を目指しまず2号機から着手する燃料デブリ取り出しに関しては、今後同機で得られる知見も踏まえ、炉内調査の進捗状況から引き続き3号機について検討を進め、1号機に展開していく。福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデントの小野明氏は同日の記者会見で、4月からの組織改編も見据え、「『廃炉中長期実行プラン2020』を安全かつ着実に進めていく」と強調した。また、東京電力は、同プランと合わせ、「復興と廃炉の両立に向けた福島の皆様へのお約束」も発表。3つのスローガンとして、「ひらく」、「つくる」、「やり遂げる」を掲げ、長期にわたる廃炉事業を通じて福島の復興に力を尽くす決意を示しており、小野氏は、「地元企業の方々と直接やり取りできるようにしたい」として、燃料デブリ取り出しに必要な設備の設計なども念頭に、今後の作業内容や要求される技術についてわかりやすく説明した資料を近くまとめる考えを述べた。なお、東京電力は24日に、福島第一原子力発電所で発生する処理水の処分方法と風評被害対策に関し、資源エネルギー庁の委員会が12月に取りまとめた報告書を受け「検討素案」を発表。これに関し、小野氏は、同報告書が「現実的な方法」とする水蒸気放出と海洋放出について「資機材の準備や許認可など、実施には2年程度かかると思う」との見通しを示し、政府による方針決定後に詳細設計を詰めていくとしたほか、「情報を正確に発信するようコミュニケーションに努めていく」と、風評被害対策に着実に取り組んでいく考えを強調した。
30 Mar 2020
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日本原子力研究開発機構は3月27日、福島第一原子力発電所の構内などを移動しながら放射性物質の分布をパノラマ的に可視化できる全方位型3次元放射線測定システム車「iRIS-V」を開発したと発表した。放射性物質を可視化する小型軽量カメラを複数台配置した「全周囲有感型コンプトンカメラ」を搭載。カメラで取得した車両周囲360度の放射線イメージと、レーザー光を用いた3次元距離測定センサーによるパノラマ画像とを重ね合わせ、放射線源の場所を様々な視点から立体的に表示するもので、次世代型モニタリングカーとして、今後除染・廃炉作業の円滑な推進に貢献することが期待される。「iRIS-V」を用いた放射線源のパノラマ画像 ©︎JAEA通常のコンプトンカメラで10分程度を要していた前方だけの測定が、新たな「全周囲有感型コンプトンカメラ」を搭載した「iRIS-V」では、全周囲にわたる測定をわずか80秒で完了でき、実際に原子力機構が駐車場内で行った試験で放射線源を置いた車を特定することに成功した。原子力機構の福島研究開発部門ではこれまでも、メーカーとの協力により重厚な遮蔽体を必要とせず高線量環境でも測定可能なコンプトンカメラの改良を重ねており、上空から広範囲の放射性物質分布を可視化するドローンシステムの開発などにつなげてきた。
27 Mar 2020
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文部科学省は3月24日、全国の小中高校(特別支援学校を含む)計約4,300校を対象として12~1月に実施した放射線教育に関する調査の結果を発表した。2018年に改訂した放射線副読本の活用状況についても把握し、授業の実践例を収集し取りまとめるなど、今後の放射線教育の充実化に資するのがねらい。それによると、授業などで放射線に関する内容を扱ったことや扱う予定のある学校は、小学校で約69%、中学校で95%、高校で80%、実施した教科としてあげられたのは、小学校で社会科、理科、中学校で理科、社会科、高校で理科、公民の順に多かった。また、授業などを準備する際に外部人材を活用していた学校は、小学校が6%、中学校が5%、高校が4%と、いずれも1割に満たなかった。その他、放射線について学ばせる上で工夫した点としては、防災学習での取扱い、修学旅行における広島・長崎訪問や語り部との対話、社会科と理科の学習内容を関連させた教科横断的な取組などがあげられた。放射線副読本の取扱いとしては、「すべての生徒に配布した」と回答した割合が、小学校で66%、中学校で62%、高校で52%といずれも半数を超えた。活用した学校は、小学校で52%、中学校で56%、高校で28%だった。また、活用の場としては、小中高校いずれも、「教師の説明」が最も多く、「調べ学習」、「話し合い・発表」がこれに次いだ。有効だった点としては、「絵や写真があることで子供たちにとってわかりやすい」、「内容がわかりやすく教師が活用しやすい」、「放射線についての基礎的な知識だけでなく、風評被害や差別についても触れられているので、多面的に学習できる」、「教科書よりも内容が詳しいため理解を深めるために有効だった」といった意見があった。一方、「教科の学習内容とどのように結び付いているのかを明確にし、授業内容で活用しやすいようにして欲しい」、「小学校低学年の指導で扱うことは難しい」、「危険性を正しく伝えることと同時に、放射線の有用性などについても大きく取り上げて欲しい」といった改善を求める意見もあった。
26 Mar 2020
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原子力規制委員会は3月25日の定例会合で、日本原子力研究開発機構の高温ガス炉「HTTR」(茨城県大洗町、熱出力30,000kW、=写真<原子力機構発表資料より引用>)が新規制基準に「適合している」とする「審査書案」をまとめた。今後、原子力委員会と文部科学相への意見照会、パブリックコメントを経て正式決定となる運び。施設の位置、構造に関し、「HTTR」は標高36mの高台に設置され取水設備を設置しておらず、原子力機構はこれらを踏まえ不確かさを十分に考慮した津波評価を行っており、審査では、津波により安全機能を損なうおそれがないことを確認。また、事故の想定・進展に関する評価の中で、炉心構造材の黒鉛が酸化し一酸化炭素が発生しても燃焼する濃度には至らず、また、原子炉格納容器の閉じ込め機能喪失の対策として、建屋の目張り処置で放射性物質放出の影響緩和が可能などとしており、複合的な事故発生に対しても拡大防止に向けた対策・体制が図られることを確認した。950度Cの熱を取り出せる「HTTR」は、水素製造、発電、海水淡水化など、幅広い利用が期待されるほか、高温でも放射性物質の閉じ込め機能を保つ直径約1mmのセラミックス被覆燃料、化学的に安定なヘリウム冷却材、耐熱温度2,500度Cの黒鉛構造材を有する特徴から安全性にも優れている。1998年の初臨界後、2004年には定格熱出力で原子炉出口温度950度Cを、 2010年には連続50日の950度C運転を達成。2014年11月に新規制基準適合性に係る審査が申請された。原子力機構では、24日に原子炉安全性研究炉「NSRR」が耐震工事を終え運転再開しており、その他の研究炉についても早急な運転再開を目指すとしている。
25 Mar 2020
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日本原子力研究開発機構の原子炉安全性研究炉「NSRR」(茨城県東海村、最大熱出力:パルス運転時2,300万kW、定出力運転時300kW)が3月24日、運転を再開した。原子力規制委員会による新規制基準をクリアし2018年6~9月に運転した後、付属建屋の耐震補強工事が行われていた。「NSRR: Nuclear Safety Research Reactor」は、実験用の燃料棒に高い出力をパルス状に加える運転により原子炉暴走事故を模擬し、原子力発電所の事故時に燃料が破損する条件やメカニズムを研究する原子炉で、1975年の初臨界以降、3,000回を超えるパルス運転、1,000回を超える燃料照射試験が実施され、40年以上にわたり、原子炉の安全確保に必要なデータを蓄積。2009年度以降は、設置目的に教育訓練が加わり、運転実習や炉物理実験などを通じた原子力分野の人材育成にも供されている。事故条件下における燃料の過渡的ふるまいを世界で初めて映像化した実績を持つ「NSRR」では、今後も高速度カメラを有する実験カプセルを用いた観察などを通じ、設計基準を超えるシビアアクシデント時の燃料挙動評価に関わる知見を取得し、福島第一原子力発電所事故の解明、原子力の安全対策、規制行政の技術的支援に寄与していく。原子力機構の安全研究センターは、2月に行われた記者団への説明で、「安全性の継続的改善には、事業者の自主的努力と、これを監視・評価する規制活動の技術的進歩がそれぞれ必要」と、機構が実施する安全研究の役割を強調している。原子力機構では、研究開発成果をわかりやすく説明する「JAEAチャンネル」を開設しており、今回運転再開した「NSRR」についても動画で紹介している。
24 Mar 2020
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福井県が敦賀半島で整備を進めていた一般県道・竹波立石縄間線(敦賀市白木~浦底、4.9km)と主要地方道・佐田竹波敦賀線(美浜町菅浜~竹波、3.0km)が3月20日に開通した(=図、福井県発表資料より引用)。今回半島先端部に開通した竹波立石縄間線の両端部には、それぞれ日本原子力発電敦賀発電所と日本原子力研究開発機構「もんじゅ」が立地。両施設間の行き来はこれまで一旦半島の付け根方向に戻らねばならなかったが、全長3,863mのトンネルで距離が縮まり、半島を周遊する道路ネットワークの完成で、災害時における迅速な初動対応・住民避難活動が可能となるほか、観光振興にも寄与することが期待される。また、佐田竹波敦賀線は、関西電力美浜発電所や年間約15万人の観光客が訪れる水晶浜海水浴場に通じており、2019年3月の部分供用開始後、今回全長1,666mのトンネル完成で従来の海岸沿いルートのバイパスとして機能することとなり、交通がより円滑化する。敦賀半島の先端部東西に位置する各原子力発電所と市街地を通る国道へはアクセス道路が1本のみで、豪雨発生時には土砂崩れによる通行止めも発生していることから、福井県では、今回開通の2路線を含め「原子力災害制圧道路」の整備計画を立ち上げ、毎年早期完成に向けて特別な財政支援措置を国に対し要望してきた。
23 Mar 2020
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日本原子力文化財団は3月17日、2019年度「原子力に関する世論調査」の結果を発表した。同財団が2006年度より継続実施している全国規模の調査で、経年的・定点的に原子力に関する世論動向や情報の受け手側の意識を把握し知識の普及・啓発活動に資するもの。今回の調査は、10月に実施され、全国の15~79歳の男女1,200人から回答を得た。「今後日本は原子力発電をどのように利用すればよいと思うか」との問いに対し、最も多かった回答は「徐々に廃止」で49.4%、次いで「わからない」が22.7%だった。また、「増加」の2.0%と「東日本大震災以前の状況維持」の9.3%とを合わせた「積極的な利用層」の割合は2017年度以降増加し、これと「徐々に廃止」とを合わせた「利用層」の割合は2016年度以降増加。一方、「即時廃止」と回答した割合は11.2%で2016年度以降減少している。「わからない」と回答した割合は、10代、20~30代、女性で高く、全体よりそれぞれ、7.0ポイント、4.8ポイント、5.8ポイント上回っていた。これを受け、原子力文化財団では、「2017~19年度で原子力に対する考え方が『ややポジティブ側』に変動した」、「特に10代や女性層に対して、原子力発電に関する情報との接点を増やす取組が求められる」などと分析している。また、再稼働に関する意見としては、「国民の理解が得られていない」が50.3%と大半を占めた。一方で、「電力の安定供給から必要」(26.6%)が「電力は十分まかなえているので必要ない」(16.5%)を、「新規制基準への適合確認を経て認めてもよい」(17.6%)が「新規制基準への適合確認を経たとしても認められない」(14.5%)をそれぞれ上回っていた。「今後日本はどのようなエネルギーを利用・活用すればよいと思うか」(複数回答可)との問いに対しては、「太陽光」(75.5%)、「風力」(62.8%)、「水力」(51.8%)、「地熱」(40.0%)の順に回答が多く、東日本大震災以降では同一順が続いた。「原子力」と回答した割合は16.3%で2018年度の17.3%を若干下回り、性別で比較すると、男性23.1%に対し女性9.7%と大きな開きがあった。原子力・放射線・エネルギー分野の情報保有量について、今回の調査では、高レベル放射性廃棄物に焦点を当て、「地層処分選択の経緯」、「日本での処分方法決定」、「廃棄物の量」、「廃棄物貯蔵の状況」、「3段階の処分地選定」、「次の段階への進め方」、「各国でも処分が難航」、「処分の先進国」に関して質問。それによると、聞いたことがある項目として最も回答が多かったのは、「廃棄物貯蔵の状況」で32.7%、「各国でも処分が難航」がこれに次ぐ21.7%となったほか、いずれの項目の回答率も男性が女性よりも高く、年代別では60~70代が最も高かった。また、「どの項目も説明できない」が93.8%、「どの項目も聞いたことがない」が50.2%に上るなど、原子力・放射線・エネルギー分野全般と比較し、高レベル放射性廃棄物関連の認知度の低さが示された。原子力に対するイメージについては、「危険」、「不安」が福島第一原子力発電所事故前から上位を占め、依然と否定的なイメージの回答率が高いが、一方で、肯定的なイメージとして、「必要」、「役に立つ」などもあがっており、いずれも原子力に関する情報量が多いほど回答率が高くなっている。
19 Mar 2020
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原子力規制委員会は3月18日の定例会合で、東北電力女川原子力発電所1号機と九州電力玄海原子力発電所2号機の各廃止措置計画の認可を決定した。廃止措置期間は、女川1号機が2053年度まで、玄海2号機が2054年度までとなっており、いずれも「解体工事準備期間」から「建屋等解体撤去期間」までの4段階に分けられ、そのうちの第1段階に実施する具体的事項について2019年に申請されていたもの。女川発電所では、2月26日に2号機について新規制基準適合性に係る原子炉設置変更許可が出されており、審査において、2号機の設備工事により津波発生時も敷地への流入防止が図られ1号機使用済み燃料の冷却機能が維持できることを確認したとしている。女川1号機の使用済み燃料プールには、使用済み燃料821体、新燃料40体が貯蔵されており、廃止措置の第2段階開始(2027年度以降)までに、それぞれ3号機使用済み燃料プール、加工施設へ搬出される予定。一方、玄海2号機については、作業スペースの有効活用による工期短縮や作業安全向上などのため、既に廃止措置実施中の1号機と工程が並行するよう、両機に係る廃止措置計画の認可となった。また、18日の会合では、九州電力川内原子力発電所について、テロに備えた「特定重大事故等対処施設」に係る保安規定の変更申請に関し、「審査基準を満足している」との取りまとめが示された。近く同施設に係る初の保安規定変更認可となる見通し。川内1号機は「特定重大事故等対処施設」の設置期限を迎え3月16日に定期検査入りしており、検査期間中に新規制基準が要求する同施設や直流電源設備(3系統目)の設置工事などが行われる。
18 Mar 2020
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原子力委員会は3月17日の定例会で、人材育成に関する見解を受け実施した原子力教育に携わる大学・大学院教員からのヒアリングの結果をまとめた。ヒアリングは、2019年12月より、北海道大学、東北大学、東京大学、東京工業大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学に対し順次行われ、17日の会合では、これらを通じて拾い上げられた課題とグッドプラクティスを例示。課題としては、学内設備の老朽化や技術職員の定員削減、学外施設の停止・廃止により、実習や実験が困難となっていることなどがあげられた。例えば、臨界実験装置を用いた原子炉基礎演習・実験を行っている京都大学では、新規制基準対応に伴う停止期間で落ち込みを見せた受講者数が回復しつつあるとする一方、将来的な学内施設・装置の維持に関して「できる限り修理・補修しているが抜本的な解決には至っていない」と、老朽化による教育研究環境の悪化を懸念している。一方、グッドプラクティスとしては、オンライン講座の活用などがあげられた。例えば、北海道大学では、ウェブサイト公開の講義録「オープン教材」の作成や、テレビ会議システムで道内の大学を結んだ放射線に関する教養科目開設など、通信ネットワークを活用した取組に力を入れている。原子力委員会では、海外大学の原子力教育についても随時ヒアリングを実施しており、今回、欧米大学のグッドプラクティスも合わせて例示。カナダ・マクマスター大学に見られる学生による授業評価とそれを受けた講義内容の見直しなどがあげられ、岡芳明委員長は「競争のシステムが取り入れられている」と、日本との違いを強調した。ヒアリング結果については、日本原子力学会や「原子力人材育成ネットワーク」を通じて他大学への水平展開が図られる見通し。原子力委員会は、今夏発表予定の2019年度版原子力白書で、「人材育成を含む原子力利用の基盤的強化」を特集テーマとして取り上げることとしている。
17 Mar 2020
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国土地理院はこのほど、過去に発生した地震、津波、火山の噴火などの様相や被害状況を記した「自然災害伝承碑」として、新たに41基を「地理院地図」上に公開した。2011年の東日本大震災の経験を伝える「女川いのちの石碑」(宮城県女川町)他、近世の大洪水を記録した供養塔や安全祈願の地蔵などが含まれている。「自然災害伝承碑」は、国土地理院が自然災害に関する石碑やモニュメントなどを地形図に掲載し、それらが刻む教訓を踏まえた的確な防災行動を啓発するもので、2019年6月の開始以降、現在までに全国507基が掲載。2018年7月の西日本豪雨で多くの犠牲者を出した地区では、100年以上前に起きた水害を記録し犠牲者を悼む石碑や供養塔があったものの、これらが伝える災害教訓が十分に活かされていなかったことから、国土地理院では「自然災害伝承碑」として地図記号を定め周知・普及に努めている。「女川いのちの石碑」は、東日本大震災直後に中学校に入った地元の生徒たちが中心となって「1000年先の命を守りたい」との想いから取り組んできたもので、今回、津波被災地に建つ15基が女川町より国土地理院に申請され地図上への公開となった。「女川いのちの石碑」は、東日本大震災による津波到達地点より高い場所に設置されており、「大きな地震が来たら、この石碑よりも上へ逃げて下さい」と教えている。
13 Mar 2020
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消費者庁は3月10日、被災地産食品の買い控え行動の実態など、風評被害に関する消費者意識調査の結果を発表した。東日本大震災・福島第一原子力発電所事故を受け2013年より継続的に実施しているもので、今回の調査は2020年1~2月に行われ、被災地域(岩手、宮城、福島、茨城)と大消費地(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫)に居住する20~60代の男女約5,000人から有効回答を得た。それによると、普段の買物をする際に食品の産地を「気にする」または「どちらかといえば気にする」と回答した人のうち、「放射性物質の含まれていない食品を買いたいから」という理由をあげた人の割合は13.6%と、これまでで最少となった。この他の理由としては、「産地によって品質(味)が異なるから」が27.8%、「産地によって鮮度が異なるから」が20.5%、「産地によって価格が異なるから」が19.7%となっている。「放射線による健康影響が確認できないほど小さな低線量のリスクをどう受け止めますか」との質問に対しては、「基準値以内であればリスクを受け入れられる」または「殊更気にしない」と回答した人の割合が53.2%で2016年2月の調査から増加傾向。食品中の放射性物質の検査に関しては、「検査が行われていることを知らない」と回答した人の割合が46.9%と、これまでで最多となり、「基準値を超える食品が確認された市町村では、他の同一品目の食品が出荷・流通されないようにしている」ことを知っていると回答した人の割合は37.6%と、これまでで最少となった。また、消費者庁は、同調査結果と合わせ、被災地産食品の購買行動や放射性物質に関する理解度などを分析するインターネット意識調査の結果も発表。2020年1月に全国の20~60代の男女を対象として実施された。福島県産の食品を購入している人に、米、野菜類、果実類、魚介類、牛肉の品目別に、複数回答を可とし理由を尋ねたところ、いずれも「おいしいから」、「安全性を理解しているから」、「福島県や福島の生産者を応援したいから」が多かった。一方で、福島県産の食品を購入していない人に同じく理由を尋ねたところ、いずれの品目についても、「日常生活の範囲で売られていないから」が30~40%台で最も多く、「放射性物質が不安だから」は10%台。性別・年代別で比較すると、「放射性物質が不安だから」をあげた割合は、いずれの品目でも40代女性が最も多かった。また、品目別では、福島県産の米を「購入している」が9.4%、「購入していない」が40.8%、「購入しているかわからない」が49.8%だった。「購入していない」と回答した人の割合は、60代女性で最も多く55.7%、次いで50代女性の51.1%、40代女性の48.7%。「購入しているかわからない」と回答した人の割合は、20代男性で最も多く62.1%、次いで20代女性の61.5%、30代男性の56.0%となっている。これらの調査結果を踏まえ、消費者庁では、引き続き食品中の放射性物質に関する情報発信やリスクコミュニケーションの取組を推進するとしている。
12 Mar 2020
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☆2月の主な動き☆【国内】▽1日 合同企業説明会「PAI原子力産業セミナー」が東京で開催(16日には大阪で開催)▽4日 東京電力の諮問機関「原子力改革監視委員会」が組織・ガバナンスの強化など「大きな進捗」と評価▽10日 エネ庁の福島第一処理水に関する委員会が報告書、「現実的な方法は海洋放出と水蒸気放出」▽12日 「原子力人材育成ネットワーク」が報告会、ジェンダーバランスに関する意見交換も▽13日 ATENAフォーラム開催、米NEIのコーズニック会長らを交えディスカッション▽15日 規制委・更田委員長他、鹿児島県を訪れ地元関係者らと意見交換▽18日 杉本福井県知事、エネルギーを活用した地域振興に向け「嶺南Eコースト計画」の年度内策定を表明▽19日 四国電力、伊方3号機の運転差止仮処分決定で広島高裁に異議申立て▽25日 グロッシーIAEA事務局長が来日し安倍首相への表敬、原子力委との懇談など(~28日)▽26日 規制委、東北電力女川2号機の新規制基準審査で原子炉設置変更許可発出【海外】▽3日 米GEH社の「BWRX-300」、チェコでの建設に向けた実行可能性調査で覚書▽5日 IAEAのグロッシー新事務局長、IAEA業務の再調整で抱負を表明▽6日 仏安全局、130万kW級原子炉8基で非常用発電機の不具合をINES「レベル2」に判定▽10日 米トランプ大統領の2021会計年度予算教書、ユッカマウンテンの建設審査経費含めず▽11日 IEA:2019年に世界のCO2排出量「横ばい」に、日本は原子力の再稼働で4%減▽12日 トルコで建設中のアックユ1号機向けに原子炉容器の最終溶接作業が完了 ▽13日 英国で中国製「華龍一号」設計の事前設計認証審査が最終段階へ▽14日 ウクライナ、国内でのSMR建設に向けホルテック社に続きニュースケール社とも覚書▽17日 UAEの規制当局、初の商業炉バラカ1号機に運転許可 発給 ▽18日 仏国で建設中のEPR、フラマンビル3号機で温態機能試験が完了▽19日 米TVA、クリンチリバーで建設するSMRの経済的実行可能性改善でオークリッジ研と協力▽19日 米国で建設中のボーグル3号機、「挑戦的作業計画」で2021年5月に完成する可能性も▽22日 仏国最古のフェッセンハイム1号機が予定通り永久閉鎖▽24日 フィンランド国立技術研究センターが地域暖房用SMRの開発を開始▽26日 カナダ原研、USNC社製SMRの燃料製造研究等で協力協定締結▽26日 ポーランドの原子力導入計画、米国との協力を確認▽28日 米トランプ大統領、原子力規制委員にC.ハンソン氏 指名へ☆過去の運転実績
11 Mar 2020
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東日本大震災・福島第一原子力発電所事故から9年を迎え、東京電力の小早川智明社長は3月11日、社員に訓示を行った。発災時刻の14時46分に合わせ1分間の黙とうを行った後、小早川社長はまず、「震災で亡くなった方々のご冥福を祈るとともに、ご遺族の皆様に深い追悼の意を表したい。今なお福島の皆様、広く社会の皆様に多大なご負担・ご心配をかけていることに心からお詫び申し上げる」と述べた。その上で、先般の双葉町、大熊町、富岡町の一部地域での避難指示解除、14日には常磐線の全線開通、26日には東京オリンピック聖火リレーの「Jヴィレッジ」スタートが予定されるなど、福島の復興に向けた動きをあげ、「今後は『復興と廃炉の両立』が大きなテーマ」、「地域の皆様に信頼してもらえるよう取り組んでいく」と強調。福島第一原子力発電所の廃炉に関わる産業創出などを通じた復興へのさらなる貢献に意欲を示した。また、福島第一原子力発電所事故の反省に立ち、「原点は福島。安全に終わりはない」と社員らに訓示。「福島への思いを新たに日々の業務にしっかりと取り組み、一丸となって福島への責任を果たしていく」と強調した。同日、原子力規制委員会では、更田豊志委員長が原子力規制庁職員に訓示を行った。「多くの方々の人生を変え、いまだに多くの方々が不自由な生活を余儀なくされている」と、福島第一原子力発電所事故の及ぼした影響を強調し、職場で事故について考え話し合う時間を持って欲しいと述べた。また、業務への取組姿勢に関して、「人間には現状維持を望む傾向がある」と危惧し、4月からの新検査制度導入も踏まえ、既存の文書や前例に過剰に依存することなく、「そもそもどうあるべきか」に立ち返って考えるよう職員らに求めた。
11 Mar 2020
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