英ロールス・ロイス社が80%出資する子会社のロールス・ロイスSMR社は11月17日、同社製の小型モジュール炉(SMR)設計を規制当局の包括的設計認証審査(GDA)にかけるため、申請書を提出したと発表した。これにともなう最初の手続きとして、政府のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が同社の初期スクリーニングを実施するとしている。初期スクリーニングでは、原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)が対象設計の安全・セキュリティと環境影響についてGDAを正式に開始するのに先立ち、設計企業に同審査を受ける能力と資質が備わっているかをBEISが確認する。英国政府から結果が出るまでに、最大4か月を要する。ロールス・ロイスSMR社は、ロールス・ロイス社グループがSMRを始めとする先進的次世代原子力技術の開発と商業化を大規模に進めることを目指して、今月8日に新たな株式を発行して設立したもの。SMRなど先進的原子炉設計の規制承認プロセスについては、BEISが今年5月、GDAの対象に含める方針を明らかにしており、その際、申請ガイダンスも同時に公表。ロールス・ロイス社はその後まもなく、同社製SMRでGDAの実施を申請すると表明していた。ロールス・ロイスSMR社のSMR発電所設計は出力47万kWとなる予定で、これは陸上風力発電のタービン150台分以上に相当するという。少なくとも60年間稼働してベースロード用電源としての役割を果たすほか、間欠性のある再生可能エネルギーを補うことにより、再エネ源の設置容量拡大を支援。同社としては、2030年代初頭にもSMR発電所を国内送電網に接続することを計画している。今回の申請について、同社で規制・安全問題を担当するH.ペリー取締役は「英国製のSMR設計として初めて、規制承認プロセスに入るためのものであり、原子力産業界にとっては重要な節目になった」とコメント。同社は、このプロセスに入る前の段階ですでに同SMRの設計に関わる270件の重要な決定を下しており、「規制当局のGDAチームとは効率的に審査を進める自信がある」と述べた。同取締役はまた、同プロセスへの対応で約300名のスタッフをフルタイムで当たらせる方針だと表明。「原子力産業界と規制当局はともに、これまでのGDAから非常に多くの教訓を学んでおり、当社はそれらを活用して規制当局と共同アプローチを図りたい」としている。なお、BEISは今月9日、ロールス・ロイスSMR社のSMR開発に対するマッチングファンドとして、2億1,000万ポンド(約320億円)を提供すると発表した。英国の戦略的政策機関である「UKリサーチ・アンド・イノベーション(UKRI)」が「低コストな原子力の課題(Low Cost Nuclear Challenge)」プロジェクトを進めるのに際し、2019年11月に「産業戦略チャレンジ基金(ISCF)」から1,800万ポンド(約30億円)を同社に提供したのに続く措置。マッチングファンドは、同じISCFから拠出するとしている。(参照資料:ロールス・ロイスSMR社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Nov 2021
3363
米国のJ.バイデン大統領は11月15日、1兆2,000億ドル規模という「超党派のインフラ投資法案(下院3684号)」に署名した。これを受けてエネルギー省(DOE)は同日、「地球温暖化に立ち向かいつつ、持続可能な経済を構築するための大型投資法が可決成立したことから、米国ではクリーンエネルギーに基づく将来や、かつて無い規模の大気質の改善、無数の高サラリー雇用の創出等に道を拓くための投資が行われる」と表明した。CO2を排出しない原子力に関しても、既存設備の温存と先進的な技術開発のために予算が配分されるため、DOEはバイデン大統領が目標に掲げる「2035年までに電力部門を100%カーボンフリーとし、2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化する」の実現に向け、同省が方向性の立案等で一層効果的な役割を果たせると強調している。バイデン大統領は就任前の選挙戦時代から、「より良い復興(Build Back Better)」をスローガンとする経済政策を発表しており、その中で「環境・インフラへの投資」を他の主要な3政策と合わせて表明。その主旨は「近代的で持続可能なインフラと公平なクリーンエネルギーの未来を築くこと」であり、具体的な項目として2035年までに排出量ゼロの電力部門を実現するほかに、エネルギー効率の高い建物の建設や(蓄電池や次世代素材のエネルギー設備等)クリーンエネルギーの技術革新に投資を行うことなどを挙げていた。DOEが11月9日に発表した「超党派インフラ投資法案」のファクトシートによると、同法はバイデン大統領の「より良い復興」計画における重要な要素である。同法がDOEに提供する620億ドルを通じて、DOEはより多くの米国民に一層公平にクリーンエネルギーを提供できるよう、エネルギーの効率化やクリーンエネルギーに対する各家庭やコミュニティ、企業らのアクセスを大幅に拡大。信頼性の高いクリーンな電力を廉価で提供するとともに、クリーンエネルギー技術の実証を通じて未来のエネルギー技術を構築するとしている。クリーンエネルギーの生産が可能な既存設備の温存に関しては、DOEはまず運転開始後数10年が経過した既存の原子力発電所と水力発電設備で、合計27%の電力を米国が得ていると指摘。クリーンエネルギー源として重要であるものの、高経年化にともない維持費がかさんでいるため、米国はこれらの無炭素な主要電源を失うリスクに直面している。「超党派インフラ投資法」ではこれらの電源を確実に維持するための資金が提供されることになっており、DOEによれば、原子力発電所の早期閉鎖を防止する「民生用原子力発電クレジット・プログラム」に60億ドルを配分。この予算を通じて、DOEは全米の原子力発電所で数千名という雇用を維持していくが、プログラムの適用が許されるのは早期閉鎖のリスクにさらされている発電所で、長期的に安全な運転を続けられる状態だと認められていることが条件になる。また、先進的な原子力技術の開発には25億ドルを割り当てる予定。これにより、DOEは1日24時間、年中無休でクリーンな電力を生産するほか、関係雇用も新たに生み出すとしている。なお、今回の法案成立を受けて、小型のペブルベッド型高温ガス炉「Xe-100」を開発中のX-エナジー社は同日、「DOEの『先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)』から引き続き、2025会計年度まで最大11億ドルが当社に提供されることになった」と表明した。DOEは昨年5月に開始したARDPの初回の支援金交付対象として、同年10月にX-エナジー社と、「ナトリウム冷却高速炉」を開発中のテラパワー社を選定した。ARDPは、このような先進的原子炉設計を2020年代末までに運転可能にすることを目指す官民のコスト分担型パートナーシップ。X-エナジー社はARDPを通じて、商業規模の「Xe-100」初号機をワシントン州で建設することを計画している。同社によれば、バイデン政権と議会は2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を米国のみならず世界中で達成するため、先進的原子力技術を無炭素の重要なベースロード電源と認識しており、同技術の実証で今後も世界を牽引していく方針だとしている。(参照資料:DOEの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Nov 2021
3700
中国核工業集団公司(CNNC)は11月12日、山東省栄成の石島湾で建設中の「ペブルベッド型モジュール式高温ガス炉(HTR-PM)」の実証炉(ツインタイプで合計電気出力21.1万kW)で、11日にモジュールユニットの2基目が臨界条件を達成したと発表した。中国のHTR-PMでは、電気出力が約10万kWのモジュールユニット2基で1つの発電機を共有しており、今年9月に最初の1基が臨界条件を達成した。本格着工したのは2012年12月のことで、それ以降このサイトでは、今年3月までに冷態機能試験や温態機能試験が完了、国家核安全局(NNSA)は8月に運転許可を発給した。これにともない燃料の初装荷作業が行われており、建設工事を進める「華能山東石島湾核電有限公司(SHSNPC)」は、年内にも送電網への接続を目指している。今後は、1基目のユニットで完了したゼロ出力の物理試験など、様々な試験を2基目でも実施する計画である。この建設計画はHTR技術の実証を目的としたもので、中国は電熱併給が可能で固有の安全性を有する第4世代のHTR開発を「国家重大特別プロジェクト」の1つに選定。CNNCはHTR技術の商業化を進めることにより、習近平国家主席が提唱する「三新一高」(科学技術の新しい成果や新興技術を応用し、新たな開発コンセプトの産業モデルを高品質で構築する)へのすべての関係組織の真摯な取り組みが示されると意義を強調した。HTRの技術革新を通じて、中国が目標に掲げる「CO2排出量を頭打ちにする(ピークアウト)こと」と「実質ゼロ化」を進め、高品質の原子力産業界を築いていく考えだ。中国のHTRで技術研究開発の中心的役割を担っているのは北京の清華大学で、同大の研究院は熱出力11万kWの実験炉「HTR-10」を2003年から運転中である。実証炉となる「HTR-PM」の建設工事はSHSNPCが進めており、同大はSHSNPCに対して20%出資。このほか、同大と協力関係にあるCNNC傘下の中国核工業建設集団公司(CNEC)が32.5%を、5大発電集団の一つである華能集団公司が47.5%を出資している。また、清華大学の子会社の「清華控股有限公司」とCNECの合弁企業である「中核能源科技有限公司(チナジー社)」は、同建設工事の設計・資材調達・建設(EPC)契約を請け負っている。HTRは発電だけでなく地域熱供給や海水の淡水化、水素製造にも利用できるため、日本ではすでに日本原子力研究開発機構が1999年以降、大洗の高温工学試験研究炉(HTTR)で研究開発を実施中。国外ではポーランドも大型炉の建設計画と並行して、HTR導入の実行可能性を模索している。(参照資料:CNNC、華能集団公司の発表資料(中国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Nov 2021
4404
カナダのテレストリアル・エナジー社は11月8日、同社製の小型モジュール炉(SMR)など、カナダで開発された第4世代のSMRがオンタリオ州で建設された場合、膨大な利益が同州やカナダ経済にもたらされるとの分析調査結果を発表した。この調査は、同社がオンタリオ州を本拠地とする土木建築・コンサルティング企業、ハッチ社に委託して実施したもの。同州では現在、州営電力のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社がダーリントン原子力発電所の敷地内で、テレストリアル社の小型モジュール式・一体型溶融塩炉「IMSR」を含む3つのSMR設計の中から、1つを選択して建設することを検討している。ハッチ社によると、オンタリオ州およびカナダ全体でどれほどの規模の利益が得られるかは、この「ダーリントン原子力新設プロジェクト(DNNP)」で選択されるSMR設計にかかっている。カナダで開発されたSMR技術の場合、その設計を世界市場に輸出する可能性も含めて、数十年の間に数千億ドル規模の「触媒効果的利益」が期待できる。一方、カナダ以外の国で開発されたSMR技術では、その国のサプライチェーンが引き続き、開発企業に協力するためそうした可能性は低い。DNNPではIMSRのほかに、米GE日立・ニュクリアエナジー社製の軽水炉型SMR「BWRX-300」、および同じく米国企業のX-エナジー社が開発した小型のペブルベッド式高温ガス炉「Xe-100」が候補設計に選定されている。テレストリアル社が開発したIMSRは電力のほかに熱エネルギーを供給可能で、使用する溶融塩燃料は第4世代設計のなかで唯一、これまで軽水炉に装荷されてきた標準タイプの低濃縮ウランで製造される。同社は今年9月、IMSRと発電機を2基ずつ搭載する電気出力39万kWの改良型発電所設計「IMSR400」を発表しており、カナダで開発されているSMR設計のなかでは最大出力となる。ハッチ社の調査報告書によると、IMSR400発電所をダーリントンで建設した場合、設計・建設段階の9年間に30億カナダドル(約2,700億円)以上の利益がカナダのGDPに追加され、年平均で2,100名以上の雇用を支えることになる。これに加えて、同発電所の運転段階で年間合計45億加ドル(約4,100億円)以上の利益が生み出され、創出される雇用は年間580名分におよぶと予測。設計から廃炉までの全期間で試算した場合は、オンタリオ州のGDPにもたらされる利益は約66億加ドル(約6,000億円)、カナダ経済に対しては79億加ドル(約7,200億円)に達するとしている。ハッチ社はまた、第4世代の原子力発電所はカナダのみならず、世界中の発電システムの中で化石燃料に取って替わる莫大な可能性があると指摘。第4世代の原子炉技術のみが原子力の経済性を改善し、商業用原子力発電におけるカナダのこれまでのリーダーシップを永続させることができるとしている。テレストリアル・エナジー社のS.アイリッシュCEOは、「英国グラスゴーでは各国のリーダー達がCOP26でCO2排出量の実質ゼロ化に向けた方策を話し合ったが、IMSRはカナダの数多くのサプライチェーン・パートナーと協力して開発したカナダの第4世代炉であり、カナダのみならずその貿易相手国でCO2の実質ゼロ化に貢献できる」とコメント。ダーリントン発電所でのSMR建設は、その切っ掛けになるとの認識を示している。(参照資料:テレストリアル・エナジー社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Nov 2021
3020
ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は11月8日、建設工事が停止しているフメルニツキ原子力発電所3号機(100万kWのロシア型PWR=VVER)(K3)の完成に向け、ウェスチングハウス(WH)社のエンジニア・チームが7日に詳細点検などの実務作業を行うため、視察に訪れたと発表した。エネルゴアトム社とWH社は今年の8月末、同発電所で同じく建設工事が停止中の4号機(100万kWのVVER)(K4)にWH社製AP1000設計を採用して完成させ、さらに4基のAP1000をウクライナで建設するという内容の独占契約を締結した。K4についてはすでに10月、米国で建設工事が中止されたV.C.サマー原子力発電所向けの製造済みの機器・設備を活用する可能性も含め、具体的な作業が今年の年末から年始までに開始される見通しである。K3に関しては、VVER設計を採用した最初の建設工事が1985年9月に始まり、作業が停止した1990年時点の建設進捗率は75%に到達。このため、WH社で商業活動を担当するE.ギデオン上級副社長による12名のエンジニア・チームは、同炉の建設計画遂行での設計面その他の(技術的)懸念事項を特定・分析した上で、完成に向けた可能性を探り、具体的な方策を定める方針である。今回、WH社チームはエネルゴアトム社の実質トップであるP.コティン総裁代理とともに、K3の機器・設備の保管状態と冷却水供給池の状態を視察した。その後は、フメルニツキ原子力発電所とエネルゴアトム社の経営幹部や地元選出の議員、市長らを交えた実務会議に出席。この席で両者は、K3の準備状況に関する予備的評価の結果を審査、K3で新たな建設工事を実施する可能性と、その重要性を認識したとしている。WH社のギデオン上級副社長によると、米国と欧州の両方から派遣されたエンジニア・チームは今後、エネルゴアトム社との協力により建設サイトの詳細な点検調査と情報交換を実施する。米輸出入銀行(US EXIM)を始めとする金融機関とは、プロジェクトの資金調達問題について協議を行っており、短期間のうちにこの件で複数の合意文書に調印したいと考えていることを明らかにした。一方、エネルゴアトム社のコティン総裁代理は、建設工事に先立つ諸活動が早いペースで進展している事実に言及。今回の件については、「新たな原子力設備を建設する実質的な作業が始まった」と評価しており、そうした活動のすべてが質の高いものである点に非常に満足していると述べた。同総裁代理によると、「越境環境影響評価条約(エスポー条約)」に関わる諸手続きはすでに完了しており、環境省からはこの建設計画への肯定的評価が得られている。政府に対してはK3とK4両方の完成に向けた素案を提出済みであり、最高議会からも承認が得られるよう、近いうちに提案を行う考えを明らかにしている。(参照資料:エネルゴアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Nov 2021
1985
フランス大統領府のウェブサイトによると、同国のE.マクロン大統領は今月9日のテレビ演説で、数10年ぶりに国内で新規の原子炉建設を再開する考えを明らかにした。英国グラスゴーにおける第26回・国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP26)の閉幕を12日に控え、同大統領は「これはフランスからの強いメッセージである」としている。演説の中で、同大統領はフランスのエネルギー自給に触れ、「天然ガスの価格や電気料金の上昇により仏国民の生活は大きな影響を受けている。こうした事態には緊急に対処する必要があり、政府は天然ガスの価格を固定化する措置を取った」とした。しかし、「国民がもしも、適切なレベルのエネルギー料金を支払い、外国から輸入するエネルギーへの依存を下げたいのであれば、我々は省エネを続けるだけでなく、国内で低炭素エネルギー源の建設に向けた投資を行わねばならない」と指摘。その上で、「フランスのエネルギー自給を保証するとともに国内の電力供給を確保し、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成するため、国内での原子炉建設を再開し再生可能エネルギーの開発を継続する」と明言した。フランスでは2015年7月、約8か月間に及んだ全国的な討論の結果、「緑の成長に向けたエネルギー移行法」が成立した。これにより、F.オランド前大統領が約束していた「2025年までに原子力発電シェアを現在の75%から50%に削減する」ことや、「原子力発電設備を現状レベルの6,320万kWに制限する」ことが決定。これにともない、国内で最も古いフェッセンハイム原子力発電所の2基が2020年6月までに永久閉鎖されている。しかし、マクロン大統領は2018年11月、発電シェアの削減公約を「現実的で制御可能、経済的かつ社会的にも実行可能な条件下で達成するため、実施期限を2035年まで10年先送りする」と決定した。今年10月には、新たな産業政策「フランス2030」の中で、「2030年までに10億ユーロ(約1,307億円)を投じて、小型モジュール炉(SMR)や先進的原子炉の技術を実証し、放射性廃棄物のより良い管理で世界市場への参入を目指す」と表明。同大統領は、原子力はフランスの基幹製造技術であるため今後も必要な技術であり、その再編成は政策目標の第一番目に位置付けられ、継続的に開発していくことは非常に重要との認識を示している。今回の演説で、マクロン大統領は原子炉の建設再開に向けた具体策を一切示していない。また、来年4月には大統領選挙が控えていることから、この方針が正式決定するのは選挙後になるとの見方がある。一方、ロイター通信は今月10日、「フランス政府は今後数週間以内に、国内で大型PWRを新たに6基建設する計画を公表する模様だ」と報道している。フランス政府はこれまで、北西部のシェルブール近郊で建設中のフラマンビル原子力発電所3号機(163万kWの欧州加圧水型炉=EPR)が完成するまで、新たなEPRを建設しないとしてきた。しかし、欧州では10月の天然ガス価格の高騰など、国民生活の光熱費が連鎖的に増加している。ロイター通信では、フランス政府がこれらのことに配慮し、EPR新設の判断を早めたと伝えている。(参照資料:仏大統領府(仏語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月10日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
11 Nov 2021
4340
英国政府のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は11月9日、ロールス・ロイス社グループが80%出資して設立した小型モジュール炉(SMR)の開発企業「ロールス・ロイスSMR社」に対し、マッチングファンドとして2億1,000万ポンド(約321億円)を提供すると発表した。ロールス・ロイス社は前日の8日、低コスト・低炭素な次世代原子力技術の開発と商業化を大規模に進めていくため、新たな株式の発行により「ロールス・ロイスSMR社」を設立したと表明。また、米国の大手電気事業者のエクセロン・ジェネレーション社、および仏国の投資目的企業であるBNFリソーシズUK社とともに、今後3年間で合計1億9,500万ポンド(約298億円)を英国でのSMR開発に投資すると発表していた。英国政府からの今回の資金提供は、民間部門で2億5,000万ポンド(約382億円)を越える資金がSMR開発に投入されていることに対応したもので、同国の戦略的政策研究機関である「UKリサーチ・アンド・イノベーション(UKRI)」は2019年11月、「低コストな原子力の課題(Low Cost Nuclear Challenge)」プロジェクトの実施で、「産業戦略チャレンジ基金(ISCF)」の中から1,800万ポンド(約27億円)をロールス・ロイス社のSMR企業連合に提供。今回の2億1,000万ポンドはこれに続いて、同プロジェクトから拠出することになる。英国政府はこのような活動を通じて、SMR設計の開発を一層促進し、英規制当局の包括的設計認証審査(GDA)にSMR設計をかけるなど、UKRIの「低コストな原子力における課題」プロジェクトを第2段階に進めていく。また、2050年までに英国内の温室効果ガス排出量を実質ゼロ化するため、B.ジョンソン首相が昨年11月に公表した「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」を着実に進め、高度な技術を必要とする関係雇用の創出を促す方針である。UKRIによると、同プロジェクトの第1段階は今年8月に完了しており、SMRの概念設計が完成したとしている。BEISの今回の発表は、大型原子力発電所の新規建設を支援する資金調達の枠組として、「規制資産ベース(RAB)モデル」の導入を目指した「原子力資金調達法案」を英国議会が審議している最中に行われた。BEISによると、英国が化石燃料発電への依存度を下げ、天然ガス価格の乱高下に対応するには、低炭素なエネルギーを低価格で生産できる新しい原子力発電設備が非常に重要な役割を担う。その中でもSMRは、従来の大型原子力発電所と比べて建設コストを低く抑えることができ、モジュール式の機器類は専用の設備で製造し、設置場所まで車両や鉄道で輸送することが可能である。結果としてBEISは、建設期間とコストの両方が縮減される点を強調。BEISのK.クワルテング大臣は「英国が低炭素なエネルギーをかつてない規模で開発し、エネルギー自給率を増強する上で二度と無い機会だ」とコメントしている。一方、ロールス・ロイス社の8日付け発表によると、同社は新たに設立した事業体を通じて、年内にもGDAの実施を同社製SMRで申請できるよう活動するだけでなく、SMR用モジュール製造工場の建設地を決定するなど、幅広い活動を並行して進めていく。SMRの設置場所に関する英国政府との協議は今後も継続するほか、同技術を必要とする国々との協議も続けていくと述べた。同社のSMR発電所は出力47万kWとすることを想定しており、これは陸上風力発電のタービン150台以上に相当する。少なくとも60年間はベースロード用電源として着実に発電を行い、間欠性のある再生可能エネルギーを補完。2030年代初頭にも英国の送電網に接続する計画で、それ以降は世界に輸出することも視野に入れていることを明らかにした。(参照資料:BEIS、ロールス・ロイス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
10 Nov 2021
3291
中国核工業集団公司(CNNC)は11月8日、「華龍一号」設計の実証プロジェクトとして福建省福清原子力発電所で建設中の6号機(PWR、115万kW)で、6日から燃料集合体177体の装荷作業を開始したと発表した。同炉は2015年12月にCNNCが本格着工していたもので、建設工事はこれによりシステムの起動に向けた重要段階に入った。「華龍一号」は中国が知的財産権を保有する第3世代の原子炉設計で、CNNCと中国広核集団有限公司(CGN)が双方の第3世代炉設計を一本化して開発。革新的な技術を数多く炉心設計に採用しており、安全系には静的と動的2つのシステムを組み合わせている。格納容器は二重構造であり、これらによって同設計は国際的に最も厳しい安全基準をクリア。運転サイクル期間は18か月で、設計耐用期間は60年間である。CNNCの発表によると福清6号機の完成は、習近平国家主席が原子力産業に対して提唱した「三新一高」(科学技術の新しい成果や新興技術を応用し、新たな開発コンセプトの産業モデルを高品質で構築する)の精神を、CNNCが着実に実行中であることを示している。低炭素な電力を発電することで、CO2排出量をピークアウトさせ実質ゼロ化目標の達成に導き、国家のエネルギー供給確保に貢献するなど、質の高い産業の開発に向けた具体策でもあると説明している。なお、福清6号機と同型の5号機はともに「華龍一号」実証プロジェクトとして建設され、5号機はすでに今年1月、世界初の「華龍一号」実証炉として営業運転を開始、これまでの発電量は70億kWhに達した。CNNCがパキスタンで建設したカラチ2号機も、国外初の「華龍一号」として今年5月に営業運転を開始している。同じく「華龍一号」設計を採用した同3号機は先日、温態機能試験を完了したことから、来年完成すると見られている。CNNCはこのほか、福建省の漳州1、2号機にも「華龍一号」を採用、それぞれ2019年10月と2020年9月から建設工事中である。一方、CGNは2015年12月以降、CGNバージョンの「華龍一号」の実証プロジェクトとして江西省の防城港3、4号機を本格着工しており、どちらも2022年に運転開始する見通しとなった。これらに加えて、CGNは広東省の太平嶺1、2号機も、「華龍一号」として2019年12月と2020年10月にそれぞれ着工。2020年12月には、浙江省の地元電力企業や建設企業、投資企業らが出資する三澳1号機についても、建設工事を開始している。(参照資料:CNNC(中国語)、中国政府国務院(英語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 Nov 2021
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フランスのフラマトム社は11月2日、事故耐性燃料(ATF)100%で構成される先行使用・試験燃料集合体(LFA)を原子力産業界として初めて製造し、米メリーランド州のカルバートクリフス原子力発電所(91.2万kWのPWR×2基)に納入したと発表した。同発電所で最近行われた燃料交換の際、このLFAも装荷されたとしている。フラマトム社は現在、米エネルギー省(DOE)が福島第一原子力発電所の事故後に開始した「ATF開発プログラム」に参加しており、今回のLFAは、同プログラムの一環でフラマトム社が進めている独自のプログラム「PROtecht」の下で開発された。カルバートクリフス発電所への装荷は、同発電所を所有する米エクセロン・ジェネレーション社とフラマトム社が2019年に結んだ契約に基づくもので、LFAもこの契約に沿って、米ワシントン州リッチランドにあるフラマトム社の工場で製造された。同LFAではクロムを塗布した176本のジルカロイ合金製被覆管に、クロム合金の酸化被膜で覆ったペレットが充てんされている。フラマトム社の発表によると今回のATF 100%のLFAは、これまで米国やスイスの原子力発電所の18か月サイクル運転で実施したLFA試験の結果に基づき製造した。炉心内の温度変化に対して、同社のLFAは高い耐久性を示しており、高温条件下においても腐食や水素の発生が抑えられたとしている。フラマトムで燃料事業を担当するL.ゲフェ上級副社長は、「ATFのみの燃料集合体が商業炉に装荷されたことは、当社のみならず原子力産業界にとっても大きな節目になった」と表明。今後も「PROtecht」プログラムで原子燃料技術の開発を進め、低炭素なエネルギーの生産を一層効率的かつ信頼性の高いソリューションで支えていく」との抱負を述べた。2012会計年度予算で始まったDOEの「ATF開発プログラム」では、産官学の協力により2022年までに商業炉にLFAを装荷する計画。産業界からはフラマトム社のほかに、GE社とウェスチングハウス社の3グループが参加しており、各社が被覆管その他に新素材を用いて独自に開発したATFを、米国やその他の国の原子力発電所で試験中となっている。(参照資料:フラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Nov 2021
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アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電の導入計画を担当している首長国原子力会社(ENEC)は11月4日、バラカ原子力発電所(韓国製の140万kW級PWR×4基)の3号機の建設工事が完了したと発表した。2014年9月に本格着工した3号機ではすでに、冷態機能試験や温態機能試験のほか、構造性能確認試験(SIT)、総合漏えい率試験(ILRT)など様々な試験が完了。2023年の起動と送電開始に向けて作業は順調に進展しており、世界原子力発電事業者協会(WANO)など国際機関の独立した専門家による評価作業も含めて運転準備の段階に入った。連邦原子力規制庁(FANR)も同炉に運転認可を発給するのに先立ち、運転の担当機関など同炉のあらゆる側面を詳細にレビュー中である。同発電所では今年4月、アラブ諸国初の商業炉として1号機が営業運転を開始したほか、同2号機も9月に連邦内への送電を開始。現在、出力上昇試験などを実施している。3号機に関する今回の発表は、第26回・国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP26)の開催イベントの一つ「エネルギー・デー」に合わせて行われた。UAEはCO2の排出量を削減しつつ、連邦内で増加する電力需要を満たすために電力供給量を拡大、発電部門の迅速な脱炭素化を図りクリーンエネルギー社会への移行を進めているとアピール。「エネルギー・デー」に参加した46か国・地域(日米や中国、豪州、インドなどを除く)の首脳はこの日、先進国などで2030年代に、世界全体では2040年代にも石炭火力を廃止し、CO2削減対策を持たない新たな発電所の建設を中止するほか、公的な輸出支援も終えることなどを約束している。「COP」に関してUAEは、(3号機が送電開始予定の)2023年に開催される「COP28」の誘致を希望。UAEの明確な方針として、地球温暖化への対応でCO2排出量の削減を図り、2050年までに実質ゼロ化するということを示しており、同じく誘致を希望していた韓国も含め、国連アジア・太平洋地域の諸国からはすでに支持を取り付けた。ENECによると、バラカ3号機が完成したことによりUAEは140万kWの無炭素電力源を速やかに追加し、クリーンエネルギーへの移行で主導的役割を果たしていく。再生可能エネルギーの間欠性を補えるベースロード用のクリーンエネルギー源として、原子力を活用するとの国際誓約を果たすとともに、地球温暖化の解決策が著しく進展していることを実証した。ENECのM.I.アルハマディCEOも、「当社は原子力でUAEの持続可能な成長と繁栄を目指しており、一日24時間、年中無休でクリーンな電力を豊富に生産する原子力発電所は、再生可能エネルギーを補うだけでなく、水素エネルギーなど他のクリーンエネルギーへの橋渡しになる」と指摘。今後60年間は、原子力で地球温暖化に直接取り組むとの決意を示したほか、15年前に原子力による電源の多様化ビジョンを描き、確固たる信念を持ってバラカ発電所建設計画を今日の実現に導いたUAE指導者達に謝意を表明した。(参照資料:ENECの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
05 Nov 2021
3703
ルーマニアの大統領府は11月2日、同国のK.ヨハニス大統領と米国のJ.ケリー気候担当大統領特使による協議の結果、民生用原子力分野における米国との連携協力を通じて、ルーマニア初の小型モジュール炉(SMR)を2028年までに国内のエネルギー生産システムに含めると発表した。同じ日に米ホワイトハウスも、クリーンエネルギー経済の構築に向けたJ.バイデン大統領の声明文を公表しており、その中で「米国とルーマニア両国は米国籍のニュースケール・パワー社が開発した最新技術のSMRをルーマニア国内で建設する方針である」と表明。ルーマニアの国営原子力発電会社(SNN)とニュースケール社は今後、出力7.7万kWの原子力モジュール6基で構成されるPWRタイプの一体型SMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を建設するため、商業契約を結ぶことになる。ヨハニス大統領とケリー特使の会談は、英国グラスゴーにおける国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP)に合わせて開催された。ルーマニア大統領府によると、地球温暖化との闘いは両国がともに最優先事項としている課題であり、両者は主に低炭素なエネルギー技術の開発と機器の製造、活用に関わる協力について協議。原子力と再生可能エネルギーの2分野における二国間協力の強化に加えて、エネルギーの貯蔵や輸送部門の電化などを話し合った。同大統領府はまた、エネルギーの生産システムから排出されるCO2を削減するため、両国は今回、互いに協力する具体的一歩を刻んだと指摘。ルーマニアは米国製のSMR建設での協力により、SMR技術のバリューチェーンを活用してルーマニア国内でのSMR製造に参加することを希望。その他の国においてもSMRが建設・運転されるよう、関係する支援や人的資源開発の準備を行いたいとしている。一方のホワイトハウスは、今回の連携協力によってSMR技術がルーマニアにもたらされるだけでなく、世界のSMR開発レースで米国の技術が一歩先んじることになると表明。ニュースケール社が締結する商業契約ではNPMがルーマニアで建設されることは、両国内で3千人~3万人規模の雇用を創出する可能性があり、発電部門の脱炭素化、およびCO2排出量が実質ゼロの未来にも大きく貢献すると指摘した。なお、ニュースケール社も同日にSNN社との共同声明で、ルーマニアでクリーンなエネルギー技術を発展させるため、両社が一致団結して協力していく考えを表明している。ニュースケール社はすでに2019年、ルーマニアにおける同社製SMRの建設可能性を探るため、SNN社と了解覚書を締結している。2020年8月には、モジュール1基あたりの出力が5万kWの「NPM」について、SMRとしては米国内で唯一、原子力規制委員会(NRC)から「標準設計承認(SDA)」を取得した。SMR技術のサプライチェーン開発や設計の標準化、SMR発電所の搬入から起動に至るまでの計画立案など、ニュースケール社がSMRの商業化を目指して強力な推進力を備えている点を強調した。(参照資料:ルーマニア大統領府(ルーマニア語)、米大統領府、ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Nov 2021
3550
トルコ初の原子力発電所となるアックユ発電所(120万kWのロシア型PWR=VVER×4基)を地中海沿岸で建設しているロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は10月29日、トルコの原子力規制庁(NDK)が同社傘下のアックユ原子力発電会社(ANPP)に対し、4号機の建設許可を発給したと発表した。これにより建設サイトでは、安全関係設備も含め同炉のすべての設備の建設・設置工事が実施可能になる。ANPP社は年内にも、原子炉建屋とタービン建屋のベースマット下部に敷くコンクリート・パッドの作業などを開始し、来年初頭にはこれらの建屋で最初のコンクリートを打設する計画である。ANPP社は2020年5月、NDKに4号機の建設許可申請を行っており、その際、同炉の予備的安全解析報告書(PSAR)や確率論的安全分析(PSA)、および安全性と信頼性を確認するその他の文書も提出した。その後、今年の6月末にNDKが部分的建設許可(LWP)を発給したことから、ANPP社はLWPに基づき工事測量やピット掘削などの準備作業を実施していた。 今回4号機の建設許可が発給されたのを受け、ANPP社は「建設の安全性・健全性に関わるNDK審査では、4基すべての建設計画の許認可手続きが完了した」と指摘している。トルコ初の原子力発電所となることから、アックユ発電所の建設工事ではANPP社がトルコ政府の様々な関係機関から120もの許可や認可を取得する必要があった。これまでに同社は、建設許可のほかに環境影響声明書(EIA)に対する肯定的評価や発電許可、建設サイトに資機材を輸送する「東部貨物(船舶用)ターミナル」の操業許可など、主要な許可をすべて取得。今後NDKは各ユニットの建設状況に応じて、燃料の装荷時や起動時、従業員の適格性確認等で申請書の審査を行うことになる。アックユ原子力発電所では2018年4月に1号機、2020年4月に2号機が本格着工しており、ANPP社は今年の10月下旬、1号機用格納容器の内殻となるスチール製構造物に最終リング(4段目)を据え付けた。また、2号機では9月の末に、原子炉シャフトの主要な機器を設置。今年の3月中旬には、3号機用原子炉建屋の基礎部分に最初のコンクリートを打設している。同社はトルコ側の要望を受けて、同国が建国100周年を迎える2023年に1号機の運転開始を目指しているほか、残りの3基も順次完成させていく予定。トルコはこれら4基で、国内電力需要の約10%を賄う方針である。(参照資料:ANPP社の発表資料①、②、③、ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Nov 2021
2356
英国財務省のR.スナク大臣は10月27日、毎年一回秋に取りまとめている予算案の修正報告書と、2025年まで今後4年間の歳出計画案を発表した。このなかで同大臣は、大型原子力発電所を少なくとも1つ建設する計画について、現政権の在任期間中に最終投資判断が下されるよう、費用対効果が高いことと関係承認が得られることを条件に、最大で17億ポンド(約2,656億円)を新たに歳出すると表明。現在ヒンクリーポイントC原子力発電所(160万~170万kWの欧州加圧水型炉:EPR×2基)を建設中のEDFエナジー社に対しては、イングランド南東部のサフォーク州でサイズウェルC原子力発電所(160万~170万kWの欧州加圧水型炉:EPR×2基)を新たに建設するため、昨年12月以降、積極的に交渉を進めている点を強調した。折しも、英国政府のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は前日の26日、大型原子力発電所の新規建設を支援する資金調達の枠組みとして、「規制資産ベース(RAB)モデル」の導入を目指した「原子力資金調達法案」を立案したと発表した。スナク財務大臣も今回の歳出計画案ではこのほか、B.ジョンソン首相が英国内の温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロ化するため昨年11月に発表した「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」に沿って、「排出量実質ゼロ化のための技術革新ポートフォリオ」に10億ポンド(約1,562億円)歳出すると表明。10ポイント計画では具体的に、販売間近の革新的な低炭素技術の開発を促進するとしている。また、小型モジュール炉(SMR)や先進的モジュール炉(AMR)など次世代原子炉技術の開発を支援するため、BEISが「CO2実質ゼロ化戦略」の中で投入を誓約していた「先進的原子力基金」の3億8500万ポンド(約599億円)についても、同様に調整したことを明らかにしている。歳出計画案ではこれらに加えて、クリーンエネルギー社会の構築に向けたその他の方策として、輸送部門の脱炭素化計画の支援に61億ポンド(約9,530億円)を投入する計画である。CO2を排出しない電気自動車の台数を大幅に拡大しつつ、クリーンな航空機や船舶の開発を後押し。バスや自転車、徒歩による小旅行の実施も奨励するとしている。このような予算案について、英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックス理事長は同日、歓迎の意向を表明。「原子力に対する信任投票のようなもので、将来的にSMRやAMRの建設を可能にするとともに、大型原子力発電所の建設計画についても投資を促進する歴史的一歩だ」と評価した。「実際、新たな原子力発電所への投資抜きで英国がCO2排出量を実質ゼロ化することは難しいし、英国政府は今回、クリーンエネルギー社会への移行で原子力が重要と考えていることを、投資家に対して明確に示した」と述べた。同理事長はまた、「この投資は一層グリーンな将来に向けた投資であるだけでなく、英国全土で雇用や専門技術を生み出すことになる」と指摘している。(参照資料:英国政府とNIAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Nov 2021
3415
フランスの世論調査とコンサルティングの専門企業であるBVA(Brûlé Ville associés)社は10月26日、オラノ社の依頼を受けて国内で実施した世論調査で、原子力に対するフランス国民の支持率が増加しているとの結果を公表した。2019年に実施した初回の調査結果と比較して、今回7ポイント増の53%が「フランスのエネルギー自給にとって国内の原子力部門は必要不可欠だ」と回答したほか、10ポイント増の64%が「フランスの将来のエネルギーミックスは原子力と再生可能エネルギーで構成される」と回答。その一方で、前回調査から11ポイント減少したものの、国民の過半数である58%が依然として「原子力はCO2を排出して地球温暖化を促進している」との認識であることが明らかになった。この調査は今年5月3日から6日にかけて行われ、18歳以上の成人1,500名からインターネットで回答を得た。それによると、回答者の50%が国内の原子力部門はフランスにとって「強み」であると捉えており、数値は前回調査から3ポイント上昇していた。その理由として、「エネルギー自給にとって不可欠」と答えた53%のほかに、39%は「安定して発電が可能な電源」と答えるなど、原子力が果たす肯定的な役割を指摘している。また、国内の原子力産業を「弱点」と捉えている国民の割合は、前回調査の34%から15%まで減少した。「強み」でも「弱点」でもないとした人は今回35%だったが、41%の国民は「原子力産業は国内で雇用を創出している部門」と認識。「雇用を減らしている」と答えた人の割合は8%に留まった。さらに、「原子力は地球温暖化を促進している」と答えた人のうち、「(温暖化に)重要な影響を及ぼしている」とした国民の割合は、前回調査の34%から大幅に低下し19%となった。その理由としてオラノ社は、「この問題に関する啓蒙教育の効果」と説明している。これに加えて、「石油や石炭、天然ガスによる発電のCO2排出量は原子力より少ない」と考える国民の割合も、今回は半分に低下する結果となった。ただし、放射性廃棄物が原子力の否定的側面である認識に変わりはなかった。原子燃料がリサイクル可能であると知っているフランス国民の割合は、前回調査の61%から66%に上昇した。それにも拘わらず、今回は59%が「リサイクル不可能な放射性廃棄物が生成されることは、原子力における主要な懸念事項だ」と回答していた。世論調査の結果全般についてオラノ社のP.クノルCEOは、「原子力に対するフランス国民の認識が改善されたことが確認できた」と表明。「原子力は再生可能エネルギーと違って、途切れることなく低炭素な電力を供給できるため、地球温暖化との闘いにおいても大きく貢献する。エネルギーの移行で原子力が果たす重要な役割が一層幅広く認識されるよう、今後も当社グループや原子力産業関係者が一丸となって啓蒙努力を続けていかねばならない」と強調した。(参照資料:BVA社(仏語)とオラノ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Oct 2021
4118
英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は10月26日、国内で大型原子力発電所の新規建設を支援する資金調達の枠組として、「規制資産ベース(RAB)モデル」の導入を目指した「原子力資金調達法案」を立案したと発表した。この法案が成立すれば、原子力発電所の建設プロジェクトに民間投資が幅広く集まることになり、海外のデベロッパーの資金調達に依存せずに済むとBEISは指摘。また、建設に必要な資金の調達コスト(借入利子)も削減されることから、従来の資金調達方法と比較して、プロジェクトの全期間中に少なくとも300億ポンド(約4兆7,000億円)以上の節約につながると予想される。これにともない、消費者の電気代も削減されると強調している。英国では現在、フランス資本のEDFエナジー社が南西部サマセット州でヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所(172万kWの欧州加圧水型炉:EPR×2基)を建設中だが、開発リスクに対する英国政府の保証として発電電力の売買に「差金決済取引(CfD)」を適用することが決まっている。しかし、CfDではデベロッパーが建設資金を全面的に賄わねばならず、発電所の運転開始後に初めて資金の回収を開始できるため、カンブリア州やウェールズにおける後続の新設計画はキャンセルされた。BEISの説明によると、RABモデルはすでに、ロンドンの下水道改善プロジェクトやヒースロー空港の第5ターミナル建設といった国内の大型インフラ開発に適用されており、「十分実証され確実な資金調達モデル」だという。具体的には、事業者が当該インフラ設備を提供する代わりに、経済規制当局の許可を受けて消費者から規定の価格を利用料金から徴収。投資家は設備の建設と操業にともなう(コストの超過や計画の遅れなどの)リスクを消費者と分け合うことになるため、資金の調達コストも大幅に軽減される。大型原子力発電所を新規に建設する場合は、ガス・電力市場局「Ofgem」が担当の経済規制当局となる。建設工事の初期段階から、多くても年間数ポンドを英国の典型的な世帯の電気代に上乗せするが、BEISの試算では、本格的な工事期間中の負担は月額平均で1ポンド(約157円)以下になる。BEISはこのような建設工事期間中の負担金は、この段階から確実な利益率を約束するとともに、資金の調達コストを抑えることにつながると説明。プロジェクトの確実性という点で民間部門の投資家に安心感を与え、最終的には消費者の電気代も削減されると述べた。BEISのK.クワルテング大臣は今回、「天然ガス価格の世界的な上昇という状況のなかで、英国は信頼性が高くて価格も手頃な原子力で、今後の電力供給を確保しなければならない」と述べた。既存のCfD方式では、数多くの海外デベロッパーが撤退するなど、英国の開発計画は何年も後退した。「大型原子力発電所の建設に英国内の年金基金や民間部門の投資家を呼び戻すため、英国には新たな資金調達アプローチが緊急に必要だ」と強調した。同大臣によれば、原子力は化石燃料発電への依存度を下げるだけでなく、天然ガス価格の乱高下にも対応するなど、英国の将来の電源ミックスにおいて重要な役割を担う。国連経済社会理事会の欧州経済委員会(UNECE)や国際エネルギー機関(IEA)が指摘したように、今後数10年間に倍増が予想される世界の電力需要を満たし、英国が「2050年までのCO2排出量の実質ゼロ化」を達成するには、再生可能エネルギーのさらなる開発と並行して、新規の原子力発電所の建設が重要になると述べた。(参照資料:BEISの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
27 Oct 2021
6803
ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は10月21日、極東のサハ自治共和国内で建設を計画している同国初の陸上設置式小型モジュール炉(SMR)向けに、傘下の燃料製造企業TVEL社が試験用燃料集合体を製造したと発表した。ロスアトム社の国際事業部門であるルスアトム・オーバーシーズ社(JSC RAOS)は、2028年までにサハ共和国北部のウスチ・ヤンスク地区ウスチ・クイガ村で、電気出力5.5万kWの陸上設置式SMR「RITM-200N」を完成させる方針。このため、今回の試験用燃料集合体は、モスクワ州エレクトロスタリにあるTVEL社のエレマシュ工場で製造された。TVEL社は2025年にもエレマシュ工場で同SMR用燃料集合体の製造を開始し、2026年には初回装荷分の燃料一式を製造する予定。これに先立ち製造した今回の試験用燃料集合体は、ダミー燃料とともに様々な照射前試験や研究に使われる。ロスアトム社の発表では、陸上設置式SMRの建設は(サハ共和国の首都である)ヤクーツク北部の北極帯で採算性が見込まれるプロジェクトを実施する際、電力供給など主要インフラの課題克服に有効と期待される。建設予定の「RITM-200N」では、取り換えることが出来ない機器の供用期間が約60年であるため、約60年間は信頼性の高い電力を安定した価格で同地に供給できるとした。同社によると、大型炉の建設は都市部の基幹送電網が届かない遠隔地域では合理性(優位性)が乏しく、SMRこそ持続可能で信頼性の高い電力供給に最適なオプションになる。SMRはさらに、老朽化したディーゼル発電所や石炭火力発電所をリプレースしてCO2の排出量を削減できるなど、数多くの長所があると強調している。ロシアでは2020年5月、電気出力3.5万kWの小型炉「KLT-40S」を2基搭載した海上浮揚式原子力発電所(FNPP)の「アカデミック・ロモノソフ号」が、極東チュクチ自治区内の湾岸都市ペベクで商業運転を開始した。ロスアトム社傘下のOKBMアフリカントフ社はこれに続いて、「KLT-40S」の特性をさらに生かしたSMRシリーズ「RITM」を開発。熱出力17.5万kW~19万kWの「RITM-200」は、ロシアの原子力砕氷船に搭載した小型炉のこれまでの運転経験を統合したもので、同炉を2基搭載した最新の原子力砕氷船「アルクティカ」はすでに試験航行を終え、昨年10月に北極海航路で正式就航した。「RITM-200」を2基ずつ搭載する原子力砕氷船「シビル」と「ウラル」の建造も、現在進行中である。この「RITM-200」は、FNPPに搭載する「RITM-200M」(電気5万kW)と陸上に設置する「RITM-200N」の2種類に分類されるが、サハ共和国内での「RITM-200N」建設計画については、ロスアトム社とサハ共和国政府が昨年12月、同炉が発電する電力の売買価格で合意に達した。また、ロシア連邦の環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)は今年8月、この計画に対して建設許可を発給。建設に必要な環境影響声明書の作成や様々な調査の大部分がすでに完了し、サハ共和国内で公開ヒアリングも開催済みであることから、ロスアトム社は2024年にも「RITM-200N」を使ったSMR発電所の建設を開始するとしている。(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
26 Oct 2021
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米国のサザン社は10月21日、子会社のジョージア・パワー社がA.W.ボーグル原子力発電所で建設している3、4号機(PWR、各110万kW)について、運転開始スケジュールを前回7月の改定時から3か月先送りし、それぞれ2022年の第3四半期と2023年の第2四半期にすると発表した。理由として、建設工事にともなう課題への取り組みに引き続き時間が必要なことと、両炉の安全性と品質の確保という点で基準を全面的に満たすには、包括的な試験の実施が必要になる点をと指摘。3号機では早ければ2022年の第1四半期にも燃料の装荷が可能だが、これを同年5月とすることで第3四半期の確実な運転開始に向け十分な準備が整うとしている。ボーグル3、4号機の建設プロジェクトは2013年の3月と11月にそれぞれ始まっており、ジョージア・パワー社が45.7%出資参加しているほか、オーグルソープ電力が30%、ジョージア電力公社(MEAG)の子会社が22.7%、ダルトン市営電力が1.6%出資している。着工当初、営業運転の開始時期はそれぞれ2017年の第4四半期と翌2018年の第4四半期に設定されていた。しかし、同プロジェクトは米国内でのAP1000建設では最初の事例であり、建設のあらゆる段階で様々な課題に遭遇した。また、建設工事を一括で請け負っていたウェスチングハウス(WH)社が2017年3月に倒産を申請。その後はサザン社のもう一つの子会社で、両炉の運転を担当予定のサザン・ニュークリア社が建設プロジェクトの管理業務を引き継いだ。さらに、3号機の建設工事については今年8月、米原子力規制委員会(NRC)が「安全系に関わる電気ケーブルの配管が正しく設置されていない」と指摘している。ジョージア・パワー社のC.ウォマック社長兼CEOはスケジュールの改定について、「着工当初から申し上げているように、当社ではスケジュールに固執して両炉の安全性や品質で妥協するのではなく、最も効果的と思われる方法で作業を進めている」とした。米国で約30年ぶりとなる新規原子炉の建設では、異常な事態が複数持ち上がったが、同社はこのような課題を克服し持ちこたえてきたと指摘。建設サイトでは、建設工事が着実に進展していると強調した。サザン社の発表によると、3号機の建設工事ではこの夏に温態機能試験が完了し、建設進捗率は99%に到達。4号機の作業も含めたプロジェクト全体の進捗率は約95%となった。高い安全性を有するこれらの原子炉を通じて、ジョージア・パワー社はクリーンで信頼性の高い無炭素な電力を60~80年にわたり50万もの世帯や企業に提供する方針。両炉がひとたび運転を開始すれば、原子力を含む同社の多様なエネルギーミックスによって、新たな投資が呼び込まれるとともに経済成長を促進、新規の雇用も創出するなど、価格が手ごろで確実なエネルギー供給インフラを維持できるとしている。(参照資料:サザン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Oct 2021
3733
フメルニツキ原子力発電所©Energoatomウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は10月20日、ウェスチングハウス(WH)社製AP1000技術を使った最初の原子炉建設を年末、あるいは来年の年始に開始するとの見通しを明らかにした。エネルゴアトム社は今年8月、国内で複数のAP1000を建設していくため、WH社と独占契約を締結している。同社が今回、AP1000設計の「試験ユニット」と表現したこの原子炉は、「フメルニツキ原子力発電所内で建設」としていることから、建設工事が28%で停止中の4号機(K4)(100万kWのロシア型PWR=VVER)の完成工事になると見られている。この工事について、ウクライナは近いうちに、政府間協定も含め複数の関係協定を米国と結ぶ予定。この計画ではまた、米国で2017年に建設計画が頓挫したV.C.サマー2、3号機(各110万kWのPWR)用の機器・設備を活用する可能性があると、エネルゴアトム社は今年9月に発表している。WH社と独占契約を締結した際、エネルゴアトム社はK4に加えて、さらに4基のAP1000を建設すると表明しており、これらの総工費は約300億ドルになるとの見方を示した。資金は主に米輸出入銀行(US EXIM)からの借り入れで調達するが、機器類の約60%は国内企業から購入する方針である。今回明らかにされたK4建設の見通しは、同社が今月20日から22日にかけて開催中の「第1回・ウクライナ天然ガス投資会議(UGIC)」で、同社のP.コティン総裁代理が「ウクライナにおける原子力産業の開発戦略」として述べたもの。この会議は、ウクライナのエネルギー部門に諸外国からの投資を呼び込み、ウクライナ経済のさらなる発展を促すことが目的である。コティン総裁代理はまず、「我々のエネルギー部門には幅広い開発ポテンシャルがあり、低炭素な発電に関しては特にポテンシャルが大きい」とした。同総裁代理によると、世界では①2050年までにエネルギー消費量が1.5~2倍に増加、②温室効果ガスの排出量削減のため大規模な脱炭素化が必要――という傾向が見られることから、ウクライナでは輸送や産業部門の全面的な「電化」を計画している。エネルゴアトム社はウクライナで唯一の原子力発電事業者であるため、明確な戦略に従って原子力発電設備を開発し、旧ソ連時代に着工したVVERを刷新していく方針。WH社との戦略的な契約の締結も、この流れに沿ったものであるとの認識を示唆している。エネルゴアトム社はまた、原子力発電所を使った水素製造も検討中である。コティン総裁代理は、「原子力発電所ではベースロード運転が行われているが、電力需要が下がれば原子力発電所の電力で水素を製造できるし、需要が戻った時点で電気分解を止めればいい」と指摘した。このようなアプローチの下で、エネルゴアトム社は収益源の多様化を図るとともに、原子力発電所で柔軟性の高い運転を行い、その余剰電力を有効に活用。電気分解による水素製造はクリーンエネルギーへの移行を後押しするだけでなく、欧州連合(EU)が2020年7月に発表した(脱炭素化に貢献する)「欧州水素戦略」を実行することにもなるとしている。(参照資料:エネルゴアトム社の発表資料(ウクライナ語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
22 Oct 2021
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米GE社の10月19日付け発表によると、傘下のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は同社製小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の商業化をカナダで促進するため、BWXTカナダ社と設計・製造に向けたエンジニアリングおよび資機材の調達等での協力で合意した。カナダでは、オンタリオ州の州営電力であるOPG社が2020年11月、同社保有のダーリントン原子力発電所で早ければ2028年にもいずれかのSMRを完成させると発表、それに向けた準備を開始している。同社はまた、SMRデベロッパーの候補として、GEH社および同じく米国籍のX-エナジー社、カナダのテレストリアル・エナジー社の3社を選定していた。OPG社がBWRX-300を建設すると最終決定した場合、BWXTカナダ社は同設計の機器・設備の製造に向け、詳細なエンジニアリングと設計の業務(サービス)を実施する。将来的には、カナダ国内でのBWRX-300建設に必要な主要原子炉機器も供給していく考えだ。BWRX-300は電気出力30万kWの軽水炉型SMRで、2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得した第3世代+(プラス)のGEH社製設計「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」を最大限に活用している。同社の説明によると、「BWRX-300」では自然循環技術や受動的安全システムなどの画期的技術が組み込まれており、設計を大幅に簡素化したことで、単位出力当たりの資本コストはその他のSMRと比べて大幅に削減されている。 同設計ではまた、グローバル・ニュークリア・フュエル社が開発した認証済みの高性能燃料集合体「GNF2」を採用。ほかにも実証された機器技術や専門的知見を多数取り入れていることから、GEH社は「最も低リスクでコスト面の競争力も高いBWRX-300は、SMR市場で最初に実現する設計になる」と強調している。GEH社とBWXTカナダ社による今回の協力合意は、昨年6月に両社が結んだ協力覚書に基づくもので、GEH社は「オンタリオ州でBWRX-300の建設を進めるにあたり、カナダ国内でサプライチェーンを構築する重要な節目になった」と説明。「原子炉の主要機器を供給するBWXTカナダ社の能力は、オンタリオ州がそれらの高度な機器の製造の世界的拠点(ハブ)となることに貢献する」と述べた。BWXTカナダ社も、「GEH社との協力により、BWRX-300を建設する世界中のプロジェクトに参加する機会が得られる」としている。(参照資料:GE社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
21 Oct 2021
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英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は10月19日、英国が2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指すにあたり、どのように方策を進めていくか包括的な計画をまとめた「ネットゼロ戦略」を公表した。原子力はこの中で重要な役割を担っており、小型モジュール炉(SMR)などを今後建設していくための投資として1億2,000万ポンド(約190億円)を含めている。この戦略で英国政府は、クリーンエネルギーを主力とする持続可能な将来社会に向けて、2030年までに最大900億ポンド(約14.2兆円)の民間投資を活用する計画。消費者や企業がクリーンエネルギー社会に移行するのを後押しするとともに、関連産業で高サラリーが見込める雇用約44万人分の創出を支援する。また、輸入化石燃料に対する英国の依存度を下げる一方、持続可能なクリーンエネルギーの開発を促進して、世界的なエネルギー価格の急上昇から英国民を防護するとしている。この戦略は、来週から英国グラスゴーで開催される第26回・国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP)に先立ち準備されたもので、同国のB.ジョンソン首相はこの席で、他の経済大国にも同様の計画を独自に策定することを求める方針。同戦略はまた、パリ協定に基づく英国の2つ目の長期的なCO2排出削減戦略として、「気候変動に関する国連枠組条約(UNFCCC)」にも提出される予定である。BEISによると、今回の戦略は昨年11月にジョンソン首相が発表した「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」に基づき作成された。英国政府は今月7日、発電部門の全面的な脱炭素化を達成する目標スケジュールを15年前倒しし、2035年とするプランを発表。この目標スケジュールは、今回の戦略でも発電部門の主要政策として明記されており、BEISはこれを達成するため、2030年までに4,000万kWの洋上風力発電設備の建設を、陸上風力や太陽光の設備増設とともに進めるとした。原子力に関しては「現政権の在任期間中に、少なくとも大型原子力発電所を1つの建設計画について確実に最終投資判断を下す」と明言した。実際にBEISは昨年12月、英国南東部のサフォーク州でサイズウェルC原子力発電所を建設する計画について、事業者のEDFエナジー社と正式に交渉を開始。最終投資判断の早急な確定に向けて、建設工事の資金調達費用を抑制可能になるよう規制資産ベース(RAB)の資金調達モデルを確立するとしている。同戦略はまた、「将来の原子炉建設を可能にする基金」として、新たに1億2,000万ポンド(約190億円)を投入する方針を明記した。CO2排出量の実質ゼロ化に向けて、次の政権が後続の原子炉を建設していくための措置を講じたもの。ウェールズ北部のウィルファ・サイトや複数の有望な建設候補地を念頭に、将来的にSMRや先進的モジュール炉(AMR)など、最新技術の原子炉を建設する選択肢を維持することになる。同基金の運営方法など詳細については、費用対効果を考慮した建設ロードマップの詳細とともに、BEISが2022年に公表する計画である。同戦略ではさらに、「先進的原子力基金」の3億8,500万ポンド(約610億円)の中から、SMR設計の開発を支援する。2030年代初頭にAMR実証炉を建設する計画も進行中だが、大型炉や小型炉のいずれにしても、英国内には利用可能なサイトが数多くあるとBEISは強調している。(参照資料:BEISの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Oct 2021
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国際原子力機関(IAEA)は10月15日、スロベニア唯一の原子力発電所であるクルスコ発電所(PWR、72.7万kW)で、今月4日から実施していた(長期運転の実施に先立つ事前の)長期運転安全評価(SALTO)が14日付で完了したと発表した。1983年に営業運転を開始した同発電所では、2023年に営業運転開始後40年目を迎える。事業者のクルスコ原子力発電会社(NEK)は、国内総発電量の約三分の一を賄う同発電所の運転期間を、2043年まで20年延長することを計画。運転期間の長期化(LTO)に際しIAEAの安全基準を満たしているか、事前のSALTOチームによるレビューをIAEAに要請していた。同チームはクルスコ発電所における準備活動について、「タイムリーに進められており、多くの経年化管理対策はすでにIAEAの安全基準を満たしている」と評価。同発電所に対しては、レビュー結果へのさらなる取り組みと、安全なLTOに向けて機器類の経年化管理レビューなど、改善が必要な部分の対策をすべて進めるよう奨励した。米ウェスチングハウス(WH)社製のPWRである同発電所はスロベニア東部に位置しており、隣国クロアチアと共同で国営スロベニア電力(GENエネルギア社)が所有。同発電所の運転期間の20年延長に関しては、スロベニアの原子力安全規制当局がすでに2015年7月に承認している。今回のIAEAの事前SALTOチームは、加盟6か国から来た専門家7名に3名のIAEAスタッフを加えた10人構成で、安全なLTOに向けた同発電所の準備状況や関係組織、プログラムなどを検証。その結果、同発電所で行われている良慣行や、世界中の原子力産業界がシェアすべき良好実績を次のように指摘した。・安全性に関わるケーブルの経年化管理で、先を見越した対応や状況に応じた活動を実施する際、しっかりした構成の包括的プログラムが使われている。・発電所内に効率的な企業内ネットワークが構築されており、すべての従業員が管理アプリや関係するプログラム、文書、手順書、データ・記録等を利用することができる。・発電所の蒸気発生器(SG)経年化管理プログラムによって、国際的な安全基準を凌ぐ卓越した管理活動が行われている。一方、以下の点については、IAEAチームはLTOの準備活動をさらに改善して進めることを勧告した。・2022年に実施予定の大規模安全審査に向け、綿密な管理計画を立てる。・所内のシステムや構造物、機器類の経年化管理レビューを完了させる。・LTOを補助する活動として、効果的な知識管理対策を実施する。なお、GENエネルギア社は今年7月、同発電所で2基目の原子炉を建設する計画(JEK2プロジェクト)の実施に向け、準備作業を開始した。これは同プロジェクトの実行可能性調査(FS)の結果に基づき、スロベニア政府のインフラ省が「エネルギー(事業)許可」をGENエネルギア社に発給したことによるが、この許可により2号機の建設が決定したわけではない。同社によると、FSではスロベニアが将来的に低炭素な電力への移行を効率的に果たし、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成する上で、プロジェクトの実施は必要との結論が示されている。(参照資料:IAEAの発表資料、NEKの発表資料(スロベニア語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Oct 2021
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フランス全土の原子力発電所をすべて保有するフランス電力(EDF)は10月13日、原子力発電の導入を計画しているポーランド政府に対し、2~3サイトで4~6基(660万~990万kW)のフラマトム社製・欧州加圧水型炉(EPR)を建設することを提案した。この提案は予備的なもので、EDFは建設計画の見積もりコストとスケジュール、発電所内の配置やポーランド国内におけるサプライチェーンの構築に至るまで、計画の主要パラメーターをEPC(設計・調達・建設)契約の締結に向けた幅広いオプションとしてポーランド側に提示。この規模の計画であれば、ポーランドは電力需要の40%までを少なくとも60年間満たせるほか、同国のエネルギー自給にも貢献する。ポーランド経済に対しては、数え切れないほど多くの恩恵がもたらされると強調している。EDFによると今回の提案は、ポーランド政府が2020年10月に策定した原子力開発計画(PPEJ)の主要目的の達成を意識した内容である。欧州連合(EU)が掲げた「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化する」目標に合わせ、ポーランド政府の意欲的なエネルギー移行計画を下支えできるよう、EDFはこの提案で両国の戦略的パートナーシップにおける原則を設定。EPRという安全かつ信頼性と効率性に優れた無炭素電源により、年間に最大5,500万トンのCO2が排出されるのを回避し、実質ゼロ化に向けた道筋を付けるのに役立つと明言している。ポーランドにおける大型炉の建設計画には、フランスのほかに米国もウェスチングハウス(WH)社とともに参加を働きかけている。また、これに加えてポーランドでは複数の小型モジュール炉(SMR)の建設も検討されており、GE日立・ニュクリアエナジー社やニュースケール社のSMRが候補に挙がっている。 「フランス2030」で原子力分野の革新的技術開発を促進EDFの今回の発表は、E.マクロン大統領が新たな産業投資政策として「フランス2030」を公表した翌日に行われた。同大統領はこの政策の第一番目の目標として、2030年までに10億ユーロ(約1,324億円)を投じて、SMRや先進的原子炉の技術を実証、放射性廃棄物のより良い管理で世界市場への参入を目指すと表明した。また、少なくとも2つの大規模電解槽を建設してグリーンな水素を大量生産するほか、この年までにCO2排出量を2015年比で35%削減して産業全体の脱炭素化を図るとしており、これら3つの目標だけで80億ユーロ(約1兆590億円)以上を投資する。さらに、200万台の電気自動車とハイブリッド自動車を生産し、低炭素航空機の初号機を開発。これらの輸送部門には、約40億ユーロ(約5,295億円)を投じる方針である。同大統領の演説動画を英訳したメディア報道によると、大統領は原子力について「フランスの基幹製造技術であるため、その再編成を政策目標の第一番目に位置付けた」と説明。「今後も必要な技術であり、継続的に開発していくことは非常に重要だ」と述べた。同大統領はさらに、政策目標の二番目に挙げた水素製造と原子力部門は近い関係にあると指摘。国内の商業炉56基が発電したクリーン電力で水素を製造することは、フランスが世界の水素製造部門でリーダーになる可能性を意味すると強調している。(参照資料:EDFの発表資料、仏大統領府の発表資料(仏語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月13、14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Oct 2021
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英国グラスゴーで今月末から、第26回・国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP)が開催されるのに先立ち、国際エネルギー機関(IEA)は10月13日、世界のエネルギー部門の長期的動向を予測・分析した年次報告書「世界エネルギー見通し2021年版(WEO-2021)」を、COP26向けのハンドブックとして公表した。その中でIEAは、CO2排出量の増加や自然災害、エネルギー市場における価格の変動といった多くの問題が発生するなか、各国政府はクリーンエネルギー社会への移行を加速する意気込みやアクションを、COP26の場で明確に示す必要があると指摘。世界では近年、太陽光や風力、電気自動車といった低炭素エネルギー技術の開発がますます加速しているが、「それでもなお、2050年までのCO2排出量の実質ゼロ化に向けて、世界が排出量を長期にわたり持続的に削減していくには、移行ペースが余りにも遅い」と警告している。IEAは今年5月、2050年までにCO2排出量を実質ゼロとする際の、世界のエネルギー部門におけるロードマップを特別報告書として公表したが、今回のWEO-2021はそのロードマップから、3つのシナリオを主に分析している。まず、世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比較して1.5度℃以下に抑えるという「2050年までの排出量実質ゼロ化シナリオ(NZE)」を活用。また、各国政府が実際に実施中、あるいは発表した政策のみを考慮し、2100年までに平均気温が約2.6℃上昇することを想定した「公表政策シナリオ(STEPS)」、および各国政府の発表した誓約が期限内に完全に達成され、世界のCO2排出量を2050年までに40%削減、2100年までの平均気温の上昇を約2.1℃に抑えるという「発表誓約シナリオ(APS)」も使用している。WEO-2021によると、世界では今年になって石炭の消費量が大きく拡大しており、CO2の年間の増加量は過去2番目の大きさとなる見通しである。IEAのF.ビロル事務局長は、「各国政府がそのために取っているクリーンエネルギーによる対策は、我々のエネルギー・システムに化石燃料が及ぼす不可避な影響という困難に直面している」と指摘。同事務局長によると、この問題を解決するべく各国政府は、COP26でクリーンかつ強靭な発電技術の迅速な拡大を将来に向けて約束しなければならない。また、「クリーンエネルギーへの移行を加速することは、社会経済に多大な恩恵をもたらすが、何もせずにいた場合の代償も計り知れない」と訴えている。不確定要素が多い原子力開発の見通し原子力に関してWEO-2021は、平均気温の上昇を1.5℃以下に抑えていくための主要な4方策の中で言及した。太陽光と風力の設備をこれまでの2倍の規模に拡大した上で、原子力はその他の低炭素電源の一つとして、受け入れ可能な場所で使うべきだとしている。今後の原子力発電開発については、「既存炉および新規に建設する原子炉のいずれについても、これから決定される政策にかかっている」と指摘した。今後10年間に増加する原子力設備の大部分は、今年の初頭時点で19か国が建設中の約6,000万kW。中国とロシア、および韓国が近年、国内外で数多くの原子炉を5~7年で建設したことから、2025年までに追加で新たに着工した場合は2030年までに完成する可能性があるとした。2030年以降については1億kWを超える計画があるものの、これには過去に何回か個別に提案された案件や事業の開始に至っていないものが含まれるとしている。既存炉の閉鎖ペースについては、不確定要素がさらに多いとIEAは指摘しており、米国や欧州、日本で経年化が進んだ多くの原子炉は、運転期間の延長に際して追加の投資、場合によっては規制上の新たな承認が必要である。運転期間の延長を決めるにはまた、電力市場の状況に応じて厳しい安全審査や社会的受容が条件になるという課題にも直面している。WEO-2021によるとSTEPSシナリオでは、2030年までに6,500万kW(23%)を超える既存炉が先進経済諸国で閉鎖される一方、APSシナリオでは5,000万kWに留まっている。運転期間の延長により、次の10年間は低炭素な電力を比較的低コストで供給できるが、先進経済諸国においては閉鎖ペースが一層早まるリスクもあり、その場合は原子力で低炭素な電力を供給する基盤が損なわれるとしている。また、2040年までに先進経済諸国では、既存炉の約4分の3で運転期間が50年を超えることになるが、いずれのシナリオにおいても、これらの多くは閉鎖される可能性が極めて高い。小型モジュール炉(SMR)など革新的技術を用いた原子炉で、新たな設備の建設や許認可手続きに要する期間を短縮したり、熱電併給や水素製造といった用途に原子力発電所を利用する機会も今後は増えていく。しかし、それには技術革新の努力を一層加速して、実現の見通しを改善する必要があるとIEAは強調している。(参照資料:IEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Oct 2021
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©ECチェコの産業貿易省は10月12日、原子力発電所を一層容易かつ低コストで建設するためのフランスとの共同アクションとして、EU(欧州連合)に加盟するその他の8か国からの協力を受けて「共同宣言」を発表した。EUは2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指すにあたり、環境上の持続可能性を満たした真にグリーンな事業に正しく投資するための枠組「EUタクソノミー」で投資対象の分類規制を行っている。チェコとフランスをはじめとするEUの10か国は、地球温暖化の防止とエネルギーの自給に貢献する原子力を、今年末までに持続可能な投資活動の対象に含めるようEUに求めており、今回そのための「共同宣言」を11日付けで仏ル・モンド紙やベルギーのル・ソワール紙など、主要な欧州メディア8紙に掲載した。この宣言は、チェコとフランス両国の「原子力アライアンス(Nuclear Alliance)」創設を念頭に置いたもので、内容に賛同したブルガリア、フィンランド、クロアチア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、およびスロベニアの8か国が宣言に参加した。調整役は仏国のB.ルメール経済財務相が担った。「欧州になぜ原子力が必要か」と題された「共同宣言」の中で、10か国はまず地球温暖化との戦いは将来の課題ではなく今解決しなければならないと指摘。エネルギー価格の上昇は、第三国からのエネルギー輸入を出来るだけ早急に削減する重要性を示しており、脱炭素化した経済の実現に向けて、EUに加盟する各国がエネルギーの生産・消費活動を迅速かつ徹底的に低炭素なものに変える必要があるとした。こうした点から、欧州で無炭素電力の約半分を賄う原子力は解決策の一翼を担わねばならないと同宣言は指摘。原子力は価格が手頃なだけでなく、安定供給が可能な各国自前のエネルギー源であり、欧州の14か国で稼働する126基の原子炉は、過去60年以上にわたって信頼性と安全性の高さを実証、革新的な技術が用いられた安全な電源と強調した。同宣言はまた、欧州の原子力産業界は世界でも有数の技術集約型産業であると指摘。EU加盟国同士の協力により、EUでは近いうちに小型モジュール炉(SMR)プロジェクトという形で、新型炉を建設すると述べた。原子力はまた、環境影響面でその他の低炭素発電技術に劣るという科学的根拠がないため、これらと同等に扱われるべきであり、今年末までに何としてもEUタクソノミーに含める必要があると訴えている。チェコの産業貿易省は今回の宣言について、「欧州が地球温暖化との戦いに勝利するつもりなら、原子力発電は欠かせない。低炭素社会を目指すすべての国にとって不可欠で信頼性の高い電源だ」と表明。EUの執行機関であるEC(欧州委員会)は2018年の戦略的ビジョン「Clean Planet for All」の中で、エネルギーシステムを脱炭素化する主柱に原子力と再エネを据えたにも拘わらず、大型炉に投資するための環境を整備していないと指摘した。副首相を兼ねる同省のK.ハブリーチェク大臣も「だからこそ、原子力重視という共通項を持つフランスとチェコは共同アプローチを取ることにした」と説明。EU本部が、天然ガスとともに原子力をタクソノミーに含めることを認めれば、EU基金や民間からの投資が期待できるようになり、低いコストで新規原子力発電所を建設する道が拓けるとしている。(参照資料:チェコ政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
13 Oct 2021
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