チェコの原子力機器サプライヤーでもあるスコダ社は9月23日、ハンガリー国営の電気事業者MVMグループに所属するエンジニアリング・コンサルティング企業のMVM ERBE社から、パクシュ原子力発電所Ⅱ期工事(120万kWのロシア型PWR=VVER×2基)の建設準備作業を受注したと発表した。建設プロジェクトの一部となる枠組み契約をMVM社と締結したもので、スコダ社は同発電所I期工事の4基(各50万kWのVVER)すべてで原子炉圧力容器を製造した経験から、Ⅱ期工事についてもプロジェクトの評価作業を実施するほか、一次系機器などのエンジニアリング作業を支援。今後もⅡ期工事の準備作業や建設工事には一層積極的に関わっていく方針であり、すでに参加が決まっている欧州の大手企業やErőterva社などのハンガリー企業とともに、今回、建設プロジェクトの国際チームに加わったと表明している。Ⅱ期工事で建設する5、6号機は、最終的にI期工事の1~4号機を代替することになっており、ハンガリーは2014年1月にロシアと結んだ政府間協定に基づき、この増設計画をロシア政府の低金利融資で実施すると発表。同年12月には、両国の担当機関が両炉のEPC(設計・調達・建設)契約を含む3つの関連契約を締結した。ハンガリー側で建設工事を担当するMVMグループのパクシュⅡ開発会社は、2020年6月に同プロジェクトの建設許可をハンガリー国家原子力庁(HAEA)に申請した。同年11月にハンガリーの公益企業規制庁(MEKH)は、同プロジェクトが電力供給網のセキュリティ面で悪影響を及ぼす可能性は低いと判断、電力法の義務事項に照らし合わせた発電実施許可を発給した。プロジェクトの安全面に関する審査結果は、今年の秋にHAEAが建設許可発給の可否という形で発表する見通しである。スコダ社は今回の発表の中で、「スロバキアやウクライナなどと並んで、ハンガリーは当社の最も重要な国外市場の一つだ」と表明している。パクシュ発電所I期工事については、機器の製造のみならずメンテナンスや改修作業にも深く関与しており、2019年に同社は他のチェコ企業とともに総額10億コルナ(約51億円)の改修契約を獲得、これら4基に設置されていた1980年代のアナログ式制御システムをすべて、デジタル式に取り換えた。今年4月には、2~4号機の原子炉圧力容器について、供用期間中検査業務を落札している。なお、今月24日付のロシア国営タス通信によると、ハンガリー外務貿易省のP.シーヤールトー大臣は23日、パクシュⅡ期工事の2基について「2028年から2029年にかけて、両炉とも運転可能になる」との見通しを示している。(参照資料:スコダ社の発表資料(チェコ語)、パクシュⅡ開発会社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
30 Sep 2021
1707
英オックスフォード大学の教授や経済学者が中心となって設立したエネルギー関係の分析・コンサルティング企業、オーロラ・エナジー・リサーチ社は9月25日、「CO2排出量を実質ゼロ化する経済における水素製造の脱炭素化」と題する分析調査報告書を公表した。英国が地球温暖化の防止目標を達成し、2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化した低炭素なエネルギー社会に移行するには、再生可能エネルギー(再エネ)と原子力の両方を活用して製造した水素が一助になると指摘。これにより英国は、移行にともなう使用燃料源の中で化石燃料への依存度を軽減できると分析している。オーロラ社が作成した報告書は、英国政府が8月に「水素戦略」を発表したのに続くもの。同戦略では原子力を利用したクリーン水素の製造に様々なオプションが存在するとした一方、コスト面や競争力の関係で原子力がもたらす貢献を数値モデル化していなかった。今回の報告書は、ウラン濃縮役務の供給大手であるURENCO社の委託を受けてオーロラ社が作成しており、必要なデータは、英国のシンクタンクであるルシード・カタリスト社と国際原子力機関(IAEA)、およびフランス電力(EDF)が追加提供した。分析調査の実施背景としてオーロラ社は、「将来の水素製造部門に関して、これまでに行われた調査の多くが再エネや化石燃料の発電電力を用いて、水電解で水素製造することに重点を置いていた」と述べた。原子力は近年、建設費が高騰し新設プロジェクトが保留となったことなどから、水素エネルギー社会に加えようという議論はあまり行われなかった。しかし、今回の報告書でオーロラ社は、「低炭素な電解水素を供給するビジネス・モデルや新しい原子力技術に対する政策的支援によって、これらのコストをどのようにして削減できるか、また、再エネと原子力を活用した水素製造がどのような恩恵をもたらすか分析調査した」と説明している。その結果、判明した主な事項として、オーロラ社は以下の点を指摘した。すなわち、化石燃料への依存度を軽減し脱炭素化を迅速に進めるには、再エネと原子力の両方が発電と水素製造のために必要。これにより、2050年までの累積CO2排出量は8,000万トン削減することができる。「CO2排出量の実質ゼロ化」に必要とされる水素量を化石燃料抜きで確保するには、再エネと原子力で製造した電解水素が不可欠。輸送や産業部門ではベースロード水素を高い割合で必要とするため、原子力で製造した大量の水素を除外した場合、すべての想定シナリオで、2050年までに35%以上を化石燃料で製造した低炭素水素に依存することになる。再エネと並んで、水素製造用の電解槽を敷地内に備えた大容量の原子力発電所では、システム全体の経費を2050年までに6~7%、すなわち400億~600億ポンド(6兆400億~9兆600億円)削減できるため経済効率が高い。電解槽の併設により、原子力発電所では一層柔軟性の高い発電が可能になり、変動し易い再エネの発電量にも対応することができる。水素製造も行うという原子力発電の新しいビジネス・モデルによって、原子力はコスト面の競争力が高く、CO2を排出せずに電力と水素の製造が可能なエネルギー源となる。これに加えて、小型モジュール炉(SMR)や第4世代の先進的原子炉を活用した場合、脱炭素化が加速されるとともに化石燃料の使用量削減が可能になる。(参照資料:オーロラ・エナジー・リサーチ社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
29 Sep 2021
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米国政府の会計監査院(GAO)は9月23日、国内の商業炉から出る使用済燃料の最終処分政策に関する報告書を作成し、議会の関係委員会等に提出した。ネバダ州ユッカマウンテンにおける最終処分場建設計画の、2010年に頓挫して以降の行き詰まりを打開するため、最終処分場の立地点特定に向けた新たな取り組みや統合的な管理戦略の策定で議会に早急の措置を取るよう訴えている。GAOは連邦議会の要請に基づき、政府機関の財務検査や政策プログラムの評価を通じて予算の執行状況を監査する機関。今回の報告書の中でGAOは、国内33州の原子力発電所75か所(閉鎖済みのものを含む)で約8万6千トンの使用済燃料が貯蔵されている現状に触れ、この量は今後も年間約2千トンずつ増加していくと指摘した。オバマ政権がユッカマウンテン計画を停止した後、この問題への取り組みは政治的に行き詰っており、放射性廃棄物政策法(NWPA)に明記された「1998年までに使用済燃料の引き取りを開始し処分する」という義務をエネルギー省(DOE)が履行できていないことから、連邦政府は2020年9月、原子力発電所の事業者に使用済燃料の保管にともなう賠償経費として約90億ドルを支払っている。GAOの説明によると、米国の商業炉から出た使用済燃料は現在、暫定措置の下で管理されており、発電所毎に管理方法が異なるため、最終処分の今後の判断やコストにも影響が及ぶ。今回の報告書を作成するため、GAOがインタビューした専門家のほとんど全員が「解決策を見つけ出し、その計画コストを下げるには統合的な戦略を取ることが重要だ」と回答。しかしながら、議会による確固たる決断抜きでは、担当部局であるDOEが関係戦略を本格的に策定し実行することは出来ないとGAOは強調した。DOEは2017年初頭、政府の有識者特別(ブルーリボン)委員会が2012年に提示した勧告に従い、地元の同意に基づく処分場立地プロセスの案文を作成したものの、新たに発足したトランプ政権が優先項目を変更したため、このプロセスは最終決定がなされていない。1987年の修正により現行のNWPAは、最終処分場としての調査活動をユッカマウンテンのみに限定しているが、議会がこれをさらに修正し、ユッカマウンテンやそれ以外のサイトで使用済燃料の貯蔵や処分が可能になるよう最終決定すれば、DOEは地元の合意を得て使用済燃料の集中中間貯蔵施設や深地層最終処分場の立地プロセスを進めることができるとGAOは指摘した。このような背景から、GAOは今回、以下の4項目について審議・決定するよう議会に要請している、すなわち、(1)現行NWPAを修正し、地元の合意に基づいて中間貯蔵施設や最終処分場の立地と建設を進められる新たなプロセスを承認する。(2)政治的理由によって、使用済燃料を長期に管理するプログラムの優先項目や主導体制が変更されないよう、独立の立場の審議会といった監督メカニズムを創設する。(3)最終処分場の建設・操業用に設置された「放射性廃棄物基金」の仕組みを再構築し、最終処分場開発プログラムの全体的なライフサイクル・コストを同基金で支払えるようにする。(4)修正版のNWPAに沿って、DOEが統合的な放射性廃棄物管理戦略を策定・実行できるようにする。GAOによると、DOEはこれらの勧告に同意した。使用済燃料の管理処分で解決策を見出すには、計画的かつ統合的な判断と政策立案が必要であり、成功に至るという保証もないが、カナダやフィンランド、スウェーデンなどでは同様の行き詰まりに直面したあと、順調に管理処分プログラムを進めている。これらの国の経験や専門家の勧告を生かせば、先に進んでいくための有用な教訓が得られるとGAOは強調している。(参照資料:GAOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Sep 2021
2797
米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は9月23日、同社製小型モジュール炉(SMR)、「BWRX-300」のポーランドでのシリーズ建設に備え、同炉に必要なウラン燃料のサプライチェーンをカナダで構築する可能性評価を実施すると発表した。具体的にGEH社は、カナダの大手ウラン生産企業であるカメコ社、カナダでBWRX-300の建設を推進している子会社「GEH SMRテクノロジーズ・カナダ社」、およびポーランド最大の化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業「シントス・グリーン・エナジー(SGE)」の4社で協力覚書を締結。米GE社が日立製作所との合弁で運営している原子燃料製造企業、グローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社が開発した高性能燃料集合体「GNF2」を活用するなどして、低リスク・低コストのBWRX-300を最速でSMR市場に投入する考えだ。出力30万kWの水冷却型自然循環SMRであるBWRX-300の設計は、2014年に米原子力規制委員会(NRC)の設計認証を受けたGEH社の第3世代+(プラス)設計「ESBWR(革新型単純化BWR)」がベース。受動的安全システムを備えており、GEH社によれば設計を飛躍的に簡素化したことで、BWRX-300のMW当たりの建設コストは、その他の水冷却型SMRや既存の大型炉設計と比較して大幅に削減される。また、同炉にはESBWRの設計認証における基礎的部分を利用、技術的に実証済みの機器も組み込んだという。GEH社はすでに2019年10月、ポーランドでBWRX-300を建設する可能性を探るため、シントス社グループのSGE社と協力覚書を締結。翌2020年8月には、この建設計画の実施に向けて戦略的パートナーシップ協定を結んだ。GEH社はまた、BWRX-300の商業化を促進しカナダやその他の国で同設計を建設していくため、カメコ社およびGNF社の米国法人と今年7月に協力覚書を交わしている。一方のシントス社は今年8月、BWRX-300あるいは他の米国製SMRをポーランド国内で4基~6基(出力が各30万kW程度)建設するため、国内のエネルギー企業であるZE PAK社と共同で投資を行うと発表。建設予定地としては、ZE PAK社がポーランド中央部のポントヌフで操業する石炭火力発電所を挙げた。また、グループ企業のSGE社は2020年10月、BWRX-300技術を用いたプラントの建設・運営プロジェクトについて、ポーランドの原子力規制機関と協議を開始している。今回の協力覚書に関してGEH社は、「カメコ社やSGE社と協力してポーランドに無炭素なエネルギー源をもたらす一方、カナダではウラン供給関連の雇用を創出したい」と述べた。カメコ社側は、「世界中の国家や企業がCO2排出量の実質ゼロ化を達成する際、原子力は重要な役割を果たす」と指摘。その上で、「SGE社がSMRで模索している脱炭素化事業に、BWRX-300は革新的な技術で解決策をもたらす優れた実例になる」と強調した。SGE社も今回の覚書に加えて、「カナダで構築されつつあるBWRX-300の製造・輸出能力を補うべく、ポーランド国内でもサプライチェーン構築に向けてGEH社と一層緊密に連携していく」と表明している。(参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
27 Sep 2021
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米国のニュースケール・パワー社は9月23日、同社製小型モジュール炉(SMR)をポーランドで建設し商業化への道を模索するため、同国鉱業大手のKGHMポーランド銅採掘(KGHM)会社、およびコンサルティング企業のPielaビジネス・エンジニアリング(PBE)社と協力覚書を締結した。KGHM社はポーランド南西部にある欧州最大規模の銅鉱床で採掘を行っているほか、モリブデンやパラジウム、ニッケルなどの金属も生産している。これらの事業に必要な電力や熱エネルギーは石炭火力発電所から得ているが、2030年末までに必要なエネルギーの約半分を自社製で賄う方針。これには、再生可能エネルギー源やSMRが生産するクリーンエネルギーが含まれる。太陽光や海上風力による発電システムの設置プロジェクトはすでに進行中で、今回はこのエネルギーミックスにSMRを加えることになったもの。もう一方のPBE社は、主にポーランドのエネルギー部門や化学部門の企業に対して、運営・戦略や規制、エンジニアリング関係の助言を提供している。政府が進める地球温暖化対応やエネルギーの移行計画にも関与しており、政府機関や金融機関、規制当局などに関連するサービスを提供中。2009年以降は、ポーランドの原子力発電導入プログラムにも同社の専門家が携わっている。ニュースケール社の発表によると、KGHM社とPBE社は今回の覚書でニュースケール社の支援を受け、同社製SMRの導入計画および高経年化した既存の石炭火力発電所を別用途に活用できるか検証する。具体的には、SMR建設計画の技術面や経済面に加えて、法制面、規制面、財政面などを詳細に分析するとしている。ニュースケール社が開発したSMRはPWRタイプの一体型SMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」で、電気出力5万kW~7.7万kWのモジュールを最大12基まで連結して出力規模を決められる。米国の原子力規制委員会(NRC)は2020年9月にモジュール1基あたりの出力が5万kWのNPMに対し、SMRとしては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給。同社は出力7.7万kW版モジュールの「NuScale NPM-20」についても、SDAを2022年第4四半期に申請する予定である。KGHM社がポーランドで建設するSMRは「NuScale NPM-20」と見られており、同社は差し当たりモジュールを4基連結する計画。オプションで12基連結した場合の出力は、100万kW近くに拡大する。同社のM.クルジンスキー社長は、「地球温暖化を食い止めるには断固たる行動が必要だ」と指摘。その上で、「2030年までにSMRを建設するという計画は、エネルギー移行計画の一部であるとともに当社の堅い決意でもある。当社は早ければ2029年にも最初のSMRの運転を開始して、ポーランドにおけるSMR建設のパイオニアになる方針だ」と述べた。同社長によると、SMRは同社が環境に配慮して事業を行う一助となるだけでなく、事業運営費を大幅に削減できる。同社はポーランドがグリーンなエネルギーに移行できるよう、SMRでエネルギーを商業的に生産し、一般家庭の電気代の削減にも貢献する。PBE社の創設者であるP.ピエラ氏は、「ポーランドおよび化石燃料に依存するその他のEU諸国がエネルギーの移行を進める上で、モジュール式のエネルギー源はとりわけ重要な役割を担う」と指摘。「汎欧州グリーン・ディールを成功させる上でも、共通の利益を生む重要なエネルギー技術だ」と強調した。なお、ニュースケール社は同じ日、米オクラホマ州を本拠地とする石油・天然ガスの供給企業Getkaグループ、およびポーランドで電力やガスなど複数のエネルギーを供給するUNIMOT社とも、同様にポーランドでの同社製SMRの建設に向けてこれら3社が協力するための覚書を締結している。(参照資料:ニュースケール社、KGHM社(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Sep 2021
3344
チェコの産業貿易省は9月16日、新規原子炉の建設を支援する枠組の設置法案について議会下院が前日の15日に表決を行い、100対8の賛成多数で可決したと発表した。この「低炭素エネルギーへの移行法案」は、新規の原子炉やその他の無炭素電源の建設に投資を行う刺激策が市場に無いという現状を踏まえ、同省の関係議員が2020年に超党派法案として議会に提出した。完成した発電所の発電電力を政府の保証価格で買い取るメカニズムが盛り込まれており、現状の市場不備を補うとともに、ドコバニ原子力発電所(51万kWのPWR×4基)でⅡ期工事を建設する前提条件の1つでもある。同法はM.ゼマン大統領が署名した後、2022年1月1日に発効する見通しで、産業貿易省は同法を通じて低炭素な電力やエネルギーの安定供給を確保し、エネルギーの自給を図る方針である。K.ハブリーチェク副首相兼産業貿易大臣は今回、「この法律によってチェコのエネルギー供給保証と脱炭素化、無炭素電力の比率向上に向けたプロセスが強化され、原子力でコスト面の効率性の高い電力を生産する基盤が築かれる」とコメントした。同省の説明によると、このメカニズムは再生可能エネルギーの支援策と類似のもので、同省あるいは政府所有の機関が発電所に投資した者と協議の上で電力の買い取り上限価格を設定。購入した電力は卸売市場に転売されるが、これらの価格差は消費者の電気代を通じて調整される。政府と投資家との電力売買契約は30年間有効で、満了後は延長することも可能である。こうした内容は、経済協力開発機構(OECD)や国際原子力機関(IAEA)の勧告に基づいているため、同省は欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)にも、このメカニズムがEU域内の市場規則に適合することを説明中である。チェコの国営電力(CEZ)は、2015年5月の「国家エネルギー戦略」とこれをフォローする「原子力発電に関する国家アクション計画」に基づき、ドコバニ原子力発電所で出力が最大120万kWの原子炉を2基増設することを計画。産業貿易省は増設初号機(5号機)を通じて、増加する国内電力需要の約10%を賄う方針である。この計画を支援する政府の財政モデルでは、建設コストの約70%を無利子・返済条件付きの財政支援で賄い、残りと追加コストをCEZ社が支払うとしている。CEZグループのドコバニⅡ原子力発電会社は2020年3月、プラント供給企業の選定や建設工事の実施に先立つ重要な準備手続として、同計画の立地許可を申請した。原子力安全庁(SUJB)は今年3月に同許可を発給しており、産業貿易省は入札の事前資格審査に向けて、供給企業の絞り込み作業を実施中。プロジェクトに関心表明した5社のうち、これまでに中国広核集団有限公司(CGN)とロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社が候補から除外された。現在は、韓国水力・原子力会社(KHNP)とフランス電力(EDF)、米国のウェスチングハウス(WH)社を対象に審査中と見られている。(参照資料:チェコ議会の発表資料(チェコ語)①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
22 Sep 2021
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IAEAの第65回通常総会が9月20~24日の日程で、ウィーンにおいて開催されている。ビデオ録画で演説する井上科学技術相開幕初日の20日、前回に引き続き日本からは井上信治・内閣府科学技術政策担当大臣がビデオ録画により一般討論演説を行った。冒頭、井上大臣は、新型コロナウイルス感染症への対応という挑戦も続く中、専門性を活かした取組を促進しているIAEAのR.M.グロッシー事務局長のリーダーシップに敬意を表した上で、IAEAが行う感染症対策事業に対する日本の支援にも言及。東日本大震災による事故発生から10年の節目を経過した福島第一原子力発電所の廃炉に関し、今後、ALPS処理水(トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水)の安全性や規制面、海面モニタリングについてIAEAによるレビューが行われることに触れた上で、日本として、国際社会に対し科学的根拠に基づき透明性を持って同発電所の状況を継続的に説明し、各レビューの実施に向けてIAEAと協力していくと強調した。展示会・日本ブースを訪れた上坂原子力委員長(左から2人目)また、IAEA総会との併催で展示会も行われている。前回は新型コロナウイルスの影響で中止されたため、2年ぶりの開催となった。日本ブースでは、「2050年カーボンニュートラル」を見据えた原子力イノベーションと、福島復興における10年間の歩みを主なテーマに、「NEXIP(Nuclear Energy × Innovation Promotion)イニシアチブ」に基づく官民の取組や、ALPS処理水に関するQ&Aなどをパネルで紹介。展示会初日には、IAEA総会出席のためウィーンを訪問中の上坂充原子力委員長、更田豊志原子力規制委員長、OECD/NEAのW.マグウッド事務局長ら、国内外関係者がブースを訪れた。今回、日本政府代表として総会に出席した上坂委員長は20日、内閣府主催のサイドイベント「アルファ線薬剤の開発とアイソトープの供給」に登壇したほか、グロッシー事務局長、フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)のフランソワ・ジャック長官と会談を行った。その中で、グロッシー事務局長は、「日本とIAEAとの間には取り組むべき多くの重要な問題やプロジェクトがある。ともに未来志向で協力していきたい」と強調。上坂委員長からは、IAEAによる福島第一原子力発電所の廃炉に向けた協力に対する謝意の他、北朝鮮・イランの核不拡散問題に関する取組への支持などが示された。
21 Sep 2021
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国際原子力機関(IAEA)は9月16日、世界中で利用されている原子炉の長期的な傾向を地域ごとに分析した最新の年次報告書、「2050年までのエネルギー、電力、原子力発電予測」の第41版を発表した。この中でIAEAは、10年前の福島第一原子力発電所事故以降初めて、今後数十年間に世界で予想される原子力設備容量の伸びを前年版から上方修正したと表明。地球温暖化防止の観点から世界中が脱化石燃料の方向に進んでおり、多くの国が信頼性の高いクリーンエネルギーの生産加速という観点から原子力の重要性を認識、その導入を検討中だと指摘している。IAEAは、野心的だが妥当かつ技術的に実現可能な政策シナリオ「高ケース」で、世界の原子力発電設備容量は2020年末時点の3億9,260万kWから、2050年には7億9,200万kWに倍増すると予測。前年版の予測では高ケースで7億1,500万kWとしていたが、今回この数値を約10%上方修正した。ただし、この予測を実現するには、原子力発電技術の技術革新を加速するなどの重要施策を実行に移す必要がある。市場政策や利用技術、リソース等の傾向が現状のまま続く「低ケース」の場合、原子力発電設備は2050年まで現在の数値とほぼ同レベルの3億9,400万kWに留まるとしている。IAEAのR.M.グロッシー事務局長は、「低炭素なエネルギー生産で原子力が果たす必要不可欠な役割が明確に示された」とコメント。「CO2排出量の実質ゼロ化という点で、非常に重要な電源である原子力への注目が高まったのは明るい兆候だ」と述べた。今回の年次報告書によると、2020年の末時点で世界では442基、3億9,260万kWの原子炉が稼働中で、52基、5,440万kWの原子炉が建設中だった。この年に5基、552万1,000kWの原子炉が新たに送電網に接続された一方、閉鎖された原子炉は6基、516万5,000kW。このほか4基、447万3,000kWの原子炉建設が新たに始まっている。IAEAは世界の総発電量は今後30年間で2倍に増加すると予測しているが、世界中の原子炉は2020年に2兆5,530億kWh(約4%減)を発電し、総発電量の10.2%を供給。高ケース予測では、2050年までに原子力発電シェアは前年版予測の11%から約12%に増加するものの、これを達成するには政府や産業界、国際機関等の協調行動により、相当量拡大させる必要があるとした。低ケースではこの数値は6%に低下するが、この場合石炭火力の発電シェアは1980年以降ほとんど変化せず、2020年実績の最大シェアである約37%をそのまま維持するとしている。また、原子力による水素製造や、先進的原子炉あるいは小型炉などの新しい低炭素な発電技術は、CO2排出量の実質ゼロ化を達成する上で非常に重要だとIAEAは指摘。原子力は電力需要の増加や大気の質の改善、エネルギーの供給保証等に解決策をもたらすものであり、原子力技術の活用を拡大する技術革新が進行中だと述べた。さらに、経年劣化の管理プログラムなど、長期運転に向けた作業が行われている原子炉の基数はますます増加している。世界の原子炉の約三分の二で運転開始後30年以上が経過しており、一部の原子力発電所では運転期間を60年から80年に拡大する動きもみられるが、長期的には閉鎖される原子炉の容量を相当量の新たな原子炉で補わねばならない。現在のエネルギーミックスで原子力が果たしている役割を維持するにも、新たな原子炉が数多く必要となるが、経年化した原子炉の更新については特に、欧州や北米で不確定要素が残されているとIAEAは指摘している。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
21 Sep 2021
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米原子力規制委員会(NRC)は9月13日、中間貯蔵パートナーズ(ISP:Interim Storage Partners)社がテキサス州アンドリュース郡で計画している使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CISF)に対し、建設・操業許可を発給した。連邦政府の原子力法に基づくこの認可により、ISP社は差し当たり最大5,000トンの使用済燃料と231.3トンのGTCC廃棄物(クラスCを超える低レベル放射性廃棄物)を、CISFで40年間貯蔵できる。同社はまた、今後20年間にCISFを5,000トンずつ7段階で拡張するプロジェクトを実施し、最終的に最大4万トンの使用済燃料を貯蔵する計画。その際は、NRCが各段階で改めて安全面と環境影響面の審査を行い、今回の建設・操業許可に修正を加えることになる。ISP社は、米国の放射性廃棄物処理・処分専門業者であるウェイスト・コントロール・スペシャリスツ(WCS)社と、仏国オラノ社の米国法人が2018年3月に立ち上げた合弁事業体(JV)。同JVに対しては、日立造船のグループ企業で、使用済燃料の保管・輸送機器の設計や輸送業務等を専門とする米国のNACインターナショナル社が乾式貯蔵関係の技術支援を行っている。米エネルギー省(DOE)が2010年に、ネバダ州ユッカマウンテンにおける使用済燃料最終処分場の建設計画を中止した後、WCS社は2016年4月、テキサス州の認可を受けて操業している「低レベル放射性廃棄物処分場」の隣接区域で、CISFを建設・操業するための認可をNRCに申請。その後、オラノ社とのJV設立を経て、同JVが2018年6月に修正版の申請書を提出していた。この申請について、NRCスタッフは貯蔵施設の技術的な安全・セキュリティと環境影響を評価するとともに、付属の行政判事組織である原子力安全許認可会議(ASLB)が複数の関係訴訟で下した裁決についても審査を実施。同申請について、今年7月に「環境影響声明書(EIS)」の最終版を発行したほか、技術審査の結果を取りまとめた「安全性評価報告書(SER)」の最終版を、今回の建設・操業許可と併せて発行する。なお、NRCが使用済燃料の集中中間貯蔵施設に対して建設・操業許可を発給したのは、今回が2回目。初回は2006年、プライベート・フュエル・ストーレッジ(PFS)社がユタ州で進めていた建設計画について発給したが、建設サイト周辺で必要となる認可を先住民族の土地所有権などが絡む問題で内務省が発給しなかったため、同社は2012年12月にこの計画を断念している。NRCはこのほか、ホルテック・インターナショナル社がニューメキシコ州リー郡で進めている同様の計画に関しても、2018年から申請書の審査を実施中。2020年3月には同計画のEIS案文をパブリック・コメントに付しており、建設・操業認可発給の可否については2022年1月に判断するとしている。(参照資料:NRC、ISP社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Sep 2021
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中国核工業集団公司(CNNC)は9 月13日、山東省栄成の石島湾で建設中の「ペブルベッド型モジュール式(PM)高温ガス炉の実証炉(HTR-PM)」(電気出力21.1万kW)」で、2基設置されているモジュールユニットの片方が12日の朝に初めて臨界条件を達成したと発表した。 CNNCは、年内にも同機を国内送電網に接続する方針を表明。様々な利点を持つ高温ガス炉は、中国のCO2排出量を頭打ちにし(排出ピークアウト)実質ゼロ化(カーボンニュートラル)するという目標を達成する重要な道だと指摘している。同機の建設プロジェクトは、月面探査計画などとともに中国における16の主要な科学技術関係の国家プロジェクトの1つに指定されており、これによって高品質な原子力産業の開発を進め、国家の科学技術革新を促進していく考えである。第4世代の先進的原子炉システムに分類されるHTRは固有の安全性を有するほか、高い発電効率と環境への適応能力を備えている。熱電併給や高温熱の供給が可能で商業的に幅広い用途に利用できることから、CNNCはHTRが中国のエネルギー供給を保証するだけでなく、供給構造の合理化にも貢献するとしている。中国が開発したHTR-PM設計は、1つの発電機を電気出力がそれぞれ約10万kWのモジュールユニット2基で共有するというもので、建設工事は2012年12月に始まった。燃料には、黒鉛粉末を混合した燃料粒子を球状に圧縮成型し、炭化ケイ素(セラミック)をコーティングしたものを使用する。同機の建設プロジェクトでは今年3月までに冷態機能試験と温態機能試験が完了し、8月には国家核安全局(NNSA)が運転許可を発給、これにともない同機では燃料が装荷されていた。HTR-PMでの臨界条件達成は、建設プロジェクトを主導する「華能山東石島湾核電有限公司(SHSNPC)」の関係者が多数見守るなかで行われ、SHSNPC に47.5%出資する華能集団公司や32.5%出資する(CNNC傘下の)中国核工業建設公司、20%出資中の清華大学から関係幹部が参加。同条件を達成した後は、これらの参加者による現地シンポジウムも開催された。華能集団公司の発表によると、同プロジェクトでは今後、炉心と制御棒の性能を確認し原子力機器監視システムの有効性を確認するため、ゼロ出力で物理試験を実施する。また、送電網への接続に向けて、起動時や試運転時の各種試験により設計通りであることを確認する作業も継続する。HTR-PMでは使用した実証工学機器の国産化率が93.4%に達しており、革新的技術を用いた機器は600点以上にのぼる。これには、ヘリカルコイル貫流蒸気発生器(OTSG)や高出力・高温熱の電磁軸受け構造を備えた主ヘリウム・ファンが含まれるとしている。(参照資料:CNNC、華能集団公司の発表資料(中国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Sep 2021
4838
米イリノイ州の議会上院は9月13日、州内の原子力発電所に経済的支援を提供する包括的クリーンエネルギー法案(SB 2408)を37対17で可決した。これにより、同法案は州議会の上下両院で承認されたことになり、早期閉鎖が予定されていたバイロン(120万kW級のPWR×2基)とドレスデン(91.2万kWのBWR×2基)2つの原子力発電所の運転継続が可能になった。同法案はまた、州内2つの石炭火力発電所によるCO2排出量を抑制することから、2050年までに同州で使用する電力を100%クリーンエネルギー化する道を拓くことになる。同法案は今後、イリノイ州のJ.B.プリツカー知事の署名により、正式に成立する。イリノイ州では、米国最大手の原子力事業者であるエクセロン社がこれら2つの原子力発電所を運転しているが、電力市場の自由化にともないこれらの採算が悪化。数億ドル規模の赤字に陥ったことから、同社は2020年8月、「今後も州政府の政策立案者と協議を続けるものの、これらの発電所は2021年9月と11月に早期閉鎖する」と発表した。同社の働きかけを受けたイリノイ州議会では、今年2月にN.ハリス上院議員が原子力支援プログラムを盛り込んだ包括的エネルギー法案を議会に提出し、様々な審議を経て9月9日に州議会の下院が83対33で同法案を可決。その後上院では、下院で修正された事項等について9月13日に票決が行われた。この日は、エクセロン社がバイロン発電所の運転継続で燃料交換を行うか、永久閉鎖して燃料を抜き抜くか判断しなければならない最終締め切り日だったが、同社はその前日、「この法案が州議会で可決成立し、州知事が署名した場合に備えて、両発電所では燃料交換のための準備を進めている」と表明。同社のC.クレイン社長兼CEOはその中で、「当社の経営再建に向けて、またクリーンエネルギーへの投資で地球温暖化に対処するため、州知事や州議会議員、労組のリーダーらが法案の成立に向けて尽力してくれたことに感謝する」と述べた。同CEOは、このような活動を通じて世界的レベルの原子力発電所を運転する従業員の雇用が確保され、環境上の恩恵が公平に与えられるとした。同社の説明では、今回の法案を通じて原子力発電所にはクレジット毎に配電電力の割合に基づいて補助金が毎年支払われる。これによって、この地域のエネルギー市場で見られる構造上の問題が緩和され、風力や太陽光と同様、原子力にもクリーンエネルギーとしての貢献に補償を提供。イリノイ州が2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成する重要な一助になる。同法案はまた、経済問題のためにバイロンとドレスデンの両発電所と同様、早期閉鎖のリスクにさらされているブレードウッド原子力発電所(120万kW級PWR×2基)にも存続の機会がもたらされる。さらに、ラサール原子力発電所(117万kWのBWR×2基)についても、「CO2の影響緩和クレジット・プログラム」が施行される5年間は、運転の継続が可能になる。今回の法案が州議会で可決されたことについて、J.B.プリツカー州知事は9月13日、「消費者および地球温暖化防止ファーストの法案であり、100%クリーンエネルギーで賄う将来に向けて意欲的な基準が設定された」と指摘。「イリノイ州民も地球環境も、これ以上待つことはできないので、歴史的方策となる今回の法案には出来るだけ早急に署名したい」と述べている。(参照資料:イリノイ州議会、エクセロン社、イリノイ州知事の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Sep 2021
3549
トルコで同国初の原子力発電所建設を請け負っているロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は9月7日、アックユ原子力発電所3号機(120万kWのロシア型PWR=VVER)の原子炉圧力容器を製造する重要部分の作業が始まったと発表した。同機では今年3月に原子炉建屋部分のコンクリート打設が行われており、建設サイトでは2018年4月と2020年4月にそれぞれ着工した1、2号機とともに3基分の作業が同時に進行中。同発電所では第3世代+(プラス)の120万kW級VVERを4基設置するため、4号機についても本格着工に向けて基礎ピットの建設など準備工事が進んでいる。ロスアトム社のエンジニアリング部門、アトムエネルゴマシ社に所属するAEMテクノロジー社が今回発表したリリースによると、3号機では圧力容器の底部を複数段階に分けて製造する作業が始まった。この作業には、継ぎ目のない長さ6m、外径2.5m、重さ96トンという円筒状の鍛造品を使用。同社のボルゴドンスク工場では酸素ガス切断機を使って厚さ30cmの同鍛造品を切断したが、手持ち式の改良型カッターノズルを活用したことで、通常8時間かかる作業は4倍速の2時間に短縮された。加工済みの鍛造品はその後、620℃の高温で5時間かけて焼きなましを行うため、加熱炉に送られた。加熱後は圧力容器底部の形に型打ちするため、プレス部門で作業を行う計画である。ICS第二層の設置©Rosatomなお、アトムエネルゴマシ社が他の日に公表したリリースでは、1号機用に製造した炉内構造物が4月末に建設サイトに向けて出荷された。これには長さ11mの炉心バッフルや保護管などが含まれており、総重量は210トンを超えている。また、ロスアトム社の今月9日付けの発表によると、建設サイトでは2号機の格納容器の内側に、鋼製支持構造物(ICS)の第二層が設置された。ICSは鉄筋や部品類をはめ込み、鋼製ライナーを溶接した円筒状の構造物で、安全系などの機器類を防護するとともに配管貫通部を補強するなどの役割を担っている。アックユ原子力発電所建設計画では、原子力分野で初めて「建設・所有・運転(BOO)」によるプロジェクト運営方式を採用しており、約200億ドルといわれる総工費はロシア側がすべて負担。発電所の完成後、トルコ電力卸売会社(TETAS)が発電電力を15年間にわたり購入して返済することになる。トルコ側は、建国100周年を迎える2023年に1号機の運転開始を目指しているほか、4基すべてが完成した後は、同発電所で国内電力需要の約10%を賄う方針である。(参照資料:アトムエネルゴマシ社の発表資料①、②、ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
13 Sep 2021
2563
フィンランドの経済雇用省は9月6日、国内で稼働するロビーサ原子力発電所1、2号機(各ロシア型PWR=VVER、53.1万kW)の運転を2050年頃まで、それぞれ約70年間継続した場合と、現行の運転認可が満了する2027年と2030年に永久閉鎖した場合の環境影響評価(EIA)報告書を事業者のフォータム社から受領した。この報告書でフォータム社は、これら2つの選択肢が及ぼす影響、特に周辺住民の生活条件や福祉、健康に関する影響や、地下水や漁業、景観など周辺環境に対する影響を評価した。また、運転期間の延長や廃止措置にともない排出される低・中レベル放射性廃棄物(LILW)についても、最終処分場の操業期間に影響が及ぶため、その影響評価結果を盛り込んでいる。同省は今後、この報告書に関する関係省庁や機関からの意見を9月20日から11月18日まで募集し、一般市民や地元コミュニティを交えた公開ヒアリングを10月7日に地元ロビーサで開催する。経済雇用省としての結論は来年1月に公表される。1977年と1980年に送電開始したロビーサ1、2号機はともにVVERであるため、公式の運転認可期間は30年である。ただし、計測制御(I&C)系には西欧企業製のデジタル式システムを採用するなど、改良が加えられている。フィンランド政府は、1号機が運転開始して30年が経過した2007年7月、フィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)の助言を受けて、両機の運転期間をそれぞれ2027年と2030年まで20年間延長することを承認。その際は、延長期間中にそれぞれ2回、大掛かりな安全評価を実施するようフォータム社に義務付けている。フォータム社の今回の発表によると、同発電所は2020年にPWRとしては世界最高レベルの平均設備利用率87.7%を記録しており、年間発電量はフィンランドの総発電量の約10%に相当する78億kWhだった。このように同発電所はフィンランドの重要電源の一つであることから、フォータム社は過去5年にわたって同発電所で約4億5,000万ユーロ(約586億円)の投資を実施してきた。2020年8月からは、両機それぞれでさらに最大20年運転期間を延長し、1号機で73年間、2号機で70年間運転するか否かでEIAを実施するため、経済雇用省に申請書を提出し手続きを開始していた。同社のこのプログラムに関し、経済雇用省は同年11月に声明文を発表しており、同発電所の経年劣化管理について一層詳細な評価を行うことと、地球温暖化に対しても配慮することをフォータム社に要請。同省はまた、放射性廃棄物関係の事故が発生するのを防止し、その影響を緩和することについても評価の実施を求めた。フィンランドでは現時点で、運転期間の延長や廃止措置により、新たに発生する放射性廃棄物や使用済燃料の貯蔵容量が不足しているため、容量確保に関するスケジュールや処分の代替オプションについても、関係情報をEIAに含めて欲しいと要請していた。(参照資料:フィンランド経済雇用省、フォータム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 Sep 2021
2395
ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は9月4日、ウェスチングハウス(WH)社が米サウスカロライナ州の倉庫で保管しているAP1000設計用の機器・設備を、フメルニツキ原子力発電所4号機(K4)に利用する計画があることを明らかにした。同州では2017年7月、州営電力のサンティ・クーパー社とスキャナ社が共同出資するV.C.サマー原子力発電所2、3号機(各PWR、110万kW)建設計画が、WH社の倒産申請にともない頓挫した。同計画では2013年3月に2号機を本格着工した後、一部の機器・設備がすでに製造、設置済みとなっており、サンティ・クーパー社とWH社は2020年8月、これらの機器・設備の所有権について最終合意に達している。エネルゴアトム社は今回の発表で、「同計画の機器を流用する」と明確に述べていないが、サンティ・クーパー社とWH社の合意文書では機器・設備の売却方針が明記されていることから、K4用に活用される可能性が高いと見られている。エネルゴアトム社の幹部一行は8月末に米ワシントンD.C.を訪れ、WH製AP1000をウクライナで複数建設していくための独占契約をWH社と締結した。同社はその際、建設進捗率が28%で停止しているK4にもAP1000を採用して完成させる方針を示しており、米国訪問中に一行はサウスカロライナ州のWH社倉庫も視察した。エネルゴアトム社のP.コティン総裁代理はその際、「AP1000用に製造された主要な機器・設備を点検させてもらったが、これらはいつでも出荷できる状態だ」と指摘。重要機器の多くは保管に窒素が使われるなど状態が非常に良好で、原子力系については一式完全に揃っていることを確認したと述べた。同総裁代理によると、これらの機器・設備を使えばK4の建設工期を大幅に短縮することが可能である。同機にAP1000を採用する計画については来週以降、エネルゴアトム社の幹部がウクライナの首都キエフで、WH社の代表と引き続き協議を行うとしている。なお、サンティ・クーパー社とWH社の最終合意では、サマー2、3号機の非原子力関係機器はすべてサンティ・クーパー社が所有し、売却についても同社が責任を持つことになった。一方、原子力関係機器については、すでに設置済みだったものの90%をサンティ社の所有とし、残り10%をWH社の所有とした。これらは主に2号機用で、アキュムレータ・タンクや加圧器、原子炉圧力容器、蒸気発生器、タービン発電機などである。未設置の主要な原子力関係機器については、両社が折半して所有する取り決めである。これには3号機用のアキュムレータ・タンク、制御棒駆動機構、燃料取り扱い装置、静的残留熱除去・熱交換器、原子炉圧力容器、蒸気発生器、計測制御(I&C)系、タービン発電機などが含まれる。WH社は原子力関係機器すべてについて、最大で5年にわたりマーケティングを実施する責任を負っている。(参照資料:エネルゴアトム社、サンティ・クーパー社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Sep 2021
3644
世界原子力協会(WNA)は9月1日、世界中で稼働する商業炉の2020年の運転実績について取りまとめた報告書「World Nuclear Association Performance Report 2021」を公表した。新型コロナウイルスによる感染の世界的拡大(パンデミック)で全体的な電力需要が低下したことが大きく影響し、原子力の総発電量は2019年実績の2兆6,570億kWhから2兆5,530億kWhに減少。ただし、発電シェアが拡大した再生可能エネルギーの間欠性を補うため、負荷追従運転で電力を安定的に供給する機会が増加したと指摘している。WNAのS.ビルバオ・イ・レオン事務局長は、「2020年は世界中の原子力発電所が信頼性の高い電力を供給しながら変動する需要に柔軟に対応しており、強靭な供給性能を示した」とコメント。「世界の電力需要は今後急速に回復する見通しだが、これにともない温室効果ガスの排出量も元通りになるリスクが存在することは現実だ」としている。報告書によると、2020年末現在、世界では運転可能な商業炉が441基存在し、総設備容量の3億9,200万kWは過去3年間ほとんど変化していない。新たな運転開始により追加された設備容量も、永久閉鎖された原子炉のそれとほぼ同レベルだった。同事務局長は過去数年間に永久閉鎖された原子炉の閉鎖理由について、「半数以上は技術的な制限によるものではなく、原子力からの段階的撤退という政治的理由、あるいはCO2を排出しない原子力の価値を適切に評価しない市場の欠陥によるものだ」と指摘。これは、わずかでも無駄にできない低炭素な電源が世界中で失われていることを意味するとした。しかしその一方で、今年はすでに明るい兆候が原子力に見受けられ、4基の原子炉が新たに送電網に接続された。また、7基の建設工事が新たにスタートしたが、永久閉鎖された原子炉は今のところ2基に留まっている。同事務局長によると、「原子力発電が今後一層迅速に運転復帰することは重要であり、それによって化石燃料の発電量を代替、温室効果ガスが急速に増加するのを防がねばならない。」そのためには、既存の原子力発電所を最大限に生かし運転期間も可能な限り延長、新規の原子炉の建設ペースや規模も拡大する必要があるとしている。今回の報告書の主な判明事項は以下の通り。2020年に新たに5基の原子炉が運転を開始したが、増加した設備容量552.1万kWは永久閉鎖された6基分の516.5万kWで相殺された。2020年に送電網に接続された原子炉の平均建設期間は84か月で、2019年の117か月から減少した。いくつかの原子炉では、電力需要の低下にともない発電量が減少しており、2020年は世界平均の設備利用率も前年実績の83.1%から低下。80.3%になったが、それでも原子力は過去20年間の良好な運転実績を維持している。世界中の原子炉の3分の2近くで、80%以上という高水準の設備利用率をマークした。設備利用率が40%未満の原子炉の数も近年は上昇傾向にあるものの、基数は依然として小さい。運転実績に原子炉の経年数が関係する傾向は見られず、過去5年間に設備利用率が低下した原子炉でも、経年数にともなう全体的な変化は特に見られなかった。近年に合計80年の運転継続を許された原子炉のうちいくつかでは、一貫して経年数とは無関係の素晴らしい運転実績を残している。(参照資料:WNAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Sep 2021
3439
シントス社のソウォヴォフ氏©M.Solowowポーランドの大手化学素材メーカーのシントス社(Synthos SA)は8月31日、国内のエネルギー企業ZE PAK社と共同で、米国で開発された最も近代的で安全な小型モジュール炉(SMR)をポーランド国内で建設する計画に投資を行うと発表した。この共同プロジェクトのために、両社は今後合弁事業を立ち上げて原子力関係の活動を実施。ZE PAK社がポーランド中央部のポントヌフで操業する石炭火力発電所に、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のSMR「BWRX-300」、あるいは他の有望な米国製SMRを4基~6基(出力各30万kW程度)建設する方針である。シントス社はすでに2019年10月、ポーランドに「BWRX-300」を導入する可能性を探るため、GEH社と協力覚書を結んでいる。一方のZE PAK社は昨年、2030年までに石炭火力発電から撤退する方針を表明したが、これはパリ協定で設定された脱炭素化目標の達成に向け、ポーランドにおける最も意欲的で明確な対応策を示したもの。同社とシントス社が共同でSMRに投資し、ポーランドが「汚れたエネルギーからクリーンなエネルギー」に転換するのを支援していきたいとしている。シントス社とZE PAK社はそれぞれ、M.ソウォヴォフ氏とS.ソロルツ氏が所有する企業。両者はともに、ポーランドで最も富裕な実業家と言われている。シントス社のソウォヴォフ氏は今回、「脱炭素化を大規模に進めるには地球環境に配慮するだけでなく、経済的な要件を満たしつつコスト面の効率化を図ることが求められており、その解決策が原子力であることは明白だ」と強調。同氏によると、「欧州の工場」と言われるポーランドではCO2を排出しない安定したエネルギー供給源が必要で、「これまで通りの速いペースで一層豊かな社会の構築を目指し、さらなる外国投資を呼び込むには、価格の魅力的なエネルギーを活用しなくてはならない」としている。ZE PAK社のソロルツ氏も、「社会や国家の発展には安価でクリーンなエネルギーが欠かせないが、原子力はクリーンなだけでなく環境にも優しい」と指摘。同社はポーランドで最初の石炭火力発電所を運転してきたものの、現時点では石炭火力からの撤退する途中であるとした。その上で、「原子力や再生可能エネルギーは当社が投資する最も重要なエネルギー源であり、原子力への投資はポーランドの事業所や一般世帯にクリーンで安価なエネルギーを提供するとてつもなく大きな好機になる」との認識を示した。SMRを建設予定のポントヌフは、ポーランド政府が進める原子力発電プログラムにおいても発電所立地候補地点の一つだが、ZE PAK社の幹部は「SMRの建設計画は政府の進める大型原子力発電所の建設計画と競合するものではなく、むしろこれを補完する位置づけだ」と説明。原子力は化石燃料による発電から徐々に取って替わっていき、近い将来は石炭火力の閉鎖と電力需要の増加にともなう国内電力システムの容量不足を補うとしている。なお、シントス社のキャピタル・グループに所属するシントス・グリーン・エナジー(SGE)社は昨年11月、米国のウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)が開発したSMR「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」を使って、ポーランドにエネルギー供給システムを構築すると発表。実行可能性調査の実施を含む協力協定をUSNC社と結んでいる。(参照資料:シントス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Sep 2021
2501
ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は8月31日、国内で複数の原子力発電所で「AP1000」を建設していくため、同設計を開発した米国のウェスチングハウス(WH)社と独占契約を締結したと発表した。この契約で、エネルゴアトム社は具体的に、建設進捗率28%で工事が停止しているフメルニツキ原子力発電所4号機(100万kWのロシア型PWR=VVER)にAP1000を採用するなどして、その完成計画にWH社の参加を促す方針。また、その他の原子力発電所も含めてさらに4基のAP1000を建設するとしており、これらの総工費は約300億ドルになるとの見通しを示した。契約の調印式は、米ワシントンD.C.にあるエネルギー省(DOE)の本部で開催された。ウクライナのV.ゼレンスキー大統領が立ち会い、エネルゴアトム社のP.コティン総裁代理とWH社のP.フラグマン社長兼CEOが契約書に署名。DOEのJ.グランホルム長官とウクライナ・エネルギー省のG.ハルシチェンコ大臣も出席した。エネルゴアトム社の発表によると、同社はウクライナ政府の長期目標達成に向けてWH社のAP1000技術を選択した。今回の契約により、同社はクリーンで信頼性が高く、コスト面の効果も高い原子力発電を活用し、同国の脱炭素化達成につなげたいとしている。ウクライナでは2017年8月、P.ポロシェンコ前大統領の内閣が「2035年までのエネルギー戦略」を承認しており、総発電量に占める原子力の現在のシェア約50%を2035年まで維持していくと明記。現職のV.ゼレンスキー大統領も2020年10月、「このエネルギー戦略を実行に移すため、政府は今後も原子力発電を擁護し、その拡大を支援していく」と表明している。また、同国で稼働する全15基のVVERはすべて、旧ソ連時代に着工したもの。このためウクライナの規制当局は、経年化が進んだ11基で順次運転期間の延長手続を進めるなど、原子力発電設備の維持に努めている。エネルゴアトム社のコティン総裁代理は今回の契約について、「AP1000は実証済みの技術を採用した第3世代+(プラス)の110万kW級原子炉であり、モジュール方式の設計を標準化することで建設期間やコストの縮減が可能と聞く。また、完全に受動的な安全系を装備するなど優れた特長を持っている」などと説明。AP1000設計を長期的に活用していくことで、エネルゴアトム社では最高レベルの安全性と高い信頼性を備えた、環境にも優しい革新的な原子力発電所の運転が可能になるとしている。WH社のフラグマン社長兼CEOは、「ウクライナで稼働する既存の原子力発電所を支援するため、当社はすでに燃料その他のサービスを提供中だ。今回の契約により、当社とエネルゴアトム社の長年にわたる連携は一層強化される」と表明。同社の原子炉技術を使って、ウクライナの将来を低炭素なエネルギー社会に近づける重要な一歩になるとの認識を示した。同CEOはまた、「AP1000は米原子力規制委員会(NRC)の認可を受けた第3世代+の原子炉の1つ」と指摘。欧州やアジアなど米国以外の国々でも認可されており、中国ではすでに運転中の4基のAP1000が良好な実績を残していると述べた。さらには、米国のボーグル原子力発電所で建設中の2基が完成間近くなっており、インドでは6基の建設プロジェクトへの採用が決まるなど、AP1000は中・東欧も含めた世界中で建設が検討されていると強調した。(参照資料:WH社、エネルゴアトム社(ウクライナ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
01 Sep 2021
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米国の原子力規制委員会(NRC)は8月27日、ジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所で建設中の3号機(PWR、110万kW)の電気ケーブル用配管について、NRCスタッフが特別に実施した検査の暫定的な結果を公表した。それによると、同機では緊急時に原子炉を安全に停止させる際、冷却ポンプや関連機器につながる安全系のケーブルとそれ以外のケーブルが適切に隔てられていなかった。またNRCは、建設現場でプロジェクト管理を担当するサザン・ニュークリア社が安全系の電気ケーブル用配管について品質保証上の問題点の確認や報告を行わず、是正プログラムも実施しなかったと指摘している。現状のまま建設工事が進むことになれば、NRCは同機の監視体制を強化すると表明。工事の完了までに電気ケーブル用配管の設置状況が改善されなかった場合、NRCは同機の燃料装荷や運転開始を承認しない方針だが、同機ではまだ燃料が装荷されていないため、サザン・ニュークリア社の改善措置で周辺住民のリスクが増大する恐れはないと強調している。ジョージア州のボーグル発電所では、サザン社の最大子会社であるジョージア・パワー社と複数の地元公営電気事業者の出資により、ウェスチングハウス(WH)社製AP1000を米国で初めて採用した3、4号機を2013年から建設中。2017年にWH社が倒産申請した後は、EPC(設計・調達・建設)契約を放棄した同社に代わり、サザン社のもう一つの子会社であるサザン・ニュークリア社が全体的なプロジェクト管理を引き継いだ。サザン・ニュークリア社はまた、完成した3、4号機の運転を担当することになっている。NRCは6月21日、3号機の建設現場で電気ケーブル用配管の設置修正作業が行われたのを受けて、その根本原因と品質保証上の影響範囲を究明するため、7月2日まで特別検査を実施すると発表した。電気ケーブル用配管は主に専用の配管とトレイで構成されており、緊急時に安全系機器に確実に電力が送られるようケーブルを支持する構造。商業炉でこれらの機器が万が一にも作動しない事象が発生するのを防ぐ観点から、NRCは同検査でサザン・ニュークリア社が修正作業の実施に至った際の行動、特に品質保証プロセスや原因分析などに焦点を当てたとしている。サザン・ニュークリア社側では今後、NRCの暫定的な結果を検討した上で指摘を受け入れる、もしくは追加説明をNRCに文書で提出することが可能である。NRCとしては、最終的な判断を下して文書化した決定事項を一般公開する前に、同社の追加説明など入手可能な情報をすべて考慮に入れる考えである。 3号機の建設工事では昨年12月に初装荷燃料が建設現場に到着しており、4月に始まった温態機能試験も7月末に完了した。しかし、新型コロナウイルスによる感染の影響軽減で現場の労働力は昨年4月以降、約20%削減されており、試験や品質保証関係で追加の時間が必要になったことから、ジョージア・パワー社は7月末、3、4号機の送電開始時期を現行スケジュールから3~4か月先送りし、それぞれ2022年第2四半期と2023年第1四半期に延期したと発表している。(参照資料:NRCの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、ほか)
31 Aug 2021
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アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電の導入計画を担当する首長国原子力会社(ENEC)は8月27日、UAE初の原子力発電所であるバラカ発電所で、2号機(PWR、140万kW)が起動したと発表した。同発電所では昨年7月、UAEのみならずアラブ諸国においても初の商業炉である同型の1号機が臨界状態に達し、今年4月に営業運転を開始している。2号機の起動はこれに続くもので、ENECの運転管理子会社であるNAWAHエナジー社は、同機を今後数週間以内に国内送電網に接続するため準備作業を進めている。接続後は出力を徐々に上昇させる試験(PAT)を実施し、営業運転の開始につなげる計画。ENECでは、最終的に4基すべての原子炉(合計出力560万kW)を安全かつタイムリーに完成させ、毎年2,100万トンのCO2排出を抑制、UAEでエネルギー部門の脱炭素化を迅速に進めたいとしている。ENECによれば、2号機が起動したことでこの地域では初めて、同一サイトで複数基が稼働することとなった。これらの原子炉はクリーンで信頼性の高い電力を豊富にUAEに提供し、さらなる経済成長を促すような巨大プロジェクトの実施能力をUAEが持つことを実証した。この原子力発電利用プログラムでENECはあらゆる国内要件と国際基準を満たすとともに、バラカ発電所チームでは高い技能と資格の習得を目指すとしている。バラカ発電所サイトでは、2012年7月から韓国製の140万kW級PWR「APR1400」を建設する工事が進められており、1号機を本格着工した後は約1年間隔で同型の2~4号機を順次着工した。1号機では2018年3月に竣工式が行われたが、運転員の訓練と連邦原子力規制庁(FANR)から承認を取得するのに時間がかかるとして、NAWAHエナジー社は燃料装荷等の準備作業を一時延期。FANRは2020年2月、1号機の運転許可を発給している。2号機の運転許可申請は、1号機の申請書と併せてENECが2015年に申請しており、FANRは今年3月に2号機で60年間有効な運転許可を発給した。ENECのM.I.アルハマディCEOは今回、「一日24時間、年中無休で豊富に電力を供給する原子力の平和利用でUAEは新たな節目を迎えた」と指摘。「2号機が起動したことで、UAEは電力需要の4分の一を原子力で賄いつつ持続可能な経済成長を可能にし、同時に地球温暖化の防止にも役立てるという目標の達成に向け、道のりのほぼ半ばまで来た」と述べた。同CEOはまた、原子力の導入を成功させるケース・スタディとして、バラカ発電所建設計画は原子力の導入を検討する後続の国々に有益なガイダンスと支援をもたらすと強調。世界で最も持続的な発展を遂げている10か国のうち、7か国までが原子力を活用しているとした上で、「原子力はクリーンな電力を提供するだけでなく、国レベルのエネルギー供給保証と信頼性を促進する」と指摘している。同機では、起動に先立ちFANRの監督の下で包括的な試験プログラムが実施されており、その後は世界原子力発電事業者協会(WANO)が起動前審査(PSUR)を行った。これらを通じて、同機では世界の原子力産業界の良好事例に沿って運転が行われるとしている。(参照資料:ENEC、NAWAHエナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
30 Aug 2021
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米国最大手の原子力発電事業者であるエクセロン・ジェネレーション社は8月18日、ニューヨーク州北部のオスウェゴ郡で運転するナインマイルポイント原子力発電所(60万kW級と130万kW級のBWR各1基)で、水素の現地製造の可能性を実証するプロジェクトを実施すると発表した。米エネルギー省(DOE)から提供される補助金により、水素の現地製造がもたらす将来的なメリットを評価するのが主な目的である。これにともない、同社は水素の製造に必要な装置(電解槽)の入手でノルウェー国籍のNel Hydrogen社と連携するほか、DOE傘下のアルゴンヌ国立研究所とアイダホ国立研究所、および国立再生可能エネルギー研究所と協力。水素を同発電所内で一貫的に製造、貯蔵、活用できることを実証する。エクセロン社の発表によると、同プロジェクトでは具体的に、原子力発電から派生する副産物の水素を経済的に供給していくことができる見通し。(安全に回収・貯留した上で、100%無炭素な電源として市場に提供する可能性を探り、将来は輸送その他の目的に産業利用することになる。同社のD.ローデス原子力部門責任者(CNO)は、「プロジェクを実施する沢山の候補サイトの中から当社はニューヨーク州を選んだが、これは同州の公益事業委員会(PSC)が2016年、州北部の原子力発電所に補助金を提供する支援プログラムも含め、意欲的な温暖化防止政策『クリーン・エネルギー基準(CES)』を採択したことによる」と指摘。同州の州政府とは強い結びつきがあるとの認識を表明した。DOEの補助金は、DOEのエネルギー効率・再生可能エネルギー局(EERE)、水素・燃料電池技術室が推進する「H2@Scaleプログラム」からエクセロン社に提供される。この構想でDOEは、水素を適正な価格で製造・輸送・貯留・活用できることを実証し、様々な産業部門を脱炭素化する方策を模索。CO2の排出量も削減して大気汚染の影響を緩和するほか、経済的に不利な条件下にあるコミュニティには利益をもたらしたいとしている。今回のプロジェクトではまた、Nel Hydrogen社が2022年に約260万ドルの「プロトン交換膜式(PEM)電解槽(0.125万kW)」をナインマイルポイント発電所に納入する。同社はノルウェーの水素技術企業であるNel ASA社の米国子会社で、その8月11付けの発表によると、エクセロン社は同原子力発電所で水素を自給した上で、タービン冷却や化学制御関係の要件を満たす計画。また、Nel Hydrogen社の電解槽を適切に運転して、原子力発電所における水素製造の経済的実行可能性を実証するほか、DOEの「H2@Scaleプログラム」の支援で、CO2を排出せずに製造した水素の大規模輸出に向けて詳細計画をもたらしたいとしている。(参照資料:エクセロン社、DOE、Nel Hydrogen社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
27 Aug 2021
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キンジンガー下院議員©Kinzinger米イリノイ州選出のA.キンジンガー下院議員は8月23日、同州内でこの秋、早期閉鎖が予定されている2つの原子力発電所の運転を継続させるため、J.バイデン大統領と同政権幹部に対し法的な緊急時の権限を早急に行使するよう嘆願する書簡を送付した。米国最大手の原子力発電事業者であるエクセロン・ジェネレーション社は2020年8月、イリノイ州内で経営が悪化したバイロン原子力発電所(120万kW級PWR×2基)とドレスデン原子力発電所(91.2万kWのBWR×2基)をそれぞれ、今年9月と11月に早期閉鎖すると表明。バイロン発電所については閉鎖予定日が目前に迫っていることから、「少なくとも、これらの発電所に財政支援と公平な市場条件を付与する法案がイリノイ州議会と連邦政府議会で新たに成立するまで、これらの発電所が運転継続できるよう配慮してほしい」と訴えている。米国の電力市場が自由化された地域では、独立系統運用事業者(ISO)や地域送電機関(RTO)が運営する容量市場(※「電力量(kWh)」ではなく、「将来の供給力(kW)」を取引する市場)で取引が行われている。バイロン発電所では現行の運転認可が満了するまで残り約20年、ドレスデン発電所でも10年ほど残っているが、どちらも近年はエネルギー価格の低迷や、北東部の代表的なRTO「PJMインターコネクション(PJM)」の容量オークションで化石燃料発電に競り勝つことができず、数億ドル規模の赤字に陥っている。また、エクセロン社によると、連邦エネルギー規制委員会(FERC)が近年指示したオークション関係の価格規則は、クリーン・エネルギーに対するイリノイ州の財政支援策を台無しにし、容量オークションでも化石燃料発電を優遇。イリノイ州では2016年12月、州内の原子力発電所への財政支援策を盛り込んだ包括的エネルギー法案が成立し、クリントンとクアド・シティーズの両原子力発電所では早期閉鎖計画が回避されたものの、バイロンとドレスデン両発電所については財政問題が悪化していた。キンジンガー議員は今月6日、エネルギー省(DOE)経由で民生用原子力発電所に財政的な信用を付与するプログラムを盛り込んだ「既存の原子力発電所維持のための法案(H.R.4960)」を、M.ドイル議員と共同で連邦議会下院に提出した。また、B.パスクラル下院議員がその前の週、原子力発電所の発電量に応じて連邦政府による課税額の控除を可能にするため提出した「CO2排出量ゼロの原子力発電に対する税控除法案(H.R.4024)」に対しては、共同提案者となることに合意している。大統領宛て書簡の中でキンジンガー議員は、過去9年間に全米で7基の商業炉が閉鎖され、失われたベースロード用の無炭素発電設備は530.6万kWにのぼると指摘。これにバイロンとドレスデン2つの発電所が加わり新たに430万kW分が閉鎖となるほか、2025年までにパリセードとディアブロキャニオンの両発電所で合計306.7万kW分が失われる。さらに米国では、3つの原子力発電所で756.6万kW分が閉鎖の危機にさらされているのに対し、1996年以降、新たに運転開始した商業炉はワッツ・バー2号機(116.5万kW)1基のみであるとした。原子力発電設備のこのような縮減傾向は、発電事業の信頼性や経済、関係する数千もの雇用、環境の健全性を脅かすものだと同議員は強調。これらはエネルギー供給の自立やCO2を排出しない十分なベースロード電源の保持、地球温暖化の防止など、国家の防衛・セキュリティやレジリエンスにも関わる問題になるため、到底受け入れられないと述べた。同議員は、バイロンとドレスデン2つの原子力発電所の運転を継続させる際、行使可能な法的権限として「国防生産法」と「連邦電力法」を挙げている。国防生産法は、緊急時に産業界を直接統制する権限を政府に与えるもの。「連邦電力法」では、緊急事態への対応等で両発電所の運転継続が必要であると、DOE長官から連邦エネルギー規制委員会(FERC)に提案することが可能になる。今回の書簡については、「イリノイ州議会がこれら2つの原子力発電所で運転を継続できなかったことは、驚くべき失策で、連邦議会も最終的に私の超党派法案を支持する意向を示してくれたが、原子力発電所に財政的信用を付与するプログラムの実行には時間が必要だ」と述べた。同議員は自らが提出した法案により、経営難に苦しむ全米その他の原子力発電所を保持できるとしても、バイロンとドレスデンの両発電所を助けられる可能性は低いと指摘。その上で、「私の地元コミュニティや選挙区民からの強い要望もあり、バイデン政権に利用可能な法的権限がある以上、見て見ぬふりは出来ない。これらの発電所の運転継続に全力を尽くしたい」としている。(参照資料:A.キンジンガー下院議員、エクセロン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Aug 2021
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フィンランドのティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は8月20日、オルキルオト原子力発電所で2005年から建設している3号機(OL3)(欧州加圧水型炉=EPR、172万kW)の完成スケジュールがさらに遅延することになったと発表した。新しいスケジュールでは、OL3は2022年1月に臨界条件を達成する予定。翌2月から送電を開始し、営業運転を始めるのは同年6月になるとしている。これは、建設工事を請け負っている仏アレバ社と独シーメンス社の企業連合からTVOに伝えられたもの。最新の完成スケジュールから延期する期間、建設サイトではタービンの総点検が行われる。TVOが2020年8月時点で発表した基本スケジュールによると、OL3は2021年10月に送電を開始し、2022年2月から営業運転を開始することになっていた。これのスケジュールにともない、同機では今年3月に燃料の装荷作業が行われており、TVOはその際、2018年5月に完了した温態機能試験を改めて実施する方針を明らかにした。今年5月になると、TVOは当初予定していた2009年の完成が大幅に遅れている同プロジェクトの完了条件について、同企業連合と合意に達している。これは、プロジェクトの遅れにより生じた損害の賠償について、両者が2018年3月に締結した包括的和解契約を修正したもの。2022年2月末までにOL3が完成しなかった場合、同企業連合は追加の補償金を支払うことになり、両者は6月3日にこの合意文書に正式調印した。その後、6月30日付けの発表によると、TVOは起動前の最後の大規模試験として温態機能試験を実施中で、臨界条件の達成に備えて炉内構造物や圧力容器蓋の設置作業などを行っていた。しかし、7月30日に同社は「温態機能試験の結果から、タービンで総点検を行う必要性が生じた」と発表。この時点で、OL3の送電開始と定常運転の開始日程は最新スケジュールから1か月延期され、それぞれ2021年11月と2022年3月に再設定された。今回、このスケジュールがさらに3か月遅延することになったもので、企業連合側はすでに始めていた低圧タービンの点検作業をさらに詳細に行うため、3台すべての低圧タービンを点検すると決定。これにともない、点検期間も延長することになったと説明している。(参照資料:TVOの発表資料①、②、③、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Aug 2021
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中国核工業集団公司(CNNC)は8月23日、山東省栄成の石島湾で建設中の「ペブルベッド型モジュール式(PM)高温ガス炉の実証炉(HTR-PM)」(電気出力21.1万kW)で、21日から燃料の装荷を開始したと発表した。CNNCの傘下企業が参加する同機の建設プロジェクトでは、今年3月までに冷態機能試験と温態機能試験が完了。今月20日には国家核安全局(NNSA)が運転許可を発給した。燃料の初装荷はこれを受けたもので、同機は年内にも国内送電網に接続される予定である。高温ガス炉は第4世代の先進的原子炉設計の一つであり、HTR-PMは1つの発電機を熱出力25万kWの双子のモジュールユニットで共有する設計。CNNCによると、HTR-PMは熱電併給も可能な上に、事故が発生しにくい固有の安全性を保有。幅広い目的に利用が可能という長所を持ち、独立した規模の小さい送電網にも対応できる。HTR-PMの建設は科学技術関係の国家プロジェクトという位置づけになっており、「華能山東石島湾核電有限公司(SHSNPC)」が中心となって2012年12月から建設中。SHSNPCには、中国の5大発電企業の一つである華能集団公司が47.5%出資しているほか、CNNCが2018年に経営を再統合した中国核工業建設公司(CNEC)が32.5%を出資。北京の核能技術研究院で熱出力1万kWの実験炉「HTR-10」を運転する清華大学も、20%を出資している。また、プロジェクトのEPC(設計・調達・建設)契約は、CNECと清華大学の合弁事業体である中核能源科技有限公司(チナジー社)が請け負っている。HTR-PMの建設と運転を通じてCNNCは、中国が主要戦略の一つとして推進する「CO2排出量をこれ以上増やさず頭打ちにし(CO2排出ピークアウト)、実質ゼロ化(カーボンニュートラル)する」という目標の達成に向け、技術革新で貢献することを目指している。また、燃料装荷後の同機では基盤を築き商業化を加速。中国の原子力産業界を高度に発展させることにより、HTR技術を世界中に普及させていく考えである。ペブルベッド型HTRで使用する燃料は、黒鉛粉末と混合した燃料粒子を直径6cm程度の球状に圧縮成型し、炭化ケイ素(セラミック)をコーティングしたもの。このような燃料球には高温や腐食、摩耗に強いという特性があり、HTR-PM用の燃料球はCNNC傘下の中核北方核燃料元件有限公司が製造した。同機では原子炉一基あたり、約42万個の燃料球を装荷するとしている。(参照資料:中国華能集団公司①、②(中国語)、中国核工業集団公司(中国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Aug 2021
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仏国のラアーグ工場で、ドイツの使用済燃料を再処理した際に発生した中レベル放射性廃棄物を返還するため、同工場を操業するオラノ社は19日、ドイツの電気事業者4社と複数の返還契約を締結したと発表した。これらの契約総額は10億ユーロ(約1,288億円)を超えるとしている。これら4社は、ドイツで原子力発電所を保有・運転するプロイセン電力、RWE社、EnBW社、およびドイツの原子力発電所に一部出資していたスウェーデンのバッテンフォール社である。オラノ社は1977年から1991年にかけて、これらの電気事業者と使用済燃料の再処理契約を結んでおり、これに基づいて5,310トンの使用済燃料を再処理した後、残留廃棄物を保管してきた。これらの契約ではまた、使用済燃料に含まれていたのと等価の放射能をドイツに返還しなければならないと明記されており、これまでに合計放射能の97%を超える廃棄物がすでに返還された。しかし、長寿命の中レベル廃棄物だけ依然として仏国内に残されているため、両者は現行契約に沿ってこれらをドイツに戻すべく、新たな契約の締結に向けた交渉を続けていた。今回の契約は仏独の当局がともに了承した内容で、オラノ社とドイツの電気事業者が廃棄物関係で誓約した事項すべてを技術的に解決するもの。オラノ社は自ら提案したとおり、等価交換で余剰になった廃棄物をガラス固化した高レベル廃棄物と低レベル廃棄物のパッケージで、遅くとも2024年までにドイツに返還することになった。また、これらの契約を有効とするには両国政府の正式合意が必要になるとしている。オラノ社によると、今回締結した一連の契約はすべて、同社の今年後半の決算に一時的にプラスの影響を与える見通し。同社は2021年全体の決算を上方修正中である。これまで23%~26%としていた減価償却・控除前利益(EBITDA)が26%~29%となり、力強い増収が見込まれるほか、正味のキャッシュフロー(入ってくる現金から出ていく現金を差し引いた数字)もプラスになると予測している。(参照資料:オラノ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
23 Aug 2021
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