キーワード:福島
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国立環境研、霞ヶ浦で放射性セシウム濃度の季節変動を調査
国立環境研究所は11月24日、茨城県の霞ヶ浦(西浦)で行った観測から、福島第一原子力発電所事故後、湖水中および魚類の放射性セシウム濃度が季節により変動しながら、徐々に低下していることを明らかにしたと発表した。〈環境研発表資料は こちら〉同研究所の生物・生態系環境研究センター他による共同チームは、事故後5年間にわたり、霞ヶ浦の3か所で毎月の水温や溶存酸素量などの環境測定に加え、季節ごとに表層水(水深2mまで)の採水を行い、湖水中に含まれる溶存態(水中にイオンの形で溶け込んでいる状態)の放射性セシウムの濃度測定を実施。調査の結果、いずれの地点とも、夏の表層水温の上昇と底層(湖底から10cm程度)の溶存酸素濃度の低下が確認されたほか、湖水中の放射性セシウム濃度については、事故から1~2年の間に大きく低下した後、「夏のわずかな上昇、秋から春にかけての低下」という季節変動を繰り返しながら徐々に下降していることがわかった。湖水中の放射性セシウム濃度の変動に関し要因を分析したところ、夏に底層の溶存酸素濃度が低下することに伴い、底泥からの放射性セシウムの溶出が起きていることが示唆された。さらに、共同チームでは、霞ヶ浦において底泥からの溶出により上昇した湖水中の放射性セシウム濃度が魚類に与える影響を合わせて調べるため、ワカサギについて分析。その結果、事故直後から出荷規制値を上回っておらず、1年から1年半後にかけて急激に低下し、以降も徐々に下降していることがわかった。ここでも、湖水と同じく、夏に放射性セシウム濃度がわずかに高くなる季節変動を確認。フナ類でも同様の傾向がみられたことから、底泥から溶出した放射性セシウムが食物網を通じて魚類に取り込まれている可能性を示唆するものとしている。今回の研究成果に関し、共同チームでは、淡水魚類の長期的な放射能影響の解明につながるほか、放射性セシウム濃度の季節変動を考慮することで、より確度の高い水産物の出荷制限対応が可能となるとしている。
- 26 Nov 2020
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福島産オリジナル米「福、笑い」が県内・首都圏で先行販売開始、来秋の本格デビュー前に
福島県がトップブランドとしての流通を目指し開発した高品質オリジナル米「福、笑い」が、11月10日より県内および首都圏で先行販売される。〈取扱い店については こちら を参照〉来秋の本格デビューを前に、消費者や流通業者にPRし、他道県のトップブランド米と比して遜色ない価格での販売につながるよう販路開拓戦略に資する「プレデビュー」となるもの。これまでに市場に出回った福島県オリジナルの米としては、「天のつぶ」、「里山のつぶ」があるが、品質と食味のより優れた新品種の育成を目指し、2018年に県農業総合センターで有望品種が選抜され開発が具体化。2019年に奨励品種として柔らかく粘りのある「福島40号」が採用され、2020年2月には名称が「福、笑い」に決定。「香りが立ち、強い甘みを持ちながら、ふんわり柔らかく炊きあがる」を売りとする新たな福島産オリジナル米の誕生となった。8月にはパッケージデザインも発表された。「福、笑い」の首都圏での先行販売(2kg:1,600円程度、300g:500円程度)は、百貨店、高級品スーパーを始めとする計20店。アンテナショップ「日本橋ふくしま館 MIDETTE」や、インターネット通販でも取り扱う。販売期間は2021年1月11日までを予定。福島県産米の価格は、震災直後、2014年産をピークに全国平均を下回ってきたが価格差は徐々に縮小している。一方、他道県でもこの10年程、「ゆめぴりか」(北海道)、「つや姫」(山形)など、高品質米の開発・市場参入が顕著となっており、県では今後、来秋の「福、笑い」本格デビューに向けて、飲食店とのタイアップなども通じPRに努めていくこととしている。
- 06 Nov 2020
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原産協会女性シンポ、長崎大・折田氏が福島での保健活動を紹介
原産協会は10月28日、会員組織の主に女性を対象とした2020年度「女性シンポジウム」を開催した。今回は、オンラインシステムによる「Webセミナー」となり、約100名が参加。講師には、長崎大学原爆後遺症研究所助教の折田真紀子氏を招き、放射線と健康影響の基礎知識を始め、福島第一原子力発電所事故後、住民の方々に対し健康管理と放射線に関する正しい理解の普及に取り組んできた経験を聴き、質疑応答を行った。折田氏は、長崎大学が包括的連携協定締結のもと「復興推進拠点」を開設し復興支援を行ってきた川内村と富岡町での活動を主に紹介。2012年1月に福島県下で初めて「帰村宣言」を行った川内村だが、空間線量率の低下、学校の再開やインフラ整備が進む一方で、特に若年層での帰還が進まぬ現状を、2012年と2017年の年代別住民帰還率から示し、「川内郷 かえるマラソン大会」の開催、ワイン用ぶどう栽培、企業誘致など、帰還を促進する様々な取組が進められているとした。また、富岡町については、車座集会を通じた住民の方々との交流を紹介。食品中の放射性物質に関する質問の他、将来への不安感・疎外感の声もあることから、「行政と連携して取り組む必要があるのでは」などと述べた。自身が取り組む保健活動に関し同氏は、事故直後に福島県内で行われた勉強会で「娘が福島で出産できるのか」、「放射線はうつるのか」との質問があったことを振り返り、「放射線の健康リスクに関する知識や情報が住民の方々に適切に伝わらず、社会的な混乱が引き起こされた」として、リスクコミュニケーション・対話活動の重要性を強調。「客観的評価に基づいたリスクコミュニケーションが大事」とする取組姿勢の例として、富岡町の70歳男性が自身で行った個人積算線量の詳細な記録と、これを活かした今後の帰還支援の可能性をあげるなどした。参加者からは、放射線に関するわかりやすい説明の仕方、食品中の放射性物質基準値のとらえ方、空間線量率と帰還意思の関係、信頼関係の構築などに関し質問があった。
- 29 Oct 2020
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筑波大他、福島の環境回復をチェルノブイリと比較し分析
筑波大学、福島大学、日本原子力研究開発機構による研究グループはこのほど、福島第一原子力発電所事故で放出された放射性物質の陸域環境中での動きから、「環境回復はチェルノブイリより大幅に速い」ことを裏付ける成果を発表した。10月27日に海外学術誌に掲載されたもの。〈筑波大発表資料は こちら〉同研究グループでは、福島の環境回復状況の変化をとらえ、陸域(発電所から80km圏内と阿武隈川流域)の環境モニタリングに関するおよそ200本の研究論文を集約・検証。福島第一原子力発電所事故により地上に降下したセシウム137は、森林67%、水田10%、畑・草地7.4%、市街地5%の割合で陸域に沈着したと算出。セシウム137の陸域移行の実態について、森林や土壌を介した下方への移行、水田から河川への移行、除染など、様々な経路・要因から総合的に分析した。その結果、福島の陸域では、チェルノブイリと比較して、急峻な地形で降水量が多いことや、耕作、除染などによって、表層部分のセシウム137の低減が速く進んだことが明らかになったとしている。例えば、放射性核種の下方への浸透速度を示す「重量緩衝深度」と呼ばれる係数を用いた評価で、特に耕作水田では、チェルノブイリ事故の影響を受けた陸域と比較し2~4倍と、耕作を放棄した水田、森林、草地などと比べて高く、人間活動や土地活用が土壌表層の放射能濃度低減に寄与していることも示された。福島森林のCs137の分布と移行(上下それぞれスギ林と落葉広葉樹林、筑波大発表資料より引用)一方、福島第一原子力発電所事故により、セシウム137放出の影響を最も受けた森林域については、樹種により経時変化が異なるが、セシウム137の量は河川水や土砂などを介し1年間当たり初期沈着量の0.3%以下しか流出せず、事故から8年間が経過しても森林生態系内(葉、枝、樹皮、幹、林床)にほとんど留まっていることがわかった。筑波大学では、福島第一原子力発電所事故発生以来、チェルノブイリとの比較とともに、生活圏である水田・耕作地・市街地を「PFU」(Paddy fields、Farmland、Urban areas)として着目し、人間活動と放射性物質低減との関係を継続的に調査してきた。2019年には、阿武隈川から海に流出した放射性セシウムの約85%が流域面積比で38%程度の「PFU」に起源していたとの共同研究成果(福島県、京都大学)を発表し、人間活動による放射性物質低減の効果を示唆している。
- 29 Oct 2020
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新潟県の技術委員会が福島第一原子力発電所事故で検証結果をまとめる
新潟県の「原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」(座長=中島健・京都大学複合原子力科学研究所副所長)が10月26日、福島第一原子力発電所事故に係る検証結果を取りまとめ、花角英世知事に報告を行った。2012年に当時の泉田裕彦知事からの要請を受け、柏崎刈羽原子力発電所の安全に資することを目的として、現地視察や、4事故調(民間、政府、国会、東京電力)報告書から課題を抽出したディスカッション、東京電力へのヒアリングなどを通じ検証を進めてきたもの。事故から得られた課題・教訓を、(1)地震対策、(2)津波対策、(3)発電所内の事故対応、(4)原子力災害時の重大事項の意思決定、(5)シビアアクシデント対策、(6)過酷な環境下での現場対応、(7)放射線監視設備・SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワーク)システム等のあり方、(8)原子力災害時の情報伝達・発信、(9)新たに判明したリスク、(10)原子力安全の取組や考え方――の10項目に整理。地震対策の関連では、水素爆発シミュレーションも実施し、「1号機非常用復水器(IC)の損傷原因が地震動による可能性も否定できないことを確認した」などと、事故調により見解に相違があった事象についても深堀し検証。「新たに判明したリスク」を踏まえた教訓としては、「使用済燃料プールのリスクに対応する安全基準を設けること」、「複数号機が同時に事故を起こしても、対応できる体制を構築すること」、「代替設備を用意するとともに、規格の統一により汎用性を向上させること」をあげている。技術委員会座長の中島氏は、今回の検証結果をまとめた報告書の冒頭で、柏崎刈羽原子力発電所における安全対策の確認に資する趣旨とともに、「広く原子力発電所の安全性向上に貢献できれば」と、事故から得られた知見の水平展開にも言及。また、結びでは、「安全を確保するのは、最後は人だ」として、国や東京電力に対し教育・訓練を通じた人材育成の重要性を強調している。花角知事は10月27日の定例記者会見で、「『色々な可能性を排除せずに課題としてとらえる』という姿勢で議論が行われ、計133もの課題・教訓が抽出された」などと語り、8年間にわたる議論の成果を認識。新潟県では現在、福島第一原子力発電所事故に関し、「事故原因」、「健康と生活への影響」、「安全な避難方法」の3つの検証を進めており、このうちの一つに結論が出た格好となった。
- 27 Oct 2020
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政府の廃炉・汚染水対策チーム会合、福島第一の処理水取扱いで意見を整理
福島第一原子力発電所に係る政府の廃炉・汚染水対策チーム会合(チーム長=梶山弘志経済産業大臣)が10月23日、総理官邸で行われた。汚染水を浄化する多核種除去設備(ALPS)で取り除くことのできないトリチウムを含んだ、いわゆるALPS処理水の取扱いが課題となっている。ALPS処理水の取扱いに関しては、資源エネルギー庁の小委員会が2月に「制度面や技術面から、現実的と考えられるのは、海洋放出か水蒸気放出」とする報告書を取りまとめ、政府による方針決定に向けて関係者との意見交換、パブリックコメント、説明会が行われていた。同チーム会合では、経産相以下、関係省庁の副大臣、原子力規制委員会委員長他、日本原子力研究開発機構、原子力損害賠償・廃炉等支援機構、東京電力が出席のもと、これまでに寄せられた意見を整理した。4~10月に計7回にわたり開催された意見交換では、自治体・議会・町村会や、住民団体、経済、農林水産業、観光業、流通、消費者の各関連団体、計29団体・43名が公開の場で意見を表明。4~7月に実施されたパブリックコメントで寄せられた計約4,000件の意見を分類したところ、処理水の安全性への懸念で約2,700件、処分方法や分離技術開発の提案で約2,000件、風評影響・復興の遅延への懸念で約1,000件の他、「国民の合意がとれていない、時間をかけるべき」、海洋放出の方向性に関し「結論ありきの議論」、「国際社会から批判を受ける可能性がある」といった合意プロセスへの懸念も約1,400件に上ったという。梶山経産相は、チーム会合終了後の記者会見で、「いただいた意見に最大限対応することを前提にALPS処理水の取扱いを検討していく」と、今後の方向性を示し、「安全基準の厳格な遵守」を第一とし、関係各省に対して、意見を真摯に受け止め、風評被害の最大限の抑制、国内外に対する科学的根拠に基づいた正確な情報提供に努めるよう要請したと述べた。また、「27日にも政府方針を決定する」との一部報道に関しては、「具体的なタイミングを伝える段階にはない」と否定し、チーム会合での議論を踏まえ、「関係省庁で検討を深めた上で政府として責任を持って結論を出す」とした。
- 23 Oct 2020
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首都圏に福島の美味しさを届ける「常磐ものフェア2020」、今日から開催
首都圏を対象に福島県産水産物の美味しさを広くPRし販路・消費の拡大を図る「ふくしま常磐ものフェア2020」が10月15日に始まった。「福島の漁業関係者の熱い想いをより多くの人に届ける」というコンセプトのもと、日本有数の漁業とされる福島県沖「潮目の海」で獲れるヒラメ、メヒカリ、サワラ、スズキ、ホッキ貝など、「常磐もの」を使ったオリジナルメニューを首都圏の飲食店で提供するもの。12月23日までの開催期間中、約150店舗が参加。レストラン検索・予約サイト「食べログ」にも特設サイトが開設される。〈参加店舗は こちら を参照〉今回のフェアでは、ウェブサイトを通じた生鮮食品流通を手掛けるベンチャー企業のフーディソンが11月25日までを担当。2週間ごとのタームに分けられ、フェアに参加する各ターム25店舗、3タームで計75店舗が同社の仕入サービスサイト「魚ポチ」を通じて「常磐もの」を仕入れ調理する。第1タームには、都内に飲食店を展開する(株)ジリオンの「酒場シナトラ」、「大衆ビストロジル」など、計12店舗がこぞって参加。「酒場シナトラ豊洲店」(江東区)では、日本酒・焼酎とともに、ホッキバター焼きなど、期間限定メニューが味わえる。同じく第1タームに参加するイタリアンレストラン「オステリア イル レオーネ」(新宿区)では、ホッキ貝のパスタやメヒカリのインサオールを提供。同店シェフは「福島の新鮮で味のよい水産物を使った料理で皆様の笑顔が見られることを楽しみにしている」と、期待を寄せている。同フェアは昨秋に続き2年目となるが、前回も福島県や福島県漁業協同組合連合会とタイアップし開催を支えたフーディソンによると、参加した飲食店からは、「お客様が福島の今を知ったときの反応がよかった」、「今まで福島の魚を使ったことがなかったが、今回のフェアを通じて料理人や店舗スタッフの知識も増えた」といった声もあったという。また、フェア終了後も8割以上が福島県産水産物の仕入れの継続を希望するとしており、今回フェアの開催に際し、福島漁連の野﨑哲会長は、「どれも鮮度、味もよく自信を持ってお薦めする」と、「常磐もの」のPRに意気込みを見せている。
- 15 Oct 2020
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エネ庁、福島第一処理水の取扱いで全漁連他より意見聴取
資源エネルギー庁は10月8日、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに係る関係者からの意見聴取を都内で行った。2月に「現実的な方法は海洋放出および大気放出」とする委員会報告書が取りまとめられてから7回目の開催。今回は、福島県水産加工業連合会(Web会議で参加)と全国漁業協同組合連合会が意見を述べた。福島県水産加工業連合会代表の小野利仁氏は、まず定価販売ではなく市場でのせりや入札で価格が決まる業界特有の「自分で値段を決められない」システムがあることを述べた上で、漁場を巡る隣県とのあつれき、冷凍業者への依存、昨今の新型コロナウイルス騒動による消費低迷など、県内水産業の置かれた厳しい現状を憂慮。同氏は、いわき市の郷土料理とされるさんま味りん干しの製造に携わっており、「食材は北海道産でも、加工は福島というだけで忌避される」と、水産物への根強い風評被害が生じていることから、処理水の取扱いに関し「特に海洋放出に関しては断固反対」と主張した。全国漁業協同組合連合会会長の岸宏氏も、「諸外国にも影響を与える極めて重要な問題」として反対意見を強調。同氏は、「風評被害の発生は必至で極めて甚大。これまでの漁業者の努力が水泡に帰すとともに、失望、挫折を引き起こし、わが国の漁業の将来に壊滅的影響を及ぼす」と、処理水放出への懸念を示し、「安心できる情報提供が第一。新たな風評被害を起こさないこと」などと、今後の取扱いに向けて慎重な判断が必要なことを訴えた。福島第一原子力発電所の処理水を貯蔵するタンクは2022年夏頃に満杯となる見込みだが、梶山弘志経済産業相は、9日の閣議後記者会見で、政府としての処理水の取扱い方針決定に向けて、「これまでに寄せられた意見をできるだけ早急に整理し、関係省庁と検討を深めた上で結論を出したい」と述べた。
- 09 Oct 2020
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学術会議、東日本大震災からの復興に関する「社会的モニタリング」を提言
日本学術会議はこのほど、東日本大震災・福島第一原子力発電所事故からの復興に関する提言を発表した。社会科学も含めた視点から、「復興庁の存続が決定し新たな復興像が模索される中、復興過程をどう把握し復興政策に反映させていくか、制度設計のあり方についての検討は喫緊の課題」との認識のもと、被災者の状況を観察し生活を営む社会が平常状態に戻るための方策を考える「社会的モニタリング」の確立、その記録作成を支える震災アーカイブの構築を提唱。「社会的モニタリング」を具現化し一般に公開していく機能として、同提言では、複合災害としての性格に対応し復興政策検証を行う「東日本大震災・原子力災害復興過程検証委員会」を設置すべきとし、同委は独立性を備えた組織として、政府(内閣府あるいは復興庁)または国会のもとへの設置が望まれるとした。また、復興過程について、復興庁を中心とする複数省庁や関係自治体など、政策担当者の立場から総括する「復興白書」の発行とともに、学術の立場から複眼的に評価するものとして、学術会議による「復興学術報告書」の作成を提案。両書が相互に参照し合うことで、政府施策の実効性向上や将来のリスクへの備えにもなるとしている。提言では、震災から9年半が経過し、これまで国、自治体、学術組織・学協会、大学・研究機関、マスコミ、シンクタンクなど、様々な立場・観点から調査研究や復興支援が行われてきたと評価を示す一方、資料のアーカイブ化に関しては、体系化・共有化や利活用方法についての検討が散発的で、未だ残された課題も多いと指摘。参考となる取組事例として、アーカイブ化のあり方検討に市民が参加する「仙台市震災復興メモリアル」拠点事業や、ボランティア・防災活動に取り組む社会学研究者のメーリングリストを通じた書誌情報の収集・更新などをあげている。
- 23 Sep 2020
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エネ庁、福島第一原子力発電所処理水の取扱いで日商他より意見聴取
資源エネルギー庁は9月9日、福島第一原子力発電所で発生する処理水について、政府としての取扱い方針を決定するための「関係者のご意見を伺う場」を都内で行った。2月の委員会報告を踏まえたもので、4月の初回開催から6回目となる。今回は、日本商工会議所、千葉県、宮城県(WEB会議システムにて参加)、茨城県(同)が意見を表明。処理水の取扱い決定に関し、丁寧な情報発信・説明と風評被害対策の拡充を訴えた。日本商工会議所の久貝卓常務理事は、処理水の放出に関し、「いまだ払拭されていない風評被害がさらに上乗せされる」といった地元商工会議所の意見、韓国を始めとする輸入規制の継続も受け、特に水産業では震災前の水準と比較し売上が激減している現状から「本当に困る。われわれを殺す気か」との切実な声も出ていることをあげ、経済的補償スキームを国が明確に示すべきと要望。千葉県の滝川伸輔副知事は、昨秋の大型台風に伴う被害にも触れ、潮干狩場や観光農園・直売場などの来客減、年間水揚量が全国1位とされる銚子漁港を有する銚子市から「地域経済全体に影響を及ぼさないよう対応を求める」との要望書が提出されたことなど、観光業も含めた風評影響に懸念を示した。宮城県の遠藤信哉副知事は、「沿岸では津波による被害を受け、基幹産業の復旧・復興、生活・生業の再建におよそ10年を要した」と、茨城県の大井川和彦知事は「福島県の漁業者とは福島第一原子力発電所事故以前、お互いの海域に入りながら漁を行っていたが、今も中断されている」などと、地元水産業が置かれた厳しい現状とともに、魚介類の検査体制や販路拡大の取組について説明。大井川知事は、処理水の取扱いに関し「現実的な方法は海洋放出および水蒸気放出」とした委員会報告について、「結論ありきの取りまとめのように見えてならない」と指摘し、「地域社会や環境に対しより影響の出ない方法は本当にないのか」も含め、既定路線にとらわれずに議論した上で、具体的な説明がなされる必要性を訴えた。
- 10 Sep 2020
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国立環境研、動く大型立体地図「3Dふくしま」を公開
国立環境研究所はこのほど、福島県の大型立体地図の上に地理・社会情報や放射線量の推移などをアニメーションで映し出すプロジェクションマッピング「3Dふくしま」を開発・制作。同研究所福島支部が蓄積してきた地域の環境情報に関する調査・分析をわかりやすく「見える化」したもので、県環境創造センター交流棟「コミュタン」(三春町)に13日より常設展示されている。〈映像サンプルは こちら〉「3Dふくしま」では、高解像度の衛星画像、人口分布、放射線の空間線量率、野生動物の生息状況、温暖化の影響などに加え、昨秋の台風による浸水被害状況もコンテンツとして公開が予定されており、125,000分の1の縮尺でリアルに再現した立体地図の上に表現される超高解像度(WUXGA)情報を通じ、時間軸と空間軸の両方から福島県の姿を理解・再発見させる。「3Dふくしま」の制作に当たった地域環境創生研究室主任研究員の五味馨氏は、一般公開に際しメッセージを寄せ、「なぜ、会津若松市や福島市では特別に暑くなる日があるのか?」、「なぜ、水害に強い場所と弱い場所があるのか?」などと問いかけ、「そんな疑問の答えを『3Dふくしま』で見つけて欲しい」と呼びかけている。
- 17 Aug 2020
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福島第一、サンプリング試料の化学分析をシステム化
東京電力は8月6日、福島第一原子力発電所廃炉作業に伴う敷地内、港湾内、周辺海域で採取した試料の化学分析について、分析結果報告書や公表用資料の作成に至る一連の業務のシステム化を9月より運用開始することを発表した。〈東京電力発表資料は こちら〉同社では昨秋より、分析業務の効率化と正確性の向上のため、化学分析データ収集装置の現場における操作端末としてディスプレイ機能を搭載したスマートグラスの運用を開始し、試料の受領に係る作業を画面上で行うことで所要時間が半分程度に短縮され、そのオリジナル性については3月に特許を出願した。分析業務に用いられるスマートグラスは、ヘッドホン、カメラ、マイクを搭載しており、作業者はQRコードで必要なデータを読み込み、グラスを通して映し出される情報に従いデータ評価室に音声入力・映像を送信。データ評価室はカメラ画像から化学分析データ収集装置(LIMS)に入力し、試料情報として登録、分析結果報告書・公表用データが作成される。従来は分析結果を各測定装置からプリントし手入力で取りまとめていたが、9月からは公表用資料の自動作成機能を導入した新システムを運用することにより、年間約150万件のデータ手入力を約8割削減、同80万枚(1日当たり10cmファイル3冊分)のチェックシートも廃止し、燃料デブリ取り出しなど、今後の廃炉作業の進捗に伴い必要となる新たな分野の分析業務にリソースを投入していく。
- 07 Aug 2020
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福島第一原子力発電所事故に関する学術会議の活動紹介、システム研究懇話会で
福島第一原子力発電所事故に関する日本学術会議の分科会活動について紹介する講演会が7月21日、原子力分野の学識経験者の集まり「原子力システム研究懇話会」でオンライン会議を通じて行われた。講演では、学術会議の総合工学委員会で主に事故調査に関して報告書・提言の取りまとめに係ってきた松岡猛氏(宇都宮大学名誉教授)が登壇。事故から8か月後の2011年11月に設置された同委原子力事故対応分科会は2014年に、政府、国会、民間などによる事故調査報告書について学術的立場から検討を行い、報告「福島第一原子力発電所事故の教訓」を発表した。事故の進展に関し、松岡氏は、1号機非常用復水器(IC)の作動、2号機のベント操作、3号機高圧注水系(HPCI)停止の妥当性など、分析の経緯や得られた見解を紹介し、原子力の安全性向上に向けた科学者コミュニティの役割を強調。また、同氏は最近の活動として、6月末発表の提言「原子力安全規制の課題とあるべき姿」を紹介。原子力安全規制機関を主な対象として、(1)規制機関と被規制者・事業者の関係と双方の取組姿勢、(2)リスク情報の活用、(3)優先順位と迅速性(グレーデッドアプローチ)、(4)安全対策機器の増設に伴う課題、(5)規制基準の体系的かつ継続的な改善、(6)安全目標、(7)組織文化と安全文化の課題、(8)安全研究・情報基盤の確立・人材育成の統合的マネジメント――について提言している。原子力の安全性向上に関して今後は、検討中の提言「新知見への取組強化について」を取りまとめた上で、9月にはシンポジウムを開催するなど、さらに議論を深めていく考えを述べた。続いて、森口祐一氏(東京大学大学院工学系研究科教授)が登壇し、同じく学術会議総合工学委員会による報告「福島第一原子力発電所事故による環境汚染の調査研究の進展と課題」(既報)について紹介。今回の講演会は福島第一原子力発電所事故から間もなく10年となるのを契機に行われたものだが、原子力委員長代理や日本原子力研究所理事長を歴任後、2013年に技術同友会で「過酷事故を二度と起こさないための対策と提言」を取りまとめた齋藤伸三氏は、学術会議の今後の活動に向けて、発表した提言に対するフォローアップなどを通じ、より存在感が示されるよう期待を寄せた。
- 27 Jul 2020
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原子力学会、福島第一廃炉に伴う廃棄物管理対策で報告書発表
日本原子力学会は7月21日、福島第一原子力発電所の廃炉に伴う廃棄物管理対策に関する報告書を取りまとめ発表した。同学会の廃棄物検討分科会によるもので、2021年から開始予定の燃料デブリ取り出しの終了を前提に、エンドステート(サイトの最終的な状態)に至るまでの放射性廃棄物の取扱いに係るシナリオを設定、分析した上で、廃炉・サイト修復を安全かつ効率的に進めるための課題を提言している。報告書ではまず、原子力施設の廃止措置、放射性廃棄物の分類・発生量・処分方策、サイト修復、エンドステートについて、国内の現状や国際機関の文書に基づき説明。また、事故炉としての廃棄物管理対策検討に向け、エンドステートに至るタムライン、サイト領域区分、廃棄物特性などの見通しを示した。福島第一原子力発電所廃炉のエンドステートとしては、サイト内の機器・構造物および汚染土壌・地下水等の汚染に関し(1)すべて取り除かれた状態(全撤去)、(2)一部が管理・監視の可能な状態で残存する状態(部分撤去)――の2ケースを、廃炉方式としては、IAEAの分類に基づき「即時解体」と「遅延解体」(「安全貯蔵」の後に解体撤去)をあげ、これらを組み合わせた4つの放射性廃棄物取扱いシナリオを設定し検討。それによると、「全撤去・即時」のシナリオでは、サイトはクリーンな更地となるが大量の放射性廃棄物が短期間で発生。「部分撤去・即時」のシナリオでは、放射性廃棄物の発生量を低減できるが、保管施設設置のためサイト開放が一部に限られるなどとされた。また、「全撤去・安全貯蔵」と「部分撤去・安全貯蔵」のシナリオでは、廃炉作業に取り組む時期が遅くなるため、施設解体のための技術的準備や作業の容易化などが可能となるが、それぞれ解体廃棄物の取扱い、サイト開放が限定的となることが課題としてあげられた。これらの検討結果を踏まえ、(1)福島第一廃炉終了の定義に係る議論、(2)エンドステートに係る議論、(3)ステークホルダーによる討議機会の整備、(4)放射性廃棄物低減の取組の早期実施、(5)放射性廃棄物処分に係る制度の見直し――を提言。エンドステートに関しては、工程ごとの達成目標「中間エンドステート」の設定に言及したほか、海外におけるサイト修復・環境管理の事例として米国の「EM計画」を紹介している。
- 22 Jul 2020
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エネ庁、福島第一原子力発電所処理水の取扱いで県議会議長他より意見聴取
資源エネルギー庁は7月17日、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関する「関係者のご意見を伺う場」を福島市内で開催した。2月に取りまとめられた委員会報告を受け、政府としての取扱い方針決定に資するため4月以降行われているもので、5回目となる。今回は、福島県議会、福島県青果市場連合会、福島県水産市場連合会他より意見を聴取。福島県議会の太田光秋議長は、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大に伴う外食産業の営業自粛やイベントの中止により生じた農林水産業・観光業への影響を、被災地として「より深刻なもの」と憂慮。処理水の取扱いに関し、県内市町村議会による海洋放出に反対する決議などを踏まえ、「国民の理解は十分に得られていない」として、(1)風評対策の拡充・強化、(2)幅広い関係者からの意見聴取と様々な観点からの検討、(3)取扱い方針を決定するまでのプロセス公開と丁寧な説明――を要望した。また、福島県青果市場連合会の佐藤洋一会長、福島県水産市場連合会の石本朗会長は、生産・出荷者と小売業の中間に位置する立場から、それぞれ「山菜・きのこ類(野生)が痛手を負っている」、「試験操業から脱せず苦しい思い」と、農産物の出荷制限や水揚量回復の遅れなど、実質的被害が継続している現状を訴えた。県漁業協同組合連合会との協調姿勢から、石本氏は「早急な海の回復が望まれる」と強調した上で、処理水の取扱い決定に際しては慎重を期するよう切望。川俣町在住の菅野氏、トリチウム分離技術の確立や全国レベルでの風評対策を強調(インターネット中継)この他、「福島原子力発電所の廃炉に関する安全確保県民会議」から4名が意見を述べた。その中で、川俣町在住の菅野良弘氏は、福島第一原子力発電所の汚染水を浄化する多核種除去設備(ALPS)では取り除けないトリチウムを巡る課題に関し、「分離技術が確立するまで保管の継続を」と述べ、委員会報告で処理水取扱いの現実的な方法の一つにあげられている海洋放出には反対する考えを表明。また、同氏は、風評被害対策に関し「今海洋放出を行ったらこれまでの努力が水泡に帰す。これは、福島県民皆が持っている不安」とした上で、長期的観点からわが国全体の問題として考える必要性を訴えた。資源エネルギー庁は、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関する意見募集を、7月31日にまで延長し実施している。
- 20 Jul 2020
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福島県が新作CMで旬の果物・野菜や魚介類をPR
福島県は7月15日より、県クリエイティブディレクター・箭内道彦氏監修、アイドルグループのTOKIOの出演による新作CMを通じ、旬を迎える県産の果物・野菜や魚介類の魅力を発信する。 このほど制作されたCMは、「桃篇」(城島茂さん出演)、「夏野菜篇」(国分太一さん出演)、「カツオ篇」(松岡昌宏さん出演)の3編あり、県内の他、首都圏、関西などでも放映予定。「桃篇」では城島さんと農家の人たちが桃をまるかじり。福島の子供たちも登場する「夏野菜篇」では、縁側で涼む国分さんが氷水で冷やしたきゅうり、トマトのおいしさをPR。「カツオ篇」では、松岡さんがしょうがをすりおろし、カツオの刺身を食べるが、盛り付け方法やおいしさの秘訣は県産農林水産物のPR特設サイト「ふくしまプライド。」でも紹介されている。福島県の内堀雅雄知事は7月13日の定例記者会見で、新作CMの見どころとして、「生産者の皆さんとTOKIOの皆さんの素敵な笑顔」、「ベコ太郎(郷土玩具赤べこをモチーフしたキャラクター)と『んだんだ』のリズム」、「正に今、旬を迎えた県産の農林水産物」を強調。これまでも国内外で食品や観光のトップセールスを積極的に行ってきた内堀知事は、震災から9年余りを振り返り「ハード面での復興は間違いなく前に進んできたが、風評の問題はやはり根強い」として、今後も県産農林水産物の品質の高さをアピールしていく考えを示した。
- 13 Jul 2020
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学術会議、福島第一原子力発電所事故に伴う環境汚染調査で報告書
日本学術会議の「原子力安全に関する分科会」(委員長=矢川元基・原子力安全研究協会会長)は7月7日、福島第一原子力発電所事故に伴う環境汚染の調査研究に関し報告書を取りまとめ発表。これまでの政府関係機関や学術界による取組を整理した上で、(1)事故進展解析分野と環境影響解析分野の連携、(2)事故からの経過時間に応じた環境動態モデルと環境モニタリングの継承、(3)情報や試料の散逸防止のための長期にわたる組織的対応、(4)アカデミアと行政機関との連携と役割分担、(5)放射線教育の定着、(6)研究進展の全貌把握・横断的解析――に取り組むよう提案した。福島第一原子力発電所事故時の炉内事象と環境放出との関連性について、報告書では、エネルギー総合工学研究所によるシビアアクシデント解析コードのSAMPSONと、原子力災害対策に用いられるWSPEEDI(世界版緊急時環境線量情報予測システム)との比較を紹介。セシウム137の放出量に関し、両者の解析結果に相違が見られたことから、今後の定量的な放出量評価に向け「甲状腺被ばくの点で重要度の高いヨウ素については高い評価精度が求められる」などとして、事故進展解析と環境影響解析との両分野間交流の意義を説いた。学際的な調査研究を通じ、事故から数年以内で、河川、ダム・ため池、海域、森林、農地、市街地など、水系や土地・土壌、そこにおける生態系に関し、放射性物質の環境動態の実測調査やモデル化が進展したことを評価した上で、今後も環境モニタリングの継承が重要な課題と指摘。さらに、情報の収集と蓄積について、ウェブサイト更新によるリンク切れ、測定試料のアーカイブ問題、住民個人による放射線測定データの活用の可能性にも言及。長期にわたる情報の散逸を防ぐため、「組織的対応を行う恒久的なアーカイブ機関が必要」などと提言した。また、「放射線に対する歴史上の経験を考えた場合、わが国は世界で最も充実した教育と人材育成をすべき」、「事故で明らかになったのは社会としての放射線に関連した知識の欠如」と述べ、放射線教育について、(1)初等中等教育で基本的な知識を系統的に取り入れる、(2)大学における総合教育として環境放射能や放射線の講義を行う、(3)学協会が中心となって関連分野の教員を派遣する――ことを提言。報告書では結びに、環境汚染調査と健康調査の連携が不十分などと、分野横断的な解析に係る課題をあげた上で、事故後10年の区切りを迎えるのに際し、「環境影響の全貌が把握でき、さらに包括的かつ緻密な報告」を、事故の当事国としてまとめる必要性を述べている。
- 09 Jul 2020
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エネ庁、福島第一処理水で小規模事業者・消費者団体から意見聴取
資源エネルギー庁は6月30日、福島第一原子力発電所で発生しタンクに貯蔵されている処理水の取扱いに係る意見聴取(4回目)を都内で行った。政府としての方針決定のため、2月に取りまとめられた委員会報告書を踏まえ4月以降実施しているもの。今回は、全国商工会連合会、日本ボランタリーチェーン協会、全国消費者団体連絡会より、小規模事業者や消費者の立場からの意見を聴取した。全国商工会連合会からは事務局長・苧野恭成氏が出席。同氏は、「地域に密着した唯一の総合経済団体」と、全国連の位置付けをアピールする一方、「高齢化により事業の継承が危機に」、「震災から9年が経過したが被災地での回復はいまだ途上にある」といった会員企業の抱える諸課題をあげ、処理水の放出に関し「風評被害に苦しむ小規模事業者がさらに苦境に立たされるのではないか」などと懸念。今後の処理水の取扱いに向けては、国内外への十分な説明と第三者機関による監視の必要性を訴えた。中小小売業の協同体組織とされる日本ボランタリーチェーン協会の常務理事・中津伸一氏も、加盟店について、「高齢者によるパパママストア」、「マスコミの力に弱い」と、報道による消費者行動の影響を受けやすい家族経営店舗の実態を強調。その上で、処理水の放出に関し「安全であれば流せばよいというのが率直なところ」とする一方、「わかりやすく国民に説明し納得してもらうことが大事。いくら安全・安心を呼びかけても買ってもらえなければ中小事業者にとっては死活問題」と、風評被害対策の拡充を切望した。リスコミの重要性を強調する全国消費者団体連絡会の浦郷氏また、消費者の権利保護や暮らしの向上などを目指し活動する全国消費者団体連絡会からは事務局長・浦郷由季氏が出席。同氏は、福島第一原子力発電所に関する学習会の開催を通じた消費者の声を紹介した上で、処理水に関する国民の理解、水蒸気放出と海洋放出以外の検討、地元住民の理解、風評被害対策、国と東京電力の責任の5点について意見を表明。消費者庁他が主催する食品安全シンポジウムにも登壇している浦郷氏は、特に風評被害に関し「福島の漁船というだけで仲卸業者に安く買いたたかれた」という漁業関係者の無念の声などをあげ、「多くの国民が考え、知ってもらうまでは処分方法について決めるべきではない」と、リスクコミュニケーションの重要性を強調した。資源エネルギー庁では7月15日まで、処理水の取扱いに係るパブリックコメントを行っている。
- 01 Jul 2020
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規制委福島第一事故検討会が水素爆発映像の分析へ、テレビ局の協力も得て
原子力規制委員会の福島第一原子力発電所事故に関する検討会は、1、3号機で発生した水素爆発の映像を用いた調査分析に着手する。6月25日の同検討会会合に、映像を提供する福島中央テレビ/日本テレビが出席し説明に臨んだ。福島中央テレビによると、爆発の瞬間をとらえたカメラ(富岡町)は、福島第一、第二発電所から南西の方向に、それぞれ約17km、約10kmの距離にあり、JCO事故を受けて同局が2000年に設置したもの。その後、機材の高度化・増設が進められ、東日本大震災発生当時はバックアップ用となっていたが、山側の電源ルートを使用していたことにより停電を免れ唯一発電所の状況を撮影できた。爆発発生当時について、「原子炉建屋で白い煙が上がった」ことを確認し、放送中の番組を中断して映像を流し「いち早く発信することで報道としての責任を果たした」などと振り返った上で、「事故を検証し後世に伝えていくべき」と、映像提供の意義を強調。また、福島中央テレビと日本ニュースネットワーク(NNN)でつながる日本テレビの森田公三報道局長は、テレビが与えるインパクトの強さを改めて述べた上で、今回の映像提供に関し「事故の真相解明は極めて大事な責務」として、画像鮮明化などの技術面で引き続き規制委員会に協力していく姿勢を示した。同委検討会は昨秋5年ぶりに再開。前回までの会合で原子炉格納容器破損時の水素挙動が論点の一つとしてあがっていた。今後、水素爆発発生時の映像を用い、建物の変形、爆煙の広がり方、飛散物など、さらに調査分析を進め、年内を目途に一定の取りまとめがなされる見通し。
- 26 Jun 2020
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福島県・内堀知事が政府に要望活動、復興・創生の加速化を
福島県の内堀雅雄知事は6月24日、経済産業省他、中央省庁を訪れ、復興・創生に向けた提案・要望活動を行った。梶山弘志経産相との会談では、浜通り地域の産業創出を目指す「イノベーション・コースト構想」のさらなる推進などを要望。新型コロナウイルス感染症が地域経済にもたらした影響の克服、「復興・創生期間」後における復興のさらなる加速化を全般的事項とし、避難地域・浜通りの復興・再生、風評被害対策の強化、「復興五輪」延期に伴う財政支援など、各省庁を通じて計46項目を要望。このほど、復興庁設置法等の改正により、地震・津波被災地域は「総仕上げ」段階にある一方、原子力災害被災地域では中長期的対応が必要となっている状況を踏まえ、2020年度までの「復興・創生期間」に引き続き復興を支える仕組み・組織・財源の整備が図られることとなった。要望事項の中で、「イノベーション・コースト構想」に関しては、3月に全面開所した「福島ロボットテストフィールド」の利用促進、エネルギー関連産業の集積、新重点分野(医療、航空宇宙)への支援の他、現在復興庁とともに検討が進められている国際教育研究拠点の構築について、「国立の研究開発法人として新設し、国が責任を持って長期にわたる予算、人員体制を確保すること」が盛り込まれた。東日本大震災・原子力災害伝承館のイメージ図(福島県発表資料より引用)また、今秋に双葉町に開館予定の「東日本大震災・原子力災害伝承館」への継続的支援として、資料収集を始めとする各事業の実施、研究体制構築などに要する運営費について、必要な予算確保を要望。今回の要望では、昨秋の東日本台風に伴う甚大な被害を踏まえ、大規模自然災害に備えた総合的な防災・減災対策や、国土強靭化の取組に向け必要な制度設計や財源確保に努めるよう関係省庁に求めている。
- 25 Jun 2020
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