フランスのフラマトム社は11月2日、事故耐性燃料(ATF)100%で構成される先行使用・試験燃料集合体(LFA)を原子力産業界として初めて製造し、米メリーランド州のカルバートクリフス原子力発電所(91.2万kWのPWR×2基)に納入したと発表した。同発電所で最近行われた燃料交換の際、このLFAも装荷されたとしている。フラマトム社は現在、米エネルギー省(DOE)が福島第一原子力発電所の事故後に開始した「ATF開発プログラム」に参加しており、今回のLFAは、同プログラムの一環でフラマトム社が進めている独自のプログラム「PROtecht」の下で開発された。カルバートクリフス発電所への装荷は、同発電所を所有する米エクセロン・ジェネレーション社とフラマトム社が2019年に結んだ契約に基づくもので、LFAもこの契約に沿って、米ワシントン州リッチランドにあるフラマトム社の工場で製造された。同LFAではクロムを塗布した176本のジルカロイ合金製被覆管に、クロム合金の酸化被膜で覆ったペレットが充てんされている。フラマトム社の発表によると今回のATF 100%のLFAは、これまで米国やスイスの原子力発電所の18か月サイクル運転で実施したLFA試験の結果に基づき製造した。炉心内の温度変化に対して、同社のLFAは高い耐久性を示しており、高温条件下においても腐食や水素の発生が抑えられたとしている。フラマトムで燃料事業を担当するL.ゲフェ上級副社長は、「ATFのみの燃料集合体が商業炉に装荷されたことは、当社のみならず原子力産業界にとっても大きな節目になった」と表明。今後も「PROtecht」プログラムで原子燃料技術の開発を進め、低炭素なエネルギーの生産を一層効率的かつ信頼性の高いソリューションで支えていく」との抱負を述べた。2012会計年度予算で始まったDOEの「ATF開発プログラム」では、産官学の協力により2022年までに商業炉にLFAを装荷する計画。産業界からはフラマトム社のほかに、GE社とウェスチングハウス社の3グループが参加しており、各社が被覆管その他に新素材を用いて独自に開発したATFを、米国やその他の国の原子力発電所で試験中となっている。(参照資料:フラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Nov 2021
4347
アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電の導入計画を担当している首長国原子力会社(ENEC)は11月4日、バラカ原子力発電所(韓国製の140万kW級PWR×4基)の3号機の建設工事が完了したと発表した。2014年9月に本格着工した3号機ではすでに、冷態機能試験や温態機能試験のほか、構造性能確認試験(SIT)、総合漏えい率試験(ILRT)など様々な試験が完了。2023年の起動と送電開始に向けて作業は順調に進展しており、世界原子力発電事業者協会(WANO)など国際機関の独立した専門家による評価作業も含めて運転準備の段階に入った。連邦原子力規制庁(FANR)も同炉に運転認可を発給するのに先立ち、運転の担当機関など同炉のあらゆる側面を詳細にレビュー中である。同発電所では今年4月、アラブ諸国初の商業炉として1号機が営業運転を開始したほか、同2号機も9月に連邦内への送電を開始。現在、出力上昇試験などを実施している。3号機に関する今回の発表は、第26回・国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP26)の開催イベントの一つ「エネルギー・デー」に合わせて行われた。UAEはCO2の排出量を削減しつつ、連邦内で増加する電力需要を満たすために電力供給量を拡大、発電部門の迅速な脱炭素化を図りクリーンエネルギー社会への移行を進めているとアピール。「エネルギー・デー」に参加した46か国・地域(日米や中国、豪州、インドなどを除く)の首脳はこの日、先進国などで2030年代に、世界全体では2040年代にも石炭火力を廃止し、CO2削減対策を持たない新たな発電所の建設を中止するほか、公的な輸出支援も終えることなどを約束している。「COP」に関してUAEは、(3号機が送電開始予定の)2023年に開催される「COP28」の誘致を希望。UAEの明確な方針として、地球温暖化への対応でCO2排出量の削減を図り、2050年までに実質ゼロ化するということを示しており、同じく誘致を希望していた韓国も含め、国連アジア・太平洋地域の諸国からはすでに支持を取り付けた。ENECによると、バラカ3号機が完成したことによりUAEは140万kWの無炭素電力源を速やかに追加し、クリーンエネルギーへの移行で主導的役割を果たしていく。再生可能エネルギーの間欠性を補えるベースロード用のクリーンエネルギー源として、原子力を活用するとの国際誓約を果たすとともに、地球温暖化の解決策が著しく進展していることを実証した。ENECのM.I.アルハマディCEOも、「当社は原子力でUAEの持続可能な成長と繁栄を目指しており、一日24時間、年中無休でクリーンな電力を豊富に生産する原子力発電所は、再生可能エネルギーを補うだけでなく、水素エネルギーなど他のクリーンエネルギーへの橋渡しになる」と指摘。今後60年間は、原子力で地球温暖化に直接取り組むとの決意を示したほか、15年前に原子力による電源の多様化ビジョンを描き、確固たる信念を持ってバラカ発電所建設計画を今日の実現に導いたUAE指導者達に謝意を表明した。(参照資料:ENECの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
05 Nov 2021
3610
ルーマニアの大統領府は11月2日、同国のK.ヨハニス大統領と米国のJ.ケリー気候担当大統領特使による協議の結果、民生用原子力分野における米国との連携協力を通じて、ルーマニア初の小型モジュール炉(SMR)を2028年までに国内のエネルギー生産システムに含めると発表した。同じ日に米ホワイトハウスも、クリーンエネルギー経済の構築に向けたJ.バイデン大統領の声明文を公表しており、その中で「米国とルーマニア両国は米国籍のニュースケール・パワー社が開発した最新技術のSMRをルーマニア国内で建設する方針である」と表明。ルーマニアの国営原子力発電会社(SNN)とニュースケール社は今後、出力7.7万kWの原子力モジュール6基で構成されるPWRタイプの一体型SMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を建設するため、商業契約を結ぶことになる。ヨハニス大統領とケリー特使の会談は、英国グラスゴーにおける国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP)に合わせて開催された。ルーマニア大統領府によると、地球温暖化との闘いは両国がともに最優先事項としている課題であり、両者は主に低炭素なエネルギー技術の開発と機器の製造、活用に関わる協力について協議。原子力と再生可能エネルギーの2分野における二国間協力の強化に加えて、エネルギーの貯蔵や輸送部門の電化などを話し合った。同大統領府はまた、エネルギーの生産システムから排出されるCO2を削減するため、両国は今回、互いに協力する具体的一歩を刻んだと指摘。ルーマニアは米国製のSMR建設での協力により、SMR技術のバリューチェーンを活用してルーマニア国内でのSMR製造に参加することを希望。その他の国においてもSMRが建設・運転されるよう、関係する支援や人的資源開発の準備を行いたいとしている。一方のホワイトハウスは、今回の連携協力によってSMR技術がルーマニアにもたらされるだけでなく、世界のSMR開発レースで米国の技術が一歩先んじることになると表明。ニュースケール社が締結する商業契約ではNPMがルーマニアで建設されることは、両国内で3千人~3万人規模の雇用を創出する可能性があり、発電部門の脱炭素化、およびCO2排出量が実質ゼロの未来にも大きく貢献すると指摘した。なお、ニュースケール社も同日にSNN社との共同声明で、ルーマニアでクリーンなエネルギー技術を発展させるため、両社が一致団結して協力していく考えを表明している。ニュースケール社はすでに2019年、ルーマニアにおける同社製SMRの建設可能性を探るため、SNN社と了解覚書を締結している。2020年8月には、モジュール1基あたりの出力が5万kWの「NPM」について、SMRとしては米国内で唯一、原子力規制委員会(NRC)から「標準設計承認(SDA)」を取得した。SMR技術のサプライチェーン開発や設計の標準化、SMR発電所の搬入から起動に至るまでの計画立案など、ニュースケール社がSMRの商業化を目指して強力な推進力を備えている点を強調した。(参照資料:ルーマニア大統領府(ルーマニア語)、米大統領府、ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Nov 2021
3480
トルコ初の原子力発電所となるアックユ発電所(120万kWのロシア型PWR=VVER×4基)を地中海沿岸で建設しているロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は10月29日、トルコの原子力規制庁(NDK)が同社傘下のアックユ原子力発電会社(ANPP)に対し、4号機の建設許可を発給したと発表した。これにより建設サイトでは、安全関係設備も含め同炉のすべての設備の建設・設置工事が実施可能になる。ANPP社は年内にも、原子炉建屋とタービン建屋のベースマット下部に敷くコンクリート・パッドの作業などを開始し、来年初頭にはこれらの建屋で最初のコンクリートを打設する計画である。ANPP社は2020年5月、NDKに4号機の建設許可申請を行っており、その際、同炉の予備的安全解析報告書(PSAR)や確率論的安全分析(PSA)、および安全性と信頼性を確認するその他の文書も提出した。その後、今年の6月末にNDKが部分的建設許可(LWP)を発給したことから、ANPP社はLWPに基づき工事測量やピット掘削などの準備作業を実施していた。 今回4号機の建設許可が発給されたのを受け、ANPP社は「建設の安全性・健全性に関わるNDK審査では、4基すべての建設計画の許認可手続きが完了した」と指摘している。トルコ初の原子力発電所となることから、アックユ発電所の建設工事ではANPP社がトルコ政府の様々な関係機関から120もの許可や認可を取得する必要があった。これまでに同社は、建設許可のほかに環境影響声明書(EIA)に対する肯定的評価や発電許可、建設サイトに資機材を輸送する「東部貨物(船舶用)ターミナル」の操業許可など、主要な許可をすべて取得。今後NDKは各ユニットの建設状況に応じて、燃料の装荷時や起動時、従業員の適格性確認等で申請書の審査を行うことになる。アックユ原子力発電所では2018年4月に1号機、2020年4月に2号機が本格着工しており、ANPP社は今年の10月下旬、1号機用格納容器の内殻となるスチール製構造物に最終リング(4段目)を据え付けた。また、2号機では9月の末に、原子炉シャフトの主要な機器を設置。今年の3月中旬には、3号機用原子炉建屋の基礎部分に最初のコンクリートを打設している。同社はトルコ側の要望を受けて、同国が建国100周年を迎える2023年に1号機の運転開始を目指しているほか、残りの3基も順次完成させていく予定。トルコはこれら4基で、国内電力需要の約10%を賄う方針である。(参照資料:ANPP社の発表資料①、②、③、ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Nov 2021
2317
英国財務省のR.スナク大臣は10月27日、毎年一回秋に取りまとめている予算案の修正報告書と、2025年まで今後4年間の歳出計画案を発表した。このなかで同大臣は、大型原子力発電所を少なくとも1つ建設する計画について、現政権の在任期間中に最終投資判断が下されるよう、費用対効果が高いことと関係承認が得られることを条件に、最大で17億ポンド(約2,656億円)を新たに歳出すると表明。現在ヒンクリーポイントC原子力発電所(160万~170万kWの欧州加圧水型炉:EPR×2基)を建設中のEDFエナジー社に対しては、イングランド南東部のサフォーク州でサイズウェルC原子力発電所(160万~170万kWの欧州加圧水型炉:EPR×2基)を新たに建設するため、昨年12月以降、積極的に交渉を進めている点を強調した。折しも、英国政府のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は前日の26日、大型原子力発電所の新規建設を支援する資金調達の枠組みとして、「規制資産ベース(RAB)モデル」の導入を目指した「原子力資金調達法案」を立案したと発表した。スナク財務大臣も今回の歳出計画案ではこのほか、B.ジョンソン首相が英国内の温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロ化するため昨年11月に発表した「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」に沿って、「排出量実質ゼロ化のための技術革新ポートフォリオ」に10億ポンド(約1,562億円)歳出すると表明。10ポイント計画では具体的に、販売間近の革新的な低炭素技術の開発を促進するとしている。また、小型モジュール炉(SMR)や先進的モジュール炉(AMR)など次世代原子炉技術の開発を支援するため、BEISが「CO2実質ゼロ化戦略」の中で投入を誓約していた「先進的原子力基金」の3億8500万ポンド(約599億円)についても、同様に調整したことを明らかにしている。歳出計画案ではこれらに加えて、クリーンエネルギー社会の構築に向けたその他の方策として、輸送部門の脱炭素化計画の支援に61億ポンド(約9,530億円)を投入する計画である。CO2を排出しない電気自動車の台数を大幅に拡大しつつ、クリーンな航空機や船舶の開発を後押し。バスや自転車、徒歩による小旅行の実施も奨励するとしている。このような予算案について、英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックス理事長は同日、歓迎の意向を表明。「原子力に対する信任投票のようなもので、将来的にSMRやAMRの建設を可能にするとともに、大型原子力発電所の建設計画についても投資を促進する歴史的一歩だ」と評価した。「実際、新たな原子力発電所への投資抜きで英国がCO2排出量を実質ゼロ化することは難しいし、英国政府は今回、クリーンエネルギー社会への移行で原子力が重要と考えていることを、投資家に対して明確に示した」と述べた。同理事長はまた、「この投資は一層グリーンな将来に向けた投資であるだけでなく、英国全土で雇用や専門技術を生み出すことになる」と指摘している。(参照資料:英国政府とNIAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Nov 2021
3363
フランスの世論調査とコンサルティングの専門企業であるBVA(Brûlé Ville associés)社は10月26日、オラノ社の依頼を受けて国内で実施した世論調査で、原子力に対するフランス国民の支持率が増加しているとの結果を公表した。2019年に実施した初回の調査結果と比較して、今回7ポイント増の53%が「フランスのエネルギー自給にとって国内の原子力部門は必要不可欠だ」と回答したほか、10ポイント増の64%が「フランスの将来のエネルギーミックスは原子力と再生可能エネルギーで構成される」と回答。その一方で、前回調査から11ポイント減少したものの、国民の過半数である58%が依然として「原子力はCO2を排出して地球温暖化を促進している」との認識であることが明らかになった。この調査は今年5月3日から6日にかけて行われ、18歳以上の成人1,500名からインターネットで回答を得た。それによると、回答者の50%が国内の原子力部門はフランスにとって「強み」であると捉えており、数値は前回調査から3ポイント上昇していた。その理由として、「エネルギー自給にとって不可欠」と答えた53%のほかに、39%は「安定して発電が可能な電源」と答えるなど、原子力が果たす肯定的な役割を指摘している。また、国内の原子力産業を「弱点」と捉えている国民の割合は、前回調査の34%から15%まで減少した。「強み」でも「弱点」でもないとした人は今回35%だったが、41%の国民は「原子力産業は国内で雇用を創出している部門」と認識。「雇用を減らしている」と答えた人の割合は8%に留まった。さらに、「原子力は地球温暖化を促進している」と答えた人のうち、「(温暖化に)重要な影響を及ぼしている」とした国民の割合は、前回調査の34%から大幅に低下し19%となった。その理由としてオラノ社は、「この問題に関する啓蒙教育の効果」と説明している。これに加えて、「石油や石炭、天然ガスによる発電のCO2排出量は原子力より少ない」と考える国民の割合も、今回は半分に低下する結果となった。ただし、放射性廃棄物が原子力の否定的側面である認識に変わりはなかった。原子燃料がリサイクル可能であると知っているフランス国民の割合は、前回調査の61%から66%に上昇した。それにも拘わらず、今回は59%が「リサイクル不可能な放射性廃棄物が生成されることは、原子力における主要な懸念事項だ」と回答していた。世論調査の結果全般についてオラノ社のP.クノルCEOは、「原子力に対するフランス国民の認識が改善されたことが確認できた」と表明。「原子力は再生可能エネルギーと違って、途切れることなく低炭素な電力を供給できるため、地球温暖化との闘いにおいても大きく貢献する。エネルギーの移行で原子力が果たす重要な役割が一層幅広く認識されるよう、今後も当社グループや原子力産業関係者が一丸となって啓蒙努力を続けていかねばならない」と強調した。(参照資料:BVA社(仏語)とオラノ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Oct 2021
3909
英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は10月26日、国内で大型原子力発電所の新規建設を支援する資金調達の枠組として、「規制資産ベース(RAB)モデル」の導入を目指した「原子力資金調達法案」を立案したと発表した。この法案が成立すれば、原子力発電所の建設プロジェクトに民間投資が幅広く集まることになり、海外のデベロッパーの資金調達に依存せずに済むとBEISは指摘。また、建設に必要な資金の調達コスト(借入利子)も削減されることから、従来の資金調達方法と比較して、プロジェクトの全期間中に少なくとも300億ポンド(約4兆7,000億円)以上の節約につながると予想される。これにともない、消費者の電気代も削減されると強調している。英国では現在、フランス資本のEDFエナジー社が南西部サマセット州でヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所(172万kWの欧州加圧水型炉:EPR×2基)を建設中だが、開発リスクに対する英国政府の保証として発電電力の売買に「差金決済取引(CfD)」を適用することが決まっている。しかし、CfDではデベロッパーが建設資金を全面的に賄わねばならず、発電所の運転開始後に初めて資金の回収を開始できるため、カンブリア州やウェールズにおける後続の新設計画はキャンセルされた。BEISの説明によると、RABモデルはすでに、ロンドンの下水道改善プロジェクトやヒースロー空港の第5ターミナル建設といった国内の大型インフラ開発に適用されており、「十分実証され確実な資金調達モデル」だという。具体的には、事業者が当該インフラ設備を提供する代わりに、経済規制当局の許可を受けて消費者から規定の価格を利用料金から徴収。投資家は設備の建設と操業にともなう(コストの超過や計画の遅れなどの)リスクを消費者と分け合うことになるため、資金の調達コストも大幅に軽減される。大型原子力発電所を新規に建設する場合は、ガス・電力市場局「Ofgem」が担当の経済規制当局となる。建設工事の初期段階から、多くても年間数ポンドを英国の典型的な世帯の電気代に上乗せするが、BEISの試算では、本格的な工事期間中の負担は月額平均で1ポンド(約157円)以下になる。BEISはこのような建設工事期間中の負担金は、この段階から確実な利益率を約束するとともに、資金の調達コストを抑えることにつながると説明。プロジェクトの確実性という点で民間部門の投資家に安心感を与え、最終的には消費者の電気代も削減されると述べた。BEISのK.クワルテング大臣は今回、「天然ガス価格の世界的な上昇という状況のなかで、英国は信頼性が高くて価格も手頃な原子力で、今後の電力供給を確保しなければならない」と述べた。既存のCfD方式では、数多くの海外デベロッパーが撤退するなど、英国の開発計画は何年も後退した。「大型原子力発電所の建設に英国内の年金基金や民間部門の投資家を呼び戻すため、英国には新たな資金調達アプローチが緊急に必要だ」と強調した。同大臣によれば、原子力は化石燃料発電への依存度を下げるだけでなく、天然ガス価格の乱高下にも対応するなど、英国の将来の電源ミックスにおいて重要な役割を担う。国連経済社会理事会の欧州経済委員会(UNECE)や国際エネルギー機関(IEA)が指摘したように、今後数10年間に倍増が予想される世界の電力需要を満たし、英国が「2050年までのCO2排出量の実質ゼロ化」を達成するには、再生可能エネルギーのさらなる開発と並行して、新規の原子力発電所の建設が重要になると述べた。(参照資料:BEISの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
27 Oct 2021
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は10月21日、極東のサハ自治共和国内で建設を計画している同国初の陸上設置式小型モジュール炉(SMR)向けに、傘下の燃料製造企業TVEL社が試験用燃料集合体を製造したと発表した。ロスアトム社の国際事業部門であるルスアトム・オーバーシーズ社(JSC RAOS)は、2028年までにサハ共和国北部のウスチ・ヤンスク地区ウスチ・クイガ村で、電気出力5.5万kWの陸上設置式SMR「RITM-200N」を完成させる方針。このため、今回の試験用燃料集合体は、モスクワ州エレクトロスタリにあるTVEL社のエレマシュ工場で製造された。TVEL社は2025年にもエレマシュ工場で同SMR用燃料集合体の製造を開始し、2026年には初回装荷分の燃料一式を製造する予定。これに先立ち製造した今回の試験用燃料集合体は、ダミー燃料とともに様々な照射前試験や研究に使われる。ロスアトム社の発表では、陸上設置式SMRの建設は(サハ共和国の首都である)ヤクーツク北部の北極帯で採算性が見込まれるプロジェクトを実施する際、電力供給など主要インフラの課題克服に有効と期待される。建設予定の「RITM-200N」では、取り換えることが出来ない機器の供用期間が約60年であるため、約60年間は信頼性の高い電力を安定した価格で同地に供給できるとした。同社によると、大型炉の建設は都市部の基幹送電網が届かない遠隔地域では合理性(優位性)が乏しく、SMRこそ持続可能で信頼性の高い電力供給に最適なオプションになる。SMRはさらに、老朽化したディーゼル発電所や石炭火力発電所をリプレースしてCO2の排出量を削減できるなど、数多くの長所があると強調している。ロシアでは2020年5月、電気出力3.5万kWの小型炉「KLT-40S」を2基搭載した海上浮揚式原子力発電所(FNPP)の「アカデミック・ロモノソフ号」が、極東チュクチ自治区内の湾岸都市ペベクで商業運転を開始した。ロスアトム社傘下のOKBMアフリカントフ社はこれに続いて、「KLT-40S」の特性をさらに生かしたSMRシリーズ「RITM」を開発。熱出力17.5万kW~19万kWの「RITM-200」は、ロシアの原子力砕氷船に搭載した小型炉のこれまでの運転経験を統合したもので、同炉を2基搭載した最新の原子力砕氷船「アルクティカ」はすでに試験航行を終え、昨年10月に北極海航路で正式就航した。「RITM-200」を2基ずつ搭載する原子力砕氷船「シビル」と「ウラル」の建造も、現在進行中である。この「RITM-200」は、FNPPに搭載する「RITM-200M」(電気5万kW)と陸上に設置する「RITM-200N」の2種類に分類されるが、サハ共和国内での「RITM-200N」建設計画については、ロスアトム社とサハ共和国政府が昨年12月、同炉が発電する電力の売買価格で合意に達した。また、ロシア連邦の環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)は今年8月、この計画に対して建設許可を発給。建設に必要な環境影響声明書の作成や様々な調査の大部分がすでに完了し、サハ共和国内で公開ヒアリングも開催済みであることから、ロスアトム社は2024年にも「RITM-200N」を使ったSMR発電所の建設を開始するとしている。(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
26 Oct 2021
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米国のサザン社は10月21日、子会社のジョージア・パワー社がA.W.ボーグル原子力発電所で建設している3、4号機(PWR、各110万kW)について、運転開始スケジュールを前回7月の改定時から3か月先送りし、それぞれ2022年の第3四半期と2023年の第2四半期にすると発表した。理由として、建設工事にともなう課題への取り組みに引き続き時間が必要なことと、両炉の安全性と品質の確保という点で基準を全面的に満たすには、包括的な試験の実施が必要になる点をと指摘。3号機では早ければ2022年の第1四半期にも燃料の装荷が可能だが、これを同年5月とすることで第3四半期の確実な運転開始に向け十分な準備が整うとしている。ボーグル3、4号機の建設プロジェクトは2013年の3月と11月にそれぞれ始まっており、ジョージア・パワー社が45.7%出資参加しているほか、オーグルソープ電力が30%、ジョージア電力公社(MEAG)の子会社が22.7%、ダルトン市営電力が1.6%出資している。着工当初、営業運転の開始時期はそれぞれ2017年の第4四半期と翌2018年の第4四半期に設定されていた。しかし、同プロジェクトは米国内でのAP1000建設では最初の事例であり、建設のあらゆる段階で様々な課題に遭遇した。また、建設工事を一括で請け負っていたウェスチングハウス(WH)社が2017年3月に倒産を申請。その後はサザン社のもう一つの子会社で、両炉の運転を担当予定のサザン・ニュークリア社が建設プロジェクトの管理業務を引き継いだ。さらに、3号機の建設工事については今年8月、米原子力規制委員会(NRC)が「安全系に関わる電気ケーブルの配管が正しく設置されていない」と指摘している。ジョージア・パワー社のC.ウォマック社長兼CEOはスケジュールの改定について、「着工当初から申し上げているように、当社ではスケジュールに固執して両炉の安全性や品質で妥協するのではなく、最も効果的と思われる方法で作業を進めている」とした。米国で約30年ぶりとなる新規原子炉の建設では、異常な事態が複数持ち上がったが、同社はこのような課題を克服し持ちこたえてきたと指摘。建設サイトでは、建設工事が着実に進展していると強調した。サザン社の発表によると、3号機の建設工事ではこの夏に温態機能試験が完了し、建設進捗率は99%に到達。4号機の作業も含めたプロジェクト全体の進捗率は約95%となった。高い安全性を有するこれらの原子炉を通じて、ジョージア・パワー社はクリーンで信頼性の高い無炭素な電力を60~80年にわたり50万もの世帯や企業に提供する方針。両炉がひとたび運転を開始すれば、原子力を含む同社の多様なエネルギーミックスによって、新たな投資が呼び込まれるとともに経済成長を促進、新規の雇用も創出するなど、価格が手ごろで確実なエネルギー供給インフラを維持できるとしている。(参照資料:サザン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Oct 2021
3663
フメルニツキ原子力発電所©Energoatomウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は10月20日、ウェスチングハウス(WH)社製AP1000技術を使った最初の原子炉建設を年末、あるいは来年の年始に開始するとの見通しを明らかにした。エネルゴアトム社は今年8月、国内で複数のAP1000を建設していくため、WH社と独占契約を締結している。同社が今回、AP1000設計の「試験ユニット」と表現したこの原子炉は、「フメルニツキ原子力発電所内で建設」としていることから、建設工事が28%で停止中の4号機(K4)(100万kWのロシア型PWR=VVER)の完成工事になると見られている。この工事について、ウクライナは近いうちに、政府間協定も含め複数の関係協定を米国と結ぶ予定。この計画ではまた、米国で2017年に建設計画が頓挫したV.C.サマー2、3号機(各110万kWのPWR)用の機器・設備を活用する可能性があると、エネルゴアトム社は今年9月に発表している。WH社と独占契約を締結した際、エネルゴアトム社はK4に加えて、さらに4基のAP1000を建設すると表明しており、これらの総工費は約300億ドルになるとの見方を示した。資金は主に米輸出入銀行(US EXIM)からの借り入れで調達するが、機器類の約60%は国内企業から購入する方針である。今回明らかにされたK4建設の見通しは、同社が今月20日から22日にかけて開催中の「第1回・ウクライナ天然ガス投資会議(UGIC)」で、同社のP.コティン総裁代理が「ウクライナにおける原子力産業の開発戦略」として述べたもの。この会議は、ウクライナのエネルギー部門に諸外国からの投資を呼び込み、ウクライナ経済のさらなる発展を促すことが目的である。コティン総裁代理はまず、「我々のエネルギー部門には幅広い開発ポテンシャルがあり、低炭素な発電に関しては特にポテンシャルが大きい」とした。同総裁代理によると、世界では①2050年までにエネルギー消費量が1.5~2倍に増加、②温室効果ガスの排出量削減のため大規模な脱炭素化が必要――という傾向が見られることから、ウクライナでは輸送や産業部門の全面的な「電化」を計画している。エネルゴアトム社はウクライナで唯一の原子力発電事業者であるため、明確な戦略に従って原子力発電設備を開発し、旧ソ連時代に着工したVVERを刷新していく方針。WH社との戦略的な契約の締結も、この流れに沿ったものであるとの認識を示唆している。エネルゴアトム社はまた、原子力発電所を使った水素製造も検討中である。コティン総裁代理は、「原子力発電所ではベースロード運転が行われているが、電力需要が下がれば原子力発電所の電力で水素を製造できるし、需要が戻った時点で電気分解を止めればいい」と指摘した。このようなアプローチの下で、エネルゴアトム社は収益源の多様化を図るとともに、原子力発電所で柔軟性の高い運転を行い、その余剰電力を有効に活用。電気分解による水素製造はクリーンエネルギーへの移行を後押しするだけでなく、欧州連合(EU)が2020年7月に発表した(脱炭素化に貢献する)「欧州水素戦略」を実行することにもなるとしている。(参照資料:エネルゴアトム社の発表資料(ウクライナ語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
22 Oct 2021
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米GE社の10月19日付け発表によると、傘下のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は同社製小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の商業化をカナダで促進するため、BWXTカナダ社と設計・製造に向けたエンジニアリングおよび資機材の調達等での協力で合意した。カナダでは、オンタリオ州の州営電力であるOPG社が2020年11月、同社保有のダーリントン原子力発電所で早ければ2028年にもいずれかのSMRを完成させると発表、それに向けた準備を開始している。同社はまた、SMRデベロッパーの候補として、GEH社および同じく米国籍のX-エナジー社、カナダのテレストリアル・エナジー社の3社を選定していた。OPG社がBWRX-300を建設すると最終決定した場合、BWXTカナダ社は同設計の機器・設備の製造に向け、詳細なエンジニアリングと設計の業務(サービス)を実施する。将来的には、カナダ国内でのBWRX-300建設に必要な主要原子炉機器も供給していく考えだ。BWRX-300は電気出力30万kWの軽水炉型SMRで、2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得した第3世代+(プラス)のGEH社製設計「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」を最大限に活用している。同社の説明によると、「BWRX-300」では自然循環技術や受動的安全システムなどの画期的技術が組み込まれており、設計を大幅に簡素化したことで、単位出力当たりの資本コストはその他のSMRと比べて大幅に削減されている。 同設計ではまた、グローバル・ニュークリア・フュエル社が開発した認証済みの高性能燃料集合体「GNF2」を採用。ほかにも実証された機器技術や専門的知見を多数取り入れていることから、GEH社は「最も低リスクでコスト面の競争力も高いBWRX-300は、SMR市場で最初に実現する設計になる」と強調している。GEH社とBWXTカナダ社による今回の協力合意は、昨年6月に両社が結んだ協力覚書に基づくもので、GEH社は「オンタリオ州でBWRX-300の建設を進めるにあたり、カナダ国内でサプライチェーンを構築する重要な節目になった」と説明。「原子炉の主要機器を供給するBWXTカナダ社の能力は、オンタリオ州がそれらの高度な機器の製造の世界的拠点(ハブ)となることに貢献する」と述べた。BWXTカナダ社も、「GEH社との協力により、BWRX-300を建設する世界中のプロジェクトに参加する機会が得られる」としている。(参照資料:GE社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
21 Oct 2021
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英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は10月19日、英国が2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指すにあたり、どのように方策を進めていくか包括的な計画をまとめた「ネットゼロ戦略」を公表した。原子力はこの中で重要な役割を担っており、小型モジュール炉(SMR)などを今後建設していくための投資として1億2,000万ポンド(約190億円)を含めている。この戦略で英国政府は、クリーンエネルギーを主力とする持続可能な将来社会に向けて、2030年までに最大900億ポンド(約14.2兆円)の民間投資を活用する計画。消費者や企業がクリーンエネルギー社会に移行するのを後押しするとともに、関連産業で高サラリーが見込める雇用約44万人分の創出を支援する。また、輸入化石燃料に対する英国の依存度を下げる一方、持続可能なクリーンエネルギーの開発を促進して、世界的なエネルギー価格の急上昇から英国民を防護するとしている。この戦略は、来週から英国グラスゴーで開催される第26回・国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP)に先立ち準備されたもので、同国のB.ジョンソン首相はこの席で、他の経済大国にも同様の計画を独自に策定することを求める方針。同戦略はまた、パリ協定に基づく英国の2つ目の長期的なCO2排出削減戦略として、「気候変動に関する国連枠組条約(UNFCCC)」にも提出される予定である。BEISによると、今回の戦略は昨年11月にジョンソン首相が発表した「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」に基づき作成された。英国政府は今月7日、発電部門の全面的な脱炭素化を達成する目標スケジュールを15年前倒しし、2035年とするプランを発表。この目標スケジュールは、今回の戦略でも発電部門の主要政策として明記されており、BEISはこれを達成するため、2030年までに4,000万kWの洋上風力発電設備の建設を、陸上風力や太陽光の設備増設とともに進めるとした。原子力に関しては「現政権の在任期間中に、少なくとも大型原子力発電所を1つの建設計画について確実に最終投資判断を下す」と明言した。実際にBEISは昨年12月、英国南東部のサフォーク州でサイズウェルC原子力発電所を建設する計画について、事業者のEDFエナジー社と正式に交渉を開始。最終投資判断の早急な確定に向けて、建設工事の資金調達費用を抑制可能になるよう規制資産ベース(RAB)の資金調達モデルを確立するとしている。同戦略はまた、「将来の原子炉建設を可能にする基金」として、新たに1億2,000万ポンド(約190億円)を投入する方針を明記した。CO2排出量の実質ゼロ化に向けて、次の政権が後続の原子炉を建設していくための措置を講じたもの。ウェールズ北部のウィルファ・サイトや複数の有望な建設候補地を念頭に、将来的にSMRや先進的モジュール炉(AMR)など、最新技術の原子炉を建設する選択肢を維持することになる。同基金の運営方法など詳細については、費用対効果を考慮した建設ロードマップの詳細とともに、BEISが2022年に公表する計画である。同戦略ではさらに、「先進的原子力基金」の3億8,500万ポンド(約610億円)の中から、SMR設計の開発を支援する。2030年代初頭にAMR実証炉を建設する計画も進行中だが、大型炉や小型炉のいずれにしても、英国内には利用可能なサイトが数多くあるとBEISは強調している。(参照資料:BEISの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Oct 2021
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国際原子力機関(IAEA)は10月15日、スロベニア唯一の原子力発電所であるクルスコ発電所(PWR、72.7万kW)で、今月4日から実施していた(長期運転の実施に先立つ事前の)長期運転安全評価(SALTO)が14日付で完了したと発表した。1983年に営業運転を開始した同発電所では、2023年に営業運転開始後40年目を迎える。事業者のクルスコ原子力発電会社(NEK)は、国内総発電量の約三分の一を賄う同発電所の運転期間を、2043年まで20年延長することを計画。運転期間の長期化(LTO)に際しIAEAの安全基準を満たしているか、事前のSALTOチームによるレビューをIAEAに要請していた。同チームはクルスコ発電所における準備活動について、「タイムリーに進められており、多くの経年化管理対策はすでにIAEAの安全基準を満たしている」と評価。同発電所に対しては、レビュー結果へのさらなる取り組みと、安全なLTOに向けて機器類の経年化管理レビューなど、改善が必要な部分の対策をすべて進めるよう奨励した。米ウェスチングハウス(WH)社製のPWRである同発電所はスロベニア東部に位置しており、隣国クロアチアと共同で国営スロベニア電力(GENエネルギア社)が所有。同発電所の運転期間の20年延長に関しては、スロベニアの原子力安全規制当局がすでに2015年7月に承認している。今回のIAEAの事前SALTOチームは、加盟6か国から来た専門家7名に3名のIAEAスタッフを加えた10人構成で、安全なLTOに向けた同発電所の準備状況や関係組織、プログラムなどを検証。その結果、同発電所で行われている良慣行や、世界中の原子力産業界がシェアすべき良好実績を次のように指摘した。・安全性に関わるケーブルの経年化管理で、先を見越した対応や状況に応じた活動を実施する際、しっかりした構成の包括的プログラムが使われている。・発電所内に効率的な企業内ネットワークが構築されており、すべての従業員が管理アプリや関係するプログラム、文書、手順書、データ・記録等を利用することができる。・発電所の蒸気発生器(SG)経年化管理プログラムによって、国際的な安全基準を凌ぐ卓越した管理活動が行われている。一方、以下の点については、IAEAチームはLTOの準備活動をさらに改善して進めることを勧告した。・2022年に実施予定の大規模安全審査に向け、綿密な管理計画を立てる。・所内のシステムや構造物、機器類の経年化管理レビューを完了させる。・LTOを補助する活動として、効果的な知識管理対策を実施する。なお、GENエネルギア社は今年7月、同発電所で2基目の原子炉を建設する計画(JEK2プロジェクト)の実施に向け、準備作業を開始した。これは同プロジェクトの実行可能性調査(FS)の結果に基づき、スロベニア政府のインフラ省が「エネルギー(事業)許可」をGENエネルギア社に発給したことによるが、この許可により2号機の建設が決定したわけではない。同社によると、FSではスロベニアが将来的に低炭素な電力への移行を効率的に果たし、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成する上で、プロジェクトの実施は必要との結論が示されている。(参照資料:IAEAの発表資料、NEKの発表資料(スロベニア語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Oct 2021
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フランス全土の原子力発電所をすべて保有するフランス電力(EDF)は10月13日、原子力発電の導入を計画しているポーランド政府に対し、2~3サイトで4~6基(660万~990万kW)のフラマトム社製・欧州加圧水型炉(EPR)を建設することを提案した。この提案は予備的なもので、EDFは建設計画の見積もりコストとスケジュール、発電所内の配置やポーランド国内におけるサプライチェーンの構築に至るまで、計画の主要パラメーターをEPC(設計・調達・建設)契約の締結に向けた幅広いオプションとしてポーランド側に提示。この規模の計画であれば、ポーランドは電力需要の40%までを少なくとも60年間満たせるほか、同国のエネルギー自給にも貢献する。ポーランド経済に対しては、数え切れないほど多くの恩恵がもたらされると強調している。EDFによると今回の提案は、ポーランド政府が2020年10月に策定した原子力開発計画(PPEJ)の主要目的の達成を意識した内容である。欧州連合(EU)が掲げた「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化する」目標に合わせ、ポーランド政府の意欲的なエネルギー移行計画を下支えできるよう、EDFはこの提案で両国の戦略的パートナーシップにおける原則を設定。EPRという安全かつ信頼性と効率性に優れた無炭素電源により、年間に最大5,500万トンのCO2が排出されるのを回避し、実質ゼロ化に向けた道筋を付けるのに役立つと明言している。ポーランドにおける大型炉の建設計画には、フランスのほかに米国もウェスチングハウス(WH)社とともに参加を働きかけている。また、これに加えてポーランドでは複数の小型モジュール炉(SMR)の建設も検討されており、GE日立・ニュクリアエナジー社やニュースケール社のSMRが候補に挙がっている。 「フランス2030」で原子力分野の革新的技術開発を促進EDFの今回の発表は、E.マクロン大統領が新たな産業投資政策として「フランス2030」を公表した翌日に行われた。同大統領はこの政策の第一番目の目標として、2030年までに10億ユーロ(約1,324億円)を投じて、SMRや先進的原子炉の技術を実証、放射性廃棄物のより良い管理で世界市場への参入を目指すと表明した。また、少なくとも2つの大規模電解槽を建設してグリーンな水素を大量生産するほか、この年までにCO2排出量を2015年比で35%削減して産業全体の脱炭素化を図るとしており、これら3つの目標だけで80億ユーロ(約1兆590億円)以上を投資する。さらに、200万台の電気自動車とハイブリッド自動車を生産し、低炭素航空機の初号機を開発。これらの輸送部門には、約40億ユーロ(約5,295億円)を投じる方針である。同大統領の演説動画を英訳したメディア報道によると、大統領は原子力について「フランスの基幹製造技術であるため、その再編成を政策目標の第一番目に位置付けた」と説明。「今後も必要な技術であり、継続的に開発していくことは非常に重要だ」と述べた。同大統領はさらに、政策目標の二番目に挙げた水素製造と原子力部門は近い関係にあると指摘。国内の商業炉56基が発電したクリーン電力で水素を製造することは、フランスが世界の水素製造部門でリーダーになる可能性を意味すると強調している。(参照資料:EDFの発表資料、仏大統領府の発表資料(仏語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月13、14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Oct 2021
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英国グラスゴーで今月末から、第26回・国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP)が開催されるのに先立ち、国際エネルギー機関(IEA)は10月13日、世界のエネルギー部門の長期的動向を予測・分析した年次報告書「世界エネルギー見通し2021年版(WEO-2021)」を、COP26向けのハンドブックとして公表した。その中でIEAは、CO2排出量の増加や自然災害、エネルギー市場における価格の変動といった多くの問題が発生するなか、各国政府はクリーンエネルギー社会への移行を加速する意気込みやアクションを、COP26の場で明確に示す必要があると指摘。世界では近年、太陽光や風力、電気自動車といった低炭素エネルギー技術の開発がますます加速しているが、「それでもなお、2050年までのCO2排出量の実質ゼロ化に向けて、世界が排出量を長期にわたり持続的に削減していくには、移行ペースが余りにも遅い」と警告している。IEAは今年5月、2050年までにCO2排出量を実質ゼロとする際の、世界のエネルギー部門におけるロードマップを特別報告書として公表したが、今回のWEO-2021はそのロードマップから、3つのシナリオを主に分析している。まず、世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比較して1.5度℃以下に抑えるという「2050年までの排出量実質ゼロ化シナリオ(NZE)」を活用。また、各国政府が実際に実施中、あるいは発表した政策のみを考慮し、2100年までに平均気温が約2.6℃上昇することを想定した「公表政策シナリオ(STEPS)」、および各国政府の発表した誓約が期限内に完全に達成され、世界のCO2排出量を2050年までに40%削減、2100年までの平均気温の上昇を約2.1℃に抑えるという「発表誓約シナリオ(APS)」も使用している。WEO-2021によると、世界では今年になって石炭の消費量が大きく拡大しており、CO2の年間の増加量は過去2番目の大きさとなる見通しである。IEAのF.ビロル事務局長は、「各国政府がそのために取っているクリーンエネルギーによる対策は、我々のエネルギー・システムに化石燃料が及ぼす不可避な影響という困難に直面している」と指摘。同事務局長によると、この問題を解決するべく各国政府は、COP26でクリーンかつ強靭な発電技術の迅速な拡大を将来に向けて約束しなければならない。また、「クリーンエネルギーへの移行を加速することは、社会経済に多大な恩恵をもたらすが、何もせずにいた場合の代償も計り知れない」と訴えている。不確定要素が多い原子力開発の見通し原子力に関してWEO-2021は、平均気温の上昇を1.5℃以下に抑えていくための主要な4方策の中で言及した。太陽光と風力の設備をこれまでの2倍の規模に拡大した上で、原子力はその他の低炭素電源の一つとして、受け入れ可能な場所で使うべきだとしている。今後の原子力発電開発については、「既存炉および新規に建設する原子炉のいずれについても、これから決定される政策にかかっている」と指摘した。今後10年間に増加する原子力設備の大部分は、今年の初頭時点で19か国が建設中の約6,000万kW。中国とロシア、および韓国が近年、国内外で数多くの原子炉を5~7年で建設したことから、2025年までに追加で新たに着工した場合は2030年までに完成する可能性があるとした。2030年以降については1億kWを超える計画があるものの、これには過去に何回か個別に提案された案件や事業の開始に至っていないものが含まれるとしている。既存炉の閉鎖ペースについては、不確定要素がさらに多いとIEAは指摘しており、米国や欧州、日本で経年化が進んだ多くの原子炉は、運転期間の延長に際して追加の投資、場合によっては規制上の新たな承認が必要である。運転期間の延長を決めるにはまた、電力市場の状況に応じて厳しい安全審査や社会的受容が条件になるという課題にも直面している。WEO-2021によるとSTEPSシナリオでは、2030年までに6,500万kW(23%)を超える既存炉が先進経済諸国で閉鎖される一方、APSシナリオでは5,000万kWに留まっている。運転期間の延長により、次の10年間は低炭素な電力を比較的低コストで供給できるが、先進経済諸国においては閉鎖ペースが一層早まるリスクもあり、その場合は原子力で低炭素な電力を供給する基盤が損なわれるとしている。また、2040年までに先進経済諸国では、既存炉の約4分の3で運転期間が50年を超えることになるが、いずれのシナリオにおいても、これらの多くは閉鎖される可能性が極めて高い。小型モジュール炉(SMR)など革新的技術を用いた原子炉で、新たな設備の建設や許認可手続きに要する期間を短縮したり、熱電併給や水素製造といった用途に原子力発電所を利用する機会も今後は増えていく。しかし、それには技術革新の努力を一層加速して、実現の見通しを改善する必要があるとIEAは強調している。(参照資料:IEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Oct 2021
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©ECチェコの産業貿易省は10月12日、原子力発電所を一層容易かつ低コストで建設するためのフランスとの共同アクションとして、EU(欧州連合)に加盟するその他の8か国からの協力を受けて「共同宣言」を発表した。EUは2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指すにあたり、環境上の持続可能性を満たした真にグリーンな事業に正しく投資するための枠組「EUタクソノミー」で投資対象の分類規制を行っている。チェコとフランスをはじめとするEUの10か国は、地球温暖化の防止とエネルギーの自給に貢献する原子力を、今年末までに持続可能な投資活動の対象に含めるようEUに求めており、今回そのための「共同宣言」を11日付けで仏ル・モンド紙やベルギーのル・ソワール紙など、主要な欧州メディア8紙に掲載した。この宣言は、チェコとフランス両国の「原子力アライアンス(Nuclear Alliance)」創設を念頭に置いたもので、内容に賛同したブルガリア、フィンランド、クロアチア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、およびスロベニアの8か国が宣言に参加した。調整役は仏国のB.ルメール経済財務相が担った。「欧州になぜ原子力が必要か」と題された「共同宣言」の中で、10か国はまず地球温暖化との戦いは将来の課題ではなく今解決しなければならないと指摘。エネルギー価格の上昇は、第三国からのエネルギー輸入を出来るだけ早急に削減する重要性を示しており、脱炭素化した経済の実現に向けて、EUに加盟する各国がエネルギーの生産・消費活動を迅速かつ徹底的に低炭素なものに変える必要があるとした。こうした点から、欧州で無炭素電力の約半分を賄う原子力は解決策の一翼を担わねばならないと同宣言は指摘。原子力は価格が手頃なだけでなく、安定供給が可能な各国自前のエネルギー源であり、欧州の14か国で稼働する126基の原子炉は、過去60年以上にわたって信頼性と安全性の高さを実証、革新的な技術が用いられた安全な電源と強調した。同宣言はまた、欧州の原子力産業界は世界でも有数の技術集約型産業であると指摘。EU加盟国同士の協力により、EUでは近いうちに小型モジュール炉(SMR)プロジェクトという形で、新型炉を建設すると述べた。原子力はまた、環境影響面でその他の低炭素発電技術に劣るという科学的根拠がないため、これらと同等に扱われるべきであり、今年末までに何としてもEUタクソノミーに含める必要があると訴えている。チェコの産業貿易省は今回の宣言について、「欧州が地球温暖化との戦いに勝利するつもりなら、原子力発電は欠かせない。低炭素社会を目指すすべての国にとって不可欠で信頼性の高い電源だ」と表明。EUの執行機関であるEC(欧州委員会)は2018年の戦略的ビジョン「Clean Planet for All」の中で、エネルギーシステムを脱炭素化する主柱に原子力と再エネを据えたにも拘わらず、大型炉に投資するための環境を整備していないと指摘した。副首相を兼ねる同省のK.ハブリーチェク大臣も「だからこそ、原子力重視という共通項を持つフランスとチェコは共同アプローチを取ることにした」と説明。EU本部が、天然ガスとともに原子力をタクソノミーに含めることを認めれば、EU基金や民間からの投資が期待できるようになり、低いコストで新規原子力発電所を建設する道が拓けるとしている。(参照資料:チェコ政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
13 Oct 2021
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パロベルデ原子力発電所©Arizona Public Service米エネルギー省(DOE)は10月7日、商業炉のエネルギーを使ってクリーンな水素を製造するというアリゾナ州の技術実証プロジェクトに対し、2,000万ドルの連邦予算を付与すると発表した。同プロジェクトは、水素を適正なコストで製造・輸送・貯留・活用できることを証明するため、DOEのエネルギー効率・再生可能エネルギー局(EERE)、水素・燃料電池技術室(HFTO)が複数の産業部門で進めている「H2@Scaleプログラム」の下で進められる。PNWハイドロジェン(PNW Hydrogen LLC)社が中心となり、アリゾナ州フェニックスにあるパロベルデ原子力発電所(約140万kWのPWR×3基)を使って実施。無炭素な電力の材料としてクリーン水素を役立てるとともに、原子力発電所で電力以外の重要な経済産物を生み出せることを実証するのが目的である。同プロジェクトはまた、DOEが今年6月に立ち上げた「エネルギー・アースショット構想」の最初のプログラムである「水素ショット」の目標達成にも貢献すると期待されている。「アースショット」とは、地球環境問題の解決に向けて意欲的かつ画期的な目標を達成することを意味しており、同構想を通じてDOEは、10年以内に価格の手頃な信頼性の高いクリーンエネルギーを豊富に生み出し、技術的ブレークスルーを加速させる計画。「水素ショットで」は、再生可能エネルギーからクリーン水素を製造するコストを10年以内に80%削減し、1kg当たり現時点の5ドルから1ドルまで引き下げることを目指している。今回のプロジェクトでPNWハイドロジェン社は、DOE傘下のアイダホ国立研究所や国立エネルギー技術研究所、国立再生可能エネルギー研究所などと協力。また、米国電力研究所(EPRI)、アリゾナ州立大学、カリフォルニア大学アーバイン校、Xcelエナジー社、ドイツのシーメンス社、スウェーデンの炭素繊維メーカーのOxEon社とも連携する。同社はDOEのHFTOから1,200万ドルを受け取るほか、原子力局(NE)からは800万ドルを受領。パロベルデ発電所に貯蔵する6トンの水素は、電力需要のピーク時には約20万kWhの発電に使われるが、化学物質やその他の燃料製造にも活用される見通しである。このプロジェクトを通じて、同社は原子力技術とクリーン水素製造技術の統合や、水素の製造規模を将来的に拡大していくための情報を得る考えである。クリーン水素の製造技術開発についてDOEのD.トゥルク副長官は、「今後CO2排出量の実質ゼロ化を達成し、地球温暖化に対抗する道筋の重要な一部分になる」と説明。その上で、「原子力を使った水素製造は、価格が手ごろなクリーン水素を製造して水素ショットの目標を達成し、CO2のない未来に移行するための様々な革新的技術に対し、DOEが約束した財政支援の好例になる」と指摘した。米国ではこのほか、ニューヨーク州のナインマイルポイント原子力発電所(60万kW級のBWRと130万kW級のBWR各1基)で、H2@Scaleプログラムの下で水素製造の可能性実証プロジェクトが進展中である。(参照資料:DOEの発表資料①、②、③、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Oct 2021
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©BEIS英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は10月7日、英国が発電部門で全面的な脱炭素化を達成する目標スケジュールを15年前倒しし、2035年とするプランを発表した。スケジュールを早めたことで、英国は今後、化石燃料や卸売価格が不安定な国外エネルギーに左右されない国産エネルギー技術で確実な発電部門を構築するとしている。英国では今月31日から11月12日にかけて、国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP26)が北部スコットランドのグラスゴーで開催される。同会議で英国のCO2排出量実質ゼロ化戦略を披露するのに先立ち、英国政府は原子力や洋上風力など、価格が手ごろで確実に供給できる国産のグリーン電力により化石燃料への依存を軽減、脱炭素化社会へ移行するための一助とする方針を固めたもの。英国のB.ジョンソン首相が2020年11月に公表した「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」と、BEISが2020年12月に公表した新しい「エネルギー白書」では、英国政府が2050年までに国内の発電システムからの温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロ化する方針が明記されている。今回、BEISのK.クワルテング大臣がジョンソン首相に確認した方針では、前倒しされた意欲的な目標の実現に向けて、英国政府は洋上風力や太陽光、水素によるエネルギー供給から、原子力、陸上風力、CO2の回収・貯留(CCS)に至るまで、新しい世代の発電設備の建設努力を一層強化、英国内で生産したクリーンな電力を英国民のために活用していく考えだ。 BEISによると、近年乱高下している天然ガス価格は、英国がエネルギーの供給保証やさらなる自給に向けて体制を強化し、家計の中でエネルギー料金を長期的に抑えるためにも、そのような電力が必要であることを裏付けている。天然ガスを使った発電は、英国が今後も安定した電力供給システムを維持する上で重要な役割を果たすが、クリーンエネルギー技術の開発は将来的に天然ガス火力発電の利用頻度を抑えることにもなると述べた。さらに、クリーン電力の供給システムを信頼性の高いものにするには、風力や太陽光などの再生可能エネルギーを、原子力やその他の柔軟性の高いクリーン発電技術で補完する必要があるとBEISは指摘。原子力のような電源は、風力や太陽光の発電量が少ない折にも電力を供給し、需要を満足させることができる。英国政府はCOP26でホストを務める前に、CO2排出量を実質ゼロ化する一層詳細かつ広範なプランをさらに策定するとしている。今回のプランについてBEISのクワルテング大臣は、「このようなグリーン発電技術は英国内の多種多様な天然資源の活用につながることから、英国全土の新しい産業分野で数千人規模の雇用を創出できる」と指摘。また、「世界中が脱炭素化社会への移行を成功させるには、英国企業の企業家精神や類まれな能力、技術革新が必要になる」と強調している。なお、BEISの発表によると、英国では1990年から2019年までの間、GDPが76.4%上昇した一方でCO2排出量を44%削減することに成功。2000年以降、G20諸国のなかでは英国の脱炭素化が最も速く進んでいるとした。また、2019年に英国では、発電部門からの温室効果ガスの排出量が2018年レベルから12%、1990年レベルからは71%低下した。2020年には総発電量における低炭素電力の割合が59.3%に上昇しており、再エネによる発電量は過去最高の43.1%を記録。送電網に接続された再エネの設備容量も、2009年時点の800万kWが2021年6月末には500%増加し、4,800万kWになったとしている。(参照資料:BEISの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
11 Oct 2021
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10月7日付けのスペイン政府官報によると、同国北東部のタラゴナで稼働するアスコ原子力発電所1号機(PWR、103.2万kW)と2号機(PWR、102.7万kW)の運転期間がそれぞれ9年と10年延長され、1号機は2030年10月まで、2号機は2031年10月まで運転を継続することになった。両炉はそれぞれ1983年6月と1985年9月に送電開始しており、ともに2011年の秋を起点として10年間の運転期間延長が許可された。これらの期間が満了し、今回再び延長されたことから、両炉が運転開始して以降の運転期間はそれぞれ47年間と46年間になる見通しである。スペインでは、TMIとチェルノブイリ両発電所の事故発生を受けて脱原子力政策が進められており、1988年にトリリョ原子力発電所(PWR、106.6万kW)が運転を開始して以降、新規の建設は行われていない。脱原子力の達成時期については明確に定めておらず、スペイン議会は2011年2月、CO2排出量を抑制するため、原子力発電所に課していた最大40年という運転期間制限を正式に撤廃。商業炉の運転期間は、規制当局などの助言に従い、様々な条件を勘案して政府が決定していくことになった。国内の電力需要の増加に対しては、政府は既存の発電所の出力増強や運転期間の延長で対応。2009年時点ですでに、サンタ・マリアデガローニャ原子力発電所(BWR、46.6万kW)の運転期間を4年延長することを許可しており、(同炉はすでに閉鎖済みだが)スペインで初めて40年以上の運転が許可された商業炉となった。今回の官報によると、スペイン政府が2020年1月に作成した「2021年~2030年までの統合国家エネルギー・気候変動対策プラン(INECP)」では、国内のエネルギーミックスに対する原子力の貢献が確認され、原子力発電所は2027年~2035年の期間に順次閉鎖する方針である。これにともない、アスコ原子力発電所を所有するAsociación Nuclear Ascó-Vandellós II(ANAV)社(※2号機についてはイベルドローラ社が15%出資)は2020年3月、環境移行・人口問題省に対して1、2号機の運転期間をそれぞれ9年と10年延長することを要請。この要請書は数日後にスペイン原子力安全委員会(CSN)に送られ、両炉の安全面と放射線防護面について審査が行われた。2021年7月末にCSNは、これらの運転期間延長を認める報告書を作成しており、環境移行・人口問題省が今回、CSNの見解に沿って延長を決定したもの。スペインではこのほか、政府がアルマラス原子力発電所について、1号機は2027年11月まで合計46年間、2号機は2028年10月末まで45年間の運転継続を許可している。また、バンデリョスⅡ原子力発電所は2030年7月まで43年間、コフレンテス原子力発電所は2030年11月まで46年間運転できる見通し。最も新しいトリリョ原子力発電所の運転認可は、今のところ2024年11月まで36年間有効となっている。(参照資料:スペイン政府官報①、②(スペイン語)、原産新聞・海外ニュース、ほか)
08 Oct 2021
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レビン下院議員 ©M. Levinマーキー上院議員 ©E. Markey米国議会のM.レビン下院議員は9月28日、E.マーキー上院議員との協力により、使用済燃料と高レベル放射性廃棄物を長期間貯蔵する最終処分場の立地点選定作業を促進するため、「放射性廃棄物タスクフォース法案(H.R.5401)」を下院に提出した。同法案が下院で通過した後、上院ではマーキー議員が提出する同様の法案について審議が行われる模様。この法案は、連邦政府の有識者特別(ブルーリボン)委員会が2012年に勧告した「地元の合意に基づいて有効な立地点選定プロセス」を進められるよう、現行の原子力法改正に向けて調査のためのタスクフォースを設置するという内容。1954年に制定された同法によると、放射性物質は関連する環境法(「水質浄化法」と「資源保護回復法」)の適用を免れており、この事実は処分場の立地候補地域が懸念する材料の一つになっている。ともに民主党所属の両議員は、「このような逃げ道を取り除くことで、最終処分場の立地点選定作業は大幅に進展する」と指摘。周辺環境や近隣住民の健康と福祉を防護する連邦政府の基準が、放射性廃棄物に対しても適用されることになり、これらの廃棄物をどこに、どのように貯蔵するか、州政府レベルで意思決定する際も役に立つ。同タスクフォースはまた、「合意ベースの立地点選定作業」が具体的にどのようなものか、明確に説明する責任を負うとしている。使用済燃料の深地層最終処分場に関しては、9月23日に政府の会計監査院(GAO)が管理政策の行き詰まりを打開するよう議会に勧告する報告書を公表。両議員による今回の法案提出は、この勧告に応えた形となるが、GAOは報告書の中で、最終処分場としての調査活動をユッカマウンテンのみに限定した1982年の放射性廃棄物政策法(NWPA)の改正等を提言していた。この点に関してマーキー議員は、「放射性廃棄物の深地層処分となれば、政治ではなく地質学に基づいた判断が必要だ」と強調。「科学団体からは何年にもわたって、ユッカマウンテン計画への懸念や抵抗が示されており、同地が廃棄物処分に適しているという考えは妄想に過ぎない」と述べた。同議員によれば、地元の合意に基づいた立地プロセスこそ、放射性廃棄物の長期的な貯蔵に向けた実用的かつ現実に即した解決策となる。またレビン議員は、各原子力発電所で実際に使われている使用済燃料の貯蔵システムについて、「原子炉が永久停止したサイトでは特にそうだが、半永久的に持続可能な設備ではない」と指摘した。このシステムはまた、納税者が放射性廃棄物基金に処分費用を払い込む代わりに、連邦政府が1998年1月から廃棄物の引き取りを開始すると約束したNWPAにも違反している。同議員は、「連邦政府がこの責任を果たせなかったことは明確であり、今こそ変えるべき時だ」と言明している。(参照資料:レビン、マーキー両議員の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
07 Oct 2021
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米イリノイ州で、州内の原子力発電所に経済的支援を提供する法案が成立したのを受け、同国最大の原子力発電事業者であるエクセロン・ジェネレーション社は9月28日、州内2つの原子力発電所の運転長期化に向けて、今後5年間に約650人分の雇用を創出し、合計3億ドル以上の投資を行う計画を明らかにした。同州では、電力市場の自由化にともない経営の悪化したバイロンとドレスデンの両原子力発電所を、事業者のエクセロン社が今年9月と11月にそれぞれ早期閉鎖する予定だった。しかし、州議会では9月13日、「CO2の影響緩和クレジット」を通じて原子力発電所に補助金を交付するという法案が成立。同州のJ.B.プリツカー知事は、9月15日付けでこの法案に署名した。これにより、バイロン原子力発電所(120万kW級のPWR×2基)では、永久閉鎖に向けて燃料の取り出し判断を下す最終締め切り日に、一転してこれまで通り安全かつ信頼性の高い運転を継続することが可能になった。州知事による法案への署名後、エクセロン社は同発電所1号機で直ちに燃料の交換作業を開始。同社によれば、イリノイ州が地球温暖化の防止目標や経済目標を達成する上で、今回の法案は非常に大きな影響を及ぼす。州内2つの原子力発電所を維持することで、同州で生産されるクリーンエネルギーの3分の2を失わずに済むほか、CO2排出量が70%増加するのを回避できる。また、間接雇用も含めて2万8千人分の雇用が守られ、顧客が年間に支払うエネルギー料金では、4億8千万ドル分の価格上昇が避けられるとしている。バイロン原子力発電所に関して、エクセロン社は今後5年間で約1億4千万ドルの投資を計画中である。具体的にはプラントの主発電機で分解整備を行うほか、大型変圧器の取り替えを実施。ファイバー光学制御システムでは機能の改善を行い、様々な種類のバルブやモーター、配管等を取り替える。これらの作業の多くは来年の燃料交換停止時に始める予定で、イリノイ州全土から1,500人以上の電気技師や配管工、溶接工、大工らがバイロン発電所に集結することになる。同社はまた、ドレスデン原子力発電所(91.2万kWのBWR×2基)でも今後5年間に約1億7千万ドルの投資を行う。2号機の燃料交換は11月に実施するとしており、そのための停止期間中に、給水熱交換容器6台の機能向上と主発電機の大規模改修、電気機器の分解整備、循環冷却水配管の取り替え、核計装回路機器の改修を予定している。エクセロン社のD.ローデス原子力部門責任者(CNO) は「画期的な法案が発効したことから、当社は保有する原子力発電所を年中無休で稼働させるため、これらのすべてで早急な燃料交換と新たな従業員の配置を進めている」と表明。「1千万以上の顧客や世帯に低炭素なベースロード電力を供給するこれらの発電所は、クリーンエネルギーの供給という点で重要であり、イリノイ州のGDPに毎年16億ドル以上貢献する巨大な経済原動力でもある」と強調した。(参照資料:エクセロン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Oct 2021
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ハンガリーでパクシュ原子力発電所II期工事(120万kWのロシア型PWR=VVER×2基)の建設許可申請を審査している国家原子力庁(HAEA)は9月30日、建設許可の発給までには今しばらく時間が必要だと発表した。II期工事の建設プロジェクトは稼働中のI期工事(50万kWのVVER×4基)と同様、ロシア国営の原子力総合企業であるロスアトム社が請け負っており、建設許可申請書はハンガリーのプロジェクト企業であるパクシュII開発会社が2020年6月にHAEAに提出。HAEAはこの申請書を9月末まで15か月にわたり審査していた。HAEAの今回の説明によると、同申請書は多くの点で非常に綿密にまとめられているが、すべての安全要件が完全に満たされていると確認するには、いくつかの点でさらなる分析・評価を実施する必要がある。国際原子力機関(IAEA)の専門家チームがHAEAに提示した勧告事項も考慮しなければならず、HAEAは国内外の専門家の支援を得ながら審査を継続すると表明。パクシュⅡ開発会社に対しては、追加資料の提出を命じたことを明らかにした。ハンガリーでは、原子力発電所のように複雑かつ多くの専門分野が関係する施設については、必要な許可の発給や建設工事の監督に複数の政府当局が関わってくる。ハンガリーのエネルギー・公益企業規制庁(MEKH)は2020年11月、今回の建設プロジェクトが電力供給網のセキュリティ面で悪影響を及ぼす可能性は低いと判断し、電力法の義務事項に照らし合わせた発電実施許可を発給。HAEAも2017年3月に同プロジェクトのサイト許可を発給したほか、今年8月には、パクシュII開発会社が作成したⅡ期工事の核物質防護計画を承認している。建設許可の発給が遅れることで、II期工事の5、6号機は完成までにさらなる遅れが生じる見通しである。この増設計画の実施について、総工費の約8割に相当する最大100億ユーロ(約1兆2,889億円)をロシアからの低金利融資で賄うとハンガリー政府が発表したのは2014年1月のこと。残り2割はハンガリー政府が調達するとしており、両国の担当企業は同年12月、これら2基をそれぞれ2023年と2025年に完成させることを目指して、EPC(設計・調達・建設)契約を含む主要な3契約に調印した。しかし、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は2015年11月、これらの契約が公的調達に関するEU指令に準拠しているか、また、EU域内の競争法の国家補助規則に適合しているかについても調査を開始すると表明した。その結果としてECは2016年11月、公的調達に関しては違反行為がなかったと認めた一方、翌2017年4月に同計画への投資には国家補助が含まれると裁定。国内のエネルギー市場で、競争原理に過度の歪みを生じさせないよう政府が対策を取ることを条件に、投資を承認すると発表した。両炉の完成時期については、ハンガリー外務貿易省のP.シーヤールトー大臣がメディアに対して「2028年から2029年にかけて両炉とも運転可能になる」と表明している。このような遅れにともない、ハンガリーがロシアからの低金利融資に返済を開始する時期については、両国政府が交渉した結果、今年4月に融資協定を一部改訂することで合意。2026年3月からとされていたハンガリーの返済は、両炉が運転開始した後の2031年からに修正されている。(参照資料:HAEAの発表資料(ハンガリー語)、パクシュII開発会社の発表資料(ハンガリー語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
05 Oct 2021
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カナダのオンタリオ州を本拠地とするテレストリアル・エナジー社は9月29日、第4世代設計として開発中の小型モジュール式・一体型溶融塩炉「IMSR」について、使用する燃料を確保するため、仏オラノ社の米国法人と包括的な協力契約を締結した。この契約の下で、オラノ社は濃縮ウランやIMSR用に燃料を転換するサービスをテレストリアル社に提供する。燃料の製造のみならず輸送やパッケージングなど広範に作業を請け負う予定で、IMSR用の燃料を商業規模で本格製造するための分析調査も実施。カナダや米国、英国、日本など、将来の主要なIMSR販売市場においても商業製造した燃料を適用する考えである。今回の契約は、テレストリアル社が進める「複数ルートの燃料調達戦略」に基づいており、幅広い燃料サービスを通じて次世代原子炉の商業化を支援するというオラノ社の方針も反映。独占契約ではないので、双方がともに同種の契約をその他の企業と結ぶことが可能である。テレストリアル社の米国法人(TEUSA社)はすでに2020年11月、IMSRに使用する溶融塩燃料の詳細な試験を実施するため、米エネルギー省(DOE)傘下のアルゴンヌ国立研究所と協力すると発表。今年8月には、IMSR用濃縮ウラン燃料の商業規模での確保に向けて、同社は英国スプリングフィールドにある国立原子力研究所(NNL)、および同地で原子燃料製造施設を操業する米ウェスチングハウス(WH)社とも協力契約を締結した。テレストリアル社のIMSRは熱出力が40万kW、電気出力は19万kWで、電力のほかに熱エネルギーを供給可能。使用する溶融塩燃料は、これまで数10年以上にわたり軽水炉に装荷されてきた標準タイプの低濃縮ウラン(U-235の濃縮度が5%以下)を溶融フッ化物塩と混合して製造する。同社の説明では、先進的原子炉設計の多くがHALEU燃料(U-235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を使用するのに対し、IMSRは第4世代設計の中でも唯一、標準濃縮度のウランを使用することができる。同社はまた、9月14日に電気出力39万kWの改良型発電所設計となる「IMSR400」を発表した。電気事業者の要請により、原子炉と発電機を2基ずつツインユニットで設置しており、発電所としての出力を拡大。コスト面の競争力も改善しており、同設計はカナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社がダーリントン原子力発電所内で建設を検討している3種類の小型モジュール炉(SMR)候補設計の一つとなっている。テレストリアル社のS.アイリッシュCEOは、「燃料の購入にともない電気事業者が必要とするサービスは多岐にわたるため、今回の契約は燃料の輸送やパッケージング等の分野を幅広くカバーする包括的なものになった」と説明。このようなサービスは、IMSR初号機を早ければ2028年に稼働させる上で必要だとしている。(参照資料:テレストリアル社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Oct 2021
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米原子力規制委員会(NRC)は9月29日、フロリダ州のセントルーシー原子力発電所1、2号機(各PWR、約88万kW)について、2回目の運転期間延長申請書を受理し、本格的な技術審査を開始すると発表した。この申請書は事業者のフロリダ・パワー&ライト(FPL)社が8月に提出していたもので、NRCはそれ以降、申請内容に不備がないか点検していた。セントルーシー1、2号機はそれぞれ1976年と1983年に送電開始しており、運転開始時に認められていた40年の運転期間が満了する前に、NRCはFPL社の初回の申請に基づき、両炉でそれぞれ20年間追加で2036年3月と2043年4月まで運転することを許可した。2回目の申請に基づき、さらに20年ずつ期間の延長を許可した場合、これらの原子炉はそれぞれ80年間、2056年3月と2063年4月まで稼働することができる。審査の開始にともない、NRC付属の行政判事組織である原子力安全許認可会議(ASLB)が公聴会を開催するが、NRCはこの公聴会への参加を希望する市民向けに同日、案内情報を連邦官報に掲載した。運転期間の延長により個人的利益に影響が及ぶ可能性がある市民等は、11月29日までに公聴会への介入請願書を提出しなければならないとしている。 (参照資料:NRCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
01 Oct 2021
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