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福島第一原子力発電所事故発生から10年で東京電力・小早川社長が訓示
東日本大震災・福島第一原子力発電所事故発生から10年を迎え、東京電力の小早川智明社長は3月11日、社員らに対し訓示を行った(=写真上)。〈動画は こちら〉発災時の14時46分より1分間の黙とうをささげた後、小早川社長は、震災による犠牲者への哀悼の意を述べるとともに、「今なお福島の方々を始め、広く社会の方々に多大なご負担・ご心配をかけていることに心よりお詫び申し上げる」と改めて表明。その上で、社員らに対し、(1)過去から学び実践に移す、(2)常に社会やお客様の目線で考える、(3)全員が主役となって安全性や品質を高め続ける――ことの重要性を強調。事故を振り返り「防ぐことができなかった根本原因や背後要因を省み日常業務に活かして欲しい」と、一人一人の行動姿勢が体現化されることを求めた。さらに、福島県出身の野口英世の名言「過去を変えることはできない。人生で変えることができるのは自分と未来だけ」をあげ、「過去から学び、心一つにして福島の復興、福島の未来のために、それぞれの持ち場で全力を尽くしてもらいたい」と訴えかけた。続いて福島復興本社から、大倉誠代表が訓示に立ち、「福島への責任に立ち向かうことは会社の経営方針」と強調。3月末で現職を退く同氏は、発災後の避難住民の方々への支援活動を振り返りながら、信頼失墜の厳しさを改めて認識した上で、「今から5年先か、10年先か、廃炉を成し遂げたときか、『東京電力は責任に向き合い続けた』と言われる日がきっと来る。3月11日の振り返りを新しい力に」と、社員らの今後の活躍に期待を寄せた。東京電力の取組に対し、電気事業連合会の池辺和弘会長は同日発表のコメントの中で、「安全確保を最優先とした廃炉や、生活環境の再生、産業基盤・雇用機会の創出といった取組を、引き続き全力で支援していきたい」としている。また、原子力規制委員会では、更田豊志委員長が、発災10年の節目に際し同委発足時の「初心を忘れぬよう」として所感を表明(=写真下)。更田委員長は、まず、原子力行政組織における推進と規制との分離を巡り議論となったいわゆる「規制の虜」(規制当局が被規制産業である事業者の利益に傾注する〈国会事故調報告書〉)の再来を危惧。さらに、「世界最高水準」と呼ばれる新規制基準においても「継続的改善を怠ることがあってはならない」と、慢心に陥ることを戒めた上で、改めて「新たな安全神話を生まないよう十分注意していく」との決意を述べた。その上で、原子力規制庁や事業者に対して、現在進めている審査・検査のガイドライン整備などが思考停止をもたらすことを懸念し、「安全を求める戦いは想定外を減らす戦いであって、新たに考え続けることが常に不可欠。時には白紙に戻って考える『ちゃぶ台返し』も必要」と警鐘を鳴らした。〈動画は こちら〉※写真は、いずれもインターネット中継より撮影。
- 11 Mar 2021
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新たな「東日本大震災からの復興の基本方針」が閣議決定
政府は3月9日、2021~25年度の「第2期復興・再生期間」に向け、新たな「東日本大震災からの復興の基本方針」を閣議決定した。原子力災害被災地域については、「福島の復興・再生には中長期的な対応が必要であり、『第2期復興・再生期間』以降も引き続き国が前面に立って取り組む」としている。廃炉・汚染水対策に関し、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いについては、「先送りできない課題であり、政府として責任を持って、風評対策も含め、適切なタイミングで結論を出していく」とした。帰還困難区域の避難指示解除に向けては、区域内の「特定復興再生拠点区域」(市町村の計画に基づき、線量の低下状況を踏まえ5年を目途に居住可能となることを目指す復興拠点)以外における方針検討を加速化していく。また、「福島イノベーション・コースト構想」の推進とともに、浜通り地域の創造的復興の中核拠点として新設される「国際教育研究拠点」の整備にも取り組む。復興推進会議・原子力災害対策本部で発言する菅首相(官邸ホームページより引用)閣議に先立ち行われた復興推進会議と原子力災害対策本部の合同会合で、菅義偉首相は、「地元の方々と移住されてきた方々とが協力して、新しい挑戦を行う熱い思いに触れることができた」などと、6日の福島県訪問を振り返った上で、「福島の復興なくして、東北の復興なし。東北の復興なくして、日本の再生なし」と、改めて強調した。会見を行う梶山経産相(インターネット中継)東日本大震災・福島第一原子力発電所事故から明後日で10年を迎えるのに際し、梶山弘志経済産業相は、閣議後の記者会見で、「燃料デブリの取り出し、帰還困難区域の避難指示解除に向けた取組、自立的・持続的な産業の発展など、さらなる難題を一つずつ解決していかねばならない。被災地の課題に正面から向き合い、福島が復興を成し遂げるその日まで全力を尽くす」との決意を述べた。また、原子力委員会は9日の定例会で、委員長談話を発表。「事故による悲惨な事態を防ぐことができなかったことを真摯に反省するとともに、原子力利用に対する国民の不信・不安が払拭できていないことを念頭に置きつつ、事故から得られた教訓を生かして、原子力安全を最重要課題として取り組んでいく必要がある」としている。
- 09 Mar 2021
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福島県・内堀知事、ふるさとへの帰還が復興・再生の基軸と強調
会見を行う内堀知事(インターネット中継)福島県の内堀雅雄知事は3月8日の記者会見で、東日本大震災から10年を迎えるのに際し、「福島第一原子力発電所事故により避難を余儀なくされていた方々が元の生活を取り戻す環境をつくり、ふるさとへの帰還を望む方々に帰ってもらう」という根幹の考え方に変わりはないことを改めて述べた。浜通り地域の住民帰還の状況(2020年6月現在、長崎大復興学セミナー・高村教授講演資料より引用)一方、浜通り地域では自治体により住民の帰還率に差異が生じている。内堀知事は、帰還率8割が見込まれる川内村について比較的早いタイミングで「帰村宣言」が発表された経緯をあげながらも、他市町村に関し「5割がなかなか見えてこない」などと、帰還が滞る現状を懸念。これまでに避難指示解除がなされた自治体の状況から、「長い期間避難先での生活になじんできた。子供の就学の兼ね合いなどもあり、これまで以上に時間がかかる」と、今後はより地道に「住民が戻るプロセス」をつくり出していく必要性を述べた上で、「ふるさとに戻ってもらうことが復興・再生の基軸」であることを繰り返し述べた。政府の復興政策委員会は3月1日、2021~25年度までを「第2期復興・創生期間」として、新たな復興の基本方針案を提示したが、内堀知事は、次のステージにおける重要施策として、(1)移住・定住政策を進める、(2)新しい産業を創出し雇用の確保にしっかり取り組んでいく――ことを強調。今後の産業創生に向け、双葉町の工業団地や大熊町のいちご栽培などを例に、他地域から進出した人たちとの連携にも期待を寄せた。
- 08 Mar 2021
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消費者庁、食品中の放射性物質に関しオンライン意見交換会
消費者庁はこのほど食品中の放射性物質に関する意見交換会を開催。食品に関するリスクコミュニケーションの一環として、消費者庁が食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省と連携し全国主要都市で行ってきたもので、今回は感染症拡大防止に鑑み、ウェブサイトで収録動画を公開し、一般からの質問・意見を受け付ける格好となっている(質問・意見の受付は3月7日まで、収録動画の公開は3月31日までを予定)。〈動画および質問・意見の応募は こちら〉意見交換会ではまず、放射性物質の基礎知識、食品中の放射性物質に係る対策と現状について説明。厚労省と農水省によると、福島第一原子力発電所事故後17都県を中心とする地方自治体で行われてきた食品中の放射性物質に関する検査で、2019年度に基準値(100ベクレル/kg)を超えたものは、栽培・飼養管理が可能な田畑・果樹園の農産物(山菜類を除く)・畜肉と海産魚介類についてはゼロとなっている。一方、消費者庁が2012年度より実施している風評被害に関する消費者意識実態調査の結果で、2020年度は、放射性物質を理由に福島県産品の購入をためらう人の割合はこれまでで最小となった。また、買物をする際に食品の産地を「気にする」または「どちらかといえば気にする」と回答した人のうち、「放射性物質の含まれていない食品を買いたいから」と回答した人の割合は減少傾向にあるものの、前年と同程度の14.1%だった。続くパネルディスカッションでは、フリージャーナリストの葛西賀子氏(コーディネーター)が、こうした根強く残る被災地産食品を忌避する傾向について問題提起。これに対し、消費者の立場から、コープデリ生活協同組合連合会サービス管理部長の篠崎清美氏は、「避けるというよりは、漠然とした不安があるのでは」として、行政機関などによるわかりやすい情報発信を改めて求めるとともに、「生産者と消費者の相互理解が安心して食べることにつながっていくのでは」とも指摘。いわき市で農業を営むファーム白石代表の白石長利氏は、自身を「農家と消費者を結ぶ『畑の仲人』」と称し、「安心・安全はもとよりいかに美味しいものを作るか。生の福島の声を野菜と一緒に届けていきたい」と、生産者としての使命感を強調。流通事業者の立場から、「うまいもんドットコム」などの食品通販サイトを運営する(株)食文化取締役の井上真一氏は、昨今のステイホームの流れにより食品通販の利用者が増えつつあるとする一方、家庭での食事に加工品が多くなりがちなことを懸念し、「食材そのものの魅力を発信したい」と、販路拡大に意欲を燃やす。ディスカッションの結びで、産業医科大学産業保健学部長の欅田尚樹氏は、「この1年間はコロナという新しいものに対する不安が続いてきたが、おうち時間の充実など、色々な工夫がなされてきた」とした上で、福島第一原子力発電所事故後の食品安全についても同様に、前例のない困難に対し検査体制の構築や生産段階での管理など、様々な取組があったことを忘れぬよう訴えている。
- 04 Mar 2021
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福島第一3号機、使用済燃料プールからの燃料取り出し完了
東京電力は2月28日、福島第一原子力発電所3号機の使用済燃料プールからの燃料取り出し作業が終了したと発表した(動画)。福島第一廃止措置に向けた中長期ロードマップで目標とする「2020年度内の取り出し完了」を達成。使用済燃料プール内の燃料取り出し完了は2014年12月の4号機に続くもの。同社では、続く1、2号機での燃料取り出し作業に向けて、「安全最優先で廃炉作業を着実に進めていく」としている。梶山弘志経済産業相は3月2日の閣議後記者会見で、「燃料デブリが残るプラントで使用済燃料の取り出しが完了したのは初めてのことであり、長期にわたる廃炉作業において重要な一歩」と述べた。3号機使用済燃料取り出しのイメージ(東京電力発表資料より引用)3号機の使用済燃料プールには、事故発生時、使用済燃料514体、新燃料52体が保管されていた。4号機に続く燃料取り出しに向けて、2017年度に燃料取り出し用カバー(全ドーム屋根)および燃料取扱機・クレーンの設置工事を完了。燃料取り出し開始は、当初「2018年度中頃」が目標とされていたが、燃料取扱機・クレーンの試運転で複数の不具合が連続して発生し2019年4月に延ばされた。2020年11~12月にはクレーンモーターのトラブルによる作業中断もあったが、燃料取り出しは12月24日時点で441体にまで達した。2020年度からは重量物落下によりハンドル部分に変形が生じた燃料への対応に向け、つかみ具の製作やつり上げ試験に入り、2021年2月3日よりこれら燃料の取り出しも開始。同28日に使用済燃料プール内の最後の6体を輸送容器から共用プール燃料ラックへ取り出す作業が終了した。続く2号機の燃料取り出し開始は2024~26年度が目標とされており、現在、燃料取扱設備の設計が進められている。
- 02 Mar 2021
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新井理事長、福島第一事故から10年を前に所感
原産協会の新井史朗理事長は2月26日、月例のプレスブリーフィングを行い、同日発表の理事長メッセージ「福島第一原子力発電所事故から10年を迎えるにあたって」を配布し説明(=写真)。改めて被災者の方々への見舞いの言葉とともに、復興・再生に向け尽力する多くの方々への敬意・謝意を述べた。事故発生から10年を迎えるのを間近に、復興が着実に進展し生活環境の整備や産業の再生などの取組が期待される「ふくしまの今」を伝える情報発信サイトを紹介。原子力産業界として、「福島第一原子力発電所事故の反省と教訓をしっかりと受け止め、二度とこのような事故を起こさないとの固い誓いのもと、たゆまぬ安全性向上に取り組んでいく」とした。また、昨夏東京電力より現職に就いた新井理事長は、福島第一原子力発電所に配属された新入社員当時を振り返りながら、「私を育ててくれた場所、思い出がたくさん詰まった場所」と思いをはせたほか、発災後、富岡町における被災住宅の家財整理など、復旧支援活動に係わった経験に触れ、「住民の方々の生活が事故によって奪われたことに対し誠に申し訳ない」と、深く陳謝。福島第一原子力発電所の廃炉に向けて「現地の社員たちが最後までやり遂げてくれると信じている」とした上で、「1日も早い福島の復興を願ってやまない」と述べた。将来福島第一原子力発電所事故を知らない世代が原子力産業界に入ってくる、「事故の風化」への懸念について問われたのに対し、新井理事長は、会員企業・団体を対象とした現地見学会などの取組を例に、「まず現場を見てもらい肌で感じてもらう」重要性を強調。事故を踏まえた安全性向上の取組に関しては、「一般の人たちにわかりやすく広報していく必要がある」などと述べた。また、2050年カーボンニュートラルを見据えたエネルギー政策の議論については、「まず再稼働プラントの基数が増えていくこと」と、既存炉を徹底活用する必要性を強調。経済団体から新増設やリプレースを求める声が出ていることに対しては、「60年運転まで考えてもやはり足りなくなる」などと、首肯する見方を示した。
- 01 Mar 2021
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電事連会長、福島県沖地震による対応状況を説明
電気事業連合会の池辺和弘会長は2月19日の定例記者会見で、13日23時過ぎに発生した福島県沖を震源とする大地震への対応状況を説明した。東京電力エリアで最大約86万戸、東北電力エリアで最大約9万戸発生した停電は翌14日午前9時までにすべて復旧。揺れの大きかった地域の原子力発電所においても、大きな影響はなく、福島第一原子力発電所では、原子炉注水設備や使用済燃料プール冷却設備など、主要設備に異常がないことが確認されたとしている。火力発電所では、地震の影響で複数のプラントが停止したものの、被害の軽微なプラントから順次運転を再開しており、電力供給に大きな影響はない状況だ。〈電事連発表資料は こちら〉なお、福島第一原子力発電所における今回の地震に伴う影響に関し、東京電力は22日の原子力規制委員会の検討会で説明。発災後の現場パトロールの状況を整理し、19日までに1、3号機の原子炉格納容器の水位に低下傾向があることが確認されたが、原子炉圧力容器底部温度や敷地境界モニタリングポストに有意な変動はみられず、外部への影響はないものとしている。ベース供給力不足のイメージ(電事連発表資料より引用)また、電事連は会見で今冬の需給状況に関し、「数年に一度レベル」の非常に強い寒波到来に伴い、12月下旬から1月上旬にかけて電力需給のひっ迫が生じたが、電力各社では燃料の追加調達や日頃稼働していない高経年火力を含めた発電所をフル稼働させるなど、供給力の確保に全力を尽くすとともに、需給ひっ迫エリアへの広域的な電力融通も図り安定供給が確保されたとしている。1月下旬以降は、気温が平年を上回る日も多くなり電力需要は落ち着きを見せ、発電用LNGについても各社とも安定供給に必要な水準にまで回復。電力供給面では、関西電力大飯4号機(関西エリア供給力の4%に相当)が1月17日に発電を再開した。電事連は2月17日の総合資源エネルギー調査会会合で、今般の需給ひっ迫対応における課題として、(1)リスクを考慮した需給電力量(kWh)想定と評価の不足、(2)ベース供給力の不足、(3)全国大で燃料不足が発生している状況の把握遅れ(4)需給電力量不足に対するエリア間で融通調整に時間を要したこと、(5)節電協力のお願いの実施検討・調整に時間を要したこと――をあげている。
- 22 Feb 2021
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10年先の未来へ向けて、10年前を振り返る
早いもので、東日本大震災および福島第一原子力発電所事故からもうすぐ10年という月日が経とうとしています。今世の中は新型コロナ一色に明け暮れ、10年も前の災害など回顧する余裕はない、という方も多いかもしれません。しかし目前の危機対応に視野が狭くなってしまう今だからこそ、一旦顔を上げてこの10年間の復興の軌跡を見つめなおすことも大切なのではないでしょうか。復興のエネルギー「今がどん底だから、向く方向は上しかないよね」私が最初に相馬市を訪れた2012年頃の被災地では、しばしばそんな言葉を聞きました。空元気、やせ我慢、と自分たちを笑いつつも前に進むその姿は、開き直った明るさとも言える独特のエネルギーを放っていたと思います。興味深いのは、そのようなエネルギーを持つことと、性別、年齢、職業などの背景には全く関係がなかったことです。ごみを拾う、放射能を測る、ご飯を作る、編み物をする、しめ縄を編む…多くの活動は斬新でも高度でもなく、自分の手が届く範囲でできる、些細な活動です。しかしそれは、多くの人が忘れかけていた日常を取り戻すための大切な第一歩であったと思います。復興が始まる場所大災害の後、本当に困っている多くの方の姿は、ニュースやメディアの中にはありません。災害の後には極端な体験をした少数の人々、声が大きい人、地位の高い人か専門家のみが報道されがちだからです。被災地で苦しむ多くの方は、極端な不幸もなく、かといって幸せというには遠く、単純な枠にはめられない茫漠とした「非・幸福」を抱えながらも華々しい「復興事業」からとり残されてしまった人々でした。この「物言えぬ多数派」が日常を取り戻すために何ができるのか。今振り返れば、それを模索することこそが復興の始まりだったように思います。重要なことは、最初に動き出すことのできた方は、誰よりも早くご自身の心の復興も遂げてきた、という点です。それはおそらく、復興という活動が単なる他者への貢献ではなく、「人は誰でも自分の手でできることがある」という自信を思い出させてくれる大切なプロセスであるからなのではないでしょうか。コロナ禍のチャンス当時、被災地の外では、被災地に貢献できないご自身を責める声も度々聴きました。「被災地に足を運びたいけれど、家庭や仕事があって何もできない」「苦しんでいる人がいるのにこんな普通の日常を送っていてよいのだろうか」九州豪雨災害や熊本・大分地震の際でも、心の中で支援したいと願っていても物理的な距離に阻まれ何もできなかった、という方も多かったと思います。災害時に何かをさせてもらえる、というのはある意味恵まれた経験と言えるのかもしれません。では、今のコロナ禍はどうでしょうか。国民のほぼ全員が被災した今般のコロナ禍では、度重なる禁止事項の羅列によって社会全体がえも言えぬ暗さに覆われています。でも見方を変えれば、今回の災害は、これまでどこか遠くの「被災地」に居た救うべき人々が、皆さんのすぐ隣にいるということもできるのです。「ソーシャル・ディスタンス」という言葉の下に人とのつながりを絶たれてしまった結果、多くの方がすぐそばにある「被災地」、すぐそばにいる「被災者」に気づけなくなっているのかもしれません。でも多くの被災地でそうであったように、支援の芽はおそらく全員の手の中にあります。そしてその支援こそが、私たち自身を復興へと導いてくれる原動力なのではないでしょうか。東日本大震災の10年の歴史は、私たちにそのことを思い出させてくれています。新たなリンゴの苗をもとめてもちろん東日本大震災とコロナ禍は規模や種類の面で全く異なります。けれども、何かをするという支援、させてあげるという支援が明日へとつながることに変わりない、と私は思っています。「たとえ明日世界が滅びようとも、私は今日リンゴの苗を植える」10年前、津波に襲われた後の被災地ではこの言葉が多くの方の口に上りました。10年が経ち、新たな災害に直面している私たちの多くは、今まだコロナの被災地に植えるべきリンゴの苗を見つけられずにいます。これから10年先の未来へ向け、何を植え、どのように踏み出せばよいのか。10年前の震災から現在へと伸びた軌跡をたどることが、その先にある10年を生み出すための一つの糧になればいいな、と思います。
- 17 Feb 2021
- COLUMN
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福島県産食材で料理研究家・寺田真二郎氏がオンラインクッキング
福島県産食材の魅力を発信する料理ワークショップが1月25日、福島県郡山市内の会場を拠点とし、神奈川、愛知、京都の料理教室(ABCクッキングスタジオ)を結ぶオンライン形式で開催された。復興庁主催(農林水産省・福島県協力)による「作って、食べて、投稿しよう!ヘルシー美食講座」と題する今回のワークショップは、料理研究家の寺田真二郎氏を講師に迎え、「常磐もの」として質の高さに定評があるヒラメをメイン食材とした創作料理の調理方法を紹介するとともに、作った料理の魅力がSNSを通じて拡散されるようインスタグラマーによる撮影講座も実施。「常磐もの」のヒラメを使ったフルーティカルパッチョ(上)とトマトリゾット寺田氏は「トマトリゾット」と「フルーティカルパッチョ」の2種類の創作料理を披露。「トマトリゾット」には三浦大根(神奈川)、「フルーティカルパッチョ」には蒲郡みかん(愛知)と九条ねぎ(京都)と、各会場のご当地食材も使用。カルパッチョでは、ヒラメの他、福島県産食材として、「料理に華やかな印象を与えシャキシャキ感がある」と絶賛するフリルレタスを添え、九条ねぎとザーサイを加えたソースをかけるなど、食感や彩りにも工夫を凝らした。リゾットには福島県産米「天のつぶ」を使用。 ワークショップではSNSによる拡散を目指し「インスタ映え」する料理撮影のコツも披露(神奈川会場で実演するモデルの中村江莉香さん)各教室の模様をモニターで見つつ寺田氏は、食材の持ち味や調理のポイントを説明しながら実演。料理が出来上がった後は、「インスタ映え」も意識し、盛り付けやランチョンマットにもこだわりを見せた。ワークショップに招かれたスマート農業でフリルレタスを生産する(株)KiMiDoRi(川内村)の兼子まや氏は、カルパッチョを試食し「味もよく見た目もおしゃれ」と、続いてリゾットも口にし「ヒラメのふわっとした食感。大根が入っていてダイエットにもいいのでは」と、顔をほころばせた。今回、感染症対策を徹底した上で会場を4か所に限定しライブ中継を併用した開催となったが、京都会場の参加者は、「福島には行ったことがない。他の地域とつながりができたことも意味があった」と話している。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
- 29 Jan 2021
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東京電力「原子力改革監視委員会」、事故を踏まえた原子力安全改革の取組を評価
東京電力の外部有識者による諮問機関「原子力改革監視委員会」(委員長=デール・クライン氏〈元米国原子力規制委員会委員長〉)は1月27日に会合を開き、同社が2013年より取り組んでいる「原子力安全改革プラン」について総括的にレビューした答申案を取りまとめた。同プランに基づき東京電力は、「安全意識の向上」、「技術力の向上」、「対話力の向上」を柱に継続的改善に取り組んでおり、進捗状況を四半期ごとに公表している。答申案では、「安全最優先・ガバナンス強化・リスク管理の強化」、「学ぶ姿勢・技術力の強化」、「緊急時対応力の強化」、「リスクコミュニケーションの強化」、「内部監視機能の向上」、「被ばく線量の低減」の個別分野ごとに所見を述べた上で、「8年以上にわたり原子力安全改革に取り組み、組織が正しい方向に向かって着実に進捗している」と評価。学ぶ姿勢の浸透や技術力の維持に関しては、「運転を経験していない職員が増える中、実操作の経験を付与しながら訓練・研修を行い、着実な運転員の力量向上に努めている」としている。リスクコミュニケーションについては、「職員自らが地域の声に触れて感度を磨き業務に反映させる」ことを期待。柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向けて、安全監視機能の重要性も述べ、専門性を有する人材の強化なども提言している。会合終了後、記者会見(オンライン)に臨んだクライン委員長は、まず、2020年8月に逝去したバーバラ・ジャッジ同委副委員長への追悼の意を述べ、今後の委員会体制に関し、ジャッジ氏が取り組んできたコミュニケーション・安全文化に通じた女性の専門家の人選を進めるとともに、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働を見据え、技術系の適任者を検討している考えを明らかにした。また、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関しては、「安全の問題よりも感情の問題がある」として、政府、東京電力、アカデミアなどが安全性について丁寧に説明を行い人々の不安が払拭されるよう努めるべきと強調。福島第一原子力発電所事故から間もなく10年を迎える現状下、答申案は「事故を経験していない社員が増える」などと指摘。これに関し、クライン委員長は、「東京電力は事故の当事者として事故から学んだ教訓を広く発信し、原子力の安全性向上に貢献していくことが重要」と、事故の反省と教訓を忘れてはならないことを改めて述べた。
- 28 Jan 2021
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規制委、福島第一事故に係る調査・分析で中間取りまとめ案
原子力規制委員会は1月27日の定例会で、同委の福島第一原子力発電所事故調査に係る検討会による中間取りまとめ案について報告を受けた。取りまとめ案は今後、パブリックコメントを経て、3月上旬にも正式決定となる運び。同検討会は2019年、廃炉作業の進捗に伴う原子炉建屋内へのアクセス性向上、新たな知見・情報の蓄積を踏まえ、約5年ぶりに再開。原子炉格納容器からの放射性物質の放出、原子炉冷却に係る機器の動作状況など、事故のプロセス解明に向け調査・分析を進めてきた。中間取りまとめ案では、事故発生時の2号機のベント(格納容器内の放射性物質を含む気体を外部環境に放出し内部の圧力を降下させる措置)について、原子炉格納容器から排気筒に通じるベントライン中に設置されたラプチャーディスク(外部環境との最終バウンダリ)が破裂しておらず、ラプチャーディスク付近の線量率がベントに2回成功した3号機より3~4桁低かったことから、「一度も成功しなかった」と判断。一方、ベントが行われた1、3号機についてはベントガスの逆流を結論付け、1号機では「水素が原子炉建屋に逆流した可能性がある」とみて、水素爆発との関連性を今後の調査検討課題の一つとしてあげた。また、1~3号機原子炉格納容器上部のシールドプラグ(直径約10m・厚さ60cmの鉄筋コンクリートを3枚重ねた蓋)下方の放射能汚染レベルが高いことを確認したとして、「安全面と廃炉作業面において非常に重要な意味を持つ」などと指摘。特に、2、3号機については、シールドプラグの上から1層目と2層目の間に大量のセシウム137(20~40ペタベクレル)が存在すると結論付けた。3号機水素爆発に係る「多段階事象説」のイメージ(原子力規制委員会発表資料より引用)福島中央テレビ他の技術協力を得て行われた水素爆発の詳細分析で、3号機で発生したものについては、超解像処理(毎秒60コマ)や地震計記録などから、複数の爆発・燃焼が積み重なった「多段階事象」との見方を示した。更田豊志委員長は、定例会終了後の記者会見で、今回の調査・分析を通じて確認されたシールドプラグの汚染状況について、「廃炉戦略に与えるインパクトは非常に大きい。遮蔽の施し方など、簡単ではないだろう」と述べた。
- 27 Jan 2021
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菅首相が施政方針演説、2050年カーボンニュートラル実現に向けた施策など
菅義偉首相は1月18日、通常国会の開会に際し施政方針演説を行った。菅首相はまず、新型コロナウイルス感染症の早急な終息に向けて、様々なソーシャルワーカーらに対する謝意を述べるとともに、自身も戦いの最前線に立ち、自治体関係者とも連携しながら「難局を乗り越えていく決意」を強調。3月に東日本大震災発生から10年を迎えることに関しては、改めて犠牲となった方々への冥福を祈り被災したすべての方々への見舞いの言葉を述べた上で、心のケアも含めたきめ細やかな取組を継続するとともに、福島については、2023年春の一部開所を見込む浜通り地域の復興・再生を目指した「国際教育研究拠点」などを通じ、「復興の総仕上げに向け全力を尽くす」と述べた。また、10月の所信表明演説で掲げた2050年カーボンニュートラルについては、「環境対策は経済の制約ではなく、世界経済を大きく変革し、投資を促し、生産性を向上させ、産業構造の大転換、力強い成長を生みだすカギとなるもの」と強調し、今後所要の予算措置を図っていくことを明言。さらに、次世代太陽光発電、低コストの蓄電池、カーボンリサイクル他、野心的なイノベーションに挑戦する企業を支援し最先端技術の開発・実用化を加速するとともに、水素や洋上風力発電などの再生可能エネルギーの拡充、送電網の増強、安全最優先での原子力政策を進めることで、「安定的なエネルギー供給を確立する」とした。この他、科学技術政策の関連で、12月の小惑星探査機「はやぶさ2」のカプセルの地球帰還を称賛した上で、「未来を担う若手科学者の育成」に意欲を示し、昨今の都市部から地方への人の流れを踏まえ、ポストコロナを見据えたテレワーク環境の整備や地方移住への後押しなど、地方創生や働き方改革の取組にも言及。米国バイデン政権の発足に関しては、「日米同盟はわが国外交・安全保障の基軸」などと述べ、バイデン次期大統領と早い時期に会い日米の結束強化を確認し、新型コロナ対策や気候変動などの共通課題に取り組んでいくとした。今夏の東京オリンピックについては、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として、東日本大震災からの復興を世界に発信する機会とすべく、感染対策を万全なものとして、世界中に希望と勇気を届ける大会」となるよう準備を進めていくと述べた。
- 18 Jan 2021
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学術会議他、東日本大震災発生10年で40学会が参集しシンポ開催
東日本大震災発生から間もなく10年を迎えるのを前に、関連学会が一堂に会しこれまでの活動を振り返り今後の取組について考えるシンポジウムが1月14日に開催された。日本学術会議と防災学術連携体(防災減災・災害復興に関わる学会ネットワーク)の主催によるもの。感染症拡大防止のためオンラインでの開催となったが、アクセス数は約40学会による発表を合計し5,000件を超え、今回のシンポジウムを通じ、「分野横断の連携」が災害への備えや発災後の復興にとって重要なことなどが示された。〈資料等は こちら〉日本原子力学会の中島会長、被災地支援に向け展開してきた「福島特別プロジェクト」の活動を紹介福島第一原子力発電所事故の関連では、日本原子力学会が事故調査や廃炉に関わる専門的検討、被災地住民への支援など、これまでの取組について発表。事故発生から丁度10年となる3月11、12日には活動成果を振り返るとともに若手を交え原子力の未来像について議論するシンポジウムを行うことが紹介された。学術的連携に関しては、2016年に発足した36の学協会が参加する連絡会「ANFURD」をあげた上で、「社会科学的視点が要求される事柄もこの10年間で顕在化してきた」と、他学会との接点の拡大・緊密化を今後の課題として示唆した。日本森林学会の三浦氏(森林研究・整備機構)、次の10年に向け「記録し伝えること、対話を深めること、備えること」を強調日本地震工学会は、原子力学会との協力により発刊した技術レポート「原子力発電所の地震安全の原則」(2019年)を紹介し「外的事象については他分野の学会とも連携すべき」と指摘。日本森林学会は、森林内の放射性セシウム分布・動態に関するデータや木材学会との協力による産業影響調査について述べ「分野を越えた対話を」と、次の10年に向けた課題を提示するなど、それぞれ分野横断の重要性を強調した。災害のアーカイブ化・伝承に関しては、日本災害情報学会が2019年に双葉町に開設された「東日本大震災・原子力災害伝承館」について発表。チェルノブイリ博物館やネバダ核実験博物館など、海外のアーカイブ施設とも対比しながら、災害・復興の検証やコミュニケーション手法に関わる課題をあげ、「『何を伝え、何を学んでもらうか』を今後十分検討しなければ原子力災害の伝承は難しい」と述べた。原子力災害からの復興に関しては、「浜通り地域の生産動向で建設業の増加は復旧活動によるもの。これからが課題」(日本地域経済学会)、「長期にわたる災害の特質を踏まえた法制度や、原子力防災省のような行政組織の創設が必要」(日本建築学会)といった発言があった。シンポジウムでは、災害廃棄物対策や発災時の保健医療・公衆衛生活動に関わる課題、阪神・淡路大震災との対比の他、昨今の情勢に鑑み、自然災害の頻発・激甚化、新型コロナウイルス感染症による影響を危惧する声もあがった。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
- 15 Jan 2021
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新潟県委員会、福島第一原子力発電所事故による避難生活で検証結果取りまとめ
新潟県の有識者委員会は1月12日、福島第一原子力発電所事故が及ぼした避難生活に関する検証結果を取りまとめ、花角英世知事に報告を行った。県は、東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関わる議論開始の前提として、福島第一原子力発電所事故の「3つの検証」(事故原因、健康と生活への影響、安全な避難方法)を進めており、今回、2020年10月の「事故原因」に続き、「健康と生活への影響」に関する検証結果がまとまった格好だ。同委員会では2017年より、新潟県内居住の避難者へのアンケートやテーマ別調査から得られたデータをもとに、支援団体の声、健康への不安、家族形態別にみた避難生活の課題など、多角的視点から検証を行ってきた。委員会座長として検証結果の取りまとめに当たった新潟大学人文学部教授の松井克浩氏は、報告書序文の中で、「事故による影響が極めて深刻で、長期にわたって続き、回復が難しい」ことがわかったとした上で、「避難者個々の状況も多様化しており、それぞれのケースに応じたきめ細やかな支援や調査を今後とも長期的に続けていく必要がある」と、述べている。報告書によると、福島第一原子力発電所事故による新潟県への避難者数は、2012年5月の6,440人が2020年9月には2,209人となったものの、避難生活の長期化とともに、単身・二人世帯の増加(震災前:32.4%、2017年:50.2%)、3世代同居世帯の減少など、避難の過程で家族が分散した状況がみられている。また、これまで多くの大規模自然災害に見舞われ復興に取り組んできた新潟県だが、原子力災害の生活再建に関わる特徴を、(1)事故の全体像がなかなか明らかにならず線量に対する認識の差を背景に異なるタイミングで広域避難が発生、(2)放射能汚染被害の捉え方に個人差が大きく帰還の有無にも差が出る傾向、(3)東京電力からの賠償金が支援の中心――などと対比・分析。足かけ4年にわたる検証作業で議論された調査データを整理し、報告書では結びに、「現時点で言えること」として、7項目の結論を述べている。例えば、「震災前の社会生活や人間関係などを取り戻すことは容易ではない」といった仕事や地域コミュニティの回復が困難な状況や、「健康被害への不安がリスク対処行動をもたらし生活の質を低下させている」といった放射線リテラシーにつながる課題も指摘。また、広域避難によって生じる自治体間の支援策の違いや、発災から間もなく10年を迎える現在において、「避難者が抱える問題や困難が見えにくくなっている」といった懸念を述べ、「避難者ごとの課題が個別化・複雑化する中で、長期的な支援が必要」などと提言している。
- 13 Jan 2021
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消費者庁、放射性物質と食品安全について親子で学ぶコンテンツ公開
消費者庁は12月21日、主に小学生とその保護者を対象に、親子で学べるウェブコンテンツ「知ろう!考えよう!食べものと放射性物質」を公開した。食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省との協力により制作されたもの。動画とクイズで食品中の放射性物質について説明している。同コンテンツでは、アニメキャラクターが動画の中で、福島を訪れ、「福島第一原子力発電所事故により、食べものの中の放射性物質を気にする人がいる」と問題提起。「放射性物質」、「放射能」、「放射線」の意味を電球の光に例えて説明した上で、霧箱実験を見せる。食品中の放射性物質に関して、福島のリンゴ農園へのインタビューを通じ、生産者の努力で安全な食品が消費者に届けられていることを述べるという内容。霧箱は家庭でも用意できる材料・器具で作り方を紹介。放射線が身の回りにあることを知ってもらい、「放射線は『ある、ない』ではなく、安全かどうかを判断するには『多い、少ない』という量で考えることが重要」と教えている。
- 23 Dec 2020
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「福島イノベーション・コースト構想」でシンポ、浜通りの創生に向け各界の取組状況が発表
浜通り地域の新産業創出を目指す「福島イノベーション・コースト構想」の将来について考えるシンポジウムが12月19日、双葉町産業交流センターで開催され、同構想の実現に向けて活躍する企業、地元学生たちの登壇のもと、成果発表や意見交換が行われた。挨拶に立つ加藤官房長官シンポジウムには、加藤勝信内閣官房長官、内堀雅雄福島県知事、伊澤史朗双葉町長らが訪れ、挨拶を述べた。加藤官房長官は、「福島復興は内閣の最重要課題」との認識を改めて示した上で、福島ロボットテストフィールド、福島水素エネルギー研究フィールド、東日本大震災・原子力災害伝承館の開所や、2023年春の一部開所を目指す「国際教育研究拠点」計画の進展など、「福島イノベーション・コースト構想」を巡る1年間の動きに触れ、同構想が浜通り地域の原動力となるよう期待。内堀知事は、同構想で得られた成果の国内外発信に向け「来年は東京五輪の開催により世界から注目される絶好の機会」と、2022年春の帰還開始を目指す双葉町の伊澤町長は、「20年後の双葉町を担っていく生徒たちに期待。新たな未来を考えていく地」と、それぞれ意気込みを見せた。当日は、双葉中学校の生徒も出席し、伝統芸能の「山田のじゃんがら念仏踊り」や「せんだん太鼓」の練習風景を紹介した。「福島イノベーション・コースト構想」に関わる各界の取組については、阪本未来子氏(JR東日本常務執行役員、基調講演)、徳田辰吾氏((株)ネクサスファームおおくま 工場長)、金岡博士氏((株)人機一体社長)、秋光信佳氏(東京大学アイソトープ総合センター教授)が発表。阪本氏阪本氏は、2020年3月に全線復旧した常磐線に関し、「常磐炭田の石炭輸送が日本のエネルギー政策・経済を支えてきた」役割を経て、現在ではビジネス・観光利用に供される重要路線として発展してきた経緯を紹介。動物侵入防止柵や避難通路の整備など、震災後の常磐線復旧工事について触れたほか、2019年に開設されたJヴィレッジ駅(楢葉町)に関し、(1)平成に開業した最後の駅、(2)日本初の「ヴ」がつく駅(3)JR東日本で初のアルファベットがつく駅――と、駅名のうんちくを語った。「観光は『光を観る』と書く」と、今後の観光振興に期待を寄せる同氏は、震災発生から10年の節目に際し、交流人口の拡大を目指す「巡るたび、出会う旅。東北」をキャッチコピーとした東北6県観光キャンペーンの長期開催計画を披露。徳田氏大熊町でイチゴの周年栽培を行う徳田氏は、「農業分野は閉鎖的で交流が足りない。個人で行う農業と組織で行う農業とではやり方が全然違う」として、他業界からの人材の積極採用を図り、環境制御プログラムなど、様々な技術を開発・検証しながら収穫量を伸ばしてきた経緯を紹介。「多くの観光客が訪れ、『大熊町がイチゴの町になった』と言われるようになれば」と、期待を述べた。金岡氏福島ロボットテストフィールドで人の手足と連動して機能するロボット「人型重機」の開発に取り組む金岡氏は、福島第一原子力発電所事故の経験から、「研究だけでなく社会実装に達することが必要と感じた」と、先端ロボット工学技術の課題を述べ、革新的な知的財産を求心力にリソースと産業を集めるしくみ「人機プラットフォーム」を福島に導入したいと強調。秋光氏高等教育の立場から秋光氏は、保育園・小学校の線量調査など、発災直後から地道に取り組んできた被災地支援活動の経験を踏まえた「復興知学」講義を紹介。講義後の学生アンケートで、「普通の県として扱うべき」といった福島に対する対等なパートナーとしての見方が印象に残ったという。「浜通りは大きなポテンシャルを秘めている」と、同氏は強調し、阿武隈変成帯に着目したミュージアムプロジェクトなど、地域と共同した今後の活動に意気込みを示した。原町高の生徒たちこの他、原町高校からは福島ロボットテストフィールドでの水中ドローン訓練、平工業高校からは土木工学科による中学校への出前授業など、地元5校の高校生たちが浜通り地域に根差した実習経験を披露した。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
- 21 Dec 2020
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東北経済産業局が今年の10大ニュースを発表、震災復興関連の動きが多数
経済産業省東北経済産業局はこのほど、2020年の「東北経済・産業の10大ニュース」を発表した。毎年、同局内で候補となる印象的な出来事を募集し、職員の投票により選定を行っているもの。2020年の10大ニュースとして筆頭に上がったのは、「東北各地で新型コロナウイルス感染症拡大の影響深刻。工場の稼働停止や小売店の営業自粛措置、東北の夏祭りやイベントの中止が相次ぐ」だった。他9件の中には、東日本大震災後の産業復興に関するものが多くあがった。「常磐線が9年ぶりに全線運転再開」、「浜通りの産業再生の拠点『福島ロボットテストフィールド』が開所」、「世界最大級の再生可能エネルギー由来の水素製造装置を備えた『福島水素エネルギー研究フィールド』が開所」、「東北から新型車続々。東北地域のものづくりを大きく牽引」など。JR東日本・常磐線は、3月の帰還困難区域の一部解除(富岡町、大熊町、双葉町)に伴い、最後まで残った不通区間「富岡~浪江」が運転を再開。仙台から都内までを直通する特急「ひたち」も運行されるようになった。同じく3月に全面開所した「福島ロボットテストフィールド」(南相馬市、浪江町)には、2018年7月の一部開所から2020年10月末までの約2年間に3万人以上が視察や実験に訪れた。5月には福島第一原子力発電所の使用済燃料プール内調査に向けた水中ロボットの操作訓練も実施。現在、20の企業・団体が入居しドローンや空飛ぶクルマなどの開発に供されており、今後、国内におけるロボットの一大開発拠点として、浜通りの産業再生、福島のロボット関連産業の発展に寄与することが期待される。昨今消費税増税や新型コロナウイルスの影響により自動車販売は低迷気味だが、トヨタ自動車東日本(宮城県大衡村)が東北地域で全量生産する小型SUV車「ヤリスシリーズ」が売上げを伸ばし、地域のものづくり企業の下支えに貢献した。また、復興関連の他、10大ニュースには、「脱炭素化に向けてエネルギー政策に動き」があがった。10月に菅首相が「2050年カーボンニュートラル」を表明し、これを踏まえたエネルギー基本計画見直しの検討も開始。2020年は、東北電力女川原子力発電所2号機について、11月に宮城県知事が国の再稼働方針に理解を表明したほか、六ヶ所再処理工場、MOX燃料加工工場、むつ中間貯蔵施設の安全審査が進展するなど、東北地域に立地する原子力・核燃料サイクル施設に係る動きがあった。
- 15 Dec 2020
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関西学院大、福島避難住民の生活に関し「人間の復興」の視点から調査
関西学院大学の災害復興制度研究所はこのほど、福島第一原子力発電所事故に伴い避難した住民の生活に関する調査結果を発表した。同研究所は、阪神・淡路大震災による学内犠牲者の発生、救援ボランティア活動の経験を踏まえ、震災から10年の節目となる2005年に設立され、「人間の復興」を理念に、人文・社会科学の側面から復興制度に係る研究を行っている。今回の調査は、兵庫県立大学、川崎医療福祉大学、その他NPOの協力で行われたもの。調査は、2020年7~9月、生活再建支援拠点を通じて4,876件の調査票を配布し、福島第一原子力発電所事故発生から10年を迎えるのを前に、仕事や居住環境など、発災以前との生活の変化について尋ねた。回収数は694件(回収率14%)。調査結果によると、回答者の年齢構成は40、50歳代が多く全体の54%を占め、平均は55.8歳。性別は男性40%、女性60%だった。震災当時福島県内に住居があった人が75%を占め、現状の避難指示については、帰還困難区域が14.4%、避難指示解除区域が20.2%、指定なしが60.1%となっている。震災前と昨年との総収入の比較では、300万円を境に、以上が減少、未満が増加しており、収入の低下がみられた。震災前と現在との職業については、農林水産業、会社勤め、自営業、専門職がいずれも減少する一方、臨時雇用・パート・アルバイトが15.9%から21.9%に、専業主婦が8.4%から12.2%に、無職が17.0%から27.2%にそれぞれ増加していた。避難先での近所づきあいについては、「何か困ったときに助け合う親しい人がいる」が51.9%から19.3%に大きく減少。仕事、収入、健康、余暇、住宅、地域環境、教育環境、自然環境、公共施設、文化活動、スポーツ活動、買物、医療、交通、生活全般の計15項目に関する満足度の震災前後の比較では、買物と交通の利便性でわずかに「満足・やや満足」の増加がみられたが、すべての項目で「不満・やや不満」が増加していた。震災前の居住地が帰還困難区域にある人については、87%が住民票を故郷に残したままとしており、避難先地域への愛着度はかなり低くなっている。また、将来福島に戻る意向では、67%が「戻るつもりはない」と回答していた。震災前の居住地に戻っていない理由(複数回答)としては、「空間線量は下がったが山林や草地の汚染されたところが残っていると思うから」が46.1%で最も多く、「現在の居場所で落ち着いているため」が44.8%でこれに次いだほか、廃炉作業への不安、仕事や子供の学校の都合などがあげられた。今回の調査結果では、まとめとして、「帰りたい想いと帰れない状況、様々な要因が複雑に絡み、改めて『人間の復興』を実現する状況には至っていない」と指摘。災害復興制度研究所は合わせて、原子力災害に関し、(1)避難者準市民制度の創設、(2)避難時最低所得補償の創設、(3)避難者援護法の制定と援護基金の創設――を提言した。
- 14 Dec 2020
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福島県、「常磐もの」を首都圏にアピールする若者を描いた動画公開
福島県はこのほど、動画「常磐もののアナゴを東京へ」を県公式チャンネルに公開した。各界で活躍する福島の若者たちの姿を描く動画シリーズの一つで、今回はサーフィンのメッカとして知られるいわき市久之浜で鮮魚店(合同会社はまから)を営む阿部峻久さんが主人公。福島県沖の海は、北からの寒流(親潮)と南からの暖流(黒潮)が交わる日本有数の豊かな漁場とされており、この海域で獲れる魚介類は身が引き締まり味のよい「常磐もの」として市場での評価も高いことから、県では「ふくしま常磐もの」をキーワードに各種プロモーション活動を展開し、認知度向上、販路拡大を図っている。動画では、「常磐もの」の中でヒラメやメヒカリなどと比べ認知度の低いアナゴに着目し、新商品の開発、販売促進に取り組む阿部さんの奮闘ぶりを紹介。阿部さんは、漁港で水揚げされるアナゴの映像に合わせ、「脂がのっている。東京からも卸して欲しいという相談が来る」と、美味しさをアピール。「土用の丑の日のウナギに替わる『アナゴ重』のような商品を目指している」として、10月に都内で行われた福島県産食材の商談会に出展し、「アナゴ蒲焼」などを売り込む様子を来場者の声とともに紹介。商談会で、「常磐もの」を毎週仕入れているという都内の飲食店経営者は、「アナゴももちろん知っている。身厚でプリプリして、煮ても焼いても美味しい」と絶賛。阿部さんは、「100種類以上と魚種は豊富なので、一つ一つの魚を皆様に紹介できれば」と、「常磐もの」の全国展開に意欲を見せている。
- 03 Dec 2020
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福島第一、1号機使用済燃料プールで天井クレーンなどの落下防止対策が完了
東京電力は11月26日、福島第一原子力発電所廃炉作業の進捗状況を発表した。1号機使用済燃料プールからの燃料取り出しに向けては、原子炉建屋内既設の天井クレーンや燃料取扱機の落下を回避するため、これらを下部から支える支保の設置(動画リンクは燃料取扱機に関わる作業の模様)が11月24日に完了した。これにより、今後のガレキ(崩落した屋根など)撤去に際し、変形した天井クレーンや燃料取扱機の落下によるダスト飛散や燃料損傷などのリスクを低減する「ガレキ落下防止・緩和対策」が完了したこととなる。1号機の「ガレキ落下防止・緩和対策」は、2019年12月の燃料取り出しプラン選定を踏まえ、2020年3月より使用済燃料プール上の養生バッグ(エアモルタルを注入しビーチマットのように膨らませる)設置などが進められてきた。今後は、ガレキ撤去に先行し2021年度上期より原子炉建屋を覆う大型カバーの設置工事に着手。2023年度頃までに大型カバーの設置を完了し、ガレキ撤去・除染・遮蔽後、燃料取扱設備を設置した上で燃料取り出しとなる。1号機使用済燃料プールからの燃料取り出し開始は2027~28年度の予定。また、2号機の燃料デブリ取り出しに向けては、原子炉格納容器内部調査および試験的取り出しで用いるアーム型装置の導入のため、X-6ペネ(貫通孔)内堆積物の接触調査、3Dスキャン調査が10月に実施されている。今回の調査では、堆積物が固着しておらず形状が変化することなどを確認しており、これらの成果を踏まえ、今後X-6ペネ内の堆積物除去を検討していく。一方、アーム型装置は現在、英国で開発が進められているが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、モックアップ試験に入れない状況となっている。福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデントの小野明氏は、11月26日の記者会見で、今後の対応について国際廃炉研究開発機構(IRID)とも協力しながら早急に詰めていく考えを示した。
- 27 Nov 2020
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