米原子力規制委員会(NRC)は8月16日、フロリダ・パワー&ライト(FPL)社が保有・運転中のセントルーシー原子力発電所1、2号機(各PWR、約88万kW)について、2回目の運転期間延長を申請したと連邦官報に掲載した。1、2号機はそれぞれ1976年と1983年に送電開始しており、FPL社はこれらで当初認められていた運転期間の40年が満了する10年以上前(2001年)に、初回の運転期間延長(20年)を申請した。NRCは2003年10月に同申請を承認し、両機の現行の運転認可は2036年3月と2043年4月まで有効である。今回、2回目の20年延長が認められれば、運転開始以降の両機の累計運転期間はそれぞれ80年となり、1号機は2056年3月まで、2号機は2063年4月まで稼働が可能になる。なお米国での運転期間=40年は、技術的な制限ではなく、経済面および減価償却の観点に基づいている。NRCの発表によると、FPL社が今回の申請書を提出したのは8月3日で、NRCは現在、この申請書に漏れなどの不備がないかを点検中。運転期間の延長にともなう両機の安全性や環境影響面について、審査の実施に十分な情報が含まれていた場合、NRCは申請書を受理した上で、付属の行政判事組織である原子力安全許認可会議(ASLB)に公聴会の開催を要請することになる。米国では約100基の商業炉のうち、90基以上がこれまでに初回の運転期間延長を認められており、1基につき合計60年の稼働が一般的となっている。FPL社は2018年1月、米国の原子力発電事業者として初めて、2回目の運転期間延長をターキーポイント3、4号機(各PWR、76万kW)で申請。NRCは2019年12月にこれを承認しており、両機はそれぞれ80年間の稼働が許された全米初の商業炉になった。これを皮切りに、米国の原子力産業界では2回目の運転期間延長を模索する動きが相次いでいる。ターキーポイント3、4号機に続いて、エクセロン社のピーチボトム2、3号機(各BWR、118.2万kW)とドミニオン・エナジー社のサリー1、2号機(各PWR、87.5万kW)はすでに、80年間継続運転するための承認をNRCから獲得した。NRCは現在、同じくドミニオン社のノースアナ1、2号機(各PWR、約99万kW)と、ネクストエラ・エナジー社のポイントビーチ1、2号機(各PWR、64万kW)、およびデューク・エナジー社のオコニー1~3号機(各PWR、約90万kW)について、同様の申請を審査中である。また、テネシー峡谷開発公社(TVA)はブラウンズフェリー原子力発電所1~3号機(各BWR、116万kW)の2回目の運転期間延長に向け、正式申請前の手続きを開始した。エクセル・エナジー社も、ミネソタ州のモンティセロ原子力発電所(BWR、60万kW)が2030年に60年間の運転を終えた後、少なくとも2040年まで10年間、運転を継続したいと述べている。(参照資料:米規制委の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Aug 2021
1981
国連経済社会理事会の欧州経済委員会(UNECE)は11日、地球温暖化の防止や低炭素エネルギー技術の開発を加速するため取りまとめている技術概要書(technology brief)のシリーズで原子力発電を取り上げ、「原子力を除外した場合、地球温暖化の防止に向けた国際的な目標達成は難しくなる」との見解を表明した。それによると、2015年の国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP)で採択されたパリ協定、および国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に沿って、世界中のエネルギー供給システムやエネルギー多消費産業を脱炭素化するには、その他の持続可能な低炭素技術や無炭素技術と並行して、原子力発電が幅広いエネルギーミックスの一要素となり得る。また、原子力は低炭素な発電技術であり、過去50年間に抑制したCO2の排出は約740億トン。これは、世界中のエネルギー部門が排出するCO2の約2年分に相当する。原子力はまた、UNECE地域全体の発電量の約20%を賄っており、低炭素で生産される電力に至っては43%を供給。ただし、欧州各国に加えて米国やカナダ、ロシア、および旧ソ連諸国などが所属するUNECEでは、未だに化石燃料による発電量が全体の半分以上を占めることから、世界中のエネルギー供給システムを低炭素なものに変えるまで残された時間は少ない。UNECEのO.アルガエロバ事務局長は、「原子力利用国ではCO2排出量の実質ゼロ化を達成する重要電源として原子力を捉えており、2030年までに持続可能な開発の諸目標を達成する一助になるはずだ」と強調した。今回の技術概要書によると、UNECEに所属する国の中でも20か国が原子力発電所を保有。このうち11か国では総発電量の30%以上を賄うなど、原子力はエネルギー供給システムの中で中心的な役割を担っている。また、15か国が新しい原子炉を建設中か開発中で、7か国は新たに原子力発電を導入するプログラムを進めている。さらに、所属国のうちカナダ、チェコ、フィンランド、フランス、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、ロシア、ウクライナ、英国、米国などの国が「原子力は将来的に各国が国内のCO2排出量を削減する際、重要な役割を果たす」と明言している。その一方で、ベルギーとドイツはそれぞれ、2025年と2023年までに脱原子力を達成すると表明している。UNECEの技術概要書はまた、原子炉技術を大まかに①100万kW級の大型炉、②小型モジュール炉(SMR)、および③マイクロ原子炉の3種類に分類。大型炉の成熟した技術は商業的に活用されているほか、SMRも商業化に向けて開発が急速に進展している。マイクロ原子炉については、5年以内に米国とカナダで利用可能になることが期待されている。原子力発電所はさらに、低炭素な熱と電力を併給出来るため、エネルギー多消費産業の中でも製鋼や水素製造、化学製品生産では脱炭素化を大幅に進める可能性があると強調した。技術概要書はこのほか、「世界中の数多くの地域において、原子力はコスト競争力のある発電オプションである」と指摘。電力市場の運用の仕方によっては、また資金調達コストを抑えることができれば、大型炉の建設に必要な50億~100億ドルのコストは縮減することができる。また、今後SMRやマイクロ原子炉を建設する場合、資金調達は一層容易になり、様々な再生可能エネルギーを補完することも可能だとした。一方、原子力発電にともなう具体的リスクとしてUNECEは放射線関係の事故や放射性廃棄物の管理を挙げており、これらの事故発生を未然に防ぎ、あるいは廃棄物は適切に取り扱う必要があるとした。いくつかの国では、このようなリスクは容認できないと考えており、放射性廃棄物を長期的に処分するという問題もあり、原子力を利用しない道を選択したと説明している。(参照資料:UNECEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Aug 2021
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カナダの天然資源省とルーマニアのエネルギー省は8月5日、ルーマニアの民生用原子力部門の拡充や近代化などを目的に、両国間の原子力協力を強化する了解覚書を締結した。ルーマニアでは現在、唯一の原子力発電設備であるチェルナボーダ発電所でカナダ型加圧重水炉(CANDU炉)の1、2号機(各70万kW級)が稼働中。先月末からは米国との協力により、運転開始後25年が経過した1号機の改修工事と、建設工事が停止した3、4号機(各70万kW級CANDU炉)を完成させるプロジェクトが動き始めた。ルーマニアはまた昨年10月、同様の目的からフランスとも民生用原子力分野の協力を強化していくと表明、両国の(当時の)首相が協力宣言に調印した。今回はこれらの国にCANDU炉の開発国であるカナダが加わったことから、ルーマニアは既存炉の運転期間延長のための改修工事と新規原子炉の運転開始に向けて、カナダの原子力産業界が積み重ねてきたCANDU炉分野の高い実績に期待。このほか、小型モジュール炉(SMR)のさらなる開発支援に関する実行可能性分析や市場調査、原子力サプライチェーンの統合、高度な技能を有する労働力の育成なども両国の協力分野に含まれている。カナダは2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成すると約束した約120か国の1つであり、今回同国の天然資源省は「この意欲的な目標を達成するには、原子力を含めて様々なクリーンエネルギーを活用しなければならない」と表明。ルーマニアとの覚書は、このような地球温暖化の防止に向けた共通目標の達成と電力供給システムの脱炭素化という共通利益で、両国間の戦略的パートナーシップがいかに重要か示していると述べた。今回の覚書にはルーマニアのV.ポペスク・エネルギー相と、同国駐在カナダ大使館のA.グーレ大使がS.オレガン天然資源相に代わって調印、ルーマニアのF.クツ首相も同席した。ポペスク・エネルギー相は「我が国の新しい原子炉建設や既存炉の近代化プロジェクトに、米国とフランスに続いてカナダが加わってくれたことは非常に喜ばしい」とコメント。これらを通じて両国の協力関係をさらに深めるだけでなく、将来のグリーンエネルギーとなる新しい技術をともに実現していきたいと述べた。(参照資料:ルーマニア政府(ルーマニア語)、カナダ政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
11 Aug 2021
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は8月9日、同社の国際事業部門であるルスアトム・オーバーシーズ社(JSC RAOS)が極東のサハ自治共和国内で計画している小型モジュール炉(SMR)建設に対し、連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)が建設許可を発給したと発表した。ロスアトム社は2020年12月、ロシアでも初となる陸上設置式SMR「RITM-200N」(電気出力5.5万kW)をサハ共和国北部のウスチ・ヤンスク地区ウスチ・クイガ村で2028年までに完成させる計画で、同SMRが発電する電力の料金について同国政府との合意文書に調印した。建設計画の環境影響声明書や同サイトでのSMR建設の妥当性に関する資料の作成など、様々な所要の調査の大部分がすでに完了。今年6月にはサハ共和国内で公開ヒアリングも開催済みであることから、ロスアトム社は2024年にもSMR発電所の建設工事を開始する。ロシアでは、電気出力3.5万kWの小型炉「KLT-40S」を2基搭載した海上浮揚式原子力発電所(FNPP)の「アカデミック・ロモノソフ号」が2020年5月、極東チュクチ自治区内の湾岸都市ペベクで商業運転を開始した。ロスアトム社傘下のOKBMアフリカントフ社はこれに続き、「KLT-40S」の特性をさらに生かしたSMRシリーズ「RITM」を開発。熱出力17.5万kW~19万kWの「RITM-200」においては、ロシアの原子力砕氷船に搭載した小型炉のこれまでの運転経験を統合しており、同炉を2基搭載した最新の原子力砕氷船「アルクティカ」はすでに海上での試験航行を終え2020年10月に正式就航した。同様に、「RITM-200」を2基ずつ搭載予定の原子力砕氷船「シビル」と「ウラル」も現在建造中である。「RITM-200」はまた、FNPPに搭載する「RITM-200M」(電気5万kW)と陸上に設置する「RITM-200N」の2種類に分けられる。ロスアトム社は今年7月、極東のチュクチ自治区で計画されているバイムスキー銅鉱山プロジェクトに電力を供給すると決定。「RITM-200M」を2基搭載したFNPPを、同鉱山に近い東シベリア海沿岸のナグリョウィニン岬の作業水域に納入することになった。一方、陸上設置型の「RITM-200N」は顧客の要望に応じて柔軟性の高い幅広い活用が可能で、ロスアトム社は発電のみならず熱や水素の製造、海水の脱塩にも利用できると指摘。建設期間が3~4年と短期間で済む一方で耐用年数は60年と長く、燃料交換も5~6年に一回のサイクルだと説明。JSC RAOSのO.シラゼトディノフ副総裁は、「建設許可が降りたことでサハ共和国におけるSMR建設プロジェクトは新たな節目を迎えた」と表明している。(参照資料:ロスアトム社の発表資料①、②、ルスアトム・オーバーシーズ社(ロシア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
10 Aug 2021
3379
米国で約30年ぶりの新設計画として、ジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所で3、4号機(各PWR、110万kW)を建設中のジョージア・パワー社は7月29日、両機の送電開始時期を3~4か月先送りし、それぞれ2022年第2四半期と2023年第1四半期に延期したと発表した。両機で採用されたAP1000型炉を開発したウェスチングハウス社が2017年3月に経済破綻して以降、ジョージア・パワー社は両機の完成スケジュールをそれぞれ、2021年11月と2022年11月としていた同社は昨年4月、新型コロナウイルスによる感染の影響を軽減するため、建設サイトの労働力を約20%削減した。今回のスケジュール変更は、このような労働生産性の低下に加えて、試験や品質保証関連で追加の時間が必要になったことを理由として挙げており、この遅れによりプロジェクト全体の建設コストも上昇する見通し。同プロジェクトに45.7%出資するジョージア・パワー社の追加負担額は、4億6,000万ドルになる見込み。2013年の3月と11月に始まった3、4号機増設プロジェクトでは、ジョージア・パワー社のほかに、オーグルソープ電力が30%、ジョージア電力公社(MEAG)の子会社が22.7%、ダルトン市営電力が1.6%出資している。3号機の建設工事では2020年10月に冷態機能試験が完了した後、同年12月に初装荷燃料が建設サイトに到着。ジョージア・パワー社は今回、同機の温態機能試験が特に大きな問題もなく、無事に完了したことを明らかにしている。ジョージア・パワー社の発表によると、完成スケジュールを先送りしたことで同社が負担する建設コストは計92億ドルに達する。同社がこれまでにジョージア州の公益事業委員会(PSC)から承認を受けた建設コストは総額73億ドルであるため、これを超える金額についてはこれから承認を得ることになる。同プロジェクトではまた、建設期間中に顧客が電気代を通じて負担している金額に影響が及ぶのを防ぐため、出資企業の投資利益率を下げる措置が特別に取られている。プロジェクトの進行が一か月遅延する毎に、この利益率も徐々に下がっていくため、投資したコストを最終的にどれだけ回収できるかは、4号機が完成する頃に実施予定の包括レビューで明らかになる。ジョージア・パワー社のC.ウォマック社長兼CEOは、「この建設プロジェクトは、当社がジョージア州で60~80年にわたり、低コストで信頼性の高いCO2フリーの電力を提供していくための重要な投資案件だ」と説明。「これらを確実に実行することは、当社の顧客やジョージア州のみならず米国にとっても重要であり、必ず実行したい」との決意を述べた。3号機の温態機能試験では、同社は核燃料なしでシステムの温度や圧力を通常運転時のレベルまで上昇させ、機器やシステムが正常に機能することを確認。今回、この試験が完了したことから3号機の建設進捗率は99%に到達。4号機も含めたプロジェクト全体の進捗率は約93%となっている。(参照資料:ジョージア・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Aug 2021
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ルーマニアの国営原子力発電会社(SNN)は7月30日、米エネルギー省(DOE)のK.ハフ原子力担当次官補代行を団長とする一行がルーマニア側との原子力関係協力で運営会議に参加するため、同国唯一の原子力発電設備であるチェルナボーダ原子力発電所(稼働中の1、2号機は各約70万kWのカナダ型加圧重水炉:CANDU炉×2基)を訪れたと発表した。ルーマニアと米国の両国は2020年10月、建設工事が中断したチェルナボーダ3、4号機(各70.6万kWのCANDU炉)の完成プロジェクトも含め、ルーマニアの民生用原子力発電部門の能力拡充と近代化に米国が協力するため政府間協定を締結した。今年6月にルーマニア議会が同協定を批准したことから、SNNのエネルギー戦略に沿って、3、4号機がそれぞれ2030年と2031年に運転開始できるよう、今回DOEの代表団が実質的な協力活動を開始したもの。SNN株主総会が承認した同戦略によると、3、4号機は以下の3段階で完成させる予定。すなわち、①24か月間の準備段階に契約を締結し、米国から技術面や法制面、および財政面の支援を受けるための準備を進める、②18~24か月間の予備的作業段階で、EPC(設計・調達・建設)契約企業が同プロジェクトのエンジニアリング作業を実施し、安全性関係の文書を準備する、③その後は69~78か月の建設段階に入り、工事を実行する。また、米国との協力を通じて、ルーマニアは多国籍の建設チームと米国の技術や専門的知見を活用する機会を確保する。チェルナボーダ1号機については、改修工事を実施する計画である。SNNのC.ギタCEOは、「我が国はレジリエンス(耐久性)と持続可能性を兼ね備えたエネルギーシステムを必要としており、原子力発電設備を拡張することでルーマニアはクリーン経済に移行しつつ、これらの必要性を満たすことができる」と指摘。チェルナボーダ発電所で3、4号機を完成させて、社会経済の成長やサプライチェーンの開発を促すとともに、脱炭素化にパラダイム・シフトするための要件を満たしていくとした。具体的には、間接雇用も含めて1万9,000名もの雇用を産業界で創出し、新しい世代の専門家を育成。これと同時に、合計4基のCANDU炉で年間2,000万トンのCO2排出を抑制すると強調している。チェルナボーダ3、4号機は1980年代半ばに本格着工したが、1989年のチャウシェスク政権崩壊により、進捗率がそれぞれ15%と14%のまま建設工事が停止した。これらを完成させるという政府決定を受け、SNNは2009年にプロジェクト会社を設置したものの、同社への出資を約束していた欧州企業6社は経済不況等によりすべて撤退した。その後、2011年に中国広核集団有限公司(CGN)が出資参加の意思を表明したことから、SNNはCGNと2015年11月に両炉の設計・建設・運転・廃止措置に関する協力で了解覚書に調印した。2019年5月にはプロジェクトの継続に関する暫定的な投資家協定を締結したが、2020年1月にルーマニアのL.オルバン首相は地元メディアに対しCGNとの協力をキャンセルすると表明。同年6月には、この協力関係から撤退したことが報じられた。首相のこの判断は、当時の米トランプ政権が中国との対決姿勢を強めたことから、米国との戦略的パートナーシップに配慮したものとみられている。(参照資料:SNNの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
05 Aug 2021
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中国核工業集団公司(CNNC)傘下の中国核能電力股分有限公司(CNNP)は7月28日、遼寧省で徐大堡原子力発電所3号機(PWR、127.4万kW)の原子炉建屋部分にコンクリートを打設した。上海証券取引所に対する同社の8月1日付け公告で明らかになったもので、設計は第3世代+(プラス)の120万kW級ロシア型PWR(VVER-1200)、設計上の運転期間は60年である。同機は、同型設計となる後続の4号機とともに、徐大堡原子力発電所のⅡ期工事となる予定で、それぞれ2027年と2028年の完成を目指している。一方、Ⅰ期工事の1、2号機(各100万kW級PWR)については、今のところ未着工となっている。CNNCとロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は2018年6月、江蘇省にある田湾原子力発電所と新規サイトの徐大堡で2基ずつ、合計4基のVVERを新たに建設する枠組契約を締結。これに基づき、CNNCとロスアトム社傘下の原子力発電所建設・輸出企業アトムストロイエクスポルト(ASE)社は2019年6月、徐大堡Ⅱ期工事としてVVER-1200を2基建設するための一括請負契約に調印した。今年2月には、ロシアの原子力機器製造企業のアトムエネルゴマシ(AEM)グループが、徐大堡3号機用に主要機器の製造をロシアで開始。最終的に2基分の蒸気発生器や冷却材ポンプ、加圧器などを製造・納入するとしており、5月には田湾7、8号機と徐大堡3、4号機の起工式が執り行われた。これには、中国の習近平国家主席とロシアのV.プーチン大統領が、テレビ会議を通じて参加している。徐大堡発電所建設計画では2006年当時、最終的に100万kW級PWRを6基建設することが計画されていた。2011年初頭にⅠ期工事の2基について、基礎掘削の前段階の起工式が行われたものの、同年3月に福島第一原子力発電所事故が発生したため、政府は計画を一時凍結した。その後、2014年4月に国家核安全局(NNSA)が同計画に「サイト承認」を発給。2016年10月に1、2号機について土木建築契約が結ばれた折、同サイトでは100万kW級のウェスチングハウス社製AP1000が建設されると見られていたが、その後、中国版AP1000の「CAP1000」になることが判明している。同発電所の所有者は中核遼寧核電有限公司で、これにはCNNCが50%以上出資。残りを大唐国際発電股分有限公司や国家開発投資公司、江蘇省国新資産管理集団有限公司などが10~20%ずつ出資している。(参照資料:上海証券取引所の発表資料(中国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Aug 2021
2865
ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は7月31日、エジプトから2015年に請け負った同国初のエルダバ原子力発電所(120万kW級ロシア型PWR:VVER-1200×4基)の建設に向けて、機器の製造を開始すると発表した。エジプトのM.シャーケル電力・再生可能エネルギー相と同国の関係機関代表のほか、ロスアトム社やロシア連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)の幹部など、同プロジェクトに関係する一行が同月28日、ロシア南西部サマラ州のシズラニ市にある最大手の重機械製造企業、チャジマシ社(JSC TYAZHMASH)を訪問。エルダバ1、2号機用にコア・キャッチャー機器の製造を開始する契約書に署名したもの。これに先立つ6月30日、エジプトで原子力発電所の導入計画を担当する原子力発電庁(NPPA)は最初の2基の建設許可をエジプト原子力・放射線規制機関(ENRRA)に申請している。4基すべての「サイト許可」については、NPPAがすでに2019年に取得済みである。ロスアトム社は同発電所の建設スケジュールを明らかにしていないが、NPPAが「発電所全体のスケジュールとして13年間を予定している」と述べたことが伝えられている。ロスアトム社とチャジマシ社は長年にわたって協力関係にあり、チャジマシ社が関与する原子力発電所の建設計画はロシア国内のみならず、世界各国に及んでいる。これに今回のエジプト案件が加わり、同社が原子力発電所関係で受注した契約は全体の約3割に上昇。同社のA.トリホノフ社長は「高品質の原子力機器をタイムリーに供給する」との方針を表明したほか、「エジプトの発電所契約のみならず、ロスアトム社との全般的な協力枠組みの中で、今後も新たな契約を獲得していきたい」との抱負を述べた。今回の訪問団には、NPPAのA.エル・ワキル長官やENRRAのS.アタラー長官も含まれており、チャジマシ社では主要な製造工場を訪れている。中国やインド、トルコ向けの様々な原子力発電所用機器の製造状況を視察したほか、バングラデシュのルプール原子力発電所用機器を搬出する輸送ゲートもチェック。エル・ワキル長官は、「ロシアの製造工場で近代的な技術を数多く確認するのが目的だった」と表明。その上で、「ロシアとエジプト双方がこの契約の義務事項をすべて履行し、すべての機器が予定通りに製造・納入されると確信している」と述べた。同訪問団はこのほか、ロスアトム社のエンジニアリング部門のアトムエネルゴマシ社に所属するAEMテクノロジー社を視察。同社のボルゴドンスク支部ではエルダバ原子力発電所の主要機器が製造される予定であり、訪問団はインドや中国の原子力発電所向けに様々な製造段階にある原子炉や蒸気発生器、その他の機器の様子を確認した。(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
03 Aug 2021
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米原子力規制委員会(NRC)は7月29日、使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CISF)をテキサス州アンドリュース郡で建設・操業するという中間貯蔵パートナーズ(ISP:Interim Storage Partners)社の計画について、「環境影響声明書の最終版(FEIS)」を発行した。この計画にともなう環境影響を審査した結果、NRCスタッフは環境庁(EPA)に提示する結論として「認可の発給を勧告する」とFEISに明記。EPAが同FEISの受領を連邦官報に掲載して少なくとも30日が経過後、NRCは認可の発給判断を下すが、その際の条件として、NRCは同計画の安全・セキュリティ面や技術面を保証する「安全性評価報告書(SER)の最終版」を発行しなければならない。NRCは現在、この評価作業を別途進めている。ISPは、米国の放射性廃棄物処理・処分専門業者であるウェイスト・コントロール・スペシャリスツ(WCS)社と、仏国のオラノ社の米国法人が2018年3月に立ち上げた合弁事業体(JV)である。米エネルギー省(DOE)が2010年に、ネバダ州ユッカマウンテンにおける使用済燃料最終処分場の建設計画を中止した後、WCS社は2016年4月、テキサス州の認可を受けて操業している「低レベル放射性廃棄物処分場」の隣接区域で、CISFを建設・操業するためのライセンス取得をNRCに申請。その後、オラノ社とのJV設立を経て、同JVが2018年6月に改めて申請書を提出していた。その後の2020年5月、NRCはCISF建設計画に関する環境影響声明書の案文(DEIS)を公表。「サイト周辺の自然環境などに悪影響が及ぶ可能性は認められない」と結論付けた上で、120日間のパブリック・コメントに付した。また、DEISの判明事項を公表するため、公開協議を4回にわたってウェブ上で開催。FEISを取りまとめるに当たっては、約1万600人の一般国民が提出した約2,500件のコメントを分析評価したとしている。この申請が承認された場合、ISP社は差し当たり最大5,000トンの使用済燃料、および「クラスCを超える低レベル放射性廃棄物(GTCC廃棄物)」をCISFで40年間貯蔵することができる。同社はそれ以降の20年間で、CISFを5,000トンずつ7段階で拡張するプロジェクトを実施し、最終的に最大4万トンの使用済燃料を貯蔵する計画である。なお、このCISF建設計画に対しては、地元テキサス州のG.アボット知事が2020年11月、NRCに宛てた書簡の中で反対意見を表明。「テロリストや妨害工作員の攻撃で放射性物質が流出すれば、当州のパーミアン盆地にある世界最大規模の油田が閉鎖リスクにさらされるかもしれない」と述べており、NRCに対してはISP社の申請を却下するよう要請している。また、同州に隣接するニューメキシコ州のM.J.グリシャム知事もその数日前、同様の反対意見をNRC宛ての書簡に明記。「DEISには重大な欠陥があり、CISFが当州の環境や経済、州民の健康と安全に及ぼす悪影響に適切に取り組んでいない」と指摘した。また、最終処分場の具体的な建設計画が浮上しない中、両州の州境から約60kmの地点で建設されるCISFが、実質的に最終処分場に変わる可能性に懸念を表明している。(参照資料:NRC、ISP 社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Aug 2021
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©BEIS英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は7月29日、「先進的モジュール式原子炉(AMR)の実証計画」では2030年代初頭までに1億7,000万ポンド(約259億6,200万円)の予算で、高温ガス炉(HTGR)の実証炉を同計画の初号機として完成させる案を公表した。HTGRは、英国が2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成する有力ツールの一部となる予定で、英国は今後10年以内に最新の原子炉技術の実用化を目指している。BEISは同日、政府がHTGRを最も有望な実証モデルと考えるこの提案について、「根拠に基づく情報提供の照会(Call for Evidence)」を開始。9月9日までの約1か月間、産業界や一般国民からのコメントを募集する方針だ。BEISによればこの提案は、CO2排出量の実質ゼロ化に向けた重要施策としてB.ジョンソン首相が昨年11月に公表した「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」、および翌12月に英国政府が発表した「エネルギー白書」で誓約していた事項。AMRの研究開発プログラムに投入される1億7,000万ポンドは、柔軟性の高い活用が可能な原子炉技術の開発を加速するために確保された3億8,500万ポンド(約588億円)の一部である。BEISは、AMRは従来の原子力発電所と比べて小型なため、より少ないコストで建設することが可能と考えている。運転上の柔軟性も高く、低炭素な電力を一層安全に供給するほか、重工業の脱炭素化に資するクリーン水素や高温熱を製造することもできる。また、英国で排出されるCO2の37%が高温熱を得るための火力によるもので、かなりの部分が重工業の生産プロセスで発生する。HTGRの高温熱は500℃~950℃と、その他のAMRより温度が高いことから、HTGRを活用することでセメントや紙、ガラス製品、および化学製品の生産プロセスでは、CO2排出量の大幅な削減が可能である。AMRではさらに、従来の軽水炉とは異なるタイプの燃料や冷却材を使用。AMRの研究開発に関する国際協力の場では、主に6種類のAMR技術がCO2の実質ゼロ化に貢献すると言われており、このうちのいくつかは、燃料として使用済燃料を再利用する可能性がある。しかし、この中でもHTGRは出口温度が最も高いものの一つであるため、BEISは実証炉プログラムの初号機にHTGRを選択したと説明している。BEISのA.M.トレベリアン・エネルギー担当大臣は、「2050年までに英国では風力や太陽光といった再生可能エネルギーが発電に不可欠の要素となるが、これらでは常に、安定した低炭素のベースロード電源として原子力を必要とする」と指摘。「だからこそ、我々はサイズウェルC原子力発電所の開発企業と交渉しつつも、先進的原子炉技術の実用化を推し進めている」と強調した。同相によれば、AMRは新しいレベルの近代的原子力技術であり、CO2排出量の削減で重要な役割を果たす可能性がある。AMRはまた、産業界に動力を供給し、英国民がより良い環境を取り戻しつつ経済成長を遂げられるよう導いてくれるとしている。なお、英国政府はこのほか、様々な原子力技術開発支援の一環として、国立原子力研究所(NNL)がプレストン研究所(スプリングフィールド)で開発中の「先進的原子力技術と技術革新キャンパス」を試験的に実行すると発表した。同キャンパスは、産業界と学界が先進的原子力技術の開発と商業化を目指して、共同プロジェクトを実施する「技術革新ハブ」として機能する予定である。(参照資料:英国政府の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
30 Jul 2021
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ブラジル原子力発電公社(Eletronuclear)は7月23日、建設工事が2015年に停止したアングラ原子力発電所3号機(PWR、140.5万kW)の作業再開に向け、今年2月に募集した土木建築契約の入札結果を公表した。この入札は国内企業を対象にしており、複数回の入札手続きを経て、原子力発電公社は最終的に建築エンジニアリング企業のFerreira Guedes社と電気機器企業のMatrical and ADtranz社で構成される企業連合を選定した。2億9,200万レアル(約62億6,000万円)で土木建築工事の準備作業と一部の電気機器の組み立て作業を委託する計画。同公社がEPC(設計・調達・建設)契約企業を選定するのに先立ち、原子炉建屋のコンクリート製上部構造物やスチール製の格納構造物を完成させるほか、使用済燃料の貯蔵プールなどを建設するとしている。同公社によると、1984年に始まったアングラ3号機の建設工事はこれまでに、景気の後退や関係する汚職調査等により2回作業が停止したため、現在の建設進捗率は65%である。今回入札した作業項目は、同公社がアングラ3号機用に設定した「完成に至る最適経路の加速計画」に沿ったもの。所轄官庁から落札企業としての承認を受けた後、同企業連合は10日以内に原子力発電公社と正式契約を交わすことになっており、同公社としては今年中にも残りの建設工事を再開したい考え。2026年11月に同機の運転開始を見込んでいる。このほか、アングラ3号機の建設再開・完成計画に関しては、ブラジル国立社会経済開発銀行(BNDES)が今年6月、「アングラ・ユーロブラスNES企業連合」を雇用する契約を締結した。同機の建設と運転・保守について、法制面や経済面で民間部門と協力していくモデルを構築するため、BNDESが入札を通じて同連合を選定したもの。これは2019年以降、BNDESが原子力発電公社に提供している技術支援サービスの一環。また、アングラ3号機の建設再開と完成に向けて、同企業連合はプロジェクトの再構成を担うとともに、EPC契約企業の候補会社も勧告することになる。構成メンバーは、ベルギーのエンジニアリング・サービス企業であるトラクテベル・エンジニアリング社と同社のブラジル支部、およびスペインのエンジニアリング企業のEmpresarios Agrupados Internaciolal SA。これらの企業は、複数の国で原子力発電所関係の様々な経験と実績を積んでいることから、ブラジルにおいても一流の建設パートナーや資金調達の支援機関を幅広く呼び込むことができるとBNDESは指摘している。(参照資料:ブラジル原子力発電公社、BNDESの発表資料(ポルトガル語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
29 Jul 2021
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は7月23日、ロシア極東チュクチ自治区で計画されているバイムスキー銅鉱山プロジェクトに「海上浮揚式原子炉(FPU)」を使って電力を供給するため、同プロジェクトの法的所有者であるGDKバイムスカヤ社と協定を締結したと発表した。同鉱山は世界でも最大規模の未開発銅鉱山の1つと言われており、カザフスタンの採掘企業のKAZ ミネラルズ社は2018年8月、同プロジェクトを9億ドルで買収した。今回の協定では、銅鉱山と処理施設で構成される「バイムスキーGOK」に対し、ロスアトム社が供給する電力の長期的な全量売買契約を2022年4月までに締結することが明記された。チュクチ自治区のペベクでは現在、世界初の海上浮揚式原子力発電所(FNPP)となった「アカデミック・ロモノソフ号」が2020年5月から電力を供給中。同発電所では電気出力3.5万kWの軽水炉式小型炉「KLT-40S」が2基搭載されているのに対し、バイムスキー銅鉱山プロジェクトでは、ロスアトム社が出力5万kWの小型炉「RITM-200M」を2基搭載した「最適化FPU(OFPU)」を利用する方針である。GDKバイムスカヤ社によると、同鉱山では合計4艘のOFPUを利用する計画。このうち3艘がメインの発電ユニットとなる一方、残り1艘はメイン・ユニットの修理時や燃料交換時のバックアップに使われる。ロスアトム社はすでに、これらの製造を傘下のアトムエネルゴマシ社で開始しており、2026年末に最初の2艘を同鉱山に近い東シベリア海沿岸の、ナグリョウィニン岬の作業水域に納入。バイムスキーGOKに通じる送電網にこれらを接続した後、翌2027年末に3艘目を設置するとしている。今回締結された協定は、バイムスキー鉱床地区の開発に向けた投資プロジェクトを実行に移す「包括的ロードマップ」の枠組の中で締結された。同ロードマップは2021年7月1日、ロシアのY.トルトネフ副首相兼極東連邦管区大統領全権代表が承認済みである。ロスアトム社はまた、今回の協定の重要な点として、北極圏への投資が一層効率的に行われるよう、電力産業関係の法改正を促す意図が両社にあると説明。北極圏内で長期のプロジェクトを実行する投資家に対しては、十分な見返りを与える効果的なメカニズムが必要だと強調している。(参照資料:ロスアトム社、KAZ ミネラルズ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Jul 2021
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米国で小型モジュール炉(SMR)を開発中のニュースケール・パワー社は7月22日、韓国のサムスンC&T社(サムスン物産)が同社に株式投資することになったと発表した。サムスン物産はこの投資でニュースケール社のSMR開発事業を支援していくが、これに加えてサムスン物産のエンジニアリング・建設グループは、ニュースケール社の主要株主であるフルアー社(大手の設計・調達・建設(EPC)企業)と「業務提携契約」を締結する方針。この契約を通じてサムスン物産は、ニュースケール社が今後世界中で展開するSMRの建設プロジェクトに対し、協力の可能性を広げていく。サムスン物産は化学薬品や鉄鋼、電子素材、エネルギーなど6つの事業分野に携わる総合商社で、建設ゼネコンの一つでもある。韓国電力公社(KEPCO)の企業連合がアラブ首長国連邦(UAE)からバラカ原子力発電所(140万kWのPWR×4基)建設計画を受注した際も、これに参加した。韓国国内ではハヌル5、6号機(各PWR、100万kW)の建設工事に加わったことから、同社はこのような経験を生かして、ニュースケール社やフルアー社の戦略的パートナーとして将来のSMR建設プロジェクトに協力する考えだ。ニュースケール社のSMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」は、開発が進展していくにつれ1モジュールあたりの出力が徐々に増加。5万kW版のNPMについては2020年9月、原子力規制委員会(NRC)が設計認証(DC)審査で、SMR設計としては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給しており、同設計は現時点で米国におけるSMR商業化レースの先頭を走っている。最新のNPMの出力はモジュールあたり7.7万kWで、これを最大で12基接続した場合の出力は92.4万kWとなる。サムスン物産は今回、「SMRは環境に優しい次世代技術であり、業務提携契約を締結すれば当社が今後大きく成長するための重要ステップになる」とコメント。ニュースケール社に投資することで、CO2を排出しない発電技術を世界中に広める機会を追求していきたいと述べた。ニュースケール社も、「原子力エンジニアリングと建設のパートナーとして、サムスン物産の確かな実績を当社の事業に活用できることは喜ばしい」と表明。サムスン物産の投資金と同社が保有する原子力事業の専門的知見は、ニュースケール社の革新的クリーンエネルギー技術を市場に送り出す上で非常に有益だと強調した。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は2017年6月、国内の原子力発電所を徐々に削減して2080年頃までに脱原子力を達成すると宣言する一方、原子力輸出や海外の原子力事業への参加については産業界を積極的に支援する方針を表明。国内で残される原子力分野が廃止措置や放射線関係に限られていくなか、産業界や人材を維持する観点から政府は原子力輸出等への産業構造転換を促している。ニュースケール社の投資については斗山重工業が7月20日、同社への支援を継続するため、国内の投資家らとともに追加で6,000万ドル相当の出資を行うと発表している。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
27 Jul 2021
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台山原子力発電所©CGN世界初のフラマトム社製欧州加圧水型炉(EPR)として、中国で運転を開始した台山原子力発電所1号機(PWR、175万kW)で6月に小規模の燃料破損が生じたことについて、フランス電力(EDF)は7月22日、「同機が仏国で稼働中の原子炉であったら運転を停止していた」との見解を表明した。仏国の商業炉をすべて保有・運転するEDFはフラマトム社株の75.5%を保有しているほか、台山原子力発電所の建設と運転を担当する「台山原子力発電合弁会社(TNPJVC)」には30%を出資。残り70%は中国広核集団有限公司(CGN)と広東省の電力会社が保有しているため、今回のEDFの見解は、関係するデータすべての提示を求めて同社が開催要請していた同日のTNPJVC臨時取締役会で述べたもの。6月に米国のニュース専門チャンネルがこの件で「放射能漏れの懸念」を報じた際、中国の生態環境部(省)は「小規模の燃料破損は原子力発電所における一般的事象であり、同機は2018年12月の営業運転開始以降順調に稼働中。周辺環境にも異常はない」と強調。同省傘下の国家核安全局(NNSA)は、「1号機では6万本以上の燃料棒のうち、5本前後の被覆部に損傷が生じたと推定されるが、これは燃料棒全体の0.01%未満であり、燃料集合体で最大規模の損傷が生じる(設計時の)推定確率の0.25%よりはるかに低い」としていた。EDFもこの当時、「(小規模の燃料破損により)一次系冷却水で特定の希ガス濃度が上昇することはよく知られた現象だ」と説明。原子炉の運転手続き上も想定済みのことだと述べていた。しかし、今回の発表でEDFは、「TNPJVCから提供されたデータを分析した結果、当社なら仏国の運転手続きに従って同機を一時的に停止した上で、状況を正確に把握し、これ以上の進展を阻止していた」と表明。同機では一部の燃料棒の被覆部が破損して非密封の状態になっていたため、熟練の専門家で構成されるEDFのチームはTNPJVCが提供したデータの中でも特に、一次冷却水の化学組成を注意深く分析。希ガスの濃度上昇が進んだ場合の影響などを評価した。結果としてEDFは、「一次冷却水の希ガス濃度等は、同発電所に適用されている規制上の閾値を下回っていたものの、現状がさらに進展していることから引き続き監視が必要だ」と指摘。ただし、同発電所関係の決定はすべてTNPJVCにゆだねられており、同社がコントロールできるわけではないとしている。(参照資料:EDFの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Jul 2021
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韓国の斗山重工業は7月20日、米国で小型モジュール炉(SMR)を開発するニュースケール・パワー社への支援を継続するため、国内の投資家らとともに追加で6,000万ドル相当の株式投資を行うと発表した。この投資により、同社がニュースケール社に納入するSMR用機器の金額は数10億ドル規模に増大する見通し。両社はまた、SMRを使った水素製造や海水脱塩にも協力の範囲を広げており、共同で実施するSMR事業の基盤を強化する。この日、斗山重工業の朴会長とニュースケール社のJ.ホプキンズ会長兼CEOは、韓国の首都ソウルで追加投資の合意書に調印した。斗山重工業は2019年からニュースケール社への金融投資企業に加わっており、すでに4,400万ドルの株式投資を現金で実行。これに今回の新しい投資が追加され、合計投資額は1億400万ドルとなった。両社はまた、2019年に「製造コンサルティング・サービス契約」を締結しており、この契約の下で斗山重工業は、原子炉圧力容器の製造に関する専門的知見をニュースケール社に提供している。斗山重工業はその後も、機器の製造試験などをニュースケール社のために実施。米国で最初のSMRを製造するチームの一員として、供給する機器の範囲を鍛造品や圧力容器用の重要パーツなどに拡大し、両社間の協力を長期に継続していく考えだ。ニュースケール社は、同社製のSMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の開発を開始して以降、1モジュールあたりの出力を徐々に増加。5万kW版のNPMについては2020年9月、原子力規制委員会(NRC)が設計認証(DC)審査で、SMR設計としては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給しており、同設計は現時点で米国におけるSMR商業化レースの先頭を走っている。最新NPMの出力はモジュールあたり7.7万kWで、これを12基接続した場合の出力は92.4万kWとなる。斗山重工業の発表によると、同社はユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)がアイダホ国立研究所内で建設を計画しているNPM初号機の建設に参加する予定で、来年にも初号機用の鍛造品製造を開始する。UAMPSはすでに昨年末、ニュースケール社の大株主であるフルアー社とエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約を締結。2023年に建設・運転一括認可(COL)をNRCに申請し、2025年にこれを取得して建設を開始、2029年には最初のモジュールの商業運転を始めたいとしている。ニュースケール社のホプキンズ会長兼CEOは、「大規模な製造ラインを持つ斗山重工業の専門能力は、当社のNPM初号機建設計画を進める上で非常に貴重なものだ」と指摘した。斗山重工業の朴会長も、「ニュースケール社に多くの機器を供給することにより、韓国のサプライチェーンにも新たな事業機会と推進力がもたらされる」と強調している。(参照資料:斗山重工業、ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
21 Jul 2021
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クルスコ発電所における2基目の完成予想図©GEN Energijaスロベニア国内で複数の電力会社を束ねているGENグループの親会社であるGENエネルギア社は7月19日、既存のクルスコ原子力発電所(PWR、72.7万kW)における2基目の原子炉建設に向けた計画(JEK2プロジェクト)の準備作業を開始すると発表した。これは、JEK2プロジェクトの実行可能性調査(FS)の結果から、政府のインフラ省(MOI)が同日、「エネルギー許可」をGENエネルギア社に発給したことに基づく。これによって2基目の建設が決定したわけではないが、100%国営企業の同社は今後、スロベニアが原子力発電設備を増強し、長期的に活用していくため様々な作業を実施する。発表によるとFSでは、スロベニアが将来、信頼性のある電力を国内で生産して低炭素な電力への移行を効率的に果たし、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成する上で「同プロジェクトは必要であり、技術面や環境面からも実行可能」との結論が示された。また、同プロジェクトへの投資に先立ち、複数の専門的調査が行われており、それらの結果も今回、「エネルギー許可」が発給される根拠となった。同プロジェクトでは最終的に、具体的な立地点の選定や承認、プロジェクトへの投資決定などを経て、建設工事を実施することになる。GENエネルギア社は現在、同国で唯一の原子力発電設備であるクルスコ原子力発電所を所有。同発電所がスロベニアの総発電量の約4割を賄っていることから、同社はCO2を排出しない原子力の主要な役割を指摘した上で、「それと同時に強靭な回復力を備えた国内の電力システムを維持し、手頃な価格で電力を安定的に供給するにも必要だ」と強調した。同社はまた、「原子力は今後も持続可能なエネルギーとしてスロベニアに重要な貢献をする低炭素電源であり、GENグループにおける電力供給の柱だ」と指摘。こうしたことから、同プロジェクトはGENグループの中で中心的な戦略的開発プロジェクトになると説明した。同プロジェクトでGENエネルギア社は、(発電所の最終的な規模にもよるが)第3世代の原子炉で年間80億~120億kWhの電力を得ることを目指している。新しい原子炉は、年間8%以上という電力輸入量を削減し、拡大傾向にある風力や太陽光など再生可能エネルギーのバックアップ電源として電力を安定供給。JEK2プロジェクトへの投資は、スロベニア経済全体に良い影響を及ぼすとしている。JEK2プロジェクトにエネルギー許可を発給したことについて、インフラ省のJ.ヴルトヴェツ大臣は、「当省にとっては最も重要な決断の一つだった」と述べた。理由として、スロベニアが最新の地球温暖化防止戦略の中で、2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化する目標を掲げているため、この決断によって後の世代の人々の福祉や環境にも影響が及ぶことなどを説明。「スロベニアは今後、独自の低炭素エネルギー供給やエネルギー供給の自立という合理的なエネルギーシナリオの最終判断を下すため、基盤を築いていく」と述べた。具体的には、幅広い公開協議の実施や関係する行政手続き、JEK2プロジェクトに対する投資決定文書の準備などを開始する考えである。(参照資料:GENグループの発表資料①、②(スロベニア語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Jul 2021
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米国の原子力技術・エンジニアリング企業ケイロス・パワー社は7月16日、テネシー州のB.リー州知事、および同州経済開発庁(TNECD)のB.ロルフ・コミッショナーと連名で、同社製の「フッ化物塩冷却高温炉(FHR)」の実証炉を同州内に建設すると発表した。この構想はすでに2020年12月に同社が公表していたもので、今回はテネシー州政府の合意を得た同社が1億ドルを投じて、最終完成版より低出力の実証炉「ヘルメス」をオークリッジにあるエネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」内で建設すると表明。ETTP内で55名分の雇用の創出が見込まれる同炉の完成を、2026年に目指すとしている。ケイロス社のFHR(KP-FHR)は電気出力14万kWで、冷却材として低圧の液体フッ化物塩を用い、燃料には3重被覆層・燃料粒子「TRISO」を使用。固有の安全性を保持しつつ電力と高温の熱を低コストで生成するもので、2002年にテネシー州にあるDOE傘下のオークリッジ国立研究所(ORNL)がFHRの概念を提案した後は、それに基づきMITやUCバークレーなどが個別の要素技術の研究を進めている。ケイロス社は、天然ガスのコンバインドサイクル発電とコスト面で競合可能な、無炭素で安全なエネルギー源として、KP-FHRを市場に送り出すことを計画。社内で重要機器類の製造能力を高めながらサプライチェーンの確認も実施し、許認可手続きが確実に進むようKP-FHRが完璧な原子力システムであることを実証、同設計をプロトタイプから商業規模の段階に進展させる考えだ。ケイロス社のKP-FHR開発については、DOEが2020年12月、設計開発や許認可手続きおよび建設段階におけるリスク削減を目指した官民のコスト分担方式の「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」で、実証炉「ヘルメス」を支援対象の一つに選定。商業規模のFHR開発につなげることを目的に、同プログラムにおける7年間の総投資額6億2,900万ドルのうち、3億300万ドルをDOEが負担する。テネシー州のリー知事は今回、「ケイロス社が参加したことで、当州のオークリッジは今後も米国の革新的な技術開発を牽引していく」と表明。同州におけるエネルギー開発は、米国その他の国々にプラスの効果をもたらすとした上で、「実証炉開発の支援を受ける場としてケイロス社が当州を選んだことに感謝する」と述べた。ケイロス社の創設者の1人であるM.ローファーCEOも、「当社の先進的原子炉技術をテネシー州で実証することは、米国にクリーンで廉価なエネルギーシステムをもたらす重要な節目になる」と説明。パートナーとして支援の提供を受けているORNLやテネシー峡谷開発公社(TVA)、オークリッジ市、東部テネシー経済審議会、州政府のTNECDらに謝意を表明した。TVAは今年5月、ETTPにおけるケイロス社の実証炉「ヘルメス」の建設計画に対し、原子炉のエンジニアリングや運転および許認可手続き関係の支援を提供すると発表。ケイロス社が同炉を通じて、出力調整可能な米国の電源としては最も手頃な価格でFHRを市場に出せるよう、協力するとしている。(参照資料:ケイロス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Jul 2021
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国際エネルギー機関(IEA)は7月15日、今年上半期の世界の「電力市場報告書」を公表した。新型コロナウイルスによる感染の世界的拡大のため、世界の電力需要は2020年に約1%下落したが、その後世界経済が回復したことにより、2021年は5%近く、2022年は4%それぞれ上昇する見通し。増加分の半分近くを化石燃料発電で賄うことになり、電力部門ではCO2排出量が押し上げられる危険性があると指摘している。同報告書によると、近年の世界各国の政策設定や経済傾向を反映して、太陽光や風力など再生可能エネルギーによる発電量は今後2年間、着実に増加すると見込まれている。増加率は2021年に8%、2022年に6%以上となる見通しだが、それでも世界で増大する電力需要の約半分を満たす程度。このためIEAは、2021年に増加した電力需要の45%、2022年は40%までを石炭火力などの化石燃料発電がカバーし、その残りが原子力発電で賄われると見ている。必然的に、電力部門のCO2排出量も2019年と2020年に連続して下降していたものが、2021年に3.5%、2022年は2.5%上昇し、史上最高値を記録する可能性がある。IEAの貞森恵祐エネルギー市場・安全保障局長は、「世界中の多くの国で、再生可能エネルギーが目を見張る成長を続けているが、今世紀半ばまでのCO2排出量実質ゼロ化に向けて軌道に乗れるほどのレベルではない」と指摘。「経済が回復するにつれ、電力部門における化石燃料の発電量も大幅に増加してきたが、経済を持続的な成長軌道に乗せるためには、再エネやエネルギーの効率化といったクリーンエネルギー技術への大規模投資が必要だ」と強調した。原子力発電所の閉鎖でCO2排出量が増大する可能性世界の原子力発電動向については、IEAは新規の建設を進める国がある一方、段階的廃止を決めた国まで様々な方向性があると指摘した。世界の原子力発電は、1970年代後半から1980年代にかけて新規設備の建設がピークを迎えた後、10年ほど前までは下降傾向にあった。過去10年間にこのようなマイナス傾向は一転し、中国やインドが新規建設を推し進めているほか、アラブ首長国連邦(UAE)では初の商業炉が完成。現在、世界では54基の建設工事が進められており、総設備容量は5,800万kWにのぼる。これらのうち870万kW分が2021年に運転を開始する一方で、920万kW分が閉鎖される見通し。2022年には1,050万kWの設備が利用可能になるが、閉鎖分が680万kWに留まるため、ネットの設備容量は370万kW増加するとIEAは予測している。IEAはまた、既存の原子力発電所で運転期間を延長するには課題も伴うと指摘した。原子力発電所の長期運転(LTO)は主に、運転開始当初の運転期間(一般的に40年)を超えて運転することを意味しており、新規設備の建設やその他の発電技術と比べて、「耐用期間中の均等化発電コスト(LCOE)」では大きな競争力がある。ただし、1970年代から1980年代に多くの原子炉が運転開始した先進諸国では、現実問題として今後これらを閉鎖するのか、あるいはLTOに向けて改修投資を行うのか、今決めなくてはならない。米国ではさらに、地方ごとの複雑な電力市場構造が原子力発電所の運転期間延長に向けた投資を阻んでいる。最大手の原子力発電事業者であるエクセロン社は2020年8月、バイロンとドレスデンの両原子力発電所を2021年中に早期閉鎖すると発表したが、どちらも採算性の悪化が閉鎖の理由。これを是正する措置として、米国内ではこれまでに、5つの州がCO2を排出しないという原子力発電所の利点に対し、発電量に応じた補助金を提供する支援プログラムを導入。IEAは10サイトの14基(合計約1,400万kW)がその恩恵を被ったと報告書に明記している。IEAによると、再エネの利用は現在、世界中で急速に拡大しており、ますます競争力のある価格で無炭素な電力を提供しつつある。しかし、大容量の原子力発電設備が閉鎖された場合、電力供給の基盤となるのは化石燃料発電であり、送電インフラ等への投資とともに再エネが大規模に拡大されない限り、CO2の排出量も増加する可能性があると強調している。(参照資料:IEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Jul 2021
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米エネルギー省(DOE)と共同で、深宇宙探査用核熱推進(NTP)技術の開発を進めているアメリカ航空宇宙局(NASA)は7月13日、有望な原子炉技術の詳細な設計概念と価格に関する「提案募集(REF)」に応じた企業の中から3社を選定したと発表した。いずれも、原子燃料や機器・サービスのサプライヤーで、すでにNASAと協力関係にあるBWXテクノロジーズ(BWXT)社、防衛等の多角的な技術製品企業であるジェネラル・アトミクス・エレクトロマグネティック・システムズ(GA-EMS)社、およびエネルギー関係のハードウェアとサービスを提供するウルトラ・セーフ・ニュークリア・テクノロジーズ(USNC-Tech)社である。今回のREFは、DOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)を管理・運営するバッテル・エナジー・アライアンス(BEA)社が、NASAの2021会計年度予算を使って今年2月中旬から4月末まで実施した。INLは今後、選定した3社それぞれと約500万ドル相当の契約を締結。将来的に、深宇宙探査の特定の性能要件を満たすための様々な設計戦略を立てるほか、このようなミッションに利用可能な原子炉の設計概念を12か月の契約期間に完成させる。契約の終了時、INLはそれらの設計概念についてレビューを実施し、NASAに勧告事項を提示。NASAはこのような情報を活用して、将来開発する技術設計の基盤を構築することになる。NASAによれば、核熱推進システムの推進効率は化学燃料ロケットと比べて非常に大きい。このため、火星の有人探査や貨物ミッション、および太陽系外縁部の科学ミッション用として有望な核熱推進技術を開発できれば、数多くのミッションを一層迅速かつ安定した形で実施することができる。今回の3社が開発に関わる小型モジュール炉(SMR)は、そのような核熱エンジンの重要機器であり、HALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を使用する予定である。3社のうち、BWXT社はNASAとの今回の契約実行に際し、航空機・宇宙船の開発製造企業ロッキード・マーチン社と提携する方針。また、GA-EMS社は、小型のペブルベッド式高温ガス炉「Xe-100」を開発中のX-エナジー社、およびロケットやミサイルの推進器を製造しているエアロジェット・ロケットダイン社と提携する。USNC-Tech社は、親会社で第4世代の小型高温ガス炉「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」を開発中のUSNC社と連携体制を取るほか、ブルーオリジン社(=アマゾン社の創業者J.ベゾス氏が創設した宇宙ベンチャー企業)、GE日立・ニュクリアエナジー社とGEリサーチ社、フラマトム社、高機能合金材料メーカーのマテリオン社と提携するとしている。(参照資料:NASAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Jul 2021
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中国核工業集団公司(CNNC)は7月13日、中国南端の海南省(海南島)に位置する昌江原子力発電所で、多目的小型モジュール炉(SMR)「玲龍一号」の実証炉建設工事を正式に開始したと発表した。CNNCによると、「玲龍一号」は出力12.5万kWの一体型PWRで、CNNCが2010年から「第12次5か年計画」の主要プロジェクトとして、10年以上にわたる研究開発を通じて開発した。知的財産権もCNNCが保有しており、2016年4月にはSMR設計としては初めて、国際原子力機関(IAEA)の「包括的原子炉安全レビュー(GRSR)」をパス。今回のプロジェクトで「玲龍一号」は世界で初めて陸上で建設されるSMRとなり、中国が世界のSMR技術をリードしていることを示すものだとCNNCは強調している。「玲龍一号」は元々、「ACP100」と呼称されており、CNNCは福建省莆田市でこの「ACP100」を2基建設することを計画していた。しかし、CNNCはその後、建設サイトと登録商標を変更した上で2019年7月に「玲龍一号」の実証炉建設プロジェクトに着手すると発表。同プロジェクトは、海南自由貿易港の建設に向けてクリーンなエネルギーの供給を保証するものであり、CNNCと海南省政府が結んだ戦略的協力協定の成果となる。今年6月にはまた、国家発展改革委員会が同プロジェクトの実施を最終承認していた。CNNCの発表によると、モジュール化された小型のSMRは従来の大型原子炉技術とは異なり、完全に受動的な安全系によって高い安全性を確保しているほか、短期間で建設できるという特長がある。クリーンな分散型エネルギー源として利用が可能なため、海水の脱塩や地域の冷暖房用熱供給に加えて、離島や鉱山地区、エネルギー多消費産業に対するエネルギー源として、様々なシナリオに対応。「玲龍一号」が海南省で完成した場合、年間の発電量は10億kWhに達し、52万6,000世帯に電力供給が可能だ。また、化石燃料の消費を抑えられるため、CO2排出量の大幅な削減にも貢献するとしている。「玲龍一号」の実証炉が建設される昌江原子力発電所では現在、I期工事(1、2号機)として第2世代の出力65万kWのPWR「CNP600」が稼働中。Ⅱ期工事となる3、4号機については、中国が知的財産権を保有する第3世代の120万kW級PWR設計「華龍一号」が採用される予定で、今年3月に3号機の正式な着工式が執り行われた。(参照資料:CNNC(中国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Jul 2021
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韓国原子力安全委員会(NSSC)は7月9日、韓国水力・原子力会社(KHNP)が慶尚北道蔚珍郡の北面で建設している新ハヌル原子力発電所1号機(PWR、140万kW)に対し、条件付きで運転認可を発給すると議決した。韓国では2017年の「エネルギー転換のロードマップ」で原子力発電所の運転期間延長を認めず、段階的に削減していくことを閣議決定したが、すでに建設認可が降りていた新ハヌル1、2号機と新古里5、6号機までは完成させる方針である。新ハヌル1号機は出力140万kWの韓国製PWR「APR1400」で、韓国電力公社(KEPCO)の率いる企業連合がアラブ首長国連邦(UAE)のバラカ原子力発電所で建設したのと同型設計。2012年7月に本格着工しており、KHNP社は2014年12月に同機の運転認可をNSSCに申請した。これを受けてNSSCは、韓国原子力安全技術院(KINS)を通じて2020年5月まで、申請書の審査と同機の使用前審査を実施したほか、特別専門委員会は2020年6月から10月まで追加検討を行った。NSSCはまた、2020年11月以降、公式会議で申請書の評価作業を開始したが、同機ではこの間、過酷事故時の水素爆発を防止する「静的触媒式水素処理装置(PAR)」の安全性やテロ対策などが問題となっていた。このためNSSCは、合計18回の公式会議等でこのような主要課題を審議したほか、今年2月には現場での検査を実施。今回、同機のPARについては「韓国原子力研究院(KAERI)が水素除去率等の追加試験を早急に行い、2022年3月までに最終報告を提出すること」などを義務付けている。新ハヌル1号機の運転認可申請審査では、航空機衝突事故の防止対策や加圧器逃し安全弁(POSRV)の漏えい低減措置の妥当性なども詳細に検討された。同機が原子力安全法・第21条の基準をみたしていることを確認した上でNSSCは運転認可の発給を決定する一方、同法の第99条に基づき、同機の安全確保に必要な措置として以下の条件を追加した。①PARの追加試験は、経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)がドイツの「THAI模擬格納容器」を使って行った「THAIプロジェクト(水蒸気濃度の再結合効率などPAR性能に対する影響を評価)」と同等のものを実施し、最終報告書を提出する。また、必要に応じてフォローアップを行う。②航空機の衝突事故発生の可能性を低減するため、飛行回数の制限措置などについて関連機関と協議を実施し、最初の予防保全計画を策定。必要に応じてフォローアップを行う。③予想可能な航空機の衝突事故について、被ばく線量制限値を超える放射能漏れ災害の発生頻度の評価手法を開発する。④最終安全解析報告書(FSAR)の第15章について、営業運転の開始日までに改訂版を提出する。なお、NSSCは今後、新ハヌル1号機の燃料装荷や試運転に際しても、安全性を事前に徹底的に確認するとしている。(参照資料:韓国原子力安全委の発表資料(韓国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
13 Jul 2021
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欧州議会に所属する約90名の議員は7月8日、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)の幹部5名宛てに書簡を送り、EUタクソノミーにおける投資対象の分類規制(EUタクソノミー規制)の中で、原子力発電を始めとする非化石燃料発電技術への投資に大きな不利益が生じることがないよう強く要請した。EUタクソノミーは、EUが2050年までにCO2排出量が実質ゼロ化の達成を目指すにあたり、環境上の持続可能性を満たした、真にグリーンな事業に正しく投資が行われるよう定義づける枠組み。「EUタクソノミー規制」は具体的に、何に対する投資が持続可能な資金調達と言えるか判断するための基準で、2020年6月に欧州議会で可決・法制化されている。CO2を出さないという点で原子力はクリーンな電源であり、「地球温暖化の影響緩和に十分貢献する」というEUタクソノミーの基準の一つをクリア。その一方で、放射能による汚染や生態系への影響、放射性廃棄物の処分といった問題があるため、もう一つの基準である「(資源循環や生態系など)他の環境分野に重大な悪影響を及ぼさない(Do No Significant Harm=DNSH)」への適合性については決定的な勧告をしておらず、現時点で原子力はEUタクソノミーに含まれていない。今回、スウェーデン選出のS.スカイテダル議員を中心とする欧州議会の超党派議員87名は、ECで「欧州グリーンディール」を担当するF.ティマーマンス執行副委員長、「人々のための経済」を担当するV.ドムブロフスキス執行副委員長のほか、エネルギー問題担当のK.シムソン委員と環境問題担当のV.シンケビチュウス委員、および金融問題担当のM.マクギネス委員に書簡を送付した。議員らはその中でまず、EUタクソノミー規制を法制化に導いたECの努力を称えた上で、「CO2排出量の実質ゼロ化達成に貢献すると分かっているエネルギー源を意図的に無視するだけの余裕はEUにはない」と表明。原子力がそうしたエネルギー源の一つであることは明らかであるため、いくつかの加盟国では原子力発電設備に対する投資や民間資本の動員という道を選択したが、EUはこのような判断を奨励こそすれ、反対すべきでないと指摘した。議員らはまた、ECの調査機関である「共同研究センター(JRC)」が今年3月、原子力をEUタクソノミーに含めるべきかという点について、技術的側面の包括的な分析評価報告書を発表したことに言及。JRCはEUタクソノミーに含まれている他の電源との比較で、「原子力がそれら以上の健康被害や環境への悪影響をもたらすという科学的根拠は見受けられなかった」と結論付けていた。また、ECの2つの科学的専門家組織も先週、環境上の側面からJRCの結論をほぼ裏付ける報告書を出していた。このことから議員らは、「欧州議会のみならずEU全体で、地球温暖化に強力なツールを使って真剣に立ち向かうのなら、原子力のように明らかなポテンシャルを持った非化石燃料発電技術を敢えて差別することなどできない」と強調した。議員らはさらに、「原子力を使用していない加盟国や、その段階的廃止政策を進めている加盟国には明らかな政治的意図があり、専門家による科学的な結論を無視して原子力発電に積極的に反対するようECに働きかけている」と指摘。「我々としては、ECがそうした働きかけを一蹴し、専門家の助言に従って原子力発電をタクソノミーに加えていく勇気を持ってほしい」と呼びかけた。議員らによれば、EUタクソノミー規制は「CO2排出量の実質ゼロ化を達成したい」という強い要望や「DNSH」の原則によって導かれるべきもの。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」はかつて、「地球温暖化との闘いの中で原子力は必須の手段」と指摘していたが、ECの専門家組織も今回は同様の結論に到達した。そうした以上、ECには原子力その他の非化石発電技術への投資であからさまな不利益を生じさせない、公平なEUタクソノミー規制を構築してほしいと訴えている。(参照資料:欧州議会スカイテダル議員の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Jul 2021
3762
米エネルギー省(DOE)は7月7日、先進的原子炉など新しい原子力発電所の建設コスト削減を図るため、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と協力すると発表した。同社の率いるチームに580万ドルの支援金を提供し、建設コストの10%以上の削減を目指して3つの建設要素技術を実証していく。DOEのK.ハフ原子力担当次官補代行は、「原子力発電所の建設にかかるコストの超過とスケジュールの遅延という課題は、過去数十年にわたって新規の原子力発電所建設計画を悩ませてきた。しかし、進んだ建設要素技術を駆使することによって先進的原子炉の建設コストを引き下げ、作業をスピードアップすることは可能だ」と指摘。先進的原子炉の実用化は地球温暖化を防止する重要ステップでもあり、J.バイデン大統領が目指す「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化」を達成するのに必要であると強調した。今回の取り組みは、DOEが2019年に傘下のアイダホ国立研究所内に設置した「国立原子炉技術革新センター(NRIC)」の予算と管理の下で実行される。NRICの目標は先進的原子炉の設計を実証し建設を促進することであるため、この取組はNRICの「先進的建設要素技術(ACT)構想」の一部ということになる。ACTは2段階で構成されており、第1段階では先進的な建設要素技術の開発と小規模での実証に向けた準備を実施する。この作業が無事に完了しその後の予算が確保できれば、第2段階として支援金の提供から3年以内に技術の実証を行う計画である。GEH社のプロジェクト・チームには、カンザス州の大手エンジニアリング企業Black & Veatch社と米国電力研究所(EPRI)、テネシー峡谷開発公社(TVA)、インディアナ州のパデュー大学、ノースカロライナ大学が参加。また、英国のCaunton Engineering社と、「スチール鋼レンガ・システム」を開発したスコットランドのModular Walling Systems 社、および英国政府が産業界との協力により2012年に設置した「先進的原子力機器製造研究センター(NAMRC)」が加わっている。同チームは今後、DOEらとともに以下の3つの技術を実証し活用していく。これらは他の産業部門で開発されたもので、有望ではあるが原子力発電所の建設という観点で試験が行われたことはない。①トンネル掘削業界が開発した「立坑建設工法」を使って、原子力発電所の工期を1年以上短縮。②スチール鋼とコンクリートの複合構造物を使ったモジュール式の建設システム「スチール鋼レンガ・システム」を用い、現地で必要とされる労働力を大幅に削減。③高度な監視システムとデジタルツイン技術(物理世界の出来事をデジタル上に再現する技術)を統合し、原子力発電所構造物の3-Dレプリカを作成。DOEはこれらの技術を様々な先進的原子炉設計に適用し、早期に市場に送り出せるよう経済性の改善を図る。GEH社側は、「DOEやNRICと協力して革新的な建設要素技術を使ったコストの削減方法を評価していきたい」とコメント。「今回のDOEの支援金は小型モジュール炉(SMR)の商業化で非常にプラスとなるほか、その他の先進的原子炉の実現に向けて道を拓くことになる」と述べた。(参照資料:DOE、NRICの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 Jul 2021
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BWRX-300の断面図©GE Power米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は7月6日、BWRタイプの同社製小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の商業化を促進し、カナダやその他の国々で建設していくため、原子燃料メーカーのグローバル・ニュークリア・フュエル・アメリカズ(GNF-A)社、およびカナダの大手ウラン生産企業のカメコ社と協力覚書を締結した。カナダで稼働中の商業炉は19基すべてがカナダ型加圧重水炉(CANDU)だが、GEH社でカナダのSMRを担当するリーダーは「CANDU炉もBWRも燃料ペレットに二酸化ウラン、被覆管に類似の素材を使うなど燃料のタイプは非常に似ている」と説明。今回の協力で、設計と製造で似た側面をもつ2種類の燃料の製造企業同士でも相乗的な利益があり、カナダの燃料サプライチェーンでは性能が向上すると期待している。カメコ社側も「世界中がCO2排出量の実質ゼロ化に向けて突き進むなかで、原子力の果たす役割は非常に大きく、様々なSMRや先進的原子炉技術が浮上する原動力になっている」と表明。「カメコ社としては、このような革新的な原子炉に燃料供給する主力企業となる覚悟であり、GEH社やGNF社とともに新たなSMR設計にビジネスチャンスを見出していきたい」と述べた。GEH社によると、「BWRX-300」は電気出力30万kWのSMRで、2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得した第3世代+(プラス)の同社製設計「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」がベース。自然循環技術や受動的安全システムなど、画期的な技術を採用しているほか、設計の大胆な簡素化により単位出力あたりの資本コストはその他のSMRと比べて大幅に削減された。 また、原子燃料にはGNF社製の高性能燃料集合体「GNF2」のように、すでに承認された設計を採用。機器類も技術的に実証済みのものを組み込んでおり、GEH社は「SMRの中でもBWRX-300はコスト面の競争力が最も高くリスクは最低レベルとなり、市場に出るSMRとしては世界最初のものになるはずだ」と強調している。米国では、本格的な認証手続きの一つである設計認証(DC)審査を「BWRX-300」で実施するのに先立ち、NRCが2020年12月から先行安全審査を開始。カナダでもすでに2020年1月から、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が許認可申請前のベンダー設計審査を実施中である。カナダ国内ではこれまでに、オンタリオ州営電力(OPG)社が2020年11月、ダーリントン原子力発電所の敷地内でSMRの建設に向けた活動を開始すると発表。国外では、バルト三国のエストニアや東欧のポーランド、チェコが同設計を国内で建設することに関心を表明しており、可能性調査の実施に向けた覚書がこれらの国の関係者とGEH社の間で結ばれている。GEH社がビジネスアドバイザーのPwCカナダ社に委託して実施した同設計の経済性調査によると、初号機をカナダのオンタリオ州で建設した場合、BWRX-300の建設と運転はカナダの国内総生産(GDP)に約23億カナダドル(約2,024億円)貢献する見通し。稼働する全期間を通じて、19億ドル(約1,672億円)の労働所得を提供するとともに7億5,000万加ドル(約660億円)以上の税収をカナダ連邦政府や州政府、地元自治体にもたらす。また、後続のSMRを同州その他で建設すれば、GDPに対する一基あたりの貢献額は11億加ドル(約968億円)となるほか、税収については3億加ドル(約264億円)になるとしている。(参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Jul 2021
3959