米エネルギー省(DOE)は2月24日、クリーンエネルギーのサプライチェーンでレジリエンス(供給力の一時的な低下等からの回復力)を強化し、関係機器の製造能力を増強、数百万人規模の雇用を創出していくため、60以上の具体的なアクション項目を盛り込んだ包括的な戦略を公表した。米国最大の無炭素電源であり、国内で約50万人の雇用を支える原子力に関しては、昨年11月に成立した「超党派のインフラ投資・雇用法(BIL)」を通じて、先進的原子炉の開発等に約25億ドルの投資を行う考えを明らかにした。この戦略は「クリーンエネルギー社会への確実な移行に向けたサプライチェーンの確保戦略(America’s Strategy to Secure the Supply Chain for a Robust Clean Energy Transition)」と題されている。国家経済とエネルギー供給の保証、および国家安全保障のさらなる強化に向けた総合計画としては、米国初の試みであり、エネルギー部門で頑健かつ多様な産業基盤を構築するため、様々な重要戦略を盛り込んでいる。同戦略によって、DOEはクリーンエネルギー関係の機器製造や技術革新で世界的リーダーとしての米国の立場を確立する方針だ。サプライチェーンへの投資や強化を通じて経済成長と関係雇用の創出を促進するだけでなく、サプライチェーンの世界的な途絶を防止することで米国の各家庭や企業の金銭的負担を減らし、インフレとの闘いを支援していくとしている。同戦略は、米国の経済的繁栄と国家安全保障を確実なものとするため昨年2月にJ.バイデン大統領が公布した「米国サプライチェーンに関する大統領令14017」へのDOEとしての対応であり、DOEと傘下の国立研究所の研究者が、原子力関係も含めてエネルギー部門全体で幅広く実施した13のサプライチェーン評価の結果に基づいている。連邦政府はBILを通じてエネルギー部門で620億ドルの投資を行うが、今回の戦略でDOEは、クリーンエネルギーへの移行にともなうビジネス・チャンスを米国がどのように捉え、エネルギー関係で世界規模の製造基盤や労働力をどのように構築していくか概説している。先進的原子炉の開発、使用済燃料の中間貯蔵施設建設を促進同戦略によると、米国の原子力産業界では近年、大きさが様々なだけでなく冷却材や燃料、建設方法も異なる先進的原子炉を幅広い用途に活用できるよう、設計や実証、建設に向けた計画が進められている。このような技術革新や官民の連携協力に促され、先進的原子炉設計の多様化は今後数年間でさらに進むとDOEは予測。これらの設計では米国の原子力産業界が高い効率性と安全性を実現しており、革新的技術を用いたクリーンエネルギー技術の開発は、米国がこの部門で再び国際的なリーダーシップを確立する機会をもたらすことになる。DOEの認識では、様々な先進的原子炉を国内外で建設し、そのサプライチェーンについても米国がリーダーシップを発揮すれば、原子力以外のクリーンエネルギー技術が利用できない地域で脱炭素化を進展させることができる。また、安全性や核不拡散性等の点で最も厳しい基準を満たしている米国の原子炉が、確実に建設されていくとしている。これらのことから、DOEは原子力に特化した今後の政策戦略として、原子力規制委員会(NRC)と調整を図りつつ先進的原子炉開発をタイムリーに支援していく考えを表明した。具体的には、「2017年原子力技術革新対応法(NEICA2017)」を全面的に実行に移し、先進的原子炉の設計概念を民間部門と国立研究所が共同で実証。技術面で得られる専門的知見は、NRCと共有していく。また、2019年に成立した「原子力技術革新・規制最新化法(NEIMA)」に基づき、今後短期間のうちに次世代原子炉技術に効率的に許認可を与えていく。これらの原子炉の多くで使用されるHALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)に関しては、先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)と同様、DOEが米国の民間部門による供給体制の確立を支援していく。DOEはまた、放射性廃棄物の処分について総合的な戦略を策定するため、手始めに連邦政府所有の使用済燃料・集中中間貯蔵施設の建設に向けて、地元の合意を得ながら立地プロセスを進めていく考えを明らかにした。DOEはまた、このような戦略の実行に際し米国議会に勧告する事項として、研究開発インフラに欠けている重要部分に継続的に予算を投入していくことを指摘。例として、高速中性子の照射施設となる多目的試験炉(VTR)の建設計画を挙げている。さらに、革新的な原子力エネルギー・システムの開発と配備を加速するため、DOEのみならず国防総省(DOD)や航空宇宙局(NASA)にも研究開発・実証・配備(RDD&D)予算の充当支援が必要だと表明。そのほかにも、DOEが統合的な処分戦略に基づいて使用済燃料の輸送や中間貯蔵、最終処分を実施していけるよう、議会に対して「1982年の放射性廃棄物政策法(NWPA)」の改正を勧告している。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
03 Mar 2022
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国際原子力機関(IAEA)は2月28日、ウクライナ外務省から伝えられた情報として、ロシア軍が同国南東部のザポロジェ原子力発電所(100万kWのロシア型PWR=VVER-1000×6基)近郊まで迫って来たものの、現時点で内部までは侵入しておらず、核物質防護体制を維持。同発電所の6基は安全な状態に維持されていると発表した。ウクライナの民生用原子力発電公社であるエネルゴアトム社も同日、「ザポロジェ発電所を掌握したとするロシア国防省の発表とロシア・メディアの報道は事実無根のフェイクだ」と表明。ウクライナにおける4サイト・15基の原子炉のうち、定検等により停止中のものを除く9基が同公社の管理下で通常運転中だと強調した。また、ウクライナ国家原子力規制検査庁(SNRIU)が27日付けでIAEAに伝えた情報によると、ロシア軍が発射したミサイルが26日、同国北東部ハリコフ近郊の低レベル放射性廃棄物処分場に着弾。27日にはキエフにある低レベル廃棄物処分場にも着弾した。これらの処分場では医療用や工業用に使用した低レベル廃棄物が処分されているが、ハリコフで変圧器が損傷したことを除けば、どちらの施設からも建屋の損傷や放射性物質の放出といった報告はなかったとしている。IAEAのR.M.グロッシー事務局長はウクライナの状況について、「原子力発電所や原子力関連施設の安全・セキュリティを脅かすような軍事活動等は、どのような方法を使っても回避せねばならない」と指摘。同国の原子力発電所が安全運転を維持していけるかという点に重大な懸念を表明しており、情勢を今後も注意深く見守っていくと述べた。グロッシー事務局長はまた、原子力施設においてはその安全性の確保で運転チームの能力維持が非常に重要になると説明。緊急の補修時も含めて、原子力施設の維持に必要な資機材や機器、サービス等をいつでも確保できるよう、サプライチェーンを利用可能な状態にしておかねばならないと強調した。一般報道によると、IAEAは3月2日にもオーストリアのウィーンにある本部で緊急理事会を開催すると決定、ウクライナ情勢について議論するとみられている。ロシア軍は2月24日にウクライナへの侵攻を開始しており、同日中にキエフ州の立ち入り禁止区域内にある「国家専門企業チェルノブイリ発電所」を制圧した。同サイトでは、稼働していた4基の軽水冷却黒鉛減速炉(RBMK)が2000年までにすべて閉鎖され、現在、使用済燃料を含む放射性廃棄物の処理、設備の廃止措置、環境モニタリング作業などが行われている。グロッシー事務局長はこの件についても26日、SNRIUから伝えられた情報として「チェルノブイリでは通常通りの業務が続けられているが、24日以降スタッフが交代していない」と指摘。「立ち入り禁止区域内の施設で業務が影響を受けたり、途絶するような事態は何としても回避しなければならない」と述べ、安全性が損なわれるような活動を控えスタッフには休息を取らせるなど、すべての施設を効率的に管理することを呼びかけた。同サイトではまた、放射線量が25日に一時的に最大で毎時9.46マイクロ・シーベルトまで上昇した。グロッシー事務局長はSNRIU情報として「ロシア軍の重車両が上層の汚染土壌を巻き上げたためと思われるが、これは立ち入り禁止区域で設定された許容範囲内の低い線量だ」と説明、周辺の一般公衆に害が及んではいないと強調している。ウクライナの原子力発電ウクライナでは現在、フメルニツキ、ロブノ、南ウクライナ、ザポロジェの4サイトで合計15基、約1,382万kWのロシア型PWR(VVER)が稼働可能であり、これらの発電量でウクライナの総発電量の約半分を賄っている。ウクライナ内閣は2017年8月、2035年までのエネルギー戦略「安全性とエネルギー効率および競争力」を承認。この中で原子力は、2035年まで総発電量の50%を供給していくことが規定されたほか、再生可能エネルギーで25%、水力で13%、残りが化石燃料火力という構成になった。1986年のチェルノブイリ事故直後、同国は最高会議の決定により新規原子力発電所の建設を中断したものの、電力不足と国民感情の回復を受けて1993年に建設モラトリアムを撤回している。2014年に親ロシア派のV.ヤヌコビッチ政権が崩壊して以降は、クリミアの帰属問題や天然ガス紛争等により、ロシアとの関係は悪化。ロシアからのエネルギー輸入依存から脱却するため、ウクライナは国内15基のVVERで使用する原子燃料についても調達先の多様化を推進中。米ウェスチングハウス(WH)社やカナダのカメコ社など、ロシア企業以外からの調達を進めている。ウクライナではまた、VVER設計による建設工事が停止中のフメルニツキ3、4号機(K3/K4)を完成させるため、閣僚会議が2010年にロシア政府と協力協定を結んでいたが、ウクライナ議会は2015年9月、同協定を無効とする法案を234対0、棄権73で承認した2021年8月になると、原子力発電公社のエネルゴアトム社が国内でWH社製AP1000を複数建設していくことになり、同社と独占契約を締結。建設進捗率が28%で停止したK4にAP1000を採用すると見られており、75%まで完成していたK3についても2021年11月にWH社のエンジニア・チームが建設サイトを視察、完成に向けた可能性を模索するとしている。ウクライナではこのほか、米ニュースケール・パワー社製小型モジュール炉(SMR)の導入に向けて、国内規制体制等の検討調査が行われる予定となっている。(参照資料:IAEA、SNRIU、エネルゴアトム社(ウクライナ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Mar 2022
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ロシア国営の原子力総合企業、ロスアトム社のエンジニアリング部門であるアトムストロイエクスポルト(ASE)社は2月25日、中国・江蘇省の田湾原子力発電所でロシア型PWR(VVER)設計を採用した8号機の建設工事を本格的に開始したと発表した。2021年5月に同型の7号機を着工したのに続くもので、8号機の原子力系統部分にはこの日、最初のコンクリートが打設された。両炉はともに第3世代+(プラス)の最新120万kW級VVER(VVER-1200)となる予定で、ロシア側は今後、原子力系統の設計や主要機器の製造・納入を実施。両炉は2026年~2027年にかけて完成する見通しである。原子炉建設における中国とロシアの協力は10年以上に及んでおり、田湾発電所では100万kW級VVER(VVER-1000)を採用した1、2号機が2007年からすでに稼働中。Ⅱ期工事として建設した3、4号機(各120万kWのVVER)も、2018年に営業運転を開始した。III期工事の5、6号機については、中国核工業集団公司(CNNC)はフランスのPWR技術をベースに独自開発した第3世代の100万kW級PWRを採用。両炉はそれぞれ、2020年9月と2021年6月に営業運転を開始している。CNNCとロスアトム社は2018年6月、田湾IV期工事となる7、8号機、および遼寧省の新規サイトとなる徐大堡原子力発電所の2基について、VVER-1200を建設するための枠組み契約を締結した。2019年3月には、田湾7、8号機の建設で一括請負契約を交わしており、同年7月からは両炉の原子炉容器に使用する鍛造品など、長納期品の製造が開まっている。ASE・EC 社を構成する建設・輸出担当のアトムストロイエクスポルト(ASE)社は、「VVER-1200を採用した新しい4基の契約を実行しつつあり、今後数年以内にこれらを中国の送電網に接続できる」と表明。機器類の設計・製造作業は、今や途切れることなく本格的に進展中だと強調した。ASE・EC社の一部である設計企業のアトムエネルゴプロエクト社も、建設工事の一環として設計監督グループを田湾原子力発電所に常駐させたと発表。CNNCや中国の下請け企業が実施する作業で正確性を期すため、文書管理を行うとしている。(参照資料: ASE・EC社(ロシア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Feb 2022
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©Dairyland power cooperative米オレゴン州のニュースケール・パワー社とウィスコンシン州のデーリィランド電力協同組合は2月24日、ニュースケール・パワー社製小型モジュール炉(SMR)を同協同組合の供給地域内で建設する可能性を探るため、了解覚書を締結したと発表した。同協同組合は発電と配電専門の協同組合で、1967年から1987年まで地元ラクロスで、連邦政府の実証プロジェクト用にラクロス原子力発電所(BWR、5.5万kW)を所有・運転していた。同協同組合は現在、中西部のウィスコンシン州、ミネソタ州、アイオワ州、およびイリノイ州で24の配電協同組合と地方自治体の電力会社17社に電気を卸販売しており、これら4州における供給対象者数は50万人以上にのぼる。今回、同協同組合とニュースケール社は、先進的原子力技術がクリーンエネルギー社会への移行で重要な役割を担うとの認識の下、ニュースケール社製SMRの信頼性の高い無炭素な電力を、同協同組合が合理的な価格で販売していけるか共同で評価することになった。ニュースケール社が開発した「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」はPWRタイプの一体型SMRで、電気出力が5万kW~7.7万kWのモジュールを最大12基連結することで出力の調整が可能。米国の原子力規制委員会(NRC)は2020年9月、モジュール1基の出力が5万kWの「NPM」に対し、SMRとしては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給。出力7.7万kW版のモジュールについても、ニュースケール社はSDAを2022年の第4四半期に申請するとしている。ニュースケール社の今回の発表によると、1モジュールの出力が7.7万kWのNPMを4基~12基備えた「VOYGR」発電所を同協同組合の電源構成に加えた場合、負荷追従運転を行うことにより太陽光や風力など間欠性のある電源を補うことができる。「VOYGR」発電所はまた、既存の石炭火力発電所の閉鎖に伴う跡地の再利用が期待できるため、エネルギー産業界における重要な雇用の維持や、「VOYGR」の受け入れコミュニティが目指すエネルギー供給システムの脱炭素化等に支援を提供することなる。同協同組合のB.リッジ理事長兼CEOは、「ニュースケール社製のSMRも含め、当協同組合は無炭素な電力の供給が可能な複数の技術を精査中だ」と説明。今回の覚書を通じて、信頼性やコスト面の効果が高く、安全な低炭素電力を同協同組合の所属メンバーに長期的に提供していけるか、見極めたいとしている。米国内では、ユタ州公営共同事業体(UAMPS)がNPM初号機をアイダホ国立研究所(INL)内で建設する計画を進めており、2021年1月にニュースケール社に対し建設・運転一括認可(COL)の申請準備を依頼した。UAMPSの計画では2023年の第2四半期までにNRCにCOLを申請し、2025年の後半までにこれを取得。2029年までに最初のモジュールの運転開始を目指す。また、ワシントン州グラント郡の公営電気事業者「グラントPUD」は今年5月、ニュースケール社製SMRの性能を評価するため、同社と協力覚書を交わしている。米国外では、カナダやチェコ、ウクライナ、カザフスタン、ルーマニア、ブルガリアなどの企業が国内でのNPM建設を検討しており、それぞれが実行可能性調査等の実施でニュースケール社と了解覚書を締結。ポーランドでは、鉱業大手のKGHMポーランド銅採掘会社が今月14日、「VOYGR」発電所をポーランド国内で建設するため、ニュースケール社と先行作業契約を締結している。(参照資料:ニュースケール社、デーリィランド電力協同組合の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Feb 2022
2662
中国核工業集団公司(CNNC)は2月23日、中国が知的財産権を保有する第3世代の100万kW級PWR設計「華龍一号」を採用した世界で4基目の原子炉が、パキスタンのカラチ原子力発電所3号機(K-3)(PWR、110万kW)として21日に臨界条件を達成したと発表した。カラチ原子力発電所では2、3号機に「華龍一号」設計を採用しており、両炉は海外における同設計の実証炉プロジェクトと位置付けられている。それぞれ2015年8月と2016年5月に本格着工した後、2号機(K-2)は2021年5月に中国国外初の「華龍一号」として営業運転を開始、3号機も昨年秋に温態機能試験を完了していた。中国国内では、福清原子力発電所5、6号機(各115万kW)がCNNC版「華龍一号」の実証炉プロジェクトという位置づけになっており、5号機はすでに2021年1月、世界初の「華龍一号」実証炉として営業運転を開始、6号機も今年1月に国内送電網に接続されている。「華龍一号」はCNNCと中国広核集団有限公司(CGN)双方の第3世代炉設計を一本化して開発したもので、CGN版「華龍一号」の実証炉も2015年以降、防城港3、4号機として広西省で建設中。これらに続く「華龍一号」も、双方がすでに4基ずつ建設中となっている。革新的な技術を数多く炉心設計に採用しており、安全系には静的と動的2つのシステムを組み合わせている。また、運転サイクル期間は18か月で、設計耐用期間は60年間となっている。カラチ3号機が初めて臨界条件を達成したことについて、CNNCは「今後の送電網への接続と運転開始に向けて盤石な基礎が築かれた」と評価した。2、3号機の建設プロジェクトは、中国とパキスタン両国の包括的で戦略的な協力関係を深めるだけでなく、共通の未来を分かち合うコミュニティの構築と中国が推進する広域経済圏構想「一帯一路」を一層推し進めるものだと指摘。同構想に参加する国々で原子力およびその他のエネルギー源の活用を促し、国民生活の質や環境を向上させていきたいと述べた。CNNCによると、「華龍一号」1基で約90億kWhの発電が可能であり、年間で約400万世帯の電力需要を満たすことができる。また、標準炭換算では年間で312万トンの燃焼が抑えられ、CO2排出量を年間816万トン削減することにつながる。パキスタンにおいてはエネルギー供給構造の大幅な改善で重要な役割を担うとしており、今や世界的目標の一つでもあるCO2排出量の削減と、同排出量の実質ゼロ化を実現する一助にもなると指摘している。パキスタンでは慢性的な電力不足に悩んでいるため、同国政府は2050年までに約4,000万kWの原子力発電設備開発を目標に掲げている。しかし、同国初の商業炉として1970年代にカナダから加圧重水炉のカラチ1号機(13.7万kW)を導入したが、核不拡散条約(NPT)に未加盟な同国に欧米諸国からの支援は得られていない。同炉は50年間稼働した後、昨年8月に永久閉鎖されたが、2基目以降の建設については中国が技術と資金の両面で20年以上にわたって協力中。チャシュマ原子力発電所ではすでに、中国が供給した30万kW級PWRが4基稼働しているほか、「華龍一号」としてはカラチ2、3号機に加えて、チャシュマ5号機を建設する計画もある。(参照資料:CNNCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Feb 2022
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©BEIS英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は2 月16日、「先進的モジュール式原子炉(AMR)の研究開発・実証プログラム」の下で2030年代初頭までに高温ガス炉(HTGR)の実証炉を建設するため、原子力産業界と事前の情報交換を行うと発表した。建設計画の「フェーズA」として、BEISは今年の春にも正式な入札招請(ITT)を開始するとしており、それに先駆けて関係情報を収集するのが主な目的。同プログラムの詳細と建設計画の指標となる概略的なスケジュールを提示した上で、資機材と燃料のサプライチェーン、機器製造や建設工事の関係企業、高温熱のエンドユーザーなど、HTGR開発に関心を持つ潜在的なサプライヤーから3月4日までの期間に要望や意見を聞き、実際の調達活動に備える方針である。BEISは2021年7月、「AMRの研究開発・実証プログラム」における初号機として、1億7,000万ポンド(約265億円)の予算でHTGRを建設する計画を発表。この提案は、CO2排出量の実質ゼロ化に向けた重要施策としてB.ジョンソン首相が2020年11月に公表した「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」、および翌12月に英国政府が発表した「エネルギー白書」で約束した施策である。これらは、2050年までに英国がCO2排出量の実質ゼロ化を目指すにあたり、政府がHTGRを最も好ましい技術と認識していることを示したもので、2021年12月にBEISは、2030年代初頭の実証を目指して建設するAMR技術のひとつとして、HTGRを正式に選択したことを明らかにした。今回の発表でも、BEISは同プログラムの目的について、「低炭素な水素製造や様々な産業界で利用する高温熱の生産、コスト面の競争力がある発電等でHTGRの高温熱が役に立つと実証することだ」と説明している。同プログラムの概略スケジュールによると、「フェーズA」の段階では今年の春以降、最大250万ポンド(約3億9,000万円)をかけて、6~9か月間にわたり基本設計(FEED)関係の予備調査5件を実施する。入札招聘も実施してBEISはHTGR実証炉の概念をまとめるほか、研究開発上の課題や技術課題を特定して、その実行可能性を探る。また、2030年代初頭の完成を念頭に置いた開発ロードマップも作成する。これ以降の段階に進むには政府の承認取得が条件になるが、BEISは2023年初頭から「フェーズB」として、詳細設計の基礎となるFEED調査を実施する。ここでは、「フェーズA」で選定された複数の提案者がHTGRの概念設計を詳細に評価し、投資総額やライフサイクル・コストを正確に見積もる予定。BEISは「フェーズA」で選定されなかった提案者も含めて、提案者の最終的な絞り込みを行うとしている。最後の段階となる「フェーズC」への移行は2025年の半ばに予定されており、「フェーズB」で選定された提案者が建設サイトに最適の詳細設計作業を実施する。サイト許可や建設許可なども取得する方針で、これらの許認可活動が順調に進めば、計画通りにHTGR実証炉の起動と運転が実現する。(参照資料:英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Feb 2022
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米エネルギー省(DOE)はこのほど、国内で既存の原子力発電所の運転継続を支援していくため、実施予定の「民生用原子力発電クレジット(CNC)プログラム」について、DOEの意向を通知する文書(NOI)と関連情報の提供依頼文書(RFI)を関係者に向けて発出した。米国では現在、CO2を排出しないクリーン電力の発電量で原子力が最大シェアの52%を占めている。このため、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指すバイデン政権は、昨年11月に成立した「超党派のインフラ投資・雇用法」の中で、CNCプログラムの実施に60億ドルの予算を充当すると約束。同プログラムを通じて、DOEは全米に立地する原子力発電所が早期閉鎖に追い込まれるのを防ぐ方針であり、CO2の排出量を抑えつつ数千名分の関係雇用を維持していくとしている。NOIでは具体的に、原子力発電所のオーナーや運転企業、州政府や地元自治体の規制当局、同プログラムから影響を受けるコミュニティ、環境保護団体等に対し、DOEの計画を周知するとともに同計画への申請を促していく。また、RFIでは、CNCプログラムの仕組み、特に同プログラムの適用を受けるための認証プロセスや適格性の判断基準、クレジットの獲得に向けた入札の実施、クレジットの割り当て方法等について、3月初旬から中旬にかけて、意見や関連情報を募集する計画である。DOEの発表によると、バイデン政権は現在国内で稼働する93基の商業炉について、「CO2排出量の実質ゼロ化を達成する上で極めて重要なエネルギー供給源である」と認識。電力市場の自由化やその他の経済的ファクターにより、2013年以降すでに12基の商業炉が早期閉鎖されたが、これらが電力供給していた地域ではCO2の排出量が増加し大気の質が低下、高サラリーの雇用も数千人規模で失われた。DOEのCNCプログラムでは、原子力発電所のオーナーや運転企業がその運転の継続に向けてプログラムの適用申請を行うことになるが、これに際して申請者は、その商業炉が経済的理由により閉鎖の危機に瀕していること、その閉鎖が大気汚染物質の増加に繋がることなどを証明しなくてはならない。一方でDOE側も、その商業炉が安全に運転継続できることを原子力規制委員会(NRC)が保証しているか見極める必要がある。DOEはまた、「有資格」と認定した商業炉に対して認定日から4年にわたり、一定の発電量に対して一定の行使価格を設定した「クレジット」を付与。クレジットの総数に基づいて支援金が支払われると見られており、DOEとしてはプログラム資金に残金がある限り、2031年9月末までクレジットを付与していく考えである。DOEのJ.グランホルム長官は国内の原子力発電所について、「バイデン政権が掲げる地球温暖化の防止目標達成に絶対不可欠の重要電源であり、DOEは100%クリーンな電力の供給維持で原子力発電所の早期閉鎖を阻止していく」と表明。これは超党派のインフラ投資法によって可能であると述べており、「我々は既存のクリーン・エネルギー・インフラを活用してエネルギーの供給保証を強化、関係雇用を守るだけでなく次世代エネルギー技術の開発も促進できる」と強調している。(参照資料:米エネ省の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
21 Feb 2022
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米国のエネルギー総合ソリューション企業であるホルテック・インターナショナル社は2月16日、同社のインド子会社であるホルテック・アジア社が、インド原子力発電公社(NPCIL)から使用済燃料の輸送用キャスク2台を受注したと発表した。同国南端のタミルナドゥ州に立地するクダンクラム原子力発電所では、現在ロシア型PWR(VVER)設計の1、2号機(各100万kW)が稼働中。キャスクはこれらから出る使用済燃料をサイト外貯蔵するために使用される。同社が納入する「HI-STAR 149」は、すでに世界中の原子力発電所で利用されている「HI-STAR」シリーズの一つである。使用済燃料から出る放射線を遮り熱を放散する能力、核分裂反応を制御する能力など、放射能を閉じ込める容器としては、最も頑健で優れていると同社は強調。このような性能は、同社がナノテクノロジーを用いて開発した構造材料「Metamic HT」を、キャスクの燃料バスケットに採用して実現したもので、VVERのみならず、欧米で開発された原子炉の使用済燃料にも対応できるとしている。VVERの使用済燃料用輸送・貯蔵キャスクについては、ホルテック社はウクライナで稼働するVVER向けに、少し大型の「HI-STAR 190」を2台納入済みである。さらに追加の1台を同国に向けて出荷する準備を進めているところで、これらのキャスクの設計や安全性については、米ニュージャージー州にある同社の技術センターがウクライナにある同社の事業センター、ホルテック・アジア社と協力して分析調査を実施した。ホルテック・アジア社はインド国内ですでに2つの事業拠点を置いており、一つはマハラシュトラ州プネにあるエンジニアリング事務所で、もう一つはグジャラート州ダヘジにある空冷復水器等の機器製造工場。今回の契約を獲得したプネのエンジニアリング事務所では、設計エンジニアリングや分析調査、サイト関係サービス等、広範囲のエンジニアリング・サービスを行っている。キャスクの受注についてホルテック・アジア社のJ.チャタジー社長は、「当社が輸送・貯蔵用キャスクで蓄積してきたノウハウを、米国法令の範囲内でインドの製造業者と共有していく道が開けた」と評価。インドでは近年、N.モディ首相が同国を世界の製造業の中心地とするスローガンを掲げているが、同社長は「当社としてはこれに協調していく考えであり、社会的な責任に関する米国親会社の価値観を反映し、インドの事業拠点として拡大しつつある公共サービスの目標達成に強力に貢献していきたい」と述べた。インドの原子力発電所は現時点で、出力の小さい国産加圧重水炉(PHWR)が中心であり、100万kW級の大型軽水炉としては、ロシアがクダンクラム原子力発電所に供給した1、2号機のみが稼働中。同発電所ではその後、2017年に3、4号機が着工したほか、2021年には5、6号機も着工している。一方、米国は2008年にインドと原子力協力協定を締結。原子力供給国グループ(NSG)も米国の主張を受け入れて、核実験を実施したインドへの原子力機器禁輸を解除したが、事故時のベンダー責任など様々な理由により、欧米諸国が提案した軽水炉の新設計画は進展していない。(参照資料:ホルテック社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Feb 2022
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スウェーデン政府のエネルギー庁は2月15日、「スウェーデン・モジュール原子炉会社(Swedish Modular Reactors AB)」が進めている鉛冷却小型モジュール炉(SMR)「SEALER」の開発を支援するため、オスカーシャムにおける「SEALER」プロトタイプ装置の設計・建設費用として9,900万クローナ(約12億3,000万円)を助成すると発表した。鉛冷却SMRは経済的な上、CO2を排出しないベースロード電源になると期待されている第4世代の原子炉技術で、水素を高効率で製造することも可能である。スウェーデン・モジュール原子炉会社の計画では、2024年までに1/56スケールの電気加熱式プロトタイプ装置の運転を開始した後、同国の王立工科大学(KTH)が主導する学術プロジェクトとも協力し2030年までに同じオスカーシャムで実証炉を建設。2030年代には次の段階の原子炉を建設して、同技術の商業化を目指すとしている。「SEALER」の概念はスウェーデンのレドコールド(LeadCold Reactors)社が開発したもので、同社は国内で鉛冷却原子炉の研究開発を中心的に行っているKTHのスピンオフ企業として、2013年に創設されている。レドコールド社は2021年、オスカーシャム原子力発電所の大株主であるドイツのUniper社と合弁で、スウェーデン・モジュール原子炉会社を設立。同社はオスカーシャム発電所の敷地内で、KTHと共同で「SEALER」のプロトタイプ装置を設計・建設していくことになった。エネルギー庁は1980年代にスウェーデン産業省内に設置された機関で、新エネルギーなど、革新的なエネルギー技術の研究開発の促進で、助成金を大学等の研究機関や産業界のために提供している。今回の発表によると、同庁は、持続可能な社会の実現に向けた様々な動きが、この2年間ほどで生活の多くの局面で電化という形で具体化していることに注目してきたが、化石燃料を使わずに生産する「無炭素電力」への投資意欲は今や大きく高まっている。無炭素な電力はスウェーデンがクリーンエネルギー社会に移行する上で必要というだけでなく、地球温暖化の対応策を輸出する機会にもつながるとした。鉛冷却原子炉については、同庁はスウェーデンが化石燃料と無縁な社会へ移行するのにともない「電化の促進」に寄与すると評価。電力需要が発電量を上回った時に備えて、効率的に製造した水素を蓄えておくことも可能だと指摘している。これらのことから、「スウェーデンの電力システムに一層の柔軟性と安定性をもたらす技術だ」と強調している。(参照資料:スウェーデン・エネルギー庁(スウェーデン語)、スウェーデン王立工科大学(スウェーデン語)、レドコールド社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Feb 2022
3449
米国のニュースケール・パワー社とポーランド鉱業大手のKGHMポーランド銅採掘(KGHM)会社は2月14日、ニュースケール社製の先進的小型モジュール炉(SMR)「NPM」を複数設置する発電所「VOYGR」をポーランド国内で建設するため、先行作業契約を締結したと発表した。早ければ2029年にもVOYGRを完成させる計画で、これに向けた最初のタスクとして、両社はSMRの建設候補点をポーランド国内で評価・特定するほか、完成に至るまでの節目を設定した計画を立案、費用の見積も実施する。また、KGHM社はVOYGRの発電所を通じて、ポーランドのその他のエネルギー多消費産業に無炭素で安全なエネルギーを提供する機会を探るとしている。両社はこの計画により、ポーランドでは最大で年間800万トンのCO2排出を抑制できると指摘。また、同国初のSMRを建設することで、KGHM社はポーランドのクリーンエネルギーへの移行を主導するリーダーとなり、これはCO2の排出量削減とエネルギーの自給を目指すという同社戦略の一環でもあると強調している。ニュースケール社が開発した「NPM」はPWRタイプの一体型SMRで、電気出力が5万kW~7.7万kWのモジュールを最大12基連結することで出力の調整が可能。米国の原子力規制委員会(NRC)は2020年9月、モジュール1基の出力が5万kWの「NPM」に対し、SMRとしては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給。ニュースケール社は出力7.7万kW版のモジュールについても、SDAを2022年第4四半期に申請するとしている。「VOYGR」では出力7.7万kWのモジュールを設置すると想定されており、ニュースケール社は搭載基数毎に合計出力92.4万kWの「VOYGR-12」、46.2万kWの「VOYGR-6」、30.8万kWの「VOYGR-4」と呼称。KGHM社は差し当たり、4基のモジュールを連結して活用すると見られている。両社による今回の契約締結は、2021年9月に両社およびポーランドのコンサルティング企業の3者が締結した協力覚書に基づくもの。KGHM社はポーランド南西部にある欧州最大規模の銅鉱床や、銀などその他鉱物の鉱床で採掘事業を行っているが、この事業に必要な電力と熱エネルギーは石炭火力から得ている。3者は協力覚書の下で、SMR導入の可能性や高経年化した石炭火力発電所の別用途への活用などを検証。SMRの建設に関しては、技術面や経済面、法制面、許認可手続に関する側面などを詳細に分析していた。契約の調印は米国のワシントンD.Cで行われ、ポーランドのJ.サシン副首相兼国有財産相や米エネルギー省(DOE)のA.グリフィス原子燃料サイクル・サプライチェーン担当次官補代理らが同席した。KGHM社のM.チャドジンスキー社長は、「事業を100%脱炭素化するプロジェクトが始動することは当社の誇りだ。SMRを通じて当社はコストの効率化を図り、ポーランドのエネルギー部門をクリーンエネルギーに移行させていく」と述べた。ニュースケール社のJ.ホプキンズCEOは、「CO2排出量の削減競争で世界中の企業がしのぎを削るなか、当社の技術はこの目標の達成に完璧な解決策を提供できるし、同時に建設国には経済的繁栄をもたらすことが可能だ」と強調。KGHM社とともに先進的なクリーンエネルギー源の商業化を促進し、地球温暖化に立ち向かいたいとの抱負を述べた。(参照資料:ニュースケール社、KGHM社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Feb 2022
2603
米国のテネシー峡谷開発公社(TVA)は2月10日、テネシー州のクリンチリバー・サイトやその他のサイトで軽水炉型の小型モジュール炉(SMR)を建設することを念頭に、「新たな原子力プログラム(New Nuclear Program)」を作成したと発表した。これは脱炭素化の達成に向けて、同社が革新的技術を用いた先進的原子炉の建設を牽引していくには、採用設計や建設サイトの特定等で計画的かつシステマチックなアプローチが必要と判断したため。先進的原子炉技術の建設オプションの検証に2億ドルを投じるという同プログラムは、TVAの理事会が同日承認済みとなっている。TVAは2019年12月、クリンチリバー・サイトに関する「事前サイト許可(ESP)」を原子力規制委員会(NRC)から取得したが、その際、採用予定の炉型を特定しておらず、「2基以上のSMRで合計出力が80万kWを超えないもの」としていた。CO2排出量の実質ゼロ化を目指していくのに当たり、同社は先進的原子炉が有効な手段の一つになると認識。このことは同社の「戦略的意図と基本的理念」にも明記されている。現在、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の「BWRX-300」を始めとする様々なSMR設計について、潜在的な環境影響等を評価中である。 発表によると、今回の「新たな原子力プログラム」は、提案されている複数のSMRの中からTVAが特定の設計を選定し、このような設備を将来必要とする地域の中から立地点を特定する際、整合性のとれた「ロードマップ」として機能する。候補地点での建設が実行不能になった場合や、その地点に最善の利益をもたらさないと判断された場合など、TVAが計画から手を引く際の条件も「決定ポイント」として盛り込まれている。同プログラムはまた、TVAが先進的原子炉技術の推進でその他の電力会社や政府機関、研究組織と協力していくための調整機能も担う。これらの組織との協力により、TVAは開発にともなう財政面や技術面のリスクを軽減する方針。同プログラムはさらに、軽水炉型SMRの建設許可申請に向けた準備作業の中で、環境影響評価等の作業を監督することになる。TVAによると、同プログラムにおける最初のタスクは、軽水炉型SMRをクリンチリバーで建設するための許可申請書の作成。TVAのJ.ライアシュ総裁兼CEOは、「建設実施の最終判断をTVA理事会はまだ下していないが、GEH社やその他の企業との協力で得られた知見を、近い将来に公表予定の環境影響声明書の案文を併せて同理事会にかける計画だ」と述べた。同CEOはまた、「数あるSMR設計の中でも、軽水炉型SMRはTVAが運転している従来の大型原子炉と非常に似通っており、今後10年以内の商業建設が可能なレベルまで成熟している」と指摘。このような理由から、「BWRX-300」の建設に関する協議を開発企業のGEH社と実施中だと説明している。(参照資料:TVAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Feb 2022
3515
今年4月に大統領選挙を控えたフランスのE.マクロン大統領は2月10日、同国のCO2排出量を2050年までに実質ゼロ化するという目標の達成に向け、国内で改良型の欧州加圧水型炉(EPR2)を新たに6基建設するほか、さらに8基の建設に向けて調査を開始すると発表した。同大統領は建設サイトの確定など、このための準備作業を今後数週間以内に開始する方針で、今年の後半から国内でエネルギー関係の公開協議を幅広く実施。2023年には議会で複数年のエネルギー関係プログラムを改訂するための審議を行い、2028年までに最初の一基を着工、2035年までの完成を目指すとしている。また、電気事業者のフランス電力(EDF)が原子力・代替エネルギー庁(CEA)らと共同開発しているPWRタイプの小型モジュール炉(SMR)「NUWARD」に関しても、2030年までにプロトタイプを建設できるよう10億ユーロ(約1,300億円)の予算を付けてプログラムを進めていく考えである。エネルギー戦略に関するマクロン大統領の発表は、フランス東部ベルフォールにあるGEスチーム・パワー社で行われた。同大統領によると、新しいエネルギー政策の主な目的はフランス国内のエネルギー消費量を今後30年以内に40%削減しつつ、無炭素なエネルギー源の設備容量を拡大することにある。この政策を通じて、30年以内に化石燃料からの脱却を果たす最初の主要国になるとともに、産業界におけるエネルギーの自給を強化する。フランスはこのようにして、エネルギー関係の制御力を取り戻していくとした。また、発電電力量は現在より最大60%増産しなければならないが、大統領はこれらの大半を安全な発電方法による無炭素な電力とするため、再生可能エネルギーと原子力の両方を活用するとした。大統領によると、国内には「太陽光と風力のみで可能だ」という人もいれば、「100%原子力にし、再エネは不要」という人もいるが、現実的にフランスではこれら2つの電源に賭ける以外に方法はない。同大統領は、再エネと原子力の複数の発電割合による戦略こそ、エコロジー面で最も現実問題に直結した方法であり、経済面でもコストが最小になるなど、最も目的に適っていると指摘した。原子力に関しては、マクロン大統領は「今こそフランスの原子力ルネッサンスというべき時が来た」と述べており、そのための重要政策の1つとして「安全性を損なうことなく、すべての既存原子炉の運転期間を延長する」と言明した。「今後、国内の電力需要が大幅に伸びることを考えると、私としては安全性に問題がないのであれば、将来的に1基の原子炉も閉鎖したくない」と表明。2017年以降、いくつかの原子炉ですでに運転期間が40年以上に延長されたが、今後は50年を超える運転期間の延長についてもEDFに状況調査を依頼するとしている。もう1つ重要政策は、「昨年11月に発表した方針を再確認したものであり、(運転期間の延長ができないレベルに高経年化した既存炉の閉鎖や、電力需要の増加見通しを背景に)新しい原子炉の建設を再開する」と表明。大統領によれば、フランスの原子力産業界はフィンランドのオルキルオト原子力発電所3号機、および国内のフラマンビル原子力発電所3号機(FL3)で長期化している2基のEPR建設で多くの教訓を学んだ。EDFと国内の原子力部門は100万時間を超えるエンジニアリング作業を通じて、これらの教訓をEPR2に反映させており、その設計はFL3以降大幅に進歩。これらのことから、マクロン大統領は今後、国内の3サイトで2基ずつEPR2を建設するのに加えて、さらに8基の建設を検討するとしている。このほか同大統領は、昨年10月に発表した新たな産業政策「フランス2030」の中で、SMRや先進的原子炉の技術を実証すると発表したことに言及。新規のEPRとは別に、革新的技術を採用したこのような原子炉を建設し、安全性の向上や放射性廃棄物の発生量削減、核燃料サイクルの確立等を目指すとした。これらの新設計画により、フランスでは2050年までに、新たに2,500万kWの原子力発電設備が起動することになる一方、このような決定を実行に移すには、規制面や財政面、組織面など原子力部門の様々な状況を改善する必要があると指摘している。(参照資料:仏大統領府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Feb 2022
3958
米エネルギー省(DOE)の原子力局(NE)は2月7日、傘下のアイダホ国立研究所(INL)内の燃料・材料研究施設群で、「MARVELマイクロ原子炉」の実物大プロトタイプが完成したと発表した。このプロトタイプは「一次冷却材試験装置(PCAT)」と呼称されており、核分裂反応ではなく電気加熱で発熱を模擬する。DOEは今後、PCATを使ってMARVELマイクロ原子炉の最終的な設計の性能を確認し、2024年までに同炉をINL内の小規模電力網に接続する計画である。MARVELの正式名称は、「Microreactor Applications Research Validation and EvaLuation(マイクロ原子炉の適用に関する研究検証と評価)」。DOEは2021年4月、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指す米国の地球温暖化防止取り組みの一つとして、電気出力100kWのマイクロ原子炉を建設するという「MARVELプロジェクト」を発表した。その際、「今後3年以内にINLの過渡事象試験(TREAT)施設内でマイクロ原子炉の運転を開始する」と表明していた。MARVELマイクロ原子炉では冷却材としてナトリウムとカリウムを使用、エネルギーを100kWの電力に変換するには、既存技術のスターリング・エンジン(*)を活用する。完成すれば、同炉ではマイクロ原子炉専用の規制承認プロセスの策定や、リモート操作によるモニタリング・システムの評価、自動制御技術の開発など、マイクロ原子炉の様々な適用に向けた試験が行われる。DOEはまた、水の浄化や地域暖房用の熱生産、地球温暖化の防止に資する気候制御など、幅広い用途にマイクロ原子炉を活用できないか可能性を模索する。MARVELマイクロ原子炉をINLの電力網に接続した後、DOEは同炉を直ちに外部研究者の共用施設にする方針だとしている。発表によると、PCATの組み立て作業は9か月で完了。その高さは3.6m、重さは900kg以上になるなど、INL内で組み立てられた機器類の中では最大級の大きさとなった。PCATを使った試験について、同プロジェクトのY.アラファト技術リーダーは、「MARVELマイクロ原子炉の設計を規制当局が確認する際はモデリング・ツールを利用することになるが、熱流動などすべての側面をモデル化するわけにもいかない」と説明。このため、同炉が最終的に高度な信頼性を備えた設計になるよう、MARVELチームはPCATを使ってシミュレーションの結果を確認する。その後は、モデリングやシミュレーションのツールを使って同炉の安全性等を保証するとしている。【注*】:19世紀初頭に開発された外燃機関の一種。シリンダー内に水素等の気体を封入し、外部から加熱・冷却を繰り返してピストンを作動させるエンジン。(参照資料:米エネ省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
10 Feb 2022
3248
米国で第4世代の小型高温ガス炉「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」を開発しているウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)、およびアラスカ州の電力共同組合「コッパー・バレー電気協会(CVEA)」は2月8日、同州内でのMMR建設に向け、両者が予備的実行可能性調査(FS)で協力中であると発表した。このFSでは、CVEAの本拠地であるアラスカ州南東部のグレンナレンで、電気出力1万kWのMMRを中心とする先進的エネルギー・システムを構築する技術的な可能性を探るとともに、立地に適した地点や社会的受容性、建設コスト等の経済性についても調査。今年の夏までに完了させる計画で、両者は「結果が良好であれば、MMRはアラスカ州で建設される最初の民生用マイクロ原子炉になる」としている。CVEAは州内における共同運営の電気事業者で、現在グレナレン周辺の東西約160km、南北約260kmの区域に電力と熱を供給中。ディーゼル発電所や水力発電所など合計約4万kWの発電設備を保有・運転しているが、燃料は高額で価格が変動し易い液体化石燃料に依存している。CVEAの理事会が昨年承認した戦略計画では、このような燃料への依存を軽減し、一層クリーンで経済的な電力供給に転換することが目標に掲げられた。USNCのMMRは熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWで、シリコン・カーバイドで層状に被覆されたウラン粒子を燃料に用いる小型モジュール式HTGR。20年の運転期間中に燃料を交換する必要がなく、いかなる事故シナリオにおいても、物理的な対応なしですべての熱が受動的に環境中に放出されるという。カナダのエネルギー・プロジェクト企業のグローバル・ファースト・パワー(GFP)社はすでに2019年3月、パートナー企業であるUSNC社のMMRをオンタリオ州チョークリバー・サイトで建設するため、SMRとしては初の「サイト準備許可(LTPS)」をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請した。また、米国のイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)は2021年6月、USNC社製MMRを将来学内で建設するため、原子力規制委員会(NRC)に「意向表明書(LOI)」を提出している。CVEAのT.ミリオンCEOは今回のFSについて、「当協会の電源ミックスの脱炭素化や効率性の向上等で、MMR技術が採用可能か最優先に調査している。また、MMRを通じて発電コストの上昇を抑え、水力発電が使えない冬季にディーゼル発電への依存が高まる点なども是正していく」と説明。同CEOの認識では、従来の大型原子力発電所と比べてMMRはほとんど水を使わず、放射性廃棄物の発生量も少ない。放射性生成物が漏れ出たり、メルトダウンが発生しないよう特別な設計になっている。同CEOはまた、「今後はUSNCとともに地元コミュニティとの交流を図り、MMR建設プロジェクトの全段階を通じてコミュニティの利益が確保されるよう、彼らの意見を聞き支援を得たい」と表明。FSが完了するまでの期間、地元住民を中心とするこのような協議によって、同プロジェクトに対するCVEAメンバーや州民の理解を一層深める方針である。なお、今回の発表に先立つ2月1日、アラスカ州のM.ダンリービー知事は、州内全域におけるエネルギーの自給やエネルギー・コストの長期的な引き下げ等を促進するため、州内でマイクロ原子炉の建設を促す法案を議会に提出した。この技術を導入することで、同州にはクリーンで安全なエネルギーがもたらされると州知事は強調。CVEAがMMRの建設に向けたFSをすでに実施中であることにも触れており、この計画によって同知事のエネルギー政策が後押しされ、アラスカ州ではマイクロ原子炉の許認可手続の簡素化が進むと指摘している。(参照資料:コッパー・バレー電気協会、アラスカ州知事の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 Feb 2022
3872
英国の原子力規制庁(ONR)は2月7日、中国が知的財産権を保有する「華龍一号」設計の英国版(UK HPR1000)について、実施していた全4段階の包括的設計審査(GDA))が完了し、ONRが「設計承認確認書(DAC)」を、環境庁(EA)が「設計承認声明書(SoDAC)」を関係企業に発給したと発表した。GDAは、英国内で初めて建設される原子炉設計に対して行われる設計認証審査で、DACの発給は対象設計の安全・セキュリティ面、SoDACは環境保護と放射性廃棄物管理の側面で、英国の厳しい基準をクリアしたことを確認。これにより、同設計が英国内で直ちに建設可能になるわけではないが、中国広核集団有限公司(CGN)とEDFエナジー社が、英国エセックス州で共同で進める予定のブラッドウェルB原子力発電所建設(UK-HPR1000×2基)計画は技術的には大きく前進した。EDFエナジー社は現在、サマセット州でヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所(172万kWの「欧州加圧水型炉:EPR」×2基)を建設中だが、同社は2015年10月、英国と中国の両政府が2013年に交わした覚書に基づき、CGNと共同で同計画に投資する内容の戦略的投資協定で合意。CGNはHPC計画の総工費180億ポンドのうち33.5%を投資することを約束したほか、EDFエナジー社がサフォーク州で計画しているサイズウェルC原子力発電所(167万kWのEPR×2基)建設計画にも20%出資する。また、後続のブラッドウェルB計画については「華龍一号」設計を採用し、CGNが建設段階において66.5%を出資、EDFエナジー社をパートナーとしてCGNが同計画を主導することになった。ONRとEAが2017年1月に開始した「UK HPR1000」のGDAに関しても、EDFエナジー社とCGNは合弁で審査活動の管理会社「ジェネラル・ニュークリア・システム(GNS)社」を設立した。同社の株式の66.5%は、CGNが持ち株会社として立ち上げたジェネラル・ニュークリア・インターナショナル(GNI)社が保有。このため、今回のDACとSoDACはCGNとEDFエナジー社、およびGNI社に対して発給されている。 「華龍一号」はCGNと中国核工業集団公司(CNNC)、双方による第3世代の100万kW級PWR設計を一本化して開発されたもので、CGNはブラッドウェルB計画でCGNバージョンの「華龍一号」を採用する。この「華龍一号」は現在、中国・広西省の防城港3、4号機、広東省の太平嶺1、2号機、浙江省の三澳1、2号機として建設中であり、防城港の2基はブラッドウェルB発電所の参照炉に位置付けられている。今回、その英国版にDACを発給したことについて、ONRのM.フォイ主席原子力検査官(CNI)は「ONRの特別検査官が詳細かつ厳密に審査した結果であり、この設計が英国内での建設に適したものであることを示している」と述べた。EAのS.フィナーティ原子力規制担当局長は、「当庁の2025年までの行動計画にも示したように、審査は急を要する地球温暖化への影響を最優先としたもので、エネルギー供給の脱炭素化は英国における主要目標の一つだ」と説明した。原子力については、「CO2排出量の実質ゼロ化に向けて英国政府が進めているエネルギー政策の重要部分を担っている」と指摘。こうした背景から、審査では新たな原子力発電所が英国の厳しい基準を満たすだけでなく、周辺コミュニティや環境も適切に防護されるよう配慮したとしている。(参照資料: ONR、EA、ブラッドウェルB発電会社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Feb 2022
4512
ウクライナで4サイト・15基の民生用原子炉を運転する国営のエネルゴアトム社、およびカナダの原子力産業機構(Organization of Canadian Nuclear Industries =OCNI)は2月2日、ウクライナにおけるカナダ製原子力発電所の建設に向けて、協力覚書を締結した。OCNIはカナダの原子力産業界のサプライヤー240社以上で構成される非営利団体で、カナダ型加圧重水炉(CANDU炉)や軽水炉の機器設備を設計・製造する企業やエンジニアリング・サービス企業などが参加。国内外の原子力市場に、これらの機器やサービスを提供している。今回の覚書を通じてOCNIは、カナダ製の大型原子力発電所や小型モジュール炉(SMR)をウクライナで建設する機会が得られるよう支援していくほか、原子力発電所サイトにおける大規模データセンターの設置、原子力発電所の廃止措置、原子力発電を活用した医療用放射性同位体の生産や水素製造などでもウクライナ側と協力する。両者はまた、両国の原子力関係研究機関や、原子力教育および原子力研究開発関係の学部を有する大学相互の協力も促進する方針である。覚書への調印は、カナダ・オンタリオ州のピッカリングにあるOCNI本部とウクライナの首都キエフにあるエネルゴアトム社の本部をインターネットで結び、OCNIのR.オーベルト理事長とエネルゴアトム社の実質トップであるP.コティン総裁代理が行った。R.オーベルト理事長は、「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化するという世界的な構想の実現に向けて、ウクライナが推進するプロジェクトに緊密に協力していきたい」と述べた。P.コティン総裁代理も、「原子力発電所における信頼性の確保や関連する研究開発、技術革新、環境保全など、原子力発電に関わる最も有望な分野で、カナダの原子力産業界と連携協力する新たな機会が開かれた」と表明している。ウクライナでは2014年に親ロシア派のV.ヤヌコビッチ政権が崩壊し、それ以降は親欧米派が政権を維持。クリミアの帰属問題や天然ガス紛争等により、旧宗主国であるロシアとの関係は悪化の一途をたどっている。ロシアからのエネルギー輸入依存から脱却するため、ウクライナは国内15基のロシア型PWR(VVER)で使用する原子燃料を、米ウェスチングハウス(WH)社やカナダのカメコ社など、ロシア以外の企業から調達する手続を進めている。また、国内で米ホルテック・インターナショナル製SMRの建設可能性を探るため、エネルゴアトム社は2018年3月にホルテック社と協力覚書を締結。2021年9月には米ニュースケール・パワー社が開発したSMRの導入に関しても協力覚書を締結した。さらに同年8月末にエネルゴアトム社は、VVER設計による一部の建設計画が凍結されていたフメルニツキ原子力発電所、およびその他のサイトにおけるWH社製AP1000の建設に向けて、WH社と独占契約を締結している。(参照資料:OCNIの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
07 Feb 2022
3125
アルゼンチン政府は2月1日、同国で4基目の商業炉となるアトーチャ原子力発電所3号機の建設計画について、同国の国営原子力発電会社(NA-SA)と中国核工業集団公司(CNNC)が「EPC(設計・調達・建設)契約を締結したと発表した。両社が昨年から再開した協議の結果、同炉では中国の「華龍一号」設計を採用することが決定している。「華龍一号」は、中国の2つの原子力企業がそれぞれ開発した第3世代のPWR設計を統合したもので、出力120万kW、耐用年数は60年である。アルゼンチン政府によると、アトーチャ3号機は1981年以来初めて建設する商業炉で、NA-SAが昨年6月に採択したアクション計画の一部。同社は今年の年末にも着工する考えで、総工費は約83億ドル。国内サプライヤーの約40%が関与し、7千名以上の直接雇用が創出される見通しだ。83億ドルのほとんどは中国からの融資と見られている。今回の合意について、アルゼンチン政府は「原子力発電分野における両国の協力関係が一層強化されるだけでなく、クリーンエネルギーによって国内産業が発展する」と評価。「燃料の製造技術については技術移転も受ける計画で、我が国の技術力が一層強化される」と強調した。NA-SAの発表によると、アトーチャ3号機の建設プロジェクトは2014年7月に両社間で調印した「包括的な戦略提携」と「経済協力と投資に関する枠組み合意」の一部でもあり、両国政府は翌2015年2月、「アルゼンチンのPWR建設プロジェクトに関する政府間協力協定」を締結している。この当時のアルゼンチンの計画では、国内4基目のアトーチャ3号機には既存の商業炉3基と同じ加圧重水炉(PHWR)を採用、5基目の商業炉に「華龍一号」などの軽水炉を国内で初めて採用することになっており、NA-SAとCNNCは2015年11月、4基目の技術・商業契約と5基目の協力に関する枠組み協定を締結。投資額の85%は、中国工商銀行などを通じて中国側が支援する予定だった。 しかし、アルゼンチンではその直後の2015年12月、大統領がM.マクリ氏に交代。同大統領は建設プロジェクトの見直しを行った上で、関係するすべての作業を停止した。アトーチャ発電所が立地するブエノスアイレス州のA.キチヨフ知事によると、この計画にはその後大きな進展がなく、現在のA.フェルナンデス政権が登場するまで約4年の歳月が無駄に経過した。今回の両社の合意と契約締結はテレビ会議を通じて行われており、これには両社の上級幹部のみならず、両国の政府高官や両国に駐在するそれぞれの外交代表、アトーチャ発電所の地元自治体などが参加した。NA-SAは「両国の協力関係が新たな段階に移行し、原子力の平和利用や関係する科学技術と産業の発展に向けて強いきずなが結ばれた」と指摘。EPC契約の締結後は、双方の関係官庁による関連事項の具体化の調整が進められ、建設プロジェクトの実行に必要な条件を整えていく方針だ。また、テレビ会議に出席した経済省のF.バスアルド電力担当次官によると、「政府は改めて原子力部門の統合と成長に向けた政策を執ることを確認し、アトーチャ3号機の建設を通じて電源の多様化を進め、これにより国内の産業・技術をさらに発展させていく」としている。(参照資料:アルゼンチン政府(スペイン語)、NA-SAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Feb 2022
3340
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は2月2日、環境上の持続可能性を備えたグリーン事業への投資基準「EUタクソノミー」において、持続可能とみなす技術的精査基準を規定した「地球温暖化の影響を緩和する(補完的な)委任法令(Delegated Act: DA)」に、一定条件下で原子力関係の活動を含めることを原則的に承認したと発表した。ECは昨年の12月末、原子力と天然ガスの関係活動を含める内容のDA案を「持続可能な資金提供に関する加盟国の専門家グループ」、および諮問機関である「持続可能な資金提供プラットフォーム(PSF)」に提示した。これらの機関からの見解に基づいて、ECの委員達で構成される欧州委員協議会が同DA案の文言について協議した結果、今回政治的合意に達したとしている。同DAはEU加盟国すべての使用言語に翻訳され次第、正式に採択される予定で、その後は、欧州議会と欧州連合理事会が4か月にわたって同DAを精査。精査期間の終了時に両機関がともに異議を唱えなければ、同DAの原子力や天然ガスに関連する規定の部分は、2023年1月1日付で発効し適用が開始される。ECによると、EUが2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成するには多額の民間投資が欠かせず、この目標の達成に必要な活動への民間投資をEUタクソノミーで誘導する方針である。同タクソノミーで加盟各国のエネルギーミックスを特定のエネルギー技術に決定付けるのではなく、CO2排出量の実質ゼロ化に資するすべての方策を自由に活用させることで、CO2排出量の実質ゼロ化への移行を促す考え。近年の科学技術の進歩を考慮すると、原子力と天然ガスへの民間投資はこの移行を促進する役割を担っており、石炭火力のように大気を汚染する発電技術からのシフトを加速するとECは指摘している。これらのことから、ECはタクソノミー規制の下で今年の1月1日から施行されている現行のDAに、原子力と天然ガスに関する明確かつ厳しい条件を設定し、これらに関する経済活動を過渡期の暫定的な活動として加えたもの。これら2つの電源に共通する条件のほかに、原子力については環境上の安全要件を満たすよう求めており、具体的には、放射性廃棄物の長期貯蔵や最終処分によって生じるリスクが、その他の環境保全目標を大幅に損なうことがないようにするべきと明記。事故耐性燃料の活用要件を技術的精査基準の中に設定することや、高レベル廃棄物の排出量が最小限になる第4世代原子炉の将来の活用に向けた要件を同基準に盛り込むこと、新規原子力発電設備のリードタイムの長さを考慮して、既存原子炉の運転期間延長に向けた設備の安全性改善等を同基準の要件にすることを求めている。ECはまた、投資家が投資を行う際、他の電源で提案されたプロジェクトよりも原子力や天然ガスの方が好ましい場合にはその選択もできるよう関係市場の透明化を推進すると表明。情報の開示要件をDAに新たに設定したことを明らかにしている。ECの今回の発表について、欧州の原子力企業約3,000社を代表する欧州原子力産業協会(フォーラトム)のY.デバゼイユ事務局長は、「原子力がEUタクソノミーに加えられたことを歓迎する」とコメントした。ただし、原子力が引き続き「過渡期の技術」として扱われていることは残念だと表明。「我々は原子力が地球温暖化の影響緩和に貢献し、EUタクソノミーにすでに含まれている発電技術ほどの害を及ぼさないと確信している」と述べた。同事務局長によると、今回ECが採用した提案では、原子力は以下のような厳しい条件を満たしている限りEUタクソノミーに適合していると認識される。すなわち、①原子力発電を利用している加盟国では、極低レベルと低レベル、および中レベル廃棄物用の最終処分場を操業していなくてはならない。②原子力発電の利用国は高レベル廃棄物最終処分場の建設計画を策定しておかねばならない。③2025年時点で既存の原子力発電所と新規の原子力発電所建設計画を有する国では、規制当局が認証済みの事故耐性燃料を使用しなくてはならない。(参照資料:EC、フォーラトムの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
03 Feb 2022
4775
米国のウェスチングハウス(WH)社は1月27日、同社が進めている「高エネルギー燃料開発構想」で初めて、U235の濃縮度が最大で6%という次世代型の先行試験用燃料集合体(LTA)を国内の商業炉に装荷すると発表した。WH社の計画では、サザン・ニュークリア社がジョージア州で運転しているA.W.ボーグル原子力発電所2号機(PWR、121.5万kW)に、濃縮度6%の先行試験燃料棒が各1本含まれるLTAを4体装荷する予定。両社は同日、そのための契約を締結している。ただし、原子力規制委員会(NRC)がサザン・ニュークリア社に発給した現行の認可では、燃料内のU235の濃縮度は5%までしか許されていない。このためWH社は、サザン・ニュークリア社による認可の修正要請をNRCが承認し次第、2023年にも米エネルギー省(DOE)およびDOE傘下のアイダホ国立研究所の協力を受けてLTAの製造を開始。その年の秋にボーグル2号機で燃料交換を実施する際、サザン・ニュークリア社は同LTAを装荷する方針である。WH社は現在、福島第一原子力発電所事故を受けてDOEが2012年に開始した「事故耐性燃料(ATF)開発プログラム」に参加しており、同社製のATF「EnCore」を開発中である。同プログラムではWH社のほかに、フラマトム社やライトブリッジ社、米GE社と日立製作所の合弁事業体であるグローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社などが産業界から参加。2022年頃を目途に3段階でATFを開発・実証することになっている。WH社はまた、電気事業者が燃焼度を高くできる燃料を使用し発生エネルギーの量を増加できるよう、「高エネルギー燃料開発構想」で濃縮度を高めた燃料を開発している。同構想では、現在18か月の運転期間を24か月に延長することも研究中で、これにより電気事業者は、停止期間を短縮しコスト削減が可能になるとしている。今回のLTAでWH社は、商業炉を長期的に運転するための安全性や経済性、効率性の向上対策を模索。具体的には、酸化クロムや酸化アルミを少量塗布した「ADOPT燃料ペレット」、腐食耐性や変形耐性を向上させるという「AXIOM合金製被覆管」やクロムを塗布した被覆管、先進的な燃料集合体設計の「PRIME」などを活用している。このうち、ADOPTペレットとクロムを塗布した被覆管は、DOEのATFプログラムの下で開発した「EnCore」技術の一部であり、これらによって温度許容度や耐久性等が大幅に改善されたと強調している。サザン・ニュークリア社のP.セナ上級副社長は、「我々が最優先とするのは絶対的に安全なプラントで周辺住民や従業員の安全と健康を守ることだが、画期的な燃料技術によって顧客に年中無休で電力を供給する能力や発電所全体の信頼性が高まる」と指摘。規制の基準値を超える濃縮度のLTAを装荷することで、先進的燃料技術の商業利用が一層進展し、今後数10年にわたってクリーンで安全、信頼性の高い無炭素電力を供給する能力が増強されると述べた。(参照資料:WH社、サザン・ニュークリア社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Feb 2022
3265
英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は1月27日、イングランド南東部のサフォーク州でEDFエナジー社が計画しているサイズウェルC(SZC)原子力発電所開発プロジェクト(160万kWの欧州加圧水型炉:EPR×2基)を存続させるため、今年3月までの現行会計年度予算から1億ポンド(約155億円)の支援を提供すると発表した。英国政府は昨年10月、大型原子力発電所を少なくとも1か所建設する計画について、現政権の在任期間中に最終投資判断(FID)が下されるよう、最大で17億ポンド(約2,600億円)を歳出すると表明した。その場合は費用対効果が高いことと関係承認が得られることが条件だが、BEISのK.クワルテング大臣は今回の新たな支援を通じて、さらなる民間投資が新しい原子力発電所の開発に呼び込まれると指摘。SZC発電所は完成すれば320万kWの電力を供給するが、これは約600万世帯が必要とする電力量に相当するほか、英国全土で1万人分の雇用を支援する。低炭素な電力が大規模かつ継続的に英国にもたらされ、高価格な天然ガスの影響を軽減、英国内で信頼性の高い安定的な低炭素エネルギーの供給を保証すると強調している。EDFエナジー社はこの支援金を通じて、政府と昨年から実施している同プロジェクトの実施交渉を次の段階に進めるほか、国家的に重要なプロジェクトであるとの確信を投資家に最大限に与えることで、新たな民間投資を呼び込んでいく。今回の支援は、政府からの直接投資という形態を取っておらず、政府はSZC発電所の開発を担当するNNB GenCo社(EDFエナジー社の子会社)の一部株式、および建設用地の一部を統合オプションの形で購入。プロジェクトが最終的にうまく行かなくても、政府は同サイトで原子力に限らず、その他の低炭素な代替エネルギー・インフラを継続して開発できるよう機会を提供していく。一方、SZC計画がFIDの段階に進展した場合、政府は同社から投資収益と1億ポンドの払い戻しを受けられるが、返金形態は現金かプロジェクト権益になる。また、プロジェクトがFIDに到達しなかった場合、政府はNNB GenCoの一部株式、あるいは建設用地の一部をEDFエナジー社に要求できるものの、政府の希望する形で同社が資産を提供できなければ、同社は投資収益と1億ポンドの現金を返済することになる。いずれにしても、英国政府は「現段階では、サイズウェルCプロジェクトへの投資構成は何も決まっていない」と表明している。今回の政府発表は、大型原子力発電所の新規建設を支援する資金調達の枠組みとして、「規制資産ベース(RAB)モデル」の導入を目指した法案が議会で審議されている最中に行われた。BEISによると、RABモデルを導入することにより、大型原子力発電所の開発コストは、(ヒンクリーポイントC原子力発電所の建設計画で適用されている「差金決済取引(CfD)」との比較で)、一件あたり300億ポンド(約4兆6,500億円)の削減が可能だ。RABモデルはまた、年金基金など英国内の民間部門投資を幅広く呼び込むことになるため、中国広核集団有限公司(CGN)のように、英国の原子力発電開発プロジェクトに一定割合の資金提供を約束している海外デベロッパーへの依存が軽減されるとしている。EDFエナジー社のS.ロッシCEOは今回、「英国政府がSZC計画の成功に自信を示してくれたことは本当に喜ばしい」とコメント。この方針が承認されれば、消費者が支払うエネルギー料金は大幅に削減され、英国は世界的に変動が激しい天然ガスの価格から影響を受けずに済む。この方針はまた、SZC計画がFID段階に進めるよう後押ししてくれると評価した。英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックス理事長も、「政府の発表はSZCプロジェクトを前進させる大きな一歩になった」と表明した。同理事長によると、英国で現在稼働中の改良型ガス冷却炉(AGR)、および唯一の軽水炉であるサイズウェルB原子力発電所は、英国史上最も安価で生産的な低炭素発電資産であり、これまでに14億トンのCO2排出量を削減。現在の炭素価格にして、約1,100億ポンド(約17兆円)の税負担を抑制したことになると強調している。(参照資料:BEIS、NIAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
31 Jan 2022
3515
スウェーデンの気候・環境省は1月27日、エストハンマルにあるフォルスマルク原子力発電所の近接エリアで、使用済燃料の最終処分場を建設する許可をスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)に発給する方針を決めた。同時に同省は、使用済燃料をキャニスターに封入するプラントについても、オスカーシャムにある使用済燃料集中中間貯蔵施設(CLAB)の隣接区域で建設することを許可。これにより、SKBは原子力活動法に基づく最終処分場の建設許可を政府から取得したことになるが、これ以降の許認可プロセスとしては、国土環境裁判所が環境法に照らしてこれらの施設の詳細な建設・操業条件を設定、スウェーデン放射線安全庁(SSM)がこれらを承認する必要がある。最終処分場を本格着工するには、このような関係許認可をすべて取得しなければならず、SKBは実際の建設工事には約10年を要する見通しだと表明している。商業炉から出る使用済燃料を深地層に最終処分する施設の建設については、すでにフィンランドが2016年から建設工事を進めており、スウェーデンでの許可は世界で2例目となる。スウェーデンでは使用済燃料処分の事業主体であるSKBが2006年11月、キャニスターに使用済燃料を封入するプラントの建設許可をSSMに申請した。SKBはまた2009年、約1万2千トンの使用済燃料を地下500mの結晶質岩盤に直接最終処分する地点としてエストハンマルを選定、2011年3月にはSSMに処分場の建設許可を申請している。それ以降、SSMは処分場の安全性と放射線防護面について、また、国土環境裁判所は処分方法や立地選定などの環境影響についてSKBの申請書を審査。SSMと国土環境裁判所は2018年1月、政府に対して建設許可の発給を勧告していた。同処分場の処分概念は、SKBが1980年代に提案した「KBS-3」概念に基づくもの。使用済燃料を封入する銅製キャニスター、その周囲を覆うベントナイト製緩衝材、および地下深部の岩盤という3重のバリアを組み合わせており、これらによって廃棄物の放射能から周辺の住民や環境を隔離・防護する方針である。SSMの専門家はこの概念を評価した結果、「長期的に見ても安全かつ法的要件を満たした技術であり、現時点で実施可能な最終処分方法としては最良のもの」と表明。スウェーデン政府もこの見解を支持している。なお、フィンランドで建設中の最終処分場にもこの概念が採用されている。気候・環境省のA.ストランドヘル大臣は今回の発表のなかで、「処分に必要な技術も能力も備えている我々が、使用済燃料をプールに貯蔵したまま、何年も決定を下さないでいるのは無責任なことだ」と述べた。この問題の解決は決して後の世代に押し付けてはならず、政府としては現世代で責任を負う方針。使用済燃料の処分に向けて安全な技術の開発や広範な準備が進められているため、研究開発のさらなる進展とともに処分方法も一層改良されていくとしている。SKBのJ.ダシュツCEOは政府の発表を「歴史的決定」と評価した上で、SKBは今後、約190億クローナ(約2,340億円)を投じて最終処分場を建設し、約1,500人分の雇用を創出すると表明。これに必要な資金は、放射性廃棄物基金で賄うことが出来るとした。同CEOはまた、今回の決定によって同社の処分方法が厳しい安全要件と環境影響要件を満たしていることが明確になったと指摘。同社がこの分野で占めている世界のリーダー的立場は一層強化され、原子力発電の課題には長期的な解決策がもたらされる。脱化石燃料に向けて、同社は一層の貢献が可能だと強調している。(参照資料:スウェーデン政府、SKBの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Jan 2022
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社のエンジニアリング部門であるアトムエネルゴマシ社は1月25日、ウリヤノフスク州ディミトロフグラードで2015年から建設中の「多目的高速中性子研究炉(MBIR)」のために、炉内機器の試験組立をロストフ州ボルゴドンスクで実施したと発表した。熱出力15万kWのMBIRでは、幅広い原子炉研究や照射研究の実施が計画されており、1969年から同じくディミトロフグラードの国立原子炉科学研究所(RIAR)内で稼働している高速実験炉「BOR-60」の後継炉となる予定。冷却材として液体ナトリウムを、燃料にはウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料か窒化物燃料を使用するが、鉛や鉛ビスマスといった異なる冷却材環境での照射試験が可能である。ロスアトム社によるとMBIRが完成すれば、核燃料サイクルの確立に不可欠な高速炉など、第4世代の原子力発電システムの開発が大きく進展する。また、原子力を長期的に活用していくための広範な研究課題の解決や、新型核燃料の研究開発など、文字通り多目的に利用することができる。現地の報道では、MBIRで物理試験が行われるのは2027年末になるとみられている。MBIRの総工費は10億ドルと言われており、2010年にロスアトム社のS.キリエンコ総裁(当時)は、国際原子力機関(IAEA)が革新的原子炉や燃料サイクルの導入環境整備を支援するため創設した国際フォーラム「INPRO」の枠組み内で同炉を開発することを提案。同炉の設計と建設をロシアのRIARが受け持つ一方、実験や追加機器に要する経費は、MBIRを中核設備とする「国際研究センター(ICR)」に参加を希望する国々が負担することになった。今回の試験組立は、アトムエネルゴマシ社に所属するAEMテクノロジーズ社のボルゴドンスク工場で行われ、総重量164トンという6つの機器を使用。まず特別に設計された深さ20mのケーソン(円筒状の構造物)内部に、支持リング付き・重さ83トンの原子炉容器をクレーンで設置。同容器内には直径3.2m、重さ45トンのバスケットを据え付けており、これによってMBIR内を出入りする冷却材の流れを制御・分離した。また、機器類の内部には3種類の防護スクリーンを貼り、高温になった冷却材の熱から原子炉容器を防護。これらの要素設備をすべて接続した上で、性能や組立具合、接続性能、全体の調整具合などを点検したもので、今後はディミトロフグラードへの出荷に向けて機器類の点検や保護包装を行う計画だとしている。(参照資料:アトムエネルゴマシ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
27 Jan 2022
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米エネルギー省(DOE)は1月24日、原子力発電所の使用済燃料、および高レベル放射性廃棄物(HLW)を輸送する8軸(車輪が8対=16輪)の鉄道車両「Fortis」でプロトタイプを製造し試験する業務について、「提案募集(RFP)」(=発注側であるDOEの要件を記した文書)を産業界に向けて発出した。「Fortis」は、放射性廃棄物の専用キャスクのような大型コンテナの積載に適した極めて頑丈な設計。輸送時の状態を計測し、リアルタイムで監視者に伝えるハイテク計測機器を搭載している。予備設計はすでに2021年初頭、DOE傘下のパシフィック・ノースウエスト国立研究所(PNNL)の技術支援により完成しており、プロトタイプの製造・試験許可も同じ頃に米鉄道協会(AAR)から取得済みである。DOEはまた、「Fortis」のほかにHLWを専門に輸送する12軸の車両「Atlas」も開発しており、そのプロトタイプではすでに試験を実施中。DOEはこれら2つの開発を通じて、2027年までに放射性物質を安全かつ効率的に輸送する能力を獲得する方針である。米国では「1982年放射性廃棄物政策法」の規定により、全米の原子力発電所敷地内や中間貯蔵施設に保管されている放射性廃棄物をDOEが処分場まで輸送し、処分することになっている。DOEによると「Fortis」の開発は、使用済燃料とHLWの将来の輸送に備えて盤石な輸送能力を得るという取り組みの一環。使用済燃料を封入したコンテナは重さ80~210トンだが、米国ではトラック輸送の法定重量制限である約40トンを大幅に超えてしまうため、これらの輸送では鉄道を使うことが推奨されている。DOEは今回、3月21日までの期間にRFPで募集する提案の項目として、「Fortis」の製造のほかにハイテク・センサーやモニタリング装置を備えた輪軸の入手、高レベル廃棄物の輸送に特化したAARの厳しい性能基準「S-2043」で要件の1つとなっている車両試験の実施、などを盛り込んだ。「Fortis」の設計書は、RFPの結果に基づきDOEが実施契約を結んだ企業に提示することになるが、開発プロジェクトの製造と試験では引き続き、PNNLの技術支援を受けるとしている。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
26 Jan 2022
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米国のウェスチングハウス(WH)社は1月21日、ポーランドの原子力発電プログラムで建設が予定されている原子炉に同社製「AP1000」設計が採用されることを前提に、同国の関係企業10社と戦略的連携関係を結ぶことで合意したと発表した。同社はポーランド北部のグダニスクおよび首都ワルシャワで、これらの企業との了解覚書に調印。ポーランドのみならず、その他の中・東欧諸国でも広くAP1000を建設していけるよう、これらの企業とは長期的に協力していく方針である。ポーランドでは2020年9月に政府が「2040年までのエネルギー政策(PEP2040)」を公表しており、2043年までに2つのサイトで大型原子炉6基(合計出力600万~900万kW)の建設を計画。初号機の運転を2033年までに開始した後、2~3年ごとに残り5基を建設していき、2043年までに6基すべてを完成させるとしている。この民生用原子力発電プログラムは、ポーランド内閣が2020年10月初旬に承認している。米国政府は、このプログラムを実行に移すための方策や必要となる資金調達方法等で支援するため、同じ月にポーランドと政府間協力協定(IGA)を締結。同IGAが2021年3月初旬に発効したのを受けて、WH社は米国から同国への技術移転も含め、包括的投資構想を策定中だと発表している。WH社がポーランドの原子力パートナーに選定された場合、同国内で2,000名分以上の関係雇用が創出されるよう原子力サプライチェーンの構築に尽力するほか、質の高い原子力機器や専門的知見の提供を保証する考えである。その後、米国政府で非軍事の海外支援を担当している貿易開発庁(USTDA)が2021年6月、ポーランドの原子力発電プログラムを支援するため、ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)傘下の原子力事業会社PEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)に基本設計(FEED)調査用の補助金を提供すると発表。このFEED調査は、WH社とパートナー企業のベクテル社が実施することになっている。PEJ社はその半年後の2021年12月、ポーランド初の原子力発電所建設サイトとして、北部ポモージェ県内のルビアトボーコパリノ地点を選定した。WH社が今回、了解覚書を締結したのは、発電所やエネルギー関係設備の建設エンジニアリングを専門とするRafako社、KB Pomorze社、Polimex Mostostal社のほか、冶金材料や鉄鋼製の機器・構造物の製造・供給企業であるZKS Ferrum社、Mostostal Kraków社。また、産業・発電設備の総合建設や最新化および修理が専門のOMIS社、産業投資を包括的に実施しているZarmen Group、発電機器の主要製造企業であるFogo社、造船会社のGP Baltic社、および各種クレーンなど吊り上げ機器を製造しているProtea Groupである。WH社ポーランド支社のM.コバリク社長は今回の覚書締結について、「当社には、ポーランドがエネルギー関係の目標を達成できるよう支援提供するための良好な体制が整っている」と説明。具体的には、ポーランド国内で同社が行っている原子力技術関係の投資を挙げたほか、同社がポーランド南部のクラクフに設置した世界規模のサービスセンターを指摘。同センターには現在200名近い従業員が勤務しており、ポーランドが地球温暖化の防止目標を達成したり、経済成長に必要なエネルギーを確保する際、同センターが最良の技術を提供していると強調した。(参照資料:WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Jan 2022
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