英国の原子力規制庁(ONR)は2月7日、中国が知的財産権を保有する「華龍一号」設計の英国版(UK HPR1000)について、実施していた全4段階の包括的設計審査(GDA))が完了し、ONRが「設計承認確認書(DAC)」を、環境庁(EA)が「設計承認声明書(SoDAC)」を関係企業に発給したと発表した。GDAは、英国内で初めて建設される原子炉設計に対して行われる設計認証審査で、DACの発給は対象設計の安全・セキュリティ面、SoDACは環境保護と放射性廃棄物管理の側面で、英国の厳しい基準をクリアしたことを確認。これにより、同設計が英国内で直ちに建設可能になるわけではないが、中国広核集団有限公司(CGN)とEDFエナジー社が、英国エセックス州で共同で進める予定のブラッドウェルB原子力発電所建設(UK-HPR1000×2基)計画は技術的には大きく前進した。EDFエナジー社は現在、サマセット州でヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所(172万kWの「欧州加圧水型炉:EPR」×2基)を建設中だが、同社は2015年10月、英国と中国の両政府が2013年に交わした覚書に基づき、CGNと共同で同計画に投資する内容の戦略的投資協定で合意。CGNはHPC計画の総工費180億ポンドのうち33.5%を投資することを約束したほか、EDFエナジー社がサフォーク州で計画しているサイズウェルC原子力発電所(167万kWのEPR×2基)建設計画にも20%出資する。また、後続のブラッドウェルB計画については「華龍一号」設計を採用し、CGNが建設段階において66.5%を出資、EDFエナジー社をパートナーとしてCGNが同計画を主導することになった。ONRとEAが2017年1月に開始した「UK HPR1000」のGDAに関しても、EDFエナジー社とCGNは合弁で審査活動の管理会社「ジェネラル・ニュークリア・システム(GNS)社」を設立した。同社の株式の66.5%は、CGNが持ち株会社として立ち上げたジェネラル・ニュークリア・インターナショナル(GNI)社が保有。このため、今回のDACとSoDACはCGNとEDFエナジー社、およびGNI社に対して発給されている。 「華龍一号」はCGNと中国核工業集団公司(CNNC)、双方による第3世代の100万kW級PWR設計を一本化して開発されたもので、CGNはブラッドウェルB計画でCGNバージョンの「華龍一号」を採用する。この「華龍一号」は現在、中国・広西省の防城港3、4号機、広東省の太平嶺1、2号機、浙江省の三澳1、2号機として建設中であり、防城港の2基はブラッドウェルB発電所の参照炉に位置付けられている。今回、その英国版にDACを発給したことについて、ONRのM.フォイ主席原子力検査官(CNI)は「ONRの特別検査官が詳細かつ厳密に審査した結果であり、この設計が英国内での建設に適したものであることを示している」と述べた。EAのS.フィナーティ原子力規制担当局長は、「当庁の2025年までの行動計画にも示したように、審査は急を要する地球温暖化への影響を最優先としたもので、エネルギー供給の脱炭素化は英国における主要目標の一つだ」と説明した。原子力については、「CO2排出量の実質ゼロ化に向けて英国政府が進めているエネルギー政策の重要部分を担っている」と指摘。こうした背景から、審査では新たな原子力発電所が英国の厳しい基準を満たすだけでなく、周辺コミュニティや環境も適切に防護されるよう配慮したとしている。(参照資料: ONR、EA、ブラッドウェルB発電会社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Feb 2022
4741
ウクライナで4サイト・15基の民生用原子炉を運転する国営のエネルゴアトム社、およびカナダの原子力産業機構(Organization of Canadian Nuclear Industries =OCNI)は2月2日、ウクライナにおけるカナダ製原子力発電所の建設に向けて、協力覚書を締結した。OCNIはカナダの原子力産業界のサプライヤー240社以上で構成される非営利団体で、カナダ型加圧重水炉(CANDU炉)や軽水炉の機器設備を設計・製造する企業やエンジニアリング・サービス企業などが参加。国内外の原子力市場に、これらの機器やサービスを提供している。今回の覚書を通じてOCNIは、カナダ製の大型原子力発電所や小型モジュール炉(SMR)をウクライナで建設する機会が得られるよう支援していくほか、原子力発電所サイトにおける大規模データセンターの設置、原子力発電所の廃止措置、原子力発電を活用した医療用放射性同位体の生産や水素製造などでもウクライナ側と協力する。両者はまた、両国の原子力関係研究機関や、原子力教育および原子力研究開発関係の学部を有する大学相互の協力も促進する方針である。覚書への調印は、カナダ・オンタリオ州のピッカリングにあるOCNI本部とウクライナの首都キエフにあるエネルゴアトム社の本部をインターネットで結び、OCNIのR.オーベルト理事長とエネルゴアトム社の実質トップであるP.コティン総裁代理が行った。R.オーベルト理事長は、「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化するという世界的な構想の実現に向けて、ウクライナが推進するプロジェクトに緊密に協力していきたい」と述べた。P.コティン総裁代理も、「原子力発電所における信頼性の確保や関連する研究開発、技術革新、環境保全など、原子力発電に関わる最も有望な分野で、カナダの原子力産業界と連携協力する新たな機会が開かれた」と表明している。ウクライナでは2014年に親ロシア派のV.ヤヌコビッチ政権が崩壊し、それ以降は親欧米派が政権を維持。クリミアの帰属問題や天然ガス紛争等により、旧宗主国であるロシアとの関係は悪化の一途をたどっている。ロシアからのエネルギー輸入依存から脱却するため、ウクライナは国内15基のロシア型PWR(VVER)で使用する原子燃料を、米ウェスチングハウス(WH)社やカナダのカメコ社など、ロシア以外の企業から調達する手続を進めている。また、国内で米ホルテック・インターナショナル製SMRの建設可能性を探るため、エネルゴアトム社は2018年3月にホルテック社と協力覚書を締結。2021年9月には米ニュースケール・パワー社が開発したSMRの導入に関しても協力覚書を締結した。さらに同年8月末にエネルゴアトム社は、VVER設計による一部の建設計画が凍結されていたフメルニツキ原子力発電所、およびその他のサイトにおけるWH社製AP1000の建設に向けて、WH社と独占契約を締結している。(参照資料:OCNIの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
07 Feb 2022
3207
アルゼンチン政府は2月1日、同国で4基目の商業炉となるアトーチャ原子力発電所3号機の建設計画について、同国の国営原子力発電会社(NA-SA)と中国核工業集団公司(CNNC)が「EPC(設計・調達・建設)契約を締結したと発表した。両社が昨年から再開した協議の結果、同炉では中国の「華龍一号」設計を採用することが決定している。「華龍一号」は、中国の2つの原子力企業がそれぞれ開発した第3世代のPWR設計を統合したもので、出力120万kW、耐用年数は60年である。アルゼンチン政府によると、アトーチャ3号機は1981年以来初めて建設する商業炉で、NA-SAが昨年6月に採択したアクション計画の一部。同社は今年の年末にも着工する考えで、総工費は約83億ドル。国内サプライヤーの約40%が関与し、7千名以上の直接雇用が創出される見通しだ。83億ドルのほとんどは中国からの融資と見られている。今回の合意について、アルゼンチン政府は「原子力発電分野における両国の協力関係が一層強化されるだけでなく、クリーンエネルギーによって国内産業が発展する」と評価。「燃料の製造技術については技術移転も受ける計画で、我が国の技術力が一層強化される」と強調した。NA-SAの発表によると、アトーチャ3号機の建設プロジェクトは2014年7月に両社間で調印した「包括的な戦略提携」と「経済協力と投資に関する枠組み合意」の一部でもあり、両国政府は翌2015年2月、「アルゼンチンのPWR建設プロジェクトに関する政府間協力協定」を締結している。この当時のアルゼンチンの計画では、国内4基目のアトーチャ3号機には既存の商業炉3基と同じ加圧重水炉(PHWR)を採用、5基目の商業炉に「華龍一号」などの軽水炉を国内で初めて採用することになっており、NA-SAとCNNCは2015年11月、4基目の技術・商業契約と5基目の協力に関する枠組み協定を締結。投資額の85%は、中国工商銀行などを通じて中国側が支援する予定だった。 しかし、アルゼンチンではその直後の2015年12月、大統領がM.マクリ氏に交代。同大統領は建設プロジェクトの見直しを行った上で、関係するすべての作業を停止した。アトーチャ発電所が立地するブエノスアイレス州のA.キチヨフ知事によると、この計画にはその後大きな進展がなく、現在のA.フェルナンデス政権が登場するまで約4年の歳月が無駄に経過した。今回の両社の合意と契約締結はテレビ会議を通じて行われており、これには両社の上級幹部のみならず、両国の政府高官や両国に駐在するそれぞれの外交代表、アトーチャ発電所の地元自治体などが参加した。NA-SAは「両国の協力関係が新たな段階に移行し、原子力の平和利用や関係する科学技術と産業の発展に向けて強いきずなが結ばれた」と指摘。EPC契約の締結後は、双方の関係官庁による関連事項の具体化の調整が進められ、建設プロジェクトの実行に必要な条件を整えていく方針だ。また、テレビ会議に出席した経済省のF.バスアルド電力担当次官によると、「政府は改めて原子力部門の統合と成長に向けた政策を執ることを確認し、アトーチャ3号機の建設を通じて電源の多様化を進め、これにより国内の産業・技術をさらに発展させていく」としている。(参照資料:アルゼンチン政府(スペイン語)、NA-SAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Feb 2022
3454
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は2月2日、環境上の持続可能性を備えたグリーン事業への投資基準「EUタクソノミー」において、持続可能とみなす技術的精査基準を規定した「地球温暖化の影響を緩和する(補完的な)委任法令(Delegated Act: DA)」に、一定条件下で原子力関係の活動を含めることを原則的に承認したと発表した。ECは昨年の12月末、原子力と天然ガスの関係活動を含める内容のDA案を「持続可能な資金提供に関する加盟国の専門家グループ」、および諮問機関である「持続可能な資金提供プラットフォーム(PSF)」に提示した。これらの機関からの見解に基づいて、ECの委員達で構成される欧州委員協議会が同DA案の文言について協議した結果、今回政治的合意に達したとしている。同DAはEU加盟国すべての使用言語に翻訳され次第、正式に採択される予定で、その後は、欧州議会と欧州連合理事会が4か月にわたって同DAを精査。精査期間の終了時に両機関がともに異議を唱えなければ、同DAの原子力や天然ガスに関連する規定の部分は、2023年1月1日付で発効し適用が開始される。ECによると、EUが2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成するには多額の民間投資が欠かせず、この目標の達成に必要な活動への民間投資をEUタクソノミーで誘導する方針である。同タクソノミーで加盟各国のエネルギーミックスを特定のエネルギー技術に決定付けるのではなく、CO2排出量の実質ゼロ化に資するすべての方策を自由に活用させることで、CO2排出量の実質ゼロ化への移行を促す考え。近年の科学技術の進歩を考慮すると、原子力と天然ガスへの民間投資はこの移行を促進する役割を担っており、石炭火力のように大気を汚染する発電技術からのシフトを加速するとECは指摘している。これらのことから、ECはタクソノミー規制の下で今年の1月1日から施行されている現行のDAに、原子力と天然ガスに関する明確かつ厳しい条件を設定し、これらに関する経済活動を過渡期の暫定的な活動として加えたもの。これら2つの電源に共通する条件のほかに、原子力については環境上の安全要件を満たすよう求めており、具体的には、放射性廃棄物の長期貯蔵や最終処分によって生じるリスクが、その他の環境保全目標を大幅に損なうことがないようにするべきと明記。事故耐性燃料の活用要件を技術的精査基準の中に設定することや、高レベル廃棄物の排出量が最小限になる第4世代原子炉の将来の活用に向けた要件を同基準に盛り込むこと、新規原子力発電設備のリードタイムの長さを考慮して、既存原子炉の運転期間延長に向けた設備の安全性改善等を同基準の要件にすることを求めている。ECはまた、投資家が投資を行う際、他の電源で提案されたプロジェクトよりも原子力や天然ガスの方が好ましい場合にはその選択もできるよう関係市場の透明化を推進すると表明。情報の開示要件をDAに新たに設定したことを明らかにしている。ECの今回の発表について、欧州の原子力企業約3,000社を代表する欧州原子力産業協会(フォーラトム)のY.デバゼイユ事務局長は、「原子力がEUタクソノミーに加えられたことを歓迎する」とコメントした。ただし、原子力が引き続き「過渡期の技術」として扱われていることは残念だと表明。「我々は原子力が地球温暖化の影響緩和に貢献し、EUタクソノミーにすでに含まれている発電技術ほどの害を及ぼさないと確信している」と述べた。同事務局長によると、今回ECが採用した提案では、原子力は以下のような厳しい条件を満たしている限りEUタクソノミーに適合していると認識される。すなわち、①原子力発電を利用している加盟国では、極低レベルと低レベル、および中レベル廃棄物用の最終処分場を操業していなくてはならない。②原子力発電の利用国は高レベル廃棄物最終処分場の建設計画を策定しておかねばならない。③2025年時点で既存の原子力発電所と新規の原子力発電所建設計画を有する国では、規制当局が認証済みの事故耐性燃料を使用しなくてはならない。(参照資料:EC、フォーラトムの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
03 Feb 2022
4975
米国のウェスチングハウス(WH)社は1月27日、同社が進めている「高エネルギー燃料開発構想」で初めて、U235の濃縮度が最大で6%という次世代型の先行試験用燃料集合体(LTA)を国内の商業炉に装荷すると発表した。WH社の計画では、サザン・ニュークリア社がジョージア州で運転しているA.W.ボーグル原子力発電所2号機(PWR、121.5万kW)に、濃縮度6%の先行試験燃料棒が各1本含まれるLTAを4体装荷する予定。両社は同日、そのための契約を締結している。ただし、原子力規制委員会(NRC)がサザン・ニュークリア社に発給した現行の認可では、燃料内のU235の濃縮度は5%までしか許されていない。このためWH社は、サザン・ニュークリア社による認可の修正要請をNRCが承認し次第、2023年にも米エネルギー省(DOE)およびDOE傘下のアイダホ国立研究所の協力を受けてLTAの製造を開始。その年の秋にボーグル2号機で燃料交換を実施する際、サザン・ニュークリア社は同LTAを装荷する方針である。WH社は現在、福島第一原子力発電所事故を受けてDOEが2012年に開始した「事故耐性燃料(ATF)開発プログラム」に参加しており、同社製のATF「EnCore」を開発中である。同プログラムではWH社のほかに、フラマトム社やライトブリッジ社、米GE社と日立製作所の合弁事業体であるグローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社などが産業界から参加。2022年頃を目途に3段階でATFを開発・実証することになっている。WH社はまた、電気事業者が燃焼度を高くできる燃料を使用し発生エネルギーの量を増加できるよう、「高エネルギー燃料開発構想」で濃縮度を高めた燃料を開発している。同構想では、現在18か月の運転期間を24か月に延長することも研究中で、これにより電気事業者は、停止期間を短縮しコスト削減が可能になるとしている。今回のLTAでWH社は、商業炉を長期的に運転するための安全性や経済性、効率性の向上対策を模索。具体的には、酸化クロムや酸化アルミを少量塗布した「ADOPT燃料ペレット」、腐食耐性や変形耐性を向上させるという「AXIOM合金製被覆管」やクロムを塗布した被覆管、先進的な燃料集合体設計の「PRIME」などを活用している。このうち、ADOPTペレットとクロムを塗布した被覆管は、DOEのATFプログラムの下で開発した「EnCore」技術の一部であり、これらによって温度許容度や耐久性等が大幅に改善されたと強調している。サザン・ニュークリア社のP.セナ上級副社長は、「我々が最優先とするのは絶対的に安全なプラントで周辺住民や従業員の安全と健康を守ることだが、画期的な燃料技術によって顧客に年中無休で電力を供給する能力や発電所全体の信頼性が高まる」と指摘。規制の基準値を超える濃縮度のLTAを装荷することで、先進的燃料技術の商業利用が一層進展し、今後数10年にわたってクリーンで安全、信頼性の高い無炭素電力を供給する能力が増強されると述べた。(参照資料:WH社、サザン・ニュークリア社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Feb 2022
3413
英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は1月27日、イングランド南東部のサフォーク州でEDFエナジー社が計画しているサイズウェルC(SZC)原子力発電所開発プロジェクト(160万kWの欧州加圧水型炉:EPR×2基)を存続させるため、今年3月までの現行会計年度予算から1億ポンド(約155億円)の支援を提供すると発表した。英国政府は昨年10月、大型原子力発電所を少なくとも1か所建設する計画について、現政権の在任期間中に最終投資判断(FID)が下されるよう、最大で17億ポンド(約2,600億円)を歳出すると表明した。その場合は費用対効果が高いことと関係承認が得られることが条件だが、BEISのK.クワルテング大臣は今回の新たな支援を通じて、さらなる民間投資が新しい原子力発電所の開発に呼び込まれると指摘。SZC発電所は完成すれば320万kWの電力を供給するが、これは約600万世帯が必要とする電力量に相当するほか、英国全土で1万人分の雇用を支援する。低炭素な電力が大規模かつ継続的に英国にもたらされ、高価格な天然ガスの影響を軽減、英国内で信頼性の高い安定的な低炭素エネルギーの供給を保証すると強調している。EDFエナジー社はこの支援金を通じて、政府と昨年から実施している同プロジェクトの実施交渉を次の段階に進めるほか、国家的に重要なプロジェクトであるとの確信を投資家に最大限に与えることで、新たな民間投資を呼び込んでいく。今回の支援は、政府からの直接投資という形態を取っておらず、政府はSZC発電所の開発を担当するNNB GenCo社(EDFエナジー社の子会社)の一部株式、および建設用地の一部を統合オプションの形で購入。プロジェクトが最終的にうまく行かなくても、政府は同サイトで原子力に限らず、その他の低炭素な代替エネルギー・インフラを継続して開発できるよう機会を提供していく。一方、SZC計画がFIDの段階に進展した場合、政府は同社から投資収益と1億ポンドの払い戻しを受けられるが、返金形態は現金かプロジェクト権益になる。また、プロジェクトがFIDに到達しなかった場合、政府はNNB GenCoの一部株式、あるいは建設用地の一部をEDFエナジー社に要求できるものの、政府の希望する形で同社が資産を提供できなければ、同社は投資収益と1億ポンドの現金を返済することになる。いずれにしても、英国政府は「現段階では、サイズウェルCプロジェクトへの投資構成は何も決まっていない」と表明している。今回の政府発表は、大型原子力発電所の新規建設を支援する資金調達の枠組みとして、「規制資産ベース(RAB)モデル」の導入を目指した法案が議会で審議されている最中に行われた。BEISによると、RABモデルを導入することにより、大型原子力発電所の開発コストは、(ヒンクリーポイントC原子力発電所の建設計画で適用されている「差金決済取引(CfD)」との比較で)、一件あたり300億ポンド(約4兆6,500億円)の削減が可能だ。RABモデルはまた、年金基金など英国内の民間部門投資を幅広く呼び込むことになるため、中国広核集団有限公司(CGN)のように、英国の原子力発電開発プロジェクトに一定割合の資金提供を約束している海外デベロッパーへの依存が軽減されるとしている。EDFエナジー社のS.ロッシCEOは今回、「英国政府がSZC計画の成功に自信を示してくれたことは本当に喜ばしい」とコメント。この方針が承認されれば、消費者が支払うエネルギー料金は大幅に削減され、英国は世界的に変動が激しい天然ガスの価格から影響を受けずに済む。この方針はまた、SZC計画がFID段階に進めるよう後押ししてくれると評価した。英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックス理事長も、「政府の発表はSZCプロジェクトを前進させる大きな一歩になった」と表明した。同理事長によると、英国で現在稼働中の改良型ガス冷却炉(AGR)、および唯一の軽水炉であるサイズウェルB原子力発電所は、英国史上最も安価で生産的な低炭素発電資産であり、これまでに14億トンのCO2排出量を削減。現在の炭素価格にして、約1,100億ポンド(約17兆円)の税負担を抑制したことになると強調している。(参照資料:BEIS、NIAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
31 Jan 2022
3636
スウェーデンの気候・環境省は1月27日、エストハンマルにあるフォルスマルク原子力発電所の近接エリアで、使用済燃料の最終処分場を建設する許可をスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)に発給する方針を決めた。同時に同省は、使用済燃料をキャニスターに封入するプラントについても、オスカーシャムにある使用済燃料集中中間貯蔵施設(CLAB)の隣接区域で建設することを許可。これにより、SKBは原子力活動法に基づく最終処分場の建設許可を政府から取得したことになるが、これ以降の許認可プロセスとしては、国土環境裁判所が環境法に照らしてこれらの施設の詳細な建設・操業条件を設定、スウェーデン放射線安全庁(SSM)がこれらを承認する必要がある。最終処分場を本格着工するには、このような関係許認可をすべて取得しなければならず、SKBは実際の建設工事には約10年を要する見通しだと表明している。商業炉から出る使用済燃料を深地層に最終処分する施設の建設については、すでにフィンランドが2016年から建設工事を進めており、スウェーデンでの許可は世界で2例目となる。スウェーデンでは使用済燃料処分の事業主体であるSKBが2006年11月、キャニスターに使用済燃料を封入するプラントの建設許可をSSMに申請した。SKBはまた2009年、約1万2千トンの使用済燃料を地下500mの結晶質岩盤に直接最終処分する地点としてエストハンマルを選定、2011年3月にはSSMに処分場の建設許可を申請している。それ以降、SSMは処分場の安全性と放射線防護面について、また、国土環境裁判所は処分方法や立地選定などの環境影響についてSKBの申請書を審査。SSMと国土環境裁判所は2018年1月、政府に対して建設許可の発給を勧告していた。同処分場の処分概念は、SKBが1980年代に提案した「KBS-3」概念に基づくもの。使用済燃料を封入する銅製キャニスター、その周囲を覆うベントナイト製緩衝材、および地下深部の岩盤という3重のバリアを組み合わせており、これらによって廃棄物の放射能から周辺の住民や環境を隔離・防護する方針である。SSMの専門家はこの概念を評価した結果、「長期的に見ても安全かつ法的要件を満たした技術であり、現時点で実施可能な最終処分方法としては最良のもの」と表明。スウェーデン政府もこの見解を支持している。なお、フィンランドで建設中の最終処分場にもこの概念が採用されている。気候・環境省のA.ストランドヘル大臣は今回の発表のなかで、「処分に必要な技術も能力も備えている我々が、使用済燃料をプールに貯蔵したまま、何年も決定を下さないでいるのは無責任なことだ」と述べた。この問題の解決は決して後の世代に押し付けてはならず、政府としては現世代で責任を負う方針。使用済燃料の処分に向けて安全な技術の開発や広範な準備が進められているため、研究開発のさらなる進展とともに処分方法も一層改良されていくとしている。SKBのJ.ダシュツCEOは政府の発表を「歴史的決定」と評価した上で、SKBは今後、約190億クローナ(約2,340億円)を投じて最終処分場を建設し、約1,500人分の雇用を創出すると表明。これに必要な資金は、放射性廃棄物基金で賄うことが出来るとした。同CEOはまた、今回の決定によって同社の処分方法が厳しい安全要件と環境影響要件を満たしていることが明確になったと指摘。同社がこの分野で占めている世界のリーダー的立場は一層強化され、原子力発電の課題には長期的な解決策がもたらされる。脱化石燃料に向けて、同社は一層の貢献が可能だと強調している。(参照資料:スウェーデン政府、SKBの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Jan 2022
3865
ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社のエンジニアリング部門であるアトムエネルゴマシ社は1月25日、ウリヤノフスク州ディミトロフグラードで2015年から建設中の「多目的高速中性子研究炉(MBIR)」のために、炉内機器の試験組立をロストフ州ボルゴドンスクで実施したと発表した。熱出力15万kWのMBIRでは、幅広い原子炉研究や照射研究の実施が計画されており、1969年から同じくディミトロフグラードの国立原子炉科学研究所(RIAR)内で稼働している高速実験炉「BOR-60」の後継炉となる予定。冷却材として液体ナトリウムを、燃料にはウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料か窒化物燃料を使用するが、鉛や鉛ビスマスといった異なる冷却材環境での照射試験が可能である。ロスアトム社によるとMBIRが完成すれば、核燃料サイクルの確立に不可欠な高速炉など、第4世代の原子力発電システムの開発が大きく進展する。また、原子力を長期的に活用していくための広範な研究課題の解決や、新型核燃料の研究開発など、文字通り多目的に利用することができる。現地の報道では、MBIRで物理試験が行われるのは2027年末になるとみられている。MBIRの総工費は10億ドルと言われており、2010年にロスアトム社のS.キリエンコ総裁(当時)は、国際原子力機関(IAEA)が革新的原子炉や燃料サイクルの導入環境整備を支援するため創設した国際フォーラム「INPRO」の枠組み内で同炉を開発することを提案。同炉の設計と建設をロシアのRIARが受け持つ一方、実験や追加機器に要する経費は、MBIRを中核設備とする「国際研究センター(ICR)」に参加を希望する国々が負担することになった。今回の試験組立は、アトムエネルゴマシ社に所属するAEMテクノロジーズ社のボルゴドンスク工場で行われ、総重量164トンという6つの機器を使用。まず特別に設計された深さ20mのケーソン(円筒状の構造物)内部に、支持リング付き・重さ83トンの原子炉容器をクレーンで設置。同容器内には直径3.2m、重さ45トンのバスケットを据え付けており、これによってMBIR内を出入りする冷却材の流れを制御・分離した。また、機器類の内部には3種類の防護スクリーンを貼り、高温になった冷却材の熱から原子炉容器を防護。これらの要素設備をすべて接続した上で、性能や組立具合、接続性能、全体の調整具合などを点検したもので、今後はディミトロフグラードへの出荷に向けて機器類の点検や保護包装を行う計画だとしている。(参照資料:アトムエネルゴマシ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
27 Jan 2022
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米エネルギー省(DOE)は1月24日、原子力発電所の使用済燃料、および高レベル放射性廃棄物(HLW)を輸送する8軸(車輪が8対=16輪)の鉄道車両「Fortis」でプロトタイプを製造し試験する業務について、「提案募集(RFP)」(=発注側であるDOEの要件を記した文書)を産業界に向けて発出した。「Fortis」は、放射性廃棄物の専用キャスクのような大型コンテナの積載に適した極めて頑丈な設計。輸送時の状態を計測し、リアルタイムで監視者に伝えるハイテク計測機器を搭載している。予備設計はすでに2021年初頭、DOE傘下のパシフィック・ノースウエスト国立研究所(PNNL)の技術支援により完成しており、プロトタイプの製造・試験許可も同じ頃に米鉄道協会(AAR)から取得済みである。DOEはまた、「Fortis」のほかにHLWを専門に輸送する12軸の車両「Atlas」も開発しており、そのプロトタイプではすでに試験を実施中。DOEはこれら2つの開発を通じて、2027年までに放射性物質を安全かつ効率的に輸送する能力を獲得する方針である。米国では「1982年放射性廃棄物政策法」の規定により、全米の原子力発電所敷地内や中間貯蔵施設に保管されている放射性廃棄物をDOEが処分場まで輸送し、処分することになっている。DOEによると「Fortis」の開発は、使用済燃料とHLWの将来の輸送に備えて盤石な輸送能力を得るという取り組みの一環。使用済燃料を封入したコンテナは重さ80~210トンだが、米国ではトラック輸送の法定重量制限である約40トンを大幅に超えてしまうため、これらの輸送では鉄道を使うことが推奨されている。DOEは今回、3月21日までの期間にRFPで募集する提案の項目として、「Fortis」の製造のほかにハイテク・センサーやモニタリング装置を備えた輪軸の入手、高レベル廃棄物の輸送に特化したAARの厳しい性能基準「S-2043」で要件の1つとなっている車両試験の実施、などを盛り込んだ。「Fortis」の設計書は、RFPの結果に基づきDOEが実施契約を結んだ企業に提示することになるが、開発プロジェクトの製造と試験では引き続き、PNNLの技術支援を受けるとしている。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
26 Jan 2022
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米国のウェスチングハウス(WH)社は1月21日、ポーランドの原子力発電プログラムで建設が予定されている原子炉に同社製「AP1000」設計が採用されることを前提に、同国の関係企業10社と戦略的連携関係を結ぶことで合意したと発表した。同社はポーランド北部のグダニスクおよび首都ワルシャワで、これらの企業との了解覚書に調印。ポーランドのみならず、その他の中・東欧諸国でも広くAP1000を建設していけるよう、これらの企業とは長期的に協力していく方針である。ポーランドでは2020年9月に政府が「2040年までのエネルギー政策(PEP2040)」を公表しており、2043年までに2つのサイトで大型原子炉6基(合計出力600万~900万kW)の建設を計画。初号機の運転を2033年までに開始した後、2~3年ごとに残り5基を建設していき、2043年までに6基すべてを完成させるとしている。この民生用原子力発電プログラムは、ポーランド内閣が2020年10月初旬に承認している。米国政府は、このプログラムを実行に移すための方策や必要となる資金調達方法等で支援するため、同じ月にポーランドと政府間協力協定(IGA)を締結。同IGAが2021年3月初旬に発効したのを受けて、WH社は米国から同国への技術移転も含め、包括的投資構想を策定中だと発表している。WH社がポーランドの原子力パートナーに選定された場合、同国内で2,000名分以上の関係雇用が創出されるよう原子力サプライチェーンの構築に尽力するほか、質の高い原子力機器や専門的知見の提供を保証する考えである。その後、米国政府で非軍事の海外支援を担当している貿易開発庁(USTDA)が2021年6月、ポーランドの原子力発電プログラムを支援するため、ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)傘下の原子力事業会社PEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)に基本設計(FEED)調査用の補助金を提供すると発表。このFEED調査は、WH社とパートナー企業のベクテル社が実施することになっている。PEJ社はその半年後の2021年12月、ポーランド初の原子力発電所建設サイトとして、北部ポモージェ県内のルビアトボーコパリノ地点を選定した。WH社が今回、了解覚書を締結したのは、発電所やエネルギー関係設備の建設エンジニアリングを専門とするRafako社、KB Pomorze社、Polimex Mostostal社のほか、冶金材料や鉄鋼製の機器・構造物の製造・供給企業であるZKS Ferrum社、Mostostal Kraków社。また、産業・発電設備の総合建設や最新化および修理が専門のOMIS社、産業投資を包括的に実施しているZarmen Group、発電機器の主要製造企業であるFogo社、造船会社のGP Baltic社、および各種クレーンなど吊り上げ機器を製造しているProtea Groupである。WH社ポーランド支社のM.コバリク社長は今回の覚書締結について、「当社には、ポーランドがエネルギー関係の目標を達成できるよう支援提供するための良好な体制が整っている」と説明。具体的には、ポーランド国内で同社が行っている原子力技術関係の投資を挙げたほか、同社がポーランド南部のクラクフに設置した世界規模のサービスセンターを指摘。同センターには現在200名近い従業員が勤務しており、ポーランドが地球温暖化の防止目標を達成したり、経済成長に必要なエネルギーを確保する際、同センターが最良の技術を提供していると強調した。(参照資料:WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Jan 2022
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は1月20日、アルメニア西部のメザモールにある同国唯一のアルメニア原子力発電所(40.8万kWのロシア型PWR=VVER)で新たなVVERを建設する可能性を探るため、同発電所の経営幹部と了解覚書を締結したと発表した。覚書への調印は、今年の3月末までドバイで開催されている国際博覧会のロシア・イベントに合わせて、同社の国際事業部門であるルスアトム・オーバーシーズ社のE.パケルマノフ総裁と、アルメニア発電所のE. マーティロスヤン所長が行った。パケルマノフ総裁は、「すでに数多くの国々がロシアの近代的な原子力技術を使って、途切れることのない電力供給を実現している」と指摘。その上で、「原子炉の増設に向けた両国の協力は、アルメニアの経済成長や繁栄に不可欠の重要ファクターになるだけでなく、両国の良好な関係を一層強化することになる」と述べた。マーティロスヤン所長によると、アルメニアは脱炭素化という世界的な潮流に追随すると決定しており、そのために必要な近代的技術の開発も進める方針である。同所長はまた、「当発電所の原子炉が運転期間を終えた後も、アルメニアは電源ミックスの中で原子力を維持していく」と明言。「そのために、世界で最も先進的な原子炉の一つであるVVERを将来的にも使用することを検討している」と説明した。アルメニア原子力発電所は旧ソ連時代に完成した発電所で、1988年に大地震が発生した際、政府は同発電所で当時稼働していた1、2号機を停止した。翌年に1号機(40.8万kWのVVER)を永久閉鎖したものの、2号機はソ連から独立した直後の電力需要を賄うという経済的重要性から、1995年に運転を再開。同炉は国内の総発電量の約4割を賄う重要電源であり、2015年からはロシアからの融資により、運転期間を2026年まで10年延長するための設備の近代化プロジェクトが始まった。同プロジェクトでは、機器類の点検や取り換え等、安全性を改善する膨大な作業が行われており、2021年11月にはこれらが完了したのにともない、ロスアトム社のA.リハチョフ総裁一行が出力の15%増強が可能になった同炉を視察で訪れている。その際、アルメニアのG.サノスヤン地域行政・インフラ大臣は、「国家のエネルギー供給保証と自給において、この発電所は決定的な役割を担っている」と指摘。同プロジェクトがアルメニアにとって、最も重要な大型プロジェクトの一つであった点を強調した。同相はまた、2号機では2026年以降もさらに10年運転期間を延長できるよう目標設定していくと表明。さらには、新しい原子力発電所の建設によって、原子力産業を一層発展させたいとしていた。(参照資料:ロスアトム社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Jan 2022
3210
スウェーデンでオスカーシャム原子力発電所(BWR、145万kW)を運転しているOKG社は1月20日、同発電所で製造した余剰の水素を市場で販売することになったと発表した。同社はすでに最初の販売契約を国内のガス会社と締結済みであり、今年の早い時期に販売を開始する予定である。発表によるとOKG社はこれまで、同発電所の1~3号機が発電した電力を使って、発電所に接続した(水の電気分解方式による)水素製造プラントを操業。これら3基の配管の応力腐食割れリスクを軽減するため、冷却水に水素を注入してきた。しかし、経済性の低下した1、2号機を2017年までに永久閉鎖したことから、水素の製造能力が過剰になり、同社は余剰水素を他の目的に活用することを決めたもの。同社はこの決定により、「オスカーシャム市は化石燃料を使わないグリーン水素を、原子力発電で提供するスウェーデン最初の自治体になる」と強調している。OKG社のJ.ルンドベリCEOによると、市場で販売する水素は最初は比較的少量だが、同社は発電所と関係インフラ、および専門的知見を有しているため、この事業の拡大に向けた優れた潜在能力を有している。水素の需要量は今後、次第に伸びていくと予想されることから、OKG社に約55%出資しているドイツのUniper社、および約45%出資するフィンライドのフォータム社は、ともに同社のこの事業を強力に支援する方針である。OKG社はすでに、この水素製造プラントを最新化するため新しいシステムを導入したほか、運転の長期化に向けてその他の機器も取り換える予定。Uniperスウェーデン支社のJ.スベニングソンCEOは、「フォータム社とともに水素市場を一層大きく成長させていきたい」と述べており、「スウェーデンの主力電源は水力と原子力なので、化石燃料による発電電力は実質的に使われない」と指摘。スウェーデンではこのように、グリーン水素を大量に製造する条件が整っており、同国が電源の脱炭素化をさらに進めていく上でもこれらは重要な役割を担うと強調した。(参照資料:OKG社の発表資料(スウェーデン語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
21 Jan 2022
3892
ブラジルで原子力発電事業を展開するエレトロニュークリア(Eletronuclear)社は1月14日、国内で新規の原子力発電所立地点を選定するため、鉱物エネルギー省(MME)が電力研究機関のElectric Energy Research Center(Cepel)と協力協定を締結したと発表した。Cepelの18日付の発表によると、契約期間はブラジルの連邦官報に掲載された後36か月間で、契約額は700万レアル(約1億5,000万円)。総発電量の約7割を水力発電に依存するブラジルでは、昨年の干ばつにより電力供給量が不足したが、同国の「2050年までの国家エネルギー計画(PNE 2050)」では、現在約200万kWの原子力発電設備を今後30年間で800万~1,000万kWに拡大する方針である。MMEは電源構成の中でクリーンかつ確実なエネルギー源である原子力発電の比率を高め、干ばつや地球温暖化等の影響を抑えたいとしており、新規立地点の選定もこの方針に沿ったものとなる。エレトロニュークリア社は電力大手のエレトロブラス(Eletrobras)社(※旧電力公社で2021年7月に民営化法が施行)の傘下企業であり、電力部門の研究開発と技術革新を牽引するCepelも、エレトロブラス社とその複数の子会社が1970年代に設立した機関。MMEはCepelについて、「著名な研究者を数多く擁しており、電力部門における後続の研究者養成にも貢献している」と評価した。Cepelは今回の協力協定に基づきMMEに技術面の助言を提供することになっており、第一段階では、エレトロニュークリア社が2009年から2010年にかけて同様の調査を実施した際、使用した基準に見直しや補足の必要があるかを分析する。Cepelはこの作業では、米国の電力研究所(EPRI)が2015年に公表した「早期の許認可申請に対する評価基準とサイト選定に関する手引書」の最新版を活用するとしている。Cepelによると、2009年頃に調査が行われた後、ブラジル北東部では風力や太陽光の発電設備の設置が急速に進むなど、状況が大きく変化した。原子力発電所の立地点を選定する新たな調査では、PNE 2050が示した最新のエネルギー動向や市場状況、EPRIの手引書・最新版による勧告等を考慮する必要がある。また、第二段階からは実際の選定作業に入るが、適合性に関するファクターや優先傾向などを見直す必要があるかCepelは重点的に取り組んでいく。このほか、新規立地点からの送電容量が十分であるか等についても、Cepelでは送電網を管理する全国相互接続システム(SIN)が評価しなければならないとしている。(参照資料:Cepelとエレトロニュークリア社(ポルトガル語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Jan 2022
3236
2025年に脱原子力の達成を予定しているベルギーの連邦原子力規制局(FANC)は1月17日、国内で稼働する全7基のうち、1985年に営業運転を開始した最も新しいドール4号機(PWR、109万kW)とチアンジュ3号機(PWR、108.9万kW)について、「機器類を最新化すれば運転期間の延長が可能」とする分析報告書を連邦政府に提出した。ただしそのためには、連邦政府が今年の第1四半期中にこれらの運転長期化を明確に決定し、すべての関係者が実施に向けた包括的なアプローチを取る必要がある。同国の送電会社であるエリア・グループは、今年の3月18日に2025年以降のエネルギー供給保証に関する報告書を提出することになっており、「原子力なしでは十分なエネルギー供給を保証できない」とした場合、連邦政府はこれら2基の運転長期化を検討すると考えられる。FANCとしては、すでに連邦経済省のエネルギー担当課と関係協議を開始しており、「運転期間の長期化計画(プランBと呼称)」策定に向けて、すべての関係者が実施すべき活動項目や決定しなければならない事項の全体的なスケジュールを作成したことを明らかにしている。ベルギーではチェルノブイリ原子力発電所の事故後、緑の党を含む連立政権が2003年に脱原子力法を制定。既存の原子炉7基の運転期間を40年に制限するなどして、2025年までに脱原子力を達成することになっていたが、総発電量の約5割を供給するこれら7基の代替電源が確保できず、2009年当時の政権は最も古い3基の運転期間を10年延長する代わりに、事業者のENGIEエレクトラベル社に拠出金の支払いを求める覚書を締結した。2011年になると、福島第1原子力発電所事故が発生したことから、最も古い3基のうち出力の小さい2基は2015年に一旦停止されている。しかし、連邦政府とENGIEエレクトラベル社は同年11月、原子力税の支払いも含め両炉の運転期間を2025年まで延長するための条件で合意し協定を締結。最新の安全基準を遵守するための大規模な改修作業を開始した。その後、同国では2020年10月に7政党による連立政権が誕生しており、2021年12月の協議により7政党は2025年までに7基すべてを閉鎖することで原則合意。その際、最も新しいドール4号機とチアンジュ3号機については、エネルギー供給を保証できない場合に限り2025年以降も運転継続する可能性が残された。これら2基の運転期間を延長するには、原子力発電所の安全確保に一義的な責任を負うENGIEエレクトラベル社が運転の長期化(LTO)申請書、および安全性を改善する行動計画をFANCに提出しなければならないが、現時点で同社はこれらを提出しておらず、残されている準備期間は少ないとFANCは指摘。同社に対しては手続を早めるよう提案しており、政府が最終決定を下してから6か月以内に同社と協議を行い、何をいつまでに実行しなければならないか確定する方針である。FANCによると、運転期間の延長に向けて検討を要する重要項目が他にも数多く残っており、一例として安全性改善のための詳細な行動計画の策定に当たり、FANCとしては延長期間が少なくとも10年必要と考えているとした。また、閉鎖する残り5基の廃止措置で放射性廃棄物を管理・貯蔵するのと同時に、これら2基の運転継続に十分な人的資源を確保出来るかも調査する必要がある。さらには、運転期間の延長では関係者すべての合意が必要になるため、3月18日までに実施しなければならない準備作業は一層膨大だとFANCは指摘。この期日までに関係各位が詳細な行動計画を立てるよう指示する包括的なアプローチについて、FANCは遅くとも今月末までに政府に承認を要請する考えだ。政府がこれら2基の運転期間延長を決めた場合、FANCは関係各位がそれぞれのタスクを全面的に遂行することや、計画全体が適切に実行されることを確実にするため、調整官の任命を政府に要請するとしている。(参照資料:FANCの発表資料(フランス語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Jan 2022
4380
使用済燃料と高レベル放射性廃棄物を地層処分する技術の開発と事業化を世界中で展開している米国のディープ・アイソレーション社(Deep Isolation Inc.)は1月13日、スロベニアの原子力発電所や研究炉から出る使用済燃料の処分方法として、深掘削孔処分(DBD)は最も安全でコスト面の効果も高いとの調査結果を発表した。同社はすでに昨年12月、ノルウェー原子力廃止措置機関(NND)の委託により、スロベニア唯一の原子力発電所であるクルスコ発電所(PWR、72.7万kW)の使用済燃料、および欧州放射性廃棄物処分場開発機構(ERDO)に所属するスロベニア、ノルウェー、デンマーク、オランダ、クロアチアが保管している中・高レベル長寿命放射性廃棄物の処分オプションとして、DBDの予備的な実行可能性調査の結果を公表している。今回はスロベニア放射性廃棄物管理機構(ARAO)の委託を受け、同国で2043年に閉鎖が予定されている「TRIGA II型研究炉」の使用済核燃料等の廃棄物についても、同様のDBD調査を行ったもの。ディープ・アイソレーション社はこれら2つの調査結果から、ERDO所属の5か国が中・高レベル長寿命放射性廃棄物や原子力発電所等の使用済燃料を処分する際の重要な代替オプションとして、また、従来の大型処分場に追加するオプションとして、DBDは多くの恩恵をもたらす可能性があり実行も可能、かつコストのかからない方法だと結論づけている。同社が開発したDBDでは、多くの地層で使用されている既存の特許技術と傾斜堀の技術を組み合わせており、深地層の適切な岩石層に孔を掘削して使用済燃料と長寿命廃棄物を定置・隔離する。同社によれば、ERDOの5か国のように廃棄物の保管量が少ない国からは、コスト面や取り扱いの簡便さという点から特に多くの関心が寄せられている。大規模な処分場建設と比較して、掘削地点の選定で高い柔軟性があるほか、短期間で実行することが可能、財政的なリスクも小さいとしている。同社はまた、スロベニアがクルスコ発電所の使用済燃料処分でDBDの採用を決定した場合、TRIGA炉の廃棄物処分では同じ処分孔に新たなキャニスターを1つ追加するだけで済むため、処分方法としては最も簡便かつ廉価になると指摘。また、別の方法としては、TRIGA炉の廃棄物用に「極小処分場」の受け入れ自治体を選定し、小さいスペースに孔を一本だけ掘削してすべての研究廃棄物を処分することになる。いずれにしても、クルスコ原子力発電所の使用済燃料処分でスロベニア政府が従来式の処分場を建設、あるいはDBDを選択した場合、こうしたプロジェクトは国家の処分場を建設する草分け的存在として、幅広い研究開発や実証、サイト特性調査などの点で貴重な貢献をもたらすと同社は強調している。(参照資料:ディープ・アイソレーション社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Jan 2022
2368
エジプト初の原子力発電設備となるエルダバ発電所の建設工事を請け負ったロシアのロスアトム社は1月12日、同発電所3、4号機(各120万kWのロシア型PWR:VVER)の建設許可を、エジプト原子力発電庁(NPPA)が昨年12月30日付で同国の原子力・放射線規制機関(ENRRA)に申請したことを明らかにした。この建設プロジェクトについては、2021年6月末にNPPAが1、2号機(各120万kWのVVER)の建設許可を申請済みだが、現時点で同許可はまだENRRAから発給されていない。ロスアトム社は今回、「これらの建設許可が下り次第、エルダバ原子力発電所の本格的な建設工事を開始する」と明言しており、すでに2021年7月からは4基の着工に備えて機器の製造を開始している。また、これら4基の2次系建屋等の建設契約締結に向け、今月2日にロスアトム社の単独交渉対象者に選定された韓国水力・原子力会社(KHNP)によると、同プロジェクトでは今年中に初号機を本格着工、2028年の営業運転開始を目指すとしている。エジプトでは急速な人口の増加と産業活動の活発化により、電力需要が急増している。停電のリスクを避けつつ需要の増加に対応するため、エジプト政府は発電設備の多様化を含めた意欲的なエネルギー計画を策定。CO2を排出せずに低価格な電力を供給可能なエルダバ原子力発電所は、同国のエネルギー計画の要になると見られている。エジプト政府は2015年11月にロシアと、エジプト初の原子力発電所建設プロジェクトに関する2国間協力協定(IGA)を締結しており、翌2016年5月にはロシア政府から最大250億ドルの低金利融資(年3%)に係る大統領令を公布。これに続いて、両国政府は2017年12月、エジプト北部のエルダバ(首都カイロから西に約320km)で4基のVVERを建設する内容の契約書に調印した。2019年3月には、ENRRAがNPPAに対し4基分のサイト許可を発給。以降の許認可についてはユニット毎に審査する方針である。両国が同プロジェクトでこれまでに交わした一連の契約によると、ロシアは原子力発電所の建設に加え、各原子炉に装荷する60年分の燃料を供給。エジプト側の人材育成についても教育訓練を実施するほか、運開後の10年間は運転・保守(O&M)を支援する。使用済燃料の中間貯蔵施設もエジプト国内で建設する。(参照資料:ロスアトム社、KHNP社(韓国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Jan 2022
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フランス国内の商業用原子炉すべてを所有・運転するフランス電力(EDF)は1月12日、北部ノルマンディ地方で建設しているフラマンビル原子力発電所3号機(FL3)(163万kWの欧州加圧水型炉=EPR)の建設スケジュールの改定を発表。2022年末に実施予定だった燃料初装荷を、2023年第2四半期に延期した。新型コロナウイルスによる感染拡大の影響により、同炉の起動・運転準備が順調に進んでいない点を考慮したもの。これにともない、EDFは近年見積もった同炉の建設コスト124億ユーロ(約1兆6,170億円)が127億ユーロ(約1兆6,560億円)に増大したことを明らかにした。FL3の建設工事は2007年12月に始まったが、フランス国内で初のEPR建設だったこともあり、土木エンジニアリング作業の見直しや原子炉容器の鋼材組成の異常(炭素偏析)、2次系配管溶接部の品質上の欠陥等により完成が大幅に遅れている。同炉では冷態機能試験が2018年1月に完了した後、温態機能試験も2020年2月に完了。原子力安全規制当局(ASN)は同年10月に初装荷燃料の敷地内への搬入を許可しており、2022年末の燃料装荷を経て2023年には送電開始できると見られていた。今回の発表によると、EDFは要求されたレベルの安全性と品質をクリアしてFL3の運転を開始するため、2020年初頭に現場人員を増強した。格納容器の壁を貫通する配管の溶接部修理など、最も複雑な作業は無事に完了しており、ASNも基準に適合していると判断。同炉の最初の運転サイクルで使用する原子燃料は、手続き通り専用の建屋で保管中である。また、すでに機器類の90%が運転担当チームに引き継がれており、これまでに安全上重要な機器約7千点について、5万5千件以上の確認と書類チェックを実施済み。燃料の初装荷と起動に先立ち、残りの作業は以下の通り。・主要2次系の溶接部について改善作業を完了する。・設置した機器類の品質認定試験を改めて実施する。・EPR初号機として中国で運転開始した台山1号機の技術的課題をフィードバックしFL3に適用する。・これらの技術的課題の対策については、ASNから最終的な指示を受け承認を得る。・機器類の最終調整を行い、運転開始に必要な文書もすべて準備する。なお、昨年7月に台山1号機で小規模な燃料破損が見つかった問題については、EDFは燃料集合体の点検を実施した結果、集合体の一部機器に機械的摩耗が認められたと説明。このような現象はフランス国内の複数の原子力発電所でも生じており、EPRの設計自体に問題があるわけではないと強調している。(参照資料:EDFの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Jan 2022
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中国核工業集団公司(CNNC)によると、福建省で建設していた福清原子力発電所6号機(PWR、115万kW)が1月1日、同国送電網に初併入した。同炉は中国が知的財産権を保有する第3世代の100万kW級PWR設計「華龍一号」を採用している。「華龍一号」の完成は福清5号機に次いで中国国内で2基目、世界全体ではパキスタンのカラチ原子力発電所2号機(110万kW)を含めて3基目となる。(参照資料:CNNCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Jan 2022
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米国の原子力規制委員会(NRC)は1月6日、オクロ・パワー社(Oklo Power, LLC)が超小型高速炉「オーロラ」について提出していた建設・運転一括認可(COL)の申請を却下すると発表した。発表によると、オクロ社は同設計の安全面など複数の主要トピックスについて十分な情報をNRCに提出していない。NRCスタッフは不足情報を補う新たな取り組み方法として同社との連携協力を続けていたが、同社がこれらのトピックスに関して2021年7月に提出した報告書、およびこれを捕捉するため同年10月に提出した報告書でも情報不足は改善されなかった。NRCスタッフとしては審査スケジュールの設定が難しいと判断、同申請の却下を決めたもの。同社が今後、不足情報を補った改訂版の申請書で再びCOLを申請することは差し支えないとしている。NRCのこの決定は1月11日付の連邦官報に掲載されており、オクロ社はその後30日以内に公聴会の開催を要請することができる。公聴会の開催が決まった場合、この決定の利害関係者である個人や事業体も参加することが可能だ。「オーロラ」はオクロ・パワー社の親会社である先進的原子炉開発企業オクロ社(Oklo Inc.)が開発した小型モジュール炉(SMR)設計で、電気出力は0.15万kW 。HALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を燃料として使用するが原子炉の冷却に水を使わず、同社によれば少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給を続けることができる。オクロ社は同設計をエネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)敷地内で、2020年代初頭から半ばにかけて着工することを目指しており、DOEも2019年12月にINLでの「オーロラ」建設を許可した。これを受けて、オクロ・パワー社は2020年3月、非軽水炉型の先進的SMRとしては初のCOLをNRCに申請。NRCスタッフは同年6月にこの申請を受理し、審査を進めていた。NRCの原子炉規制局によると、オクロ社の申請書で不足していたのは重大仮想事故に関する追加情報や、リスク重要度が高い構造物、系統および機器(SCCs)の重要度別分類方法などである。設計情報に加えて、建設サイト固有の情報もCOL審査では案件毎に必要となるが、NRCが発出した追加情報の提示要請(RAIs)に対し、オクロ社は再三にわたりは実質的な情報を提供しなかった。こうした状況では、NRCは「オーロラ」設計の安全性を見極めることは出来ないと説明している。現地の報道によると、オクロ社のC.コクラン最高執行責任者(COO)はNRCの今回の決定について、「残念なことだが当社とNRCはその他のプロジェクトでも協議中であり、それらを是非とも前進させたい」とコメント。「オーロラのCOL申請は、先進的核分裂プラントの申請として初めて受理されたものであり、(今回は却下されるに至ったものの)今後の審査の実現に向けて多くのものを新たに学ぶことができる」とした。同COOはまた、「先進的核分裂プラントや使用済燃料のリサイクルで製造されるHALEU燃料は、クリーンな未来を構築する鍵になると信じている」と表明。その一方、公聴会の開催要請や改訂版のCOL申請書を提出する可能性については明らかにしていない。(参照資料:NRCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
13 Jan 2022
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英国の商業用原子炉すべてを保有しているEDFエナジー社は1月7日、スコットランドのハンターストンB原子力発電所で2号機(B-2)(64.4万kWの改良型ガス冷却炉:AGR)を永久閉鎖したと発表した。同発電所ではすでに昨年11月26日、B-1号機(64.4万kWのAGR)を永久閉鎖しており、EDFエナジー社は「ハンターストンB発電所は生産性が高かったが1976年に送電開始して以降、約46年間の発電業務を終えた」と表明した。同発電所では、2018 年に両炉で黒鉛レンガ製の燃料チャンネル部にヒビが確認されたことから、近年発表していたスケジュールより閉鎖時期が約1年早まった模様。今後は3年ほどかけて両炉から燃料を抜き取った後は原子力廃止措置機構(NDA)に譲渡され、NDA傘下のマグノックス社が廃止措置を実施する予定である。EDFエナジー社は昨年6月にも、イングランドのケント州で約40年間稼働したダンジネスB原子力発電所(61.5万kWのAGR×2基)を永久閉鎖している。これに続いて、ハンターストンB発電所の2基を永久閉鎖したことで、英国内で稼働する商業炉は合計11基、784.4万kWとなった。同発電所のP.フォレスト所長によると、ハンターストンB発電所ではこれまでに3,000億kWh以上の無炭素電力を供給しており、地元には安定した高サラリーの雇用を保証。この総発電量はスコットランドの全世帯が消費する電力の約31年分に相当する。同発電所ではまた、運転開始当初は25年間の稼働を予定していたが、設備の更新等に投資したことで46年もの間、安全に運転することが出来たと強調。従業員も多くが同発電所での継続勤務を希望しているため、同社は優秀な従業員を燃料の抜き取り作業で継続雇用する方針である。なお、EDFエナジー社は昨年12月15日、英国全土で稼働するAGRの運転期間の見直し作業を実施した結果、イングランドのヘイシャムB原子力発電所(68万kWのAGR×2基)とスコットランドのトーネス原子力発電所(68.2万kWのAGR×2基)の永久閉鎖時期を2年前倒しし、2028年3月末に再設定したと発表している。2016年の見直しでは、1988年に送電開始したこれらの運転期間を7年延長して2030年までとしていたが、その後の定期的な見直し作業や点検、モデリング、およびその他のAGRサイトでの運転経験等から、両発電所では予定していた25年~30年の運転期間がすでに終了し経年化が進んでいると判断したもの。一方、1983年~1984年にかけて送電開始したヘイシャムA原子力発電所(62.5万kWのAGR×2基)とハートルプール原子力発電所(65.5万kWのAGR×2基)については、2024年3月末までの運転継続に変更がないことを確認している。(参照資料:EDFエナジー社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月7日、11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Jan 2022
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世界初の使用済燃料最終処分場をフィンランドで建設中のポシバ社は2021年12月30日、地上の使用済燃料封入プラントと地下の最終処分設備について、2024年3月から2070年末まで操業するための許可申請書を雇用経済省に提出した。雇用経済省は今後、この申請書に対するコメントを処分場から影響を受ける地域の利害関係者や一般国民から募集する。また、原子力関係施設の建設と操業を監督するフィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)が処分場の長期的な安全性評価を実施し、雇用経済相に見解を提示。肯定的なものであれば、同省が内閣から承認を取り付けることになっており、同処分場は2020年代半ばにも実際の処分活動を開始できる計画である。最終処分の実施主体であるポシバ社は、フィンランドで原子力発電所を操業するティオリスーデン・ボイマ社(TVO)およびフォータム社が共同で設立した。ポシバ社は2000年、フィンランド南部のユーラヨキ地方にあるオルキルオト原子力発電所の近郊を使用済核燃料最終処分場の建設サイトに選定。2004年からは同地点の地下450m部分の岩盤地質や水文学特性を調査するため、地下研究調査施設「ONKALO」を着工した。「ONKALO」は最終的に同処分場の一部となる予定で、政府が使用済燃料を深地層に最終処分する施設の建設プロジェクトを2000年12月に「原則決定(DIP)」した後、議会も翌2001年に同DIPを承認した。ポシバ社は2012年12月に同処分場の建設許可を政府に申請し、2015年11月にこれを取得。2016年末からは総工費約5億ユーロ(約653億円)の建設工事を開始している。この処分場は使用済燃料封入プラントと3種類の地下設備で構成されており、ポシバ社は2019年6月から封入プラントの建設に着手した。2021年3月には、試験用処分坑道の総合機能試験を2023年に実施するため、試験用処分坑道の掘削予定を発表、同年5月には実際の処分坑道の掘削開始を明らかにした。ポシバ社のJ.モッカ社長兼CEOは、今回の操業許可申請について「温室効果ガスを排出せず、地球温暖化の防止に貢献する原子力部門全体にとって重要な節目になった」とコメント。国内の様々な原子力発電関係者が責任ある長期的アプローチを取ろうとしていることを誇りに思うと述べたほか、「ポシバ社は世界で初めて、安全・確実な最終処分の実施能力をオルキルオトで持つことになる」と強調した。同社では過去40年以上にわたる研究を通じて地層処分の長期的な安全性を実証し、オルキルオトのサイト条件に即した最終処分施設の概念を「ONKALO」で開発してきた。これらの作業が最終的な局面を迎えたことから、今後は処分場の操業を開始する準備活動として、封入プラントと地下処分設備の機器類設置に集中的に取り組んでいくとした。同社はまた、使用済燃料をフィンランドで安全に処分していくだけでなく、同社の処分概念を世界の原子力産業界全体の解決策に発展させると表明。最終処分プロジェクトで得られる専門的知見を、同社の技術マーケティング子会社であるポシバ・ソリューションズ社が輸出していけるよう支援する。ポシバ社はすでに2016年10月、チェコの使用済燃料最終処分プロジェクトに専門的知見を提供するサービス契約をチェコ放射性廃棄物処分庁(SURAO)と締結。チェコのプロジェクトにはフィンランドの関係エンジニアリング企業や地質調査所とともに、ポシバ・ソリューションズ社が参加している。 (参照資料:ポシバ社、雇用経済省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
11 Jan 2022
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中国核工業集団公司(CNNC)は2021年12月29日、海南省の昌江原子力発電所で、中国が知的財産権を保有する第3世代のPWR設計「華龍一号」を採用した4号機(Ⅱ期工事では2番目の炉)(PWR、120万kW)の建設工事を28日の午前中から本格的に開始したと発表した。昌江原子力発電所ではすでに、第2世代のPWR設計「CNP600」を採用したI期工事の1、2号機が、2015年と2016年からそれぞれ営業運転中である。Ⅱ期工事となる3、4号機の建設工事は、海南省・自由貿易試験区における建設プロジェクトと位置付けられており、総投資額の約400億元(約7,280億円)のうちCNNCが49%、華能集団公司が51%出資。2019年11月に海南島で起工式が開催された後、2021年4月に3号機が本格着工していた。CNNCによると3号機の完成は2025年に、4号機については2026年末までに完成させる計画である。同発電所ではまた、多目的小型モジュール炉(SMR)設計の「玲龍一号」(PWR、12.5万kW)を採用した実証炉の建設工事が、2021年7月から始まっている。「玲龍一号」は元々「ACP100」と呼称されていた小型炉設計であり、昌江Ⅱ期工事と同様、海南自由貿易港にクリーンなエネルギーの供給を保証することになる。三澳2号機の本格着工 ©CGNこのほか、中国広核集団有限公司(CGN)も12月31日、浙江省の三澳原子力発電所でCGN版の「華龍一号」となる2号機(PWR、121万kW)を建設するため、30日に原子炉建屋部分で最初のコンクリートを打設したことを明らかにした。CGNの発表によると、三澳2号機の本格着工は同1号機の建設工事がちょうど1年前、2020年12月に始まったのに続くもの。これら2基のプロジェクトについては2007年にサイト調査が開始され、国家能源局は2015年5月、最終的に合計6基の「華龍一号」を建設する計画として敷地の取得と整備作業等の実施を承認。2020年9月には、国務院の常務会議がⅠ期工事の1、2号機について建設を承認、同年12月30日付けで国家核安全局(NNSA)がこれら2基の建設許可を発給している。1、2号機は2026年と2027年にそれぞれ送電を開始すると見られており、6基すべてが営業運転を開始した場合、同発電所の年間発電量は525億kWhとなり、浙江省温州市における2020年の総電力需要を超える計算である。(参照資料:CNNCおよびCGNの発表資料(中国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月29日、1月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
07 Jan 2022
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©EC欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は1月1日、持続可能な経済活動の分類枠組「EUタクソノミー」で持続可能と見なされるための技術的精査基準を規定した「(補完的な)委任法令(Delegated Act:DA)」に、一定条件下で原子力と天然ガスの活動を含める加える方向で検討を開始したと発表した。環境上の持続可能性を備えた、真にグリーンな事業への投資基準となるEUタクソノミー規則は、2020年7月から施行されている。同規則が定義する6種類の持続可能な経済活動については、ECが現在、その目的別に実質的な貢献をもたらす活動の詳細なリストをDAで定めているところ。原子力発電は、EUタクソノミーの中で低炭素かつ気候変動の緩和に貢献すると認められているものの、放射性廃棄物の管理問題等により現時点で適格とみなされていない。ECは今回、12月31日付けで原子力と天然ガス関係の活動を含めたDAの案文を「持続可能な資金提供に関する加盟国の専門家グループ」、およびECの諮問機関である「持続可能な資金提供プラットフォーム(PSF)」に提示した。1月12日まで両機関の見解を求める方針で、その結果に基づいてECは今月中にも同DAを正式に採択する。その後は、共同立法者の欧州議会と欧州理事会が同DAを4か月にわたって精査するが、精査期間の終了時に両機関がともに異議を唱えなければDAは発効し、適用が開始される見通しである。ECによると、EUタクソノミーでは今後30年間でCO2排出量を実質ゼロ化するのに際し、必要な経済活動に十分な民間投資が行われるよう導くことが目的。EU加盟各国の現在のエネルギーミックスは様々だが、いくつかの加盟国では依然として大量のCO2を排出する石炭火力に大きく依存している。ECはEUタクソノミーを通じて、このような国が気候中立に向かって動いていけるようなエネルギー活動を提供する。近年の科学技術の進歩や科学的助言、クリーンエネルギーへの移行に伴う各国の様々な課題を考慮した結果、ECとしては再生可能エネルギーを基盤とする未来に向かう手段として、原子力と天然ガスが一定の役割を担うと認識した。EUタクソノミーでは、これらのエネルギー源がCO2排出量の実質ゼロ化に貢献できるよう、明確かつ厳しい条件の下で分類を行う方針。今回のDAがカバーする経済活動によって、石炭火力の段階的な廃止を加速し、一層低炭素なグリーンエネルギーミックスに向かって歩を進めていく考えだ。なお、このような作業の透明性を確保するため、ECは今回、EUタクソノミーの開示に関するDAを改正すると表明。改正法令の下で、投資家は投資に際して、その経済活動に天然ガスや原子力に関する活動が含まれているか、含まれている場合はどういった条件下であるかを判断、十分な情報に基づいて投資先を選択できるようになるとしている。(参照資料:ECの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
06 Jan 2022
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ロシアの民生用原子力発電公社であるロスエネルゴアトム社は12月20日、モスクワの南約500kmに位置するクルスク原子力発電所で、約45年間稼働した1号機(100万kWの軽水冷却黒鉛減速炉=RBMK)を19日付で永久閉鎖したと発表した。発表によると、同炉は1976年12月に送電開始して以降、2,510億kWh以上の電力を発電。これはクルスク地域における総電力消費量の約30年分に相当する。同発電所全体では、全4基のRBMKでこれまでに9,870億kWh発電したとしている。これらの4基はすべて、1986年に事故を起こしたチェルノブイリ原子力発電所と同型の「RBMK-1000」設計であり、ロシア国内ではクルスク発電所のほかにもレニングラード、スモレンスクの両発電所で同じRBMKが稼働中。これらは今後10年以内に運転期間が満了するため、3つの発電所では現在、稼働しているⅠ期工事のリプレースとして最新鋭のロシア型PWR(VVER)をⅡ期工事で建設する計画が進められている。レニングラード発電所では、革新的技術を用いた第3世代+(プラス)の120万kW級VVER設計「AES-2006」がⅡ期工事1号機として2018年10月から、2号機については今年3月から営業運転を開始した。クルスク原子力発電所では、「AES-2006」設計の技術面や経済面で一層の最適化が図られたという出力125.5万kWの「VVER-TOI」設計をⅡ期工事の1、2号機に採用、それぞれ2018年4月と2019年4月に本格着工した。VVER-TOIではAES-2006と同じく運転期間が60年に設定されているほか、受動的な安全システムを全面的に装備。コア・キャッチャーや、大気の自然循環で炉心を冷却する受動式残留熱除去装置が組み込まれている。クルスクⅡ期工事1、2号機はVVER-TOIのパイロット・ユニットという位置づけであり、ロスエネルゴアトム社はⅠ期工事の4基の閉鎖時期に合わせてこれらの運転を開始すると表明。現時点でⅡ期工事1号機は2022年の後半に起動、同2号機については2024年8月に営業運転を開始すると見られている。VVER-TOI設計はまた、スモレンスク発電所のⅡ期工事、および新規サイトのニジェゴロドやセベルスク原子力発電所で採用が決定している。(参照資料:ロスエネルゴアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
27 Dec 2021
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