フィンランドのティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は12月8日、オルキルオト原子力発電所で建設中の3号機(172万kWの欧州加圧水型炉=EPR)(OL3)を初めて臨界状態とし、低出力試験を開始するための許可をフィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)に申請した。この試験運転期間中、OL3が国内送電網に接続されることはないとTVOは説明している。OL3の現在のスケジュールでは、2022年1月に臨界条件を達成した後、翌2月から送電開始、定常的に発電(営業運転)を始めるのは同年6月になっている。STUKから許可が下り次第、TVOはこれらのスケジュールへの影響について、建設工事を請け負っている仏アレバ社と独シーメンス社の企業連合と協議を行う予定である。OL3の建設工事は2005年8月、世界で初めてEPR設計を採用して開始されたが、規制関係文書の確認作業や土木建設工事、品質検査等に想定外の時間を費やし、当初予定されていた2009年の完成スケジュールは大幅に遅延した。TVOは2018年3月、同企業連合と結んだターンキー契約の固定価格である約32億ユーロ(約4,200億円)が工事の遅延にともない大きく超過したとして、この超過コストと損害賠償金に関する包括的和解契約を同企業連合と締結。TVOに対し同企業連合側から、総額4億5,000万ユーロ(約580億円)が支払われることになった。その後、OL3では各種の機能試験が行われ、2019年3月には運転許可が発給されている。TVOは2020年4月に燃料の装荷許可を申請したものの、この時期に世界では新型コロナウイルスによる感染が拡大。同年8月にTVOが発表した基本スケジュールによると、OL3の送電開始は2021年10月、営業運転の開始は2022年2月に改定されたが、今年3月に燃料の装荷許可が下りたのを受け、TVOは同炉で直ちに燃料の装荷作業を開始した。今年5月、TVOは企業連合側と建設プロジェクトを完了する際の条件について改めて協議を行い、2022年2月末までにOL3を完成できなかった場合、実際の完成日に応じて企業連合側から追加の補償金をTVOに支払うことで合意。両者は翌6月に合意文書に調印した。しかし、同炉で改めて温態機能試験を実施した結果、TVOは今年7月、「タービンで総点検を行う必要性が出てきた」と発表している。その際、2021年10月の送電開始と2022年2月の営業運転開始スケジュールを1か月間先送りすることが決定。8月にはさらに3か月延期しており、TVOは最新スケジュールの「2022年2月の送電開始と同年6月の営業運転開始」に向けて、鋭意作業を実施中である。(参照資料:TVOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 Dec 2021
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ポーランド最大の化学素材メーカー、シントス社のグループ企業であるシントス・グリーン・エナジー(SGE)社、および同国最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社は12月7日、ポーランドでマイクロ原子炉や小型モジュール炉(SMR)の建設と商業化を進めるため、合弁事業体(JV)の設立に向けた投資契約を締結したと発表した。両社が50%ずつ出資するJVは「オーレン・シントス・グリーン・エナジー社」と呼称され、SMRの中でも特に、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社が開発した「BWRX-300」の建設に重点的に取り組む。2030年の初号機完成を目指して、年内にも反トラスト規制当局に許可申請書を提出し、正式な活動の開始に備える方針だ。このプロジェクトを通じて、オーレン・グループは2050年までに自社のCO2排出量の実質ゼロ化を達成出来るよう、製品生産の脱炭素化を加速。その際、地元のサプライチェーンを活用することでポーランドの経済成長とエネルギー供給保証につなげたいとしている。同JVで展開する具体的な活動として、両社はBWRX-300の開発を支援するともに、建設に向けた法的枠組みの整備を支援する。立地点を選定し、着工。完工後は生産したエネルギーと熱を自社用に活用するだけでなく、地元地域の需要にも対応する考えだ。ポーランドのJ.サシン副首相兼国有財産相によると、同国は欧州連合(EU)の地球温暖化防止政策に沿って、エネルギー部門を改革しなければならないが、「SMRの商業化に向けた今回の投資契約によって、両社はエネルギー部門の脱炭素化を効果的かつ安全・迅速に進めることになる」と述べた。原子力発電設備を持たないポーランドの政府は現在、国内の2サイトで合計出力600万kW以上の大型炉を建設する計画を進めており、小型炉開発に向けた企業の今回の動きについても、同相は「原子力は将来最も安定したエネルギー源になる」との見解を表明した。SMRの商業化協力で、GEH社のBWRX-300を選んだ理由として、オーレン・グループはカナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が今月2日、ダーリントン原子力発電所で建設するSMRとして3つの候補設計の中からBWRX-300を選定したことにも言及。OPG社がBWRX-300の初号機を建設した場合、オーレン・シントスJVのSMRはその2基目となるため、同炉の開発や投資手続の準備、許認可、建設、運転等についてOPG社が積み重ねた経験を参考にすることができると強調した。同グループはまた、SMRの建設候補サイトをポーランド国内で無数に入手することが可能であり、大型の投資計画では数多くの実績を残している。最先端のエネルギー生産設備を広範囲に建設した経験もあるため、同グループはモジュール式原子炉をポーランドで商業化する企業としては理想的な立場にあると説明。これらを背景に、BWRX-300に関するシントス社との協力では、同グループがプロジェクトを一層迅速かつ円滑に実行に移すことができると述べた。一方、シントス・グループのオーナーであるM.ソウォヴォフ氏も、PKNオーレン社との過去20年にわたる協力関係に触れ、協力範囲が革新的原子力技術に広がったことを歓迎した。BWRX-300を開発したGEH社についても、親会社のGE社グループにはポーランド市場で30年もの実績があるほか、同国内の3,000社以上をカバーする巨大サプライチェーンを保有していると指摘。その上で、「これらのうち何社かはすでに他国の原子力発電所用機器を製造しており、このことはポーランドをSMR製造ハブとする機会を提供する投資計画の重要な要素だ」と強調している。(参照資料:PKN オーレン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Dec 2021
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フランス国内の商業炉をすべて保有・運転しているフランス電力(EDF)は12月1日、傘下のフラマトム社が開発した第3世代+(プラス)のPWR設計「欧州加圧水型炉(EPR)」を欧州のみならず、世界中で建設していくため、チェコやポーランド、インドなどの複数の大手関係企業と協力協定を締結したと発表した。協定への調印は、民間原子力コミュニティ最大のマーケットプレイスである「世界原子力展示会(WNE)」が11月30日 から12月2日まで、フランスのパリで開催されたのに合わせて行われた。EDFとしては低炭素な社会を将来、世界レベルで実現する上で原子力は欠かせないと考えており、地球温暖化の防止に資する今後数10年間の重要施策として、原子力の必要性を強力に提唱。また、長期的な連携協力を通じて原子力の恩恵や社会経済的価値を提供するため、フランスおよび国外での原子力発電所開発計画を支援している。実際にEDFは、原子力発電所の設計エンジニアリングから建設、運転、保守点検、人材育成と能力開発、廃止措置、放射性廃棄物の管理に至るまで、原子力関係の専門的知見を保有。このため、発電所の全期間で必要となる関連サービスやノウハウ、およびフランスの様々な原子炉技術の販売促進活動を展開している。これらを背景にEDFは世界中のEPR建設を成功に導きたいとしており、今回の協力協定はその建設プロジェクトに、相手国のサプライチェーンや産業界の実質的な参画を保証する意味を持つものである。まず、チェコとの協力では、EDFはドコバニ原子力発電所5、6号機増設計画の受注を念頭に、同国の産業界との連携を強化。同国のエンジニアリング関係企業で構成されるチェコ・エネルギー産業連合(CPIA)の立ち合いの下、スコダ社や国立原子力機関(UJV Rez)と協定を締結したほか、その他のエンジニアリング企業や関連機器製造企業のBAEST社、I&C Energo社、 Hutní montáže社、 MICo社、MSA社 、REKO Praha社、 SIGMA社とも協力協定を結んだ。ポーランドについては、EDFは今年10月、原子力発電の導入を計画している同国政府に対し、2~3サイトで4~6基(660万~990万kW)のEPR建設を提案している。これに基づき今回は、同国の主要エンジニアリング企業であるDominion Polska社やEgis Poland社、Energomontaż-Północ Gdynia社、発電関係のEPC(設計・調達・建設)契約企業のRafako社、Zarmen社と協定を締結している。インドとの協力に関しては、EDFは今年4月、南西部のジャイタプールでEPRを6基建設するプロジェクトについて、法的拘束力のある技術・商業面の契約条件提案書をインド原子力発電公社(NPCIL)に提出した。インド政府が世界の研究開発・製造ハブとなることを目指して掲げている国家産業政策「メイク・イン・インディア」に沿って、EDFはこれまでも数多くの地元サプライヤーと連携協力してきた。今回は確固たるインドの国産化戦略の一環として、インドの大手複合企業体であるラーソン&トゥブロ(L&T)社と2017年から続いている協力関係を延長した。EDFはこのほか、フランスの大手ゼネコンであるブイグ公共土木事業(Bouygues Travaux Publics)社とも協力を強化するための枠組み契約を締結している。チェコやポーランド、あるいはサウジアラビアでのEPR建設が実現した場合、両社はこの契約に基づいて世界レベルの協力活動を展開する。なお、ブイグ社は同じ世界原子力展示会の場で、サウジアラビアの土木建設企業であるNesma & Partners社と了解覚書を締結。EDFがサウジアラビア初の原子力発電所を建設することになれば、Nesma & Partners社とともにすべての土木建築作業に参加することになる。(参照資料:EDFの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
07 Dec 2021
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英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)のG.ハンズ・エネルギー担当相は12月2日、2030年代初頭の実証を目指して建設する先進的モジュール式原子炉(AMR)技術として、高温ガス炉(HTGR)を選択したことを明らかにした。BEISは今年の7月末、柔軟性の高い活用が可能な原子炉開発のため確保した予算3億8,500万ポンド(約580億円)のうち、「AMRの研究開発・実証プログラム」の予算1億7,000万ポンド(約250億円)を使って、2030年代初頭までにHTGRの初号機を完成させるという提案を発表。英国が2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指すにあたり、政府がHTGRを最も好ましい技術と認識していることを示したもので、BEISは9月初頭までの期間、この提案に対するコメントを産業界や一般国民から募集していた。ハンズ大臣の今回の発表は、英国原子力産業協会(NIA)の年次大会で述べられており、「得られたコメントを評価した上で、HTGRに重点的に取り組む判断を下した」と説明。ただし、BEISの幅広い活動の一環として、今後もすべてのAMR開発を継続的に支援していく方針であり、将来的な可能性を秘めた先進的原子炉技術の実現に向け、原子燃料の強力なサプライチェーンを国内で構築・維持するための予算7,500万ポンド(約110億円)を確保したと述べた。同大臣は今年9月にエネルギー担当相に就任したばかりだが、NIAの発表講演では「新規原子力発電設備の建設に英国政府は本腰を入れている」と明確に示した。「エネルギー白書」や「CO2排出量の実質ゼロ化戦略」等を通じて、政府は過去一年間にこのような意図を再三にわたって表明しており、これらを通じて、投資家やビジネス界は自信をもって英国の原子力部門に投資してくれるだろうと述べた。同大臣はまた、「CO2の排出量を実質ゼロ化するには原子力が必要だ」と明言している。近年はとりわけ、天然ガス価格の世界的な乱高下により、エネルギーミックスの多様化に向けた勢いが加速。エネルギーの自給を確実なものにするためにも、原子力など英国内の一層強力なエネルギーシステムに投資する推進力が増していると指摘している。同大臣によると、英国では1990年以降、CO2排出量の44%削減を達成するなど、実質ゼロ化に向けた取り組みが驚くほど進展した。しかし、今後30年の間はこのペースをさらに上げ、2035年までに発電部門を確実に脱炭素化する必要がある。そのためには低炭素なエネルギー技術を広範囲に取り入れること、新たな原子力発電設備については特に、大規模かつ迅速に開発していかねばならない。再生可能エネルギー等のポテンシャルを全面的に活用するのに加えて、風が吹かなくても太陽が照らなくても、低炭素な電力を安定的かつ確実に供給可能な原子力が必要だと同大臣は訴えている。今後の計画については、ハンズ大臣は新たな原子力開発プロジェクトの設定に向けた「ロードマップ」を2022年の前半に公表する方針だと述べた。その一環としてBEISはすでに今年10月、新規建設を支援する資金調達の枠組みとして「規制資産ベース(RAB)モデル」を導入するための法案を議会に提出している。BEISはまた、原子力新設プロジェクトへのさらなる投資を促すため、グリーン事業の分類投資である「英国版タクソノミー」に原子力を含められないか検討中であることを明らかにした。(参照資料:英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Dec 2021
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カナダのオンタリオ州営電力(OPG)会社は12月2日、新たに既存のダーリントン原子力発電所で建設する小型モジュール炉(SMR)として、候補の3設計の中からGE日立・ニュークリアエナジー(GEH)社製「BWRX-300」を選定したと発表した。OPG社とGEH社は今後、SMRの建設に向けた設計・エンジニアリングや計画立案、許認可手続きの実施準備等で協力する。OPG社はまた、関係の各種承認が下りるまでの間、2022年春にも建設工事に必要なサービス業務の手配などサイトの準備作業を開始し、同年末までにカナダ原子力安全委員会(CNSC)への建設許可申請を目指す。早ければ2028年にも、カナダでは初となる商業用のSMRを完成させる計画だ。オンタリオ州南部のダラム地方に立地するダーリントン発電所については2012年8月、OPG社が当LTPS)」を発給した。しかし、オンタリオ州はその後この計画を保留、その一方で、同発電所で稼働中の4基および州内のその他の発電所でも、運転期間の延長計画や大規模な改修プロジェクトが進められている。2020年11月になるとOPG社は、LTPSを取得したダーリントン新設サイトでSMRの建設に向けた活動を開始すると発表した。同LTPSについては有効期限切れが2022年8月に迫っていたため、同社はこれに先立つ2020年6月に更新申請書をCNSCに提出済み。CNSCは2021年10月に同LTPSの10年更新を承認しており、同サイトは現在、カナダで唯一LTPSLが認められている地点となった。OPG社としては、州内に確立されているサプライチェーンを活用しつつ新たな雇用を創出し、ダラム地方をオンタリオ州におけるクリーンエネルギー供給の中心地とする方針である。OPG社のK.ハートウィック社長兼CEOは、「原子力は実証済みの技術を活用したCO2排出量ゼロのベースロード電源であり、2040年までに当社がCO2排出量の実質ゼロ化を達成し、2050年までに経済全体で幅広く脱炭素化を実現するために機能する」と指摘。SMRという革新的技術の建設をGEH社と連携して進めることにより、同社はカナダのみならず国外においても、次世代の原子炉を開発・建設していく道を拓きたいと抱負を述べた。GEH社の「BWRX-300」は電気出力30万kWのBWR型SMRで、2014年に原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得した第3世代+(プラス)の同社製設計「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」がベースとなっている。GEH社の説明によると、「BWRX-300」は自然循環技術を活用した受動的安全システムなど画期的な技術を多数採用しており、設計を大胆に簡素化したことで単位出力あたりの資本コストはその他のSMRと比べて大幅に削減されている。このようなSMRを建設する意義についてOPG社は、オンタリオ州内の輸送その他の部門で広範囲に増加が見込まれる電力需要に対し、クリーンエネルギーを提供する重要な電源となり、同州経済の脱炭素化に幅広く貢献するとした。同社はまた、国際エネルギー機関(IEA)を含む複数の国際機関が、「原子力を電力供給ミックスに含めなければ脱炭素化は達成できない」とはっきり述べている事実に言及。出力約30万kWのSMR一基で、年間30万トン~200万トンのCO2排出を抑制できると強調した。雇用・経済面の効果に関しても、同社はシンクタンクに依頼して実施した調査の結果、建設段階および60年間の運転期間も含めて多大な恩恵が同州にもたらされると指摘。間接的な雇用も含めて、開発期間中に年平均で約700名分の雇用が生み出されるほか、機器の製造期間に約1,600名分、運転期間中に約200名分、廃止措置期間には約160名分の雇用が創出されるとした。OPG社はまた、カナダの国内総生産(GDP)に対するプラスの影響として、25億カナダドル(約2,200億円)以上が見込めるとともに、オンタリオ州経済に対しても8億7,000万加ドル(約780億円)以上の増収が期待できると述べた。OPG社の発表によると、カナダではサスカチュワン州も石炭火力発電所に替えてSMRの建設を検討しており、2030年代初頭に最大4基のSMRのうち最初の一基が同州で運転を開始する可能性がある。国外でも英国や米国、フランス、ポーランド、エストニアなどが同様にSMRの建設に強い関心を抱いており、オンタリオ州は、このような国内外のサプライチェーンに貢献できる有利な立場にあると強調した。(参照資料:OPG社、GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
03 Dec 2021
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国際エネルギー機関(IEA)は11月30日、加盟国のエネルギー政策をレビューした報告書のフランス版「France 2021 - Energy Policy Review」を公表し、同国が2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成するには、原子力や再生可能エネルギー、およびエネルギーの効率化に一層投資する必要があると勧告した。原子力については特に、2035年までに発電シェアを50%まで引き下げるにあたり、これを定めた法制上の要件について、地球温暖化にともなう緊急性や気候中立の重要性、再エネの開発状況等とも照らし合わせて条件を精査し、明確にすべきだとしている。IEAによれば、フランスは地球温暖化問題への取り組みで国際的なリーダーシップを発揮しており、最も顕著な例として、2015年の国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP21)におけるパリ協定の締結交渉や、これに先立ち仏国内で「緑の成長に向けたエネルギー移行法案」を可決成立させたことなどを挙げた。しかし近年、同国における低炭素エネルギー技術の開発やエネルギーの効率化対策は、温暖化防止目標を達成できるほど迅速に進んでおらず、フランス政府は将来のエネルギーミックスをどのようにすべきか、極めて重要な判断を下さねばならない状況に直面している。IEAとしては、フランスにはクリーンエネルギーに移行する長期目標の達成の促進で、政策面の一層の努力や関係投資の増額が求められるとしており、将来の電力供給設備の開発については特に、同国政府が明確な戦略を立てる必要があると強調している。報告書によると、フランス政府は高経年化した商業炉の改修工事計画など、2050年までのCO2排出量実質ゼロ化を確実に軌道に乗せるための決定を2022年に下す予定。同政府はまた、欧州連合(EU)全体で目標としている「2030年までにCO2排出量の55%削減」に歩調を合わせ、今後数年間に国内経済全般でクリーンエネルギー化の促進方策や誘導方策を強化する必要がある。このような背景からIEAはフランス政府に対する具体的な勧告事項として、(原子力発電シェアを削減するための法制要件の精査に加えて)以下の点を表明した。すなわち、・電力供給の脱炭素化、および2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化する観点から、既存炉の運転期間延長と新規の原子炉建設の割合に関して、様々な調査や社会経済分析、および関係協議等の結果に基づき、2035年以降に原子力が果たす役割についてタイムリーに判断を下す。・電力市場における競争原理を維持しながら、既存炉の改修や安全性向上、および2023年以降の新規原子炉建設に向けた資金調達など、原子力発電に対する長期的かつ持続可能な財政支援を確実なものにする。・原子力研究の中でも、エネルギーの移行に関するものを特に強化する。具体的には、小型モジュール炉(SMR)を活用した柔軟性のある電力供給、熱電併給や水素製造への活用、運転の長期化を見据えた材料試験の実施、などである。IEAのF.ビロル事務局長は、「将来のエネルギーシステムでCO2排出量のゼロ化を確実にするため、フランス政府は近々、重要な判断を下すことになっており、大きな岐路に差し掛かっている」と指摘。地球温暖化の防止対策に集中する一方で、エネルギーの供給保証についても引き続き対策を取っていく必要があり、新たなクリーンエネルギーに関しては必要な時期に市場に出すことを念頭に、技術革新のための研究開発支援を強化しなければならない。このような支援はまた、風力タービンや電気自動車の製造に不可欠なレアメタルの確保対策につながるほか、新しいエネルギーとの相性が良く、異常気象やサイバー攻撃にも耐えうるエネルギー・インフラの構築に向けた投資にもなると指摘している。(参照資料:IEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Dec 2021
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米エネルギー省(DOE)は11月30日、原子力発電所から出る使用済燃料の中間貯蔵地点を特定するため、「地元の合意に基づく立地プロセス」の策定に向けた情報の提供依頼書(RFI)を、関係するステークホルダーやコミュニティに対して発出した。得られた情報は、同プロセスおよび放射性廃棄物の全体的な管理戦略の策定活動を、公正なやり方で次の段階に進めるために活用する。DOEによると原子力発電は、J.バイデン政権が目標とする「2035年までに米国の電力部門を脱炭素化」し、「2050年までに米国経済全体でCO2排出量の実質ゼロ化を達成する」上で非常に重要な電源。放射性廃棄物の適切な管理は、原子力を一層持続可能なオプションとするだけでなく、DOEが使用済燃料の管理義務を履行する一助にもなると指摘している。 DOEが1998年1月から各原子力発電所の使用済燃料引き取りを開始し、深地層最終処分場で処理するという事項は「1982年の放射性廃棄物政策法(NWPA)」に明記されているが、ネバダ州ユッカマウンテンにおける最終処分場の建設計画は2009年、同州の強い反対を背景にB.オバマ政権が打ち切った。政府の有識者(ブルーリボン)委員会は2012年、「NWPAを修正して地元の合意ベースで最終処分場の立地を進めつつ、複数の中間貯蔵施設を建設すること」を政府に対して勧告。これにともないDOEは翌2013年、2025年までに集中中間貯蔵施設を、2048年までに最終処分場の操業を開始するという管理処分戦略を策定した。2017年初頭には、地元の合意に基づく処分場立地プロセスの案文を作成したものの、発足したばかりのD.トランプ政権が優先項目を変更したため、同プロセスは最終決定していない。一方、民間部門においては、中間貯蔵パートナーズ(ISP)社がテキサス州アンドリュース郡で進めている集中中間貯蔵施設の建設計画に対し、原子力規制委員会(NRC)が今年9月に建設・操業許可を発給。NRCは、ホルテック・インターナショナル社がニューメキシコ州南部で進めている同様の建設計画についても、「周辺住民や環境への影響に問題なし」と結論付けた「環境影響声明書(EIS)」案文を2020年3月に公表している。DOEのJ.グランホルム長官は今回、「放射性廃棄物の管理問題を最終的に解決するには、このような施設の誘致に関心を持つコミュニティから直接意見を聞き、ともに働くのが最良の方法だ」とコメント。施設の建設にともない、地元では雇用の創出という現実的な恩恵がもたらされるほか、一般から意見を求めることにより、立地点の特定に向けたプロセスを可能な限り効果的、かつ多くの人が参加可能なものにできると述べた。DOEの発表によると、2020年12月末にトランプ政権が成立させた「2021会計年度の包括歳出法」では、「(放射性廃棄物の)中間貯蔵および放射性廃棄物基金の監督プログラム」に2,750万ドルの予算が認められており、DOEは使用済燃料を管理する当面の措置として中間貯蔵のパイロット・プログラムを進めることが可能になった。DOEとしては地元の合意ベースというアプローチの下、関係する人々やコミュニティを立地プロセスの中心部分に位置付け、使用済燃料の効果的な管理という数10年にわたる課題を成功裏に解決する機会を得たいとしている。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
01 Dec 2021
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加州で唯一のディアブロキャニオン原子力発電所 ©PG&E米国の原子力学会(ANS)は11月25日、S.ネズビット理事長とC.ピアシー事務局長兼CEOによる連名の声明を発表し、カリフォルニア(加)州のディアブロキャニオン原子力発電所1、2号機(各約117万kWのPWR)で、2024年11月と2025年8月にそれぞれ予定されている閉鎖計画を再考し、運転を継続させるよう同州の知事に促した。1、2号機はそれぞれ1984年と1985年に送電を開始しており、所有者であるパシフィック・ガス&エレクトリック(PG&E)社は当初の運転期間40年に加えて、20年間の運転継続を計画していた。しかし、電力供給地域における需要の伸び悩みと再生可能エネルギーによる発電コストの低下を理由に、PG&E社は運転認可更新申請の取り下げを決定。各40年の運転期間満了にともない閉鎖とする計画を2016年8月に加州の公益事業委員会(CPUC)に提出しており、同委は2018年1月にこれを承認した。ANSではこの閉鎖計画を「早期閉鎖」と形容しており、加州の経済と環境に甚大な被害をもたらすと警告。ANSによれば、加州が閉鎖判断を下した後の状況は変化しており、クリーンエネルギーである原子力発電の必要性はさらに強まっている。今回のANSの声明は、無炭素な電力を将来にわたり供給可能なディアブロキャニオン発電所が、信頼性の高い重要電源であり、過去に下した時代遅れの判断を今日の事情に合わせて今こそ再検討し、同発電所の運転継続に向けた準備を行うべきだと加州のG.ニューサム知事に訴えたもの。ANSの両首脳によると、同発電所は原子力規制委員会(NRC)の厳しい監督下で40年近く安全に運転されており、季節や天候に左右されず年中無休で無炭素なクリーン電力を供給中。加州ではすでに、同発電所を除く5基の商業炉が2013年までに全廃されたことから、州内で唯一存続し、同州の総発電量の約10%を賄うディアブロキャニオン発電所を閉鎖すれば、州内の送電網の安定性を損なうだけでなく輪番停電を強いる可能性がある。同発電所はまた、加州最大の無炭素電源であるため、これを失った加州では多くの電力を州外の火力発電所に依存することになる。その際、年間で数百万トンのCO2が新たに排出され、州政府や連邦政府の脱炭素化計画が損なわれるとANSは指摘している。ANSはさらに、昨年8月に熱波が発生した同州では電力需給がひっ迫し、州内の独立系統運用者(CAISO)が440万kWの電力不足に対処するため、同州全土で輪番停電体制を敷いたという事実に言及。これにより、約330万戸がエアコンのない暗闇の状況に取り残される事態となったが、この時もしも、出力調整可能なベースロード電源であるディアブロキャニオン発電所の無炭素電力がなかったら、状況はさらに悪化し対応コストも高くついたはずだとANSは強調した。ANSの説明では、太陽光や風力、地熱、電力の電池貯蔵などは確かに、加州の脱炭素化計画の重要な一部となるものの、地球温暖化の防止目標を同州が達成するには、すべてのクリーンエネルギー源が必要である。信頼性の高い送電網においては、ディアブロキャニオン発電所のように常時利用可能で強力な主力電源の確保が不可欠で、間欠性のある電源だけで同発電所をリプレースすることは難しい。CAISOによると、加州では総電力需要の約25%を他州から購入した電力で賄っており、山火事や地震を原因とする停電や天然ガス・パイプラインの途絶から影響を受け易い。同州のこのような脆弱性は、2025年以降も州民4,000万人の安全と繁栄を維持するために、同州がディアブロキャニオン発電所を維持する必要があることを明確に示しているとANSは改めて強調した。(参照資料:ANSの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
30 Nov 2021
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ルーマニアの国営原子力発電会社(SNN)は11月25日、チェルナボーダ原子力発電所3、4号機(各70万kWの加圧重水炉)を完成させるプロジェクトで準備段階のエンジニアリング・サービスを受けるため、子会社でプロジェクト企業のエネルゴニュークリア(EN)社がカナダのCANDUエナジー社と契約したと発表した。3、4号機はカナダ型加圧重水炉(CANDU炉)として着工したため、これらを完成させるには、CANDU炉を設計したカナダ原子力公社(AECL)の商用原子炉部門を2011年に買収したSNC-ラバリン社の協力が不可欠となる。CANDUエナジー社はSNC-ラバリン社の完全子会社であり、CANDU炉の設計と供給、および関連サービスの提供を専門としている。今回の契約は、ルーマニアと米国の両政府が2020年10月、両炉の完成に向けた米国からの支援、およびルーマニアの民生用原子力発電部門の拡充と近代化等で協力するため、政府間協定(IGA)案に仮調印したのにともなうもの。その後の今年6月、両国議会の承認を経て同協定案が発効したことから、米エネルギー省(DOE)のK.ハフ原子力担当次官補代行は今年8月、一行を率いて建設工事が1989年にそれぞれ15%と14%で停止した3、4号機を視察した。ルーマニアも米国とIGAを締結した後、カナダ政府とも民生用原子力プロジェクトに関する過去55年間の協力関係をさらに強化・発展させるため、了解覚書を今年8月に結んでいる。CANDUエナジー社は今後、12か月間で840万カナダドル(約7億5,000万円)という今回の契約を通じて、建設工事の再開に必要な文書の最新化や詳細化といったエンジニアリング・サービスをSNN社に提供。具体的にこれらの文書は、両炉の許認可基盤や遵守すべき安全基準、安全設計の変更に関わるものだと説明している。一方のSNN社は今年4月、通常総会で3、4号機の完成戦略を3段階で進めることを承認した。24か月間の「準備段階」ではまず、2009年に設立したEN社がプロジェクト企業として事業展開していけるか、資産・収益等の現在価値を算出。エンジニアリング等の技術面や法制面、財政面で同社が支援を受けられるよう、様々な契約をこの段階で締結し、関連の評価作業や調査も実施するとしている。チェルナボーダ3、4号機を完成させるプロジェクトは、2050年までを見据えたルーマニアの「2019年から2030年までのエネルギー戦略」に盛り込まれており、エネルギー・地球温暖化関係の「国家統合計画」にも明記されている。同国が欧州連合(EU)の一員として、脱炭素化とエネルギーの自給を目指す際の中心政策とも位置付けられており、原子力プロジェクト関係の米国とのIGAはこれらの目標達成に向けて締結された。これと同時にルーマニアの経済・エネルギー・ビジネス環境省は、米輸出入銀行(US EXIM)と了解覚書に調印。原子力を含むルーマニアのエネルギー・インフラ分野向けに、最大70億ドルの投資支援を同行から取り付けている。SNN社のC.ギタCEOは今回、「クリーンでコスト面の効果も高い原子力をルーマニアは必要としており、我が国が脱炭素化を目指す際の解決策の一つになる」と表明。新たな原子炉を国内で完成させることはまた、国家のエネルギー供給システムに安定性とセキュリティ面の効果をもたらし、雇用の創出や国内サプライチェーンの開発など社会経済的なメリットも多数あると強調した。米国のD.ムニーズ公使代理は、ルーマニアが原子力発電設備の改修・拡張に向けて商業契約を結んだことを高く評価。「米国は北大西洋条約機構(NATO)の同盟国としてカナダやルーマニアと協力し、ルーマニアにクリーンで安全、信頼性の高い廉価なエネルギーを提供していく」と述べた。(参照資料:SNNとSNC-ラバリン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
29 Nov 2021
3004
米エネルギー省(DOE)は11月18日、原子力局(NE)が2017年から実施している「先進的原子力技術開発のための資金提供公募(Industry FOA)」で、産業界が主導する5件のプロジェクトへの支援金として合計850万ドルを交付すると発表した。「Industry FOA」は有望な先進的原子炉設計や燃料の商業化の加速を目的としており、DOEはこれまでの公募で2億1,500万ドル以上を投資。今回選定した5件は第11回目の募集によるもので、これらのプロジェクトではDOEが開発した最新のモデリング・ツールやシミュレーターを活用して、先進的原子炉設計を海上や離島で利用する場合の可能性の評価やその他の研究活動を実施できる。5件のうち「先進的原子炉設計の実証」分野におけるプロジェクトとして、約163万ドルが「プエルトリコにおける小型モジュール炉(SMR)やマイクロ原子炉の立地適性調査(第2段階)」のために交付される。この調査は、カリブ海に浮かぶ米国の自治連邦区の島プエルトリコで、これらの先進的原子炉設計の建設に向けた適性サイトを探るというもの。実際の評価作業は、米国の原子力産業界で働くプエルトリコの原子力エンジニア・グループが2015年に設立した非営利団体「Nuclear Alternative Project(NAP)」が実施する予定である。同島では2018年、議会の下院議長がSMRやマイクロ原子炉の建設に向けた実行可能性調査の実施を決議しており、DOE-NEはこれにともない、2019年に予備的な実行可能性調査の経費をNAPに提供した。この時の調査結果は2020年5月に公表されており、NAPがこれから実施する第2段階の調査の結果とともに、DOEが推進する「離島や遠隔地域における原子炉技術の商業化」に活用される。DOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)の調べによると、プエルトリコでは1960年代に建設した古い施設で発電しており、使用電力のほとんどを化石燃料発電による輸入電力に依存している。国内の発電施設も今後10年以内に4分の3を廃止しなければならず、発電システムの維持とエネルギーの自給確保はプエルトリコで喫緊の課題である。同島の電力庁はそのための取り組みとして、「統合資源計画」の中で再生可能エネルギーによる電力と天然ガスの供給量を拡大する方針を示しているが、ベースロード用の電力を確保するには間欠性のある風力や太陽光では不十分。この問題の解決に向けた有力候補として、プエルトリコでは小型原子炉の活用が上がっているとINLは説明している。なお、DOE-NEの「Industry FOA」はその他の資金提供プロジェクトとして、テレストリアル・エナジー社の米国法人が実施する「溶融塩炉のオフガス系におけるモデリングの不確実性取り扱いアプローチの開発」(約300万ドル)、ゼネラル・アトミックス社の電磁システム・グループによる「高温ガス炉向け炭化ケイ素製燃料被覆管のモデリングとシミュレーション」(約270万ドル)などを挙げている。(参照資料:DOEの発表資料①、②、③、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Nov 2021
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米国のホルテック・インターナショナル社は11月22日、子会社のSMR社(SMR, LLC)が開発中の小型モジュール炉(SMR)「SMR-160」を世界市場で建設していくため、韓国の現代建設(HDEC)と事業協力契約を締結したと発表した。ホルテック社は、同SMRで2025年までに米原子力規制委員会(NRC)から立地建設許可の取得を目指しており、NRCとの関係協議はすでに始まっている。設計認証(DC)審査は未だ申請していないが、初号機の建設候補地としてはニュージャージー(NJ)州のオイスタークリーク原子力発電所の跡地、あるいは南部の2州を検討中。同発電所は2018年9月に閉鎖され、ホルテック社は事業者のエクセロン社から所有権を受け継いでいる。HDEC社は今回の契約に基づき、ホルテック社の主要なEPC(設計・調達・建設)契約企業として「SMR-160」標準設計の完成に協力するほか、同設計を採用した発電所をターンキー契約でグローバルに建設していく。具体的には、発電所BOP(主機以外の周辺機器)の詳細設計を担当し、発電所全体の建設仕様書も作成。SMRの標準設計と建設予定地等で承認が得られた場合は、建設プロジェクトの施工者となり、実際のEPC業務と建設工事を実施することになる。ホルテック社によると、この契約を通じて両社は世界中の顧客の要望に沿って最も競争力のある価格で建設プロジェクトを遂行する。ただし北米市場に関しては、同社が米国の大手建設企業と結んでいた既存の誓約に合わせて、HDEC社の参加持ち分を確保する。ホルテック社は建設プロジェクトのアーキテクト・エンジニアとして、主要機器を米国内の製造施設や国際的なサプライチェーンから調達する一方、計装・制御(I&C)については三菱電機から、燃料は仏フラマトム社からそれぞれ調達する方針だ。ホルテック社の「SMR-160」は、ポンプやモーターなどの駆動装置を必要としない電気出力が最大16万kWの軽水炉型SMRで、受動的安全システムを備えている。同設計はまた、輸送部門で使用する水素や工業利用のための熱を生産することも可能な柔軟な設計であるため、脱炭素化という世界潮流にも適合。ホルテック社は、建設プロジェクトにともなう資金の調達や建設地における部品調達などについても、HDEC社と協力していくとしている。ホルテック社のSMR開発に関しては、米エネルギー省(DOE)が2020年12月に「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」における支援対象の一つとして選定した。7年間で合計1億4,750万ドルを投資する計画で、このうち1億1,600万ドルをDOEが負担。残りの3,150万ドルがホルテック社側の負担分であり、初期段階の設計・エンジニアリングや許認可手続き関係の作業が行われている。また、カナダ原子力安全委員会(CNSC)は、同設計がカナダの規制要件に適合しているかという点について「許認可申請前設計審査(ベンダー審査)」を実施中。2020年8月に同設計は、この審査の第1段階を成功裏に終了している。(参照資料:ホルテック社、現代建設(韓国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Nov 2021
3980
ウクライナの民生用原子力発電公社であるエネルゴアトム社と米ウェスチングハウス(WH)社は11月22日、ウクライナのフメルニツキ原子力発電所における最初のAP1000建設に向け、同国の首都キエフで契約を締結したと発表した。WH社側の発表によると同社はこの契約に基づき、同発電所のAP1000初号機用に長納期の機器を設計・調達する予定だが、エネルゴアトム社側は「同発電所で原子炉を2基新設するため」と説明している。両社は今年8月、ウクライナ国内で複数のAP1000を建設していく内容の独占契約を締結しており、その際、フメルニツキ発電所で建設工事が中断している3、4号機(各100万kWのロシア型PWR:VVER)(K3/K4)のうち、進捗率が28%のK4をAP1000に変更すると明言。このほか、その他の発電所に含めてさらに4基のAP1000を建設すると表明していた。10月になるとエネルゴアトム社は、フメルニツキ発電所でAP1000を採用した最初の原子炉を今年の年末、あるいは来年始めに着工すると発表しており、WH社が指摘したAP1000初号機はK4になると見られている。今回の契約の締結式典では、ウクライナのエネルギー大臣とウクライナ駐在米国大使代理の立ち会いの下、エネルゴアトム社の実質トップであるP.コティン総裁代理とWH社のP.フラグマン社長兼CEOが契約書に署名した。コティン総裁代理によると、「WH社との契約でウクライナの原子力部門は新たな開発局面に入った。」ウクライナでは、旧ソ連時代に着工したVVERが15基(合計出力約1,380万kW)稼働中だが、このうち11基では高経年化が進んでいる。同国の総発電量のうち約半分を原子力発電所で賄っていることから、同総裁代理は「2040年までに国内の原子力発電設備を2,400万kWに拡大することを目指している」と表明。同社の専門家が現在、国際的なパートナーからの支援を得ながらこれに向けた努力を重ねていると説明した。同総裁代理はまた、「新たな原子炉の建設はウクライナのエネルギー自給にとって非常に重要であるだけでなく、これらを通じて当社は欧州を脱炭素化に導く原動力にもなるつもりだ」と強調。米国企業との協力を通じて、エネルゴアトム社がクリーンで廉価なエネルギーの供給に移行する準備はできているとした。一方、WH社の発表によると、第3世代+(プラス)の原子炉設計であるAP1000は、受動的安全システムをフルに備えるほか、操作性も高く、負荷追従運転など柔軟な運転が容易だ。AP1000設計の建設は、エネルゴアトム社とウクライナに持続可能な経済的恩恵をもたらすとともに、各原子炉の建設と運転を通じて技術を国産化する機会も提供することができる。同社のP.フラグマン社長兼CEOは、「最初のAP1000建設に向けた今回の契約により、ウクライナは脱炭素化とエネルギーの安定供給という目標の達成に一歩近づいた」と指摘。WH社はすでにウクライナで稼働する原子炉の約半分に燃料を供給しているが、これらのVVERは高経年化しているため、新たな原子炉の建設が必要である。「当社としてはエネルゴアトム社への協力を継続し、低炭素なエネルギー技術の開発や原子力発電所における高い安全性の維持で貢献していきたい」としている。(参照資料:エネルゴアトム社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Nov 2021
3297
米国の大手エネルギー供給企業であるサザン社は11月18日、高速スペクトル型・溶融塩高速炉(FS-MSR)の開発に向けた運転データの取得を目的に、「溶融塩実験炉(Molten Chloride Reactor Experiment: MCRE)」を米エネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)で設計・建設・運転するための協力協定を同省と締結した。同社によると、FS-MSRは、CO2排出量が実質ゼロという未来の実現に貢献する柔軟性の高い先進的原子炉技術であり、MCREは世界でも初のFS-MSRとなる予定。サザン社の研究開発チームにはINLのほかに、最大出力120万kWの「溶融塩高速炉(Molten Chloride Fast Reactor: MCFR)」を開発中のテラパワー社が協力しており、仏オラノ社の米国法人に所属する事業ユニット、電力研究所(EPRI)、化学・電気素材メーカーの3M社なども含まれる。サザン社の主導によりMCREをINL内で建設するという提案は、DOEが2020年12月、「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」における支援対象プロジェクトの一つとして選定しており、5年間の研究開発資金として合計1億7,000万ドルを官民が分担調達することで合意した。実際の建設工事に関しては、最終設計作業が完了し工事が始まる前までに、国家環境政策法に基づく環境審査を終えるとしている。サザン社の説明では、この計画はクリーンエネルギーで持続可能な未来を目指すテラパワー社のMCFR開発において、実証炉の設計・建設、運転に向けたロードマップとして技術開発の進展を加速する。テラパワー社のプロジェクトにはサザン社とEPRIのほか、DOE傘下のオークリッジ国立研究所、テネシー州のヴァンダービルト大学が参加しており、DOEは2016年1月、同技術の初期開発を支援する総合インフラの建設費用として、約4,000万ドルをテラパワー社らに交付した。サザン社が主導する今回の小規模のMCRE建設は、テラパワー社のMCFR技術を商業化する推進力として、引き続き貢献していくとサザン社は強調している。サザン社のM.ベリー研究開発担当副社長は、「クリーンで安全、信頼性の高い安価なエネルギーを顧客に提供する包括的戦略の一部として、当社は次世代の原子力技術を開発している」と説明。MCREを通じて、同社は地球温暖化に対応できる革新的な技術の商業化を進め、2050年までに同社が目標とする「CO2排出量の実質ゼロ化」を実現させると述べた。テラパワー社のC.レベスク社長兼CEOも、「サザン社とのこれまでの共同事業が今回、重要な試験段階に到達し、溶融塩炉技術を確認する試験設備が建設されることになった」と表明。「原子炉の許認可と運転に関するサザン社の経験と主導力は絶対不可欠のものであり、MCREの建設を通じて低コストでクリーンなエネルギーに基づく未来が必ず構築されるだろう」としている。(参照資料:サザン社、INL、テラパワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
22 Nov 2021
4609
米国のニュースケール・パワー社は11月17日、カナダのプロディジー(Prodigy)・クリーン・エナジー社が開発している「海洋原子力発電所(MPS)」の建設と商業化を支援するため、規制インフラの構築に向けた提案などでカナダのキネクトリックス(Kinectrics)社とともに同社に協力する覚書を3社間で締結したと発表した。プロディジー社のMPSには、ニュースケール社が開発した小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」が最大で12モジュール組み込まれる予定。MPSは海岸に設置したタービン等の発電構造物に原子炉を統合する発電所で、造船所で製造後に海上輸送され、海岸線の防水仕様の係留地点に据付けられて、そこから海岸の送電網に接続され送電する。短い工期で建設が可能な上、低炭素なエネルギーをベースロード・モードで供給できることから、ニュースケール社はMPSが世界的規模で化石燃料発電に取って替わっていくと強調している。今回締結された協力覚書は、ニュースケール社とプロディジー社が2018年に締結した既存のパートナーシップに基づいており、SMR技術の商業化に向けた重要なステップとなる。同覚書を通じて3社はMPSの潜在的な顧客や、許認可体制など規制インフラに関する当局者との協議に備え、技術仕様書や規制関係文書を作成する。ニュースケール社によると、SMR建設にプロディジー社のMPSシステムを活用する利点は、従来の大型発電所と比べて建設コストを大幅に削減できることと、環境への影響や建設工期が縮減されることにある。このため同社は今回、電力産業界に許認可関係や環境分析、海辺の送電インフラに関するサービスを提供しているキネトリックス社とも協力。再生可能エネルギー源と連結したMPSをプロディジー社が一つだけ建設した場合や、MPSを水素燃料などのクリーンエネルギー製造に活用した場合について、経済性や商業規模などを評価する方針だ。ニュースケール社のNPMを動力源とするMPSは、沿岸部の都市やコミュニティ、臨海工業地帯のみならず、島国に対してもクリーンで持続可能なエネルギーを確実に提供することが可能。ベースロード用電源としてだけでなく負荷追従運転にも対応し、高度に合理化された廉価なクリーンエネルギーの供給手段になるとニュースケール社は強調している。プロディジー社は現在、カナダ原子力安全委員会(CNSC)とMPSに関する協議を始めたところで、許認可手続きの開始に先立ち実施すべき諸活動などを提案中。同社のM.トロジャーCEOはMPSの規制について、「北米での規制案件としては最初のものとなるが、カナダでは連邦政府がSMR開発に意欲的な方針を堅持しているほか、原子力規制当局の経験が豊富。国内の原子力発電所の収益性も高く、安全運転の実施では世界をリードするなど、当社のMPS開発を成功に導く環境は整っている」とした。その上で、「カナダの政策や規制体制に助けられて当社のMPSがスタート地点に立ち、将来的な輸出にも道が開かれることを期待している」と述べた。(参照資料:ニュースケール社、キネクトリックス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Nov 2021
3106
英ロールス・ロイス社が80%出資する子会社のロールス・ロイスSMR社は11月17日、同社製の小型モジュール炉(SMR)設計を規制当局の包括的設計認証審査(GDA)にかけるため、申請書を提出したと発表した。これにともなう最初の手続きとして、政府のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が同社の初期スクリーニングを実施するとしている。初期スクリーニングでは、原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)が対象設計の安全・セキュリティと環境影響についてGDAを正式に開始するのに先立ち、設計企業に同審査を受ける能力と資質が備わっているかをBEISが確認する。英国政府から結果が出るまでに、最大4か月を要する。ロールス・ロイスSMR社は、ロールス・ロイス社グループがSMRを始めとする先進的次世代原子力技術の開発と商業化を大規模に進めることを目指して、今月8日に新たな株式を発行して設立したもの。SMRなど先進的原子炉設計の規制承認プロセスについては、BEISが今年5月、GDAの対象に含める方針を明らかにしており、その際、申請ガイダンスも同時に公表。ロールス・ロイス社はその後まもなく、同社製SMRでGDAの実施を申請すると表明していた。ロールス・ロイスSMR社のSMR発電所設計は出力47万kWとなる予定で、これは陸上風力発電のタービン150台分以上に相当するという。少なくとも60年間稼働してベースロード用電源としての役割を果たすほか、間欠性のある再生可能エネルギーを補うことにより、再エネ源の設置容量拡大を支援。同社としては、2030年代初頭にもSMR発電所を国内送電網に接続することを計画している。今回の申請について、同社で規制・安全問題を担当するH.ペリー取締役は「英国製のSMR設計として初めて、規制承認プロセスに入るためのものであり、原子力産業界にとっては重要な節目になった」とコメント。同社は、このプロセスに入る前の段階ですでに同SMRの設計に関わる270件の重要な決定を下しており、「規制当局のGDAチームとは効率的に審査を進める自信がある」と述べた。同取締役はまた、同プロセスへの対応で約300名のスタッフをフルタイムで当たらせる方針だと表明。「原子力産業界と規制当局はともに、これまでのGDAから非常に多くの教訓を学んでおり、当社はそれらを活用して規制当局と共同アプローチを図りたい」としている。なお、BEISは今月9日、ロールス・ロイスSMR社のSMR開発に対するマッチングファンドとして、2億1,000万ポンド(約320億円)を提供すると発表した。英国の戦略的政策機関である「UKリサーチ・アンド・イノベーション(UKRI)」が「低コストな原子力の課題(Low Cost Nuclear Challenge)」プロジェクトを進めるのに際し、2019年11月に「産業戦略チャレンジ基金(ISCF)」から1,800万ポンド(約30億円)を同社に提供したのに続く措置。マッチングファンドは、同じISCFから拠出するとしている。(参照資料:ロールス・ロイスSMR社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Nov 2021
3288
米国のJ.バイデン大統領は11月15日、1兆2,000億ドル規模という「超党派のインフラ投資法案(下院3684号)」に署名した。これを受けてエネルギー省(DOE)は同日、「地球温暖化に立ち向かいつつ、持続可能な経済を構築するための大型投資法が可決成立したことから、米国ではクリーンエネルギーに基づく将来や、かつて無い規模の大気質の改善、無数の高サラリー雇用の創出等に道を拓くための投資が行われる」と表明した。CO2を排出しない原子力に関しても、既存設備の温存と先進的な技術開発のために予算が配分されるため、DOEはバイデン大統領が目標に掲げる「2035年までに電力部門を100%カーボンフリーとし、2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化する」の実現に向け、同省が方向性の立案等で一層効果的な役割を果たせると強調している。バイデン大統領は就任前の選挙戦時代から、「より良い復興(Build Back Better)」をスローガンとする経済政策を発表しており、その中で「環境・インフラへの投資」を他の主要な3政策と合わせて表明。その主旨は「近代的で持続可能なインフラと公平なクリーンエネルギーの未来を築くこと」であり、具体的な項目として2035年までに排出量ゼロの電力部門を実現するほかに、エネルギー効率の高い建物の建設や(蓄電池や次世代素材のエネルギー設備等)クリーンエネルギーの技術革新に投資を行うことなどを挙げていた。DOEが11月9日に発表した「超党派インフラ投資法案」のファクトシートによると、同法はバイデン大統領の「より良い復興」計画における重要な要素である。同法がDOEに提供する620億ドルを通じて、DOEはより多くの米国民に一層公平にクリーンエネルギーを提供できるよう、エネルギーの効率化やクリーンエネルギーに対する各家庭やコミュニティ、企業らのアクセスを大幅に拡大。信頼性の高いクリーンな電力を廉価で提供するとともに、クリーンエネルギー技術の実証を通じて未来のエネルギー技術を構築するとしている。クリーンエネルギーの生産が可能な既存設備の温存に関しては、DOEはまず運転開始後数10年が経過した既存の原子力発電所と水力発電設備で、合計27%の電力を米国が得ていると指摘。クリーンエネルギー源として重要であるものの、高経年化にともない維持費がかさんでいるため、米国はこれらの無炭素な主要電源を失うリスクに直面している。「超党派インフラ投資法」ではこれらの電源を確実に維持するための資金が提供されることになっており、DOEによれば、原子力発電所の早期閉鎖を防止する「民生用原子力発電クレジット・プログラム」に60億ドルを配分。この予算を通じて、DOEは全米の原子力発電所で数千名という雇用を維持していくが、プログラムの適用が許されるのは早期閉鎖のリスクにさらされている発電所で、長期的に安全な運転を続けられる状態だと認められていることが条件になる。また、先進的な原子力技術の開発には25億ドルを割り当てる予定。これにより、DOEは1日24時間、年中無休でクリーンな電力を生産するほか、関係雇用も新たに生み出すとしている。なお、今回の法案成立を受けて、小型のペブルベッド型高温ガス炉「Xe-100」を開発中のX-エナジー社は同日、「DOEの『先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)』から引き続き、2025会計年度まで最大11億ドルが当社に提供されることになった」と表明した。DOEは昨年5月に開始したARDPの初回の支援金交付対象として、同年10月にX-エナジー社と、「ナトリウム冷却高速炉」を開発中のテラパワー社を選定した。ARDPは、このような先進的原子炉設計を2020年代末までに運転可能にすることを目指す官民のコスト分担型パートナーシップ。X-エナジー社はARDPを通じて、商業規模の「Xe-100」初号機をワシントン州で建設することを計画している。同社によれば、バイデン政権と議会は2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を米国のみならず世界中で達成するため、先進的原子力技術を無炭素の重要なベースロード電源と認識しており、同技術の実証で今後も世界を牽引していく方針だとしている。(参照資料:DOEの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Nov 2021
3558
中国核工業集団公司(CNNC)は11月12日、山東省栄成の石島湾で建設中の「ペブルベッド型モジュール式高温ガス炉(HTR-PM)」の実証炉(ツインタイプで合計電気出力21.1万kW)で、11日にモジュールユニットの2基目が臨界条件を達成したと発表した。中国のHTR-PMでは、電気出力が約10万kWのモジュールユニット2基で1つの発電機を共有しており、今年9月に最初の1基が臨界条件を達成した。本格着工したのは2012年12月のことで、それ以降このサイトでは、今年3月までに冷態機能試験や温態機能試験が完了、国家核安全局(NNSA)は8月に運転許可を発給した。これにともない燃料の初装荷作業が行われており、建設工事を進める「華能山東石島湾核電有限公司(SHSNPC)」は、年内にも送電網への接続を目指している。今後は、1基目のユニットで完了したゼロ出力の物理試験など、様々な試験を2基目でも実施する計画である。この建設計画はHTR技術の実証を目的としたもので、中国は電熱併給が可能で固有の安全性を有する第4世代のHTR開発を「国家重大特別プロジェクト」の1つに選定。CNNCはHTR技術の商業化を進めることにより、習近平国家主席が提唱する「三新一高」(科学技術の新しい成果や新興技術を応用し、新たな開発コンセプトの産業モデルを高品質で構築する)へのすべての関係組織の真摯な取り組みが示されると意義を強調した。HTRの技術革新を通じて、中国が目標に掲げる「CO2排出量を頭打ちにする(ピークアウト)こと」と「実質ゼロ化」を進め、高品質の原子力産業界を築いていく考えだ。中国のHTRで技術研究開発の中心的役割を担っているのは北京の清華大学で、同大の研究院は熱出力11万kWの実験炉「HTR-10」を2003年から運転中である。実証炉となる「HTR-PM」の建設工事はSHSNPCが進めており、同大はSHSNPCに対して20%出資。このほか、同大と協力関係にあるCNNC傘下の中国核工業建設集団公司(CNEC)が32.5%を、5大発電集団の一つである華能集団公司が47.5%を出資している。また、清華大学の子会社の「清華控股有限公司」とCNECの合弁企業である「中核能源科技有限公司(チナジー社)」は、同建設工事の設計・資材調達・建設(EPC)契約を請け負っている。HTRは発電だけでなく地域熱供給や海水の淡水化、水素製造にも利用できるため、日本ではすでに日本原子力研究開発機構が1999年以降、大洗の高温工学試験研究炉(HTTR)で研究開発を実施中。国外ではポーランドも大型炉の建設計画と並行して、HTR導入の実行可能性を模索している。(参照資料:CNNC、華能集団公司の発表資料(中国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Nov 2021
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カナダのテレストリアル・エナジー社は11月8日、同社製の小型モジュール炉(SMR)など、カナダで開発された第4世代のSMRがオンタリオ州で建設された場合、膨大な利益が同州やカナダ経済にもたらされるとの分析調査結果を発表した。この調査は、同社がオンタリオ州を本拠地とする土木建築・コンサルティング企業、ハッチ社に委託して実施したもの。同州では現在、州営電力のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社がダーリントン原子力発電所の敷地内で、テレストリアル社の小型モジュール式・一体型溶融塩炉「IMSR」を含む3つのSMR設計の中から、1つを選択して建設することを検討している。ハッチ社によると、オンタリオ州およびカナダ全体でどれほどの規模の利益が得られるかは、この「ダーリントン原子力新設プロジェクト(DNNP)」で選択されるSMR設計にかかっている。カナダで開発されたSMR技術の場合、その設計を世界市場に輸出する可能性も含めて、数十年の間に数千億ドル規模の「触媒効果的利益」が期待できる。一方、カナダ以外の国で開発されたSMR技術では、その国のサプライチェーンが引き続き、開発企業に協力するためそうした可能性は低い。DNNPではIMSRのほかに、米GE日立・ニュクリアエナジー社製の軽水炉型SMR「BWRX-300」、および同じく米国企業のX-エナジー社が開発した小型のペブルベッド式高温ガス炉「Xe-100」が候補設計に選定されている。テレストリアル社が開発したIMSRは電力のほかに熱エネルギーを供給可能で、使用する溶融塩燃料は第4世代設計のなかで唯一、これまで軽水炉に装荷されてきた標準タイプの低濃縮ウランで製造される。同社は今年9月、IMSRと発電機を2基ずつ搭載する電気出力39万kWの改良型発電所設計「IMSR400」を発表しており、カナダで開発されているSMR設計のなかでは最大出力となる。ハッチ社の調査報告書によると、IMSR400発電所をダーリントンで建設した場合、設計・建設段階の9年間に30億カナダドル(約2,700億円)以上の利益がカナダのGDPに追加され、年平均で2,100名以上の雇用を支えることになる。これに加えて、同発電所の運転段階で年間合計45億加ドル(約4,100億円)以上の利益が生み出され、創出される雇用は年間580名分におよぶと予測。設計から廃炉までの全期間で試算した場合は、オンタリオ州のGDPにもたらされる利益は約66億加ドル(約6,000億円)、カナダ経済に対しては79億加ドル(約7,200億円)に達するとしている。ハッチ社はまた、第4世代の原子力発電所はカナダのみならず、世界中の発電システムの中で化石燃料に取って替わる莫大な可能性があると指摘。第4世代の原子炉技術のみが原子力の経済性を改善し、商業用原子力発電におけるカナダのこれまでのリーダーシップを永続させることができるとしている。テレストリアル・エナジー社のS.アイリッシュCEOは、「英国グラスゴーでは各国のリーダー達がCOP26でCO2排出量の実質ゼロ化に向けた方策を話し合ったが、IMSRはカナダの数多くのサプライチェーン・パートナーと協力して開発したカナダの第4世代炉であり、カナダのみならずその貿易相手国でCO2の実質ゼロ化に貢献できる」とコメント。ダーリントン発電所でのSMR建設は、その切っ掛けになるとの認識を示している。(参照資料:テレストリアル・エナジー社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Nov 2021
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ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は11月8日、建設工事が停止しているフメルニツキ原子力発電所3号機(100万kWのロシア型PWR=VVER)(K3)の完成に向け、ウェスチングハウス(WH)社のエンジニア・チームが7日に詳細点検などの実務作業を行うため、視察に訪れたと発表した。エネルゴアトム社とWH社は今年の8月末、同発電所で同じく建設工事が停止中の4号機(100万kWのVVER)(K4)にWH社製AP1000設計を採用して完成させ、さらに4基のAP1000をウクライナで建設するという内容の独占契約を締結した。K4についてはすでに10月、米国で建設工事が中止されたV.C.サマー原子力発電所向けの製造済みの機器・設備を活用する可能性も含め、具体的な作業が今年の年末から年始までに開始される見通しである。K3に関しては、VVER設計を採用した最初の建設工事が1985年9月に始まり、作業が停止した1990年時点の建設進捗率は75%に到達。このため、WH社で商業活動を担当するE.ギデオン上級副社長による12名のエンジニア・チームは、同炉の建設計画遂行での設計面その他の(技術的)懸念事項を特定・分析した上で、完成に向けた可能性を探り、具体的な方策を定める方針である。今回、WH社チームはエネルゴアトム社の実質トップであるP.コティン総裁代理とともに、K3の機器・設備の保管状態と冷却水供給池の状態を視察した。その後は、フメルニツキ原子力発電所とエネルゴアトム社の経営幹部や地元選出の議員、市長らを交えた実務会議に出席。この席で両者は、K3の準備状況に関する予備的評価の結果を審査、K3で新たな建設工事を実施する可能性と、その重要性を認識したとしている。WH社のギデオン上級副社長によると、米国と欧州の両方から派遣されたエンジニア・チームは今後、エネルゴアトム社との協力により建設サイトの詳細な点検調査と情報交換を実施する。米輸出入銀行(US EXIM)を始めとする金融機関とは、プロジェクトの資金調達問題について協議を行っており、短期間のうちにこの件で複数の合意文書に調印したいと考えていることを明らかにした。一方、エネルゴアトム社のコティン総裁代理は、建設工事に先立つ諸活動が早いペースで進展している事実に言及。今回の件については、「新たな原子力設備を建設する実質的な作業が始まった」と評価しており、そうした活動のすべてが質の高いものである点に非常に満足していると述べた。同総裁代理によると、「越境環境影響評価条約(エスポー条約)」に関わる諸手続きはすでに完了しており、環境省からはこの建設計画への肯定的評価が得られている。政府に対してはK3とK4両方の完成に向けた素案を提出済みであり、最高議会からも承認が得られるよう、近いうちに提案を行う考えを明らかにしている。(参照資料:エネルゴアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Nov 2021
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フランス大統領府のウェブサイトによると、同国のE.マクロン大統領は今月9日のテレビ演説で、数10年ぶりに国内で新規の原子炉建設を再開する考えを明らかにした。英国グラスゴーにおける第26回・国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP26)の閉幕を12日に控え、同大統領は「これはフランスからの強いメッセージである」としている。演説の中で、同大統領はフランスのエネルギー自給に触れ、「天然ガスの価格や電気料金の上昇により仏国民の生活は大きな影響を受けている。こうした事態には緊急に対処する必要があり、政府は天然ガスの価格を固定化する措置を取った」とした。しかし、「国民がもしも、適切なレベルのエネルギー料金を支払い、外国から輸入するエネルギーへの依存を下げたいのであれば、我々は省エネを続けるだけでなく、国内で低炭素エネルギー源の建設に向けた投資を行わねばならない」と指摘。その上で、「フランスのエネルギー自給を保証するとともに国内の電力供給を確保し、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成するため、国内での原子炉建設を再開し再生可能エネルギーの開発を継続する」と明言した。フランスでは2015年7月、約8か月間に及んだ全国的な討論の結果、「緑の成長に向けたエネルギー移行法」が成立した。これにより、F.オランド前大統領が約束していた「2025年までに原子力発電シェアを現在の75%から50%に削減する」ことや、「原子力発電設備を現状レベルの6,320万kWに制限する」ことが決定。これにともない、国内で最も古いフェッセンハイム原子力発電所の2基が2020年6月までに永久閉鎖されている。しかし、マクロン大統領は2018年11月、発電シェアの削減公約を「現実的で制御可能、経済的かつ社会的にも実行可能な条件下で達成するため、実施期限を2035年まで10年先送りする」と決定した。今年10月には、新たな産業政策「フランス2030」の中で、「2030年までに10億ユーロ(約1,307億円)を投じて、小型モジュール炉(SMR)や先進的原子炉の技術を実証し、放射性廃棄物のより良い管理で世界市場への参入を目指す」と表明。同大統領は、原子力はフランスの基幹製造技術であるため今後も必要な技術であり、その再編成は政策目標の第一番目に位置付けられ、継続的に開発していくことは非常に重要との認識を示している。今回の演説で、マクロン大統領は原子炉の建設再開に向けた具体策を一切示していない。また、来年4月には大統領選挙が控えていることから、この方針が正式決定するのは選挙後になるとの見方がある。一方、ロイター通信は今月10日、「フランス政府は今後数週間以内に、国内で大型PWRを新たに6基建設する計画を公表する模様だ」と報道している。フランス政府はこれまで、北西部のシェルブール近郊で建設中のフラマンビル原子力発電所3号機(163万kWの欧州加圧水型炉=EPR)が完成するまで、新たなEPRを建設しないとしてきた。しかし、欧州では10月の天然ガス価格の高騰など、国民生活の光熱費が連鎖的に増加している。ロイター通信では、フランス政府がこれらのことに配慮し、EPR新設の判断を早めたと伝えている。(参照資料:仏大統領府(仏語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月10日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
11 Nov 2021
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英国政府のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は11月9日、ロールス・ロイス社グループが80%出資して設立した小型モジュール炉(SMR)の開発企業「ロールス・ロイスSMR社」に対し、マッチングファンドとして2億1,000万ポンド(約321億円)を提供すると発表した。ロールス・ロイス社は前日の8日、低コスト・低炭素な次世代原子力技術の開発と商業化を大規模に進めていくため、新たな株式の発行により「ロールス・ロイスSMR社」を設立したと表明。また、米国の大手電気事業者のエクセロン・ジェネレーション社、および仏国の投資目的企業であるBNFリソーシズUK社とともに、今後3年間で合計1億9,500万ポンド(約298億円)を英国でのSMR開発に投資すると発表していた。英国政府からの今回の資金提供は、民間部門で2億5,000万ポンド(約382億円)を越える資金がSMR開発に投入されていることに対応したもので、同国の戦略的政策研究機関である「UKリサーチ・アンド・イノベーション(UKRI)」は2019年11月、「低コストな原子力の課題(Low Cost Nuclear Challenge)」プロジェクトの実施で、「産業戦略チャレンジ基金(ISCF)」の中から1,800万ポンド(約27億円)をロールス・ロイス社のSMR企業連合に提供。今回の2億1,000万ポンドはこれに続いて、同プロジェクトから拠出することになる。英国政府はこのような活動を通じて、SMR設計の開発を一層促進し、英規制当局の包括的設計認証審査(GDA)にSMR設計をかけるなど、UKRIの「低コストな原子力における課題」プロジェクトを第2段階に進めていく。また、2050年までに英国内の温室効果ガス排出量を実質ゼロ化するため、B.ジョンソン首相が昨年11月に公表した「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」を着実に進め、高度な技術を必要とする関係雇用の創出を促す方針である。UKRIによると、同プロジェクトの第1段階は今年8月に完了しており、SMRの概念設計が完成したとしている。BEISの今回の発表は、大型原子力発電所の新規建設を支援する資金調達の枠組として、「規制資産ベース(RAB)モデル」の導入を目指した「原子力資金調達法案」を英国議会が審議している最中に行われた。BEISによると、英国が化石燃料発電への依存度を下げ、天然ガス価格の乱高下に対応するには、低炭素なエネルギーを低価格で生産できる新しい原子力発電設備が非常に重要な役割を担う。その中でもSMRは、従来の大型原子力発電所と比べて建設コストを低く抑えることができ、モジュール式の機器類は専用の設備で製造し、設置場所まで車両や鉄道で輸送することが可能である。結果としてBEISは、建設期間とコストの両方が縮減される点を強調。BEISのK.クワルテング大臣は「英国が低炭素なエネルギーをかつてない規模で開発し、エネルギー自給率を増強する上で二度と無い機会だ」とコメントしている。一方、ロールス・ロイス社の8日付け発表によると、同社は新たに設立した事業体を通じて、年内にもGDAの実施を同社製SMRで申請できるよう活動するだけでなく、SMR用モジュール製造工場の建設地を決定するなど、幅広い活動を並行して進めていく。SMRの設置場所に関する英国政府との協議は今後も継続するほか、同技術を必要とする国々との協議も続けていくと述べた。同社のSMR発電所は出力47万kWとすることを想定しており、これは陸上風力発電のタービン150台以上に相当する。少なくとも60年間はベースロード用電源として着実に発電を行い、間欠性のある再生可能エネルギーを補完。2030年代初頭にも英国の送電網に接続する計画で、それ以降は世界に輸出することも視野に入れていることを明らかにした。(参照資料:BEIS、ロールス・ロイス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
10 Nov 2021
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中国核工業集団公司(CNNC)は11月8日、「華龍一号」設計の実証プロジェクトとして福建省福清原子力発電所で建設中の6号機(PWR、115万kW)で、6日から燃料集合体177体の装荷作業を開始したと発表した。同炉は2015年12月にCNNCが本格着工していたもので、建設工事はこれによりシステムの起動に向けた重要段階に入った。「華龍一号」は中国が知的財産権を保有する第3世代の原子炉設計で、CNNCと中国広核集団有限公司(CGN)が双方の第3世代炉設計を一本化して開発。革新的な技術を数多く炉心設計に採用しており、安全系には静的と動的2つのシステムを組み合わせている。格納容器は二重構造であり、これらによって同設計は国際的に最も厳しい安全基準をクリア。運転サイクル期間は18か月で、設計耐用期間は60年間である。CNNCの発表によると福清6号機の完成は、習近平国家主席が原子力産業に対して提唱した「三新一高」(科学技術の新しい成果や新興技術を応用し、新たな開発コンセプトの産業モデルを高品質で構築する)の精神を、CNNCが着実に実行中であることを示している。低炭素な電力を発電することで、CO2排出量をピークアウトさせ実質ゼロ化目標の達成に導き、国家のエネルギー供給確保に貢献するなど、質の高い産業の開発に向けた具体策でもあると説明している。なお、福清6号機と同型の5号機はともに「華龍一号」実証プロジェクトとして建設され、5号機はすでに今年1月、世界初の「華龍一号」実証炉として営業運転を開始、これまでの発電量は70億kWhに達した。CNNCがパキスタンで建設したカラチ2号機も、国外初の「華龍一号」として今年5月に営業運転を開始している。同じく「華龍一号」設計を採用した同3号機は先日、温態機能試験を完了したことから、来年完成すると見られている。CNNCはこのほか、福建省の漳州1、2号機にも「華龍一号」を採用、それぞれ2019年10月と2020年9月から建設工事中である。一方、CGNは2015年12月以降、CGNバージョンの「華龍一号」の実証プロジェクトとして江西省の防城港3、4号機を本格着工しており、どちらも2022年に運転開始する見通しとなった。これらに加えて、CGNは広東省の太平嶺1、2号機も、「華龍一号」として2019年12月と2020年10月にそれぞれ着工。2020年12月には、浙江省の地元電力企業や建設企業、投資企業らが出資する三澳1号機についても、建設工事を開始している。(参照資料:CNNC(中国語)、中国政府国務院(英語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 Nov 2021
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フランスのフラマトム社は11月2日、事故耐性燃料(ATF)100%で構成される先行使用・試験燃料集合体(LFA)を原子力産業界として初めて製造し、米メリーランド州のカルバートクリフス原子力発電所(91.2万kWのPWR×2基)に納入したと発表した。同発電所で最近行われた燃料交換の際、このLFAも装荷されたとしている。フラマトム社は現在、米エネルギー省(DOE)が福島第一原子力発電所の事故後に開始した「ATF開発プログラム」に参加しており、今回のLFAは、同プログラムの一環でフラマトム社が進めている独自のプログラム「PROtecht」の下で開発された。カルバートクリフス発電所への装荷は、同発電所を所有する米エクセロン・ジェネレーション社とフラマトム社が2019年に結んだ契約に基づくもので、LFAもこの契約に沿って、米ワシントン州リッチランドにあるフラマトム社の工場で製造された。同LFAではクロムを塗布した176本のジルカロイ合金製被覆管に、クロム合金の酸化被膜で覆ったペレットが充てんされている。フラマトム社の発表によると今回のATF 100%のLFAは、これまで米国やスイスの原子力発電所の18か月サイクル運転で実施したLFA試験の結果に基づき製造した。炉心内の温度変化に対して、同社のLFAは高い耐久性を示しており、高温条件下においても腐食や水素の発生が抑えられたとしている。フラマトムで燃料事業を担当するL.ゲフェ上級副社長は、「ATFのみの燃料集合体が商業炉に装荷されたことは、当社のみならず原子力産業界にとっても大きな節目になった」と表明。今後も「PROtecht」プログラムで原子燃料技術の開発を進め、低炭素なエネルギーの生産を一層効率的かつ信頼性の高いソリューションで支えていく」との抱負を述べた。2012会計年度予算で始まったDOEの「ATF開発プログラム」では、産官学の協力により2022年までに商業炉にLFAを装荷する計画。産業界からはフラマトム社のほかに、GE社とウェスチングハウス社の3グループが参加しており、各社が被覆管その他に新素材を用いて独自に開発したATFを、米国やその他の国の原子力発電所で試験中となっている。(参照資料:フラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Nov 2021
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アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電の導入計画を担当している首長国原子力会社(ENEC)は11月4日、バラカ原子力発電所(韓国製の140万kW級PWR×4基)の3号機の建設工事が完了したと発表した。2014年9月に本格着工した3号機ではすでに、冷態機能試験や温態機能試験のほか、構造性能確認試験(SIT)、総合漏えい率試験(ILRT)など様々な試験が完了。2023年の起動と送電開始に向けて作業は順調に進展しており、世界原子力発電事業者協会(WANO)など国際機関の独立した専門家による評価作業も含めて運転準備の段階に入った。連邦原子力規制庁(FANR)も同炉に運転認可を発給するのに先立ち、運転の担当機関など同炉のあらゆる側面を詳細にレビュー中である。同発電所では今年4月、アラブ諸国初の商業炉として1号機が営業運転を開始したほか、同2号機も9月に連邦内への送電を開始。現在、出力上昇試験などを実施している。3号機に関する今回の発表は、第26回・国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP26)の開催イベントの一つ「エネルギー・デー」に合わせて行われた。UAEはCO2の排出量を削減しつつ、連邦内で増加する電力需要を満たすために電力供給量を拡大、発電部門の迅速な脱炭素化を図りクリーンエネルギー社会への移行を進めているとアピール。「エネルギー・デー」に参加した46か国・地域(日米や中国、豪州、インドなどを除く)の首脳はこの日、先進国などで2030年代に、世界全体では2040年代にも石炭火力を廃止し、CO2削減対策を持たない新たな発電所の建設を中止するほか、公的な輸出支援も終えることなどを約束している。「COP」に関してUAEは、(3号機が送電開始予定の)2023年に開催される「COP28」の誘致を希望。UAEの明確な方針として、地球温暖化への対応でCO2排出量の削減を図り、2050年までに実質ゼロ化するということを示しており、同じく誘致を希望していた韓国も含め、国連アジア・太平洋地域の諸国からはすでに支持を取り付けた。ENECによると、バラカ3号機が完成したことによりUAEは140万kWの無炭素電力源を速やかに追加し、クリーンエネルギーへの移行で主導的役割を果たしていく。再生可能エネルギーの間欠性を補えるベースロード用のクリーンエネルギー源として、原子力を活用するとの国際誓約を果たすとともに、地球温暖化の解決策が著しく進展していることを実証した。ENECのM.I.アルハマディCEOも、「当社は原子力でUAEの持続可能な成長と繁栄を目指しており、一日24時間、年中無休でクリーンな電力を豊富に生産する原子力発電所は、再生可能エネルギーを補うだけでなく、水素エネルギーなど他のクリーンエネルギーへの橋渡しになる」と指摘。今後60年間は、原子力で地球温暖化に直接取り組むとの決意を示したほか、15年前に原子力による電源の多様化ビジョンを描き、確固たる信念を持ってバラカ発電所建設計画を今日の実現に導いたUAE指導者達に謝意を表明した。(参照資料:ENECの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
05 Nov 2021
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