フィンランドのフェンノボイマ社は5月2日、中西部のピュハヨキで進めていたハンヒキビ原子力発電所1号機(120万kW級ロシア型PWR)の建設計画で、ロシアのRAOSプロジェクト社と結んでいたEPC(設計・調達・建設)契約を解除すると発表した。理由として同社は、ロシアの原子力総合企業ロスアトム社傘下の総合建設請負業者であるRAOSプロジェクト社の作業が非常に遅く、プロジェクトの実施能力が欠如していると指摘。ここ数年は作業の遅れが拡大してきており、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻はプロジェクトのリスクをさらに高めている。RAOSプロジェクト社には、このようなリスクの影響を緩和する能力はないとフェンノボイマ社は強調している。今回の決定にともない、同社とRAOSプロジェクト社の協力関係は直ちに打ち切られ、ハンヒキビ1号機について進められてきた設計作業や許認可の取得手続き、およびサイトでの作業もすべて終了する。ハンヒキビ1号機の建設計画については2013年2月、大型炉設計を採用した場合の直接交渉権が東芝に与えられている。しかし、ロスアトム社の国際事業部門であるルスアトム・オーバーシーズ社が、フィンランドに設立する子会社を通じてフェンノボイマ社株の34%引き受けを約束したことから、フェンノボイマ社は2013年12月に最終的にルスアトム・オーバーシーズ社と原子炉供給契約を締結。2015年6月には発電所の建設許可申請書を雇用経済省に提出しており、2016年1月にピュハヨキのサイトで基礎掘削を実施した。また、建設許可の取得に先立ち2020年6月からは管理棟の建設工事も始まっていたが、今年の3月末、電力を多く消費する企業約60社で構成されるボイマ・オサケイティエ・グループを通じて、フェンノボイマ社に一部出資しているヘルシンキ郡のバンター市はプロジェクトからの撤退を表明。同市は「ロシアの軍事侵攻によりプロジェクトの実施は不透明になった」と指摘しており、「ロシアと長い国境を接するフィンランドの安全保障、フィンランド政府の声明や政府と欧州連合によるロシアへの制裁表明などを照らし合わせると、建設許可を取得するのはもはや不可能だ」と述べた。このほか、フィンランド南西部のトゥルク市も同様に撤退を検討中であると伝えられていた。今回の決定について、フェンノボイマ社のJ.シュペヒトCEOは、「当社の従業員や建設サイトのピュハヨキ地域、およびサプライチェーン企業への影響が大きいので、その対応でこれらの代表者らと緊密に連携していくほか、建設サイトの温存にも注力していく」と述べた。また、同社取締役会のE.ハルマラ会長は、「EPC契約の解除を決めるのは簡単なことではなかった」と説明。「複雑な要素が多数関係する大型プロジェクトということで徹底的に検討した末の判断であり、マイナスの影響を全面的に受け入れて、その緩和に全力を尽くすのみだ」としている。一方、EPC契約を打ち切られたロスアトム社は同日、「極めて残念な決定であり、その理由も全く理解しがたい」とコメント。その上で「フェンノボイマ社の執行部が、同社株を34%も保有する当社のプロジェクト関係者と詳細な協議も行わずに打ち切りを決定したという事実を明確にしておきたい」と述べた。また、「建設プロジェクトは順調に進展していたし、当社との提携関係も良好だった」と指摘。ロスアトム社によると、RAOSプロジェクト社は建設許可の取得に必要な文書の準備など、すべての義務事項を細心の注意を払って履行。そのお蔭でフェンノボイマ社は、すでに98%以上の重要文書をフィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)に提出済みであり、5月までの2か月間ですべての文書の提出を終える予定だった。ロスアトム社としては、国際協力活動のなかで義務事項を無条件に履行するという原則を厳格に全うしつつ、適切な法令や契約に従って自らの権益を守りたいとしている。(参照資料:フェンノボイマ社、ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 May 2022
2640
フィンランド南西部のオルキルオト原子力発電所で、3号機(OL3)(出力172万kWの欧州加圧水型炉=EPR)を建設中のティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は4月29日、同炉で7月末に予定されていた営業運転の開始スケジュールが9月に延期になったと発表した。これは、建設工事を請け負っている仏アレバ社および独シーメンス社の企業連合からTVOに伝えられたもので、理由はOL3の冷却系で3週間程度の機器点検・修理が必要になったためと説明している。2005年に着工したOL3は、約17年間に及んだ建設工事を経て2021年12月に臨界条件を達成し、今年3月には欧州初のフラマトム社製EPRとして送電を開始した。その際、約4か月の試運転期間に出力を定格まで徐々に上げていくとしていたが、試運転段階のこれまでの経験に基づき、さらなる試験と分析に必要な時間を追加で確保したとしている。TVOの発表によると、OL3では試運転プログラムに沿って4月26日に計画停止する際、核分裂の連鎖反応を制御しているホウ素の注入ポンプが不意に作動した。緊急停止信号の誤作動によるものと見られているが、同炉は現在安全な状態にあるほか周辺住民や環境への影響もなく、TVOはこの現象の発生原因を詳しく調査中。自動信号システムのエラーを修理することになるが、営業運転開始スケジュールの延期とは無関係だと強調している。OL3は世界で初めてEPR設計を採用して着工した原子炉で、運転の開始は当初、2009年に予定されていた。しかし、技術的な課題が次々と浮上したためこのスケジュールに大幅な遅れが生じ、コストもターンキー契約による固定価格の約30億ユーロ(約4,100億円)が倍以上に拡大した。2007年にはフランスで、同じくEPRを採用したフラマンビル原子力発電所3号機(FL3)(165万kW)が着工されたが、FL3でもOL3と同様、様々なトラブルにより建設工事が遅延。FL3では現在、2023年の第2四半期に燃料の初装荷が予定されている。一方、中国・広東省で2009年11月と2010年4月に着工した台山原子力発電所1、2号機(各175万kW)では、これらの先行計画における作業経験が生かされ、世界初のEPRとしてそれぞれ2018年12月と2019年9月に営業運転を開始した。また、英国・南西部サマセット州では、同じくEPRを採用したヒンクリーポイントC原子力発電所1、2号機(各172万kWのEPR)が、それぞれ2018年12月と2019年12月から建設中。同国ではさらに南東部のサフォーク州でも、サイズウェルC原子力発電所として160万~170万kWのEPRを2基建設する計画について協議が行われている。(参照資料:TVOの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 May 2022
1972
中国の国務院は李克強首相が議長を務める4月20日の常務委員会で、浙江省の三門原子力発電所と山東省の海陽原子力発電所、および広東省で計画されている陸豊原子力発電所で、新たに大型炉を合計6基建設する計画を承認した。常務委員会は議論の中で、エネルギーは社会経済的な発展を支える基盤であると指摘。その発展に必要な条件が十分整った中で、エネルギー開発プロジェクトを先々まで計画・準備し、前に進めることが重要だとしている。三門と海陽の両サイトでは2018年から2019年にかけて、ウェスチングハウス(WH)社製の120万kW級AP1000が2基ずつ営業運転を開始。WH社は4月26日付けの発表の中で、「当社製AP1000の建設が中国で新たに4基決まったことを歓迎する」とコメントした。これにより、世界のAP1000は米国で建設中のものを含め合計10基になるとした上で、「現在中国で稼働するAP1000は最も進んだ実証済みの技術を採用しており、稼働率その他の性能指標で記録的な高実績を蓄積。米国と中国は、安全でクリーンかつ信頼性の高いベースロード用電源であるAP1000技術の実証で、それぞれがリーダー的役割を果たしている」と述べた。同社はまた、「既存のAP1000のこのように素晴らしい実績を最大限に活用することにより、新しい4基の建設プロジェクトがコストと工期の両面で魅力的なものになることを期待する」と表明。今後建設されるAP1000の建設コストと工期については、マサチューセッツ工科大学が近年の報告書で、どちらも圧縮可能と結論付けている点に言及した。一方、中国広核集団有限公司(CGN)が建設を計画中の陸豊原子力発電所に関しては、深圳の証券取引所が4月21日付の公告で「国務院が陸豊5、6号機の建設を承認した」と発表している。同発電所では今のところ、1~4号機は建設されていないが、公告は5、6号機について「120万kW級の『華龍一号』設計を採用する」と明記。国家核安全局(NNSA)が建設許可を発給し次第、着工が可能だとしている。今回の発表の中で国務院は、「安全性の確保と厳しい監督管理を前提に、適切なペースで原子力発電開発を進めていく方針であり、長年にわたる準備活動と包括的な評価結果に基づいて今回、国家計画で特定されていた3地点での新規建設を許可した」と説明。李克強首相は「原子力発電では絶対的な安全確保を保証しなければならず、それには効果的な規制が必要だ」と述べた。なお、国務院の3月24日の発表によると、国家発展改革委員会の能源局が同月22日、第14次5か年計画(2021年~2025年)に基づく近代的なエネルギーシステムの計画について発表した。その中で、中国は2025年までに非化石燃料によるエネルギー消費量を約20%まで上げていくほか、発電量については約39%にすると明記。原子力に関しては、安全性の確保に留意しつつ沿岸部の建設計画を着実に進めていき、現在約5,000万kWの原子力設備容量は2025年までに7,000万kWに達する見通しを示している。(参照資料:中国国務院①、②とWH社、および深圳証券取引所(中国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Apr 2022
3822
韓国の斗山エナビリティ社(=Doosan Enerbility、今年3月に「斗山重工業」から社名変更)は4月25日、米ニュースケール・パワー社が開発した小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の最初の発電所を建設するため、主要機器の製造を本格的に開始する契約を同社と締結した。早ければ今年中にもNPMの原子炉圧力容器の鍛造材生産を始め、2023年の後半から本格的な機器製造を開始する。出力7.7万kWのモジュールを6基備えたNPM発電所「VOYGR-6」は、ユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)が米アイダホ国立研究所の敷地内で建設を計画中。最初のモジュールを2029年までに完成させるため、2024年の前半に建設・運転一括認可(COL)を原子力規制委員会(NRC)に申請し、2026年前半に認可を受けて建設工事を始めたいとしている。ニュースケール社が開発した(1モジュール当たりの出力が5万kWの)NPMは、今のところ米国で唯一NRCから標準設計承認(SDA)を取得したSMR。同社は出力7.7万kW版のモジュールについても、SDAを2022年第4四半期に申請する予定である。斗山エナビリティ社は2019年からニュースケール社に対する金融投資企業に加わっており、4,400万ドルの株式投資を現金で実施した。2021年7月にはこれに加えて新たな株式投資を行うと発表、その他の韓国投資家グループとともに同社が行った投資の総額は1億380万ドルにのぼっている。これらを通じて、斗山エナビリティ社は数兆ウォン(1兆ウォン=約1,000億円)規模の機器や資材を供給する権利をニュースケール社から取得。2019年には同社から「SMRの製造可能性調査」を請け負っており、2021年1月にこのタスクを完了した。その結果に基づき斗山エナビリティ社は現在、建設スケジュールの遅延リスクを軽減するとともに確実なコスト設定が可能になるよう、NPM機器のプロトタイプを開発中である。斗山エナビリティ社の朴会長兼CEOは、「ニュースケール社との戦略的協力関係は継続的に強化してきており、今やSMRを製造する万全な準備が整った」と表明。市場ではSMRの需要が一層高まりつつあることから、同社の下請企業にも参加のチャンスがあるとしている。ニュースケール社のJ.ホプキンズ会長兼CEOは、「当社が最初のSMRを市場に出す最有力候補であることを世界中に示すことができた」と指摘。斗山エナビリティ社に対しては、「世界レベルの製造能力によって当社製SMRの商業化に大いに貢献して欲しい」と述べた。なお、今回の発表によると、ニュースケール社は斗山エナビリティ社以外にも、多くのパートナー企業と機器発注の調整を行うなど、サプライチェーンの確保準備中。米国を含む北米のみならず、欧州やアジアの顧客にもSMRを確実に販売していくため、国内外の複数のサプライヤーと契約締結に向けた協議を進めているとしている。(参照資料:斗山エナビリティ社、ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
27 Apr 2022
3885
韓国水力・原子力会社(KHNP)は4月22日、ポーランドが進めている大型原子力発電所の導入計画に対し、韓国製の140万kW級改良型PWR「APR1400」を6基(合計840万kW)建設する事業提案書を提出し、受注に向けた本格的な活動を開始したと発表した。ポーランドでは2021年2月、内閣が「2040年に向けたポーランドのエネルギー政策」を正式決定しており、改訂版の「ポーランドの原子力開発計画」では、2043年までに約100万kWの原子炉を6基、合計600万~900万kW建設することを計画。出力100万~150万kWの初号機を2033年までに運転開始した後、2年おきに残りの5基を完成させていくとしている。また、同国の国営エネルギー・グループ(PGE)が設立した原子力事業会社のPEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)は昨年12月、同国初の原子力発電所サイトとして、バルト海に面した北部ポモージェ県内のルビアトボ-コパリノ地区を選定。今年3月末には、同地区の環境影響評価(EIA)報告書を環境保護総局(GDOS)に提出したポーランドのこのような計画について、米国のウェスチングハウス(WH)社とフランス電力(EDF)はすでに個別に参加の意思を表明している。WH社は、米国とポーランド両国の政府が締結した「(ポーランドの)民生用原子力発電プログラムに関する政府間協力協定(IGA)」の2021年3月の発効、および米貿易開発庁(USTDA)による支援などを背景に、ポーランドへの技術移転も含めた包括的投資構想を策定中である。一方、EDFは2021年10月、ポーランド政府に対し、2~3サイトで4~6基(660万~990万kW)のフラマトム社製・欧州加圧水型炉(EPR)の建設を提案している。KHNP社の今回の発表によると、同社のナム・ヨシク副社長兼成長事業本部長率いる代表団が現地時間の21日、ポーランドで原子力発電所の導入事業に携わる気候環境省を訪問。同省のA.ギブルジェ-ツェトヴェルティンスキ次官、およびP.ナイムスキ戦略エネルギー・インフラ特任長官と会談した。その際、韓国・産業通商資源部(MOTIE)のムン・スンウク長官からの書簡を手渡しており、代表団はポーランドの原子力発電開発計画に沿って、2033年までに初号機が運転開始できるよう競争力のある価格で建設を進めると提案。「APR1400」に関しては、欧州の電力企業15社が定めた安全基準「欧州電気事業者要件(EUR)」や米原子力規制委員会(NRC)の安全要件など、国際的に最も厳しい安全基準を満たしていると説明した。代表団はまた、KHNP社が優れた事業管理能力や独自の優れた技術を保有していると強調。ポーランドのプロジェクト受注に向けた資金調達面も含め、韓国政府が同社を全面的に支援していることを伝えた。同社はこのほか、ポーランドでこれまでに開催した「韓国とポーランドの原子力発電フォーラム」や、両国企業間の「B2Bビジネス会合」、「APR会議2019」の模様を紹介。その際、ポーランド企業と結んだ多数の了解覚書を通じて協力関係をすでに構築済みであり、KHNP社はそれらを基盤にポーランド企業と協力して同国の原子力開発計画を進めていくと強調している。(参照資料:KHNP社(韓国語)、ポーランド気候環境省(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Apr 2022
2896
米国のニュースケール・パワー社は4月22日、同社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を商業化する準備として、米国原子炉鍛造企業連合(RFC)と協力協定を締結したと発表した。世界中の顧客にSMRを提供していくに当たり、同社は国内の堅固な原子炉機器鍛造サプライチェーンを活用する方針である。このため同社は、鍛造品の溶接カ所削減や化学組成の調整、および合理的な製造に適した形状など、製造可能性を見直すための協力をRFCと実施。これにより、同社は国内サプライチェーンの製造能力を増強するほか、米国全体の製造業が雇用を維持・拡大していけるよう協力活動を進める方針である。ニュースケール社のNPMはPWRタイプの一体型SMRで、電気出力が5万kW~7.7万kWのモジュールを最大12基連結することで出力の調整が可能。米国の原子力規制委員会(NRC)は2020年9月、モジュール1基の出力が5万kWの「NPM」に対し、SMRとしては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給した。出力7.7万kW版のモジュールについても、ニュースケール社はSDAを2022年の第4四半期に申請する計画である。最初のNPMの建設計画は、ユタ州公営共同事業体(UAMPS)がアイダホ国立研究所(INL)内で進めており、2023年の第2四半期までにNRCにCOLを申請し、2025年の後半までにこれを取得。2029年までに最初のモジュールの運転開始を目指している。ニュースケール社が1モジュール当たりの出力を7.7万kWに増強したのを受けUAMPSは2021年6月、建設するモジュール数を当初予定していた12モジュールから6モジュールに変更している。今回の発表によると、両者の協力は米エネルギー省(DOE)がクリーンエネルギー関係のサプライチェーン強化のため、今年2月に公表した「クリーンエネルギー社会への確実な移行に向けたサプライチェーンの確保戦略(America’s Strategy to Secure the Supply Chain for a Robust Clean Energy Transition)」に沿った内容となる。このため、連邦政府や関係する州政府からは、補助金が交付される見通しである。RFCは、北米フォージマスターズ(NAF)社とスコット・フォージ社、およびATIフォージド・プロダクツ社の3社で構成される企業連合。原子力グレードの鍛造品製造で高度な技術力を備えた3社が組み合わさることで、1ピースの重さが160トン以上という大型の合金やステンレス鋼の自由鍛造、継ぎ目のない圧延リングの製造、形状が特殊な鍛造品の製造などが可能になる。3社はこれまでに、NPMで使用する大型鍛造品の製造フィージビリティや設計の微調整関係で、ニュースケール社に協力した実績があると説明している。また、NAF社は近年、ペンシルベニア州にある「先進的原子力機器製造センター(CANM)」と協力関係にあり、SMRや先進的原子炉の原子炉容器や格納容器に使われるオーステナイト系ステンレス鋼について、研究プロジェクトを実施中。これにはペンシルベニア州政府が補助金を一部交付する予定で、NAF社は同社に出資しているスコット・フォージ社やその他の企業とともに、金属の溶解と鍛造、熱処理、鍛造品の粗削りや機械試験、非破壊検査などを実施する計画である。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Apr 2022
3188
国際エネルギー機関(IEA)は4月20日、加盟国であるベルギーのエネルギー政策を2016年以降、改めて詳細にレビューした報告書を公表した。IEAは、ベルギーでは化石燃料の輸入量を抑えるため、洋上風力その他のクリーンエネルギー設備を着実に拡大していると指摘。現行政策どおり2025年までに大部分の原子力発電所を廃止した後は、エネルギー供給保証上の懸念とCO2排出量の増加が見込まれるため、クリーンエネルギーへの移行をさらに大規模に進めるべきだと提言している。報告書によると、前回のエネルギー政策レビュー後、ベルギーは洋上風力発電開発の主要事業者となり、その設備容量は世界第6位に上昇、同国の狭小な領海内で大きな成果を上げている。同国は国際協力にも尽力しており、オランダのフローニンゲン天然ガス田における採掘が停止に向かうなか、天然ガスの供給量を十分に確保するため、オランダやドイツ、フランスなどと協調体制を取っている。しかしIEAによると、ベルギーは依然として化石燃料に依存。2020年実績で総エネルギー需要の46%を石油、27%を天然ガスで賄うなど、CO2排出量は微減に留まっている。ベルギー政府の「エネルギーと地球温暖化に関する長期戦略」では、パリ協定や欧州連合による設定目標の達成に向けた道筋に従うことになっているが、ベルギーでは国家目標として「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化する」ことを明記していない。こうしたことから、IEA報告書は「長期戦略を改訂し、2050年までに気候中立の達成を目指すと明確に誓約すべきだ」と勧告。F.ビロル事務局長も、「ベルギーはクリーンエネルギーへの移行でリーダーシップを発揮してきたが、今後数年の間に国内のエネルギーシステムをクリーンで確実かつ廉価なエネルギー源にシフトし、CO2排出量の大幅削減に力を入れるという断固たる決意が必要だ」と強調している。原子力に関しては、ベルギーではチョルノービリ原子力発電所事故後の2003年、緑の党を含む連立政権が「2025年までに脱原子力を達成する」と決定。既存の原子炉7基の運転期間も原則40年に制限されたが、伝統的に総発電量の約5割を賄ってきた原子力に代わる電源が確保できず、ベルギー政府と原子力発電事業者のENGIEエレクトラベル社は2015年11月、運転開始後40年が経過した古い3基を2025年まで10年継続運転することで合意した。その後2020年10月に発足した連立政権は、2021年12月の政権内協議により「2025年までに7基すべてを閉鎖する」ことで、改めて原則的に合意。しかし今年3月には、「7基のうち最も新しい2基(合計約200万kW)については運転期間を10年間延長し、脱原子力の達成時期を10年繰り延べて2035年とする」方針を公表した。同国のこうした動きについて、IEAは「2025年までに大部分の原子力発電所を閉鎖してしまえば、ベルギーでは天然ガス火力の利用が拡大し、CO2の排出量も増加する可能性がある」と指摘、電力の安定供給上も大きな懸念が生じるとした。ベルギー政府もロシアによるウクライナへの軍事侵攻などを考慮し、200万kW分の原子力発電設備(チアンジュ3号機とドール4号機)で運転期間の10年延長を決定したものの、規制面や技術面のこれまでの経験上、延長準備には少なくとも4~5年が必要。IEAによると、ベルギー政府は2025年の冬までにこれらの準備を整えることはできず、うまくいけば2026年に準備が整うと予想している。これらを踏まえた上で、IEAはベルギーへの勧告事項として以下を挙げている。・原子力発電設備200万kW分の運転期間の延長準備を、タイムリーかつ費用効率の高い方法で完了するため、迅速な対応を取る。・原子炉の廃止措置や放射性廃棄物管理用の基金を必要な時期に利用できるよう、これらの管理や投資に関する政策の改革を確実に実施する。・高レベル放射性廃棄物(HLW)について、国としての長期的な管理戦略を確定し、処分サイトの特定や予備調査の実施など、節目となる事項の実施計画を立てる。・原子力関係の残りの活動期間を長期的に見通せるよう、原子力部門の国家計画を策定する。HLWの長期管理や原子炉の廃止措置など重要分野については、国家機関と国際機関の協力を促していく。(参照資料:IEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
22 Apr 2022
2898
米エネルギー省(DOE)は4月19日、既存の原子力発電所が早期閉鎖に追い込まれるのを防止するために設置した総額60億ドルの「民生用原子力発電クレジット(CNC)プログラム」で、初回分の申請書を受け付けると発表した。CNCプログラムでは、有資格と認定された商業炉に対しDOEが認定日から4年にわたり、一定の発電量に対して一定の適用価格で「クレジット」を付与。クレジットの総量に応じて支援金を支払うと見られており、DOEはプログラム基金に残金がある限り、2031年9月末までクレジットを付与していく考えだ。今回発表した申請ガイダンスで、DOEは経済的事情により早期閉鎖の可能性がある原子力発電所の所有者や運転事業者にプログラムへの申請方法を示している。有資格と認定されるには、経済的理由により早期閉鎖のリスクにさらされていること、当該炉の閉鎖が大気汚染物質とCO2の排出量増加につながること等を実証しなければならない。また、当該炉が安全に運転継続できることを原子力規制委員会(NRC)が保証し、DOE長官がこれを確認する必要がある。DOEはプログラムの手続きを迅速に進めるため、これらの認定に応募するための申請書と、クレジットの付与を求める「封かん入札」の申請書を一つにまとめて提出するよう指示している。初回の申請書締切日は5月19日で、DOEは初回に限り「早期閉鎖の方針をすでに公表済みの商業炉」を優先的に認定する。これは一般市民からの意見に促された措置であり、2023会計年度の第1四半期に予定されている2回目以降、このような優遇措置はなくなるとしている。CNCプログラムの実施は、昨年11月にJ.バイデン政権が承認した「超党派のインフラ投資法」で約束されていたもの。バイデン大統領は「2035年までに電力部門を100%カーボンフリーとし、2050年までに米国経済全体のCO2排出量を実質ゼロ化する」を目標に定めており、既存の原子力発電設備はその達成に極めて重要な役割を担うと考えている。DOEの説明によれば、国内電力市場の自由化およびその他の経済的ファクターにより、米国では2013年以降すでに12基の商業炉が早期閉鎖されている。これにともない、これらが立地していた地域では代替電源によりCO2の排出量が増大し大気の質も低下。地元コミュニティに財政的な貢献をしてきた高サラリーの雇用が、数千人規模で失われた。CNCプログラムでDOEはこのような課題に公平に取り組むことを目指しており、既存の原子力発電所の早期閉鎖を防ぐことでクリーンエネルギー関係の雇用を維持し、低炭素電力の供給量を確保する。全米のコミュニティが今後も持続可能なエネルギー・インフラから恩恵を受け続けられるよう、バイデン大統領のクリーンエネルギー政策の目標達成を促していく。DOEは60億ドル相当の戦略的投資計画となるCNCプログラムの開始に先立ち、今年2月に実施の意向を示した文書(NOI)と関連情報の提供を依頼する文書(RFI)を一般市民や関係者に発出している。RFIでDOEは、プログラムの仕組みや適用を受けるための認定プロセス、適格性の判断基準、クレジットの入札募集とその割り当て方法等について、120件以上のコメントを受領。同プログラムの策定に一般市民が幅広く参加したことについて、DOEは謝意を表明している。今回の募集に際しDOEのJ.グランホルム長官は、「米国における無炭素電力の半分以上は原子力によるものであり、バイデン政権はクリーンエネルギー政策の目標達成のため、既存の原子力発電所を最大限に活用する方針である」と表明。「目標の達成に利用できるツールはすべて活用しており、原子力発電所の運転継続を優先するのもその一環だ」と説明している。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
21 Apr 2022
2213
中国核工業集団公司(CNNC)は4月19日、パキスタンのカラチ原子力発電所で建設していた3号機(K-3)(PWR、110万kW)が同国への引き渡しに先立つ「受け入れ試験」に合格し、18日に仮検収書の調印式が行われたと発表した。3月初旬から試運転中だった同炉は、これをもって正式に営業運転を開始する。同炉は、中国が知的財産権を保有する第3世代の100万kW級PWR設計「華龍一号」を採用しており、2021年5月に営業運転を開始した同型設計のカラチ2号機に次いで、中国国外で2基目の「華龍一号」となった。中国では、CNNCが「華龍一号」の実証炉プロジェクトとして2015年に着工した福清原子力発電所5、6号機(各115万kW)のうち、5号機が2021年1月に世界初の「華龍一号」として営業運転を開始。同6号機も今年初頭に国内送電網に接続されたことから、CNNCは世界で稼働する「華龍一号」は合計4基になったと強調している。パキスタンではこのほか、CNNCが建設したチャシュマ原子力発電所1~4号機(各30万kWのPWR)が2000年以降稼働中。中国の対パキスタン協力について、CNNCは「カラチでの『華龍一号』建設プロジェクトは中国のパキスタンへの包括的な戦略協力を一層深めるものであり、両国の連携関係は新たな時代に入った」とした。「CO2排出量のピークアウトと実質ゼロ化を目指して、低炭素な電源の開発にともに取り組むだけでなく、原子力で共通の未来を分かち合うコミュニティの構築に向けた具体的な動きとなる。また、中国が推進する広域経済圏構想『一帯一路』を一層推し進めることになる」と強調した。K-3は2016年5月に本格着工し、2021年秋には予定を前倒しして温態機能試験を完了。今年2月に初めて臨界条件を達成した後、3月4日に国内送電網に接続され、様々な出力レベルで性能試験等が行われていた。仮検収書の調印式は、中国の首都北京とパキスタン南部のアラビア海に面したカラチ市の2か所で同時開催され、パキスタン原子力委員会のA.ラザ委員長やCNNCの顧軍・総経理を始めとする幹部が双方から多数出席している。なお、カラチ2、3号機に続く「華龍一号」としては、チャシュマ5号機をパキスタンで建設する計画がある。また、それ以外の海外案件として、アルゼンチンのアトーチャ原子力発電所3号機に同設計を採用することが決定。CNNCは今年2月、そのためのEPC(設計・調達・建設)契約をアルゼンチン国営原子力発電会社(NA-SA)と締結している。このほか、英国の原子力規制庁(ONR)が今年2月に、「華龍一号」の英国版(UK HPR1000)について実施していた包括的設計審査(GDA)を完了。ONRが「設計承認確認書(DAC)」を、環境庁(EA)が「設計承認声明書(SoDAC)」を関係企業に発給した。「UK HPR1000」は、中国広核集団有限公司(CGN)とEDFエナジー社が英国エセックス州で共同で進める予定の、ブラッドウェルB原子力発電所建設計画に採用が決まっている。(参照資料:CNNCの発表資料①(英語版)、②(中国語版)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Apr 2022
3042
カナダで原子力等インフラ関係のプロジェクト管理を遂行しているSNC-ラバリン・グループは4月13日、傘下のCANDUエナジー社を通じて、英モルテックス・エナジー社のカナダ法人と戦略的連携関係を結んだと発表した。カナダ東部のニューブランズウィック(NB)州では、州政府が2018年以降、州営電力会社が運転するポイントルプロー原子力発電所の敷地内で、モルテックス社製の第4世代小型モジュール炉(SMR)「燃料ピン型溶融塩炉(Stable Salt Reactor-Wasteburner: SSR-W)」(電気出力30万kW)」の初号機を、2030年代半ばまでに建設する計画を進めている。SNC-ラバリン社はこの計画の許認可手続きや建設工事でモルテックス社に協力するだけでなく、カナダ全体の次世代SMRの開発と建設をさらに促進していく方針である。カナダでは現在、カナダ原子力公社(AECL)が中心となって開発したカナダ型加圧重水炉(CANDU炉)が19基稼働しており、2011年10月に同公社で組織改革が行われた際、そのCANDU炉事業はCANDUエナジー社に売却されている。その親会社であるSNC-ラバリン社のJ.セントジュリアン社長は、「CO2排出量の実質ゼロ化に向けた世界の動きのなかで原子力は重要な部分を担っており、原子力に関する世界中の専門的知見や数100件もの特許の活用で60年以上の経験を持つ当社は、SMR開発のあらゆる段階でベンダーに協力できる」と指摘した。同社長はまた、「当社が設計する原子炉技術はカナダ原子力安全委員会(CNSC)の3段階の「ベンダー設計審査(予備的設計評価サービス)」をすべてクリアし、実際の許可も受けた唯一の技術だ」と強調。このような背景から同社は、SMRの開発企業が設計を完成させるための支援や、カナダ国内で許認可手続き進める際の助言を提供できるとした。同社はまた、モルテックス社はSNC-ラバリン社が保有する世界的規模の専門家ネットワークを活用可能だと指摘。これらの専門家は、設計・エンジニアリングや規制・許認可問題のみならず、コストの試算やサプライヤーの資格認定と管理、品質保証、建設・運転計画の立案など、様々な分野に習熟している。これらを通じてSNC-ラバリン社は、モルテックス社が新たな顧客を呼び込めるよう緊密に連携し、モルテックス社の事業目的達成を支えていく考えだ。なお、両社の連携協力に対し、NB州政府のM.ホーランド天然資源・エネルギー開発相はサポートの提供を約束している。同相は、「この協力はNB州のエネルギー部門で質の高い雇用を生み出し、その長期的な成長に貢献する。また、モルテックス社とNB州がともに、次世代の原子力技術を発展させるリーダー的役割を担うことになる」と述べた。また、ポイントルプロー発電所以外の商業炉がすべて立地するオンタリオ州のT.スミス・エネルギー相も、「当州でエネルギー産業と原子力関係の優秀な労働力、および強力なサプライチェーンを築いたSNC-ラバリン社が、モルテックス社と新たに協力するのは願ってもないことだ」とコメント。「SMR開発に関してカナダは今や世界の注目を集めており、今回の協力によってSMR開発の世界的ハブとしてのカナダの名声や、クリーンエネルギー開発における優位性が高まる」と強調している。(参照資料:SNC-ラバリン社、モルテックス・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
19 Apr 2022
2645
チェコの国営電力(CEZ)会社は4月12日、保有するテメリン原子力発電所(100万kW級のロシア型PWR=VVER-1000×2基)の燃料調達先について入札を実施した結果、米ウェスチングハウス(WH)社と仏フラマトム社の2社を最終的に選定したと発表した。現在の調達先であるロシアのTVEL社との契約が2023年末に満了するのに先立ち、CEZ社は2020年4月に新たな調達先の選定で入札を開始。これに参加したTVEL社、WH社、およびフラマトム社の3社のうち、調達先を多様化する観点から米仏の2社を選んだもので、両社は2024年から約15年にわたってテメリン発電所に燃料集合体を供給する。CEZ社は総額で数10億コルナ(10億コルナ=約56億円)というこの契約で、「将来的に燃料供給が途絶するリスクを最小限に抑えることができる」と強調している。WH社は様々な原子炉設計に対応した燃料を製造中で、VVERが稼働するテメリン原子力発電所用としては、CEZ社と1993年に締結した契約に基づく最初の燃料集合体が、2000年7月にテメリン1号機に試験装荷された。同社はその後、ウクライナのVVER-1000向けに製造した「堅固なWH社製燃料集合体(RWFA)」をテメリン発電所用に改造。スペーサー格子の数を削減するなどしており、2016年2月にはRWFAの「先行試験用燃料集合体(LTA)」を6体納入する契約をCEZ社と締結した。CEZ社は2019年4月、約3年に及んだ燃料の許認可手続きを終え、テメリン1号機でLTAの試験を実施すると発表している。今回の入札結果について、CEZ社は両社がともに世界の原子力産業界のリーダー企業であるとした上で、「スウェーデンに燃料製造工場を持つWH社は、すでにテメリン発電所に燃料集合体を供給した実績があるほか、世界中の原子力発電所用に主要機器を製造。原子力分野で60年以上にわたって設計・建設・維持管理等のサービスで経験を重ねている」と指摘した。また、フラマトム社に関しては「欧州連合(EU)唯一の燃料製造企業として、西欧諸国の原子力発電所の大部分に燃料を供給している」と説明。原子力発電所の設計や機器の製造と設置、原子燃料の製造、および計装・制御(I&C)系の供給等で60年以上の実績があると強調している。なお、ロイター通信によると、チェコのP.フィアラ首相は4月9日、与党の党大会で「ロシアからの輸入化石燃料に依存し続けることは、我が国の安全保障上、最大リスクの一つだ」と発言。「チェコのエネルギー部門は、今後5年以内に『ロシアの引き綱』を完全に断ち切ることを目標にすべきだ」と述べたことが伝えられている。(参照資料:CEZ社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Apr 2022
3190
米国防総省(DOD)の戦略的能力室(SCO)は4月13日、軍事作戦用の可搬式マイクロ原子炉を設計・建設・実証するための「プロジェクトPele」が進展し、少なくとも3年間フル出力で稼働可能なマイクロ原子炉の原型炉(電気出力0.1万~0.5万kW)を、エネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)内で建設すると発表した。SCOが同日、原型炉建設の最終意思決定となる「決定記録書(ROD)」を発行したもので、これは米国の環境アセスメント制度における最終段階のアクション。国家環境政策法(NEPA)の下で、これまで行われていた(原型炉の建設・運転にともなう)環境影響の評価プロセスが完了したことを示している。SCOは2021年3月、原型炉に採用する候補設計として、対象をBWXテクノロジーズ(BWXT)社の先進的高温ガス炉と、X-エナジー社の小型ペブルベッド式高温ガス炉に絞り込んだ。これらはともにSCOの技術要件を満たしているが、SCOは今春の終わり頃までに最終的な採用設計を一つだけ選定する方針である。発表によると、この原型炉は固有の安全性を有する第4世代の原子炉として、米国内で初めて建設されるもの。世界初の第4世代炉としては、中国・山東省の石島湾で建設されていた「ペブルベッド式モジュール高温ガス炉(HTR-PM)」の実証炉(電気出力約10万kWのモジュール×2基)が2021年9月、初めて臨界条件を達成している。また、DODの作戦活動では、年間約300億kWhの電力と一日当たり1,000万ガロン(約37,850m3)以上の燃料を必要とするが、今後この量は一層拡大していく見通しである。このような需要に応えるため、SCOは小型で安全かつ輸送も可能な原子炉でクリーンエネルギーを確保。遠隔地や厳しい環境の場所においても、長期にわたって作戦活動を維持・拡大する考えだ。「プロジェクトPele」ではSCOが2020年3月、NEPAに基づき原型炉建設の環境影響評価を実施すると発表。これと同時に同炉の採用設計を選定するため、プロジェクトの技術要件を満たした設計について、2年計画の設計コンペを開始した。SCOはまた、同時期の連邦官報で、検討中のマイクロ原子炉はHALEU燃料(U-235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)の三重被覆層・燃料粒子「TRISO」を用いた、先進的なマイクロ・ガス冷却炉(AGR)になると発表していた。今回のROD発行について、SCOは「候補企業2社の契約チームによる不断の努力や、水質汚染防止法等に基づいて建設計画の審査・承認を行う米陸軍工兵隊(Corps)、およびDOEの専門家による技術支援チームの功により、確実に固有の安全性を備えた可搬式マイクロ原子炉を安全に建設・実証できる」と表明。「先進的原子炉設計は、DODや米国の商業部門にとって戦略的に大きな変革をもたらす可能性があるものの、導入に際してはさらに実際の運転条件下で実証する必要がある」と指摘している。(参照資料:DODの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Apr 2022
2931
エストニアで小型モジュール炉(SMR)の導入を計画している新興エネルギー企業、フェルミ・エネルギア社は4月12日、効率的な建設プログラムを策定するため、カナダでエネルギー関係のソリューション・サービスを提供しているローレンティス・エナジー・パートナーズ社と協力契約を締結した。ローレンティス社はカナダのオンタリオ州営電力(OPG)会社の100%子会社であり、OPG社はカナダで稼働する商業炉19基のうち18基を保有している。原子力やエンジニアリングに関する親会社の豊富な経験を背景に、ローレンティス社のJ.バンウォート副社長は、「エストニアが自信をもってSMRを国内のエネルギーミックスに加えられるよう、今回の契約で様々な協力をフェルミ社に提供する。具体的には、SMR建設の許認可手続きや資金調達を円滑に進めるための建設プログラム策定に加え、実行可能性調査の実施や計画立案、建設・運転関係のサービスなどだ」としている。エストニアは消費電力の大部分をオイルシェールや近隣諸国からの輸入電力で賄っているため、フェルミ社は信頼性の高いクリーン電力を天候に左右されずに安定供給できるよう、2019年以降、SMRの国内建設に向けた可能性を検討中。2035年までに1基以上のSMR建設を目指しており、これまでにすでに、米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社が開発しているSMR「BWRX-300」や、英国ロールス・ロイス社製SMRの国内での建設可能性を探るため、協力覚書を両者と締結している。また、英国のモルテックス・エナジー社、カナダのテレストリアル・エナジー社、米国のニュースケール・パワー社、ウルトラ・セーフ・ニュークリア(USNC)社が開発中のSMRについても、フェルミ社は導入可能性を調査中と伝えられている。 OPG社が2021年12月、カナダのダーリントン原子力発電所で建設するSMRとしてGEH社製「BWRX-300」を選定したことについて、フェルミ社のK.カレメッツCEOは、「OPG社は原子力発電事業の世界的リーダー企業の一つであり、同社が進める「BWRX-300」プロジェクトは世界をリードするSMR建設計画になるだろう」と指摘した。その上で、「ローレンティス社との緊密な協力を通じて当社はSMRの建設プログラムを策定し、複数のSMR建設に向けた許認可手続きや資金調達の基盤を形成。ひいては、エストニアとその他のバルト三国における低価格なエネルギーの自給や脱炭素化の達成につなげたい」と述べた。また、「原子力がクリーンな低炭素電源であることは、欧州連合(EU)がEUタクソノミーの投資基準に一定条件下で原子力を加えたことからも明らかだ」と強調している。(参照資料:ローレンティス・エナジー・パートナーズ社、フェルミ・エネルギア社(エストニア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Apr 2022
2599
米メリーランド州のX-エナジー社は4月6日、商業規模の3重被覆層・燃料粒子(TRISO燃料)製造施設「TRISO-X(TF3)」の建設に向けて、特殊な核物質の取り扱いに関する許可(SNM)申請書を米原子力規制委員会(NRC)に提出した。TRISO燃料は、U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン(HALEU燃料)を黒鉛やセラミックスで3重に被覆した粒子型の燃料。X-エナジー社が開発している小型のペブルベッド式高温ガス炉「Xe-100」で使用予定であるほか、その他のデベロッパーが開発中の小型モジュール炉(SMR)や先進的原子炉設計の多くで、HALEU燃料が使用される見通しである。ただし、製造施設を建設するには連邦規則10CFR70に基づき、カテゴリーⅡの「特殊核物質所有認可」を取得する必要がある。NRCは今後、同カテゴリーでは初となったX-エナジー社の申請書を24~36か月かけて審査する。X-エナジー社はこれに先立つ4月4日、商業規模のTRISO燃料製造施設「TRISO-X(TF3)」を、テネシー州オークリッジの「ホライズンセンター産業パーク」内で建設すると発表した。同社はすでにオークリッジで、TRISO-Xのパイロット製造ラインとTRISO-X研究開発センターを保有。今年中にも同社の100%子会社で、TF3の建設と操業を担当するTRISO-X社がサイトの準備を開始し、その他の許認可を取得。早ければ2025年にもTF3の操業を開始する方針である。初期段階の生産量は、「Xe-100」12基分の燃料に相当する年間8トン(ウラン換算。以下同)だが、2030年代初頭までに16 トン/年の生産を目指す考えである。X-エナジー社はTF3開発でこれまでに約7,500万ドルを投じており、オークリッジで400人以上の雇用創出が見込まれる同建設計画では、今後3億ドル近い投資を呼び込む計画である。また、米エネルギー省(DOE)は2020年10月、「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」における7年間の支援対象企業の一つとして同社を選定。2021年11月には米国議会が同プログラムの下、「Xe-100」の実証炉建設に約11億ドルを交付すると決定しており、この支援金はTF3の建設にも活用される。「Xe-100」は電気出力7.5万kWのSMRで、これを4基連結することで出力を30万kWまで拡大することが可能。X-エナジー社は同設計により、世界中で高まっているクリーン・エネルギーの需要に応えられると考えている。同設計については、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が2020年8月から予備的設計評価(ベンダー設計審査)を開始。建設・運転許可の取得に向けた正式な申請手続に先立ち、同設計がカナダの規制要件を満たしているか、X-エナジー社の要請に基づいて評価中である。また、ヨルダンが2030年までに「Xe-100」を国内で4基建設することを希望。X-エナジー社とヨルダン原子力委員会は2019年11月、基本合意書を交わしている。米国内では、ワシントン州の2つの公益電気事業者(グラント郡PUDとエナジー・ノースウエスト社)が、「Xe-100」をエナジー・ノースウエスト社保有のコロンビア原子力発電所と同じサイト内で建設することを計画。両社とX-エナジー社は2021年4月、「3社間エネルギー・パートナーシップ」を構築するための覚書を締結した。TRISO-X社のP.パッパノ社長はTF3の建設サイト決定について、「TRISO燃料の技術は過去60年にわたって開発・改良されてきたものであり、TF3の建設はこのように画期的な燃料技術を市場にもたらすことになる」と表明。TRISO-X社が創設されて以降、同社の技術に対する内外の関心が高まりつつあり、軍事用マイクロ原子炉の開発を進めている国防総省(DOD)や、深宇宙探査用核熱推進(NTP)技術の開発を進めているアメリカ航空宇宙局(NASA)も、すでに同社の顧客だと強調している。(参照資料:X-エナジー社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
11 Apr 2022
2721
©BEIS英ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は4月6日、クリーンかつ安価な国産エネルギーの開発を大幅に加速し、英国のエネルギー自給を長期的に改善するという新しい「エネルギー供給保障戦略」を公表した。 その中で原子力は中心的役割を担っており、これまでのように原子炉を10年に1基ではなく「年に1基」という早いペースで建設していき、2050年までに最大8基を稼働可能にすると表明している。同国のB.ジョンソン首相は、エネルギー価格の世界的な高騰や国際エネルギー市場における激しい価格変動を背景に、この「大胆な」戦略を通じて英国のエネルギー供給保障を一層強化する方針。2030年までに英国の供給電力の95%までを低炭素化するため、原子力や風力、太陽光、クリーン水素等のクリーンエネルギー設備を迅速かつ意欲的に建設、短期的には国産石油や天然ガスの増産も支援していく考えだ。同戦略では原子力を、国内総電力量の約15%を安定的に供給する必要不可欠な電源であるとともに、間欠性の高い再生可能エネルギー源を補う存在と位置付け、同じ広さの太陽光発電設備の100倍以上の電力をもたらす、英国のエネルギーの根幹をなす低炭素電源であるとした。島国の英国でベースロード用の電源を十分に確保するには、原子力を活用する以外に方法はないとも指摘しており、英国は原子力で再び世界をリードしていくと明言。小型モジュール炉(SMR)も含めて、2050年までに現在の約3倍にあたる最大2,400万kWの発電容量を安全でクリーンな原子力発電で確保し、国内電力需要の最大25%までを賄う計画である。このための方策として、同戦略はまず、英国を原子力投資に最適な国の一つにすると表明。具体的に、上記の開発目標や2030年までに最大8基建設する方針に言及したほか、現行議会の期間中にSMRも含めて1プロジェクトの原子力発電所建設計画、次期議会ではさらに2プロジェクトで最終投資判断(FID)が下されるよう進めていくとした。また、新規の原子力発電所建設プロジェクトの進め方を大幅に変更する方針で、今月中に1億2,000万ポンド(約194億円)の予算で「将来の原子力開発を可能にするための基金(Future Nuclear Enabling Fund)」を設置。開発プロセスの全段階で支援を提供する新しい政府機関として、年内にも「大英原子力(Great British Nuclear)」を立ち上げ、新設プロジェクトの投資準備や建設期間中の支援が可能になるよう、同機関に十分な予算措置を講じる。これにともない、英国政府は2023年にも、新たな支援対象プロジェクトの選定作業を開始すると表明。可能な限り迅速に政府支援を提供できるよう、有望なプロジェクトの事業者と交渉に入りたいとしている。さらに、英国内では現在、新規の原子炉建設が可能なサイトが8か所あるが、今回の意欲的な計画を円滑に進めるため、長期間を見渡した包括的な立地戦略を策定する。このほか、SMRや先進的モジュール式原子炉(AMR)など先進的な原子力技術の開発を加速するため、諸外国と協力していく。ジョンソン首相は今回の戦略について、「新たな原子力設備から洋上風力に至るまで、今後10年の間にクリーンで安価な国産エネルギーの設備を拡大、価格変動の激しい輸入エネルギーへの依存を減らして、一層安価な国産エネルギーを享受する」と説明。BEISも、「新型コロナウイルスによる世界的感染の拡大後、エネルギー需要の急増で価格が世界的に上昇したことや、ロシアがウクライナに軍事侵攻したこと等により、今回の戦略を策定するに至ったが、この戦略は英国が高価格の化石燃料による発電を止め、長期的なエネルギー供給保障の確保で多様な国産エネルギーを推進する上で中心的役割を果たす」と強調している。(参照資料:BEISの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Apr 2022
3828
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続くなか、欧州と米国の両原子力学会(ENSとANS)は4月4日、原子力部門で働く世界中の労働者を代表し、同国の原子力関係施設に対する軍事攻撃や偽情報を非難するとの共同声明を発表した。両学会はこの軍事侵攻にともない、ウクライナの原子力関係施設が戦闘行為や不安を煽るよう誇張された情報に晒されていることを深く憂慮すると言明。両学会に所属する原子力部門の科学者やエンジニア、専門家らの抗議メッセージとして以下の事項を表明している。・ウクライナ国民が必要とする電力を安全に発電するため、同国の原子力発電所職員が専門的な能力をもって献身的に働いていることを(我々は)認識している。・(我々は)ロシア軍が3月3日にザポリージャ原子力発電所を攻撃したことを強く非難する。これは戦争犠牲者の人道的な扱いを求めたジュネーブ諸条約の第1追加議定書56条に違反しており、原子力発電所やダム、堤防などの民生用インフラを攻撃から防護することもこれに含まれる。・いかなる原子力関係施設に対しても、これ以上の攻撃を停止するよう要求する。ウクライナの原子力関係施設やその職員、および駐留しているIAEA職員の安全を脅かすような軍事行動は、意図的なものであってもなくてもすべて非難する。・ウクライナの原子力関係施設で安全な運転を継続的に確保するため、IAEAが進めている枠組の設置作業を支援する。このような重要タスクの遂行においては、作業員が不当な圧力を受けないようにすることが大切である。・「ウクライナが民生用原子力プログラムで核兵器を開発している」、などという根拠に乏しい主張は受け付けないし、この件およびその他の核不拡散問題については、IAEAの関係当局による解決を支援していく。・IAEAがウクライナの原子力関係施設に設置したモニタリング機器への妨害行為は、いかなるものであっても非難する。・原子力関係施設の安全状況について流布された偽情報や、危険な放射性物質の流出リスクに関する偽情報は糾弾していく。両学会によると原子力発電は過去数10年にわたって、危険な汚染物質を排出する化石燃料の使用を抑制してきた。これにより、世界では過去半世紀の間に180万人以上の人々が早世を免れ、大国同士が資源を巡って争うリスクが軽減された。また、この10年間では、「CO2を排出しない原子力は、地球温暖化に対処可能な主要ツール」との認識が世界中で高まっており、原子力発電所の職員は持続可能なエネルギーの開発で自らが担う役割に誇りを持っている。両学会は、このような原子力発電の安全性を脅かし放射線への社会不安を煽る行為は、この戦争に関わるすべての人々に不利益をもたらすだけと指摘。また、原子力発電所をリスクにさらす無責任な戦法は、平和的で持続可能な開発、および地球温暖化の回避という人類共通の課題への対処方策を減ずることになると強調している。(参照資料:ENSの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Apr 2022
2394
ポーランド初の原子力発電所建設計画を進めているPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社は3月30日、この発電所(合計出力375万kW)が建設される同国北部ポモージェ県内での環境影響評価(EIA)報告書を、29日付で環境保護総局(GDOS)に提出したと発表した。これと同時に、PEJ社は同県近隣のロシアとの国境付近におけるEIA実施に向けた文書も提出。これにより、建設計画では「環境条件に関する意思決定」の発給に向けた許認可手続きが再開されるとしている。ポーランドでは1980年代に40万kW級のロシア型PWR(VVER)をポモージェ県内のジャルノビエツ地区で建設する計画が進展したが、ウクライナのチョルノービリ原子力発電所事故の発生を受けて、同計画は1990年代に頓挫した。政府はその後、エネルギー源の多様化と温室効果ガスの排出量削減を図るには原子力の導入が不可欠と判断、2009年に改めて原子力開発ロードマップを策定している。ポーランド政府がさらに2021年2月に決定した「2040年までのエネルギー政策」によると、同国では2043年までに複数のサイトで最大6基の原子炉(600万~900万kW)を稼働させるとしており、初号機については2033年までに運転を開始させる方針。採用設計としては、確証済みの技術を採用した安全な第3世代+(プラス)の大型PWRを検討中である。PEJ社は、国営エネルギー・グループ(PGE)が原子力発電所の建設・運営のために2010年1月に設立した事業会社で、2021年6月に社名を当初のPGE EJ1社から改名。同年12月には、同社はポーランド初の原子力発電所建設に適した地点として、バルト海に面したポモージェ県内のルビアトボ-コパリノ地区を選定していた。今回の環境影響評価の一環として、PEJ社は同県内ホチェボの地方自治体内に位置するルビアトボ-コパリノ地区のほか、クロコバとグニエビノの両自治体が管轄するジャルノビエツ地区の2地点で、原子力発電所の建設と運転が及ぼす影響等を分析。両地区はともに、2014年時点ですでに建設候補地区として名前が挙がっており、PEJ社は今回、原子力発電所の海水冷却や冷却塔の使用等の技術的サブ・オプションの比較などを含む分析を行った。同社のEIA最終報告書は、GDOSが2016年に定めた要項に沿って、これらの候補地区や技術面のサブ・オプションを評価しているほか、発電所に付随するインフラも検討対象にしている。作成にあたっては、米国とポーランドが2020年10月に締結した政府間協力協定に基づき、米国の環境事業会社であるジェイコブス社が技術アドバイザーを務めた。なおPEJ社によると、同報告書の内容は環境保全や住民参加に関係する法律が定めた原則に則り、いずれ開示されるとしている。(参照資料:PEJ社(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
05 Apr 2022
2964
チェコの国営電力(CEZ)は3月31日、国内で建設を検討している小型モジュール炉(SMR)初号機の立地点として、南ボヘミア州にあるテメリン原子力発電所(100万kW級のロシア型PWR=VVER×2基)敷地内の一区画を確保したと発表した。同社はSMR建設の実行可能性を調査するため、数年前に米国のニュースケール・パワー社やGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社などと協力覚書を締結。今回の決定については、米エネルギー省(DOE)の原子力通商ミッションが3月28日の週にプラハを訪問した際、CEZ社が両社の代表団と会談して伝えた。同社はまた、南ボヘミア州政府、同様にSMRで協力中の米ホルテック・インターナショナル社に対しても同日、この件を連絡したとしている。CEZ社はこれらのほかに、SMRデベロッパーの英ロールス・ロイス社、フランス電力(EdF)、韓国水力・原子力会社(KHNP)とも、個別に協力覚書を締結済みである。CEZ社自身もまた、傘下の国立原子力研究機関(UJV Rez)を通じてSMR開発を進めており、モジュール式の先進的ガス冷却高速炉「HeFASTo」の概念や、溶融塩で冷却する小型のモジュール式高温原子炉「Energy Well」の概念については、研究開発が新たな段階に進展したとしている。チェコ政府は2015年5月の「国家エネルギー戦略」のなかで、当時約30%だった原子力発電シェアを2040年には60%まで引き上げる必要があると明記した。同戦略のフォロー計画として翌月に閣議決定した「原子力発電に関する国家アクション計画(NAP)」では、化石燃料の発電シェアを徐々に削減するのにともない、既存のドコバニとテメリンの両原子力発電所で1基ずつ、可能であれば2基ずつ増設するための準備が必要だとしていた。ドコバニ発電所では特に、既存の全4基(51万kWのVVER×4基)が2035年から2037年の間に運転を終了する予定であるため、チェコ政府は優先的に原子炉を増設する方針。CEZ社は3月中旬、Ⅱ期工事の5、6号機(各120万kW級PWR)建設に向け、最初の1基のサプライヤーについて競争入札を開始している。テメリン発電所でも一時期、増設計画が進められていたが、投資金の回収問題により2014年にこの計画は頓挫。チェコのA.バビシュ首相は2019年11月、チェコでは差し当たりドコバニ発電所の増設を優先するものの、テメリン発電所の増設計画についてもいずれ協議を再開することになると強調している。CEZ社によると、安定した岩盤上に立地するテメリン発電所では、運転員が2000年代初頭から安全運転で豊富に経験を蓄積するなど、SMRの立地では大きな利点がある。複数のデベロッパーや地元自治体が関与するSMRのパイロット計画立地点として同発電所が選定されたのも、そのような理由によるとしている。テメリン発電所サイトでSMR用に一区画を確保したことに関し、CEZ社は将来、標準的な大型原子炉を2基増設する計画に影響が及ぶことはないと指摘。CEZ社のD.ベネシュCEOも、「ドコバニ発電所で5号機を増設するための入札では、これに加えてテメリンで2基増設することも強制力を持たない入札オプションの一つになっている」と説明した。(参照資料:CEZ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Apr 2022
3266
カナダのオンタリオ州、ニューブランズウィック(NB)州、サスカチュワン州、およびアルバータ州の4州は3月28日、小型モジュール炉(SMR)を開発・建設していくための共同戦略計画を策定したと発表した。この戦略計画では、各州の経済成長や人口増加に対し、安全で信頼性の高い無炭素なエネルギーをSMRがどのように提供していくかを集中的に取り上げており、将来カナダのSMR技術や専門的知見を世界中に輸出していくための新たな機会を模索。これらの州ですでに進展中の3つの方向性にSMRの建設を進めていくとしており、2026年までにチョークリバーで小型の高温ガス炉を完成させる計画や、2028年までにダーリントン原子力発電所敷地内で送電網への接続が可能なSMRを完成させる計画などを明記している。同戦略計画の元になっているのは、オンタリオ州とNB州、およびサスカチュワン州の3州が、2019年12月に締結したカナダ国内での多目的SMR開発・建設するための協力覚書に基づき、それぞれの州営電力に委託して実施した「SMR開発の実行可能性調査(FS)」の結果である。アルバータ州が2021年4月にこの覚書に加わった際、同時に公表されたFS調査の結果報告書によると、「出力30万kW以下のSMRはカナダのエネルギー需要を満たすのに貢献するだけでなく、温室効果ガスの排出量を削減。そのクリーンエネルギー技術と地球温暖化との取り組みで、カナダを世界のリーダーに押し上げることが期待される」と結論付けていた。今回の戦略計画で4州が進める5つの優先対策は以下の通りである。送電網に接続可能なSMRとそうでないものの両方について、3つの方向性で複数のSMR技術の開発・建設を推進し、カナダを世界的なSMR輸出国に位置付ける。SMR用に適切な規制枠組みが構築されるよう促し、SMR周辺住民の健康と安全、環境を防護しつつ合理的な建設コストと工期を実現する。新しいSMR技術の開発に対し、財政面や政策面でカナダ連邦政府の支援を取り付け、カナダ全土でその経済的利益を得るとともにCO2の削減目標達成の一助とする。SMR計画に先住民コミュニティを含むカナダの一般市民が参加可能となるよう、機会を創出する。SMRから出る廃棄物の盤石な管理計画の策定で、連邦政府や原子力発電所の運転会社と協力する。最初の優先方策で示された3つの方向性について、戦略計画はオンタリオ州のダーリントン原子力発電所内で、2028年までに送電網に接続可能な出力30万kWのSMRを1基建設すると表明。後続のSMRを複数サスカチュワン州内で建設するとしており、このうち最初の1基の運転開始時期を2034年に設定している。ダーリントンでの建設計画については、オンタリオ州営電力(OPG)会社が2021年12月、候補の3設計の中から米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のBWR型SMR「BWRX-300」(電気出力30万kW)を選定した。2つ目の方向性としては、第4世代のSMRを2種類、NB州のポイントルプロー原子力発電所敷地内で建設する。米ARCクリーン・エナジー社製のナトリウム冷却・プール型高速中性子炉のSMR「ARC-100」(電気出力10万kW)を、2029年までに本格的に運転開始するほか、英国のモルテックス・エナジー社が開発した「燃料ピン型溶融塩炉(Stable Salt Reactor-Wasteburner: SSR-W)」(電気出力30万kW)については、2030年代初頭までに商業規模の実証炉を建設する計画である。3つ目では、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)製の第4世代の小型高温ガス炉「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」(電気出力0.5万kW)を、USNC社とOPG社の合弁事業体であるグローバル・ファースト・パワー社が、2026年までにカナダ原子力研究所(CNL)のチョークリバー・サイトで完成させる。これにより、基幹送電網に接続できない遠隔地域への電力供給や、鉱山での採掘活動におけるSMRの実行可能性を実証するとしている。今回の戦略計画について、オンタリオ州政府は「我々のSMR開発を世界中が注目しており、SMR技術の研究開発の世界的センターとしてのわが州の名声はますます高まっていく」と指摘した。また、「SMRは信頼性の高い廉価なクリーンエネルギーを生み出せるため、新たな雇用の創出に貢献するほか、クリーンエネルギーにおけるカナダの優位性を一層促進、オンタリオ州では州の全域で雇用を生み出す新たな投資が確保される」と強調している。(参照資料:オンタリオ州、ニューブランズウィック州、サスカチュワン州、アルバータ州の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
31 Mar 2022
3729
フィンランド中西部のピュハヨキでは、フェンノボイマ社がハンヒキビ原子力発電所1号機建設計画(120万kWのロシア型PWR)を進めているが、これに一部出資しているヘルシンキ郡のバンター市は3月28日、市議会でプロジェクトからの撤退を決めたと発表した。同プロジェクトでは2013年、フェンノボイマ社に対し34%の出資を約束したロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社が建設工事を受注。残りの66%は、国内の電力多消費企業約60社で構成されるボイマ・オサケイティエ・グループが出資している。バンター市は傘下のエネルギー企業「バンター・エネルギア社」を通じて、ボイマ・オサケイティエ・グループに約5%出資中だが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻にともない保有株式を売却する判断を下したもの。この決定に基づき、同市はバンター・エネルギア社の同プロジェクトからの撤退を早急に促す。また、2015年からプロジェクトの建設許可申請書を審査しているフィンランド政府に対しては、一刻も早くこの問題を解決するよう要請し、公的資金が同プロジェクトで不適切に使われるのを防ぎたいとしている。なお、フィンランドの南西部に位置するトゥルク市も、同プロジェクトからの撤退を検討している模様。同市は傘下に保有するトゥルク・エネルギア社を通じて、ボイマ・オサケイティエ・グループに約4%出資している。今回のバンター市の発表によると、「軍事侵攻に端を発した国際情勢はますます緊迫化しており、プロジェクトの実施は不透明になった。バンター・エネルギア社は、プロジェクトが頓挫した場合の財政面や法制面のリスクを最小限にするため、あらゆる手段を講じるべきである。また、ロシアと国境を接するフィンランドの安全保障、およびフィンランド政府の声明や、政府と欧州連合によるロシアへの制裁表明などを照らし合わせると、同プロジェクトで建設許可を取得するのは最早、不可能と思われる。」このような状況から、撤退判断を下すに至ったと説明している。バンター・エネルギア社はすでに、同プロジェクトに3,960万ユーロ(約53億7,000万円)を投資しており、計画している総投資額は最大で9,000万ユーロ(約122億円)にのぼる見通しである。同社がプロジェクトから一方的に撤退するには、保有するボイマ・オサケイティエ・グループ株を売却するしか方法はないが、現時点では売却先が見つからないとバンター市は指摘。これに代わる方法としては、フェンノボイマ社の株主が全会一致でプロジェクトの中止を決めることのほか、フィンランド政府や国際的な規制、あるいは制裁等に基づく中止決定などが考えられるとしている。一方のフェンノボイマ社は3月15日、ウクライナ情勢に関して声明文を発表していた。同社はその中で、「国際社会がロシアに科した一連の制裁措置に原子力部門は含まれないと考えていたが、最近決まった制裁事項はハンヒキビ計画にも影響を及ぼすと思われる」とした。その上で、「当社は社内の従業員も含めたプロジェクト関係者と様々な契約や誓約を交わしており、制裁措置や法的拘束力のある決定によってこの枠組が変わらない限り、当社の職務や法的義務も変わらない」と明言。当面の間は、関係するすべてのステークホルダーと緊密に連絡を取りながら、状況の推移を注意深く見守っていくと述べた。また、「ウクライナの状況は誠に悲しむべきものであり、軍事侵攻を受けた人々の中には当社の従業員と親しい人も多くいるが、現時点ではこれ以上コメントすることはできない」としている。(参照資料:バンター市(フィンランド語)、フェンノボイマ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
30 Mar 2022
2946
中国核工業集団公司(CNNC)は3月25日、国内で2基目の「華龍一号」実証炉プロジェクトとして、福建省の福清原子力発電所6号機(PWR、115万kW)が約3か月間の試運転を終え、営業運転を認可されたと発表した。「華龍一号」は中国が全面的に知的財産権を保有する第3世代炉設計で、CNNCと中国広核集団有限公司(CGN)が双方の第3世代炉設計を一本化して開発した。安全系には静的と動的2つのシステムを組み合わせているほか、格納容器は二重構造。国際的に最も厳しい安全基準をクリアしており、設計耐用期間は60年間である。CNNCは2015年5月と12月、CNNC版「華龍一号」の実証炉プロジェクトとして福清5、6号機を相次いで本格着工した。5号機はすでに2021年1月、世界で初の「華龍一号」として営業運転を開始。6号機は2021年11月に燃料を装荷、翌12月に初めて臨界条件を達成した後、2022年1月に国内送電網に接続されていた。福清6号機で営業運転の準備が整ったことについて、CNNCは「5号機と併せて、わが国の原子力技術が世界のトップレベルに達したことを意味しており、中国が原子力大国から原子力強国に飛躍する重要な節目になった」と表明。また、習近平国家主席が原子力産業界に対し提唱している「三新一高」(科学技術の新しい成果や新興技術を応用し、新たな開発コンセプトの産業モデルを高品質で構築する)の精神を、CNNCが国内の関係企業とともに着実に実行中であるとした。CNNCはまた、「安全で革新的な技術を原子力関係で開発し、中国が目指す2つの目標、すなわちCO2排出量のピークアウトと実質ゼロ化に導きたい」としている。CNNCによると、福清5、6号機の発電量は年間で合計約200億kWhに達する見通し。これは標準炭624万トンで発電した電力量に匹敵するため、CO2換算で約1,632万トンの排出を抑えることができ、中国は電源ミックスの大幅な合理化を図り、低炭素なグリーン電源の開発を一層促進していく。これら以外の「華龍一号」としては、CNNCがパキスタンで建設したカラチ2号機が、国外では初めて昨年5月に営業運転を開始した。同3号機も今年2月に臨界条件を達成しており、年内の運転開始が見込まれている。CNNCはまた、福建省の漳州1、2号機と海南省の昌江3、4号機にも「華龍一号」を採用。漳州1、2号機はそれぞれ2019年10月と2020年9月から、昌江3、4号機はそれぞれ2021年3月末と12月末から建設工事が始まっている。一方、CGNも2015年から2016年にかけて、CGN版「華龍一号」の実証プロジェクトとして江西省の防城港3、4号機を本格着工しており、3号機は今年中に完成すると見られている。CGNはまた、広東省の太平嶺1、2号機にも同設計を採用、それぞれ2019年12月と2020年10月から建設中である。さらに2020年12月からは、浙江省の地元電力企業や建設企業、投資企業らが出資する三澳1号機についても、同設計による建設工事を開始している。このほか英国では、CGNが一部出資するブラッドウェルB原子力発電所建設計画に同設計を採用すると決まっている。同設計の英国版「UK HPR1000」について、2017年1月から包括的設計審査(GDA)を進めていた原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)は今年2月、それぞれ「設計承認確認書(DAC)」と「設計承認声明書(SoDAC)」を同設計に発給している。(参照資料:CNNCの発表資料(英語版と中国語版)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
29 Mar 2022
3267
アラブ首長国連邦(UAE)で原子力導入プロジェクトを主導する首長国原子力会社(ENEC)は3月24日、アブダビ首長国で建設中のバラカ原子力発電所(韓国製の140万kW級PWR「APR1400」×4基)で2号機が営業運転を開始したと発表した。同発電所の1号機はアラブ諸国初の商業炉として2021年4月に営業運転を開始した。 2号機は同年8月に起動し、翌9月には国内送電網に初めて接続されるなど、同炉で約7か月間に及んだ試運転が完了したもの。ENECはこれにより、UAEでCO2を排出しない発電設備が140万kW追加され、合計280万kWになったと表明した。また、同発電所でUAEが目指す「総電力需要の25%供給」に向けて、道のりの半ばまで到達したと評価している。ENECによると、バラカ発電所は首長国内の電力部門の速やかな脱炭素化を促し、UAEが2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化する際も大きく貢献。「一日24時間、年中無休で無炭素な電力」を供給可能な原子力によって、経済成長に不可欠な国産電力の持続的な供給が保証されると強調している。同発電所では後続の3、4号機の建設工事も順調に進展しており、昨年11月に実質的な作業がすべて完了した3号機では起動に向けた準備作業が行われている。4号機の作業も最終段階に入ったことから、2012年に1号機の建設工事が始まって以降、発電所全体の建設進捗率は96%以上に到達した。2023年までに4基すべてが完成し、総電力需要の25%が賄われた場合、排出が抑制されるCO2の総量は年間2,240万トンになると見られており、これは乗用車480万台分の排出量に相当するとENECは指摘した。同発電所はまた、立地点があるアブダビ首長国で2025年までにクリーン電力の85%以上を発電する見通し。これにより同首長国では、この10年間の半ばまでにCO2排出量の約50%削減することが可能になるとしている。同発電所がベースロード用に発電するクリーン電力の売買に関しては、首長国水電力公社(EWEC)が2016年、全量を今後60年にわたり購入する契約(PPA)をバラカ・ワン社と締結した。バラカ・ワン社はENECの子会社で、建設プロジェクトの財務・商業活動を担当している。また、アブダビ首長国で送電インフラを保有・維持している送電送水会社(TRANSCO)も引き続きEWECに協力、UAE全土への安全かつ持続的な送電を保証する方針である。 ENECのM.I.アルハマディCEOは、「バラカ原子力発電所はUAEの持続可能な発電設備であり、1号機で営業運転開始後、1年たたない内に2号機の営業運転を開始できたことは、UAEに巨大プロジェクトの実施能力が備わっていることを証明した」と強調。「UAEは世界で最も厳しい安全基準を満たせるような」知識基盤を構築しただけでなく、実証済みの技術である原子力で電源ミックスの多様化を検討中の国々に対しては、導入を成功に導くケース・スタディをもたらした」と表明している。(参照資料:ENECの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Mar 2022
3048
昨年9月に英国で設立された先進的原子力技術の開発企業、ニュークレオ(Newcleo)社は3月16日、第4世代の原子力システムである(小型の)鉛冷却高速炉(LFR)の開発に向け、イタリア経済開発省の新技術・エネルギー・持続可能経済開発局(ENEA)と協力する枠組み協定を締結したと発表した。イタリアでは1990年までにすべての商業炉が閉鎖されているが、ENEAは液体鉛の分野で世界レベルのノウハウを蓄積。欧州原子力共同体(ユーラトム)が進めているLFR開発プロジェクトでは、同国のアンサルド社とともに主導的役割を担っている。このため、ニュークレオ社はENEAとの協力を通じて、今後7年以内に原子燃料や放射性物質を使わない電気加熱式のLFRプロトタイプ装置を、原子力推進の国で建設する。ニュークレオ社とENEAの共同研究では、LFRの熱力学的性能や機器の性能を研究するだけでなく、加速器駆動核変換システム(ADS)の設計研究も進め、現存する放射性廃棄物の大幅な削減を目指す。最終的に同社は、革新的技術を用いた安全で信頼性の高い小規模のモジュール式・先進的原子力システム(AMR)を(商業炉の運転が行われていない)イタリア以外の国で完成させ、国際市場に売り出す方針。これにより同市場では、第2世代や第3世代の原子炉設計が徐々に第4世代炉に切り替わっていくとしている。開発に際してニュークレオ社は、ENEAが保有するブラジモネ研究センターのインフラや技術力を活用。安全性分析や試験等を行うが、今回の協力協定の一環として新たな研究設備も同センターに設置する。そのために同社が投資する金額は10年間で5,000万ユーロ(約67億円)を上回る見通しで、新たに25~30名のエンジニア・チームも雇用する。同チームは今後約10年にわたり、ブラジモネ研究センターで働くことになる。ニュークレオ社のS.ブオノCEOは、ENEAとの協力について「当社には地球の今後のエネルギー・バランスを保つという重要な使命があり、そのための意欲的なスケジュールも設定した」とコメント。「ENEAの研究者との協力やブラジモネ研究センターへの投資を通じて、プロジェクトを実現するだけでなく、イタリアにおける研究開発の進歩にも貢献したい」と抱負を述べた。ENEAのG.ディアルーチェ局長も、LFRで安全かつ長期的な発電を行うという目標の達成に向け、ともに協力していく考えを表明。両者が研究活動を実施するブラジモネ研究センターの立地地域では、核融合技術の開発や放射性医薬品の製造など、その他の戦略的プロジェクトも行われている点を強調した。(参照資料:ニュークレオ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Mar 2022
3172
英国原子力産業協会(NIA)の3月17日付けの発表によると、英国議会における超党派議員連盟(APPG)の原子力推進派(原子力APPG)が同日、「英国がエネルギーの供給保証を強化するには、大小様々な規模の原子炉で2035年までに少なくとも1,500万kWの設備が新たに必要」と政府に訴える声明文を発表した。折しも、英国のB.ジョンソン首相は3月15日付けのThe Daily Telegraph紙で、「今こそ新たに原子力で大きな賭けに出るべきだ」との原稿を寄稿。労働党政権時代の歴史的な過ちを正し、ベースロード用電源として天候に左右されない原子力発電を大幅に拡大、ロシアのプーチン大統領の脅迫に翻弄されることのない盤石なエネルギー供給保証を英国内で確立すべきたと述べていた。英国政府は近々、ジョンソン首相のこのような方針を盛り込んだ国家エネルギー供給保証戦略を公表する予定である。このため原子力APPGは、同戦略に原子力を含めるという政府の方針を全面的にサポートしていくと表明。英国が天然ガスの輸入依存を断ち切り、国内の原子力再生に向けて必要とする5つのステップは以下の通りだと説明している。・「原子力発電開発に意欲的であれ」:政府の原子力開発ロードマップに、2035年までに新たに1,500万kW、2050年までに少なくとも3,000万kWの原子力発電設備を開発するとの目標を明記する。これにより、英国が先進的原子炉や大小様々な規模の原子炉を複数建設していく覚悟であることを明確に示す。・「原子力に投資する権利を獲得する」:4月の復活祭(イースター)までに、環境上の持続可能性を備えたグリーン事業への投資対象(英国タクソノミー)に原子力を含め、英国財務省が2021年6月に公表した「グリーン事業に対する資金調達の枠組み」の中で原子力を有資格の事業とする。・「原子力発電所の新設プロジェクトを加速する」:EDFエナジー社のサイズウェルC原子力発電所建設計画について、1年以内に最終投資判断が下されるよう促すほか、ウェールズ北部のウィルファ地点で大型炉の建設を提案している米ベクテル社とウェスチングハウス社のJVに対し、今日にも開発前段階の財政支援を与える。また、現政権期間中に小型モジュール炉(SMR)を10基発注するほか、その他の様々な規模の原子炉開発プロジェクトを前進させる。・「開発事業者に建設候補地へのアクセスを許可する」:使われていない原子力サイトの管理者である原子力廃止措置機構(NDA)に権限を与えて、これらのサイトを有望な開発事業者に貸与できるようにする。また、建設の可能性がある用地を保有する民間企業に対しては、原子力発電所開発に使用しなければならないことを明確に示す。・「開発プロジェクトの実施を支援する」:開発プロジェクトの実施に必要な「開発合意書(DCO)」の取得プロセスを簡素化するほか、基準に沿った形で開発事業者が時間を節約し、複数の計画立案や許認可取得手続きを同時に進められるようにする。関係するすべての規制機関にCO2排出量の実質ゼロ化を義務付けるとともに、「今後の原子力開発を可能にするための基金」に追加の資金を投入、入札の実施基準やプロセスについては詳細を公表する。今回の声明文について、原子力APPGのI.リデル=グレインジャー議長は、「最も重要視しているのは不安定な輸入燃料からどのようにして英国民の生活を守るかということだ」と表明。同議長によると、政府はCO2排出量の実質ゼロ化に必要な、信頼性の高い国産電力を原子力が提供できることに気付いている。その上で、「我々原子力APPGが今回提示した5つのステップは、英国が緊急に必要としている国家的重要インフラの獲得を可能にする」と強調している。ジョンソン首相の円卓会議©UK Governmentなお、英国のジョンソン首相はその後の3月21日、首相官邸に英国原子力産業界の首脳を招いて円卓会議を開催している。英国の原子力発電開発を加速する方法や、国内のエネルギー供給保証の改善方法について協議したもので、首相からは「クリーンで安全なエネルギー源である原子力が、英国の将来のエネルギー供給システムの中で主要部分を占める」という明確なビジョンを提示。原子力産業界の代表者からは、それぞれが国内外の専門的知見に投資して開発中の大型炉やSMRなど、様々な原子力技術やプロジェクトを紹介している。(参照資料:NIA、英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Mar 2022
3247