インドでロシア型PWR(VVER)の建設工事を請け負っているロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は12月21日、インドの南端タミルナドゥ州にあるクダンクラム原子力発電所で20日から6号機(105万kWのVVER)建設工事が正式に始まったと発表した。原子炉建屋の基盤部に最初のコンクリートを打設したことによるもので、今年6月に着工した5号機(105万kWのVVER)と同じく、どちらも2030年までに運転開始すると見込まれている。クダンクラム発電所では、同様にVVERを採用したⅠ期工事の1、2号機(各100万kW)がそれぞれ2014年と2017年から営業運転中であるほか、Ⅱ期工事の3、4号機(各100万kW)もそれぞれ2017年6月と10月からロスアトム社が建設中。5、6号機は同発電所のⅢ期工事に相当し、インドとロシアの両政府は2017年6月、これら2基の増設計画について一般枠組み協定(GFA)とプロジェクトの実施に必要な政府間信用議定書に調印した。両国政府はさらに、インド国内の新規サイトで第3世代+(プラス)の革新的VVERを6基建設する計画も2018年10月に明らかにしている。インドは、1950年代にカナダから導入した研究炉の使用済燃料を基に1974年に核実験を実施したため、国際社会はそれ以降、同国への原子力輸出を停止した。しかし、禁輸が始まる前の1988年、ロシアはクダンクラムでのVVER建設に向けた合意文書をインドと締結しており、2002年から1、2号機の建設工事を開始。インド国内の原子力発電所ではそれまで、出力が最大でも50万kW級という国産加圧重水炉(PHWR)が中心だったことから、クダンクラム1、2号機はインドで初の大型軽水炉となった。インドではその後、米国が同国への原子力輸出を目的に2008年に米印原子力協力協定を締結している。原子力供給国グループ(NSG)も、米国の主張を受け入れインドへの原子力機器禁輸を解除したが、事故時のベンダー責任など様々な理由から欧米諸国の原子炉ベンダーによる輸出計画は進展していない。ロスアトム社の今回の発表によると、同社のエンジニアリング部門であるアトムストロイエクスポルト(ASE)社のA.レベデフ副総裁がクダンクラム発電所について、「1、2号機が現在、定格出力で順調に運転中であるほか、3号機では原子炉圧力容器の設置準備が進められている」と述べている。Ⅲ期工事の2基に関しては、ASE社は2017年8月に主要機器の設計・製造契約をインド原子力発電公社(NPCIL)と締結。優先的に設置しなければならない機器に関してはすでに搬入を開始しており、これらの2基はタミルナドゥ州のみならず、インド全体の生活や産業に重要な追加電源をもたらすと指摘している。また、「友好国であるインドがロシアの最も進んだ大容量の原子炉を活用することで、原子力分野における両国間の平和利用協力は一層拡大していく」と強調している。(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Dec 2021
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ポーランドでの原子力発電導入を目指し、同国の国営エネルギー・グループ(PGE)が設立した原子力事業会社のPEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe、2021年6月に社名をPGE EJ1社から改名)は12月22日、同国初の原子力発電所のサイトとして、バルト海に面した北部ポモージェ県内のルビアトボ-コパリノ地区を選定したと発表した。選定に当たっては、サイト住民の安全性や周辺環境に及ぶ影響面であらゆる要件を満たす必要があったため、PEJ社は2017年以降、ポーランド全土で前例のない規模のサイト調査と環境影響評価を詳細に実施した。今回、これらの観点から最良の地区を選定したとしており、今後は政府に許可申請手続きを行いたいとしている。ポーランドでは1980年代に40万kW級のロシア型PWR(VVER)をジャルノビエツで建設する計画が進展したが、チェルノブイリ事故の発生を受けて同計画は1990年代に頓挫した。政府はその後、エネルギー源の多様化と温室効果ガスの排出量削減を図るには原子力の導入が妥当と判断、2009年に改めて原子力開発ロードマップを策定した。2つのサイトで合計600万kWの原子力発電設備建設を目指すという内容だったが、今年2月に決定した「2040年までのエネルギー政策」では、2043年までに複数のサイトで最大6基の原子炉(600万~900万kW)を稼働させるとしており、初号機については2033年までに運転を開始させる方針である。PEJ社がサイト調査や環境影響評価を開始した当初、対象地区は国内の90か所以上におよんでおり、選定に際しては地形や冷却水の確保、自然保護といったファクターを重視。サイトに通じる道路網や鉄道網、送電網など既存のインフラ設備や、これらのインフラをサイトまで延長する可能性などを考慮した。ポモージェ県内における候補地点の絞り込みでは、ルビアトボ-コパリノとジャルノビエツの2地区で調査結果の一層詳細な分析作業を行っている。PEJ社は現在、これらの分析結果を環境影響声明書(EIA)に取りまとめている。原子力発電所の建設に関するEIAの作成は同国では初めてのため、米国で環境事業を展開するジェイコブス社の東欧支部が技術アドバイザーを務めているほか、ポーランド国内の専門家グループや関係する科学センターなども協力している。PEJ社によるとEIAの内容はすでに固まっているものの、2015年にポーランドで環境影響面の立地プロセスが具体化されて以降、基盤となる関係法規が欧州連合(EU)レベルで数回にわたって変更されており、手続きを進めるには国内法制の改定が必要。PEJ社としては今回のEIAの審査に必要な関連法案の改定を待って、2022年の第1四半期にも完成したEIAを環境保全総局に提出する考えである。(参照資料:PEJ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
23 Dec 2021
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フィンランドのティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は12月21日、オルキルオト原子力発電所で2005年から建設中だった3号機(出力172万kWの欧州加圧水型炉=EPR)(OL3)が同日の午前3時半頃、初めて臨界条件を達成したと発表した。OL3では今後出力を徐々に上げていき、出力5%、30%、および60%になった段階で起動試験を実施する予定で、その各段階でフィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)から許可を得る必要がある。TVOは2022年1月末に出力25%(30万~40万kW)でOL3の送電を開始し、同年6月からは定常的に発電(営業運転)を行う方針である。TVOによると、同国で新規の原子炉が起動するのは、1979年のオルキルオト2号機以来、約40年ぶりのことで、欧州においても約15年ぶり。仏アレバ社(現・フラマトム社)が開発した第3世代+(プラス)のEPRとしては、欧州で最初に臨界に達した原子炉であり、営業運転開始後はフィンランドの総発電量の約14%を賄っていく。OL3の建設工事は、EPR初号機であるが故の様々なトラブルに阻まれ、当初予定されていた2009年の完成スケジュールは大幅に遅延した。フィンランド政府は2019年3月、STUKの意見書に基づきOL3に運転許可を発給。同年7月時点の営業運転開始スケジュールは2020年7月となっていたが、2019年12月には、実施していた試験の遅れやスペア・パーツの欠陥によりスケジュールは2021年3月に繰り延べられた。その後、TVOは2020年4月に燃料の装荷許可をSTUKに申請したものの、新型コロナウイルスによる感染の拡大により、同年8月に営業運転開始スケジュールを2022年2月に改定。STUKが2021年3月に燃料の装荷許可を発給したことから、TVOは直ちに装荷作業を開始した。しかし、一旦2018年に完了した温態機能試験を改めて実施した結果、タービンで総点検を行う必要性が生じ、TVOは今年8月に営業運転の開始は2022年6月になると発表。それ以降の作業の進展を受けて、TVOは今月8日にOL3 の起動と低出力試験の実施許可を申請、STUKは16日付けでこれを承認していた。OL3が臨界条件を達成したことについて、TVOのM.ムストネン発電担当上級副社長は「新しい原子炉の起動に向けた我々の粘り強い作業の賜物であり、永遠に人々の記憶に残るだろう」と表明。「これは原子力産業界のプロ意識と、地球温暖化の防止に向けて行動するフィンランド人の強い意志を反映している」と述べた。また、フラマトム社のB.フォンタナCEOは「フィンランドの人々に安全で信頼性の高い低炭素な電力を提供する道が開かれた」と強調。同社は今後、OL3に原子燃料や長期的な運用管理・保守点検サービス等を供給していく予定であることから、「当社が保有する能力のすべてを発揮してOL3を支えていく」と表明している。(参照資料:TVOの発表資料①、②、フラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
22 Dec 2021
6251
米国政府の貿易開発庁(USTDA)は12月15日、ウクライナでのニュースケール・パワー社製小型モジュール炉(SMR)の導入に向け、「ウクライナ科学技術センター(STCU)」が実施予定の分析調査に技術支援金を提供すると発表した。SMR技術の活用はウクライナで初となることから、同国では導入を可能とするため規制体制の包括的な分析調査を計画。この作業を支援するのが支援金の目的であり、USTDAはSMR建設を通じてウクライナのエネルギー部門の脱炭素化に貢献したいとしている。USTDAの使命は、発展途上国や中所得国における開発プロジェクトに米国民間部門の参加を促すこと。ルーマニアにおけるニュースケール社製SMRの建設構想に対してはすでに今年1月、同様の技術支援金約128万ドルをルーマニア国営の原子力発電会社に交付している。ウクライナの民生用原子力発電公社であるエネルゴアトム社は今年9月、国内でニュースケール社製SMRを建設する可能性を探るため、ニュースケール社と覚書を締結した。同設計の安全性に関しては、ニュースケール社が作成した安全解析報告書(SAR)をウクライナの国立原子力放射線安全科学技術センター(SSTC NRS)が独自に審査することになっており、米エネルギー省(DOE)は今年11月、その審査に必要となる経費の提供を申し出ている。USTDAによる今回の発表は、DOEのこのような支援提案に続くもので、同国の国家原子力規制検査庁(SNRIU)はウクライナでのSMR活用に向けて規制体制を整備する。実際の分析調査は、旧ソビエト諸国の核兵器や生物・化学兵器等の拡散防止を目的とした政府間組織であるSTCUが担当するため、USTDAの支援金はSTCUに提供される。ウクライナの国家エネルギー戦略では、再生可能エネルギーと原子力発電の設備容量拡大を目指しているため、USTDAは分析調査への技術支援を通じてこの戦略を補完していく方針。同調査では、ニュースケール社製SMRの設計をウクライナの規制諸法令、および国際原子力機関(IAEA)の基準などと比較し、ウクライナでの建設を阻むような規制上の不備が見つかれば、必要に応じて規制改革など不備の是正に向けた勧告が行われる。USTDAのV.トゥンマラパリー長官代行は、「CO2排出量の実質ゼロ化に向けて世界が移行していくのを、USTDAはSMRのように画期的かつ革新的な技術開発で加速していく」と表明。「米国の技術を使って、ウクライナ国民に将来、一層クリーンで確実なエネルギーをもたらしたい」との抱負を述べた。SNRIUのH.プラチコフ長官は、ウクライナ原子力規制当局の能力強化に対する米国政府の支援に謝意を表明。その上で、「今回の分析調査によりウクライナの法令が改善され、SMRの建設に繋がることを期待する」としている。(参照資料:USTDA、ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
21 Dec 2021
2628
米国のニュースケール・パワー社は12月16日、同社製小型モジュール炉(SMR)の原子力発電所「VOYGR」をカザフスタンで建設する可能性評価のため、同国の「カザフ原子力発電所会社(KNPP)」と了解覚書を締結したと発表した。世界では近年、安全で信頼性の高い無炭素電源のSMRが今後は重要な役割を果たすとの認識が高まっており、両社はカザフにおけるクリーンエネルギー対策として同技術の活用を検証する方針である。KNPP社は、総資産600億ドルというエネルギー関係の政府系投資ファンド「サムルク・カズィナ国家福祉基金」が2014年7月に設立したLLP(*)。これは、原子力発電所の導入に向けたカザフ政府の優先活動計画に基づく措置である。同国で原子力委員会の委員長を務めたKNPP社のT.ジャンティキンCEOによると、カザフスタンは2060年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指しており、その達成にはCO2を排出しない再生可能エネルギーと原子力が重要になる。SMRはカザフにとって最も有望な技術とみなされていることから、ニュースケール社との協力は、この目標の達成とグリーン経済への移行を促進する現実的な機会として進めていきたいとした。国際エネルギー機関(IEA)によると、化石燃料資源に恵まれたカザフでは2018年実績で発電量全体の約70%を石炭火力で発電しており、次いで20%が天然ガス火力によるもの。旧ソ連邦時代に建てられた電熱併給・海水脱塩用の商業高速炉「BN-350」(出力15万kW)が1999年までアクタウで稼働していたが、現在原子力発電設備はない。生産量が世界第1位という豊富なウラン資源を背景に、政府は2014年当時、出力30万〜120万kWの商業炉建設を計画していたが、2015年に同国のエネルギー相は、電力余剰を理由に少なくとも2023年までは原子力発電所建設計画を凍結すると発表した。2019年3月にカザフの大統領に就任したK.-J.トカエフ氏は今年9月、教書演説のなかで原子力の平和利用と原子力発電所建設の必要性を強調している。2060年までにカザフはCO2排出量の実質ゼロ化を目指す一方、国内では2030年までに電力供給量が不足する見通し。このため、同大統領はサムルク・カズィナ国家福祉基金との協力により、原子力発電利用の可能性を追求すると表明していた。ニュースケール社の発表によると、今回の覚書締結は、同社が2019年にSMRの技術面と価格面についてKNPP社に提案を行ったのに続くもの。原子力発電所の建設を専門とするKNPP社は、原子力発電の将来見通しについて積極的に調査しているため、ニュースケール社は今回の覚書を通じてKNPP社と原子力や技術関係の知見を共有する。同社製SMRの設計エンジニアリングから建設、起動、運転、保守点検等に至るまで、KNPP社が今後実施する評価活動を支援していく。ニュースケール社が開発したSMRはPWRタイプの一体型SMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」で、電気出力5万kW~7.7万kWのモジュールを最大12基まで可能。米国の原子力規制委員会(NRC)は2020年9月、モジュール1基あたりの出力が5万kWのNPMに対し、SMRとしては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給した。米国ではエネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所で初号機を建設する計画が進んでいるほか、ポーランドやブルガリア、ウクライナの国営企業がすでに同社と覚書を締結、それぞれの国内で建設する可能性を探っている。またルーマニアも、今年の国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP26)に合わせて米国政府と協議。民生用原子力分野における両国の連携協力を通じて、2028年までにルーマニアの国内エネルギーシステムに、NPMを6基連結した「VOYGR-6」(46.2万kW)を含めると発表している。【注*】LLP=リミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ: 事業を目的とする組合契約を基礎に形成される企業形態で、リスク回避のため出資者は出資額の範囲までしか責任を負わない。(参照資料:ニュースケール社、カザフ大統領府の9月の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Dec 2021
2608
中国核工業集団公司(CNNC)は12月14日、同国が知的財産権を保有する第3世代のPWR設計「華龍一号」の国内2基目である福建省の福清原子力発電所6号機(PWR、115万kW)が、11日付で初めて臨界条件を達成したと発表した。また、同国の原子力発電専門メディアである「中国核電網」は同じく14日、CNNCの一部出資企業が山東省で建設している「ペブルベッド型モジュール式高温ガス炉(HTR-PM)」の実証炉(電気出力21.1万kW)が、13日に初めて国内送電網に接続されたことを伝えた。福清5、6号機の建設工事は、「華龍一号」設計の実証プロジェクトとして、それぞれ2015年5月と12月に始まった。5号機はすでに今年1月、世界初の「華龍一号」として営業運転を開始しており、6号機についてもCNNCは11月に燃料を装荷、建設工事はシステムの起動に向けた重要段階に入っていた。CNNCは今後、6号機の営業運転開始を目指して、減圧沸騰や送電網へのタービン発電機接続試験を行う。「華龍一号」はCNNCと中国広核集団有限公司(CGN)、双方の第3世代炉設計を一本化して開発されており、安全系には静的と動的2つのシステムを統合。格納容器は二重構造となっており、設計耐用年数は60年を想定している。CNNCの今回の発表によると、一足先に営業運転を開始した5号機は最初の運転サイクルを終えて、燃料交換のための停止期間に入った。福清発電所ではすでに、第2世代改良型の100万kW級PWR「CP1000」を採用した1~4号機が稼働中であることから、1~6号機すべてが完成すれば同発電所の総設備容量は660万kW以上となり、年間の発電量は500億kWhを超える見通し。これらを通じて、地元の地域社会には高品質の経済発展に不可欠のクリーンエネルギーを供給し続け、CO2排出量の実質ゼロ化に貢献させたいとしている。一方、山東省栄成の石島湾では、2012年12月に本格着工したHTR-PMで送電が開始された。中国のHTR-PMは、電気出力10万kW超のモジュールユニット2基で一つの発電機を共有する設計になっており、今年3月までに冷態機能試験や温態機能試験が完了、国家核安全局(NNSA)は8月に運転許可を発給した。これにともない、建設プロジェクトを主導する華能山東石島湾核電有限公司(SHSNPC)は同炉への燃料装荷を開始。ツインユニットの2基目は、今年11月に臨界条件を達成した。なお、1基目についてもすでに9月に同条件を達成している。(参照資料:CNNCの発表資料①(中国語)、②(英語)、中国核電網ニュース、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月13日、16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Dec 2021
3527
ボルセラ原子力発電所©EPZオランダで今年3月に議会選挙が行われて以降、連立協議を続けていた政府の主要4党は12月15日、新政権としての2025年までの政策方針を取りまとめた合意文書を公表した。エネルギーミックスの項目では、国内唯一の原子力発電所の運転を継続するのに加え、政府の財政支援を通じて新たに2か所で原子力発電所を建設する方針を明記している。オランダでは、1973年から稼働中のボルセラ原子力発電所(PWR、51.2万kW)で総発電量の約3%を供給中。同炉は運転開始後40年目の2013年に運転期間が20年延長され、現在の運転認可は2033年まで有効である。同国の原子力支持派の非政府組織であるe-Lise財団は今年4月、「パリ協定の下でオランダは2030年までにCO2排出量を1990年比で49%~55%削減する必要がある」と指摘。「同協定の目標達成に向けた国内議論の中で、原子力はこれまで除外されてきたが、CO2を排出しないエネルギーの一つとして、原子力の具体的な将来ビジョンをオランダの法令や国家戦略で示し、新設プロジェクトを実施すべきだ」と勧告していた。今回の合意文書の中で、連立政権の4党は「地球温暖化への対応でオランダは欧州のフロントランナーとなる覚悟だ」と表明。2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成するため、気候法における2030年時点の目標を厳しくし、CO2の排出量は1990年比で少なくとも55%削減するとした。また、この目標の確実な達成に向けて、同政権は2030年に約60%の削減を目指す方針であり、これにともない2035年までに70%、2040年には80%削減したいと述べた。エネルギーミックスの項目では、4党は「エネルギーを使い続ける以上、今後は省エネに取り組むとともに温室効果ガスを排出しないエネルギー源に切り替える」と明言。2030年以降にエネルギー供給にともなうCO2排出量が実質ゼロとなるよう、速やかに作業を進めるとしており、具体策として化石燃料による発電量を速やかに削減するものの、供給量は十分確保し価格も抑えたいとしている。原子力に関しては、「風力や太陽光、地熱などのエネルギー源の補完という位置付けであり、水素製造にも活用するほか、天然ガスの輸入量削減にも役立てたい」と説明。このため、ボルセラ発電所の運転は安全性に留意しつつ長期的に続けていくが、これに加えて「新政権の内閣は新たに原子力発電所を2か所で建設するため、必要な措置を取る」と明記。具体的には、市場の関係者に技術革新や関係調査の実施を促し、入札等も行っていく。財政面についても政府支援を提供するほか、規制面や法制面で必要な整備を行い、放射性廃棄物は安全かつ永久的に保管する考えである。4党はさらに、合意文書の予算措置案の中で、電力部門における原子力発電所新設用として2023年に5,000万ユーロ(約64億円)、2024年に2億ユーロ(約258億円)、2025年に2億5,000万ユーロ(約322億円)を計上。2030年までの累計予算は、50億ユーロ(約6,440億円)に達する見込みだと表明している。(参照資料:新政権の連立合意文書(オランダ語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Dec 2021
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米国のニュースケール・パワー社は12月14日、同社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の商業化を加速するため、特別買収目的企業(*未公開会社の買収を目的として設立される法人=SPAC)のスプリング・バレー社(Spring Valley Acquisition Corp.)と企業合併契約を締結したと発表した。合併後の新会社は、証券取引所に株式を公開する予定。低炭素で安全、かつ出力の設定が可能なSMRを通じて、世界中が低炭素なエネルギー社会に移行するのを支援していくとしている。ニュースケール社の大株主は大手EPC(設計・調達・建設)契約企業のフルアー社であり、これまでは出資者が提供額の範囲内で経営責任を負うという「合同会社(LLC)」の形態を取ってきた。米国で承認されているSPAC制度では、特定の事業を持たないSPACの設立者が、まず自己資本によりSPACの株式を上場。投資家から資金を集めた後に買収企業を探して合併するが、事業を営んでいる被買収企業の方が上場企業として存続することになる。合併により、まったく新しいエネルギー企業となるニュースケール社は、社名の末尾が「LLC」から「Corporation」に変わり、上場時の証券コードは「SMR」となる。事前に見積もられた企業価値は約19億ドルにのぼり、年間に最大4億1,300万ドルの売上総利益を生むと予想されている。フルアー社は合併後も新会社の支配権の約60%を確保し、ニュースケール社の重要パートナーとして、今後もエンジニアリングサービスやプロジェクト管理、サプライチェーン、経営面のサポートを提供していく。ニュースケール社が開発したNPMはPWRタイプの一体型SMRで、電気出力が最大7.7万kWのモジュールを12基まで連結することで出力調整することができる。同社は今月2日、同モジュールを搭載したSMR発電所の呼称を「VOYGR」に決定しており、搭載基数に応じて出力92.4万kWの「VOYGR-12」、46.2万kWの「VOYGR-6」、30.8万kWの「VOYGR-4」と定めた。米国の原子力規制委員会(NRC)は2020年9月にモジュール1基の出力が5万kWのNPMに対し、SMRとしては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給。ニュースケール社は出力7.7万kW版のモジュールについても、SDAを2022年第4四半期に申請する予定である。ニュースケール社によると、2050年までにCO2の排出量を実質ゼロ化するには、原子力が重要な役割を果たすと広く認識されており、米国は2035年までに発電部門からのCO2排出量をゼロ化する方針。こうした動きに対し、SMR開発の先駆者である同社は多方面で大きな役割を担える立場にあり、大規模な市場機会に恵まれるとともに、米国その他の国々からは超党派の支援を得ている。産業アナリストの分析によると、2040年までに世界では新たに160億kW以上の無炭素電源設備を必要としており、同社は最初の顧客であるユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)と協力して、2029年にもエネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所でVOYGRの建設を目指している。米国以外の国々からも同社製SMRへの期待は高まっており、これまでに11か国で19件の了解覚書や契約をSMRの建設に向けて結んだことを明らかにしている。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Dec 2021
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米国で原子力発電所を運営する電気事業者8社の非営利共同組合「Utilities Service Alliance=USA」と韓国水力・原子力会社(KHNP)は12月6日、原子力発電所における安全性、その他の性能向上に向けた革新的技術開発で協力するため、協定を締結したと発表した。この協定を通じて、両者は米韓両国の原子力産業界相互の関係を強化するとともに、最新の安全への取組みや技術開発情報を交換して利益の拡大を互いに支援。韓国の商業炉24基すべてを保有・運転するKHNP社は、約40年間の運転経験を通じて得た専門的知見や運用・保守点検技術、機器・サービス関係の情報をUSAと分かち合う。一方のUSAは、原子力産業界の中でメンバー企業が占めている立場や25年もの事業経験等で得たものをKHNP社に提供していく考えだ。USAに所属しているのは、テキサス州でコマンチェピーク原子力発電所を運転するルミナント社やサウス・テキサス・プロジェクト(STP)原子力発電所を運転するSTP原子力運転会社、ミネソタ州でモンティセロ原子力発電所とプレーリー・アイランド原子力発電所を保有・運転するXcelエナジー社などである。第三国の原子力開発プロジェクトへの共同参加も含め、米韓両国が諸外国の原子力市場で連携協力していくという方針は、今年5月に米国のJ.バイデン大統領と韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が共同声明の中で確認していた。今回の協力協定への調印は、韓国原子力産業会議(KAIF)と米原子力エネルギー協会(NEI)が12月2日と3日の両日、米ワシントンDCで「米韓原子力協力ワークショップ」を共催したのに合わせ、3日付けで行われた。同ワークショップでは、米国で小型モジュール炉(SMR)や先進的原子炉設計を開発中のニュースケール・パワー社やテラパワー社からも専門家が参加、両国間の全般的な事業協力、なかでもSMR開発における協力の具体化などが主に議論された。 今回の協定調印にともないKHNP社はUSAへの加入を決めており、USAに所属する企業との交流を通じて、持続可能な原子力産業の構築を目指す方針。同社のチョン・ジェフンCEOは「脱炭素化という時代のなかで原子力産業が競争力を持つためには、原子力機器や核物質の信頼できるサプライチェーンを確立することが何より大切だ」と指摘した。同社が原子力発電所の運転やサプライチェーンで培った経験をUSAのメンバー企業と分かち合い活用できれば、米韓両国の原子力産業界はともに競争力を高めていくことができるとしている。USAのJ.クリステンセンCEOは、「今回の協定を通じてKHNP社はUSAとの関わりを一層深め、新たな事業チャンスを得ることになるが、安全性や性能を向上させる協力の中から、産業界全体で利益を得るものがあるはずだ」と表明。「USAとそのメンバー企業は、商業用原子力発電所における技術革新と市場に関する協力をKHNP社と直ちに進められるよう、行動を起こすつもりだ」と述べた。(参照資料:USA、KHNP社(韓国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Dec 2021
2606
フィンランドの経済雇用省は12月8日、小型モジュール炉(SMR)など新しい原子力技術に対応した許認可体制の確立を主な目的に、原子力法の包括的な改正に向けた準備作業を開始したと発表した。同国で稼働する4基の商業炉は総発電量の約34%を賄う重要電源であり、CO2排出量の実質ゼロ化を目指すフィンランドでは、地球温暖化の防止対策としても今後数10年にわたって重要な役割を担う。安全面や経済面で実用性の高い原子力発電を今後も引き続き活用していくため、同省は近年の状況に合わせた適切かつ最新の法整備が必要だと説明。2024年にも改正版の原子力法の案文をパブリック・コメントに付して、政府案を議会に提示、2028年にも正式に発効させる方針である。同省の発表によると、原子力関係施設の許認可体制は時間をかけて徐々に基盤が確立されてきたもので、原子力関係施設の建設プロジェクトにおいては、あらゆる段階で社会的利益を反映してきた。しかし、原子力関係施設の運転環境も同様に変化しつつあることから、許認可体制を始めとする原子力規制の枠組みも、これまでの経験や今後の技術開発状況等を踏まえた改革が必要である。このような背景から、同省は近年の原子力産業界でSMRのような新しい技術や運転モデルが浮上してきた事実に言及。CO2の排出量を実質ゼロ化するには、CO2を排出せずに熱や電力を供給できる原子力発電の活用拡大は解決策の一つであると強調した。そのための原子力法改正にあたり、経済雇用省は「効果的でリスク評価に基づいた管理が原子力発電所の安全確保では重要だ」と改めて指摘した。新しい原子力技術を採用し、これを複数建設していくのであれば法令準拠状況も審査しなければならない。そのため、今回の法改正ではフィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)に十分な管理権限を様々な部分で与え、既存の大型原子力発電所における安全運転とSMRの活用可能性を確実なものにする必要がある。原子力利用に付随する権利と義務については一層明確な基準を定めるが、重要な点は運転上のリスクにタイムリーに対応できるよう、要件を具体的なものに改善することだと述べた。これらに加えて同省は、将来の原子力利用で最も大きな課題となるのは採算性だと指摘した。SMRを活用する際も、放射性廃棄物の管理など安全・セキュリティの確保は切り離せない問題だが、例えばSMRを地域暖房に活用する場合、居住地域に非常に近い地点に建設する必要があるため、世界各国は差し当たり、コスト面の競争力が高いSMRの実用化を待っている。このほかにも同省は、SMRに関する重要課題として安全性を評価する方法の改善や規制当局同士の国際協力などがあると表明。新たな許認可体制で安全性の評価方法が十分機能しなかった場合は、モジュール式であることの利点が失われ、SMRを建設する毎に安全性を個別に評価することになると警告している。(参照資料:フィンランド政府(フィンランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月10日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
13 Dec 2021
3041
フィンランドのティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は12月8日、オルキルオト原子力発電所で建設中の3号機(172万kWの欧州加圧水型炉=EPR)(OL3)を初めて臨界状態とし、低出力試験を開始するための許可をフィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)に申請した。この試験運転期間中、OL3が国内送電網に接続されることはないとTVOは説明している。OL3の現在のスケジュールでは、2022年1月に臨界条件を達成した後、翌2月から送電開始、定常的に発電(営業運転)を始めるのは同年6月になっている。STUKから許可が下り次第、TVOはこれらのスケジュールへの影響について、建設工事を請け負っている仏アレバ社と独シーメンス社の企業連合と協議を行う予定である。OL3の建設工事は2005年8月、世界で初めてEPR設計を採用して開始されたが、規制関係文書の確認作業や土木建設工事、品質検査等に想定外の時間を費やし、当初予定されていた2009年の完成スケジュールは大幅に遅延した。TVOは2018年3月、同企業連合と結んだターンキー契約の固定価格である約32億ユーロ(約4,200億円)が工事の遅延にともない大きく超過したとして、この超過コストと損害賠償金に関する包括的和解契約を同企業連合と締結。TVOに対し同企業連合側から、総額4億5,000万ユーロ(約580億円)が支払われることになった。その後、OL3では各種の機能試験が行われ、2019年3月には運転許可が発給されている。TVOは2020年4月に燃料の装荷許可を申請したものの、この時期に世界では新型コロナウイルスによる感染が拡大。同年8月にTVOが発表した基本スケジュールによると、OL3の送電開始は2021年10月、営業運転の開始は2022年2月に改定されたが、今年3月に燃料の装荷許可が下りたのを受け、TVOは同炉で直ちに燃料の装荷作業を開始した。今年5月、TVOは企業連合側と建設プロジェクトを完了する際の条件について改めて協議を行い、2022年2月末までにOL3を完成できなかった場合、実際の完成日に応じて企業連合側から追加の補償金をTVOに支払うことで合意。両者は翌6月に合意文書に調印した。しかし、同炉で改めて温態機能試験を実施した結果、TVOは今年7月、「タービンで総点検を行う必要性が出てきた」と発表している。その際、2021年10月の送電開始と2022年2月の営業運転開始スケジュールを1か月間先送りすることが決定。8月にはさらに3か月延期しており、TVOは最新スケジュールの「2022年2月の送電開始と同年6月の営業運転開始」に向けて、鋭意作業を実施中である。(参照資料:TVOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 Dec 2021
2474
ポーランド最大の化学素材メーカー、シントス社のグループ企業であるシントス・グリーン・エナジー(SGE)社、および同国最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社は12月7日、ポーランドでマイクロ原子炉や小型モジュール炉(SMR)の建設と商業化を進めるため、合弁事業体(JV)の設立に向けた投資契約を締結したと発表した。両社が50%ずつ出資するJVは「オーレン・シントス・グリーン・エナジー社」と呼称され、SMRの中でも特に、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社が開発した「BWRX-300」の建設に重点的に取り組む。2030年の初号機完成を目指して、年内にも反トラスト規制当局に許可申請書を提出し、正式な活動の開始に備える方針だ。このプロジェクトを通じて、オーレン・グループは2050年までに自社のCO2排出量の実質ゼロ化を達成出来るよう、製品生産の脱炭素化を加速。その際、地元のサプライチェーンを活用することでポーランドの経済成長とエネルギー供給保証につなげたいとしている。同JVで展開する具体的な活動として、両社はBWRX-300の開発を支援するともに、建設に向けた法的枠組みの整備を支援する。立地点を選定し、着工。完工後は生産したエネルギーと熱を自社用に活用するだけでなく、地元地域の需要にも対応する考えだ。ポーランドのJ.サシン副首相兼国有財産相によると、同国は欧州連合(EU)の地球温暖化防止政策に沿って、エネルギー部門を改革しなければならないが、「SMRの商業化に向けた今回の投資契約によって、両社はエネルギー部門の脱炭素化を効果的かつ安全・迅速に進めることになる」と述べた。原子力発電設備を持たないポーランドの政府は現在、国内の2サイトで合計出力600万kW以上の大型炉を建設する計画を進めており、小型炉開発に向けた企業の今回の動きについても、同相は「原子力は将来最も安定したエネルギー源になる」との見解を表明した。SMRの商業化協力で、GEH社のBWRX-300を選んだ理由として、オーレン・グループはカナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が今月2日、ダーリントン原子力発電所で建設するSMRとして3つの候補設計の中からBWRX-300を選定したことにも言及。OPG社がBWRX-300の初号機を建設した場合、オーレン・シントスJVのSMRはその2基目となるため、同炉の開発や投資手続の準備、許認可、建設、運転等についてOPG社が積み重ねた経験を参考にすることができると強調した。同グループはまた、SMRの建設候補サイトをポーランド国内で無数に入手することが可能であり、大型の投資計画では数多くの実績を残している。最先端のエネルギー生産設備を広範囲に建設した経験もあるため、同グループはモジュール式原子炉をポーランドで商業化する企業としては理想的な立場にあると説明。これらを背景に、BWRX-300に関するシントス社との協力では、同グループがプロジェクトを一層迅速かつ円滑に実行に移すことができると述べた。一方、シントス・グループのオーナーであるM.ソウォヴォフ氏も、PKNオーレン社との過去20年にわたる協力関係に触れ、協力範囲が革新的原子力技術に広がったことを歓迎した。BWRX-300を開発したGEH社についても、親会社のGE社グループにはポーランド市場で30年もの実績があるほか、同国内の3,000社以上をカバーする巨大サプライチェーンを保有していると指摘。その上で、「これらのうち何社かはすでに他国の原子力発電所用機器を製造しており、このことはポーランドをSMR製造ハブとする機会を提供する投資計画の重要な要素だ」と強調している。(参照資料:PKN オーレン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Dec 2021
3855
フランス国内の商業炉をすべて保有・運転しているフランス電力(EDF)は12月1日、傘下のフラマトム社が開発した第3世代+(プラス)のPWR設計「欧州加圧水型炉(EPR)」を欧州のみならず、世界中で建設していくため、チェコやポーランド、インドなどの複数の大手関係企業と協力協定を締結したと発表した。協定への調印は、民間原子力コミュニティ最大のマーケットプレイスである「世界原子力展示会(WNE)」が11月30日 から12月2日まで、フランスのパリで開催されたのに合わせて行われた。EDFとしては低炭素な社会を将来、世界レベルで実現する上で原子力は欠かせないと考えており、地球温暖化の防止に資する今後数10年間の重要施策として、原子力の必要性を強力に提唱。また、長期的な連携協力を通じて原子力の恩恵や社会経済的価値を提供するため、フランスおよび国外での原子力発電所開発計画を支援している。実際にEDFは、原子力発電所の設計エンジニアリングから建設、運転、保守点検、人材育成と能力開発、廃止措置、放射性廃棄物の管理に至るまで、原子力関係の専門的知見を保有。このため、発電所の全期間で必要となる関連サービスやノウハウ、およびフランスの様々な原子炉技術の販売促進活動を展開している。これらを背景にEDFは世界中のEPR建設を成功に導きたいとしており、今回の協力協定はその建設プロジェクトに、相手国のサプライチェーンや産業界の実質的な参画を保証する意味を持つものである。まず、チェコとの協力では、EDFはドコバニ原子力発電所5、6号機増設計画の受注を念頭に、同国の産業界との連携を強化。同国のエンジニアリング関係企業で構成されるチェコ・エネルギー産業連合(CPIA)の立ち合いの下、スコダ社や国立原子力機関(UJV Rez)と協定を締結したほか、その他のエンジニアリング企業や関連機器製造企業のBAEST社、I&C Energo社、 Hutní montáže社、 MICo社、MSA社 、REKO Praha社、 SIGMA社とも協力協定を結んだ。ポーランドについては、EDFは今年10月、原子力発電の導入を計画している同国政府に対し、2~3サイトで4~6基(660万~990万kW)のEPR建設を提案している。これに基づき今回は、同国の主要エンジニアリング企業であるDominion Polska社やEgis Poland社、Energomontaż-Północ Gdynia社、発電関係のEPC(設計・調達・建設)契約企業のRafako社、Zarmen社と協定を締結している。インドとの協力に関しては、EDFは今年4月、南西部のジャイタプールでEPRを6基建設するプロジェクトについて、法的拘束力のある技術・商業面の契約条件提案書をインド原子力発電公社(NPCIL)に提出した。インド政府が世界の研究開発・製造ハブとなることを目指して掲げている国家産業政策「メイク・イン・インディア」に沿って、EDFはこれまでも数多くの地元サプライヤーと連携協力してきた。今回は確固たるインドの国産化戦略の一環として、インドの大手複合企業体であるラーソン&トゥブロ(L&T)社と2017年から続いている協力関係を延長した。EDFはこのほか、フランスの大手ゼネコンであるブイグ公共土木事業(Bouygues Travaux Publics)社とも協力を強化するための枠組み契約を締結している。チェコやポーランド、あるいはサウジアラビアでのEPR建設が実現した場合、両社はこの契約に基づいて世界レベルの協力活動を展開する。なお、ブイグ社は同じ世界原子力展示会の場で、サウジアラビアの土木建設企業であるNesma & Partners社と了解覚書を締結。EDFがサウジアラビア初の原子力発電所を建設することになれば、Nesma & Partners社とともにすべての土木建築作業に参加することになる。(参照資料:EDFの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
07 Dec 2021
3547
英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)のG.ハンズ・エネルギー担当相は12月2日、2030年代初頭の実証を目指して建設する先進的モジュール式原子炉(AMR)技術として、高温ガス炉(HTGR)を選択したことを明らかにした。BEISは今年の7月末、柔軟性の高い活用が可能な原子炉開発のため確保した予算3億8,500万ポンド(約580億円)のうち、「AMRの研究開発・実証プログラム」の予算1億7,000万ポンド(約250億円)を使って、2030年代初頭までにHTGRの初号機を完成させるという提案を発表。英国が2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指すにあたり、政府がHTGRを最も好ましい技術と認識していることを示したもので、BEISは9月初頭までの期間、この提案に対するコメントを産業界や一般国民から募集していた。ハンズ大臣の今回の発表は、英国原子力産業協会(NIA)の年次大会で述べられており、「得られたコメントを評価した上で、HTGRに重点的に取り組む判断を下した」と説明。ただし、BEISの幅広い活動の一環として、今後もすべてのAMR開発を継続的に支援していく方針であり、将来的な可能性を秘めた先進的原子炉技術の実現に向け、原子燃料の強力なサプライチェーンを国内で構築・維持するための予算7,500万ポンド(約110億円)を確保したと述べた。同大臣は今年9月にエネルギー担当相に就任したばかりだが、NIAの発表講演では「新規原子力発電設備の建設に英国政府は本腰を入れている」と明確に示した。「エネルギー白書」や「CO2排出量の実質ゼロ化戦略」等を通じて、政府は過去一年間にこのような意図を再三にわたって表明しており、これらを通じて、投資家やビジネス界は自信をもって英国の原子力部門に投資してくれるだろうと述べた。同大臣はまた、「CO2の排出量を実質ゼロ化するには原子力が必要だ」と明言している。近年はとりわけ、天然ガス価格の世界的な乱高下により、エネルギーミックスの多様化に向けた勢いが加速。エネルギーの自給を確実なものにするためにも、原子力など英国内の一層強力なエネルギーシステムに投資する推進力が増していると指摘している。同大臣によると、英国では1990年以降、CO2排出量の44%削減を達成するなど、実質ゼロ化に向けた取り組みが驚くほど進展した。しかし、今後30年の間はこのペースをさらに上げ、2035年までに発電部門を確実に脱炭素化する必要がある。そのためには低炭素なエネルギー技術を広範囲に取り入れること、新たな原子力発電設備については特に、大規模かつ迅速に開発していかねばならない。再生可能エネルギー等のポテンシャルを全面的に活用するのに加えて、風が吹かなくても太陽が照らなくても、低炭素な電力を安定的かつ確実に供給可能な原子力が必要だと同大臣は訴えている。今後の計画については、ハンズ大臣は新たな原子力開発プロジェクトの設定に向けた「ロードマップ」を2022年の前半に公表する方針だと述べた。その一環としてBEISはすでに今年10月、新規建設を支援する資金調達の枠組みとして「規制資産ベース(RAB)モデル」を導入するための法案を議会に提出している。BEISはまた、原子力新設プロジェクトへのさらなる投資を促すため、グリーン事業の分類投資である「英国版タクソノミー」に原子力を含められないか検討中であることを明らかにした。(参照資料:英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Dec 2021
3239
カナダのオンタリオ州営電力(OPG)会社は12月2日、新たに既存のダーリントン原子力発電所で建設する小型モジュール炉(SMR)として、候補の3設計の中からGE日立・ニュークリアエナジー(GEH)社製「BWRX-300」を選定したと発表した。OPG社とGEH社は今後、SMRの建設に向けた設計・エンジニアリングや計画立案、許認可手続きの実施準備等で協力する。OPG社はまた、関係の各種承認が下りるまでの間、2022年春にも建設工事に必要なサービス業務の手配などサイトの準備作業を開始し、同年末までにカナダ原子力安全委員会(CNSC)への建設許可申請を目指す。早ければ2028年にも、カナダでは初となる商業用のSMRを完成させる計画だ。オンタリオ州南部のダラム地方に立地するダーリントン発電所については2012年8月、OPG社が当LTPS)」を発給した。しかし、オンタリオ州はその後この計画を保留、その一方で、同発電所で稼働中の4基および州内のその他の発電所でも、運転期間の延長計画や大規模な改修プロジェクトが進められている。2020年11月になるとOPG社は、LTPSを取得したダーリントン新設サイトでSMRの建設に向けた活動を開始すると発表した。同LTPSについては有効期限切れが2022年8月に迫っていたため、同社はこれに先立つ2020年6月に更新申請書をCNSCに提出済み。CNSCは2021年10月に同LTPSの10年更新を承認しており、同サイトは現在、カナダで唯一LTPSLが認められている地点となった。OPG社としては、州内に確立されているサプライチェーンを活用しつつ新たな雇用を創出し、ダラム地方をオンタリオ州におけるクリーンエネルギー供給の中心地とする方針である。OPG社のK.ハートウィック社長兼CEOは、「原子力は実証済みの技術を活用したCO2排出量ゼロのベースロード電源であり、2040年までに当社がCO2排出量の実質ゼロ化を達成し、2050年までに経済全体で幅広く脱炭素化を実現するために機能する」と指摘。SMRという革新的技術の建設をGEH社と連携して進めることにより、同社はカナダのみならず国外においても、次世代の原子炉を開発・建設していく道を拓きたいと抱負を述べた。GEH社の「BWRX-300」は電気出力30万kWのBWR型SMRで、2014年に原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得した第3世代+(プラス)の同社製設計「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」がベースとなっている。GEH社の説明によると、「BWRX-300」は自然循環技術を活用した受動的安全システムなど画期的な技術を多数採用しており、設計を大胆に簡素化したことで単位出力あたりの資本コストはその他のSMRと比べて大幅に削減されている。このようなSMRを建設する意義についてOPG社は、オンタリオ州内の輸送その他の部門で広範囲に増加が見込まれる電力需要に対し、クリーンエネルギーを提供する重要な電源となり、同州経済の脱炭素化に幅広く貢献するとした。同社はまた、国際エネルギー機関(IEA)を含む複数の国際機関が、「原子力を電力供給ミックスに含めなければ脱炭素化は達成できない」とはっきり述べている事実に言及。出力約30万kWのSMR一基で、年間30万トン~200万トンのCO2排出を抑制できると強調した。雇用・経済面の効果に関しても、同社はシンクタンクに依頼して実施した調査の結果、建設段階および60年間の運転期間も含めて多大な恩恵が同州にもたらされると指摘。間接的な雇用も含めて、開発期間中に年平均で約700名分の雇用が生み出されるほか、機器の製造期間に約1,600名分、運転期間中に約200名分、廃止措置期間には約160名分の雇用が創出されるとした。OPG社はまた、カナダの国内総生産(GDP)に対するプラスの影響として、25億カナダドル(約2,200億円)以上が見込めるとともに、オンタリオ州経済に対しても8億7,000万加ドル(約780億円)以上の増収が期待できると述べた。OPG社の発表によると、カナダではサスカチュワン州も石炭火力発電所に替えてSMRの建設を検討しており、2030年代初頭に最大4基のSMRのうち最初の一基が同州で運転を開始する可能性がある。国外でも英国や米国、フランス、ポーランド、エストニアなどが同様にSMRの建設に強い関心を抱いており、オンタリオ州は、このような国内外のサプライチェーンに貢献できる有利な立場にあると強調した。(参照資料:OPG社、GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
03 Dec 2021
4642
国際エネルギー機関(IEA)は11月30日、加盟国のエネルギー政策をレビューした報告書のフランス版「France 2021 - Energy Policy Review」を公表し、同国が2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成するには、原子力や再生可能エネルギー、およびエネルギーの効率化に一層投資する必要があると勧告した。原子力については特に、2035年までに発電シェアを50%まで引き下げるにあたり、これを定めた法制上の要件について、地球温暖化にともなう緊急性や気候中立の重要性、再エネの開発状況等とも照らし合わせて条件を精査し、明確にすべきだとしている。IEAによれば、フランスは地球温暖化問題への取り組みで国際的なリーダーシップを発揮しており、最も顕著な例として、2015年の国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP21)におけるパリ協定の締結交渉や、これに先立ち仏国内で「緑の成長に向けたエネルギー移行法案」を可決成立させたことなどを挙げた。しかし近年、同国における低炭素エネルギー技術の開発やエネルギーの効率化対策は、温暖化防止目標を達成できるほど迅速に進んでおらず、フランス政府は将来のエネルギーミックスをどのようにすべきか、極めて重要な判断を下さねばならない状況に直面している。IEAとしては、フランスにはクリーンエネルギーに移行する長期目標の達成の促進で、政策面の一層の努力や関係投資の増額が求められるとしており、将来の電力供給設備の開発については特に、同国政府が明確な戦略を立てる必要があると強調している。報告書によると、フランス政府は高経年化した商業炉の改修工事計画など、2050年までのCO2排出量実質ゼロ化を確実に軌道に乗せるための決定を2022年に下す予定。同政府はまた、欧州連合(EU)全体で目標としている「2030年までにCO2排出量の55%削減」に歩調を合わせ、今後数年間に国内経済全般でクリーンエネルギー化の促進方策や誘導方策を強化する必要がある。このような背景からIEAはフランス政府に対する具体的な勧告事項として、(原子力発電シェアを削減するための法制要件の精査に加えて)以下の点を表明した。すなわち、・電力供給の脱炭素化、および2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化する観点から、既存炉の運転期間延長と新規の原子炉建設の割合に関して、様々な調査や社会経済分析、および関係協議等の結果に基づき、2035年以降に原子力が果たす役割についてタイムリーに判断を下す。・電力市場における競争原理を維持しながら、既存炉の改修や安全性向上、および2023年以降の新規原子炉建設に向けた資金調達など、原子力発電に対する長期的かつ持続可能な財政支援を確実なものにする。・原子力研究の中でも、エネルギーの移行に関するものを特に強化する。具体的には、小型モジュール炉(SMR)を活用した柔軟性のある電力供給、熱電併給や水素製造への活用、運転の長期化を見据えた材料試験の実施、などである。IEAのF.ビロル事務局長は、「将来のエネルギーシステムでCO2排出量のゼロ化を確実にするため、フランス政府は近々、重要な判断を下すことになっており、大きな岐路に差し掛かっている」と指摘。地球温暖化の防止対策に集中する一方で、エネルギーの供給保証についても引き続き対策を取っていく必要があり、新たなクリーンエネルギーに関しては必要な時期に市場に出すことを念頭に、技術革新のための研究開発支援を強化しなければならない。このような支援はまた、風力タービンや電気自動車の製造に不可欠なレアメタルの確保対策につながるほか、新しいエネルギーとの相性が良く、異常気象やサイバー攻撃にも耐えうるエネルギー・インフラの構築に向けた投資にもなると指摘している。(参照資料:IEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Dec 2021
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米エネルギー省(DOE)は11月30日、原子力発電所から出る使用済燃料の中間貯蔵地点を特定するため、「地元の合意に基づく立地プロセス」の策定に向けた情報の提供依頼書(RFI)を、関係するステークホルダーやコミュニティに対して発出した。得られた情報は、同プロセスおよび放射性廃棄物の全体的な管理戦略の策定活動を、公正なやり方で次の段階に進めるために活用する。DOEによると原子力発電は、J.バイデン政権が目標とする「2035年までに米国の電力部門を脱炭素化」し、「2050年までに米国経済全体でCO2排出量の実質ゼロ化を達成する」上で非常に重要な電源。放射性廃棄物の適切な管理は、原子力を一層持続可能なオプションとするだけでなく、DOEが使用済燃料の管理義務を履行する一助にもなると指摘している。 DOEが1998年1月から各原子力発電所の使用済燃料引き取りを開始し、深地層最終処分場で処理するという事項は「1982年の放射性廃棄物政策法(NWPA)」に明記されているが、ネバダ州ユッカマウンテンにおける最終処分場の建設計画は2009年、同州の強い反対を背景にB.オバマ政権が打ち切った。政府の有識者(ブルーリボン)委員会は2012年、「NWPAを修正して地元の合意ベースで最終処分場の立地を進めつつ、複数の中間貯蔵施設を建設すること」を政府に対して勧告。これにともないDOEは翌2013年、2025年までに集中中間貯蔵施設を、2048年までに最終処分場の操業を開始するという管理処分戦略を策定した。2017年初頭には、地元の合意に基づく処分場立地プロセスの案文を作成したものの、発足したばかりのD.トランプ政権が優先項目を変更したため、同プロセスは最終決定していない。一方、民間部門においては、中間貯蔵パートナーズ(ISP)社がテキサス州アンドリュース郡で進めている集中中間貯蔵施設の建設計画に対し、原子力規制委員会(NRC)が今年9月に建設・操業許可を発給。NRCは、ホルテック・インターナショナル社がニューメキシコ州南部で進めている同様の建設計画についても、「周辺住民や環境への影響に問題なし」と結論付けた「環境影響声明書(EIS)」案文を2020年3月に公表している。DOEのJ.グランホルム長官は今回、「放射性廃棄物の管理問題を最終的に解決するには、このような施設の誘致に関心を持つコミュニティから直接意見を聞き、ともに働くのが最良の方法だ」とコメント。施設の建設にともない、地元では雇用の創出という現実的な恩恵がもたらされるほか、一般から意見を求めることにより、立地点の特定に向けたプロセスを可能な限り効果的、かつ多くの人が参加可能なものにできると述べた。DOEの発表によると、2020年12月末にトランプ政権が成立させた「2021会計年度の包括歳出法」では、「(放射性廃棄物の)中間貯蔵および放射性廃棄物基金の監督プログラム」に2,750万ドルの予算が認められており、DOEは使用済燃料を管理する当面の措置として中間貯蔵のパイロット・プログラムを進めることが可能になった。DOEとしては地元の合意ベースというアプローチの下、関係する人々やコミュニティを立地プロセスの中心部分に位置付け、使用済燃料の効果的な管理という数10年にわたる課題を成功裏に解決する機会を得たいとしている。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
01 Dec 2021
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加州で唯一のディアブロキャニオン原子力発電所 ©PG&E米国の原子力学会(ANS)は11月25日、S.ネズビット理事長とC.ピアシー事務局長兼CEOによる連名の声明を発表し、カリフォルニア(加)州のディアブロキャニオン原子力発電所1、2号機(各約117万kWのPWR)で、2024年11月と2025年8月にそれぞれ予定されている閉鎖計画を再考し、運転を継続させるよう同州の知事に促した。1、2号機はそれぞれ1984年と1985年に送電を開始しており、所有者であるパシフィック・ガス&エレクトリック(PG&E)社は当初の運転期間40年に加えて、20年間の運転継続を計画していた。しかし、電力供給地域における需要の伸び悩みと再生可能エネルギーによる発電コストの低下を理由に、PG&E社は運転認可更新申請の取り下げを決定。各40年の運転期間満了にともない閉鎖とする計画を2016年8月に加州の公益事業委員会(CPUC)に提出しており、同委は2018年1月にこれを承認した。ANSではこの閉鎖計画を「早期閉鎖」と形容しており、加州の経済と環境に甚大な被害をもたらすと警告。ANSによれば、加州が閉鎖判断を下した後の状況は変化しており、クリーンエネルギーである原子力発電の必要性はさらに強まっている。今回のANSの声明は、無炭素な電力を将来にわたり供給可能なディアブロキャニオン発電所が、信頼性の高い重要電源であり、過去に下した時代遅れの判断を今日の事情に合わせて今こそ再検討し、同発電所の運転継続に向けた準備を行うべきだと加州のG.ニューサム知事に訴えたもの。ANSの両首脳によると、同発電所は原子力規制委員会(NRC)の厳しい監督下で40年近く安全に運転されており、季節や天候に左右されず年中無休で無炭素なクリーン電力を供給中。加州ではすでに、同発電所を除く5基の商業炉が2013年までに全廃されたことから、州内で唯一存続し、同州の総発電量の約10%を賄うディアブロキャニオン発電所を閉鎖すれば、州内の送電網の安定性を損なうだけでなく輪番停電を強いる可能性がある。同発電所はまた、加州最大の無炭素電源であるため、これを失った加州では多くの電力を州外の火力発電所に依存することになる。その際、年間で数百万トンのCO2が新たに排出され、州政府や連邦政府の脱炭素化計画が損なわれるとANSは指摘している。ANSはさらに、昨年8月に熱波が発生した同州では電力需給がひっ迫し、州内の独立系統運用者(CAISO)が440万kWの電力不足に対処するため、同州全土で輪番停電体制を敷いたという事実に言及。これにより、約330万戸がエアコンのない暗闇の状況に取り残される事態となったが、この時もしも、出力調整可能なベースロード電源であるディアブロキャニオン発電所の無炭素電力がなかったら、状況はさらに悪化し対応コストも高くついたはずだとANSは強調した。ANSの説明では、太陽光や風力、地熱、電力の電池貯蔵などは確かに、加州の脱炭素化計画の重要な一部となるものの、地球温暖化の防止目標を同州が達成するには、すべてのクリーンエネルギー源が必要である。信頼性の高い送電網においては、ディアブロキャニオン発電所のように常時利用可能で強力な主力電源の確保が不可欠で、間欠性のある電源だけで同発電所をリプレースすることは難しい。CAISOによると、加州では総電力需要の約25%を他州から購入した電力で賄っており、山火事や地震を原因とする停電や天然ガス・パイプラインの途絶から影響を受け易い。同州のこのような脆弱性は、2025年以降も州民4,000万人の安全と繁栄を維持するために、同州がディアブロキャニオン発電所を維持する必要があることを明確に示しているとANSは改めて強調した。(参照資料:ANSの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
30 Nov 2021
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ルーマニアの国営原子力発電会社(SNN)は11月25日、チェルナボーダ原子力発電所3、4号機(各70万kWの加圧重水炉)を完成させるプロジェクトで準備段階のエンジニアリング・サービスを受けるため、子会社でプロジェクト企業のエネルゴニュークリア(EN)社がカナダのCANDUエナジー社と契約したと発表した。3、4号機はカナダ型加圧重水炉(CANDU炉)として着工したため、これらを完成させるには、CANDU炉を設計したカナダ原子力公社(AECL)の商用原子炉部門を2011年に買収したSNC-ラバリン社の協力が不可欠となる。CANDUエナジー社はSNC-ラバリン社の完全子会社であり、CANDU炉の設計と供給、および関連サービスの提供を専門としている。今回の契約は、ルーマニアと米国の両政府が2020年10月、両炉の完成に向けた米国からの支援、およびルーマニアの民生用原子力発電部門の拡充と近代化等で協力するため、政府間協定(IGA)案に仮調印したのにともなうもの。その後の今年6月、両国議会の承認を経て同協定案が発効したことから、米エネルギー省(DOE)のK.ハフ原子力担当次官補代行は今年8月、一行を率いて建設工事が1989年にそれぞれ15%と14%で停止した3、4号機を視察した。ルーマニアも米国とIGAを締結した後、カナダ政府とも民生用原子力プロジェクトに関する過去55年間の協力関係をさらに強化・発展させるため、了解覚書を今年8月に結んでいる。CANDUエナジー社は今後、12か月間で840万カナダドル(約7億5,000万円)という今回の契約を通じて、建設工事の再開に必要な文書の最新化や詳細化といったエンジニアリング・サービスをSNN社に提供。具体的にこれらの文書は、両炉の許認可基盤や遵守すべき安全基準、安全設計の変更に関わるものだと説明している。一方のSNN社は今年4月、通常総会で3、4号機の完成戦略を3段階で進めることを承認した。24か月間の「準備段階」ではまず、2009年に設立したEN社がプロジェクト企業として事業展開していけるか、資産・収益等の現在価値を算出。エンジニアリング等の技術面や法制面、財政面で同社が支援を受けられるよう、様々な契約をこの段階で締結し、関連の評価作業や調査も実施するとしている。チェルナボーダ3、4号機を完成させるプロジェクトは、2050年までを見据えたルーマニアの「2019年から2030年までのエネルギー戦略」に盛り込まれており、エネルギー・地球温暖化関係の「国家統合計画」にも明記されている。同国が欧州連合(EU)の一員として、脱炭素化とエネルギーの自給を目指す際の中心政策とも位置付けられており、原子力プロジェクト関係の米国とのIGAはこれらの目標達成に向けて締結された。これと同時にルーマニアの経済・エネルギー・ビジネス環境省は、米輸出入銀行(US EXIM)と了解覚書に調印。原子力を含むルーマニアのエネルギー・インフラ分野向けに、最大70億ドルの投資支援を同行から取り付けている。SNN社のC.ギタCEOは今回、「クリーンでコスト面の効果も高い原子力をルーマニアは必要としており、我が国が脱炭素化を目指す際の解決策の一つになる」と表明。新たな原子炉を国内で完成させることはまた、国家のエネルギー供給システムに安定性とセキュリティ面の効果をもたらし、雇用の創出や国内サプライチェーンの開発など社会経済的なメリットも多数あると強調した。米国のD.ムニーズ公使代理は、ルーマニアが原子力発電設備の改修・拡張に向けて商業契約を結んだことを高く評価。「米国は北大西洋条約機構(NATO)の同盟国としてカナダやルーマニアと協力し、ルーマニアにクリーンで安全、信頼性の高い廉価なエネルギーを提供していく」と述べた。(参照資料:SNNとSNC-ラバリン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
29 Nov 2021
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米エネルギー省(DOE)は11月18日、原子力局(NE)が2017年から実施している「先進的原子力技術開発のための資金提供公募(Industry FOA)」で、産業界が主導する5件のプロジェクトへの支援金として合計850万ドルを交付すると発表した。「Industry FOA」は有望な先進的原子炉設計や燃料の商業化の加速を目的としており、DOEはこれまでの公募で2億1,500万ドル以上を投資。今回選定した5件は第11回目の募集によるもので、これらのプロジェクトではDOEが開発した最新のモデリング・ツールやシミュレーターを活用して、先進的原子炉設計を海上や離島で利用する場合の可能性の評価やその他の研究活動を実施できる。5件のうち「先進的原子炉設計の実証」分野におけるプロジェクトとして、約163万ドルが「プエルトリコにおける小型モジュール炉(SMR)やマイクロ原子炉の立地適性調査(第2段階)」のために交付される。この調査は、カリブ海に浮かぶ米国の自治連邦区の島プエルトリコで、これらの先進的原子炉設計の建設に向けた適性サイトを探るというもの。実際の評価作業は、米国の原子力産業界で働くプエルトリコの原子力エンジニア・グループが2015年に設立した非営利団体「Nuclear Alternative Project(NAP)」が実施する予定である。同島では2018年、議会の下院議長がSMRやマイクロ原子炉の建設に向けた実行可能性調査の実施を決議しており、DOE-NEはこれにともない、2019年に予備的な実行可能性調査の経費をNAPに提供した。この時の調査結果は2020年5月に公表されており、NAPがこれから実施する第2段階の調査の結果とともに、DOEが推進する「離島や遠隔地域における原子炉技術の商業化」に活用される。DOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)の調べによると、プエルトリコでは1960年代に建設した古い施設で発電しており、使用電力のほとんどを化石燃料発電による輸入電力に依存している。国内の発電施設も今後10年以内に4分の3を廃止しなければならず、発電システムの維持とエネルギーの自給確保はプエルトリコで喫緊の課題である。同島の電力庁はそのための取り組みとして、「統合資源計画」の中で再生可能エネルギーによる電力と天然ガスの供給量を拡大する方針を示しているが、ベースロード用の電力を確保するには間欠性のある風力や太陽光では不十分。この問題の解決に向けた有力候補として、プエルトリコでは小型原子炉の活用が上がっているとINLは説明している。なお、DOE-NEの「Industry FOA」はその他の資金提供プロジェクトとして、テレストリアル・エナジー社の米国法人が実施する「溶融塩炉のオフガス系におけるモデリングの不確実性取り扱いアプローチの開発」(約300万ドル)、ゼネラル・アトミックス社の電磁システム・グループによる「高温ガス炉向け炭化ケイ素製燃料被覆管のモデリングとシミュレーション」(約270万ドル)などを挙げている。(参照資料:DOEの発表資料①、②、③、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Nov 2021
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米国のホルテック・インターナショナル社は11月22日、子会社のSMR社(SMR, LLC)が開発中の小型モジュール炉(SMR)「SMR-160」を世界市場で建設していくため、韓国の現代建設(HDEC)と事業協力契約を締結したと発表した。ホルテック社は、同SMRで2025年までに米原子力規制委員会(NRC)から立地建設許可の取得を目指しており、NRCとの関係協議はすでに始まっている。設計認証(DC)審査は未だ申請していないが、初号機の建設候補地としてはニュージャージー(NJ)州のオイスタークリーク原子力発電所の跡地、あるいは南部の2州を検討中。同発電所は2018年9月に閉鎖され、ホルテック社は事業者のエクセロン社から所有権を受け継いでいる。HDEC社は今回の契約に基づき、ホルテック社の主要なEPC(設計・調達・建設)契約企業として「SMR-160」標準設計の完成に協力するほか、同設計を採用した発電所をターンキー契約でグローバルに建設していく。具体的には、発電所BOP(主機以外の周辺機器)の詳細設計を担当し、発電所全体の建設仕様書も作成。SMRの標準設計と建設予定地等で承認が得られた場合は、建設プロジェクトの施工者となり、実際のEPC業務と建設工事を実施することになる。ホルテック社によると、この契約を通じて両社は世界中の顧客の要望に沿って最も競争力のある価格で建設プロジェクトを遂行する。ただし北米市場に関しては、同社が米国の大手建設企業と結んでいた既存の誓約に合わせて、HDEC社の参加持ち分を確保する。ホルテック社は建設プロジェクトのアーキテクト・エンジニアとして、主要機器を米国内の製造施設や国際的なサプライチェーンから調達する一方、計装・制御(I&C)については三菱電機から、燃料は仏フラマトム社からそれぞれ調達する方針だ。ホルテック社の「SMR-160」は、ポンプやモーターなどの駆動装置を必要としない電気出力が最大16万kWの軽水炉型SMRで、受動的安全システムを備えている。同設計はまた、輸送部門で使用する水素や工業利用のための熱を生産することも可能な柔軟な設計であるため、脱炭素化という世界潮流にも適合。ホルテック社は、建設プロジェクトにともなう資金の調達や建設地における部品調達などについても、HDEC社と協力していくとしている。ホルテック社のSMR開発に関しては、米エネルギー省(DOE)が2020年12月に「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」における支援対象の一つとして選定した。7年間で合計1億4,750万ドルを投資する計画で、このうち1億1,600万ドルをDOEが負担。残りの3,150万ドルがホルテック社側の負担分であり、初期段階の設計・エンジニアリングや許認可手続き関係の作業が行われている。また、カナダ原子力安全委員会(CNSC)は、同設計がカナダの規制要件に適合しているかという点について「許認可申請前設計審査(ベンダー審査)」を実施中。2020年8月に同設計は、この審査の第1段階を成功裏に終了している。(参照資料:ホルテック社、現代建設(韓国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Nov 2021
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ウクライナの民生用原子力発電公社であるエネルゴアトム社と米ウェスチングハウス(WH)社は11月22日、ウクライナのフメルニツキ原子力発電所における最初のAP1000建設に向け、同国の首都キエフで契約を締結したと発表した。WH社側の発表によると同社はこの契約に基づき、同発電所のAP1000初号機用に長納期の機器を設計・調達する予定だが、エネルゴアトム社側は「同発電所で原子炉を2基新設するため」と説明している。両社は今年8月、ウクライナ国内で複数のAP1000を建設していく内容の独占契約を締結しており、その際、フメルニツキ発電所で建設工事が中断している3、4号機(各100万kWのロシア型PWR:VVER)(K3/K4)のうち、進捗率が28%のK4をAP1000に変更すると明言。このほか、その他の発電所に含めてさらに4基のAP1000を建設すると表明していた。10月になるとエネルゴアトム社は、フメルニツキ発電所でAP1000を採用した最初の原子炉を今年の年末、あるいは来年始めに着工すると発表しており、WH社が指摘したAP1000初号機はK4になると見られている。今回の契約の締結式典では、ウクライナのエネルギー大臣とウクライナ駐在米国大使代理の立ち会いの下、エネルゴアトム社の実質トップであるP.コティン総裁代理とWH社のP.フラグマン社長兼CEOが契約書に署名した。コティン総裁代理によると、「WH社との契約でウクライナの原子力部門は新たな開発局面に入った。」ウクライナでは、旧ソ連時代に着工したVVERが15基(合計出力約1,380万kW)稼働中だが、このうち11基では高経年化が進んでいる。同国の総発電量のうち約半分を原子力発電所で賄っていることから、同総裁代理は「2040年までに国内の原子力発電設備を2,400万kWに拡大することを目指している」と表明。同社の専門家が現在、国際的なパートナーからの支援を得ながらこれに向けた努力を重ねていると説明した。同総裁代理はまた、「新たな原子炉の建設はウクライナのエネルギー自給にとって非常に重要であるだけでなく、これらを通じて当社は欧州を脱炭素化に導く原動力にもなるつもりだ」と強調。米国企業との協力を通じて、エネルゴアトム社がクリーンで廉価なエネルギーの供給に移行する準備はできているとした。一方、WH社の発表によると、第3世代+(プラス)の原子炉設計であるAP1000は、受動的安全システムをフルに備えるほか、操作性も高く、負荷追従運転など柔軟な運転が容易だ。AP1000設計の建設は、エネルゴアトム社とウクライナに持続可能な経済的恩恵をもたらすとともに、各原子炉の建設と運転を通じて技術を国産化する機会も提供することができる。同社のP.フラグマン社長兼CEOは、「最初のAP1000建設に向けた今回の契約により、ウクライナは脱炭素化とエネルギーの安定供給という目標の達成に一歩近づいた」と指摘。WH社はすでにウクライナで稼働する原子炉の約半分に燃料を供給しているが、これらのVVERは高経年化しているため、新たな原子炉の建設が必要である。「当社としてはエネルゴアトム社への協力を継続し、低炭素なエネルギー技術の開発や原子力発電所における高い安全性の維持で貢献していきたい」としている。(参照資料:エネルゴアトム社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Nov 2021
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米国の大手エネルギー供給企業であるサザン社は11月18日、高速スペクトル型・溶融塩高速炉(FS-MSR)の開発に向けた運転データの取得を目的に、「溶融塩実験炉(Molten Chloride Reactor Experiment: MCRE)」を米エネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)で設計・建設・運転するための協力協定を同省と締結した。同社によると、FS-MSRは、CO2排出量が実質ゼロという未来の実現に貢献する柔軟性の高い先進的原子炉技術であり、MCREは世界でも初のFS-MSRとなる予定。サザン社の研究開発チームにはINLのほかに、最大出力120万kWの「溶融塩高速炉(Molten Chloride Fast Reactor: MCFR)」を開発中のテラパワー社が協力しており、仏オラノ社の米国法人に所属する事業ユニット、電力研究所(EPRI)、化学・電気素材メーカーの3M社なども含まれる。サザン社の主導によりMCREをINL内で建設するという提案は、DOEが2020年12月、「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」における支援対象プロジェクトの一つとして選定しており、5年間の研究開発資金として合計1億7,000万ドルを官民が分担調達することで合意した。実際の建設工事に関しては、最終設計作業が完了し工事が始まる前までに、国家環境政策法に基づく環境審査を終えるとしている。サザン社の説明では、この計画はクリーンエネルギーで持続可能な未来を目指すテラパワー社のMCFR開発において、実証炉の設計・建設、運転に向けたロードマップとして技術開発の進展を加速する。テラパワー社のプロジェクトにはサザン社とEPRIのほか、DOE傘下のオークリッジ国立研究所、テネシー州のヴァンダービルト大学が参加しており、DOEは2016年1月、同技術の初期開発を支援する総合インフラの建設費用として、約4,000万ドルをテラパワー社らに交付した。サザン社が主導する今回の小規模のMCRE建設は、テラパワー社のMCFR技術を商業化する推進力として、引き続き貢献していくとサザン社は強調している。サザン社のM.ベリー研究開発担当副社長は、「クリーンで安全、信頼性の高い安価なエネルギーを顧客に提供する包括的戦略の一部として、当社は次世代の原子力技術を開発している」と説明。MCREを通じて、同社は地球温暖化に対応できる革新的な技術の商業化を進め、2050年までに同社が目標とする「CO2排出量の実質ゼロ化」を実現させると述べた。テラパワー社のC.レベスク社長兼CEOも、「サザン社とのこれまでの共同事業が今回、重要な試験段階に到達し、溶融塩炉技術を確認する試験設備が建設されることになった」と表明。「原子炉の許認可と運転に関するサザン社の経験と主導力は絶対不可欠のものであり、MCREの建設を通じて低コストでクリーンなエネルギーに基づく未来が必ず構築されるだろう」としている。(参照資料:サザン社、INL、テラパワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
22 Nov 2021
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米国のニュースケール・パワー社は11月17日、カナダのプロディジー(Prodigy)・クリーン・エナジー社が開発している「海洋原子力発電所(MPS)」の建設と商業化を支援するため、規制インフラの構築に向けた提案などでカナダのキネクトリックス(Kinectrics)社とともに同社に協力する覚書を3社間で締結したと発表した。プロディジー社のMPSには、ニュースケール社が開発した小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」が最大で12モジュール組み込まれる予定。MPSは海岸に設置したタービン等の発電構造物に原子炉を統合する発電所で、造船所で製造後に海上輸送され、海岸線の防水仕様の係留地点に据付けられて、そこから海岸の送電網に接続され送電する。短い工期で建設が可能な上、低炭素なエネルギーをベースロード・モードで供給できることから、ニュースケール社はMPSが世界的規模で化石燃料発電に取って替わっていくと強調している。今回締結された協力覚書は、ニュースケール社とプロディジー社が2018年に締結した既存のパートナーシップに基づいており、SMR技術の商業化に向けた重要なステップとなる。同覚書を通じて3社はMPSの潜在的な顧客や、許認可体制など規制インフラに関する当局者との協議に備え、技術仕様書や規制関係文書を作成する。ニュースケール社によると、SMR建設にプロディジー社のMPSシステムを活用する利点は、従来の大型発電所と比べて建設コストを大幅に削減できることと、環境への影響や建設工期が縮減されることにある。このため同社は今回、電力産業界に許認可関係や環境分析、海辺の送電インフラに関するサービスを提供しているキネトリックス社とも協力。再生可能エネルギー源と連結したMPSをプロディジー社が一つだけ建設した場合や、MPSを水素燃料などのクリーンエネルギー製造に活用した場合について、経済性や商業規模などを評価する方針だ。ニュースケール社のNPMを動力源とするMPSは、沿岸部の都市やコミュニティ、臨海工業地帯のみならず、島国に対してもクリーンで持続可能なエネルギーを確実に提供することが可能。ベースロード用電源としてだけでなく負荷追従運転にも対応し、高度に合理化された廉価なクリーンエネルギーの供給手段になるとニュースケール社は強調している。プロディジー社は現在、カナダ原子力安全委員会(CNSC)とMPSに関する協議を始めたところで、許認可手続きの開始に先立ち実施すべき諸活動などを提案中。同社のM.トロジャーCEOはMPSの規制について、「北米での規制案件としては最初のものとなるが、カナダでは連邦政府がSMR開発に意欲的な方針を堅持しているほか、原子力規制当局の経験が豊富。国内の原子力発電所の収益性も高く、安全運転の実施では世界をリードするなど、当社のMPS開発を成功に導く環境は整っている」とした。その上で、「カナダの政策や規制体制に助けられて当社のMPSがスタート地点に立ち、将来的な輸出にも道が開かれることを期待している」と述べた。(参照資料:ニュースケール社、キネクトリックス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Nov 2021
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