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環境省、放射性物質対策に関するパワーポイント学習教材を公開
環境省はこのほど、中学生以上を対象に、福島第一原子力発電所事故の発生から、放射性物質の状況、除染、福島県産品の食品の安全性についてわかりやすく説明したパワーポイント学習教材「学んで、考えてみよう 放射線・放射性物質対策のこと」を公開した。2013年度より制作・公開している福島県出身のタレントなすびさんの現地取材によるコンテンツ「なすびのギモン」をベースにしたもの。環境省ではこれまでも、教師が「自身で放射線・除染に関する授業を実施する」、生徒が「身の周りの放射線や除染について知り、考え、成長して県外に出たときに、自分のこと、福島のことを少しでも説明できるようになる」ことを目標に、小学生向けの紙芝居「ふくろう先生の放射線教室」(全3巻)、放射線測定実習プログラムなど、授業での実践事例とともに、資料の制作・公開を行ってきた。今回公開されたパワーポイント資料は、「I.東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故」、「II.除染について」、「III.福島県産品の食品について」、「IV.放射線が体に及ぼす影響について」の4つのテーマを系統立ててスライド形式で整理。例えば、「II.除染について」では、校庭、雨どい、プール、道路、農地の除染手法や、除染効果の確認、除去土壌の保管、中間貯蔵施設への輸送など、一連の取組を写真や地図を交えて説明。また、「III.福島県産品の食品について」では、まず食品中の放射性物質の基準値を述べた上で、生産現場における安全確保の取組として、農地の反転耕(放射性セシウムが付着している表面土と汚染されていない下層の土を入れ替える)、放射性カリウムの吸収抑制対策を紹介。また、市場に流通する前の農水産物、米、牛乳の放射性物質に関するモニタリング検査について、県の他、身近なスーパーでも独自の検査を行っていることをあげるなど、生徒自身でも調べさせるようにしている。
- 17 Jun 2020
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福島県甲状腺検査評価部会、UNSCEAR報告書に関する論文も紹介
福島県「県民健康調査検討委員会」の甲状腺検査に関する評価部会が6月15日に開かれ、3巡目検査(2016~17年度)の結果が報告された。甲状腺検査は、長期的観点から放射性ヨウ素の内部被ばくによる甲状腺がんから子供を見守るため2011年より実施されている。震災当時に県内に在住していた18歳以下、および震災後に生まれた約34万人を対象として約22万人(64.7%)に実施された3巡目検査で、「悪性腫瘍ないし悪性の疑い」となった割合は実施者数全体に対し0.01%だった。同検査での地域分類、「避難区域等」(田村市、南相馬市、伊達市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村)、「中通り」(福島市など、26市町村)、「浜通り」(いわき市、相馬市、新地町)、「会津地方」(会津若松市など、17市町村)の地域別にみると、「浜通り」が最も高く0.03%だった。因みに、日本の甲状腺がんの罹患率(2015年)は、人口10万人当たり9人(0.009%)程度で、女性では同13人(0.013%)程度と男性と比べて高い傾向にある。今回の検査結果に対し、福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センターの大平哲也氏は、「原子放射線の影響に関する国連科学委員会」(UNSCEAR)により評価された甲状腺吸収線量と小児甲状腺がんとの関連に関する論文を紹介。それによると、2巡目検査(2014~15年度)の受診者を対象とした解析結果から、「甲状腺吸収線量が低い地域から高い地域に行くにしたがって、甲状腺がんの発見率が高くなるというような関連性は、いずれの年齢でも見られなかった」としている。その上で、UNSCEARによる被ばく線量評価には不確定要素が多いことなどをあげ、3巡目検査以降のデータを用いて引き続き評価を行う必要があると指摘。UNSCEARは2013年報告書(2014年4月公表)の中で、「福島第一原子力発電所事故により日本人が生涯に受ける被ばく線量は少なく、その結果として今後日本人について放射線による健康影響が確認される可能性は小さい」と結論付けている。部会長の鈴木元氏(国際医療福祉大学クリニック院長)も自身が参画する研究チームの論文を紹介。避難指示が出された7市町村の子供たちの行動調査票をもとに2011年3月11~26日の線量評価を解析し、1歳児の甲状腺被ばく(等価線量)に関し「UNSCEAR2013年報告書の評価値より大分小さくなった」としている。鈴木氏は、避難シナリオを見直し線量評価の精緻化を図った同研究の意義を述べ、年度内に見込まれるUNSCEAR報告書のアップデートに向けて、「日本の研究者たちが、何が原因で過剰評価となったか、データとして示していくべき」と強調した。
- 16 Jun 2020
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2020年度エネルギー白書が閣議決定
政府は6月5日、2020年度のエネルギー白書を閣議決定した。エネルギー政策基本法に基づき、概ね前年度に講じられたエネルギー需給に関する施策について取りまとめたもの。今回も経済産業省が「一丁目一番地の最重要政策課題」と位置付ける「福島復興の進捗」を筆頭に、「災害・地政学リスクを踏まえたエネルギーシステム強靭化」、「運用開始となるパリ協定への対応」の3件を特集。「福島復興の進捗」では、福島第一原子力発電所の廃炉に係る取組として、リスク低減に向けた1/2号機排気筒解体作業の進捗(2020年5月に上半分約60mの解体が完了)、2020年2月に取りまとめられた処理水の取扱いに関する報告書へのIAEAレビューなど、最近の動きも取り上げている。また、福島復興に関しては、いずれも2020年3月の進展として、帰還困難区域では初めてとなった双葉町・大熊町・富岡町の一部地域の避難指示解除や、「福島ロボットテストフィールド」と「福島水素エネルギー研究フィールド」の開所を紹介。「災害・地政学リスクを踏まえたエネルギーシステム強靭化」では、ホルムズ海峡周辺での日本関係船舶被弾など、中東情勢の緊迫化をもたらす最近の事案や、昨秋の台風15号、19号による大規模停電の発生をとらえ、国際資源戦略やエネルギーレジリエンスの強化を図る重要性を訴えている。また、昨今の新型コロナウイルス感染拡大が及ぼす国際原油価格市場への影響についてコラムで紹介。「運用開始となるパリ協定への対応」では、地球温暖化対策に関する国際的枠組み「パリ協定」が2020年から本格運用されるのを受け、温室効果ガス削減につながる5分野16技術課題の具体的目標を掲げた「革新的環境イノベーション戦略」(2020年1月策定)について取り上げ、「技術開発を進めることで、実効的な温室効果ガス削減に取り組んでいくことが重要」と強調。2050年の確立を目指す「革新的環境イノベーション戦略」の技術課題では、安全性・経済性・機動性に優れた革新的原子力技術や核エネルギー技術を含むエネルギー転換の分野で、約300億トンの温室効果ガス削減が見込まれている。資源エネルギー庁では、今回のエネルギー白書をわかりやすく紹介した「スペシャルコンテンツ」を公開している。
- 05 Jun 2020
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東京電力、「家族で食べよう!福島牛キャンペーン」開始
東京電力は5月28日より、「家族で食べよう!福島牛キャンペーン」を実施している。新型コロナウイルス感染拡大に伴う外食自粛により、自宅で食事をする機会やインターネット通販での食材購入も増えているようだ。こうした状況をとらえ、同社では福島県産品の美味しさや魅力をさらにPRすべく、特に、家族で食卓を囲むすき焼きにも適した福島牛をメインに、県内約200の生産者らによる県産品の通販サイト「ふくしま市場」での販売促進イベントなどを行い、復興支援につなげる。同キャンペーンでは、特設サイトを開設し、福島牛を始めとする福島県産の農水産物を抽選で2,000名にプレゼントするほか、先着5,000名に割引価格で販売。プレゼントへの応募は6月末までとなっている。特設サイトでは、「ふくしま市場」に出品している食肉加工・惣菜製造業いとうフーズ(郡山市)の伊藤武・代表取締役によるビデオメッセージを紹介。同氏は、「震災から9年が経ち売上げがようやく落ち着いてきたかな、と思った矢先に」と、昨秋の台風19号襲来による工場冠水、倉庫内の食肉被害を振り返る。加えて、最近の新型コロナウイルス感染拡大に伴い売上げが大幅減となる中、年明けに復旧した工場内の映像とともに、福島牛の美味しさを「風味豊かでまろやかな味が特徴」とアピールし、同キャンペーンの開始に際し「全国の皆様に福島牛のPRができる」と抱負を語っている。
- 28 May 2020
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浜通り地域の国際教育研究拠点構想、2024年度本格開所を目指し議論大詰め
福島浜通り地域の国際教育研究拠点に関する検討が現在、6月の取りまとめに向けて復興庁の有識者会議で進められている。浜通り地域の新たな産業基盤構築を目指す「福島イノベーション・コースト構想」のもと、これまで「福島ロボットテストフィールド」(南相馬市・浪江町)などの拠点整備や産業集積が図られてきたが、今後同構想をさらに加速し産学官が連携し魅力ある浜通り地域を創出すべく、長期にわたり復興をリードしていく研究者・技術者の育成につなげようというもの。復興庁の有識者会議では、昨夏より大学・研究機関からのヒアリングや企業アンケートを実施し、国際教育研究拠点の目的・機能、運営体制、研究分野、地元産業との連携の仕組みについて整理を行っている。例えば、東北大学は、廃炉、放射線医学、ロボット、環境・エネルギー、産業、災害科学の分野の研究を想定し、拠点内に分校「福島浜通り国際キャンパス」を設置することを提案し、国による長期的な予算措置を要望。お茶の水女子大学は、拠点の運営組織に、性差に配慮した研究・教育を推進することで新たな復興視点を導入する「女性活躍推進部門」や、減災を目指した次世代人材育成やリテラシーの向上を図る「減災・科学教育研究部」の設置を提案。他の研究拠点の例として、若年層の人口減少が続く中、人材育成と産業基盤づくりに向け山形県と庄内14市町村が核となり大学を誘致し進めている「鶴岡サイエンスパーク」プロジェクトが、海外の成功事例としては、放射能汚染からの環境浄化を契機に産業発展をとげた米国のハンフォード・サイトが紹介された。5月15日の有識者会議で、座長を務める坂根正弘氏(コマツ顧問)は、「日本における究極の地方創生モデル」を目指すとの取組姿勢を示した。その上で、国際教育研究拠点が対象とする研究テーマや人員規模とともに、2023年春の一部開所、24年度の本格開所を目指し20年内を目途に立地地域を決定するとのスケジュール案を含め、最終報告取りまとめに向けた論点を整理。これまでの有識者会議の議論を受け、福島県の内堀雅雄知事は、「浜通り地域には高等教育機関がない」と、避難指示区域となった市町村の現状を述べ、研究機能とともに、学位取得の仕組みなど、教育機能の重要性を強調している。なお、最近の避難指示区域を巡る議論として、19日の衆議院震災復興特別委員会で、元復興相の自由民主党議員・根本匠氏が、帰還困難区域の将来像に関する質疑の中で、飯舘村村長が提案する復興公園整備構想を紹介し、土地利用に即した対応も考えていく必要性を指摘。同村では南端一部(長泥地区)に帰還困難区域が設定されている。これに関連し、内堀知事は25日の定例記者会見で、帰還困難区域の取扱いについて、「今正に国、県、市町村、関係機関も含め活発な議論がなされている」とした上で、今後自治体の意見を尊重しながら、「復興・創生期間」後(2021年度以降)の方向性が示されるよう国に対し要請していく考えを述べた。
- 25 May 2020
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「土木学会賞」、JR東日本・常磐線の復旧などが受賞
土木学会はこのほど、2019年度の「土木学会賞」受賞事業を発表。土木技術の発展に顕著な貢献をなし社会の発展に寄与した画期的プロジェクトに与えられる技術賞(IIグループ)を、常磐線の復旧・復興(JR東日本)が受賞した。「高い放射線量下における鉄道復旧と自治体と連携した復興の取組」が評価されたもの。2011年3月の東日本大震災で福島・宮城県内が甚大な被害を受けた常磐線は、現位置で復旧した小高~相馬間、浜吉田~岩沼間に続き、内陸部への移設を行う大規模工事を経て相馬~浜吉田間が2016年12月に運転を再開。同月、福島第一原子力発電所事故の影響も受けている小高以南の不通区間に関しては、政府が取りまとめた「原子力災害からの福島復興加速のための基本指針」で、2019年度末までの開通を目指すとされた。その後、避難指示の解除により順次復旧が進み、2020年3月4~10日に双葉町・大熊町・富岡町に設定されていた帰還困難区域のうち、常磐線の線路・駅舎および周辺道路が解除となったことを受け、同14日最後に残った富岡~浪江間が運転を再開し9年ぶりに全線復旧を果たした。その間、JR東日本(水戸支社)は自治体との協定締結により、夜ノ森駅(富岡町)の「豊かな自然に溶け込む駅」をコンセプトとした駅舎のリニューアル、Jヴィレッジ駅(楢葉町)の開設を行うなど、地元とともに復興支援に取り組んできた。また、福島第一原子力発電所事故に伴う除染事業(環境省福島地方環境事務所他、39社)も技術賞(IIグループ)を受賞。各社では、除染に伴い発生する除去土壌を、最終処分するまでの間、安全に集中管理・保管する中間貯蔵施設へ輸送し減容処理・貯蔵するため、分別の効率化や作業員被ばくの低減などに向け技術開発に取り組んでいる。
- 19 May 2020
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災害と因縁
災害は、規模が大きければ大きいほど長期にわたって社会に予測外の間接影響を与え得ます。それは普段から目に見える形で残っているとは限りません。何かの折に、かさぶたが剥がれるように過去の災害の因縁が顔を出す。そんな影響が、2011年の東日本大震災・津波・原子力災害のトリプル災害の後にも見られています。しかしそこで顔を出すものは必ずしも悪いものばかりではありません。災害によって奪われたものと同じように、与えられたものもまた未来へとつながっている、と感じています。令和元年東日本台風と2011年の避難指示昨年10月に2度にわたって繰り返された水害は、福島県にも広範囲な浸水被害をもたらしました。その被災地には、旧避難区域である南相馬市の小高地区も含まれます。約1600世帯が帰還していた小高地区では、水害により20戸以上が床上浸水以上の被害を受けました。被害が大きくなってしまった一つの原因は、水門の閉め忘れによる河川の逆流です。「震災前までは水門を閉めるのは区長さんの役目でした。区長さんがまだ避難中のところも多いし、帰還した人も水門の申し送りまではされてなかったようです」そんな説明を受けつつ訪れたある水門には、川から逆流してきた大きな木の根ががっちりとはまり込み、水門機能は完全に失われていました。別の地域では田畑用の用水路が溢水し、多くの家屋が浸水しました。放射性セシウムが泥に沈着することを知ってから用水路の泥かきは全くしていなかった、という家もあり、用水路が浅くなっていた可能性もあるとのことです。また地域の水路だけでなく、一級河川の整備にも問題があります。2008年以降、一級河川の管理権限が国から都道府県に移管されるようになりました。そんな中にトリプル災害が起き、護岸工事や除染作業が最優先となった福島県では河川自体の整備する余力が残っていなかった可能性も指摘されています。そう考えれば、昨年起きた福島県の水害の一部は、9年以上の時を経て顕在化したトリプル災害の間接被害ともいえるかもしれません。差別の連鎖そのような間接影響は今般の新型コロナウイルスパンデミックでも垣間見られます。たとえば福島県のある地域では、新型コロナウイルスが陽性になった方のご自宅に石が投げ込まれる事態が起きました。「あそこは賠償金の関係で元々周囲の反感も大きかったから…」とは、町の噂で聞こえてきた話です。ウイルス感染の噂は、原子力災害以降蓄積していた鬱憤を顕在化するきっかけとなってしまったのかもしれません。このような差別もまた、パンデミックと原子力災害が複雑に絡み合った複合的な被害であるとも言えるのです。もちろん水害や差別は複雑かつ多くの交絡因子を含んでおり、これをもって無用な責任論に発展させてはいけないでしょう。しかし災害というものが10年近くの年月を経てもなお人々に影響を与え得る、という側面を知ることは大切です。今パンデミックという災害を生きる私たちもまた、このような二次災害の芽を日々生み出している可能性があるからです。災害から生まれたものもう一つ大切なことは、私たちが生み出しているのは「二次災害」というマイナスの芽だけではない、という事です。東京に緊急事態宣言が出された直後のことです。小高地区に住む方から「防護服が50着余っているので、困っている病院に無償提供できないか」というメールをいただきました。感染症指定病院ではない病院やクリニックがパンデミックの脅威に恐々としているさ中のことです。情報を流したところ、すぐに「ぜひ欲しい」というご希望が寄せられ、ある病院とクリニックの2か所に郵送いただきました。防護服を受け取った施設からは「本当に感謝してもし足りない」というお礼が、私にも届けられています。また、震災後のご縁のあった方々から、温かいメッセージと共にお花やコーヒーなど様々な差し入れもいただきました。感染リスクの最前線で毎日働いている臨床検査技師さんたちと一緒に、感謝と共にいただいています。何かをいただく時に私たちが感じるのは、物への感謝だけではありません。私たちがそこから受け取るのは、誰かが自分たちのことを考えてくれているという希望と、この困難な時にも自分が何かに感謝をできる有り難さです。ご自身も決して楽ではないはずのこの有事の中、それでも人に何かを与えることができる方々がいる。その気持ちが、このパンデミックの現場に浸透しています。こういう時にも人に与えることができる。そういう方々はもしかしたら、2011年の災害時に同じように心に触れる支援を誰かから受けたのかもしれません。その心が連鎖し、9年後に別の被災地で誰かの心を救っているのであれば、このような正のつながりもまた災害の遺産であると言えるでしょう。未来の災害へ向け未曽有の災害が思い出したようにふと影を落とすことがあります。それと同様に、あるささやかな支援が時間も空間も飛び越えて誰かの光明ともなることもあるのです。その正負の遺産は、今社会の表層を賑わしている大所高所論たちではなく、その足元で過ぎて行く人々の暮らしから日々生まれているのではないでしょうか。ふとした折にいただいた感謝の気持ちを覚えていること、それだけのことが、未来の大災害時に誰かを救う布石なのかもしれない。そう思うと今の非日常が何か貴重なものにすら思えてきます。これまで色々な方からいただいた縁と恩を、いつ、誰に、どうやって返せるのか。まだ分からない恩返しを夢見ながら、今を大切に過ごしたいと思っています。
- 18 May 2020
- COLUMN
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福島第一2号機の使用済み燃料プール調査に向け水中ROV訓練、ロボットテストフィールドで
東京電力は5月13日、福島第一原子力発電所2号機の使用済み燃料プールの内部調査に向け、カメラを搭載した水中ROV(遊泳型ロボット)の操作訓練を、「福島ロボットテストフィールド」(南相馬市)で実施した。〈動画は こちら〉2号機の使用済み燃料プールでは615体の燃料(新燃料28体、使用済み燃料587体)が保管されており、2024~26年度に取り出しを開始する。今回の訓練は、6月中旬にも水中ROVを用いて初めて実施される2号機使用済み燃料プール内の調査に先立ち、実環境を模した状況での作業内容の確認、従事者の遠隔操作技術向上を目的としたもので、3月末に全面開所した「福島ロボットテストフィールド」の大水槽(30m×12m×水深7m)を利用。15日まで計8名が訓練を行い、水中ROVの基本操作を習得する。水中ROV本体の外観(©東京電力)水中ROV(35cm×20cm×20cm、重さ5kg)は、海外製で有線仕様。遠隔操作で最大速度5.6km/hで航行でき、13日の訓練では、東京電力社員らが水中ROVの操作技術を有するアトックスより指導を受け、大水槽の床に沈めたパネルの色識別などを行った。東京電力で2号機燃料取り出しプロジェクトグループマネージャーを務める上西修司氏は、「今後の廃炉を進める上で必ず必要となる技術」、「必要な時に自分たちで操作できることは重要なこと」などと、同社自らが技術力を向上させる意義を強調した。各訓練者は力量確認試験で訓練成果の認定を受け、今後の燃料取り出しに向けた重要なステップに臨むこととなる。2号機燃料取り出しのイメージ(福島第一廃炉中長期ロードマップ資料より引用)2号機の使用済み燃料プールからの燃料取り出しに向けて、東京電力は、がれきの撤去や汚染状況の調査を順次実施し、空間線量率の低減傾向や今後の作業におけるダスト飛散対策を踏まえ、2019年5月に原子炉建屋を解体せず南側に作業用構台を設置する工法の採用を決定。水中ROVは、構台から遠隔無人重機で据え付けられる運搬装置を介し燃料プール内に投入され、燃料の変形や障害物の確認などを行い、得られた調査結果は燃料取扱設備の設計へと反映される。
- 15 May 2020
- NEWS
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エネ庁が福島第一処理水で第3回目の意見聴取、経団連他
資源エネルギー庁は5月11日、福島第一原子力発電所の処理水の取扱いに係る「関係者のご意見をうかがう場」を開催し、日本経済団体連合会他から意見を聴取。2月に取りまとめられた小委員会による報告書を踏まえ、今後政府として処理水の取扱い方針決定に資するもので、4月6、13日に福島県の自治体や産業団体から意見を聴取したのに続き3回目となる。新型コロナウイルス対策のため、関係者は一会場に参集せずウェブ会議で行われた。資源エネルギー庁の小委員会では、処理水の処分方法とともに、風評被害などの社会的影響も含め総合的な検討を行ってきたが、経団連専務理事の根本勝則氏は、「地元自治体、農林水産業、食品加工業など、様々な方々の意見を丁寧に聴きながら、国民の理解を得て最適な処分方策を決定して欲しい」と切望。さらに、東日本大震災以降、東北地域の魅力を発信する「復興応援マルシェ」開催など、経団連が取り組んできた被災地産品の販路拡大・観光振興に向けた支援策を披露し、「風評対策にはこれまで以上に精力的に取り組んでいく」と強調した。また、全国約1,200社の旅行業者で構成する日本旅行業協会の理事長を務める志村格氏は、観光振興を通じた風評被害対策の有効性を「広い意味で農業や食品の分野にも貢献する」と述べた上で、(1)官民一体となったキャンペーンの企画、(2)観光客を受け入れる基盤整備(コンベンションなど)、(3)様々な形態の旅行に応じた情報提供、(4)食の安全に関する正しい情報発信――を要望。全国旅行業協会専務理事の有野一馬氏は、福島第一原子力発電所構内に立ち並ぶ処理水を保管するタンクに関し、「『福島の象徴』のように報じられている」と、復興に及ぼす影響を懸念し、処理水の取扱いについて「安全性を十分に確認した上で処分することが必要な時期にきている」とした。流通業界から、日本スーパーマーケット協会専務理事の江口法生氏は「安全性について国民に対し丁寧にわかりやすい言葉で説明を」と、日本チェーンストア協会専務理事の井上淳氏は「聞き手側に立った情報提供を」と、それぞれ要望。「消費者との接点」と自身の立場を位置付ける井上氏は、処理水の取扱いに関し、(1)正しい情報の分かりやすい開示、(2)結論の押し付けではない丁寧な議論、(3)安全確保に対する認識の全体共有――をあげ、「国民の安心を得ることは必須の条件」と繰り返し強調した。資源エネルギー庁では、引き続き6月15日まで処理水の取扱いに関する意見募集を行っている。
- 11 May 2020
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福島第一廃炉、1/2号機排気筒が解体で半分の高さに
東京電力は4月30日、福島第一原子力発電所廃炉の進捗状況を発表した。昨夏より行われていた1/2号機排気筒解体が29日、予定していた工程(筒身部分16ブロック、鉄塔部分7ブロック)を完了した。今後の廃炉作業に向けて、高さ120mの排気筒は、損傷・破断が生じていたため、上部を解体しリスクを低減する必要があった。また、解体工事に際しては、作業員の被ばくを低減するため、現場での作業を無人化するよう切断・把持機能を有する解体装置を製作。2018年8月からモックアップ(模擬体)による遠隔解体の実証試験を行い、解体装置の性能や施工計画の検証、作業手順の確認など、準備を進め、2019年8月に解体工事を開始した。排気筒は、今回の解体工事で、破断が集中している高さ66m付近を含め、高さ59mより上部が撤去された。排気筒解体の進め方(東京電力発表資料より引用)排気筒の解体作業は、地元企業のエイブルが手掛け、現場で工事に当たった担当者は、「大きなプロジェクトに参加させてもらった。苦労したこともあったが、うまく作業を進めることができた」と語っている。今後は残された排気筒の頂部からの雨水侵入防止のため、蓋を設置する計画となっており、福島第一廃炉推進カンパニープレジデントの小野明氏は、30日の記者会見で、「最後まで気を緩めることなく、安全最優先で作業を進めていく」と強調。また、「地元に高い技術力を持つ企業があることを実感した」とした上で、「未知なる作業が控えており、今回の経験を活かしていきたい」と述べ、遠隔操作技術など、今後の燃料デブリ取り出しに向けても地元企業を活用していく考えを示唆した。2号機使用済み燃料プールからの燃料取り出しに向けては、遠隔操作でプール内調査を行う水中ROV(遊泳型ロボット)のモックアップ訓練を、南相馬市に3月末に全面開所した「福島ロボットテストフィールド」で5月中旬にも実施する予定。
- 01 May 2020
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内閣府、日本海溝・千島海溝巨大地震で津波想定を発表
内閣府(防災)の有識者検討会は4月21日、日本海溝の北部から千島海溝を対象とし巨大地震が発生した場合の震度分布、津波高、浸水域などに関する検討結果について報告書を取りまとめ発表した。北海道厚岸町付近で震度7など、岩手県から北海道に及ぶ太平洋側の広い範囲での強い揺れが推定されている。これは、東日本大震災の教訓を踏まえ2015年より検討を行ってきたもので、過去6,000年の津波堆積物に関する資料から最大クラスの津波断層モデルとして、「日本海溝(三陸・日高沖)モデル」と「千島海溝(十勝・根室沖)モデル」を構築し、津波シミュレーションを実施。沿岸における津波の高さや浸水範囲・深さを推計し、北海道、青森県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県について、その分布図が公表された。岩手県については自治体の要望により未公表。同報告書よると、北海道では根室市からえりも町付近にかけて10~20mを超える津波高となっており最大で27.9m(えりも町)だった。青森県は太平洋沿岸で10~20m程度となり最大は26.1m(八戸市)。岩手県は10~20m程度で宮古市がおよそ30mと今回の検討結果で最も高かった。宮城県以南では、場所によっては10mを超えていたが、一部の地域を除き東日本大震災時より低かった。 今回の報告書発表に関し、武田良太内閣府防災担当大臣は21日の閣議後記者会見で、最大クラスの地震・津波に伴う被害想定や災対策について検討する新たなワーキンググループと、自然災害に対する政府の初動対応・応急対策強化に向け「自然災害即応連携チーム会議」を立ち上げたことを述べ、「危機管理体制をより万全なものとする」と強調した。福島第一原子力発電所を立地する双葉町、大熊町の津波高は、「日本海溝モデル」によるシミュレーションで、それぞれ13.7m、14.1mだった。東京電力では昨秋より、福島第一原子力発電所の千島海溝津波対策として、高さ11m、全長約600mの防潮堤の設置工事を実施中。これに関し、原子力規制委員会の更田豊志委員長は22日の定例記者会見で、「強い関心を持っている」とした上で、「まず建屋の水密化をできるだけ早急に図って欲しい」と繰り返し述べた。
- 22 Apr 2020
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エネ庁が福島第一処理水で第2回目の意見聴取、流通関係者や浜通り市町村長ら
資源エネルギー庁は4月13日、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関する「関係者のご意見を伺う場」を福島市と富岡町で開催。2月に取りまとめた小委員会報告を踏まえ、政府としての方針決定に資するもので、6日の福島市開催に続き2回目となる。前半の福島市会場では、県商工会連合会会長の轡田倉治氏、ヨークベニマル社長の真船幸夫氏、県農業協同組合中央会会長の菅野孝志氏が意見を表明した。福島を中心とする5県に約230店舗の販売網を有するヨークベニマルの真船氏は、「安心・安全な食品を地域の皆様に届ける」という使命を繰り返し強調。福島第一原子力発電所事故後、独自に放射線測定機器を導入し日々食品の検査を実施した上で顧客に提供してきた結果、「徐々に福島県産品の安全性に対する理解が浸透してきている」とした。一方で、「風評は未だ払拭されるに至っていない」と憂慮し、毎年3月11日に打ち出す販売促進キャンペーン広告を示しながら、福島県産の農水産物の魅力発信に努めていることを述べた。その上で、処理水の取扱いに関し、(1)国内外に広く情報を提供しコンセンサスを得ること、(2)風評被害防止の事前プログラムを準備しておくこと――が担保されない限り、放出すべきではないと主張。また、菅野氏は、小委員会報告が「現実的な方法」とする海洋放出と水蒸気放出について「二者択一の考え方には反対」としたほか、2日に公表された同報告に対するIAEAレビューに関し「地元紙を除いてほとんど報道されていない」などと述べ、マスメディアによる情報発信や放射線教育の重要性にも言及した。後半は富岡町に会場を移し、いわき市、双葉町、富岡町、広野町、葛尾村、楢葉町、川内村、大熊町、浪江町の各首長が意見を表明。いわき市長の清水敏男氏は、処理水の取扱いに関し、資源エネルギー庁が2018年に開催した説明・公聴会(富岡町、郡山市、都内)での環境・健康影響を巡る議論を振り返り、小委員会報告について「科学的事実に対し共通認識が形成されるべき」と、国民全体による議論の必要性を示唆。また、市の観光復興の現状について述べ、海水浴客は震災前の1割程度に留まり、良質な波で知られる四倉海水浴場では「東日本サーフィン選手権大会」が2年連続で開催できたものの、サーファーからは放射線に対する不安の声が聞かれるなどと、「風評被害の固定化」を懸念した。この他、各町村長からはいずれも、地元産業に及ぼす風評被害への不安や慎重な対応を求める意見が述べられ、住民帰還に与える影響を憂慮する声、原子力発電所を立地する地域を含め全国各地で説明会を行うべきとの意見もあった。現下の新型コロナウイルス対策のため、東京にてテレビ会議を通じての出席となった松本洋平経済産業副大臣(座長)は、「皆様方の思いをしっかり受け止めていく」と述べ締めくくった。
- 14 Apr 2020
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エネ庁、福島第一処理水の取扱いに関し意見聴取を開始
資源エネルギー庁は4月6日、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関する報告書取りまとめを受けた第1回「関係者のご意見を伺う場」を福島市で開催。今後、地元を始めとした関係者の意見聴取を順次実施し、政府としての方針が決定される運び。今回は、内堀雅雄・福島県知事他、県内の市町村長、産業界の代表らが招かれ、それぞれの立場から意見を述べた。福島第一原子力発電所で原子炉内の燃料デブリ冷却などにより発生する汚染水は多核種除去設備(ALPS)で浄化処理されるが、取り除くことのできないトリチウムを含んだ水の取扱いが課題となっており、資源エネルギー庁の委員会は2月にこれまでの検討結果を取りまとめた報告書の中で、「現実的な方法は海洋放出および水蒸気放出」、また、「風評被害対策を拡充・強化すべき」としている。さらに、4月2日には、同報告書に対するIAEAのレビュー結果が公表され、海洋放出と水蒸気放出のいずれも「技術的に実施可能」と評価した上で、今後の処分方針について「すべてのステークホルダーの関与を得ながら喫緊に決定すべき」などと指摘された。6日の「ご意見を伺う場」で内堀知事は、震災から9年を経て、水産業では漁港の復旧とともに試験操業が順次拡大し出荷制限を受ける魚介類がゼロとなったことなど、県内産業の復興状況を説明。一方で、農産物の産地間競争の激化などに触れ、県産品の価格や観光客数に全国水準との格差が生じている実態や、一部の国・地域で続く食品輸入規制の現状を述べ、「風評払拭には長期にわたる粘り強い取組が不可欠」、「福島の現状とともに放射線に対する正しい知識が伝わっていない」として、処理水の取扱いに関し慎重な対応を要望した。産業界から、県旅館ホテル生活衛生同業組合理事長の小井戸英典氏は、処理水の放出に関し、「どれだけ希釈しても不安をゼロにすることはできない」、「風評ではなく故意の加害行為」と厳しく指摘。一方で、報告書の内容を踏まえ諸外国でのトリチウム放出の実績や安全性の担保に一定の理解を示し、処分期間を通じた損失補てんとともに、放出を容認する考えを述べた。また、県森林組合連合会会長の秋元公夫氏は、きのこ・山菜類への影響、林業の経営意欲低下などを懸念し、処理水の放出に反対。県漁業協同組合連合会会長の野﨑哲氏は、「これから正に増産に向け舵を切ろうという矢先」と、県水産業の本格復興に向けた正念場を強調したほか、若い後継者の機運に与える影響なども危惧し、「海洋放出には反対せざるをえない」、「福島県の漁業者だけで判断できることではない」とした。観光関連では、会津磐梯山を望み五色沼を擁する北塩原村の村長で県町村会会長の小椋敏一氏が、9年を経て漸く震災前の水準に戻りつつある国内外観光客の回復状況について説明し、「町村の現状はまだまだ厳しい」と訴えたほか、処理水の取扱いについては、県外での処分も選択肢に全国各地で幅広く意見を聴く必要性を述べた。第2回の「ご意見を伺う場」は、13日に福島市と富岡町で行われる予定。
- 07 Apr 2020
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南相馬市、「ロボットイノベーションシティ」を目指しPR動画公開
福島県南相馬市は、復興の重点戦略として取り組んでいる「ロボット振興ビジョン」の実現に向けた取組をPRする動画を作成し順次公開している。同市は、実際の使用環境を再現しながら陸・海・空で活躍するロボットの研究開発、実証試験、性能評価、訓練などを行う「福島ロボットテストフィールド」を立地。これを、最大限に活用し、国内外の優秀な研究者が集う環境整備、企業の技術革新やベンチャー輩出を推進するとしている。動画は、政府の科学技術イノベーション総合戦略が掲げる「Society5.0」に因み、「Minamisoma5.0 南相馬が目指すロボットイノベーションシティ」と題し、「南相馬のロボットは道具じゃない、○○だ」をキーフレーズに、門馬和夫市長始め、ドローンの開発・製品化に取り組む地元企業の技術者やロボット体験を授業に取り入れている小学校教員らがそれぞれの想いを語るシリーズ物。農業ロボットの開発に取り組む銀座農園社長の飯村一樹氏は、高齢化が進む果樹産業の支援などを目指し「人と一緒に動くロボットを作りたい」、「南相馬のロボットは道具じゃない、『息子』だ」と語る。動画の中で「市の人材輩出・育成」に向けた意気込みを「南相馬のロボットは道具じゃない、『復興の希望』だ」と訴えかける門馬市長は、昨春「福島ロボットテストフィールド」を活用したロボット関連人材育成に関わる新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との協力協定の締結に臨んでいる。「福島ロボットテストフィールド」は、浜通り地域の新産業創出を目指す「福島イノベーション・コースト構想」の中核として31日に全面開所。福島県の内堀雅雄知事は30日の定例記者会見で、「既に全国から最先端の企業や研究者が集まっており、世界初の実証試験やロボットの新たな基準作りに向けた試験が行われている」とした上で、「空飛ぶクルマ」の実証試験を一例にあげ、同所の持つ優位性を活かした取組を通じ、「メイドイン福島」の革新的なロボット技術や製品が生み出されることに期待を寄せた。
- 31 Mar 2020
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消費者庁が食品の風評被害で調査結果を発表
消費者庁は3月10日、被災地産食品の買い控え行動の実態など、風評被害に関する消費者意識調査の結果を発表した。東日本大震災・福島第一原子力発電所事故を受け2013年より継続的に実施しているもので、今回の調査は2020年1~2月に行われ、被災地域(岩手、宮城、福島、茨城)と大消費地(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫)に居住する20~60代の男女約5,000人から有効回答を得た。それによると、普段の買物をする際に食品の産地を「気にする」または「どちらかといえば気にする」と回答した人のうち、「放射性物質の含まれていない食品を買いたいから」という理由をあげた人の割合は13.6%と、これまでで最少となった。この他の理由としては、「産地によって品質(味)が異なるから」が27.8%、「産地によって鮮度が異なるから」が20.5%、「産地によって価格が異なるから」が19.7%となっている。「放射線による健康影響が確認できないほど小さな低線量のリスクをどう受け止めますか」との質問に対しては、「基準値以内であればリスクを受け入れられる」または「殊更気にしない」と回答した人の割合が53.2%で2016年2月の調査から増加傾向。食品中の放射性物質の検査に関しては、「検査が行われていることを知らない」と回答した人の割合が46.9%と、これまでで最多となり、「基準値を超える食品が確認された市町村では、他の同一品目の食品が出荷・流通されないようにしている」ことを知っていると回答した人の割合は37.6%と、これまでで最少となった。また、消費者庁は、同調査結果と合わせ、被災地産食品の購買行動や放射性物質に関する理解度などを分析するインターネット意識調査の結果も発表。2020年1月に全国の20~60代の男女を対象として実施された。福島県産の食品を購入している人に、米、野菜類、果実類、魚介類、牛肉の品目別に、複数回答を可とし理由を尋ねたところ、いずれも「おいしいから」、「安全性を理解しているから」、「福島県や福島の生産者を応援したいから」が多かった。一方で、福島県産の食品を購入していない人に同じく理由を尋ねたところ、いずれの品目についても、「日常生活の範囲で売られていないから」が30~40%台で最も多く、「放射性物質が不安だから」は10%台。性別・年代別で比較すると、「放射性物質が不安だから」をあげた割合は、いずれの品目でも40代女性が最も多かった。また、品目別では、福島県産の米を「購入している」が9.4%、「購入していない」が40.8%、「購入しているかわからない」が49.8%だった。「購入していない」と回答した人の割合は、60代女性で最も多く55.7%、次いで50代女性の51.1%、40代女性の48.7%。「購入しているかわからない」と回答した人の割合は、20代男性で最も多く62.1%、次いで20代女性の61.5%、30代男性の56.0%となっている。これらの調査結果を踏まえ、消費者庁では、引き続き食品中の放射性物質に関する情報発信やリスクコミュニケーションの取組を推進するとしている。
- 12 Mar 2020
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福島第一原子力発電所事故から9年、東京電力・小早川社長が訓示
東日本大震災・福島第一原子力発電所事故から9年を迎え、東京電力の小早川智明社長は3月11日、社員に訓示を行った。発災時刻の14時46分に合わせ1分間の黙とうを行った後、小早川社長はまず、「震災で亡くなった方々のご冥福を祈るとともに、ご遺族の皆様に深い追悼の意を表したい。今なお福島の皆様、広く社会の皆様に多大なご負担・ご心配をかけていることに心からお詫び申し上げる」と述べた。その上で、先般の双葉町、大熊町、富岡町の一部地域での避難指示解除、14日には常磐線の全線開通、26日には東京オリンピック聖火リレーの「Jヴィレッジ」スタートが予定されるなど、福島の復興に向けた動きをあげ、「今後は『復興と廃炉の両立』が大きなテーマ」、「地域の皆様に信頼してもらえるよう取り組んでいく」と強調。福島第一原子力発電所の廃炉に関わる産業創出などを通じた復興へのさらなる貢献に意欲を示した。また、福島第一原子力発電所事故の反省に立ち、「原点は福島。安全に終わりはない」と社員らに訓示。「福島への思いを新たに日々の業務にしっかりと取り組み、一丸となって福島への責任を果たしていく」と強調した。同日、原子力規制委員会では、更田豊志委員長が原子力規制庁職員に訓示を行った。「多くの方々の人生を変え、いまだに多くの方々が不自由な生活を余儀なくされている」と、福島第一原子力発電所事故の及ぼした影響を強調し、職場で事故について考え話し合う時間を持って欲しいと述べた。また、業務への取組姿勢に関して、「人間には現状維持を望む傾向がある」と危惧し、4月からの新検査制度導入も踏まえ、既存の文書や前例に過剰に依存することなく、「そもそもどうあるべきか」に立ち返って考えるよう職員らに求めた。
- 11 Mar 2020
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「福島水素エネルギー研究フィールド」が浪江町に開所、製造される水素は東京五輪にも供用
福島県浪江町で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、東芝エネルギーシステムズ、東北電力、岩谷産業が2018年より建設を進めてきた「福島水素エネルギー研究フィールド」(FH2R:Fukushima Hydrogen Energy Research Field)の開所式が3月7日に行われた。〈NEDO発表資料は こちら〉FH2R では、18万平方mの敷地内に設置された2万kWの太陽光発電による電力を用いて世界最大級となる1万kWの水電解装置で年間約200トンの水素を製造する。今後、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、昼間の太陽光発電による余剰電力の発生が見込まれるが、FH2Rではこれを水素に変換し貯蔵・利用する技術の実証を行い、将来的に水電解技術の商用化に向けて、世界最先端の高効率で低コストの水素製造技術の確立を目指す。資源エネルギー庁の水素・燃料電池戦略室では、「再エネの大量導入は調整力確保とともに余剰の活用策が必要。水素利用のポテンシャルは大きい」と期待を寄せている。また、FH2R で製造する水素は、東京オリンピックの聖火台・聖火リレートーチ(福島県、愛知県、東京都の一部)を始め、大会車両の燃料電池自動車(FCV)500台、選手村の定置用燃料電池などにも供し、日本の技術力発信にも寄与する。FCVは、既存のガソリン車と同程度の機能を持ち、電気自動車(EV)と比べ航続距離が長く(500km以上)充てん時間も短い(3分)ほか、走行中の排出は水のみである。開発中の次世代FCVを運転し開所式に訪れた安倍首相(©経産省)FH2R開所式には安倍晋三首相他、関係閣僚、内堀雅雄福島県知事らが出席。今回の福島訪問で14日に全線開通する常磐線の双葉駅を視察し常磐自動車道常磐双葉インターチェンジの開通式に出席した後、FH2Rを訪れた安倍首相は、テープカットに臨むとともに施設内を視察し、「被災地の皆様の故郷への思いが大きな力となり、復興は確実に前進している」、「未来を見据えて新しい福島をつくっていく」などと述べた。
- 09 Mar 2020
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福島第一、1号機原子炉格納容器内部調査に向けアクセスルートの構築が進む
東京電力は2月27日、福島第一原子力発電所廃炉の進捗状況を発表した。燃料デブリ取り出しに向けては、1号機原子炉格納容器内部調査のためのアクセスルート構築作業で、2月12日に所員用エアロック「X-2ペネ」の内扉に1か所目の孔(直径約0.2m)の切削が完了した。内扉には3か所の孔を施工する予定で、早ければ3月上旬頃から続く2か所目の孔の切削に入る見通し。同機の原子炉格納容器内部調査については、2017年3月に自走式調査装置(形状変化型ロボット)を投入し、ペデスタル(原子炉圧力容器下部)外の画像取得・線量測定を行い堆積物が確認されている。アクセスルートを構築後、原子炉格納容器内に潜水機能付きのボート型アクセス装置を導入し、堆積物の形状・厚さ・燃料成分含有状況の確認、少量サンプリングなどを行う。3号機の使用済み燃料プールからの燃料取り出しについては、2月26日時点で566体中84体の取り出しが完了。昨夏に着手した1/2号機排気筒の解体工事は、23ブロックに分けて解体する計画となっており、2月1日に11ブロック目までが完了した。5月上旬の解体完了を目指す。東京電力では、プロジェクトマネジメント機能や安全・品質面のさらなる強化を目指し、4月に福島第一原子力発電所に関わる組織改編を実施することとしている。組織改編に伴い東京から現地へ70~90名の要員シフトが計画されており、福島第一廃炉推進カンパニーの小野明プレジデントは2月27日の記者会見で、これまでに発生したトラブルを振り返り、「作業は現場で行われる。東京ではなく現場でものを考える必要がある」と強調した。なお、来日中のラファエロ・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は、26日に福島第一原子力発電所を視察した。同氏は、来日に先立ち、IAEA主催の核セキュリティ国際会議(2月10~14日、ウィーン)の際、政府代表として出席した若宮健嗣外務副大臣より、発電所の処理水に関する資源エネルギー庁小委員会の報告書を受け取っており、27日の梶山弘志経済産業相との会談で、IAEAとして同報告書のレビューを行っていることを述べた。
- 28 Feb 2020
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原産協会・高橋理事長がプレスブリーフィング、「PAI原子力産業セミナー」開催結果など紹介
原産協会の高橋明男理事長は2月20日、定例のプレスブリーフィングを行った。高橋理事長は最近の原子力人材確保・育成に関する取組について紹介。原産協会が関西原子力懇談会との共催で毎年行っている学生対象の合同企業説明会「PAI原子力産業セミナー2021」について、2月1日の東京会場に45社、16日の大阪会場に36社の関係企業・機関が出展したと説明した。計81社の出展数はこれまでで最多となった。一方、参加学生数は東京会場が140名、大阪会場が115名の計255名で前回より減少。高専の試験期間と重なったことを要因の一つにあげ、今後さらに分析を行うとしている。因みに前回は2019年3月3日(東京)と6日(大阪)に開催され、計339名の参加があった。また、2月12日に行われた「原子力人材育成ネットワーク」報告会で年間の活動実績とともに、原子力分野のジェンダーバランス改善について発表が行われたことを披露。同ネットワークが支援し、このほど日本で初の開催となった「IAEA国際スクール 原子力・放射線安全リーダーシップ」(IAEA主催、東海大学共催)が17日に開講したことも紹介した。現在開催中の同スクールには、主にアジア地域から若手の技術者・行政官ら計29名が参加。2週間にわたり講義・演習、福島第一原子力発電所見学などのカリキュラムが組まれており、28日の閉講式ではIAEAより修了証の授与が行われる。この他、高橋理事長は、最近の原子力を巡る動きとして、福島第一原子力発電所の処理水に関する資源エネルギー庁の委員会が10日に報告書を取りまとめたことに触れた。同報告書では、技術的に実績があり現実的な処理水の処分方法として、海洋放出と水蒸気放出をあげた上で、国内での実績や放出設備の取扱いなどから、海洋放出の方がより確実に実施できるとしている。記者との質疑応答の中で、高橋理事長は、風評被害に配慮し「地元、漁業関係の方々に対し丁寧に説明していく必要がある」と述べた。
- 21 Feb 2020
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福島県産オリジナル米「福、笑い」と命名、内堀知事「トップブランド」を目指す
福島県の内堀雅雄知事は、2月10日の定例記者会見で、トップブランド米としての流通を目指す県オリジナル米の愛称を、「福、笑い」と決定したと発表。これは、福島県が2018年秋より「県産米全体のイメージと価格をリードする高品質米」と位置付けるべく取り組んできたもので、今回愛称が命名されたのは、県農業総合センターで有望な新品種候補として選ばれた奨励品種の一つ「福島40号」。内堀知事は、愛称の決定に際し、県内外から約6,200件の応募を受け、流通関係者、料理人、クリエイターなどの意見をもとに選考したとしており、「手にした皆様に笑顔が訪れるようなお米になって欲しいとの思いを込めた」と説明。さらに、「県産米のトップブランド品種として引き続き関係の皆様と連携しながら、生産振興や販売促進に取り組んでいく」と、今後の販路開拓に向けての意気込みを述べた。「福、笑い」は2021年秋に本格デビューする。福島県産米の価格水準は、震災後に全国平均を大きく下回ったが、近年回復傾向にあり、農林水産省が昨春に取りまとめた「平成30年度福島県産農産物等流通実態調査報告書」によると、2017年度で全銘柄平均に対しマイナス2.5%にまで縮小した。同報告書では、北海道産の「ゆめぴりか」や山形県産の「つや姫」など、各道県発で売り出されている高価格帯米を紹介し、オリジナル米の市場投入に際しては、慎重なマーケティング戦略の策定が重要とも指摘している。他道県産米との競争を見据え、内堀知事は、「福、笑い」の生産に関し、徹底した品質基準の保持や生産者の登録制を、広報戦略として、プレデビューイベントや試験販売を通じた流通関係者や消費者へのPRを図るとしている。
- 10 Feb 2020
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