フランス議会の上院は1月17日、新規原子力発電所の建設手続きを迅速化する法案について、付属の経済問題委員会が11日に細かい文言の修正等を終えたことから、第一読会を開始すると発表した。同法案は、既存の原子力発電所サイト近隣における新規の原子炉建設と既存炉の運転継続にともなう行政手続きの加速を目的としたもの。24日にも上院全体の票決を行うとしており、その後は下院の国民議会が審議することになる。フランスではE.マクロン大統領が2022年2月初旬、CO2排出量を2050年までに実質ゼロ化するという同国の目標達成に向け、国内で改良型の欧州加圧水型炉(EPR2)を新たに6基建設するほか、さらに8基の建設に向けて調査を開始することを提案した。エネルギー移行省は複数の国民評議会と協議して、この方針に沿った法案を作成。2022年11月には閣僚会議が同法案を承認しており、大統領府はその際、法案のねらいは気候変動への対処に加えて、2月下旬に始まったロシアのウクライナ侵攻により、エネルギーの供給保証が危機に瀕していることへの緊急対応だと説明していた。閣僚会議での承認を受けて、同省のA.パニエ=リュナシェ大臣は同じ日に同法案を議会上院に提出。上院ではその後、複数の付属委員会が同法案の文言に関する担当官の提案書や委員長の見解等について審議を実施しており、11日にはA.パニエ=リュナシェ大臣との擦り合わせも完了した。同法案が目指しているのは、国家のエネルギー計画の中心部分となる「民生用原子力発電の再活性化」に向けて、ウランの調達から廃棄物の管理に至るまで、法制面や財政面、組織面の必要条件を整えること。その具体策となるのが原子炉建設の承認手続きの簡素化であり、障害となるものの排除である。同法案を通じて、7月1日までに今後5年間をカバーするエネルギー関係の法規を作成し、脱炭素化の目標を設定。5年の間に大統領が表明した14基のEPR2の必要性について、公共財政や電力市場、事業者となるフランス電力(EDF)グループの状況といった側面で評価を行うほか、専門的スキルや安全・セキュリティという課題についても評価を行えるようにする。上院・経済問題委員会における法案審議では、再活性化の障害となる現在の目標「2035年までに原子力発電シェアを50%に削減するため、原子力設備を現状の6,320万kWに制限し、(2020年に閉鎖したフェッセンハイム原子力発電所の2基に加えて)12基を閉鎖する」を撤廃。新たな原子力戦略として、小型モジュール炉(SMR)やグリーン水素の製造装置など、様々な技術を取り入れるとした。また、洪水など地球温暖化関係のリスクやサイバー攻撃関係の新たなリスクに対し、原子炉の安全・セキュリティを強化することや、原子炉の建設計画を公益事業として認識してもらうため国民や関係自治体とのコミュニケーションを強化することなどを修正事項に盛り込んでいる。(参照資料:仏議会上院の発表資料(仏語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Jan 2023
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韓国の産業通商資源部(MOTIE)は1月12日、同国における2022年から2036年までの電力需給見通しと電力設備計画を盛り込んだ「第10次電力需給基本計画」を発表。大型炉2基の建設計画が復活した。ユン・ソンニョル(尹錫悦)政権が昨年7月に提示した「新政府のエネルギー政策方向」に沿って、原子力発電所の積極的な活用、再生可能エネルギーの適正な水準での普及、石炭火力の削減といった方向性を具体化したもの。これにより、前政権が白紙撤回した大型原子炉2基の建設計画が復活し、2036年までに原子力の発電シェアは34.6%に増加する見通し。再エネも30%以上とした一方で、石炭火力は15%以下への削減が見込まれている。MOTIEによると、同基本計画は昨年8月に実務案が公表された後、環境部の戦略的環境影響評価や関係省庁による協議、公聴会の開催、国会の常任委員会への報告といった手続きを経て、MOTIEの電力政策審議会が11日付で確定した。脱原子力政策を推進したムン・ジェイン(文在寅)政権下の第8次、第9次基本計画では、再エネを中心とするエネルギー供給システムへの移行が謳われていたが、ユン政権の基本計画は「実現可能でバランスの取れた電源ミックス」を提唱。8月以降の審議では主に、①既存炉の長期運転にともなう安全性と使用済燃料の処理問題、②再エネを追加で拡大する必要性、③石炭火力の削減を追加で進めることと、それにともなう問題点等について意見が提起されたという。これらを審議した結果、MOTIEは「原子力の利用拡大は国民の安全を最優先に推進していくものであり、懸念されている使用済燃料の処理については、高レベル廃棄物管理特別法を制定して基本的な管理体系を設定。処分場が完成するまでの期間は乾式貯蔵施設を原子力発電所の敷地内で拡充するほか、研究開発や専門的人材の育成を推進するなど関連の基盤を構築する」としている。今回の基本計画で設置が承認された新たな原子炉は、2022年12月に営業運転を開始した新ハヌル1号機(PWR、140万kW)のほか、建設中の新ハヌル2号機(PWR、140万kW)と新古里5、6号機(*現在の名称はSaeul 3、4号機)(各PWR、140万kW)である。これらに加えて、新ハヌル3、4号機(各PWR、140万kW)の建設計画を復活し、それぞれ2032年と2033年に完成させる計画である。国際原子力機関(IAEA)の統計によると、韓国では2021年に国内の24基、計2,341.6万kWの原子炉で総発電量の28%を供給した。今後の電源構成について、基本計画では2023年時点の原子力発電設備を2,610万kW(総発電設備の17.5%)とし、2026年と2030年には2,890万kWまで拡大(それぞれ17.1%と14.6%)。その後、2033年と2036年に3,170万kW(それぞれ14.3%と13.2%)とする。発電量のシェアについては、2030年に原子力で2,017億kWhを発電して総発電量の32.4%を供給、2036年には2,307億kWhの発電量で全体の34.6%を賄うとしている。韓国の電源別発電量および発電シェアの見通し(参照資料:MOTIEの発表資料(韓国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Jan 2023
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米ジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所で、3、4号機(各ウェスチングハウス社製のAP1000、110万kW)を建設しているジョージア・パワー社は1月11日、今年の第1四半期(2023年1月~3月)中に予定していた3号機の送電開始を4月に延期すると発表した。これは、同社および親会社のサザン社が証券取引委員会(SEC)に提出したレポートの中で明らかにしたもの。延期理由としては、同じくサザン社の子会社で3、4号機の運転を担当予定のサザン・ニュークリア・オペレーティング社が、3号機の運転開始前試験と起動試験で冷却系配管の一部に振動を認めたため。同社は現在、修理作業を実施しており、原子力規制委員会(NRC)に対し、この作業を迅速に進めるため運転認可の修正を要請する方針である。この延期にともない、同プロジェクトに45.7%出資しているジョージア・パワー社は、これまでの建設費や試験費に加えて月額で最大1,500万ドルの(税引き前)資本コストを負担する必要がある。また、同プロジェクトにそれぞれ、30%と22.7%、および1.6%出資しているオーグルソープ電力とジョージア電力公社(MEAG)、およびダルトン市営電力にも影響が及ぶと思われる。ボーグル3、4号機の増設計画は米国で約30年ぶりの新設計画であり、それぞれ2013年3月と11月に本格着工した。同様にAP1000設計を採用したサウスカロライナ州のV.C.サマー2、3号機建設計画は、2017年3月のウェスチングハウス社の倒産申請を受けて中止となったが、ボーグル計画ではサザン・ニュークリア社がWH社からプロジェクト管理を引き継いで建設工事を継続してきた。3号機では2021年7月に温態機能試験が完了し、燃料の装荷も2022年10月に完了した。今後のスケジュールは主に、機器類の最終試験や運転前試験、および起動試験の進展状況に左右されるが、サザン・ニュークリア社は現在、ベンダーや契約企業、請負企業の管理や現場労働者の生産性監督、コストの上昇問題等に取り組んでいる。同型炉が中国で運転を開始してまだ数年ということから、新たな技術を導入した一部のシステムや構造物、機器類で設計変更や修理が必要になる可能性もあり、その場合はスケジュールのさらなる遅延やコストの上昇もあり得るとしている。(参照資料:ジョージア・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Jan 2023
2405
昨年10月にスウェーデンで発足した中道右派連立政権のU.クリステション首相は1月11日、環境法に記されている原子力関連の制限事項の撤廃を提案した。多くのサイトで原子炉の新設を可能にすることが目的。現行法では、新たなサイトでの原子炉建設が禁止されているほか、同時に運転できる原子炉の基数も10基までに制限されている。これらを撤廃することで、クリステション政権は中道左派の前政権が提唱していた「2040年までに100%再生可能エネルギーのエネルギー供給システムに移行」を、「(再エネのみに限定しない)非化石燃料100%のシステム」に変更。小型モジュール炉(SMR)も含めた数多くの原子炉を国内で建設することにより、CO2を排出せずに安価な電力を潤沢に発電し、産業界や輸送部門の電化を進めていく。また関係雇用を創出しスウェーデンの競争力を強化、グリーンなエネルギーシステムへの移行を促進する。原子力発電は堅固なエネルギー供給システムを構築するインフラとして、同国のエネルギーミックスに必要だと強調している。クリステション首相は今回、この提案を気候・企業省で気候・環境問題を担当するR.ポルモクタリ大臣とともに発表した。同提案については、今後3か月にわたり一般から幅広く意見を募集し、今年の夏以降に正式に法改正を提案、2024年3月にも改正法を発効させたいとしている。クリステション政権は右派勢力である穏健党などの3党、および閣外協力するスウェーデン民主党による連立政権で、原子炉の新設と維持に関する今回の方針は、2022年10月にティード城における4党の政策協議で合意されていた。この「ティード合意」では、2045年時点の電力需要が少なくとも3,000億kWhになることを見込んでおり、現在の倍の規模となるこの需要を安定的に満たすため、原子炉の新設を含め、合計4,000億クローナ(約4兆9,400億円)の投資を実施する。具体的な方策として同首相は今回、規制当局であるスウェーデン放射線安全庁(SSM)の予算を拡充し、既存炉や新設炉に関する許認可手続きを規制の見直しで迅速化すると表明。原子力の研究開発予算も増額する。また、より多くの事業者が原子炉を建設できるよう門戸を開き、SMRの建設と運転に向けた条件整備として関係規制を制定。SMRでは発電のみならず、水素や高温熱の製造にも利用を広げる方針である。スウェーデンでは現在、6基の商業炉で総発電量の3割を発電するなど、原子力は水力と並ぶ主力電源だが、1980年には前年のTMI事故とその後の国民投票の結果を受け、2010年までに脱原子力を達成するという政策を施行した。1999年と2005年にバーセベック1、2号機を閉鎖したものの代替電源の確保が進まず、2006年に発足した中道右派政権は2010年に脱原子力政策を見直し、当時運転中だった原子炉10基に限り建て替えを認める法案を議会に提出、同年6月に可決された同法案は2011年1月に発効した。しかし、2014年9月に社会党を中心とする中道左派連立政権(前政権)が発足。政権内の政策協議で、「原子力は将来的に再生可能エネルギーとエネルギーの利用効率化で代替する」、「原子力発電所の安全要件を厳格化し、放射性廃棄物基金の徴収額を増額する」などの方針を打ち出し、再び原子力利用を制限する方針に傾いていた。(参照資料:スウェーデン政府の発表資料(スウェーデン語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
13 Jan 2023
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中国核能行業協会(CNEA)によると、中国広核集団有限公司(CGN)の「華龍一号」設計を採用した防城港原子力発電所3号機(PWR、118万kW)が1月10日、送電を開始した。中国では現在、52基、約5,400万kWの原子炉が営業運転中のほか、小型の高温ガス炉(電気出力21.1万kW)を含めた2基が試運転中。2022年12月に初臨界を達成した防城港3号機は、これらに続く原子炉となる。第3世代のPWR設計である「華龍一号」は、CGNと中国核工業集団公司(CNNC)、双方の第3世代炉設計を一本化して開発したもの。2015年12月に本格着工した防城港3号機は、CGN版「華龍一号」の初号機であり、その一年後に着工した同4号機(PWR、118万kW)とともに、CGN版設計の実証プロジェクトに位置付けられている。CNNC版の「華龍一号」はすでに2021年1月と2022年3月に、福建省の福清5、6号機として営業運転を開始。パキスタンのカラチ原子力発電所でも、2021 年5月以降に2基が営業運転中となっている。CGN版については、広西省・防城港の2基に続いて浙江省の三澳原子力発電所1、2号機、および広東省の太平嶺原子力発電所1、2号機にも採用され、建設工事が行われている。中国国外では、2015年10月にCGNが英EDFエナジー社のヒンクリーポイントC原子力発電所建設計画に33.5%出資することを約束した際、ブラッドウェルB原子力発電所としてCGN版「華龍一号」を建設することでEDFエナジー社と合意。これにともない、英国仕様の「華龍一号」である「UK HPR-1000」について包括的設計審査(GDA)が行われ、2022年2月に原子力規制庁(ONR)から「設計承認確認書(DAC)」が、環境庁(EA)からは「設計承認声明書(SoDAC)」が発給されている。同設計はまた、欧州の電力企業16社が定めた安全基準「欧州電気事業者要件(EUR)」に適合していると2020年11月に承認された。EURへの適合は、EU(欧州連合)市場への輸出に際し、「設計標準」の一つに認定されたことを意味している。防城港原子力発電所にはCGNと広西投資集団公司がそれぞれ61%と39%出資しており、CGNは同発電所で最終的に、6基、600万kWの原子炉建設を計画。第2世代改良型の「CPR1000」を採用した1、2号機(各PWR、108.6万kW)は、2016年から営業運転中である。6基揃うと年間約480億kWhが供給可能となり、約3,974万トンのCO2排出量を抑制できるという。(参照資料:中国核能行業協会の発表資料(中国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Jan 2023
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ベルギー首相府の1月9日付発表によると、国内で最も新しい原子炉2基の運転期間を2035年まで10年延長するため、ベルギー政府が電気事業者エレクトラベル社の親会社である仏エンジー社と主要事項に関する予備的合意案に署名した。同国のA.デクロー首相とエネルギー省のT.バンデアストラッテン大臣が同日、記者会見で詳細を発表、1985年に営業運転を開始したドール4号機とチアンジュ3号機(各PWR、100万kW)を40年目の2025年に一旦停止した後、2026年11月に再稼働させることを目的としたもの。これら2基の運転継続に向け、ベルギー政府とエンジー社は2022年7月、その実行可能性や長期運転(LTO)の前提条件に関する交渉の継続等で原則合意しており、今回これらの事項を具体化することとなった。ベルギーではチョルノービリ原子力発電所事故後の2003年、緑の党を含む連立政権が脱原子力法を制定しており、既存の原子炉7基の運転期間を40年に制限するなどして、2025年までに脱原子力を達成することになっている。しかし、2020年に発足した7政党の連立政権は2021年12月、これらを2025年までに全廃することで原則合意したものの、現時点でも総発電量の約5割を供給するこれら原子炉7基の代替電源が確保できていないことから、最も新しいドール4号機とチアンジュ3号機については、エネルギー供給を保証できない場合に限るという条件で運転継続する可能性を残していた。その後、2022年2月にロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まり、欧州各国の天然ガス調達に大きな影響が出るなど、エネルギー供給を巡る状況は大きく変化。ベルギーの原子力規制当局が同年1月、これら2基の運転期間延長を条件付きで認めていたことから、ベルギー政府は2022年3月、これらの運転を2025年以降も継続し、合計約200万kWの原子力発電設備を2035年まで維持する方針を決定した。首相府によると、両者が今回合意した文書は、今後数か月以内に完全な合意協定を締結するための下地となる。この文書では、運転の継続に向けて関係当局から承認を得る手続きが必要になるため、環境影響面と技術面の調査を直ちに開始することなどが盛り込まれている。具体的には、両炉の運転延長期間中、ベルギー政府とエンジー社が均等に出資する合弁企業がこれらの管理にあたるが、その実施に向けた法改正手続きや欧州委員会の承認取得手続きの概要、2基から出る放射性廃棄物の処理経費に上限を設けるための枠組みなどを明記。また、これに必要な技術面と財政面のパラメーターを今後数週間以内に確定する態勢も明確化したほか、事業者がこれら2基を適切に運転することを保証する事項も定めている。(参照資料:ベルギー首相府の発表資料(フランス語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月10日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
11 Jan 2023
2214
英国原子力産業協会(NIA)の1月5日付発表によると、デンマークの原子力技術開発企業であるコペンハーゲン・アトミクス社が、第4世代の小型トリウム熔融塩炉(MSR)を英国の包括的設計審査(GDA)にかけるため、申請書を英国政府に提出した。審査に先立ち現在、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が、設計者に同審査を受ける能力が備わっているか確認中と見られているが、同社の英国法人であるUKアトミクス社はすでに、フルサイズの原型炉を建設済み。今年から様々な試験を実施して、この炉が英国の安全・セキュリティ面の厳しい基準をクリアしていることを示す「設計承認確認書(DAC)」を原子力規制庁(ONR)から取得する予定。環境保護と放射性廃棄物の管理面については「設計承認声明書(SoDAC)」を環境庁(EA)から取得し、2028年にも最初の商業炉を英国内で完成させる予定である。MSRは燃料として熔融塩とトリウムなどの混合液体を使用する設計で、北米では1950年代に米オークリッジ国立研究所を中心に開発が始まった。CO2を出さずにクリーンな電力を発電できるほか、既存の軽水炉から出る長寿命放射性廃棄物を大量に燃焼出来る等の利点があり、「第4世代原子力システム国際フォーラム(GIF)」は2002年に溶融塩炉を国際共同研究開発が可能な6種のコンセプトの1つに選定している。UKアトミクス社のMSRは、減速材として重水を使用するコンテナ・サイズのモジュール炉(SMR)で、熱出力は10万kW。560°Cの熱を顧客に供給する。また、燃料としてトリウムや既存炉の使用済燃料を使用するなど、ウラン燃料ベースの既存炉を根本的に改善した革新的な原子炉技術であると同社は強調。最終的に排出される廃棄物は大幅に削減され、廃棄物の貯蔵期間も10万年から300年ほどに短縮できるとした。同社はすでに8年前から、英国の複数の大学と同炉の主要技術や機器類の開発・試験と実証を進めている。今後は、自動車や飛行機の製造と同様に同炉を工場で大量に製造し、先進的原子炉開発分野を牽引したい考えだ。UKアトミクス社としては、将来的に数千基規模のMSRを製造・所有・運転することを計画しており、関連設備や技術など付随するサービスも含めた総合的なエネルギー・ソリューションの提供というビジネス・モデルを検討中。同モデルでは開発リスクが軽減される一方、コスト面の効果が高い。また、顧客は設備投資などの資本支出を必要としない上、同炉の運転にともなう支出も非常に小さく済むことから、同社はMSRで競争力の非常に高い電力を安価で提供し、クリーンエネルギーへの移行を世界レベルで加速することができるとしている。BEISは2021年5月、GDAの審査対象としてSMRその他の先進的原子炉技術を含めると表明した。これを受けて、ロールス・ロイスSMR社は同年11月、同社製SMRのGDA申請書をBEISに提出。米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社も2022年12月に同社製SMRをGDAにかけるため、申請書を提出している(参照資料:NIA、BEIS、UKアトミクス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
10 Jan 2023
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米ニュースケール・パワー社は1月4日、同社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」のうち、単基の電気出力が7.7万kWのモジュール設計について、1日付で原子力規制委員会(NRC)に「標準設計承認(SDA)」を申請したと発表した。NRCはすでに2020年9月、出力5万kWのNPMに対してSDAを発給済み。ニュースケール社は2018年6月にモジュールの出力を20%増強して6万kWとし、さらに2020年11月には先進的試験のデータやモデリング・ツールによる分析結果から、出力を25%増強した7.7万kW版を設計していたもの。今回の申請は、顧客が希望する出力レベルに応じて、同NPMを6基搭載した原子力発電設備「VOYGR-6」(出力46.2万kW)の建設を念頭に置いている。7.7万kW版も基本的な安全性能は5万kW版と同じであり、この出力増強によってNPMの経済性はさらに改善されると強調している。ニュースケール社によると現時点でNRCの承認が得られたSMRはNPMのみであり、このことは同社のみならず原子力産業界全体にとって重要な節目となった。最初の1件が承認されたことで、2件目の審査は一層効率的かつ効果的に進むと同社は指摘。7.7万kW版のNPMについては、すでにNRCが申請前から予備的協議と申請の準備状況に関するレビューを進めていたという。NRCがNPMの安全性を認めたことで、「VOYGR」の建設を目指すルーマニアやポーランドの計画が過去2年の間に大きく進展した。ルーマニアでは2022年5月に、国営原子力発電会社(SNN)が建設サイトのオーナーとともにニュースケール社と了解覚書を締結。SNNは同年10月、民間のエネルギー企業と共同でプロジェクト企業を設立した。ポーランドでは2021年9月、鉱業大手のKGHMポーランド銅採掘会社らがニュースケール社と協力覚書を締結。採掘事業に必要な電力や熱エネルギーを石炭火力発電所ではなく、SMRで供給することを検討している。2022年2月には、両社は「VOYGR」の建設に向けて先行作業契約を締結した。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Jan 2023
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韓国のサムスン重工業(SHI)は1月4日、デンマークのシーボーグ(Seaborg)社製コンパクト溶融塩炉(CMSR)を搭載した海上浮揚式の原子力発電所「CMSRパワー・バージ」の概念設計を完了したと発表した。また、アメリカ船級協会(ABS)から、初期段階の実行可能性を認証したことを意味する「原則承認(AIP)」を取得したことを明らかにした。SHI社の造船技術と溶融塩炉の開発企業であるシーボーグ社の技術を融合した「CMSRパワー・バージ」は、電気出力10万kWのCMSRを2~8基搭載でき、24年間稼働が可能。船体には蒸気タービン発電機や陸上の送・配電施設と接続する設備も備わっており、設置点まではタグ・ボート等で曳航されるためサイト選定上の制約が少ない。また、製造期間が約2年と短いことから、コストも大幅に軽減されると指摘している。今後は同バージの設備について詳細設計を進め、2028年までの商業化を目指す方針だ。同バージは化石燃料発電所を代替する熱電併給設備として需要が見込まれるだけでなく、水素製造や海水脱塩、産業用の熱供給施設にも幅広くエネルギーを供給できるとしている。SHI社はすでに2021年6月、溶融塩炉(MSR)技術に基づく小型モジュール炉(SMR)で海上浮揚式原子力発電所や原子力船を開発するため、熱電併給可能なSMR「SMART」(電気出力10万kW)の開発実績を持つ韓国原子力研究院(KAERI)と協力協定を締結した。その際KAERIは、MSR内部で異常信号が発生した場合、液体燃料の溶融塩が凝固するよう設計されているため重大事故の発生を抑制できると説明。このような固有の安全性に加えて、MSRには電力と水素を効率よく生産できるという利点があり、次世代のグリーン水素製造など様々な分野で活用が可能である。2022年4月には、SHI社は溶融塩炉の技術についてシーボーグ社と戦略的技術協力の覚書を締結した。この覚書に基づき、両社は「CMSRパワー・バージ」をターンキー契約で製造・販売し港湾に係留するほか、陸上の送電施設と接続することを計画。協力オプションとして、同バージの近くに水素やアンモニアの製造プラントを共同建設し、同バージから安全かつクリーンな電力を安定的に供給するとしている。SHI社の開発担当者は、「引き続き海上浮揚式原子力発電所の開発を進め、将来的に新たな市場を開拓していきたい」と述べた(参照資料:サムスン重工業、シーボーグ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Jan 2023
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フィンランドのティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は12月21日、試運転中に給水ポンプ内で機器の損傷が見つかったオルキルオト原子力発電所3号機(OL3)(欧州加圧水型炉=EPR、172万kW)について、「27日に試運転を再開して残り約10項目の試験を実施し、3月8日には営業運転を開始する」と発表した。試運転期間中に同炉が発電する電力量は約13億kWhとなる見通しだが、これは、フィンランドにおける総電力需要の約15%に相当する。同炉では試運転中の10月中旬に保守点検を実施した際、タービン系の給水ポンプ4台すべてで内部の羽根車に数センチ程度のクラックが認められた。TVOは羽根車の一つを分割して3つの研究所に送り、数学的モデリングや分析調査を行いながら試運転を再開する機会を探っていた。現時点で根本的な原因は不明だが、TVOは包括的な調査の大部分を完了したと表明。クラックの発生理由として、「試運転の際に通常の使用範囲から外れた異常な条件下でポンプを使用したため、正常値より大きなひずみがかかった可能性が高い」と説明しており、羽根車の設計を変更した上でポンプを適切に操作することにより、同様の損傷を回避することができると述べた。差し当たり、現行モデルの正常なスペア羽根車を取り付けたポンプ2台と、クラック入り羽根車のポンプ2台で暫定的に試運転を再開する方針で、クラック入りポンプのうち1台は予備用となる。給水ポンプはタービン系の内部に設置されることから、TVOは原子炉の安全性に大きな問題はないとしている。TVOはまた、試運転再開の判断に先立ち、ポンプの複数の使用オプションについて事前に評価した。異なるモデリングを活用した上で、現行のスペア羽根車の使用が適切であるか、クラック入りポンプを修理した場合や同ポンプで運転継続した場合に発生する可能性のある事象、新しいスペア羽根車の設計と耐久性等を徹底的に調査。この作業には、同炉の機器サプライヤーやTVOの専門家に加えて、諸外国の科学コミュニティからも多くの専門家が参加している。試運転再開後のスケジュールについて、TVOは11日間にわたり同炉の出力レベルを数段階に変化させるとしており、フル出力による試験を終えた後は発電を約4週間停止して給水ポンプを点検する。新たな設計で製造中の堅固な羽根車が2月末から3月初旬にサイトに到着予定であるため、TVOは営業運転開始前の約1か月間、ほぼフル出力で同炉を連続運転できるよう、既存の羽根車の点検と新たな羽根車に変更する期間を十分確保する方針である。(参照資料:TVOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Dec 2022
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ルーマニアのエネルギー省は12月19日、チェルナボーダ原子力発電所で建設工事が中断している3、4号機(各カナダ型加圧重水炉:CANDU炉、70万kW)の完成に向けて、財政面等の支援策を国営原子力発電会社(SNN)に提供する法案を政府が承認したと発表した。同法案は、政府とSNNの間で「支援協定」を締結するためのもので、議会へ提出済みである。財政面の支援については、エネ省は差金決済取引(CfD)や欧州連合(EU)基金の適用などを検討している。総工費が約70億ユーロ(約9,850億円)という両炉の完成プロジェクトで、ルーマニアは3号機の運転を2030年末に、4号機は翌2031年に開始するとしており、これらの原子炉を通じて、同国はエネルギーの供給保証強化や自給率の向上を図る方針。EUが地球温暖化防止で掲げた、「2030年までにCO2排出量を1990年比で少なくとも55%削減する」という目標の達成にもつながると強調した。同国はまた、現在稼働中のチェルナボーダ1、2号機(各CANDU炉、70万kW級)で総発電量の約20%を賄っているが、3、4号機が完成すればこの数字は倍近くの36%に上昇するとエネ省は指摘。原子力部門では新たな雇用が創出され、国内サプライチェーンが活性化される。融資等も受け易くなることから、立地地域の経済効果も大きいと指摘している。チェルナボーダ3、4号機は1980年代半ばに本格着工したが、1989年のチャウシェスク政権崩壊により、進捗率がそれぞれ15%と14%のまま建設工事が停止した。これらを完成させるという政府決定を受け、SNNは2009年にプロジェクト企業を設立したものの、同社への出資を約束していた欧州企業6社は経済不況等によりすべて撤退した。2015年には、中国広核集団有限公司(CGN)がこの計画に協力するためSNN社と覚書を交わしたが、その後に米国とルーマニアの協力関係が進展したことから、CGNとの協力は打ち切られている。米国とルーマニアの両政府は2020年10月、両炉の完成プロジェクトも含め、ルーマニアの民生用原子力発電部門の能力拡充と近代化に米国が協力するため、政府間協定(IGA)を締結。この協定に基づき、米輸出入銀行(US EXIM)は今年11月、同プロジェクトに準備作業等を提供する契約について、最大30億5,000万ドルの融資を提案するとルーマニア側に伝えている。今回の法案でルーマニア政府は、政府保証も含めた複数の財政支援策を財務省が取ると表明。担当省であるエネ省もCfDの実施を進めていくほか、EUが東欧の加盟10か国に提供している「近代化基金」((EUの対象10か国がエネルギー関係の温室効果ガス排出削減目標を達成できるよう、ECと欧州投資銀行が協力して、エネルギーシステムの近代化や効率性の改善支援を行うための基金))を3、4号機の建設と運転に適用する対策を進める。また、輸送・インフラ省を通じて、政府は4基分の冷却水をドナウ川から確保するための措置を講じる。さらに、政府が約6割出資している送電システム事業者のトランスエレクトリカ社に指示を出し、3、4号機の起動日までに国内送電網への接続準備を整えるとしている。SNNが3段階で進めている両炉の完成プロジェクトは現在、約24か月間をかけた第一段階にあり、傘下のエネルゴニュークリア(EN)社がプロジェクト企業として事業を展開していけるか、資産や収益などの現在価値を算出する業務や、EPC(設計・調達・建設)契約の締結に向けた準備作業を実施中。第二段階では、18~24か月の間に機器サプライヤー関係の市場分析やエンジニアリング作業を実施し、プロジェクトの実行可能性を再評価する。「最終投資判断」を下した後は、69~78か月の第三段階に入り、実際の建設工事や原子炉の起動を行うことになる。(参照資料:ルーマニア政府の発表資料(ルーマニア語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
23 Dec 2022
2011
米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は12月20日、同社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」(出力30万kW)を英国の包括的設計審査(GDA)にかけるため、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)に申請書を提出したと発表した。規制当局の実際の審査に先立ち、BEISは同審査を受ける能力が設計者に備わっているか確認するため、最大4か月をかけて初期スクリーニングを実施すると見られている。GDAは英国内で初めて建設される原子炉設計の事前認証審査で、審査項目は土木建築から原子炉化学まで17の技術分野にわたる。安全性とセキュリティ面については原子力規制庁(ONR)が、環境影響面については環境庁(EA)が担当し、対象設計が英国の基準を満たしているか評価。最終承認までの所要期間は約5年で、これまでにフラマトム社製の「欧州加圧水型炉(EPR)」、ウェスチングハウス社製「AP1000」、日立GE社製の英国版「ABWR」、中国広核集団有限公司(CGN)を中心とする中国企業の英国版「華龍一号(HPR1000)」が承認を受けている。BEISはまた、2021年5月にGDAの審査対象として、SMRその他の先進的原子炉技術を含めると表明した。これを受けて、ロールス・ロイスSMR社は同年11月、同社製SMRのGDA申請書をBEISに提出。ONRとEAは今年3月にBEISから要請を受け、同設計のGDAを開始している。英国では、2050年までに国内の発電システムから温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロ化することを目指しており、原子力発電についてはエネルギー供給保証の観点からも、この年までに2,400万kWを配備する目標が掲げられている。GEH社は、英国がこれらの目標を達成する上で「BWRX-300」は理想的な炉型だと明言。英国内で複数の「BWRX-300」を建設すれば、目標達成に向け大きく前進するとの認識から、同社はグローバルな環境事業を展開する米ジェイコブス社から許認可手続き関係の支援を受けながら、GDAの申請準備を進めてきた。「BWRX-300」の建設に関しては、カナダと米国でも予備的設計審査が進展中で、カナダ・オンタリオ州のオンタリオ・パワー・ジェネレーション社(OPG)は今年10月末、同州南部のダーリントン原子力発電所で早ければ2028年にも同炉を完成させるため、カナダ原子力安全委員会(CNSC)に建設許可を申請した。同じくカナダのサスカチュワン州のサスクパワー社も今年6月、初号機建設にともなう規制面や建設・運転面のリスクを軽減するため、州内で2030年代半ばまでに建設するSMRとしてOPG社と同じ「BWRX-300」を選択している。また、ポーランド最大の化学素材メーカー、シントス社の傘下企業と最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社は、折半出資の合弁事業体「オーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社」を通じて「BWRX-300」の建設に向けた活動を展開中。同社は今年7月、「BWRX-300」について、予備的な許認可手続きの一つである「包括的(評価)見解」の提示を同国の国家原子力機関(PAA)に申請している。(参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
21 Dec 2022
2727
フィンランド政府が株式の過半数を保有するエネルギー企業のフォータム社は12月15日、スウェーデンで小型モジュール炉(SMR)の建設機会を探るため、スウェーデンのプロジェクト開発企業であるシャーンフル・ネキスト(Kärnfull Next: KNXT)社と了解覚書を締結したと発表した。フォータム社は今年10月、フィンランドとスウェーデンの両国で、大型炉やSMRなど新たな原子力発電所の建設に向けた実行可能性調査(FS)を2年計画で実施すると発表。KNXT社との覚書はその一環であり、スウェーデンで商業面や技術面、社会面の新設要件を特定するFSの実施に協力して取り組んでいく。両社の発表によると、スウェーデン初のSMRを稼働させる時期については、現状では禁止されている新たなサイトでの原子炉建設や10基までに制限されている運転中原子炉の基数など、法制面や許認可関係の制限事項がどの程度撤廃されるかにかかっている。地球温暖化への対応策として、フォータム社はクリーン電力への需要が今後数十年間で大幅に高まると予想。スウェーデン政府が掲げた温暖化防止目標を達成するには、CO2を排出しない電源の大規模な拡大が求められており、産業界からはSMRの持つ可能性に期待が高まっていると指摘している。フォータム社は、SMRであれば産業界や各自治体に価格の安定した無炭素な電力や熱、水素を提供できると考えており、新たな原子力発電所を風力発電設備とともに建設していくことは、地球温暖化への対抗手段になると強調。同社とKNXT社の異なる能力を生かし、互いに補い合ってSMR建設を進めていきたいと述べた。なお、フォータム社は今回の発表に先立つ今月8日、同FSにおける活動の一部として、フランス電力(EDF)と協力するための枠組み協定を締結した。EDFは2019年9月、原子力・代替エネルギー庁(CEA)などとの協力により、実証済みのPWR技術とモジュール方式を取り入れたSMR「NUWARD」(電気出力34万kW)を開発したと発表。仏フラマトム社らが開発した欧州加圧水型炉(EPR)の建設を欧州全土で進めつつ、NUWARDについても2030年から実証プラントの建設に取り掛かる計画である。フォータム社は先進的原子炉建設に関するEDFのこのようなアプローチも取り入れて、北欧で新たな原子力発電所の建設機会を探る方針である。フォータム社はまた、このFSの一環で先月、ヘルシンキ市が保有するエネルギー企業のヘレン社と、SMRの建設に向けた協力の可能性を模索すると発表した。ヘレン社は同市内のプラントで熱や電力を生産・供給しており、無炭素な熱電併給が可能なSMRは注目に値すると述べている。一方のKNXT社は今年3月、スウェーデンで複数のSMRを可能な限り迅速に建設するため、米国でSMRを開発中のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と了解覚書を締結している。KNXT社は、環境保全技術のスタートアップ企業であるシャーンフル・フューチャー(Kärnfull Future)社の100%子会社であり、KNXT社のC.ソーランダーCEOはフォータム社について、「稼働率の高いロビーサ原子力発電所を運転するなど、原子力関係の優れた知見を幅広く有している」と評価。同社との協力を通じて、安価でより良い総合的な解決策を顧客に提案できるとしている。(参照資料:フォータム社、シャーフル・ネキスト社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Dec 2022
2193
ポーランドのPEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)は12月15日、最初の大型炉発電所の採用炉型であるウェスチングハウス(WH)社製「AP1000」の建設について、細かな取り決め事項でWH社と合意したと発表した。同国政府は先月、最初の3基、375万kW分の採用炉型としてAP1000を選定しており、今回の枠組み合意はその具体化の手続きとなる。建設プロジェクトの準備作業の概要を定めたもので、両社は今後のエンジニアリング・サービス契約締結に向けて、発電所のレイアウトなど初期段階の設計作業のほか、WH社が提供する許認可手続き関係の支援や建設サイトでのサービス業務、資機材等で合意。次の段階では詳細作業や商業契約に進む方針で、AP1000発電所の設計開始契約については、来年半ばにも別途結ぶとしている。ポーランドの改訂版「原子力開発計画」では、2043年までに複数サイトで100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万kW~900万kW建設することになっている。ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)の子会社であるPEJ社は2021年12月、最初の原子力発電所の最も有望なサイトとして、バルト海に面した同国北部ポモージェ県内のルビアトボ-コパリノ地区を選定。今年に入っては、政府の環境保全管理局に建設プロジェクトの環境影響声明書(EIS)を提出しており、現時点では2026年に初号機の建設工事を開始し、2033年に完成することを目指している。AP1000は第3世代+(プラス)の設計として、欧州加圧水型炉(EPR)と同様に稼働実績があり、中国で2018年以降に世界初のAP1000が4基運転を開始したほか、今年になって新たに2基が着工した。米国でも2013年から2基が建設中であり、ウクライナでは合計9基のAP1000建設が決まっている。同設計の特長として、WH社は本格的な受動的安全炉であることや、モジュール方式で建設可能な点などを挙げている。今回、WH社のD.ダーラム・エネルギーシステム担当社長とPEJ社のT.ステピン社長が協力合意文書に調印。調印式には、ポーランドのA.モスクヴァ気候環境相と戦略的エネルギーインフラを担当するM.ベルゲル政府全権委員、米国のM.ブレジンスキー・ポーランド駐在大使などが同席した。ポーランド政府のベルゲル委員は、「WH社の炉型を選定した際、M.モラビエツキ首相が記者会見で強調していたように、ポーランドが経済面でさらなる成長を遂げるには安価でクリーン、安定した電力供給が不可欠。その意味で原子力を選択したことは当然の結果」と指摘。原子力発電所によってポーランドはロシアなどからの化石燃料を必要としなくなり、国家のエネルギー供給保証を速やかに強化できると述べた。米国のブレジンスキー大使は、「今回の枠組み合意により、ポーランドは信頼できるパートナーから安全で信頼性の高い原子力エネルギーを得るという目標の達成に向け大きく前進した」とコメント。両国間協力の主要な柱でもあるこの合意により、ポーランドはCO2の排出量を削減しながら、エネルギーの供給を一層確実にすることができると指摘した。(参照資料:PEJ社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Dec 2022
2225
国際原子力機関(IAEA)は11月27日から12月8日にかけて、フィンランドで建設中の世界初となる使用済燃料の深地層最終処分場に「アルテミス(=ARTEMIS: 放射性廃棄物・使用済燃料管理、廃炉、除染に関する総合レビューサービス)」ミッションを派遣。12月9日にレビュー結果を取りまとめ、同国の取り組みを高く評価した。同処分場の建設工事は、原子力発電事業者のティオリスーデン・ボイマ社(TVO)とフォータム社の共同出資企業であるポシバ社が、2016年末からユーラヨキ自治体のオルキルオトで進めており、現時点で2025年頃に操業開始できる見通し。同社はすでに2021年12月末、同処分場を2024年3月から2070年末まで操業するための許可を政府に申請済みである。IAEAはフィンランド政府の要請に基づいて、加盟各国の専門家から成るアルテミス・チームを同処分場に送り、12日間にわたって建設工事や操業の準備状況などを審査。同チームはまた、フィンランドで原子力発電問題を管轄する雇用経済省、社会福祉保健省、放射線・原子力安全庁(STUK)の幹部らと会談したほか、TVOやフォータム社傘下の熱電供給企業、ポシバ社、フィンランドVTT技術研究センター、ヘルシンキ大学の関係者とも会合を持った。アルテミス・チームは審査に際し、地球温暖化の防止目標達成に向けたフィンランドの国家戦略の中に、後の世代や環境を守れる方法で放射性廃棄物を安全に管理することが含まれている点に注目。今回のミッションに参加した米原子力規制委員会(NRC)のJ.タッパート・チームリーダーは、「使用済燃料の深地層処分場建設計画も含め、フィンランドは国家戦略を効率的に実行している」と評価した。その上で、「IAEAの安全基準や技術的ガイダンスに基づいて、国際的な専門家が独立の立場で評価と助言を行うこのピア・レビューを通じて、我々はフィンランドが約束した安全で効率的な放射性廃棄物管理プログラムの実行状況をタイムリーに確認できた」と述べた。また、フィンランド政府が今後も責任を持って、使用済燃料その他の放射性廃棄物の安全な管理政策を推進していけるよう、同チームは以下の点を勧告している。フィンランド政府が放射性廃棄物に関する現行の複雑な管理・規制を簡素化する際、法制面の矛盾が生じないよう改善する。フィンランド政府は、放射性廃棄物に関する現行の政策や戦略が同国の将来の地球温暖化対策やエネルギー戦略に対しても適切なものになるよう、引き続き評価を行っていく。フィンランド政府は、放射性廃棄物の管理に関する国家プログラムの管理・運営に際し、必要となる財源の評価を随時実施する。雇用経済省でエネルギー問題を担当するL.ヘイキンヘイモ次官は、今回のIAEAミッションについて、「提示してくれた勧告や将来のための貴重な示唆により、我々の放射性廃棄物管理政策は一層進め易くなる」と指摘。「ポシバ社の深地層最終処分場に世界初の操業許可を与える際は、特に重要になる」と強調した。同ミッションの最終報告書は、約2か月後にフィンランド政府に提出される予定である。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Dec 2022
2651
フランスの検査認証企業であるビューロー・ベリタス(Bureau Veritas)社の12月14日付発表によると、同社と米国の原子力技術デベロッパーであるThorCon社は、インドネシアでThorCon社製溶融塩炉「ThorCon」(電気出力25万kWのモジュール×2基)を搭載したバージ(はしけ)の実証・建設に向けて協力することになった。具体的にビューロー・ベリタス社は、同炉に適用される安全基準やコードなどを特定し、その適用にともなうリスクの評価と取り組み方法等についてThorCon社を支援。少なくとも約3年をかけて、技術の認定プロセスを完了する。その後は実際に建設する可能性を探るため、さらに2年間で産業利用に関する実行可能性を評価するとしている。ThorCon社はこのバージの実証を行い最終的に設置する地点について、すでにインドネシアの国営電力(PLN)と原子力規制庁(BAPETEN)、およびスマトラ島の東方沖に位置するバンカ島とビリトゥン島(バンカ・ビリトゥン州)の州政府と協議中。船体に溶融塩炉を組み込んだバージは設置点の浅瀬まで引き船で曳航され、そこで送電網に接続、主に近隣地域の電力需要を満たすことになる。インドネシアは同炉で多量の電力を発電し、信頼性の高い低炭素エネルギーへの移行を図る考えだ。インドネシアでは電力需給のひっ迫等を理由に、1980年代に原子力発電の導入が検討されたが、建設予定地における火山の噴火や地震の可能性、福島第一原子力発電所事故などが影響し、100万kW級大型炉の導入計画はこれまで進展していない。一方、初期投資の小ささや電力網への影響軽減等の観点から、中小型炉への関心は維持されており、インドネシア原子力庁(BATAN)は2018年3月、大型炉導入の前段階として小型高温ガス炉(HTGR)を商業用に導入するため、熱出力1万kWの実証試験炉の詳細工学設計を開始している。ThorCon社は世界第4位の人口を擁するインドネシアについて、電力需要が今後も大幅に増加すると予想。このため、低コストで出力調整可能な無炭素エネルギーが緊急に必要な東南アジアで、同社の技術を最初に実現する国としてインドネシアを選定した。電力需要の増加を満たす実用的な対策を東南アジアに提供し、世界的な温暖化問題の解決に貢献したいとしている。ThorCon社の資料によると、同社は2018年にインドネシアのエネルギー省と覚書を交わし、出力50万kWの溶融塩炉の実証炉建設に関する実行可能性調査の実施で合意している。エネ省は2019年に国営電力会社とともにこの調査を完了し、実証炉の安全性と経済性および送電網への影響等を検証済みである。同社はまた、今年2月にインドネシア国家研究イノベーション庁(BRIN)と原子力分野の研究開発と技術革新、中でもモジュール式溶融塩炉の開発に関する協力で覚書を締結。7月には、将来の溶融塩炉建設に向けて両者が合意したことを明らかにしていた。(参照資料:ビューロー・ベリタス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Dec 2022
2470
仏フラマトム社は12月8日、英国サフォーク州でサイズウェルC(SZC)原子力発電所(欧州加圧水型炉:EPR×2基、各167万kW)の建設を計画しているEDFエナジー社の子会社NNB Generation(SZC)社(NNB SZC)と、正式な契約に先立ち大まかな枠組みで合意したと発表した。独シーメンス社とともに1990年代からEPR設計の開発に携わったフラマトム社は、すでに2021年からSZC計画関係の作業を請け負っており、英国政府が一部出資するプロジェクト企業であるNNB SZC社との今回の枠組み合意は、このような実績、および同社がEDFエナジー社のヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所(EPR×2基、各172万kW)建設プロジェクトで提供している様々なサービスの実績に基づいている。SZC計画について今後、最終投資判断(FID)が下されれば、フラマトム社はNNB SZC社と主契約を結ぶ予定である。フラマトム社のB.フォンタナCEOは今回合意に至った理由として、英国政府が先月末、この建設プロジェクトに対し6億7,900万ポンド(約1,136億円)の直接投資を決め、同等の追加投資を行うフランス電力(EDF)とともに同プロジェクトを50%ずつ保有することになったことを挙げた。英国政府は今後、NNB SZC社と協力して同プロジェクトに出資する第三者を新たに募る方針だが、同CEOは「財政支援等の協力が政府から得られることになり、EDFエナジー社はSZC計画を前進させることができるし、当社としてもこの契約により、英国に低炭素な新世代の原子力発電所を提供していく方向性を再確認した」と述べた。 今回の枠組み合意の下で、フラマトム社は原子力蒸気供給システム(NSSS)の製造や計装制御(I&C)系の劣化管理、初期段階のエンジニアリングや資機材調達などを行う予定。また、長納期鍛造品の製造準備など、2021年以降すでに実施済みの作業についてもカバーしていく。フラマトム社によると、SZC発電所の2基はHPC発電所と同型設計になるため、リスクの最小化やコストの軽減、建設スケジュールの明確化などで大きな利点がある。HPC計画の経験を反映させることにより、後続のEPRプロジェクトは設計や建設、サプライチェーン等の面で効率化が図られ、このように大規模な建設プロジェクトを確実に管理できるとしている。(参照資料:フラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Dec 2022
2343
オランダの原子力規制当局である原子力安全・放射線防護庁(ANVS)は12月9日、同国で新たに建設する原子炉2基のサイトとして、政府が閣僚会議で既存のボルセラ原子力発電所(PWR、51.2万kW)の立地自治体を指定したと発表した。ANVSによると、これは気候・エネルギー省のR.イエッテン大臣が明らかにしたもの。ボルセラ発電所には既存の原子力インフラがすでに存在するほか、物理的スペースも十分あることから新設に最適と判断したと説明。数年後に閉鎖が予定されているボルセラ発電所の運転継続についても、実行可能性を調査すべきだとしている2021年3月に同国で発足した連立政権の4党は、2040年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指しており、同年12月に4党が合意した2025年までの政策方針のなかでは、国内唯一の原子力発電設備であるボルセラ発電所の運転を長期に継続するとともに、政府の財政支援により新たに2か所で原子力発電所を建設する方針を提示。原子力発電所の新設にともなう予算措置として、2025年までに合計5億ユーロ(約726億円)を計上するほか、2030年までの累計予算として50億ユーロ(約7,260億円)を確保する考えを表明していた。政府による今回の決定案は、気候・エネルギー相が議会の下院議長に提出した書簡の内容に基づいており、最終決定するまでには時間を要する見通し。同書簡によると、新設する2基は第3世代+(プラス)の原子炉となる予定で、出力は各100万~165万kW。2基合計で300万kW程度を想定しており、設備利用率90%で運転した場合の発電量が240億kWhになることから、2035年までに完成すれば、現在約3%の原子力発電シェアを9~13%に増大することができる。同相は第4世代の原子炉設計も検討したものの、本格的に市場に出るのが2040年以降にしか見込まれず、初号機特有の課題に直面する可能性があると指摘。国内の電力供給システムで多様化と安定化を図り、CO2排出量のゼロ化を目指すには、ほかの国ですでに建設されている第3世代+の原子炉を建設するのが最短の道であり、スケジュールやコストを見積もる上でも現実的だと表明している。オランダで原子炉を新設するには、その建設と起動で別個に許認可を取得する必要があり、いずれの場合もANVSが申請書を審査し、この計画が原子力法と技術的な安全要件すべてに適合しているか確認する。また、国民が許認可プロセスに参加する機会も設けられており、ANVSの暫定認可に対して環境影響面等について懸念表明することが可能である。ボルセラ発電所の運転期間延長一方、1973年に運転開始したボルセラ発電所の現行の運転認可は2033年末まで有効だが、それ以上運転を継続するには原子力法の改正が必要になる。また、運転事業者のEPZ社は、長期運転にともなう国際的な基準や国内の技術的要件すべてを同炉が満たしていることを実証し、現在の運転認可の変更をANVSに申請しなければならない。気候・エネルギー相は今回の書簡の中で、「ボルセラ発電所の運転を2033年以降も継続した場合、CO2排出量の大幅な削減が期待できる」と述べており、少なくとも新設炉が完成するまでのつなぎとして維持することは重要だと指摘。運転継続に向けた協議を行うため、EPZ社を始めとする関係者と基本合意書を交わしたことを明らかにしており、実行可能性調査の実施経費を支援する用意があることも明記したとしている。EPZ社は同日、オランダ政府が新たな原子炉建設に向けて動き出したことを歓迎すると表明しており、既存の原子力発電所の運転期間延長と同様に、クリーンエネルギーに移行する上で重要だと指摘。原子力は地球温暖化の防止目標を達成しつつ、拡大する電力需要を満たし、化石燃料への依存を減らす上でも大きく貢献すると強調している。(参照資料:気候・エネルギー相の議会宛て書簡、ANVSの発表資料①、②(オランダ語)、EPZ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
13 Dec 2022
2651
米国のBWXテクノロジーズ(BWXT)社は12月7日、国防総省(DOD)が軍事作戦用に建設を計画している米国初の可搬式マイクロ原子炉の燃料として、HALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))を3重に被覆した燃料粒子(TRISO)の製造をバージニア州リンチバーグの施設で開始したと発表した。BWXT社は、バブコック&ウィルコックス(B&W)社が2015年に分社化した原子力機器・燃料サービスの企業で、米国政府の原子力事業にも対応。同社が開発した第4世代の先進的高温ガス炉(HTGR)は今年6月、DODのマイクロ原子炉の実証計画である「プロジェクトPele」で建設する電気出力0.1万~0.5万kWの原型炉として複数候補の中から選定され、2024年までにエネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)内に設置される予定。「プロジェクトPele」のマイクロ原子炉では、標準サイズのコンテナで輸送可能であること、防御力の低い化石燃料輸送の削減などを目指しており、災害への対応/復旧や遠隔地域における発電等で電力を供給することを想定している。同プロジェクトの非営利性に鑑み、DODの戦略的能力室(SCO)はマイクロ原子炉の建設や実証実験ではエネルギー省と連携し、その権限下でプロジェクトを進める方針。同プロジェクトでBWXT社は、同社とSCOの契約を実行・管理するINLから3,700万ドルの交付を受け、「プロジェクトPele」の原型炉やTRISO燃料を製造する。BWXT社はまた、その他の先進的原子炉や、米航空宇宙局(NASA)が火星の有人探査で使用する先進的原子炉にも、特別な被覆を施した燃料を提供する予定である。同社のTRISO燃料製造施設は現時点で唯一、HEUの保有と処理を許可された民間施設だが、同社は2020年7月、DODとNASAで今後必要になるTRISO燃料の供給に向けて、既存のTRISO燃料製造ラインの改造契約と、製造能力を拡大するための契約をINLから獲得。今年1月にはその修正契約に基づいて、DODの「運用エネルギー性能向上基金(OECIF:Operational Energy Capability Improvement Fund)」とNASAから支援金を受領、TRISO燃料の製造能力を拡大していた。DOEはTRISO燃料について「地球上で最も耐久性に優れた燃料」と評価、エネルギー密度の高い同燃料の粒子は高温に耐え、先進的小型原子炉の運転を可能にすると指摘した。計画では、米国政府が保有する高濃縮ウラン(HEU)を希釈してHALEU燃料に変え、BWXT社のリンチバーグ施設でTRISO燃料を製造する。DOEのK.ハフ原子力担当次官補は、「次世代原子炉の燃料としてTRISO燃料は理想的であり、米国がクリーンエネルギーへの移行を成し遂げるにも不可欠だ」と表明。DOEが数十年にわたって投資してきた同燃料が、この10年以内に建設される先進的原子炉の生産エネルギーとなり、安全面で優れたパフォーマンスを発揮することを期待すると述べた。BWXT社のR.ゲベデン社長兼CEOは、「優れた性能を持つ先進的な原子燃料によって、次世代原子炉の実現が可能になる」と強調。DODの「プロジェクトPele」およびNASAの宇宙探査用に、本格的なTRISO燃料およびその他の被覆燃料の製造が開始できたことは栄誉であると述べた。(参照資料:BWXT社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Dec 2022
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米サザン社の子会社であるジョージア・パワー社は12月7日、ジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所で建設している4号機(PWR、110万kW)で常温水圧試験が完了したと発表した。先行する3号機(PWR、110万kW)の建設工事では、2021年7月までに温態機能試験が完了し、今年10月に燃料を装荷。米国で約30年ぶりの新設原子炉として、2023年第1四半期の送電開始を目指している。4号機も同じく2023年の第1四半期末までに、温態機能試験を開始する見通しである。ボーグル3、4号機では米国で初めて、ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)設計「AP1000」を採用しており、それぞれ、2013年3月と11月に着工した。同じくAP1000を採用し、ほぼ同じ時期にサウスカロライナ州でスキャナ社と州営電力が着工したV.C.サマー原子力発電所2、3号機(各110万kW)は、2017年3月のWH社の倒産申請を受けて中止となったが、ボーグル増設計画ではサザン社の子会社であるサザン・ニュークリア社が、WH社からプロジェクト・マネジメントを引き継いで建設工事を継続してきた。4号機の常温水圧試験では、冷却系が設計通りに機能するかを確認するため、建設チームが11月初旬に冷却系の溶接部や接合部、配管その他機器について設置状況を点検。高圧環境下でも圧力システムから漏れが生じないことや、受動的安全系が正常に機能することを確認した。試験に先立ち、現場では炉内構造物やベッセル・ヘッドのほかに、温態機能試験で使用する流量制限装置を設置している。また、同じ時期にタービンの回転試験を初めて実施しており、タービンが正しく組み立てられていることや、付属の潤滑油供給システムが適切に機能することなどを確認した。3、4号機の運転は、所有権を共同保有している同社とオーグルソープ電力、ジョージア電力公社(MEAG)の子会社、およびダルトン市営電力に代わって、サザン・ニュークリア社が受け持つ予定である。(参照資料:ジョージア・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 Dec 2022
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欧州連合の司法裁判所(CJEU)は11月30日、欧州委員会(EC)の判断の取り消しを求めたオーストリア政府の異議を、ルクセンブルクにあるCJEUの第一審裁判所が却下したと発表した。ECは数年前、ハンガリーのパクシュ原子力発電所Ⅱ期工事に対する同国政府の国家補助を承認する判断を下していた。パクシュ発電所(ロシア型PWR×4基、各50.6万kW)はハンガリーの総電力需要の約50%を賄っており、同国政府は経年化が進んだこれらを少しずつリプレースしていくため、2014年1月にロシアの技術でⅡ期工事の5、6号機(各120万kW級)を建設すると発表。その翌月、ロシアからの長期の低金利融資で、総工費の約8割に当たる約100億ユーロ(約1兆4,400億円)を調達することで両国が合意したことを明らかにしており、同年12月には、ロシア国営のエンジニアリング企業であるNIAEP社とEPC(設計・調達・建設)契約を含む3つの関連契約を締結した。ECは、ロシアのこの融資を原資とするハンガリー政府の資金調達がEU競争法の国家補助規則に準拠しているかにつき、2015年11月から詳細な審査を実施した。その結果として、2017年3月には、同プロジェクトには国家資金による財政支援が含まれるものの、特定の経済活動の促進を目的とした投資補助であり、EU域内市場における共通利益を一定以上損なうような取引上の悪影響がない限り、同市場に適合すると表明。ハンガリー政府も、市場における競争原理の歪みの制限対策を実施すると誓約したことから、ECは同プロジェクトへの補助を承認していた。これに対して、ハンガリーの隣国であるオーストリアは2018年2月、入札を行わずにNIAEP社に発注されたこのプロジェクトは公的調達関係のEU指令に抵触しており、それにも拘わらず、ECがハンガリー政府の補助は域内市場に適合するとしたことは違法であると提訴。ロシア企業との直接契約はこの補助と緊密に結びついており、ECは公的調達に関するEU指令に基づいて国家補助の問題を検証すべきと訴えていた。CJEUの第一審裁判所は今回、ロシア企業との契約がハンガリー政府の補助政策に先んじて結ばれたことから、国家補助の目的と緊密に結びついてはいないと指摘。公的調達に関するEU指令にも抵触していないため、オーストリアの主張とは異なりECの判断は正当化されるとした。同裁判所はまた、ハンガリー政府の補助が域内市場の競争原理を歪め、自由化されたEUの電力市場から再エネ事業者を締め出す結果をもたらすと指摘された点について、「EU加盟国は自国のエネルギー構成を自由に決めることができ、ECにはその他の代替エネルギーに予算配分するよう要求する権限はない」と説明している。(参照資料:欧州司法裁判所の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Dec 2022
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米ニュースケール・パワー社は12月5日、同社製の小型モジュール炉(SMR)である「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の燃料取扱い装置と貯蔵ラックの設計契約を仏フラマトム社に新たに発注したと発表した。将来的にはこれらの機器をフラマトム社が製造することになっており、ニュースケール社は「SMRの機器製造とサプライチェーンの構築に向けた重要な一歩」と評価。これらの契約を通じて、ニュースケール社は顧客のスケジュールに沿って、2020年代末までにNPMを複数基備えた発電設備VOYGRの建設が可能になるとしている。ニュースケール社のNPMはPWRタイプの一体型SMRで、電気出力が5万kW~7.7万kWのモジュールを最大12基連結することで出力の調整が可能。米国の原子力規制委員会(NRC)は2020年9月、1モジュールあたりの出力が5万kWの「NPM」に対し、SMRとしては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給した。同社はまた、2021年12月に出力7.7万kWの「NPM」を複数搭載したSMR発電設備の呼称を「VOYGR」に決定。搭載基数に応じて、出力92.4万kWの「VOYGR-12」、46.2万kWの「VOYGR-6」、30.8万kWの「VOYGR-4」と名付けている。ニュースケール社によると、フラマトム社との協力関係は2014年にさかのぼり、フラマトム社はNPMのSDA取得に向けて、エンジニアリング・サービスの提供や許認可プロセスの分析等でニュースケール社を支援してきた。今回の協力拡大により、両社はVOYGRの建設と商業化をさらに進める考えだ。フラマトム社は今回の契約業務を遂行するのに際し、米ペンシルベニア州の起重機企業であるアメリカン・クレーン社、および仏オラノ社と連携する方針。これらの機器の既存設計をVOYGR設備の仕様に適応させて合理的な設計・製造方法を開発し、VOYGRの建設スケジュールを順守可能にする。燃料取扱い装置については、同社は本格的な遠隔操作機能を追加して性能強化を図るとした。また、高密度・使用済燃料貯蔵ラックの設計では、VOYGR設備独特の要件を満たすため関係技術を有するオラノ社とチームを組み、原子力産業界全体で培ってきた経験を活用するとしている。今回の契約を通じて、両社はこれまでの協力関係を一層強化しVOYGR設備の建設工事に至るまでこれを継続。世界中の多様なエネルギー需要に応えられるよう、VOYGR設備で柔軟性の高い発電オプションを売り込んでいく。また、フラマトム社としてはSMR機器の設計・製造能力をさらに向上させて、SMRを含む将来の先進的原子炉への機器・サービス提供でシェアを拡大したいとしている。(参照資料:ニュースケール社、フラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
07 Dec 2022
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チェコの国営電力(CEZ社)は12月2日、既存のテメリン原子力発電所で計画している同国初の小型モジュール炉(SMR)の建設準備作業として、初期の地質調査を完了したと発表した。建設サイトは正確には、テメリン発電所(ロシア型PWR×2基、各108.6万kW)の敷地南西部の外端に位置しており、複数の専門家が地盤のタイプや健全性を見極めるため、その状態を詳細に調査中。特別な振動発生機を使って地震波の到達速度や電気抵抗値などを計測するほか、深さ30mの調査抗も掘削して初期の調査結果を検証、地盤底土の組成なども分析する。CEZ社は現在、2015年5月の「国家エネルギー戦略」とこれをフォローする「原子力発電に関する国家アクション計画」に基づいて、既存のドコバニ原子力発電所(ロシア型PWR×4基、各51万kW)で大型原子炉の増設計画を推進中。ドコバニⅡ原子力発電会社(EDU Ⅱ社)は今年3月、最初の増設1基(120万kW級)についてベンダーの競争入札を開始しており、11月30日には招聘した3社から最初の入札文書を受領している。CEZ社は大型炉とSMRの建設計画を並行して進めている。テメリン発電所におけるSMRの初号機建設は、他の場所でSMRを建設する際のモデルケースとなる予定で、国内の老朽化した火力発電所をSMRでリプレースとすると強調している。CEZ社は、テメリン発電所が立地する南ボヘミア州の「原子力パーク」プロジェクトとしてSMR建設を推進しており、同社と傘下の国立原子力研究機関(UJV Rez)、および南ボヘミア州政府は今年5月、共同で同プロジェクトを始動すると表明。これら3者は、プロジェクトの準備作業を調整する「南ボヘミア原子力パーク会社」の株主となり、SMR分野の研究開発と建設準備を実施している。採用するSMRについて、CEZ社はこれまでに米国のニュースケール・パワー社、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社、ホルテック社のほか、英国のロールス・ロイス社、フランス電力(EDF)、韓国水力・原子力会社(KHNP)とSMR関係の協力覚書を交わした事実に言及。米ウェスチングハウス社とは、同プロジェクトについて集中的な協議を実施中であることを明らかにしている。CEZ社のT.プレスカッチ理事は、「(地質調査を実施中の地点が)SMR建設に最適だとの確信はあるが、建設前に地盤の状態やその他の影響ファクターを正確に把握しておかねばならない」と表明した。南ボヘミア州のM.クバ知事は、SMRについて「単にクリーンで安全な電力や熱を生産できるだけでなく、欧州の将来的なエネルギーミックスを支えることは確かだ」と指摘。SMRに加えて、人材の訓練センターも設置する機会にしたいと抱負を述べた。(参照資料:CEZ社の発表資料(チェコ語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Dec 2022
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米ARCクリーン・テクノロジー社の11月28日付発表によると、カナダ・ニューブランズウィック(NB)州の北部に位置するベルドゥーンの港湾管理局(BPA)がグリーン・エネルギー・ハブ化を目指し、ARC社製小型モジュール炉(SMR)の導入でプロジェクト開発企業のクロス・リバー・インフラ・パートナーズ社(CRIP)と協力することになった。BPAとCRIPはARC社カナダ法人による提案を受け入れたもので、同社が開発したナトリウム冷却・プール型高速中性子炉のSMR「ARC-100」(電気出力10万kW)で、電力と熱を生産する方針。ARC社は、BPAがNB州北部地域の経済成長を促す目的で計画しているクリーンエネルギーの特別開発地区「グリーン・エネルギー・ハブ」で同炉の建設を進め、同地区の様々な産業ユーザーのエネルギー源として活用する。今後の実行可能性調査や環境影響面の承認、カナダ原子力安全委員会(CNSC)による許認可手続き等を経て、2030年~2035年頃の商業運転開始を目指している。「グリーン・エネルギー・ハブ」構想は、BPAが最近公表した「2022年~2052年のマスター開発計画」における主要部分であり、BPAとCRIPはすでに今年8月、同地区で輸出用のアンモニア燃料を水素から製造する施設の建設で合意した。この施設ではCO2を排出しないエネルギーを動力として用いる予定であり、SMRの建設を加えることで同地区には地元やカナダ、および世界の市場にも貢献する新たな能力が備わる。同SMRはまた、水素の製造能力拡大や先進的製造業、金属製造業など、ベルドゥーンを本拠地とする産業のエネルギー源としても活用される。NB州では州営電力であるNBパワー社が2018年、同社のポイントルプロー原子力発電所敷地内で第4世代のSMRの実証炉を2種類建設するというプロジェクトを開始。この計画は、同州を含むカナダの4州が今年3月に策定した「カナダのSMR開発・建設の共同戦略」にも明記されており、ポイントルプローでの「ARC-100」建設は2種類のうちの1つ。2029年の運転開始が見込まれている。一方、ARC社が今回ベルドゥーンで提案した建設プロジェクトはNB州の経済規模拡大に貢献するだけでなく、同社のSMR技術が産業用エネルギー源として直接利用が可能であることを示す規範にもなる。同社のカナダ法人のB.ラベーCEOは、「ARC-100」が実証済みの技術と固有の安全性を備えているほか、モジュール式の低コストな建設と運転が可能である点を強調。その上で、「ベルドゥーンでの採用、および産業用として選定されたのは当然のことであり、NB州は『ARC-100』でカナダやその他の国のSMR建設でリーダー的地位を獲得する」と指摘した。 NB州のM.ホランド天然資源・エネルギー開発相も、同様の可能性を表明しており、「第4世代のSMR開発を牽引する当州としては、ARC社がベルドゥーンの『グリーン・エネルギー・ハブ』で、産業用のクリーンエネルギーを生産するSMRをカナダで初めて建設するのが楽しみ」としている。(参照資料:ARCクリーン・テクノロジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
05 Dec 2022
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