国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が11月6日、18日までの日程で、エジプト屈指のリゾート地シャルム・エル・シェイクで開幕した。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)は現在、経済規模や資源の有無など全く成り立ちの異なる198か国が批准している。COPの採決は全会一致が原則であり、当然ながら国家間の利害対立が極めて大きく、毎回合意文書の取りまとめは難航している。昨年のCOP26(英国)では、世界の平均気温の上昇を1.5度までに抑える努力を各国が追求することで合意したが、国連が先月27日に発表した報告書は、現状の各国による温室効果ガス(GHG)削減目標では、目標達成は難しいと結論。今後、より具体的なGHG削減対策が打ち出せるかが課題となっている。首脳級会合でホストとして各国首脳を迎えたエルシーシ・エジプト大統領は、温暖化対策に向けた「具体的かつ効果的なアクション」を訴えると同時に、ウクライナ紛争の早期終結を強く呼びかけた7−8日には首脳級会合が開催され、国連のグテーレス事務総長は「1.5度の気温上昇を抑制するには、2050年までにGHG排出ネットゼロを達成しなければならないことは、サイエンスによって明らかになっている。しかしその目標は今やヨロヨロの状態で、崩れ去ろうとしている」と強い危機感を表明。「気候変動の地獄へ向かう一本道で、アクセルに足をかけている」と強調し、各国首脳に改めて結束を呼びかけた。100か国以上の首脳が参加した首脳級会合では、最近のパキスタン大洪水など世界各地で干ばつや洪水など異常気象が続く中、「損失と損害(loss and damage)」をテーマに、GHGを大量に放出する先進国から途上国に対する補償が議論された。ガーナのアクフォ=アド大統領は「アフリカは気候変動を引き起こす活動をほとんどしていないにもかかわらず、若者が多大な被害を受けている」を訴え、ルワンダのカガメ大統領も「先進国がなせる価値ある貢献とは、自国の排出量を早急に削減すると同時に、アフリカに持続可能なグリーン電力を導入することだ」と強く要求するなど途上国の首脳からは深刻化する気候変動災害への資金支援を求める声も相次いだ。ドイツのショルツ首相 ©︎独連邦政府これまで先進国は全体で、途上国への気候変動対策として年間1000億ドルの資金支援を行う目標を掲げたものの、未だ達成できていない。今回の首脳級会合でも、独自の追加支援策として、ドイツのショルツ首相が1億7000万ユーロ、英国のスナク首相も15億ポンドの拠出を表明したが、目標額には遠く及ばない現状だ。今後の会期中に、先進国がどこまで歩み寄るのかが注目される。昨年のCOP26では例年以上に原子力に関する議論が活発に行われた。今回も、国際原子力機関(IAEA)が中心となって原子力パビリオンを設置するなど、ネットゼロ世界の実現に向けた原子力の貢献を訴求する予定だ。
09 Nov 2022
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閣僚会議の決定事項を発表するO.ヴェラン政府報道官©The Elysee Palaceフランス大統領府は11月2日、原子力発電所を新規に建設する際、時間のかかる複雑な行政(許認可)手続きを簡素化するための法案が同日の閣僚会議で承認されたと発表した。同国では、E.マクロン大統領が今年2月に東部のベルフォールで、CO2排出量を2050年までに実質ゼロ化するという目標の達成に向けて、国内で改良型の欧州加圧水型炉(EPR2)を新たに6基建設するとしたほか、さらに8基の建設に向けて調査を開始する方針を表明している。今回の法案はこの方針に沿って、エネルギー移行省が複数の国民評議会と協議して内容を決定しており、同省のA.パニエ=リュナシェ大臣が閣僚会議に提出した。今後、フランス国内における新設の実現に向け、行政手続きを加速する枠組みの設定を行うほか、その建設計画が既存の原子力発電所の近隣、あるいは敷地内での建設では工期の短縮を図りたいとしている。大統領府の発表によると、この法案の狙いは気候変動に迅速に対処することに加え、今年始まったウクライナでの紛争にともない、エネルギーの供給保証と自給が危機に瀕していることへの緊急対応となる。また、マクロン大統領がベルフォールで明言したように、原子力発電開発は脱炭素化の推進で化石燃料依存から長期的に脱却していく3つの方策の一つ。原子力の他には、再生可能エネルギーの開発、およびあらゆる産業部門の活動を省エネに導くようなエネルギーの効率化が挙げられるとした。フランスでは今年の10月20日から、独立行政機関の一つである国家公開討論委員会が、同国の将来のエネルギーミックスに関する公開討論を約4か月の日程で開始。複数年の新しいエネルギー・プログラムを2023年に議会にかけられるよう準備を進めているが、大統領府は、今回の法案は将来のエネルギーミックスから原子力を排除するためのものでも、またその安全性や環境影響に関する要件や手続きを変更するためでもないと強調。建設構想がある地域の計画文書を一層迅速に整え、環境影響を考慮した都市計画規則に準じて建設されることを保証、同様の計画を並行して複数進めるためだと指摘した。さらに、建設計画を公益事業として認識してもらうことで、建設に必要な土地を速やかに収用する方策が含まれる可能性があるとしている。公開討論ではまた、北西部のパンリー原子力発電所でEPR2を2基建設する計画が議論の焦点となっているが、今回の法案は将来の原子力発電所建設に関する議論に一層多くのフランス国民が参加することを求めている。大統領府はこれらに基づいて、公開討論が終わる2月までに少なくとも1件の新設計画、可能であれば2~3件について許認可手続きを始めたいとしている。(参照資料:仏大統領府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Nov 2022
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カナダ・オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は10月31日、同州南部のダーリントン原子力発電所でGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」(出力30万kW)を建設する計画について、カナダ原子力安全委員会(CNSC)に建設許可を申請した。申請文書はOPG社とGEH社が共同作成したもので、OPG社は今後も約6か月間にわたり複数の情報文書を順にCNSCに提出する。このプロセスの最終段階となる2024年頃、CNSCは公開ヒアリングも開催する予定。これらの手続きを経て、OPG社としては早ければ2028年にもカナダ初の商業用SMRを完成させる方針である。折しも、カナダ連邦政府は11月2日に「2022年秋の経済声明(予算編成方針)」を発表しており、この中でクリーンエネルギーの開発投資金に課す税額を最大で30%控除すると表明。対象となるクリーンエネルギーの中には、太陽光や風力などとともに「SMRによる発電システムの機器・設備」を含めている。ダーリントン発電所ではOPG社が2012年8月、大型炉の増設(最大4基、480万kW)用としてCNSCから「サイト準備許可(LTPS)」を取得した。大型炉の建設計画を保留にした後、同社は同じ場所でSMRを建設する計画(最大4基、120万kW)を進めており、CNSCに要請して2021年10月にこのLTPSを10年更新。同年12月には、「ダーリントン新規原子力開発プロジェクト(DNNP)」で採用する設計として、3つの候補の中からBWRX-300を選定した。今年10月の初頭からは、同社は建設用の道路や電気・水道等の公共設備、サービス建屋など、非原子力インフラ設備の建設に向けた整地等の準備作業をサイトで開始、この作業は2025年まで継続するとしている。カナダにおける建設許可申請書の審査プロセスでは、地元コミュニティの住民や一般国民、先住民らが申請書について幅広く議論する機会が与えられており、質問やそれぞれの利益事項を提示することも可能。CNSCの10月24日付の発表によると、OPG社が提出した「(BWRX-300の建設にともなう)環境影響声明書(EIS)」の審査報告書や「BWRX-300設計の技術パラメーター文書」などについて、一般国民が評価を行う10月24日から12月2日までの期間、CNSCは数多くの参加を促すための資金として15万カナダドル(約1,600万円)を提供する。これは第一段階の資金提供であり、第二段階の資金提供についてCNSCは後日発表すると表明。審査プロセスの残りの部分に参加する一般国民のために活用するとしており、具体的には、CNSC委員が作成した文書やOPG社の建設許可申請関係文書の評価作業、公開ヒアリングへの参加を促すために用いるとしている。なお、この建設プロジェクトに対しては、連邦政府のカナダ・インフラストラクチャー銀行(CIB)が10月25日に、9億7,000万加ドル(約1,056億円)という過去最大規模の投資を約束している。(参照資料:OPG社、CNSCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
07 Nov 2022
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ポーランド政府は11月2日、大型原子炉を備えた最初の発電所として、米ウェスチングハウス(WH)社が開発した第3世代+(プラス)の加圧水型炉「AP1000」を建設することを承認したと発表した。気候環境大臣が提出していた決議を内閣が正式に承認したもので、この承認と同時に同決議は発効している。同国の改訂版「原子力開発計画(PPEJ)」では、2043年までに複数サイトで100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万~900万kW建設することになっており、政府は今回、このうちの最初の3基、375万kWに安全で実証済みの技術を用いたAP1000を採用すると表明。原子力発電所の建設に最適の地点として昨年12月に選定した北部のルビアトボ-コパリノ・サイトで、2026年にも初号機の建設工事を開始し2033年の完成を目指す。これによりポーランドは、エネルギー供給保証の基盤として新たな電源を確保しつつ、エネルギー・ミックスの多様化を図り、電力価格を低い水準で安定させるとともに、発電部門におけるCO2の排出量を削減。クリーンで安全な原子力発電所の建設に向けた新たな産業部門を、国内経済にもたらしたいとしている。ポーランドにとって、エネルギーを恒久的に自給しロシア産のエネルギーから脱却する上で、国内最初の原子力発電所建設に向けた投資を加速することは非常に重要である。そのため、原子力発電所の建設計画は長年にわたって、同国のエネルギー部門における重要課題の一つとなっている。政府のPPEJについては、WH社のほかにフランス電力(EDF)と韓国水力・原子力会社(KHNP)がそれぞれの原子炉を提案。韓国政府とKHNP社は先月末、PPEJを補完する計画として、ポーランド中央部のポントヌフ地域で韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」(出力140万kW)建設の実現を目指し、ポーランド政府との協力に向けた覚書、および同国企業との協力意向書を締結した。一方、WH社は9月12日、ポーランドと米国の両国政府が2020年10月に締結した「(ポーランドの)民生用原子力発電プログラムに関する政府間協定(IGA)」に基づいて、大型炉建設のロードマップとなる「民生用原子力分野における両国間協力の概念と計画に関する報告書」をポーランド気候環境省に提出。その中で、WH社がポーランドの計画にAP1000を提供する方針であること、米国政府の融資機関である米輸出入銀行(US EXIM)や国際開発金融公社(DFC)が同計画に融資を行う可能性があることを示していた。今回ポーランド内閣が承認した決議では、WH社のこの報告書の提案に同意することになり、明示されているそれぞれの基本的義務事項を双方が履行する。具体的には関係する企業を支援するとともに、政府レベルでも規制やスタッフの訓練といった活動や、サプライチェーンの構築や一般国民の理解を求めるキャンペーン等を実施していくことになった。ポーランド政府は今回、エネルギー部門の重要課題を解決するための方策として、AP1000の初号機を2033年までに完成させることを挙げたほか、国内2つ目の原子力発電所を建設する準備を進めるため、速やかに対策を講じるとした。また、現在主流となっている化石燃料発電を低炭素な電源に取り換えるほか、電力需要を満たしつつ送電網の安定を図るため、分散型の再生可能エネルギーを大規模に導入するとした。さらに天然ガスの役割については、再エネの不安定な供給量を補完する移行期の燃料に限定するとしている。2つ目の原子力発電所の建設準備については、気候環境省のA. モスクヴァ大臣が記者会見の席上、「欧州その他の国の企業とも協力する余地が残されている」と発表。内閣の意向として、現段階では採用炉型の決定を待たずに建設準備を加速することを明らかにしている。なお、WH社は同じく2日付でコメントを発表しており、「ポーランドと当社にとって歴史的な日になった」と表明。ポーランドの建設計画については、AP1000設計の採用を前提に同社は今年1月、同国の関係企業10社と戦略的連携関係を結ぶことで合意したほか、9月にはさらに22社の同国企業と、ポーランドおよびその他の中欧地域におけるAP1000建設への協力を取り付けるため、了解覚書を締結したと改めて表明している。(参照資料:ポーランド政府の発表資料(ポーランド語)①、②、③、ウェスチングハウス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Nov 2022
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エジプトの原子力・放射線規制機関(ENRRA)は10月31日の理事会で、同国初の原子力発電所となるエルダバ発電所(120万kWのロシア型PWR:VVER-1200×4基)について、2号機の建設許可発給の方針を決定した。原子力発電所の建設は同国のA.F.シシ大統領の指示で進められており、サイトではすでに今年7月に1号機が本格着工、2028年の営業運転開始を目標に建設工事が進められている。同国で原子力発電の導入計画を担当する原子力発電庁(NPPA)は、エジプトの首都カイロの北西300kmに位置する地中海沿岸の同発電所で、最終的に4基の120万kW級VVERを建設することを計画。これらで電源の多様化を図って国内産業を支援するほか、2030年までの国家ビジョンに沿って総電力需要の9%を原子力で賄うなど、同国のエネルギー供給保証を強化していく方針である。折しも、同国は今月6日から18日まで、西部のシャルム・エル・シェイクで国連気候変動枠組条約締約国会議(COP27)を開催する予定。石油や天然ガス等の火力発電所を原子力で置き換えていくことは、同国における環境戦略の主要政策になると見られている。エジプト政府は2015年11月に、原子力発電所の建設プロジェクトに関する二国間協力協定(IGA)をロシア政府と締結しており、ロシア側から最大250億ドルの低金利融資を受けることになった。両国政府はまた、2017年12月にエルダバで4基のVVER-1200を建設するパッケージ契約書に調印、この契約でロシア側は発電所を建設するだけでなく、60年にわたる稼働期間中の原子燃料をすべて供給する。また、使用済燃料の貯蔵施設や貯蔵キャスクもエジプト側に提供、人材育成や設備のメンテナンスにも協力することになっている。ENRRAの発表によると、NPPAは2019年1月に1、2号機の建設許可申請手続きを開始しており、2021年6月末までにこれら2基の予備的安全解析報告書の提出を終えた。これらの関係文書を審査したENRRAは1、2号機が国際的に最も厳しい安全基準を最大限に満たし得るか確認、今年6月には1号機に対して建設許可を発給している。2号機についても、ENRRAは建設に必要とされる要件の順守状況や建設サイトの準備状況等について、現地で複数回の点検を行っており、10月下旬には最終的な総合点検を実施。これらの審査や評価の結果に基づいて、ENRRA理事会が今回、同機への建設許可発給を決めたと説明している。なお、この建設プロジェクトを請け負ったロシアの原子力総合企業ロスアトム社の8月の発表によると、韓国水力・原子力会社(KHNP)が同発電所の4基にタービン系を製造・納入することになった。ロスアトム社傘下のエンジニアリング企業アトムストロイエクスポルト社と結んだ契約に基づき、KHNP社は約80もの関係建屋や構造物を建設するほか、タービン系に必要な資機材を調達するとしている。(参照資料:ENRRA、ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10 月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Nov 2022
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韓国の産業通商資源部(MOTIE)は10月31日、ポーランド中央部のポントヌフ地域で韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」(出力140万kW)の建設に向けた計画の策定と支援を行うため、ポーランド国有資産省(MOSA)と情報交換等の協力を行う了解覚書を、また両国の関係企業3社が「企業間協力意向書(LOI)」を締結したと発表した。ポーランドでは2021年2月に内閣が決定した「2040年までのエネルギー政策」に基づき、約100万kWの大型原子炉を2043年までに6基、合計600万~900万kW建設するプログラムを進めている。同国の国営エネルギー・グループ(PGE)が設立した原子力事業会社のPEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)は昨年12月、バルト海に面した北部ポモージェ県内のルビアトボ-コパリノ地区を建設サイトに選定しており、この案件の最初の部分についてM.モラビエツキ首相は2日前の10月29日、「ウェスチングハウス(WH)社の技術を採用する」と発表していた。ポントヌフにおける今回の協力構想について、ポーランドのPGEグループは31日付のリリースで「政府の原子力プログラムを補完するもの」と説明。LOIでは、同グループがエネルギー企業のZE PAK社とともに、韓国国営の韓国水力・原子力会社(KHNP)と協力する可能性を模索することになったが、主な目的は「APR1400」の建設に向けた予備的開発計画を年末までに作成すること。このプロジェクトを通じて、ポーランドのエネルギー供給システムの安定性と独立性を向上させ、安価でクリーンなエネルギーを今後60年にわたって安定供給していく。また、同プロジェクトを通じてポーランドの経済的競争力を強化し、新たな投資の機会を創出したいと述べている。ポントヌフ地域では、ZE PAK社と同国の大手化学素材メーカーであるシントス社が昨年8月、ZE PAK社所有の石炭火力発電所に共同でGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」、あるいはその他の有望な米国製SMRを4基~6基(出力各30万kW程度)建設すると表明した。今回PGEグループは、同地で同グループとZE PAK社、およびKHNP社の3社が実施する具体的な作業として「APR1400」の建設に向けた地質工学的解析、地震条件や環境条件などの予備的調査を挙げている。3社はまた、準備作業と建設・運転段階における予算の見積もりや資金調達モデルの提案、実施スケジュールの作成と各段階の作業区分けなども実施。さらには、安価でクリーンな電力を適宜安定供給していくため、見積もり投資額や関係支出を合理的に抑えていくとした。「APR1400」を採用した発電所の建設に投資することで、ポーランド企業には新たな技術に対応した広範なサプライチェーンへの参加機会がもたらされるとPGEグループは指摘している。ポーランドの副首相を兼任する国有資産省のJ.サシン大臣は、「昨今のような地政学的状況下においては特に、原子力はポーランドにとって不可欠の重要電源になる」と指摘。低コストなエネルギーとエネルギーの自給という観点からも、ZE PAK社とPGEグループが進める今回の協力構想は、ポーランドの戦略的目標の達成に向けて、大きく貢献すると述べた。また、「『2040年までのエネルギー政策』の中でポントヌフは大型原子力発電所の建設候補地の一つだったが、同地での建設計画はポーランドの原子力プログラムにも貢献する」としており、両社がKHNP社との協力協議を開始し、韓国との協力関係強化に乗り出したことに歓迎の意を表明している。なお、ポーランド政府の原子力プログラムに沿ってルビアトボ-コパリノ地区で大型炉を建設する件について、「WH社の技術を採用する」とM.モラビエツキ首相が発表した後、両国政府もWH社も詳細を公表していない。しかし、米国のK.ハリス副大統領はこの発表ツィートに対し、「この協力が我々すべてにとって有益なのは明らかであり、地球温暖化に対処するとともに欧州のエネルギー・セキュリティ強化に貢献、両国の戦略的協力関係も深めていきたい」と返信。米エネルギー省(DOE)のJ.グランホルム長官も、「ポーランドが400億ドル規模となる建設プロジェクトの最初の部分に米国とWH社を選定したことはビッグニュースだ」とコメント、これにより米国では10万人以上の関係雇用が維持・創出されると説明している。(参照資料:韓国産業通商部(韓国語)、PGE社(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Nov 2022
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カナダ・オンタリオ州の州営電力オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は10月25日、同国初の小型モジュール炉(SMR)を同社のダーリントン原子力発電所で建設するというプロジェクトに対し、連邦政府のカナダ・インフラストラクチャー銀行(CIB)が9億7,000万カナダドル(約1,050億円)という過去最大規模の投資を約束したと発表した。国家の経済政策に合わせた投資戦略を進めるCIBの資金によりOPG社はSMR建設を進め、その無炭素電力を同社の地球温暖化防止計画に役立てる方針。2040年までに同社の発電設備によるCO2排出量を実質ゼロ化し、2050年までに同州がCO2実質ゼロの経済を確立する一助にしたいと表明している。OPG社は2021年12月、ダーリントンで建設するSMRとして、3つの候補設計の中からGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社の「BWRX-300」(電気出力30万kW)を選定した。これに続いて、サスカチュワン州の州営電力サスクパワー社も今年6月、同州内で建設するSMRとして「BWRX-300」を選定している。これら2州とニューブランズウィック州、およびアルバータ州はこれに先立つ今年3月、それぞれの州内でSMRを開発・建設していくための共同戦略計画を発表しており、CIBの資金提供はSMR建設にともなう先行事例としてその他の州や米国、欧州で同様のプロジェクトを牽引するとOPG社は強調。また、SMR市場は2040年まで年間約1,500億ドル規模で成長が見込まれており、同社のプロジェクトはカナダが世界のSMR建設のハブを目指す上でも有効だと指摘している。OPG社の発表によると、CIBが財政支援するフェーズIの作業は、プロジェクト設計やサイト準備、長納期品の調達手配、送電網との接続準備、プロジェクト管理のコスト見積もりなど、建設に先立つ準備作業をすべてカバー。2020年代末までに同SMRが完成すれば、約16万台のガソリン車の排出量に相当する年間約74万トンの温室効果ガスの排出を抑制するとしている。民間シンクタンクのカナダ産業審議会が2020年に実施した調査によると、SMRを1基建設し約60年間運転した場合の経済的利益は、間接雇用も含めて年平均約700名分の雇用が建設の前段階に生み出されるほか、機器製造と建設期間中の雇用は1,600名分、運転期間中は約200名分、廃止措置期間中には約160名分になると指摘した。CIBのE.コリーCEOは今回、「原子力なしで2050年までに世界中のCO2排出量を実質的にゼロ化するのは不可能だとエネルギーの専門家が指摘していた」とコメント。約10億カナダドルの投資を通じて、CIBはOPG社がカナダ初のSMRを建設するのを支援し、温室効果ガスの排出量抑制を加速したいと述べた。オンタリオ州エネルギー省のT.スミス大臣は、「新しい原子力技術の採用という点で当州は常に世界をリードしており、CIBによる投資は、クリーンなエネルギーを生産しつつ新たな投資や雇用を生み出し、経済成長を促す原子力発電の素晴らしい可能性を実証するはずだ」と述べた。(参照資料:OPG社、CIBの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
31 Oct 2022
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ポーランドのM.モラビエツキ首相は10月29日、自身のツイッターアカウントに「米国のK.ハリス副大統領、およびJ.グランホルム・エネルギー省(DOE)長官との協議を終え、我が国の原子力発電プロジェクトではウェスチングハウス(WH)社の安全で信頼性の高い技術を採用することを確認した」と投稿した。同国では2021年2月に内閣が決定したエネルギー政策に基づき、国営企業が進めている小型モジュール炉(SMR)の導入計画とは別に、約100万kWの大型原子炉を2043年までに6基、合計600万~900万kW建設することを計画中。米WH社のほかに、フランス電力(EDF)と韓国水力・原子力会社(KHNP)がそれぞれの技術を提案していた。(参照資料:モラビエツキ首相の投稿、原産新聞・海外ニュース、ほか)
31 Oct 2022
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国際エネルギー機関(IEA)は10月27日、年次報告書の「ワールド・エナジー・アウトルック(WEO)2022年版」を公表した。世界のエネルギー・ミックスに関する長期的見通しを3通りのシナリオで予測している。 すべてのシナリオにおいて、世界で化石燃料の需要量が2020年代半ば以降に初めて頭打ちとなるほか、2050年まで年平均で2EJ(エクサジュール=10の18乗)ずつ減少するシナリオもあるとした。また、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻にともない、世界中でエネルギー・セキュリティが再構成され、同国が輸出する化石燃料は大幅に減少していくと指摘した。さらに、CO2排出量の実質ゼロ化に向け、原子力発電に投資する国の数が上昇。シナリオの一つでは、2050年までに原子力発電の容量が倍以上に増加するとの見通しが示されている。WEOは、IEAが発行する最も重要な刊行物の1つ。今回のWEO2022の中でIEAは、ロシアのウクライナ侵攻を発端とする世界的なエネルギー危機が歴史的ターニングポイントとなって、持続可能で確実なエネルギー供給システムへの移行を加速する可能性を指摘。また、エネルギー危機の影響はかつてない規模の広がりと複雑さを呈しており、天然ガスと石炭、および電力の市場では過去最大の混乱が生じているとした。地政学的および経済的混乱が一向に収まらないなかで、エネルギー市場は極端に脆弱な状態にあり、近年の世界のエネルギー供給システムがいかに脆く、持続可能でないかを物語っていると指摘した。このような分析結果から、IEAは「地球温暖化対策やCO2排出量のゼロ化政策がエネルギー価格を高騰させている」という一部の人々の主張を否定。エネルギー危機の悪影響から消費者を守るための短期的対策に加えて、多くの加盟国の政府が長期的対策を取り始めており、いくつかの国では石油や天然ガスの輸入先を多様化していると述べた。最も注目すべき対応策としては、米国で原子力に対する税制優遇措置等の気候変動対策を盛り込んだインフレ抑制法が成立したことや、欧州で2030年の温室効果ガスを1990年比で少なくとも55%削減するための政策パッケージが採択されたことなどを挙げている。また、日本では政府が脱炭素社会の実現に向けたGX(グリーントランスフォーメーション)プログラムを進めようとしており、韓国でも再生可能エネルギーと原子力発電シェアの拡大を目指していること、インドや中国でもクリーンエネルギーに移行する意欲的な目標が掲げられている点を指摘した。発電部門の主要電源は再エネに発電部門における世界の化石燃料による発電シェアは、太陽光や風力による発電量が過去10年間に急速に増加したことを反映し、2018年の約65%が2021年には62%に減少した。市場の状況も近年この変化を促しており、石油と天然ガスの世界価格は2020年代後半、新型コロナウィルス感染による制限の緩和を受けて高騰し始めた。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始を受けてこの傾向は大きく悪化し、いくつかの国で石炭火力の一時的な復活が見られたものの、CO2排出量の実質ゼロ化に向けた動きが急速に進展した国もあった。これは、再エネや原子力、二酸化炭素の回収、水素やアンモニアの利用などを組み合わせた対策への支援拡大によるものである。2021年11月の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)以降、CO2の実質ゼロ化を目標に掲げる国が増えており、再エネは今後世界中で長期にわたり主要な電源になるとIEAは予測している。各国政府が実際に実施中、あるいは発表した政策のみを考慮した「現状政策シナリオ(STEPS)」では、再エネは2030年までに総発電量の43%、2050年までには65%にシェアを拡大する見通し。各国政府の誓約目標が期限内に完全に達成されることを想定した「発表誓約シナリオ(APS)」では、再エネに移行するペースはさらに加速し、2030年時点の成長率はSTEPSシナリオより35%上昇するとIEAは見ている。原子力の拡大シナリオ原子力が今後も発電部門で一定の役割を担えるかについては、IEAは既存の原子炉で運転期間延長の判断が下される、あるいは新規の建設計画が成功するかにかかっていると指摘。STEPSシナリオで、原子力は約10%の発電シェアを維持するとIEAは予測したが、これには2022年から2030年までに新たに1億2,000万kWの原子力発電所の完成に加えて、2030年から2050年の期間に30か国以上でさらに3億kWの設備増設が必要である。また、APSシナリオでは、この期間中に年間約1,800万kWの原子力発電所が新たに追加されていくが、高いレベルの電力需要を想定したこのシナリオの中で、IEAは原子力発電シェアが10%近くにとどまるとしている。2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化するという「持続可能な発展シナリオ(NZE)」においては、2020年代に先進諸国の多くの既存炉で運転期間の延長が行われ、世界のCO2排出量を大幅に抑制。2022年から2050年までに年平均2,400万kWの新規原子力発電所が追加されるため、2050年までに世界の原子力発電設備容量は2倍以上に拡大する見通しである。しかしながら、このシナリオで想定した電力需要の伸び率が非常に大きいことから、2050年時点の原子力発電シェアは8%に落ち込むとIEAは予想している。(参照資料:IEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Oct 2022
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米エネルギー省(DOE)のエネルギー高等研究計画局(ARPA-E)は10月21日、原子力発電所の使用済燃料をリサイクルし、有効活用する技術の開発を促進するため、「使用済燃料の放射性同位体をエネルギーに転換する(CURIE)プログラム」の予算から、合計3,800万ドルを産官学それぞれが実施する12のプロジェクトに交付すると発表した。この支援を通じて、ARPA-Eは使用済燃料の処分にともなう環境影響を軽減し、高レベル放射性廃棄物の保管量を削減、国内で開発されている先進的原子炉用燃料の原材料を提供する。米国の原子力発電所は現在総発電量の約20%、クリーンエネルギーの約半分を賄っているが、使用済燃料から新たに生産されるクリーンエネルギーは7,000万戸以上の世帯に十分な電力を供給できるほか、新型炉向け新燃料の開発や、J.バイデン大統領が提唱する地球温暖化対策や化石燃料への依存削減も可能にするとARPA-Eは強調している。ARPA-Eによると、米国では現在、軽水炉から排出された約8万6,000トンの使用済燃料が全国70か所以上の原子力発電所で安全に保管されているが、この数量は年間約2,000トンずつ増加している。これらの使用済燃料には90%以上のエネルギーが残っているものの、すべて地層処分することが決まっている。このため、ARPA-Eが今年3月に開始したCURIEプログラムでは、使用済燃料から再利用可能なアクチニドを回収し、先進的原子炉の燃料用として効率的かつ経済的にリサイクルすることで燃料利用率を向上させ、地層処分される廃棄物の量や放射能毒性を大幅に削減する。具体的には、アクチニドを分離する革新的な技術や計量管理技術の開発、先進的原子炉の燃料用としてアクチニドのグループ回収が可能な再処理施設の設計などを進める計画。これらを通じて、先進的原子炉の燃料コストとして1セント/kWhを実現することや、使用済燃料の処分コストとして0.1セント/kWhの範囲を維持することを目指している。DOEのJ.グランホルム長官は、「全米の原子力施設で生産される安全で信頼性の高いクリーンエネルギーの利用をさらに加速するには、使用済燃料の実用的な活用方法を開発することが重要と考えている」とコメント。放射性廃棄物のリサイクルでクリーンエネルギーを生み出せれば、使用済燃料の保管量削減のみならず、関係する地域コミュニティの経済基盤の安定化にも貢献できると指摘した。今回の支援金が交付される産官学の12チームとしては以下のものが含まれており、ARPA-Eは核拡散抵抗性の高いアクチニドの分離技術やリサイクル施設での保障措置技術の開発等で、それぞれに約150万ドル~500万ドルを配分する。すなわち、アルゴンヌ国立研究所が実施する「使用済燃料中の酸化物を効率的に金属に転換するプロセス」の開発に490万ドル、キュリオ・ソリューションズ社における「使用済燃料のリサイクル技術『NuCycle』の開発・実証」に500万ドル、米国電力研究所(EPRI)が先進的原子炉の燃料供給用に進めるリサイクル技術開発に約280万ドル、GEグローバル・リサーチ社の「液体廃棄物再処理施設における革新的な保障措置対策開発」に約645万ドルなど。このほか、アラバマ大学やコロラド大学、ユタ大学等における関係技術の開発も対象となっている。(参照資料:ARPA-Eの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Oct 2022
2182
スロバキア政府が34%出資する同国最大手のスロバキア電力(SE)は10月22日、同国で20数年ぶりの新規原子炉となるモホフチェ原子力発電所3号機(ロシア型PWR=VVER、47.1万kW)が、同日に初めて臨界条件を達成したと発表した。1987年1月に本格着工して以降、同炉の建設工事は途中約16年にわたり中断しており、起動段階に到達するまで約35年を要した。同炉は来年初頭にもフル出力に達する見込みだが、同時着工した同型の4号機(VVER、47.1万kW)については、約2年後に起動段階に入ると説明している。スロバキアでは現在、モホフチェとボフニチェの2サイトで稼働する合計4基の原子炉で総発電量の50%以上を賄っており、原子力は国内の基幹電源という位置付け。モホフチェ3、4号機では格納容器がないタイプの第2世代のVVERを採用したため、安全性の改良とそれにともなう資金調達問題等で1992年から2008年まで建設工事が中断した。工事を再開する際、両炉の主要機器はチェコのスコダ社が供給する一方、計装制御(I&C)系については仏アレバ社(当時)と独シーメンス社、タービン発電機のエンジニアリングやプロジェクト管理はイタリア電力公社(ENEL)が担当することになった。今年8月になり、スロバキア原子力安全局(ÚJD)は3号機に対して運転許可を発給しており、これを受けてSE社は、9月9日に燃料の初装荷を開始。同月12日から20日までは原子炉容器の組み立て作業を行っている。同炉はその後、一次系と格納容器の気密試験や強度試験などを順調にクリアしており、SE社は今後実施する物理的起動試験で炉心の様々な特性を確認する計画だ。 また、この試験が完了した後は、炉内で発生した蒸気で実際にタービンを回す段階に移行し、出力が20%に到達した時点で同炉は国内送電網に接続される。SE社は出力の各段階で多くの試験を実施する予定で、同炉が最終的にフル出力で144時間の連続試運転をクリアすれば、2023年から少なくとも60年間の営業運転に入る。この段階でスロバキアは、電力分野でのカーボンニュートラルを達成できると表明している。(参照資料:SE社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Oct 2022
2464
米国のホルテック・インターナショナル社は10月19日、同社製小型モジュール炉(SMR)「SMR-160」の商業化に向けた標準設計の完成と、米国その他での同炉の建設プロジェクトを加速するため、韓国の現代E&C社(現代建設)との協力関係を拡大すると発表した。ホルテック社の「SMR-160」は、ポンプやモーターなどの駆動装置を必要としない、最大出力16万kWのPWR型SMR。同炉の開発については、米エネルギー省(DOE)が2020年12月に「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」で支援対象の一つに選定したほか、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が同炉について、「予備的設計評価(ベンダー設計審査:VDR)」の第一段階を2020年8月に完了している。ホルテック社はニュージャージー(NJ)州で保有する旧オイスタークリーク原子力発電所サイト、あるいは南部2州の候補サイトで「SMR-160」の初号機建設を計画しており、2021年11月に両社が事業協力契約を締結した際、現代建設は発電所BOP(主機以外の周辺機器)の詳細設計や発電所全体の建設仕様書を作成することに合意。ホルテック社の主要なEPC(設計・調達・建設)契約企業として、協力していくことになった。両社が結成したチームは、ホルテック社が開発中の「高エネルギー発光太陽集光器」やクリーンエネルギーの貯蔵・分配システム「グリーン・ボイラー」を「SMR-160」と組み合わせて、「クリーンエネルギー・エコ・システム」を早急に開発する必要があるとの認識で一致。18日付で新たに結んだ協力協定を通じて、両社は多様なクリーンエネルギー技術の開発を迅速化する考えで、米国の建設企業であるキーウィット社や日本の三菱電機からも協力を得ながら、各段階の承認手続き等の短縮化に向けて、大規模な修正が要らない標準設計を完成させ、世界中の多くの地域で「SMR-160」を建設していく方針である。昨年に事業協力契約を締結して以降、両社のチームは世界のクリーンエネルギー市場でリーダーとなるべく、「SMR-160」の設計・エンジニアリングや商業化に向けた緊密な共同作業を通じて協力関係を強化。「SMR-160」を中心に据えた「エコ・システム」で15か国以上の国に電力や地域暖房用の熱を供給できるよう、同炉と「グリーン・ボイラー」の建設に向けて協力。両社はまた、原子力発電所の廃止措置事業についても連携協力を進めており、ホルテック社がニューヨーク州のインディアンポイント原子力発電所で進めている廃止措置に現代建設の従業員を派遣、原子炉の解体から使用済燃料の取り扱いと管理に至るまで、廃止措置全体の業務に参加させている。今年7月には、ホルテック社は4基の「SMR-160」建設に向けて、NJ州キャムデンにある先進的機器製造プラントの能力を拡大し、同炉の大量製造工場とするため、米エネルギー省(DOE)の融資保証制度に74億ドル規模の申請書を提出した。同社はさらに、電気事業者であるエンタジー社の複数サイトで「SMR-160」を建設する実行可能性調査の実施に向け、同じ月にエンタジー社と了解覚書を締結している。現代建設のユン・ヨンジュン社長兼CEOは、「クリーンエネルギーを供給する事業チャンスの模索から計画立案、実際の建設に至るまで、当社はあらゆる段階で総合的ソリューションを提供する企業となるための、大きな一歩を刻んだ」と指摘。原子力設備の廃止措置市場に参入することにより、同社は原子力発電所のライフ・サイクル全般にソリューションをもたらす企業に生まれ変わると強調している。(参照資料:ホルテック社、現代建設(韓国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Oct 2022
2492
ドイツ連邦政府の環境・自然保護・原子力安全・消費者保護省(BMUV)は10月19日、国内に残存する商業用の原子炉3基を最長で2023年4月15日まで運転可能な状態を維持するため、内閣が原子力法の修正案を承認したと発表した。エネルギー供給リスクが増大する今年の冬季を乗り切るための重要措置となるが、この修正はO.ショルツ首相の決定指令に基づいて実行されることから、各州政府の意見を反映させる目的で連邦議会に設置されている参議院(上院)の承認を必要としない。2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて、同国では今年末までにすべての原子力発電所を閉鎖し、脱原子力を達成することになっていた。しかし、今回の内閣決定により、南部のイザール原子力発電所2号機(PWR、148.5万kW)とネッカー原子力発電所2号機(PWR、140万kW)、および北部に立地するエムスラント原子力発電所(PWR、140.6万kW)は、現在装荷されている燃料を使って3か月半に限り運転期間を延長。新たな燃料の装荷を許可しない一方、この期間に現行のモニタリングに追加して定期安全審査が行われることはない。また、この決定を実行するにあたり、連邦政府は直前まで運転期間の延長対象としていなかったエムスラント発電所について、所有者のRWE社から早急に合意を取り付けることになる。連邦政府は今回のような措置を必要とする理由として、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が長引き、天然ガスの供給量が低下していることや、干ばつの影響で河川の水位が低下し水力発電量が減っていること、フランスの原子力発電所の約半数が点検等により停止中である点を指摘している。連邦政府の経済・気候保護省(BMWK)は今年の3月から5月、および7月半ばから9月初旬にかけて、今期の冬季をカバーする送電網のストレス・テストを2回実施しており、電力供給の不足リスクを避けるには、これらの対策すべてが必要になると表明。9月5日の段階で、イザール2号機を運転するプロイセンエレクトラ社の親会社のE.ON社、およびネッカー2号機を運転するEnBW社に対し、これら2基を来年4月半ばまで維持する方針を提案、同月27日にはこの方針の実施に向けてこれら2社と基本合意に達していた。この時点では、北部のエムスラント発電所については原子力よりリスクの少ない石油火力で代替し、予定どおり年末で閉鎖することになっていた。BMWKのR.ハーベック大臣は今回の記者会見で、「来年の4月15日以降、これら3基に新たな燃料が装荷されることはないし、運転もそこで終了する」と表明。「その次の冬季には、ガスの輸入量を大幅に増加できると考えており、エネルギーの供給状況は今期より良くなるはずだ」と述べ、再生可能エネルギーを中心に国内発電設備を増強する考えを明らかにした。BMUVのS.レムケ大臣も、「原子力の段階的廃止政策はこれまで通り存続しており、それは4月15日に達成される」と強調。「それ以降、新たな高レベル放射性廃棄物は発生せず、原子力法を修正する目的は冬季の短い期間だけ原子炉の運転を延長して、送電網を安定させることにある」と指摘した。同大臣はまた、「このようなエネルギー危機の状況下でも、我々は原子力発電のリスク部分に目を光らせねばならない」としている。(参照資料:独連邦政府、BMUVの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
21 Oct 2022
2384
米メリーランド州で第4世代の小型高温ガス炉「Xe-100」を開発しているX-エナジー社は10月13日、同炉で使用する3重被覆層・燃料粒子(TRISO燃料)の商業規模の製造施設「TRISO-X(TF3)」を建設するため、同社の100%子会社であるTRISO-X社がテネシー州オークリッジの建設サイトで起工式を開催したと発表した。TRISO燃料は、U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン(HALEU燃料)を黒鉛やセラミックスで3重に被覆した粒子型燃料。電気出力7.5万kWの小型モジュール炉(SMR)となる「Xe-100」について、X-エナジー社は2028年の運転開始を見込んでいるが、TRISO燃料は「Xe-100」のみならず、他社が開発中の多くの先進的原子炉設計でも使用される見通しである。TF3の建設と操業を担当するTRISO-X社は今年4月、このように特殊な核物質(カテゴリーⅡ)の取り扱いに関する許可申請書を原子力規制委員会(NRC)に提出しており、NRCは現在、24~36か月かけてこの申請を審査中。早ければ2025年にも、TF3の操業が可能になると同社は予想している。TF3の初期段階の生産量は、「Xe-100」12基分に相当する年間8トン(ウラン換算)だが、2030年代初頭までに16トン/年の生産量を目指すとしている。テネシー州ではすでに、TRISO-X社のパイロット製造ラインと研究開発センターが所在していることから、同社はTF3サイトの準備やその他の許認可取得に関する作業も進めている。同社はTF3について「将来、商業規模の様々な先進的原子炉の開発と建設を可能にする先駆けになる」と評しており、TF3の建設と操業で400名以上の雇用が生み出されるほか、約3億ドルの投資が呼び込まれると指摘している。X-エナジー社のC.セルCEOは、TF3の起工式を開催したことについて「地球規模で脱炭素化を進めるという誓約を果すために、先進的原子炉技術を実現していく重要な節目になった」と強調。「Xe-100」の開発計画が2020年に、米エネルギー省(DOE)の「先進的原子炉設計実証プログラム(ARDP)」の支援対象に指定されたことから、「今後もDOE、および東部テネシー州やオークリッジのコミュニティと連携協力していきたい」と述べた。同CEOはまた、オークリッジで長年にわたって培われてきた原子力関係の専門的知見が、同地を北米初の先進的原子燃料製造施設建設の最適地にしたと指摘している。 なお、「Xe-100」の開発計画について、X-エナジー社は今年8月、DOEの「新型原子炉概念の開発支援計画(ARC)」の下で基本設計を完了したと発表した。今後は、実証炉建設のサイト選定作業を進めるほか、同炉の全体的な許認可手続きの一部として、来年原子力規制委員会(NRC)に同炉の安全性関係の技術や知見に関する追加のトピカル・レポートを提出、2023年末までには建設許可をNRCに申請する方針である。同炉の実際の建設については、ワシントン州の2つの公益電気事業者が同州内での共同建設を目標に、2021年4月にX-エナジー社と覚書を締結。メリーランド州のエネルギー管理局も今年6月、「Xe-100」で州内の石炭火力を代替できるか、経済面や社会面の実行可能性を調査すると発表した。国外では、ヨルダン原子力委員会とカナダのオンタリオ州政府が「Xe-100」の利用可能性を探るため、それぞれ2019年11月と本年7月に同社との協力合意書を交わしている。(参照資料:X-エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Oct 2022
2513
フィンランドでロビーサ原子力発電所(PWR×2基、各53.1万kW)を所有・運転する国有企業のフォータム社は10月17日、フィンランドと隣国スウェーデンにおける原子力発電所の新設に向け、実行可能性調査(FS)を2年計画で実施すると発表した。この中でフォータム社は、従来の大型炉のみならず小型モジュール炉(SMR)の建設を含め、必要な技術面と経営面の要件、規制面や政策面の要件なども検証する。また、建設計画の策定や立地、許認可など、新設関係の手続きについても詳細に調査するとしており、フィンランドとスウェーデンの両方で政策決定者や関係省庁、原子力安全規制当局などの関係者と幅広く協議する方針を明らかにしている。フィンランドでは今年3月、欧州で10年ぶり以上となる新規の原子炉(ティオリスーデン・ボイマ社のオルキルオト3号機、欧州加圧水型炉=EPR、172万kW)が送電を開始した。フォータム社は国内でロビーサ発電所を所有する一方、スウェーデンのオスカーシャム3号機(BWR、145万kW)にも一部出資。スウェーデンでは、先月新たに誕生した中道右派政権が新規原子炉の建設方針を表明している。このような背景から、フォータム社のS.-E.オルス発電担当上級副社長は、「社会全体が直面しているエネルギー自給や供給保証、CO2排出量の実質ゼロ化といった問題の解決は非常に難しいが、CO2を排出せず信頼性も高い原子力でこれらに対処するための要件を明らかにしていきたい」と述べた。フォータム社の発表によると、近年はエネルギー市場の不確実性が増しているため、原子力関係事業の多くは企業連合の形で進めることになる。例としては、原子力発電事業者と地域暖房企業や産業用の熱電購入企業などがあり、今回のFSで同社は、欧州の新しいプロジェクトや産業部門の水素利用にサービスを提供する事業についても可能性を探る。同社のFS実施担当者は、「原子炉の新設にともなう課題は良く知られているが、建設費と工期の縮減は不可欠だ」とコメント。今回のFSを通じて新たな協力関係やビジネス・モデルを構築し、SMRのように将来の世代に有望な原子力技術を実現していくと表明している。(参照資料:フォータム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Oct 2022
2081
スウェーデンの9月の総選挙で新たに発足した中道右派連合の新政権は10月14日、同国南部のティード城で政策協議を行った結果、2026年までの政権期間中に新規原子炉の建設も含めた対策として合計4,000億クローナ(5兆3,600億円)の投資を行うなど、具体的な原子力政策で合意した。採算性の悪化から、国営バッテンフォール社が2019年末と2020年末に早期閉鎖したリングハルス原子力発電所の2基(PWRとBWR各1基、ともに90万kW級)についても、安全運転が可能な状態であれば再稼働させるとしており、そのための徹底調査を速やかに実施する。環境法に記されている関連の禁止条項(新たなサイトにおける原子炉の建設禁止、同時に運転可能な原子炉の基数は10基まで、閉鎖済み原子炉の再稼働は禁止)についても、撤廃する方針を今回の「ティード合意」の中で明確に示している。今回の総選挙で、前政権の社会民主党は第一党の座を維持したものの、右派勢力である穏健党、キリスト教民主党、自由党の3政党の連立による新政権、および閣外協力する極右スウェーデン民主党の合計議席は、左派連合を僅差で上回った。新首相には穏健党のU.クリステション党首が今月17日付で選出されており、同国の政権は8年ぶりに右派勢力側に戻ったことになる。 この8年の間に社会民主党政権は、「責任のあるやり方で2040年までに再生可能エネルギー100%のエネルギー供給システムに移行する」ための政策を取っており、2014年のエネルギー政策合意の中で「原子力発電は将来的に全廃し、再生可能エネルギーとエネルギーの効率化で代替する」方針を表明。既存炉の建て替えに向けて予備調査を始めていた電力大手のバッテンフォール社に対しては、作業の中止を指示していた。今回の「ティード合意」で、4党は地球温暖化防止のための長期政策や電力の安定供給など、6分野の重要項目について協力していくことで合意している。エネルギー政策における新たな目標としては、前政権が目指していた「再エネ100%のエネルギー供給システム」を「非化石燃料100%のシステム」に変更。この目標を達成するため、エネルギー技術の選択においては再エネのみに限定せず原子力も選択肢に加えた中立的方針を復活させる考えだ。新たな原子炉建設に関しては、政府の特別借款4,000億クローナを通じて投資環境を整えていくほか、クリーンエネルギーに対する既存の信用保証制度を原子炉新設にも適用できるよう見直しを行う。政治的理由によって既存炉が閉鎖させられることを防ぐため、必要な法改正も行う。また、スウェーデン国内で小型モジュール炉(SMR)の建設と運転を可能にするため、規制面の条件整備を早急に実施する。建設にともなう許認可手続きの合理化と迅速化に向けて、環境法に新規則を導入し担当部局を一つに限定。指定を受けた同部局が、関係事項ごとに他の部局との調整を図る。さらに原子炉新設にともなう高額な申請費用を見直し、必要であれば環境影響面の審査を担当する国土環境裁判所に追加の予算を付け、審査の迅速化を図るとしている。なお、バッテンフォール社に対しては、閉鎖済みのリングハルス発電所サイトやその他の適切なサイトで、新規原子炉の建設計画を速やかに策定するよう指示する方針である。(参照資料:キリスト教民主党、穏健党の発表資料(スウェーデン語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Oct 2022
3208
米サザン社の子会社であるジョージア・パワー社は10月14日、ジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所で建設中の3号機(PWR、110万kW)に、燃料を装荷する作業を開始したと発表した。同炉および同じサイトで建設中の4号機(PWR、110万kW)はともに米国で約30年ぶりの新設計画であり、「燃料の装荷は3号機の起動と運転開始に向けて極めて重要な節目になった」と同社は強調。装荷後は起動試験を実施して、同炉の一次系や蒸気供給系で設計通りの温度や圧力を実現するなど、健全に運転できることを実証し、冷態状態から初の臨界状態に移行、送電網に接続した後は出力を定格まで上昇させる計画である。現時点で3号機の営業運転開始は、最新のスケジュール通り2023年第1四半期に予定されている。ボーグル3、4号機では米国で初めてウェスチングハウス(WH)社のAP1000を採用しており、建設工事はそれぞれ2013年3月と11月に始まった。これらとほぼ同時期に、同じくAP1000を採用して本格着工されたV.C.サマー2、3号機建設計画は、WH社による2017年3月の倒産申請を受けて中止を余儀なくされたが、ボーグル増設計画では、同じくサザン社の子会社で両炉の運転を担当予定のサザン・ニュークリア社がWH社から建設プロジェクトの管理業務を引き継ぎ、建設工事を継続していた。同プロジェクトでは2020年10月に3号機の冷態機能試験が完了し、同年12月に初装荷用の燃料がサイトに到着した。2021年7月末には3号機の温態機能試験が完了しており、原子力規制委員会(NRC)は今年8月、同炉が建設・運転一括認可(COL)とNRCの規制に沿って建設されたこと、運転も行われる見通しであることを確認した上で、サザン・ニュークリア社に3号機の燃料装荷と運転開始を許可した。初装荷用の燃料は現在、サイト内の使用済燃料用の貯蔵プールに保管されているため、サザン・ニュークリア社とWH社の技術者は今後数日間かけて、157体の燃料集合体を一体ずつ同プールから取り出し3号機の炉心に装荷する。3、4号機はジョージア州の4社が共同で保有しており、ジョージア・パワー社が45.7%出資しているほか、オーグルソープ電力が30%、ジョージア電力公社(MEAG)の子会社が22.7%、およびダルトン市営電力が1.6%出資。ジョージア・パワー社で会長と社長を兼任する C.ウォマックCEOは、同プロジェクトについて「ジョージア州の今後のエネルギー供給を担う長期の重要な投資案件であり、我々は歴史的偉業を成し遂げつつある」とコメント。今後、60年から80年にわたり、270万もの顧客や州民にクリーンでCO2を排出しない安価なエネルギーを提供していくとしている。(参照資料:ジョージア・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Oct 2022
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米エネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)は10月5日、全米の様々なコミュニティがクリーンエネルギー社会への移行に向けて、それぞれに適したエネルギー技術の選択が可能になるよう支援するイニシアチブ「Emerging Energy Market Analysis (EMA)」を5大学と共同で開始した。これまでは、各コミュニティが多数の化石燃料発電所を採用し、大型の原子力発電所や再生可能エネルギーが果たす役割は小さかった。しかし近年、多くのコミュニティがCO2を排出しないクリーンエネルギー社会への移行を模索するようになり、先進的なエネルギー技術が数多く浮上するなかで、確実で持続可能、誰にとっても公平なエネルギー・インフラを選択することが非常に複雑で難しくなっている。このため、INLは地元アイダホ州のボイシ州立大学、アラスカ大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)、ミシガン大学、ワイオミング大学と共同で「EMA」を設置した。これらに所属する社会学者や弁護士、エネルギー政策の専門家、エンジニア、科学者とチームを組み、各コミュニティがエネルギーを選択する際の基礎となる社会的条件や財源、関係インフラや能力などを包括的に分析。結果として、「意思決定のための多次元的枠組み」を開発した。「EMA」チームは、最適のエネルギー選択を可能にする主要ツールとしてこの枠組みを使い、様々なエネルギー技術が各コミュニティにもたらす恩恵や課題をリスト化、それぞれに都合の良い時期や場所に合わせてエネルギー選択ができるよう支援する。この枠組みを通じて、エネルギー技術のデベロッパーは実際の建設を始める前に社会的な認可が得られるなど、デベロッパーのみならずコミュニティの政策決定者にとっても有益なものになると強調している。この枠組みの開発に携わったINLの原子力エコノミスト、D.シュロップシャー氏によると、「他の機関と異なり、我々はユーザーが特定のエネルギー技術を評価しようとする際、何を重要視するか、ほかの選択肢とどのように比較するか、また、実際にかかるコストをどうするか等について理解するよう努めている」とのこと。原子力については、これまでの軽水炉も先進炉も、CO2を排出せず安全かつ信頼性が高いという点で非常に有利だが、「EMA」では原子力の評価方法を変えつつある。「以前にも増して原子力の社会的要素を考慮するようになっており、原子力のような技術をコミュニティがどのように受け入れるのか、また、その理由はなぜか等に着目している」と同氏は述べた。INLによると、「EMA」の枠組みはまた、DOEが先進的原子力技術の商業化支援のため実施しているイニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」や、同技術の実証を目的とした「国立原子炉技術革新センター(NRIC)」を補完する役割を担う。炉型等のデベロッパーがそれぞれの炉型の商業化に向けてこれらのプログラムを活用する際、「EMA」は専門的知見をデベロッパーに提供、その技術を市場に出す際の分析・評価等で支援することになる。(参照資料:INLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Oct 2022
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カナダのウラン生産大手であるカメコ社と、再生可能エネルギーに特化した投資会社のブルックフィールド・リニューアブル・パートナーズ(BEP)社による戦略的企業連合は10月11日、米国の大手原子力発電機器メーカーであるウェスチングハウス(WH)社を総額78億7,500万ドルで買収すると発表した。この総額には負債も含まれており、これを除いた株式の価値は約45億ドル。WH社の株式は現在、ブルックフィールド・ビジネス・パートナーズ(BBU)社が44%、残りを提携する機関投資家が保有しており、カメコ社は約22億ドルで全体の49%を取得しWH社の最大株主となるほか、BEP社と複数の機関投資家が共同で約23億ドルを支払い、それぞれ17%と34%取得する。買収手続きは、BBU社の関係投資家や規制上の承認を得たうえで、2023年後半に完了する予定である。BBU社の発表によると、同社とBEP社の親会社であるブルックフィールド・アセット・マネジメント社が2018年に東芝からWH社を買収して以降、WH社はBBU社の下で中核事業である原子力発電機器や関連サービスに改めて集中。運営費の削減や社内の専門技術を強化することにより、その収益性は2倍近くに拡大した。また、原子力発電は近年、脱炭素化という世界的な目標の達成に有効な、信頼性の高いクリーンエネルギー源として認識されつつあり、WH社の事業はこうした強力な追い風の恩恵を受ける理想的な位置にある。 このような背景から、カメコ社とBEP社はそれぞれが保有する原子力関係とクリーンエネルギー関係の専門的知見を統合、クリーンエネルギー社会移行への中核事業として原子力を位置づけている。今回の買収を通じて、原子力部門を戦略的成長の中心基盤とする考えだ。BBU社のC.マドンCEOは、「この4年以上の間に当社はWH社の事業運営を大幅に改善しており、売り上げを拡大するとともに世界的リーダーとしての立場も強化。同社の経営状態は非常に良好だ」と述べた。カメコ社のT.ギッツェル社長兼CEOは、「原子力部門にとって、市場はかつてないほど良好な状態にあり、原子力は安全・確実かつ安価に無炭素なベースロード電力を生み出せる数少ない発電方法の一つだ」と表明。電化や脱炭素化、エネルギーの供給保証が優先される世界の中で、その重要性はますます大きくなると指摘した。同CEOはまた、「WH社の買収によって、原子力のバリュー・チェーン全体が成長するための基盤が築かれるほか、当社の戦略とも完全にマッチする」と強調。エネルギーの原産国や輸送の安全性が大きな関心事となっている現在、既存の顧客のみならず新たな顧客のニーズに応えるカメコ社の能力が増強されるとした。さらに、「WH社が提供する原子力発電設備製造や関連サービス、原子燃料は強力な収入源となり、当社のウラン燃料事業を補完する安定したキャッシュ・フローが生み出される」と説明している。(参照資料:BBU社、カメコ社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
13 Oct 2022
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英国で原子力関係施設の廃止措置や放射性廃棄物の管理を担当する原子力廃止措置機構(NDA)は10月11日、ウェールズ北部にある閉鎖済みのトロースフィニッド原子力発電所で小型モジュール炉(SMR)の建設を計画しているエギノ社(Cwmni Egino)を支援するため、同社と了解覚書を締結したと発表した。NDAは英国内で閉鎖された旧式のガス冷却炉(GCR、通称マグノックス炉)サイトなど、原子力発電所の立地用に指定されている17サイト、950ヘクタールの土地をすべて所有している。一方のエギノ社は、ウェールズ政府がトロースフィニッド・サイトの再開発と周辺地域における社会経済の再活性化を目指して、2021年に設立した開発企業である。今回の覚書で、NDAは同サイトの特性に関する情報や専門的知見をエギノ社と共有し、子会社のマグノックス社が実施している廃止措置作業を新規のSMR建設計画と調整。このプロジェクトから影響を受ける利害関係者との協議や社会経済開発計画の策定についても、エギノ社をサポートする。エギノ社は現在、2027年にSMRの建設工事を開始できるよう、事業提案を作成中だ。採用炉型は未定。英国ではビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が今年4月、英国のエネルギー自給を長期的に改善していくという新しい「エネルギー供給保証戦略」を公表。CO2の排出量を実質ゼロ化する観点から、2050年までに安全でクリーン、低価格な原子力で現在の約3倍に相当する最大2,400万kWの発電設備を確保し、国内電力需要の最大25%を賄う方針を明らかにした。NDAとエギノ社は翌5月、この戦略の実行を支援する活動の一環として、新規原子炉の建設計画を提案するため、協力協定の締結に向けた作業を開始すると表明。今回の覚書締結はこれに続くものとなる。NDAのD.ピーティ最高経営責任者は、「我々が所有するサイトの有効利用に向けて、現在複数の関係者と協議している」とコメント。「エギノ社への支援提供が正式なものになったことは重要な一歩であり、このプロジェクトが成功すれば、ウェールズ北部に社会的利益をもたらすだろう」と述べた。ウェールズ政府のV.ゲッチング経済相も、エギノ社を設立した理由について「トロースフィニッド・サイトのポテンシャルを最大限に活用することにより、地元コミュニティのみならずウェールズ北部の幅広い地域に雇用やスキルの習得機会を与えるなど、経済的利益を提供することにある」と説明している。英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックス理事長は同日、「ウェールズではかつて2サイトで原子力発電所が稼働しており、そのうちの一つであるトロースフィニッド発電所サイトは今後もクリーンな電力の生産で大きな役割を果たし天然ガスの利用量を削減、英国のエネルギー供給保証を強化していくだろう」と述べた。(参照資料:英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Oct 2022
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英国イングランド南東部のサフォーク州で、EDFエナジー社が準備しているサイズウェルC(SZC)原子力発電所(UK-EPR、167万kW×2基)建設計画について、英仏の首脳は10月6日の共同声明で両国政府が全面的に支援する考えを確認した。この声明文は、フランスのE.マクロン大統領の提唱によりチェコのプラハで開催された「欧州政治共同体(EPC)」の第一回会合に合わせ、同大統領と英国のL.トラス首相が初めて会談し、取りまとめた。両国首脳は、ロシア産化石燃料からの脱却とクリーンエネルギーへの移行は両国共通の課題であるとした上で、エネルギー関係の協力促進を特に協議。原子力発電は再生可能エネルギーとともに、一貫性のあるクリーンエネルギーへの移行戦略の一部であると再確認し、SZC建設計画を全面的に支援していくことで合意した。両首脳は、来月にもSZC関係者が「最終投資決定(FID)」を下すなど、建設準備を整えることを期待すると述べた。来年開催される英仏首脳会談に先立ち、首脳らはまた、両国間の民生用原子力協力全般について、イノベーションやインフラ開発、人材育成等についての協力をさらに拡大していく方針を表明している。SZC計画では、フランス電力の英法人であるEDFエナジー社の下で同計画を担当する子会社の「NNB GenCo(SZC)社」が2020年5月、英国の2008年計画法に基づき、国家的重要度の高いインフラ設備の建設・操業プロジェクトで取得が義務付けられている「開発合意書(DCO)」の申請書を計画審査庁(PI)に提出した。今年7月に、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)のK.クワルテング大臣(当時)は、PIの審査当局が提出した報告書や、その他の関係文書を慎重に考慮した結果、同計画へのDCO発給を決定している。なお、トラス政権の発足に伴いBEISでは新たにJ.リースモッグ大臣が就任し、保守党党大会における4日のパネル討論で「原子力発電を誠実に支援していく」考えを表明した。この討論には産業界の代表者も加わり、英国における将来のエネルギーミックスの中で原子力が果たす役割について議論。同大臣は将来のいかなるエネルギー戦略においても、原子力は確実に中心的役割を担うと述べた。また、この戦略にはベースロードの電力を安定して供給することの重要性があると指摘しており、同大臣としては1950年代から英国で信頼性の高い電力を供給してきた原子力であれば、今後もその役割を託すと明言している。同大臣はさらに、「原子力なくしてCO2排出量の実質ゼロ化は不可能、それどころか電力供給の確保戦略さえあり得ない」と表明。同大臣によれば、原子力は安全かつ十分な理解も得られている優れたエネルギー・オプションであり、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻といった地政学的な出来事からも被害を受けにくく、1kWhあたりのコストも予測しやすい。同大臣は「大型原子力発電所の建設にふさわしい場所はどこにでもある」と述べており、SZC発電所だけで600万戸を超える世帯に少なくとも60年間、信頼性の高い低炭素な電力を供給可能だと指摘している。(参照資料:英国政府、EDFエナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
11 Oct 2022
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米バージニア州のG.ヨンキン知事は10月3日、最新の「2022年版エネルギー計画」を公表し、州内で増加するエネルギー需要を満たすには、原子力や天然ガス、再生可能エネルギー、新しいエネルギー源など、利用可能なエネルギー技術をすべて活用するという「全方位的アプローチ」を取るべきだと表明した。この中でも、原子力利用を拡大し同州を原子力技術革新の主要なハブとする考えを明らかにしている。同州では、ドミニオン・エナジー社がサリー(87.5万kWのPWR×2基)とノースアナ(約100万kWのPWR×2基)の両原子力発電所を運転しており、サリー発電所については原子力規制委員会(NRC)が2021年5月に、運転期間の延長に向けた同社の2回目の申請を承認。これら2基はそれぞれ2050年代まで、80年間運転を継続できることになった。また、ノースアナ発電所についても、NRCは同社が2020年9月に提出した2回目の運転期間延長申請を審査中である。バージニア州のエネルギー省はこの計画を策定するにあたり、州政府はエネルギー需要を満たすのみならず既存のエネルギー供給源をクリーンエネルギー源に移行させるため、あらゆるオプションを検討。今後新たに浮上するクリーンエネルギー技術をすべて採用することにより、柔軟に移行を進めることができると指摘している。新しいエネルギー計画ではまず、同州におけるエネルギー経済の現状を分析、その上で今後の政策決定の基盤となる実用的なアプローチや様々な勧告を、州議会や州内の産業界が直ちに採用できる形で提示。同計画が提唱する全方位的アプローチは、エネルギー供給における信頼性や価格、技術革新、競争、環境影響等に関する同州の基本理念に基づき、同州のエネルギー需要量拡大に対応する柔軟性の高い道筋を示しているとした。このエネルギー計画では具体的な勧告事項として、州内のエネルギー需給の現状や進展状況を把握できるよう、同州のエネルギー構成を定期的に再評価すべきだとした。また、責任を持ってエネルギーの移行を進めるには、将来のエネルギー需要量の予測とそれを踏まえての対策立案で、実行者に真摯な謙虚さが求められると指摘している。さらに、同州内で将来的にクリーンエネルギーを豊富に確保するため、同州は革新的な技術に戦略的な投資を行うべきだとしており、具体的には水素製造やCO2の回収・貯留、有効利用(CCSU)、小型モジュール炉(SMR)を挙げた。商業用SMRを同州南西部で10年以内に建設するという目標の設定に向け、財政支援の必要性を支持するとしている。州内の原子力事業に関しては、同エネルギー計画は米BWXT社と仏フラマトム社が同州のリンチバーグに拠点の一つを置いている事実に言及。ノーフォークの海軍基地では、軍事造船企業のハンティントン・インガルス社が原子力潜水艦や空母のメンテナンスとアップグレードを受け持っており、これらの「バージニア原子力企業連合」が、同州や米国の原子力産業に参加する82社の関係プログラムや資源を州内で調整しているとした。バージニア州はまた、全米の大学に設置されている30ほどの原子力工学科のうち2つが存在するなど、原子力関係の人的資源についても米国のリーダー的地位にある。州内にある複数のコミュニティカレッジでは原子力関係の労働者を支援するコースが設けられており、同州の「エネルギー関係労働力企業連合」は次世代のエネルギー専門家を育成中である。こうした原子力研究開発の最先端に位置する立場を生かし、バージニア州はSMRの技術開発でも米国を牽引すべきだと今回のエネルギー計画は表明。州の南西部で米国初の商業用SMRを建設し、使用済燃料のリサイクル技術を開発すべきだと提唱しており、それによってCO2を排出せず、使用済燃料の量も最小限というエネルギーシステムを確立することを訴えている。(参照資料:バージニア州知事の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Oct 2022
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米国空軍省(DAF)の民間事務所である「エネルギーと施設および環境問題担当・空軍次官局(SAF/IE)」は9月26日、アラスカ州のアイルソン空軍基地でマイクロ原子炉を試験的に運転するプログラムの実施に向け、国防兵站局と共同で「提案を依頼する文書(RFP)」を発出した。この試験プログラムについては、2020年9月にDAFが「関係する情報の提供依頼書(RFI)」を発出しており、翌2021年10月にはマイクロ原子炉の設置地点としてアイルソン空軍基地を選定した。DAFはその後、RFPの案文を作成していたもので、今回RFPを発出した後は2023年にマイクロ原子炉のベンダーを選定し、原子力規制委員会(NRC)を交えた許認可関係の活動を開始する。2025年には建設工事を始めるなど試験段階に移行する計画で、2026年に運転開始前試験、2027年までに試験運転を終えた後は商業運転に入るとしている。 DAFは空軍としてのミッションを成功裏に遂行するため、所有施設におけるエネルギーシステムのリスク対応能力の増強を進めており、次世代技術であるマイクロ原子炉で安全・確実かつ信頼性の高いクリーンエネルギーをアイルソン空軍基地に導入し、その技術を実証。十分利用可能であることを決定付けるなど、国防インフラ施設に確実にエネルギーを供給する今後のイニシアチブに、新たな知見をもたらしていく考えだ。折しも、国防総省(DOD)が同様に、気候変動にともなうリスクの緩和や耐久性があるクリーンエネルギー源の模索で、積極的な活動を展開中。この目標の達成に向けて、エネルギー省(DOE)が「国防権限法2019」に基づき、認可されたマイクロ原子炉を2027年末までに少なくとも1基、建設・運転するための商業契約を締結し、DOD施設にリスク対応能力を持たせるための試験プログラムを実施することになった。マイクロ原子炉の定義としてDAFは、「電力と熱エネルギーを生産できる出力0.1万kW~2万kWのシンプルでコンパクトな原子炉設計」と述べており、使用する燃料で定義されるわけではないと説明。アップグレードが容易なモジュール式の機器を備える一方、冷却材として必ずしも水を使用せず、排出する放射性廃棄物の量も限られているとした。マイクロ原子炉はまた、炉心が過熱するのを防ぐため、変化する条件や需要に応じて自動的な調整能力を備えるなど、固有の安全性がある。送電網から切り放された場所でも発電が可能なほか、CO2の排出量も削減できることから、DAFは国防インフラ施設の中でも、国内遠隔地域の重要な軍事施設にエネルギー供給するのに有望だとしている。DAFで環境と安全性およびインフラ問題を担当するN.バルカス次官補代理は、「地球温暖化や国防上の脅威にさらされながらDAFが確実かつ持続的に使命を果たすには、このプログラムが非常に重要になる」とコメント。いかなる地点においても、空軍施設に安全で信頼性の高いエネルギーの供給が可能であることを実証していくと強調している。(参照資料:米空軍省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
05 Oct 2022
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ルーマニアの国営原子力発電会社(SNN)は9月27日、国内で米ニュースケール・パワー社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を建設するため、民間エネルギー企業のノバ・パワー&ガス社と合弁で、同計画のプロジェクト企業「RoPower Nuclear社」を設立したと発表した。計画では、ルーマニア南部ドゥンボビツア県のドイチェシュテイ(Doicesti)で13年前に閉鎖された石炭火力発電所の跡地に、出力7.7万kWのNPMを6基備えた「VOYGR-6」(合計出力46.2万kW)を建設する。2028年頃の完成を目指す。同発電所ではまた、出力約8万kWの再生可能エネルギー源も併設する予定である。SNNとノバ社が折半出資するRoPower社は今後、米国のJ.バイデン大統領が今年6月にルーマニアへの提供を約束した支援金1,400万ドルを使って、この計画の予備的な基本設計(FEED)調査を実施する。具体的には、設計・エンジニアリング活動や建設サイトの詳細な技術分析、国内外の基準に適合する許認可活動を行うとしており、その際は国際原子力機関(IAEA)が今年8月に実施した「立地評価・安全設計レビュー(SEED)」の勧告事項も適用する方針である。 設立の記念式には、米国務省のJ.フェルナンデス経済成長・エネルギー・環境担当次官やルーマニア・エネルギー省のV.ポペスク大臣が同席した。同大臣は、ルーマニアで建設されるSMR初号機が欧州においても初のものになるとした上で、「この建設計画は、原子力分野における米国とルーマニアの連携協力の成功例だ」と指摘。この協力により、ルーマニアは最も重要な経済面の安定やエネルギーの供給保証という恩恵を被ることから、ルーマニア政府も同計画が近隣諸国を含めたエネルギーの自給に有効との認識から、支援していると強調した。この計画に関しては米国政府も積極的に後押ししており、2019年3月にSNNとニュースケール社が最初の協力覚書を結んだ翌年の10月、ルーマニアと米国の両政府は、ルーマニアでチェルナボーダ3、4号機を完成させる計画を米国が支援するだけでなく、同国の民生用原子力発電部門の拡充と近代化にも協力するため、「原子力分野における政府間協力協定(IGA)」に調印した。これと同じ日に米輸出入銀行(US EXIM)は、ルーマニアのエネルギー・インフラ分野等に対して、最大70億ドルの財政支援を行うための了解覚書を同国政府と結んでいる。2021年1月になると、米貿易開発庁(USTDA)がSMR建設サイトの選定に向けた予備的評価作業のため、約128万ドルの技術支援金をSNNに交付。この調査が完了した今年5月には、建設に適した候補地が複数特定されており、最有力候補であるドイチェシュティで詳細調査を行うことになった。同月24日には、SNNとニュースケール社、およびドイチェシュティの石炭火力発電所オーナーで、ノバ社を傘下に置くE-Infra社グループが了解覚書を締結、SMR初号機の建設について分析評価を行うと表明している。(参照資料:SNNの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Oct 2022
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