先の内閣改造で初入閣した萩生田光一文部科学大臣は9月25日、記者団とのインタビューに応じ抱負を語った(=写真)。科学技術政策の関連で、原子力分野の人材育成について問われたのに対し、萩生田大臣はまず、エネルギー基本計画に記されている原子力の位置付け「安全性の確保を大前提に、長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」を改めて述べた。その上で、「事故を起こした国だからこそ、より安全性の高い原子力利用を考えることができると思う。そのためにも原子力を学ぶ人たちが失われぬよう、教育現場とも連携していきたい」と、原子力人材確保への取組姿勢を示した。また、大規模な国際協力プロジェクトの関連で、線形加速器「国際リニアコライダー」(ILC)の日本誘致について考えを問われると、計画自体の必要性は認めながらも、「実際に建設するとなると、あまりに膨大な予算が必要。一国で抱えるには問題があるのでは」として、適切な資金配分のなされるパートナー国の模索など、引き続き関係機関と検討していく考えを述べた。さらに、イノベーション創出については、「研究成果を社会に還元する仕組み作りに力を入れていく。埋もれてしまっている研究も発掘してみれば面白いと思う。民間からも協力を得て是非活路を見出していきたい」と、産学官連携で取り組む考えを強調。萩生田大臣は、宇宙科学分野で開発されたGPSがナビゲーション・システムなどに応用されていることや、ロケット製作で開発された断熱材が住宅に、無重力環境に対応するトイレが介護問題にも資する可能性に言及したほか、「日本のものづくり産業の礎」として、高専による実践的な技術者教育の重要性も強調した。
26 Sep 2019
781
日本原子力研究開発機構は9月20日、ポーランド国立原子力研究センター(NBBJ)と、「高温ガス炉技術分野における研究開発協力のための実施取決め」に署名した。 両者は2017年、日本・ポーランド外相間で合意した戦略的パートナーシップの行動計画に基づき、「高温ガス炉技術に関する協力のための覚書」に署名しており、これまでも高温ガス炉分野において、技術会合や人材育成などの協力を進めてきた。このほど署名された実施取決めにより、高温ガス炉の高度化シミュレーションのための設計研究、燃料・材料研究、原子力熱利用の安全研究など、さらに協力を具体化させていく。 また、原子力機構は、高温工学試験研究炉「HTTR」(現在、新規制基準適合性審査のため停止中)の建設・運転を通じて培った国産高温ガス炉技術の高度化、国際標準化を図り、ポーランドとの技術協力でさらなる国際展開の強化を目指す。 本件に関し記者団への説明に当たった同機構高速炉・新型炉研究開発部門次長の西原哲夫氏は、今回の実施取決めによる協力では、データの共有など、ソフト面が主となるとしており、今後に向けて「ものづくりの段階でメーカーの参画にもつなげていければ」と期待を寄せている。 電力供給の8割以上を石炭に依存するポーランドでは現在、その依存度を下げることが喫緊の課題となっており、石炭火力リプレースの候補とされる高温ガス炉導入の意義として、天然ガス輸入依存からの脱却、CO2排出の削減、競争可能なコストでの産業への熱供給などがあげられている。 高温ガス炉導入に関わる諮問委員会の報告書によると、現在設計段階にある研究炉(熱出力1万kW)に続き、商用炉(同16.5万kW)の予備設計も開始されつつあり、2026~31年の初号機建設を目指している。
24 Sep 2019
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日本学術会議の臨床医学委員会は9月19日、CT検査による画像情報の活用に向けた提言 を発表した。全身の様々な部位を短時間で画像化できる一方で、単純X線撮影に比べ高い放射線被ばくを伴うことや、近年の病変見落としなどの問題から、本提言ではCT検査を中心とした画像診断情報利用の現状と問題点を整理。その上で、(1)画像検査の適正利用の推進および画像診断体制の改善、(2)検査依頼医による画像診断報告書確認の医療情報システムを用いた支援、(3)人的システムによる画像診断情報伝達の補完、(4)画像検査に関わる教育の充実――に関し、今後望まれる取組についてまとめている。提言によると、世界的に見て日本では、多くのCT装置が設置されており、検査の件数も年間3,000万件程度と、世界最多水準に上っているという。さらに、撮影の高速化により1回のCT検査による画像数も増加していることから、「画像上で異常が抽出されても、これを医師が認識して適切に診断し、治療方針に生かされなければ意味がなく、放射線被ばくによる不利益だけが残る」、「画像情報量が増大する一方で、画像診断を担当する放射線科医の数が不足」などと指摘。これに関し、日本を含む8か国のCTとMRIによる検査について調査した論文を紹介し、日本では放射線診断医1人当たりの検査数が他国のおよそ3~4倍だったと述べている。また、提言では、全身の様々な臓器を画像化できることから、「検査の目的外の重大な異常が偶発的に発見されることも稀ではない」と、CT検査の有用性を評価する一方、検査を依頼する医師に関して「専門外の異常の診断に弱点がある」などと、誤診や見落としの危険性を指摘。例えば、腎臓がん手術後のケアのため大学病院で半年ごとにCT検査を受けていた40代男性が、放射線科に画像診断が委ねられ、主治医によるチェックが不十分だったことなどから、3年間にわたり肺がんが見落とされていたという事例もある。こうした事例から、放射線診断医が主治医に診断結果を伝える画像診断報告書の重要性について述べ、「放射線診断医とのコミュニケーションによりCTからの情報を最大限に生かす」よう求めている。さらに、画像診断の充実化に向け、電子カルテなどの医療情報システムの活用については関係学会による標準的なモデルの作成を、医療機関に対しては医師間の情報共有の意識高揚を、大学医学部に対しては放射線診断に関わる臨床研修の拡充などを提言。近年、健康寿命への関心が高まり、放射線科を舞台としたドラマが人気を博すなど、画像診断に注目が集まりつつある。学術会議の臨床医学委員会では、2017年にも「CT検査による医療被ばくの低減に関する提言」を発表している。
20 Sep 2019
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日本原子力研究開発機構は9月18日、原子力規制委員会に、材料試験炉「JMTR」(熱出力5万kW、=写真)の廃止措置計画の認可申請を行った。「JMTR」は、2006年に運転を停止した後、炉心周辺設備更新のため2007~10年度にかけて改修が行われ、福島第一原子力発電所事故後は、再稼働を目指し2015年3月に新規制基準の適合性審査に入ったが、耐震補強などに要する費用・年数から、2017年4月に原子力機構が公表した「施設中長期計画」で廃止施設に位置付けられた。廃止措置の全体工程は、「解体準備」、「原子炉周辺設備の解体撤去」、「原子炉本体設備の解体撤去」、「管理区域解除」の4段階からなっており、2039年度に完了する予定。原子力機構の原子炉施設に関しては、中性子利用に供する研究炉「JRR-3」、原子炉安全性研究炉「NSRR」、定常臨界実験装置「STAYCY」が新規制基準の適合性審査をクリア(原子炉設置変更許可)し、「NSRR」は2018年6月に運転を再開。「JRR-3」は2020年度中の運転再開を目指している。この他、高温工学試験研究炉「HTTR」、高速実験炉「常陽」は現在、同審査中となっている。また、既に廃止措置が進められている高速増殖原型炉「もんじゅ」では、9月17日に炉心からの燃料体取り出し作業が始まった。
19 Sep 2019
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内閣府(原子力防災)は9月18日、2019年度の原子力総合防災訓練の実施計画について原子力規制委員会の定例会合で説明した。原子力災害対策特別措置法に基づき毎年行われるもので、今回は中国電力島根原子力発電所を対象に11月上旬に実施。同発電所で原子力総合防災訓練が行われるのは、根拠法施行後初の実施となった2000年以来、19年ぶりとなる。 今回想定する事象は、「島根2号機(BWR、82万kW)において、島根県東部を震源とした地震による外部電源喪失後、非常用炉心冷却装置による原子炉への注水を実施するも、同装置にも設備故障等が発生し、原子炉へのすべての注水が不能となり、全面緊急事態となる」というもの。規制委員会が定める原子力災害対策指針で「緊急時防護措置を準備する区域」(UPZ)とされる発電所から30km圏内は、島根・鳥取の2県にまたがっており、島根県庁所在地の松江市全域が含まれ人口の多いエリアとなっている。 訓練実施計画の説明に当たった内閣府担当者は、中央と地方自治体の連絡調整や住民防護の手順に関わる実効性を確認し、避難計画の検証・改善などにつながるよう、「できるだけリアルな訓練としたい」と述べた。 現在、島根2号機は新規制基準適合性の審査が行われており停止している。
18 Sep 2019
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芝浦工業大学はこのほど、原子力発電所で水素爆発が発生した際に建屋崩壊や大気中への放射性物質拡散を防止できる減災システムを開発(=右図、芝浦工大発表資料より引用)。エアバッグを用いて水素や放射性物質を閉じ込めるもので、電力が不要なため電源喪失時にも機能する。同学燃焼工学研究室の斎藤寛泰准教授と、いずれも水素爆発に関わる研究実績を持つ吉川典彦名古屋大学名誉教授、労働安全衛生総合研究所の大塚輝人上席研究員らによる共同研究成果で、同研究グループは9月9日、オランダ・エルゼビア社が発行する産業安全に関する学術誌への論文掲載と、その中でダウンロード件数ランキング「Most downloaded articles」に選出されたことを公表した。本システムは、メッシュの細かい金網10~20枚を重ね合わせた消炎装置と、水素などのガスを逃がすエアバッグから構成されており、建屋の外壁などに開口部を設けて複数個取り付けておき、爆発が起きた際、熱膨張で水素を含んだ可燃性混合ガスや放射性物質をエアバッグへ押し込み、迫り来る炎を消炎装置で遮断するもの。エアバッグに押し込まれた水素ガスは、燃焼で生じた水蒸気の凝縮によって減圧する建屋内に徐々に引き戻されていく。発表によると、2m立方で耐圧約300キロパスカルの鉄筋コンクリート製模擬建屋に本システムを取り付けて実験(映像は こちら)を行ったところ、水素・空気混合気(体積濃度28%)の爆発の最大圧力は28キロパスカルとなり、装置を付けなかった場合の700~800キロパスカルと比べておよそ96%抑えられていた。密閉空間の安全対策として、本システムは、原子炉建屋以外にも、可燃物を取り扱う化学プラントや燃料パイプライン、粉塵爆発への備えが必要な穀物サイロなどにも適用可能としており、今後さらに研究を進めていく考えだ。
13 Sep 2019
1011
第4次安倍内閣の改造が9月11日に行われた。経済産業大臣には、2012年末の政権交代時に同副大臣を務めた経験のある菅原一秀衆議院議員(=写真)が就任。同日晩初登庁した菅原大臣は記者会見に臨み、重要課題としてまず、福島第一原子力発電所の事故対応と福島復興の完遂に取り組むことをあげた。さらに、今回改造内閣の基本方針の中に引き続き掲げられた「戦後最大のGDP600兆円」の実現に向け、生産性や人づくりに革命を起こし、国内産業の再興、イノベーションの基盤強化、ベンチャー企業の育成、地域雇用の創生などに取り組む意欲を示した。エネルギー政策については、「現在および後世の国民生活に対し責任ある政策を展開していく」と強調した上で、安全性の確認された原子力発電所の再稼働、省エネルギーの徹底、再生可能エネルギー導入の推進、火力発電の効率化など、バランスよく活用し、2030年のエネルギーミックス実現を目指すとしている。また、台風15号の影響により千葉県を中心に多くの家屋で停電が続いていることから、「とりわけ人の命を預かる病院などでは喫緊の問題。一刻も早い復旧に全力を注ぐ」と繰り返し強調した。環境大臣兼内閣府原子力防災担当大臣には小泉進次郎衆議院議員が就任。「地球温暖化問題の解決はイノベーションなくして達成しえない」、「福島第一原子力発電所事故の教訓を決して忘れてはならない」として、脱炭素化社会の構築に向けたビジネスチャンスの創出や、関係自治体と一体となった原子力防災体制の充実・強化に取り組む姿勢を示した。復興大臣には田中和德衆議院議員が就任。2020年度末の「復興期間」終了まで1年半を切り、「現場主義の徹底」のもと、地震・津波被災地復興の総仕上げ、福島の本格的な復興に向けた取組を加速化する考えを強調。オリンピック担当大臣には橋本聖子参議院議員が就任。元オリンピアンとしての経験も活かしながら、「被災地が復興を成し遂げていく姿を世界に発信していく」として、復興オリンピック・パラリンピックの実現に全力をあげるとした。文部科学大臣には萩生田光一衆議院議員が、内閣府科学技術政策担当大臣には竹本直一衆議院議員が就任。竹本大臣はイノベーションの創出に向け基礎研究を拡充していく必要性などを述べた。
12 Sep 2019
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原子力損害賠償・廃炉等支援機構は9月9日、「福島第一原子力発電所の廃炉のための技術戦略プラン」を発表した。福島第一原子力発電所の廃炉に向けた中長期ロードマップに技術的根拠を与えるものとして、同機構が2015年以降毎年取りまとめているもの。今回の技術戦略プランでは、中長期ロードマップで2019年度内を目指している初号機の燃料デブリ取り出し方法の確定に関して、現場の線量やアクセスルート、原子炉格納容器内部調査の進展状況他、使用済み燃料プール内の燃料取り出しなど、サイト全体の状況を踏まえ、初号機は「2号機が適切」と評価。2号機の原子炉格納容器内部調査では堆積物を動かせることが確認されており、2019年度下期にも少量サンプリングを開始すべくアーム型アクセス装置の開発が具体化している。2号機から着手することで、「迅速に1~3号機の燃料デブリ全体のリスクを低減できる」としており、収納・移送・保管までの一連の作業を安全かつ確実に継続し、その後の展開に向けて必要な情報・経験を迅速に得ていくものと提案。取り出した燃料デブリは、福島第一原子力発電所内の保管設備に移送し乾式にて一時保管するとしている。
10 Sep 2019
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福島県の内堀雅雄知事は9月9日の記者会見で、10月6~12日にかけて、ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州(NRW州)とハンブルク州、スペインのバスク州を訪問すると発表した。NRW州はドイツを代表する電力会社であるE. ON社とRWE社が立地しており、福島県と同州とはこれまでも再生可能エネルギー分野で覚書を締結し連携関係を築いてきた。今回の訪問で知事は、医療分野における展示会の相互開催も含め、これまでの経済交流をさらに深めていくよう覚書を更新することとしており、県内企業の海外進出促進に向け「しっかり後押ししていきたい」と、意欲を見せている。また、各訪問先では、各州トップとの会談の他、セミナーやレセプションを通じ、福島県の復興に向けた取組や食の魅力などを積極的に発信する考えだ。内堀知事は2019年に入って、1月の香港訪問、7月の「サマーダボス」(中国・大連市)出席など、県産品・観光のPRに向けた海外トップセールスを積極的に行っており、今回の欧州訪問に際しても、「世界の方々に、『福島の時計の針は止まっていない』、一方で『震災から8年余り経っても難しい課題を抱えている』という、『光と影』の両面を伝えることが重要」と強調した。
09 Sep 2019
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台湾の原子力学会や学生からエネルギー事情を巡る近況を聞き、電力供給や環境保全に果たす原子力の役割と福島復興について考えるシンポジウムが9月5日、東京工業大学大岡山キャンパスで行われた。同学および福島イノベーション・コースト構想推進機構が主催。台湾では2017年8月に全土の約半数世帯に及ぶ大停電が発生した。また、日本でも2018年9月、新規制基準対応に伴い北海道電力の泊発電所が全号機停止している中、北海道胆振東部大地震により道内全域が大停電に見舞われた。台湾では現在脱原子力政策が進められているが、今回のシンポジウム開催に際し、日本原子力学会の岡嶋成晃会長は、メッセージの中で、「日台ともにエネルギー源における原子力の位置付けについて考えることが重要」と述べ、また、福島を含め5県の食品に対し輸入規制が継続している台湾の現状に関し、「科学的根拠に基づき『真の福島の姿』を知ってもらう必要がある」としている。シンポジウムの中で、台湾原子力学会会長の李敏氏(清華大学工程與系統科學系特聘教授)は、台湾の電力事情を説明し、原子力発電の現状について「発電電力量に占める割合が2017年に初めて1割を切った」とした上で、その要因は技術的問題ではないことを強調。政権交替に左右されてきた台湾の原子力発電に関し、「建設が中断となっている龍門(第4)発電所はその象徴」とも述べた。また、2017年の大停電を振り返り、「発生直前の電力予備率は3.17%と、非常に厳しい状況にあった」としている。さらに、李氏は、台湾における大気汚染の深刻化にも触れた上で、「Go Green With Nuclear」と、環境保全に貢献する原子力の重要性を訴えかけた。李氏の引率により9月2~4日に福島を訪れた台湾の学生も登壇。現在京都大学で医学を学ぶ廖彦朋さんは、福島第一原子力発電所沖合10㎞で捕れたヒラメの検査を見学し、放射性セシウムが検出されなかったことから、「人々は福島の食品を誤解している。真実を伝えることが重要」と強調した。また、台湾では2018年11月の公民投票で電気事業法の「脱原子力」の条文削除が決定したが、廖さんは投票実施に際し、街頭スピーチや署名活動で原子力の必要性を訴えかけ、こうした活動を通じ「コミュニケーションの重要性を学んだ」としている。 シンポジウムでは、この他、日本科学技術ジャーナリスト会議理事の小出重幸氏、東京工業大学特任教授の奈良林直氏らが講演を行った。小出氏は、海外での取材経験も踏まえ、福島第一原子力発電所事故で得られたコミュニケーションに関わる教訓や、各国共通の課題として「National Security of Energy」を提唱。奈良林氏は、地球温暖化の影響と再生可能エネルギーの限界について考えを述べるなどした。
06 Sep 2019
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原子力規制委員会は9月4日の定例会合で、福島第一原子力発電所事故に関する調査・分析を再開する方向性を示した。2020年内の中間報告書(第2次)取りまとめを目指す。同委では、福島第一原子力発電所事故に関し、東京電力による廃炉に向けた取組を監視・評価する検討会を概ね月1回の頻度で開催しているが、事故の調査・分析を行う検討会は2014年の中間報告書取りまとめ以降開かれていない。中間報告書では、国会事故調報告書で未解明問題とされた7項目の個別課題に関する検討結果を取りまとめているが、高線量などのため現地調査に着手できない事項もあったことから、廃炉作業の進捗や新たに解明された事実も踏まえ、引き続き長期的な検討が必要であるとしている。4日の規制委員会会合では、今後の事故調査・分析に向けて、「現場の環境改善や廃炉作業の進捗により、原子炉建屋内部などへのアクセス性が向上し、必要な試料の採取や施設の状態確認が可能となってきた」などと、事故分析を再開できる段階に至ったとの見方が示された。その上で、事故分析の再開に際し、施設の状態や機器内付着物など、必要な現場状況が廃炉作業の進捗に伴い変貌・喪失する可能性もあることから、資源エネルギー庁や東京電力他、関係機関を交えた公開の連絡調整会議を設け、作業計画に係る情報共有やスケジュール調整を図りながら進めていくとしている。今後の事故分析の対象範囲に関して、8月下旬に原子力規制庁職員が福島第一2号機の原子炉建屋内の現地調査を行っている。会合終了後の記者会見で、更田豊志委員長は、同建屋内の「耐圧強化ベントライン/ラプチャーディスク」と呼ばれる部位の作動状況に関し、1992年の通商産業省(当時)要請「アクシデントマネジメント」を受けた事業者の自主的取組として整備されたことを振り返り、「着実に施工がなされていたのか、きちんと検証したい」と、予断を持たずに調査に臨む考えを強調した。
05 Sep 2019
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九州電力は9月3日、玄海原子力発電所2号機の廃止措置計画について原子力規制委員会に認可申請を行うとともに、安全協定に基づき、廃止措置に係る事前了解願いを佐賀県と玄海町に提出した。また、合わせて、既に廃止措置が進められている1号機について、2号機と同時並行で行う利点を活かすよう工程を見直した同計画の変更認可申請を同委に提出。これにより、廃止措置の完了時期は両機とも2054年度の予定。玄海2号機の廃止措置計画は、「解体工事準備」、「原子炉周辺設備等解体撤去」、「原子炉等解体撤去」、「建屋等解体撤去」の4段階に区分され、使用済み燃料は、2026~40年度までを見込む「原子炉周辺設備等解体撤去」で2号機施設外への搬出を完了し、廃止措置終了前までに再処理事業者へ譲渡する。九州電力では、1,2号機の並行作業により、「原子炉周辺設備等解体撤去」で利用可能な作業場所が半分程度となるため、その実施期間に倍程度を要するものと想定。1号機については、同期間以降、各工程区分の開始・終了時期が2号機とそろうこととなり、廃止措置完了時期が11年先送りとなった。現在、国内の原子力発電所で廃止措置中または廃止決定となっているプラントは24基(福島第一1~6号機を含む)に上っており、こうした現状から、日本原子力発電は3日の原子力委員会会合で、廃止措置の現状と課題について報告した。同社廃止措置プロジェクト推進室長の山内豊明氏は、安全かつ効率的な廃止措置に必要な要素として、(1)廃止措置のカルチャーとマインド、(2)解体廃棄物の搬出先確保、(3)廃止措置資金と会計制度、(4)廃止措置に相応しい規制――を提示。さらに、米国の廃止措置専業会社エナジーソリューションズ社との協力で実施する「EVMS」(Earned Value Management System: 収益管理システム)トレーニングを紹介し、廃止措置におけるプロジェクトマネジメントの重要性を強調した。また、中部電力も同日、規制委員会との意見交換の中で、浜岡原子力発電所1, 2号機廃止措置の取組について説明し、両機合わせて発生する解体撤去物約45万トンのうち、約8万トン(17%)はクリアランス可能との試算を示すなどしている。
04 Sep 2019
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2020年度政府予算の概算要求が8月末までに各省庁より出そろった。経済産業省では、エネルギー対策特別会計として前年度15.7%増となる8,362億円を要求。福島復興関連では1,141億円を計上しており、引き続き福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策の安全かつ着実な実施を図る。また、原子力技術開発の関連では、「原子力産業基盤強化事業」として新規に15億円、2019年度に開始した「社会的要請に応える革新的な原子力技術開発支援事業」で前年度のおよそ倍額となる15億円がそれぞれ計上された。エネルギー基本計画で、原子力に関して「人材・技術・産業基盤の強化に直ちに着手」とされたのを受け、「原子力産業基盤強化事業」では、(1)世界トップクラスの優れた技術を有するサプライヤーの支援、(2)技術開発・再稼働・廃炉などの現場を担う人材の育成――を実施し、原子力産業全体の強化を図る。文部科学省では、原子力関連として前年度31.2%増となる1,937億円を要求。原子力施設の新規制基準対応で前年度の2.7倍となる112億円、施設の安全確保対策で同7倍の210億円が計上された。その中で、日本原子力研究開発機構の研究炉「JRR-3」の運転再開に関する要求額は同8倍の53億円となっている。原子力規制委員会では前年度20%増となる655億円を要求。高経年化技術評価や運転期間延長に関わる審査などに必要な知見を整備し評価手法を検証すべく、「実機材料等を活用した経年劣化評価・検証事業」として新規に14億円が計上された。発電所の長期運転に伴う経年劣化事象の中で、特に、原子炉圧力容器、ケーブルなどの絶縁材料、炉内構造物を対象に、既存の評価手法の妥当性を検証するとともに、廃止措置中のプラントから実機材料を採取して試験・分析を行い、機器の健全性に関する知見を蓄積していく。復興庁では原子力災害関連で前年度の1,4倍となる9,075億円、そのうち中間貯蔵施設の整備として同2.7倍となる5,612億円が計上されている。
03 Sep 2019
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原子力委員会は9月2日、「平成30年度版原子力白書」を決定した。3日に閣議配布となる運び。今回の白書では「原子力施設の廃止措置とマネジメント」を特集。国内において、原子力発電所24基(福島第一1~6号機を含む)が廃止措置中または廃止決定となっているほか、日本原子力研究開発機構でも約半数の研究開発施設の廃止措置を進める計画を発表するなど、廃止措置が本格化しつつある現状をとらえ、海外の先行事例を紹介し参考となる教訓を抽出した。白書では、「核燃料や放射性物質を取り除いて、そのリスクと管理負担を低減する」と、原子力利用における廃止措置の位置付けを改めて述べ、「培ってきた知識・技術・人材を活用しつつ、原子力施設の廃止措置に対応する新しいステージに進んでいくことが必要」と、次段階のスタートとしての重要性を強調。国内で廃止措置事業の実施を通じ技術やシステムを蓄積していくことは、「将来的な世界での原子力施設の廃止措置を考えた際に、わが国の大きな資産となる」などと展望した。今回白書の編集に当たった内閣府の担当者は、発生する放射性廃棄物の処理も含め、原子力施設の廃止措置は数世代にわたる長期事業となりうることから、「特に若い世代にも関心を持ってもらいたい」と話している。諸外国の廃止措置としては、米国、ドイツ、フランス、英国の事例を紹介し、参考とすべき教訓として、「全体的な効率的作業の計画」、「関係者、特に規制機関との対話」、「放射性廃棄物の管理と技術開発」、「サイト周辺住民等、関係者との信頼構築」をあげた。例えば、ドイツのシュターデ原子力発電所(2003年閉鎖)の原子炉容器解体に用いられた水中切断・解体工法に関して、他の複数プラントにも適用される見通しをあげ、「技術の横展開により効率的な廃止措置作業を実施できる」と評価。同発電所の非原子力部分の解体も含めた廃止措置完了は2023年の見込み。さらに、ドイツでは、クリアランス制度を整備し放射性廃棄物の発生量を可能な限り抑制する取組を進めており、「Q&Aウェブサイト」を通じた理解促進に努めていることもあげられた。この他、コスト効率・工程マネジメントについて、米国ノースター社を例に廃止措置専業事業者による一元管理・ノウハウの蓄積が有効であることを示し、信頼構築に関しては、フランスの「CLI」(地域情報委員会)によるコミュニケーション活動をあげ、「長期にわたって地域経済に影響を与える廃止措置事業に関して、地域住民や地元産業への配慮も重要」などと述べている。
02 Sep 2019
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